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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】複合酸化物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/20 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
C01B33/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019066848
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164370
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正典
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】香川 智靖
(72)【発明者】
【氏名】関 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】石原 久也
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167196(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040224(WO,A1)
【文献】特開2006-150352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
C01B 13/00-13/36
C01G 1/00-23/08
C01F 1/00-17/38
B01J 21/00-38/74
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
B24B 3/00-3/60
B24B 21/00-39/06
H01L 21/304
H01L 21/463
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(1)~(3)を満たす、アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物。
要件(1):アルミニウムの含有量がAl23換算で60質量%以上であり、ケイ素の含有量がSiO2換算で1.0~10質量%であり、かつチタンの含有量がTiO2換算で12~30質量%である。
要件(2):紫外可視分光分析により測定される吸収ピークの吸収端波長が350nm以下である。
要件(3):下記式を満たす。
ΔLAS=LAS150-LAS250≧190μmol/g
〔式中、LAS150およびLAS250は、ピリジンをプローブ分子として用いて赤外分光法により測定される前記複合酸化物の単位質量あたりのルイス酸点の量であって、測定試料の作製に際し、ピリジン吸着後の排気温度をそれぞれ150℃および250℃とした場合のルイス酸点の量である。〕
【請求項2】
X線回折分析によってアナターゼ型チタニア(101)面及びルチル型チタニア(110)面の結晶構造を示す回折ピークが検出されない、請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項3】
比表面積が280m2/g以上であり、細孔容積が0.45ml/g以上である、請求項1または2に記載の複合酸化物。
【請求項4】
単位比表面積あたりの前記ΔLASの値が、0.50~0.70μmol/m2である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項5】
アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物の製造方法であって、
鉱酸、および前記鉱酸の塩基成分を含むチタニウム鉱酸塩類化合物を含む第一の水溶液と、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを、ケイ酸イオンの存在下で混合して、pH6.5~9.5の混合液を得ると共に前記複合酸化物の前駆体を析出させる第1工程、および
前記前駆体を、前記混合液から分離し、次いで熱処理して前記複合酸化物を得る第2工程
を含み、かつ
第一の水溶液に含まれるチタニウム鉱酸塩類化合物および鉱酸、第二の水溶液に含まれる塩基性アルミニウム塩、並びに、第一の水溶液及び/又は第二の水溶液に含まれるケイ酸イオンの含有量を、前記複合酸化物のアルミニウムの含有量がAl 2 3 換算で60質量%以上、ケイ素の含有量がSiO 2 換算で1.0~10質量%、チタンの含有量がTiO 2 換算で12~30質量%となるように調整する
複合酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記第一の水溶液において、(チタニウム鉱酸塩類化合物の物質量(チタンの物質量に換算))/(鉱酸の物質量)の値が0.15~0.70である、請求項5に記載の複合酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記第一の水溶液が60℃以下で調製される、請求項5または6に記載の複合酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物(本発明において「Al-Si-Ti複合酸化物」とも記載する。)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Al-Si-Ti複合酸化物粒子は、塗料中に塗膜強度改善のためのフィラー(添加物)として、ハードディスクの研磨剤(特許文献1)として、屈折率を利用した化粧料として(特許文献2)、表面の固体酸を反応に直接的あるいは間接的に利用する触媒(触媒用担体剤)として(特許文献3~5)、あるいは耐熱性を利用した耐熱剤、燃料電池用材料(特許文献6)として広く用いられている。
【0003】
その製造方法として、たとえば特許文献3および5には、チタニウム鉱酸塩及び酸性アルミニウム塩を含む第一の水溶液と、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを、ケイ酸イオンの存在下でpHが6.5~9.5となるように混合して水和物のスラリーを得る工程、および前記水和物を焼成してAl-Si-Ti複合酸化物からなる担体を得る工程を含む製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-200832号公報
【文献】特開平10-236928号公報
【文献】特開2011-072928号公報
【文献】特開2004-33819号公報
【文献】特開2018-167196号公報
【文献】特開2005-197242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のAl-Si-Ti複合酸化物には、光活性を抑制するという観点から、さらなる改善の余地があった。
そこで本発明は、光活性がさらに抑制されたAl-Si-Ti複合酸化物(以下、単に「複合酸化物」とも記載する。)、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[7]に関する。
[1]
下記要件(1)~(3)を満たす、アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物。
要件(1):アルミニウムの含有量がAl23換算で60質量%以上であり、ケイ素の含有量がSiO2換算で1.0~10質量%であり、かつチタンの含有量がTiO2換算で12~30質量%である。
要件(2):紫外線分光分析により測定される吸収ピークの吸収端波長が350nm以下である。
要件(3):下記式を満たす。
ΔLAS=LAS150-LAS250≧190μmol/g
〔式中、LAS150およびLAS250は、ピリジンをプローブ分子として用いて赤外分光法により測定される前記複合酸化物の単位質量あたりのルイス酸点の量であって、測定試料の作製に際し、ピリジン吸着後の排気温度をそれぞれ150℃および250℃とした場合のルイス酸点の量である。〕
【0007】
[2]
X線回折分析によってアナターゼ型チタニア(101)面及びルチル型チタニア(110)面の結晶構造を示す回折ピークが検出されない、前記[1]の複合酸化物。
【0008】
[3]
比表面積が280m2/g以上であり、細孔容積が0.45ml/g以上である、前記[1]または[2]の複合酸化物。
【0009】
[4]
単位比表面積あたりの前記ΔLASの値が、0.50~0.70μmol/m2である、前記[1]~[3]のいずれの複合酸化物。
【0010】
[5]
アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物の製造方法であって、
鉱酸、および前記鉱酸の塩基成分を含むチタニウム鉱酸塩類化合物を含む第一の水溶液と、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを、ケイ酸イオンの存在下で混合して、pH6.5~9.5の混合液を得ると共に前記複合酸化物の前駆体を析出させる第1工程、および
前記前駆体を、前記混合液から分離し、次いで熱処理して前記複合酸化物を得る第2工程
を含む複合酸化物の製造方法。
【0011】
[6]
前記第一の水溶液において、(チタニウム鉱酸塩類化合物の物質量(チタンの物質量に換算))/(鉱酸の物質量)の値が0.15~0.70である、前記[5]の複合酸化物の製造方法。
【0012】
[7]
前記第一の水溶液が60℃以下で調製される、前記[5]または[6]の複合酸化物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合酸化物は、チタニアの凝集が実質的に存在せず、かつΔLASが所定の範囲にあることから、チタニア成分を含むにもかかわらず光活性が低い。このため本発明の複合酸化物は、光学材料として利用、あるいは化粧品、樹脂フィラー、表面コート材への添加剤(光学散乱、屈折率調整などを目的とするもの)等へ応用することができる。
【0014】
さらに、本発明の製造方法によれば、上述の効果を発揮する本発明の複合酸化物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1および比較例5で製造されたAl-Si-Ti複合酸化物粒子の紫外線可視光拡散反射スペクトルである。
図2図2は、実施例1および比較例5で製造されたAl-Si-Ti複合酸化物粒子のX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[複合酸化物]
本発明の複合酸化物(本発明において「Al-Si-Ti複合酸化物」とも記載する。)は、アルミニウム、チタンおよびケイ素の複合酸化物であって、かつ以下に説明する要件(1)~(3)を満たす。
【0017】
《要件(1)》
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物におけるアルミニウムの含有量(Al-Si-Ti複合酸化物の量を100質量%とする。以下も同様である。)は、Al23換算で60質量%以上であり、ケイ素の含有量は、SiO2換算で1.0~10質量%であり、かつチタンの含有量は、TiO2換算で12~30質量%である。
【0018】
上記のアルミニウムの含有量は、Al-Si-Ti複合酸化物の強度をより高める観点からは、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
上記のケイ素の含有量は、好ましくは1.5質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上である。また、Al-Si-Ti複合酸化物が多孔質である場合にその細孔径を均一化する観点からは、上記ケイ素の含有量は、好ましくは7.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下である。
【0019】
上記チタンの含有量は、好ましくは15.0質量%以上であり、より好ましくは18.0質量%以上である。また、Al-Si-Ti複合酸化物中でのTiO2の凝集を効果的に抑制する観点からは、上記Tiの含有量は、好ましくは28.0質量%以下であり、より好ましくは25.0質量%以下である。
【0020】
《要件(2)》
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物粒子における、紫外線分光分析により測定される吸収ピーク(このピークはチタニアに由来する。)の吸収端波長は、350nm以下である。吸収端波長が350nm以下であることは、Al-Si-Ti複合酸化物中のチタニア成分の分散性が良好であることを意味する。このような観点から、吸収端波長は、好ましくは345nm以下である。一方、吸収端波長の下限は特に制限されないが、Al-Si-Ti複合酸化物中のTiの含有量を充分に確保する観点から、例えば320nm以上であってよく、325nm以上であってもよい。
【0021】
本発明において、紫外線分光分析により測定される吸収ピークの吸収端波長とは、紫外可視分光光度計(あるいは、紫外分光光度計)により測定される拡散反射スペクトルの吸収端を示す波長であり、より具体的には、吸収強度をクベルカ-ムンク関数(K-M関数)を用いてK-M変換を行った際の、スペクトル強度の値が0.3以上となる最大の波長である。
【0022】
《要件(3)》
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物は、下記式を満たす。
ΔLAS=LAS150-LAS250≧190μmol/g
式中、LAS150およびLAS250は、ピリジンをプローブ分子として用いて赤外分光法により測定される前記複合酸化物の単位質量あたりのルイス酸点の量であって、測定試料の作製に際し、ピリジン吸着後の排気温度をそれぞれ150℃および250℃とした場合のルイス酸点の量である。
【0023】
LAS150、LAS250およびΔLASは、より具体的には以下の方法またはこれと同等の方法により測定される。
測定雰囲気を500℃で1時間真空排気した後、30℃まで冷却する。その後、再び150℃まで昇温し、バックグラウンドスペクトルを測定する。次いで、測定雰囲気にピリジン蒸気を導入し、排気処理を行い、IRスペクトル(以下「150℃排気スペクトル」と記載する。)を測定する。さらに測定雰囲気を、真空排気下で250℃まで昇温した後、150℃まで冷却し、IRスペクトル(以下「250℃排気スペクトル」と記載する。)を測定する。
【0024】
150℃排気スペクトルとバックグラウンドスペクトルとの差スペクトルを得て、その1450cm-1付近の吸収バンドの面積、吸光定数(1.67cm/mol)および試料質量から、ルイス酸点の量を求める。測定は3回行い、3回の測定におけるルイス酸点の量の平均値をLAS150として採用する。また、250℃排気スペクトルとバックグラウンドスペクトルとの差スペクトルに基づき、LAS150と同様にしてルイス酸点の量を求め、3回の測定の平均値をLAS250として採用する。さらに、これらの値からΔLAS(=LAS150-LAS250)の値を算出する。
【0025】
なお、ピリジン吸着後の排気温度を150℃とした場合のブレンステッド酸点の量であるBAS150は、1450cm-1付近の吸収バンドに替えて1540cm-1付近の吸収バンド(吸光定数:2.22cm/mol)に着目すること以外はLAS150の測定方法と同様にして、測定することができる。
【0026】
150℃排気のルイス酸点の量(LAS150)と250℃排気のルイス酸点の量(LAS250)の差(ΔLAS)は、190μmol/g以上であり、好ましくは200μmol/g以上である。また、その上限値は、製造容易性等の観点からは、好ましくは220μmol/g、より好ましくは215μmol/g、さらに好ましくは210μmol/gである。ΔLASが190μmol/g以上であることは、アルミナ以外の成分(シリカ成分、チタニア成分)が均一に分散していることを意味する。
【0027】
ΔLASの値は、たとえば後述する製造方法において、塩基性アルミニウム塩の割合を減らす、焼成雰囲気に水蒸気を含ませるなどの手法により増加させることができる。
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物は、チタニア成分の分散性が良好であり、かつアルミナ以外の成分が均一に分散しているため、光活性が抑制されており、そのため化粧品、樹脂フィラー、表面コート材への添加剤(光学散乱、屈折率調整などを目的とするもの)などへ、好ましく応用することができる。
【0028】
《任意要件など》
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物は、アルミニウム、ケイ素およびチタンに加えて、さらに他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、リン(P)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)等が挙げられる。Al-Si-Ti複合酸化物が他の元素を含む場合、Al-Si-Ti複合酸化物中のこれらの含有量は、各元素の酸化物換算で、例えば1.0質量%以上であってよく、20質量%以下であってよい。また、Al-Si-Ti複合酸化物には、その製造方法にもよるが、製造過程のアルカリ金属元素(ナトリウム(Na)、カリウム(K)等)が少量残存していてもよい。
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物の構造の一部を化学式で模式的に示せば、以下の通りである。
【0029】
Al-Si-Ti複合酸化物の構造の一例
【0030】
【化1】
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物には、通常、X線回折分析により、アナターゼ型チタニア(101)面の結晶構造を示す回折ピーク及びルチル型(110)面の結晶構造を示す回折ピーク(以下、「チタニア回折ピーク」ともいう。)が検出されない。チタニア回折ピークが検出されないということは、本発明のAl-Si-Ti複合酸化物にはチタニア成分の凝集が実質的に存在しないということを意味する。
【0031】
<X線回折分析の測定条件>
測定試料を磁性ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、110℃で12時間加熱して加熱処理させた後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、冷却物を乳鉢で15分間粉砕した後、X線回折装置(例:理学電機(株)製、RINT1400)を用いて測定試料の結晶形態を測定する。
【0032】
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物の形状(形態)としては、粒子(粉末)、ゾル、ゲルが挙げられる。化粧品、樹脂フィラー、表面コート材への添加剤などに応用する観点からは、粒子が好ましい。
【0033】
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物は、特に粒子である場合、そのBET法で測定される比表面積(SA)は、例えば280m2/g以上であってよく、好ましくは290m2/g以上である。また、上記比表面積(SA)は、例えば450m2/g以下であってよく、好ましくは430m2/g以下である。上記比表面積(SA)が450m2/g以下であれば、Al-Si-Ti複合酸化物の機械的強度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0034】
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物の単位比表面積あたりの前記ΔLASの値、すなわち前記ΔLASを前記比表面積で割った値は、好ましくは0.50~0.70μmol/m2、より好ましくは0.55~0.65μmol/m2である。この範囲にあると、本発明のAl-Si-Ti複合酸化物は光学材料として用いる際、あるいは化粧品、樹脂フィラー、表面コート材への添加剤等へ応用する際に、光活性を発現する可能性が低い。
【0035】
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物の前記BAS150の値は、好ましくは0μmol/gである。すなわち上述した150℃排気スペクトルとバックグラウンドスペクトルとの差スペクトルにおいて、好ましくは、ブレンステッド酸点に帰属される1540cm-1付近の吸収バンドが観察されない。
【0036】
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物において、水のポアフィリング法により測定される細孔容積(PV)は、例えば0.45ml/g以上であってよく、好ましくは0.50ml/g以上である。また、上記細孔容積(PV)は、例えば0.80ml/g以下であってよく、好ましくは0.70ml/g以下である。上記細孔容積(PV)が0.80ml/g以下であれば、強度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0037】
[Al-Si-Ti複合酸化物の製造方法]
本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物の製造方法は、
鉱酸、および前記鉱酸の塩基成分を含むチタニウム鉱酸塩類化合物を含む第一の水溶液と、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを、ケイ酸イオンの存在下で混合して、pH6.5~9.5の混合液を得ると共に前記Al-Si-Ti複合酸化物の前駆体を析出させる第1工程、および
前記前駆体を、前記混合液から分離し、次いで熱処理して前記Al-Si-Ti複合酸化物を得る第2工程
を含むことを特徴としている。
上述した本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物は、本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物の製造方法により製造することができる。
【0038】
(第1工程)
第1工程で使用される前記第一の水溶液は、通常、酸性の水溶液であり、第二の水溶液は、通常、塩基性の水溶液である。
第一の水溶液に含まれる鉱酸の例としては、塩化水素、硫酸および硝酸が挙げられる。本発明において「鉱酸の塩基成分」とは、鉱酸から水素イオンを除いた成分であり、例えば塩化水素、硫酸および硝酸の塩基成分とは、それぞれ、塩化物イオン、硫酸イオンおよび硝酸イオンである。
【0039】
第一の水溶液に含まれるチタニウム鉱酸塩類化合物の例としては、四塩化チタン、三塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン等のチタニウム鉱酸塩、オキシ塩化チタン、オキシ硫酸チタン(硫酸チタニル)が挙げられる。特に硫酸チタニルは好適に使用される。
【0040】
「鉱酸の塩基成分を含むチタニウム鉱酸塩類化合物」とは、例えば、鉱酸が硫酸である場合には、硫酸イオンを含むチタニウム鉱酸塩類化合物、すなわち硫酸チタン、オキシ硫酸チタン(硫酸チタニル)等である。
【0041】
複合酸化物中でチタニア成分を凝集させずに良好に分散させる観点から、(チタニウム鉱酸塩類化合物の物質量(チタンの物質量に換算)/(鉱酸の物質量)の値は、通常、0.15~0.70であれば特に制限はないが、複合酸化物の前駆体を後処理の関係上、0.20~0.65であることが好ましい。
【0042】
第一の水溶液は、好ましくは酸性アルミニウム塩を含まない。第一の水溶液が酸性アルミニウム塩を含まないと、複合酸化物の前駆体を製造する際に、チタニア前駆体の凝集をより効果的に抑制することができる。
【0043】
第一の水溶液は、例えば、チタニウム鉱酸塩類化合物の水溶液に鉱酸の水溶液を添加することによって調製される。チタニウム鉱酸塩類化合物の水溶液は、例えば、チタニウム鉱酸塩類化合物またはその水和物を水に溶解させることにより調製される。
第二の水溶液に含まれる塩基性アルミニウム塩としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等が挙げられる。
【0044】
第1工程においては、第一の水溶液及び/又は第二の水溶液がケイ酸イオンを含むが、第一の水溶液及び/又は第二の水溶液にケイ酸イオンを添加するタイミング(より正確には、ケイ酸イオンを含む水溶液、または水中でケイ酸イオンを生じさせ得るケイ酸化合物を添加するタイミングである。以下も同様である。)は特に限定されない。例えば、チタニウム鉱酸塩類化合物、鉱酸及びケイ酸イオンを実質的に同時に水に添加・混合して第一の水溶液を調製してもよいし、チタニウム鉱酸塩類化合物及び鉱酸を含む水溶液を用意しておき、第二の水溶液と混合する直前に、ケイ酸イオンを添加・混合して第一の水溶液としてもよい。同様に、塩基性アルミニウム塩及びケイ酸イオンを実質的に同時に水に添加・混合して第二の水溶液を調製してもよいし、塩基性アルミニウム塩を含む水溶液を用意しておき、第一の水溶液と混合する直前に、ケイ酸イオンを添加・混合して第二の水溶液としてもよい。
【0045】
第一の水溶液に含まれるチタニウム鉱酸塩類化合物および鉱酸、第二の水溶液に含まれる塩基性アルミニウム塩、並びに、第一の水溶液及び/又は第二の水溶液に含まれるケイ酸イオンの含有量は、特に限定されず、後述する第2工程で得られるAl-Si-Ti複合酸化物のAlの含有量がAl23換算で60質量%以上、Siの含有量がSiO2換算で1.0~10質量%、Tiの含有量がTiO2換算で12~30質量%となるように適宜調製すればよい。
【0046】
第一の水溶液がケイ酸イオンを含む場合、用いるケイ酸化合物としては、例えば、酸性又は中性のケイ酸化合物を用いてもよい。酸性のケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸等が挙げられ、第一の水溶液中のケイ酸イオンの濃度(SiO2濃度に換算)は、好ましくは5.0質量%以下である。
【0047】
第二の水溶液がケイ酸イオンを含む場合、ケイ酸化合物としては、例えば、塩基性又は中性のケイ酸化合物を用いてもよい。塩基性のケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム等が挙げられ、第二の水溶液中のケイ酸イオンの濃度(SiO2濃度に換算)は、好ましくは5.0質量%以下である。
【0048】
第一の水溶液を調製する際の条件は、特に限定されないが、第一の水溶液中でのチタニウム鉱酸塩類化合物の結晶化を起こさせない状態を確保する観点から、調製時の温度を60℃以下とすることが好ましい。また、第一の水溶液を調製する際の温度は、チタニウム鉱酸塩類化合物を溶解させ易くする観点から、例えば室温(23℃)以上であり、好ましくは30℃以上である。
【0049】
第1工程においては、第一の水溶液と第二の水溶液とを混合して、pHが6.5~9.5の混合液が得られる。混合液のpHを上記数値範囲内とすることで、混合液においてAl-Si-Ti複合酸化物の前駆体を安定的に析出させることができる。混合液のpHは、好ましくは6.5~8.5である、より好ましくは6.5~7.5である。pHを上記範囲とすることにより、Al-Si-Ti複合酸化物の前駆体からの不純物の除去が容易になる。
【0050】
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合する方法としては、第二の水溶液に第一の水溶液を添加して混合する方法等を用いることができる。また、第一の水溶液を連続的に第二の水溶液に添加してもよい。連続的に添加する場合、添加開始から添加完了までの時間は、下限側は3分以上であってもよく、好ましくは5分以上であり、上限側は20分以内であってもよく、好ましくは15分以内である。特に、第二の水溶液に第一の水溶液を添加して混合する場合、擬ベーマイトの他にバイヤライトやギブサイト等の結晶物の生成を充分に抑制したり、チタニアの凝集を抑制する観点、あるいは得られるAl-Si-Ti複合酸化物の比表面積をより効果的に確保する観点から、15分以下であることが好ましい。
【0051】
第一の水溶液と第二の水溶液とを混合する際のその他の条件は、特に制限されない。例えば、第二の水溶液に第一の水溶液を添加して混合する場合、第二の水溶液を撹拌機付き容器に入れ、通常40~80℃、好ましくは55~70℃に加温して保持し、第二の水溶液の温度±10℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃に加温した第一の水溶液を添加することによって、第一の水溶液と第二の水溶液とを混合してよい。
【0052】
(第2工程)
第2工程は、上記第1工程で得られたAl-Si-Ti複合酸化物の前駆体を、前記混合液から分離し、次いで熱処理してAl-Si-Ti複合酸化物を得る工程である。
Al-Si-Ti複合酸化物の前駆体(以下、単に「前駆体」とも記載する。)は、熱処理に供する前に洗浄してもよく、例えば洗浄により副生塩を除去してもよい。前駆体を洗浄する条件は特に制限されない。前駆体を洗浄するための洗浄液としては、例えば、アンモニア水溶液等が挙げられる。
【0053】
また、前駆体は、熱処理に供する前に熟成してもよい。熟成方法としては、例えば、還流機付きの熟成タンクを用いて混合液中で前駆体を80~120℃で5~20時間撹拌しながら熟成する方法等が挙げられる。
【0054】
前駆体は、濾過等により前記混合液から分離し、さらに任意に洗浄した後、例えば70~150℃、好ましくは90~130℃で乾燥してから焼成に供してもよい。前駆体は、乾燥させる前に、捏和、押出成型等により所望の形状に成型してもよく、焼成後に粉砕してもよい。
【0055】
前駆体を焼成する条件は特に制限されないが、例えば焼成温度は、400~700℃であってよく、450~650℃であってもよく、500~600℃であってもよい。また、焼成時間は、例えば0.5~10時間であってよく、2~8時間であってもよい。
【0056】
焼成雰囲気としては、例えば不活性ガス雰囲気、大気雰囲気が挙げられる。また、焼成雰囲気は、水蒸気を含んでいてもよい。
以上、本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはない。
【実施例
【0057】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[測定方法]
各種測定は以下のように行った。
【0058】
<紫外分光分析における吸収端波長>
紫外可視分光光度計(日本分光(株)製、V-660)を用いて、拡散反射測定用の積分球ユニットISV-772を装着し、以下のようにして紫外可視光拡散反射スペクトルを測定した。
【0059】
測定試料200mgを拡散反射試料用セルホルダに充填した後、室温にて吸光度を測定した。具体的には、測光モードにて、バンド幅5.0nm、測定範囲500-200nm、データ取込間隔0.1nm、走査速度100nm/分、光源切替波長340nmとし、波数範囲500-200nmの範囲でバックグラウンド補正した。なお、バックグラウンド測定は上記条件下で、基準白板を用いることで行った。
【0060】
上記で得られた拡散反射スペクトルから吸収端を算出する方法は、クベルカ-ムンク関数(K-M関数)を用いてK-M変換を行い、スペクトル強度の値が0.3以上となる最大の波長を吸収端波長として算出した。
【0061】
<ルイス酸量、ΔLASなど>
測定試料33mgを内径20mmのディスクに充填し、測定装置(日本分光(株)製、FT-IR4600)内に設置した。
測定雰囲気を500℃で1時間真空排気した後、30℃まで冷却した。その後、再び150℃まで昇温し、バックグラウンドスペクトルを測定した。次いで、測定雰囲気にピリジン蒸気を導入し、排気処理を行い、IRスペクトル(以下「150℃排気スペクトル」と記載する。)を測定した。さらに測定雰囲気を、真空排気下で250℃まで昇温した後、150℃まで冷却し、IRスペクトル(以下「250℃排気スペクトル」と記載する。)を測定した。
【0062】
150℃排気スペクトルとバックグラウンドスペクトルとの差スペクトルを得て、その1450cm-1付近の吸収バンドの面積、吸光定数(1.67cm/mol)および試料質量(33mg)から、ルイス酸点の量を求めた。測定は3回行い、3回の測定におけるルイス酸点の量の平均値をLAS150として採用した。また、250℃排気スペクトルとバックグラウンドスペクトルとの差スペクトルに基づき、LAS150と同様にしてルイス酸点の量を求め、3回の測定の平均値をLAS250として採用した。さらに、これらの値からΔLAS(=LAS150-LAS250)の値を算出した。
【0063】
また、上述した150℃排気スペクトルとバックグラウンドスペクトルとの差スペクトルにおいて、ブレンステッド酸点に帰属される1540cm-1付近の吸収バンドの有無を確認した。
【0064】
<X線回折分析>
測定試料を磁性ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、110℃で12時間加熱して加熱処理させた後、デシケータに入れて室温まで冷却した。次に、冷却物を乳鉢で15分間粉砕した後、X線回折装置(理学電機(株)製、RINT1400)を用いて結晶形態を測定した。
【0065】
<比表面積>
測定試料を磁製ルツボ(B-2型)に約30mL採取し、300℃の温度で2時間加熱処理後、デシケータに入れて室温まで冷却した。次に、この冷却された試料を1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、試料の比表面積(m2/g)をBET法にて測定した。
【0066】
<平均細孔径および細孔容積の測定方法>
水銀圧入法(水銀の接触角:150度、表面張力:480dyn/cm)によって測定した。細孔容積は細孔直径40Å以上の細孔の容積とし、平均細孔径は細孔容積の50 %に相当する細孔直径とした。
【0067】
[実施例1]
<Al-Si-Ti複合酸化物の前駆体aの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、Al23換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)10.5kgを入れ、イオン交換水51kgで希釈後、SiO2換算で5質量%のケイ酸ナトリウム水溶液(AGCエスアイテック(株)製;SiO2濃度24質量%の製品をイオン交換水で希釈したもの)1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液を調製した。
【0068】
チタンをTiO2換算で33質量%含む硫酸チタニル(テイカ(株)製)1.82kgを10kgのイオン交換水に溶解した溶液Aを調製し、さらに25質量%の硫酸水溶液(溶液B)7.62kgと混合し、50℃に加温して、チタニウム鉱酸塩類化合物(硫酸チタニル)および硫酸を含む第一の水溶液を調製した。(チタニウム鉱酸塩類化合物の物質量(チタンの物質量に換算))/(鉱酸の物質量)の値、すなわち(硫酸チタニルの物質量)/(硫酸の物質量)の値は、0.39であった。
【0069】
続いて、第二の水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて第一の水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で10分間かけて添加し、複合酸化物の前駆体(水和物)aが析出した混合液1(スラリー)を得た。なお、溶液Aと溶液Bとを混合してから、第一の水溶液の第二の水溶液への添加が完了するまでの時間(添加完了時間)は30分であった。
【0070】
<Al-Si-Ti複合酸化物粒子1の調製>
得られた混合液1(前駆体aが析出したスラリー)を60℃で1時間撹拌した後、平板フィルターを用いて脱水し、さらに、0.3質量%アンモニア水溶液150Lで洗浄した。洗浄後のケーキ状態の前駆体aをAl23換算で10質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、15質量%アンモニア水でpHを10.5に調整した。得られた希釈液を還流機付き熟成タンクに移し、撹拌しながら熟成温度95℃で10時間熟成した。熟成終了後の混合液を脱水し、スチームジャケットを備えた双腕式ニーダーにて練りながら所定の水分量まで濃縮捏和した。得られた捏和物を押出成型機にて直径が1.6mmの円柱形状に成型し、110℃で乾燥した。乾燥した成型品を、電気炉で大気雰囲気下、550℃の温度で3時間焼成し、得られた焼成物を粉砕してSi、Ti及びAlを含むAl-Si-Ti複合酸化物粒子1を得た。
【0071】
Al-Si-Ti複合酸化物粒子1の性状(Al含有量、Si含有量、Ti含有量、細孔容積(PV)、比表面積(SA)およびΔLAS等)を表2に示す。
また、複合酸化物粒子1の紫外可視光拡散反射スペクトルを図1に示す。分析結果からAl-Si-Ti複合酸化物粒子1の吸収端波長を算出したところ、339nmであった。
【0072】
さらに、複合酸化物粒子1のX線回折分析の結果を図2に示す。複合酸化物粒子1からは、2θ=25.5°に示されるアナターゼ型チタニア(101)面に帰属されるピークと2θ=27.5°に示されるルチル型チタニア(110)面に帰属されるピークは検出されなかった。
【0073】
[実施例2~5、比較例1~4]
各成分の配合量を表1に記載のとおり変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、Al-Si-Ti複合酸化物粒子2~5およびR1~R4製造した。評価結果を表2に示す。
【0074】
[比較例5]
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、Al23換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液7.00kgを入れ、イオン交換水16.5kgで希釈後、SiO2換算で5質量%のケイ酸ナトリウム溶液1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液を調製した。
【0075】
TiO2換算で33質量%の硫酸チタニル1.82kgを10kgのイオン交換水に溶解した溶液を50℃に加温し、この溶液に、48質量%の水酸化ナトリウム溶液1.55kgを8.5kgのイオン交換水で希釈した溶液をpHが7.2となるまで一定速度で90分間かけて添加し、チタニア前駆体(ゲル)を調製した。
【0076】
Al23換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液11.0kgを19kgのイオン交換水で希釈した溶液を、前記第二水溶液にローラーポンプを用いてpHが7.2となるまで一定速度で10分間かけて添加してアルミナ前駆体が析出した混合液(スラリー)を得た。この混合液に、さらに前記チタニア前駆体27kgを混合し、混合液R5を得た。
【0077】
混合液1を混合液R5に変更したこと以外は実施例1の<Al-Si-Ti複合酸化物粒子1の調製>と同様にして、複合酸化物粒子R5を得た。評価結果を表2に示す。あわせて紫外可視光拡散反射スペクトルおよびX線回折分析の結果を、それぞれ図1および図2に示す。
【0078】
[比較例6]
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、Al23換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液8.16kgを入れ、イオン交換水41kgで希釈後、SiO2換算で5質量%のケイ酸ナトリウム溶液1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液を調製した。Al23換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)7.43kgを13kgのイオン交換水で希釈した溶液と、TiO2換算で33質量%の硫酸チタニル1.82kgを10kgのイオン交換水に溶解した溶液とを混合し、50℃に加温して、チタニウム鉱酸塩及び酸性アルミニウム塩を含む第一の水溶液を調製した。続いて、第二の水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて第一の水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で10分間かけて添加し、複合酸化物の前駆体(水和物)が析出した混合液R6(スラリー)を得た。
混合液1を混合液R6に変更したこと以外は実施例1の<Al-Si-Ti複合酸化物粒子1の調製>と同様にして、複合酸化物粒子R6を得た。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物は、チタニア成分を含むにもかかわらず光活性が低いため、光学材料として利用、あるいは化粧品、樹脂フィラー、表面コート材への添加剤(光学散乱、屈折率調整などを目的とするもの)等に応用することができる。
図1
図2