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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】着色反射層を有する光学道具
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20221028BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20221028BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221028BHJP
【FI】
G02B5/26
B05D5/06 101A
B32B7/023
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019120396
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2020024383
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-10-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】16/023,409
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスロウ ジエバ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ピー ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】カンニン リャン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】井口 猶二
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-48302(JP,A)
【文献】特表平9-508172(JP,A)
【文献】特表2011-504820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02B 5/26
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学道具であって、
第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面と、第3の表面とを有する着色反射層;および
前記着色反射層の前記第1の表面の外側の選択的光変調層、
を含み、
前記着色反射層が、PEDOT、チタン酸塩、ジルコン酸塩、希土類ドープCaF、遷移金属ドープSrTiO、遷移金属ドープCaTiO、鉄ドープソーダライトまたは硫黄ドープソーダライトを含む、光学道具。
【請求項2】
前記着色反射層が、アルミニウムまたは白色材料を含まない、請求項1に記載の光学道具。
【請求項3】
前記着色反射層が、第1の色であり、前記選択的光変調層が、前記第1の色とは異なる第2の色である、請求項1に記載の光学道具。
【請求項4】
前記着色反射層が、第1の色であり、前記選択的光変調層が、前記第1の色と同じ第2の色である、請求項1に記載の光学道具。
【請求項5】
前記選択的光変調層が、第1の選択的光変調層であり、前記着色反射層の前記第2の表面の外側に第2の選択的光変調層をさらに含む、請求項1に記載の光学道具。
【請求項6】
光学道具の製造方法であって、
着色反射層を基板上に堆積すること;および
選択的光変調層を前記着色反射層上に液体コーティングプロセスを用いて堆積すること、
を含み、
前記着色反射層が、PEDOT、チタン酸塩、ジルコン酸塩、希土類ドープCaF、遷移金属ドープSrTiO、遷移金属ドープCaTiO、鉄ドープソーダライトまたは硫黄ドープソーダライトを含む、光学道具の製造方法。
【請求項7】
前記選択的光変調層が、第1の選択的光変調層であり、
前記基板と前記着色反射層との間に第2の選択的光変調層を堆積することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記着色反射層を、物理蒸着プロセスを用いて堆積する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、箔、シートおよび/またはフレークの形態の光学道具などの物品に関する。光学道具は、第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面と、第3の表面とを有する着色反射層および着色反射層の第1の表面の外側の選択的光変調層を含むことができる。光学道具はまた、第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面と、第3の表面と、第3の表面の反対側の第4の表面とを有する反射層;および反射層の第1の表面の外側の第1の選択的光変調層を含むことができ、第3の表面および第4の表面のうちの少なくとも一方は、方位変調層を含む。光学道具の製造方法も開示されている。
【背景技術】
【0002】
顔料の光学属性は、顔料に存在する成分に基づいている。例えば、アルミニウムで作られた反射層などの「白色」反射層は、顔料に限られた色空間属性を提供する。さらに、アルミニウムの反射層を使用するには、水によるアルミニウムの腐食のリスクを排除するための不動態化などの、腐食保護メカニズムを追加する必要があることがある。腐食は、リフレクター機能の損失と水素の形成につながる可能性がある。これらの問題はどちらも顔料にとって有害であり、その使用を制限することがある。さらに、「白色」反射層の使用は、顔料がカラーフロップおよび/またはカラーシフト効果を生ずる能力を制限する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面と、第3の表面とを有する着色反射層および着色反射層の第1の表面の外側の選択的光変調層を含む光学道具が開示される。
【0004】
別の態様では、基板上に着色反射層を堆積すること;および液体コーティングプロセスを使用して、着色反射層上に選択的光変調層を堆積させることを含む、光学道具を製造するための方法が開示される。
【0005】
様々な実施形態の追加の特徴および利点は、一部は以下の説明に記載され、一部は説明から明らかになるか、または様々な実施形態の実施により習得することができる。様々な実施形態の目的および他の利点は、本明細書の説明で特に指摘された要素および組み合わせによって実現および達成されるであろう。
【0006】
本開示は、そのいくつかの態様および実施形態において、詳細な説明および添付の図面からより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一態様による物品の断面図である。
図2図2は、本開示の別の態様による物品の断面図である。
図3図3は、本開示の別の態様による物品の断面図である。
図4図4は、本開示の別の態様による物品の断面図である。
図5図5は、本開示の別の態様による物品の断面図である。
図6図6は、本開示の別の態様による物品の断面図である。
図7図7は、本開示の一例による、SLML層などの層の堆積を示す液体コーティングプロセスの断面図である。
【0008】
本明細書および図全体を通して、同様の参照番号は同様の要素を識別する。
【発明の詳細な説明】
【0009】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示および説明のみであり、本教示の様々な実施形態の説明を提供することを意図していることを理解されたい。その広く多様な実施形態において、本明細書に開示されるのは、例えば、箔、シートおよびフレークの形態の光学道具などの物品;ならびに物品の製造方法である。一例では、顔料などの光学道具、光学タガントおよび光学セキュリティ装置を含む物品は、簡素化された構造で製造し得る。本明細書に開示される光学道具は、例えば、反射層の劣化の低減、反射層上の水素の形成の低減および向上した色属性を含む、少なくとも1つの特性を示し得る。
【0010】
図1に示すように、光学道具などの物品10は、反射層16;および反射層の外側の、液体コーティングプロセスを使用して堆積された選択的光変調層14を含み得る。一態様では、図2に示すように、選択的光変調層14は、第1の選択的光変調層14または第2の選択的光変調層14’であり得る。反射層16は、着色反射層16とすることができる。反射層16は、むき出しの面を有することができる。反射層16は、図3および4に示すように、方位変調層12を含む少なくとも1つの表面を有することができる。
【0011】
一態様では、物品10は、物体または基板上で使用し得るシートの形態であってもよい。別の態様では、物品10は、箔またはフレークの形態であってもよい。例えば、物品10は、層状形状を有し得る。一態様では、物品10は、光学道具であり得る。別の態様では、組成物は、光学道具と液体媒体を含み得る。組成物は、インク、ワニス、塗料などとすることができる。別の態様では、物品10は、フレークの形態の光学道具であり、フレークは、例えば、100nm~100μmの厚さと100nm~1mmのサイズを有する。物品10は、色が変化する着色剤とすることができ、または通貨のセキュリティ機能として使用することができる。物品10の使用に共通する属性には、高い色度(または強い色)、視野角に対する色の変化(ゴニオクロマティシティまたは玉虫色とも呼ばれる)およびフロップ(視野角が変化すると明度、色相または色度が変化する鏡面外観および金属外観)が挙げられる。加えて、物品10は、金属色であってもよく、色を生成するのに干渉を利用することができない。特に、物品10は、角度依存色シフト効果を追加するための追加機能を含むことができる。さらに、物品10は、反射層16の縁などの、露出した金属表面の向上した化学的保護を示し得るが、物品10全体をカプセル化する必要はない。
【0012】
図は、シートの形態の光学道具などの物品10を示しているが、光学道具などの物品10は、本開示の様々な態様に従い、フレークおよび/または箔の形態であってもよい。さらに、図は特定の順序で特定の層を示しているが、当業者は、物品10が任意の順序で任意の数の層を含むことができることを理解するであろう。さらに、任意の特定の層の組成は、任意の他の層の組成と同じでも異なっていてもよい。例えば、第1の選択的光変調層(SLML)14は、第2の選択的光変調層(SLML)14’と同じ組成でも異なる組成でもよい。さらに、任意の特定の層の物理特性は、任意の他の層の物理特性と同じでも異なっていてもよい。例えば、第1のSLML14は、第1の屈折率を有する組成を有することができるが、同じ物品10の第2のSLML14’は、異なる屈折率を有する異なる組成を有することができる。別の例として、第1のSLML14は、第1の厚さである組成を有することができるが、第2のSLML14’は、第1の厚さとは異なる第2の厚さで同じ組成を有することができる。
【0013】
図1に示すように、光学道具などの物品10は、第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面と、第3の表面とを有する着色反射層16;および着色反射層16の第1の表面の外側の選択的光変調層を含むことができる。
【0014】
反射層16は、広帯域反射体、例えば、スペクトルおよびランベルト反射体(例えば、白色TiO)であってもよい。反射層16は、金属を含むことができる。反射層16は、着色反射層であり得る。本明細書で使用するとき、「着色反射層」には、着色金属、着色金属合金、着色非金属および化学的に着色化合物に変換された金属が含まれる。着色反射層16は、銅、金、銀および青銅から選択される着色金属または着色金属合金であり得る。着色反射層16は、ポリアセチレンのような有機材料、導電性ポリマー(例えば、ポリピロール、PEDOT、ポリアニリン)、半導体、ならびに金属酸化物、硫化物、塩化物、フッ化物、チタン酸塩、ジルコン酸塩、希土類ドープCaF、遷移金属ドープSrTiOおよびCaTiO、鉄または硫黄ドープソーダライトおよび金属配位錯体などの無機材料を含む着色非金属であり得る。着色反射層26は、ガス発生を制御することができる。
【0015】
一態様では、着色反射層などの反射層16は、着色化合物に化学的に変換される金属を含むことができる。例えば、化学的に変換される金属には、アルミニウム、ステンレス鋼および白色の材料が含まれ得る。一態様では、着色化合物に化学的に変換される金属には、アルミニウムおよびステンレス鋼が含まれる。一態様では、化学的に変換される金属には、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、銀、金、亜鉛、鉄、青銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、ニッケル、タングステン、スズ、インジウム、ビスマス、これらの金属のいずれかの合金またはそれらの組み合わせが含まれ得る。変換プロセスは、非着色または白色の金属を着色化合物に変換する任意のプロセスであり得る。変換プロセスは、非着色または白色の金属を反応物にさらすことを含み得る。
【0016】
反応物は、プラズマ状態、気体状態、固体状態、液体状態またはそれらの組み合わせなどの任意の状態であり得る。反応物は、制御可能な方法で、非着色または白色の金属の少なくとも一部と反応を引き起こし得る化学的または物理的要素を含み得る。一例では、水および溶媒系環境を反応物として使用できる。いくつかの例では、変換プロセスは、バッチおよび連続撹拌タンク反応物、管状反応物、回転床反応物、流動床反応物、連続流管およびバッチ炉を含むさまざまなタイプの化学反応物の使用を含み得る。
【0017】
本明細書で使用される化学浴組成物は、無機化合物または有機化合物を含むことができる。無機化合物の例には、硫黄、硫化物、硫酸塩、酸化物、水酸化物、イソシアネート、チオシアン酸塩、モリブデン酸塩、クロム酸塩、過マンガン酸塩、炭酸塩、チオ硫酸塩、コロイド金属、無機塩およびそれらの組合せのうちの少なくとも1つが含まれ得る。有機化合物の例には、チオール、チオアミン、オキシチオアミン、チオ尿素、チオシアン酸塩などの硫黄;アミンおよびイソシアネートなどの窒素;酸素;シランなどのケイ素;またはその組み合わせを含む有機化合物が含まれ得る。さらに、化学浴は、金属の無機塩もしくは有機塩または金属の金属有機化合物のうちの少なくとも1つを含むことができる。さらに別の態様では、化学浴は、酸化剤、表面改質剤および/または抑制剤を含むことができる。
【0018】
一態様では、反射層16に存在する非着色または白色の金属は、完全に変換、または99.9%変換など、その間のパーセント変換のすべての範囲を含めて、部分的に変換し得る。
【0019】
ある態様では、着色反射層16は、アルミニウムまたは白色材料、例えば、アルミニウムまたは着色化合物に化学的に変換されていない白色材料を含まない。
【0020】
一例では、反射層16の材料は、所望のスペクトル範囲で反射特性を有する任意の材料を含み得る。例えば、所望のスペクトル範囲で5%~100%の範囲の反射率を有する任意の材料。
【0021】
反射層16の厚さは、約5nm~5000nmまでの範囲であり得るが、この範囲は限定的なものと見なされるべきではない。例えば、反射層16が0.8の最大透過率を提供できるように、厚さの下限を選択することができる。
【0022】
十分な光学密度を得るおよび/または所望の効果を達成するために、反射層16の組成に応じて、より高いまたはより低い最小厚さが必要とされ得る。いくつかの例では、上限は、約5000nm、約4000nm、約3000nm、約1500nm、約200nmおよび/または約100nmであり得る。一態様では、反射層16の厚さは、約10nm~約5000nm、例えば、約15nm~約4000nm、約20nm~約3000nm、約25nm~約2000nm、約30nm~約1000nm、約40nm~約750nm、または約50nm~約500nm、例えば、約60nm~約250nmまたは約70nm~約200nmであり得る。
【0023】
図、例えば、図1に示すように、反射層16の少なくとも2つの表面/側面、例えば、図示される右(第3)および左(第4)の表面/側面はむき出しでもよい。一態様では、物品10がフレークまたは箔の形態である場合、反射層16は、図に例示されている4つより多い表面を含むことができる。それらの例では、例えば、反射層16の1、2、3、4または5つの表面が、大気にむき出しになっていてもよい。一例では、反射層16のむき出しの側面、すなわち外側層を含まない反射層16の表面は、フロップの利点となり得る。
【0024】
一態様では、光学道具などの物品10は、第1の色を有する着色反射層などの反射層16を含むことができ;選択的光変調層14は、図1に示すように、第1の色と同じ第2の色を有する。例えば、反射層16は赤色であってもよく、選択的光変調層も赤色であってもよい。
【0025】
別の態様では、光学道具などの物品10は、第1の色を有する着色反射層などの反射層16を含むことができ;選択的光変調層14は、図1に示すように、第1の色とは異なる第2の色を有する。例えば、反射層16は、赤色であってもよく、選択的光変調層14は、青色であってもよい。
【0026】
光学道具などの物品10は、第1の選択的光変調層14である選択的光変調層14を含むことができ;さらに、第2の選択的光変調層14’を含むことができる。図2に示すように、第1の選択的光変調層14は、反射層16の第1の表面上に存在し、第2の選択的光変調層14’は、反射層16の第2の表面上に存在する。第1および第2の選択的光変調層14、14’のそれぞれは、同じまたは異なる色を有することができる。さらに、反射層16は、第1および第2の選択的光変調層14、14’のそれぞれと同じまたは異なる色を有する着色反射層16であってもよい。例えば、第1の選択的光変調層14は、第2の色の赤色であってもよく、反射層は、第1の色の青色であってもよく、第2の選択的光変調層14’は、赤色であってもよい。別の態様では、第1の選択的光変調層14は、第2の色の赤色であってもよく、反射層は、銅を含みかつ第1の色の赤色(おそらく異なる色相を有する)であってもよく、第2の選択的光変調層14’は、赤色であってもよい。さらなる態様では、第1の選択的光変調層14は、第2の色の赤色であってもよく、反射層は、第1の色の青色であってもよく、第2の選択的光変調層14’は、黄色であってもよい。
【0027】
図3~6に示すように、フレークまたは光学道具などの物品の縁が、方位色属性などの二次色規定特徴として機能できるため、物品10は、メタリック効果を示し得る。一態様では、物品10は、第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面と、第3の表面と、第3の表面の反対側の第4の表面とを有する反射層16;および反射層16の第1の表面の外側の第1の選択的光変調層14を含むことができ、反射層16の第3の表面および第4の表面の少なくとも一方が、方位変調層12を含む。物品10は、反射層16の第2の表面の外側の第2の選択的光変調層14’をさらに含むことができる。反射層16は、上述のとおりであり得る。
【0028】
第1の選択的光変調層14は、光学道具などの物品10に第1の色属性を提供することができる。例えば、第1の選択的変調層14は、光学道具に赤色を提供することができる。第1の色属性は、第1の視野角で存在し得る。
【0029】
方位変調層12、12’は、光学道具などの物品10に第2の色属性を提供することができる。例えば、方位変調層12、12’は、光学道具に黒色を提供することができる。第2の色属性は、第2の視野角で存在することができ、第2の視野角は、第1の視野角とは異なる。第2の色属性は、第1の色属性と異なり得る。方位変調層12、12’は、選択的光変調層14によって規定される第1の色属性を有することができる物品10に、法線以外の視野角から見えるなど、物品10への色相の導入を可能とする。
【0030】
図3に示すように。物品10は、反射層16;反射層16の第1の表面の外側の選択的光変調層14;および反射層16の第3の表面の外側の方位変調層12を含むことができる。一態様では、方位変調層12は、反射層16の第3の表面および第4の表面の少なくとも一方を保護することができる。反射層16の第1の表面の反対側の第2の表面および第3の表面の反対側の第4の表面は、大気にむき出しであってもよい。反射層16は上述のとおりであり得る。一態様では、反射層16は、着色材料を含むことができる。
【0031】
図4に示すように、物品10は、反射層16;反射層16の第1の表面の外側の第1の選択的光変調層14;反射層16の第2の表面の外側の第2の光選択性光変調層14’;および反射層16の第3の表面の外側の方位変調層12を含むことができる。一態様では、方位変調層12は、反射層16の第3の表面および第4の表面の少なくとも一方を保護することができる。反射層16の第3の表面の反対側の第4の表面は、大気にむき出しであってもよい。反射層16は、上述のとおりであり得る。一態様では、反射層16は、着色材料を含むことができる。
【0032】
図5に示すように、物品10は、反射層16;反射層16の第1の表面の外側の第1の選択的光変調層14;反射層16の第3の表面の外側の第1の方位変調層12;および反射層16の第4の表面の外側の第2の方位変調層12’を含むことができる。一態様では、第1および第2の方位変調層12、12’の少なくとも一方は、反射層16の第3の表面および第4の面の少なくとも一方を保護することができる。反射層16の第1の表面の反対側の第2の表面は、大気にむき出しであってもよい。反射層16は、上述のとおりであり得る。一態様では、反射層16は、着色材料を含むことができる。
【0033】
図6に示すように、物品10は、反射層16;反射層16の第1の表面の外側の第1の選択的光変調層14;反射層16の第2の表面の外側の第2の選択的光変調層14;反射層16の第3の表面の外側の第1の方位変調層12;および反射層16の第4の表面の外側の第2の方位変調層12’を含むことができる。一態様では、第1および第2の方位変調層12、12’の少なくとも一方は、反射層16の第3の表面および第4の表面の少なくとも一方を保護することができる。反射層16は、上述のとおりであり得る。一態様では、反射層16は、着色材料を含むことができる。
【0034】
図3~6に関して、方位変調層12、12’は、反射層16に関して上記で開示されたように、着色化合物に化学的に変換される金属を含むことができる。一態様では、方位変調層12、12’は、顔料と有機染料の少なくとも一方を含んでもよい。方位変調層12、12’は、物品10の表面を腐食から保護することができる。
【0035】
本明細書に開示される物品10は、第1の選択的光変調層(SLML)14および/または第2の選択的光変調層14’を含むことができる。SLMLは、約0.2μm~約20μmの範囲の波長を有する電磁放射のスペクトルの異なる選択された領域で光強度を変調(吸収および/または放出)することを目的とする複数の光学機能を含む物理層である。物品10は、SLML14が選択的SLMSによって提供される吸収によって光を選択的に変調できる非対称層構造を含み得る(以下により詳細に説明する)。特に、物品10は、光などの特定の波長のエネルギーを選択的に吸収するSLML14を含み得る。
【0036】
SLML14(および/またはSLML14内の材料)は、光を選択的に変調し得る。例えば、SLML14は、特定の波長の透過の量を制御し得る。いくつかの例では、SLML14は、特定の波長のエネルギー(例えば、可視および/または非可視範囲内)を選択的に吸収し得る。例えば、SLML14は、「着色層」および/または「波長選択吸収層」とすることができる。いくつかの例では、吸収される特定の波長により、物品10が特定の色に見える場合がある。例えば、SLML14は、人間の目には赤く見えることがある(例えば、SLML14は、約620nm未満の光の波長を吸収することができ、したがって、赤く見える波長のエネルギーを反射または透過する)。これは、着色剤(例えば、有機顔料および/または無機顔料および/または染料)である選択的光変調粒子(SLMP)を、誘電体材料(例えば、ポリマー)などのホスト材料に添加することによって達成できる。例えば、いくつかの例では、SLML14は、着色プラスチックであってもよい。
【0037】
いくつかの例では、吸収される特定の波長の一部またはすべてが、可視範囲にあり得る(例えば、SLML14は、可視全体を吸収することができるが、赤外では透過させる)。その得られた物品10は、黒く見えるが、赤外線の光を反射する。上記のいくつかの例では、物品10および/またはSLML14の吸収波長(および/または特定の可視色)は、少なくとも部分的にSLML14の厚さに依存し得る。追加的にまたは代替的に、SLML14によって吸収されるエネルギーの波長(および/またはこれらの層および/またはフレークの見える色)は、部分的に、SLML14への特定の側面の追加に依存し得る。エネルギーの特定の波長を吸収することに加えて、SLML14は、劣化に対する反射層16の強化;基板からの剥離を可能とすること;サイジングを可能とすること;反射層16に使用されるアルミニウムまたは他の金属および材料の酸化などの環境劣化に対する耐性を提供すること;SLML14の組成と厚さに基づいて、光の透過、反射および吸収における高いパフォーマンスのうちの少なくとも1つを達成し得る。
【0038】
いくつかの例では、エネルギーの特定の波長および/または可視光の特定の波長を選択的に吸収するSLML14に加えてまたはその代替として、物品10のSLML14は、屈折率を制御でき、および/またはSLML14は、屈折率を制御できる選択的光変調粒子(SLMP)を含むことができる。吸収制御SLMP(例えば、着色剤)に加えて、またはその代替として、SLML14の屈折率を制御できるSLMPをホスト材料内に含めることができる。いくつかの例では、ホスト材料は、SLML14の吸収制御SLMPと屈折率SLMPの両方と組み合わせ得る。いくつかの例では、同じSLMPが、吸収と屈折率の両方を制御し得る。
【0039】
SLML14の性能は、SLML14に存在する材料の選択に基づいて決定し得る。一態様では、SLML14は、フレークの取り扱い、腐食、整列および物品10内の他の層、例えば、反射層16の環境性能のうちの少なくとも1つの特性を向上し得る。
【0040】
第1の(および任意に第2、第3、第4など)SLML14は、それぞれ独立してホスト材料のみ、または選択的光変調システム(SLMS)と組み合わせたホスト材料を含み得る。一態様では、第1のSLML14の少なくとも1つは、ホスト材料を含み得る。別の態様では、第1のSLML14の少なくとも1つは、ホスト材料とSLMSを含み得る。SLMSは、選択的光変調分子(SLMM)、選択的光変調粒子(SLMP)、添加剤またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
SLML14の組成は、約0.01%~約100%、例えば約0.05%~約80%、さらなる例として約1%~約30%の範囲の固形分を有し得る。いくつかの態様では、固形分は、3%を超え得る。いくつかの態様では、SLML14の組成は、約3%~約100%、例えば約4%~50%の範囲の固形分を有し得る。
【0042】
第1のSLML14のホスト材料は、独立して、コーティング液として塗布され、光学的および構造的目的に役立つ膜形成材料であり得る。ホスト材料は、必要であれば、物品10に追加の光変調特性を提供するための選択的光変調システム(SLMS)などのゲストシステムを導入するための、ホスト(マトリックス)として使用し得る。
【0043】
ホスト材料は、誘電体材料であり得る。追加的にまたは代替的に、ホスト材料は、有機ポリマー、無機ポリマーおよび複合材料のうちの少なくとも1つであり得る。有機ポリマーの非限定的な例には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アクリル、アクリレート、ポリビニルエステル、ポリエーテル、ポリチオール、シリコーン、フルオロカーボンおよびそれらのさまざまなコポリマーなどの熱可塑性プラスチック;エポキシ、ポリウレタン、アクリレート、メラミンホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒドおよびフェノールホルムアルデヒドなどの熱硬化性樹脂;アクリレート、エポキシ、ビニル、ビニルエステル、スチレンおよびシランなどのエネルギー硬化性材料が挙げられる。無機ポリマーの非限定的な例には、シラン、シロキサン、チタネート、ジルコネート、アルミネート、シリケート、ホスファゼン、ポリボラジレンおよびポリチアジルが挙げられる。
【0044】
第1のSLML14は、約0.001重量%~約100重量%のホスト材料を含み得る。一態様では、ホスト材料は、SLML14の約0.01重量%~約95重量%、例えば、約0.1重量%~約90重量%、さらに別の例として約1重量%~約87重量%でSLML14に存在し得る。
【0045】
ホスト材料と共にSLML14で使用するためのSLMSは、それぞれ独立して、選択的光変調粒子(SLMP)、選択的光変調分子(SLMM)、添加剤またはそれらの組み合わせを含み得る。SLMSは、他の材料を含み得る。SLMSは、選択領域または対象の全スペクトル範囲(0.2μm~20μm)での電磁放射の振幅の変調(吸収、反射、蛍光など)を提供し得る。
【0046】
第1のSLML14は、それぞれ独立して、SLMSにSLMPを含むことができる。SLMPは、ホスト材料と組み合わせて光変調を選択的に制御する任意の粒子であってよく、例えば、カラーシフト粒子、染料、1つ以上の染料を含む着色剤を含む着色剤、顔料、反射顔料、カラーシフト顔料、量子ドットおよび選択的反射材が挙げられる。SLMPの非限定的な例には、有機顔料、無機顔料、量子ドット、ナノ粒子(選択的に反射および/または吸収する)、ミセルなどが含まれる。ナノ粒子としては、例えば、高い屈折率値(約550nmの波長でn>1.6)を有する有機および有機金属材料;TiO、ZrO、In、In-SnO、SnO、Fe(xおよびyは、それぞれ独立して0より大きい整数)、WOなどの金属酸化物;ZnSおよびCu(xとyは、それぞれ独立して0より大きい整数)などの金属硫化物;カルコゲナイド、量子ドット、金属ナノ粒子;炭酸塩;フッ化物;およびその組合せが挙げられる。
【0047】
SLMMの例には、例えば、有機色素、無機色素、ミセルおよび発色団を含む他の分子系が含まれる。
【0048】
いくつかの態様では、第1のSLML14のSLMSは、硬化剤およびコーティング助剤などの少なくとも1つの添加剤を含み得る。
【0049】
硬化剤は、ホスト材料の硬化、ガラス化、架橋または重合を開始できる化合物または材料であり得る。硬化剤の非限定的な例には、溶媒、ラジカル発生剤(エネルギーまたは化学物質による)、酸発生剤(エネルギーまたは化学物質による)、縮合開始剤および酸/塩基触媒が含まれる。
【0050】
コーティング助剤の非限定的な例には、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤、接着促進剤、酸化防止剤、UV安定剤、硬化抑制緩和剤、防汚剤、腐食防止剤、光増感剤、二次架橋剤および向上した赤外線乾燥のための赤外線吸収剤が含まれる。一態様では、酸化防止剤は、SLML14の組成中に約25ppm~約5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0051】
第1のSLML14は、それぞれ独立して溶媒を含むことができる。溶媒の非限定的な例には、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルなどのアセテート;アセトン;水;ジメチルケトン(DMK)、メチルエチルケトン(MEK)、secブチルメチルケトン(SBMK)、tert-ブチルメチルケトン(TBMK)、シクロペンタノンおよびアニソールなどのケトン;プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコールおよびグリコール誘導体;イソプロピルアルコールおよびジアセトンアルコールなどのアルコール;マロネートなどのエステル;n-メチルピロリドンなどの複素環式溶媒;トルエンおよびキシレンなどの炭化水素;グリコールエーテルなどの凝集溶媒;ならびにその組合せが含まれ得る。一態様では、溶媒は、SLML14の総重量に対して、約0重量%~約99.9重量%、例えば、約0.005重量%~約99重量%、さらなる例として約0.05重量%~約90重量%の範囲の量で第1のSLML14’に存在することができる。
【0052】
いくつかの例では、第1のSLML14は、(i)光開始剤、(ii)酸素抑制緩和組成物、(iii)レベリング剤および(iv)消泡剤のうちの少なくとも1つを有する組成物を含むことができる。
【0053】
酸素抑制緩和組成物を使用して、フリーラジカル材料の酸素抑制を緩和することができる。分子状酸素は、光開始剤増感剤の三重項状態を消滅させるか、フリーラジカルを除去し、コーティング特性の低下および/または未硬化の液体表面をもたらす。酸素抑制緩和組成物は、酸素抑制を減少させるか、または任意のSLML14の硬化を向上し得る。
【0054】
酸素抑制組成物は、2つ以上の化合物を含むことができる。酸素抑制緩和組成物は、少なくとも1つのアクリレート、例えば少なくとも1つのアクリレートモノマーおよび少なくとも1つのアクリレートオリゴマーを含むことができる。一態様では、酸素抑制緩和組成物は、少なくとも1つのアクリレートモノマーと2つのアクリレートオリゴマーを含むことができる。酸素抑制緩和組成物で使用するためのアクリレートの非限定的な例には、アクリレート;メタクリレート;変性エポキシアクリレートなどのエポキシアクリレート;酸官能性ポリエステルアクリレート、四官能性ポリエステルアクリレート、変性ポリエステルアクリレート、生物由来ポリエステルアクリレートなどのポリエステルアクリレート;アミン官能性アクリレート共開始剤および第三級アミン共開始剤を含むアミン変性ポリエーテルアクリレートなどのポリエーテルアクリレート;芳香族ウレタンアクリレート、変性脂肪族ウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレートおよび脂肪族アロファネート系ウレタンアクリレートなどのウレタンアクリレート;およびそれらのモノマーおよびオリゴマーが含まれ得る。一態様では、酸素抑制緩和組成物は、2つのオリゴマーなどの少なくとも1つのアクリレートオリゴマーを含むことができる。少なくとも1つのアクリレートオリゴマーは、メルカプト変性ポリエステルアクリレートおよびアミン変性ポリエーテルテトラアクリレートなどのポリエステルアクリレートおよびポリエーテルアクリレートから選択/選択することができる。酸素抑制緩和組成物は、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどの少なくとも1つのモノマーも含むことができる。酸素抑制緩和組成物は、SLML14の総重量に対して、約5重量%~約95重量%、例えば約10重量%~約90重量%、さらに別の例として約15重量%~約85重量%の範囲の量で第1のSLML14に存在することができる。
【0055】
一部の例では、SLML14のホスト材料は、カチオン系などの非ラジカル硬化系を使用することができる。カチオン系は、フリーラジカルプロセスの酸素抑制の緩和の影響を受けにくいため、酸素抑制緩和組成物を必要としない場合がある。一例では、モノマー3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンの使用は、酸素緩和組成物を必要としない。
【0056】
一態様では、第1のSLML14は、それぞれ独立して、2つの光開始剤または3つの光開始剤などの少なくとも1つの光開始剤を含むことができる。光開始剤は、より短い波長に使用できる。光重合開始剤は、化学線波長に対して活性であり得る。光開始剤は、タイプ1光開始剤またはタイプII光開始剤であり得る。SLML14には、タイプIの光開始剤のみ、タイプIIの光開始剤のみ、またはタイプIとタイプIIの両方の光開始剤の組み合わせを含めることができる。光開始剤は、SLML14の組成物の総重量に対して、約0.25重量%~約15重量%、例えば約0.5重量%~約10重量%、さらに別の例として約1重量%~約5重量%の範囲の量でSLML14の組成物中に存在することができる。
【0057】
光開始剤は、ホスフィンオキシドであり得る。ホスフィンオキシドは、例えば、モノアシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドを含み得る。モノアシルホスフィンオキシドは、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドであり得る。ビスアシルホスフィンオキシドは、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドであり得る。一態様では、少なくとも1つのホスフィンオキシドが、SLML14の組成物中に存在し得る。例えば、2つのホスフィンオキシドが、SLML14の組成物中に存在し得る。
【0058】
増感剤は、SLML14の組成物中に存在することができ、タイプ1および/またはタイプIIの光開始剤の増感剤として作用することができる。増感剤は、タイプIIの光開始剤としても機能し得る。一態様において、増感剤は、SLML14の組成物の総重量に対して、約0.05重量%~約10重量%、例えば、約0.1重量%~約7重量%、さらなる例として約1重量%~約5重量%の範囲の量でSLML14の組成物中に存在し得る。増感剤は、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどのチオキサントンであり得る。
【0059】
一態様では、SLML14は、レベリング剤を含むことができる。レベリング剤は、ポリアクリレートであり得る。レベリング剤は、SLML14の組成物のクレーターをなくすことができる。レベリング剤は、SLML14の組成物の総重量に対して、約0.05重量%~約10重量%、例えば、約1重量%~約7重量%およびさらなる例として、約2重量%~約5重量%の範囲の量でSLML14の組成物中に存在することができる。
【0060】
第1のSLML14は、消泡剤も含むことができる。消泡剤は表面張力を下げることができる。消泡剤は、シリコーンを含まない液体有機ポリマーであり得る。消泡剤は、SLML14の組成物の総重量に対して、約0.05重量%~約5重量%、例えば約0.2重量%~約4重量%、さらに別の例として約0.4重量%~約3重量%の範囲の量でSLML14の組成物中に存在することができる。
【0061】
第1のSLML14は、それぞれ独立して、約1.5より大きいまたは小さい屈折率を有することができる。例えば、各SLML14’は、約1.5の屈折率を有し得る。各SLML14の屈折率は、要求される色移動の程度を提供するように選択することができ、色移動は、視野角を伴うL色空間で測定される色相角の変化として定義できる。いくつかの例では、各SLML14は、約1.1~約3.0、約1.0~約1.3、または約1.1~約1.2の範囲の屈折率を含むことができる。いくつかの例では、各SLML14の屈折率は、約1.5未満、約1.3未満または約1.2未満であり得る。いくつかの例では、SLML14は、物品10内に2以上のSLMLが存在する場合、実質的に等しい屈折率または他とは異なる屈折率を有することができる。
【0062】
第1のSLML14は、約1nm~約10000nm、約10nm~約1000nm、約20nm~約500nm、約1nm~約100nm、約10nm~約1000nm、約1nm~約5000nmの範囲の厚さを有することができる。一態様では、光学道具などの物品10は、厚さと幅が、1:1~1:50のアスペクト比を有することができる。
【0063】
しかしながら、本明細書に記載の物品10の利点の1つは、いくつかの例では、光学効果が厚さのばらつきに比較的鈍感であるように見えることである。したがって、いくつかの態様では、各SLML14は、独立して、約5%未満の光学厚さのばらつきを有することができる。一態様では、各SLML14は、独立して、層全体で約3%未満の光学的厚さのばらつきを含むことができる。一態様では、各SLML14は、独立して、約50nmの厚さを有する層にわたって、光学的厚さの約1%未満のばらつきを有することができる。
【0064】
一態様では、フレーク、箔またはシートの形態の光学道具などの物品10は、基板および/または剥離層も含むことができる。一態様では、剥離層は、基板と物品10との間に配置することができる。
【0065】
追加的にまたは代替的に、フレーク、シートまたは箔の形態の物品10は、物品10上にハードコートまたは保護層を含むこともできる。いくつかの例では、これらの層(ハードコートまたは保護層)は、光学品質を必要としない。
【0066】
本明細書に記載される光学道具などの物品10は、任意の方法で作製することができる。例えば、シートを作成し、次いで、分割する、砕く、研磨するなどして、光学道具を形成する小さなピースにすることができる。いくつかの例では、シートは、例えば、以下および/または図7に関して説明するプロセスを含む、液体コーティングプロセスによって作成することができる。
【0067】
本明細書に記載されるように、例えばシート、フレークまたは箔の形態の物品10を製造する方法が開示される。この方法は、基板上に着色反射層16を堆積すること;液体コーティングプロセスを使用して、選択的光変調層14を着色反射層16上に堆積させることを含むことができる。選択的光変調層14は、第1の選択的光変調層とすることができ、この方法は、基板と着色反射層16との間に第2の選択的光変調層14’を堆積することをさらに含むことができる。
【0068】
着色反射層16は、不動態化にかけられない。着色反射層は、選択的光変調層14の色属性を向上することができる。着色反射層16は、ガス発生を制御することができる。着色反射層16は、物理蒸着プロセスを使用して堆積させることができる。着色反射層16は、着色金属、着色金属合金、着色非金属および化学的に着色化合物に変換された金属を含むことができる。着色反射層16は、銅、金および青銅から選択される着色金属であり得る。化学的に着色化合物に変換された金属には、アルミニウムとステンレス鋼が含まれる。着色反射層は、ポリアセチレンおよび有機材料を含む着色非金属を含むことができる。
【0069】
別の態様において、光学道具などの物品10の製造方法が開示され、当該方法は、第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面と、第3の表面と、第3の表面の反対側の第4の表面とを有する反射層16を基板上に堆積させること;反射層16の第1の表面上に第1の選択的光変調層14を堆積すること;および反射層16の第3の表面および第4の表面の少なくとも一方上に方位変調層12を設けることを含む。方法は、基板と反射層16との間に第2の選択的光変調層14’を堆積することも含むことができる。方位変調層12、12’は、反射層16の腐食を抑制することができる。第1および第2の選択的光変調層14、14’は、第1の色属性を提供し、方位変調層12、12’は、第1の色属性とは異なる第2の色属性を提供することができる。方位変調層12、12’は、反射層16の化学的に変換された部分を含むことができる。方位変調層12、12’は、顔料および有機染料を含むことができる。
【0070】
本方法では、基板は、剥離層を含むことができる。開示された方法では、プラズマ強化流動層などの改良された技術を含む、物理蒸着、化学蒸着、薄膜蒸着、原子層蒸着などの既知の従来の堆積プロセスを使用して、反射層16を堆積することができる。一態様では、物理蒸着プロセスを使用して、着色反射層16を堆積することができる。
【0071】
基板は、可撓性材料で作ることができる。基板は、堆積される層を受け入れ可能な任意の適切な材料であり得る。適切な基板材料の非限定的な例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーウェブ、ガラス箔、ガラスシート、ポリマー箔、ポリマーシート、金属箔、金属シート、セラミック箔、セラミックシート、イオン液体、紙、シリコンウェハなどが含まれる。基板は、厚さを変えることができるが、例えば、約2μm~約100μm、さらに別の例として、約10~約50μmの範囲であり得る。
【0072】
第1および/または第2のSLML14、14’は、スロットダイプロセスなどの液体コーティングプロセスによって堆積させることができる。液体コーティングプロセスには、スロットビーズ、スライドビーズ、スロットカーテン、スライドカーテン、単層および多層コーティング、張力のかかったウェブスロット、グラビア、ロールコーティングおよび基板上にまたは既に堆積された層に液体を塗布してその後乾燥および/または硬化させる液体層または膜を形成するその他の液体コーティングおよび印刷プロセスが含まれる。
【0073】
次に、堆積した層から基板を剥離して、物品10を作成することができる。一態様では、基板を冷却して、存在する場合、関連する剥離層を脆化させることができる。別の態様では、剥離層は、例えば、加熱および/またはフォトニックまたは電子ビームエネルギーで硬化することにより脆化されて、架橋の度合いが増大して剥離を可能とする。その後、堆積した層は、表面の鋭い曲げまたはブラッシングなど、機械的に剥離することができる。剥離された層は、既知の技術を使用して、フレーク、箔またはシートの形態の光学道具などの物品10にサイジングすることができる。
【0074】
別の態様では、堆積した層を基板から別の表面に移動することができる。堆積した層をパンチまたはカットして、明確なサイズと形状の大きなフレークを生成できる。
【0075】
液体コーティングプロセスは、蒸着などの他の堆積技術と比較して、より速い速度でSLML14、14’の組成物が移動することを可能とする。さらに、液体コーティングプロセスにより、SLML14、14’で使用するさまざまな材料を、簡単な装置でセットアップできる。開示された液体コーティングプロセスを使用して形成されたSLML14、14’は、向上した光学性能を示し得ると考えられる。
【0076】
図7は、液体コーティングプロセスを使用した層の形成を示す。層、例えば、SLML14の組成物(液体コーティング組成物)をスロットダイ320に挿入し、基板340上に堆積させて、湿潤膜を得ることができる。上記で開示されたプロセスに関して、基板340は、基板、剥離層、反射層16および既に堆積した層のうちの少なくとも1つを含むことができる。スロットダイ320の底部から基板340までの距離が、スロットギャップGである。図7に示すように、液体コーティング組成物は、乾燥膜厚Hよりも大きい湿潤膜厚Dで堆積することができる。液体コーティング組成物の湿潤膜が基板340上に堆積された後、液体コーティング組成物の湿潤膜に存在する溶媒を蒸発させることができる。液体コーティングプロセスは、続けて液体コーティング組成物の湿潤膜の硬化を行い、正しい光学的厚さH(約30~約700nmの範囲)を有する硬化した自己平坦化層をもたらす。液体コーティング組成物の自己平坦化能力により、層全体にわたって光学的厚さのばらつきが減少したと考えられる。最終的に、自己平坦化液体コーティング組成物を含む光学道具などの物品10は、高い光学精度を示すことができる。理解を容易にするために、用語「湿潤膜」および「乾燥膜」は、液体コーティングプロセスのさまざまな段階での液体コーティング組成物を指すために使用される。
【0077】
液体コーティングプロセスは、コーティング速度およびスロットギャップGのうちの少なくとも一方を調節して、所定の厚さDの湿潤膜を達成することを含むことができる。液体コーティング組成物は、約0.1μm~約500μm、例えば、約0.1μm~約5μmの範囲の湿潤膜厚さDを有するように堆積することができる。開示された範囲の湿潤膜厚さDを有する形成された液体コーティング組成物は、誘電体層など、すなわち、縞模様またはすじなどの破損または欠陥のない安定なSLML層をもたらすことができる。一態様において、湿潤膜は、最大約100m/分までのコーティング速度でスロットダイビーズモードを使用して安定な湿潤膜のために約10μmの厚さを有することができる。別の態様において、湿潤膜は、最大約1200m/分のコーティング速度でスロットダイカーテンモードを使用して安定な湿潤膜のために約6~約7μmの厚さを有することができる。
【0078】
液体コーティングプロセスは、約0.1~約1000m/分の速度で約1~約100のスロットギャップG対湿潤膜厚さDの比を含むことができる。一態様では、その比は、約100m/分のコーティング速度で約9である。一態様では、その比は、約50m/分のコーティング速度で約20であり得る。液体コーティングプロセスは、約0~約1000μmの範囲のスロットギャップGを有し得る。スロットギャップGを小さくすると、湿潤膜の厚さを薄くできる。スロットビーズモードでは、10μmを超える湿潤膜の厚さで、より速いコーティング速度を実現できる。
【0079】
液体コーティングプロセスは、約0.1~約1000m/分、例えば、約25m/分~約950m/分、例えば、約100m/分~約900m、さらなる例では、約200m/分~約850m/分の範囲のコーティング速度を有することができる。一態様では、コーティング速度は、約150m/分よりも大きく、さらなる例では、約500m/分よりも大きい。
【0080】
一態様では、ビーズモード液体コーティングプロセスのコーティング速度は、約0.1m/分~約600m/分、例えば、約50~約150m/分の範囲であり得る。別の態様では、カーテンモード液体コーティングプロセスのコーティング速度は、約200m/分~約1500m/分、例えば、約300m/分~約1200m/分の範囲であり得る。
【0081】
図7に示すように、湿潤膜が硬化する前などに、湿潤膜から溶媒を蒸発させることができる。一態様では、液体コーティング組成物の硬化の前に、約100%、例えば、約99.9%、さらなる例として、約99.8%の溶媒を液体コーティング組成物から蒸発させることができる。さらなる態様では、硬化した/乾燥液体コーティング組成物中に微量の溶媒が存在し得る。一態様では、溶媒の元の重量パーセントがより大きい湿潤膜は、減少した膜厚さHを有する乾燥膜をもたらし得る。特に、溶媒の重量パーセントが高く、厚い湿潤膜厚Dで堆積された湿潤膜は、乾燥膜厚Hが小さいSLML14などの液体コーティング組成物になり得る。溶媒の蒸発後、湿潤膜は液体のままであり、それにより、後続の液体コーティングプロセスの硬化ステップ中のスキニングおよびアイランド形成などの問題を回避することに注意することが重要である。
【0082】
湿潤膜の動的粘度は、約0.5~約50cP、例えば、約1~約45cP、さらなる例として、約2~約40cPの範囲であり得る。粘度測定温度は25℃であり、レオロジーは、0.025mmのギャップ設定で0.3°の角度で直径40mmのコーン/プレートを使用して溶媒トラップを備えたAnton Paar MCR 101レオメーターで測定した。
【0083】
ある態様では、液体コーティング組成物および溶媒は、湿潤膜が液体コーティングプロセスを使用した液体コーティング組成物の精密コーティングのためのニュートン挙動を示すように選択することができる。湿潤膜は、最大10,000秒‐1以上のニュートン挙動せん断速度を示すことができる。一態様では、液体コーティングプロセスのせん断速度は、最大25m/分までのコーティング速度では1000秒‐1、例えば、最大100m/分までのコーティング速度では3900秒‐1であり、さらなる例として、200m/分以下のコーティング速度では、7900秒‐1であり得る。最大せん断速度は、厚さ1μmなどの非常に薄い湿潤膜で発生し得ることが理解される。
【0084】
湿潤膜の厚さが増加するにつれて、せん断速度は、減少すると予想され、例えば、10μmの湿潤膜では15%減少し、さらなる例では、20μmの湿潤膜では30%減少する。
【0085】
湿潤膜からの溶媒の蒸発は、粘性挙動を擬似塑性に変化させる可能性があり、これは、精密SLML14を達成するのに有益であり得る。溶媒が蒸発した後、堆積した第1および第2のSLML14、14’の動的粘度は、約10cP~約3000cP、例えば、約20cP~約2500cP、さらなる例として、約30cP~約2000cPの範囲であり得る。溶媒が存在する場合、それを湿潤膜から蒸発させると、粘度が増大して擬似塑性挙動が生じ得る。擬似塑性挙動により、湿潤膜の自己平坦化が可能となる。
【0086】
一態様では、方法は、既知の技術を使用して、湿潤膜に存在する溶媒を蒸発させることを含むことができる。溶媒を蒸発させるのに必要な時間は、ウェブ/基板の速度と乾燥機の能力に依存し得る。一態様では、乾燥機(図示せず)の温度は、約120℃未満、例えば、約100℃未満、さらなる例として、約80℃未満とすることができる。
【0087】
液体コーティングプロセスを使用して堆積した湿潤膜は、既知の技術を使用して硬化させることができる。一態様では、湿潤膜は、紫外線、可視光線、赤外線または電子ビームのうちの少なくとも1つを利用する硬化剤を使用して硬化させることができる。硬化は、不活性雰囲気または周囲雰囲気で進行し得る。一態様では、硬化ステップは、約395nmの波長を有する紫外線光源を利用する。紫外線光源は、約200mJ/cm~約10000mJ/cm、例えば、約250mJ/cm~約900mJ/cm、およびさらなる例として、約mJ/cm~約850mJ/cmの範囲の照射量で湿潤膜に適用することができる。
【0088】
湿潤膜は、既知の技術により架橋することができる。非限定的な例には、フリーラジカル重合、分光増感光誘起フリーラジカル重合、光誘起カチオン重合、分光増感光誘起カチオン重合および光誘起付加環化などの光誘起重合;電子線誘起フリーラジカル重合、電子線誘起カチオン重合、電子線誘起付加環化などの電子線誘起重合;および熱誘起カチオン重合などの熱誘起重合が含まれる。
【0089】
液体コーティングプロセスを使用して形成されたSLML14、14’は、向上した光学性能を示し得る、すなわち、精密SLMLであり得る。いくつかの例では、精密SLML14、14’は、層全体で約3%未満の光学的厚さのばらつき、約5%の光学的厚さのばらつきまたは約7%の光学的厚さのばらつきを有するSLMLを意味すると理解できる。
【0090】
一態様では、液体コーティングプロセスは、約5~約100m/分の速度および約50μm~約100μmのコーティングギャップのうちの少なくとも一方を調節して、約500nm~約1500nmまでの所定の厚さを有する選択的光変調層の約2μm~10μmの湿潤膜を堆積させることを含むことができる。さらなる態様において、プロセスは、30m/分の速度、75μmのギャップ、10μmの湿潤膜、乾燥膜厚1.25μmを含むことができる。
【0091】
一例では、SLMLは、SLMMとして溶剤染料を使用する脂肪族エポキシ樹脂ホストを含み、反射体は、アルミニウムを含む。
【0092】
一例では、SLMLは、SLMPとしてジケトピロロピロール不溶性赤色染料を使用する脂環式エポキシ樹脂ホストを含み、反射体は、アルミニウムを含む。
【0093】
一例では、SLMLは、SLMPとして白色顔料(チタニア)を使用するアクリレートオリゴマー樹脂ホストを含む。
【0094】
一例では、SLMLは、SLMLとして黒色IR透過顔料を使用するアクリレートオリゴマー樹脂ホストを含み、反射体は、アルミニウムを含む。
【0095】
前述の説明から、当業者は、本教示を様々な形態で実施できることを理解することができる。したがって、これらの教示を、その特定の実施形態および例に関連して説明してきたが、本教示の真の範囲はそのように限定されるべきではない。本明細書の教示の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができる。
【0096】
この範囲の開示は、広く解釈されるべきである。本開示は、本明細書で開示される道具、活動、および機械的動作を達成するための同等物、手段、システムおよび方法を開示することが意図されている。開示された各道具、物品、方法、手段、機械的要素または機構について、本開示はその開示にも含まれ、本明細書に開示された多くの態様、機構および道具を実施するための同等物、手段、システムおよび方法を教示することが意図されている。さらに、この開示は、コーティングおよびその多くの態様、特徴および要素に関するものである。そのような道具は、その使用および動作において動的であり得、本開示は、道具および/または製造の光学道具の使用の同等物、手段、システムおよび方法、ならびにここに開示されている説明および操作と機能の精神と一致するその多くの態様を包含することを意図する。本出願の請求項も同様に広く解釈されるべきである。本明細書における本発明の多くの実施形態の説明は、本質的に単なる例示であり、したがって、本発明の趣旨から逸脱しない変形は、本発明の範囲内にあるものとする。そのような変形は、本発明の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7