IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液体吐出ヘッド及び記録装置 図1
  • 特許-液体吐出ヘッド及び記録装置 図2
  • 特許-液体吐出ヘッド及び記録装置 図3
  • 特許-液体吐出ヘッド及び記録装置 図4
  • 特許-液体吐出ヘッド及び記録装置 図5
  • 特許-液体吐出ヘッド及び記録装置 図6
  • 特許-液体吐出ヘッド及び記録装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221028BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/01 125
B41J2/01 123
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019035740
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138433
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】芳村 和也
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-022137(JP,A)
【文献】特開2009-226694(JP,A)
【文献】特開2016-030367(JP,A)
【文献】特開2014-233885(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出面、当該吐出面の背面である加圧面、前記吐出面に開口している吐出孔、前記吐出孔よりも前記加圧面側に位置している加圧室、及び前記加圧室から前記吐出孔まで延びている部分流路を有している流路部材と、
前記加圧面に重なっており、前記加圧室に向かう方向及びその反対方向に変位して前記加圧室内の液体を加圧する加圧素子と、
を有しており、
前記部分流路は、前記加圧室に繋がる部分である孔と、前記加圧面に平行な横断面の面積が、前記横断面の面積の前記部分流路における平均面積よりも大きい1以上の大径部と、を有しており、
前記大径部の全てが、前記部分流路の延在方向において前記加圧室及び前記吐出孔から離れており、
前記孔の横断面の面積が、全ての前記大径部の横断面の面積よりも小さい
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記加圧面の平面透視において、全ての前記大径部のそれぞれは、前記部分流路の最大径の10%の長さで前記加圧室の外縁から外側に離れた外縁を有している範囲内に収まっている
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記流路部材は、前記吐出面から前記加圧面へ積層されている複数のプレートを有しており、
前記吐出孔、前記部分流路及び前記加圧室は、前記複数のプレートが有している穴によって構成されており、
前記複数のプレートは、少なくとも一部同士において互いに厚さが異なっており、
前記複数のプレート内において、前記1以上の大径部を構成している全てのプレートそれぞれは、他の少なくとも1つのプレートの厚さよりも大きい厚さを有し、かつ他の全てのプレートそれぞれの厚さ以上の厚さを有している
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
吐出面、当該吐出面の背面である加圧面、前記吐出面に開口している吐出孔、前記吐出孔よりも前記加圧面側に位置している加圧室、及び前記加圧室から前記吐出孔まで延びている部分流路を有している流路部材と、
前記加圧面に重なっており、前記加圧室に向かう方向及びその反対方向に変位して前記加圧室内の液体を加圧する加圧素子と、
を有しており、
前記部分流路は、
前記加圧面に平行な横断面の面積が、前記横断面の面積の前記部分流路における平均面積よりも大きい1以上の大径部と、
前記加圧面の平面透視において、全ての前記大径部に対して一部がはみ出しているシフト部と、
前記加圧面に直交する方向において前記シフト部に対して前記大径部側の隣に位置しており、前記加圧面の平面透視において、前記シフト部に対して前記シフト部が前記大径部に対してはみ出す側とは反対側に一部がはみ出しているとともに全ての前記大径部に収まっており、かつ前記横断面の面積が前記シフト部の前記横断面の面積及び前記平均面積よりも小さい小径部と、を有しており、
前記加圧面の平面透視において、全ての前記大径部のそれぞれは、前記部分流路の最大径の10%の長さで前記加圧室の外縁から外側に離れた外縁を有している範囲内に収まっている
液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記流路部材は、前記吐出面から前記加圧面へ積層されている複数のプレートを有しており、
前記吐出孔、前記部分流路及び前記加圧室は、前記複数のプレートが有している穴によって構成されており、
前記複数のプレートは、少なくとも一部同士において互いに厚さが異なっており、
前記複数のプレート内において、前記小径部を構成しているプレートは、他の少なくとも1つのプレートの厚さよりも小さい厚さを有し、かつ他の全てのプレートそれぞれの厚さ以下の厚さを有している
請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記シフト部及び前記小径部は、前記部分流路の延在方向において全ての前記大径部に対して前記加圧室側に位置している
請求項4又は5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記加圧面の平面透視において、全ての前記大径部のそれぞれは、前記加圧室内に収まっている
請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動部と、
を有している記録装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
印刷用紙にコーティング剤を塗布する塗布機と、
を有している記録装置。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
印刷用紙を乾燥させる乾燥機と、
を有している記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッド及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体(例えばインク)を記録媒体(例えば紙)に向かって吐出する液体吐出ヘッドが知られている(例えば特許文献1)。このような液体吐出ヘッドは、例えば、ヘッドの外部へ開口している吐出孔と、吐出孔に繋がっている部分流路と、部分流路に繋がっている加圧室とを有している。そして、加圧室内の液体に圧力が付与されることによって、液体が吐出孔から吐出される。部分流路は、その横断面(加圧室から吐出孔への方向に交差する断面)の面積が一定でないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-96036号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る液体吐出ヘッドは、吐出面、当該吐出面の背面である加圧面、前記吐出面に開口している吐出孔、前記吐出孔よりも前記加圧面側に位置している加圧室、及び前記加圧室から前記吐出孔まで延びている部分流路を有している流路部材と、前記加圧面に重なっており、前記加圧室に向かう方向及びその反対方向に変位して前記加圧室内の液体を加圧する加圧素子と、を有しており、前記部分流路は、前記加圧面に平行な横断面の面積が、前記横断面の面積の前記部分流路における平均面積よりも大きい1以上の大径部を有しており、前記加圧面の平面透視において、全ての前記大径部のそれぞれは、前記部分流路の最大径の10%の長さで前記加圧室の外縁から外側に離れた外縁を有している範囲内に収まっている。
【0005】
本開示の一態様に係る記録装置は、上記液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドと記録媒体とを相対移動させる移動部と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】(a)は、本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを含む記録装置の側面図であり、(b)は平面図である。
図2図1の液体吐出ヘッドの一部の縦断面図である。
図3図1の液体吐出ヘッドの流路部材の平面透視図である。
図4図3の領域IVの拡大図である。
図5図4の領域Vの拡大図である。
図6図2から個別流路の一部を抽出して示す模式図である。
図7】部分流路及び加圧室の一部を示す模式的な平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。
【0008】
(プリンタの全体構成)
図1(a)は、本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド2(以下で単にヘッドということがある。)を含むカラーインクジェットプリンタ1(記録装置の一例。以下で単にプリンタということがある)の概略の側面図である。図1(b)は、プリンタ1の概略の平面図である。
【0009】
なお、ヘッド2又はプリンタ1は、任意の方向を鉛直方向とすることが可能であるが、便宜上、図1(a)の紙面上下方向を鉛直方向として、上面又は下面等の語を用いることがある。また、平面視等の語は、特に断りがない限り、図1(a)の紙面上下方向に見ることをいうものとする。
【0010】
プリンタ1は、印刷用紙P(記録媒体の一例)を給紙ローラ80Aから回収ローラ80Bへと搬送することにより、印刷用紙Pをヘッド2に対して相対的に移動させる。なお、給紙ローラ80A及び回収ローラ80B並びに後述する各種のローラは、印刷用紙Pとヘッド2とを相対移動させる移動部85を構成している。制御部88は、画像や文字等のデータである印刷データ等に基づいて、ヘッド2を制御して、印刷用紙Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。
【0011】
本実施形態では、ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。記録装置の他の実施形態としては、ヘッド2を印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向(例えば略直交する方向)に移動させつつ液滴を吐出する動作と、印刷用紙Pの搬送とを交互に行なう、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
【0012】
プリンタ1には、印刷用紙Pと略平行となるように、4個の平板状のヘッド搭載フレーム70(以下で単にフレームと言うことがある)が固定されている。各フレーム70には図示しない5個の孔が設けられており、5個のヘッド2がそれぞれの孔の部分に搭載されている。1個のフレーム70に搭載されている5個のヘッド2は、1つのヘッド群72を構成している。プリンタ1は、4つのヘッド群72を有しており、合計20個のヘッド2が搭載されている。
【0013】
フレーム70に搭載されたヘッド2は、液体を吐出する部位が印刷用紙Pに面する。ヘッド2と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5~20mm程度とされる。
【0014】
20個のヘッド2は、制御部88と直接接続されていてもよいし、印刷データを分配する分配部を介して制御部88と接続されていてもよい。例えば、制御部88が印刷データを1個の分配部へ送信し、1個の分配部が印刷データを20個のヘッド2に分配してもよい。また、例えば、4つのヘッド群72に対応する4つの分配部へ制御部88が印刷データを分配し、各分配部は、対応するヘッド群72内の5個のヘッド2に印刷データを分配してもよい。
【0015】
ヘッド2は、図1(a)の手前から奥へ向かう方向、図1(b)の上下方向に細長い長尺形状を有している。1つのヘッド群72内において、3個のヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向(例えば略直交する方向)に沿って並んでおり、他の2個のヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3個のヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。別の表現をすれば、1つのヘッド群72において、ヘッド2は、千鳥状に配置されている。ヘッド2は、各ヘッド2で印刷可能な範囲が、印刷用紙Pの幅方向、すなわち、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
【0016】
4つのヘッド群72は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って配置されている。各ヘッド2には、図示しない液体供給タンクから液体(例えばインク)が供給される。1つのヘッド群72に属するヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群72で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。このようなインクを印刷用紙Pに着弾させることにより、カラー画像を印刷できる。
【0017】
プリンタ1に搭載されているヘッド2の個数は、単色で、1個のヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのであれば、1個でもよい。ヘッド群72に含まれるヘッド2の個数や、ヘッド群72の数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷すれば、同じ性能のヘッド2を使用しても搬送速度を速くできる。これにより、時間当たりの印刷面積を大きくすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
【0018】
さらに、色のあるインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を、ヘッド2で、一様に、あるいはパターンニングして印刷してもよい。コーティング剤としては、例えば、記録媒体として液体が浸み込み難いものを用いる場合において、液体が定着し易いように、液体受容層を形成するものを使用できる。他に、コーティング剤としては、記録媒体として液体が浸み込み易いものを用いる場合において、液体のにじみが大きくなり過ぎたり、隣に着弾した別の液体とあまり混じり合わないように、液体浸透抑制層を形成するものを使用できる。コーティング剤は、ヘッド2で印刷する以外に、制御部88が制御する塗布機76で一様に塗布してもよい。
【0019】
プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80Aに巻き取られた状態になっており、給紙ローラ80Aから送り出された印刷用紙Pは、フレーム70に搭載されているヘッド2の下側を通り、その後2個の搬送ローラ82Cの間を通り、最終的に回収ローラ80Bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82Cを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、ヘッド2によって印刷される。
【0020】
続いて、プリンタ1の詳細について、印刷用紙Pが搬送される順に説明する。給紙ローラ80Aから送り出された印刷用紙Pは、2つのガイドローラ82Aの間を通った後、塗布機76の下を通る。塗布機76は、印刷用紙Pに、上述のコーティング剤を塗布する。
【0021】
印刷用紙Pは、続いて、ヘッド2が搭載されたフレーム70を収納した、ヘッド室74に入る。ヘッド室74は、印刷用紙Pが出入りする部分などの一部において外部と繋がっているが、概略、外部と隔離された空間である。ヘッド室74は、必要に応じて、制御部88等によって、温度、湿度、および気圧等の制御因子が制御される。ヘッド室74では、プリンタ1が設置されている外部と比較して、外乱の影響を少なくできるので、上述の制御因子の変動範囲を外部よりも狭くできる。
【0022】
ヘッド室74には、5個のガイドローラ82Bが配置されており、印刷用紙Pは、ガイドローラ82Bの上を搬送される。5個のガイドローラ82Bは、側面から見て、フレーム70が配置されている方向に向けて、中央が凸になるように配置されている。これにより、5個のガイドローラ82Bの上を搬送される印刷用紙Pは、側面から見て円弧状になっており、印刷用紙Pに張力を加えることで、各ガイドローラ82B間の印刷用紙Pが平面状になるように張られる。2個のガイドローラ82Bの間には、1個のフレーム70が配置されている。フレーム70は、その下を搬送される印刷用紙Pと平行になるように、設置される角度が少しずつ変えられている。
【0023】
ヘッド室74から外に出た印刷用紙Pは、2つの搬送ローラ82Cの間を通り、乾燥機78の中を通り、2個のガイドローラ82Dの間を通り、回収ローラ80Bに回収される。印刷用紙Pの搬送速度は、例えば、100m/分とされる。各ローラは、制御部88によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
【0024】
乾燥機78で乾燥することにより、回収ローラ80Bにおいて、重なって巻き取られる印刷用紙P同士が接着したり、未乾燥の液体が擦れることが起き難くなる。高速で印刷するためには、乾燥も速く行なう必要がある。乾燥を速くするため、乾燥機78では、複数の乾燥方式により順番に乾燥してもよいし、複数の乾燥方式を併用して乾燥してもよい。そのような際に用いられる乾燥方式としては、例えば、温風の吹き付け、赤外線の照射、加熱したローラへの接触などがある。赤外線を照射する場合は、印刷用紙Pへのダメージを少なくしつつ乾燥を速くできるように、特定の周波数範囲の赤外線を当ててもよい。印刷用紙Pを加熱したローラに接触させる場合は、印刷用紙Pをローラの円筒面に沿って搬送させることで、熱が伝わる時間を長くしてもよい。ローラの円筒面に沿って搬送させる範囲は、ローラの円筒面の1/4周以上がよく、さらにローラの円筒面の1/2周以上にするのがよい。UV硬化インク等を印刷する場合には、乾燥機78の代わりに、あるいは乾燥機78に追加してUV照射光源を配置してもよい。UV照射光源は、各フレーム70の間に配置してもよい。
【0025】
プリンタ1は、ヘッド2をクリーニングするクリーニング部を備えていてもよい。クリーニング部は、例えば、ワイピング及び/又はキャッピングによって洗浄を行なう。ワイピングは、例えば、柔軟性のあるワイパーで、液体が吐出される部位の面、例えば吐出面5a(後述)を擦ることで、その面に付着していた液体を取り除く。キャッピングしての洗浄は、例えば、次のように行なう。まず、液体を吐出される部位、例えば吐出面5aを覆うようにキャップを被せる(これをキャッピングと言う)ことで、吐出面5aとキャップとで、略密閉されて空間が作られる。そのような状態で、液体の吐出を繰り返すことで、吐出孔9(後述)に詰まっていた、標準状態よりも粘度が高くなっていた液体や、異物等を取り除く。キャッピングしてあることで、洗浄中の液体がプリンタ1に飛散し難く、液体が、印刷用紙Pやローラ等の搬送機構に付着し難くなる。洗浄を終えた吐出面5aを、さらにワイピングしてもよい。ワイピング及び/又はキャッピングによる洗浄は、プリンタ1に取り付けられているワイパー及び/又はキャップを人が手動で操作して行なってもよいし、制御部88によって自動で行なってもよい。
【0026】
記録媒体は、印刷用紙P以外に、ロール状の布などでもよい。また、プリンタ1は、印刷用紙Pを直接搬送する代わりに、搬送ベルトを搬送して、記録媒体を搬送ベルトに置いて搬送してもよい。そのようにすれば、枚葉紙、裁断された布、木材又はタイルなどを記録媒体にできる。さらに、ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤又は化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
【0027】
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ及び/又は温度センサなどを取り付けて、制御部88が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。例えば、ヘッド2の温度、ヘッド2に液体を供給する液体供給タンクの液体の温度、及び/又は液体供給タンクの液体がヘッド2に加えている圧力などが、吐出される液体の吐出特性(例えば吐出量及び/又は吐出速度)に影響を与えている場合などに、それらの情報に応じて、液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
【0028】
(ヘッド本体)
図2は、ヘッド2が含むヘッド本体2aの一部の拡大断面図である。この図は、後述する図5のII-II線に対応している。図2の紙面下方は、印刷用紙P側である。
【0029】
ヘッド本体2aは、ヘッド2の印刷用紙Pに対向する面(吐出面5a)の略全体を構成する概略板状の部材である。その厚さは、例えば、0.5mm以上2mm以下である。吐出面5aには液滴を吐出する複数の吐出孔9(図2では1つのみ示す。)が開口している。複数の吐出孔9は、吐出面5aに沿って2次元的に配置されている。
【0030】
ヘッド本体2aは、圧電素子の機械的歪により液体に圧力を付与して液滴を吐出するピエゾ式のヘッドである。ヘッド本体2aは、それぞれ吐出孔9を含む複数の吐出素子3を有しており、図2では、一の吐出素子3が示されている。複数の吐出素子3は、吐出面5aに沿って2次元的に配置されている。
【0031】
また、別の観点では、ヘッド本体2aは、液体(インク)が流れる流路が形成されている板状の流路部材5と、流路部材5内の液体に圧力を付与するためのアクチュエータ基板7とを有している。複数の吐出素子3は、流路部材5及びアクチュエータ基板7により構成されている。吐出面5aは、流路部材5によって構成されている。流路部材5の吐出面5aとは反対側の面を加圧面5bというものとする。
【0032】
流路部材5は、共通流路11と、共通流路11にそれぞれ接続されている複数の個別流路13(図2では1つを図示)とを有している。各個別流路13は、それぞれ既述の吐出孔9を有しており、また、共通流路11から吐出孔9へ順に、接続流路15、加圧室17及び部分流路19を有している。
【0033】
複数の個別流路13及び共通流路11には液体が満たされている。複数の加圧室17の容積が変化して液体に圧力が付与されることにより、複数の加圧室17から複数の部分流路19へ液体が送出され、複数の吐出孔9から複数の液滴が吐出される。また、複数の加圧室17へは複数の接続流路15を介して共通流路11から液体が補充される。
【0034】
流路部材5は、例えば、複数のプレート21A~21N(以下、A~Nを省略することがある。)が積層されることにより構成されている。プレート21には、複数の個別流路13及び共通流路11を構成する複数の穴(主として貫通孔。凹部にすることも可)が形成されている。複数のプレート21の厚み及び積層数は、複数の個別流路13及び共通流路11の形状等に応じて適宜に設定されてよい。複数のプレート21は、適宜な材料により形成されてよい。例えば、複数のプレート21は、金属又は樹脂によって形成されている。プレート21の厚さは、例えば、10μm以上300μm以下である。
【0035】
プレート21同士は、例えば、プレート21間に介在する不図示の接着剤によって互いに固定されている。なお、本実施形態の説明では、接着剤の存在を無視した表現をすることがある。
【0036】
(共通流路)
図3は、流路部材5の平面透視図である。紙面貫通方向は、ヘッド2と印刷用紙Pとの対向方向である。図3では、流路部材5内の流路のうち、共通流路11及び共通流路11に液体を供給する供給口23のみを示している。
【0037】
共通流路11の数は、任意であり、1つでもよいし、複数でもよい。図3の例では、4本の共通流路11が設けられている。複数の共通流路11は、例えば、互いに並列に直線状に延びている。複数の共通流路11の構成は、基本的に互いに同じである。共通流路11の延びる方向と、流路部材5の長手方向との相対関係も適宜に設定されてよく、図示の例では、両者は平行である。すなわち、本実施形態では、共通流路11は、印刷用紙Pの搬送方向に対して略直交する方向とされている。なお、共通流路11は、流路部材5の長手方向(搬送方向に略直交する方向)に傾斜していてもよい。
【0038】
各共通流路11の両端には供給口23が開口している。供給口23は、不図示の流路を介して流路部材5の外部に通じている。液体は、共通流路11の両端の供給口23から共通流路11に流れ込み、共通流路11の中央に向かって流れていく。なお、供給口23は、各共通流路11の一方の端部のみに設けられていてもよい。また、複数の共通流路11は、その端部において合流し、マニホールド又は環状流路を構成していてもよい。別の観点では、複数の共通流路11に1つの供給口23が設けられてもよい。また、共通流路11から流路部材5の外部へ液体を流出させるための排出口が共通流路11に開口していてもよい。
【0039】
共通流路11の横断面(図2)の形状及び共通流路11の各種の寸法等は適宜に設定されてよい。図2の例では、共通流路11の横断面の形状は、矩形状とされている。共通流路11の下方には、共通流路11に生じた圧力変動を減衰するためのダンパ12が構成されている。なお、ダンパ12は、共通流路11の下方に代えて、又は加えて、上方に設けられていてもよい。
【0040】
(個別流路の配置の概要)
図4は、図3の領域IVの拡大図(平面透視図)である。図4では、図3に示された流路に加え、加圧室17及び部分流路19も示されている。図5は、図4の領域Vの拡大図(平面透視図)である。図5では、図4に示された流路に加え、吐出孔9及び接続流路15、並びにアクチュエータ基板7の構成要素も示されている。
【0041】
複数の個別流路13(別の観点では吐出素子3)は、各共通流路11に沿って(共通流路11の長さ方向に)配列されている。すなわち、複数の吐出孔9は、共通流路11に沿って配列されている。複数の加圧室17は、共通流路11に沿って配列されている。複数の部分流路19は、共通流路11に沿って配列されている。複数の接続流路15は、共通流路11に沿って配列されている。
【0042】
1本の共通流路11及び当該1本の共通流路11に繋がる複数の個別流路13(別の観点では複数の吐出素子3)の構成は、基本的に複数の共通流路11同士で同じである。以下では、1本の共通流路11のみに着目して説明することがある。
【0043】
1本の共通流路11と繋がっている複数の加圧室17は、共通流路11の片側にそれぞれ2行ずつ、両側を合わせて4行の第1加圧室行25A~第4加圧室行25D(以下、A~Dを省略することがある。)を構成している。本実施形態では、共通流路11は4本あるので、加圧室行25は全体で16行ある。
【0044】
以下では、第1加圧室行25Aに属する加圧室17を第1加圧室17Aということがある。同様に、第2加圧室行25B~第4加圧室行25Dに属する加圧室17それぞれを第2加圧室17B~第4加圧室17Dということがある。複数の第1加圧室17A及び複数の第2加圧室17Bと、複数の第3加圧室17C及び複数の第4加圧室17Dとは、共通流路11の幅方向両側に分かれているから、前者を第1加圧室群39Aと捉え、後者を第2加圧室群39Bと捉えることができる。
【0045】
1本の共通流路11と繋がっている複数の吐出孔9は、複数の加圧室17と同様に、共通流路の片側にそれぞれ2行ずつ、両側を合わせて4行の吐出孔行27を構成している。本実施形態では、共通流路11は4本あるので、吐出孔行27は全体で16行ある。
【0046】
特に符号等は付さないが、複数の吐出孔9及び複数の加圧室17と同様に、1本の共通流路11と繋がっている部分流路19も、共通流路の片側にそれぞれ2行ずつ、両側で合わせて4行の流路行を構成している。
【0047】
1本の共通流路11と繋がっている複数の接続流路15も、基本的には、4行の流路行を構成している。ただし、図示の例のように、隣接する加圧室行25(25C及び25D)に接続される接続流路15同士は、共通流路11の幅方向の配置範囲が重複してよく、4行の流路行は、3行のように見えても構わない。
【0048】
以下では、第1加圧室行25Aを含む個別流路13の行を第1個別流路行41Aということがある。同様に、第2加圧室行25B~第4加圧室行25Dを含む個別流路13の行を第2個別流路行41B~第4個別流路行41Dということがある。また、第1個別流路行41A~第4個別流路行41Dを区別せずに、個別流路行41ということがある。
【0049】
また、第1個別流路行41Aに属する個別流路13を第1個別流路13Aということがある。同様に、第2個別流路行41B~第4個別流路行41Dに属する個別流路13それぞれを第2個別流路13B~第4個別流路13Dということがある。第1個別流路行41Aに属する接続流路15を第1接続流路15Aということがある。同様に、第2個別流路行41B~第4個別流路行41Dに属する接続流路15それぞれを第2接続流路15B~第4接続流路15Dということがある。
【0050】
共通流路11に交差する方向(例えば図5の紙面上下方向)に複数の吐出孔9を見たときに、複数の吐出孔9は、互いに重ならないように配置されている。これにより、印刷用紙Pを上記交差する方向へ搬送しつつ、印刷用紙Pに向けて液滴を吐出すると、各加圧室行25における吐出孔9のピッチよりも狭いピッチで、搬送方向に直交する方向に配列されたドットを形成することができる。
【0051】
各加圧室行25における加圧室17の配列方向両側には、ダミー加圧室18が設けられている。ダミー加圧室18は、例えば、吐出孔9に通じておらず、液滴の吐出に直接は寄与しない。ダミー加圧室18は、例えば、加圧室17がその両側の加圧室17から受ける構造的な影響を加圧室行25の端部に位置している加圧室17についても再現することに寄与している。すなわち、液滴の吐出特性の均一化に寄与している。
【0052】
(個別流路の形状の概要)
個別流路13の形状について、複数の個別流路行41に共通する事項などを述べる。個別流路13の各部(接続流路15、加圧室17、部分流路19及び吐出孔9)の形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図2図4及び図5に示す例では、以下のとおりである。
【0053】
加圧室17は、加圧面5bに沿って一定の厚さで広がる薄型形状に形成されている。薄型形状は、例えば、平面視のいずれの径よりも厚さが小さい形状である。加圧室17の平面形状は、角部が曲線で面取りされた菱形である。ただし、加圧室17は、厚さが変化する部分を有していてもよいし、平面視において円形又は楕円形等の他の形状を有していてもよい。
【0054】
加圧室17は、例えば、加圧面5bに開口しており、アクチュエータ基板7によって塞がれている。なお、加圧室17は、プレート21によって塞がれていてもよい。ただし、これは、加圧室17を塞ぐプレート21を流路部材5の一部として捉えるか、アクチュエータ基板7の一部として捉えるかの問題と考えることもできる。
【0055】
加圧室17は、共通流路11よりも上方に位置している。従って、加圧室17は、平面視において共通流路11と重なりを有するように配置可能である。
【0056】
部分流路19は、加圧室17から吐出面5aに向かって延びている。部分流路19の形状は、概略、直円柱状である。平面視において、部分流路19は、例えば、加圧室17の長手方向の端部(図示の例では菱形の鋭角となっている1つの角部)に繋がっている。
【0057】
吐出孔9は、部分流路19の底面(加圧室17とは反対側の面)の一部に開口している。吐出孔9は、例えば、部分流路19の底面の概ね中央に位置している。より詳細には、例えば、平面視において、吐出孔9の中心と部分流路19の底面の中心(図心)との距離は、吐出孔9の最大径以下である。ただし、吐出孔9は、部分流路19の底面の中央に対して偏心して設けられていてもよい。吐出孔9の縦断面の形状は、吐出面5a側ほど径が小さくなるテーパ状とされている。ただし、吐出孔9は、一部又は全部が逆テーパであってもよい。
【0058】
接続流路15は、例えば、共通流路11の上面に接続されている第1部位15aと、第1部位15aの上面に接続され、平面方向(加圧面5bに沿う方向)に延びている第2部位15bと、第2部位15bの上面に接続され、加圧室17の下面に接続されている第3部位15cとを有している。
【0059】
第1部位15aは、例えば、加圧面5bの法線方向を軸方向とする概略円柱状に形成されている。第2部位15bは、平面視において一定の幅で直線状に延びている部分と、その両側の拡幅部分とを有している。拡幅部分は、第1部位15a又は第3部位15cに接続されている。第3部位15cは、加圧面5bの法線方向を軸方向とする概略円柱状に形成されている。第2部位15bは、第1部位15a及び第3部位15cに比較して、また、共通流路11及び加圧室17に比較して、流れ方向に直交する断面積が小さくされている。すなわち、第2部位15bは、いわゆるしぼりとして機能する。
【0060】
平面視において、接続流路15(第3部位15c)の加圧室17に対する接続位置は、例えば、加圧室17の下面のうちの当該下面の中央に対して部分流路19とは反対側の端部(本実施形態では、加圧室17の長手方向の一端)とされている。接続流路15(第1部位15a)の共通流路11に対する接続位置は、共通流路11の上面のうちの幅方向の適宜な位置とされている。
【0061】
以上の構成を有する個別流路13は、例えば、少なくとも、加圧室17の一部と、部分流路19と、吐出孔9とが共通流路11に重ならないように配置されている。また、個別流路13は、共通流路11に対して、接続流路15側が共通流路11側に、部分流路19側が共通流路11とは反対側になる向きで配置されている。
【0062】
(個別流路の形状及び配置の詳細)
個別流路13の形状及び配置について、複数の個別流路行41同士における異同などについて述べる。
【0063】
各個別流路行41内において、複数の個別流路13(別の観点では接続流路15、加圧室17、部分流路19及び/又は吐出孔9)の形状及び向きは、基本的に互いに同じとされている。そして、各個別流路行41内において、複数の個別流路13(15、17、19及び/又は9)は、基本的に一定のピッチで共通流路11の長さ方向に配列されている。ただし、種々の理由により、吐出孔9のピッチが当該ピッチよりも小さい量で変動していたり、個別流路13全体のピッチが変動していたりしてもよい。
【0064】
第1個別流路行41A~第4個別流路行41D同士において、個別流路13の形状は、接続流路15を除いては、基本的に互いに同一である。換言すれば、加圧室17、部分流路19及び吐出孔9の形状及びこれらの部位の相対的な位置関係は互いに同一である。ただし、これらの部位の形状及び位置関係は、個別流路行41同士の相違(例えば共通流路11に対する相対位置の相違)等を考慮して、個別流路行41同士で異なっていてもよい。
【0065】
接続流路15は、平面視における加圧室17に対する傾斜角度が第1個別流路行41A~第4個別流路行41D同士で異なっている。例えば、図5の例では、第1個別流路行41A及び第4個別流路行41Dにおいては、接続流路15は、加圧室17の長手方向に延びているのに対して、第2個別流路行41B及び第3個別流路行41Cにおいては、接続流路15は、加圧室17の長手方向に対して傾斜して延びている。前者の接続流路15の長さと、後者の接続流路15の長さとは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0066】
上記の相違点を除いては、接続流路15の形状及び接続流路15の他の部位(17、19及び9)に対する相対的な位置関係も、第1個別流路行41A~第4個別流路行41D同士において同一とされてよい。また、第1個別流路行41Aと第4個別流路行41Dとで個別流路13の形状は同一とされてよい。第2個別流路行41Bと第4個別流路行41Dとで個別流路13の形状は同一とされてよい。
【0067】
各個別流路行41内における複数の個別流路13のピッチは、例えば、第1個別流路行41A~第4個別流路行41D同士において基本的に同一とされている。ただし、上記のように、各個別流路行41内で、複数の個別流路13のピッチは変動してもよく、その変動の仕方は、第1個別流路行41A~第4個別流路行41D同士において同一又は対称であってもよいし、全く異なっていてもよい。
【0068】
図5に示すように、以下の説明では、共通流路11の幅方向に平行な方向の一方側をD1側といい、他方側をD2側というものとする。
【0069】
第1個別流路行41A(第1加圧室行25A)は、4つの個別流路行41のうち、最もD1側に位置している行である。換言すれば、第1個別流路行41Aは、共通流路11に対してD1側に位置している2つの個別流路行41のうち、共通流路11から相対的に離れている行である。第1個別流路行41A内の複数の第1個別流路13Aは、例えば、平面視において第1加圧室17Aが共通流路11に重ならない位置に設けられている。また、複数の第1個別流路13Aは、部分流路19及び吐出孔9が第1加圧室17Aに対してD1側に位置する向きで設けられている。そして、第1接続流路15Aは、平面視において、共通流路11の外側で第1加圧室17Aに接続されており、その接続位置から共通流路11へ延びて共通流路11に接続されている。
【0070】
第2個別流路行41B(第2加圧室行25B)は、4つの個別流路行41のうち、D1側から2つ目の行である。換言すれば、第2個別流路行41Bは、共通流路11に対してD1側に位置している2つの個別流路行41のうち、共通流路11に相対的に近い行である。第2個別流路行41B内の複数の第2個別流路13Bは、例えば、平面視において第2加圧室17Bが共通流路11に重なる位置に設けられている。また、複数の第2個別流路13Bは、部分流路19及び吐出孔9が第2加圧室17Bに対してD1側に位置する向きで設けられている。そして、第2接続流路15Bは、平面視において、共通流路11に重なる位置で第2加圧室17Bに接続されており、その接続位置から適宜な方向に延びて共通流路11に接続されている。
【0071】
第1個別流路行41Aの複数の第1個別流路13Aと、第2個別流路行41Bの複数の第2個別流路13Bとは、例えば、共通流路11の長さ方向に交互に位置している。例えば、加圧室17に着目すると、複数の第1加圧室17Aと、複数の第2加圧室17Bとは、平面視において互いに重ならないように、共通流路11の長さ方向に交互に配列されている。ただし、複数の第1加圧室17Aと、複数の第2加圧室17Bとは、共通流路11の長さ方向に見たときの共通流路11の幅方向における配置範囲を互いに一部重複させている。また、複数の第1加圧室17Aと、複数の第2加圧室17Bとは、共通流路11の幅方向に見たときの共通流路11の長さ方向における配置範囲を互いに一部重複させている。すなわち、複数の第1加圧室17A及び複数の第2加圧室17Bは、比較的密に配置されている。
【0072】
第4個別流路行41D(第4加圧室行25D)及び第3個別流路行41C(第3加圧室行25C)は、例えば、概略、共通流路11の中央に位置する対称点に関して、第1個別流路行41A(第1加圧室行25A)及び第2個別流路行41B(第2加圧室行25B)と180°回転対称である。従って、上記の第1個別流路行41A及び第2個別流路行41Bに含まれる個別流路13の、共通流路11に対する相対的な位置及び向きの説明は、第4個別流路行41D及び第3個別流路行41Cに適用されてよい。この際、説明中のAはDに、BはCに、第1は第4に、第2は第3に、D1はD2に置き換えられてよい。
【0073】
複数の第2個別流路13Bと、複数の第3個別流路13Cとは、例えば、共通流路11の長さ方向に交互に位置している。例えば、両者は、平面視において互いに重ならないように、共通流路11の長さ方向に交互に配列されている。ただし、両者は、共通流路11の長さ方向に見たときの共通流路11の幅方向における配置範囲を互いに一部重複させている(主として接続流路15同士)。また、両者は、共通流路11の幅方向に見たときの共通流路11の長さ方向における配置範囲を互いに一部重複させている(主として加圧室17同士。)。
【0074】
共通流路11の幅方向において互いに隣接していない個別流路行41同士(41A及び41C、41B及び41D、並びに41A及び41D)において、複数の個別流路13の共通流路11の長さ方向における位置関係は適宜に設定されてよい。ただし、既に述べたように、印刷用紙Pの搬送方向(共通流路11に交差する方向)に見たときに、少なくとも吐出孔9の位置は、互いにずれている。
【0075】
(アクチュエータ基板)
図2に戻って、アクチュエータ基板7は、複数の加圧室17に亘る広さを有する概略板状である。アクチュエータ基板7は、いわゆるユニモルフ型の圧電アクチュエータによって構成されている。なお、アクチュエータ基板7は、バイモルフ型等の他の形式の圧電アクチュエータによって構成されていてもよい。アクチュエータ基板7は、例えば、流路部材5側から順に、圧電体層29A、共通電極31、圧電体層29B及び個別電極33を有している。
【0076】
圧電体層29A、共通電極31及び圧電体層29Bは、平面視において複数の加圧室17に亘って広がっている。すなわち、これらは、複数の加圧室17に共通に設けられている。個別電極33は、加圧室17毎に加圧室17に対向する位置に設けられている。個別電極33の数は、基本的に、加圧室17の数と同数である。なお、アクチュエータ基板7のうち、各加圧室17に対応する部分を加圧素子38というものとする。
【0077】
圧電体層29Bの個別電極33と共通電極31とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されている。従って、例えば、個別電極33及び共通電極31によって圧電体層29Bの分極方向に電界(電圧)を印加すると、圧電体層29Bは当該層に沿う方向に収縮する。この収縮は、圧電体層29Aによって規制される。その結果、加圧素子38は加圧室17側へ凸となるように撓み変形する。ひいては、加圧室17の容積が縮小され、加圧室17の液体に圧力が付与される。個別電極33及び共通電極31によって上記とは逆向きに電界(電圧)を印加すると、加圧素子38は加圧室17とは反対側へ撓み変形する。
【0078】
アクチュエータ基板7を構成する各層の厚さ及び材料等は適宜に設定されてよい。一例を挙げると、圧電体層29A及び29Bの厚さは、それぞれ10μm以上40μm以下とされてよい。共通電極31の厚さは1μm以上3μm以下とされてよい。個別電極33の厚さは、0.5μm以上2μm以下とされてよい。圧電体層29A及び29Bの材料は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO系、BaTiO系、(BiNa)NbO系、BiNaNb15系などの強誘電性を有するセラミックス材料とされてよい。圧電体層29A(振動板)の材料は、圧電性を持たない材料とされても構わない。共通電極31の材料は、Ag-Pd系などの金属材料とされてよい。個別電極33の材料は、Au系などの金属材料とされてよい。
【0079】
個別電極33の平面視における形状及び寸法は、例えば、概略、加圧室17の平面視における形状及び寸法と同じである。本実施形態では、図5に示すように、個別電極33は、加圧室17よりも一回り小さい菱形とされている。ただし、個別電極33の平面形状は、加圧室17の平面形状と異なっていても構わない。
【0080】
図2及び図5に示すように、個別電極33からは引出電極35が延び出ている。引出電極35の個別電極33とは反対側の端部(ランド35a)は、加圧室17の外側に至っており、ランド35a上には接続電極37が形成されている。接続電極37は、ヘッド2が含む不図示の信号伝達部材(例えばFPC:Flexible printed circuits)と接合される。個別電極33は、制御部88から信号伝達部材、接続電極37及び引出電極35を介して電位(駆動信号)が付与される。
【0081】
引出電極35は、例えば、個別電極33の外縁のうちの加圧室17の長手方向の端部側となる部分から、加圧室17の長手方向へ延びている。既述のように、加圧室17の長手方向の両端には、部分流路19及び接続流路15が接続されている。引出電極35は、部分流路19側に位置してもよいし、接続流路15側に位置してもよい。図5の例では、第1加圧室行25A及び第2加圧室行25Bに対応する引出電極35は、部分流路19側に位置しており、第3加圧室行25C及び第4加圧室行25Dに対応する引出電極35は、接続流路15側に位置している。引出電極35は、例えば、個別電極33と一体的に形成されており、その材料及び厚さは、個別電極33と同じである。
【0082】
接続電極37は、例えば銀粒子などの導電性粒子を含んだ導電性樹脂によって構成されており、5μm以上200μm以下の厚さを有している。
【0083】
共通電極31は、例えば、特に図示しないが、平面視における複数の個別電極33の非配置位置にて圧電体層29Bを貫通している貫通導体を介して上述の信号伝達部材に接続され、ひいては、制御部88と接続されている。共通電極31は、信号伝達部材を介して基準電位が付与される。
【0084】
(ヘッドにおけるその他の構成)
特に図示しないが、ヘッド2は、ヘッド本体2a以外に、筐体、ドライバIC、配線基板などを含んでいてよい。また、ヘッド本体2aは、流路部材5に液体を供給する他の流路部材を含んでいてよい。そのような他の流路部材は、他の部材を支持したり、ヘッド2のフレーム70に対する固定に寄与したりしてもよい。
【0085】
(部分流路の詳細)
図6は、図2の縦断面図から個別流路13の一部を抽出して示す模式図である。具体的には、個別流路13のうち、加圧室17の一部から部分流路19を経由して吐出孔9へ至るまでが抽出されている。図7は、部分流路19及び加圧室17の一部を示す模式的な平面透視図である。
【0086】
図6では、部分流路19の内面の凹凸が実際のもの及び/又は実際のものに近い図(例えば図2)に比較して誇張されている。従って、例えば、部分流路19の内面の段差の大きさは、部分流路19の径に比較して、実際のものよりも大きく描かれている。図7は、図6の寸法を反映している。従って、図7では、図6と同様に、部分流路19の内面の段差の大きさは、部分流路19の径に比較して、実際のものよりも大きく描かれている。
【0087】
部分流路19の横断面(加圧面5b(図6における加圧室17の上辺に相当)に平行な断面)の面積は、上下方向(加圧面5bに直交する方向、図6においても上下方向)において変化している。また、部分流路19は、加圧室17から吐出孔9へ向かって直線状に延びておらず、一部の部位(43A)が他の部位に対して平面方向(加圧面5bに平行な方向、図6における左右方向)にずれている。具体的には、以下のとおりである。
【0088】
(径の種類)
本実施形態では、部分流路19の横断面の形状は、上下方向のいずれの位置においても、円形である。従って、本実施形態の説明では、部分流路19に関して、横断面の面積の大小についての説明と、径(直径。以下、同様。)の大小についての説明とを区別しないことがある。なお、円形でない場合は、下記の径は、円相当径に読み替えられてよい。
【0089】
既述のように、流路部材5は、複数のプレート21を積層することによって構成されており、流路部材5内の流路は、複数のプレート21のそれぞれに形成された孔によって構成されている。具体的には、加圧室17は、プレート21Nに形成された孔によって構成されている。部分流路19は、プレート21M~21Bに形成された孔43A~43L(以下、A~Lを省略することがある。)によって構成されている。吐出孔9は、プレート21Aに形成された孔によって構成されている。なお、図7では、加圧室17と、複数の孔43A~43Lのうちの一部の孔43とが示されている。
【0090】
部分流路19を構成している複数の孔43は、少なくとも一部同士において径が異なっている。径の大きさは適宜に設定されてよく、また、径の大きさと孔43の位置(上下方向及び平面方向)等との関係も適宜に設定されてよい。
【0091】
図示の例では、複数の孔43は、径の異同から、以下の4つのグループに分けることができる。
・第1グループ:孔43B
・第2グループ:孔43A、43C、43D及び43J~43L
・第3グループ:孔43E及び43I
・第4グループ:孔43F~43H
【0092】
各グループに属する孔43の径は、互いに同一である。また、孔43の径は、第1グループから第4グループへ順に大きくなる。なお、各グループに属する孔43の径は、径の大小関係が他のグループとの間で逆転してしまわない範囲で互いに異なっていてもよい。
【0093】
各グループにおける径の具体的な値及び/又はグループ間での径の具体的な差の値は適宜に設定されてよい。以下に、一例を挙げる。第1~第4グループの孔の径は、100μm以上300μm以下である。第1~第4グループにおいて、前後のグループ間の径の差(第1と第2との差、第2と第3との差又は第3と第4との差)は、5μm以上50μm以下である。また、第2~第4グループに限った場合は、前後のグループ間の径の差(第2と第3との差又は第3と第4との差)は、5μm以上20μm以下である。第1~第4グループにおいて、最も小径な孔(43B)と最も大径な孔(43F~43H)との差は、20μm以上100μm以下である。第2~第4グループに限った場合は、最も小径な孔(孔43A、43C、43D及び43J~43L)と最も大径な孔(43F~43H)との差は、10μm以上50μm以下である。
【0094】
径の比率の観点で一例を挙げる。部分流路19の平均径、最小径(孔43Bの径)又は最大径(孔43F~43Hの径)を基準径とする。平均径は、例えば、部分流路19の径を上下方向に積分した値を部分流路19の上下方向の長さで割ったものとする。このとき、第1~第4グループにおいて、前後のグループ間の径の差は、基準径の2%以上30%以下である。第2~第4グループに限った場合は、前後のグループ間の径の差は、基準径の2%以上10%以下である。第1~第4グループにおいて、最も小径な孔と最も大径な孔との差は、基準径の10%以上50%以下である。第2~第4グループに限った場合は、最も小径な孔と最も大径な孔との差は、基準径の5%以上20%以下である。
【0095】
なお、上記では、径について一例を挙げたが、部分流路19の横断面の形状が円形であるものとして、上記の一例の値を面積の一例の値に換算してもよい。そして、その面積の一例の値は、横断面が円形以外の場合に対して適用されてよい。確認的に記載すると、部分流路19の横断面の平均面積は、部分流路19の横断面の面積を上下方向に積分した値(部分流路19の容積)を部分流路19の長さで割ったものである。
【0096】
(大径部及び小径部)
上記のような分類の他、複数の孔43のうち、径が所定の大径側閾値以上の大きさのものを大径部と定義し、径が所定の小径側閾値以下のものを小径部と定義する分類も可能である。大径側閾値と小径側閾値とは同一の値であってもよいし、大径側閾値が小径側閾値よりも大きくてもよい。又は、複数の孔43のうち、最も径が大きいものを大径部と定義し、最も径が小さいものを小径部と定義することもできる。なお、閾値を用いる定義と、最大又は最小の観点の定義とは組み合わされても構わない。
【0097】
例えば、大径側閾値(及び/又は小径側閾値)を平均径(平均面積)として、大径部を定義してよい。この場合、例えば、図示の例では、第3及び第4グループの孔43E~43Iのそれぞれ又は全体(孔43E~43Iからなる1つの孔)が大径部である。また、最大径を有する孔43F~43Gのそれぞれ又は全体を大径部として定義しても構わない。なお、以下の説明では、便宜上、孔43E~43Iのそれぞれ、又は孔43F~43Gのそれぞれを大径部というものとする。また、例えば、最小径を有する孔43Bを小径部として定義してもよい。
【0098】
上記のような大径部及び小径部の定義(分類)、並びに/又は既に述べたような径によるグループ分けをする場合において、特異な孔43は除外しても構わない。例えば、図示の例では、孔43Aは、後述するように、加圧面5bに平行な方向の位置に関して特殊性を有しており、このような孔43Aを無視して、大径部及び小径部が定義されてもよい。
【0099】
(径と上下の位置との関係)
部分流路19は、例えば、基本的に(孔43Aと孔43Bとの大小関係を除いて)、上下方向の所定の中途位置において径が大きくなるように構成されている。換言すれば、例えば、上記のように定義した大径部(孔43E~43I、又は43F~43H)の全ては、部分流路19の延在方向(流路方向・流れ方向)において加圧室17及び吐出孔9のいずれからも離れている。別の観点では、大径部が形成されている全てのプレート(21E~21I又は21F~21H)は、加圧室17が形成されているプレート21N及び吐出孔9が形成されているプレート21Aと重なっていない(積層方向に隣り合っていない。)。
【0100】
上記のように径が大きくなる部分は、部分流路19の上下方向(加圧面5bに直交する方向)の高さを高さとしたとき、この高さの中央に位置していてもよいし、前記中央よりも加圧室17側又は吐出孔9側に位置していてもよい。図示の例では、部分流路19の上下方向の中央位置は、孔43Fに位置している。従って、例えば、大径部の全体(孔43E~43Iの全体、又は43F~43Hの全体)は、部分流路19の上下方向の中央に位置する部分を含みつつ、吐出孔9側に偏って位置している(重心が中央よりも吐出孔9側に位置している。)。
【0101】
部分流路19の上下方向の所定の中途位置における拡径は、例えば、基本的に(孔43Aと43Bとの大小関係を除いて)、前記中途位置(別の観点では最大径の位置)へ向かって徐々に径が変化するようになされている。具体的には、例えば、複数の孔43は、孔43Aを除いて、加圧室17側から吐出孔9側へ、以下の順に並んでいる。第1グループの孔43B、これよりも径が大きい第2グループの孔43C及び43D、これよりも径が大きい第3グループの孔43E、これよりも径が大きい第4グループの孔43F~43H、これよりも径が小さい第3グループの孔43I、これよりも径が小さい第2グループの孔43J~L。従って、孔43Aを除いて考えたときに、加圧室17側の最小径(孔43B)から最大径(孔43F)に至る間の変化は1段ではなく、2段以上(図示の例では3段)である。同様に、最大径(孔43H)から吐出孔9側の最小径(孔43J)に至る間の変化は1段ではなく、2段以上(図示の例では2段)である。
【0102】
複数の孔43のうち、加圧室17に開口する孔43A(最も加圧室17に近い孔、加圧室17を構成するプレート21Nに直接に重なるプレート21Mの孔)の径は、適宜に設定されてよい。例えば、孔43Aの径は、最大径であってもよいし、最小径であってもよいし、大径部に属してもよいし、小径部に属してもよいし、これらのいずれにも属さない大きさであってもよい。図示の例では、孔43Aの径は、平均径よりも小さく、かつ最小径よりも大きい。
【0103】
孔43Bは、部分流路19を構成する全ての複数の孔43のうちの最小径を有する孔である。また、別の観点では、孔43Bは、部分流路19の上下方向の中央位置よりも加圧室17側に位置する孔43のうち最小径の孔である。このような孔43Bは、これまでの説明から理解されるように、図示の例では、加圧室17に開口する孔43A(後述するように平面方向の位置において特殊性を有する孔)の次に加圧室17に近い孔(プレート21Mに直接に重なるプレート21Lの孔)となっている。
【0104】
(孔の平面方向の位置)
複数の孔43は、例えば、基本的に(孔43Aを除いて)、上下方向に同軸状に配列されている。換言すれば、加圧面5bを平面透視したときに、複数の孔43の図心(円形では中心)は互いに一致する。確認的に記載すると、図心は、平面図形において、その点を通る任意の軸に対する断面一次モーメントが0になる点である。図心が一致するとはいっても、製造誤差に起因するずれが存在してよいことはもちろんである。なお、製造誤差としては、例えば、プレート21に対して孔43を形成するときの誤差、及びプレート21を積層して固定するときの誤差が挙げられる。
【0105】
複数の孔43が同軸状に配置されているということは、上位概念で捉えると、平面透視において、複数の孔43(孔43Aは除く)の図心同士のずれ量が所定の大きさ以下であるということができる。例えば、複数の孔43B~43Lにおいて、図心同士(隣り合う孔43の図心同士には限られない)のずれ量の最大値は、孔43Aの図心と孔43Bの図心とのずれ量の1倍未満、1/2以下又は1/4以下である。別の観点では、上記ずれ量の最大値は、例えば、10μm以下又は5μm以下である。さらに別の観点では、上記ずれ量の最大値は、例えば、部分流路19の最大径の5%以下又は2%以下である。
【0106】
複数の孔43(43Aを除く)は、同軸状に配置されているから、平面透視において、各孔43は、自己よりも径が大きい孔43内に収まっている。例えば、小径部(43B)は、大径部(43E~43I又は43F~43H)に収まっている。
【0107】
加圧面5bを平面透視したとき、複数の孔43(43Aを含む)の図心は、加圧室17内に収まっている。なお、図7では、孔43B~43Lの図心G1と、孔43Aの図心G2とが示されている。
【0108】
部分流路19の内面の凹凸を誇張していない図2及び図5から理解されるように、加圧面5bを平面透視したとき、複数の孔43は、例えば、基本的に(孔43Aを除いて)、略全体が加圧室17に収まる。なお、図6及び図7においては、既述のように、部分流路19の凹凸を誇張して示していることから、相対的に径が大きい孔43E~43Iは、実際とは異なり、加圧室17から大きくはみ出しているように描かれている。
【0109】
より詳細には、例えば、加圧面5bの平面透視において、複数の孔43(43Aを除く)のそれぞれは、加圧室17内に収まっている、又は加圧室17からのはみ出し量が所定の上限値(図7の距離d1)以下である。なお、加圧室17に収まっているというとき、孔43の縁部は、加圧室17の縁部に重なっていてよく、また、製造誤差の範囲内で孔43が加圧室17からはみ出していてもよい。
【0110】
図示の例では、第1及び第2グループの孔43B~43D及び43J~43Lは、加圧室17内に収まっている。第3及び第4グループの孔43E~43I(別の観点では大径部)は、加圧室17からはみ出しているものの、そのはみ出し量は、上限値(距離d1)以下である。
【0111】
上限値(距離d1)は適宜に設定されてよく、複数の孔43に共通に設定されてもよいし、孔43毎に設定されてもよい。例えば、上限値は、複数の孔43に共通に設定され、基準径(部分流路19の最小径、平均径又は最大径)に対して所定の上限規定割合を乗じた長さとされてよい。また、例えば、上限値は、孔43毎に設定され、その孔43の径に対して上限規定割合を乗じた長さとされてよい。上限規定割合は、例えば、10%又は5%とされてよい。
【0112】
図7では、加圧室17の外縁から距離d1で外側へ離れた位置に点線が示されている。ここでの距離d1は、例えば、部分流路19の最大径(孔43F~43H)の径の上限規定割合(例えば10%又は5%)の長さである。ただし、図7では、部分流路19の内面の凹凸を誇張している都合上、距離d1は、実際とは異なり、孔43Fの径の10%又は5%よりも長く描かれている。図7から理解されるように、複数の孔43(大径部を含む)は、加圧室17の外縁から距離d1で外側へ離れた外縁を有している範囲R1内に収まっていると捉えることができる。
【0113】
(加圧室に開口する孔の平面方向の位置)
部分流路19のうち加圧室17に繋がる部分である孔43Aは、平面透視において、部分流路19の他の少なくとも一部(図示の例では全部)と図心同士がずれている。換言すれば、複数の孔43のうち最も加圧室17に近い孔43Aは、他の孔43の少なくとも1つと図心同士がずれている。また、孔43Aは、平面透視において、加圧室17よりも外側に位置している部分を有している。具体的には、以下のとおりである。
【0114】
平面透視において、孔43Aは、加圧室17から所定方向へはみ出している。当該所定方向は、加圧室17の中央から部分流路19への方向である。また、本実施形態では、前記所定方向は、加圧室17の長手方向の一方側であり、より詳細には、菱形の相対的に長い対角線の一方側である。このような構成は、例えば、加圧室17の部分流路19側の端部にエア溜りが生じる蓋然性を低下させることに寄与する。
【0115】
孔43Aの加圧室17からのはみ出し量は、適宜に設定されてよい。例えば、加圧室17の外縁から孔43Aの外縁のうち加圧室17の外側に位置する部分までの距離(加圧室17の外縁上の各点から孔43Aの外縁までの最短距離)のうち最も長い距離をはみ出し量の最大値として考える。この最大値は、例えば、製造誤差によって生じる孔43Aと加圧室17との位置ずれの量よりも大きい。
【0116】
また、はみ出し量の最大値は、上述の孔43が加圧室17に概ね収まっているという場合の上限値よりも大きくてもよいし、同等でもよいし、小さくてもよい。また、例えば、孔43Aのはみ出し量の最大値は、上記の上限値と関係して、又は無関係に、孔43Aの径又は基準径(部分流路19の最小径、平均径又は最大径)の所定割合(例えば10%又は5%)よりも大きくてもよいし、同等でもよいし、小さくてもよい。
【0117】
図示の例では、孔43Aのはみ出し量の最大値は、最大径の上限規定割合(10%又は5%)以上とされている。換言すれば、孔43Aのはみ出し量の最大値は、最大径の孔43F~43Hのはみ出し量の最大値よりも大きくされている。別の観点では、平面透視において、孔43Aは、全ての大径部(孔43E~43I又は43F~43H)から所定方向(加圧室17とは反対側)にはみ出している。
【0118】
孔43Aの図心G2と他の孔43の図心G1とのずれ量は適宜に設定されてよい。例えば、上記の孔43Aの加圧室17からのはみ出し量の最大値の具体例は、図心G2とG1とのずれ量に適用されても構わない。例えば、図心G2とG1とのずれ量は、孔43が加圧室17に概ね収まっているという場合の上限値よりも大きくてもよいし、同等でもよいし、小さくてもよい。また、図心G2とG1とのずれ量は、上記の上限値と関係して、又は無関係に、孔43Aの径又は基準径(部分流路19の最小径、平均径又は最大径)の所定割合(例えば10%又は5%)よりも大きくてもよいし、同等でもよいし、小さくてもよい。図示の例では、孔43Aのはみ出し量の最大値と、図心G2とG1とのずれ量とは同じである。
【0119】
孔43Bは、部分流路19のうち孔43Aの吐出孔9側に繋がる部分(複数の孔43のうち孔43Aの次に加圧室17に近い孔)である。平面透視において、孔43Aの図心G2が孔43Bの図心G1に対して加圧室17の外側へずれていることにより、孔43Bの一部は、孔43Aよりも加圧室17の内側に位置している(孔43Aから加圧室17の内側へはみ出している)。別の観点では、孔43Aを有しているプレート21Mは、上下方向において加圧室17の一部と孔43Bの一部とに挟まれている部分(孔43Aの加圧室17側の縁部を構成している部分)を有している。さらに別の観点では、孔43Bは、孔43Aが大径部(孔43E~43I又は43F~43H)からはみ出している方向とは反対方向へ孔43Aからはみ出している部分を有している。
【0120】
(プレートの厚さ)
プレート21A~21Nの厚さは、適宜に設定されてよい。図示の例では、プレート21A~21Nは、その厚さの異同から、以下の4つのプレート群に分けることができる。
・第1プレート群:プレート21C、21D及び21L
・第2プレート群:プレート21A、21B及び21N
・第3プレート群:プレート21M
・第4プレート群:プレート21E~21K
【0121】
各プレート群に属するプレート21の厚さは、互いに同一である。また、プレート21の厚さは、第1プレート群から第4プレート群へ順に大きくなる。なお、各プレート群に属するプレート21の厚さは、厚さの大小関係が他のグループとの間で逆転してしまわない範囲で互いに異なっていてもよい。
【0122】
各プレート群における厚さの具体的な値は適宜に設定されてよい。以下に、一例を挙げる。第1プレート群の厚さは、10μm以上50μm以下である。第2プレート群の厚さは、30μm以上100μm以下(ただし、第1プレート群の厚さよりも厚い)である。第3プレート群の厚さは、50μm以上200μm以下(ただし、第2プレート群の厚さよりも厚い)である。第4プレート群の厚さは、80μm以上300μm以下(ただし、第3プレート群の厚さよりも厚い)である。
【0123】
同様に、グループ間での厚さの具体的な相違も適宜に設定されてよい。以下に一例を示す。第4プレート群の厚さを基準厚さとする。このとき、第1プレート群の厚さは、基準厚さの10%以上40%以下である。第2プレート群の厚さは、基準厚さの20%以上70%以下である。第3プレート群の厚さは、基準厚さの30%以上90%以下である。また、第3プレート群の厚さは、第1プレート群の厚さの1.5倍以上5倍以下である。
【0124】
部分流路19を構成するプレート21B~21Mにおいて、プレート21の厚さの平均厚さを基準として、プレート21の厚さを2種類に分類してもよい。確認的に記載すると、平均厚さは、プレート21B~21Mまでの厚さの合計をプレート21B~21Mまでの枚数で割った値である。平均厚さの一例を示すと、50μm以上200μm以下である。図示の例では、プレート21E~21Kの厚さは、平均厚さよりも大きく、他のプレート21の厚さは平均厚さよりも小さい。
【0125】
(プレートの厚さと孔の諸元との関係)
上記のプレート21の厚さの説明から、複数の孔43の径等と、プレート21の厚さ(孔43の上下方向の長さ)との間の関係について、例えば、以下の事項を述べることができる。
【0126】
部分流路19を構成しているプレート21B~21Mにおいて、大径部(孔43E~43I又は43F~43H)を構成するプレート21I~21Eそれぞれは、他の少なくとも1つのプレート21の厚さよりも大きい厚さを有し、かつ他の全てのプレート21それぞれの厚さ以上の厚さを有している。及び/又は、プレート21I~21Eそれぞれは、複数のプレート21B~21Mの平均厚さよりも大きい厚さを有している。より詳細には、プレート21I~21Eそれぞれは、複数のプレート21B~21Mの最大厚さを有している。
【0127】
部分流路19を構成しているプレート21B~21Mにおいて、小径部(孔43B)を構成するプレート21Lは、他の少なくとも1つのプレート21の厚さよりも小さい厚さを有し、かつ他の全てのプレート21それぞれの厚さ以下の厚さを有している。及び/又は、プレート21Lは、複数のプレート21B~21Mの平均厚さよりも小さい厚さを有している。より詳細には、プレート21Lは、複数のプレート21B~21Mの最小厚さを有している。
【0128】
プレート21Mは、加圧室17に開口する孔43Aを構成するプレートであり、プレート21Lは、そのプレート21Mに対して加圧室17とは反対側に隣接しているプレート(孔43Aに直接に繋がる孔43Bを構成するプレート)である。そして、プレート21Lは、プレート21Mよりも薄くなっている。
【0129】
(ランドと流路との位置関係)
図5に戻る。ランド35aと流路部材5の流路との位置関係は適宜に設定されてよい。図示の例では、共通流路11の幅方向の一方側(紙面上方)に位置する第1加圧室群39Aに対応するランド35aは、流路部材5のいずれの流路とも重ならない位置に配置されている。ひいては、第1加圧室群39Aに対応するランド35aは、加圧室17に重なっていないし、加圧室17を構成しているプレート21Nに重なっているプレート21Mのいずれの流路(孔43A及び接続流路15の第3部位15c)にも重なっていない。また、第1加圧室群39Aに対応するランド35aは、加圧室17に対して部分流路19側に位置しているが、部分流路19を構成している複数の孔43のいずれにも重なっていない。
【0130】
共通流路11に対して第1加圧室群39Aとは反対側(紙面下方)の第2加圧室群39Bに対応するランド35aは、平面透視において、加圧室17に対して接続流路15側に位置しており、接続流路15に重なっている。ただし、第2加圧室群39Bに対応するランド35aも、第1加圧室群39Aに対応するランド35aと同様に、加圧室17に対して部分流路19側に位置して、流路部材5のいずれの流路とも重ならない位置に配置されてもよい。第2加圧室群39Bに対応するランド35aは、より詳細には、接続流路15のうちの第2部位15bに対して重なっている。従って、第2加圧室群39Bに対応するランド35aは、第1加圧室群39Aに対応するランド35aと同様に、加圧室17に重なっていないとともに、加圧室17を構成しているプレート21Nに重なっているプレート21Mのいずれの流路(孔43A及び接続流路15の第3部位15c)に重なっていない。
【0131】
以上のとおり、本実施形態では、液体吐出ヘッド2(ヘッド本体2a)は、流路部材5と、加圧素子38とを有している。流路部材5は、吐出面5aと、当該吐出面5aの背面である加圧面5bとを有している。また、流路部材5は、吐出面5aに開口している吐出孔9、吐出孔9よりも加圧面5b側に位置している加圧室17、及び加圧室17から吐出孔9まで延びている部分流路19を有している。加圧素子38は、加圧面5bに重なっており、加圧室17に向かう方向及びその反対方向に変位して加圧室17内の液体を加圧する。部分流路19は、加圧面5bに平行な横断面の面積が、当該横断面の面積の部分流路19における平均面積よりも大きい1以上の大径部(孔43E~43I又は43F~43G)を有している。加圧面5bの平面透視において、全ての大径部のそれぞれは、範囲R1内に収まっている。範囲R1は、部分流路19の最大径の10%の長さで加圧室17の外縁から外側に離れた外縁を有している範囲である。
【0132】
従って、例えば、大径部を有することによって、部分流路19の容積が大きくなる。その結果、液滴の吐出量を増加させることが容易化される。その一方で、大径部は、平面透視において概ね加圧室17内に収まっていることから、加圧室17に付与された上下方向(加圧面5bに交差する方向)の圧力が平面方向(加圧面5bに沿う方向)に逃げてしまう蓋然性が低減される。換言すれば、圧力波の抜けが低減される。その結果、容積が大きくされた部分流路19内の液体に効率的に圧力を付与し、液滴の吐出量を増加させることができる。
【0133】
また、本実施形態では、全ての大径部(孔43E~43I又は43F~43G)が部分流路19の延在方向において加圧室17及び吐出孔9から離れている。別の観点では、大径部は、部分流路19の流れ方向の中央側に位置している。
【0134】
この場合、例えば、加圧室17及び/又は吐出孔9に隣接して大径部が位置している態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、加圧室17付近及び吐出孔9付近における圧力波の平面方向への散乱が低減され、効率的に圧力波を液滴の吐出に利用できる。別の観点では、加圧室17付近及び吐出孔9付近において、大径部を設けない場合と同様の圧力波の伝搬態様を実現しつつ、液滴の吐出量を増加させることができる。
【0135】
また、本実施形態では、流路部材5は、吐出面5aから加圧面5bへ積層されている複数のプレート21を有している。吐出孔9、部分流路19及び加圧室17は、複数のプレート21が有している穴によって構成されている。複数のプレート21は、少なくとも一部同士において互いに厚さが異なっている。複数のプレート21内において、大径部を構成している全てのプレート21E~21I又は21F~21Hそれぞれは、他の少なくとも1つのプレートの厚さよりも大きい厚さを有し、かつ他の全てのプレートそれぞれの厚さ以上の厚さを有している。
【0136】
この場合、例えば、大径部(孔43E~43I又は43F~43G)が形成されたことによるプレート21の剛性低下をプレート21の厚さによって補償することができる。その結果、流路部材5の局所に意図しない変形が生じる蓋然性が低減される。換言すれば、流路部材5全体としての剛性が向上する。
【0137】
また、本実施形態では、部分流路19は、シフト部(孔43A)及び小径部(43B)を有している。シフト部(孔43A)は、加圧面5bの平面透視において、全ての大径部(孔43E~43I又は43F~43G)に対して一部がはみ出している。小径部(43B)は、加圧面5bに直交する方向においてシフト部(孔43A)に対して大径部側の隣に位置している。また、小径部は、加圧面5bの平面透視において、シフト部に対してシフト部が大径部に対してはみ出す側とは反対側に一部がはみ出しているとともに全ての大径部に収まっている。さらに、小径部は、横断面の面積がシフト部の横断面の面積及び平均面積よりも小さい。
【0138】
この場合、例えば、シフト部(孔43A)と大径部(孔43E~43I又は43F~43G)とが直接に繋がっているような態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、シフト部から大径部へ伝搬する圧力波の方向を規制しやすい。その結果、部分流路19の全体構成にもよるが、圧力波を吐出孔9へ導きやすくなる。また、別の観点では、種々の事情によって部分流路19の一部(シフト部)を大径部に対してずらさなければならないときに、そのずれ量を大きくしつつも、圧力波が意図しない方向へ伝搬する蓋然性を低減できる。
【0139】
また、例えば、製造工程に着目すると、部分流路19の断面積のばらつきを低減することができる。具体的には、以下のとおりである。例えば、孔43Dと孔43Eとでは、孔43Dは、平面透視において孔43Eに収まることが予定されているから、孔43Dと孔43Eとの平面方向の位置ずれが生じた場合、位置ずれの程度にもよるが、孔43Dが孔43Eに収まる位置関係は維持される。ひいては、両者の重複面積(両者の境界における部分流路19の横断面の面積)は変わらない。一方、シフト部(孔43A)のように、他の孔43と一部同士を重複させている孔43においては、位置ずれが生じると、両者の重複面積は変化する。すなわち、部分流路19の断面積に誤差が生じる。本実施形態では、小径部(43B)がシフト部に繋がっていることによって、シフト部と大径部とが繋がっているような態様に比較して、シフト部とシフト部に繋がる孔43との重複面積が小さくなる。その結果、プレート21のずれが生じても、当該ずれに対する重複面積の変動も小さくなる。すなわち、部分流路19の断面積のばらつきが低減される。その結果、吐出特性の精度が向上する。
【0140】
また、本実施形態では、複数のプレート21内において、小径部(43B)を構成しているプレート21Lは、他の少なくとも1つのプレート21の厚さよりも小さい厚さを有し、かつ他の全てのプレート21それぞれの厚さ以下の厚さを有している。
【0141】
この場合、例えば、プレート21Lが相対的に厚い態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、小径部によってシフト部(孔43A)の真下の開口面積が絞られつつも、部分流路19の容積が確保される。これにより、例えば、圧力波の伝搬方向の調整と、液滴の吐出量の増加とを両立させることが容易化される。
【0142】
また、例えば、製造工程に着目すると、孔43同士において重複する容積のばらつきを低減することができる。具体的には、以下のとおりである。既述の重複面積のばらつきが低減される作用の説明から類推されるように、例えば、孔43Bが孔43Aに収まっている態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)においては、平面方向の位置ずれが生じても、孔43Bの、平面透視において孔43Aに重複する部分の容積は変わらない。一方、孔43Aと孔43Bとが一部同士を重複させている態様においては、位置ずれが生じると、孔43Bの孔43Aに重複する部分の容積は変化する。本実施形態では、孔43Bを構成しているプレート21Lが薄いことによって、この容積の変化が低減される。
【0143】
また、本実施形態では、シフト部(43A)及び小径部(43B)は、全ての大径部(孔43E~43I又は43F~43G)に対して加圧室17側に位置している。
【0144】
この場合、例えば、加圧素子38によって付与される圧力が相対的に高い位置において、上記の圧力伝搬の規制の効果、及び/又は製造ばらつきの低減の効果が奏される。その結果、例えば、吐出特性の精度を向上させやすい。
【0145】
また、本実施形態では、加圧面5bの平面透視において、全ての大径部のそれぞれは、加圧室17内に収まっている。
【0146】
この場合、加圧室17に付与された上下方向(加圧面5bに交差する方向)の圧力が平面方向(加圧面5bに沿う方向)に逃げてしまう蓋然性がさらに低減される。
【0147】
なお、以上の実施形態において、ヘッド2又はヘッド本体2aは液体吐出ヘッドの一例である。プリンタ1は記録装置の一例である。インクは液体の一例である。印刷用紙Pは記録媒体の一例である。孔43E~43Iのそれぞれ若しくは全体、又は孔43F~43Hのそれぞれ若しくは全体は、大径部の一例である。孔43Aはシフト部の一例である。孔43Bは小径部の一例である。
【0148】
なお、本開示に係る技術は、上述した実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0149】
ヘッドは、個別流路から液体を回収する回収用の共通流路を有しているものであってもよい。部分流路は、回収用の共通流路と接続されていてもよい。部分流路は、加圧室又は吐出孔に繋がる部分が大径部によって構成されているものであってもよいし、平面透視において図心同士がずれている孔を有さないものであってもよいし、平面透視において全体が加圧室に概ね収まる構成であってもよい。
【0150】
部分流路を構成する複数の孔は、それぞれが1枚のプレートに形成されるものに限定されない。例えば、1枚のプレートの厚さ方向の一方側と他方側とに径及び/又は平面方向の位置が異なる2つの孔が形成されてもよい。例えば、加圧室の下方に位置するプレートの加圧室側の面にシフト部を形成し、反対側の面に小径部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0151】
1…プリンタ(記録装置)、2…液体吐出ヘッド、2a…ヘッド本体(液体吐出ヘッド)、5a…吐出面、5b…加圧面、9…吐出孔、17…加圧室、19…部分流路、43E~43I…孔(大径部)、R1…範囲、38…加圧素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7