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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】化粧料容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
A45D33/00 650Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019539335
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2018030298
(87)【国際公開番号】W WO2019044495
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2017165465
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 健二
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-290119(JP,A)
【文献】特開2017-071401(JP,A)
【文献】特開2001-275742(JP,A)
【文献】特開2013-067399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口(11)を備えた容器体(1)と、該容器体(1)の内側において容器体(1)との間に化粧料を収納可能な空間を形成するように装着された中皿(2)と、該中皿(2)の内側において中皿(2)と二重構造になるとともに中皿(2)に対して所定の範囲で回動自在に装着され、その内部には塗布体(5)を収納可能な中栓(3)と、該中栓(3)の開口(31)を封止可能な蓋体(4)とを備え、前記中皿(2)および前記中栓(3)の本体(22、32)の一部の曲面上にはそれぞれ化粧料通過孔(24、35)が設けられ、前記中栓(3)の回動に伴い該化粧料通過孔(24、35)の相対的な位置が変化することで化粧料通過孔(24)の開閉がなされ、前記中皿(2)の化粧料通過孔(24)には伸縮性を有するメッシュ(25)が貼設され、該メッシュ(25)は前記中栓(3)の回動時における化粧料通過孔(35)の開口縁(351)の軌道よりも内側に入り込んだ位置で保持されている化粧料容器。
【請求項2】
前記中皿(2)の内周面にはガイド溝(232)が設けられ、前記中栓(3)の本体の外周面には該ガイド溝(232)に挿入可能な凸部(321)が設けられ、該凸部(321)はガイド溝(232)の範囲で移動可能に形成され、前記中栓(3)の回動角度は、該凸部(321)の移動可能な範囲により規制されることを特徴とする請求項1に記載の化粧料容器。
【請求項3】
前記中栓(3)は、その本体(32)の上端より外側へ突出するフランジ(33)の上面に係止突起(331)を備え、また、前記蓋体(4)は、その天壁(41)の裏面に該係止突起(331)に係止可能な係止突起(411)を備え、それらの係止突起(331、411)は蓋体(4)の開閉時に互いに係止するとともに、開閉時に一定以上の力が加わることによりその係止が解除される高さ・形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料容器。
【請求項4】
前記塗布体(5)は軸部(52)と該軸部(52)の一端に設けられた塗布部(51)とからなり、前記中栓(3)は、該塗布部(51)をその内部に収納可能に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化粧料容器。
【請求項5】
前記蓋体(4)は、前記中栓(3)のフランジ(33)の外周縁より垂下する周壁(34)の外周面に設けられたネジ部341に螺着可能なネジ部(421)を備え、その天面(41)から上方へ筒状部(43)が立設し、該筒状部(43)内には塗布体(5)の軸部(52)を収納可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧料容器。
【請求項6】
前記化粧料通過孔(24、35)は、前記中皿(2)および前記中栓(3)の略球状に形成された本体(22、32)の一部にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化粧料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料容器に関し、更に詳細には、未使用時に容器内に収納された塗布体に化粧料が付着することを防ぐとともに、化粧料塗布量のコントロールが容易であり、さらに化粧料通過孔に貼設されたメッシュの目詰まりを防ぐ化粧料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末化粧料容器といえば、ジャー容器等の平たい有底皿型の容器で、充填された化粧料の上面を、孔を有する平たい落とし蓋形式の中蓋で覆った構造のものや、容器開口部に伸縮性のネットを中蓋として貼設した構造のものがあり、孔やネットを介して中蓋の上に出てきた化粧料を円盤状のパフを使って皮膚等に塗布することが一般的であった。
【0003】
このような粉末化粧料容器では、特に使用し始めの頃はパフ等の塗布体に化粧料がつき過ぎ、容器の外面や手、衣服等にこぼれたり、飛散してこれらを汚しがちであった。また、反対に繰り返し使用するうちには、化粧料を中蓋の上から塗布体で何度も押さえつけて化粧料が次第にケーキング(固化)し、化粧料が塗布体に取れにくくなって最後まで使えなくなったり、粉末化粧料に期待される軽いタッチの使用感が得がたくなることがあり、このような欠点のない新しい粉末化粧料容器が求められていた。
【0004】
そこで本出願人は、粉末化粧料容器の改良について種々検討を行っていたところ、容器体中に筒体を設置し、該筒体には粉末化粧料を通過可能とした化粧料通過孔を設けるとともに、筒体内には塗布体が収納できる粉末化粧料容器を開発した(特許文献1)。
【0005】
かかる化粧料容器は、容器体内の粉末化粧料を必要に応じて化粧料通過孔を介して筒体内に取り込んで塗布体に付着させるため、最後まで化粧料がケーキングすることなく、軽いタッチで粉末化粧料を塗布できる点において優れた効果を奏するものであるが、以下のような問題も有していた。
【0006】
すなわち、この化粧料容器において、容器体に装着される筒体の化粧料通過孔は常に開いた状態であり、不使用時であっても容器体内の粉末化粧料が筒体内に入り込むおそれがあった。
【0007】
このため、不使用時に筒体内に入り込んだ化粧料が塗布体に付着し、その結果、使用時に必要以上の化粧料が塗布体に付着してしまい、化粧料塗布量のコントロールが困難な場合があった。
【0008】
また、粉末化粧料は仕上げ用にリキッドファンデーション等を塗布した上から使用することが多く、使用中に塗布体に顔面上の化粧料が移ることがあり、そのまま筒体内に収納すると塗布体に付着していた化粧料が通過孔に貼付されたメッシュに移り、メッシュ上に付着して目詰まりを起こすことがあった。その結果、化粧料の通過を阻害して筒体内に取り入れることができなくなり、最後まで使えなくなったり、粉末化粧料に期待される軽いタッチの使用感が得がたくなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-290119
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、従来の粉末化粧料容器のかかる欠点を克服し、最後まで軽いタッチで粉末化粧料を塗布できるとともに、不使用時に化粧料が塗布体に付着することを防いで化粧料塗布量のコントロールが容易であり、さらに、化粧料通過孔のメッシュに化粧料が付着することによる目詰まりを防ぐことができる化粧料容器の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、開口を備えた容器体と、該容器体の内側において容器体との間に化粧料を収納可能な空間を形成するように装着された中皿と、該中皿の内側において中皿と二重構造になるとともに中皿に対して所定の範囲で回動自在に装着され、その内部には塗布体を収納可能な中栓と、該中栓の開口を封止可能な蓋体とを備え、前記中皿および前記中栓の本体の一部にはそれぞれ化粧料通過孔が設けられ、前記中栓の回動に伴い該化粧料通過孔の相対的な位置が変化することで化粧料通過孔の開閉がなされる化粧料容器である。
【0012】
また本発明は、前記中皿の化粧料通過孔に伸縮性を有するメッシュが貼設されていることを特徴とする化粧料容器である。
【0013】
また本発明は、前記化粧料通過孔が曲面上に形成されていることを特徴とする化粧料容器である。
【0014】
さらに本発明は、前記中栓と前記蓋体にともに係止突起を備え、それらの係止突起は蓋体の開閉時に互いに係止するように形成されているとともに、開閉時に一定以上の力が加わることによりその係止が解除される高さ・形状に形成されていることを特徴とする化粧料容器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる化粧料容器は、中栓の回動に伴い中皿と中栓の化粧料通過孔の相対的な位置が変化することで化粧料通過孔が開閉する。これにより、不使用時には中栓内に化粧料が入り込むことがなく、化粧料が塗布体に意図せず付着することを防ぐことができ、使用時には化粧料塗布量のコントロールが容易となる。
【0016】
また、本発明にかかる化粧料容器で化粧料通過孔にメッシュを貼設したものは、使用時に塗布体に付着した化粧料が収納時にメッシュに移ってしまうおそれもなく、メッシュの目詰まりを未然に防ぐことができる。
【0017】
また、本発明にかかる化粧料容器で化粧料通過孔に伸縮性を有するメッシュを貼設したものは、中栓の回動に伴って中栓の化粧料通過孔の開口縁がメッシュを内側から擦るように移動するため、メッシュに付着してしまった化粧料を掻き落とすことができ、メッシュの目詰まりを防ぐことができる。
【0018】
さらに、本発明にかかる化粧料容器で中栓と蓋体に互いに係止可能な係止突起を備えたものは、蓋体の開閉に連動して中栓が回動するため、蓋体を開閉するだけで化粧料通過孔の開閉を行うことができる。これにより、中栓を回動させる手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る化粧料容器の分解斜視図
図2】(a)本発明に係る化粧料容器の中皿の正面図、(b)同平面図、(c)同底面図
図3】(a)本発明に係る化粧料容器の中栓の正面図、(b)同平面図、(c)同底面図
図4】本発明に係る化粧料容器の組み立てた状態における断面図
図5】本発明に係る化粧料容器の凸部321と、化粧料通過孔24と化粧料通過孔35の位置関係を模式的に表したもの
図6】(a)本発明に係る化粧料容器の係止突起331と係止突起411の位置関係を模式的に表したもの、(b)本発明に係る化粧料容器の係止突起331と係止突起411の位置関係を模式的に表したもの
図7】本発明に係る中皿のメッシュに付着した化粧料を中栓の開口縁により掻き落とす機構を模式的に表したもの
図8】(a)本発明に係る化粧料容器の異なる実施態様の中皿と中栓を組み立てた状態での正面図、(b)同底面図、(c)同断面図。
図9】(a)本発明に係る化粧料容器の異なる実施態様の中皿と中栓を組み立てた状態での正面図、(b)同底面図、(c)同実施態様の化粧料容器を組み立て、内部に塗布体を収納した状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の化粧料容器の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0021】
本発明の化粧料容器は、上部に開口11を有する容器体1と、該容器体1の内側において容器体1との間に化粧料を収納可能な空間を形成するように装着された中皿2と、該中皿2の内側において中皿2と二重構造になるとともに中皿2に対して所定の範囲で回動自在に装着され、その内部には塗布体5を収納可能な中栓3と、該中栓3の開口31を封止可能な蓋体4とを備える。以下、各部材について詳述する。
【0022】
容器体1は、上部に開口11を有する略壺状に形成され、化粧料が収納される本体12と、本体12の上端より環状に垂設された頸部13とからなる。本実施態様の本体12は、底部側よりも頸部13側の径が大きく、さらに、その中間部分において最も径が大きくなるように膨出しているが、上部に環状の頸部13を有してその内部に化粧料及び中皿2を収納可能であれば形状はこれに限らず、例えば、円柱状、球状、多角柱状、円錐台状等であってもよい。
【0023】
頸部13の内周面には、後述する中皿2の固定手段として凹部131が凹設されている。凹部131は、頸部13の上端から略矩形に他の頸部13部分よりも薄肉になるように設けられている。本実施態様の凹部131は、頸部13の周方向に同間隔で4つ設けられている。凹部131の数は任意であり1つでも良いが、複数設けることが好ましい。
【0024】
さらに、頸部13の外周面には、後述する中栓3の係止手段として凸条部132が設けられている。凸条部132は、頸部13の周方向に環状に突出し、中栓3を容器体1に装着したときに、中栓3の溝部342に対応する位置に設けられ、溝部342内に挿入可能な形状に形成されている。
【0025】
中皿2は、図1図2に示すように、上部に開口21を有し、略筒状の胴部及び略半球状の底部よりなる本体22と、本体22の上端より環状に垂設された頸部23とからなり、さらに、頸部23の上端には外側へ水平に突出する鍔部233が設けられている。本体22は、容器体1に装着されたときに容器体1の本体12との間に化粧料を収納可能な空間を形成し、中栓3の本体32をその内部に収納できるとともに、中栓3を本体22内で周方向に回動可能な形状・寸法に形成されている。具体的には、少なくとも本体22は、球状、円柱状、逆円錐上、逆円錐台状のように、その水平断面形状において真円を形成する。また、頸部23は容器体1の頸部13を嵌装可能に形成されている。
【0026】
本体22には、容器体1内の化粧料を中皿2内へ取り入れるための化粧料通過孔24が設けられている。本実施態様の化粧料通過孔24は、本体22の一方の側面(図2では正面側)から底部にかけて、略円形の開口として1つ設けられている。さらに、化粧料通過孔24には、本実施態様のように、その開口を塞ぐようにして縁部にメッシュ25を貼設してもよい。
【0027】
本実施態様において化粧料通過孔24は1つのみ設けられているが、数はこれに限らず、複数であっても良い。化粧料通過孔24の設ける位置については、化粧料通過孔24より中皿2内に化粧料を取り入れることが可能な位置であれば制限されず、本実施態様のように本体22が略球状の場合は、側面から底部にかけて設けることが好ましく、本体22が浅い皿状の場合は底面が好ましく、円錐状の場合は側面が好ましく、さらに、円柱状の底面が円錐に形成されたものは、側面と底部の両方に設けることが好ましい。とりわけ、化粧料通過孔24は曲面上に形成することが好ましく、例えば、略球状の本体の側面や底部、逆円錐状や逆円錐台状の本体の側面、円柱状の本体の側面などの曲面上に形成すると、後述するメッシュ25に付着した化粧料の掻き取り効果を得られて好ましい。
【0028】
化粧料通過孔24の形状、面積は、中皿2内に化粧料を取り入れるにあたって支障のない形状、面積であれば制限されないが、本実施態様のように、使用する塗布体5の塗布部51が植毛球状の場合、あるいは、立体形状のチップの場合は、かかる塗布部51をメッシュ25に押し付け、メッシュ25の伸縮性を利用し、化粧料通過孔24から容器体1内側へと突出させるようにして化粧料を付着させることができる。よって、かかる塗布部51が通過可能な開口径及び開口形状の化粧料通過孔24を1つ形成することが好ましい。さらに、塗布部51が平たいマットやパフの場合、化粧料通過孔24を通過させて容器体1内側へと突出させる必要はないため、マットやパフよりも小径の通過孔を複数設けることが好ましい。
【0029】
本実施態様では、化粧料通過孔24にメッシュ25を貼設しているが、化粧料通過孔24そのものをメッシュ状に形成してもよい。すなわち、化粧料通過孔24を細かい複数の孔の集合体から構成されるようにしてメッシュ状に形成してもよく、その場合の一つの孔の径は、化粧料が通過可能な程度であればよい。このように、化粧料通過孔24にメッシュ25を貼設し、もしくは、化粧料通過孔24そのものをメッシュ状に形成することにより、使用時に塗布部51に適度に化粧料を付着させることができる。
【0030】
化粧料通過孔24に貼設されるメッシュ25の素材は伸縮性を有するものが好ましい。例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、レーヨン、ポリオレフィン、セルロース、絹等の繊維やこれらの混紡繊維、またこれらの不織布をあげることができ、なかでもポリエステルとポリウレタンの混紡繊維が好ましい。
【0031】
また、頸部23の外周面には、容器体1への固定手段として凸部231が凸設されている。凸部231は、中皿2を容器体1へと取り付けたときに容器体1の凹部131に対応する位置に設けられており、凹部131に挿入可能な略矩形に形成されている。本実施態様では、頸部23の周方向に同間隔で4つ設けられている。凸部231の数は任意であり1つでも良いが、凹部131と同数の複数が好ましい。
【0032】
さらに、頸部23の内周面には、後述する中栓3の凸部321を挿入可能なガイド溝232が形成されている。ガイド溝232は、頸部23の上端から所定の高さで他の頸部23部分よりも薄肉になるように形成されており、頸部23の周方向に所定の範囲で形成されている。本実施態様では、頸部23のほぼ右半分の内周面に設けられているが、その設ける位置(周方向)は任意であり、設ける範囲(周方向)は、中栓3が中皿2の化粧料通過口24を開口して閉鎖するまでの回動範囲と対応する範囲であることが望ましい。
【0033】
中栓3は、図1図3に示すように、上部に開口31を有し、略筒状の胴部及び略半球状の底部よりなる本体32と、本体32の上端より外側へ水平に突出するフランジ33、該フランジ33の外周縁より垂下する周壁34とからなる。本体32は、中皿2に装着されたときに、中皿2の本体22との間で必要以上の空隙を形成しない二重構造となるように本体22と略相似形に形成されており、且つ、装着した状態で周方向に回動可能な程度の遊びをもたせて形成されている。本体32は本体22と略相似形であって、且つ、周方向に回動可能であれば、その形状は制限されないが、少なくとも、球状、円柱状、逆円錐上、逆円錐台状のように、その水平断面形状において真円を形成する。
【0034】
本体32には、化粧料通過孔35が設けられている。この化粧料通過孔35は、中栓3が開状態の位置にあるとき、中皿2の化粧料通過孔24と対応する位置に形成されている。本実施態様では、化粧料通過孔35は本体32の一方の側面(図3では正面側)から底部にかけて、略円形の開口として1つ設けられている。
【0035】
化粧料通過孔35は本実施態様では1つのみ設けられているが、数はこれに限らず複数設けても良く、さらに、化粧料通過孔24よりも多く、もしくは、少なく設けてもよいが、化粧料通過孔24と同じ数を設けることが好ましい。化粧料通過孔35は、対応する位置に設けられている化粧料通過孔24と略同一の面積、形状に設けることが好ましいが、化粧料通過孔24が複数設けられている場合、それら複数の化粧料通過孔24が設けられている領域全体をカバーできるような1つの化粧料通過孔35としてもよい。逆に、本実施態様のように、化粧料通過孔24が1つ設けられている場合、その化粧料通過孔24がカバーする領域に複数の化粧料通過孔35を設けてもよい。さらに、本実施態様のように、使用する塗布体5の塗布部51が植毛球状の場合、あるいは、立体形状のチップの場合は、塗布体5の塗布部51が通過可能な開口径の化粧料通過孔35を1つ形成することが好ましい。また、化粧料通過孔35は曲面上に形成することが好ましく、例えば、略球状の本体の側面や底部、逆円錐状や逆円錐台状の本体の側面、円柱状の本体の側面などの曲面上に形成すると、後述するメッシュ25に付着した化粧料の掻き取り効果を得られて好ましい。
【0036】
周壁34の外周面には、後述する蓋体4のネジ部421が螺合可能なネジ部341が設けられており、また、周壁34の内周面には、容器体1の頸部13に設けられた凸条部132が嵌合可能な環状の溝部342が凹設されている。
【0037】
本実施態様の中栓3には、フランジ33の上面に後述する蓋体4の係止突起411に係止可能な係止突起331が設けられている。本実施態様の係止突起331は、フランジ33の対向する位置(図3(b)では右と左)に2つ設けられ、蓋体4の開閉時に蓋体4の係止突起411と互いに係止可能な突出高さに形成されているとともに、開閉時に一定以上の力が加わることによりその係止が解除される形状に形成されている。係止突起331と係止突起411の係止は、両者が当接する側面に一定以上の押圧が加わって係止突起411が係止突起331を乗り越えることにより解除される。そのため、係止突起411が係止突起331を乗り越えやすいように、係止突起331の側面をテーパー状に形成しても良い。
【0038】
さらに、本体32の外周面には、本実施態様のように環状のOリング36を取り付けてもよい。かかるOリングはゴムなどの弾性部材で形成されており、中栓3が中皿2内において回動されるときに本体22の内周面に摺動して適度な回動抵抗を生じる。
【0039】
また、本体32の上端部付近の外周面には、中皿2のガイド溝232に挿入可能な凸部321が凸設されている。かかる凸部321はフランジ33から下方へ延伸する略矩形に形成されており、ガイド溝232内に納まる高さに形成されている。本実施態様では本体32の背面側に1つ設けられているが、その位置はこれに限定されない。
【0040】
本発明の蓋体4は、中栓3の開口31を封止できるものであれば、その形状や着脱方法について特に制限はないが、本実施態様のように、中栓3のネジ部341に螺着され、その一部に塗布体5の一部を収納可能な空間を有するものでもよい。本実施態様の蓋体4は、天壁41の周縁部より垂下する周壁42の内周面に中栓3のネジ部341に螺合可能にネジ部421が形成され、天壁41から上方へ立設する筒状部43内に、後述する塗布体5の軸部52を収納することができる。
【0041】
本実施態様の蓋体4には、その天壁41の裏面に、中栓3のフランジ33の係止突起331に係止可能な係止突起411が設けられている。かかる係止突起411は、蓋体4の開閉の際に中栓3の係止突起331に当接可能な位置に形成されており、係止突起331と互いに係止可能な高さに形成されているとともに、開閉時に一定以上の力が加わることによりその係止が解除される高さ・形状に形成されている。なお、係止突起331と係止突起411の係止は、両者が当接する側面に一定以上の押圧が加わって係止突起411が係止突起331を乗り越えることにより解除される。そのため、係止突起411が係止突起331を乗り越えやすいように、係止突起411の側面をテーパー状に形成しても良い。
【0042】
本発明の化粧料容器に使用される塗布体5は、特にその種類や形状等に限定はなく、図1に示すように、塗布部51が軸部52の先端に設けられたものや、塗布部のみからなるパフタイプ、更に、塗布部51として縫製パフ、起毛パフ、スポンジ、ブラシ等を利用することができる。
【0043】
図4は、本発明の化粧料容器の組み立てた状態における断面図である。図に示すように、容器体1の内側には中皿2が装着されている。中皿2は容器体1の開口11から挿入され、中皿2の鍔部233が容器体1の頸部13の上端部に掛着されるとともに、凸部231が容器体1の凹部131内に挿入されており、これにより、中皿2は容器体1に対する回動が規制された状態で取り付けられる。
【0044】
中皿2の内側には、さらに中栓3が装着されている。中栓3は中皿2の開口21から挿入され、中栓3のフランジ33が中皿2の鍔部233に載置するとともに、周壁34の内周面の溝部342に容器体1の凸条部132が嵌合することで、中栓3は容器体1に対して回動可能に取り付けられる。
【0045】
さらに、中栓3の凸部321は中皿2のガイド溝232内に挿入されており、かかるガイド溝232内において凸部321が移動可能な範囲で、中栓3は回動することができる。このように、中栓3の回動可能な角度は凸部321の移動可能な範囲により規制されるため、本実施態様では、中栓3の開口35が正面を向いた状態から、時計回りに約180度の範囲に制限されている。
【0046】
蓋体4は、ネジ部421が中栓3のネジ部341に螺合することにより、開閉自在に取り付けられて中栓3の開口31を封止する。なお、図4には示さないが、中栓3内にはさらに塗布体5が収納される。中栓3内に塗布体5が完全に収納されるようにしてもよいが、蓋体4の一部に塗布体5の一部を収納するようにしてもよい。具体的には、本実施態様のように蓋体4の上部に筒状部43を設け、かかる筒状部43内の空間に塗布体5の一部である軸部52を収納してもよい。このように、軸部52を蓋体4内に収納することにより、軸部52に化粧料が付着することを防ぐことができる。
【0047】
図5は、化粧料通過孔24の開状態から閉状態へと至る一連の状態において、凸部321と、化粧料通過孔24と化粧料通過孔35の相対的な位置関係を模式的に表したものである。なお、図ではより理解し易くするために、メッシュ25を省略している。まず、中栓3の凸部321がガイド溝232の最も後ろ側(中皿2の背面側)に位置しており、それ以上、中栓3を中皿2に対して反時計回りに回動させることができない状態で、中栓3の化粧料通過孔35と中皿2の化粧料通過孔24の相対的な位置が一致している(図5a)。かかる状態で化粧料通過孔24と化粧料通過孔35は連通し、全開の状態となる。
【0048】
そして、かかる開状態から閉状態へと移行させるためには、中栓3を中皿2に対して時計回りに回動させる。回動の途中の状態を図5bに示す。この状態では、化粧料通過孔24と化粧料通過孔35の相対的な位置が変化し、化粧料通過孔24の左側の一部のみ連通して開いた状態となる。そして、さらに中栓3を中皿2に対して時計回りに回動させ、それ以上回動しない位置まで凸部321を移動させて凸部321がガイド溝232の最も前側(中皿2の正面側)に位置するようにする(図5c)。このとき、中栓3の化粧料通過孔35は中皿2の化粧料通過孔24に対して本体22の反対側に位置するため、化粧料通過孔24は中栓3の本体32に、また、化粧料通過孔35は中皿2の本体22によりともに閉塞された状態となり、化粧料が通過不可能な閉状態となる。
【0049】
また、中栓3の回動に伴い、メッシュ25に付着している化粧料を掻き落とす機構について、図7により説明する。本実施態様のように、化粧料通過孔24、35が曲面上に形成されている場合、化粧料通過孔35の開口縁351は中栓3の閉方向への回動に伴い、本体32の曲面の曲率と同じ軌道Xで移動する。一方、化粧料通過孔24に貼設されたメッシュ25は、特に伸縮性を有する素材の場合、その張力により開口縁351の軌道Xよりも内側に入り込んだ位置で保持されている。これにより、中栓3の閉方向への回動に伴い、軌道Xで移動する開口縁351がメッシュ25を内側から擦るように移動するため、メッシュ25に付着している化粧料を掻き落とす効果を得られるのである。
【0050】
また、蓋体4の開閉に連動して中栓3が回動する機構は以下の通りである。まず、蓋体4を中栓3のネジ部341に時計回りに螺合して閉めていき、螺合がほぼ完了する間際になると、蓋体4の天壁41の裏面と中栓3のフランジ33が接近する。そして、これにより天壁41の裏面の係止突起411が2つある中栓3の係止突起331のいずれか一方に当接する。このとき、係止突起411は進行方向側から係止突起331に当接するため、その状態で更に蓋体4を回すと係止突起411が係止突起331を蓋体4の回転方向に押して、中栓3も同方向へと回動する。この時の係止突起411の係止突起331に対する位置関係を図6(a)の実線で示す。
【0051】
そして、前述の通り、中栓3の回動範囲はガイド溝232の規制による凸部321の移動範囲に制限されるため、ガイド溝232の端まで凸部321が到達すると、中栓3はそれ以上回動することなく停止する。その状態で、蓋体4に更に時計回りに回転力を加えると、係止突起411と係止突起341の当接面に押圧がかかって両者の係止が解除され、係止突起411は係止突起331を乗り越えて反対側へと移動する。この時の係止突起411の係止突起341に対する位置関係を図6(a)の破線で示す。これにより、これ以上、蓋体4を時計回りに回しても、中栓3は連動して回動することなく、そのまま蓋体4の装着が完了する。
【0052】
逆に、蓋体4を中栓3のネジ部352に反時計回りに回して開けていく際、上述の通り、蓋体4を閉めた際に係止突起331を乗り越えて反対側へと移動していた係止突起411が今度は反時計回りの進行方向側から係止突起331へと当接することになる。これにより、蓋体4を回すと係止突起411が係止突起331を蓋体4の回転方向に押して、中栓3も回動する。この時の係止突起411の係止突起331に対する位置関係を図6(b)の実線で示す。
【0053】
反時計回りに中栓3が回動する場合も、中栓3の回動範囲はガイド溝232の規制による凸部321の移動範囲に制限されるため、ガイド溝232の端まで凸部321が移動すると、中栓3はそれ以上回動することなく停止する。その状態で、蓋体4に更に反時計回りに回転力を加えると、係止突起411と係止突起341の当接面に押圧がかかって両者の係止が解除され、係止突起411は係止突起341を乗り越えて反対側へと移動する。この時の係止突起411の係止突起331に対する位置関係を図6(b)の破線で示す。これにより、これ以上、蓋体4を反時計回りに回しても、中栓3は連動して回動することなく、そのまま蓋体4のみ反時計回りに回転を進めることにより、蓋体4の取り外しが完了する。
【0054】
なお、本実施態様では、蓋体4の回転に連動して中栓3が回動するように設けているが、必ずしも蓋体4と中栓3は連動しなくてもよく、蓋体4の開閉とは独立して中栓3が回動するようにしてもよい。その場合、蓋体4をまず取り外し、容器体1を片手で保持しながら中栓3の一部、例えば、周壁35を指で保持して中栓3を回動させてもよい。
【0055】
以下に、本発明の化粧料容器の使用方法について説明する。まず、蓋体4を反時計回りに回転させて、中栓3のネジ部341との螺合を外す。この時、係止突起411が係止突起331を蓋体4の回転と同方向へと押すため、ガイド溝232による規制の許容範囲内で中栓3も反時計回りに回動する。そして、ガイド溝232の端まで凸部321が移動すると、中栓3はそれ以上回動することなく停止する。
【0056】
このとき、凸部321はガイド溝232の最も後ろ側(中皿2の背面側)に位置するため、中栓3の化粧料通過孔35と中皿2の化粧料通過孔24の相対的な位置が一致して連通し、全開状態となる(図5a)。一方、蓋体4は係止突起411の係止も解除されているため、さらに反時計回りに回転して中栓3から取り外される。
【0057】
蓋体4を取り外してから、内部に収納されていた塗布体5を取り出してメイクアップを行う。化粧料通過孔24と化粧料通過孔35は開状態となっているため、かかる通過孔より化粧料を中栓3内へと取り込み、塗布体5の塗布部51へ付着させる。なお、より塗布部51へ化粧料を付着させたい場合は、塗布部51を化粧料通過孔24と化粧料通過孔35の開口内へと押し込むようにすると、メッシュ25が伸長し、塗布部51の一部が化粧料通過孔24から容器体1の内部へと押し出される形となり、化粧料を一層付着させやすくなる。
【0058】
本実施態様の化粧料通過孔24と化粧料通過孔35は、中皿2と中栓3の一側面に設けられているため、塗布部51への付着位置を一定にすることができる。なお、塗布部51の全体に満遍なく化粧料を付着させたい場合には、軸部52を回転させて塗布部51を中栓3の内部で回転させれば化粧料をムラなく付着させることができる。
【0059】
メイクアップが終了後、塗布体5を中栓3内へと収納し、蓋体4を中栓3のネジ部341へと時計回りに螺合する。そして、蓋体4の螺合が完了に近づくと、係止突起411が係止突起331に係止して蓋体4の回転と同方向へと押すため、ガイド溝232により規制の許容範囲内で中栓3も時計回りに回動する。
【0060】
凸部321がガイド溝232内において移動するのに伴い、中栓3の化粧料通過孔35と中皿2の化粧料通過孔24の相対的な位置がずれ始める(図5b)。このとき、中栓3の化粧料通過孔35の開口縁351が中皿2のメッシュ25を内側から擦るように移動するため、内皿3の閉方向への回動に伴って、メッシュ25に付着している化粧料を掻き落とす効果を得られる。
【0061】
ガイド溝232の端まで凸部321が移動すると、中栓3はそれ以上回動することなく停止する。凸部321は、ガイド溝232の最も前側(中皿2の正面側)に位置し、化粧料通過孔24は中栓3の本体32に、また、化粧料通過孔35は中皿2の本体22により閉塞された状態となり、これにより、化粧料が通過不可能な閉状態となる(図5c)。そして、蓋体4の装着も完了する。
【0062】
図8(a)~(c)および図9(a)~(c)は、本発明の化粧料容器の異なる実施態様である。図8の実施態様は、中皿2の本体22と中栓3の本体32部分がともに逆円錐状に形成されている。そして、本体22、32の側面には化粧料通過孔24、35がそれぞれ設けられている。なお、図8(a)、(b)では、構成を理解しやすいようにメッシュ25の記載を省略している。
【0063】
図9の実施態様は、中皿2の本体22と中栓3の本体32部分がともに逆円錐台状に形成されている。そして、本体22、32の一の側面と該側面の反対の側面には、それぞれ底面にかけて一対の化粧料通過孔24、35が設けられている。さらに、本実施態様では、化粧料通過孔24内において円弧状に張り出した芯材26を設けている。かかる芯材26は、中皿2の底面27とともに底面視で真円形状の輪郭を形成するため、芯材26に被せる形でメッシュ25を化粧料通過孔24に貼設することにより、本体22とメッシュ25は逆円錐台の形状を維持することができる。なお、図9(a)、(b)では、構成を理解しやすいようにメッシュ25の記載を省略している。
【0064】
また、図9(c)ではブラシタイプの塗布体5を中栓3内に収納した状態を示す。本実施態様では、塗布体5は中栓3内に完全に収納されるため、蓋体4は一般的な開口を封止するタイプのものを使用することができる。
【0065】
本発明の容器体1、中皿2、中栓3に使用される材質は、容器体はポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、等が好ましく中皿中栓はポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、中でも容器体はポリエチレンテレフタレート、中皿と中栓はポリプロプレンが好ましい。特に、容器体1は内部に収納した化粧料が外部から視認できるように、透明ないし半透明であることが好ましい。
【0066】
本発明の化粧料容器に収納される化粧料としては、クリーム、乳液、美容液、アイクリーム、リップクリーム、リムーバー等のスキンケア化粧料、トリートメント、整髪料、染毛料、ヘアクリーム等の頭髪化粧料、白粉、ファンデーション、下地クリーム、コンシーラー、頬紅、アイカラー、リップグロス、リップカラー、リップオーバーコート、トップコート、マスカラ、アイブロウ、アイライナーなどのメイクアップ化粧料であってもよい。また、剤形としては、粘性液状化粧料、粉末固型状化粧料、油性固型状化粧料、粉末状化粧料等が挙げられ、乳化型、非乳化型であっても良い。このなかでも粉末状化粧料が特に好ましい。
【符号の説明】
【0067】
1 … … 容器体
2 … … 中皿
3 … … 中栓
4 … … 蓋体
5 … … 塗布体
11 … … 開口
12 … … 本体
13 … … 頸部
21 … … 開口
22 … … 本体
23 … … 頸部
24 … … 化粧料通過孔
25 … … メッシュ
26 … … 芯材
27 … … 底面
31 … … 開口
32 … … 本体
33 … … フランジ
34 … … 周壁
35 … … 化粧料通過孔
41 … … 天壁
42 … … 周壁
43 … … 筒状部
51 … … 塗布部
52 … … 軸部
131 … … 凹部
132 … … 凸条部
231 … … 凸部
232 … … ガイド溝
233 … … 鍔部
321 … … 凸部
331 … … 係止突起
341 … … ネジ部
342 … … 溝部
351 … … 開口縁
411 … … 係止突起
421 … … ネジ部
X … … 開口縁の軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9