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特許7166250クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体、ラテックス等の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体、ラテックス等の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/18 20060101AFI20221028BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20221028BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20221028BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20221028BHJP
   C08L 11/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
C08F236/18
C08F2/00 A
C08F2/38
C08J5/00 CEQ
C08L11/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019517734
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2018018431
(87)【国際公開番号】W WO2018207940
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2017095976
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018047092
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】西野 渉
(72)【発明者】
【氏名】大貫 俊
(72)【発明者】
【氏名】藤本 光佑
(72)【発明者】
【氏名】石垣 雄平
(72)【発明者】
【氏名】萩原 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】山岸 宇一郎
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02395649(US,A)
【文献】特表平09-505842(JP,A)
【文献】特開2001-011201(JP,A)
【文献】特開昭56-038336(JP,A)
【文献】特公昭47-022094(JP,B1)
【文献】特公昭45-029992(JP,B1)
【文献】特開昭53-023390(JP,A)
【文献】特開昭55-099907(JP,A)
【文献】特公昭46-016424(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
C08F 6/00-246/00
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体の製造方法であって、
重合反応開始後にクロロプレン単量体を連続添加又は10回以上間欠分添する工程を有し、
前記統計的共重合体のMnが8万~30万であり、
前記統計的共重合体のMw/Mnが1.5~5.0であ、統計的共重合体の製造方法。
【請求項2】
重合反応開始時の時刻をt(0)、nを1以上の整数として、時刻t(n-1)と時刻t(n)との間の時間dt(n)におけるクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の重合転換量の総量に基づいて、時刻t(n)と時刻t(n+1)との間の時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加量を決定し、未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比を一定に保つ工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記重合反応開始後に、
クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体とを含むラテックスの比重に基づいて前記クロロプレン単量体及び前記不飽和ニトリル単量体の重合率を算出する工程と、
前記重合率に基づいて未反応クロロプレン単量体量と未反応不飽和ニトリル単量体量を算出する工程と、
前記未反応不飽和ニトリル単量体量と重合開始時の単量体比率を掛け合わせて得られるクロロプレン単量体量と、前記未反応クロロプレン単量体量との差が、前記間欠分添において添加する予定のクロロプレン単量体の総量を分添回数で除した量である分添予定量に等しくなった時点で、前記分添予定量のクロロプレン単量体を前記ラテックスに分添する工程と、
を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
連鎖移動剤としてキサントゲン化合物を添加する、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
重合温度を5~20℃に保つ、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を含むラテックスの製造方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により前記統計的共重合体を得る、ラテックスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のラテックスの製造方法により得られたラテックスを用いる、レゾルシノール-ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)処理製品の製造方法。
【請求項8】
統計的共重合体を含むゴム組成物の製造方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により前記統計的共重合体を得る、ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
ゴム組成物を含む加硫成形体の製造方法であって、
請求項8に記載の製造方法により前記ゴム組成物を得る、加硫成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の加硫成形体の製造方法により得られた加硫成形体を用いる、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム又はスポンジ製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体の製造方法、統計的共重合体、ラテックス及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンと不飽和ニトリル化合物とを共重合させる方法は古くから知られており、例えば、紫外線照射による塊状重合が挙げられる(特許文献1参照)。この方法では、クロロプレンとアクリロニトリルの反応性の違いから、アクリロニトリルの共重合量を増加させることは困難である。これを克服するために、クロロプレンを分割添加し、単量体中のアクリロニトリル濃度を高く維持する方法が知られている(特許文献2参照)。また、耐油性向上のために不飽和ニトリルを配合したクロロプレン共重合体の製造方法も知られている(特許文献3参照)。これらの共重合体は、加硫成形して、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム及びスポンジ製品に好適に用いられている(特許文献4、5及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第2066331号明細書
【文献】米国特許第2395649号明細書
【文献】特開昭55-145715号公報
【文献】特開2012-82289号公報
【文献】WO2013/015043
【文献】日本特許第5918767号明細書
【文献】日本特許第5689275号明細書
【非特許文献】
【0004】
【文献】日本ゴム協会誌第63巻1号(1991)p33~45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3の方法によって得られるクロロプレン共重合体は、耐油性が不十分な場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、耐油性が良好な、さらに種々の力学物性が良好なクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、重合反応開始後にクロロプレン単量体を連続添加又は10回以上間欠分添する工程を有する、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体の製造方法を提供する。本製造方法により、重合中、重合液中の未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比を一定に保つことができる。
上記製造方法は、重合反応開始時の時刻をt(0)、nを1以上の整数として、時刻t(n-1)と時刻t(n)との間の時間dt(n)におけるクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の重合転換量の総量に基づいて、時刻t(n)と時刻t(n+1)との間の時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加量を決定し、重合液中の未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比を一定に保つ工程を含んでもよい。
ここで、重合中、重合液中の未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比を一定に保つということは、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の合計に対する不飽和ニトリル単量体の質量比が、目標値の好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内であるということである。例えば、重合中、重合液中の未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の合計に対する不飽和ニトリル単量体の質量比を0.50に保つ場合、好ましくは0.40~0.60の範囲、更に好ましくは0.45~0.55の範囲に保つことを意味する。
上記製造方法は、例えば、重合液中の未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の合計に対する不飽和ニトリル単量体の質量比を0.50に保つ場合、前記重合反応開始後に、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体とを含むラテックスの比重に基づいて前記クロロプレン単量体及び前記不飽和ニトリル単量体の重合率を算出する工程と、前記重合率に基づいて未反応クロロプレン単量体量と未反応不飽和ニトリル単量体量を算出する工程と、前記未反応クロロプレン単量体量と前記未反応不飽和ニトリル単量体量の差が、前記間欠分添において添加する予定のクロロプレン単量体の総量を分添回数で除した量である分添予定量に等しくなった時点で、前記分添予定量のクロロプレン単量体を前記ラテックスに分添する工程と、を含んでもよい。
上記製造方法は、連鎖移動剤としてキサントゲン化合物を添加してもよい。
上記製造方法では、重合温度を5~20℃に保つことができる。
【0008】
本発明は、重合反応開始後にクロロプレン単量体を連続添加又は10回以上間欠分添することにより製造された、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を提供する。
本発明は、重合反応開始時の時刻をt(0)、nを1以上の整数として、時刻t(n-1)と時刻t(n)との間の時間dt(n)におけるクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の重合転換量の総量に基づいて、時刻t(n)と時刻t(n+1)との間の時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加量を決定し、未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比を一定に保つことにより製造された、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を提供する。
本発明に係る統計的共重合体は、重合温度を5~20℃に保つ事により製造することができる。
上記統計的共重合体は、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム又はスポンジ製品に用いられてもよい。
【0009】
本発明では、統計的共重合体を用いて下記のサンプル作製条件(I)に準じて作製した加硫ゴムを評価した時、JIS K6258に準拠して測定したIRM903オイルに対する耐油性がΔW<15%であり、かつ、JIS K 6262に準拠して測定した0℃、72時間後の圧縮永久歪みが25%以下、好ましくは20%以下であり、かつ、JIS K 6260に準拠して測定した40℃の耐屈曲疲労性が、10万回以上である事を特徴とする、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を提供する。
(サンプル作製条件(I))
統計的共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン2質量部、酸化マグネシウム4質量部、カーボンブラック50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤5質量部、酸化亜鉛5質量部、エチレンチオウレア1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得る。得られたゴム組成物はJIS K 6250に基づき、電熱プレスを用いて、170℃、20分間、続けて加熱空気中で170℃、2時間熱処理を行うことにより加硫ゴムを作製する。
本発明に係る統計的共重合体は、前記のサンプル作製条件(I)に準じて作製した加硫ゴムを評価した時、JIS K6251に準拠して測定した機械的特性が、破断強度>20MPa、破断伸び>300%とすることができる。
本発明に係る統計的共重合体は、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム又はスポンジ製品に用いることができる。
【0010】
本発明は、上記統計的共重合体を含むラテックスを提供する。
上記ラテックスは、接着剤、浸漬製品、又はレゾルシノール-ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)処理製品に用いられてもよい。
本発明は、上記統計的共重合体を含むゴム組成物を提供する。
本発明は、上記ゴム組成物を含む加硫成形体を提供する。
上記加硫成形体は、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム又はスポンジ製品であってもよい。
【0011】
本発明では、不飽和ニトリル単量体単位が8~20質量%、より好ましくは8~17質量%であるクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位の統計的共重合体を含む加硫成形体であって、JIS K6258に準拠して測定したIRM903オイルに対する耐油性がΔW<+15%である加硫成形体を提供する。
本発明に係る加硫成形体は、JIS K 6262に準拠して測定した0℃、72時間後の圧縮永久歪みが25%以下であってもよい。
また、本発明に係る加硫成形体は、JIS K 6260に準拠して測定した40℃の耐屈曲疲労性が、10万回以上であってもよい。
本発明に係る加硫成形体は、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム又はスポンジ製品に用いることができる。
本発明に係る加硫成形体は、JIS K6251に準拠して測定した機械的特性が、破断強度>20MPa、破断伸び>300%とすることができる。
【0012】
本発明では、不飽和ニトリル単量体単位が8~12質量%であるクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位の統計的共重合体を含む加硫成形体であって、JIS K6258に準拠して測定したIRM903オイルに対する耐油性がΔW<+15%であり、かつJIS K 6262に準拠して測定した0℃、72時間後の圧縮永久ひずみが20%以下である事を特徴とする加硫成形体を提供する。
本発明に係る加硫成形体は、シール部品又はホース部品に用いることができる。
本発明に係る加硫成形体は、JIS K6251に準拠して測定した機械的特性が、破断強度>20MPa、破断伸び>300%とすることができる。
【0013】
本発明において「統計的共重合体」は、J.C.Randall「POLYMER SEQUENCE DETERMINATION,Carbon-13 NMR Method」Academic Press,New York,1977,71-78ページに記述されているように、ベルヌーイの統計モデルにより、又は一次又は二次のマルコフの統計モデルにより、単量体連鎖分布が記述できる共重合体であることを意味する。また本実施形態のクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体は、特に限定されるものではないが、2元系の単量体から構成される場合、下記Mayo-Lewis式(I)において、クロロプレン単量体をM1とした時の反応性比r1、r2について、r1は0.3~3000の範囲、r2は10-5~3.0の範囲をとることができる。さらに別な観点からは、本発明において「統計的共重合体」とは、複数種の単量体を用いラジカル重合により得られる共重合体である。本「統計的共重合体」は、実質的にランダムな共重合体を包含する概念である。
【0014】
【数1】
【発明の効果】
【0015】
本発明により、耐油性が良好な、さらに種々の力学物性が良好なクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
<1.統計的共重合体の製造方法>
本実施形態の製造方法は、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体とを重合する工程において、重合反応開始後にクロロプレン単量体を連続添加又は10回以上間欠分添する工程を含む。これにより、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体(以下、単に「統計的共重合体」ともいう。)が製造される。ここで、「重合反応開始後」とは重合開始剤の添加後を意味する。
【0018】
重合方法は、特に限定されないが、ラジカル重合が好ましい。ラジカル重合としては、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などが挙げられるが、これらの中でも乳化重合が好ましい。
【0019】
クロロプレン単量体は不飽和ニトリル単量体よりも反応速度が速い。このため、重合系内において、クロロプレン単量体の方が不飽和ニトリル単量体よりも早く消費される。クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比率に偏りが生じると、生成される統計的共重合体の耐油性が低下する場合がある。本実施形態の製造方法では、重合反応により減少した、主にクロロプレン単量体を連続添加又は10回以上の間欠分添によって添加することで、重合系内におけるクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の比を一定に保つことができる。これにより、従来よりも耐油性が向上した統計的共重合体が得られる。また、本実施形態の製造方法により製造される統計的共重合体は、後記実施例で示すように、機械的強度にも優れている。
【0020】
本実施形態の製造方法において、クロロプレン単量体は、重合系内における未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比が一定となるように、連続的に又は間欠的に添加されることが好ましい。重合系内における未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比(未反応のクロロプレン単量体/未反応の不飽和ニトリル単量体)は、統計的共重合体を含むゴムの特性を向上させる観点から、質量比で10/90~90/10が好ましい。
【0021】
本実施形態の製造方法では、重合反応開始前にクロロプレン単量体の一部を重合系内に添加し、重合反応開始後に残りのクロロプレン単量体を連続添加又は10回以上間欠分添してもよい。重合反応開始前におけるクロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体の合計と水との比((クロロプレン単量体+不飽和ニトリル単量体)/水)は、生産性向上の観点から、質量比で100/50~100/1000が好ましい。
【0022】
以下、クロロプレン単量体を連続添加又は10回以上間欠分添する方法の具体例を説明する。まず、クロロプレン単量体を連続添加する方法の一例を説明する。
【0023】
連続添加を行う場合、本実施形態の製造方法は、重合反応開始時の時刻をt(0)、nを1以上の整数として、時刻t(n-1)と時刻t(n)との間の時間dt(n)におけるクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の重合転換量の総量に基づいて、時刻t(n)と時刻t(n+1)との間の時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加量を決定し、未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比を一定に保つ工程を含むことが好ましい。
【0024】
上記製造方法において、未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比を一定に保つために、時刻t(n)と時刻t(n+1)との間の時間dt(n+1)に添加するクロロプレン単量体には、クロロプレン単量体に対し比較的少量の不飽和ニトリル単量体を含んでいてもよい。添加するクロロプレン単量体に対し比較的少量の不飽和ニトリル単量体を含む場合、その(不飽和ニトリル単量体/クロロプレン単量体)の質量比は、本製造条件にて重合される統計的共重合体中の(不飽和ニトリル単量体成分/クロロプレン単量体成分)の質量比を上限とする。例えば本製造条件下で重合される統計的共重合体中の(不飽和ニトリル単量体成分/クロロプレン単量体成分)の質量比が0.1であれば、添加される(不飽和ニトリル単量体/クロロプレン単量体)の質量比は0.1を上限とする。しかし残留単量体の回収等のコストを考慮すると経済的には、クロロプレン単量体のみを用いることが好ましい。
【0025】
時刻t(n)及び時間dt(n)は任意で設定すればよいが、dt(n)は、連続分添をスムーズに行うため、3000秒以下とすることが好ましい。
【0026】
時間dt(n)におけるクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の重合転換量の総量を算出する方法は、特に限定されない。例えば、時刻t(n-1)のクロロプレン単量体量及び不飽和ニトリル単量体量と、時刻t(n)のクロロプレン単量体量及び不飽和ニトリル単量体量と、時間dt(n)で添加したクロロプレン単量体量に基づいて、ガスクロマトグラフィーにより、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体の各々の重合転換量の総量を求めることができる。また、重合液の比重からも、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の比重を考慮することにより、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体の各々の重合転換量の総量を求めることができる。
【0027】
上記重合転換量の総量に基づいて、時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加量を決定する手順は、特に限定されない。例えば、時刻t(n)のクロロプレン単量体量と時間dt(n+1)で添加するクロロプレン単量体量との和と、時刻t(n)の不飽和ニトリル単量体量と、の比が、時刻t(0)のクロロプレン単量体量と不飽和ニトリル単量体量との比に一致するように計算すればよい。
【0028】
次に、クロロプレン単量体を連続添加する方法の別の一例を、不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル単量体を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0029】
本実施形態の製造方法は、重合反応開始時の時刻をt(0)、nを1以上の整数として、時刻t(n-1)と時刻t(n)との間の時間dt(n)における冷媒の熱量変化Q(n)に基づいて、時刻t(n)と時刻t(n+1)との間の時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加量を決定する。上記冷媒は、反応熱を除去する目的で反応容器を冷却するために用いられるものである。
【0030】
まず、時間dt(n)の間における、重合発熱量qCP+AN(n)[kcal]と分添するクロロプレン単量体の熱量変化Q分添CP(n)[kcal]との合算値として定義した総熱量Qp(n)は、冷媒の熱量変化Q(n)の積算値に比例し、下記の一般式(II)で表すことができる。なお、「CP」はクロロプレン、「AN」はアクリロニトリルを意味する。
Qp(n)=σ×Q(n) ・・・(II)
【0031】
ここで、σは重合処方や製造条件によって異なる値を取り、例えば、以下のような実験を行うことにより決定できる。
【0032】
(実験方法)
クロロプレン単量体を全て初期一括仕込みした重合で、任意の重合率における冷媒の熱量変化Q(n)の積分値∫Q(n)dtと、重合発熱量の積分値∫qcp(n)dtを少なくとも3点プロットし、最小二乗法による近似直線の傾きからσを求めることができる。
【0033】
16.0[kg]のクロロプレン単量体の重合を行った場合、重合率35%で冷媒の熱量変化Q(n)が1362[kcal]のとき総熱量は1024[kcal]、重合率50%で冷媒の熱量変化Q(n)が1922[kcal]のとき総熱量は1463[kcal]、重合率65%で冷媒の熱量変化Q(n)が2511[kcal]のとき総熱量は1902[kcal]であり、これらの近似直線の傾きより、σは1.32であった。
【0034】
時間dt(n)において分添したクロロプレン単量体の温度変化熱量Q分添cp(n)[kcal]は、クロロプレン単量体の比熱(γcp)0.385[kcal/(kg・K)]、分添したクロロプレン単量体の量W分添cp(n)[kg]、重合缶の内部温度の実測値Tin(n)[K]、及び分添したクロロプレン単量体の温度の実測値T分添cp(n)[K]を用いて、下記一般式(III)により求められる。
分添CP(n)=γcp・W分添cp(n)・(T分添cp(n)-Tin(n)) ・・・(III)
【0035】
時間dt(n)における重合発熱量q(CP+AN)(n)は、時間dt(n)の間に重合したクロロプレン単量体の量ΔCP(n)[kg]と、クロロプレン単量体の重合反応熱Γcpと、時間dt(n)の間に重合したアクリロニトリル単量体の量ΔAN(n)[kg]とアクリロニトリル単量体の重合反応熱ΓANより、下記一般式(IV)のように表される。
なお、ΓcpおよびΓANは、特に限定するものではないが、公知の資料中の値を使用しても良いし、実験で求めてもよい。ここでは、Γcpは183[kcal/kg](Acta Chem. Stand., 4, 126(1950))、ΓANは343[kcal/kg](J. Polym, Sci., 56, 313(1962))を引用して用いる。
(CP+AN)(n)=183・ΔCP(n)+343・ΔAN(n) ・・・(IV)
【0036】
重合開始時のクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体との比および、クロロプレン単量体を下記Mayo-Lewis式(前記一般式(I))において定義されたM1とした時の反応性比r1=14.75、r2=0.014から、時間dt(n)中に生成する統計的共重合体中のアクリロニトリル結合率α[wt%]が求められる。本実施形態の製造方法では、時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加量W分添CP(n)を制御することで、重合中におけるαを一定にすることを可能とした。
【0037】
時間dt(n)において添加するクロロプレン単量体の量W分添CP(n)、重合したクロロプレン単量体の量ΔCP(n)、アクリロニトリル単量体の量ΔAN(n)、時間dt(n+1)における重合系中のクロロプレン単量体の量RCP(n+1)、及びアクリロニトリル単量体の量RAN(n+1)の間には、下記一般式(V)、(VI)が成り立つ。
CP(n+1)=RCP(n)-ΔCP(n)+W分添CP(n) ・・・(V)
AN(n+1)=RAN(n)-ΔAN(n) ・・・(VI)
【0038】
ここで、RCP(0)/RAN(0)=RCP(1)/RAN(1)=・・・=RCP(n)/RAN(n)=RCP(n+1)/RAN(n+1)となる様に、下記一般式(VII)に基づいて、時間dt(n+1)中に添加するクロロプレン単量体の量W分添CP(n+1)を決定する。
CP(0)/RAN(0)={RCP(n)-ΔCP(n)+W分添CP(n+1)}/{RAN(n)-ΔAN(n)} ・・・(VII)
【0039】
つまり、下記一般式(VIII)が成り立つ。
分添CP(n+1)=RCP(0)/RAN(0)・(RAN(n)-ΔAN(n))-(RCP(n)-ΔCP(n)) ・・・(VIII)
【0040】
ここで、時間dt(n)中に重合したクロロプレン単量体の量ΔCP(n)とアクリロニトリル単量体の量ΔAN(n)は、実測可能である冷媒の熱量変化Q(n)と時間dt(n)において分添したクロロプレン単量体の温度変化熱量Q分添CP(n)を用いて、下記一般式(IX)及び(X)によりそれぞれ求めることができる。
ΔCP(n)=(100/α-1)・(σ・Q(n)-Q分添CP(n))/{343+183・(100/α-1)} ・・・(IX)
ΔAN(n)=(σ・Q(n)-Q分添CP(n))/{343+183・(100/α-1)} ・・・(X)
【0041】
上記一般式(IX)及び(X)で求めたΔAN(n)とΔCP(n)を代入して、W分添CP(n+1)を求め、連続添加時のクロロプレン単量体の流量がW分添CP(n+1)/dtとなるように電磁弁の開度を調節した。
【0042】
次に、クロロプレン単量体を10回以上間欠分添する方法の一例を説明する。
間欠分添を行う場合、上述した連続分添と同様の方法を用いることができる。具体的には、時間dt(n)を長く設定し、且つ、クロロプレン単量体の添加速度を速く設定して、時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加を時間dt(n+1)が経過する前に完了させることで、クロロプレン単量体を間欠的に添加できる。このクロロプレン単量体の添加を10回以上繰り返せばよい。
【0043】
時間dt(n)は、0.1~3000秒が好ましい。クロロプレン単量体の添加速度は、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体の合計100質量部に対して2質量部/分以下が好ましい。
【0044】
次に、間欠分添する方法の別の一例を説明する。
間欠分添を行う場合、例えば、重合液中の未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体の合計に対する不飽和ニトリル単量体の質量比を0.50に保つ場合、本実施形態の製造方法は、前記重合反応開始後に、(1)クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体とを含むラテックスの比重に基づいて前記クロロプレン単量体及び前記不飽和ニトリル単量体の重合率を算出する工程と、(2)前記重合率に基づいて未反応クロロプレン単量体量と未反応不飽和ニトリル単量体量を算出する工程と、(3)前記未反応クロロプレン単量体量と前記未反応不飽和ニトリル単量体量の差が、前記間欠分添において添加する予定のクロロプレン単量体の総量を分添回数で除した量である分添予定量に等しくなった時点で、前記分添予定量のクロロプレン単量体を前記ラテックスに分添する工程と、を含むことが好ましい。
【0045】
この方法では、上記工程(1)において重合率を算出するために、予備試験により、ラテックスの比重と、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体の重合率との相関関係を求める工程を含むことが好ましい。
【0046】
上記予備試験は、例えば、以下の手順により行うことができる。下記例では、不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル単量体を用いた場合を例に挙げて説明する。
仕込み単量体比をアクリロニトリル単量体/クロロプレン単量体=a/b、分添回数をn回、アクリロニトリル単量体とクロロプレン単量体の総量を100質量部とした時の1回あたりの分添クロロプレン単量体量をm質量部、比重rのときの残アクリロニトリル単量体量をCrAN質量部、残クロロプレン単量体量をCrCP質量部とする。初期仕込み単量体を重合し、rとCrAN、CrCPの関係性を確認し、下記一般式(XI)となる分添比重Rb1を決定した。続いて同様に、初期仕込み単量体を比重Rb1に達するまで重合した後、クロロプレン単量体をm質量部添加し、rとCrAN、CrCPの関係性を確認し、下記一般式(XI)となる分添比重Rb2を決定した。同様の操作をn回行い、重合終了までの分添比重を決定した。
【0047】
【数2】
【0048】
本実施形態の製造方法は、10回以上の間欠分添の場合、重合反応開始後に添加するクロロプレン単量体は、1回あたりの添加量をクロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体の合計100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましい。間欠分添の場合、添加速度を2質量部/分以下とすることが好ましい。このような範囲とすることで、耐油性及び機械的強度に優れた統計的共重合体が得られる。
【0049】
本実施形態の製造方法は、使用するクロロプレン単量体又は不飽和ニトリル単量体中に、他の単量体を1種又は2種以上、含有させることができる。本実施形態に用いることができる単量体としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、硫黄、メチルメタクリル酸及びその塩、エチルメタクリル酸及びその塩、プロピルメタクリル酸及びその塩(全異性体)、ブチルメタクリル酸及びその塩(全異性体)、2-エチルヘキシルメタクリル酸及びその塩、イソボルニルメタクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、ベンジルメタクリル酸及びその塩、フェニルメタクリル酸及びその塩、エチルアクリル酸及びその塩、プロピルアクリル酸及びその塩(全異性体)、ブチルアクリル酸及びその塩(全異性体)、2-エチルヘキシルアクリル酸及びその塩、イソボルニルアクリル酸及びその塩、アクリル酸及びその塩、ベンジルアクリル酸及びその塩、フェニルアクリル酸及びその塩、スチレン、およびグリシジルメタクリル酸及びその塩、2-ヒドロキシエチルメタクリル酸及びその塩、ヒドロキシプロピルメタクリル酸及びその塩(全異性体)、ヒドロキシブチルメタクリル酸及びその塩(全異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸及びその塩、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリル酸及びその塩、トリエチレングリコールメタクリル酸及びその塩、無水イタコン酸及びその塩、イタコン酸及びその塩、グリシジルアクリル酸及びその塩、2-ヒドロキシエチルアクリル酸及びその塩、ヒドロキシプロピルアクリル酸及びその塩(全異性体)、ヒドロキシブチルアクリル酸及びその塩(全異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリル酸及びその塩、N,N-ジエチルアミノエチルアクリル酸及びその塩、トリエチレングリコールアクリル酸及びその塩、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ブチルメタクリルアミド(全異性体)、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド(全異性体)、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールアクリルアミド、ビニル安息香酸及びその塩(全異性体)、ジエチルアミノスチレン(全異性体)、アルファ-エチルビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノアルファ-メチルスチレン(全異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸及びその塩、p-ビニルベンゼンスルホンナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、トリエトキシシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、トリブトキシシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、ジメトキシエチルシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、ジエトキエチルシシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、ジブトキシエチルシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、ジイソプロポキシエチルシリルプロピルメタクリル酸及びその塩、トリメトキシシリルプロピルアクリル酸及びその塩、トリエトキシシリルプロピルアクリル酸及びその塩、トリブトキシシリルプロピルアクリル酸及びその塩、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリル酸及びその塩、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリル酸及びその塩、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリル酸及びその塩、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリル酸及びその塩、ジメトキシシリルプロピルアクリル酸及びその塩、ジエトキシシリルプロピルアクリル酸及びその塩、ジブトキシシリルプロピルアクリル酸及びその塩、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリル酸及びその塩、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン等を挙げることができる。この場合、クロロプレン単量体又は不飽和ニトリル単量体中の前記単量体の含有量も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、合計で20質量部以下含まれていても良い。
【0050】
本実施形態の製造方法において使用される不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルなどが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、製造容易性や耐油性の観点からアクリロニトリルが好ましい。
【0051】
乳化重合で使用される乳化/分散剤は、特に限定されず、通常のクロロプレンの乳化重合に使用されているアニオン型、ノニオン型、カチオン型など各種のものを使用できる。得られるラテックスの安定性から、アニオン型の乳化剤が好ましく、例えば、ロジン酸塩、炭素数が8~20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。アニオン型の乳化剤の中でも重合終了後の凍結凝固乾燥によって得られるフィルム状の統計的共重合体に、適当な強度を持たせて過度の収縮および破損を防ぐことができるという理由から、ロジン酸アルカリ金属塩を使用することが特に好ましい。ロジン酸は、樹脂酸、脂肪酸などの混合物である。樹脂酸としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロイソピマル酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などが含まれ、脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸などが含まれている。これらの成分組成は、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンに分類されるロジン採取方法の違い、松の産地及び樹種、蒸留精製、不均化(不均斉化)反応によって変化するものであり、本発明では限定されない。乳化安定性や取り扱いやすさを考慮するとナトリウム塩またはカリウム塩の使用が好ましい。乳化/分散剤の濃度については、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは1~5質量%である。0.1質量%以上とすることで、単量体を十分に乳化することができ、10質量%以下とすることで、上記統計的共重合体を固形にする際に、より析出しやすくなる。
【0052】
乳化重合で使用される重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシオクトエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-アミルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-イソプロピルペルオキシジカルボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボネート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、次亜硝酸ジ-t-ブチル、次亜硝酸ジクミルなどの有機過酸化物、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シアノ-2-ブタン)、2,2’-アゾビスジメチルイソブチレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(1,1)-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-ヒドロキシエチル)]-プロピオンアミド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミン)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドラート)、2,2’-アゾビス(2,2,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)などのアゾ系開始剤などが挙げられる。
【0053】
乳化重合の際には、重合助触媒を用いることも可能である。本実施形態で用いることができる重合助触媒は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知の重合助触媒を1種又は2種以上、自由に用いることができる。例えば、L-アスコルビン酸、酒石酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜鉛-またはナトリウム-ホルムアルデヒド-スルホキシレートロンガリット、ホルムジアミンスルフィン酸、グルコース、ホルマリン、アントラキノンβ-スルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸銅、重亜硫酸ナトリウム、チオ尿素等が挙げられる。
【0054】
本実施形態の製造方法は、分子量を制御するために連鎖移動剤を用いることができる。特に限定するものではないが、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲン化合物、ヨードホルム、ベンジル1-ピロールジチオカルバメート(別名ベンジル1-ピロールカルボジチオエート)、ベンジルフェニルカルボジチオエート、1-ベンジル-N,Nジメチル-4-アミノジチオベンゾエート、1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエート、1-フェニルエチルイミダゾールジチオカルバメート(別名1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート)、ベンジル-1-(2-ピロリジノン)ジチオカルバメート(別名ベンジル-1-(2-ピロリジノン)カルボジチオエート)、ベンジルフタルイミジルジチオカルバメート(別名ベンジルフタルイミジルカルボジチオエート)、2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート(別名2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート)、2-シアノブト-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート(別名2-シアノブト-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート)、ベンジル-1-イミダゾールジチオカルバメート(別名ベンジル-1-イミダゾールカルボジチオエート)、2-シアノプロプ-2-イル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、シアノメチル-1-(2-ピロリドン)ジチオカルバメート、2-(エトキシカルボニルベンジル)プロプ-2-イル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イルジチオベンゾエート、1-酢酸-1-イル-エチルジチオベンゾエート、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、t-ブチルジチオベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンタ-2-イルジチオベンゾエート、2-(4-クロロフェニル)-プロプ-2-イルジチオベンゾエート、3-ビニルベンジルジチオベンゾエート、4-ビニルベンジルジチオベンゾエート、ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、t-ブチルトリチオペルベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、ナフタレン-1-カルボン酸-1-メチル-1-フェニル-エチルエステル、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸、ジベンジルテトラチオテレフタラート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート末端基を持つポリ(酸化エチレン)、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸末端基を持つポリ(酸化エチレン)、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]プロパン酸、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]コハク酸、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエートカリウム、シアノメチル-3,5-ジメチル-1Hピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル-(フェニル)ジチオカルバメート、ベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルメチル-4-クロロジチオベンゾエート、4-ニトロベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、1-シアノ-1-メチルエチル-4-クロロジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-4-クロロジチオベンゾエート、2-クロロ-2-ブテニルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、3-クロロ-2-ブテニル-1Hピロール-1-ジチオカルボン酸、2-シアノブタン-2-イル-4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2′-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル-2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(t-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナートなどのチオカルボニル化合物、などの公知の連鎖移動剤を使用することができる。中でも特に、キサントゲン化合物を添加することが好ましい。上記特許文献2に記載されているクロロプレン-アクリロニトリル共重合体の製造方法では、連鎖移動剤としてメルカプタン化合物が使用されており、チオールエン反応により粘稠な副生成物が生じるため、この副生成物を除去する作業が必要であった。しかしながら、連鎖移動剤としてキサントゲン化合物を添加することにより、副生成物の発生が抑制されるため、副生成物の除去作業が不要となり、統計的共重合体の製造効率を向上させることが可能である。
【0055】
また、キサントゲン化合物は、他の連鎖移動剤と比較して反応性が高いため、加硫した際の架橋密度が高い統計的共重合体が得られる。この架橋密度の高さが、統計的共重合体の耐油性の向上に寄与していると考えられる。
【0056】
キサントゲン化合物としては、例えば、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジブチルキサントゲントリスルフィド、などのジアルキルキサントゲンジスルフィド類が挙げられる。また、ジエチルキサントゲントリスルフィド、ジイソプロピルキサントゲントリスルフィド、ジブチルキサントゲントリスルフィド、などのジアルキルキサントゲントリスルフィド類が挙げられる。さらには、ジエチルキサントゲンポリスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド、ジブチルキサントゲンポリスルフィド、などのジアルキルキサントゲンポリスルフィド類のように、キサントゲンを連結する硫黄原子が4原子以上あるジアルキルキサントゲン類も用いる事が出来る。これらジアルキルキサントゲンスルフィド化合物のアルキル基の炭素数は、クロロプレン単量体への溶解性より1~10である事が望ましく、1~6である事がより望ましい。
【0057】
連鎖移動剤の添加量は、特に限定されないが、クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体の合計100質量部に対して0.002~20質量部が好ましい。このような範囲とすることで、重合反応の制御を容易に行うことができる。
【0058】
乳化重合における重合温度は、特に限定されないが、0~59℃が好ましく、5~55℃である事が特に好ましい。重合温度を5℃以上とすることで、乳化液の増粘を防ぐことができ、開始剤の効率をより向上させることができる。また、常圧でクロロプレンの沸点は約59℃であることから、重合温度を55℃以下とすることで、異常重合などにより発熱した場合であっても除熱が追いつかずに反応液が突沸する事態を回避することができる。更に好ましくは、重合温度を5~20℃に保つ事で、機械特性に優れたクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を得る事が出来る。
【0059】
乳化重合における最終的な重合率は、特に限定されないが、ゲル化することを防止するためには、80%以下が好ましい。なお、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体の改質を目的として意図的に一定量のゲルを製造する事もあり、この場合の重合率は、特に限定するものではないが、経済性の観点から70%以上、好ましくは80%以上である事が好ましい。例えばゲル分の高い、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体のラテックスは、機械強度、耐熱性、耐薬品に優れる。またゲル分を含んだクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を含む組成物は、シーティング加工時の寸法安定性や押出加工時の吐出性に優れる。重合率の調整は、重合禁止剤を添加して重合反応を停止させることで行いうる。重合禁止剤としては、特に限定されないが、例えば、油溶性の重合禁止剤であるチオジフェニルアミン、4-ターシャリーブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノールや、水溶性の重合禁止剤であるジエチルヒドロキシルアミンなどがある。
【0060】
未反応単量体の除去は、減圧加熱などの公知の方法により行えばよい。その後、pHを調製し、凍結凝固、水洗、熱風乾燥などの工程を経て、固形状の統計的共重合体を回収すればよい。
【0061】
ところで、上記特許文献3の実施例には、クロロプレン単量体やアクリロニトリル単量体などの単量体を一括添加して製造したクロロプレン共重合体が記載されている。当該実施例では、クロロプレン共重合体の加硫物を100℃のオイル中に72時間浸漬した後の体積増加率(%)を測定することにより、加硫物の耐油性を評価している。特許文献3の表3には、加硫物の耐油性が45.0%以上であることが示されている。
【0062】
一方、後記実施例で示すように、統計的共重合体を含む加硫物は、耐油試験の結果が19%及び5%であった。本実施例の耐油試験では、加硫物を135℃のオイル中に72時間浸漬した後の体積増加率(%)を測定している。本実施例の耐油試験は特許文献3よりもオイルの温度が高く過酷な条件であるにもかかわらず、体積増加率は本実施例の方が大幅に小さかった。
【0063】
<2.統計的共重合体>
第二実施形態は、特定の組成を有するクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体である。本実施形態のクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体は、上記製造方法により得ることができるが、本製造方法には限定されない。
【0064】
統計的共重合体の不飽和ニトリル結合量は、5~40質量%が好ましい。このような範囲とすることで、実用上有用な耐油性と機械的強度を有する加硫ゴムを得るために好適な統計的共重合体が得られる。統計的共重合体の不飽和ニトリル結合量は、さらに好ましくは8~20質量%、低温特性を加味すると、より好ましくは8~17質量%である。不飽和ニトリル結合量が20質量%、あるいは17質量%より多いと、統計的共重合体の低温特性(低温圧縮永久ひずみ)が低下してしまう場合がある。
特に加硫ゴムの特に優れた耐油性、力学物性という観点からは12~20質量%が好ましく、低温特性を加味すると、より好ましくは12~17質量%である。一方、優れた耐油性と特に優れた低温特性(低温圧縮永久ひずみ)の両立という観点からは8~12質量%が好ましい。
【0065】
統計的共重合体の数平均分子量(Mn)には特に制限はないが、好ましくは8万~30万の範囲である。8万未満では、加硫成形体の力学物性が低下する場合があり、30万より高いと、得られるゴム組成物の成形加工性が低下する場合がある。同様に分子量分布、すなわち質量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)にも特に制限はないが、一般的には1.5~5.0の範囲である。
【0066】
本実施形態の統計的共重合体としては、例えば、クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体、クロロプレン-メタクリロニトリル統計的共重合体、クロロプレン-エタクリロニトリル統計的共重合体、クロロプレン-フェニルアクリロニトリル統計的共重合体などが挙げられる。これらの中でも、製造容易性や耐油性、機械的強度の観点からクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体が好ましい。
【0067】
本実施形態の統計的共重合体は、サンプル作製条件(I)に準じて作製した加硫ゴムを評価した時、JIS K6258に準拠して測定したIRM903オイルに対する耐油性が、好ましくはΔW<+15%であり、さらに好ましくはΔV<+20%以下の条件を満たし、かつ、JIS K 6262に準拠して測定した0℃、72時間後の圧縮永久歪みが25%以下であり、更に好ましくは20%以下であり、かつ、JIS K 6260に準拠して測定した40℃の耐屈曲疲労性が、10万回以上である事を特徴とする、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体である。さらに、本実施形態の統計的共重合体は、サンプル作製条件(I)に準じて作製した加硫ゴムを評価した時、JIS K6251に準拠して測定した機械的特性が、破断強度>20MPa、破断伸び>300%とすることもできる。
(サンプル作製条件(I))
統計的共重合体100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(例えば、大内新興化学工業社製「ノクラックCD」)2質量部、酸化マグネシウム(例えば、協和化学工業社製「キョーワマグ#150」)4質量部、カーボンブラック(例えば、SRF;旭カーボーン社製「旭#50」)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤(例えば、ADEKA社製「アデカサイザーRS-735」)5質量部、酸化亜鉛(例えば、堺化学社製)5質量部、エチレンチオウレア(例えば、川口化学社製「アクセル22S」)1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(例えば、大内新興化学工業社製「ノクラック6C」)1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得る。得られたゴム組成物はJIS K 6250に基づき、電熱プレスを用いて、170℃、20分間、続けて加熱空気中で170℃、2時間熱処理を行うことにより加硫ゴムを作製する。
【0068】
<3.ラテックス>
第三実施形態に係るラテックスは、特定の組成を有するクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を含むラテックスである。また、本ラテックスは、上記統計的共重合体の製造方法で述べた乳化重合により製造される、上記統計的共重合体を含むラテックスを包含する。重合反応後のラテックスに含まれる未反応単量体は、減圧加熱などの公知の方法により除去することが好ましい。
【0069】
本実施形態のラテックスは、ラテックス全量中の固形分濃度が30~70質量%であることが好ましい。このような範囲とすることで、生産に適し、かつ貯蔵安定性に優れたラテックスを得ることができる。固形分濃度の測定方法は、特に限定されないが、統計的共重合体を含むラテックスを熱風乾燥機で3時間乾燥させた際の乾燥前後の質量変化から算出することができる。
【0070】
本実施形態のラテックスは、接着剤及び浸漬製品に好適に用いられる(特許文献6、7、非特許文献1参照)。天然ゴムや、CR、IR(イソプレンゴム)、NBRなどの合成ゴムを含むゴムラテックスは、医療用手術手袋、検査手袋、工業用手袋、風船、カテーテル、ゴム長靴、補強用繊維などの浸漬成形製品の原料として用いられる。特に医療用手術手袋や検査用手袋、工業用手袋、家庭用手袋用のゴムラテックスは、天然ゴムのアレルギーによるショック症状(アナフィラキシー)の問題を避けるために、CR、IR、NBRなどの合成ゴムが好まれる。中でも、CR手袋は柔軟性や機械的強度のバランスに優れると共に、高い耐油性を示すことから、食品工場や機械工場などで採用されている。また近年では、作業性の観点から薄肉手袋の需要が旺盛であるが、これにともない強度や耐油性が低下するという問題がある。また、加硫促進剤由来のアレルギーを低減するため加硫促進剤フリーの手袋の開発が進められているが、ここでも強度や耐油性の低下が技術的な課題になっている。また、ゴムとの接着性を高めるために、補強用繊維を浸漬させて表面処理するRFLにもCRが用いられる。補強用繊維の用途先であるベルト用途においては、先述したように機械的強度と耐油性に対する需要が高い。したがって、更に優れた機械的強度や耐油性を示すポリクロロプレンラテックスの開発が切望されている。当該ラテックスは、上記統計的共重合体を含むため、接着剤及び浸漬製品の機械的強度と耐油性を高めることが可能である。これにより、従来のCRよりも優れた接着剤及び浸漬製品を製造することが可能である。
<4.ゴム組成物>
【0071】
第四実施形態に係るゴム組成物は特定の組成を有するクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位とを含む統計的共重合体を含む。ゴム組成物に含まれる統計的共重合体は、上記ラテックスを脱水し、乾燥して得られたものであってもよい。本実施形態のゴム組成物において、統計的共重合体以外の原料は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜選択することができる。ゴム組成物に含有されうる原料としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、充填剤又は補強剤、可塑剤、加工助剤や滑剤、老化防止剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0072】
添加可能な加硫剤としては、クロロプレンゴムの加硫に一般に用いられる硫黄、チオウレア系、グアニジン系、チウラム系、チアゾール系の有機加硫剤が使用できるが、チオウレア系のものが好ましい。チオウレア系の加硫剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、トリエチルチオウレア、N,N’-ジフェニルチオウレア等が挙げられ、特にトリメチルチオウレア、エチレンチオウレアが好ましい。また、3-メチルチアゾリジンチオン、ジメチルアンモニウムハイドロジエンイソフタレートあるいは1,2-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体、N-シクロヘキシルチオフタルイミド等の加硫剤も使用することができる。これらの加硫剤は、上記に挙げたものを2種以上併用してもよい。また、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、ゲルマニウム、チタニウム、錫、ジルコニウム、アンチモン、バナジウム、ビスマス、モリブデン、タングステン、テルル、セレン、鉄、ニッケル、コバルト、オスミウムなどの金属単体、及びこれら金属の酸化物や水酸化物を加硫剤として使用することができる。これら添加可能な加硫剤のなかでも、特に、酸化カルシウムや酸化亜鉛、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化マグネシウムは、加硫効果が高いため好ましい。また、これらの加硫剤は2種以上を併用してもよい。なお、加硫剤は、ゴム成分100質量部に対して合計で0.1質量部以上10質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0073】
充填剤又は補強剤は、ゴムの硬さを調整したり機械強度を向上させるために添加するものであり特に限定はないが、例えば、SAF、ISAF、HAF、EPC、XCF、FEF、GPF、HMF、SRFなどのファーネスカーボンブラック、親水性カーボンブラックなどの改質カーボンブラック、チャンネルブラック、油煙ブラック、FT、MTなどのサーマルカーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムが挙げられる。その他の無機充填剤として特に限定するものではないがγ-アルミナ及びα-アルミナなどのアルミナ(Al)、ベーマイト及びダイアスポアなどのアルミナ一水和物(Al・HO)、ギブサイト及びバイヤライトなどの水酸化アルミニウム[Al(OH)]、炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HOなど)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiOなど)、ケイ酸カルシウム(CaSiOなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiOなど)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)]、ハイドロタルサイト、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、並びにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などを使用してもよい。充填剤及び補強剤は1種類のみを用いても2種以上を併用してもよい。これら充填剤及び補強剤の配合量は、要求されるゴム組成物やその加硫成形体の物性に応じて調整すればよく、特に限定するものではないが、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して通常は合計で15質量部以上200質量部以下の範囲で添加することができる。
【0074】
可塑剤は、ゴムと相溶性のある可塑剤であれば特に制限はないが、例えば菜種油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油などの植物油、フタレート系可塑剤、DUP(フタル酸ジウンデシル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、DINP(フタル酸ジイソノニル)、DOTP(テレフタル酸ジオクチル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、DBS(セバシン酸ジブチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)、DINCH(1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル)、TOP(トリオクチルフォスフェート)、TBP(トリブチルフォスフェート)、エステル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、潤滑油、プロセスオイル、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、石油アスファルトなどの石油系可塑剤などがあり、本実施形態のゴム組成物や該組成物の加硫成形体に要求される特性に合わせて1種又は複数を使用することができる。可塑剤の配合量には特に限定はないが、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して通常は合計で5質量部以上50質量部以下の範囲で添加することができる。
【0075】
ゴム組成物を混練したり加硫成形したりする際に、ロールや成形金型、押出機のスクリューなどから剥離しやすくするなど、加工特性や表面滑性を向上させるために添加する加工助剤や滑剤としては、ステアリン酸などの脂肪酸あるいはポリエチレンなどのパラフィン系加工助剤、脂肪酸アミドなどを挙げることができる。加工助剤及び滑剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量には特に限定はないが、通常は本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して合計で0.5質量部以上5質量部以下である。
【0076】
耐熱性を向上させる老化防止剤として、通常のゴム用途に使用されている、ラジカルを捕捉して自動酸化を防止する一次老化防止剤と、ハイドロパーオキサイドを無害化する二次老化防止剤を添加することができる。それらの老化防止剤はゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、それぞれ0.1質量部以上10質量部以下の割合で添加することができ、好ましくは2質量部以上5質量部以下の範囲である。これらの老化防止剤は単独使用のみならず2種以上を併用することも可能である。なお、一次老化防止剤の例としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、ワックスを挙げることができる。また、二次老化防止剤として、リン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などを挙げることができる。老化防止剤の例として特に限定するものではないが、N-フェニル-1-ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、7-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナアミド、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-ホスホネート-ジエチルエステル、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメイト)]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル及び3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ノニル・フェニル)フォスファイト、トリス(混合モノ-及びジ-ノニルフェニル)フォスファイト、ジフェニル・モノ(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニル・モノトリデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソオクチル・フォスファイト、ジフェニル・ノニルフェニル・フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)フォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルフォスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチル-ジ-トリデシルフォスファイト)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)フルオロフォスファイト、4,4’-イソプロピリデン-ジフェノールアルキル(C12~C15)フォスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-フェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルフォスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジブチルハイドロゲンフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトール・ジフォスファイト及び水添ビスフェノールAペンタエリスリトールフォスファイトポリマー、2-メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0077】
上記統計的共重合体や天然ゴムなどのゴム成分と充填剤や補強剤との接着性を高め、機械的強度を向上させるために、さらにシランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤はゴム組成物を混練する際に加えても、充填剤又は補強剤を予め表面処理する形で加えてもどちらでも構わない。シランカップリング剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。特に限定するものではないが、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス-(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、トリエチルクロロシランなどが例として挙げられる。
【0078】
上記ゴム組成物は、公知の機械や装置を用いて常法に従って製造することができる。
【0079】
本実施形態のゴム組成物は、上記統計的共重合体を含むため、耐油性、低温圧縮永久ひずみ、及び耐屈曲疲労性に優れる。また、優れた機械的強度を有することができる。
【0080】
<5.加硫成形体>
第五実施形態に係る加硫成形体は、上記ゴム組成物を含む組成物を加硫することにより製造される。本実施形態の加硫成形体は、上記統計的共重合体を用いるため、耐油性に優れる。また、優れた機械的強度を有することも可能である。
【0081】
加硫温度は、組成に合わせて適宜設定すればよく、例えば130~230℃とすればよい。加硫時間も組成や形状によって適宜設定すればよく、例えば10~90分とすればよい。成形方法も特に限定されず、プレス成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形などの公知の方法を用いればよい。また、必要に応じて150~200℃で二次加硫を行う事により、圧縮永久歪を改良する事ができる。
【0082】
本実施形態に係る加硫成形体は、不飽和ニトリル単量体単位の含量(本明細書中では結合量と記載する場合がある)が8~20質量%であるクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位の統計的共重合体を用いた加硫成形体である。
【0083】
また、本実施形態に係る加硫成形体は、JIS K6258に準拠して測定したIRM903オイルに対する耐油性がΔW<15%である。
【0084】
また、本実施形態に係る加硫成形体は、JIS K 6262に準拠して測定した0℃、72時間後の圧縮永久歪みが25%以下である。
【0085】
また、本実施形態に係る加硫成形体は、JIS K 6260に準拠して測定した40℃の耐屈曲疲労性が、10万回以上である。
【0086】
さらには、本実施形態に関わる加硫成形体は、JIS K6251に準拠して測定した機械的特性が、破断強度>20MPa、破断伸び>300%にすることが可能である。
【0087】
本実施形態に係る最も好ましい加硫成形体は、不飽和ニトリル単量体単位の含量(本明細書中では結合量と記載する場合がある)が8~12質量%であるクロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位の統計的共重合体を含む加硫成形体である。本加硫成形体は、JIS K6258に準拠して測定したIRM903オイルに対する耐油性がΔW<+15%であり、かつ、JIS K 6262に準拠して測定した0℃、72時間後の圧縮永久歪みが20%以下であるという特に優れた低温特性を有することができる。そのため、以下の用途に特に好適に用いることができるが、とりわけ、シール部品またはホースとして好適に用いることができる。
【0088】
本実施形態の統計的共重合体、該統計的共重合体を含むラテックス及びゴム組成物、並びに該ゴム組成物を含む組成物を加硫した加硫成形体は、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴム及びスポンジ製品に好適に用いられる。
【0089】
(コンベアベルト及び伝動ベルト)
コンベアベルトは、ベルトコンベヤ等に使用される幅広のベルトで、物品の搬送等に用いられる。伝動ベルトは、巻掛け伝動装置に使われる機械要素で、原動車から従動車に動力を伝達する部品である。伝動ベルトは軸にセットされたプーリーにかけて用いられることが多い。伝動ベルトは軽量性、静音性、軸角度の自由度などに優れるため、自動車、一般産業用など、機械全般に幅広く使用されている。伝動ベルトの種類も多様化しており、平ベルト、タイミングベルト、Vベルト、リブベルト、丸ベルトなどが機械用途に応じて使い分けられている。コンベアベルト及び伝動ベルトは、効率的に動力を伝達するため、高い張力でかけられたベルトが回転変形を繰り返すことから、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、HNBR(水素化ニトリルゴム)などのエラストマー材料が使用されている。優れたゴム物性と耐油性を有するため、CRは各種コンベアベルト、自動車、一般産業用伝動ベルト、などに採用されているが、高い張力に耐えるため機械物性を向上させる事は不断の技術課題である。また、建設現場で使用される工作機器の伝動ベルトなどは、飛散した油にさらされる環境で使用される事例もあり、さらなる耐油性の改良が求められている。また、ベルトは持続的に動的環境で使用されるから、製品の信頼性向上のため、耐屈曲疲労性に優れた材料が求められている。
【0090】
本実施形態の統計的共重合体は、コンベアベルト及び伝動ベルトの機械的強度と耐油性と耐屈曲疲労性を高めることが可能である。これにより、従来のCRでは困難であった飛散した油にさらされる環境でも使用できるベルトを製造することが可能である。
【0091】
(ホース)
ホースは、屈曲可能な管であり、水まきなど、自由に屈曲し、可搬性、移動性を必要とする作業に用いられる。また、金属パイプなど硬質な管と比較して、変形による疲労破壊を起こしにくいことから、自動車の配管など、振動をともなう部位の配管に使用される。中でも、最も一般的であるのがゴムホースである。ゴムホースは、NR、CR、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、SBR、NBR、ACM(アクリルゴム)、AEM(エチレン・アクリルゴム)、HNBR、ECO(エピクロルヒドリンゴム)、FKM(フッ素ゴム)などで作られ、送水用、送油用、送気用、蒸気用、油圧用高・低圧ホースなどがある。CRは高圧の流体の圧力に耐えうる良好な機械物性を理由として、主として油圧用高圧ホースに使用されているが、耐油性の不足を理由として、内層はNBRとするのが一般的である。しかしながら、化学構造の大きく異なるCRとNBRを接着させるのは困難であり、接着が不十分であると界面で剥離するという課題があった。このため、良好な機械強度、耐油性、接着性を有する材料が切望されている。また、ホースの継ぎ目部分は、流体の漏れを防ぐためホースバンドでかしめるが、長期の装着によりホースがへたり、流体が漏れるという問題がある。
【0092】
本実施形態の統計的共重合体は、ホースの機械的強度と耐油性と耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)を高めることが可能である。これにより、従来のCRでは困難であった直接非極性流体と接するホースを製造することが可能である。
【0093】
(ワイパー)
自動車、電車、航空機、船舶、建設機械などのフロントガラス、リアガラスなどには、表面に付着した雨水、泥水、油汚れ、海水、氷、雪、埃などを払拭、除去して視界を良くし、運転の安全を確保するために、通常、ワイパーが設けられている。このワイパーのガラス面と接触する部分にはワイパーブレードが取り付けられており、ワイパーブレードの材料としては、一般的には、NR、CRなどが用いられている。CRは繰り返し変形に耐える機械強度や耐久疲労性を有し、払拭性などに優れるため自動車用ワイパーに使用されている。しかしながら耐油性が不十分であるため、油汚れによりゴム材料が膨潤すると、払拭性が低下してしまう問題があった。このため、油汚れが多い環境下においては、耐油性に優れたワイパーブレードが要求されている。ワイパーは、窓に押し付けて装着されているため、長時間作動させないとへたり、ふき取り性能が低下する問題がある。
【0094】
本実施形態の統計的共重合体は、ワイパーの機械的強度と耐油性と耐久疲労性と耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)を高めることが可能である。これにより、従来のCRでは困難であった油汚れが多い環境下でも使用できるワイパーを製造することが可能である。
【0095】
(浸漬製品)
天然ゴムや、CR、IR(イソプレンゴム)、NBRなどの合成ゴムを含むゴムラテックスは、医療用手術手袋、検査手袋、工業用手袋、風船、カテーテル、ゴム長靴、補強用繊維などの浸漬成形製品の原料として用いられる。特に医療用手術手袋や検査用手袋、工業用手袋、家庭用手袋用のゴムラテックスは、天然ゴムのアレルギーによるショック症状(アナフィラキシー)の問題を避けるために、CR、IR、NBR、などの合成ゴムが好まれる。中でも、CR手袋は柔軟性や機械的強度のバランスに優れると共に、高い耐油性を示すことから、食品工場や機械工場などで採用されている。また近年では、作業性の観点から薄肉手袋の需要が旺盛であるが、これにともない強度や耐油性が低下するという問題がある。また、加硫促進剤由来のアレルギーを低減するため加硫促進剤フリーの手袋の開発が進められているが、ここでも強度や耐油性の低下が技術的な課題になっている。また、ゴムとの接着性を高めるために、補強用繊維を浸漬させて表面処理するRFLにもCRが用いられる。補強用繊維の用途先であるベルト用途においては、先述したように機械的強度と耐油性に対する需要が高い。したがって、更に優れた機械的強度や耐油性を示すポリクロロプレンラテックスの開発が切望されている。
【0096】
本実施形態の統計的共重合体は、浸漬製品の機械的強度と耐油性を高めることが可能である。これにより従来のCRでは困難であった薄肉手袋や加硫促進剤フリー浸漬製品を製造することが可能である。
【0097】
(シール部品)
シール部品は、機械や装置において、液体や気体の漏れや雨水や埃などのごみや異物が内部に侵入するのを防ぐ部品であり、機械の性能維持に重要な役割を果たしている。シール部品には固定用途に使われるガスケットと、運動部分・可動部分に使用されるパッキンがある。シール部分がボルトなどで固定されているガスケットでは、Oリングやゴムシートなどのソフトガスケットに対して、目的に応じた各種エラストマーが使用されている。また、パッキンは、ポンプやモーターの軸、バルブの可動部のような回転部分、ピストンのような往復運動部分、カプラーの接続部、水道蛇口の止水部などに使われる。比較的低い圧力の油圧機器や潤滑油の密閉に使われるオイルシールは、エラストマーの弾性で密閉性を確保している。これらエラストマーのシール部品において、CRは良好な機械強度を有するため、極性の気体や液体のシール部品に使用されている。一方、エンジンオイルやギアーオイルのような非極性の流体のシール部品に使用するためには、CRの耐油性は不十分であり、改良が不可欠であった。
【0098】
本実施形態の統計的共重合体は、シール部品の機械的強度と耐油性を高めることが可能である。これにより、従来のCRでは困難であったエンジンオイルやギアーオイルのような非極性の流体のシール部品を製造することが可能である。本実施形態の統計的共重合体は上記に加えて、良好な耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)も得られるため、長期にわたる使用でもシール部品の形状が変わりにくく良好なシール性能が得られる。特に低温における耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)は本用途にとって重要である。
【0099】
本実施形態が適用可能なシール部品の具体例としては、例えば、エンジンヘッドカバーガスケット、オイルパンガスケット、オイルシール、リップシールパッキン、O-リング、トランスミッションシールガスケット、クランクシャフト、カムシャフトシールガスケット、バルブステム、パワーステアリングシールベルトカバーシールなどが挙げられる。
【0100】
(接着剤)
CRは、コンタクト性を有し初期接着強度に優れるという特徴から、土木建築、合板、家具、靴、ウェットスーツ、自動車内装材など幅広い材料の接着剤として利用されている。これらの中でも、CRが初期接着強度と耐熱接着強度に優れる点から、家具や自動車内装材の素材として汎用されるポリウレタンフォーム用の一液型接着剤としての需要が大幅に拡大している。自動車の内装には、高い審美性が求められているが、CRの耐油性が不十分なため、自動車に用いる各種オイル類、燃料類の飛沫が被着体に付着すると、界面で剥離したり、被着体の表面が湾曲したりすることがあった。このため、高い耐油性を有する接着剤材料が切望されている。
【0101】
本実施形態の統計的共重合体は、接着剤の機械的強度と耐油性を高めることが可能である。これにより、従来のCRよりも優れた接着剤を製造することが可能である。
【0102】
(ブーツ)
ブーツとは、一端から他端に向けて外径が次第に大きくなる蛇腹状をなす部材であり、自動車駆動系などの駆動部を保護するための等速ジョイントカバー用ブーツ、ボールジョイントカバー用ブーツ(ダストカバーブーツ)、ラックアンドピニオンギア用ブーツなどがある。ブーツは大変形に耐えられる物理的強度とともに、耐油性が要求されるため、CRが多く使用されている。近年、車の軽量コンパクト化技術の進展に伴ってブーツの稼動空間が狭まっているため、除熱効率が低下し熱環境が過酷さを増している。このため、高温雰囲気下において、ブーツ内部に含有する油やグリースなどの非極性の液体に対する信頼性の向上が求められている。
【0103】
本実施形態の統計的共重合体は、ブーツの機械的強度と耐油性と耐久疲労性を高めることが可能である。これにより、従来のCRよりも内部に含有する油やグリースなどの非極性の液体に対する信頼性に優れたブーツを製造することが可能である。また、耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)にも優れるため、金属バンドなど、内部に含有する油の漏洩を防ぐためのかしめ部分の変形が起こりにくい。
【0104】
(ゴム引布)
ゴム引布は、ゴムを布に貼り合わせたゴムと布織物(繊維)の複合材料であり、ゴムシートに比べて強度が強く、耐水性や気密性などに優れている。これらの特徴を活かし、用途としては、ゴムボートやテント材料、雨合羽などの衣類、建築防水用シート、緩衝材などに広く用いられている。ゴム引布に使用されるゴム材料としては、一般的には、CRやNBR、EPDMなどが用いられている。中でも、CRは優れた機械強度や耐候性から、ゴムボートなどの屋外で使用される引布に広く使用されている。一方で、自動車や建築現場などのような油が飛散する環境下で使用されるゴム引布シート材に使用するためには耐油性が不十分であり、改良が求められている。
【0105】
本実施形態の統計的共重合体は、ゴム引布の機械的強度と耐油性を高めることが可能である。これにより、従来のCRでは困難であった油が飛散する環境下でも使用できるゴム引布を製造することが可能である。
【0106】
(ゴムロール)
ゴムロールは、鉄芯などの金属製の芯をゴムで接着被覆することによって製造されるロールであり、一般に金属鉄芯にゴムシートを渦巻き状に巻き付けて製造される。ゴムロールには、製紙、製鉄、印刷などの種々の用途の要求特性に応じて、NBRやEPDM、CRなどのゴム材料が用いられている。CRは搬送する物体の摩擦に耐え得る良好な機械強度を有していることから、幅広いロール用途に使用されている。一方で、製鉄用、製紙用の工業用材料や製品の製造時など、油が付着する環境下で用いられるゴムロールには耐油性が不十分であり、改良が求められている。また、重量物を搬送するゴムロールは荷重により変形するという課題があり、改良を求められている。
【0107】
本実施形態の統計的共重合体は、ゴムロールの機械的強度と耐油性と耐へたり性(低い圧縮永久ひずみ性)を高めることが可能である。これにより、従来のCRでは困難であった油が付着する環境下で用いられるゴムロールを製造することが可能である。
【0108】
(防振ゴム)
防振ゴムとは、振動の伝達波及を防止するゴムのことであり、例えば防音や衝撃の緩衝、また、機械から発生する振動が外部に波及するのを防ぐ用途などに用いられる。例えば自動車や各種車両では、エンジン駆動時の振動を吸収して騒音を防止するために、トーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガーなどの構成材料に防振ゴムが用いられている。防振ゴムは防振特性に優れた天然ゴムが広く使用されているが、建設重機用など、油の飛散する環境で使用される防振ゴムには耐油性が要求されるため、CRが使用されている。防振ゴムに油が付着することで膨潤すると機械的な強度が低下し、早期に破壊するという問題があるため、改良が求められている。また、動的な環境で用いられるため、繰り返し変形に対する耐久性の向上が求められている。
【0109】
本実施形態の統計的共重合体は、防振ゴムの機械的強度と耐油性と耐屈曲疲労性を高めることが可能である。これにより、従来のCRでは困難であった油の飛散する環境でも使用できる防振ゴムを製造することが可能である。
【0110】
(スポンジ製品)
スポンジは内部に細かい孔が無数に空いた多孔質の物質である。孔は連続泡と独立泡の形態のいずれも取り得る。孔が十分大きく連続の場合、液体にひたすと孔内の空気と置換される形で液体を吸い取り、また外部から力を加えると容易に放出する特性を有する。また、孔が小さい場合は優れた緩衝材や断熱材として使用する事ができる。CRは、優れた機械強度とゴム弾性を有するため、スポンジに幅広く使用されており、防振部材、スポンジシール部品、ウェットスーツ、靴などが具体的な例として挙げられる。何れの用途においても、油による膨潤変形、変色を防ぐため耐油性の改良が求められている。
【0111】
本実施形態の統計的共重合体は、スポンジ製品の機械的強度と耐油性を高めることが可能である。これにより、従来のCRでは困難であった油による膨潤変形、変色を起こしにくいスポンジ製品を製造することが可能である。
【実施例
【0112】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
(1)実験例1
実験例1では、製造工程におけるクロロプレン単量体の添加方法や、クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の組成及び物性が、加硫成形体の機械的特性や耐油性に及ぼす影響について検証した。
【0114】
<統計的共重合体の製造>
[実施例1]
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスの作製)
加熱冷却ジャケットと攪拌機を備えた内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で乳化重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを0.0065質量部加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
なお、重合中は定期的に10回以上重合液をサンプリングして、重合液に含まれる未反応のクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の分析を行ったが、クロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の合計に対するアクリロニトリル単量体の質量比は常に目標値の±5%以内であった。
【0115】
(重合液中の単量体の定量分析)
25mlメスフラスコにサンプリングした重合液1.0gを秤量し、これをテトラヒドロフランで25mlに希釈し攪拌することで得られた試料を用い、ガスクロマトグラフと検量線を用いた通常の定量分析法により行った(以下、同様)。
〔ガスクロマトグラフ分析条件〕
測定機器:島津製作所GC-2010
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:270℃
検出器:FID
検出器温度300℃
カラム種類:DB-1、0.25mm×60m
注入量:1μl
カラム温度:50℃から5℃/分で100℃まで昇温
【0116】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体合成の重合率)
クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の重合開始からある時刻までの重合率は、クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを風乾することで乾燥重量から算出した。具体的には、以下の一般式(XII)より計算した。重合途中の乾燥重量は、ラテックスに対して乾燥重量に影響を与えない少量の重合禁止剤を添加し、一般式(XII)より計算した。式中、固形分濃度は、サンプリングした乳化重合液2gを130℃中で加熱し溶媒(水)、揮発性薬品や原料を除いた後、加熱前後の重量変化から揮発分を除いて求めた固形分の濃度(質量%)である。総仕込み量及び蒸発残分は重合処方より計算した。総仕込み量とは、重合開始からある時刻までに重合缶に仕込んだ原料、試薬、溶媒(水)の総量である。蒸発残分とは、重合開始からある時刻までに仕込んだ薬品や原料のうち、130℃の条件下で揮発せずにポリマーと共に固形分として残留する薬品の重量を表す。単量体仕込み量は、重合缶に初期に仕込んだ単量体及び重合開始からある時刻までに分添した単量体の量の合計である。なお、ここでいう単量体とはクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の合計量である。
【0117】
重合率[%]={(総仕込み量[g]×固形分濃度[質量%]/100)-(蒸発残分[g])}/単量体仕込み量[g]×100 ・・・(XII)
【0118】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の回収)
重合により得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0119】
また、クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の数平均分子量Mn、質量平均分子量Mw、及び分子量分布(Mw/Mn)を、回収したサンプルをTHFでサンプル調整濃度0.1質量%とした後、TOSOH HLC-8320GPCにより測定した(標準ポリスチレン換算)。その際、プレカラムとしてTSKガードカラムHHR-H、分析カラムとしてHSKgelGMHHR-H3本を使用し、サンプルポンプ圧8.0~9.5MPa、流量1mL/min、40℃で流出させ、示差屈折計で検出した。
【0120】
流出時間と分子量は、以下にあげる分子量既知の標準ポリスチレンサンプル計9点を測定して作成した校正曲線を用いた。(Mw=8.42×10、1.09×10、7.06×10、4.27×10、1.90×10、9.64×10、3.79×10、1.74×10、2.63×10
【0121】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体のアクリロニトリル結合量)
アクリロニトリル結合量は、化学分析により求めた窒素原子の含有量から算出した。ポリマー中の窒素原子の含有量は、100mgの乾燥サンプルを用いて元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)により決定した。電気炉温度は反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素を0.2ml/min、キャリアーガスとしてヘリウムを80ml/minフローした。検量線は窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質に用いて作成した。
【0122】
結果、数平均分子量(Mn)は138×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は473×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。また、クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量は8.9質量%であった。
【0123】
[実施例2]
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスの作製)
内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体20質量部、アクリロニトリル単量体47質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを0.0065質量部加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
なお、重合中は定期的に10回以上重合液をサンプリングして、重合液に含まれる未反応のクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の測定を行ったが、クロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の合計に対するアクリロニトリル単量体の質量比は常に目標値の±5%以内であった。
【0124】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の回収)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0125】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
実施例1と同様の方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は130×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は442×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、16.2質量%であった。
【0126】
[実施例3]
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスの作製)
内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度10℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節する事で連続的に行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを0.0065質量部加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
なお、重合中は定期的に10回以上重合液をサンプリングして、重合液に含まれる未反応のクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の測定を行ったが、クロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の合計に対するアクリロニトリル単量体の質量比は常に目標値の±5%以内であった。
【0127】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の回収)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0128】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
実施例1と同様の方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は133×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は462×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は3.5であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、9.1質量%であった。
【0129】
[実施例4]
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスの作製)
内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度20℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節する事で連続的に行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを0.0065質量部加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
なお、重合中は定期的に10回以上重合液をサンプリングして、重合液に含まれる未反応のクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の測定を行ったが、クロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の合計に対するアクリロニトリル単量体の質量比は常に目標値の±5%以内であった。
【0130】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の回収)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0131】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
実施例1と同様の方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は135×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は454×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、9.0質量%であった。
【0132】
[実施例5]
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスの作製)
内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、比重が0.997、1.001、1.004、1.008、1.012、1.015、1.019、1.023、1.026、1.030に達した時、それぞれ4.4質量部ずつ、合計10回加えて行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを0.0065質量部加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
なお、重合中は定期的に10回以上重合液をサンプリングして、重合液に含まれる未反応のクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の測定を行ったが、クロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の合計に対するアクリロニトリル単量体の質量比は常に目標値の±10%以内であった。
【0133】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の回収)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0134】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
実施例1と同様の方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は134×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は453×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、9.0質量%であった。
【0135】
[実施例6]
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスの作製)
内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体28質量部、アクリロニトリル単量体28質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、比重が0.997、0.999、1.000、1.002、1.004、1.006、1.007、1.009、1.011、1.013、1.014、1.016、1.018、1.020、1.021、1.023、1.025、1.027、1.028、1.030に達した時、それぞれ2.2質量部ずつ、合計20回加えて行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が50%となった時点で重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスを得た。
なお、重合中は定期的に10回以上重合液をサンプリングして、重合液に含まれる未反応のクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の測定を行ったが、クロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の合計に対するアクリロニトリル単量体の質量比は常に目標値の±5%以内であった。
【0136】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の回収)
得られたクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を得た。
【0137】
(クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の分析)
実施例1と同様の方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は132×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は446×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体中のアクリロニトリル結合量はポリマー中の窒素原子の元素分析を行い決定し、8.9質量%であった。
【0138】
[比較例1]
(クロロプレンホモポリマーラテックスの作製)
500ml三口セパラブルフラスコ中で、水100gに水酸化ナトリウム50mg、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)1.0g、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)4.43gを溶解させ、オイルバスで30℃に保ち窒素フローによる脱気を10分間行なった。
【0139】
次に、減圧蒸留により安定剤を取り除いたクロロプレン単量体100gと1-ドデカンチオール1.50gを上記セパラブルフラスコに添加し、30℃のオイルバスで10分間乳化させた。得られた乳化液を40℃まで昇温し、過硫酸カリウムの2.00重量%水溶液を添加し、クロロプレン単量体の重合率が65%に到達するまで重合を行った。N,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10.00重量%水溶液を添加することで反応を停止させ、減圧蒸留により残留クロロプレン単量体を除去することでクロロプレンホモポリマーラテックスを得た。
【0140】
(クロロプレンホモポリマーの回収)
得られたクロロプレンホモポリマーラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上に凍結凝固させることで乳化破壊した。得られたシートを水洗し、130℃で15分間乾燥させることにより、固形状のクロロプレンホモポリマーを得た。
【0141】
(クロロプレンホモポリマーの分析)
実施例1と同様の方法により分析した結果、数平均分子量(Mn)は138×10g/mol、重量平均分子量(Mw)は336×10g/mol、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
【0142】
<加硫ゴムの作製>
実施例1~6それぞれの統計的共重合体又は比較例1のホモポリマー100質量部と、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製ノクラックCD)2質量部、酸化マグネシウム(協和化学工業社製キョーワマグ#150)4質量部、カーボンブラック(SRF;旭カーボーン社製旭#50)50質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤(ADEKA社製アデカサイザーRS-735)5質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、エチレンチオウレア(川口化学社製アクセル22S)1.5質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製ノクラック6C)1質量部とを、冷却水温度を40℃に設定した8インチロールを用いて20分間混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物はJIS K 6250に基づき、電熱プレスを用いて、170℃、20分間、続けて加熱空気中で170℃、2時間熱処理を行うことにより加硫ゴムを作製した。
【0143】
<加硫ゴムの機械的特性の測定>
実施例1~6それぞれの統計的共重合体又は比較例1のホモポリマーを用いた加硫ゴムの機械的特性(破断強度、破断伸び)はJIS K6251に準拠して測定した。破断強度>20MPa、破断伸び>300%を合格と判断した。硬度は、JIS K6253-3に準拠して測定した。
【0144】
<加硫ゴムの耐油性の測定>
実施例1~6それぞれの統計的共重合体又は比較例1のホモポリマーを用いた加硫ゴムの耐油性はJIS K6258に準拠して測定した。油種はIRM903オイルを用いて、135℃、72時間浸漬後の体積変化率(ΔV)及び重量変化率(ΔW)から耐油性を評価した。ΔV<+30%、ΔW<+30%を合格と判断した。
【0145】
<結果>
実施例1~6及び比較例1の結果を下記表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
実施例1~6それぞれの統計的共重合体の加硫物は、比較例1と同等の硬度であったが、破断強度及び破断伸びが優れており、機械的強度が良好であった。また、実施例1~6の加硫物は、比較例1よりも耐油性が優れていた。これらの結果から、クロロプレン単量体を連続添加又は10回以上間欠分添する工程を含む方法で得られ、不飽和ニトリル単量体単位が8~20質量%の範囲である本発明のクロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体を含む加硫物は、機械的強度(破断点強度TB、破断伸びEB)、及び耐油性が良好であることが確認された。
【0148】
また、実施例の中で比較すると、重合温度を5~20℃の範囲内である実施例3及び4の加硫物は、重合温度が40℃の実施例1及び2に比べて、より優れた機械的強度、特に破断伸びEBを示した。
【0149】
(2)実験例2
実験例2では、製造工程におけるクロロプレン単量体の添加方法や、クロロプレン-アクリロニトリル統計的共重合体の物性が、加硫成形体の低温圧縮永久ひずみや耐屈曲疲労性に及ぼす影響について検証した。
【0150】
<加硫ゴムの低温圧縮永久ひずみの測定>
実施例1~4それぞれの統計的共重合体又は比較例1のホモポリマーを用いた加硫ゴムの低温圧縮永久ひずみは、JIS K 6262に基づいて、0℃、72時間の条件で測定した。なお、圧縮永久歪み(CS)が、25%以下のものを合格、特に20%以下のものを優秀とした。
【0151】
<加硫ゴムの耐屈曲疲労性の測定>
実施例1~4それぞれの統計的共重合体又は比較例1のホモポリマーを用いた加硫ゴムの耐屈曲疲労性は、JIS K 6260に基づいて、40℃で測定した。なお、耐屈曲疲労性が、10万回以上のものを合格とした。
【0152】
<結果>
実施例1~4及び比較例1の結果を下記表2に示す。
【0153】
【表2】
【0154】
実施例1~4の加硫物は、比較例1と比較して低温での圧縮永久歪みに優れており、耐屈曲疲労性も良好であった。特に、耐油性、機械的強度、低温圧縮永久ひずみのバランスの観点からは、実施例1、3、4の加硫物が優れていた。