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特許7166271発泡成形品、発泡成形品の製造方法及び発泡成形品の成形型構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】発泡成形品、発泡成形品の製造方法及び発泡成形品の成形型構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/12 20060101AFI20221028BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20221028BHJP
   B29C 44/58 20060101ALI20221028BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20221028BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20221028BHJP
【FI】
B29C44/12
B29C44/00 A
B29C44/58
B29L31:58
B29K75:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019550904
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2018036726
(87)【国際公開番号】W WO2019087647
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2017210888
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017210872
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 弘一朗
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-072916(JP,A)
【文献】特開2007-082909(JP,A)
【文献】特開2005-125695(JP,A)
【文献】特開2010-023403(JP,A)
【文献】特開2010-017241(JP,A)
【文献】特開2010-018058(JP,A)
【文献】特開2010-022705(JP,A)
【文献】特開2008-023084(JP,A)
【文献】特開2008-183129(JP,A)
【文献】特開2011-201105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B29C 39/00-39/44
A47C 27/00-27/22
A47C 7/00-7/74
B68G 7/06
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に凸条部又は凹条部からなる型面形状変形部を有する第1の型部材と、該第1の型部材に対向して内面にシート状のサポート材が内面に貼着された第2の型部材とにより形成されるキャビティ内に、発泡性樹脂材料を注入して発泡させることにより、該発泡性樹脂材料からなる発泡体本体と前記サポート材とを一体成形する発泡成形品の製造方法において、
前記サポート材に突起部を取付けて前記第2の型部材に貼着する工程を含み、
前記突起部は、前記型面形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であって、前記サポート材において前記型面形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に、前記型面形状変形部側に向かって突出する態様で設けられ
前記突起部の両端は、ねじれる様に縫製してあることを特徴とする発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
内面に凸状部又は凹状部からなる型面形状変形部を有する第1の型部材と、該第1の型部材に対向して内面にシート状のサポート材が内面に貼着された第2の型部材とにより形成されるキャビティ内に、発泡性樹脂材料を注入して発泡させることにより、該発泡性樹脂材料からなる発泡体本体と前記サポート材とを一体成形する発泡成形品の製造方法において、
前記サポート材に突起部を取付けて前記第2の型部材に貼着する工程を含み、
前記突起部は、一方向に伸長する柱形状であって、前記サポート材において前記型面形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に、前記型面形状変形部側に向かって突出する態様で並列して複数設けられ
前記突起部の両端は、ねじれる様に縫製してあることを特徴とする発泡成形品の製造方法。
【請求項3】
内面に凸条部又は凹条部からなる型面形状変形部を有する第1の型部材と、該第1の型部材に対向する型部材であって、内面にシート状のサポート材が貼着された第2の型部材と、を有し、
前記第1の型部材と前記第2の型部材とにより形成されるキャビティ内に発泡性樹脂材料を注入して発泡させることにより、該発泡性樹脂材料からなる発泡体本体と前記サポート材とを一体成形する発泡成形品の成形型構造において、
前記サポート材には、前記型面形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、該突起部は、前記型面形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であり、
前記突起部の両端は、ねじれる様に縫製してあることを特徴とする発泡成形品の成形型構造。
【請求項4】
発泡性樹脂材料からなり表面に凹条又は凸条となる形状変形部を有する発泡体本体と、該発泡体本体の前記形状変形部の形成面と対向する表面を覆うシート状のサポート材とが一体成形された発泡成形品において、
前記サポート材には、前記形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、該突起部は、前記形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であり、
前記突起部の両端は、ねじれる様に縫製してあることを特徴とする発泡成形品。
【請求項5】
内面に凸状部又は凹状部からなる型面形状変形部を有する第1の型部材と、該第1の型部材に対向する型部材であって、内面にシート状のサポート材が貼着された第2の型部材と、を有し、
前記第1の型部材と前記第2の型部材とにより形成されるキャビティ内に発泡性樹脂材料を注入して発泡させることにより、該発泡性樹脂材料からなる発泡体本体と前記サポート材とを一体成形する発泡成形品の成形型構造において、
前記サポート材には、前記型面形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突
起部が設けられ、
該突起部は、一方向に伸長する柱形状であって、並列して複数設けられ
前記突起部の両端は、ねじれる様に縫製してあることを特徴とする発泡成形品の成形型構造。
【請求項6】
発泡性樹脂材料からなり表面に凹状又は凸状となる形状変形部を有する発泡体本体と、該発泡体本体の前記形状変形部の形成面と対向する表面を覆うシート状のサポート材とが一体成形された発泡成形品において、
前記サポート材には、前記形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、
該突起部は、一方向に伸長する柱形状であって、並列して複数設けられ
前記突起部の両端は、ねじれる様に縫製してあることを特徴とする発泡成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体本体とサポート材とが一体成形された発泡成形品、該発泡成形品の製造方法及び該発泡成形品の成形型構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の座席に用いられるシートパッド等には、弾力性のあるポリウレタン等の発泡成形品が用いられている。このような発泡成形品は、例えば、発泡性樹脂材料からなる発泡性本体と、これを補強するサポート材とを備えており、成形型のキャビティ内にサポート材を配置した状態で、液状の発泡性樹脂材料を注入し、これを発泡させることにより、発泡体本体とサポート材とを一体成形している。
【0003】
この一体成形において、キャビティ内のガスは、発泡性樹脂材料の進行に伴って、成形型の合せ面間から外部に排出されるが、ガスが抜け切らずにキャビティ内に残留すると、発泡成形品の表面に欠肉部が発生してしまう。
【0004】
成形型のキャビティの形状は発泡成形品の形状によって決定され、例えば、車両用のシートパッド等では、発泡体本体の表面に凹状又は凸状となる形状変形部が形成されることがある。成形型に、この形状変形部と対応する凸状部又は凹状部を設けた場合、成形型の内面に形成された凸状又は凹状の段差によって発泡性樹脂材料の流動性が阻害され、成形型の凸状部や凹状部の近傍においてガスが残留しやすくなることから、発泡体本体に欠肉部が発生しやすくなる。
【0005】
このような欠肉部の発生を抑制するための対策として、例えば、特許文献1では、発泡成形品を形成する成形型の内部にサポート材を配置し、このサポート材の縁部に、キャビティ内に突出するシート状の流動方向調整ヒレを設ける技術が採用されている。この流動方向調整ヒレは、キャビティの凹状部に対して、発泡性樹脂材料の流動方向上流側に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-125695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、発泡性樹脂材料が流動方向調整ヒレに衝突して流動方向をキャビティの凹状部に向かわせることにより、凹状部に欠肉部が発生することを防止している。
【0008】
しかしながら、流動方向調整ヒレは一枚のシート状であるので、発泡性樹脂材料の流動によって容易に倒れやすく、ガスの残留を十分に解消することができないという問題があった。
【0009】
さらに、発泡成形品の欠肉部は、キャビティに形成された凹状部のみならず、凸状部に対しても発生することから、凹状部及び凸状部の両方に対してもガス溜りの発生を抑制して安価に欠肉部の発生を防止できる技術が求められていた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発泡成形品の表面に形成される凹状部又は凸状部に対して欠肉部の発生を防止することができ、且つコストの増加を抑制可能な発泡成形品、発泡成形品の製造方法及び発泡成形品の成形型構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る発泡成形品の製造方法は、内面に凸条部又は凹条部からなる型面形状変形部を有する第1の型部材と、該第1の型部材に対向して内面にシート状のサポート材が内面に貼着された第2の型部材とにより形成されるキャビティ内に、発泡性樹脂材料を注入して発泡させることにより、該発泡性樹脂材料からなる発泡体本体と前記サポート材とを一体成形する発泡成形品の製造方法において、前記サポート材に突起部を取付けて前記第2の型部材に貼着する工程を含み、前記突起部は、前記型面形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であって、前記サポート材において前記型面形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に、前記型面形状変形部側に向かって突出する態様で設けられることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、サポート材に突起部を取付けて第2の型部材に貼着する工程を含み、この突起部は、型面形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であって、第1の型部材の型面形状変形部と対向する領域及び/又は該領域の近傍に、型面形状変形部側に向かって突出する態様で設けられるので、キャビティ内に発泡性樹脂材料を注入した際に、型面形状変形部の延在方向に沿って伸長する突起部の表面に沿って発泡性樹脂材料が流動し、凸条又は凹条の型面形状変形部に十分に充填され、ガスの残留を防止することができる。これにより、キャビティに形成された凸状部又は凹状部の形状が一方向に延在する凸条又は凹条となっている場合に、凸条又は凹条の全長に亘って発泡性樹脂材料を十分に充填することができる。また、突起部は、柱形状を有しているので、突起部に流動性の発泡性樹脂材料が当接しても押し倒されにくく、ガス溜りを防止する効果が高いものとなる。また、突起部を柱形状にする簡易な構成で欠肉部を防止して品質を確保できるので、製造コストを抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係る発泡成形品の製造方法は、内面に凸状部又は凹状部からなる型面形状変形部を有する第1の型部材と、該第1の型部材に対向して内面にシート状のサポート材が内面に貼着された第2の型部材とにより形成されるキャビティ内に、発泡性樹脂材料を注入して発泡させることにより、該発泡性樹脂材料からなる発泡体本体と前記サポート材とを一体成形する発泡成形品の製造方法において、前記サポート材に突起部を取付けて前記第2の型部材に貼着する工程を含み、前記突起部は、一方向に伸長する柱形状であって、前記サポート材において前記型面形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に、前記型面形状変形部側に向かって突出する態様で並列して複数設けられることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、サポート材に突起部を取付けて第2の型部材に貼着する工程を含み、この突起部は、一方向に伸長する柱形状であって、第1の型部材の型面形状変形部と対向する領域及び/又は該領域の近傍に、型面形状変形部側に向かって突出する態様で並列して複数設けられるので、キャビティ内に発泡性樹脂材料を注入した際に、突起部の表面に沿って発泡性樹脂材料が波状に流動して型面形状変形部に十分に充填され、ガスの残留を防止することができる。また、突起部は、柱形状を有しているので、突起部に流動性の発泡性樹脂材料が当接しても押し倒されにくく、ガス溜りを防止する効果が高いものとなる。また、突起部を柱形状にする簡易な構成で欠肉部を防止して品質を確保できるので、製造コストを抑えることができる。
【0015】
これら製造方法の発明のより好ましい態様は、以下の(1)~(2)の通りである。
【0016】
(1)前記突起部の両端は、ねじれる様に縫製してあることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、片面形状変形部の延在方向において、欠肉部が発生しやすい箇所に突起部が一番高く突出するように調整することができる。これにより、ガス抜きが効率よく行われ、欠肉部の発生をより抑制することができる。
【0018】
(2)前記発泡成形品は、前記片面形状変形部により形成される凹条又は凸条の形状変形部を有し、前記発泡性樹脂材料が注入されていない状態において、前記突起部の高さは、前記形状変形部の近傍の前記発泡成形品の厚さの30%~70%の大きさであることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、突起部の高さが発泡成形品の厚さに対して適切な大きさに設定されるので、ガス溜りを防止する効果をより高めることができる。
【0020】
また、本発明に係る発泡成形品の成形型構造は、内面に凸条部又は凹条部からなる型面形状変形部を有する第1の型部材と、該第1の型部材に対向する型部材であって、内面にシート状のサポート材が貼着された第2の型部材と、を有し、前記第1の型部材と前記第2の型部材とにより形成されるキャビティ内に発泡性樹脂材料を注入して発泡させることにより、該発泡性樹脂材料からなる発泡体本体と前記サポート材とを一体成形する発泡成形品の成形型構造において、前記サポート材には、前記型面形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、該突起部は、前記型面形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、サポート材には、第1の型部材の型面形状変形部と対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、この突起部が、型面形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であるので、キャビティ内に発泡性樹脂材料を注入した際に、突起部の表面に沿って発泡性樹脂材料が流動して凸条部又は凹条部の型面形状変形部に十分に充填され、ガスの残留を防止することができる。また、突起部は、柱形状を有しているので、突起部に流動性の発泡性樹脂材料が当接しても押し倒されにくく、ガス溜りを防止する効果が高いものとなる。また、突起部を柱形状にする簡易な構成で欠肉部を防止して品質を確保できるので、製造コストを抑えることができる。
【0022】
また、本発明に係る発泡成形品の成形型構造は、内面に凸状部又は凹状部からなる型面形状変形部を有する第1の型部材と、該第1の型部材に対向する型部材であって、内面にシート状のサポート材が貼着された第2の型部材と、を有し、前記第1の型部材と前記第2の型部材とにより形成されるキャビティ内に発泡性樹脂材料を注入して発泡させることにより、該発泡性樹脂材料からなる発泡体本体と前記サポート材とを一体成形する発泡成形品の成形型構造において、前記サポート材には、前記型面形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、該突起部は、一方向に伸長する柱形状であって、並列して複数設けられることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、サポート材には、第1の型部材の型面形状変形部と対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、この突起部が、一方向に伸長する柱形状であって、並列して複数設けられるので、キャビティ内に発泡性樹脂材料を注入した際に、突起部の表面に沿って発泡性樹脂材料が波状に流動して型面形状変形部に十分に充填され、ガスの残留を防止することができる。また、突起部は、柱形状を有しているので、突起部に流動性の発泡性樹脂材料が当接しても押し倒されにくく、ガス溜りを防止する効果が高いものとなる。また、突起部を柱形状にする簡易な構成で欠肉部を防止して品質を確保できるので、製造コストを抑えることができる。
【0024】
また、本発明に係る発泡成形品は、発泡性樹脂材料からなり表面に凹条又は凸条となる形状変形部を有する発泡体本体と、該発泡体本体の前記形状変形部の形成面と対向する表面を覆うシート状のサポート材とが一体成形された発泡成形品において、前記サポート材には、前記形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、該突起部は、前記形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、発泡性樹脂材料からなる発泡体本体とサポート材とが一体成形された発泡成形品において、サポート材には、形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられており、突起部は、形状変形部の延在方向に沿って伸長する柱形状であるので、サポート材とともに発泡性樹脂材料により発泡体本体を一体成形する際に、発泡性樹脂材料が突起部の表面に沿って流動して凹条又は凸条となる形状変形部に十分に充填され、ガスの残留を防止することができる。また、突起部は、柱形状を有しているので、突起部に流動性の発泡性樹脂材料が当接しても押し倒されにくく、ガス溜りを防止する効果が高いものとなる。また、突起部を柱形状にする簡易な構成で欠肉部を防止して品質を確保できるので、製造コストを抑えることができる。
【0026】
この発泡成形品の発明のより好ましい態様は、以下の(3)~(7)の通りである。
【0027】
(3)前記突起部は、前記発泡体本体又は前記サポート材と同一材料で形成されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、突起部が発泡体本体又はサポート材と同一材料で形成されているので、部材コストを抑えることができるとともに、突起部を設けることによる異物感を低減することができる。
【0029】
(4)前記突起部は、一枚のシート状部材によって形成されており、前記形状変形部の延在方向に沿って並行に延びる第1の接合部及び第2の接合部と、略円弧状の断面を有して前記第1接合部と前記第2接合部とを連結する本体部とを有することを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、一枚のシート状部材を2つの接合部によりサポート材に接合し、各接合部の間を連結する本体部により略円弧状断面を有する突起部を形成することができるので、突起部を簡易かつ安価に形成することができる。また、1つの本体部を2つの接合部によりサポート材に接合支持しているので、突起部をシート状部材で形成していても倒れにくい構造となっている。
【0031】
(5)前記形状変形部は凹条に形成され、前記突起部は、一枚のシート状部材で形成され、前記形状変形部の延在方向に沿って伸長する筒状であることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、発泡体本体の形状変形部が凹条であり、突起部が形状変形部の延在方向に沿って伸長する筒状であるので、凹条の形状変形部に対応した筒状の突起部により、発泡性樹脂材料の流れを変え、発泡性樹脂材料を適切に充填させて欠肉部の発生を防止することができる。また、突起部を一枚のシート状部材で形成することで、コストを抑えることができるとともに、完成品においては、筒状の突起部を発泡性樹脂材料により潰した状態にすることができる。
【0033】
(6)前記突起部は、前記形状変形部の全長の30%~80%の長さ範囲に形成されていることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、突起部の長さが長尺状の形状変形部に対応して適切に設定されるので、ガス溜りの発生を防止する効果をより高めることができる。
【0035】
(7)前記突起部の幅は前記形状変形部の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、凹条の形状変形部の全幅寸法に亘って発泡性樹脂材料の流動方向を突起部により調整することができるので、欠肉部の発生をより確実に抑制することができる。
【0037】
また、本発明に係る発泡成形品は、発泡性樹脂材料からなり表面に凹状又は凸状となる形状変形部を有する発泡体本体と、該発泡体本体の前記形状変形部の形成面と対向する表面を覆うシート状のサポート材とが一体成形された発泡成形品において、前記サポート材には、前記形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に突起部が設けられ、該突起部は、一方向に伸長する柱形状であって、並列して複数設けられたことを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、発泡性樹脂材料からなる発泡体本体とサポート材とが一体成形された発泡成形品において、サポート材に突起部が設けられており、突起部は、一方向に伸長する柱形状であって、形状変形部に対向する領域及び/又は該領域の近傍に並列して複数設けられているので、サポート材とともに発泡性樹脂材料により発泡体本体を一体成形する際に、発泡性樹脂材料が突起部の表面に沿って波状に流動して凹状又は凸状となる形状変形部に十分に充填され、ガスの残留を防止することができる。また、突起部は、柱形状を有しているので、突起部に流動性の発泡性樹脂材料が当接しても押し倒されにくく、ガス溜りを防止する効果が高いものとなる。また、突起部を柱形状にする簡易な構成で欠肉部を防止して品質を確保できるので、製造コストを抑えることができる。
【0039】
この発泡成形品の発明のより好ましい態様は、以下の(8)~(14)の通りである。
【0040】
(8)複数の前記突起部は、前記発泡体本体又は前記サポート材と同一材料で形成されていることを特徴とする。
【0041】
この構成によれば、突起部が発泡体本体又はサポート材と同一材料で形成されているので、部材コストを抑えることができるとともに、突起部を設けることによる異物感を低減することができる。
【0042】
(9)隣り合う前記突起部の間に、該突起部の起立状態を確保する補強構造が形成されていることを特徴とする。
【0043】
この構成によれば、補強構造により突起部の起立状態を確保できるので、形状変形部側に発泡性樹脂材料をより確実に充填することができる。
【0044】
(10)前記突起部は、隣り合う少なくとも2つの前記突起部の対向面が互いに接触するように形成されていることを特徴とする。
【0045】
この構成によれば、接触状態にある2つの突起部の対向面により、それぞれの突起部の起立状態を確保することができ、簡易かつ安価な構成で、発泡性樹脂材料の流れを変えて、発泡性樹脂材料の形状変形部への充填をより確実にすることができる。
【0046】
(11)前記形状変形部は、一方向に延在する凹条であり、複数の前記突起部は、一枚のシート状部材で形成され、前記形状変形部の延在方向に沿って伸長する筒状であって隣接して配置されていることを特徴とする。
【0047】
この構成によれば、発泡体本体の形状変形部が凹条であり、突起部が形状変形部の延在方向に沿って伸長する筒状であるので、凹条の形状変形部に対応した筒状の突起部により発泡性樹脂材料を適切に充填させて欠肉部の発生を防止することができる。また、突起部を一枚のシート状部材で形成することで、コストを抑えることができるとともに、完成品においては、筒状の突起部を発泡性樹脂材料により潰した状態にすることができる。
【0048】
(12)前記形状変形部は、一方向に延在する凹条であり、前記突起部は、一枚のシート状部材によって2つ設けられており、前記形状変形部の延在方向に沿って並行に延びる第1接合部、第2接合部及び第3接合部と、略円弧状の断面を有して前記第1接合部と前記第2接合部とを連結する第1本体部と、略円弧状の断面を有して前記第2接合部と前記第3接合部とを連結する第2本体部とを有することを特徴とする。
【0049】
この構成によれば、一枚のシート状部材を3つの接合部によりサポート材に接合し、各接合部の間を連結する2つの本体部により略円弧状断面を有する2つの突起部を形成することができるので、突起部を簡易かつ安価に形成することができる。
【0050】
(13)並列する複数の前記突起部の全幅寸法が、これと対向する前記形状変形部の幅寸法よりも大きいことを特徴とする。
【0051】
この構成によれば、複数の突起部により、形状変形部の全幅寸法に亘って発泡性樹脂材料の流動方向を調整することができるので、欠肉部の発生をより確実に抑制することができる。
【0052】
(14)隣り合う2つの前記突起部の高さが、互いに異なることを特徴とする。
【0053】
この構成によれば、突起部の高さを形状変形部に合わせて異なる高さにすることで、形状変形部における発泡性樹脂材料の充填がより確実なものとなる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、コストを抑えながら、発泡成形品の表面に形成される凹状部及び凸状部に対して欠肉部の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の一実施の形態である発泡成形品を用いた車両用シートパッドを示す斜視図。
図2】(a)は図1のII-II線断面図、(b)は(a)の要部拡大断面図。
図3】サポート材に突起部を取付けた状態を示す斜視図。
図4】成形型を示す断面図。
図5図4に示す成形型の要部拡大図。
図6】シートパッドの製造工程を説明する図5と同様の要部拡大図。
図7】シートパッドの製造工程を説明する図5と同様の要部拡大図。
図8】(a)~(b)は、シートパッドにおける突起部の変形例1~2を説明する図。
図9】シートパッドにおける突起部の変形例3を説明する図。
図10】突起部の変形例4を示す図3と同様の斜視図。
図11】突起部の変形例5を説明する図であり、(a)は突起部が取付けられたサポート材を示す斜視図、(b)はシートパッドの要部拡大断面図。
図12】突起部16の変形例6を説明する図であり、突起部が取り付けられたサポート材を上方から見た平面図。
図13】シートパッドの変形例を説明する図であり、(a)は図5と同様の要部拡大図、(b)はシートパッドの要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下の実施の形態では、発泡成形品として車両用シートパッド10、特に、自動車の前部座席のシートバック部のシートバックパッドを例にとって説明する。なお、本発明は車両用シートパッドに限られず、発泡性樹脂材料で形成された発泡体本体と、これと一体成形されるサポート材とを備えた発泡成形品に適用することができる。
【0057】
図1は、本発明の一実施形態である発泡成形品を用いた車両用シートパッド10である、前部座席のシートバックパットを後方側から見た斜視図であり、図2(a)は、図1のII-II線断面図、図2(b)は、図2(a)の要部拡大断面図である。
【0058】
本実施の形態の車両用シートパッド10は、発泡性樹脂材料により形成された発泡体本体12と、これを補強するサポート材14とを備え、サポート材14には突起部16が取付けられている。
【0059】
発泡体本体12は、前面側が乗員の背中が当たる背もたれ部となるパッド本体部20と、パッド本体部20の上縁及び左右の側縁のそれぞれから後方に延出する延出部22と、延出部22からパッド本体部20の背面の中央側へ張り出した張出部24とを有する。パッド本体20と張出部24との間には隙間が形成される。なお、以下の説明では、パッド本体部20の上縁からの延出部22及び張出部24を上部延出部22a及び上部張出部24aといい、パッド本体部29の左右側縁からの延出部22及び張出部24を側部延出部22b,22c及び側部張出部24b,24cという。
【0060】
上部張出部24aの外面側の表面には、周辺表面に比べて凹状となる形状変形部26が形成されている。図示例の形状変形部26は、車両用シートパッド10の幅方向である左右方向に直線状に延びる凹条に形成されており、この凹条は上部張出部24aの左右両端に亘って延在している。なお、本実施の形態において形状変形部26は、その周辺の緩やかな曲面表面27a,27bに比して高い傾斜角で凹となる部分であり、凹条の幅寸法が長さ方向でほぼ一定となるように設定されている。
【0061】
サポート材14は、布製のシート状部材であって、発泡体本体12の裏側表面である内側面12aのほぼ全域に亘って設けられている。
【0062】
突起部16は、サポート材14の内面であって、形状変形部26と対向する領域及び/又は該領域の近傍に取付けられ、さらに、形状変形部26の幅方向に並んで複数設けられる。突起部16は、形状変形部26の延在方向に沿って伸長する柱形状に形成されており、略円弧状断面又は多角形状断面を有する。ここで、柱形状とは、中実の柱形状と、筒形状などの中空の柱形状とを含む意味であり、略円弧状とは、円弧形状のみならず、円形状や半円形状、凸曲面形状などを含む意味である。
【0063】
本実施の形態において突起部16は、サポート材14と同一材料の一枚のシート状部材で形成されており、形状変形部26の延在方向に沿って伸長する断面略半円形状の筒状であって、形状変形部26と対向する領域に、対向面が互いに接触した状態で2つ設けられている。また、後述するように、突起部16は、発泡成形工程において発泡性樹脂材料により押し潰されることにより、筒形状が潰れた状態になっている場合もある。
【0064】
図3は、サポート材14に突起部16を取付けた状態を示す斜視図である。突起部16は、一枚のシート状部材(以下、突起部用シート部材という)によって2つ設けられている。突起部用シート部材は、サポート材14に接合された第1接合部(第1の接合部)31、第2接合部(第2の接合部)32及び第3接合部33と、第1接合部31と第2接合部32とを連結する第1本体部(本体部)35と、第2接合部32と第3接合部33とを連結する第2本体部36とを有し、各接合部31,32,33は、一方向に並行して延びており、各本体部35,36は、略半円形状の断面を有している。各接合部31,32,33では、サポート材14と突起部用シート部材とが縫着或いは接着剤等に接着されている。第1本体部35により第1の突起部16-1が形成され、第2本体部36により第2の突起部16-2が形成される。
【0065】
このように、一枚の突起部用シート部材を3つの接合部31,32,33によりサポート材14に接合し、各接合部の間を連結する2つの本体部35,36により2つの突起部16-1,16-2を形成することで、2つの突起部16を簡易かつ安価に形成することができる。さらに、突起部用シート部材をサポート材14と同一材料とすることで部材コストを低減したり、突起部16を設けることによる異物感を低減したりすることができる。なお、図示していないが、突起部用シート部材において、接合部31,32,33となる部位の両端部に、縫着する際の目印となる切り欠きを設けてもよい。
【0066】
隣り合う突起部16-1,16-2の間には、各突起部16の起立状態を確保する補強構造が形成されている。これにより、後述する発泡成形工程において、発泡性樹脂材料Mにより突起部16を倒れにくくすることができる。本実施の形態では、隣接する突起部16-1,16-2の対向面を互いに接触した状態とすることで、各突起部16の起立状態を確保する補強構造を構成しているが、補強用のシート等を別途追加してもよい。本実施の形態のように、突起部16自体によって補強構造を構成することで、コストを抑え、構造を簡易化することができる。
【0067】
また、各突起部16-1,16-2の長さL2は、形状変形部26の長さL1(図1参照)の30%~80%の長さに設定される。また、各突起部16-1,16-2と、形状変形部26とは、長さ方向の中央部が重なるように配置されている。このように、突起部16の長さを長尺状の形状変形部26に対応させて適切に設定することで、後述する発泡成形工程において、ガス溜りの発生を防止する効果をより高めることができる。
【0068】
車両用シートパッド10の成形は、上述のように、サポート材14に突起部16を取付け(突起部取付工程)、その後、図4に示すような成形型50により、サポート材14と発泡体本体12とを一体成形することにより行われる。なお、図4は、成形型50内にサポート材14を貼着して発泡性樹脂材料Mを注入し、型締めした状態を示している。
【0069】
成形型50は、下型52と、上型(第1の型部材)54と、これらの間に配置されてピストンシリンダ51により駆動される中子(第2の型部材)56とを備える。上型54及び中子56は、下型52の一端側に対し、それぞれ支持軸(図示略)を介して開閉可能に連結されている。成形型50が図5に示す型締め状態となった際に、各型の成形面の間で車両用シートパッド10を成形するキャビティ60が構成される。車両用シートパッド10は、前面が下型52を向く態様で成形される。
【0070】
キャビティ60は、パッド本体部20を成形する第1空間部61と、延出部22を成形する第2空間部62と、張出部24を成形する第3空間部63とを有する。第1及び第2空間部61,62は、主に下型52及び中子56によって形成され、第3空間部63は互いに対向する上型54及び中子56により形成される。
【0071】
上型54の成形面(内面)には、凹状部又は凸状部からなる型面形状変形部58が形成されている。型面形状変形部58は、車両用シートパッド10の形状変形部26に対応した凹状又は凸状に形成された部分であり、本実施の形態では、形状変形部26の凹条に対応する凸条に形成されている。
【0072】
次に、成形型50を用いて、突起部16が取付けられたサポート材14と発泡体本体とを一体成形する工程を説明する。
【0073】
まず、下型52に対して、上型54及び中子56を型開きし、サポート材14を中子45の成形面(内面)に、例えば、磁性シール等の固着部材を用いて貼着する(サポート材貼着工程)。この際、突起部16は、上型54の型面形状変形部58と対向する領域及び/又は該領域の近傍に、型面形状変形部58側に突出するように配置される。本実施の形態では、2つの筒状の突起部16-1,16-2が、型面形状変形部58と対向する領域に、型面形状変形部58の延在方向に沿って伸長するように、並列状態で設けられる。なお、各型の成形面には、予め離型材が塗布される。
【0074】
図5に示すように、複数の突起部16-1,16-2の全幅寸法W2は、型面形状変形部58の幅寸法(すなわち、車両用シートパッド10の形状変形部26の幅寸法)よりも大きく設定されることが好ましい。また、凸条の型面形状変形部50の頂部(すなわち、凹条の形状変形部26の底部)が、隣接する2つの突起部16-1,16-2の間に位置するように配置されることが好ましい。また、突起部16の高さHは、型面形状変形部58の近傍のキャビティ60の厚さDの30~70%の大きさ(すなわち、車両用シートパッド10の形状変形部26の近傍の厚さの30~70%の大きさ)に設定される。
【0075】
次に、第1空間部61を形成する下型52の成形面に、例えばウレタン原液等の発泡性樹脂材料Mを所定量注入する(材料注入工程)。その後、図4に示すように、この状態で上型54及び中子56を型締めし、発泡樹脂原料を発泡させる(型締工程)。
【0076】
発泡性樹脂材料Mが第1空間部61内で発泡して充満すると、その発泡の進行に伴って、発泡性樹脂材料Mが第2空間部62から第3空間部63へと順に充填されていく(発泡成形工程)。キャビティ60内のガスは、各型の合わせ面で形成される型分割線(パーティングライン)PL1,PL2から外部に排出される。
【0077】
図6において矢印で示すように、発泡性樹脂材料Mが型面形状変形部58と突起部16との間を通過する際には、発泡性樹脂材料Mが各突起部16の表面に沿って波状に流動して進行する。これにより、発泡性樹脂材料Mが型面形状変形部58へ向かって押し流され、型面形状変形部58近傍のガスの残留が防止される。特に、型面形状変形部58が凸状である場合、凸状の下流側に形成される窪み部分58aにガス残りが発生しやすくなるが、これの対向領域に突起部16が設けられることにより、発泡性樹脂材料Mが窪み部分58aへ押し流すことができる。
【0078】
図7に示すように、発泡性樹脂材料Mの発泡によりキャビティ60内が充満してくると、発泡性樹脂材料Mの発泡圧により中空筒状の突起部16が潰れた状態になる。第3空間部63内のガスは、キャビティ末端部の上型54と中子52と型分割線PL1から十分に排出される。なお、この型分割線PL1は突起部16よりも張出部24の先端側に位置している。
【0079】
このように形成された車両用シートパッド10は、形状変形部26における欠肉部の発生が防止され、高い製品品質を確保することができる。特に、突起部16は、柱形状に形成されているので、発泡性樹脂材料Mの流動によって押し倒され難く、潰れ難い構造となっているので、ガス残りを防止する効果が高いものとなる。また、図示例のように、上型54の型面形状変形部58が、発泡性樹脂材料Mの流動方向に対して交差する方向に延在している場合、突起部16を形状変形部26の延在方向に沿って長く形成することで、型面形状変形部58の全長に亘ってガス残りを効果的に防止することができる。
【0080】
また、突起部16の高さHや幅寸法W2をキャビティ60の厚さや型面形状変更部58の幅に応じて適切に設定することで、ガス溜りを防止する効果をより高めることができる。
【0081】
また、突起部16が柔らかい布製であるので、完成した発泡成形品における異物感が低いものとなる。車両用シートパッド10において突起部16は起立状態を維持していてもよいが、突起部16が比較的長く形成されている場合等には、図7に示すようにキャビティ60内に発泡性樹脂材料Mが充満した際に突起部16が潰れた状態になることがあり、かかる場合には突起部16が存在することによる触感的な違和感がより低減される。
【0082】
次に、図8図11を用いて突起部16の変形例、図12を用いて形状変形部26の変形例を説明する。なお、図8図12において、上述した実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
(変形例1)
図8(a)は、突起部16の変形例1を説明する図であり、サポート材14を成形型に設置した状態を示す図5と同様の要部拡大図である。変形例1の突起部16-1,16-2は、凸条の型面形状変形部58の幅方向(すなわち、車両用シートパッド10の凹条の形状変形部26の幅方向)に互いに離間して配置されている。複数の突起部16の全幅寸法W3は、型面形状変形部58の幅寸法W1よりも大きいことが好ましい。さらに、発泡性樹脂材料の流れ方向の下流側の突起部16-2は、上流側の突起部16-1よりも高く設定されている。なお、突起部16-1,16-2の高さは、同じ高さであってもよく、下流側が高く設定されていてもよい。また、各突起部16-1,16-2の高さH1,H2は、それぞれ、キャビティ60の厚さDの30%~70%の大きさであることが好ましい。
【0084】
変形例1のように、突起部16を離間して複数設けたり、各突起部16の高さを変えたりすることにより、形状変形部26に対する発泡性樹脂材料の流れ方向を適切にコントロールして、欠肉部の発生をより確実に防止することが可能である。
【0085】
(変形例2)
図8(b)は、突起部16の変形例2を説明する図であり、サポート材14を成形型に設置した状態を示す図5と同様の要部拡大図である。変形例2において、複数の突起部16-1,16-2は、それぞれ、断面円形状の筒型に形成されている。複数の突起部16-1,16-2は、一枚のシート状部材で形成されており、各突起部16-1,16-2は、延在方向に連続した一つの接合部71,72により、それぞれ、円形断面に形成されるとともにサポート材14に縫い付けられている。なお、各接合部の間は、サポート材14に対して非接合とすることができる。このように、各突起部を一つの接合部によって形成及び接合することで、よりコストを低減することができる。
【0086】
(変形例3)
図9は、突起部16の変形例3を説明する図であり、サポート材14を成形型に設置した状態を示す図5と同様の要部拡大図である。変形例3では、一つの形状変形部26に対して一つの突起部16を設けている。このように突起部16を一つとすることで、構造をより簡易化し、部材コストを低減することができる。
【0087】
(変形例4)
図10は、突起部16の変形例4を説明する図であり、図3と同様に、複数の突起部16-1,16-2がサポート材14に取付けられた状態を示す斜視図である。変形例3では、幅方向に並ぶ複数の突起部16-1,16-2が、形状変形部26の延在方向となる長さ方向において、複数に分割された態様で配置される。分割された突起部16の全長L2は、形状変形部26の長さL1の30%~80%とすることが好ましい。このように、長さ方向において隙間を空けて複数に分割した態様にすることで、部材コストを抑えることができる。また、分割された突起部16を必要な個所に適宜配置することができる。例えば、突起部16を等間隔に配置するだけではなく、ガス溜りが発生しやすい箇所(例えば、形状変形部26の長さ方向中央部)に密集させて配置し、その他の部位は、より間隔をあけて配置することができる。
【0088】
(変形例5)
図11は、突起部16の変形例5を説明する図であり、(a)は突起部16が取付けられたサポート材14を示す斜視図であって、発泡体本体12と一体成形される前の状態を示し、(b)は図2(c)と同様の車両用シートパッド10の要部拡大断面図である。変形例5の突起部16は、発泡体本体と同一材料で形成されており、形状変形部26の延在方向に沿って伸長する直方体状に形成され、サポート材14と対向する面で互いに接合されている。各突起部16-1,16-2は、互いに離間した状態でほぼ平行に延びている。このように突起部16を発泡体本体12と同一材料とすることで、部材コストを抑えることができるとともに、完成品において突起部16による触覚的な違和感を低減させることができる。
【0089】
(変形例6)
図12は、突起部16の変形例6を説明する図であり、突起部16が取り付けられたサポート材14を上方から見た平面図である。変形例6の突起部16-1,16-2は、両端部がねじれる様に縫製してある。図示例では、突起部16の頂部が延在方向の一端部と他端部とで逆方向(矢印X1の方向と、矢印X2の方向)に倒れるように潰された状態で接合部37,38により縫い付けられている。ねじれの中心位置付近(図12において一点鎖線39で囲む領域)では、突起部16-1,16-2が立ち上がって高さが最も高くなっている。このように突起部16にねじれを形成することで、突起部16の高さを延在方向で変えることができ、例えば、欠肉部が発生しやすい箇所で突起部16の高さが最も高くなるようにすることで、成形時のガス抜き効果を高めて欠肉部の発生を効果的に抑制することが可能となる。また、突起部16をねじる様に縫製することで、成形型50に貼着する前の未使用のサポート材14を折り畳んで梱包するときに、突起部16が潰れることを防止することができる。突起部16のねじれの中心位置は、例えば、縫製位置を変える等によって、延在方向で自由に調整することができる。
【0090】
(形状変形部の変形例)
図13は、車両用シートパッド10の形状変形部の変形例を説明する図であって、図5と同様の要部拡大図である。本変形例では、形状変形部28を形成する成形型50の上型54に形成される型面形状変形部59が凹状に形成されており、具体的には、一方向に延びる凹条に形成されている。複数の突起部16-1,16-2は、凸条の形状変形部28の延在方向に伸長する筒状に形成されている。
【0091】
なお、本発明は上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、突起部16は、少なくとも1つ設けられていればよく、3つ以上設けられる構成であってもよい。また、上述した実施の形態及び各変形例に示した構成を適宜組み合わせて適用することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 車両用シートパッド
12 発泡体本体
14 サポート材
16 突起部
20 パッド本体部
22 延出部
24 張出部
50 成形型
52 下型
54 上型
56 中子
58 型面形状変形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13