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特許7166269定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法
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  • 特許-定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20221028BHJP
   A01N 53/04 20060101ALI20221028BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20221028BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221028BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20221028BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221028BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20221028BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20221028BHJP
   B05B 9/00 20060101ALI20221028BHJP
   B65D 83/14 20060101ALI20221028BHJP
   B65D 83/52 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N53/04 510
A01N53/06 110
A01P3/00
A01P7/04
A61K9/12
A61L9/01
A61L9/14
B05B9/00
B65D83/14
B65D83/52 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019549302
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2018038549
(87)【国際公開番号】W WO2019078220
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2017203736
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 練
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-155809(JP,A)
【文献】特開2014-031342(JP,A)
【文献】特開2016-150760(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073478(WO,A1)
【文献】特開2009-131243(JP,A)
【文献】特開2002-154925(JP,A)
【文献】特開平04-290802(JP,A)
【文献】特開2016-155774(JP,A)
【文献】改訂 医薬品添加物ハンドブック,株式会社薬事日報社,2007年,p.563-565
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00
A01N 53/04
A01N 53/06
A61K 9/12
A61L 9/01
A61L 9/14
B05B 9/00
B65D 83/14
B65D 83/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物を含み
前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)は、1/99~10/90であり、
1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLであり、
前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されており、
前記定量室の容積は、1.0~3.0mLである、定量噴射型エアゾール製品。
【請求項2】
前記原液は、蒸気圧が1.0×10-5mmHg(25℃)以上の揮散性化合物を含む、請求項1記載の定量噴射型エアゾール製品。
【請求項3】
前記揮散性化合物は、ピレスロイド系化合物、香料化合物、抗菌化合物からなる群から選択される少なくともいずれか1種である、請求項2記載の定量噴射型エアゾール製品。
【請求項4】
原液と、噴射剤とを、前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が1/99~10/90となるよう含むエアゾール組成物を、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLとなるよう噴射する、定量噴射型エアゾール製品の噴射方法であり、
前記定量噴射型エアゾール製品は、前記エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブとを有し、
前記エアゾール定量バルブは、前記エアゾール容器から取り出される前記エアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されており、
前記定量室の容積は、1.0~3.0mLである、定量噴射型エアゾール製品の噴射方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法に関する。より詳細には、本発明は、噴射されたエアゾール組成物が視認されやすく、かつ、揮散性化合物を広範囲に拡散させ得る定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺虫剤等を室内空間に拡散する手段として、燻煙剤や全量噴射型のエアゾール製品が知られている。しかしながら、燻煙剤は、熱を発生するものがある。また、全量噴射型のエアゾール製品は、室内の壁面や床面等を溶剤により汚染する可能性がある。そこで、殺虫剤や芳香剤等の揮散性化合物を微量噴射し、室内において殺虫効果や芳香を付与する効果を持続させることを意図したエアゾール製品が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-63576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、噴射されたエアゾール組成物の視認性が充分でなく、かつ、揮散性化合物が広範囲に拡散されにくい。そのため、特許文献1に記載の方法は、薬効の得られる範囲が狭く、かつ、薬効の得られる範囲を判別しにくい。また、1回の噴射によって充分な薬効を付与し得る量が噴射されていた場合であっても、使用者は、噴射されたエアゾール組成物を充分に視認しにくいため、必要回数以上に噴射し、エアゾール製品を使用し過ぎる可能性がある。
【0005】
ところで、噴射されたエアゾール組成物の視認性を向上させるために、1回あたりの噴射量を多くすることが考えられる。しかしながら、1回あたりの噴射量が多くなると、噴射にかかる時間が長くなり、適切に使用し難く、かつ壁や床を汚染しやすい。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、噴射されたエアゾール組成物が視認されやすく、かつ、エアゾール組成物を広範囲に拡散させることのできる定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するための条件について鋭意研究し、以下の知見を得た。すなわち、原液と噴射剤とを、特定の配合割合となるよう含有させ、1回の噴射量を特定量に調整することにより、噴射されたエアゾール組成物の視認性を高めつつ、噴射されたエアゾール組成物を広範囲に拡散させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
上記課題を解決する本発明の定量噴射型エアゾール製品は、原液と、噴射剤とを含み、前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)は、1/99~10/90であり、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLである、定量噴射型エアゾール製品である。
【0009】
また、上記課題を解決する本発明の定量噴射型エアゾール製品の噴射方法は、原液と、噴射剤とを、前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が1/99~10/90となるよう含むエアゾール組成物を、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLとなるよう噴射する、定量噴射型エアゾール製品の噴射方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、噴射されたエアゾール組成物が視認されやすく、かつ、エアゾール組成物を広範囲に拡散させることのできる定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の噴射方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例において薬剤拡散率の測定方法を説明するための模式図である。
図2図2は、実施例において薬剤拡散率の測定方法を説明するための模式図である。
図3図3は、視認性評価において○と評価された実施例4のエアゾール組成物の噴射状態を説明する写真である。
図4図4は、視認性評価において×と評価された比較例1のエアゾール組成物の噴射状態を説明する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<定量噴射型エアゾール製品>
本発明の一実施形態の定量噴射型エアゾール製品(以下、エアゾール製品ともいう)は、原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、エアゾール容器に取り付けられるエアゾール定量バルブと、エアゾール定量バルブに取り付けられるステム機構と、ステム機構およびエアゾール定量バルブを操作するための噴射ボタンとを備える。原液と噴射剤との配合割合(体積比)は、1/99~10/90である。1回あたりの噴射量は、1.0~3.0mLである。以下、それぞれの構成について説明する。なお、本実施形態のエアゾール製品は、原液と噴射剤との配合割合、および、エアゾール組成物の1回あたりの噴射量が上記特定の範囲となるよう調整されていることを特徴とする。そのため、その他の構成(たとえばエアゾール製品の形状、原液中の成分および配合量、容器内圧等の各種物性等)は、上記範囲を満たすものであればよく、特に限定されない。したがって、以下の詳細な説明のうち、原液中の成分、原液と噴射剤との配合割合、および、エアゾール組成物の1回あたりの噴射量が上記特定の種類および範囲となるよう調整されていること以外は、いずれも例示である。
【0013】
(原液)
原液は、拡散すべき所望の成分を配合し得る。このような成分は特に限定されない。一例を挙げると、原液は、蒸気圧が1.0×10-5mmHg(25℃)以上の揮散性化合物を好適に含む。
【0014】
蒸気圧が1.0×10-5mmHg(25℃)以上の揮散性化合物は特に限定されない。揮散性化合物の蒸気圧は、1.0×10-5mmHg(25℃)以上であることが好ましく、1.5×10-5mmHg(25℃)以上であることがより好ましく、2.0×10-5mmHg(25℃)以上であることがさらに好ましい。また、揮散性化合物の蒸気圧は、5.0×10-3mmHg(25℃)以下であることが好ましく、3.0×10-3mmHg(25℃)以下であることがより好ましい。揮散性化合物の蒸気圧が上記範囲内であることにより、エアゾール製品は、揮散性化合物が空間に広がりやすい。
【0015】
揮散性化合物の種類は特に限定されない。揮散性化合物は、本実施形態のエアゾール製品が目的とする薬効を付与し得るように、適宜選択される。一例を挙げると、エアゾール製品が害虫防除用として用いられる場合、揮散性化合物は、ピレスロイド系化合物、カーバメート系化合物、オキサジアゾール系化合物等の殺虫化合物を含む。また、エアゾール製品が芳香用として用いられる場合、揮散性化合物は、メントール、シトラール、ゲラニオール等の香料化合物を含む。また、エアゾール製品が抗菌用として用いられる場合、揮散性化合物は、イソチオシアネート系抗菌剤、フェノール系抗菌剤等の抗菌化合物を含む。これらの揮散性化合物は、併用されてもよい。すなわち、たとえばエアゾール製品が害虫防除用および芳香用として用いられる場合、上記それぞれの揮散性化合物が併用され得る。
【0016】
ピレスロイド系化合物は、メトフルトリン(蒸気圧:1.5×10-5mmHg(25℃)、プロフルトリン(蒸気圧:7.7×10-5mmHg(25℃))、トランスフルトリン(蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))、テラレスリン(蒸気圧:6.6×10-4mmHg(25℃))等である。これらの中でも、殺虫効果が高く本発明の効果が得られやすい点から、ピレスロイド系化合物は、トランスフルトリンを含むことが好ましい。
【0017】
カーバメート系化合物は、プロポクスル(蒸気圧:2.1×10-5mmHg(25℃))、カルバリル(蒸気圧:4.1×10-5mmHg(23.5℃))等である。これらの中でも、蒸気圧が高く、殺虫活性が高いという理由から、カーバメート系化合物は、プロポクスルであることが好ましい。なお、カルバリルの蒸気圧は、25℃において4.1×10-5mmHg以上である。
【0018】
オキサジアゾール系化合物は、メトキサジアゾン(蒸気圧:1.1×10-3mmHg(25℃))等である。
【0019】
殺虫化合物は、これら以外にも、有機リン剤系としてジクロルボス(蒸気圧:1.6×10-2mmHg(25℃))や幼若ホルモン様物質である、ハイドロプレン(蒸気圧:1.9×10-4mmHg(25℃))、アミドフルメト(蒸気圧:1.1×10-3mmHg(20℃))などであってもよい。なお、アミドフルメトの蒸気圧は、25℃において1.1×10-3mmHg以上である。
【0020】
揮散性化合物としてこれら殺虫化合物を用いることにより、例えば、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ等のゴキブリ、クモ、ムカデ、アリ、ゲジ、ヤスデ、ダンゴムシ、ワラジムシ、シロアリ、ケムシ、ダニ、ノミ、トコジラミ、シラミ等の匍匐害虫、カ、ハエ、ガ、ハチ、カメムシ、カツオブシムシ、シバンムシ、キクイムシ、イガ、コイガ等の飛翔害虫等が好適に防除され得る。
【0021】
香料化合物は、嗜好性が高い、閾値が低いなどの理由から、メントール(蒸気圧:6.3×10-2mmHg(25℃))、シトラール(蒸気圧:9.1×10-2mmHg(25℃))、ゲラニオール(蒸気圧:3.0×10-2mmHg(25℃))等であることが好ましい。
【0022】
イソチオシアネート系抗菌剤は、メチルイソチオシアネート(蒸気圧:16mmHg(30℃))、アリルイソチオシアネート(蒸気圧:3.7mmHg(20℃))等である。これらの中でも、イソチオシアネート系抗菌剤は、アリルイソチオシアネートであることが好ましい。なお、メチルイソチオシアネートの蒸気圧は、25℃において1.0×10-5mmHg以上であり、アリルイソチオシアネートの蒸気圧は、25℃において3.7mmHg以上である。
【0023】
フェノール系抗菌剤は、チモール(蒸気圧:2.2×10-3mmHg(25℃))、イソプロピルメチルフェノール(蒸気圧:2.0×10-3mmHg(20℃))等である。これらの中でも、安全性と効果とを両立できる点から、フェノール系抗菌剤は、イソプロピルメチルフェノールであることが好ましい。なお、イソプロピルメチルフェノールの蒸気圧は、25℃において2.0×10-3mmHg以上である。
【0024】
揮散性化合物の含有量は特に限定されない。揮散性化合物の含有量は、揮散性化合物の種類によって、適宜調整され得る。一例を挙げると、揮散性化合物が上記殺虫化合物である場合、殺虫化合物の含有量は、原液中、0.1w/v%以上であることが好ましく、10w/v%以上であることがより好ましい。一方、殺虫化合物の含有量は、原液中、100w/v%であってもよい。殺虫化合物の含有量が0.1w/v%未満である場合、エアゾール製品は、所望する殺虫効果を充分に発揮できないか、広範囲に拡散されにくい可能性がある。
【0025】
また、揮散性化合物が上記香料化合物である場合、香料化合物の含有量は、原液中、0.05w/v%以上であることが好ましく、10w/v%以上であることがより好ましい。一方、香料化合物の含有量は、原液中、100w/v%であってもよい。香料化合物の含有量が1w/v%未満である場合、エアゾール製品は、芳香を充分に付与できないか、広範囲に拡散されにくい可能性がある。
【0026】
さらに、揮散性化合物が上記抗菌化合物である場合、抗菌化合物の含有量は、原液中、1w/v%以上であることが好ましく、10w/v%以上であることがより好ましい。一方、抗菌化合物の含有量は、原液中、100w/v%であってもよい。抗菌化合物の含有量が1w/v%未満である場合、エアゾール製品は、所望する抗菌効果を充分に発揮できないか、広範囲に拡散されにくい可能性がある。
【0027】
原液は、適宜溶媒を含んでもよい。溶媒は、上記揮散性化合物を適宜溶解させて、エアゾール容器内で噴射剤と混合させやすくしたり、揮散性化合物の室内への拡散の補助するために、含有され得る。
【0028】
溶媒は、特に限定されない。一例を挙げると、溶媒は、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)等である。これらの中でも、溶媒は、揮散性化合物を溶解しやすく、安価であり、取り扱い易い点から、エタノール、IPAであることが好ましい。
【0029】
溶媒を含む場合の溶媒の含有量は、原液中、0質量%を超えることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、溶媒の含有量は、原液中、99質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。溶媒の含有量が99質量%を超える場合、エアゾール製品は、揮散性化合物の配合量が少なくなり、揮散性化合物を配合することによる効果が充分に得られない可能性がある。
【0030】
原液は、好適に配合される上記揮散性化合物や溶媒のほかに、任意成分が含まれてもよい。一例を挙げると、任意成分は、不揮散性または難揮散性化合物;非イオン、陰イオンまたは陽イオン界面活性剤;ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤;タルク、珪酸等の無機粉体、消臭剤、色素等である。
【0031】
(噴射剤)
噴射剤は、原液とともにエアゾール容器に加圧充填される内容物である。噴射剤は、後述するエアゾール定量バルブが作動されることにより、原液とともに後述する噴射ボタンの噴口から噴射される。その際、噴射剤は、原液を噴射する際の推進力を付与するとともに、エアゾール組成物を微粒子化し、空間中に拡散させる。
【0032】
噴射剤の種類は特に限定されない。一例を挙げると、噴射剤は、液化ガスである。液化ガスとしては、液化石油ガス、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等の炭素数3~5個の脂肪族炭化水素、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン等のハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物等が例示される。液化ガスは、圧縮ガスが併用されてもよい。圧縮ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス、圧縮空気等が例示される。これらの中でも、噴射剤は液化石油ガスが好ましい。
【0033】
本実施形態のエアゾール製品は、20℃における原液と噴射剤との配合割合(体積比)が1/99~10/90であればよく、1/99~9/91であることが好ましく、1.5/98.5~8/92であることがより好ましい。噴射剤の配合割合(体積比)が、99体積%を超える場合、エアゾール組成物は、有効成分が少なくて効果が発現し難い可能性がある。一方、噴射剤の配合割合(体積比)が、90体積%未満である場合、エアゾール組成物は、噴射後に拡散性が低下する可能性がある。
【0034】
原液および噴射剤が充填された状態において、25℃におけるエアゾール定量バルブの内圧は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.25MPa以上であることがより好ましい。また、25℃におけるエアゾール定量バルブの内圧は、0.8MPa以下であることが好ましく、0.7MPa以下であることがより好ましい。エアゾール定量バルブの内圧が0.2MPa未満である場合、エアゾール組成物は、噴射後に、噴口から液ダレする可能性がある。一方、エアゾール定量バルブの内圧が0.8MPaを超える場合、エアゾール組成物は、エアゾール容器から漏洩する可能性がある。なお、エアゾール定量バルブの内圧は、たとえば25℃でWGA-710C計装用コンディショナ((株)共和電業製)に取り付けたPGM-E小型圧力センサ((株)共和電業製)をエアゾール定量バルブに接続することにより測定することができる。
【0035】
上記した原液および噴射剤を含むエアゾール製品は、エアゾール容器に加圧充填される。エアゾール容器は、特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール容器は、上部に開口が形成された略円筒状の耐圧容器である。開口は、エアゾール組成物を充填するための充填口であり、原液が充填されたのち、後述するエアゾール定量バルブによって閉止される。
【0036】
エアゾール容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール容器の材質は、アルミニウムやブリキ等の金属、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0037】
エアゾール定量バルブは、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口に取り付けられ、開口を閉止する。また、本実施形態のエアゾール定量バルブは、エアゾール容器から取り出されたエアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている。定量室の容積は、1回の噴射によって噴射されるエアゾール組成物の容量に相当する。本実施形態の定量室の容積は、1.0~3.0mLである。
【0038】
ステム機構は、エアゾール定量バルブに取り付けられる部位であり、エアゾール定量バルブに取り込まれた原液および噴射剤を、後述する噴射ボタンに送るための内部通路が形成されている。内部通路は、ステム機構のステムラバーによって適宜開閉される。
【0039】
噴射ボタンは、エアゾール容器から、エアゾール定量バルブによってステム機構を介して取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材である。噴射ボタンには、エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成されている。
【0040】
噴口の数、寸法および形状は特に限定されない。一例を挙げると、噴口の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、噴口の寸法(噴口直径)は、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。また、噴口直径は、4.5mm以下であることが好ましく、3.0mm以下であることがより好ましく、0.9mm以下であることがさらに好ましい。噴口の形状(断面形状)は、円形、楕円形、角形、各種不定形であってもよい。また、噴口の総面積に関しては、0.03mm2以上であることが好ましく、0.1mm2以上であることがより好ましく、0.25mm2以上であることがさらに好ましい。また、噴口の総面積は、16mm2以下であることが好ましく、5mm2以下であることがより好ましく、3.5mm2以下であることがさらに好ましい。
【0041】
本実施形態のエアゾール製品は、使用者によって噴射ボタンが操作されることにより、ステム機構およびエアゾール定量バルブが作動し、エアゾール容器内と外部とが連通する。これにより、エアゾール容器内のエアゾール組成物は、エアゾール容器内と外部との圧力差に従ってエアゾール容器から一定量が取り出され、噴射部材の噴口から噴射される。
【0042】
本実施形態のエアゾール製品は、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLとなるよう調整されている。1回あたりの噴射量は、1.0mL以上であればよい。また、1回あたりの噴射量は、3.0mL以下であればよく、2.5mL以下であることが好ましく、2.2mL以下であることがより好ましい。1回あたりの噴射量が1.0mL未満である場合、噴射されたエアゾール組成物は、視認されにくい。一方、1回あたりの噴射量が3.0mLを超える場合、噴射されたエアゾール組成物は、粒子径が大きくなり、広範囲に拡散せず落下しやすい。
【0043】
なお、本実施形態のエアゾール製品は、上記した原液と噴射剤との配合割合を特定し、かつ、1回あたりの噴射量を1.0~3.0mLとなるよう調整することにより、噴射されたエアゾール組成物の視認性を向上させつつ、原液中のエアゾール組成物を広範囲に拡散させることを達成している。そのため、上記した1回あたりの噴射量を調整する方法は特に限定されない。1回あたりの噴射量は、たとえば、エアゾール定量バルブにおける定量室の容量、噴射ボタンを操作した際に、エアゾール容器内と外部とが連通する時間等を適宜調整することにより、調整され得る。
【0044】
本実施形態のエアゾール製品によって噴射されるエアゾール組成物は、噴口から20cm離れた位置における噴射荷重が、5gf以上であることが好ましく、9gf以上であることがより好ましい。また、エアゾール組成物は、噴口から20cm離れた位置における噴射荷重が40gf以下であることが好ましく、30gf以下であることがより好ましい。噴射荷重が上記範囲内となるよう調整されることにより、エアゾール製品は、噴射されたエアゾール組成物の視認性を向上させつつ、揮散性化合物を広範囲に拡散させやすい。なお、噴射されたエアゾール組成物の噴射荷重は、25℃の室温下で噴口から20cmの距離からデジタルフォースゲージ(型番:DS2-2N(株)イマダ製)に装着したΦ60mmの円状の平板の中心に向かってエアゾール組成物を水平方向に噴射した際の最大値を噴射荷重とし、平均を算出することにより算出し得る。
【0045】
本実施形態のエアゾール製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール製品は、エアゾール容器に原液を充填し、定量室の設けられたエアゾール定量バルブによってエアゾール容器の開口を閉止し、ステム機構を介して噴射剤を加圧充填することによって製造することができる。一例を挙げると、噴射ボタンとしては、トリガーボタン、プッシュダウンボタン等であってもよい。
【0046】
以上、本実施形態のエアゾール製品によれば、噴射されたエアゾール組成物が視認されやすく、かつ、揮散性化合物が広範囲に拡散される。
【0047】
<定量噴射型エアゾール製品の噴射方法>
本発明の一実施形態の定量噴射型エアゾール製品の噴射方法(以下、噴射方法ともいう)は、原液と、噴射剤とを、原液と噴射剤との配合割合(体積比)が1/99~10/90となるよう含むエアゾール組成物を、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLとなるよう噴射する方法である。
【0048】
本実施形態の噴射方法を実施するにあたり、エアゾール組成物およびエアゾール製品は、いずれも上記実施形態において説明したものと同様のものを使用し得る。
【0049】
本実施形態において、噴射回数は、1回であってもよい。本実施形態の噴射方法によれば、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLであるため、噴射回数が1回であっても、使用者は、噴射されたエアゾール組成物が視認しやすい。また、噴射回数が1回であっても、噴射されたエアゾール組成物は、拡散しやすく、広範囲に薬効が付与され得る。なお、本実施形態の噴射方法によれば、噴射回数が1回であっても所望の効果が得られるが、要すれば、噴射回数が2回以上であってもよい。
【0050】
以上、本実施形態の噴射方法によれば、噴射されたエアゾール組成物が視認されやすく、かつ、揮散性化合物が広範囲に拡散される。
【実施例
【0051】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0052】
<エアゾール製品>
使用したエアゾール製品の詳細を以下に示す。
エアゾール1:ボタン 噴口径φ0.6mmボタン、バルブ 0.2ccバルブ
エアゾール2:ボタン 噴口径φ0.6mmボタン、バルブ 1.0ccバルブ
エアゾール3:ボタン 噴口径φ1.0mmボタン、バルブ 1.0ccバルブ
エアゾール4:ボタン 噴口径φ2.0mmボタン、バルブ 1.0ccバルブ
エアゾール5:ボタン 噴口径φ2.0mmボタン、バルブ 2.2ccバルブ
エアゾール6:ボタン 噴口径φ0.5mm×8個ボタン、バルブ 1.0ccバルブ
エアゾール7:ボタン 噴口径φ1.0mm×3個ボタン、バルブ 1.0ccバルブ
【0053】
(実施例1)
揮散性化合物としてトランスフルトリン100質量部(原液、蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))を、容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原体と噴射剤との配合割合(容量比)が1.6/98.4となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を100mL作製した(バルブ、ボタンはエアゾール4に従った)。エアゾール製品の内圧(バルブの内圧。以下同様)(25℃)は0.45MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、19.5gfであった。なお、バルブの内圧は、25℃でWGA-710C計装用コンディショナ((株)共和電業)に取り付けたPGM-E小型圧力センサ((株)共和電業)をエアゾール定量バルブに接続することにより測定した。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0054】
(実施例2)
原体としてトランスフルトリン(蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))を、原液中の濃度が25重量/容量%となるように72質量部のイソプロピルアルコール(IPA)とともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が6.4/93.6となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール4に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.42MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、25.4gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0055】
(実施例3)
バルブ、ボタンをエアゾール5に従った以外は、実施例2と同様の方法により、エアゾール製品を作製した。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.43MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、24.8gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、35mgが噴射される。
【0056】
(実施例4)
バルブ、ボタンをエアゾール2に従った以外は、実施例2と同様の方法により、エアゾール製品を作製した。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.42MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、9.4gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0057】
(実施例5)
バルブ、ボタンをエアゾール3に従った以外は、実施例2と同様の方法により、エアゾール製品を作製した。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.42MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、11.6gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0058】
(実施例6)
原体としてトランスフルトリン(蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))を、原液中の濃度が62.5重量/容量%となるように31.6質量部のイソプロピルアルコール(IPA)とともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が2.6/97.4となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール2に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.45MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、9.8gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0059】
(実施例7)
バルブ、ボタンをエアゾール6に従った以外は、実施例2と同様の方法により、エアゾール製品を作製した。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.42MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、21.2gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0060】
(実施例8)
原体として100質量部のフタルスリン(蒸気圧:4.5×10-6mmHg(25℃))を、原液中の濃度が50重量/容量%となるように46質量部のイソプロピルアルコール(IPA)とともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が6.4/93.6となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール2に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.48MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、10.3gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、32mgが噴射される。
【0061】
(実施例9)
原体として100質量部のリナロール(香料化合物、蒸気圧:0.16mmHg(25℃))を、原液中の濃度が25重量/容量%となるように69質量部のイソプロピルアルコール(IPA)とともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が6.4/93.6となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール6に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.50MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、21.4gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0062】
(実施例10)
原体としてトランスフルトリン(蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))を、原液中の濃度が25重量/容量%となるように72.0質量部のミリスチン酸イソプロピル(IPM)とともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が6.4/93.6となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール6に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.42MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、19.5gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0063】
(実施例11)
バルブ、ボタンをエアゾール7に従った以外は、実施例2と同様の方法により、エアゾール製品を作製した。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.42MPaであり、噴口から20cm離れた水平位置における噴射荷重は、19.6gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0064】
(比較例1)
原体としてトランスフルトリン(蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))を、原液中の濃度が62.5重量/容量%となるように31.6質量部のイソプロピルアルコール(IPA)とともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が16/84となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール1に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.43MPaであり、噴口から20cm離れた位置における噴射荷重は、9.0gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、20mgが噴射される。
【0065】
(比較例2)
原体としてトランスフルトリン(蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))を、原液中の濃度が50重量/容量%となるように52.4質量部のミリスチン酸イソプロピル(IPM)とともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が16/84となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール1に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.42MPaであり、噴口から20cm離れた位置における噴射荷重は、10.7gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0066】
(比較例3)
原体としてトランスフルトリン(蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))を、原液中の濃度が10重量/容量%となるように87.5質量部のミリスチン酸イソプロピル(IPM)とともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が16/84となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール4に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.45MPaであり、噴口から20cm離れた位置における噴射荷重は、21.9gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0067】
(比較例4)
原体としてトランスフルトリン(蒸気圧:2.7×10-5mmHg(25℃))を、原液中の濃度が4.4重量/容量%となるように93.3質量部のイソペンタンとともに容量200mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が36/64となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、噴射ボタンを取り付けエアゾール製品を作製した(バルブ、ボタンはエアゾール4に従った)。エアゾール製品の内圧(25℃)は0.37MPaであり、噴口から20cm離れた位置における噴射荷重は、14.5gfであった。このエアゾール製品を用いることにより、原体は、1回あたり、16mgが噴射される。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
得られた実施例1~11および比較例1~4のエアゾール製品について、以下の評価方法に従って、揮散性化合物拡散率を測定した。結果を表1または表2に示す。なお、表1および表2の「噴口径」の欄において、噴口の個数が複数のであるボタンを用いた実施例には、噴口の個数も示されている。
【0071】
<揮散性化合物拡散率>
8畳チャンバー(換気条件:無換気)において、図1および図2に示される位置に直径9cmの金属シャーレを設置した。図1および図2は揮散性化合物拡散率の測定方法を説明するための8畳チャンバーCの模式図であり、図1は斜視図、図2は平面図である。8畳チャンバーCの寸法は、横幅lが360cm、奥行きmが360cm、高さnが270cmである。金属シャーレは、1か所(金属シャーレS1、Φ9cmステンレスシャーレを10個単位)が8畳チャンバーCの中央(横位置l1が180cm、奥行き位置m1が180cm)に置かれ、残る2か所(金属シャーレS2および金属シャーレS3)が8畳チャンバーCの入口扉D側の両端に置かれた。入口扉Dの高さ1mから、8畳チャンバーCの中央に向かってエアゾール製品を1回噴射した。4時間経過後に、金属シャーレS1~S3中の薬剤(原体)量を定量した。得られた定量値(薬剤量)から、以下の算出式にしたがい、揮散性化合物拡散率を測定した。
揮散性化合物拡散率(%)=100×(両端に置かれた金属シャーレS2および金属シャーレS3中の薬剤量の平均値)/中央に置かれた金属シャーレS1中の薬剤量
【0072】
<視認性>
エアゾール製品を1回噴射し、目視にて、視認の程度を確認した。図3は、視認性評価において○と評価された実施例4のエアゾール組成物の噴射状態を説明する写真である。図4は、視認性評価において×と評価された比較例1のエアゾール組成物の噴射状態を説明する写真である。
(評価基準)
○:エアゾール組成物は、目視にて視認可能であった。
×:エアゾール組成物は、目視にて視認することが困難であった。
【0073】
表1および表2に示されるように、実施例1~11のエアゾール製品を用いた場合、比較例1~4のエアゾール製品を用いた場合に比べ、揮散性化合物拡散率が高く、広範囲に原体を適用できたことが分かった。また、実施例1~11のエアゾール製品は、いずれも、噴射時に目視にて視認することができた。中でも、実施例3のエアゾール製品は、噴射時に噴射されたエアゾール組成物を明確に視認することができた。これにより、本発明のエアゾール製品は、1回噴射により、噴射されたエアゾール組成物が視認されやすく、かつ、揮散性化合物を広範囲に拡散させ得ることが分かった。なお、比較例1~2のエアゾール製品を用いた場合、噴射時に、噴射されたエアゾール組成物を目視にて視認することが困難であった。
【符号の説明】
【0074】
C 8畳チャンバー
D 入口扉
S1、S2、S3 金属シャーレ
l 横幅
l1 横位置
m 奥行き
m1 奥行き位置
n 高さ
図1
図2
図3
図4