(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】エレベーター制御盤用情報表示装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20221028BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20221028BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B66B1/34 A
B66B3/00 Q
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2019033015
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 幸雅
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-168507(JP,A)
【文献】特開2001-240316(JP,A)
【文献】特開2019-024239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/34
B66B 3/00
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターに供給される電力を投入又は遮断する電源部を備えた制御盤に取り付けられるエレベーター制御盤用情報表示装置であって、
前記電源部の投入状態及び遮断状態にそれぞれ対応した情報を表示する表示部と、
前記制御盤と通信して前記電源部の投入状態及び遮断状態を取得する通信部と、
前記通信部によって取得された前記電源部の投入状態及び遮断状態に対応した情報を表示させるように前記表示部を制御する制御部と、を備え
、
前記エレベーター制御盤用情報表示装置は、スマートフォンによって構成される、
エレベーター制御盤用情報表示装置。
【請求項2】
前記エレベーター制御盤用情報表示装置はマグネット付き保持部材によって前記制御盤の筐体に磁力によって取り付けられる、請求項
1に記載のエレベーター制御盤用情報表示装置。
【請求項3】
前記制御盤の電源部は、前記表示部から送信される電源部切替信号に基いて投入状態または遮断状態に切り替わるように構成されており、
前記制御部は、作業者が携帯する通信端末から前記電源部の状態を切り替える指令を前記通信部で受信したとき、当該指令に応じた電源部切替信号を前記通信部から前記制御盤に送信して前記電源部を投入状態または遮断状態に切り替える、請求項1に記載のエレベーター制御盤用情報表示装置。
【請求項4】
前記エレベーター制御盤用情報表示装置は、前記電源部が手動操作で切り替えられたとき前記制御部は前記通信端末においてアラーム音を発生させる指令を送信する機能を有する、請求項
3に記載のエレベーター制御盤用情報表示装置。
【請求項5】
前記エレベーター制御盤用情報表示装置は、所定の条件が満たされたとき、前記電源部が投入状態にあるか遮断状態にあるかを示す情報を前記通信部から作業者が携帯する通信端末に送信して当該通信端末の表示部に前記電源部の状態を表示させる機能を有する、請求項1に記載のエレベーター制御盤用情報表示装置。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記通信端末を携帯する作業者が前記制御盤に接近したとき、エレベーターのかご上又はピットに設置された安全スイッチが操作されたとき、作業者が前記通信端末を介して前記電源部の状態の問い合わせを行ったとき、の少なくとも1つである、請求項
5に記載のエレベーター制御盤用情報表示装置。
【請求項7】
前記エレベーター制御盤用情報表示装置は、前記通信端末の表示部に前記電源部の状態を表示させるとき当該表示内容に対応した音声メッセージを前記通信端末から発生させる機能を有する、請求項
5または
6に記載のエレベーター制御盤用情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター制御盤の電源部の状態を表示する情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターシステムの保守点検を行う際、各階の乗場に表示札を設置して現在エレベーターが使用できないことを乗客に知らせることが行われている。例えば、特許文献1には、エレベーター乗場の三方枠に取り付けられる表示札が記載されている。この表示札は、三方枠にマグネットにより取り付けられると、「定期点検中」と記載された文字表示に加えて、光や音声などによってエレベーターが点検中であることを乗客等に報知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エレベーターの保守点検作業を行う際、エレベーターの動作を統括制御する制御盤にも、電源投入中であるか電源遮断中であるかを表示する制御盤用表示札が取り付けられる。このような表示札を設置することで、保守点検を行う作業員が制御盤に設けられている電源部の状態を確認することができ、その結果、電源部の不用意な状態変更を防止して保守点検作業の安全性を高めている。
【0005】
しかしながら、現在の制御盤用表示札は、例えば、マグネット板の表裏面に「作業中」と「投入禁止」の文字表示が付してあり、このマグネット板を制御盤の磁性筐体に吸着させて取り付けて電源部の状態表示を行っていた。そのため、電源部の状態を切り替えた場合、表示札を制御盤の筐体から一旦取り外してから裏返して取り付け直すという手間が掛かっていた。また、電源部の状態を切り替えたときに表示札をひっくり返すのを忘れた場合には、電源部の状態と表示札の表示内容が一致しないことが起こり、保守点検作業の安全性が阻害されることになる。
【0006】
本発明の目的は、制御盤の電源部の状態表示の切替えに手間が掛からず、かつ、保守点検作業の安全性をより確実なものにできるエレベーター制御盤用情報表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置は、エレベーターに供給される電力を投入又は遮断する電源部を備えた制御盤に取り付けられるエレベーター制御盤用情報表示装置であって、前記電源部の投入状態及び遮断状態にそれぞれ対応した情報を表示する表示部と、前記制御盤と通信して前記電源部の投入状態及び遮断状態を取得する通信部と、前記通信部によって取得された前記電源部の投入状態及び遮断状態に対応した情報を表示させるように前記表示部を制御する制御部と、を備えるものである。
【0008】
この構成によれば、電源部の状態に対応した情報が表示部に自動的に表示されるため、従来のように表示札をひっくり返すといった手間が省け、保守点検作業の効率が向上する。また、電源部の状態と表示部に表示される情報が不一致となることがなく、保守点検作業の安全性をより確実なものにできる。
【0009】
本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置は、スマートフォンによって構成されてもよい。この構成によれば、保守点検作業を行う作業員に会社から貸与されて常時携帯しているスマートフォンを情報表示装置として用いることで、作業員が制御盤用表示札を持っていかずとも良く、作業員の携行物の数を減らすことができる、また、持っていくのを忘れるといったこともなくなる。
【0010】
また、本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置は、マグネット付き保持部材によって前記制御盤の筐体に磁力によって取り付けられてもよい。この構成によれば、制御盤の筐体に情報表示装置を容易に取り付けることができる。
【0011】
また、本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置において、前記制御盤の電源部は、前記表示部から送信される電源部切替信号に基いて投入状態または遮断状態に切り替わるように構成されており、前記制御部は、作業者が携帯する通信端末から前記電源部の状態を切り替える指令を前記通信部で受信したとき、当該指令に応じた電源部切替信号を前記通信部から前記制御盤に送信して前記電源部を投入状態または遮断状態に切り替えてもよい。この構成によれば、作業員は制御盤が設置されている機械室やピットに行かなくても電源部の切替えが可能になり、保守点検作業の効率を大幅に向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置は、前記電源部が手動操作で切り替えられたとき前記制御部は前記通信端末においてアラーム音を発生させる指令を送信する機能を有してもよい。この構成によれば、作業者は電源部の状態変更がなされたことをアラーム音によって確認することができ、保守点検作業の安全性向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置は、所定の条件が満たされたとき、前記電源部が投入状態にあるか遮断状態にあるかを示す情報を前記通信部から作業者が携帯する通信端末に送信して当該通信端末の表示部に前記電源部の状態を表示させる機能を有してもよい。この構成によれば、所定条件を満たすときに作業員は常に携帯する通信端末を用いて制御盤の電源部の状態確認を行うことができ、保守点検作業の安全性及び作業効率の向上を図ることができる。
【0014】
この場合、前記所定の条件は、前記通信端末を携帯する作業者が前記制御盤に接近したとき、エレベーターのかご上又はピットに設置された安全スイッチが操作されたとき、作業者が前記通信端末を介して前記電源部の状態の問い合わせを行ったとき、の少なくとも1つであってもよい。
【0015】
さらに、本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置は、前記通信端末の表示部に前記電源部の状態を表示させるとき当該表示内容に対応した音声メッセージを前記通信端末から発生させる機能を有してもよい。この構成によれば、作業員は、電源部の状態を表示部の表示内容と音声メッセージの両方で確認することができ、電源部の状態確認をより確実なものにできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置によれば、制御盤の電源部の状態表示の切替えに手間が掛からず、かつ、保守点検作業の安全性をより確実なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態であるエレベーター制御盤用情報表示装置が設置されたエレベーターの全体構成を示す図である。
【
図2】エレベーター制御盤用情報表示装置が設置された制御盤の斜視図である。
【
図3】エレベーター制御盤用情報表示装置とマグネット付き保持部材を示す斜視図である。
【
図4】エレベーター制御盤用情報表示装置の表示部に(a)作業中、または(b)投入禁止の文字表示がされている状態を示す図である。
【
図5】制御盤及び通信端末と通信するエレベーター制御盤用情報表示装置の機能ブロック図である。
【
図6】通信端末であるスマートフォンの表示部に表示された電源部切替画面を示す図である。
【
図7】エレベーター制御盤用情報表示装置の表示部に(a)電源投入中、または(b)電源遮断中の文字表示がされている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態であるエレベーター制御盤用情報表示装置(以下、適宜に「情報表示装置」とだけいう。)20が設置されたエレベーター10の全体構成を示す図である。
【0020】
エレベーター10は、昇降路12内に配置された乗りかご14を備える。乗りかご14の天井部には、複数本のロープ16の各一端部が連結されている。複数本のロープ16は、昇降路12の天井部に形成された開口部13を介して機械室1内に延伸している。
【0021】
機械室1には、エレベーター10の乗りかご14を昇降動作させるモータ2が設置されている。モータ2の回転軸には、綱車3が固定されている。複数本のロープ16は、機械室1内において綱車3の外周面の上側に半周にわたって巻き掛けられている。複数本のロープ16の他端側は機械室1内の綱車3から垂下して、各他端部が釣合錘18に連結されている。
【0022】
機械室1には、制御盤4が設置されている。制御盤4は、エレベーター10に供給される電力を投入又は遮断する電源部5を備える。また、制御盤4は、エレベーター10全体の動作を制御及び監視する機能を有している。制御盤4によってモータ2が駆動されることで、乗りかご14が昇降路12内で昇降移動するようになっている。
【0023】
なお、上記においては、昇降路12の上方位置に設けられた機械室1に制御盤4が設置されている例について説明したが、これに限定されるものではない。機械室がないMRL(Machine Room Less)型のエレベーターでは、
図1において一点鎖線で示すように、制御盤4は、昇降路12の底部または最下部であるピット15に設置されてもよい。
【0024】
乗りかご12の天井上には、安全スイッチ17が設置されている。安全スイッチ17は、エレベーター10の保守点検作業を行う作業員Mがオン操作すると、乗りかご12が移動しない(すなわちモータ2の駆動が制限される)ようにするためのスイッチである。なお、安全スイッチ17は、乗りかご14上で作業員Mが乗りかご14を手動操作で上下移動させる際に使用する操作スイッチにストップボタンとして設けられてもよい。また、ピット15で作業する作業員Mが乗りかご14が移動しないように運転停止させることができるように、安全スイッチをピット15にも設置してもよい。
【0025】
図2は、情報表示装置20が設置された制御盤の斜視図である。
図3は、情報表示装置20とマグネット付き保持部材を示す斜視図である。制御盤4は、磁性筐体4aを有している。電源部5は、磁性筐体4aの前面に露出した状態で設けられている。電源部5は、上下方向に揺動操作可能な操作レバー5aを有する。操作レバー5aが
図2に示すように上方位置に操作されると、エレベーター10に電力が投入された状態となり、エレベーター10が運転可能になる。他方、電源部5の操作レバー5aが下方位置に操作されると、エレベーター10への電力が遮断された状態になり、この状態ではエレベーター10は運転不能な状態になる。
【0026】
制御盤4の磁性筐体4aの前面であって電源部5の側方位置に、情報表示装置20が取り付けられている。情報表示装置20は、例えば、作業員Mが携帯するスマートフォンによって構成されてもよい。この場合、情報表示装置20は、
図3に示すように、保持部材30に嵌め込まれて保持された状態として、保持部材30に固定されたマグネット32の磁力によって制御盤4の磁性筐体4aに吸着して取り付けられる。
【0027】
このように情報表示装置20をスマートフォンによって構成すれば、保守点検作業を行う作業員Mに会社から貸与されて常時携帯しているスマートフォンを情報表示装置として用いることで、作業員が制御盤用表示札を持っていかずとも良く、作業員の携行物の数を減らすことができる、また、持っていくのを忘れるといったこともなくなる。
【0028】
作業員Mは、スマートフォンからなる情報表示装置20をマグネット付きの保持部材30に嵌め込んだ状態で常時携帯していてもよい。或いは、マグネット付き保持部材30は、制御盤4の磁性筐体4aに吸着させた状態で常設しておき、保守点検作業時に作業員Mが情報表示装置20を嵌め込んで使用してもよい。保持部材30の形状は、
図3に示すようなスマートフォンケースのような形状でなくてもよく、情報表示装置20を保持できればどのような形状であってもよい。
【0029】
図4は、情報表示装置20の表示部22に(a)作業中、または(b)投入禁止の文字表示がされている状態を示す図である。
図3及び
図4に示すように、情報表示装置20は、表示部22を備える。表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどによって好適に構成される。表示部22は、電源部5の投入状態及び遮断状態にそれぞれ対応した情報を表示することができる。具体例として、電源部5が投入状態にあるとき、
図4(a)に示すように、表示部22には「注意 作業中 責任者○○○○」の文字情報が表示され、電源部5が遮断状態にあるときには
図4(b)に示すように表示部22には「注意 投入禁止 責任者○○○○」の文字情報が表示される。ここで、「責任者○○○○」は、保守点検作業を行う作業員Mのうち、電源部5の状態を投入又は遮断に切り替える権限を有する者の氏名である。なお、作業員Mが1人である場合は、その者が当然に責任者となる。
【0030】
図4(a),(b)に示すように、表示部22の下端部分には、スライドバー24が表示されている。このスライドバー24をタッチ操作によりスライドさせることによって、表示部22の表示内容を切り替えることができる。具体的には、
図4(a)に示す状態でスライドバー24を左方向にスライドさせると、表示部22の表示内容が
図4(b)に示す表示内容に切り替わり、逆に、
図4(b)に示す状態でスライドバー24を右方向にスライドさせると、表示部22の表示内容が
図4(a)に示す表示内容に切り替わる。このように本実施形態の情報表示装置20によれば、表示内容を切り替える場合に従来のように表示札を一旦取り外して裏返して取り付けなおすといった手間が掛からず、電源部5の状態を表す表示内容を容易に切り替えることができる。
【0031】
図5は、制御盤4及び通信端末40と通信する情報表示装置20の機能ブロック図である。
図5に示す例では、作業員Mは保守点検作業中もスマートフォン(通信端末)40を携帯しており、制御盤4に取り付けられる情報表示装置20は例えばタブレット型端末のような別の装置によって構成される。
【0032】
図5に示すように、制御盤4は、駆動部6及び通信部7を備えている。駆動部6は、通信部7によって受信される電源部切替振動を受けて、電源部5の状態を切り替える機能を有する。具体的には、駆動部6は動力源として例えばモータ(図示せず)を有しており、このモータの駆動力によって電源部5の操作レバー5aを投入状態から遮断状態に、または、遮断状態から投入状態に切替操作することができる。
【0033】
通信部7は、情報表示装置20から電源部切替信号を受信するとともに、電源部5の状態を表す信号を情報表示装置20へ送信することができる。通信部7は、情報表示装置20との通信性能を確保するため、磁性筐体4aの前面に露出して設けられているのが好ましい。制御盤4の通信部7と情報表示装置20とは近接して配置されるため、両者間の通信方式には例えばブルートゥース(登録商標)等の近距離通信方式を好適に用いることができる。
【0034】
情報表示装置20は、表示部22、制御部26および通信部28を備える。表示部22は、
図4(a),(b)を参照して上述したように、投入状態または遮断状態を表す表示を行うことができる。
【0035】
制御部26は、通信部28によって取得された電源部5の投入状態及び遮断状態に対応した情報を表示させるように表示部22を制御する機能を有する。通信部28は、制御盤4の通信部7と通信して電源部5の投入状態及び遮断状態を取得する機能を有する。制御部26は、制御盤4の通信部7から電源部5が投入状態にあることを表す投入状態信号を受信したとき、表示部22に
図4(a)に示す表示内容を表示させるように制御する。他方、制御部26は、制御盤4の通信部7から電源部5が遮断状態にあることを表す遮断状態信号を受信したとき、表示部22に
図4(b)に示す表示内容を表示させるように制御する。
【0036】
このように本実施形態の情報表示装置20によれば、制御盤4の電源部5の状態に対応した情報が表示部22に自動的に表示されるため、従来のように表示札をひっくり返すといった手間が省け、保守点検作業の効率が向上する。また、電源部5の状態と表示部に表示される情報が不一致となることがなく、保守点検作業の安全性をより確実なものにできる。
【0037】
情報表示装置20の通信部28は、作業員Mが携帯するスマートフォン40とも通信することができる。作業員Mのうち電源部5の切替えについての権限を有する責任者(以下、作業責任者Mという。)は、自分のスマートフォン40を用いて制御盤4の電源部5の状態を切り替えることができる。
【0038】
図6は、通信端末であるスマートフォン40の表示部42に表示された電源部切替画面を示す図である。作業責任者Mは、保守点検作業用の専用アプリを立ち上げて、
図6に示すように表示部42に電源部切替画面を表示させる。この電源部切替画面には、電源部5の現在の状態が表示されている。具体例として、電源部表示画面には、「投入中」および「遮断中」の文字がそれぞれ枠44,46で囲まれて表示され、現在状態である投入中を示す文字を囲む枠44内が例えば赤色等の目立つ色で点灯した状態となっている。この状態で、作業責任者Mは、遮断中の文字を囲む枠46内をタッチ操作すると、スマートフォン40から情報表示装置20に電源部5を遮断する指令が送信される。
【0039】
この指令を通信部28で受信した情報表示装置20では、制御部26が、電源部遮断を要求する電源部切替信号を生成して通信部28から制御盤4に送信する。その結果、制御盤4では、電源部5を遮断する旨の電源部切替信号を受けて駆動部6が駆動され、電源部5が投入状態から遮断状態に切り替えられる。
【0040】
制御盤4の電源部5が投入状態から遮断状態に切り替わると、その遮断状態を示す状態信号が通信部7から情報表示装置20を介して作業責任者Mのスマートフォン40に送信される。これにより、スマートフォン40の表示部42に表示されている電源部切替画面において遮断中の文字を囲む枠46内が例えば赤色に点灯し、投入中の文字を囲む枠44内は枠外と同色の例えば白色点灯状態に切り替わる。これにより、作業責任者Mは、電源部5が遮断状態に切り替わったことを確認することができる。
【0041】
作業責任者Mは、電源部切替画面を用いて同様の操作で制御盤4の電源部5を遮断状態から投入状態に切り替えることができる。
【0042】
このように本実施形態の情報表示装置20によれば、作業責任者Mのスマートフォン40を用いて遠隔操作で制御盤4の電源部5の状態を切り替えることができる。したがって、作業責任者Mは制御盤4が設置されている機械室1やピット15に行かなくても電源部5の切替えが可能になり、保守点検作業の効率を大幅に向上させることができる。
【0043】
なお、情報表示装置20の制御部26は、電源部5の状態切替指令を受信したとき、当該状態切替指令を送信したスマートフォン40が作業責任者Mのものであるか否かを判定するために、例えばパスコードを入力させる等の認証画面をスマートフォン40の表示部42に表示させるのが好ましい。
【0044】
情報表示装置20は、所定の条件を満たすとき、電源部5が投入状態にあるか遮断状態にあるかを示す情報を通信部28から作業者が携帯するスマートフォン40に送信して当該スマートフォン40の表示部42に電源部5の状態を表示させる機能を有してもよい。
【0045】
ここで、上記「所定の条件」は、スマートフォン40を携帯する作業員Mが制御盤4に接近したとき、エレベーター10の乗りかご14上又はピット15に設置された安全スイッチ17が操作されたとき、作業員Mがスマートフォン40を介して電源部5の状態の問い合わせを行ったとき、の少なくとも1つであってもよい。安全スイッチ17の操作信号は制御盤4に入力されるので、情報表示装置20は、制御盤4の通信部7を介して安全スイッチ17の操作信号を受信することができる。また、作業員Mが情報表示装置20に接近したか否かは、情報表示装置20がスマートフォン40との間で例えばブルートゥース(登録商標)等での近距離通信が可能になったとき作業員Mが所定距離内に接近したと判定することができる。さらに、作業員Mのスマートフォン40を介しての問合せは、上記専用アプリ内に設けられている問合せ画面のタッチ操作で行ってもよいし、スマートフォン40の音声入力機能を利用して問合せを行ってもよい。
【0046】
このような情報表示装置20の機能によって、作業員Mのスマートフォン40の表示部42には
図7(a),(b)に示すように表示される。具体例として、電源部5が投入状態にあるとき表示部42には
図7(a)に示すように「ただ今、電源投入中です」と表示され、電源部5が遮断状態にあるとき表示部42には
図7(b)に示すように「ただ今、電源遮断中です」と表示される。このように表示されるとき、スマートフォン40から同じ内容の音声メッセージを発生させることが好ましい。
【0047】
上記のように作業員Mがスマートフォン40を用いて電源部5の状態を確認できることで、保守点検作業の安全性向上を図ることができる。また、表示部42での表示に加えて音声メッセージを発生させることで、視覚及び聴覚の両方で電源部5の状態を認識することができ、保守点検作業の安全性をより一層向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る情報表示装置20は、電源部5の操作レバー5aが手動操作で切り替えられたとき制御部26はスマートフォン40においてアラーム音を発生させる指令を送信する機能を有してもよい。このようにすれば、作業員Mは電源部5の状態変更がなされたことをアラーム音によって確認することができ、保守点検作業の安全性向上を図ることができる。
【0049】
なお、本発明に係るエレベーター制御盤用情報表示装置は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更や改良が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
1 機械室、2 モータ、3 綱車、4 制御盤、4a 磁性筐体、5 電源部、5 a 操作レバー、6 駆動部、7,28 通信部、10 エレベーター、12 昇降路 、13 開口部、15 ピット、16 ロープ、17 安全スイッチ、18 釣合錘、 20 エレベーター制御盤用情報表示装置、22,42 表示部、24 スライドバー 、26 制御部、30 マグネット付き保持部材、32 マグネット、40 スマート フォン(通信端末)、44,46 枠、M 作業員または作業責任者。