(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】ベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/344 20060101AFI20221028BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F04C2/344 331D
F04C15/00 E
(21)【出願番号】P 2019146174
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智啓
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌宏
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-036308(JP,U)
【文献】特開2011-122541(JP,A)
【文献】特開2000-320480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/344
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にポンプ室(20)を形成するケーシング(2)と、
上記ケーシングの内側に配置されると共に該ケーシングに対して偏心して回転するロータ(3)と、
上記ロータと共に回転すると共に上記ケーシングの内側面に摺動する複数のベーン(4)と、
上記ロータを回転させるモータ(5)と、
上記モータが固定されると共に、上記ケーシングが固定される、被固定部材(6)と、を備え、
上記ケーシングは、上記ロータの回転軸方向(Z)における上記ポンプ室の両端よりも中央側において、上記ケーシングの外側面(25)から突出した中央寄りフランジ部(23)を有し、
上記ケーシングは、上記中央寄りフランジ部における複数箇所において、上記被固定部材に固定されており、
上記被固定部材は、上記ケーシングとは線膨張係数が異なる部材からな
り、
上記ケーシングは、上記回転軸方向の両側から互いに固定される第1ケース体(21)及び第2ケース体(22)を有し、上記第1ケース体は、上記ケーシングの外側面から外側へ突出した第1フランジ部(211)を有し、上記第2ケース体は、上記ケーシングの外側面から外側へ突出した第2フランジ部(221)を有し、上記第1ケース体と上記第2ケース体とは、上記第1フランジ部と上記第2フランジ部とにおいて、互いに固定されていると共に上記被固定部材に固定されており、上記第1フランジ部は、上記中央寄りフランジ部であり、
上記第1ケース体は、上記ポンプ室を上記回転軸方向から覆う天板部(213)と、上記ポンプ室を外周側から覆う外周壁部(212)とを有し、
上記外周壁部から、上記第1フランジ部が上記中央寄りフランジ部として突出しており、
上記第2ケース体は、上記第2フランジ部を含めて平板状である、ベーンポンプ(1)。
【請求項2】
上記回転軸方向における上記ポンプ室の中央を通ると共に上記回転軸に垂直な平面を、中央平面(F)としたとき、該中央平面の両面側のそれぞれに、上記ケーシングの上記外側面に対する上記中央寄りフランジ部の付根部(231)の少なくとも一部が存在する、請求項
1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
上記ロータの回転速度が一定となるように定回転制御される、請求項
1又は2に記載のベーンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケーシングと、ロータと、複数のベーンとを備えたベーンポンプが開示されている。ベーンポンプのケーシングは、ロータを回転させるモータに直接又は間接的に固定される。ベーンポンプの用途によっては、吐出圧の変動を抑制することが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベーンポンプの吐出圧の変動を抑制するという要請に対して、特許文献1に開示されたベーンポンプには、以下の課題がある。
すなわち、種々の要因による温度変化に伴って、ケーシングの膨脹、収縮が生じることがある。そして、ケーシングが、モータの筐体などの被固定部材に固定されていると、ケーシングの膨脹、収縮が生じたとき、ポンプ室が変形するおそれがある。
【0005】
ポンプ室の変形は、その変形の仕方によっては、ロータやベーンとの間のクリアランスの不均一な変化を招くおそれもある。その結果、ベーンポンプの吐出圧の変動を抑制することが困難となるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、温度変化に伴う吐出圧の変動を抑制することができるベーンポンプを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、内部にポンプ室(20)を形成するケーシング(2)と、
上記ケーシングの内側に配置されると共に該ケーシングに対して偏心して回転するロータ(3)と、
上記ロータと共に回転すると共に上記ケーシングの内側面に摺動する複数のベーン(4)と、
上記ロータを回転させるモータ(5)と、
上記モータが固定されると共に、上記ケーシングが固定される、被固定部材(6)と、を備え、
上記ケーシングは、上記ロータの回転軸方向(Z)における上記ポンプ室の両端よりも中央側において、上記ケーシングの外側面(25)から突出した中央寄りフランジ部(23)を有し、
上記ケーシングは、上記中央寄りフランジ部における複数箇所において、上記被固定部材に固定されており、
上記被固定部材は、上記ケーシングとは線膨張係数が異なる部材からなり、
上記ケーシングは、上記回転軸方向の両側から互いに固定される第1ケース体(21)及び第2ケース体(22)を有し、上記第1ケース体は、上記ケーシングの外側面から外側へ突出した第1フランジ部(211)を有し、上記第2ケース体は、上記ケーシングの外側面から外側へ突出した第2フランジ部(221)を有し、上記第1ケース体と上記第2ケース体とは、上記第1フランジ部と上記第2フランジ部とにおいて、互いに固定されていると共に上記被固定部材に固定されており、上記第1フランジ部は、上記中央寄りフランジ部であり、
上記第1ケース体は、上記ポンプ室を上記回転軸方向から覆う天板部(213)と、上記ポンプ室を外周側から覆う外周壁部(212)とを有し、
上記外周壁部から、上記第1フランジ部が上記中央寄りフランジ部として突出しており、
上記第2ケース体は、上記第2フランジ部を含めて平板状である、ベーンポンプ(1)にある。
【発明の効果】
【0008】
上記態様のベーンポンプにおいて、上記ケーシングは、上記中央寄りフランジ部を有し、中央寄りフランジ部において、上記被固定部材に固定されている。これにより、温度変化に伴ってケーシングが膨張、収縮したとき、被固定部材との線膨張係数の差に起因する不均一なケーシングの変形を、抑制しやすい。その結果、ポンプ室の変形量を抑制することができる。それゆえ、温度変化に伴うベーンポンプの吐出圧の変動を、抑制することができる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、温度変化に伴う吐出圧の変動を抑制することができるベーンポンプを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1における、ベーンポンプの断面説明図であって、
図2のI-I線矢視断面相当図。
【
図2】実施形態1における、ベーンポンプの平面説明図。
【
図3】実施形態1における、第1ケース体の斜視図。
【
図4】実施形態1における、中央平面の位置を記入した、ベーンポンプの断面説明図。
【
図5】実施形態1における、高温時のベーンポンプの断面説明図。
【
図6】実施形態1における、低温時のベーンポンプの断面説明図。
【
図7】比較形態における、ベーンポンプの断面説明図。
【
図8】比較形態における、高温時のベーンポンプの断面説明図。
【
図9】比較形態における、低温時のベーンポンプの断面説明図。
【
図10】
参考形態1における、ベーンポンプの断面説明図。
【
図11】
参考形態1における、高温時のベーンポンプの断面説明図。
【
図12】
参考形態1における、低温時のベーンポンプの断面説明図。
【
図13】
実施形態2における、ベーンポンプの断面説明図。
【
図14】
参考形態2における、ベーンポンプの断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
ベーンポンプに係る実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
本形態のベーンポンプ1は、
図1、
図2に示すごとく、ケーシング2と、ロータ3と、複数のベーン4と、モータ5と、被固定部材6と、を備えている。
【0012】
ケーシング2は、内部にポンプ室20を形成する。ロータ3は、ケーシング2の内側に配置されると共にケーシング2に対して偏心して回転する。ベーン4は、ロータ3と共に回転すると共にケーシング2の内側面に摺動する。モータ5は、ロータ3を回転させる。被固定部材6は、モータ5が固定されると共に、ケーシング2が固定される。
【0013】
ケーシング2は、次のように定義される中央寄りフランジ部23を有する。すなわち、中央寄りフランジ部23は、ロータ3の回転軸方向Zにおけるポンプ室20の両端よりも中央側において、ケーシング2の外側面25から突出したフランジ部である。ケーシング2は、中央寄りフランジ部23における複数箇所において、被固定部材6に固定されている。
【0014】
以下において、ロータ3の回転軸方向Zを、適宜、軸方向Zともいう。
図1に示すごとく、ケーシング2の外側面25に対する中央寄りフランジ部23の付根部231は、軸方向Zの両端が、軸方向Zにおけるポンプ室20の両端よりも中央側に位置する。
【0015】
ケーシング2、ロータ3、及びベーン4は、いずれも樹脂からなる。具体的には、例えば、ケーシング2は、フェノール樹脂からなり、ロータ3及びベーン4は、PPS樹脂(すなわち、ポリフェニレンサルファイド樹脂)からなる。
【0016】
モータ5は、ケーシング2に対して、軸方向Zの一方側に配置されている。そして、軸方向Zにおいて、モータ5とケーシング2との間に、被固定部材6が介在している。被固定部材6は、ケーシング2とは線膨張係数が異なる部材からなる。本形態においては、被固定部材6は、めっき鋼等の金属部材からなる。
【0017】
そして、被固定部材6に、モータ5とケーシング2とが固定されている。なお、被固定部材6にモータ5が固定されているとは、モータ5のステータ(すなわち固定子)が直接又は間接的に固定された状態を意味する。
図1に示す状態は、ステータが固定されたモータ5の筐体が、被固定部材6に固定された状態を示す。ただし、例えば、モータ5の筐体自体を被固定部材6としてもよい。この場合、モータ5の筐体にケーシング2を固定した状態とすることができる。なお、本明細書においては、便宜的に、軸方向Zに沿った方向において、被固定部材6に対してケーシング2が配置される側を、上側、その反対側を下側として、説明する。
【0018】
図1に示すごとく、ケーシング2は、第1ケース体21及び第2ケース体22を有する。第1ケース体21及び第2ケース体22は、軸方向Zの両側から互いに固定される。第1ケース体21は、第1フランジ部211を有する。第1フランジ部211は、ケーシング2の外側面25から外側へ突出している。第2ケース体22は、第2フランジ部221を有する。第2フランジ部221は、ケーシング2の外側面25から外側へ突出している。第1ケース体21と第2ケース体22とは、第1フランジ部211と第2フランジ部221とにおいて、互いに固定されていると共に被固定部材6に固定されている。そして、第1フランジ部211と第2フランジ部221とのうちの少なくとも一方は、中央寄りフランジ部23である。
【0019】
本形態においては、第1フランジ部211が中央寄りフランジ部23である。一方、本形態において、第2フランジ部221は、中央寄りフランジ部23ではない。
第2ケース体22は、略平板状を有する。一方、第1ケース体21は、
図1~
図3に示すごとく、外周壁部212と天板部213とを有する。外周壁部212は、軸方向Zに略平行な内周面を備えた略円筒形状を有する。天板部213は、略円形の平板状を有し、軸方向Zに直交する。天板部213は、外周壁部212の上端に連結されている。すなわち、天板部213は、ポンプ室20の上側面を覆っている。
【0020】
外周壁部212の外側面が、ケーシング2の外側面25を構成している。つまり、外周壁部212から外側に突出するように、第1フランジ部211すなわち中央寄りフランジ部23が形成されている。また、
図1に示すごとく、外周壁部212の下端が、第2ケース体22の上面に当接している。外周壁部212の下端は、全周にわたり、第2ケース体22の上面に当接している。これにより、第1ケース体21と第2ケース体22との間に、ポンプ室20が形成されている。
【0021】
ここで、
図4に示すごとく、軸方向Zにおけるポンプ室20の中央を通ると共に回転軸に垂直な平面を、中央平面Fとする。中央平面Fの両面側のそれぞれに、ケーシング2の外側面25に対する中央寄りフランジ部23の付根部231の少なくとも一部が存在する。すなわち、付根部231の一部が、中央平面Fよりも上側に配置され、付根部231の他の一部が、中央平面Fよりも下側に配置されている。
【0022】
本形態においては、中央寄りフランジ部23である第1フランジ部211の付根部231が、中央平面Fの両面側に跨るように形成されている。換言すると、中央平面Fが付根部231を通るように、中央寄りフランジ部23が配設されている。
【0023】
図2に示すごとく、本形態においては、第1フランジ部211及び第2フランジ部221は、ケーシング2の外側面25の全周にわたって連続的に形成されている。
図1、
図3に示すごとく、第1フランジ部211は、付根部231から、外周側に突出した側方突出部214と、側方突出部214から軸方向Zの下側へ突出した脚部215とを有する。脚部215は3箇所に形成されている。
【0024】
そして、第1フランジ部211と第2フランジ部221とは、互いに軸方向Zに重なり合い、3箇所の脚部215において、当接している。第1フランジ部211と第2フランジ部221は、複数の当接箇所において、被固定部材6に固定されている。すなわち、第1フランジ部211と第2フランジ部221との当接箇所が、ネジ11によって、被固定部材6に締結されている。なお、締結箇所の数、すなわち脚部215の数は、本形態においては3個としているが、特に限定されるものではなく、4個以上であってもよい。或いは、ポンプ室20の形成を適切に行うことができれば、締結箇所を2箇所とすることもできる。
【0025】
ネジ11は、第1フランジ部211の挿通孔216及び第2フランジ部221の挿通孔226に挿通されると共に、被固定部材6の雌ネジ66に螺合している。これにより、軸方向Zに第1フランジ部211及び第2フランジ部221を、被固定部材6に固定すると共に、第1フランジ部211と第2フランジ部221とを、互いに固定している。なお、図示は省略するが、ネジ11は、被固定部材6をも挿通して、被固定部材6の下側に配されたナットに螺合される構成とすることもできる。
【0026】
また、第1ケース体21を第2ケース体22等に組み付ける前の状態においては、脚部215の下端は、外周壁部212の下端よりも、若干上側に配置されている。これにより、外周壁部212の下端が確実に第2ケース体22の上面に圧接されるよう構成されている。
【0027】
本形態のベーンポンプ1は、ロータ3の回転速度が一定となるように定回転制御される。すなわち、ロータ3を回転させるモータ5が、定回転制御される。
【0028】
ベーンポンプ1は、駆動電力を一定にしても、摩擦抵抗の変動等、種々の要因によって、回転数が変動することがある。その一方で、ベーンポンプ1の用途によっては、回転数の変動を防ぐ必要がある場合がある。そこで、かかる場合、回転数が一定になるように制御する定回転制御を行う。
【0029】
本形態のベーンポンプ1は、例えば、蒸発燃料の漏れ診断部を備えた蒸発燃料処理装置において、用いられる。すなわち、例えば、キャニスタを含む診断対象系内を減圧する減圧ポンプとして、用いられる。漏れ診断部は、例えば、診断対象系内を、ベーンポンプ1によって減圧したときの圧力変化に基づいて診断対象系の漏れ診断を行うよう構成することができる。
【0030】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記ベーンポンプ1において、ケーシング2は、中央寄りフランジ部23を有し、中央寄りフランジ部23において、被固定部材6に固定されている。これにより、温度変化に伴ってケーシング2が膨張、収縮しても、被固定部材6との線膨張係数の差に起因する不均一なケーシング2の変形を、抑制しやすい。すなわち、ロータ3等の摺動発熱、モータ5からの伝熱、或いは環境温度の変化等の影響によって、ケーシング2の温度変化が生じても、不均一なケーシング2の変形を、抑制しやすい。その結果、ポンプ室20の変形量を抑制することができる。それゆえ、温度変化に伴うベーンポンプの吐出圧の変動を、抑制することができる。
【0031】
上記の作用効果に関し、
図7~
図9に示す比較形態のベーンポンプ9との比較において、説明する。
比較形態のベーンポンプ9は、
図7に示すごとく、第1フランジ部211が、ポンプ室20の下端において、ケーシング2から突出している。つまり、第1フランジ部211の下端面は、ポンプ室20の下端と同じ位置である。また、第2フランジ部221は、第1フランジ部211の下側に配置されている。それゆえ、比較形態のベーンポンプ9において、第1フランジ部211及び第2フランジ部221は、軸方向Zにおけるポンプ室20の両端よりも中央側において突出したものではない。すなわち、第1フランジ部211も第2フランジ部221も、上述の「中央寄りフランジ部」には該当しない。
【0032】
かかる構成のベーンポンプ9においては、以下のような懸念がある。すなわち、ケーシング2が線膨張係数の比較的小さい被固定部材6に固定されていると、線膨張係数の差に起因して、ケーシング2が不均一に変形するおそれがある。例えば、高温時においては、被固定部材6よりもケーシング2が大きく膨張しようとする。
【0033】
このとき、
図8に示すごとく、ネジ11による固定部である第1フランジ部211及び第2フランジ部221の付近では、被固定部材6に拘束されているため、膨張が規制される。その一方で、ケーシング2における、第1フランジ部211及び第2フランジ部221から遠い位置にある部位は、膨張が起こりやすくなる。
【0034】
そうすると、軸方向Zの位置によって、ポンプ室20の寸法変化が異なりやすく、ポンプ室20の不均一な変形が生じやすい。そうすると、ポンプ室20の内面とロータ3およびベーン4との間のクリアランスが大きく変動しやすくなる。その結果、ポンプ吐出圧の変動を招きやすくなる。
【0035】
また、低温時においては、ケーシング2が、被固定部材6よりも収縮しようとする。それゆえ、
図9に示すごとく、ポンプ室20の寸法は、被固定部材6に拘束されている第1フランジ部211及び第2フランジ部221に近い部位よりも、それらから遠い部位において、より収縮しやすくなる。その結果、高温時と同様に、ポンプ室20の不均一な変形が生じやすくなる。したがって、同様に、ポンプ吐出圧の変動を招きやすくなる。
【0036】
これに対し、本形態のベーンポンプ1は、
図4に示すごとく、ケーシング2が中央寄りフランジ部23を有する。すなわち、被固定部材6に拘束されている中央寄りフランジ部23とケーシング2の各部位との距離に、差が生じにくい。それゆえ、温度変化に伴ってケーシング2が膨張、収縮しても、ポンプ室20の不均一な変形を抑制できる。
【0037】
つまり、例えば、高温時において、ケーシング2が膨脹しようとする場合、
図5に示すごとく、多少の変形が生じたとしても、ポンプ室20の変形は不均一となりにくい。それゆえ、ポンプ室20の内面とロータ3およびベーン4との間のクリアランスが変動しにくい。その結果、ポンプ吐出圧の変動を抑制することができる。
【0038】
低温時において、ケーシング2が収縮しようとする場合も、
図6に示すごとく、多少の変形が生じたとしても、同様に、ポンプ室20の変形は不均一となりにくい。それゆえ、上記と同様、ポンプ吐出圧の変動を抑制することができる。
【0039】
ケーシング2を構成する第1ケース体21と第2ケース体22とは、第1フランジ部211と第2フランジ部221とにおいて、互いに固定されていると共に被固定部材6に固定されている。そして、第1フランジ部211は、中央寄りフランジ部23である。これにより、ケーシング2の組み立てと、被固定部材6への組付けとを、同じ箇所にて行うことができる。それゆえ、ベーンポンプ1の簡素化と共に生産性の向上を図ることができる。
【0040】
また、中央平面Fの両面側のそれぞれに、中央寄りフランジ部23の付根部231の少なくとも一部が存在する。これにより、温度変化に伴うポンプ室20の不均一な変形を、一層効果的に抑制することができる。
【0041】
また、ベーンポンプ1は、ロータ3の回転速度が一定となるように定回転制御される。これにより、ポンプ吐出圧の変動を抑制することができる。そして、かかる制御を行うベーンポンプ1において、上記のような、温度変化に伴うポンプ室20の不均一な変形が抑制されることで、ポンプ吐出圧の変動を、より効果的に抑制することができる。
【0042】
また、上述のように、漏れ診断部を備えた燃料処理装置にベーンポンプ1が用いられる場合、そのポンプ吐出圧、すなわち負圧値を一定に保つことが重要となる。つまり、ポンプ吐出圧が変動すると、高精度の漏れ診断が困難となるためである。それゆえ、上記のような定回転制御を行う。これにより、ポンプ吐出圧を一定に保ち、漏れ診断の精度を向上させることができる。ところが、ロータ3の回転数を一定に保っても、ケーシング2の変形に伴うポンプ室20の変形があると、ポンプ吐出圧に影響することが懸念される。したがって、定回転制御を行うベーンポンプ1においては、本形態のように中央寄りフランジ部23を設けた構成は、よりポンプ吐出圧を一定に保つことができるという観点で、望ましい。
【0043】
以上のごとく、本形態によれば、温度変化に伴う吐出圧の変動を抑制することができるベーンポンプを提供することができる。
【0044】
(
参考形態1)
本形態は、
図10に示すごとく、第1ケース体21の第1フランジ部211と、第2ケース体22の第2フランジ部221との双方を、中央寄りフランジ部23とした形態である。
【0045】
本形態のベーンポンプ1は、第2ケース体22も、外周壁部222を備えた形状を有する。つまり、第2ケース体22は、略円筒形状の外周壁部222と、その下端に連結された底板部223と、を有する。そして、外周壁部222の上端から、外側へ突出するように、第2フランジ部221が形成されている。また、第1ケース体21においては、外周壁部212の下端から外側へ突出するように、第2フランジ部221が形成されている。
【0046】
また、被固定部材6においては、第2フランジ部221の下面に当接する当接部位61が、その内側の部位よりも上方に形成されている。
【0047】
本形態においては、上述のように、第1フランジ部211及び第2フランジ部221の双方が、中央寄りフランジ部23となる。また、中央平面Fの両面側のそれぞれに、中央寄りフランジ部23の付根部231の少なくとも一部が存在することとなる。
【0048】
その他は、実施形態1と同様である。
なお、参考形態1以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0049】
本形態においても、
図11、
図12に示すごとく、温度変化に伴うポンプ室20の不均一な変形を抑制し、ポンプ吐出圧の変動を抑制することができる。
つまり、例えば、高温時において、ケーシング2が膨脹しようとする場合、
図11に示すごとく、多少の変形が生じたとしても、ポンプ室20の変形は不均一となりにくい。それゆえ、ポンプ室20の内面とロータ3およびベーン4との間のクリアランスが変動しにくい。その結果、ポンプ吐出圧の変動を抑制することができる。
【0050】
また、低温時において、ケーシング2が収縮しようとする場合も、
図12に示すごとく、多少の変形が生じたとしても、同様に、ポンプ室20の変形は不均一となりにくい。それゆえ、上記と同様、ポンプ吐出圧の変動を抑制することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0051】
(
実施形態2)
本形態は、
図13に示すごとく、第1フランジ部211と第2フランジ部221との間に、スペーサ12を介在させた形態である。
ネジ11は、第1フランジ部211とスペーサ12と第2フランジ部221とを貫通して、被固定部材6に締結されている。スペーサ12は、例えば、第1ケース体21及び第2ケース体22と同様の樹脂によって構成することができる。
その他は、実施形態1と同様の構成、及び同様の作用効果を有する。
【0052】
本形態のように、第1フランジ部211と第2フランジ部221とは、直接接触していない構成とすることもできる。
【0053】
(
参考形態2)
本形態も、
図14に示すごとく、第1フランジ部211と第2フランジ部221との間に、スペーサ12を介在させた形態である。
ただし、本形態は、
参考形態1と同様に、第1フランジ部211と第2フランジ部221との双方を、中央寄りフランジ部23としたうえで、両者の間にスペーサ12を介在させている。また、スペーサ12は、軸方向Zから見て、ポンプ室20の全周にわたって連続して環状に形成されている。
【0054】
本形態においては、中央平面Fが、スペーサ12を通るような配置関係となっている。そして、中央寄りフランジ部23である第1フランジ部211と、中央寄りフランジ部23である第2フランジ部221とが、中央平面Fを挟んで互いに反対側に配置されている。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0055】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ベーンポンプ
2 ケーシング
20 ポンプ室
23 中央寄りフランジ部
25 (ケーシングの)外側面
3 ロータ
4 ベーン
5 モータ
6 被固定部材