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特許7166246熱交換部材、熱交換器及び浄化手段付き熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】熱交換部材、熱交換器及び浄化手段付き熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/40 20060101AFI20221028BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20221028BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F28F1/40 J
F28F1/40 G
F28D7/10 A
F01N5/02 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019507966
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2018040911
(87)【国際公開番号】W WO2019135312
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2018000758
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018133563
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川口 竜生
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 健
(72)【発明者】
【氏名】木村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】麓 悠太郎
【審査官】原 泰造
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/069265(WO,A1)
【文献】特開平02-102004(JP,A)
【文献】特許第6075381(JP,B2)
【文献】特表2009-532605(JP,A)
【文献】特開昭57-000493(JP,A)
【文献】米国特許第06178744(US,B1)
【文献】特開2006-250524(JP,A)
【文献】特開昭60-093110(JP,A)
【文献】特開平08-068318(JP,A)
【文献】特開2016-056752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/40
F28D 7/10
F01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1底面から第2底面まで貫通して第1流体の流路を形成するセルを区画成形する隔壁、内周壁及び外周壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の前記外周壁を被覆する被覆部材と、を備え、
前記第1流体と前記被覆部材の外側を流通する第2流体との間の熱交換を行うための熱交換部材であって、
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、前記セルが放射状に設けられており、
前記内周壁及び前記外周壁の厚みが前記隔壁の厚みよりも大き
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、前記隔壁が、周方向に延びる第2隔壁と、前記第2隔壁と交差する第1隔壁とを有し、且つ1つのセルを区画形成する前記第1隔壁が、前記1つのセルを区画形成する前記第2隔壁よりも長い熱交換部材。
【請求項2】
前記第1隔壁が放射方向に延びている、請求項に記載の熱交換部材。
【請求項3】
前記第1隔壁の厚みが前記第2隔壁の厚みよりも大きい、請求項1又は2に記載の熱交換部材。
【請求項4】
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、前記内周壁側の前記第1隔壁の数が、前記外周壁側の前記第1隔壁の数よりも少ない、請求項のいずれか一項に記載の熱交換部材。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項の熱交換部材を有する熱交換器。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱交換部材と、
前記中空型の柱状ハニカム構造体の中空領域に設けられた内筒であって、前記第1流体を前記中空型のハニカム構造体のセルに導入するための貫通孔を有する内筒と、
前記被覆部材との間に第2流体の流路を形成するフレームと、
前記第1流体と前記第2流体との間の熱交換時に、前記内筒の内側における前記第1流体の流れを遮断するための開閉弁と
を備える熱交換器。
【請求項7】
前記開閉弁は、非熱交換時に前記中空型のハニカム構造体のセル側における前記第1流体の流れを遮断するよう構成されている、請求項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記開閉弁は、熱交換時に前記内筒側における前記第1流体の流れを遮断する第1開閉弁と、非熱交換時に前記中空型のハニカム構造体のセル側における前記第1流体の流れを遮断する第2開閉弁とを有する、請求項又はに記載の熱交換器。
【請求項9】
前記中空型のハニカム構造体のセル側における前記第1流体の流れの一部を遮断する遮断壁を更に有し、非熱交換時に前記遮断壁と前記第2開閉弁とが一体となって前記第1流体の流れを遮断するよう構成されている、請求項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記第2流体の流路を形成する前記フレーム及び/又は前記被覆部材に乱流発生部が設けられている、請求項のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記内筒は、小径部、大径部、及び前記小径部と前記大径部とを軸方向に連続して形成するための段差部とを有し、
前記小径部の外径が、中空型の柱状ハニカム構造体の中空領域の径より小さく、
前記大径部の外径が、中空型の柱状ハニカム構造体の中空領域の径より大きく、
前記段差部が前記中空型の柱状ハニカム構造体の一方の底面に係合して前記内筒が固定されている、請求項10のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の熱交換器と、
前記熱交換器の上流側及び/又は下流側の前記第1流体の流路に設けられた浄化手段と
を備え、前記熱交換器の前記フレームによって前記浄化手段と前記熱交換器とが一体化されている、浄化手段付き熱交換器。
【請求項13】
2つ以上の熱交換器と、
前記熱交換器の間の前記第1流体の流路に設けられた浄化手段と
を備え、前記熱交換器の前記フレームによって前記浄化手段と前記熱交換器とが一体化されていると共に、前記2つ以上の熱交換器の少なくとも1つが請求項11のいずれか一項に記載の熱交換器である、浄化手段付き熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換部材、熱交換器及び浄化手段付き熱交換器に関する。詳細には、本発明は、第1流体(高温側)の熱を第2流体(低温側)へ伝達する熱交換部材、並びに該熱交換部材を有する熱交換器及び浄化手段付き熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費改善が求められている。特に、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐために、冷却水、エンジンオイル、ATF(オートマチックトランスミッションフルード;Automatic transmission fluid)などを早期に暖めてフリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。また、排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
このようなシステムにおいて、例えば、熱交換器を用いることが検討されている。熱交換器は、内部に第1流体を流通させると共に外部に第2流体を流通させることにより、第1流体と第2流体との熱交換を行う熱交換部材を含む装置である。このような熱交換器では、例えば、高温の第1流体(例えば、排ガス)から低温の第2流体(例えば、冷却水)へ熱交換することによって熱を有効利用することができる。
【0004】
自動車排ガスのような高温の気体から熱を回収する熱交換器としては、耐熱金属で作製された熱交換部材を有する熱交換器が知られていたが、耐熱金属は、価格が高い上に加工が難しい、密度が高くて重い、熱伝導が低いなどの問題があった。そこで、近年、柱状ハニカム構造体を有する熱交換部材をフレーム(ケーシング)内に収容し、第1流体をハニカム構造体のセル内に流通させ、第2流体をケーシング内で熱交換部材の外周面上に流通させる熱交換器の開発が進められている。
【0005】
ハニカム構造体を有する熱交換部材としては、第1流体の流路方向(セルの延びる方向)に垂直な断面において、中心部から外周部に向かって放射方向に延びる第1隔壁と、周方向に延びる第2隔壁とを備える柱状ハニカム構造体を有する熱交換体が提案されている(特許文献1)。
また、排気ガスのバイパス経路として機能する中空領域を備えた中空型(ドーナツ型)の柱状ハニカム構造体を有する熱交換部材が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6075381号公報
【文献】国際公開第2017/069265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱交換部材に用いられる柱状ハニカム構造体の外周壁は、外部からの衝撃、第1流体と第2流体との間の温度差による熱応力などにさらされるため、これらの外力によって外周壁が破壊され易いという問題がある。さらに、中空型の柱状ハニカム構造体については、外力による圧縮又は膨張によって外周壁だけでなく内周壁も破壊され易いという問題がある。
しかしながら、特許文献1及び2の柱状ハニカム構造体を有する熱交換部材は、これらの外力に起因する問題について十分に検討されていない。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、外部からの衝撃、熱応力などに対する耐性に優れた熱交換部材、熱交換器及び浄化手段付き熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、セルを区画成形する隔壁、内周壁及び外周壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体において、内周壁及び外周壁の厚みを隔壁の厚みよりも大きくすることにより、外力に対する耐性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、第1底面から第2底面まで貫通して第1流体の流路を形成するセルを区画成形する隔壁、内周壁及び外周壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体と、前記柱状ハニカム構造体の前記外周壁を被覆する被覆部材と、を備え、前記第1流体と前記被覆部材の外側を流通する第2流体との間の熱交換を行うための熱交換部材であって、
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、前記セルが放射状に設けられており、
前記内周壁及び前記外周壁の厚みが前記隔壁の厚みよりも大き
前記第1流体の流路方向に垂直な前記柱状ハニカム構造体の断面において、前記隔壁が、周方向に延びる第2隔壁と、前記第2隔壁と交差する第1隔壁とを有し、且つ1つのセルを区画形成する前記第1隔壁が、前記1つのセルを区画形成する前記第2隔壁よりも長い熱交換部材である。
【0011】
また、本発明は、前記熱交換部材を有する熱交換器である。
また、本発明は、前記熱交換部材と、
前記中空型の柱状ハニカム構造体の中空領域に設けられた内筒であって、前記第1流体を前記中空型のハニカム構造体のセルに導入するための貫通孔を有する内筒と、
前記被覆部材との間に第2流体の流路を形成するフレームと、
前記第1流体と前記第2流体との間の熱交換時に、前記内筒の内側における前記第1流体の流れを遮断するための開閉弁と
を備える熱交換器である。
【0012】
また、本発明は、前記熱交換器と、
前記熱交換器の上流側及び/又は下流側の前記第1流体の流路に設けられた浄化手段と
を備え、前記熱交換器の前記フレームによって前記浄化手段と前記熱交換器とが一体化されている、浄化手段付き熱交換器である。
【0013】
さらに、本発明は、2つ以上の熱交換器と、
前記熱交換器の間の前記第1流体の流路に設けられた浄化手段と
を備え、前記熱交換器の前記フレームによって前記浄化手段と前記熱交換器とが一体化されていると共に、前記2つ以上の熱交換器の少なくとも1つが前記熱交換器である、浄化手段付き熱交換器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部からの衝撃、熱応力などに対する耐性に優れた熱交換部材、熱交換器及び浄化手段付き熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る熱交換部材における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る熱交換部材における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図(図1におけるa-a’線の断面図)である。
図3】中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、セルの形状を説明するための部分拡大図である。
図4】本発明の実施形態2に係る熱交換器の斜視図である。
図5】本発明の実施形態2に係る熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図6】熱交換部材及びフレームの内筒の部分を拡大して示した斜視図である。
図7】本発明の実施形態3に係る熱交換器の非熱交換時における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図、及び中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の面を開閉弁側から見た図である。
図8】本発明の実施形態3に係る熱交換器の熱交換時における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図、及び中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の面を開閉弁側から見た図である。
図9】本発明の実施形態4に係る熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の第2流体の流路の拡大断面図である。
図10】第2流体の流路に形成される乱流発生部を説明するための図である。
図11】本発明の実施形態5に係る熱交換器の製造方法を説明するための断面図である。
図12】本発明の実施形態6に係る浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図13】本発明の実施形態6に係る他の浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図14】本発明の実施形態6に係る他の浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図15】本発明の実施形態7に係る浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図16】本発明の実施形態8に係る浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図17】本発明の実施形態9に係る浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
図18】本発明の実施形態9に係る他の浄化手段付き熱交換器における、中空型及び中実型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0017】
実施形態1.
<熱交換部材>
図1には、本発明の実施形態1に係る熱交換部材について、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向(セルの延びる方向)に平行な方向の断面図が示されている。また、図2は、図1におけるa-a’線の断面図であり、本発明の実施形態1に係る熱交換部材について、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の断面図が示されている。
【0018】
熱交換部材1は、第1底面2から第2底面3まで貫通して第1流体の流路を形成するセル4を区画成形する隔壁5、内周壁6及び外周壁7を有する中空型の柱状ハニカム構造体8と、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7を被覆する被覆部材9とを備える。熱交換部材1において、セル4内を流通する第1流体と被覆部材9の外側を流通する第2流体との間の熱交換が、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7及び被覆部材9を介して行われる。なお、図1において、第1流体は、紙面の左右のいずれの方向にも流れることができる。第1流体としては、特に限定されず、種々の液体又は気体を用いることができる。例えば、自動車に搭載される熱交換器に熱交換部材1が用いられる場合には、第1流体は排ガスであることが好ましい。
【0019】
ここで、本明細書において「中空型の柱状ハニカム構造体8」とは、第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体8の断面(図2の断面)において、中心部に中空領域10を有する柱状ハニカム構造体を意味する。
中空型の柱状ハニカム構造体8の形状(外形)としては、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。したがって、図2の断面における中空型の柱状ハニカム構造体8の外形は、円形、楕円形、四角形又はその他の多角形などとすることができる。
また、中空型の柱状ハニカム構造体8における中空領域10の形状についても、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。したがって、図2の断面における中空領域10の形状は、円形、楕円形、四角形又はその他の多角形などとすることができる。
なお、中空型の柱状ハニカム構造体8の形状と、中空領域10の形状とは同一であっても異なっていてもよいが、外部からの衝撃、熱応力などに対する耐性の観点から、同一であることが好ましい。
【0020】
セル4は、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面(図2の断面)において、放射状に設けられている。このような構成とすることにより、セル4を流通する第1流体の熱を中空型の柱状ハニカム構造体8の外部に効率良く伝達することができる。
セル4の形状としては、特に限定されず、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、又はその他の多角形などとすることができる。具体的には、図2に示す形状の他、図3に示す様々な形状とすることができる。
【0021】
内周壁6及び外周壁7の厚みは、隔壁5の厚みよりも大きい。このような構成とすることにより、外部からの衝撃、第1流体と第2流体との間の温度差による熱応力などによって破壊(例えば、ひび、割れなど)が起こり易い内周壁6及び外周壁7の強度を高めることができる。
なお、内周壁6及び外周壁7の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、内周壁6及び外周壁7の厚みは、熱交換部材1を一般的な熱交換用途に用いる場合は、0.3mm超過10mm以下とすることが好ましく、0.5mm~5mmとすることがより好ましく、1mm~3mmとすることが更に好ましい。また、熱交換部材1を蓄熱用途に用いる場合は、外周壁7の厚みを10mm以上として外周壁7の熱容量を増大させることも好ましい。
【0022】
隔壁5は、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、周方向に延びる第2隔壁5bと、第2隔壁5bと交差する第1隔壁5aとを有することが好ましい。このような構成とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体8の強度を確保しつつ、セル4を流通する第1流体の熱を中空型の柱状ハニカム構造体8の外部に効率良く伝達させることができる。
【0023】
また、第1隔壁5aは、放射方向に延びていることが好ましい。このような構成とすることにより、放射方向への熱伝導性が向上するため、セル4を流通する第1流体の熱を中空型の柱状ハニカム構造体8の外部に効率良く伝達させることができる。
【0024】
第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、1つのセル4を区画形成する第1隔壁5aは、1つのセル4を区画形成する第2隔壁5bよりも長いことが好ましい。第1隔壁5aは、放射方向への熱伝導率に寄与するため、このような構成とすることにより、セル4を流通する第1流体の熱を中空型の柱状ハニカム構造体8の外部に効率良く伝達させることができる。
【0025】
第1隔壁5aの厚みは、第2隔壁5bの厚みよりも大きいことが好ましい。隔壁5の厚みは熱伝導率と相関するため、このような構成とすることにより、第1隔壁5aの熱伝導率を第2隔壁5bの熱伝導率よりも大きくすることができる。その結果、セル4を流通する第1流体の熱を中空型の柱状ハニカム構造体8の外部に効率良く伝達させることができる。
なお、隔壁5(第1隔壁5a及び第2隔壁5b)の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。隔壁5の厚みは、0.1~1mmとすることが好ましく、0.2~0.6mmとすることが更に好ましい。隔壁5の厚みを0.1mm以上とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体8の機械的強度を十分なものとすることができる。また、隔壁5の厚さを1mm以下とすることにより、開口面積の低下によって圧力損失が大きくなったり、第1流体との接触面積の低下によって熱回収効率が低下したりする問題を防止することができる。
【0026】
第1隔壁5aが放射方向に延びている場合、内周壁6側になるほど隣り合う第1隔壁5aの間が狭くなるため、セル4を形成することが難しくなることがある。そして、内周壁6側にセル4が形成されていない場合や、内周壁6側に形成されたセル4の断面積が小さすぎる場合には、熱交換部材1の圧力損失が大きくなってしまう。このような問題を防止する観点からは、第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体8の断面において、中空型の柱状ハニカム構造体8の内周壁6側の第1隔壁5aの数が、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7側の第1隔壁5aの数よりも少ないことが好ましい。このような構成とすることにより、内周壁6側にもセル4を安定して形成することができる。そのため、内周壁6側にセル4が形成され難くなることに起因する熱交換部材1の圧力損失の増大を抑制することができる。
ここで、中空型の柱状ハニカム構造体8の内周壁6側の第1隔壁5aの数とは、図2に示す断面において、中空型の柱状ハニカム構造体8の中空領域10に最も近い(すなわち外周壁7から最も遠い)、周方向に並んだ複数のセル4を有する領域(以下、「周方向領域」という)中の複数のセル4を形成する第1隔壁5aの総数を意味する。また、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7側の第1隔壁5aの数とは、図2に示す断面において、中空型の柱状ハニカム構造体8の中空領域10から最も遠い(すなわち、外周壁7から最も近い)周方向領域中の複数のセル4を形成する第1隔壁5aの総数を意味する。
【0027】
また、第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体8の断面において、内周壁6側の第1隔壁5aの数は、外周壁7側から内周壁6側に向かうにつれて減少していることが好ましい。隣り合う第1隔壁5aの間は、内周壁6側になるほど狭くなるため、セル4を形成することが難しくなるが、このような構成とすることにより、隣り合う第1隔壁5aの間を確保することができるため、セル4を安定して形成することができる。そのため、熱交換部材1の圧力損失の増大を抑制することができる。
なお、第1隔壁5aの数の減少の頻度としては、特に限定されないが、連続的であっても間欠的であってもよい。
【0028】
隔壁5の密度は、0.5~5g/cm3であることが好ましい。隔壁5の密度を0.5g/cm3以上とすることにより、隔壁5を十分な強度とすることができる。また、隔壁5の密度を5g/cm3以下とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体8を軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体8を強固なものとすることができ、熱伝導率を向上させる効果も得られる。なお、隔壁5の密度は、アルキメデス法により測定した値である。
【0029】
隔壁5、内周壁6及び外周壁7は、セラミックスを主成分とする。「セラミックスを主成分とする」とは、隔壁5、内周壁6及び外周壁7の全質量に占めるセラミックスの質量比率が50質量%以上であることをいう。
【0030】
隔壁5、内周壁6及び外周壁7の気孔率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが特に好ましい。また、隔壁5、内周壁6及び外周壁7の気孔率は0%とすることもできる。隔壁5、内周壁6及び外周壁7の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。
【0031】
隔壁5、内周壁6及び外周壁7は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。「SiC(炭化珪素)を主成分として含む」とは、隔壁5、内周壁6及び外周壁7の全質量に占めるSiC(炭化珪素)の質量比率が50質量%以上であることを意味する。
【0032】
さらに具体的には、中空型の柱状ハニカム構造体8の材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si34、及びSiCなどを採用することができる。その中でも、安価に製造でき、高熱伝導であることからSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することが好ましい。
【0033】
第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体8の断面におけるセル密度(即ち、単位面積当たりのセル4の数)は、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよいが、4~320セル/cm2の範囲であることが好ましい。セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁5の強度、ひいては中空型の柱状ハニカム構造体8自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分に確保することができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、第1流体が流れる際の圧力損失の増大を防止することができる。
【0034】
中空型の柱状ハニカム構造体8のアイソスタティック強度は、100MPa超過が好ましく、150MPa以上がより好ましく、200MPa以上が更に好ましい。中空型の柱状ハニカム構造体8のアイソスタティック強度が、100MPa超過であると、中空型の柱状ハニカム構造体8が耐久性に優れたものとなる。中空型の柱状ハニカム構造体8のアイソスタティック強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505-87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
【0035】
第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における外周壁7の直径(外径)は、20~200mmであることが好ましく、30~100mmであることがより好ましい。このような直径とすることにより、熱回収効率を向上させることができる。外周壁7が円形でない場合には、外周壁7の断面形状に内接する最大内接円の直径を、外周壁7の直径とする。
また、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における内周壁6の直径は、1~50mmであることが好ましく、2~30mmであることがより好ましい。内周壁6の断面形状が円形でない場合には、外周壁7の断面形状に内接する最大内接円の直径を、外周壁7の直径とする。
【0036】
中空型の柱状ハニカム構造体8の熱伝導率は、25℃において、50W/(m・K)以上であることが好ましく、100~300W/(m・K)であることが更に好ましく、120~300W/(m・K)であることが特に好ましい。中空型の柱状ハニカム構造体8の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、中空型の柱状ハニカム構造体8内の熱を外部に効率良く伝達させることができる。なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法(JIS R1611-1997)により測定した値である。
【0037】
中空型の柱状ハニカム構造体8のセル4に、第1流体として排ガスを流す場合、中空型の柱状ハニカム構造体8の隔壁5に触媒を担持させることが好ましい。隔壁5に触媒を担持させると、排ガス中のCO、NOx、HCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になると共に、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることも可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。上記元素は、金属単体、金属酸化物、又はそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
【0038】
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10~400g/Lであることが好ましい。また、貴金属を含む触媒であれば、担持量が0.1~5g/Lであることが好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が発現しやすい。一方、400g/L以下とすると、圧力損失と共に製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。
【0039】
被覆部材9は、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7を被覆し得るものであれば特に限定されない。例えば、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7に嵌合して中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7を周回被覆する筒状部材を用いることができる。
ここで、本明細書において、「嵌合」とは、中空型の柱状ハニカム構造体8と被覆部材9とが、相互に嵌まり合った状態で固定されていることをいう。したがって、中空型の柱状ハニカム構造体8と被覆部材9との嵌合においては、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などにより、中空型の柱状ハニカム構造体8と被覆部材9とが相互に固定されている場合なども含まれる。
【0040】
被覆部材9は中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7に対応した内面形状を有することができる。被覆部材9の内周面が中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7に直接接触することで、熱伝導性が良好となり、中空型の柱状ハニカム構造体8内の熱を被覆部材9に効率良く伝達することができる。
【0041】
熱回収効率を高めるという観点からは、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7の全面積に対する、被覆部材9によって周回被覆される中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7の部分の面積の割合は高いほうが好ましい。具体的には、当該面積割合は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、100%(すなわち、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周壁7の全部が被覆部材9によって周回被覆される。)であることが更により好ましい。
なお、ここでいう「外周壁7」とは、中空型の柱状ハニカム構造体8の第1流体の流路方向に平行な面を指し、中空型の柱状ハニカム構造体8の第1流体の流路方向と垂直な面(第1底面2及び第2底面3)は含まれない。
【0042】
被覆部材9は、製造性の観点から金属製であることが好ましい。また、被覆部材9が金属製であると、後述する金属製のフレーム(ケーシング)23との溶接が容易に行える点でも優れている。被覆部材9の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0043】
被覆部材9の厚みは、耐久信頼性の理由により、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上が更により好ましい。被覆部材9の厚みは、熱抵抗を低減して熱伝導性を高めるという理由により、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。
【0044】
<熱交換器>
本発明の実施形態1に係る熱交換器は、上記の熱交換部材1を有する。この熱交換器において、熱交換部材1以外の部材については特に限定されず、公知の部材を用いることができる。
【0045】
<熱交換部材及び熱交換器の製造方法>
本発明の実施形態1に係る熱交換部材及び熱交換器の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、以下に説明する製造方法に従って行うことができる。
まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。このとき、適切な形態の口金及び治具を選択することにより、セル4の形状及び密度、隔壁5の数、長さ及び厚さ、内周壁6及び外周壁7の形状及び厚さなどを制御することができる。また、ハニカム成形体の材料としては、前述のセラミックスを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム成形体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水及び/又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られたハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁5により区画形成されたセル4を有する中空型の柱状ハニカム構造体8を得ることができる。
【0046】
次に、中空型の柱状ハニカム構造体8を被覆部材9に挿入することにより、中空型の柱状ハニカム構造体8の外周面を被覆部材9で周回被覆する。この状態で、焼き嵌めすることで、被覆部材9の内周面が中空型の柱状ハニカム構造体8の外周面に嵌合する。なお、中空型の柱状ハニカム構造体8と被覆部材9との嵌合は、先述したように、焼き嵌め以外に、すきま嵌め、締まり嵌めといった嵌め合いによる固定方法、更にはろう付け、溶接、拡散接合などにより行うことができる。これにより、熱交換部材1が完成する。
次に、この熱交換部材1をその他の部材と組み合わせ、接合などの処理を行うことによって熱交換器20を得ることができる。
【0047】
実施形態2.
図4には、本発明の実施形態2に係る熱交換器の斜視図が示されている。また、図5には、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図が示されている。
図5に示されるように、熱交換器20は、上記の熱交換部材1と、中空型の柱状ハニカム構造体8の中空領域10に設けられた内筒27と、被覆部材9との間に第2流体の流路24を形成するフレーム23と、内筒27に設けられた開閉弁26とを備えている。
内筒27は、第1流体を中空型のハニカム構造体8のセル4に導入するための貫通孔25を有しており、貫通孔25によって第1流体の流れが2つ(中空型の柱状ハニカム構造体8のセル4及び中空領域10)に分岐される。
フレーム23は、第2流体の入口21及び第2流体の出口22をさらに有し、被覆部材9を周回被覆している。フレーム23は、熱交換効率を高める観点から、熱交換部材1全体を周回被覆していることが好ましい。
開閉弁26は、その開閉機構により、中空型の柱状ハニカム構造体8の中空領域10を流れる第1流体の量を制御することができる。特に、開閉弁26は、第1流体と第2流体との間の熱交換時に、内筒27の内側における第1流体の流れを遮断することにより、貫通孔25を介して中空型のハニカム構造体8のセル4に第1流体を選択的に導入することができるため、第1流体と第2流体との間の熱交換を効率的に行うことができる。
【0048】
ここで、内筒27に設けられる貫通孔25の例を図6に示す。図6は、熱交換部材1(ただし、被覆部材9は省略)及び内筒27の部分を拡大して示した斜視図である。図6(a)~(f)に示すように、貫通孔25は、内筒27の全周に形成されていてもよいし、内筒27の部分的な位置(例えば、上部、中央部又は下部のみ)に形成されていてもよい。また、貫通孔25の形状も、円形、楕円形、四角形などの各種形状とすることができる。
【0049】
この熱交換器20では、第2流体が第2流体の入口21からフレーム23内に流入する。次いで、第2流体は、第2流体の流路24を通る間に、熱交換部材1の被覆部材9を介して中空型の柱状ハニカム構造体8のセル4を流れる第1流体と熱交換された後、第2流体の出口22から流出する。なお、熱交換部材1の被覆部材9の外周面は伝熱効率を調整するための部材によって被覆されていてもよい。
【0050】
他方、第1流体は内筒27の内部に流入する。このとき、開閉弁26が閉であると、中空領域10内の内筒27の通気抵抗が上昇し、貫通孔25を介してセル4に第1流体が選択的に流入する。一方、開閉弁26が開であると、中空領域10内の内筒27の通気抵抗が低下するため、第1流体が中空領域10内の内筒27に選択的に流入する。したがって、開閉弁26の開閉を制御することにより、セル4に流入する第1流体の量を調整することができる。なお、中空領域10内の内筒27を流れる第1流体は、第2流体との熱交換にはほとんど寄与しないため、この第1流体の経路は、第1流体の熱回収を抑制したい場合などにおけるバイパス経路として機能する。つまり、第1流体の熱回収を抑制したい場合には、開閉弁26を開とすればよい。
【0051】
フレーム23の材質は、特に限定されないが、熱伝導性及び製造性の観点から、金属製であることが好ましい。金属としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、安価で耐久信頼性が高いという理由により、ステンレスが好ましい。
【0052】
フレーム23の厚みは、特に限定されないが、耐久信頼性の理由により、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更により好ましい。フレーム23の厚みは、コスト、体積、重量などの観点から、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。
【0053】
フレーム23は、一体成形品であってよいが、2つ以上の部材から形成される接合部材であることが好ましい。フレーム23が、2つ以上の部材から形成される接合部材である場合、フレーム23の設計自由度を高めることができる。
【0054】
開閉弁26の形状及び構造は、特に限定されず、開閉弁26が設けられる中空型の柱状ハニカム構造体8の中空領域10に応じて適切なものを選択すればよい。
【0055】
第2流体としては、特に制限はないが、熱交換器20が、自動車に搭載される場合には、第2流体は、水又は不凍液(JIS K2234:2006で規定されるLLC)であることが好ましい。第1流体及び第2流体の温度に関しては、第1流体の温度>第2流体の温度であることが好ましい。その理由としては、熱交換部材1の被覆部材9が低温で膨張せず、中空型の柱状ハニカム構造体8がより高温で膨張することで、両者の嵌合が緩み難い条件となるためである。特に、中空型の柱状ハニカム構造体8と被覆部材9の嵌合が焼き嵌めの場合、嵌合が緩み、中空型の柱状ハニカム構造体8が抜け落ちるリスクを最小限にすることができる。
【0056】
熱交換器20では、第2流体の入口21は、第2流体の出口22と同一側に設けられているが、第2流体の入口21及び第2流体の出口22の位置に特に制限はなく、熱交換器20の設置場所、配管位置、熱交換効率を考慮して適宜変更可能である。
また、図5では、中空型の柱状ハニカム構造体8の軸方向(セル4の延びる方向)に対して第1流体及び第2流体が同一方向に平行して流れる場合を示したが、第2流体の入口21及び第2流体の出口22を逆にすることで、中空型の柱状ハニカム構造体8の軸方向に対して第1流体と第2流体とが対向して流れるようにしてもよい。このような構成とすることにより、第2流体が下流に向かうにつれて、より高い温度の第1流体と熱交換することができるため、熱交換効率を向上させることができる。
上記のような特徴を有する熱交換部材1は、フレーム23及び内筒27と組み合わせ、接合などの処理を行うことによって熱交換器20を製造することができる。
【0057】
実施形態3.
本発明の実施形態3に係る熱交換器は、開閉弁26が、非熱交換時に前記中空型のハニカム構造体8のセル4側における第1流体の流れを遮断するよう構成されている点で本発明の実施形態2に係る熱交換器と相違する。以下、本発明の実施形態2に係る熱交換器と同じ部分については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本発明の実施形態2に係る熱交換器は、第1流体の熱回収を抑制したい場合、開閉弁26を開とすることにより、第1流体を中空型のハニカム構造体8のセル4側よりも内筒27側に流れ易くしている。しかしながら、開閉弁26を開とした場合であっても、中空型のハニカム構造体8のセル4側に第1流体が僅かに流れてしまうため、熱回収を十分に抑制できないことがある。
そこで、本発明の実施形態3に係る熱交換器では、開閉弁が、非熱交換時に中空型のハニカム構造体8のセル4側に第1流体の流れを遮断するよう構成されている。
【0058】
図7(a)及び8(a)には、本発明の実施形態3に係る熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図が示されている。また、図7(b)及び8(b)には、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に垂直な方向の面を開閉弁側から見た図が示されている。図7(a)及び(b)は非熱交換時、図8(a)及び(b)は熱交換時の様子をそれぞれ表す。
なお、図7及び8では、図を見易くする観点から、フレーム23が省略されている点に留意すべきである。また、本明細書において「熱交換時」とは、第1流体と第2流体との間の熱交換を行う場合(すなわち、熱回収を行う場合)のこと、「非熱交換時」とは、第1流体と第2流体との間の熱交換を行わない場合(すなわち、熱回収を抑制する場合)のことを意味する。
【0059】
図7及び8に示されるように、本発明の実施形態3に係る熱交換器は、内筒27側における第1流体の流れを遮断する第1開閉弁26aと、中空型のハニカム構造体8のセル4側における第1流体の流れを遮断する第2開閉弁26bとを有する開閉弁26を備えている。第2開閉弁26bは、第1開閉弁26aが開となった場合に閉となり、第1開閉弁26aが閉となった場合に開となるように構成されている。また、中空型のハニカム構造体8のセル4側を流れる第1流体の流路の遮断壁28が設けられている。第2開閉弁26b及び遮断壁28はいずれも、内筒27と被覆部材9との間の第1流体の流路の半分を遮断することができるような半ドーナツ状(半リング状)となっており、第2開閉弁26bが閉となった場合に、第2開閉弁26bと遮断壁28とが一体となって第1流体の流れを遮断する。
なお、図7及び8では、第2開閉弁26b及び遮断壁28を半ドーナツ状にした例を示したが、第2開閉弁26b及び遮断壁28とが一体となって第1流体の流れを遮断するよう構成されていれば、それらの形状は特に限定されない。例えば、遮断壁28を中心角が270°の環状扇形、第2開閉弁26bを中心角が90°の環状扇形としてもよい。
【0060】
上記のような構造を有する本発明の実施形態3に係る熱交換器では、非熱交換時に、第1開閉弁26aを開及び第2開閉弁26bを閉とすることにより、中空型のハニカム構造体8のセル4側における第1流体の流れが遮断されるため、中空型のハニカム構造体8の中空領域10内の内筒27側に第1流体が選択的に流入する。したがって、非熱交換時は、中空型のハニカム構造体8のセル4側に第1流体が流入することを防止することができるため、熱回収の抑制を向上させることができる。一方、熱交換時には、第1開閉弁26aを閉及び第2開閉弁26bを開とすることにより、中空型のハニカム構造体8の中空領域10内の内筒27側における第1流体の流れが遮断されるため、中空型のハニカム構造体8のセル4側に第1流体が選択的に流入する。したがって、熱交換時は、中空型のハニカム構造体8の中空領域10内の内筒27側に第1流体が流入することを防止することができるため、熱回収を向上させることができる。
なお、この実施形態で説明した効果は、本発明の実施形態1に係る熱交換部材1に依存するものではないため、当該技術分野において公知の熱交換部材を用いることによっても得ることができる。
【0061】
実施形態4.
本発明の実施形態4に係る熱交換器は、第2流体の流路を形成するフレーム及び/又は被覆部材に乱流発生部が設けられている点で本発明の実施形態2及び3に係る熱交換器と相違する。以下、本発明の実施形態2及び3に係る熱交換器と同じ部分については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本発明の実施形態2及び3に係る熱交換器は、第2流体の流路24を第2流体が通過する間に第1流体との熱交換が行われている。しかしながら、第2流体の流路24における第2流体の流れがスムーズであると、第1流体との熱交換効率を十分に高めることができない場合がある。
そこで、本発明の実施形態4に係る熱交換器は、第2流体の流路を形成するフレーム及び/又は被覆部材に乱流発生部が設けられている。
【0062】
図9には、本発明の実施形態4に係る熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の第2流体の流路の拡大断面図が示されている。なお、図9では、図を見易くする観点から、第2流体の流路以外の部材は省略されている点に留意すべきである。
図9に示されるように、本発明の実施形態4に係る熱交換器は、第2流体の流路24に乱流発生部29が形成されている。ここで、本明細書において「乱流発生部29」とは、第2流体に乱流を発生させることが可能な部分のことを意味する。第2流体の流路24を形成するフレーム23及び/又は被覆部材9に乱流発生部29を設けることにより、被覆部材9とフレーム23との間の第2流体の流路24を通る第2流体に乱流が生じ、第1流体と第2流体との間の熱伝達率が向上するため、熱交換効率を高めることができる。
【0063】
乱流発生部29は、乱流を発生させ得る形状であれば特に限定されず、突起部、凹部、縮径部などの各種形状とすることができる。また、乱流発生部29は、第2流体の流路24に形成されていればよく、被覆部材9若しくはフレーム23のいずれか、又は被覆部材9及びフレーム23の両方に形成されていてもよい。さらに、乱流発生部29の数も特に限定されず、乱流発生部29の形状などに応じて適宜調整すればよい。
図9は、乱流発生部29としての縮径部をフレーム23の一部に1箇所形成した例である。また、図10に示すように、(a)乱流発生部29としての縮径部をフレーム23の大部分に形成したり、(b)乱流発生部29としての縮径部をフレーム23の一部に2箇所形成したり、(c)乱流発生部29としての突起部を被覆部材9及びフレーム23の両方に設けたり、(d)乱流発生部29としての凹部を被覆部材9及びフレーム23の両方に設けたりしてもよい。
なお、この実施形態で説明した効果は、本発明の実施形態1に係る熱交換部材1に依存するものではないため、当該技術分野において公知の熱交換部材を用いることによっても得ることができる。
【0064】
実施形態5.
本発明の実施形態2~4に係る熱交換器は、公知の方法に準じて製造することができるが、組付けが難しいことがある。
そこで、本発明の実施形態5に係る熱交換器は、構成する部材を組付け易い部材に分け、それらを適切な順序で組付けることによって製造している。
【0065】
図11には、本発明の実施形態5に係る熱交換器の製造方法を説明するための断面図が示されている。この断面図は、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図である。
まず、図11(a)に示されるように、中空型の柱状ハニカム構造体8と被覆部材9とから構成される熱交換部材1を準備する。被覆部材9は、小径部、大径部、及び小径部と大径部とを軸方向に連続して形成するための段差部31とを有する。
次に、図11(b)に示されるように、フレーム23に熱交換部材1を挿入して溶接などによって固定する。フレーム23は、フレーム23の軸方向に係る一端側の内径が、フレーム23の軸方向に係る他端側の内径よりも大きく設定されている。フレーム23の軸方向に係る一端側の内径は、被覆部材9の大径部の外径に対応し、フレーム23の軸方向に係る他端側の内径は、被覆部材9の小径部の外径に対応するようになっている。そのため、フレーム23に対する熱交換部材1の挿入方向を間違い難くすることができる。
【0066】
次に、図11(c)に示されるように、中空型の柱状ハニカム構造体8の中空領域10に内筒27を挿入する。内筒27は、小径部、大径部、及び小径部と大径部とを軸方向に連続して形成するための段差部31とを有する。内筒27の小径部の外径は、中空型の柱状ハニカム構造体8の中空領域10の径より小さく、内筒27の大径部の外径は、中空型の柱状ハニカム構造体8の中空領域10の径より大きく構成されている。そして、段差部31が中空型の柱状ハニカム構造体8の一方の底面(第1底面2又は第2底面3)に係合して内筒27が固定されることにより、内筒27の位置が定まるようになっている。そのため、内筒27の位置ずれを生じ難くすることができる。段差部31と柱状ハニカム構造体8の一方の底面とを係合して固定する方法としては、お互いに接触させて固定してよいし、公知の接合材を介してお互いを固定してもよい。
次に、図11(d)に示されるように、フロントカバー32を内筒27の大径部側に設けた後、溶接などによって内筒27及びフレーム23と固定する。フロントカバー32は、内筒27の大径部の外径及びフレーム23の一端側の外径に対応する内径を有しているため、フロントカバー32の設置位置を間違い難くすることができる。
【0067】
次に、図11(e)に示されるように、バックカバー33をフレーム23の他端側に設けた後、溶接などによってフレーム23と固定し、開閉弁26を取り付ける。バックカバー33は、フレーム23の他端側の外径に対応する内径を有しているため、バックカバー33の設置位置を間違い難くすることができる。また、遮蔽管34を内筒27の大径部側に挿入した後、溶接などによって固定する。
なお、図11では、第2流体の入口21及び出口22については図示していないが、フレーム23に溶接などによって予め接続してもよく、(b)~(e)のいずれかの段階後に接続してもよい。
【0068】
上記のようにして製造される本発明の実施形態5に係る熱交換器は、構成する部材の位置、挿入方向などの間違いが生じ難く、組付け易いため、製造し易い。
なお、この実施形態で説明した効果は、本発明の実施形態1に係る熱交換部材1に依存するものではないため、当該技術分野において公知の熱交換部材を用いることによっても得ることができる。
【0069】
実施形態6.
本発明の実施形態6に係る浄化手段付き熱交換器は、本発明の実施形態2~5に係る熱交換器と、熱交換器の上流側の第1流体の流路に設けられた浄化手段とを備え、熱交換器のフレームによって浄化手段と熱交換器とが一体化されている。以下、本発明の実施形態2~5に係る熱交換器の構成については上記で説明しているため、それ以外の構成について説明する。
本発明の実施形態2~5に係る熱交換器は、浄化機能を得るために、浄化装置と配管で接続する必要があることから、配置スペースの確保が難しい。
そこで、本発明の実施形態6に係る浄化手段付き熱交換器は、熱交換器の上流側の第1流体の流路に浄化手段を設け、フレームによって浄化手段と熱交換器とを一体化している。
【0070】
図12には、本発明の実施形態6に係る浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図が示されている。
図12に示されるように、本発明の実施形態6に係る浄化手段付き熱交換器は、熱交換器の上流側の第1流体の流路に浄化手段30を備えている。また、熱交換器と浄化手段30との間には、浄化手段30を通過した第1流体が内筒27に導入されるように隔離壁41が設けられている。さらに、浄化手段30は、フレーム23によって熱交換器と一体化されている。そのため、熱交換器と浄化手段30とを配管によって接続する必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【0071】
隔離壁41は、図13に示されるように貫通孔42を有していてもよい。隔離壁41が貫通孔42を有する場合、浄化手段30を通過した第1流体は、中空型のハニカム構造体8のセル4及び内筒27の両方に流入することが可能になる。このような構成を有する浄化手段付き熱交換器では、熱交換時に、開閉弁26を閉とすることにより、内筒27の貫通孔25及び隔離壁41の貫通孔42の両方を介してセル4に第1流体が流入する。このとき、特に、隔離壁41の貫通孔42から第1流体が直線的に流入するため、通気抵抗を低下させることが可能となる。一方、非熱交換時には、開閉弁26を開とすることにより、内筒27に第1流体が流入する。このとき、第1流体は、隔離壁41の貫通孔42からセル4に流入しようとするが、セル4の通気抵抗が、内筒27の通気抵抗に比べて遥かに高いため、第1流体のほとんどは内筒27内を通過する。
【0072】
また、図14に示されるように、内筒27を中空領域10に備えた中空型の柱状ハニカム構造体8と浄化手段30との間に隔離壁41を設けなくてもよい。隔離壁41を設けない場合、浄化手段30を通過した第1流体は、中空型のハニカム構造体8のセル4及び内筒27の両方に流入することが可能になる。このような構成を有する浄化手段付き熱交換器では、熱交換時に、開閉弁26を閉とすることにより、浄化手段30を通過した第1流体は、セル4に直接流入するか、又は内筒27の貫通孔25を介してセル4に流入する。このとき、特に、浄化手段30を通過した第1流体が直接且つ直線的に流入するため、通気抵抗を低下させることが可能となる。一方、非熱交換時には、開閉弁26を開とすることにより、内筒27に第1流体が流入する。このとき、浄化手段30を通過した第1流体は、セル4に流入しようとするが、セル4の通気抵抗が、内筒27の通気抵抗に比べて遥かに高いため、第1流体のほとんどは内筒27内を通過する。
【0073】
浄化手段30としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。浄化手段30の例としては、触媒を担持した触媒体、フィルタなどが挙げられる。触媒としては、例えば、第1流体として排ガスを用いる場合、排ガスを酸化又は還元する機能を有する触媒を用いることができる。触媒としては、貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金など)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、バリウムなどが挙げられる。これらの元素は、金属単体、金属酸化物、及びそれ以外の金属化合物であってもよい。また、触媒は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、この実施形態で説明した効果は、本発明の実施形態1に係る熱交換部材1に依存するものではないため、当該技術分野において公知の熱交換部材を用いることによっても得ることができる。
【0074】
実施形態7.
本発明の実施形態7に係る浄化手段付き熱交換器は、熱交換器の下流側の第1流体の流路に浄化手段30を設けている点で本発明の実施形態6に係る浄化手段付き熱交換器と相違する。以下、本発明の実施形態6に係る浄化手段付き熱交換器と同じ部分については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本発明の実施形態6に係る浄化手段付き熱交換器は、高温の第1流体が浄化手段30を通過する際に、第1流体の温度が低下し、熱回収効率が低下する可能性がある。
そこで、本発明の実施形態7に係る浄化手段付き熱交換器は、熱交換器の下流側の第1流体の流路に浄化手段30を設け、フレーム23によって浄化手段30と熱交換器とを一体化している。
【0075】
図15には、本発明の実施形態7に係る浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図が示されている。
図15に示されるように、本発明の実施形態7に係る浄化手段付き熱交換器は、熱交換器の下流側の第1流体の流路に浄化手段30を備えている。そのため、浄化性能を確保しつつ熱回収効率を高めることができる。また、浄化手段30は、フレーム23によって熱交換器と一体化されている。そのため、熱交換器と浄化手段30とを配管によって接続する必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【0076】
実施形態8.
本発明の実施形態8に係る浄化手段付き熱交換器は、熱交換器の上流側及び下流側の両方の第1流体の流路に浄化手段30を備えている点で本発明の実施形態6及び7に係る浄化手段付き熱交換器と相違する。以下、本発明の実施形態6及び7に係る浄化手段付き熱交換器と同じ部分については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
熱交換器の上流側の第1流体の流路に浄化手段30を設けた場合、高温の第1流体が浄化手段30を通過する際に第1流体の温度が低下し、熱回収効率が低下する可能性がある。一方、熱交換器の下流側の第1流体の流路に浄化手段30を設けた場合、熱交換器による熱回収によって第1流体の温度が低下し、浄化手段30の触媒作用を確保するのに十分な熱が得られず、浄化性能が低下する可能性がある。
そこで、本発明の実施形態8に係る浄化手段付き熱交換器は、浄化手段30を分割し、熱交換器の上流側及び下流側の両方の第1流体の流路に浄化手段30を設け、フレーム23によって浄化手段30と熱交換器とを一体化している。
【0077】
図16には、本発明の実施形態8に係る浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図が示されている。
図16に示されるように、本発明の実施形態8に係る浄化手段付き熱交換器は、熱交換器の上流側及び下流側の第1流体の流路に、2つに分割された浄化手段30を備えている。そのため、浄化性能及び熱回収効率の両方を高めることができる。また、浄化手段30は、フレーム23によって熱交換器と一体化されている。そのため、熱交換器と浄化手段30とを配管によって接続する必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【0078】
実施形態9.
本発明の実施形態9に係る浄化手段付き熱交換器は、2つ以上の熱交換器と、熱交換器の間の第1流体の流路に設けられた浄化手段とを備え、熱交換器の少なくとも1つが本発明の実施形態2~5に係る熱交換器である点で本発明の実施形態6及び7に係る浄化手段付き熱交換器と相違する。以下、本発明の実施形態6~8に係る浄化手段付き熱交換器と同じ部分については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0079】
図17には、本発明の実施形態9に係る浄化手段付き熱交換器における、中空型の柱状ハニカム構造体の第1流体の流路方向に平行な方向の断面図が示されている。
図17に示されるように、本発明の実施形態8に係る浄化手段付き熱交換器は、本発明の実施形態2~5に係る2つの熱交換器を備え、2つの熱交換器の間の第1流体の流路に浄化手段30が設けられている。このような構成とすることにより、熱交換器の数を増やすことができるため、熱回収量を増大させることができる。なお、図17では、第1流体の流路の上流側及び下流側に熱交換器を1つずつ設けた例を示したが、第1流体の流路の上流側及び下流側に熱交換器を2つ以上ずつ設けてもよい。
【0080】
また、図18に示すように、本発明の実施形態2~5に係る熱交換器と、この熱交換器と機構が異なる熱交換器とを組み合わせて用いてもよい。図18では、本発明の実施形態2~5に係る熱交換器と機構が異なる熱交換器として、第1底面から第2底面まで貫通して第1流体の流路を形成するセルを区画成形する隔壁及び外周壁を有する中実型の柱状ハニカム構造体と、中実型の柱状ハニカム構造体の外周壁を被覆する被覆部材とを備え、第1流体と被覆部材の外側を流通する第2流体との間の熱交換を行うための熱交換部材を有する熱交換器を用いた例を示している。この熱交換器は、中空型の柱状ハニカム構造体の代わりに中実型の柱状ハニカム構造体を用いていること以外は、本発明の実施形態2~5に係る熱交換器と同じ構成を有する。なお、本発明の実施形態2~5に係る熱交換器と機構が異なる熱交換器としては、上記の例に限定されず、当該技術分野において公知の機構を有する他の熱交換器を用いてもよい。また、図18では、第1流体の流路の上流側に本発明の実施形態2~5に係る熱交換器を用いた例を示したが、第1流体の流路の下流側に本発明の実施形態2~5に係る熱交換器を用いてもよい。さらに、図18では、第1流体の流路の上流側及び下流側に熱交換器を1つずつ設けた例を示したが、第1流体の流路の上流側及び下流側に熱交換器を2つ以上ずつ設けてもよい。このような構成とすることにより、熱回収量を増大させることができると共に、2つ以上の熱交換器が同時に故障するリスクを低減することができるため、信頼性の向上につながる。
【実施例
【0081】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0082】
<ハニカム構造体の製造>
(実施例1)
SiC粉末を含む坏土を所望の形状に押出成形した後、乾燥させ、所定の外形寸法に加工し、Si含浸焼成することによって、中空型の柱状ハニカム構造体を製造した。中空型の柱状ハニカム構造体の外形は、図1及び2に示すような円柱状とし、外径を70mm、中空領域の径を52mm、第1流体の流路方向の長さを25mmとした。また、第1隔壁、第2隔壁、内周壁及び外周壁の厚みは表1の通りとした。
【0083】
(比較例1及び2)
内周壁及び外周壁の厚みを表1の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして中空型の柱状ハニカム構造体を製造した。
【0084】
<アイソスタティック強度試験>
中空型の柱状ハニカム構造体の外周面に、厚さ0.5mmのウレタンゴム製のシートを巻き付け、更に、中空型の柱状ハニカム構造体の両端部の上に、円形のウレタンゴム製のシートを間に挟ませて、厚さ20mmのアルミニウム製の円板を配置した。アルミニウム製の円板及びウレタンゴム製のシートは、中空型の柱状ハニカム構造体の端部と同一の形状及び同一の大きさのものを用いた。さらに、アルミニウム製の円板の外周に沿ってビニールテープで巻くことにより、アルミニウム製の円板の外周とウレタンゴム製のシートとの間を封止して、試験用サンプルを得た。次に、試験用サンプルを、水を満たした圧力容器内に入れた。続いて、圧力容器内の水圧を0.3~3.0MPa/分の速度で200MPaまで上昇させ、中空型の柱状ハニカム構造体に破壊が生じたときの水圧を計測した。この評価結果において、水圧200MPaでも破壊が生じない場合「≧200(MPa)」と表す。試験結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示されるように、内周壁及び外周壁の厚みが隔壁(第1隔壁及び第2隔壁)の厚みよりも大きい実施例1の中空型の柱状ハニカム構造体は、内周壁及び外周壁の厚みが隔壁と同じ比較例1の中空型の柱状ハニカム構造体、及び内周壁及び外周壁の厚みが隔壁よりも小さい比較例2の中空型の柱状ハニカム構造体に比べて、アイソスタティック強度が大きかった。
【0087】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、外部からの衝撃、熱応力などに対する耐性に優れた熱交換部材、熱交換器及び浄化手段付き熱交換器を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 熱交換部材
2 第1底面
3 第2底面
4 セル
5 隔壁
5a 第1隔壁
5b 第2隔壁
6 内周壁
7 外周壁
8 中空型の柱状ハニカム構造体
9 被覆部材
10 中空領域
20 熱交換器
21 第2流体の入口
22 第2流体の出口
23 フレーム
24 第2流体の流路
25 貫通孔
26 開閉弁
26a 第1開閉弁
26b 第2開閉弁
27 内筒
28 遮断壁
29 乱流発生部
30 浄化手段
31 段差部
32 フロントカバー
33 バックカバー
34 遮蔽管
41 隔離壁
42 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18