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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20221028BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20221028BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20221028BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20221028BHJP
   C04B 41/89 20060101ALI20221028BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20221028BHJP
   C04B 38/00 20060101ALN20221028BHJP
【FI】
B01J35/02 G
B01J32/00
B01J27/224 A
C04B35/577
C04B41/89 Z
C04B41/85 D
C04B38/00 303Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019034935
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2019181457
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2018077842
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木俣 貴文
(72)【発明者】
【氏名】冨田 崇弘
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198318(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038449(WO,A1)
【文献】特開2014-051402(JP,A)
【文献】特開2011-246340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C04B 35/577
C04B 41/89
C04B 41/85
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側壁と、外周側壁の内側に配設され、一方の底面から他方の底面まで流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有する柱状のハニカム構造部、及び、当該柱状のハニカム構造部の外周側壁の外面に、少なくとも一つの電極部を備え、
柱状のハニカム構造部は、Si及びSiCの一方又は両方を含有するセラミックスで形成されており、
電極部は、酸化物に加えて、金属及び金属化合物の一方又は両方を含有し、
電極部の内周側における酸化物の体積割合は、電極部の外周側における酸化物の体積割合よりも高く、電極部の内周側における酸化物の体積割合と、電極部の外周側における酸化物の体積割合の差が5%以上である、
ハニカム構造体。
【請求項2】
電極部の内周側における酸化物の体積割合と、電極部の外周側における酸化物の体積割合の差が10%以上である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
電極部の内周側における酸化物の体積割合が65%以上である請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
電極部の外周側における酸化物の体積割合が80%以下である請求項1~3の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
電極部の平均厚みが25~300μmである請求項1~4の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
電極部は、B、Mg、Al、Si、P、Ti及びZrよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物を含有する請求項1~5の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
電極部は、Mg、Al及びSiよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物を含有する請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
電極部内の酸化物の少なくとも一部が結晶質である請求項1~7の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
電極部が含有する金属及び金属化合物の一方又は両方は、ステンレス鋼、ニッケル-クロム合金、TaC、TiN及びZrB2よりなる群から選択される一種又は二種以上である請求項1~8の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
電極部が含有する金属及び金属化合物の一方又は両方は、アスペクト比が2~100である扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子を含む請求項1~9の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
通電抵抗が40Ω以下である請求項1~10の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
柱状のハニカム構造部における酸化物の体積割合が、電極部の内周側における酸化物の体積割合よりも低い請求項1~11の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
柱状のハニカム構造部における酸化物の体積割合が、35%以下である請求項1~12の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項14】
柱状のハニカム構造部における金属珪素の体積割合が20%以上である請求項1~13の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハニカム構造体に関する。とりわけ、本発明は触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能することができるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス製のハニカム構造体は、排ガス浄化用の電気加熱式触媒(EHC)及びセラミックヒータの基材等として用いられている。このような用途においては、ハニカム構造体に対して金属端子を接続し、電圧を印加することで、ハニカム構造体を加熱する操作を伴う。例えば、EHCは、自動車等の排気経路中に設けられ、エンジンから排出される排気ガスを浄化する排気浄化装置である。このEHCには、触媒が担持されており、EHCを加熱することにより、活性化に必要な温度まで触媒が加熱される。
【0003】
ハニカム構造体はセラミックスでできているため、金属端子とハニカム構造体の接続は、ハニカム構造体の外周側面に形成した金属成分を含有する電極部を介して行うことが多い。この際、ハニカム構造体と電極部の間の接合信頼性が従来問題とされてきた。
【0004】
特開2014-51402号公報(特許文献1)では、金属Siを含むハニカム状のセラミック体と、このセラミック体の外周壁に接合された接合部とを備えるハニカム構造体が提案されている。この接合部は、セラミック体とワイヤハーネス等の金属材料とを良好に接合するための部材である。接合部は、セラミック体の外周面(側面)側に位置する金属シリサイドを主成分とする拡散層と、この拡散層上に形成された金属層とを備えている。接合部の拡散層とセラミック体とは強固に接合し、接合部の金属層を構成する主成分は金属成分であることから、上記金属材料と接合部の金属層が良好に接合すると記載されている。
【0005】
また、特開2011-230971号公報(特許文献2)では、高温環境下において、耐熱性及び接合信頼性を確保することができると共に、オーミックコンタクト性の確保を目的としたセラミックスと金属の接合体が提案されている。具体的には、少なくともSiを含む化合物からなるセラミック体と、該セラミック体の表面に接合された金属体との接合体であって、上記金属体は、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素(例:Fe、Mo、Ni、及びW)とを少なくとも含有し、かつ熱膨張係数が11×10-6/℃以下であり、上記セラミック体と上記金属体との接合界面には、SiとCrと上記金属元素とを含有する拡散接合領域が形成されていることを特徴とする接合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-51402号公報
【文献】特開2011-230971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、セラミック体の側面上に、金属成分を含有する接合部形成用の原料を配置し、加圧焼成することによって、接合部を形成するための原料中の金属成分とセラミック体中の金属Siが互いに混ざり合い、反応することで拡散層が形成される。
特許文献2によれば、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下の金属を、Siを含む化合物からなるセラミック体の表面に配設した状態で加熱することにより、上記セラミック体の表面に上記金属体を接合形成すると共に、該金属体と上記セラミック体との接合界面に、SiとCrと上記金属の元素とを含有する拡散接合領域が形成される。
【0008】
何れの文献においても、セラミック体中のSiと、接合部又は金属体中の金属成分とを相互拡散させることで接合信頼性を高めた技術といえる。しかしながら、拡散層又は拡散接合領域は薄ければ接合強度を向上させる効果を発揮するかもしれないが、セラミック体との熱膨張差や拡散層形成時の体積変化によって初期強度が確保できないことやハニカム構造体に対して通電加熱を繰り返すうちに、長期的に拡散層又は拡散接合領域が成長し続けると、接合部又は金属体がセラミック体から剥離し、通電抵抗が上昇する懸念がある。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、従来とは異なるアプローチによってハニカム構造と電極部の間の接合信頼性を向上することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、電極部の内周側であって、ハニカム構造体の外周側壁との界面付近に、拡散防止のための高酸化物濃度領域を設けることが有効であることを見出した。本発明は当該知見を基礎として完成したものであり以下に例示される。
【0011】
[1]
外周側壁と、外周側壁の内側に配設され、一方の底面から他方の底面まで流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有する柱状のハニカム構造部、及び、当該柱状のハニカム構造部の外周側壁の外面に、少なくとも一つの電極部を備え、
柱状のハニカム構造部は、Si及びSiCの一方又は両方を含有するセラミックスで形成されており、
電極部は、酸化物に加えて、金属及び金属化合物の一方又は両方を含有し、
電極部の内周側における酸化物の体積割合は、電極部の外周側における酸化物の体積割合よりも高い、
ハニカム構造体。
[2]
電極部の内周側における酸化物の体積割合と、電極部の外周側における酸化物の体積割合の差が5%以上である[1]に記載のハニカム構造体。
[3]
電極部の内周側における酸化物の体積割合が65%以上である[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
[4]
電極部の外周側における酸化物の体積割合が80%以下である[1]~[3]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[5]
電極部の平均厚みが25~300μmである[1]~[4]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[6]
電極部は、B、Mg、Al、Si、P、Ti及びZrよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物を含有する[1]~[5]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[7]
電極部は、Mg、Al及びSiよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物を含有する[6]に記載のハニカム構造体。
[8]
電極部内の酸化物の少なくとも一部が結晶質である[1]~[7]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[9]
電極部が含有する金属及び金属化合物の一方又は両方は、ステンレス鋼、ニッケル-クロム合金、TaC、TiN及びZrB2よりなる群から選択される一種又は二種以上である[1]~[8]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[10]
電極部が含有する金属及び金属化合物の一方又は両方は、アスペクト比が2~100である扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子を含む[1]~[9]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[11]
通電抵抗が40Ω以下である[1]~[10]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[12]
柱状のハニカム構造部における酸化物の体積割合が、電極部の内周側における酸化物の体積割合よりも低い[1]~[11]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[13]
柱状のハニカム構造部における酸化物の体積割合が、35%以下である[1]~[12]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
[14]
柱状のハニカム構造部における金属珪素の体積割合が20%以上である[1]~[13]の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るハニカム構造体の一実施形態によれば、ハニカム構造と電極部の間の初期及び長期的な接合信頼性が向上する。これにより、例えば、長期間使用しても電気抵抗が上昇しにくい、耐久性に優れたEHC及びセラミックヒータが提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明に係るハニカム構造体の一実施形態の外周側壁と電極部の接合状態を説明する断面模式図である。
図3】通電抵抗を測定する方法を説明する模式図である。
図4】電極部とハニカム構造部の外周側壁との界面の特定方法の例を示すSEM像である。
図5】接合信頼性試験を行うための試験用ハニカム構造部の作製手順を説明するための模式図である。
図6】試験用積層体の積層構造を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1)ハニカム構造体
図1は、本発明に係るハニカム構造体の一実施形態を概略的に示す斜視図である。図2は、本発明に係るハニカム構造体の一実施形態の外周側壁と電極部の接合状態を説明する断面模式図である。本発明のハニカム構造体100は一実施形態において、外周側壁112と、外周側壁112の内側に配設され、一方の底面114から他方の底面116まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁118とを有する柱状のハニカム構造部110、及び、前記柱状のハニカム構造部110の外周側壁112の外面に接合された少なくとも一つの電極部120を備える。電極部120は、酸化物の体積割合の高い内周側120aと、酸化物の体積割合の低い外周側120bを有する。
【0016】
(1-1 ハニカム構造部)
柱状のハニカム構造部は、電気加熱に有利であるため、Si(金属珪素)及びSiC(炭化珪素)の一方又は両方を含有するセラミックスで形成される。Si及びSiCの一方又は両方を含有するセラミックスとしては、例えば、珪素-炭化珪素複合材、珪素-酸化物複合材料、炭化珪素-酸化物複合材料、及び珪素-炭化珪素-窒化珪素複合材料が挙げられる。なお、本発明においては、Siのみで柱状のハニカム構造部が形成される場合も、焼結体である限りセラミックスと呼ぶことにする。
【0017】
柱状のハニカム構造部は、電気加熱に有利であるため、Si及びSiCの合計体積割合が、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更により好ましく、95%以上であることが更により好ましい。
【0018】
ハニカム構造部に含有させることのできる他のセラミックスとしては、限定的ではないが、コーディエライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア等のセラミックスが挙げられる。これらの他のセラミックスは、1種のみを使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
ハニカム構造部を形成するセラミックス中のSiの体積割合は例えば1~100%とすることができる。当該セラミックス中のSiの体積割合は、シリコンは低温で溶融して導電経路を形成しやすいため、好ましくは20%以上であり、より好ましくは40%以上であり、更により好ましくは90%以上である。
【0020】
ハニカム構造部を形成するセラミックス中のSiCの体積割合は例えば0~99%とすることができる。SiCは溶融温度が高いことから、SiC同士の結合により導電経路を形成するためには高温が必要となる。そこで、低温でも導電経路を容易に形成するという観点からは、当該セラミックス中のSiCの体積割合は低いほうが好ましい。具体的には、当該セラミックス中のSiCの体積割合は、好ましくは70%以下であり、より好ましくは50%以下であり、更により好ましくは5%以下である。
【0021】
ハニカム構造部を形成するセラミックス中には、酸化物が含有されていてもよい。酸化物としては特に制限はないが、B、Mg、Al、Si、P、Ti及びZrよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物が挙げられる。酸化物の中では、Mg、Al及びSiよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物が、低熱膨張の観点から好ましい。酸化物の具体例としては、MgO、SiO2、及びAl23等の一種の元素の酸化物の他、MgO、SiO2及びAl23の化合物である2MgO・2Al23・5SiO2(コーディエライト)や、Al23及びTiO2の化合物であるAlTiO5(チタン酸アルミニウム)等の二種以上の元素の酸化物(複合酸化物)が挙げられる。酸化物は一種を単独で使用しても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。但し、当該セラミックス中の酸化物の体積割合は、高くなると通電を阻害するため、60%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。当該セラミックス中の酸化物の体積割合は、後述する電極部の内周側における酸化物の体積割合よりも低くすることもできる。
【0022】
ハニカム構造部110の熱膨張率は、耐熱衝撃性の観点から、3.5~6.0ppm/Kが好ましく、3.5~4.5ppm/Kがさらに好ましい。本明細書において、熱膨張率は、特に断りのない限り、JIS R1618:2002に準拠した方法により測定される25~800℃の線熱膨張係数を指す。熱膨張計としては、BrukerAXS社製の「TD5000S(商品名)」を用いることができる。
【0023】
ハニカム構造部は、一対の電極部間に電圧を印加すると通電してジュール熱により発熱することが可能である。よって、ハニカム構造体はヒーターとして好適に用いることができる。印加する電圧は12~900Vが好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。また、ハニカム構造部に触媒を担持することにより、ハニカム構造体をEHCとして使用することが可能である。
【0024】
ハニカム構造部は、ジュール熱により発熱することができれば、その体積抵抗率については特に制限はない。ハニカム構造部の体積抵抗率は、ハニカム構造体を使用する用途に合わせて適宜選択すればよい。例示的には、ハニカム構造部の体積抵抗率は、0.01~200Ωcmとすることができ、0.05~50Ωcmであることが好ましく、0.1~5Ωcmであることが更に好ましい。ここでのハニカム構造部の体積抵抗率は、四端子法により室温(25℃)で測定した値である。
【0025】
隔壁は多孔質とすることができる。この場合、ハニカム構造部の隔壁の気孔率は特に制限はないが、例えば35~60%とすることができ、35~45%であることが好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0026】
ハニカム構造部の隔壁の平均細孔径は特に制限はないが、例えば2~15μmとすることができ、3~8μmであることが好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0027】
ハニカム構造部における隔壁118の厚みは、例えば0.1~0.3mmとすることができ、0.1~0.15mmであることが好ましい。
【0028】
セル密度は、セルの流路方向に直交する断面において、例えば40~150セル/cm2とすることができ、60~100セル/cm2であることが好ましい。
【0029】
セルの流路方向に直交する断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0030】
ハニカム構造部の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造部の大きさは、耐熱衝撃性の観点から、底面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、4000~15000mm2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造部の中心軸方向の長さは、耐熱衝撃性の観点から、30~200mmであることが好ましく、30~120mmであることが更に好ましい。
【0031】
(1-2 電極部)
本実施形態に係るハニカム構造体100は、柱状のハニカム構造部110の外周側壁112の外面に接合された少なくとも一つの電極部120を備える。好ましい実施形態においては、一対の電極部120が、ハニカム構造部110の中心軸を挟んで、ハニカム構造部110の外周側壁112の外面にセルの流路方向に帯状に延設される。これにより、ハニカム構造体100は、一対の電極部120間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部110内を流れる電流の偏りを抑制することができ、ハニカム構造部110内の温度分布の偏りを抑制することができる。電極部120には、端子の接続を容易にするための端子接続部122を設けてもよい。
【0032】
電極部は、酸化物を含有することができる。電極部が含有する酸化物としては、特に制限はないが、B、Mg、Al、Si、P、Ti、Zr、Pb、Li、Na、Ba、Ca、Fe及びSrよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物が挙げられ、好ましくはB、Mg、Al、Si、P、Ti及びZrよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物が挙げられる。酸化物の中では、Mg、Al及びSiよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物が、低熱膨張の観点からより好ましい。酸化物の具体例としては、MgO、SiO2、及びAl23等の一種の元素の酸化物の他、MgO、SiO2及びAl23の化合物である2MgO・2Al23・5SiO2(コーディエライト)や、MgO-SiO-Al23-B23のようなコーディエライトを主成分とする結晶化ガラス、Al23及びTiO2の化合物であるAlTiO5(チタン酸アルミニウム)等の二種以上の元素の酸化物(複合酸化物)が挙げられる。高温耐久性を高める観点からは、電極部内の酸化物の少なくとも一部が結晶質であることが好ましい。酸化物は一種を単独で使用しても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0033】
電極部が含有する酸化物の少なくとも一部、特に電極部の内周側が含有する酸化物の少なくとも一部は、原料段階においてガラスであることが好ましい。ガラスは、柱状のハニカム構造部の外周側壁の外面と低温で濡れやすく、接合強度を向上させるためである。この観点から、電極部、とりわけ電極部の内周側は、ガラス化しやすいSi、P及びBよりなる群から選択される一種又は二種以上の元素の酸化物を含有することが好ましい。低温で軟化できるようにするため、ガラスの軟化点は1600℃以下であることが好ましく、1200℃以下であることがより好ましい。高温耐久性を高める観点からは、電極部内の酸化物の少なくとも一部は結晶化ガラスを含有することが好ましい。
【0034】
電極部は、酸化物に加えて、金属及び(酸化物以外の)金属化合物の一方又は両方を含有することができる。一実施形態において、電極部は、酸化物相と、当該酸化物相中に分散する金属及び金属化合物の一方又は両方で構成された分散相とを含有する。
【0035】
金属としては、特に制限はないが、Fe、Cr、Ni、Pt、Ru、Mo及びWが挙げられる。電極部は、これらの金属の少なくとも一種を合金元素とする合金を含有していてもよい。金属化合物としては、CrB、CrB2、ZrB2、TaB2、NbB2、WB及びMoB等の金属ホウ化物、WC、Mo2C、TiC、SiC及びTaC等の金属炭化物、TiN、ZrN、NbN、TaN、Cr2N及びVN等の窒化物、TiSi2、Ti5Si3、ZrSi2、TaSi2、NbSi2、CrSi2、WSi2、MoSi2、VSi2、FeSi2、Ni2Si、CoSi2等の金属ケイ化物が挙げられる。金属及び金属化合物は一種を単独で使用しても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。好ましい一実施形態においては、電極部が含有する金属及び金属化合物の一方又は両方は、ステンレス鋼、ニッケル-クロム合金、TaC、TiN及びZrB2よりなる群から選択される一種又は二種以上とすることができる。
【0036】
分散相を構成する金属及び/又は金属化合物の粒子形状には、特に制限はない。しかしながら、好ましい実施形態において、分散相は、アスペクト比が2~100である扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子を含有する。分散相における、アスペクト比が2~100である扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子の含有割合は好ましくは30体積%以上であり、より好ましくは50体積%以上であり、更により好ましくは70体積%以上であり、最も好ましくは90体積%以上である。アスペクト比は、測定対象となる金属又は金属化合物の粒子を含む電極部を、セルの流路方向に直交する断面で観察し、電極部の厚み方向における当該粒子のフェレー径L1に対する、当該厚み方向に垂直な方向における粒子のフェレー径L2の比(L2/L1)を指す。なお、電極部の厚み方向の定義は後述する。
【0037】
分散相がこのような扁平状の粒子を含有することで、電極部の厚み方向に垂直な方向における電気抵抗を低下しやすいので、金属及び/又は金属化合物の体積割合を低くしても(換言すれば、酸化物の体積割合を高くしても)、ハニカム構造部内を流れる電流分布を広げやすいという利点が得られる。電極部の酸化物の体積割合が多くなること(金属及び/又は金属化合物の体積割合が低くなること)は、ハニカム構造と電極部の熱膨張差が小さくなるので通電加熱の繰り返しに対する長期接合信頼性が高まるという観点から好ましい。分散相における、アスペクト比が2~100である扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子の含有割合は、上記断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、500倍(1280×960ピクセル)で観察し、分散相を構成する金属及び/又は金属化合物の粒子の合計面積に対するアスペクト比が2~100である扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子の面積割合を求め、これを体積割合とする。体積割合の測定は任意の5箇所以上の視野で行い、平均値を測定値とする。
【0038】
分散相における、アスペクト比が2~100である扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子のアスペクト比の平均値は、電気抵抗を低下しやすいという理由により、2以上が好ましい。また、当該アスペクト比の平均値は、酸化物と混合しやすいという理由により、30以下が好ましく、10以下がより好ましい。当該アスペクト比の平均値は、上述したSEMによる断面観察にて、アスペクト比が2~100である金属及び/又は金属化合物の粒子の任意の30個のアスペクト比に基づき求める。
【0039】
電極部120は、酸化物の体積割合の高い内周側120aと、酸化物の体積割合の低い外周側120bを有する。電極部の内周側が電極部の外周側よりも高濃度で酸化物を含有していることにより、ハニカム構造部及び電極部から金属成分が相互拡散するのを防止することができる。このことは、ハニカム構造と電極部の間の初期及び長期的な接合信頼性向上に繋がり、そして、長期間使用しても電気抵抗が上昇しにくいという、発熱性能の安定性に貢献する。
【0040】
電極部の内周側の酸化物の体積割合は、拡散防止効果を高めるという観点から、65%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、100%とすることもできる。また、電極部の内周側の金属及び金属化合物(金属酸化物を除く)の体積割合は、拡散防止効果を高めるという観点から、35%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
【0041】
一方、電極部の外周側は、ハニカム構造部内を流れる電流分布を広げるために、低電気抵抗であることが望ましい。そのため、電極部の外周側の酸化物の体積割合は低い方が好ましい。このため、電極部の外周側の酸化物の体積割合は、電極部の内周側の酸化物の体積割合よりも低いことが望まれる。電極部の内周側における酸化物の体積割合と、電極部の外周側における酸化物の体積割合の差は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更により好ましく、30%以上であることが更により好ましい。また、電極部の外周側における酸化物の体積割合は、具体的には80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが更により好ましい。
【0042】
電極部の外周側は酸化物を含有しなくてもよい。しかしながら、電極部の内周側との親和性を高めて電極部の内周側と外周側の間の接合信頼性を高めるという観点から、外周側の酸化物の体積割合は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更により好ましい。
【0043】
電極部の外周側における金属及び金属化合物(金属酸化物を除く)の体積割合は、電極部の電気抵抗を低くするという観点から、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更により好ましい。
【0044】
電極部の平均厚みは、均一発熱性を高めるという観点から、25μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、75μm以上であることが更により好ましい。また、電極部の平均厚みは、焼成によるクラック及び剥離を防止するという観点から、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更により好ましい。
【0045】
電極部の厚み方向は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、500倍(1280×960ピクセル)の視野(約190μm×250μm)で、厚みを測定しようとする電極部の箇所をセルの流路方向に直交する断面で観察したときに、電極部とハニカム構造部の外周側壁との界面の描く曲線の平均直線に直角な方向を指す。厚みが大きくて一視野では厚み全体が観察しきれない場合は、複数視野を観察してもよい。電極部とハニカム構造部の外周側壁との界面は、後述するSEM像及びマッピング像から特定可能である。
【0046】
図1に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100においては、一対の電極部120のそれぞれが、ハニカム構造部110のセルの流路方向に一方の底面から他方の底面まで延びる帯状に形成されている。このように、一対の電極部120が、ハニカム構造部110の両底面間に亘って配設されていることにより、一対の電極部120間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部110内を流れる電流の偏りをより効果的に抑制することができる。そして、ハニカム構造部110内を流れる電流の偏りを抑制することにより、ハニカム構造部110内の温度分布の偏りをより効果的に抑制することができる。「一対の電極部120のそれぞれが、ハニカム構造部110のセルの流路方向に一方の底面から他方の底面まで延びる帯状に形成されている」とは、各電極部120の一方のセル流路方向端部がハニカム構造部110の一方の底面114の周縁に接し、且つ、電極部120の他方のセル流路方向端部がハニカム構造部110の他方の底面116の周縁に接していることを意味する。
【0047】
本発明に係るハニカム構造体の一実施形態においては、通電抵抗を40Ω以下とすることができる。通電抵抗は以下の測定条件で求める。各電極部のセルの延びる方向中央部であって、ハニカム構造部の外周方向中央部にそれぞれ端子130を接続する(図3参照)。次いで、両端子間に30Vの電圧を印加してから、30秒経過時の電流値に基づき抵抗値を求める。通電抵抗は好ましくは20Ω以下であり、より好ましくは10Ω以下であり、例えば2~40Ωとすることができる。
【0048】
(1-3 体積割合の測定方法)
本発明において、ハニカム構造部の酸化物、Si(金属珪素)及びSiC(炭化珪素)の体積割合は以下の手順で測定する。まず、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、500倍(1280×960ピクセル)の視野(約190μm×250μm)で、ハニカム構造部をセルの流路方向に直交する断面で撮像し、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて酸素元素、珪素元素及び炭素元素のマッピングを実施し、酸素検出部から酸化物を、珪素のみを検出した箇所から金属珪素(Si)を、そして、珪素及び炭素を検出した箇所から炭化珪素(SiC)を特定する。
【0049】
次に、画像解析ソフト(例:Media Cybernetics社製の「Image-Pro Plus 7.0J(商品名)」)を用いて各成分の領域を画像解析で抽出し、ハニカム構造部の骨格部(空隙を除く部分)における酸化物、金属珪素(Si)及び炭化珪素(SiC)の面積割合を算出し、これをそれぞれハニカム構造部の酸化物、金属珪素(Si)及び炭化珪素(SiC)の体積割合とする。体積割合の測定は任意の5箇所以上の視野で行い、平均値を測定値とする。
【0050】
本発明において、電極部の内周側の酸化物、並びに、金属及び金属化合物(金属酸化物を除く)の体積割合は以下の手順で測定する。まず、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、500倍(1280×960ピクセル)の視野で、電極部とハニカム構造部の外周側壁との界面付近をセルの流路方向に直交する断面で撮像し、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて酸素元素、珪素元素及び炭素元素のマッピングを実施し、電極部とハニカム構造部の外周側壁との界面を特定する。電極部とハニカム構造部の外周側壁との界面の特定が難しい場合は、図4に示すように、電極部がない領域におけるハニカム構造部の外周側壁の外面位置から外挿することで特定してもよい。なお、図4のSEM写真は倍率が200倍であるが、界面の特定を容易に行うため、実際は500倍で界面の特定を行う。
【0051】
次いで、マッピング像を用いて電極部の内周側の酸素検出部から酸化物を、酸素未検出部から金属及び金属化合物を特定する。マッピング像を利用することで、酸化物、並びに、金属及び金属化合物を構成する成分の組成を特定することも可能である。本発明において、電極部の内周側における各成分の体積割合を分析するときは、内周側と外周側の境界を判定するのが困難な場合があるため、電極部とハニカム構造部の外周側壁との界面から電極部の外周側に向かう3μmの厚み方向の範囲を内周側として分析することとする(図2参照)。
【0052】
次に、画像解析ソフト(例:Media Cybernetics社製の「Image-Pro Plus 7.0J(商品名)」)を用いて解析することにより、電極部の内周側の骨格部(空隙を除く部分)における酸化物、並びに、金属及び金属化合物の面積割合を算出し、それぞれ電極部の酸化物、並びに、金属及び金属化合物の体積割合とする。体積割合の測定は任意の5箇所以上の視野で行い、平均値を測定値とする。
【0053】
本発明において、電極部の外周側の酸化物、並びに、金属及び金属化合物(金属酸化物を除く)の体積割合は以下の手順で測定する。まず、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、500倍(1280×960ピクセル)の視野で、電極部の外周側付近をセルの流路方向に直交する断面で撮像し、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて酸素元素のマッピングを実施し、酸素検出部から酸化物を、酸素未検出部から金属及び金属化合物を特定する。マッピング像を利用することで、酸化物、並びに、金属及び金属化合物を構成する成分の組成を特定することも可能である。本発明において、電極部の外周側における各成分の体積割合を分析するときは、内周側と外周側の境界を判定するのが困難な場合があるため、電極部の最表面から内周側に向かう20μmの厚み方向の範囲を外周側として分析することとする(図2参照)。
【0054】
次に、画像解析ソフト(例:Media Cybernetics社製の「Image-Pro Plus 7.0J(商品名)」)を用いて解析することにより、電極部の外周側の骨格部(空隙を除く部分)における酸化物、並びに、金属及び金属化合物の面積割合を算出し、それぞれ電極部の酸化物、並びに、金属及び金属化合物の体積割合とする。体積割合の測定は任意の5箇所以上の視野で行い、平均値を測定値とする。
【0055】
(2)ハニカム構造体の製造方法
次に、本発明のハニカム構造体を製造する方法について例示的に説明する。但し、本発明のハニカム構造体の製造方法については、以下に説明する製造方法に限定されることはない。
本発明のハニカム構造体の製造方法は一実施形態において、焼成されたハニカム構造部を得る工程と、該ハニカム構造部の外周側壁の外面に電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーを塗布する工程と、電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーを焼成して電極部の内周側を形成する工程と、電極部の内周側の上に電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを塗布する工程と、電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを焼成して電極部の外周側を形成する工程とを含む。
また、本発明のハニカム構造体の製造方法は別の一実施形態において、焼成されたハニカム構造部を得る工程と、該ハニカム構造部の外周側壁の外面に電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーを塗布する工程と、電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの上に電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを塗布する工程と、電極部の内周側形成用ペースト又はスラリー及び電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを焼成して電極部の内周側及び電極部の外周側を同時に形成する工程とを含む。
また、本発明のハニカム構造体の製造方法は更に別の一実施形態において、ハニカム成形体を得る工程と、該ハニカム成形体の外周側壁の外面に電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーを塗布する工程と、電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの上に電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを塗布する工程と、ハニカム成形体、電極部の内周側形成用ペースト又はスラリー、及び電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを焼成して、焼成されたハニカム構造部、電極部の内周側及び電極部の外周側を同時に形成する工程とを含む。
【0056】
(2-1 焼成されたハニカム構造部を得る工程)
焼成されたハニカム構造部を得る工程について説明する。本工程は、柱状のハニカム構造部の前駆体であるハニカム成形体を作製し、これを焼成することによって行われる。ハニカム成形体の作製は、公知のハニカム構造体の製造方法におけるハニカム成形体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)及び金属珪素粉末(金属珪素)等のセラミックス原料の他に、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して成形原料を作製する。セラミックス原料の平均粒子径は、例えば3~50μmとすることができる。セラミックス原料の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0057】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2~15質量部であることが好ましい。
【0058】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20~60質量部であることが好ましい。
【0059】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0060】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5~10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0061】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。以下、乾燥後のハニカム成形体を「ハニカム乾燥体」と称することがある。ハニカム成形体(又は、ハニカム乾燥体)の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両底部を切断して所望の長さとすることができる。
【0062】
次に、得られたハニカム成形体を焼成して、焼成されたハニカム構造部を得る。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行ってもよい。焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1350~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1000~1300℃で、1~10時間、酸化処理を行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。
【0063】
(2-2 電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの塗布工程)
電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの塗布工程について説明する。まず、結晶化ガラス等の酸化物粉末にバインダ、界面活性剤、水等を添加し、混練することにより電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーを作製する。必要に応じて金属粉末及び金属化合物粉末の一方又は両方を添加してもよい。酸化物粉末の平均粒子径、金属粉末の平均粒子径及び金属化合物粉末の平均粒子径はそれぞれ、例えば1~50μmとすることができる。これらの平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。また、金属粉末及び金属化合物粉末の一方又は両方を添加する場合は、扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子が含まれるように添加することが望ましい。
【0064】
バインダとしては、ハニカム構造部で述べた種類と同様のバインダが使用可能である。バインダの含有量は、酸化物粉末、金属粉末及び金属化合物粉末の合計質量を100質量部としたときに、0~10質量部であることが好ましい。
【0065】
水の含有量は、酸化物粉末、金属粉末及び金属化合物粉末の合計質量を100質量部としたときに、0~500質量部であることが好ましい。
【0066】
界面活性剤としては、ハニカム構造部で述べた種類と同様の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の含有量は、酸化物粉末、金属粉末及び金属化合物粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0067】
次に、得られた電極部の内周側形成用のペースト又はスラリーを、焼成されたハニカム構造部の外周側壁の外面に所望の厚みで塗布する。塗布厚みは、限定的ではないが、3~200μmとすることができ、典型的には、3~100μmとすることができる。電極部中で、扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子の長手方向が、電極部の厚み方向に直角な方向に配向するように、スラリーを塗布することが好ましい。具体例としては、電極部の外周方向に沿って周方向にせん断力を与えるようにして、スクリーン印刷する方法が挙げられる。
【0068】
(2-3 電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの焼成工程)
電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーを塗布後、電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーを焼成する。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行ってもよい。焼成条件としては、窒素、アルゴン、真空等の不活性雰囲気において、950~1300℃で、10分~120分加熱することが好ましい。
【0069】
電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの焼成は、電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの上に塗布した後に行ってもよい。また、電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの焼成は、ハニカム成形体の焼成と同時に行ってもよい。
【0070】
(2-4 電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーの塗布工程)
電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーの塗布工程について説明する。まず、金属粉末及び金属化合物粉末の一方又は両方に、バインダ、界面活性剤、水等を添加し、混練することにより電極の外周側形成用ペースト又はスラリーを作製する。必要に応じて結晶化ガラス等の酸化物粉末を添加してもよい。酸化物粉末の平均粒子径、金属粉末の平均粒子径及び金属化合物粉末の平均粒子径はそれぞれ、例えば1~50μmとすることができる。これらの平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。金属粉末及び金属化合物粉末の一方又は両方は、扁平状である金属粉末及び金属化合物粉末の一方又は両方を含有することが望ましい。
【0071】
バインダとしては、ハニカム構造部で述べた種類と同様のバインダが使用可能である。バインダの含有量は、酸化物粉末、金属粉末及び金属化合物粉末の合計質量を100質量部としたときに、0~10質量部であることが好ましい。
【0072】
水の含有量は、酸化物粉末、金属粉末及び金属化合物粉末の合計質量を100質量部としたときに、0~500質量部であることが好ましい。
【0073】
界面活性剤としては、ハニカム構造部で述べた種類と同様の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の含有量は、酸化物粉末、金属粉末及び金属化合物粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0074】
次に、得られた電極部の外周側形成用のペースト又はスラリーを、電極部の内周側の上に所望の厚みで塗布する。塗布厚みは、限定的ではないが、20~500μmとすることができ、典型的には、20~300μmとすることができる。電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーは、ハニカム構造部の外周側壁の外面に塗布された焼成前の電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの上に塗布してもよい。電極部中で、扁平状の金属及び/又は金属化合物の粒子の長手方向が、電極部の厚み方向に直角な方向に配向するように、スラリーを塗布することが好ましい。具体例としては、電極部の外周方向に沿って周方向にせん断力を与えるようにして、スクリーン印刷する方法が挙げられる。
【0075】
(2-5 電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーの焼成工程)
電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを塗布後、電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーを焼成する。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行ってもよい。焼成条件としては、窒素、アルゴン、真空等の不活性雰囲気において、950~1300℃で、10分~120分加熱することが好ましい。
【0076】
電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーの焼成は、電極部の内周側形成用ペースト又はスラリーの焼成と同時に行ってもよい。また、電極部の外周側形成用ペースト又はスラリーの焼成は、ハニカム成形体の焼成と同時に行ってもよい。
【実施例
【0077】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0078】
<実施例1~34、比較例1~3>
(1)ハニカム構造部の作製
炭化珪素(SiC)粉末、金属珪素(Si)粉末、及び酸化物粉末(アルミナ、シリカの混合物)を試験番号に応じて表1-1に記載の体積組成となるように混合してセラミックス原料とし、これにバインダ、界面活性剤、造孔剤、及び水を添加して成形原料を作製した。成形原料を混練して坏土を作製した後、各セルの断面形状が正方形の円柱状のハニカム成形体を押出成形により得た。ハニカム成形体を乾燥後、脱脂及び焼成して各試験例に係るハニカム構造部を作製した。
【0079】
(2)電極部の内周側の形成
次に、ガラス粉末、ステンレス(SUS430)粉末、Mo粉末、TaC粉末、TiN粉末、及びSiC粉末を、試験番号に応じて表1-2に記載の体積組成となるように混合し、水を添加して撹拌し、電極部内周側形成用スラリーを作製した。
水の含有量はガラス粉末、ステンレス粉末、Mo粉末、TaC粉末、TiN粉末、及びSiC粉末の合計を100質量部としたときに300質量部とした。
ガラスとしてはMgO-SiO2-Al23-B23からなる結晶化ガラスを用いた。ガラス粉末の平均粒子径は1μm、ステンレス(SUS430)粉末の平均粒子径は10μm、Mo粉末の平均粒子径は6μm、TaC粉末の平均粒子径は1μm、TiN粉末の平均粒子径は1μm、SiC粉末の平均粒子径は2μmであった。
次に、試験番号に応じて電極部内周側形成用スラリーを、試験番号に応じて表1に記載の塗布厚みになるようにして、ハニカム構造部の側面(外周側壁の外面)に、セルの流路方向に直交する断面で観察したときの当該スラリーの中心角が50°になるように、ハニカム構造部の両底面間の全長に亘って帯状に2箇所塗布した。2箇所の電極部内周側形成用スラリーは、ハニカム構造部の中心軸を挟んで互いに反対側の位置関係となるように配置した。このとき塗布重量によって膜厚を調整した。
次に、ハニカム構造部に塗布した電極部内周側形成用スラリーを80℃で2時間乾燥した後、焼成した。焼成の条件は、真空雰囲気下、1100℃、30分とした。
【0080】
(3)電極部の外周側の形成
次に、ガラス粉末、ステンレス(SUS430)粉末、Mo粉末、TaC粉末、TiN粉末、ZrB2粉末を、試験番号に応じて表1-2に記載の体積組成となるように混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加すると共に、水を添加して混練し、電極部外周側形成用スラリーを作製した。
水の含有量はガラス粉末、ステンレス粉末、Mo粉末、TaC粉末、TiN粉末、ZrB2粉末の合計を100質量部としたときに300質量部とした。
ガラスとしてはMgO-SiO2-Al23-B23からなる結晶化ガラスを用いた。ガラスの平均粒子径は1μm、ステンレス(SUS430)粉末の平均粒子径は10μm、Mo粉末の平均粒子径は6μm、TaC粉末の平均粒子径は1μm、TiN粉末の平均粒子径は1μm、ZrB2粉末の平均粒子径は1μmであった。
次に、試験番号に応じて電極部外周側形成用スラリーを、試験番号に応じて表1-2に記載の塗布厚みになるようにして、そして、それぞれの電極部の内周側全体を被覆するようにして塗布した。このとき塗布重量によって膜厚を調整した。
次に、ハニカム構造部に塗布した電極部外周側形成用スラリーを80℃で2時間乾燥した後、焼成した。焼成の条件は、真空雰囲気下、1100℃、30分とした。
以上の手順で、各試験例に係るハニカム構造体を作製した。なお、各試験例に係るハニカム構造体はそれぞれ、以下の各種評価に必要な数だけ用意した。
【0081】
(4)ハニカム構造体の仕様
得られた各試験例に係るハニカム構造体は、底面が直径114mmの円形であり、セルの流路方向における長さが30mmである略円柱形状を有していた。
セルの流路方向に直交する断面における、セルの形状は、正方形であった。
ハニカム構造部における隔壁の厚みは127μmであった。
セル密度は、セルの流路方向に直交する断面において、62セル/cm2であった。
【0082】
(5)外観検査
得られた各試験例に係るハニカム構造体について、電極部の外観を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。結果を表1-3の「焼成後の外観」の「電極」の欄に示す。
A:電極部の外観に3mm以上の長さの不連続部(切れ)がなく、電極部が割れて基材が視認できる部分もない。
B:電極部の外観に3mm以上の長さの不連続部(切れ)がある、又は電極部が割れて基材が視認できる部分がある。
また、得られた各試験例に係るハニカム構造体について、電極部がハニカム構造部の外周側壁から剥離している部分の有無を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。結果を表1-3の「焼成後の外観」の「電極-基材」の欄に示す。
A:剥離が確認できない。
B:少なくとも部分的に剥離が見られる。
【0083】
(6)通電抵抗
得られた各試験例に係るハニカム構造体の一対の電極部に端子を接続して先述した測定条件で電圧を印加し、通電抵抗を測定した。結果を表1-3に示す。
【0084】
(7)ハニカム構造部、電極部の内周側、及び電極部の外周側の組成
得られた各試験例に係るハニカム構造体について、以下の体積割合を先述した方法で求めた。結果を表1-2、表1-3に示す。
・ハニカム構造部における酸化物、Si(金属珪素)及びSiC(炭化珪素)の体積割合・電極部の内周側における酸化物、並びに、金属及び金属化合物(金属酸化物を除く)の体積割合
・電極部の外周側における酸化物、並びに、金属及び金属化合物(金属酸化物を除く)の体積割合
SEM(走査型電子顕微鏡)は、日立ハイテクノロジーズ社製の型式S-3400Nを用いた。
エネルギー分散型X線分析装置(EDS)としては、HORIBA社製の型式EMAX EX-250を用いた。
画像解析ソフトとしては、Media Cybernetics社製の「Image-Pro Plus 7.0J(商品名)」を用いた。
【0085】
(8)電極部の平均厚み
得られた各試験例に係るハニカム構造体の電極部について、先述した方法で5箇所以上の厚みを測定し、平均厚みを算出した。SEM、EDS及び画像解析ソフトは上記と同様のものを用いた。結果を表1-3に示す。
【0086】
(9)接合信頼性
<試験用ハニカム構造部の作製>
ハニカム構造部の構造を以下のように変更した他は、「(1)ハニカム構造部の作製」と同様の手順で、実施例1~34、比較例1~3に係るハニカム構造部を作製した(図5の(a)参照)。
外形:底面が一辺35mmの正方形であり、高さ(セルの流路方向における長さ)が100mmである略四角柱形状
セルの流路方向に直交する断面におけるセルの形状:正方形
ハニカム構造部における隔壁の厚み:300μm
セル密度:セルの流路方向に直交する断面において、47セル/cm2
【0087】
次いで、当該ハニカム構造部を、底面が約20mm×厚み2セル分(約3.3mm)の長方形状であり、高さ(セルの流路方向における長さ)が20mmの大きさの直方体に粗加工した後(図5の(b))、#1000の研磨盤で突起状に残った隔壁端部を削り、平行に面出しして必要な数の試験用ハニカム構造部を得た(図5の(c))。
【0088】
<試験用積層体の作製>
「(2)電極部の内周側の形成」と同様の手順で、実施例1~34、比較例1~3に係る電極部内周側形成用スラリーを作製した。試験例毎に上記で作製した試験用ハニカム構造部を二つ用意し、それぞれの大きい方の側面に当該スラリーを表1-2に記載の塗布厚みで塗布面がφ10mmの円形状となるように塗布した。その後、電極部内周側形成用スラリーを80℃で2時間乾燥した後、真空雰囲気下、1100℃の加熱温度で、30分間焼成することにより、電極部内周側付きの試験用ハニカム構造部を二つ得た。
【0089】
次いで、「(3)電極部の外周側の形成」と同様の手順で、実施例1~34、比較例1~3に係る電極部外周側形成用スラリーを作製した。一方の電極部内周側付きの試験用ハニカム構造部の電極部内周側に、得られた電極部外周側形成用スラリーを表1-2に記載の塗布厚みで塗布面がφ10mmの円形状となるように塗布した。その後、電極部外周側形成用スラリーの上に、もう一方の電極部内周側付きの試験用ハニカム構造部の電極部内周側を重ねて、80℃で2時間乾燥した後、10gの荷重をかけながら真空雰囲気下、1100℃の加熱温度で30分間焼成することにより、実施例1~34、比較例1~3に係る試験用積層体を作製した。各試験用積層体は、ハニカム構造部(110)/電極部内周側(120a)/電極部外周側(120b)/電極部内周側(120a)/ハニカム構造部(110)の積層構造を有する(図6参照)。
【0090】
<初期破壊強度>
各試験例に係る試験用積層体の上下面に引張試験用の冶具を接着剤で取り付け、引張試験機(インストロン社製 型式5564)により、図6の矢印の方向における破壊強度を測定した。結果を表1-4に示す。破壊強度が2MPaであるというのは、破壊点がハニカム構造部と電極部の界面ではなく、ハニカム構造部の内部にあることを意味し、ハニカム構造部と電極部が高い接合強度を有することを示している。
【0091】
<耐久試験後の破壊強度>
各試験例に係る試験用積層体を常温(約25℃)から900℃に加熱して1時間保持し、その後冷却して常温(約25℃)で1時間保持する冷熱サイクルを1サイクルとして、50サイクル行った。その後、破壊強度を上述した初期破壊強度と同じ方法で測定した。また、このときの破壊点を顕微鏡で観察し、破壊点の場所がハニカム構造部の内部にあるか、それともハニカム構造部と電極部の間の界面にあるかを調査した。結果を表1-4に示す。
【0092】
【表1-1】
【0093】
【表1-2】
【0094】
【表1-3】
【0095】
【表1-4】
【0096】
<実施例35~41:扁平状の金属粒子を使用することの効果の検証>
電極部外周側形成用スラリーに使用するステンレス(SUS430)粉末として、球状の粉末(平均粒子径10μm)と扁平状の粉末(平均粒子径30μm)の二種類を用意し、試験番号に応じて種々の体積比で混合して使用し、当該スラリー中のステンレス(SUS430)粉末及びガラス粉末の配合を試験番号に応じて表2に記載の体積組成となるように変え、スクリーン印刷によって塗布した他は、実施例1と同様の手順で、ハニカム構造部の作製、電極部の内周側の形成、及び電極部の外周側の形成を行い、各試験例に係るハニカム構造体を作製した。
【0097】
得られた各試験例に係るハニカム構造体の電極部を、セルの流路方向に直交する断面でSEM観察により倍率500倍で観察し、分散相におけるアスペクト比が2~100である扁平状のSUS粒子の体積割合を、先述した算出方法に基づき求めた。結果を表2に示す。例えば実例35においては扁平状のSUS粒子のアスペクト比の平均値を、先述したSEMによる断面観察による方法で求めたところ、約3であった。
【0098】
また、得られた各試験例に係るハニカム構造体から5mm(周方向)×40mm(軸方向)×75μm(厚み)の形状の電極部試験片を採取した。そして、試験片の厚み方向に直角な方向の室温における抵抗を4端子法にて測定し、試験片の形状から体積抵抗率を算出した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2の結果から、電極部外周側におけるSUS粒子全体の体積割合が同じでも、扁平状のSUS粒子の体積割合を高めることで、電極部の体積抵抗率を低下できることが分かる。換言すれば、同じ体積抵抗率であっても、扁平状のSUS粒子の体積割合が高い方が、電極部外周側におけるSUS粒子全体の体積割合を減らすことができることが分かる。
【符号の説明】
【0101】
100 ハニカム構造体
110 ハニカム構造部
112 外周側壁
114 一方の底面
116 他方の底面
118 隔壁
120 電極部
120a 電極部の内周側
120b 電極部の外周側
122 端子接続部
130 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6