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特許7166217処理装置、処理済みデータの収集方法、及びデータ収集システム
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  • 特許-処理装置、処理済みデータの収集方法、及びデータ収集システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】処理装置、処理済みデータの収集方法、及びデータ収集システム
(51)【国際特許分類】
   G08C 15/00 20060101AFI20221028BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G08C15/00 E
H04Q9/00 311J
H04Q9/00 321B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019084328
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020181389
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 修平
(72)【発明者】
【氏名】得能 正朝
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163506(JP,A)
【文献】特開2011-216973(JP,A)
【文献】特開2015-19278(JP,A)
【文献】特開2004-146893(JP,A)
【文献】特開2007-26187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
H04Q 1/00-11/08
H04L 1/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理量を計測するように構成されたセンサに接続され、該センサから送信される計測データに対して所定処理を行う処理装置であって、
外部と前記処理装置との間の通信を行う通信部と、
前記処理装置と外部のサーバ装置との間にネットワークが構築される前の状態において、該処理装置から該サーバ装置に前記所定処理が行われた処理済みデータを送信するために該処理装置と該サーバ装置との間の中継処理を行う中継装置が前記通信部に対して通信可能に接続されたときに、該サーバ装置において該処理済みデータを格納する所定領域を示す送信先情報を、該中継装置から取得する取得部と、
前記送信先情報が取得された後、前記中継装置が前記中継処理を実行可能な形式で、前記処理済みデータに対して該送信先情報が示す前記所定領域に関連する情報を付加して送信処理済みデータを生成する生成部と、
前記送信処理済みデータを前記中継装置に対して出力する出力部と、
を備える、処理装置。
【請求項2】
前記中継装置は、前記中継処理を提供する対象処理装置を識別するための対象識別情報を有し、
前記処理装置が前記通信部を介して前記中継装置に接続されたときに、該中継装置において該処理装置の識別情報と該中継装置が有する前記対象識別情報とが照合された結果、該処理装置が該対象処理装置と判断された場合に、前記取得部は、前記送信先情報を該中継装置から取得する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記中継装置が前記通信部に対して初めて通信可能に接続されたときに、前記送信先情報を該中継装置から取得し、
前記送信先情報が取得された後に、前記センサから送信された前記計測データに対する前記所定処理が許可される、
請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記処理装置は、複数の前記センサに接続され、前記複数のセンサから送信されるそれぞれの前記計測データに対して前記所定処理を行うことで該複数のセンサのそれぞれに対応する前記処理済みデータを生成し、
前記生成部は、前記処理済みデータと前記複数のセンサのそれぞれとの関連性が理解でき、且つ、前記中継装置が前記中継処理を実行可能な形式で、前記送信処理済みデータを生成する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記処理装置は、前記処理済みデータの送信先を新しい送信先に変更する変更指令を取得すると、既に取得している前記送信先情報は、該変更指令に基づいて該新しい送信先に関連する新しい送信先情報に更新され、
前記生成部は、前記中継装置が前記処理装置と前記新しい送信先との間の中継処理が実行可能となるように、前記処理済みデータに対して前記新しい送信先情報に基づいて新しい送信処理済みデータを生成する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の処理装置。
【請求項6】
所定の物理量を計測するように構成されたセンサに接続された処理装置において、該センサから送信される計測データに対して所定処理が行われた処理済みデータを収集する方法であって、
前記処理装置からネットワーク上のサーバ装置に前記処理済みデータを送信するために
該処理装置と該サーバ装置との間の中継処理を行う中継装置が、前記処理装置が有する通信部に対して通信可能に接続されたときに、該サーバ装置において該処理済みデータを格納する所定領域を示す送信先情報を、該中継装置から取得するステップと、
前記送信先情報が取得された後、前記中継装置が前記中継処理を実行可能な形式で、前記処理済みデータに対して該送信先情報が示す前記所定領域に関連する情報を付加して送信処理済みデータを生成するステップと、
前記送信処理済みデータを前記中継装置に対して出力するステップと、
を含む、処理済みデータの収集方法。
【請求項7】
所定の物理量を計測するように構成されたセンサに接続され、該センサから送信される計測データに対して所定処理を行う処理装置と、
ネットワーク上のサーバ装置と、
前記処理装置から前記サーバ装置に前記所定処理が行われた処理済みデータを送信するために該処理装置と該サーバ装置との間の中継処理を行う中継装置と、
を備える、データ収集システムであって、
前記処理装置は、
外部と前記処理装置との間の通信を行う通信部と、
前記中継装置が前記通信部に対して通信可能に接続されたときに、前記サーバ装置において前記処理済みデータを格納する所定領域を示す送信先情報を、該中継装置から取得する取得部と、
前記送信先情報が取得された後、前記中継装置が前記中継処理を実行可能な形式で、前記処理済みデータに対して該送信先情報が示す前記所定領域に関連する情報を付加して送信処理済みデータを生成する生成部と、
前記送信処理済みデータを前記中継装置に対して出力する出力部と、
を備える、データ収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサなどのデバイスによって得られたデータを収集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
センサネットワークと呼ばれる技術が検討されている。これは、センシング機能と通信機能をもつセンサを様々な場所、移動体、産業設備などに設置し、それらをネットワーク化することで、センシングデータの収集、管理、シームレスな利用を可能とするものである。これに関する技術として、センサが検出した信号を増幅して加工し、外部の装置に無線送信するセンサアンプが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、複数のセンサと無線通信可能に構成されたクレードル装置を介したデータ収集に関する技術が開示されている。当該技術では、クレードル装置に各センサからのデータが送信され、そこで記憶される。そして、当該クレードル装置に携帯端末が設置されたときに、クレードル装置に記憶されているデータが、当該携帯端末の通信機能を利用して、ネットワークを介して所定のサーバに送信される。この構成により、サーバに順次、センサからのデータが収集されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-26925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサによって計測された計測データに対しては、一般に所定の処理が施される。例えば、センサの出力が微弱である場合には、その計測データが通信途中にノイズの影響を受けないようにするために計測データの出力を増幅する処理が行われる場合がある。また、計測データ自体は、計測の対象である所定の物理量等を詳しく表すデータではあるものの、そのままのデータでは、その容量が非常に大きくなり、センサネットワークの通信負荷が大きくなったり、センサネットワークに設けられる記憶装置の容量をいたずらに消費したりする。そのため、計測データの容量を低減するための処理を行う場合もある。
【0006】
一方で、従来技術では、センサからの計測データをネットワーク上のサーバ装置に収集するためのネットワーク構築については、十分な検討がなされているとは言えない。そのため、ユーザは、センサネットワークを構築する場合に多くの労力を要することになる。特にセンサネットワークの構築に当たり計測データの高い安全性が求められると、センサネットワークの構築はより困難なものとなる。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、センサから必要とするデータを好適に収集するセンサネットワークを容易に構築する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、上記課題を解決するために、本発明の処理装置は、センサからの計測データに対して所定処理を施すとともに、その所定処理が施された処理済みデータを送信する際に、中継装置から取得した送信先情報と処理済みデータとを組み合わせて、当該中継装置が中継処理を行うために理解可能な送信処理済みデータを生成する構成を採用した。このような構成により、処理装置と中継装置が通信可能に接続されることをトリガーとして所定の送信先に対して処理済みデータを送信できるセンサネットワークが容易に構成
されることになる。
【0009】
詳細には、本発明は、所定の物理量を計測するように構成されたセンサに接続され、該センサから送信される計測データに対して所定処理を行う処理装置であって、外部と前記処理装置との間の通信を行う通信部と、前記処理装置と外部のサーバ装置との間にネットワークが構築される前の状態において、該処理装置から該サーバ装置に前記所定処理が行われた処理済みデータを送信するために該処理装置と該サーバ装置との間の中継処理を行う中継装置が前記通信部に対して通信可能に接続されたときに、該サーバ装置において該処理済みデータを格納する所定領域を示す送信先情報を、該中継装置から取得する取得部と、前記送信先情報が取得された後、前記中継装置が前記中継処理を実行可能な形式で、前記処理済みデータに対して該送信先情報が示す前記所定領域に関連する情報を付加して送信処理済みデータを生成する生成部と、前記送信処理済みデータを前記中継装置に対して出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
センサから必要とするデータを好適に収集するセンサネットワークを容易に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る演算アンプを含むデータ収集システムの概略構成を示す第1の図である。
図2】実施形態に係る演算アンプで生成される処理済みデータと送信処理済みデータの構成を表す図である。
図3】実施形態に係る演算アンプとルータとの間で行われる、センサからの計測データの収集のためのセンサネットワークを構築するための処理の流れを表す図である。
図4】実施形態に係る演算アンプで実行される更新処理のフローチャートである。
図5】実施形態に係る演算アンプを含むデータ収集システムの概略構成を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の処理装置は、接続されたセンサから送信されてくる計測データに対して所定処理を行う。当該センサにより計測される所定の物理量は、サーバ装置におけるデータ収集の目的に基づいて設定することができる。そして、処理装置は、そのセンサによる計測データに対して所定処理を施すように構成される。当該所定処理は、センサによる計測データを、サーバ装置において収集されるべきデータとするための処理であり、一例としては、処理装置からサーバ装置に送信されるデータの耐ノイズ性を高めるための増幅処理や、データ容量の低減やデータ内容の加工、編集を目的とした計測データの加工処理であってもよい。そして、センサからの計測データに対して所定処理が施されたデータは、本願においては処理済みデータとされる。なお、処理装置に接続されるセンサの数は、1つでもよく複数でもよい。
【0013】
ここで、処理装置では、処理装置とサーバ装置との間にネットワークが構築される前の状態において、中継装置が通信部に対して通信可能に接続されたときに、取得部によって当該中継装置から送信先情報が取得される。ここでいう「ネットワークが構築される前の状態」とは、処理装置からサーバ装置に処理済みデータを送信しサーバ装置において収集することを可能とする通信ネットワークが未だ構成されていない状態を意味する。したがって、「ネットワークが構築される前の状態」においては、処理装置とサーバ装置との間に当該通信ネットワークを構築しなければ、データ収集が実現できない。そのような「ネットワークが構築される前の状態」において、取得部により取得される送信先情報は、処理済みデータを格納すべきサーバ装置内の所定領域を示す情報である。当該所定領域は、
好ましくは第三者からのアクセスが制限されたセキュアな領域であってもよく、その場合には、送信先情報には、そのアクセスを可能とするための情報(例えば、パスワード情報)が含まれてもよい。なお、本願明細書において、サーバ装置は、一又は複数のサーバ装置で構成されてもよい。また、所定領域は、サーバ装置における記憶領域の一部又は全部の領域であってもよく、領域の数は必ずしも一つには限られない。
【0014】
そして、取得部が、当該送信先情報を通信部に対して接続された中継装置から取得するように構成される。このような構成によれば、処理装置は、当該処理装置と中継装置とが通信可能に接続されることをトリガーとして、送信先情報が取得されることになる。好ましくは、取得部は、中継装置が通信部に対して初めて通信可能に接続されたときに送信先情報を取得する。取得部が、送信先情報を取得すると、処理装置としては、処理済みデータを送信すべき場所、すなわち処理済みデータが収集されるサーバ装置の所定領域を認識することができる。
【0015】
そこで、送信先情報が取得された後は、生成部により送信処理済みデータの生成が行われる。送信処理済みデータは、処理済みデータに対して送信先情報が示す所定領域に関連する情報、すなわち、処理済みデータが格納されるべき場所の情報が付加されたものであり、中継装置が当該送信処理済みデータを受信すると当該送信処理済みデータに含まれる処理済みデータを、どこに中継すべきかが理解でき以て中継処理が実行可能となるように構成されているデータである。なお、処理装置に複数のセンサが接続される場合、複数のセンサから送信されるそれぞれの計測データに対して上述の所定処理を行うことで各センサに対応する処理済みデータを生成してもよい。その場合、生成部は、処理済みデータと複数のセンサのそれぞれとの関連性が理解でき、且つ、中継装置が中継処理を実行可能な形式で、送信処理済みデータを生成すればよい。そして、生成された送信処理済みデータは、出力部により中継装置に対して出力される。上記の通り、中継装置は、送信処理済みデータに含まれる処理済みデータをどこに送信すべきかを理解できるため、送信処理済みデータに対して好適な中継処理を実現することができる。
【0016】
このように処理装置が、取得部、生成部、出力部を備えることで、処理装置と中継装置とが通信可能に接続されることをトリガーとして送信先情報が取得される。そして、送信先情報が取得されると、生成部による送信処理済みデータの生成が可能となり、出力部による送信処理済みデータの中継装置への出力が行われる。この結果、当該処理装置では、送信先情報の取得をトリガーとして、処理装置から中継装置を経由してサーバ装置の所定領域に至るまでのセンサネットワークが形成されることになる。このことは、センサネットワークを構築するための負荷として、中継装置を処理装置に通信可能に接続すること以外の負荷をユーザに対して課するものではないから、センサネットワークの構築を極めて容易なものとすることができる。
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
<第1の実施形態>
図1を参照して、第1の実施形態に係るセンサにより計測された計測データの収集システムの全体的な構成について説明する。このデータ収集システムは、複数のセンサから計測値を収集するためのシステムであって、所定の物理量を計測するように構成された一又は複数のセンサ10と、センサ10の出力(計測データ)に対して所定処理を行うように構成された演算アンプ20と、演算アンプ20からの出力データを蓄積するサーバ装置50と、演算アンプ20とサーバ装置50との間でデータの中継処理を行う中継装置として機能するルータ30と、を含んで構成される。なお、本実施形態のデータ収集システムで
は、演算アンプは1台のみ示しているが、当該システムに複数台の演算アンプ20が含まれてもよい。また、1台の演算アンプ20に対して1台のルータ30が必ずしも接続される必要は無く、複数台の演算アンプ20に対して1台のルータ30が接続されていても構わない。
【0019】
ここで、センサ10のそれぞれは演算アンプ20の各入出力ポートに有線若しくは無線で接続され、演算アンプ20とルータ30との間も有線若しくは無線で接続される。また、ルータ30とサーバ装置50との間は、図示されない基地局等を経由してインターネット等の広域ネットワークまたはLANによって通信可能に接続される。なお、ネットワークは単一のネットワークに限らず、センサ10による計測データの送受信が実現できれば、どのような形態のネットワークを利用してもよい。
【0020】
ここで、センサ10は、センシング対象の物理量やその変化を検出し出力するデバイスである。センサ10の典型的な例として、位置センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、圧力センサ、荷重センサ、音センサ、赤外線センサ、姿勢センサ、降雨センサ、放射線センサ、ガスセンサ、加速度センサ、ジャイロスコープ、GPSセンサなどが挙げられる。また、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、モバイルPC、ドローンなどの機器は様々な種類のセンサを搭載しているため、これらの機器をセンサとして取り扱うこともできる。また、工場のFAや生産管理、都市交通制御、気象等の環境計測、ヘルスケア、防犯など、世の中のあらゆる場所に様々な用途・目的で多数のセンサが既に設置されているが、これらのセンサを本システムに接続することも可能である。なお、複数種類のセンサを混在させてもよい。一例として、図1に示す態様では、所定の機械設備100の各部位に配置されて、その部位の物理量の計測を行う複数のセンサ10が、演算アンプ20に接続されている。
【0021】
また、演算アンプ20は、一つまたは複数のセンサ10と有線または無線により通信し、センサ10の管理、センサ10からの計測値の取得などを行うコンピュータである。演算アンプ20は、CPU(プロセッサ)、メモリ、補助記憶装置(HDD等)、通信装置、入力装置、表示装置などを備える汎用のコンピュータにより構成できる。演算アンプ20の各種機能は、CPUが必要なプログラムを実行することにより実現される。具体的には、演算アンプ20は、データ受信部21、処理部22、通信部23、取得部24、生成部25、出力部26、記憶部27、更新部28の機能部を有する。演算アンプ20は、これらの機能部以外の機能部を有していてもよい。
【0022】
データ受信部21は、演算アンプ20に接続されている各センサ10で計測された計測データを受信する機能部である。データ受信部21により受信される計測データは、いわば各センサ10が出力したデータそのものである。データ受信部21は、受信した計測データがいずれのセンサ10により計測されたものであるか判別可能な状態で、当該計測データを受信する。そして、演算アンプ20においては、この受信された計測データに対して処理部22による所定処理が行われる。処理部22は、センサ10からの計測データに対して所定処理(例えばノイズ除去などの信号処理、S/Nを高める増幅処理、平均処理などの演算、サンプリング、データ圧縮、タイムスタンプの付与など)を施す機能部である。当該所定処理は、サーバ装置30によるデータ収集の目的等を考慮して、その内容が適宜設定される。また、処理部22は、センサ10からの計測データに基づいて、共通フォーマットのデータを生成する機能を実行してもよい。
【0023】
ここで、処理部22により所定処理が施された計測データを「処理済みデータ」と称し、その一例を図2の上段(a)に示す。処理済みデータは、何れのセンサ10による計測データがベースとなっているかを判別するために、そのベースとなったセンサを識別する「センサID」をフィールドとして有する。更に、処理済みデータは、所定処理を行うよ
うに構成された演算アンプを識別するための「アンプID」、センサにより計測された日時を表す「計測日時」、計測データの種類を表す「センサ種類」、所定処理が施された後の計測値を格納する「処理済み計測値」の各フィールドを有する。所定処理としては、増幅処理や平均処理等複数の処理が採用されてもよい。
【0024】
通信部23は、演算アンプ20をルータ30に通信可能に接続するための通信インタフェースである。次に、取得部24は、データ収集のため演算アンプ20とサーバ装置50との間にネットワークが構築される前の状態において、そのサーバ装置50において上記の処理済みデータが収集され格納される所定領域を示す情報、すなわち演算アンプ20から処理済みデータをサーバ装置50に送信するときの送信先情報を取得する機能部である。取得部24は、ルータ30が通信部23に通信可能に接続されたときにルータ30から当該送信先情報を取得する。
【0025】
そして、生成部25は、取得部24による送信先情報の取得が行われた後に、処理済みデータに対して送信先情報が示す、サーバ装置50における上記所定領域に関連する情報(以下、「付加情報」という)を付加して、サーバ装置50に送信するためのデータである送信処理済みデータを生成する機能部である。付加情報は、ルータ30が中継処理を行うことで処理済みデータをサーバ装置50の所定領域に届けることを可能とする情報であり、当該付加情報は、送信先情報そのものであってもよく、送信先情報に含まれる一部の情報又は送信先情報から生成される新たな情報であってもよい。ここで、図2の下段(b)に送信処理済みデータの一例を示す。送信処理済みデータは、図2の上段(a)に示す処理済みデータに対して、更に上記付加情報を格納する「送信先」フィールドを有している。送信処理済みデータを受け取ったルータ30は、当該データの「送信先」フィールドの情報を用いて、送信処理済みデータをサーバ装置50へ中継することが可能となる。そして、生成部25により生成された送信処理済みデータは、出力部26によって通信部23を介してルータ30へと出力されることになる。
【0026】
また、記憶部27は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。補助記憶装置は、処理部22、取得部24、生成部25、更新部28等の機能部で実行されるプログラムや、当該プログラムが利用するデータが記憶される装置である。補助記憶装置には、これらの機能部で実行されるプログラムをアプリケーションとしてパッケージ化したものを記憶してもよい。また、これらのアプリケーションを実行するためのオペレーティングシステムを記憶してもよい。主記憶装置は、上記機能部によって実行されるプログラムや、当該プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。また、主記憶装置にはデータ受信部21によって受信された計測データや取得部24によって取得された送信先情報が記憶されてもよい。主記憶装置は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含んでもよい。また、補助記憶装置は、EPROM(Erasable Programmable ROM)やハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)を含んでもよい。さらに、補助記憶装置は、リムーバブルメディア、すなわち可搬記録媒体を含んでもよい。リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、あるいは、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)のようなディスク記録媒体を採用できる。
【0027】
また、更新部28は、取得部24によって取得されている送信先情報を更新する機能部である。更新部28による送信先情報の更新は、送信処理済みデータの中継処理を行うルータ30から受け取った指令や、演算アンプ20が有する不図示の入力部を介してユーザにより入力された指令等に基づいて、適宜実行され得る。
【0028】
次に、ルータ30について説明する。ルータ30は、演算アンプ20とサーバ装置50との間の中継処理を行うコンピュータである。ルータ30は、CPU(プロセッサ)、メ
モリ、補助記憶装置(HDD等)、通信装置、入力装置、表示装置などを備える汎用のコンピュータにより構成できる。ルータ30の各種機能は、CPUが必要なプログラムを実行することにより実現される。具体的には、ルータ30は、通信部31、記憶部32、照合部33、送信制御部34の機能部を有する。
【0029】
通信部31は、ルータ30を演算アンプ20及びサーバ装置50に通信可能に接続するための通信インタフェースである。記憶部32は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成され、上記の記憶部27と概ね同様であるため、その詳細な説明は割愛する。記憶部32には、上記の送信先情報と、その送信先情報を引き渡すべき相手である演算アンプ20を識別するための情報も記憶される。照合部33は、データ収集のために演算アンプ20とサーバ装置50との間にネットワークが構築される前の状態において、演算アンプ20とルータ30とが互いに通信可能に接続されたときに、その接続をトリガーとして取得部24がルータ30から送信先情報の取得を行うために、当該演算アンプ20が当該送信先情報を取得する権限を有しているか照合する機能部である。具体的には、記憶部32に記憶されている演算アンプ20を識別するための情報と、実際に接続された演算アンプ20から送られてくる識別情報とを照合する。そして、送信制御部34は、演算アンプ20から送られてくる送信処理済みデータを、サーバ装置50に中継する処理を行う機能部であり、具体的には、送信制御部34は、送信処理済みデータの「送信先」フィールドの情報を用いて、送信処理済みデータを、通信部31を介してサーバ装置50へ中継する。
【0030】
次に、サーバ装置50について説明する。サーバ装置50は、演算アンプ20から出力されてルータ30によって中継されてきた、各センサ10からのデータを蓄積するサーバ装置である。サーバ装置50も、CPU(プロセッサ)、メモリ、補助記憶装置(HDD等)、通信装置、入力装置、表示装置などを備える汎用のコンピュータにより構成できる。サーバ装置50の各種機能は、CPUがプログラムを実行することにより実現される。具体的には、サーバ装置50は、通信部51、記憶部52、制御部53の機能部を有する。
【0031】
サーバ装置50は、一般的なコンピュータにより構成される。すなわち、サーバ装置50は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータである。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。なお、サーバ装置50は、単一のコンピュータで構成されてもよいし、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0032】
通信部51は、サーバ装置50をネットワークに接続するための通信インタフェースである。記憶部52は、主記憶装置と補助記憶装置を含み、制御部53において実行されるプログラムや、当該プログラムが利用するデータが記憶される装置である。記憶部52は、ルータ30により中継処理されてきた送信処理済みデータを蓄積するデータベースを有している。当該データベースは、制御部53によって実行されるデータベース管理システム(DBMS)のプログラムが、記憶部52に記憶されるデータを管理することで構築される。本実施形態において利用されるデータベースは、例えばリレーショナルデータベースである。制御部53は、サーバ装置50が行う制御を司る演算装置である。制御部53は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。
【0033】
ここで、図1に示す情報処理システムを構築するために、演算アンプ20とルータ30との間で行われる処理について、図3に基づいて説明する。なお、図3におけるS101とS102では、演算アンプ20とルータ30との間では通信可能な接続は確立されておらず、各装置が独立した状態に置かれている。先ず、S101では、演算アンプ20に対して各センサ10が接続される。その接続をトリガーとして、S102では、接続されたセンサ10が、演算アンプ20によってデータ収集が可能なセンサであるか識別するための識別処理が行われる。当該識別処理はデータ受信部21によって行われ、具体的には、接続されたセンサ10から得られる、該センサ10の識別情報等に基づいて、当該識別処理が行われる。識別処理の結果、接続されたセンサ10が対応可能なセンサである場合には、そのセンサ10からの計測データを、データ受信部21が受信可能な状態となるが、実際には後述のS109~S111の処理が完了するまでは計測データの受信は待機させられる。なお、別法として、センサ10からの計測データをデータ受信部21が受信可能な状態となっていることをもって、当該計測データを一時的に演算アンプ20の記憶部27に記憶しておき、並列してS103~S111の処理を行ってもよい。一方で、接続されたセンサ10が対応可能なセンサでない場合には、演算アンプ20の不図示の通知部を介して、ユーザに対してそのセンサ10が不適合である旨の通知が行われる。
【0034】
そして、センサ10が接続された演算アンプ20の通信部23に対して、ルータ30の通信部31が接続されると、演算アンプ20とルータ30のそれぞれにおいて、相手との接続を認識する処理が行われる。演算アンプ20とルータ30との接続状態は、例えば、通信部23と通信部31とを有線にて接続し両装置の電源が入っている状態をいう。そして、このような接続状態が形成されたことをトリガーとして、演算アンプ20の中ではS103においてルータ30との接続が認識され、ルータ30の中ではS104において演算アンプ20との接続が認識される。なお、この時点では、演算アンプ20とサーバ装置50との間には、データ収集のためのネットワークはまだ構築されておらず、演算アンプ20は、各センサ10から届けられる計測データを外部に対して送信することはできない状態である。S103とS104の処理が完了すると、演算アンプ20とルータ30は、通信可能に接続された状態となる。
【0035】
そして、両者の間で通信可能な接続状態が形成されると、ルータ30から演算アンプ20に対して、演算アンプ20の識別情報の要求信号が出される(S105の処理)。そして、当該要求信号を受け取ると、演算アンプ20は、自己の識別情報をルータ30に対して送信する(S106の処理)。続いて、ルータ30の照合部33は、S107の処理において、演算アンプ20から届いた識別情報と、予め記憶部32に記憶されていた、当該ルータ30による中継処理が提供されることになっている対象の演算アンプを識別するための識別情報とを照合する処理が行われる。当該照合処理の目的は、ルータ30に対して通信可能に接続された演算アンプ20が、ルータ30による中継処理によるデータ送信先に関する情報である送信先情報を取得する権限を有しているか否かを判断するためである。そして、S107の照合処理の結果、接続された演算アンプ20が当該権限を有していることが判明されれば、記憶部32に記憶されている送信先情報(本実施形態の場合は、サーバ装置50の記憶部52に予め設定されている、演算アンプ20からのデータ収集のための所定の記憶領域を示す情報)が、ルータ30から演算アンプ20に送信される(S108の処理)。
【0036】
この結果、S109の処理において、演算アンプ20の取得部24は、ルータ30から送信先情報を取得することになる。取得された送信先情報は、記憶部27に記憶される。当該送信先情報が取得されると、演算アンプ20は、各センサ10から届けられる計測データに関する情報、すなわち、図2の上段(a)に示す処理済みデータを収集するための送信先を把握した状態となる。このことは、ルータ30の中継処理を経て、処理済みデータをサーバ装置50に届けるためのネットワークが、演算アンプ20とサーバ装置50と
の間に実質的に形成することができるようになったことを意味する。そこで、続くS110の処理では、各センサ10によるデータ計測の許可とともに、各センサ10から演算アンプ20に届けられる計測データに対する所定処理の許可が出される。これにより、演算アンプ20において、処理部22による所定処理が実行されることになり、図2の上段(a)に示す処理済みデータが生成されることになる。
【0037】
そして、処理部22による所定処理を経て生成された処理済みデータに基づいて、生成部25によって送信処理済みデータが生成される(S111の処理)。送信処理済みデータは、図2の下段(b)に示すように、処理済みデータに対してその送信先を示す情報が付加されたデータである。その後、S112の処理において、出力部26によって生成された送信処理済みデータは、ルータ30に対して出力される。そして、その送信処理済みデータを受け取ったルータ30においては、送信制御部34により、送信処理済みデータに含まれる送信先、すなわちサーバ装置50の記憶部52における所定の記憶領域に向かって中継処理が行われる(S113の処理)。
【0038】
図3に示す処理において演算アンプ20がルータ30から送信先情報を取得した後は、演算アンプ20において、各センサ10で順次計測された計測データに基づいて送信処理済みデータが生成され、ルータ30に対して出力される。この結果、サーバ装置50に、送信処理済みデータが収集されていく。特にS103~S112の一連の処理によると、ルータ30が演算アンプ20に初めて通信可能に接続されたことをトリガーとして、各センサ10による計測データを収集するためのネットワークが構築されることになり、これらの処理は、演算アンプ20とルータ30との間で自動的に行われるため、当該ネットワークの構築が容易である。
【0039】
続いて、図4に基づいて、送信先情報の更新処理について説明する。上記の通り、演算アンプ20とルータ30とが初めて通信可能に接続されたときに、演算アンプ20がルータ30から送信先情報を取得するが、当該送信先情報を更新する必要がある場合がある。例えば、データ収集先をサーバ装置50から別のサーバ装置に恒常的に変更する場合や、サーバ装置50のメンテナンス等のために一時的に別のサーバ装置に変更する場合等が例示できる。
【0040】
そこで、更新処理においては、先ずS201で、取得部24により既に取得され記憶部27に記憶されている送信先情報を変更する旨の変更指令を受信したか否かが判定される。当該変更指令は、サーバ装置50からルータ30を介して受け取ったり、演算アンプ20が有する不図示の入力部を介してユーザにより入力されたりしてもよい。S201で肯定判定されると、処理はS202へ進み、否定判定されると更新処理は終了する。
【0041】
続いて、S202では更新部28により送信先情報の更新が行われる。なお、新たな送信先情報は、上記の変更指令とともに、サーバ装置50から演算アンプ20に送信されたりユーザにより入力されたりしてもよい。更新された送信先情報は、記憶部27に記憶される。S202の処理が終了すると、S203へ進む。
【0042】
S203では、この時点で、生成部25により既に生成された送信処理済みデータであるが出力部26によってまだルータ30に対して出力されずに演算アンプ20内に存在する未出力データがあるか否かが判定される。このような未出力データは、更新された送信先情報が反映されていないデータであるから、そのままルータ30に出力されると、データ収集が適切に行われない可能性がある。そこで、S203で肯定判定された場合、すなわち、このような未出力データが演算アンプ20に残っている場合にはS204の処理が行われる。S204では、既に生成されている送信処理済みデータに含まれる送信先フィールドの情報が、更新された送信先情報を反映させた情報に修正される。なお、S203
で否定判定された場合には、S204の処理は行われない。
【0043】
そして、S204の処理の後、又は、S203で否定判定された後、S205においては、更新された送信先情報に従って、生成部25による送信処理済みデータが生成される。
【0044】
このように図4に示す更新処理が実行されることで、更新された送信先情報に従って、各センサ10からの計測情報を好適に収集することが可能となる。
【0045】
<第2の実施形態>
図5を参照して、第2の実施形態に係る計測データの収集システムの全体的な構成について説明する。なお、図5に示す収集システムの構成のうち、図1に示す収集システムの構成と実質的に同一のものについては同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。図5に示す収集システムでは、演算アンプ20とルータ30の間に制御装置40が介在するとともに、制御装置40には、複数の演算アンプ20が通信可能に接続されている。
【0046】
制御装置40は、CPU(プロセッサ)、メモリ、補助記憶装置(HDD等)、通信装置、入力装置、表示装置などを備える汎用のコンピュータにより構成でき、通信部41、記憶部42、制御部43の機能部を有する。なお、通信部41は、ルータ30と各演算アンプ20とを通信可能に接続するための通信インタフェースである。記憶部42は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成され、上記の記憶部27、記憶部32と概ね同様であるため、その詳細な説明は割愛する。記憶部42は、各演算アンプ20の出力部26により出力された送信処理済みデータを一時的に記憶する。制御部43は、記憶部42に一時的に記憶されている送信処理済みデータを、所定の送信タイミングに従って通信部41を介してルータ30に送信する。当該所定の送信タイミングは、予め決められたタイミングでもよく、別法として、ルータ30側から出される送信許可のタイミングであってもよい。このように制御装置40を介在させることで、演算アンプ20に送信処理済みデータが溜まり記憶部27の記憶容量が不足する事態を回避しながら、円滑にサーバ装置50に送信処理済みデータを収集させることができる。
【符号の説明】
【0047】
10・・・センサ、20・・・演算アンプ、30・・・ルータ、40・・・制御装置、50・・・サーバ装置、100・・・機械設備
図1
図2
図3
図4
図5