(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】予圧検知可能なねじ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20221028BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F16H25/24 B
F16H25/22 C
F16H25/22 K
(21)【出願番号】P 2019078275
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】久保田 祐次
(72)【発明者】
【氏名】森行 良直
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-221747(JP,A)
【文献】特開平5-141498(JP,A)
【文献】中国実用新案第206592507(CN,U)
【文献】特開2014-168373(JP,A)
【文献】特開2008-175383(JP,A)
【文献】特開2016-223493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の外面溝を有するねじ軸と、
螺旋状の内面溝、前記外面溝と前記内面溝との間の通路に繋がる戻し路を有するナット部材と、
前記通路と前記戻し路を含む循環路に配置される複数の転動体と、
前記ナット部材の表面に取り付けられ、前記ナット部材の軸方向ひずみを検出する少なくとも一つの軸方向ひずみセンサと、
前記ナット部材の表面に取り付けられ、前記ナット部材の円周方向ひずみを検出する少なくとも一つの円周方向ひずみセンサと、を備え、
前記軸方向ひずみセンサと前記円周方向ひずみセンサの出力に基づいて、ねじ装置の予圧を検知する予圧検知可能なねじ装置。
【請求項2】
前記軸方向ひずみセンサと前記円周方向ひずみセンサがブリッジ回路に組み込まれることを特徴とする請求項1に記載の予圧検知可能なねじ装置。
【請求項3】
前記ねじ装置の予圧が、隣り合うナット間に間座を介在させたダブルナット予圧であり、
前記軸方向ひずみセンサと前記円周方向ひずみセンサが、前記間座の外面又は内面に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ装置。
【請求項4】
前記ねじ装置の予圧が、前記通路よりも大きい前記転動体を使用するオーバーサイズ転動体予圧であり、
前記軸方向ひずみセンサと前記円周方向ひずみセンサが、前記ナット部材の外面又は内面に、前記通路の前記軸方向の一端と前記軸方向の他端との間に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ装置。
【請求項5】
前記ねじ装置の予圧が、シングルの前記ナット部材の前記内面溝の一部を他の一部に対して前記ナット部材の軸方向にオフセットさせるオフセット予圧であり、
前記軸方向ひずみセンサと前記円周方向ひずみセンサが、前記ナット部材の外面又は内面に、前記内面溝の前記一部と前記他の一部との間のオフセット部に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ装置。
【請求項6】
前記軸方向ひずみセンサと前記円周方向ひずみセンサが、前記ナット部材の平坦な平取り部に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予圧検知可能なねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ装置は、螺旋状の外面溝を有するねじ軸と、螺旋状の内面溝及び戻し路を有するナット部材と、を備える。ナット部材の戻し路は、ねじ軸の外面溝とナット部材の内面溝との間の通路に繋がり、戻し路と共に循環路を構成する。循環路には、複数の転動体が配置される。モータ等によってねじ軸を回転させると、転動体がねじ軸の外面溝とナット部材の内面溝との間を転がって循環路を循環し、ナット部材がねじ軸の軸方向に移動する。
【0003】
ねじ装置の剛性を向上させ、位置決め精度を向上させるために、ねじ装置には予圧が与えられる。ねじ装置の予圧として、例えばダブルナット予圧、オフセット予圧、オーバーサイズ転動体予圧が知られている。ダブルナット予圧は、ナットを2つ使用し、2つのナットの間に間座を入れることで、各ナット、ねじ軸、及びボール間に生ずる軸方向隙間をゼロにする。オフセット予圧は、ナット部材の内面溝の一部をナット部材の内面溝の他の一部に対して軸方向にオフセットさせることで、軸方向隙間をゼロにする。オーバーサイズ転動体予圧は、ねじ軸の外面溝とナット部材の内面溝との間の通路よりも大きい転動体を通路に挿入することで、軸方向隙間をゼロにする。
【0004】
ねじ装置を長期間使用すると、転動体、ねじ軸、及びナット部材が摩耗する。これらが摩耗すると、ねじ装置の予圧が低下し、ねじ装置の剛性、位置決め精度が低下する。予圧を検知するために、特許文献1には、ダブルナット予圧のねじ装置において、2つのナットの間に軸方向力を検出するセンサを配置した予圧検知可能なねじ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ねじ装置は、その使用によって発熱する。特許文献1に記載の予圧検知可能なねじ装置にあっては、ねじ装置の発熱がセンサの出力に悪影響を与えるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、予圧を精度よく検出できると共に、センサの出力が発熱によって影響されるのを低減できる予圧検知可能なねじ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、螺旋状の外面溝を有するねじ軸と、螺旋状の内面溝、前記外面溝と前記内面溝との間の通路に繋がる戻し路を有するナット部材と、前記通路と前記戻し路を含む循環路に配置される複数の転動体と、前記ナット部材の表面に取り付けられ、前記ナット部材の軸方向ひずみを検出する少なくとも一つの軸方向ひずみセンサと、前記ナット部材の表面に取り付けられ、前記ナット部材の円周方向ひずみを検出する少なくとも一つの円周方向ひずみセンサと、を備え、前記軸方向ひずみセンサと前記円周方向ひずみセンサの出力に基づいて、ねじ装置の予圧を検知する予圧検知可能なねじ装置である。
【発明の効果】
【0009】
ねじ装置の予圧によって、ナット部材の表面には、軸方向に縮むひずみが発生すると共に、円周方向に広がるひずみが発生する。一方、ねじ装置の発熱によって、ナット部材の表面には、軸方向に広がるひずみが発生すると共に、円周方向に広がるひずみが発生する。予圧と発熱とで挙動が異なる軸方向ひずみセンサと円周方向ひずみセンサの出力に基づいて、ねじ装置の予圧を検知することで、センサの出力を大きくして予圧を精度よく検知できると共に、センサの出力が発熱によって影響されるのを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態の予圧検知可能なねじ装置の分解斜視図である。
【
図2】ダブルナット予圧の原理を説明するねじ装置の部分断面図である。
【
図3】
図3(a)はダブルナット予圧による間座の外面の変形を示す模式図であり、
図3(b)は発熱による間座の外面の変形を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)はセンサの構成を示す模式図であり、
図4(b)はブリッジ回路を示す図である。
【
図5】ねじ装置の使用期間と予圧残存量との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の第2の実施形態のねじ装置の外観斜視図である。
【
図7】
図7(a)はオーバーサイズ転動体予圧の原理を説明するねじ装置の部分断面図であり、
図7(b)は
図7(a)のb部拡大図である。
【
図8】
図8(a)(b)はオーバーサイズ転動体予圧によるナット部材の外面の変形を示す模式図(
図8(a)はねじ装置の正面図、
図8(b)はねじ装置の側面図)であり、
図8(c)は発熱によるナット部材の外面の変形を示す模式図である。
【
図9】
図9(a)は本発明の第3の実施形態のねじ装置の部分断面図(オフセット予圧の原理を説明する図)であり、
図9(b)は
図9(a)のb部拡大図である。
【
図10】
図10(a)はオフセット予圧によるナット部材の外面の変形を示す模式図であり、
図10(b)は発熱によるナット部材の外面の変形を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の予圧検知可能なねじ装置(以下、単にねじ装置という)を詳細に説明する。ただし、本発明のねじ装置は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0012】
図1は本発明の第1の実施形態のねじ装置1の分解斜視図を示す。ねじ装置1は、ねじ軸2と、ナット部材3と、を備える。ナット部材3は、2つのナット4,5と、2つのナット4,5間に挟まれる間座6と、を備える。第1の実施形態のねじ装置1の予圧は、ダブルナット予圧である。
【0013】
ねじ軸2の外面には、螺旋状の外面溝2aが形成される。この外面溝2aを転動体としてのボール7,8が転がる。外面溝2aの断面形状は、ゴシックアーチ又はサーキュラーアークである。
【0014】
ねじ軸2には、2つのナット4,5が組み付けられる。ナット4,5には、ねじ軸2が貫通する穴が形成される。ナット4,5の内面には、ねじ軸2の外面溝2aに対向する内面溝4a,5aが形成される。内面溝4a,5aの断面形状は、ゴシックアーチ又はサーキュラーアークである。ナット5には、相手部品に取りつけるためのフランジ5bが設けられる。
【0015】
ねじ軸2の外面溝2aとナット4の内面溝4aとの間に螺旋状の通路11が形成される。ナット4には、ボール7が循環できるように、この通路11の一端と他端に繋がる戻し路12が設けられる。通路11と戻し路12によって循環路が構成される。複数のボール7は、循環路に循環可能に配置される。
【0016】
この実施形態では、戻し路12は、ナット4に設けた貫通穴13と、貫通穴13と通路11に接続される一対の方向転換路(循環部品14a,14b)と、を備える。方向転換路は、ナット4の軸方向の端面に取り付けられる循環部品14a,14bに形成される。循環部品14aは、通路11を転がるボール7をねじ軸2の外面溝2aから掬い上げ、貫通穴13に導く。貫通穴13を経由したボール7は反対側の循環部品14bから再び通路11に戻される。ナット5にも同様に、通路11、貫通穴13,方向転換路(循環部品14b)が形成される。なお、戻し路12をナット4,5に取り付けられるリターンパイプに形成することもできる。
【0017】
ナット4,5の対向端部の外面には、キー溝16,17が形成される。このキー溝16,17には、2つのナット4,5を相対回転不可能に連結する連結部としてのキー18が嵌められる。間座6にも、キー18が嵌るキー溝19が形成される。
【0018】
ナット4の、間座6とは反対側の端面は、リング状のキャップ21が取り付けられる。同様にナット5の、間座6とは反対側の端面も、リング状のキャップ22で塞がれる。キャップ21,22は、ねじ等の締結部材によってナット4,5に取り付けられる。
【0019】
間座6は、2つのナット4,5間に挟まれる。間座6は、リング状であり、中心角が略180度の円弧状の一対の分割体6a,6bを備える。なお、間座6は、分割されていなくてもよい。
【0020】
間座6の外面には、平らな平取り部6cが形成される。この平取り部6cには、接着剤等の接着手段によってセンサ24が取り付けられる。詳しくは後述するが、センサ24は、一対の軸方向ひずみセンサB,Dと、一対の円周方向ひずみセンサA,Cと、を備える(
図4(a)参照)。軸方向ひずみセンサB,Dと円周方向ひずみセンサA,Cは、金属又は半導体が伸び縮みすると、抵抗値が変化するという原理を利用して、間座6の外面の軸方向と円周方向ひずみを検出する。
【0021】
軸方向ひずみセンサB,Dと円周方向ひずみセンサA,Cの種類は、特に限定されるものではなく、例えば絶縁体上に金属の抵抗体を取り付けた金属ひずみゲージ、絶縁体上に半導体を取り付けた半導体ひずみゲージ、半導体加工技術を使って作成されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ひずみセンサ等を使用することができる。
【0022】
図2は、ダブルナット予圧の原理を説明するねじ装置1の部分断面図である。2つのナット4,5間に間座6を入れて、2つのナット4,5を互いに離れる方向に変位させると、ねじ軸2、ボール7,8、ナット4,5間に発生する軸方向隙間をゼロにすることができる。7a,8aは接触角線である。
【0023】
図3(a)は、ダブルナット予圧による間座6の外面の変形を示す模式図である。ダブルナット予圧によって、間座6には接触角線7a,8aの方向に力が働く。このため、間座6の外面には、ねじ軸2と平行な軸方向に縮むひずみ31(圧縮ひずみ)が発生する。また、接触角線7a,8aの方向の力によって、間座6の外面が盛り上がるように変形するので、間座6の外面には、円周方向に広がるひずみ32(引張りひずみ)が発生する。さらに、間座6の外面には、軸方向の圧縮荷重のポアソン比の分だけ円周方向に広がるひずみ32(引張りひずみ)が発生する。軸方向ひずみ31と円周方向ひずみ32の矢印の太さは、ひずみの大きさを示す。軸方向ひずみ31は、円周方向ひずみ32よりも大きい。
【0024】
図3(b)は、ねじ装置1の発熱による間座6の外面の変形を示す模式図である。一方、発熱による間座6の寸法変化は、軸方向と円周方向で均一に発生する。すなわち、発熱によって、間座6の外面には、軸方向に広がるひずみ33(引張りひずみ)と円周方向に広がるひずみ34(引張りひずみ)が発生する。軸方向ひずみ33の大きさと円周方向ひずみ34の大きさは、略同一である。
【0025】
図4(a)は、センサ24に配置される一対の円周方向ひずみセンサA,Cと一対の軸方向ひずみセンサB,Dを示す。円周方向ひずみセンサA,Cは、円周方向に長くて、間座6の外面の円周方向ひずみを検出する。軸方向ひずみセンサB,Dは、軸方向に長くて、間座6の外面の軸方向ひずみを検出する。
【0026】
図4(b)は、円周方向ひずみセンサA,Cと軸方向ひずみセンサB,Dが組み込まれるブリッジ回路30を示す。ブリッジ回路30は、4つの抵抗(円周方向ひずみセンサA,Cと軸方向ひずみセンサB,D)を直列に接続して矩形を形づくっている電気回路である。一対の軸方向ひずみセンサB,Dは、ブリッジ回路30の対辺に配置される。一対の円周方向ひずみセンサA,Cは、ブリッジ回路30の他の対辺に配置される。対角線上に向かい合う一対の端子に電源が接続されていて、印加電圧が加えられる。他の一対の端子から出力電圧が取り出される。出力電圧は、図示しない増幅器で増幅されてれ、A-D変換器でデジタル値に変換される。
【0027】
入力電圧Vinを印加したとき、出力電圧ΔVは以下の一般式で表される。
【0028】
【数1】
ここで、R
A、R
Cは円周方向ひずみセンサA,Cの抵抗、R
B、R
Dは軸方向ひずみセンサB,Dの抵抗である。
【0029】
ブリッジ回路30が平衡状態にあれば、すなわちRA=RC=RB=RD=Rであれば、出力電圧ΔVはゼロになる。予圧によって軸方向ひずみセンサB,Dが圧縮ひずみを受けて、抵抗RB、RDがRからR-ΔR1に変化し(圧縮ひずみを受けると抵抗が小さくなる)、予圧によって円周方向ひずみセンサA,Cが引張りひずみを受けて、抵抗RA、RCがRからR+ΔR2に変化するとき(引張りひずみを受けると抵抗が大きくなる)、ブリッジ回路30の出力電圧ΔVは、以下の数2で表される。
【0030】
【数2】
軸方向ひずみセンサB,Dの抵抗の変化と円周方向ひずみセンサA,Cの抵抗の変化が合算されるので、予圧によるセンサの出力を大きくできることがわかる。
【0031】
一方、発熱によって軸方向ひずみセンサB,Dが引張りひずみを受けて、抵抗RB、RDがRからR+ΔR1に変化し、発熱によって円周方向ひずみセンサA,Cが引張りひずみを受けて、抵抗RA、RCがRからR+ΔR2に変化するとき、ブリッジ回路30の出力電圧ΔVは、以下の数3で表される。
【0032】
【数3】
円周方向ひずみセンサA,Cの抵抗の変化から軸方向ひずみセンサB,Dの抵抗の変化が減算されるので、発熱によるセンサの出力を低減できることがわかる。
【0033】
表1は、軸方向ひずみセンサB,Dと円周方向ひずみセンサA,Cの抵抗の変化をまとめたものである。
【0034】
【0035】
図5は、ねじ装置1の使用期間と予圧残存量との関係を示すグラフである。ねじ装置1を長期間使用すると、ボール7,8、ねじ軸2、ナット部材3が摩耗し、ねじ装置1の予圧が低下する。予圧が低下すると、間座6の外面のひずみが小さくなり、センサ24の出力が低下する。初期のセンサ24の出力とある時間経過後のセンサ24の出力を比較することで、予圧を検知、すなわちある時間経過後にどの程度予圧が低下しているかを知ることができる。
【0036】
なお、センサ24の出力を所定の閾値と比較し、ねじ装置1の故障を判断してもよいし、センサ24の出力を機械学習して、ねじ装置1の故障を判断してもよい。また、IoTを導入し、センサ24の出力を送信機によってインターネット回線を通じてクラウドに送信してもよい。
【0037】
以上に第1の実施形態のねじ装置1の構成を説明した。第1の実施形態のねじ装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0038】
予圧と発熱で挙動が異なる軸方向ひずみセンサB,Dと円周方向ひずみセンサA,Cの出力に基づいて、予圧を検知することで、センサ24の出力を大きくして予圧を精度よく検知できると共に、センサ24の出力が発熱によって影響されるのを低減できる。
【0039】
軸方向ひずみセンサB,Dと円周方向ひずみセンサA,Cをブリッジ回路30に組み込むので、予圧による出力電圧を増幅することができると共に、発熱による出力電圧をキャンセルすることができる。
【0040】
軸方向ひずみセンサB,Dと円周方向ひずみセンサA,Cを間座6の平取り部6cに取り付けるので、これらをナット部材3に取り付け易くなる。また、円周方向ひずみを精度よく検出することができる。間座6の円周面に円周方向ひずみセンサA,Cを取り付けると、間座6の膨らみと共に円周面の曲率が変化するので、円周方向ひずみを精度よく検出しにくい。
(第2の実施形態)
【0041】
図6は、本発明の第2の実施形態のねじ装置41の外観斜視図を示す。第2の実施形態のねじ装置41は、ねじ軸2と、シングルのナット部材5と、を備える。ねじ装置41の予圧は、オーバーサイズ転動体予圧である。
【0042】
ねじ軸2の構成は、第1の実施形態と略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。ナット部材5の基本構成は、第1の実施形態のナット5と略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0043】
図7(a)は、オーバーサイズ転動体予圧の原理を説明するねじ装置41の部分断面図である。ボール8には、ねじ軸2の外面溝2aとナット部材5の内面溝5aとの間の通路11よりも直径が大きいオーバーサイズのボール8が使用される。ボール8は、外面溝2aと内面溝5aとの間で圧縮される。
図7(b)の符号8a,8bは、接触角線である。ねじ軸2の外面溝2aのピッチPは、外面溝2aの全長にわたって実質的に一定である。ナット部材5の内面溝5aのピッチPも、内面溝5aの全長にわたって実質的に一定である。
【0044】
図6に示すように、ナット部材5の外面には、平らな平取り部5cが形成される。平取り部5cには、接着剤等の接着手段によってセンサ24が取り付けられる。センサ24は、ナット部材5の外面に、通路11の軸方向の一端と軸方向の他端との間(
図7の3Pで示す範囲内)に配置される。
【0045】
図8(a)は、オーバーサイズ転動体予圧によるナット部材5の外面の変形を示す模式図である。
図8(a)に示すように、オーバーサイズ転動体予圧によって、ボール8からナット部材5に半径方向の力Pが働き、ナット部材5は、その外周部が膨らむように変形する。このため、
図8(a)(b)に示すように、ナット部材5の外面には、円周方向に広がるひずみ32(引張りひずみ)が発生する。また、ナット部材5の外周部の膨らみのポアソン比分だけ、軸方向に縮みひずみ31(圧縮ひずみ)が発生する。円周方向ひずみ32は、軸方向ひずみ31よりも大きい。
【0046】
図8(c)は、発熱によるナット部材5の外面の変形を示す模式図である。一方、発熱によるナット部材5の寸法変化は、軸方向と円周方向で均一に発生する。軸方向ひずみ33と円周方向ひずみ34は略同一である。
【0047】
第1の実施形態のねじ装置1と同様に、センサ24は、ナット部材5の外面の円周方向ひずみを検出する一対の円周方向ひずみセンサA,Cと、ナット部材5の外面の軸方向ひずみを検出する一対の軸方向ひずみセンサB,Dと、を備える(
図4(a)参照)。一対の軸方向ひずみセンサB,Dは、ブリッジ回路30の対辺に配置される(
図4(b)参照)。一対の円周方向ひずみセンサA,Cは、ブリッジ回路30の他の対辺に配置される(
図4(b)参照)。
【0048】
第2の実施形態のねじ装置41によれば、予圧と発熱で挙動が異なる軸方向ひずみセンサB,Dと円周方向ひずみセンサA,Cの出力に基づいて、予圧を検知することで、センサ24の出力を大きくして予圧を精度よく検知できると共に、センサ24の出力が発熱によって影響されるのを低減できる。
(第3の実施形態)
【0049】
図9に示すように、第3の実施形態のねじ装置51は、ねじ軸2と、シングルのナット部材5と、を備える。第3の実施形態のねじ装置51の基本構成は、第2の実施形態のねじ装置41と略同一である。第3の実施形態のねじ装置51の予圧は、オフセッ予圧である。
【0050】
ねじ軸2の構成は、第1の実施形態と略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。ナット部材5の構成は、第2の実施形態のねじ装置41のナット部材5と略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0051】
図9は、オフセット予圧の原理を説明する図である。
図9に示すように、ナット部材5の内面溝5aの一部5a1は、他の一部5a2に対してナット部材5の軸方向にオフセットする。内面溝5aの一部5a1のリードはLであり、内面溝5aの他の一部5a2のリードはLであり、一部5a1と他の一部5a2との間のオフセット部52のリードはL+αである。符号8a,8bは接触角線を示す。内面溝5aの一部5a1を含む循環路と、内面溝5aの他の一部5a2を含む循環路とは、軸方向に離れている。なお、2条の内面溝5aの条間でオフセット予圧をかけてもよい。
【0052】
ナット部材5の外面の平取り部5cには、接着剤等の接着手段によってセンサ24が取り付けられる(
図6参照)。センサ24は、ナット部材5の外面に、ナット部材5の内面溝5aの一部5a1と他の一部5a2との間のオフセット部52に配置される。
【0053】
図10(a)は、オフセット予圧によるナット部材5の外面の変形を示す模式図である。ナット部材5のオフセット部52には、接触角線8a,8bの方向に荷重が働く(
図9(a)参照)。このため、ナット部材5のオフセット部52の外面には、軸方向に縮むひずみ31(圧縮ひずみ)が発生する。また、ナット部材5のオフセット部52の外面には、円周方向に広がるひずみ32(引張りひずみ)が発生する。なお、オフセット予圧による円周方向ひずみ32は、ダブルナット予圧による円周方向ひずみ32(
図3(a)参照)よりも大きい。ナット部材5が一体だからである。
【0054】
図10(b)は、発熱によるナット部材5の外面の変形を示す模式図である。一方、発熱によるナット部材5の寸法変化は、軸方向と円周方向で均一に発生する。軸方向ひずみ33と円周方向ひずみ34は略同一である。
【0055】
第1の実施形態のねじ装置1と同様に、センサ24は、ナット部材5の外面の円周方向ひずみを検出する一対の円周方向ひずみセンサA,Cと、ナット部材5の外面の軸方向ひずみを検出する一対の軸方向ひずみセンサB,Dと、を備える(
図4(a)参照)。一対の軸方向ひずみセンサB,Dは、ブリッジ回路30の対辺に配置される(
図4(b)参照)。一対の円周方向ひずみセンサA,Cは、ブリッジ回路30の他の対辺に配置される(
図4(b)参照)。
【0056】
第3の実施形態のねじ装置51によれば、予圧と発熱で挙動が異なる軸方向ひずみセンサB,Dと円周方向ひずみセンサA,Cの出力に基づいて、予圧を検知することで、センサ24の出力を大きくして予圧を精度よく検知できる共に、センサの出力が発熱によって影響されるのを低減できる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化可能である。例えば、転動体にはボールの替わりにローラを使用してもよい。
【0058】
上記実施形態のダブルナット予圧のねじ装置では、2つのナット間に間座を介在させているが、間座の替わりにばねを介在させることもできる。また、2つのナットを締め込むように回転させ、2つのナットに固定ピンを入れて2つのナットをまわり止めしてもよい。この場合、センサは、2つのナットの対向端部の少なくとも一方に配置される。
【0059】
上記実施形態では、ナット部材の外面にひずみセンサを取り付けているが、ナット部材の内面にひずみセンサを取り付けることもできる。
【0060】
上記実施形態では、ナット部材の外面にひずみセンサを取り付けているが、ナット部材の外面に穴を形成し、穴の底面にセンサを配置してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,41,51…ねじ装置、2…ねじ軸、2a…外面溝、3,5…ナット部材、4,5…ナット、4a,5a…内面溝、5a1…内面溝の一部、5a2…内面溝の他の一部、5c,6c…平取り部、6…間座、7,8…転動体、11…通路、12…戻し路、30…ブリッジ回路、52…オフセット部、A,C…円周方向ひずみセンサ、B,D…軸方向ひずみセンサ