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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】手術ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20221028BHJP
【FI】
A61B34/30
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019538296
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 CN2017091120
(87)【国際公開番号】W WO2018059039
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-05-24
(31)【優先権主張番号】201610860701.1
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519068560
【氏名又は名称】シャンハイ マイクロポート メドボット(グループ)カンパニー,リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,シュアイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チャンチュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ユユアン
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102973317(CN,A)
【文献】特開2005-329476(JP,A)
【文献】国際公開第2015/142955(WO,A1)
【文献】特表2015-530906(JP,A)
【文献】特表2008-528130(JP,A)
【文献】特開2016-120277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0209976(US,A1)
【文献】特表2015-524309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0125165(US,A1)
【文献】特開平08-215205(JP,A)
【文献】特表2000-505328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術ロボットシステムであって、モジュール及びマニピュレータを備え、前記モジュールは、取付ベース、該取付ベースに連結された支持構成部材、及び該支持構成部材に連結された方向付けプラットフォームを有し、前記マニピュレータは、前記モジュールの前記方向付けプラットフォームに連結されており、前記マニピュレータは、アクティブ遠隔運動中心マニピュレータであり、ロボットアーム及び該ロボットアームに連結された手術器具を備え、前記アクティブ遠隔運動中心マニピュレータは、前記手術器具の自由度を除き、前記手術器具を支持する前記ロボットアームが少なくとも4つの自由度の空間的構成を有し、前記手術器具をアルゴリズム制御を介して空間における所定の点を中心に動かすことを可能にし、
前記方向付けプラットフォームは、トップトレー部を備え、少なくとも1つの取付部は、前記マニピュレータを直接的又は間接的に連結するように前記トップトレー部に配置されており、
前記方向付けプラットフォームは、サスペンションアームをさらに備え、前記トップトレー部は前記サスペンションアームに固定されており、該サスペンションアームは、前記支持構成部材に回転可能に連結されている、手術ロボットシステム。
【請求項2】
前記支持構成部材は、前記取付ベースに固定された第1の支持部と、該第1の支持部に連結された第2の支持部とを備える、請求項1に記載の手術ロボットシステム。
【請求項3】
前記第2の支持部は、前記第1の支持部の延長方向に沿って可動である、請求項2に記載の手術ロボットシステム。
【請求項4】
前記第2の支持部は、前記第1の支持部に対して回転可能である、請求項2又は請求項3に記載の手術ロボットシステム。
【請求項5】
前記第2の支持部は、前記第1の支持部に連結された第1の支持ブランチ、該第1の支持ブランチに連結された第2の支持ブランチ、及び該第2の支持ブランチに連結された第3の支持ブランチを備え、前記第1の支持ブランチの延長方向は、前記第3の支持ブランチの延長方向に対して垂直である、請求項2に記載の手術ロボットシステム。
【請求項6】
前記第3の支持ブランチは前記第2の支持ブランチの延長方向に沿って可動であり、且つ/又は前記第1の支持ブランチは前記第1の支持部の延長方向に沿って可動である、請求項5に記載の手術ロボットシステム。
【請求項7】
前記方向付けプラットフォームは、前記支持構成部材に対して回転可能である、請求項1に記載の手術ロボットシステム。
【請求項8】
前記トップトレー部は、円弧状又は爪状である、請求項に記載の手術ロボットシステム。
【請求項9】
各取付部は、前記トップトレー部に対して回転可能である、請求項に記載の手術ロボットシステム。
【請求項10】
各取付部は、前記トップトレー部において可動である、請求項に記載の手術ロボットシステム。
【請求項11】
前記トップトレー部は、中央支持部及び複数の回転部材を備え、各回転部材には1つの取付部が配置されており、前記中央支持部は、隣接する前記回転部材に回転可能に連結されており、各回転部材は、対応する取付部を介して隣接する前記回転部材に回転可能に連結されている、請求項に記載の手術ロボットシステム。
【請求項12】
前記方向付けプラットフォームは、複数のベース延長部をさらに備え、各ベース延長部は、前記トップトレー部と第1の回転連結を形成しており、各ベース延長部は、前記マニピュレータと第2の回転連結を形成しており、前記第1の回転連結の軸線は、前記第2の回転連結の軸線に対して平行である、請求項に記載の手術ロボットシステム。
【請求項13】
前記ベース延長部は、該ベース延長部の長さを変化させるように構成された伸縮式可動継手を備える、請求項12に記載の手術ロボットシステム。
【請求項14】
前記サスペンションアームは、円弧状である、請求項に記載の手術ロボットシステム。
【請求項15】
前記ロボットアームは、肩部、該肩部に連結されたアーム支持部、該アーム支持部に連結された上側アーム部、該上側アーム部に連結された下側アーム部、及び該下側アーム部に連結された器具支持部を備え、該器具支持部は手術器具と連結されるように構成されている、請求項1に記載の手術ロボットシステム。
【請求項16】
前記アーム支持部は、前記肩部に枢動可能に連結されており、前記上側アーム部は、前記アーム支持部に回転可能に連結されており、前記下側アーム部は、前記上側アーム部に枢動可能に連結されており、前記器具支持部は、前記下側アーム部に枢動可能に連結されている、請求項15に記載の手術ロボットシステム。
【請求項17】
前記取付ベースには、キャスタ部、固定支持部及び/又は運動制御部が取り付けられている、請求項1に記載の手術ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の技術分野に関し、特に手術ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲手術とは、腹腔鏡、胸腔鏡及びその他の内視鏡を用いて人体において手術を行う新たな技術をいう。低侵襲手術は、最小限の創傷、軽い苦痛及びより少ない出血という利点を有し、これらの利点は、患者の回復時間及び不適合を有効に縮減することができ、したがって、従来の手術の幾つかの有害な副作用を回避する。初期の低侵襲手術は、以下のような欠点を有する。すなわち、医者にとっての手術器具の自由度が、体表面における開口の制限により比較的減じられており、且つ操作方向も所望の方向とは反対であることがあり、従って、医者が手術を行う困難性を増大させている。その結果、医者は、長期間にわたる関連する訓練を受けた後に初めて円滑に手術を行うことができるようになる。
【0003】
科学技術の発展、特にロボット技術の発展により、初期の低侵襲手術における問題に対するより良い解決策が見いだされており、これにより、低侵襲手術ロボットシステムが研究開発されてきている。低侵襲手術ロボットシステムにより、医者は、サージョンコントロールコンソールにおける二次元又は三次元ディスプレイ装置を介して患者の身体の組織特徴を観察することができ、手術を行うために患者サイドカートにおけるマニピュレータ及び手術器具を遠隔で操作することができる。これにより、医者は、従来の開放手術と同じような感覚で低侵襲手術を行う。その一方、低侵襲手術ロボットシステムは、医者の操作困難性を低減し、手術の効率及び安全性を向上させ且つ遠隔手術の実現における飛躍的な進歩を提供する。手術ロボットシステムの優位性を考慮して、世界中の国々が、関連分野における研究を積極的に行っており、幾つかの製品及びプロトタイプを製造してきた。
【0004】
低侵襲手術ロボット装置及び/又はシステムの研究により、医者は、最小限の創傷ならびに従来の開放手術と同じ視角及び操作体験で操作することができるのみならず、患者の位置から離れて又は病室の患者の隣で、又は遠隔制御下で操作することもできる。
【0005】
遠隔手術では、外科医は、器具を直接保持し且つ移動させるのではなく、手術器具の移動を操作するためにサーボ機構などの幾つかの形式の遠隔制御装置を使用する。遠隔手術システムでは、外科医は、外科医の制御卓のマスターマニピュレータを操作することでサーボ機構の手術器具の移動を制御し、これによって患者への手術操作を行う。さらに、このタイプの手術手順を達成するために、手術器具を支持し且つ手術器具を動かすための支持マニピュレータがシステム/装置に設けられていなければならない。さらに、手術器具の空間的配置は、手術器具の調節の簡便性及び可動性、患者サイドカートのコンパクト性、作業領域における手術器具の支持マニピュレータの間の衝突回避性に著しく影響する。同様の低侵襲ロボット装置/システムステントが、米国特許第6246200号明細書及び米国特許第6788018号明細書に提案されている。従来技術において提案された解決手段は、効率的、有益且つ簡便であることが分かっているが、幾つかの所望の位置に到達する場合に動きの妨害又は困難性という幾つかの問題が依然として存在する。したがって、低侵襲手術ロボットシステムの操作の安全性、簡便性、快適性及び機能性を向上させるためのさらなる改良が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、手術ロボットシステムであって、マニピュレータが、より簡便に調節及び位置決めされ且つ移動中により大きな作業領域を有することを可能にし、異なるマニピュレータ同士間の衝突をより有効に回避又は抑制し、且つ低侵襲手術ロボットシステムの操作の安全性、簡便性、快適性又は機能性を向上させることができるように、異なる手術条件の要求にもより適している、手術ロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に基づいて、本発明は、手術ロボットシステムであって、モジュール及びマニピュレータを備え、モジュールは、取付ベース、取付ベースに連結された支持構成部材、及び支持構成部材に連結された方向付けプラットフォームを有し、マニピュレータは、モジュールの方向付けプラットフォームに連結されており、マニピュレータは、ロボットアーム及びロボットアームに連結された手術器具を有し、マニピュレータは、アクティブ遠隔運動中心マニピュレータである、手術ロボットシステムを提供する。
【0008】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、支持構成部材は、取付ベースに固定された第1の支持部と、第1の支持部に連結された第2の支持部とを備える。
【0009】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、第2の支持部は、第1の支持部の延長方向に沿って可動である。
【0010】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、第2の支持部は、第1の支持部に対して回転可能である。
【0011】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、第2の支持部は、第1の支持部に連結された第1の支持ブランチ、第1の支持ブランチに連結された第2の支持ブランチ、及び第2の支持ブランチに連結された第3の支持ブランチを備え、第1の支持ブランチの延長方向は、第3の支持ブランチの延長方向に対して垂直である。
【0012】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、第3の支持ブランチは第2の支持ブランチの延長方向に沿って可動であり、且つ/又は第1の支持ブランチは第1の支持部の延長方向に沿って可動である。
【0013】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、方向付けプラットフォームは、支持構成部材に対して回転可能である。
【0014】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、方向付けプラットフォームは、トップトレー部を備え、少なくとも1つの取付部は、マニピュレータを直接的又は間接的に連結するようにトップトレー部に配置されている。
【0015】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、トップトレー部は円弧状又は爪状である。
【0016】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、各取付部は、トップトレー部に対して回転可能である。
【0017】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、各取付部は、トップトレー部において可動である。
【0018】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、トップトレー部は、中央支持部及び複数の回転部材を備え、各回転部材には1つの取付部が配置されており、中央支持部は、隣接する回転部材に回転可能に連結されており、各回転部材は、対応する取付部を介して隣接する回転部材に回転可能に連結されている。
【0019】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、方向付けプラットフォームは、複数のベース延長部をさらに備え、各ベース延長部は、トップトレー部と第1の回転連結を形成しており、各ベース延長部は、マニピュレータと第2の回転連結を形成しており、第1の回転連結の軸線は、第2の回転連結の軸線に対して平行である。
【0020】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、ベース延長部は、ベース延長部の長さを変化させるように構成された伸縮式可動継手を備える。
【0021】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、方向付けプラットフォームは、サスペンションアームをさらに備え、トップトレー部はサスペンションアームに固定されており、サスペンションアームは、支持構成部材に回転可能に連結されている。
【0022】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、サスペンションアームは、円弧状である。
【0023】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、ロボットアームは、肩部、肩部に連結されたアーム支持部、アーム支持部に連結された上側アーム部、上側アーム部に連結された下側アーム部、及び下側アーム部に連結された器具支持部を備え、器具支持部は手術器具と連結されるように構成されている。
【0024】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、アーム支持部は、肩部に枢動可能に連結されており、上側アーム部は、アーム支持部に回転可能に連結されており、下側アーム部は、上側アーム部に枢動可能に連結されており、器具支持部は、下側アーム部に枢動可能に連結されている。
【0025】
選択的に、手術ロボットシステムにおいて、取付ベースには、キャスタ部、固定支持部及び/又は運動制御部が取り付けられている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によって提供される手術ロボットシステムにおいて、モジュールは、構成が単純であり且つサイズが小さい。最適化されたモジュール及び最適化されたマニピュレータにより、マニピュレータの調節をより簡便に完了することができ、マニピュレータの可動領域を拡大することができ、各マニピュレータの移動中の衝突の可能性を低減及び/又は抑制することができ、これにより、低侵襲手術ロボットシステムの安全性、簡便性、快適性又は機能性が向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る手術ロボットシステムの概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る取付ベース及び支持構成部材の概略構成図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るマニピュレータの概略構成図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る他の方向付けプラットフォームの概略構成図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る取付ベース及び支持構成部材の概略構成図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る取付ベース及び支持構成部材の概略構成図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る他の方向付けプラットフォームの概略構成図である。
図10】本発明の第5実施形態に係る方向付けプラットフォーム及びマニピュレータの概略構成図である。
図11】本発明の第5実施形態に係る他の方向付けプラットフォーム及びマニピュレータの概略構成図である。
図12】本発明の第6実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。
図13】本発明の第6実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。
図14】本発明の第7実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。
図15】本発明の第7実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によって提案される手術ロボットシステムを、添付の図面及び特定の実施形態を参照しながら以下でさらに詳細に説明する。本発明の利点及び特徴は、以下の説明及び添付の請求項から明らかになるであろう。図面は、本発明の実施形態の簡便且つ明示的な説明を促進するという唯一の目的のために、非常に単純化された形式であり且つ必ずしも実寸で示されていない。特に、図面は、異なる強調のために示されており、しばしば異なる比率を採用した。
【0029】
本発明の中核的概念は、モジュール及びマニピュレータを備える手術ロボットシステムを提供することである。モジュールは、取付ベース、取付ベースに連結された支持構成部材、及び支持構成部材に連結された方向付けプラットフォームを備える。マニピュレータは、少なくとも2つの自由度を有するモジュールにおける方向付けプラットフォームに連結されている。従って、マニピュレータは、異なる位置において手術操作に適応させることができ、これにより、低侵襲手術ロボットシステムの操作の安全性、簡便性、快適性又は機能性を向上させている。
【0030】
具体的に、手術ロボットシステムの以下の例を参照されたい。手術ロボットシステムの以下の例では、モジュールの調節可能な支持構成部材、モジュールの調節可能な方向付けプラットフォーム及び調節可能なマニピュレータがそれぞれ、前記目的を達成することを可能にし、これにより、低侵襲手術ロボットシステムの操作の安全性、簡便性、快適性又は機能性を向上させる。
【0031】
[第1実施形態]
図1から図4を参照すると、図1は、本発明の第1実施形態に係る手術ロボットシステムの概略構成図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る取付ベース及び支持構成部材の概略構成図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。図4は、本発明の第1実施形態に係るマニピュレータの概略構成図である。
【0032】
図1から図4に示したように、本発明の第1実施形態において、手術ロボットシステム1は、モジュール及びマニピュレータ13を備える。モジュールは、取付ベース10、取付ベース10に連結された支持構成部材11、及び支持構成部材11に連結された方向付けプラットフォーム12を備え、方向付けプラットフォーム12はマニピュレータ13に連結されている。
【0033】
具体的には、支持構成部材11は、取付ベース10に固定された第1の支持部110、及び第1の支持部110に連結された第2の支持部111を備え、第2の支持部111は、第1の支持部110の延長方向に沿って可動であり、すなわち、支持構成部材11は、高さに関して可変であり、1つの自由度を有する。ここでは、第2の支持部111は第1の支持部110の延長方向に沿って移動することができることにより、マニピュレータ13と取付ベース10との相対的な高さを大まかに調節することができる。
【0034】
さらに図1及び図2を参照すると、第2の支持部111は、第1の支持部110に連結された第1の支持ブランチ1110、第1の支持ブランチ1110に連結された第2の支持ブランチ1111、及び第2の支持ブランチ1111に連結された第3の支持ブランチ1112をさらに備え、第1の支持ブランチ1110の延長方向は、第3の支持ブランチ1112の延長方向に対して垂直である。さらに、第1の支持ブランチ1110は、第1の支持部110の延長方向に沿って移動することができ、第2の支持ブランチ1111と第1の支持ブランチ1110との間の角度は90°であり、第3の支持ブランチ1112は、第2の支持ブランチ1111の延長方向に沿って移動することができ、すなわち、第2の支持部111は、長さに関して可変であり、1つの自由度を有する。従って、第2の支持ブランチ1111の延長方向に沿った、マニピュレータ13と取付ベース10との相対的な位置は、大まかに調節することができる。
【0035】
さらに図1及び図3を参照すると、本発明の実施形態において、方向付けプラットフォーム12は支持構成部材11に回転可能に連結されており、1つの自由度を形成している。具体的には、方向付けプラットフォーム12は、トップトレー部120を備えており、トップトレー部120には、マニピュレータ13に連結するように構成された取付部121が少なくとも1つ配置されている。本発明の実施形態において、複数の取付部121が設けられており、複数の取付部121は、トップトレー部120の上面に配置されている。本発明のその他の実施形態において、複数の取付部121が、トップトレー部120の下面に配置されてもよく、詳細については図5を参照されたい。複数の取付部121を介して複数のマニピュレータ13を同時に取り付けることができ、且つマニピュレータ13はトップトレー部120に回転可能に連結されており、これによって、水平面におけるマニピュレータ13の作業領域が増大する。
【0036】
取付部121とトップトレー部120との間の連結形式、及びマニピュレータ13と取付部121との間の連結形式は様々であり、本発明の実施形態はそれに限定されない。例えば、取付部121はトップトレー部120に回転可能に連結され、マニピュレータ13は取付部121に固定して連結され、これにより、マニピュレータ13とトップトレー部120との間の回転可能な連結を形成することができる。別の例では、取付部121はトップトレー部120に固定して連結され、マニピュレータ13は取付部121に回転可能に連結され、これにより、マニピュレータ13とトップトレー部120との間の回転可能な連結が形成される。又は、取付部121はトップトレー部120に回転可能に連結され、マニピュレータ13も取付部121に回転可能に連結され、これにより、マニピュレータ13とトップトレー部120との間の回転可能な連結を形成することもできる。
【0037】
さらに、方向付けプラットフォーム12は、サスペンションアーム122をさらに備え、トップトレー部120はサスペンションアーム122に固定されており、サスペンションアーム122は、支持構成部材11に回転可能に連結されている。好ましくは、サスペンションアーム122及びトップトレー部120はともに円弧状であり、円弧状構成によって手術ロボットシステム1の構造をよりコンパクトにすることができ、且つマニピュレータ13により大きな操作空間を提供する。
【0038】
さらに図1及び図4を参照すると、本発明において、マニピュレータ13は、アクティブ遠隔運動中心マニピュレータであり、ロボットアーム及びロボットアームに連結された手術器具を備える。アクティブ遠隔運動中心マニピュレータとは、手術器具の自由度を除き、手術器具を支持するロボットアームが少なくとも4つの自由度の空間的構成を有し、これにより、手術器具がアルゴリズム制御を介して空間における所定の点を中心に動くことを可能にするものであり、この点がアクティブ遠隔運動中心点である。本発明の実施形態において、マニピュレータ13は、肩部130、肩部130に連結されたアーム支持部131、アーム支持部131に連結された上側アーム部132、上側アーム部132に連結された下側アーム部133、下側アーム部133に連結された器具支持部134、及び器具支持部134に連結された手術器具135を備える。
【0039】
好ましくは、アーム支持部131は、肩部130に対して揺動可能であり、上側アーム部132は、アーム支持部131に対して軸方向で回転可能である。下側アーム部133は、上側アーム部132に対して揺動可能であり、器具支持部134は、下側アーム部133に対して揺動可能である。より好ましくは、手術器具135は、回転運動を行うことができる。これにより、マニピュレータ13は、4つ以上の自由度を有し、これにより、アクティブ遠隔運動中心マニピュレータのための構成ベースを提供している。
【0040】
さらに、取付ベース10には、手術ロボットシステム1が自由に移動することができるようにキャスタ部が設けられてもよい。或いは、取付ベース10には、手術ロボットシステム1が制御された条件下で移動することができるように、運動制御部が取り付けられてもよい。或いは、取付ベース10には、水平固定可能支持部が取り付けられており、手術ロボットシステム1が、上記水平固定可能支持部を水平に固定及び支持することができるようになっている。
【0041】
要するに、本発明の第1実施形態において提供された手術ロボットシステム1において、モジュールは少なくとも3つの自由度を有し、少なくとも3つの自由度はマニピュレータ13に複数の方向での大まかな調節を提供し、マニピュレータの調節を簡便に完了させ且つマニピュレータの可動領域を拡張することができ、これにより、低侵襲手術ロボットシステムの安全性、簡便性、快適性又は機能性を向上させる。
【0042】
[第2実施形態]
図6を参照すると、本発明の第2実施形態に係る取付ベース及び支持構成部材の概略構成図が示されている。図6に示したように、本発明の実施形態において、支持構成部材21は、取付ベース20に固定された第1の支持部210、及び第1の支持部210に連結された第2の支持部211を備え、第2の支持部211は、第1の支持部210の延長方向に沿って可動である。さらに、第2の支持部211は、第1の支持部210に連結された第1の支持ブランチ2110、第1の支持ブランチ2110に連結された第2の支持ブランチ2111、及び第2の支持ブランチ2111に連結された第3の支持ブランチ2112を備え、第1の支持ブランチ2110の延長方向は、第3の支持ブランチ2112の延長方向に対して垂直である。さらに、第1の支持ブランチ2110は、第1の支持部210の延長方向に沿って可動である。好ましくは、第2の支持ブランチ2111と第1の支持ブランチ2110との間の角度は90°であり、第3の支持ブランチ2112は、第2の支持ブランチ2111の延長方向に沿って可動である。
【0043】
本発明の実施形態において、第2の支持部211は、第1の支持部210の延長方向に沿って移動する他に、第1の支持部210に対して移動することもできる。さらに、第1の支持ブランチ2110を、第1の支持部210に回転可能に連結することができる。すなわち、本発明の第2実施形態は、第2の支持部211が第1の支持部210にさらに回転可能に連結されているという点で第1実施形態と異なる。すなわち、モジュールには、1つの自由度が加えられており、少なくとも4つの自由度を有する。これによって、少なくとも4つの自由度は、マニピュレータの調節の簡便性を向上させ且つマニピュレータの可動領域を拡張する。
【0044】
第2実施形態において説明されていない他の部分は、対応する第1実施形態又はその他実施形態が参照されてもよく、第2実施形態において再び説明しない。
【0045】
[第3実施形態]
図7を参照すると、本発明の第3実施形態に係る取付ベース及び支持構成部材の概略構成図が示されている。図7に示したように、本発明の実施形態において、支持構成部材31は、取付ベース30に固定された第1の支持部310と、第1の支持部310に連結された第2の支持部311とを備える。さらに、第2の支持部311は、第1の支持部310に連結された第1の支持ブランチ3110、第1の支持ブランチ3110に固定して連結された第2の支持ブランチ3111、及び第2の支持ブランチ3111に固定して連結された第3の支持ブランチ3112を備え、第1の支持ブランチ3110の延長方向は、第3の支持ブランチ3112の延長方向に対して垂直である。好ましくは、第2の支持ブランチ3111と第1の支持ブランチ3110との間の角度は90°より大きく且つ180°より小さく、第3の支持ブランチ3112と第2の支持ブランチ3111との間の角度は、90°より大きく且つ180°より小さい。すなわち、このような配置により、第1の支持ブランチ3110、第2の支持ブランチ3111及び第3の支持ブランチ3112は、円弧状構成を形成しており、これにより、手術ロボットシステムの構成はよりコンパクトになる。この実施形態において、モジュールは、2つの自由度のみを有する。
【0046】
第3実施形態において説明されていない他の部分は、対応する他の実施形態が参照されてもよく、第3実施形態において再び説明しない。
【0047】
[第4実施形態]
図8を参照すると、本発明の第4実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図が示されている。図8に示したように、本発明の実施形態において、方向付けプラットフォーム42はトップトレー部420を有し、複数の取付部421は、トップトレー部420に配置されている。本発明の実施形態では、方向付けプラットフォーム42は爪状である。すなわち、トップトレー部420は、パーム及びフィンガを有し、パームは、支持構成部材に回転可能に連結されており、取付部421は、フィンガの上面に配置されている。方向付けプラットフォーム42は、取付部421を介してマニピュレータに連結されている。さらに、取付部421は、フィンガのうちの1つの上面に配置されている。本発明のその他の実施形態において、取付部421は、フィンガの下面に配置されてもよく、すなわち、取付部421は、トップトレー部420の下面に配置され、詳細については図9を参照されたい。複数の取付部421を設けることで、複数のマニピュレータを同時に取り付けることができ、これにより、複雑な手術操作を行うことが容易になる。
【0048】
第4実施形態において説明されていない他の部分は、対応する他の実施形態が参照されてもよく、第4実施形態において再び説明しない。
【0049】
[第5実施形態]
図10を参照すると、本発明の第5実施形態に係る方向付けプラットフォーム及びマニピュレータの概略構成図が示されている。図10に示したように、方向付けプラットフォーム52はトップトレー部520を有し、トップトレー部520には、少なくとも1つの取付部(図10には示されていない)が配置されている。本発明の実施形態において、方向付けプラットフォーム52は、さらに、複数のベース延長部522を備え、各ベース延長部522が1つの取付部に連結されている。ここで、ベース延長部522は、トップトレー部520に対して回転することができる。ベース延長部522とトップトレー部520との相対的な回転は、ベース延長部522と取付部との間の回転連結を介して又は取付部とトップトレー部520との間の回転連結を介して実現することができる。好ましくは、ベース延長部522は、円弧状の構成である。
【0050】
さらに、マニピュレータ53は、ベース延長部522を介して取付部に連結されている。具体的には、1つのマニピュレータ53が1つのベース延長部522に連結されており(好ましくは、回転可能な連結)、ベース延長部522(1つのマニピュレータ53に連結されている)は、取付部に連結されている。
【0051】
本発明の実施形態では、第1の回転可能な連結がベース延長部522とトップトレー部520との間に形成され、第2の回転可能な連結がマニピュレータ53とベース延長部522との間に形成された。第1の回転可能な連結の軸線は、第2の回転可能な連結の軸線に対して平行である。好ましくは、第1の回転可能な連結の軸線は、第2の回転可能な連結の軸線と一致している。
【0052】
さらに、図11に示したように、ベース延長部522は、伸縮式可動継手5221を備え、伸縮式可動継手5221は、ベース延長部522の軸方向長さを変化させるためにベース延長部522の軸方向に沿って伸長又は収縮することができる。伸縮式可動継手5221は、マニピュレータ53(ここでは、アクティブ遠隔運動中心マニピュレータ)をトップトレー部520から離反させたりトップトレー部520に接近させたりするように駆動することができる。
【0053】
好ましくは(対応して図1を参照すると)、支持構成部材に対して回転する方向付けプラットフォーム52の回転軸は、トップトレー部520に対して回転する各ベース延長部522の回転軸に対して平行である。また、2つの回転軸の間の距離は、手術ロボットシステムの要求に従って設計することができる。
【0054】
第5実施形態において説明されていない他の部分は、対応する他の実施形態が参照されてもよく、第5実施形態において再び説明しない。
【0055】
[第6実施形態]
図12及び図13を参照すると、図12は、本発明の第6実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図であり、図13は、本発明の第6実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。図12及び図13に示したように、本発明の実施形態において、方向付けプラットフォーム62はトップトレー部620を有し、少なくとも1つの取付部621は、トップトレー部620に配置されている。トップトレー部620を、複数の取付部621を介して複数のマニピュレータに連結することができ、これにより、複雑な手術操作を行うことが容易になる。さらに、トップトレー部620は、中央支持部6200及び複数の回転部材6201を備え、各回転部材6201には1つの取付部621が配置されており、各回転部材6201は、隣接する中央支持部6200又は他の回転部材6201に対して回転することができる。さらに、2つの回転部材6201が隣接しているとき、中央支持部6200から遠い方の回転部材は、中央支持部6200に近い方の回転部材に配置された取付部621を介して、中央支持部6200に近い方の回転部材6201に回転可能に連結されている。取付部621は、回転部材6201の回転を介して回転させられ、したがって、マニピュレータの間の位置関係は、マニピュレータがより柔軟に調節されるように変化させられる。好ましくは、ブレーキエレメントが各回転部材6201の回転継手に取り付けられており、これにより、各回転部材6201が、ある位置へ移動した後に一定の位置及び高い継手剛性を維持することができることが保証される。
【0056】
第6実施形態において説明されていない他の部分は、対応する他の実施形態が参照されてもよく、第6実施形態において再び説明しない。
【0057】
[第7実施形態]
図14及び図15を参照すると、図14は、本発明の第7実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図であり、図15は、本発明の第7実施形態に係る方向付けプラットフォームの概略構成図である。図14及び図15に示したように、本発明の実施形態において、方向付けプラットフォーム72はトップトレー部720を有し、少なくとも1つの取付部721は、トップトレー部720に配置されている。複数のマニピュレータを、取付部721を介してトップトレー部720に同時に取り付けることができ、これにより、複雑な手術操作を行うことが容易になる。さらに、トップトレー部720における各取付部721の位置を変更することができる。本発明の実施形態において、複数の移動スロットがトップトレー部720に形成されており、各取付部721は、移動スロット内に配置されており、各取付部721は、移動スロット内で移動することによってその位置を変化させる。さらに、マニピュレータとトップトレー部720との間の回転連結は、移動スロットに配置された取付部721によって形成されている。これにより、マニピュレータの間の相対位置及び身振りの変化を得ることができ、これは、マニピュレータの調節をより簡便にする。さらに、方向付けプラットフォーム72は、サスペンションアーム722をさらに備え、トップトレー部720はサスペンションアーム722に固定されており、サスペンションアーム722は、支持構成部材に対して回転可能である。本発明の実施形態では、サスペンションアーム722及びトップトレー部720の双方が円弧状であり、円弧状構成は、手術ロボットシステムに、よりコンパクトな構成、マニピュレータのためのより大きな操作空間及びマニピュレータのより柔軟な調節を提供することができる。
【0058】
第7実施形態において説明されていない他の部分は、対応する他の実施形態が参照されてもよく、第7実施形態において再び説明しない。
【0059】
上記を考慮して、本発明の実施形態において提供された手術ロボットシステムにおいて、モジュールは、構成が単純であり且つサイズが小さい。最適化されたモジュール及びマニピュレータにより、マニピュレータの調節をより簡便に完了することができ、マニピュレータの可動領域を拡大することができ、各マニピュレータの移動中の衝突の可能性を低減及び/又は抑制することができ、これにより、低侵襲手術ロボットシステムの安全性、簡便性、快適性又は機能性が向上させられる。
【0060】
上記の説明は、本発明の好適な実施形態の説明でしかなく、本発明の範囲を限定することを意図していない。上記の開示に従って当業者によって行われるあらゆる変更及び改良は全て、添付の請求項の保護範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15