(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】吸収体の製造方法、吸収体の製造装置及び吸収体
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20221028BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20221028BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
A61F13/15 323
A61F13/15 350
A61F13/535 100
A61F13/53 100
(21)【出願番号】P 2019534566
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2018028900
(87)【国際公開番号】W WO2019026971
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2017151314
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017168869
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100114502
【氏名又は名称】山本 俊則
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】腰島 美和
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070500(JP,A)
【文献】特開2016-123641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の主面を有する帯状の主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートが前記第1の主面の少なくとも一部を構成する前記主シートを、所定の搬送経路に沿って、前記主シートの長手方向に搬送する第1の工程と、
前記搬送経路の第1の位置において、搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記第1の主面に切れ目が形成されるようにスリットを形成する第2の工程と、
前記第1の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第2の位置において、搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記切れ目を含む領域に、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体を散布して、前記粉粒体が前記不織布シートに保持されるようにする第3の工程と、
前記第2の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第3の位置において、搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記粉粒体が散布された領域に、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートを重ねる第4の工程と、
を備え、
前記主シートの前記不織布シートは、前記第2の位置において、前記主シートの前記第1の主面の少なくとも一部を構成し前記粉粒体が入り込むための空隙を有する嵩高構造を含
み、
前記第2の工程において、前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ、前記スリットを形成することを特徴とする、吸収体の製造方法。
【請求項2】
第1及び第2の主面を有する帯状の主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートが前記第1の主面の少なくとも一部を構成する前記主シートを、所定の搬送経路に沿って、前記主シートの長手方向に搬送する第1の工程と、
前記搬送経路の第1の位置において、搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記第1の主面に切れ目が形成されるようにスリットを形成する第2の工程と、
前記第1の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第2の位置において、搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記切れ目を含む領域に、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体を散布して、前記粉粒体が前記不織布シートに保持されるようにする第3の工程と、
前記第2の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第3の位置において、搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記粉粒体が散布された領域に、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートを重ねる第4の工程と、
を備え、
前記主シートの前記不織布シートは、前記第2の位置において、前記主シートの前記第1の主面の少なくとも一部を構成し前記粉粒体が入り込むための空隙を有する嵩高構造を含
み、
前記第3の工程において、散布された前記粉粒体の一部が、前記スリットから前記主シートの内部に入り込むように、前記粉粒体を散布することを特徴とする、吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、前記スリットが前記主シートの前記長手方向に延在するように、前記スリットを形成することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程において、前記主シートの前記第1の主面に垂直に透視すると、前記主シートの前記第1の主面のうち、前記第3の工程において前記粉粒体が散布される予定の散布領域内にのみ、前記スリットを形成することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の吸収体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の工程において、前記主シートの前記第1の主面に垂直に透視すると、前記主シートの前記第1の主面のうち、前記第3の工程において前記粉粒体が散布される予定の散布領域内にのみ、前記スリットを形成することを特徴とする、請求項
3に記載の吸収体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の位置より前記主シートの搬送方向上流側の前記搬送経路の第4の位置において、搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記嵩高構造を形成する第5の工程をさらに備え、
前記第3の工程において、前記粉粒体は、前記第5の工程で形成された前記嵩高構造の前記空隙に入り込み保持されることを特徴とする、請求項1ないし
5のいずれか一つに記載の吸収体の製造方法。
【請求項7】
第1及び第2の主面を有する帯状の主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートが前記第1の主面の少なくとも一部を構成する前記主シートを、所定の搬送経路に沿って、前記主シートの長手方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送経路の第1の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記第1の主面に切れ目が形成されるようにスリットを形成するスリット形成装置と、
前記第1の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第2の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記切れ目を含む領域に、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体を散布して、前記粉粒体が前記不織布シートに保持されるようにする散布装置と、
前記第2の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第3の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記粉粒体が散布された領域に、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートを重ねる被覆装置と、
を備え、
前記主シートの前記不織布シートは、前記第2の位置において、前記主シートの前記第1の主面の少なくとも一部を構成し前記粉粒体が入り込むため
の空隙を有する嵩高構造を含み、
前記スリット形成装置は、刃を有する工具を備え、
前記刃は、前記搬送経路の前記第1の位置において前記搬送経路に、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第1の主面側から、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第2の主面の手前までに限り進入するように配置され、
前記刃は、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ、前記スリットを形成することを特徴とする、吸収体の製造装置。
【請求項8】
第1及び第2の主面を有する帯状の主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートが前記第1の主面の少なくとも一部を構成する前記主シートを、所定の搬送経路に沿って、前記主シートの長手方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送経路の第1の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記第1の主面に切れ目が形成されるようにスリットを形成するスリット形成装置と、
前記第1の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第2の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記切れ目を含む領域に、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体を散布して、前記粉粒体が前記不織布シートに保持されるようにする散布装置と、
前記第2の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第3の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記粉粒体が散布された領域に、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートを重ねる被覆装置と、
を備え、
前記主シートの前記不織布シートは、前記第2の位置において、前記主シートの前記第1の主面の少なくとも一部を構成し前記粉粒体が入り込むため
の空隙を有する嵩高構造を含み、
前記散布装置は、前記粉粒体の一部が、前記スリットから前記主シートの内部に入り込むように、前記粉粒体を散布することを特徴とする、吸収体の製造装置。
【請求項9】
前記スリット形成装
置の前記刃は、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記不織布シートに、前記スリットが前記主シートの前記長手方向に延在するように、前記スリットを形成することを特徴とする、請求項7に記載の吸収体の製造装置。
【請求項10】
前記スリット形成装置は、前記主シートの前記第1の主面に垂直に透視すると、前記主シートの前記第1の主面のうち、前記散布装置によって前記粉粒体が散布される予定の散布予定領域内にのみ、前記スリットを形成することを特徴とする、請求項
7又は8に記載の吸収体の製造装置。
【請求項11】
前記スリット形成装置は、前記主シートの前記第1の主面に垂直に透視すると、前記主シートの前記第1の主面のうち、前記散布装置によって前記粉粒体が散布される予定の散布予定領域内にのみ、前記スリットを形成することを特徴とする、請求項
9に記載の吸収体の製造装置。
【請求項12】
前記第2の位置より前記主シートの搬送方向上流側の前記搬送経路の第4の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記嵩高構造を形成する起毛装置をさらに備え、
前記散布装置によって散布された前記粉粒体は、前記起毛装置で形成された前記嵩高構造の前記空隙に入り込み保持されることを特徴とする、請求項
7ないし
11のいずれか一つに記載の吸収体の製造装置。
【請求項13】
第1及び第2の主面を有する主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートによって前記第1の主面の少なくとも一部が構成され、前記第1の主面に切れ目が形成され、前記切れ目に連通するスリットが前記不織布シートに形成された前記主シートと、
前記不織布シートの繊維の間の空隙に保持され、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体と、
前記第1の主面に重なり、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートと、
を備え
、
前記スリットは、前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ形成されることを特徴とする、吸収体。
【請求項14】
第1及び第2の主面を有する主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートによって前記第1の主面の少なくとも一部が構成され、前記第1の主面に切れ目が形成され、前記切れ目に連通するスリットが前記不織布シートに形成された前記主シートと、
前記不織布シートの繊維の間の空隙に保持され、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体と、
前記第1の主面に重なり、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートと、
を備え
、
前記不織布シートは、前記スリットから前記不織布シートの内部に入り込んだ前記粉粒体を含むことを特徴とする、吸収体。
【請求項15】
前記スリットは、前記主シートの前記第1の主面に垂直に透視すると、前記粉粒体が散布されている散布領域内にのみ、形成されていることを特徴とする、請求項
13又は
14に記載の吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の製造方法、吸収体の製造装置及び吸収体に関し、詳しくは、不織布シートに粉粒体が保持されている吸収体の製造方法、吸収体の製造装置及び吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吸収し保持することが可能な粉粒体が不織布シートに保持されている吸収体は、例えば、使い捨てオムツ、使い捨てパンツ、女性用生理用品などに使用される。このような吸収体は、連続体から切断され分割された個片の状態で、使用される。
【0003】
例えば、
図24は、吸収体81の構造を示す模式図である。
図24に示すように、吸収体81は、ウエブ82の繊維の間の空隙に、粉粒体83の粒径が異なる粒子83a,83bが保持されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図25は、吸収体の連続体Rを製造する装置の構成を示す略図である。
図25に示すように、この装置は、コンベア104で搬送されている第1のシート103の一方主面に、散布装置101から粉粒体102を所定のパターンに散布し、その上に第2のシート105を貼り合わせる。第1のシート103と第2のシート105の貼り合わせ面には、固定剤散布装置106A,106Bによって固定剤を塗布し、粉粒体102の定着性を向上させる。また、第1のシート103の一方主面に粉粒体102を散布する前に、第1のシート103の他方主面に第3のシート107を貼り合わせる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-305327号公報
【文献】特開2002-178429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粉粒体102が散布される第1のシート103に、嵩高な不織布シートを用いることができる。この場合、不織布シートの繊維間の空間に粉粒体が配置され保持される。
【0007】
しかしながら、不織布シートの繊維密度を、粉粒体を所定の散布状態に保持できる程度の繊維密度にすると、吸収体の表面に液体が供給されたとき、液体は、不織布シートの内部において不織布シートの面方向に略均一に徐々に拡散し吸収・保持されるので、不織布シートに対する液体の通過(通液性)や液体の拡散(液拡散性)を向上することは容易でない。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑み、通液性や液拡散性の向上が容易である吸収体を製造することができる吸収体の製造方法、吸収体の製造装置及び吸収体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した吸収体の製造方法を提供する。
【0010】
吸収体の製造方法は、(i)第1及び第2の主面を有する帯状の主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートが前記第1の主面の少なくとも一部を構成する前記主シートを、所定の搬送経路に沿って、前記主シートの長手方向に搬送する第1の工程と、(ii)前記搬送経路の第1の位置において、搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記第1の主面に切れ目が形成されるようにスリットを形成する第2の工程と、(iii)前記第1の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第2の位置において、搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記切れ目を含む領域に、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体を散布して、前記粉粒体が前記不織布シートに保持されるようにする第3の工程と、(iv)前記第2の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第3の位置において、搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記粉粒体が散布された領域に、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートを重ねる第4の工程と、を備える。前記主シートの前記不織布シートは、前記第2の位置において、前記主シートの前記第1の主面の少なくとも一部を構成し前記粉粒体が入り込むための空隙を有する嵩高構造を含んでいる。(1)前記第2の工程において、前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ、前記スリットを形成する。または、(2)前記第3の工程において、散布された前記粉粒体の一部が、前記スリットから前記主シートの内部に入り込むように、前記粉粒体を散布する。
【0011】
上記方法において、主シートは、不織布シートのみで構成されても、不織布シート以外を含んでも構わない。主シートの第1の主面は、不織布シートのみで構成されても、不織布シートと不織布シート以外とで構成されても構わない。
【0012】
上記方法によれば、第3の工程において主シートの第1の主面に散布された粉粒体は、第1の主面に加え、スリットの切断面からも不織布シートに入り込み、不織布シートの繊維に絡まり、不織布シートの繊維の間の空隙に保持される。そのため、スリットが形成されていない場合に比べ、不織布シートに保持される粉粒体の量を容易に増やすことができる。
【0013】
また、不織布シートにスリットが形成されている吸収体は、スリットが形成されていない場合に比べ、同じ量の液体が、より短時間で、より広い範囲の粉粒体に吸収され保持されるようにすることが容易である。
【0014】
したがって、通液性や液拡散性の向上が容易である吸収体を製造することができる。
【0015】
スリットは、任意の方向に形成することが可能である。例えば、主シートの搬送方向と直交する方向や交差する方向に形成することも可能である。
【0016】
好ましくは、前記第2の工程において、前記スリットが前記主シートの前記長手方向に延在するように、前記スリットを形成する。前記スリットは、連続的に延在しても、不連続ないし間欠的に延在してもよい。
【0017】
この場合、搬送されている主シートに刃を当て、切り込むなどの簡単な方法で、スリットを容易に形成することができる。
【0018】
主シートの第1の主面と第2の主面との間を貫通するスリットを形成することも可能であるが、その場合、主シートの第1の主面に散布された粉粒体は、スリットを通り抜けて主シートから離れてしまい、不織布シートには保持されないことがある。
【0019】
好ましくは、前記第2の工程において、前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ、前記スリットを形成する。
【0020】
この場合、散布したすべての粉粒体が不織布シートに保持されるようにすること可能であり、不織布シートに保持される粉粒体の量を増やすことができる。また、主シートの搬送が容易であるため、主シートの搬送速度を上げて吸収体の製造能力を引き上げことが容易である。
【0021】
好ましくは、前記第2の工程において、前記主シートの前記第1の主面に垂直に透視すると、前記主シートの前記第1の主面のうち、前記第3の工程において前記粉粒体が散布される予定の散布領域内にのみ、前記スリットを形成する。
【0022】
この場合、製造中の後工程で、スリット内に入り込んだ粉粒体がスリットに沿って移動し、個片に分割した端部からこぼれ落ちるおそれを低減することができる。
【0023】
主シートは、例えば、起毛している不織布や、捲縮繊維を用いた不織布や、エアースルー不織布を多層にしたものなどを用いて、主シートの不織布シートが嵩高構造を予め含むようにしてもよい。この場合、第1の工程において、不織布シートが嵩高構造を含んでいる主シートを搬送する。次のように、主シートの搬送中に嵩高構造を形成してもよい。
【0024】
好ましくは、吸収体の製造方法は、前記第2の位置より前記主シートの搬送方向上流側の前記搬送経路の第4の位置において、搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記嵩高構造を形成する第5の工程をさらに備える。前記第3の工程において、前記粉粒体は、前記第5の工程で形成された前記嵩高構造の前記空隙に入り込み保持される。
【0025】
この場合、粉粒体を散布する前に、粉粒体の保持に適した起毛状態の起毛部分を形成することによって、不織布シートに保持される粉粒体の量を増やすことができるので、通液性や液拡散性を向上させることが容易である。
【0026】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した吸収体の製造装置を提供する。
【0027】
吸収体の製造装置は、(a)第1及び第2の主面を有する帯状の主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートが前記第1の主面の少なくとも一部を構成する前記主シートを、所定の搬送経路に沿って、前記主シートの長手方向に搬送する搬送装置と、(b)前記搬送経路の第1の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記第1の主面に切れ目が形成されるようにスリットを形成するスリット形成装置と、(c)前記第1の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第2の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記切れ目を含む領域に、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体を散布して、前記粉粒体が前記不織布シートに保持されるようにする散布装置と、(d)前記第2の位置より前記主シートの搬送方向下流側の前記搬送経路の第3の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記第1の主面のうち前記粉粒体が散布された領域に、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートを重ねる被覆装置と、を備える。前記主シートの前記不織布シートは、前記第2の位置において、前記主シートの前記第1の主面の少なくとも一部を構成し前記粉粒体が入り込むための空隙を有する嵩高構造を含んでいる。(1)前記スリット形成装置は、刃を有する工具を備える。前記刃は、前記搬送経路の前記第1の位置において前記搬送経路に、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第1の主面側から、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第2の主面の手前までに限り進入するように配置される。前記刃は、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ、前記スリットを形成する。または、(2)前記散布装置は、前記粉粒体の一部が、前記スリットから前記主シートの内部に入り込むように、前記粉粒体を散布する。
【0028】
上記構成において、主シートは、不織布シートのみであっても、不織布シート以外を含んでも構わない。主シートの第1の主面は、不織布シートのみで構成されても、不織布シートと不織布シート以外とで構成されても構わない。
【0029】
上記構成によれば、主シートの第1の主面に散布された粉粒体は、第1の主面に加え、スリットの切断面からも不織布シートに入り込み、不織布シートの繊維に絡まり、不織布シートの繊維の間の空隙に保持される。そのため、スリットが形成されていない場合に比べ、不織布シートに保持される粉粒体の量を容易に増やすことができる。
【0030】
また、不織布シートにスリットが形成されている吸収体は、スリットが形成されていない場合に比べ、同じ量の液体が、より短時間で、より広い範囲の粉粒体に吸収され保持されるようにすることが容易である。
【0031】
したがって、通液性や液拡散性の向上が容易である吸収体を製造することができる。
【0032】
スリットは、任意の方向に形成することが可能である。例えば、連続体の搬送方向と直交する方向やと交差する方向に形成することも可能である。
【0033】
好ましくは、前記スリット形成装置は、前記スリットが前記主シートの前記長手方向に延在するように、前記スリットを形成するように構成する。前記スリットは、連続的に延在しても、不連続ないし間欠的に延在してもよい。
【0034】
好ましい一態様において、前記スリット形成装置は、刃を有する工具を備える。前記刃は、前記搬送経路の前記第1の位置において前記搬送経路に、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第1の主面側から進入するように配置される。前記刃は、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記不織布シートに、前記スリットが前記主シートの前記長手方向に延在するように、前記スリットを形成する。前記スリットは、連続的に延在しても、不連続ないし間欠的に延在してもよい。
【0035】
この場合、簡単な構成で、長手方向に延在するスリットを形成することができる。
【0036】
主シートの第1の主面と第2の主面との間を貫通するスリットを形成することも可能であるが、その場合、主シートの第1の主面に散布された粉粒体は、スリットを通り抜けて主シートから離れてしまい、不織布シートには保持されないことがある。
【0037】
好ましくは、前記スリット形成装置は、前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ、前記スリットを形成するように構成する。
【0038】
好ましい一態様において、前記スリット形成装置は、刃を有する工具を備える。前記刃は、前記搬送経路の前記第1の位置において前記搬送経路に、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第1の主面側から、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第2の主面の手前までに限り進入するように配置される。前記刃は、前記搬送経路に沿って搬送されている前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ、前記スリットを形成する。
【0039】
この場合、散布したすべての粉粒体が不織布シートに保持されるようにすることが可能であり、不織布シートに保持される粉粒体の量を増やすことができる。また、主シートの搬送が容易であるため、主シートの搬送速度を上げて吸収体の製造能力を引き上げことが容易である。
【0040】
好ましくは、前記スリット形成装置は、前記主シートの前記第1の主面に垂直に透視すると、前記主シートの前記第1の主面のうち、前記散布装置によって前記粉粒体が散布される予定の散布予定領域内にのみ、前記スリットを形成する。
【0041】
この場合、製造中の後工程で、スリット内に入り込んだ粉粒体がスリットに沿って移動し、個片に分割した端部からこぼれ落ちるおそれを低減することができる。
【0042】
主シートは、例えば、起毛している不織布や、捲縮繊維を用いた不織布や、エアースルー不織布を多層にしたものなどを用いて、主シートの不織布シートが嵩高構造を予め含むようにしてもよい。この場合、搬送装置は、不織布シートが嵩高構造を含んでいる主シートを搬送する。次のように、主シートの搬送中に嵩高構造を形成してもよい。
【0043】
好ましくは、吸収体の製造装置は、前記第2の位置より前記主シートの搬送方向上流側の前記搬送経路の第4の位置に隣接するように配置され、前記搬送装置によって搬送中の前記主シートの前記不織布シートに、前記嵩高構造を形成する起毛装置をさらに備える。前記散布装置によって散布された前記粉粒体は、前記起毛装置で形成された前記嵩高構造の前記空隙に入り込み保持される。
【0044】
この場合、粉粒体を散布する前に、粉粒体の保持に適した起毛状態の起毛部分を形成することによって、不織布シートに保持される粉粒体の量を増やすことができるので、通液性や液拡散性を向上させることが容易である。
【0045】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した吸収体を提供する。
【0046】
吸収体は、(a)第1及び第2の主面を有する主シートであって、不織布からなる不織布シートを含み、前記不織布シートによって前記第1の主面の少なくとも一部が構成され、前記第1の主面に切れ目が形成され、前記切れ目に連通するスリットが前記不織布シートに形成された前記主シートと、(b)前記不織布シートの繊維の間の空隙に保持され、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体と、(c)前記第1の主面に重なり、前記粉粒体の通過を阻止する被覆シートと、を備える。(1)前記スリットは、前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ形成される。または、(2)前記不織布シートは、前記スリットから前記不織布シートの内部に入り込んだ前記粉粒体を含む。
【0047】
上記構成において、主シートは、不織布シートのみで構成されても、不織布シート以外を含んでも構わない。主シートの第1の主面は、不織布シートのみで構成されても、不織布シートと不織布シート以外とで構成されても構わない。
【0048】
上記構成によれば、スリットが形成されていない場合に比べ、不織布シートに保持される粉粒体の量を容易に増やすことができる。また、スリットが形成されていない場合に比べ、同じ量の液体が、より短時間で、より広い範囲の粉粒体に吸収され保持されるようにすることが容易である。
【0049】
したがって、通液性や液拡散性の向上が容易である吸収体を製造することができる。
【0050】
好ましくは、前記スリットは、前記主シートの前記第1の主面から前記第2の主面の手前までの間にのみ形成されている。
【0051】
この場合、不織布シートに保持される粉粒体を増やすことができる。また、吸収体の製造能力を引き上げことが容易である。
【0052】
好ましくは、前記スリットは、前記主シートの前記第1の主面に垂直に透視すると、前記粉粒体が散布されている散布領域内にのみ、形成されている。
【0053】
この場合、製造中の後工程で、スリット内に入り込んだ粉粒体がスリットに沿って移動し、個片に分割した端部からこぼれ落ちるおそれを低減することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、通液性や液拡散性の向上が容易である吸収体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は吸収体の製造装置の構成を示す略図である。(実施例1)
【
図2】
図2は吸収体の製造工程を示す断面図である。(実施例1)
【
図3】
図3はスリット形成装置の要部平面図である。(実施例1)
【
図4】
図4は主シートの平面図である。(実施例1)
【
図5】
図5は主シートの断面図である。(実施例1)
【
図6】
図6は吸収体の製造装置の要部構成を示す略図である。(変形例1)
【
図7】
図7は主シートの断面図である。(変形例1)
【
図8】
図8は吸収体の製造装置の要部構成を示す略図である。(変形例2)
【
図9】
図9は吸収体の製造装置の要部構成を示す略図である。(変形例3)
【
図15】
図15は主シート及び吸収体の断面図である。(変形例8)
【
図17】
図17は主シート及び吸収体の断面図である。(変形例10)
【
図18】
図18は主シート及び吸収体の断面図である。(変形例10)
【
図19】
図19は主シート及び吸収体の断面図である。(変形例10)
【
図20】
図20は吸収体の製造装置の要部構成を示す略図である。(変形例11)
【
図21】
図21(a)は吸収体の製造装置の要部構成を示す略図であり、
図21(b)は断面略図である(変形例12)。
【
図22】
図22は主シートの拡大断面図である(変形例12)。
【
図24】
図24は吸収体の構造を示す模式図である。(従来例1)
【
図25】
図25は吸収体の製造装置の略図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0057】
<実施例1> 実施例1の吸収体の製造方法、吸収体の製造装置及び吸収体について、
図1~
図5を参照しながら説明する。
【0058】
図1は、吸収体の製造装置2の構成を示す略図である。
図1に示すように、吸収体の製造装置2は、帯状の主シート10を、所定の搬送経路に沿って矢印10y,10zで示す方向に搬送しながら、連続体の吸収体20を製造する。
【0059】
主シート10は、第1及び第2の主面10s,10tを有し、不織布からなる不織布シート14(
図2参照)を含み、不織布シート14によって第1の主面10sの少なくとも一部が構成され、搬送装置4によって、主シート10の長手方向に搬送される。主シート10の搬送方向上流側から下流側に順に、主シート10の搬送経路の第1ないし第3の位置3a,3b,3cに隣接するように、スリット形成装置6、散布装置7、被覆装置8が配置されている。
【0060】
スリット形成装置6は、主シート10にスリットを形成する。散布装置7は、主シート10の第1の主面10sに、粉粒体11を散布する。被覆装置8は、粉粒体11が散布された主シート10の第1の主面10sに、被覆シート18を重ねる。
【0061】
図2は、主シート10の幅方向(すなわち、主シート10の長手方向及び厚み方向に垂直な方向)に切断した断面図であり、吸収体20の製造工程を示す。
図2(a)に示すように、主シート10は、支持シート12の一方主面に、不織布からなる不織布シート14が貼り合わせされた複合シートであり、主シート10の第1の主面10sは不織布シート14で構成され、主シート10の第2の主面10tは支持シート12で構成されている。不織布シート14は、主シート10の第1の主面10sの少なくとも一部を構成し粉粒体11が入り込むための空隙を有する嵩高構造14kを、予め含んでいる。
【0062】
主シート10の不織布シート14には、適宜な不織布を用いればよいが、例えば、エアスルー加工された不織布、すなわち、短繊維を並べてこれらに熱風をあてることによって形成された不織布を用いる。ここで、短繊維とは、JIS L 1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した繊維長さが、100mm未満、より好ましくは80mm未満、さらに好ましくは70mm未満の繊維のことをいう。主シート10の不織布シート14には、例えば、平均繊維長さが50mm程度の短繊維で構成された不織布を用いる。
【0063】
主シート10の不織布シート14には、捲縮繊維を用いた不織布や、エアースルー不織布を多層にしたものなどを用いてもよい。
【0064】
支持シート12は1層又は複数層で形成されている。主シート10は、支持シート12と不織布シート14とが一体に形成されても、それぞれ別体の支持シート12と不織布シート14とが、ホットメルト等による接着や熱溶着等で一体に形成されてもよい。
【0065】
支持シート12には、不織布シート14に比べ、厚みが小さく、密度が高いシートを用いる。支持シート12には、拡散性が高く液体を広範囲に浸透させることができるシートを用いる。
【0066】
なお、主シート10は、不織布シート14のみで構成してもよい。また、後述する変形例10のように、主シート10の支持シート12が、被覆シートを含んでもよい。
【0067】
図1に示すように、搬送装置4は、主シート10の搬送経路に沿って配置された案内ロール4a,4bと、矢印4m,4nで示す方向に回転し主シート10及び被覆シート18を挟み込む一対の圧接ロール4p,4qとを含む。搬送装置4は、例えば原反ロールから巻き出された主シート10を搬送する。
【0068】
スリット形成装置6は、主シート10の搬送経路に対して一方側、すなわち主シート10の第1の主面10sに対向する側に、直線状の刃である片刃60kを有する工具60が配置され、他方側、すなわち主シート10の第2の主面10tに対向する側に、工具60の先端と対向するように受けロール68が配置されている。
【0069】
受けロール68を設けると、主シート10をしっかりと支持することができ、主シート10の不織布シート14にスリットを形成しやすく、好ましいが、受けロール68のない構成とすることも可能である。
【0070】
図3は、スリット形成装置6の要部平面図である。
図3に示すように、複数本の工具60が、互いに間隔を設けて配置されている。工具60は、1本以上あればよいが、複数本を設けると、スリットが増え、通液性や液拡散性、粉粒体の保持量が向上する。工具60は等間隔で配置しても不等間隔で配置してもよい。配置間隔の大きさは任意に設定できる。例えば、工具60は10mmピッチで配置される。
【0071】
図1及び
図3に示すように、工具60は、工具支持軸62に固定され、主シート10の搬送方向(長手方向)と平行に配置されている。工具支持軸62は、吸収体の製造装置2の不図示の基台に固定された支柱66に、一対の取付板64を介して固定されている。このような構成により、工具60の取付、交換、調整が容易であるため、吸収体20の幅や用途などに応じて、工具60の取り付け枚数を増減したり、取り付け位置を変更したりすることが簡単である。
【0072】
工具60の片刃60kは、搬送経路の第1の位置3aにおいて搬送経路に、搬送経路に沿って搬送されている主シート10の第1の主面10s側から進入するように配置されている。これにより、
図2(b)及び
図3に示すように、搬送されている主シート10の不織布シート14には、主シート10の第1の主面10sに切れ目17が形成されるように、スリット16が形成される。切れ目17及びスリット16は、主シート10の長手方向に連続するように形成される。
【0073】
より詳しくは、工具60の片刃60kは、搬送経路の第1の位置3aにおいて搬送経路に、搬送経路に沿って搬送されている主シート10の第1の主面10s側から、搬送経路に沿って搬送されている主シート10の第2の主面10tの手前までに限り進入するように配置さている。これによって、工具60の片刃60kは、搬送経路に沿って搬送されている主シート10の第1の主面10sから第2の主面10tの手前までの間にのみ、スリット16を形成する。
【0074】
なお、スリット形成装置は、後述する変形例2のように丸刃を用いてもよし、レーザ、ウォータージェット等の手法でスリットを形成する装置でもよい。さらには、帯状の複数枚の不織布シートを幅方向に互いに隣り合うように並べて1枚のシートにすることによって、不織布シート14にスリットが形成されている主シート10を製造する装置であってもよい。
【0075】
散布装置7は、
図2(c)に示すように、スリット16が形成された主シート10に、第1の主面10s側から粉粒体11を散布する。粉粒体11は、液体を吸収して保持することが可能な粉状及び/又は粒状のものである。粉粒体11は、例えば、高吸水性高分子(Superabsorbent polymer、略称:SAP)を主成分とするものである。粉粒体11は、例えば、約45μm~約850μmの平均径サイズをもつSAP粒子が好ましい。これより径サイズが小さい微粒子を含んでも構わない。
【0076】
図1に示すように、散布装置7は、主シート10の第2の主面10tを支持する円筒状の支持面70sを有するドラム70と、支持面70sに当接し支持されている部分の主シート10の第1の主面10sに対向し、所定のタイミングで粉粒体11を散布する粉粒体供給装置72と、粉粒体11を貯留する複数のタンク76a,76bと、タンク76a,76bから粉粒体供給装置72に供給する粉粒体11の量と混合比を調整する調量装置74とを含んでいる。
【0077】
図4は、主シート10の平面図である。粉粒体供給装置72は、
図4において鎖線で囲まれた散布領域15にのみ、粉粒体11を散布する。互いに隣り合う散布領域15の間の隙間15xには、粉粒体11が散布されない。そのため、この隙間15xで切断することで、粉粒体11の影響を受けることなく、吸収体の個片を取り出すことができる。
【0078】
図1に示すように、被覆装置8は、第1及び第2の案内ロール8a,8bを含んでいる。第1の案内ロール8aは、被覆シート18を案内する。第2の案内ロール8bは、ドラム70に隣接して配置され、ドラム70の支持面70sに支持されている部分の主シート10の第1の主面10sに被覆シート18を重ね、被覆シート18を主シート10の第1の主面10sに押しつける。被覆シート18は、主シート10の第1の主面10sに重なると、主シート10と一緒に搬送されるので、被覆シート18のうち主シート10に重なる前の部分は、矢印18xで示す方向に搬送される。
【0079】
被覆シート18は、粉粒体11の通過を阻止するシートである。被覆シート18は、液体の通過を許容するものであってもよいし、液体の通過を阻止するシートであってもよい。被覆シート18には、例えば、主シート10に比べ厚みが小さい薄葉紙(ティッシュ)を用いる。被覆シート18は、不織布を用いる場合や、フィルムからなる不透液性のバックシートを片面に貼り付ける場合もある。
【0080】
図2(d)に示すように、被覆シート18の幅は、主シート10の幅よりも大きく、被覆シート18は、主シート10に重ねられたとき主シート10の幅方向両側にはみ出る突出部18a,18bを有している。
【0081】
図1に示すように、吸収体の製造装置2は、さらに、第1及び第2の接着剤塗布装置9a,9bと、折り曲げ装置9kとを備える。第1の接着剤塗布装置9aは、被覆シート18の一対の主面のうち主シート10に貼り合わされる一方主面に、所定のパターンで接着剤(例えば、ホットメルト)を塗布する。第2の接着剤塗布装置9bは、被覆シート18の突出部18a,18b(
図2(d)参照)に、所定のパターンで接着剤(例えば、ホットメルト)を塗布する。折り曲げ装置9kは、
図2(e)に示すように、被覆シート18の突出部18a,18bを折り曲げて、主シート10の第2の主面10tに重ねる。
【0082】
主シート10及び被覆シート18が、ドラム70と第2の案内ロール8bとの間を通過し、さらに一対の圧接ロール4p,4qの間を通過することによって、不織布シート14は次第に圧縮され、薄くされる。
【0083】
図示していないが、粉粒体11が散布される前の主シート10の第1の主面10sに、ホットメルト等の接着剤を塗布してもよい。この場合、主シート10の不織布シート14にスリットが形成された後に接着剤を塗布すると、工具60の片刃60kに接着剤が付着せず、好ましい。
【0084】
次に、実施例1の吸収体の製造装置2を用いて吸収体20を製造する方法について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0085】
まず、搬送装置4により、主シート10を、所定の搬送経路に沿って、主シート10の長手方向に搬送する。これは、第1の工程である。
【0086】
次いで、スリット形成装置6により、搬送経路の第1の位置3aにおいて、
図2(b)に示すように、搬送中の主シート10に、第1の主面10sに切れ目17が形成されるように、スリット16を形成する。これは、第2の工程である。
【0087】
次いで、散布装置7により、搬送経路の第2の位置3bにおいて、
図2(c)に示すように、搬送中の主シート10の第1の主面10sのうち切れ目17を含む領域に、液体を吸収し保持することが可能な粉粒体11を散布する。これは、第3の工程である。
【0088】
次いで、被覆装置8により、搬送経路の第3の位置3cにおいて、
図2(d)に示すように、搬送中の主シート10の第1の主面10sのうち粉粒体11が散布された領域に、粉粒体11の通過を阻止する被覆シート18を重ねる。これは、第4の工程である。
【0089】
以上の第1ないし第4の工程によって、吸収体20の基本的な構成が完成する。
【0090】
次いで、折り曲げ装置9kにより、
図2(e)に示すように、被覆シート18のうち主シート10の幅方向両側にはみ出ている突出部18a,18bを折り曲げて、突出部18a,18bを主シート10の第2の主面10tに重ねる。次いで、一対の圧接ロール4p,4qによって吸収体20を薄くする。
【0091】
次いで、連続体の吸収体20を搬送方向に所定のピッチで切断して、吸収体20の個片を取り出す。
【0092】
以上の工程で、吸収体20の個片を製造すことができる。
【0093】
図5は、主シート10を、主シート10の幅方向に切断した断面図である。
図5に示すように、スリット16を形成する第2の工程において、スリット16は、不織布シート14にのみ形成し、支持シート12には形成しない。
【0094】
粉粒体を散布する第3の工程において、主シート10の第1の主面10s側に散布された粉粒体は、不織布シート14の内部へと移動する。このとき、散布された粉粒体の一部は、矢印11aで示すように第1の主面10sから不織布シート14の内部に入り込み、他の一部は、矢印11p,11qで示すように、切れ目17からスリット16に入り、スリット16の切断面16s,16tから不織布シート14の内部に入り込む。
【0095】
つまり、散布された粉粒体は、第1の主面10sに加え、スリット16の切断面16s,16tからも不織布シート14に入り込み、不織布シート14の繊維に絡まり、繊維の間の空隙に保持される。そのため、スリット16が形成されていない場合に比べ、不織布シート14に保持される粉粒体の量を容易に増やすことができる。
【0096】
不織布シート14にスリット16が形成されていない場合には、不織布シート14内において繊維が複雑に絡まり合っているため、吸収体20の表面に供給された液体が不織布シート14に達すると、液体は、不織布シート14の面方向に略均一に徐々に広がりながら、不織布シート14に保持されている粉粒体に吸収され保持される。
【0097】
一方、スリット16が形成された場合には、不織布シート14内において複雑に絡まり合っている繊維は、スリット16が形成された部分では切断されている。そのため、吸収体20の表面に供給された液体が不織布シート14に達すると、液体は、不織布シート14に形成されたスリット16に沿って速やかに移動し広がると同時に、スリット16に沿って移動する液体の一部がスリット16から離れる方向に不織布シート14内に拡散する。拡散した液体は、不織布シート14に保持されている粉粒体に吸収され保持される。
【0098】
そのため、不織布シート14にスリット16が形成された吸収体20は、スリット16が形成されていない場合に比べ、同じ量の液体が、より短時間で、より広い範囲の粉粒体に吸収され保持されるようにすることが容易である。
【0099】
したがって、通液性や液拡散性の向上が容易である吸収体20を製造することができる。
【0100】
なお、
図5は、スリット16の切断面16s,16tが互いに離れている場合を模式的に図示しているが、切断面16s,16tの一部又は全部が互いに接しても構わない。
【0101】
複数のスリット16が搬送方向(長手方向)に形成された不織布シート14に張力が作用することによって、不織布シート14の互いに隣り合うスリット16の間の部分が細くなる等により、スリット16の隙間(スリット16の切断面16s,16tの間の空間)を広げてもよい。スリット16の隙間が広いと、液体の通過・拡散が良好となる上、粉粒体がこのスリット16から不織布シート14の内部へ入り込みやすい。
【0102】
図5では、スリット16が不織布シート14を貫通していないが、例えば後述する変形例1のように、不織布シート14を貫通するスリットを形成してもよい。
【0103】
実施例1のように主シート10の長手方向に延在するスリット16は、搬送されている主シート10に工具60の片刃60kを押し込むなどの簡単な構成や方法で容易に形成することができる。
【0104】
もっとも、スリット16は、任意の方向に形成することが可能である。例えば、直線状や螺旋状の刃が形成された円筒状の切断ロールを用いると、主シート10の長手方向に対して直交するスリットや交差するスリットを形成することができる。
【0105】
実施例1のスリット16は、主シート10を貫通していないが、主シート10の第1の主面10sと第2の主面10tとの間を貫通するスリットを形成することも可能である。しかしながら、主シート10を貫通するスリットを形成すると、散布された粉粒体がスリットを通り抜けることがあり、スリットを通り抜けた粉粒体は不織布シート14に保持されない。
【0106】
これに対し、実施例1のように主シート10の第1の主面10sから第2の主面10tの手前までの間にのみスリット16を形成すると、散布したすべての粉粒体11が不織布シート14に保持されるようにすること可能であり、不織布シート14に保持される粉粒体11の量を増やすことができる。また、主シート10の搬送が容易であるため、主シート10の搬送速度を上げて吸収体20の製造能力を引き上げことが容易である。
【0107】
スリットの形状は、直線に限定されない。例えば、刃を主シートの幅方向に揺動させると、曲線状のスリットを形成することができる。
【0108】
次に、実施例1の変形例1~12について説明する。以下では、同じ構成部分には同じ符号を用い、実施例1との相違点を主に説明する。
【0109】
<変形例1> 主シート10aを貫通するスリットを形成する変形例1について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0110】
図6は、変形例1の吸収体の製造装置2aの要部構成を示す略図である。
図7は、幅方向に切断した主シート10aの断面図である。
図6及び
図7(a)に示すように、主シート10aは不織布シート14のみで構成され、主シート10aの第1の主面10sと第2の主面10tとの両方が不織布シート14によって構成されている。主シート10aは、実施例1と略同様の構成で工具60が配置されているスリット形成装置6aを通過する。
【0111】
図6に示すように、実施例1と異なり、工具60は、工具60の片刃60kの先端60tが主シート10aの搬送経路の反対側に突出するように配置され、工具60の片刃60kが主シート10aの搬送経路を横断する。そのため、矢印10wで示す方向に搬送される主シート10aの不織布シート14に、
図7(a)に示すように、不織布シート14を貫通するスリット16が形成される。
【0112】
工具60の片刃60kの先端60tが突出している側には、主シート10aの搬送経路に隣接して一対の受けロール68a,68bが、主シート10aの第2の主面10tに接するように配置されている。工具60の先端60tは、一対の受けロール68a,68bの間に突出している。
【0113】
受けロール68a,68bを設けると、不織布シート14をしっかりと支持することができ、不織布シート14にスリット16を形成しやすく、好ましいが、受けロール68a,68bのない構成とすることも可能である。
【0114】
スリット形成装置6aより主シート10aの搬送方向下流側に、不織布シート14のみからなる主シート10aの第2の主面10tに支持シート12を重ねる導入ロール3が配置されている。また、導入ロール3より支持シート12の搬送方向上流側に、支持シート12の不織布シート14との貼り合わせ面に接着剤(例えば、ホットメルト)を塗布する接着剤塗布装置9cが設けられている。
【0115】
図7(b)に示すように不織布シート14と支持シート12を貼り合わせた後、実施例1と同様の工程で、吸収体を製造する。
【0116】
<変形例2> 丸刃61kを有する工具61を用いてスリットを形成する変形例2について、
図8を参照しながら説明する。
【0117】
図8は、変形例2の吸収体の製造装置2bの要部構成を示す略図である。
図8に示すように、製造装置2bのスリット形成装置6bは、矢印10yで示す方向に搬送される主シート10の第1の主面10s側に、円形に連続する刃である丸刃61kを有する工具61が配置され、主シート10の第2の主面10t側には、工具61に対向する受けロール68が配置されている。工具61及び受けロール68は、矢印61x,68xで示す方向に回転駆動されても、遊転するように構成されてもよい。
【0118】
工具61の丸刃61kは、受けロール68との間に所定の隙間を設けるように配置されている。主シート10は、工具61と受けロール68との間を通過することによって、連続するスリットが不織布シート14に形成される。
【0119】
なお、受けロール68を設けると、主シート10をしっかりと支持することができ、主シート10の不織布シート14にスリットを形成しやすく、好ましいが、受けロール68のない構成とすることも可能である。
【0120】
<変形例3> 不連続ないし間欠的にスリットを形成する変形例3について、
図9を参照しながら説明する。
【0121】
図9は、変形例3の吸収体の製造装置2cの要部構成を示す略図である。
図9に示すように、製造装置2cのスリット形成装置6cは、変形例2のスリット形成装置6bと略同様に構成されているが、変形例2と異なり、工具61aは、円周方向に隙間61mを設けて配置された円弧状の複数の刃61nを有している。
【0122】
工具61aと受けロール68との間を主シート10が通過することによって、主シート10の不織布シート14に、主シート10の搬送方向(長手方向)に互いに間隔を設けて隣り合う複数のスリットが形成される。
【0123】
なお、例えば、片刃や丸刃などの刃が、主シートの搬送経路への進入と退避を繰り返すように構成しても、不連続のスリットを形成することができる。
【0124】
<変形例4> 散布領域内にのみ切れ目17が形成されるように、不連続ないし間欠的にスリットを形成する変形例4について、
図10及び
図11を参照しながら説明する。
【0125】
図10は、主シート10を第1の主面10sに垂直に透視した透視面である。
図10において、鎖線は、粉粒体が散布される予定の散布領域15を示す。
図10に示すように、スリット16は、主シート10の不織布シート14の幅方向側縁14i,14jから離れている散布領域15内にのみ形成し、互いに隣り合う散布領域15の間の隙間15xには形成しない。
【0126】
この主シート10を用いて製造された連続体の吸収体を、互いに隣り合う散布領域15の間の隙間15xで切断すると、
図11に示す個片の吸収体20wを得ることができる。
【0127】
図11は、個片の吸収体20wを主シート10の第1の主面10sに垂直に透視した透視図である。
図11に示すように、スリット16は、個片の吸収体20wの端部20i,20jに達していない。
【0128】
スリット16を散布領域15内にのみ形成すると、製造中の後工程で、スリット16内に入り込んだ粉粒体がスリット16に沿って移動し、個片の吸収体20wの端部20i,20jからこぼれ落ちるおそれを低減することができる。個片の吸収体20wにおいて液体がスリット16に沿って移動するとき、液体は、散布領域15より外側の領域、すなわち粉粒体が散布されていない領域まで移動することがないので、スリット16に沿って移動した液体が確実に粉粒体に吸収される。
【0129】
<変形例5> 不連続ないし間欠的に形成する複数のスリットを、長さが異なるように形成する変形例5について、
図12を参照しながら説明する。
【0130】
図12は、
図10と同様に、主シート10を第1の主面10sに垂直に透視した透視面である。
図12において、鎖線は、粉粒体が散布される予定の散布領域15を示す。
図12に示すように、主シート10の不織布シート14の幅方向中央及びその周辺のスリット16を、主シート10の不織布シート14の幅方向側縁14i,14jに近いスリット16i,16jよりも長くする。液体が中央付近に排出されるので、長いスリット16によって液体を広がり易くすることができる。
【0131】
<変形例6> 深さの異なるスリットを形成する変形例6について、
図13を参照しながら説明する。
【0132】
図13は、幅方向に切断した主シート10の断面図である。
図13に示すように、主シート10の不織布シート14の嵩高構造14kに、複数のスリット16,16i,16jを形成し、中央のスリット16は、幅方向側縁14i,14jに近いスリット16i,16jより深く形成する。液体が中央に排出されるので、深いスリット16によって液体を広がり易くすることができる。
【0133】
<変形例7> スリットを、主シート10の第1の主面10sに対して斜め方向に形成する変形例7について、
図14を参照しながら説明する。
図14は、幅方向に切断した主シート10の断面図である。
【0134】
図14(a)では、主シート10の不織布シート14の嵩高構造14kに、第1の主面10sに対して傾斜しているスリット16mが形成されている。
【0135】
図14(b)では、主シート10の幅方向中央に、第1の主面10sに直交する方向にスリット16が形成され、その両側に、第2の主面10tに近づくほど、中央のスリット16から離れるように傾斜しているスリット16m,16nが形成されている。
【0136】
図14(c)では、主シート10の幅方向に、第2の主面10tに近づくほど幅方向側縁の一方10mに近づく第1のスリット16mと、第2の主面10tに近づくほど幅方向側縁の他方10nに近づく第2のスリット16nとが、幅方向に交互に形成されている。
【0137】
図14(d)では、
図14(a)と同様の斜め方向のスリット16mが多数形成されている。主シート10の第1の主面10sに垂直に透視すると、スリット16mは、主シート10の第1の主面10sの大部分(例えば、50%以上の面積)を占める。
【0138】
主シート10の第1の主面10sに対して斜め方向に形成されたスリット16m,16nは、シートの厚さ方向のスリット長を長くでき、粉粒体が不織布内へ入りやすく、液体の拡散が容易である。しかも、スリット16m,16nは幅方向に広がるので、粉粒体や液体がスリットスリット16m,16nに沿って幅方向に広がりやすく、吸収体の全体を有効に活用できる。
【0139】
<変形例8> 不織布シート14の幅方向両側に支持シート12がはみ出ている主シート10bを用いる変形例8について、
図15を参照しながら説明する。
【0140】
図15は、幅方向に切断した主シート10b及び吸収体20a,20bの断面図である。
図15(a)に示すように、主シート10bは、支持シート12の幅が不織布シート14の幅より大きく、支持シート12は、不織布シート14の両側にはみ出た突出部12p,12qを有する。主シート10bの主面10sは、不織布シート14と、支持シート12の突出部12p,12qとによって構成される。
【0141】
図15(b)に示すように、スリット16が形成され粉粒体11が散布された不織布シート14と、支持シート12の突出部12p,12qとに、支持シート12と同じ幅の被覆シート18を重ね、貼り合わせる。これによって、吸収体20aを製造することができる。
【0142】
あるいは、
図15(c)に示すように、スリット16が形成され粉粒体11が散布された不織布シート14に、不織布シート14と同じ幅の被覆シート18に重ねる。次いで、
図15(d)に示すように、支持シート12の突出部12p,12qを折り曲げて、被覆シート18に重ね、貼り合わせる。これによって、吸収体20bを製造することができる。
【0143】
<変形例9> 支持シート12も被覆シート18も折り曲げずに吸収体20cを製造する変形例9について、
図16を参照しながら説明する。
【0144】
図16は、幅方向に切断した吸収体20cの断面図である。
図16に示すように、主シート10の支持シート12及び不織布シート14は、幅が同じである。主シート10と同じ幅の被覆シート18を、スリット16が形成され粉粒体11が散布された不織布シート14に重ね、貼り合わせる。これによって、吸収体20cを製造することができる。
【0145】
<変形例10> 被覆シート18p,18q,18rを含む主シート10p,10q,10rを用いて吸収体20p,20q,20rを製造する3つの変形例10について、
図17~
図19を参照しながら説明する。
【0146】
図17は、幅方向に主シート10p及び吸収体20pを切断した断面図である。
図17(a)に示すように、主シート10pは、不織布シート14に被覆シート18pが貼り合わされている。被覆シート18pの幅は、不織布シート14の幅より大きく、被覆シート18pは、不織布シート14の幅方向一方側にはみ出た突出部18wを有する。主シート10pの第1の主面10sは不織布シート14で構成され、主シート10pの第2の主面10tは被覆シート18pで構成されている。
【0147】
図17(b)に示すように、スリット16が形成され粉粒体11が散布された不織布シート14に、被覆シート18pの突出部18wを
図17(a)に示した矢印の方向に折り曲げて重ね、さらに、折り曲げて、被覆シート18pの突出部18wの先端側を主シート10の第2の主面10tに重ね、貼り合わせる。これによって、吸収体20pを製造することができる。
【0148】
図18は、幅方向に主シート10q及び吸収体20qを切断した断面図である。
図18(a)に示すように、主シート10qは、被覆シート18qの幅が不織布シート14の幅より大きく、被覆シート18qは、不織布シート14の両側に略等しくはみ出た突出部18m,18nを有する。
【0149】
図18(b)に示すように、スリット16が形成され粉粒体11が散布された不織布シート14に、被覆シート18qの突出部18m,18nを
図18(a)に示した矢印の方向に折り曲げて重ね、貼り合わせる。これによって、吸収体20qを製造することができる。
【0150】
図19は、幅方向に主シート10r及び吸収体20rを切断した断面図である。
図19(a)に示すように、主シート10rは、被覆シート18rの幅が不織布シート14の幅より大きく、被覆シート18rは、不織布シート14の一方側に少しだけはみ出た突出部18uと、不織布シート14の他方側に大きくはみ出た突出部18vとを有する。
【0151】
図19(b)に示すように、スリット16が形成され粉粒体11が散布された不織布シート14と、被覆シート18rの一方の突出部18uとに、被覆シート18rの他方の突出部18vを
図19(a)に示した矢印の方向に折り曲げて重ね、貼り合わせる。これによって、吸収体20rを製造することができる。
【0152】
<変形例11> 主シート10の搬送中に、主シート10の不織布シートに嵩高構造14kを形成する変形例11について、
図20を参照しながら説明する。
【0153】
図20(a)は、吸収体の製造装置2dの要部構成を示す略図である。
図20(a)に示すように、吸収体の製造装置2dは、搬送装置4によって矢印10x,10yで示す方向に搬送される主シート10の搬送経路の第4の位置3dに隣接するように、起毛装置5が配置されている。第4の位置3dは、スリット形成装置6が隣接するように配置されている第1の位置3aより主シート10の搬送方向上流側である。
【0154】
起毛装置5は、主シート10の第1の主面10sに沿って主シート10の不織布シートの繊維を起毛させて、主シート10の第1の主面10sの少なくとも一部を構成する不織布シートに、嵩高構造14kを形成する。
【0155】
詳しくは、起毛装置5は、円周方向に複数の刃54を有する複数枚の回転刃52が、互いに隣り合う回転刃52の刃54の位置がずれるように、回転軸50に固定されたティラー56を備えている。起毛装置5は、各回転刃52の刃54の先端によって形成されるティラー56の円筒状の周面が主シート10の第1の主面10sに当接するように、配置されている。
【0156】
回転軸50は、回転刃52の刃54の先端の移動速度(以下、「ティラー56の周速度」という。)と、主シート10の第1の主面10sの移動速度(以下、「主シート10の搬送速度」という。)とに差が生じるように、例えば、矢印50xで示す方向に回転駆動される。これによって、主シート10に沿って主シート10と同じ方向に主シート10と異なる速度で移動する回転刃52の刃54が、主シート10の第1の主面10sを構成する不織布シートを引っ掻き、不織布シートの繊維を起毛させ、主シート10の第1の主面10s側を嵩高にする。すなわち、主シート10の不織布シートは、第1の主面10sに沿って起毛し、嵩高構造14kが形成される。
【0157】
つまり、起毛装置5は、搬送経路の第2の位置3b(
図1参照)より主シート10の搬送方向上流側の搬送経路の第4の位置3dにおいて、搬送装置4によって搬送中の主シート10の不織布シートに、主シート10の第1の主面10sの少なくとも一部を構成し粉粒体が入り込むための空隙を有する嵩高構造14kを形成する。これは、第5の工程である。
【0158】
起毛装置5を用いる第5の工程で、粉粒体11の保持に適した起毛状態の嵩高構造14kを形成することによって、不織布シートに保持される粉粒体11の量を増やすことができるので、通液性や液拡散性を向上させることが容易である。
【0159】
ティラー56と、主シート10の第1の主面10sを構成する不織布シートとの接し方は、
図20(a)の態様に限定されるものではなく、任意に選択することができる。例えば、主シート10を挟んでティラー56と反対側に受けロールを備える場合には、主シート10をティラー56の周面に対し接線方向から搬入し、ティラー56と受けロールとの間を通過させるように構成してもよい。
【0160】
一方、
図20(a)に示したように、主シート10をティラー56の周面の一部に巻きつける場合には、主シート10が搬送時の張力でティラー56に押し付けられるので、上記の受けロールを省略することができる。この場合、ティラー56の抱き角度θ、すなわち、主シート10がティラー56と接触している区間のティラー56の中心角θは、例えば30~180°程度の範囲内で、主シート10の材質や坪量、ティラー56の周速度などの起毛条件に応じて設定される。
【0161】
主シート10の搬送速度に対するティラー56の周速度は、通常、差が大きいほど主シート10の不織布シートが起毛されて嵩高となりやすいが、過剰に大きくすると主シート10にかかる負担が大きくなり、主シート10が変形したり切断したりするおそれがある。このため、主シート10の搬送速度に対するティラー56の周速度の比率は、用いる主シート10の材質、坪量、ティラー56の刃の形状、構造、抱き角度θ等に応じて、主シート10の不織布シートが適切な嵩高さとなるように、例えば50~90%の範囲内で設定される。
【0162】
例えば、坪量が150g/m2で厚さが4mm程度の主シート10を用いた場合、上記の抱き角度θを50~70°に設定し、ティラー56の周速度を、主シート10の搬送速度の70~90%に設定すると、主シート10の厚さが元の厚さの1.5~2.0倍程度に嵩高くなり、ティラー56の周速度を、主シート10の搬送速度の50~60%に設定すると、主シート10の厚さが元の厚さの2.5~3.5倍程度に嵩高くなる。
【0163】
上記のように嵩高となった主シート10に対し、前記第3の工程で粉粒体(SAP粒子)を散布すると、主シート10が嵩高であるほど、散布した粉粒体のうち、主シート10のの厚さ方向の中央部や下部へ入り込む粉粒体の割合が大きくなっている。
【0164】
なお、ティラー56の周速度が、主シート10の搬送速度より速くても、主シート10とティラー56とに速度差が生じるので、主シート10の不織布シートを起毛させて嵩高にすることが可能である。この場合には、回転刃52の刃54の鉤状部分の向きを、ティラー56の周速度が主シート10の搬送速度より遅い場合とは反対にする。この場合のティラー56の周速度は、用いる主シート10の材質、坪量、ティラー56の刃の形状、構造、抱き角度θ等に応じて、主シート10の不織布シートが適切な嵩高さとなるように、例えば、主シート10の搬送速度の130%以下の範囲内で設定される。
【0165】
図20(b)は、別の構成の吸収体の製造装置2eの要部構成を示す略図である。
図20(b)に示すように、吸収体の製造装置2eは、起毛装置5が隣接するように配置されている第4の位置3dは、スリット形成装置6が隣接するように配置されている第1の位置3aより主シート10の搬送方向下流側である。この場合、スリットが形成された後に、嵩高構造14kが形成される。
【0166】
さらに別の構成として、例えば、起毛装置5に、回転刃52とともに、変形例2のような丸刃61kを取り付け、嵩高構造14kの形成とスリットの形成を同時に行うように構成してもよい。この場合、嵩高構造を形成する第4の位置3dと、スリットを形成する第1の位置3aとは、同じ位置になる。
【0167】
いずれの構成においても、起毛装置5は、第2の位置3bより主シート10の搬送方向上流側の第4の位置3dに隣接するように配置される。
【0168】
<変形例12> 主シートのスリットを広げて粉粒体を散布する変形例12について、
図21~
図23を参照しながら説明する。
【0169】
図21(a)は、吸収体の製造装置2fの要部構成を示す略図である。
図21(a)に示すように、吸収体の製造装置2fが備える散布装置7aは、スリットが形成されている部分の主シート10の第2の主面10tを、略たる状のドラム80の外周面80sで支持することによって、搬送方向に垂直な断面において主シート10の第1の主面10s側を凸状に反らせてスリットを広げた状態で、粉粒体散布装置72から粉粒体を散布した後、案内ロール84で主シート10を平坦な状態に戻すように構成されている。
【0170】
ドラム80は、主シート10の矢印10kで示す方向の搬送と同期するように、矢印80kで示す方向に、回転中心線80Kを中心に回転する。ドラム80の外周面80sには、複数の不図示の吸引孔が形成され、矢印80rで示すようにドラム80の内部に向かってエアー吸引することによって、主シート10の第2の主面10tをドラム80の外周面80sに吸着保持するように構成されている。
【0171】
図21(b)は、
図21(a)の線X-Xに沿って切断した断面略図であり、ドラム80の断面の詳細な図示は省略されている。
図21(b)に示すように、ドラム80の外周面80sは、主シート10のスリット16に対応する位置で折れ曲がるように、テーパ状に構成されている。
【0172】
主シート10に形成されるスリット16は、1本でも、3本以上でも構わないが、例えば、主シート10に2本のスリット16が形成されている場合、ドラム80の外周面80sは、円筒状の中央領域80pと、中央領域80pの両側の円錐状の外側領域80q,80rとに区画される。外側領域80q,80rは、中央領域80p側が大径であり、中央領域80pとは反対側が小径である。ドラム80の外周面80sの中央領域80pは、主シート10のうち2本のスリット16の間の中央領域10pを支持し、ドラム80の外周面80sの外側領域80q,80rは、主シート10のうち中央領域10pの両側の外側領域10q,10rを支持する。これによって、主シート10は、スリット16に対応する位置で折れ曲がり、スリット16が広がる。
【0173】
図22は、
図21(b)において鎖線86で囲まれた部分に対応する主シート10の拡大断面図である。
図22(a)に示すように、主シート10は、スリット16に対応する位置で折れ曲がり、スリット16が広がる。すなわち、スリット16の切断面16s,16tの間が広がる。このようにスリット16が広がっている状態で粉粒体11が散布されると、
図22(b)に示すように、スリット16に粉粒体11が入りやすい。スリット16が広がっている状態で粉粒体11を散布すると、スリット16が広がっていない状態で粉粒体11を散布する場合よりも、スリット16に入る粉粒体11の量を増やし、スリット16から主シート10の不織布シート14の内部に入り込む粉粒体11の量を増やすことができる。
【0174】
図23は、
図21(b)と同様の断面略図である。
図23に示すように、ドラム80aの外周面80tがラウンド状に湾曲する構成でもよい。この場合も、主シート10の第2の主面10tがドラム80の外周面80tで支持されることによって、主シート10は、搬送方向に垂直な幅方向断面において、主シート10の第1の主面10s側が凸状に湾曲してスリット16が広がる。そのため、テーパ状の外周面80sのドラム80と同様に、スリット16に入る粉粒体の量を増やし、スリット16から主シート10の不織布シートの内部に入り込む粉粒体の量を増やすことができる。
【0175】
<まとめ> 以上に説明したように、本発明は、通液性や液拡散性の向上が容易である吸収体を製造することができる。
【0176】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0177】
例えば、実施例1及び変形例1~12の構成を、適宜に組み合わせた構成としてもよい。たとえば、変形例1における支持シート12を被覆シートに代えて、変形例10のように吸収体を製造してもよい。変形例5~7を適宜に組み合わせ、主シートの不織布シートの嵩高構造に、長さ、深さ、方向のうち少なくとも2つが異なる複数のスリットを形成してもよい。
【0178】
上記の散布装置、スリット形成装置、嵩高構造を形成する起毛装置のうち1以上の装置が、主シートの搬送方向に沿って複数配置されていてもよい。例えば、
図14(c)に示すように、傾斜角度が互いに異なるスリット16m,16nを形成する場合、一方の傾斜角度のスリット16mを形成するスリット形成装置と、他方の傾斜角度のスリット16nを形成する別のスリット形成装置とを、主シートの搬送方向に沿って並べて配置することで、傾斜角度が互いに異なるスリット16m,16nを容易に形成することができる。また、主シートの長手方向に沿ってスリットを形成するスリット形成装置と、主シートの幅方向に沿ってスリット形成する別のスリット形成装置とを、主シートの搬送方向に並べて配置することで、互いに交差したスリットを形成することができる。また、起毛装置を主シートの搬送方向に沿って複数配置することで、より嵩高の不織布を形成することができる。また、散布装置を主シートの搬送方向に沿って複数配置することで、粉粒体の散布量を多くすることができる。これら複数の装置は、互いに組み合わせてもよい。
【0179】
また、粉粒体は、吸引を併用する、あるいは、粉粒体を吹き付けるなど、適宜な方法で粉粒体を散布して、不織布シートの嵩高構造に保持されるようにすることが可能である。
【符号の説明】
【0180】
2,2a,2b,2c,2d,2e,2f 吸収体の製造装置
3a 第1の位置
3b 第2の位置
3c 第3の位置
3d 第4の位置
4 搬送装置
5 起毛装置
6,6a,6b,6c スリット形成装置
7,7a 散布装置
8 被覆装置
10,10a,10b,10p,10q,10r 主シート
10s 第1の主面
10t 第2の主面
11 粉粒体
14 不織布シート
14k 嵩高構造
15 散布領域
16,16i,16j,16m,16n スリット
17 切れ目
18,18p,18q,18r 被覆シート
20,20a,20b,20c,20p,20q,20r,20w 吸収体
60 工具
60k 片刃(刃)
61,61a 工具
61k 丸刃(刃)
61n 刃