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特許7166192水圧シリンダ駆動機構およびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】水圧シリンダ駆動機構およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/024 20060101AFI20221028BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20221028BHJP
   F15B 11/044 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F15B11/024 B
G21F9/30 531J
F15B11/044
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019029313
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020133785
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】氷見 太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豪
(72)【発明者】
【氏名】酒井 陽平
(72)【発明者】
【氏名】島内 拓哉
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-102035(JP,U)
【文献】特開昭58-135270(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114736(WO,A1)
【文献】特開2016-142403(JP,A)
【文献】特開2015-152099(JP,A)
【文献】特開2015-183768(JP,A)
【文献】特開2004-308736(JP,A)
【文献】特開2014-095396(JP,A)
【文献】特開2017-015132(JP,A)
【文献】特開2018-071311(JP,A)
【文献】特公昭47-046555(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
G21F 9/00- 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線環境又は防爆環境の内にある作業装置の駆動部にピストンロッドが連動する水圧シリンダと、前記放射線環境又は防爆環境の外から前記水圧シリンダに対して作動水を給排する水圧回路と、水タンクから作動水を吸引し前記水圧回路へ吐出供給する水圧供給ポンプと、前記水圧供給ポンプの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記水圧回路は、
前記水圧供給ポンプからの作動水を前記水圧シリンダへ送る給水流路と、
前記水圧シリンダからの排水を水タンクへ戻す排水流路と、
前記給水流路と前記排水流路とを、それぞれ前記水圧シリンダのピストンヘッド側シリンダ室に連通するヘッド側流路とピストンロッド側シリンダ室に連通するロッド側流路とへ切換可能に接続する水圧流路切換弁と、を備え、
前記排水流路には、定量ポンプとその下流に逆止弁とが配置されており、
前記制御部は、さらに前記定量ポンプに対して前記水タンク側への単位時間当たりの吐出回数を制御して排水量を調整することにより、前記ピストンロッドの移動速度を0.0100~0.1550mm/secの低速領域で制御するものであることを特徴とする水圧シリンダ駆動機構。
【請求項2】
放射線環境又は防爆環境の内にある作業装置の駆動部にピストンロッドが連動する水圧シリンダと、前記放射線環境又は防爆環境の外から前記水圧シリンダに対して作動水を給排する水圧回路と、水タンクから作動水を吸引し前記水圧回路へ吐出供給する水圧供給ポンプと、前記水圧供給ポンプの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記水圧回路は、
前記水圧供給ポンプからの作動水を前記水圧シリンダへ送る給水流路と、
前記水圧シリンダからの排水を水タンクへ戻す排水流路と、
前記給水流路と前記排水流路とを、それぞれ前記水圧シリンダのピストンヘッド側シリンダ室に連通するヘッド側流路とピストンロッド側シリンダ室に連通するロッド側流路とへ切換可能に接続する水圧流路切換弁と、を備え
前記排水流路には、定量ポンプとその下流に逆止弁とが配置されており、
前記制御部は、さらに前記定量ポンプに対して前記水タンク側への単位時間当たりの吐出回数を制御して排水量を調整することにより、前記ピストンロッドの移動速度を制御するものであり、
前記水圧流路切換弁は、エア圧操作により切換駆動されるものであり、前記水圧回路は、前記水圧流路切換弁に操作エア圧を送るエア圧操作電磁弁をさらに備えていることを特徴とする水圧シリンダ駆動機構。
【請求項3】
請求項1に記載の水圧シリンダ駆動機構の制御方法であって、
予め、前記定量ポンプの単位時間当たりの吐出回数と前記水圧シリンダのピストンロッドの移動速度との関係を算出する速度設定工程を備え、
前記制御部は、水圧シリンダ駆動工程にて、指令された切断装置の駆動速度に相当する前記水圧シリンダのピストンロッドの移動速度に応じた前記単位時間当たりの吐出回数を前記速度設定工程の算出結果に基づいて選定し、前記定量ポンプの駆動を制御することを特徴とする水圧シリンダ駆動機構の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアブレーシブウォータジェット切断やレーザ切断等の切断装置を初め、溶接装置や計測装置などの各種作業装置を低速領域で安定して動作させることのできる水圧シリンダ駆動機構およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、原子力プラントにおける高濃度放射性物質の取り出し作業において、種々の工法が検討されている。たとえば、高レベルに汚染されている原子炉格納容器内のコンクリート構造物を解体撤去する方法として、コンクリート構造物の内径より小径の作業床を吊り下げて順次下降させ、作業床に配置された解体装置を遠隔操作してその切断手段によってコンクリート構造物を上端部側から解体していく工法(特許文献1を参照。)等が考えられている。
【0003】
一方、原子炉内から回収、搬出すべき高濃度放射性物質が原子炉最深部にあって、回収する前にまず切断する必要が生じる場合には、原子炉上部より切断装置を炉底部まで伸長して切断作業を行うことになる。但し、機械式切断を行うと、切断反力によって切断装置に自励振動が発生して切断が困難となる。
【0004】
上記の如き高濃度放射性物質を切断するのに対応可能な工法としては、対象物に非接触で切断が行えると供に比較的切断反力が小さくなるレーザ切断が挙げられる。例えば、特許文献2のレーザ切断装置では、レーザ発振器から発振されて光ファイバにより原子炉内部の加工ヘッドに導かれたレーザ光は、ヘッド内のレンズによって集光され、切断対象に照射される。レーザ切断以外の切断工法としては、アブレーシブウォータジェット(以降、AWJとも記す)切断の採用が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-249595号公報
【文献】特開2001-166090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような切断装置のヘッドの位置や方向の制御など、作業装置を駆動させるための電動機として高放射線環境下で長時間耐え得るものは存在しない。このため、高放射線環境下に投入されている切断装置や、その他計測装置等の各種作業装置において、動力を伝達する駆動部としては必然的に電力を直接使用しない水圧シリンダ駆動が中心となる。また、防爆環境でも電力機器の使用は回避される。したがって、高放射線環境や防爆環境などの特殊環境下で作業装置を低速領域で安定して動作させるように水圧シリンダを駆動させる技術の開発が必要とされている。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、高放射線環境や防爆環境などの特殊環境下で作業装置を駆動させる水圧シリンダを、低速領域で安定して動作させるための水圧シリンダ駆動機構およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る水圧シリンダ駆動機構は、放射線環境又は防爆環境の内にある作業装置の駆動部にピストンロッドが連動する水圧シリンダと、前記放射線環境又は防爆環境の外から前記水圧シリンダに対して作動水を給排する水圧回路と、水タンクから作動水を吸引し前記水圧回路へ吐出供給する水圧供給ポンプと、前記水圧供給ポンプの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記水圧回路は、
前記水圧供給ポンプからの作動水を前記水圧シリンダへ送る給水流路と、
前記水圧シリンダからの排水を水タンクへ戻す排水流路と、
前記給水流路と前記排水流路とを、それぞれ前記水圧シリンダのピストンヘッド側シリンダ室に連通するヘッド側流路とピストンロッド側シリンダ室に連通するロッド側流路とへ切換可能に接続する水圧流路切換弁と、を備え、
前記排水流路には、定量ポンプとその下流に逆止弁とが配置されており、
前記制御部は、さらに前記定量ポンプに対して前記水タンク側への単位時間当たりの吐出回数を制御して排水量を調整することにより、前記ピストンロッドの移動速度を0.0100~0.1550mm/secの低速領域で制御するものである。
【0009】
以上の構成によって、本発明の水圧シリンダ駆動機構においては、作業装置を動作させる水圧シリンダを水圧回路を介して駆動させるものであるため、水圧回路の各水圧シリンダ室への接続部を長く設定することによって、水圧シリンダに対して離れた遠隔位置から駆動させることができる。したがって、例えば切断装置や計測装置等の作業装置を原子炉内という高放射線環境や防爆環境などの特殊環境下で稼働させる場合も、その特殊環境下から離れて安全に駆動制御することができる。しかも、水圧シリンダのピストンロッドの移動速度を、シリンダ室からの排水流路に配置された定量ポンプの単位時間当たりの吐出回数の制御によって排水量を調整することで、任意の低速で安定した動作とすることができるため、該ピストンロッドに連動した駆動部を介して作業装置を低速領域で安定した動作で制御できる。
【0010】
具体的には、作業装置が原子炉内にある場合、該装置の駆動部と直接連動する水圧シリンダから延びるヘッド側流路とロッド側流路とを長く設定することによって、水圧シリンダのみを原子炉内に配置し、主要な水圧回路と制御部は、原子炉外の放射線環境下から離れた位置に設置できる。これによって、本発明の水圧シリンダ駆動機構においては、ほとんど放射線の影響を受けることなく、長期にわたって安定した駆動が実現される。
【0011】
したがって、本発明の水圧回路の流路を構成する配管ホースには、強度と柔軟性とを併せ持ち、応答性の高いものが採用される。例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製、ナイロン製、ポリウレタン製等が好適である。
【0012】
また、本発明の水圧流路切換弁は、油圧系でなくエア圧操作によって切換駆動されるものとすることで、切換弁を介した水圧ラインへの圧油混入の危険が回避される。このエア圧操作は、制御部による操作弁の制御を介して行う構成が効率的であるため、前記水圧流路切換弁へエア圧を送るエア圧操作電磁弁を本発明の水圧回路に配置することが好ましい。
【0013】
同様に、水圧供給ポンプもエア駆動による気液変換型としても良い。この場合、操作電磁弁及び水圧供給ポンプも供に同一のエア供給源を利用でき、回路構成が簡便化できる。
【0014】
また、排水流路に配置される定量ポンプとしては、単位時間当たりの吐出回数を任意に設定制御できるものであれば良い。例えば、回転式の電磁定量ポンプであれば、インバータを介した周波数制御でモータ回転数を変更して単位時間当たりの吐出回数を任意に設定でき、簡便である。
【0015】
以上の水圧回路構成を備えた水圧シリンダ駆動機構において、作業装置の駆動部に連動するピストンロッドの移動速度を低速領域で安定に動作させるための制御方法としては、予め、速度設定工程にて、前記定量ポンプの単位時間当たりの吐出回数と前記水圧シリンダのピストンロッドの移動速度との関係を算出しておき、実際の水圧シリンダ駆動工程においては、制御部によって、指令された作業装置の駆動速度に相当する前記水圧シリンダのピストンロッドの移動速度に応じた前記単位時間当たりの吐出回数を前記速度設定工程の算出結果に基づいて選定し、前記定量ポンプの駆動を制御する。
【0016】
この水圧シリンダからの排水量を調整することによって、任意の低速で安定してピストンロッドを移動させることができ、作業装置の駆動部を低速領域で安定に動作させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水圧シリンダ駆動機構においては、以上説明した通り、作業装置を動作させる水圧シリンダのピストンロッドの移動速度を、シリンダ室からの排水流路に配置された定量ポンプの単位時間当たりの吐出回数の制御によって排水量を調整することで、任意の低速で安定した動作とすることができるため、装置の低速領域での水圧駆動が望まれる環境、例えば原子炉内や防爆環境等の特殊環境下で、その水圧シリンダのピストンロッドに連動した作業装置を所望の低速領域で安定した動作で制御できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による水圧シリンダ駆動機構の全体構成を示す水圧回路図である。
図2】本発明の水圧シリンダの切断装置に対する使用状況の例を示す概略模式図である。
図3】本発明の一実施例として、図1の水圧回路における水圧シリンダの速度設定工程としての微速動作試験の結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態としての水圧シリンダ駆動機構を、図1の水圧回路構成に示す。本実施形態による水圧シリンダ1は、例えば、図2に示すように、原子炉内にて、炉内構造物300に付着している燃料デブリを切断するためのアブレーシブウォータジェット(AWJ)切断装置200のヘッド駆動部にそのピストンロッド2が連動するものである。この場合、ピストンロッド2の移動によって、AWJ切断装置200のヘッド駆動部へ伝達された運動が該ヘッドの昇降あるいは回転動作に変換される。従って、ピストンロッド2の移動速度が切断装置200のヘッドの動作速度を決定付ける。
【0020】
図1の水圧回路に示すように、本実施形態の水圧シリンダ駆動機構は、駆動源に油圧を用いることなくエア圧及び水圧を用いることで、水圧シリンダへ送る作動水に圧油の混入を回避したものとした。即ち、本実施形態においては、エア供給部10からの供給エアによって、例えばダイヤフラム式の気液変換型の水圧供給ポンプPを駆動し、タンクTからの水を水圧シリンダ1へ供給する。
【0021】
具体的には、エア源11からの圧縮エアが、エアフィルタ12、エア圧レギュレータ13、ルブリケータ14から成るエア圧調整ユニット15を介して水圧供給ポンプPへ送られる。エア駆動された水圧供給ポンプPは、タンクTから吸い上げた水を逆止弁21および水圧レギュレータ22を介して給水流路23へ吐出する。給水流路23の下流には、水圧シリンダ1のピストンヘッド側シリンダ室3に連通するヘッド側流路25とピストンロッド側シリンダ室4に連通するロッド側流路26とを、給水流路23とタンクTへ戻る排水流路27との間で切換可能に接続する水圧流路切換弁24が配置されている。
【0022】
本実施形態では、この水圧流路切換弁24を、エアによって切換操作される一対のスプリングオフセットタイプの方向制御弁(24X,24Y)で構成している。水圧流路切換弁24の切換操作は、エア切換操作部41として、エア供給部10から水圧供給ポンプPの上流で分岐された操作エア供給路40に配置されたダブルソレノイド型のエア圧操作電磁弁43によって行われる。本実施形態では、エア切換操作部41において、操作エア供給路40を介してエア供給部10から供給されるエアをエア圧操作電磁弁43に対して供給及び停止する手動操作弁42を設けており、不操作時には、スプリングに抗して操作弁42を押してエア供給路不通状態で止め金を留めて置く。
【0023】
また、排水流路27には、タンクTの上流側から下流に向かって順に水圧レギュレータ28、定量ポンプ30およびバネ付き逆止弁31が配置されている。この定量ポンプ30によって、後述のように排水量が調整され、ピストンロッド2の移動速度が低速領域で制御される。また、定量ポンプ30の下流にバネ付き逆止弁31を更に備えることによって、タンクTからの逆流および、より低圧での排水漏れが防止できる。
【0024】
以上のエア源11、エア圧操作電磁弁43および定量ポンプ30は、予め定められた動作プログラムに沿って、それぞれコンピュータ等の制御部100からの指令に基づいて互いに連動して駆動制御される。
【0025】
なお、図1の水圧回路は、ピストンロッド2を前方に移動させる際の状態を示すものである。即ち、水圧シリンダ1におけるピストンロッド2の前方駆動を開始する場合には、まず手動操作弁42の止め金を外し、スプリングによってエア供給路接続位置が確保される。
【0026】
制御部100は、エア圧操作電磁弁43の両ソレノイドに対して通電制御して所望の移動量で該電磁弁43を駆動させ、操作エア供給路40を水圧流路切換弁24の一方の方向制御弁24Xの駆動流路に連通させた状態として、エア源11を駆動させる。これによって、圧縮エアによって方向制御弁(24X,24Y)がエア駆動され、ロッド側流路26が排水流路27に接続されると同時に、他方の方向制御弁24Yは、ヘッド側流路25が給水流路23に接続される位置付けとなる。
【0027】
そして、エア源11からエア圧調整ユニット15を介して供給された圧縮エアによって駆動された水圧供給ポンプPは、所定の吐出速度でタンクTからの水を給水流路23へ供給し、この水圧は、方向制御弁24Yを通ってヘッド側流路25を経て水圧シリンダ1のピストンヘッド側シリンダ室3内へ送られる。この水圧によってピストンヘッドが押圧され、ピストンロッド2を前方へ移動させ、これと同時に、ピストンロッド側シリンダ室4内の水は、ロッド側流路26を経て方向制御弁Xを通って排水流路27へ排出される。
【0028】
ただし、この排水流路27に配置された定量ポンプ30において、制御部100からの指令によって単位時間当たりの吐出回数が制御され、排水量は調整される。したがって、この排水量が適宜抑えられるように調整されることで、ピストンロッド2の移動速度が所望の低速に抑えられ、連動する原子炉内の切断装置の動作も安定した低速領域で制御される。また、ピストンロッド2を後退させる場合には、制御部100は、エア圧操作電磁弁43を駆動制御して水圧流路切換弁24を切り換えさせれば、位置移動した方向制御弁(24X,24Y)を介してロッド側流路26が給水流路23に接続されると同時にヘッド側流路25が排水流路27に接続される。そして、同様に、定量ポンプ30の単位時間当たりの吐出回数が制御され、ヘッド側シリンダ室3からの排水量が調整されることによって、ピストンロッド2の後退速度が所望の低速に抑えられ、切断装置の逆方向の動作も安定した低速領域で制御される。なお、定量ポンプ30の駆動を停止して排水を止めることによって、ピストンロッド2の移動を止めて切断装置の動作を任意の位置で停止させることもできる。
【実施例
【0029】
ここで、図1の水圧回路に示した実施形態による水圧シリンダの駆動機構において、排水流路の定量ポンプ30の単位時間当たりの吐出回数の制御による排水量の調整でピストンロッド2の低速移動制御が可能であることを示す実施例を以下に示す。
【0030】
即ち、図1の水圧回路において、外径4mm、内径2.5mmのPEEK製ホースによって水圧流路切換弁24から水圧シリンダ1まで長さ25mで流路を構成した場合で、電磁定量ポンプ30により0.1MPaで1回(1ショットとも記す)のポンプ吐出量0.05~0.11mLとしてそれぞれ1分間に5,10,25,50,100ショットにおけるピストンロッド2の移動距離から移動速度を求め、その結果を図3のグラフにプロットした。
【0031】
図3の結果から明らかなように、単位時間当たりのショット数とピストンロッドの移動速度との間には比例関係が見られた。この結果から、例えば、移動速度0.015mm/secという低速移動を行う場合には、制御部100は、定量ポンプ30の単位時間当たりの吐出回数を10ショット/minの設定とするように指令すればよい。
【0032】
このように、排水流路27に配置された定量ポンプ30を制御することによって、水圧シリンダ1からの排水量を調整し、ピストンロッド2の移動速度およびこれに連動する切断装置200の動作を低速度に制御することが可能となる。また、定量ポンプ30の駆動を停止して排水を止めることでピストンロッド2の移動を止めて切断装置の動作を任意の位置で停止させることもできる。
【0033】
以上の実施形態および実施例では、作業装置が切断装置である場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、溶接装置や各種計測装置など、水圧駆動で動作可能な様々な作業装置に有効である。また、PEEK製ホースによって流路を構成した場合を上記実施例で示したが、その他、ポリウレタン製やナイロン製ホースなどの素材や径、長さ、定量ポンプの種類等、燃料デブリ切断工程や溶接工程、計測工程などの実際の作業工程やそのために構築されるシリンダ駆動機構の構成に対応した条件で速度設定工程を実施し、求められる速度設定に応じた単位時間当たりの吐出回数を算出しておけば良い。
【0034】
また、図2の例では、水圧シリンダの原子炉内の水中での使用の場合を示したが、本発明の駆動機構によれば、これに限定されるものではなく、冷却水散布中や特定の雰囲気中、さらに防爆環境など、様々な状況の中で水圧シリンダを安定した低速度で動作させることができる。また、本発明の駆動機構は、水圧制御で使用するためのものであるが、回路構成自体は、環境に問題がなければ油圧制御に置き換えて使用することが可能である
【符号の説明】
【0035】
1:水圧シリンダ
P:水圧供給ポンプ
T:タンク
2:ピストンロッド
3:ピストンヘッド側シリンダ室
4:ピストンロッド側シリンダ室
10:エア供給部
11:エア源
12:エアフィルタ
13:エア圧レギュレータ
14:ルブリケータ
15:エア圧調整ユニット
21:逆止弁
22:水圧レギュレータ
23:給水流路
24:水圧流路切換弁
24X,24Y:方向制御弁
25:ヘッド側流路
26:ロッド側流路
27:排水流路
28:水圧レギュレータ
30:定量ポンプ
31:バネ付き逆止弁
40:操作エア供給路
41:エア切換操作部
42:手動操作弁
43:エア圧操作電磁弁
100:制御部
200:切断装置
300:炉内構造物
図1
図2
図3