(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】発作を抑制する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20221028BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20221028BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20221028BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221028BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221028BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221028BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P25/08
A23L33/135
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/20
A61K9/48
(21)【出願番号】P 2019554495
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 US2017067548
(87)【国際公開番号】W WO2018119048
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-18
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,エレイン
(72)【発明者】
【氏名】ヤノ,ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン,ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,クリスティーン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0143961(US,A1)
【文献】特表2016-503418(JP,A)
【文献】J. Mol. Endocrinal., (2017(Epub:2016.12.07)), 58, [1], p.1-14
【文献】Mol. Autism, (2016.09), 7, [1], Article.37
【文献】Can. J. Infect. Dis. Med. Microbiol., (2016.11), 2016, Article.9032809
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/741
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも10重量%の生きているAkkermansia muciniphilaの細菌、及び少なくとも10重量%の生きているParabacteroides merdaeの細菌を含有する、
てんかんの発作の治療において使用するための組成物。
【請求項2】
前記Akkermansia muciniphilaの細菌及び/又は前記Parabacteroides merdaeの細菌が、組成物中で結合剤と混合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Akkermansia muciniphilaの細菌及び/又は前記Parabacteroides merdaeの細菌が、乾燥状態で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Akkermansia muciniphilaの細菌及び/又は前記Parabacteroides merdaeの細菌が、医療食品(medical food product)中に存在する、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記細菌の少なくとも30%がAkkermansia muciniphilaである、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記Akkermansia muciniphilaの細菌及び/又は前記Parabacteroides merdaeの細菌が、ATCC BAA
835、ATCC 43184、又はこれらの組合せからなる群より選択される1種以上の細菌株を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
液体又はゲル組成物中にAkkermansia muciniphila及びParabacteroides merdaeを含有する、請求項1から
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記細菌の少なくとも30%がParabacteroides merdaeである、請求項1から
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の前記細菌の約50%がParabacteroides merdaeであり、前記組成物中の前記細菌の約50%がAkkermansia muciniphilaである、請求項1から
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
経口送達用に製剤化される、請求項1から
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
てんかんの発作の治療を受ける対象の胃腸組織と生理学的適合性がある薬学的に許容可能な担体を含有する、請求項1から
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
丸剤、錠剤、又はカプセル剤に製剤化されている、請求項1から
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
カプセル剤又は錠剤が腸溶性コーティングされたカプセル剤又は錠剤である、請求項
12に記載の組成物。
【請求項14】
細菌増殖を促進する他のプロバイオティック剤又は栄養剤をさらに含有する、請求項1から
13のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年12月20日に出願された米国仮特許出願第62/436,711号、及び2017年1月19日に出願された米国仮特許出願第62/447,992号への優先権の利益を主張し、これらのそれぞれは、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0002】
政府支援
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された、助成金番号GM065823、及び助成金番号GM106996の下で政府支援によって行われた。政府は、本発明にある一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
てんかんは、意識(awareness)消失、意識(consciousness)消失、及び/または運動、自律神経機能、感覚(視覚、聴覚及び味覚を含む)、気分、及び/または精神機能の障害につながる可能性がある、反復性の発作を特徴とする。てんかんは、先進国の人口の1~2%を苦しめる。
【0004】
低炭水化物、高脂肪のケトン食療法(KD)は、難治性てんかんのための治療であり、その中で3分の1を上回るてんかん個体は、既存の抗けいれん薬に反応しない。KDの有効性は、複数の後ろ向き及び前向き研究によって支援され、約30%の患者に発作がなくなり、約60%の患者が有意な利益を経験すると推定される。しかしながら、てんかんの治療についてのその値、ならびに自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病、代謝症候群及びがんを含む他の疾患へのその適用の増加にもかかわらず、実行、食事コンプライアンス及び有害副作用を有する難しさのために、KDの使用は低いままである。実際に、好結果の発作減少にもかかわらず、てんかん患者のKD継続は、食事療法の3年目までに推定12%に過ぎない。さらに、KDの有益な効果の根底にあるメカニズムは、不十分に理解され、介入治療のための分子及び/または細胞標的はない。薬物が失敗した場合にさまざまな種類の症状を制御することに食事制限が成功することは、既存の薬物によって標的とされない内因性神経保護経路を食事制限が増強することを示唆する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に提供されるのは、プロバイオティック組成物を対象へ投与することによって、ケトン食療法の効果を模倣する方法及び組成物である。ある特定の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象(たとえば、自閉スペクトラム症、レット症候群、脆弱X、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、難治性てんかん、及び/または非難治性てんかんなどの、神経発達障害を有する対象)における発作の治療または予防のためのものである。他の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象における病態(たとえば、てんかん、発作、自閉症スペクトラム症、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん、脳卒中、代謝疾患(たとえば、糖尿病または肥満症)、ミトコンドリア病、うつ状態、片頭痛(たとえば、慢性片頭痛)、レット症候群、注意欠陥障害、脆弱X症候群、または外傷性脳損傷(TBI))を予防する、または治療するためのものである。好ましくは、これらの方法は、Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含む1つの組成物、またはAkkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属を合わせて含む複数の組成物を対象へ投与することを備える。いくつかの実施形態において、これらの組成物は、Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含む。いくつかの実施形態において、Akkermansia(Akk)属の細菌は、Akkermansia muciniphilaを含む。いくつかの実施形態において、Parabacteroides(Pb)属の細菌は、Parabacteroides merdae及び/またはParabacteroides distasonisを含む。いくつかの態様において、これらの方法は、対象の腸内微生物叢を枯渇させ、Akkermansia属(たとえば、Akkermansia muciniphila)及びParabacteroides属(たとえば、Parabacteroides merdaeまたはParabacteroides distasonis)の細菌を含む組成物を対象へ投与することを備える。いくつかの実施形態において、この組成物中の細菌の少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%は、Akkermansia(Akk)の細菌である。いくつかの実施形態において、この組成物中の細菌の少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である。いくつかの実施形態において、対象は、食事制限中であり、この食事制限は、対照食事制限、ケトン食療法、高脂肪食、または低炭水化物食であることができる。この組成物は、経口または直腸送達のために製剤化されることができる。この組成物は、食品であることができる。いくつかの実施形態において、この食品は、乳製品(たとえば、ヨーグルト)である。いくつかの実施形態において、この組成物は、プロバイオティクスを含む。いくつかの実施形態において、この組成物は、自己投与される。いくつかの実施形態において、この組成物は、Akkermansia属(たとえば、Akkermansia muciniphila)の細菌、及びParabacteroides(Pb)属(たとえば、Parabacteroides merdaeまたはParabacteroides distasonis)の細菌を含有する糞便試料(たとえば、糞便バンクからの糞便試料)を含む。いくつかの実施形態において、対象に抗生物質を与え、対象の腸内微生物叢を枯渇させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】
図1は、A~Fの6つの部分を有し、発作の予防を示し、ケトン食療法に応答性であるケトン体生成が腸内微生物叢中の変化と相関する。Aは、2、4、8、10または14日間、対照食餌制限(CD)またはケトン食療法(KD)を給餌されたマウスの独立したコホート内で6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す(左側)。n=8、6、9、20、6(CD);8、7、12、21、5(KD)。食餌処置後14日に発作試験されたマウスの代表的なコホートにおける行動(右側)。破線は、y=10秒で、発作をスコア化するための閾値を表し、三角形は、24mAで1実験コホートあたりの開始電流を示す。n=16。Bは、2、4、8、10または14日間CDまたはKDを給餌されたマウスの独立したコホートにおける血清グルコースのレベルを示す。データは、各時点についてSPF CDマウスに見られた血清グルコースレベルに対し正規化される。n=8、5、8、8、19(CD);8、8、8、7、19(KD)。Cは、2、4、8、10または14日間、CDまたはKDを給餌されたマウスの独立したコホートにおける血清ベータ-ヒドロキシ酪酸(BHB)のレベルを示す。n=8、13、8、8、37(CD);8、16、8、7、38(KD)。Dは、0、4、8または14日間、CDまたはKDを給餌されたマウスの独立したコホートからの糞便の16S rDNAプロファイリングに基づく重み付き(左側)及び非重み付き(右側)のUniFrac距離行列の主座標分析(PCoA)を示す。n=3ケージ(9匹のマウス)/群。Eは、14日間CDまたはKDを給餌されたマウスからの糞便の16S rDNAシーケンシングデータのアルファ多様性を示す。n=3ケージ/群。Fは、糞便の16S rDNAシーケンシングデータからのAkkermansia muciniphila及びParabacteroides菌種の相対的存在量を示す。n=3ケージ(9匹のマウス)/群。平均値±標準誤差としてデータを提示する。ボンフェローニによる二元配置分散分析(a~c、e)、ボンフェローニによるクラスカル-ウォリス法(f):P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001。n.s.=統計学的に有意ではない。SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、CC50=試験されたマウスの50%で発作を引き起こす電流強度、BHB=ベータ-ヒドロキシ酪酸、OTU=操作的分類単位。
【
図2A】
図2は、A~Bの2つの部分を有し、ケトン食療法がKD対CDの腸内微生物叢を区別する選択細菌種を濃縮することを示す。Aは、1時点あたりn=3のCD(上部)対KD(下部)による処置後の0、4、8、及び14日目に、糞便腸内微生物叢の16S rDNAシーケンシングに基づくアルファ多様性を示す。Bは、KD(上段)またはCD(下段)を給餌されたSPFマウス内に濃縮される選択細菌分類群の相対的存在量を示す。n=3。データは、平均値+標準誤差として提示される。ボンフェローニによるクラスカル-ウォリス:
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.0001。n.s.=統計学的に有意ではない。CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法。
【
図3-1】
図3は、A~Dの4つの部分を有し、ケトン食療法の抗発作効果に対する腸内微生物叢の相関を示す。Aは、CDまたはKDを給餌されたSPF、GFまたはコンベンショナル化GFマウスにおいて、6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す。n=13、18、12、6。Bは、CDまたはKDを給餌されたSPF、GFまたはコンベンショナル化GFマウスにおいて、血清BHB(左側)及びグルコース(右側)レベルを示す。n=37、38、19、8。Cは、ビークルまたはAbx事前食餌処置により処置されたSPFマウスにおいて、6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す。n=13、18、13。Dは、ビークルまたはAbx事前食餌処置により処置されたSPFマウスにおいて、血清BHB(左側)及びグルコース(右側)のレベルを示す。n=18、18、19(BHB);n=12、11、11(グルコース)。データは、平均値±の標準誤差として提示される。ボンフェローニによる一元配置分散分析:
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001。n.s.=統計学的に有意ではない。SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、GF=無菌、GF-conv=SPF微生物叢によってコンベンショナル化された無菌、CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、CC50=試験されたマウスの50%で発作を引き起こす電流強度。BHB=ベータ-ヒドロキシ酪酸、veh=ビークル、Abx=抗生物質(アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール[AVNM])。
【
図4A】
図4は、A~Bの2つの部分を有し、KD関連細菌がケトン食療法の抗発作効果を十分に媒介したことを示す。Aは、ビークルまたはAbxにより前処置され、またParabacteroides菌種(P.merdae及びP.distasonis)、Akkermansia muciniphila、これらの両方、またはBifidobacterium longum(左側)によりコロニー形成されたSPFマウスにおいて、6Hz刺激に応答性である発作閾値を示す。n=13、18、15、6、8、5、5。発作試験されたマウスの代表的なコホートにおける行動(右側)。破線は、y=10秒で、発作をスコア化するための閾値を表し、三角形は、24mAで1実験コホートあたりの開始電流を示す。n=12、16、8、25。Bは、Parabacteroides菌種(P.merdae及びP.distasonis)及び/またはAkkermansia muciniphila(上部)によりコロニー形成されたGFマウスにおける6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す。n=15、4、9、9。発作試験されたマウスにおける行動(下部)。破線は、y=10秒で、発作をスコア化するための閾値を表し、三角形は、24mAで1実験コホートあたりの開始電流を示す。n=17、19。データは、平均値±の標準誤差として提示される。ボンフェローニによる一元配置分散分析:
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001。SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、GF=無菌、CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、CC50=試験されたマウスの50%で発作を引き起こす電流強度、veh=ビークル、Abx=抗生物質(アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール[AVNM])によって前処置された、Pb=Parabacteroides菌種(P.merdae及びP.distasonis)、Akk=Akkermansia muciniphila、AkkPb=A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis、Bf=Bifidobacterium longum。
【
図5A】
図5は、A~Cの3つの部分を有し、KD関連微生物叢が対照食餌制限を給餌されたマウスに発作予防を与えることを示す。Aは、CD微生物叢(CD-FMT)またはKD微生物叢(KD-FMT)を移植し、CDまたはKD(左側)を給餌された、Abx処置されたSPFにおいて6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す。n=6、5、5。発作試験されたマウスの代表的なコホートにおける行動(右側)。破線は、y=10秒で、発作をスコア化する閾値を表し、三角形は、24mAで1実験コホートあたりの開始電流を示す。n=12。Bは、ビークルまたはAbxによって前処置され、Parabacteroides菌種(P.merdae及びP.distasonis)、Akkermansia muciniphila、両方、またはBifidobacterium longumによりコロニー形成されたSPFマウスにおいて、6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す(左側)。n=13、18、9、8、6、6。Cは、Akkermansia muciniphila、P.merdae及びP.distasonis(AkkPb)、A.muciniphila単独(Akk)、または加熱殺菌Akkermansia muciniphila及びParabacteroides菌種(hk-AkkPb)によって経口経管栄養を行われたSPFマウスにおいて、6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す(左側)。n=6、6、4、3。データは、平均値±の標準誤差として提示される。ボンフェローニによる一元配置分散分析:
*P<0.05、
***P<0.001、
****P<0.0001。SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、CC50=試験されたマウスの50%で発作を引き起こす電流強度、CD-FMT=CD微生物叢を移植した、KDFMT=KD微生物叢を移植した、veh=ビークル、Abx=抗生物質(アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール[AVNM])によって前処置された、Pb=Parabacteroides菌種(P.merdae及びP.distasonis)、Akk=Akkermansia muciniphila、AkkPb=A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis、Bf=Bifidobacterium longum、hk-AkkPb=加熱殺菌されたA.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis。
【
図6A】
図6は、A~Dの4つの部分を有し、対照食餌制限に応答性であるKD微生物叢及びKD関連発作予防の復帰を示す。Aは、28日間CDを給餌されたSPFマウス(CD)、28日間KDを給餌されたマウス(KD)、または14日間KD後に14日間CDを給餌されたマウス(KD-CD)からの糞便の縦方向の16S rDNAプロファイリングに基づき重み付けされたUniFrac距離行列の主座標分析(PCoA)を示す。n=3ケージ/群。Bは、28日間CDを給餌されたSPFマウス(CD)、28日間KDを給餌されたマウス(KD)、または14日間KD後に14日間CDを給餌されたマウス(KD-CD)において、6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す(左側)。n=4。Cは、Akkermansia muciniphila、P.merdae及びP.distasonis(AkkPb)、A.muciniphila単独(Akk)、または加熱殺菌されたAkkermansia muciniphila及びParabacteroides菌種(hk-AkkPb)によるプロバイオティック処置の21日後にSPFマウスにおいて、6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す(左側)。n=8。Dは、ビークルまたはAkkermansia muciniphila、P.merdae及びP.distasonis(AkkPb)によって、4日間経口経管栄養を行われたSPFマウスにおいて、6Hzの刺激に応答性である発作閾値を示す。n=6、7、7、7。データは、平均値±の標準誤差として提示される。ボンフェローニによる一元配置分散分析:
*P<0.05、
**P<0.01、
****P<0.0001、n.s.=統計学的に有意ではない。SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、KD-CD=14日間KD後に14日間CDを給餌された。CC50=試験されたマウスの50%で発作を引き起こす電流強度、veh=ビークル、Akk=Akkermansia muciniphila、AkkPb=A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis、hk-AkkPb=加熱殺菌されたA.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis。
【
図7A】
図7は、A~Eの5つの部分を有し、KD関連細菌がケトン食療法に応答性である強直間代発作に対する予防を媒介することを示す。Aは、14日間CDまたはKDを給餌されたKcna1
-/-マウスの糞便の16S rDNAプロファイリングに基づき重み付けされたUniFrac距離の主座標分析(PCoA)を示す。n=5ケージ/群。Bは、糞便の16S rDNAシーケンシングデータからのAkkermansia muciniphila及びParabacteroides菌種の相対的存在量を示す(右側)。n=5ケージ/群。Cは、Dにおいて定量化された発作を定義するために使用される段階を示す、代表的なEEGトレースを示す。Dは、ビークルまたはAbxによって処置され、A.muciniphila及びParabacteroides菌種によってコロニーを形成され、またはコロニーを形成せず、そしてCDまたはKDを給餌されたSPF Kcna1
-/-マウスにおいて、1日あたりの発作の平均数(左側)、及び1日あたりの発作の全持続時間(右側)を示す。n=2、8、6、12、9、3。Eは、GGsTopによって処置されたSPF CD Kcna1
-/-マウスにおいて、1日あたりの発作の平均数(左側)、1発作あたりの平均持続時間(中央)、及び1日あたりの発作の全持続時間(右側)を示す。SPF CDマウスについてのデータは、(D)の通りである。n=6、4。データは、平均値±の標準誤差として提示される。ボンフェローニによるクラスカル-ウォリス(A,B)、Dunnによるノンパラメトリック一元配置ネスト分散分析(D)、ノンパラメトリックコルゴモロフ-スミルノフt検定(E)。SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、veh=ビークル、Abx=抗生物質により前処置された(アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール[AVNM])、AkkPb=A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis。
【
図8A】
図8は、A~Dの4つの部分を有し、末梢ガンマ-グルタミルアミノ酸における減少、ならびに食餌制限及び微生物叢依存性発作予防に関する海馬のGABA/グルタミン酸塩の比における増大の関連性を示す。Aは、CDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたAbx処置マウス、及びKDを給餌されたAkkPbコロニー形成マウスからの結腸内腔代謝産物(上部)及び血清代謝産物(下部)の主成分分析を示す。n=8ケージ/群。Bは、CDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたAbx処置マウス、及びKDを給餌されたAkkPbコロニー形成マウスからの結腸内腔内容物中のガンマ-グルタミル化アミノ酸及びシステインのレベルを示す。n=8ケージ/群。Cは、CDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたAbx処置マウス、及びKDを給餌されたAkkPbコロニー形成マウスからの血清中のガンマ-グルタミルアミノ酸及びグルタミンのレベルを示す。n=8ケージ/群。Dは、CDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたAbx処置マウス、及びKDを給餌されたAkkPbコロニー形成マウスの海馬におけるGABA/グルタミン酸塩(左側)及びグルタミン(右側)のレベルを示す。n=5。データは、平均値±の標準誤差として提示される。二元配置分散分析対比(A~C)、ボンフェローニによる一元配置分散分析(D):
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001。n.s.=統計学的に有意ではない。CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、veh=ビークル、Abx=抗生物質(アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール[AVNM])によって前処置された、AkkPb=A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis、a.u.=任意の単位。
【
図9A】
図9は、A~Dの4つの部分を有し、ケトン食療法及び微生物叢状態による結腸内腔及び血清メタボロームの調節を示す。Aは、結腸内腔中で検出された622個、及び血清中で検出された670個からの代謝産物において統計学的に有意な変化の数を示す。黒色テキストに示された値は、変化した代謝産物の総数であり、緑色の値は、上向き調節を示し、赤色の値は、下向き調節を示す。n=8ケージ/群。Bは、結腸内腔(上部)及び血清(下部)のメタボロミクススクリーニングによって検出されたグルコース(左側)及びBHB(右側)のレベルを示す。n=8ケージ/群。Cは、CDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたAbx処置マウス、及びKDを給餌されたAkkPbコロニー形成マウスからの結腸内腔内容物中の非ガンマグルタミル化アミノ酸のレベルを示す。n=8ケージ/群。Dは、CDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたSPFマウス、KDを給餌されたAbx処置マウス、及びKDを給餌されたAkkPbコロニー形成マウスからの血清中の非ガンマグルタミル化アミノ酸のレベルを示す。n=8ケージ/群。データは、平均値±の標準誤差として提示される。二元配置分散分析対比:
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001。n.s.=統計学的に有意ではない。CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、veh=ビークル、Abx=抗生物質(アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール[AVNM])によって前処置された、AkkPb=A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis、a.u.=任意の単位、BHB=ベータ-ヒドロキシ酪酸。
【
図10A】
図10は、A~Hの8つの部分を有し、ケトン食療法及び細菌交差給餌がガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)活性を低下させることを示し、これにより十分な発作予防を与える。Aは、CDを給餌されたSPFマウスに、GGT阻害剤、GGsTopによる経口経管栄養に応答性である6Hzの発作閾値を示す(左側)。n=6、9。発作試験されたマウスにおける行動(右側)。破線は、y=10秒で、発作をスコア化するための閾値を表し、三角形は、24mAで1実験コホートあたりの開始電流を示す。n=16。Bは、A.muciniphila及びParabacteroides菌種について濃縮されたAbx処置SPFマウス中のケト原性アミノ酸による補給に応答性である6Hzの発作閾値を示す(左側)。n=5、6。発作試験されたマウスにおける行動(右側)。破線は、y=10秒で、発作をスコア化するための閾値を表し、三角形は、24mAで1実験コホートあたりの開始電流を示す。n=12。Cは、SPF CD、SPF KD、AkkPb KD、またはAkkPb CDマウスからの100mgの糞便あたりの総合GGT活性(左側)、及びGGsTopによる阻害(右側)を示す。n=5。Dは、28日間1日2回、ビークル、A.muciniphila及びParabacteroides菌種プロバイオティック、または加熱殺菌された細菌により処置されたSPF CD動物からの100mgの糞便あたりの総合GGT活性(左側)、ならびにGGsTopによる阻害(右側)を示す。n=5。Eは、生きているParabacteroides merdae(PbM)を含む、または細菌を含まない(0)、M9最少培地によって重層されたCD対KD培養培地中で、またはCDもしくはKD寒天中でインキュベーション後、生きているA.muciniphila(Akk)のレベルを示す。n=3。Fは、Akkを含む、または細菌を含まない(0)、CDまたはKD寒天上に重層されたM9最少培地中にインキュベーション後、生きているPbMのレベルを示す。n=5。Gは、A.muciniphilaを含む、または細菌を含まない、CD寒天上に重層されたM9培地中でt=24時間で増殖したP.merdaeにおけるGGT活性、及びGGsTopによるGGT活性の阻害を示す。n=5。Hは、A.muciniphilaを含む、または細菌を含まない、KD寒天上に重層されたM9培地中にt=24時間で増殖したP.merdaeにおけるGGT活性、及びGGsTopによるGGT活性の阻害を示す。n=5。データは、平均値±の標準誤差として提示される。Studentのt検定(a、b)、ボンフェローニによる二元配置分散分析(C、D)、ボンフェローニによる一元配置分散分析(E~H):
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001。SPF=特定病原体除去(従来法でコロニー形成された)、CD=対照食餌制限、KD=ケトン食療法、CC50=試験されたマウスの50%で発作を引き起こす電流強度、AA=アミノ酸、veh=ビークル、Abx=抗生物質(アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾール[AVNM])によって前処置された、AkkPb=A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonis、GGsTop=GGT阻害剤、PbM=Parabacteroides merdae、Akk=Akkermansia muciniphila、M9=最少培地、GGT=ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ、AU=任意の単位。
【
図11A】
図11は、A及びBの2つの部分を有し、発作におけるアミノ酸効果、細菌性GGT活性、及びアミノ酸代謝について細菌遺伝子の食餌調節を示す。Aは、GGsTopまたはビークルによって処置される、従来法で培養されたParabacteroides merdae(左側)及びA.muciniphila(右側)におけるGGT活性を示す。n=5。Bは、M9最少培地中でビークルまたはGGsTopにより前処置されたP.merdae(PbM)によって重層されたCD寒天中で0、7、または24時間インキュベーション後の、A.muciniphila(Akk)のレベルを示す。n=3。データは、平均値±の標準誤差として提示される。ボンフェローニによる一元配置分散分析(a):
*P<0.05、ボンフェローニによる二元配置分散分析(b):
**P<0.01、PbM=Parabacteroides merdae、Akk=Akkermansia muciniphila、GGsTop=GGT阻害剤、GGT=ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ、AU=任意の単位。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に提供されるのは、プロバイオティック組成物を投与することによってケトン食療法の効果を模倣する方法及び組成物である。ある特定の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象(たとえば、自閉症スペクトラム症、レット症候群、脆弱X、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、難治性てんかん、及び/または非難治性てんかんなどの、神経発達疾患を有する対象)における発作の処置及び予防のためのものである。他の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象における病態(たとえば、自閉症スペクトラム症、てんかん、発作、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん、脳卒中、代謝疾患(たとえば、肥満症または糖尿病)、ミトコンドリア病、うつ状態、片頭痛(たとえば、慢性片頭痛)、レット症候群、注意欠陥障害、脆弱X症候群、または外傷性脳損傷(TBI))を予防する、または処置するためのものである。好ましい実施形態において、これらの方法は、Akkermansia属(たとえば、Akkermansia muciniphila)及びParabacteroides属(たとえば、Parabacteroides merdaeまたはParabacteroides distasonis)の細菌を含む1つの組成物、またはAkkermansia属(たとえば、Akkermansia muciniphila)及びParabacteroides属(たとえば、Parabacteroides merdaeまたはParabacteroides distasonis)の細菌を合わせて含む複数の組成物を対象へ投与することを備える。他の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象中の神経伝達物質生合成を変化させる。ある特定の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象中の血清ケト原性アミノ酸を変化させる。他の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象中のガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ活性を低下させる。ある特定の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象中のグルタミン合成酵素活性を低下させる。他の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象中のガンマ-グルタミルアミノ酸を減少させる。ある特定の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象中でGABA/グルタミン酸塩の比のレベルを上昇させる。他の実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象中のグルタミンレベルを上昇させる。他の実施形態において、これらの方法は、対象の腸内微生物叢を枯渇させ、対象へAkkermansia及びParabacteroides属の細菌を含む1つの組成物、またはAkkermansia及びParabacteroides属の細菌を合わせて含む複数の組成物を投与することを備える。
【0008】
定義
本明細書に使用されるように、「a」または「an」は、1つ以上を意味することができる。請求項(複数可)において本明細書に使用されるように、単語「を含む(comprising)」と組み合わせて使用されるときに、単語「a」、または「an」は、1つ以上を意味することができる。本明細書において使用されるような、「別の」は、少なくとも二番目以降を意味することができる。
【0009】
本明細書に使用されるような、語句「薬学的に許容可能な担体」は、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤または封入材料などの、薬学的に許容可能な材料、組成物またはビークルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、対象に有害ではないという意味の「許容可能」でなければならない。いくつかの例の材料は、薬学的に許容可能な担体として機能することが可能であり、(1)ラクトース、グルコース及びショ糖などの糖類、(2)コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン類、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及びセルロースアセテートなどのセルロース及びその誘導体、(4)トラガント末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)滑石、(8)カカオバター及び座薬ワックスなどの賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油などの油類、(10)プロピレングリコールなどのグリコール類、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール類、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル類、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤類、(15)アルギン酸、(16)発熱性物質除去水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液類、ならびに(21)薬学的な製剤化に用いられる他の非毒性の適合性のある物質を含む。
【0010】
用語「予防する」は、当該技術分野において承認され、局所再発などの病態に関連して使用されるときに、当該技術分野において十分に理解されており、組成物を受けない対象と比較して、対象における医学的病態の症状の頻度を減少させる、またはこれらの症状の発生を遅らせるこの組成物の投与を含む。したがって、発作の予防は、たとえば、統計的に、及び/または臨床的に有意な量で、たとえば、未処置の対照母集団と比較して予防的処置を受ける患者の母集団における発作数を減少させること、及び/または未処置対照母集団に対して処置母集団における検出可能な病変の出現を遅らせることを備える。
【0011】
用語「予防的な」または「治療的な」処置は、当該技術分野において承認され、対象の組成物の1つ以上の宿主への投与を備える。それが望ましくない病態(たとえば、宿主動物の疾患または他の望ましくない病態)の臨床徴候の前に投与される場合、そのときこの処置は、予防的である(すなわち、それは望ましくない病態を発生することに対して宿主を保護する)が、それが望ましくない病態の臨床徴候の後に投与される場合、この処置は、治療である(すなわち、それは既存の望ましくない病態またはその副作用を減少させる、寛解させる、または安定させることを意図される)。
【0012】
用語「対象」は、ヒト、またはウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、もしくはネコなどの非ヒト哺乳類を含むが、これらに限定されない哺乳類を指す。
【0013】
本発明の処置方法に関連する「治療上の有効量」の化合物は、所望の投与計画(哺乳類、好ましくはヒトへの)の部分として投与されるときに、たとえば、いずれかの医学的処置に適用可能である合理的なベネフィット/リスク比などで、処置される疾患もしくは病態、または美容目的のために臨床的に許容可能な規格に従い、症状を緩和する、病態を寛解させる、または疾患病態の発生を遅くする、製剤中の化合物(複数可)の量を指す。
【0014】
本明細書に使用されるように、用語「処置する」または「処置」は、対象の病態を改善させる、または安定させる方式で、病態の症状、臨床徴候、及び基礎病態を、元に戻す、減少させる、または静止させることを備える。
【0015】
療法
本明細書における本開示は、ケトン食療法(KD)が腸内マイクロバイオームにおける実質的な変化を引き起こす発見、及びプロバイオティック投与、糞便移植、または天然のマイクロバイオームの選択的微生物再構成を介してKD関連細菌を濃縮することによりKDの有益な効果を模倣する発見に部分的に関する。本明細書に提供されるのは、記載されるような病態の処置または予防におけるKD食事制限を置換することが可能である方法及び組成物である。本明細書に記載される、これらの方法及び組成物は、本明細書に記載される病態の処置もしくは予防におけるKD食事制限と、別々に使用される、または組み合わせることが可能である。
【0016】
ある特定の実施形態において、これらの方法は、対象における発作を処置する、または予防する。いくつかの実施形態において、これらの方法は、Akkermansia及びParabacteroides属の細菌を含有する組成物を投与することを備える。他の実施形態において、これらの方法は、対象における神経伝達物質生合成を変化させる。ある特定の実施形態において、これらの方法は、対象中の血清ケト原性アミノ酸を変化させる。他の実施形態において、これらの方法は、対象中のガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ活性を低下させる。ある特定の実施形態において、これらの方法は、対象中のグルタミン合成酵素活性を低下させる。他の実施形態において、これらの方法は、対象中のガンマ-グルタミルアミノ酸を減少させる。ある特定の実施形態において、これらの方法は、対象中のGABA/グルタミン酸塩の比のレベルを上昇させる。他の実施形態において、これらの方法は、対象中のグルタミンレベルを上昇させる。他の実施形態において、本明細書に提供されるこれらの方法は、対象の腸内微生物叢を枯渇させ、Akkermansia属(たとえば、Akkermansia muciniphila)及びParabacteroides属(たとえば、Parabacteroides merdaeまたはParabacteroides distasonis)の細菌を含む組成物を対象へ投与することを備える。いくつかの実施形態において、対象は、てんかん(たとえば、難治性または非難治性てんかん)を有する。いくつかの実施形態において、対象は、神経発達障害を有する。代表的な神経発達障害は、自閉症スペクトラム症、レット症候群、脆弱X、注意欠陥障害、及び注意欠陥/多動性障害を有する。いくつかの実施形態において、神経発達障害は、発作を含む併存症であることが知られている疾患である。
【0017】
他の実施形態において、対象は、ケトン食療法に応答性である病態を有する。この病態は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん、脳卒中、代謝疾患、ミトコンドリア病、うつ状態、片頭痛(たとえば、慢性片頭痛)、または外傷性脳損傷(TBI)であることができる。いくつかの実施形態において、これらの方法及び組成物は、対象へ本明細書に提供される組成物を投与することを備える。いくつかの実施形態において、この病態は、てんかん、発作、自閉症スペクトラム症、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん、脳卒中、代謝疾患(たとえば、肥満症または糖尿病)、ミトコンドリア病、うつ状態、片頭痛(たとえば、慢性片頭痛)、レット症候群、注意欠陥障害、脆弱X症候群、または外傷性脳損傷(TBI)である。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される、これらの組成物及び方法は、老化または老化関連病態を処置する、または予防する際に有用である。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される、これらの組成物及び方法は、本明細書に記載される病態の処置または予防の際にケトン食療法を置換することが可能であり、他の実施形態において、本明細書に提供される、これらの組成物及び方法は、ケトン食療法と組み合わされることが可能である。Stafstrom et al.(2012)Front.Pharmacol.3:59に病態についてのさらなる情報を見出すことができ、その全体が本明細書により援用される。
【0018】
この組成物は、経口送達用に製剤化されることができる。いくつかの実施形態において、この組成物は、プロバイオティクスを含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される、これらの組成物は、食品である。この組成物は、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態にあることができる。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳類(たとえば、ヒト)であることができる。いくつかの実施形態において、この組成物は、自己投与される。投与されるすべての細菌を含むことが単一組成物のために好まれるが、本明細書に記載されるさまざまな実施形態のいずれかのために、細菌の組み合わせを合わせて含む複数の組成物で細菌の組み合わせが同様に投与されることが可能であることを認識するであろう。たとえば、本発明は、Akkermansia属(たとえば、Akkermansia muciniphila)及びParabacteroides属(たとえば、Parabacteroides merdaeまたはParabacteroides distasonis)の細菌を合わせて含有する複数の組成物を含むキットをさらに提供する。
【0019】
いくつかの実施形態において、この組成物は、直腸送達(たとえば、糞便試料)用に製剤化される。いくつかの実施形態において、対象は、糞便微生物叢移植を受け、この移植は、本明細書に開示される1つの組成物を含む。糞便微生物叢移植(FMT)は、「糞便細菌療法」としても一般に知られており、結腸微生物群集の再構成を可能にする治療プロトコルを表す。このプロセスは、健康な個体からの糞便細菌のレシピエントへの移植を伴う。FMTは、糞便試料の注入を通じて健康な細菌叢を導入することによって、たとえば、浣腸、経口胃チューブによって、または健康なドナーから得られた、凍結乾燥材料を含むカプセル剤の形態で口腔によって、結腸ミクロフローラを回復させる。いくつかの実施形態において、糞便試料は、糞便バンクからのものである。
【0020】
いくつかの実施形態において、対象の腸内微生物叢内の細菌DNAを配列決定する。この組成物の投与前に、対象の腸内細菌DNAを配列決定することができる。たとえば、細菌DNAを含む試料を対象から取得することができ、その後、この細菌DNAをAkkermansia(Akk)及び/またはParabacteroidesDNAについて配列決定することによって、対象の腸内微生物叢中のAkkermansia及び/またはParabacteroidesの存在またはレベルを測定する。つぎに、Akkermansia及び/またはParabacteroidesのレベルが低い場合に、本明細書に開示されるこの組成物を対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、試料中の細菌の0.0001%未満、0.001%未満、0.01%未満、0.02%未満、0.03%未満、0.04%未満、0.05%未満、0.06%未満、0.07%未満、0.08%未満、0.09%未満、0.1%未満、0.2%未満、0.3%未満、0.4%未満、0.5%未満、0.6%未満、0.7%未満、0.8%未満、0.9%未満、1%未満、2%未満、3%未満、5%未満、7%未満、10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、または50%未満がAkkermansia及び/またはParabacteroidesのDNAである場合、対象は、低レベルのAkkermansia及び/またはParabacteroidesを含むと思われる。配列決定される細菌DNAは、対象から糞便試料を得ること、及び細菌DNAを単離することを含むが、これらに限定されない、当該技術分野において知られているいずれかの手段を通じて得られることができる。細菌DNAは、マクサムギルバートシーケンシング、サンガーシーケンシング、ショットガンシーケンシング、ブリッジPCR、または超並列シグネチャーシーケンシング(MPSS)、ポロニー(polony)シーケンシング、454パイロシーケンシング、Illumina(Solexa)シーケンシング、SOLiDシーケンシング、Ion Torrent半導体シーケンシング、DNAナノボールシーケンシング、HeliScope単一分子シーケンシング、単一分子リアルタイム(SMRT)シーケンシング、もしくはナノポアDNAシーケンシングなどの次世代シーケンシング方法を含むが、これらに限定されない、当該技術分野におけるいずれかの既知の技法によって配列決定される。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記の方法は、対象中の(すなわち、対象の消化管中の)病原性細菌量を減少させるように直接に作用する。いくつかの実施形態において、これは、本明細書に記載されるこれらの組成物と組み合わせて使用されるときに、非疾患病態と関連する天然ミクロフローラ、または疾患病態を引き起こす種類と同一の環境適所を占有する病原体種をほとんど含まない天然ミクロフローラと、疾患病態に含まれる病原ミクロフローラの置換を導く、病原生物数を減少させる同一の目標を達成する、いずれかのこのような療法を含む。たとえば、対象は、抗生物質(たとえば、抗菌性化合物)、または病原生物の有病率を標的として低下させる抗生物質を含む1つの組成物による処置を受けた後に、本明細書に記載される1つの組成物により処置されることができる。この処置は、抗真菌性または抗ウイルス性化合物をも含むことができる。
【0022】
適切な抗菌性化合物は、カプレオマイシン類(カプレオマイシンIA、カプレオマイシンIB、カプレオマイシンIIA及びカプレオマイシンIIBを含む);カルボマイシン類(カルボマイシンAを含む);カルモナム;セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフブペラゾン、セフカペンピボキシル、セフクリジン、セフジニル、セフジトレン、セフィム(cefime)、セフタメット、セフメノキシム、セフメタゾール(cefmetzole)、セフミノクス、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォテタン、セフォチアム、セフォキシチン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチオフル、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファレキシン、セファロジシン(cephalogycin)、セファロリジン、セファロスポリンC、セファロチン、セファピリン、セファマイシン類(セファマイシンC、セフラジン、クロルテトラサイクリンなど);クラリスロマイシン(chlarithromycin)、クリンダマイシン、クロメトシリン、クロモサイクリン、クロキサシリン、シクラシリン、ダノフロキサシン、デメクロサイクリン、デストマイシンA、ジクロキサシリン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、エピシリン、エリスロマイシンA、エタンブトール(ethanbutol)、フェンベニシリン、フロモキセフ、フロルフェニコール、フロキサシリン、フルメキン、フォーチミシンA、フォーチミシンB、ホスホマイシン(forfomycin)、フォラルタドン(foraltadone)、フシジン酸、ゲンタマイシン、グリコニアジド、グアメサイクリン(guamecycline)、ヘタシリン、イダルビシン、イミペネム、イセパマイシン、ジョサマイシン、カナマイシン、ロイマイシン類(leumycins)(ロイマイシン(leumycin)A1など)、リンコマイシン、ロメフロキサシン、ロラカルベフ、リメサイクリン、メロペナム(meropenam)、メタンピシリン、メタサイクリン、メチシリン、メズロシリン、ミクロノマイシン、ミデカマイシン類(ミデカマイシンA1など)、ミカマイシン、ミノサイクリン、マイトマイシン類(マイトマイシンCなど)、モキサラクタム、ムピロシン、ナフシリン、ネチリシン(netilicin)、ノルカルディアン類(norcardians)(ノルカルディアンAなど)、オレアンドマイシン、オキシテトラサイクリン、パニペナム(panipenam)、パズフロキサシン、ペナメシリン、ペニシリン類(ペニシリンG、ペニシリンN及びペニシリンOなど)、ペニリン酸(penillic acid)、ペンチルペニシリン(pentylpenicillin)、ペプロマイシン、フェネチシリン、ピパサイクリン(pipacyclin)、ピペラシリン(piperacilin)、ピルリマイシン、ピバンピシリン、ピボセファレキシン、ポルフィロマイシン、プロピアリン(propiallin)、キナシリン、リボスタマイシン、リファブチン、リファミド、リファンピン、リファマイシンSV、リファペンチン、リファキシミン、リチペネム、レキタマイシン(rekitamycin)、ロリテトラサイクリン、ロサラマイシン、ロキシスロマイシン、サンサイクリン、シソマイシン、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、ストレプトゾシン、スルベニシリン、スルタミシリン、タランピシリン、テイコプラニン、テモシリン、テトラサイクリン、トストレプトン(thostrepton)、チアムリン、チカルシリン、チゲモナム、チルミコシン、トブラマイシン、トロポスペクトロマイシン(tropospectromycin)、トロバフロキサシン、タイロシン、及びバンコマイシン、ならびに類似体、誘導体、薬学的に許容可能な塩類、エステル類、プロドラッグ類、及びそれらの保護形態を含む。
【0023】
適切な抗真菌化合物は、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、クロトリマゾール、ウンデシレン酸、セルタコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、クリオキノール、ハロプロジン、ニスタチン、ナフチフィン、トルナフタート、シクロピロクス、アンホテリシンB、またはチャノキ油、ならびに類似体、誘導体、薬学的に許容可能な塩類、エステル類、プロドラッグ類、及びそれらの保護形態を含む。
【0024】
適切な抗ウイルス剤は、アシクロビル、アジドウリジン、アニソマイシン(anismoycin)、アマンタジン、ブロモビニルデオクスシジン(bromovinyldeoxusidine)、クロロビニルデオクスシジン(chlorovinyldeoxusidine)、シタラビン、デラビルジン、ジダノシン、デオキシノジリマイシン、ジデオキシシチジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシヌクレオシド、デスシクロビル、デオキシアシクロビル、エファビレンツ、エンビロキシム、フィアシタビン、ホスカメット、フィアルリジン、フルオロチミジン、フロクスウリジン、ガンシクロビル、ヒペリシン、イドクスウリジン、インターフェロン、インターロイキン、イセチオン酸塩、ネビラピン、ペンタミジン、リバビリン、リマンタジン、スタブジン、サルグラモスチン(sargramostin)、スラミン、トリコサンチン、トリブロモチミジン(tribromothymidine)、トリクロロチミジン(trichlorothymidine)、トリフルオロチミジン、ホスホモノホルメート三ナトリウム、ビダラビン、ジドビリジン、ザルシタビン及び3-アジド-3-デオキシチミジン、ならびに類似体、誘導体、薬学的に許容可能な塩類、エステル類、プロドラッグ類、及びそれらの保護形態を含む。
【0025】
他の適切な抗ウイルス剤は、2’,3’-ジデオキシアデノシン(ddA)、2’,3’-ジデオキシグアノシン(ddG)、2’,3’-ジデオキシシチジン(ddC)、2’,3’-ジデオキシチミジン(ddT)、2’,3’-ジデオキシ-ジデオキシチミジン(d4T)、2’-デオキシ-3’-チア-シトシン(3TCまたはラミブジン(lamivudime))、2’,3’-ジデオキシ-2’-フルオロアデノシン、2’,3’-ジデオキシ-2’-フルオロイノシン、2’,3’-ジデオキシ-2’-フルオロチミジン、2’,3’-ジデオキシ-2’-フルオロシトシン、2’,3’-ジデオキシ-2’,3’-ジデヒドロ-2’-フルオロチミジン(Fd4T)、2’3’-ジデオキシ-2’-ベータ-フルオロアデノシン(F-ddA)、2’,3’-ジデオキシ-2’-ベータ-フルオロ-イノシン(F-ddI)、及び2’,3’-ジデオキシ-2’-ベータ-フルロシトシン(flurocytosine)(F-ddC)を含む。いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、ホスホモノホルメート三ナトリウム(trisodium phosphomonoformate)、ガンシクロビル、トリフルオロチミジン、アシクロビル、3’-アジド-3’-チミジン(AZT)、ジデオキシイノシン(ddI)、及びイドクスウリジン、ならびに類似体、誘導体、薬学的に許容可能な塩類、エステル類、プロドラッグ類、及びそれらの保護形態から選択される。
【0026】
組成物
いくつかの態様において、本発明は、Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含む組成物(たとえば、食品または薬学的な組成物)に関する。この組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。この組成物は、プロバイオティクスを含むことができる。本明細書に開示される、これらの薬学的な組成物は、経口、頬側、舌下、非経口、及び直腸に、粉末、軟膏、液滴、液剤、ゲル、錠剤、カプセル剤、丸剤、またはクリームによるようなものを含む、いずれかの適切な投与経路によって送達されることができる。ある特定の実施形態において、薬学的な組成物を一般的に送達する(たとえば、経口投与を通じて)。ある特定の他の実施形態において、本明細書に開示される、これらの組成物を直腸に送達する。
【0027】
ある特定の実施形態において、本発明は、Akkermansia属(たとえば、Akkermansia muciniphila)及びParabacteroides属(たとえば、Parabacteroides merdaeまたはParabacteroides distasonis)の細菌を合わせて含む(たとえば、組み合わされる場合、この節内の他の箇所に記載されるような1つの組成物をもたらす)複数の組成物を含むキットを提供する。
【0028】
この組成物は、P.chartae、P.chinchillae、P.distasonis、P.faecis、P.goldsteinii、P.gordonii、P.johnsonii、またはP.merdaeを含むが、これらに限定されない、Parabacteroidesのいずれかの種を含むことができる。いくつかの実施形態において、この組成物中の細菌の、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である。この組成物中のAkkermansiaの細菌は、Akkermansia muciniphilaを含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される、これらの組成物は、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%のAkkermansiaの細菌を含むことができる。
【0029】
本明細書に開示される、これらの組成物は、胃腸管の組織へ細菌(たとえば、本明細書に開示される細菌)を導入する目的に向けられる、胃腸管への経口投与のために使用されることができる。また本発明のこの組成物(たとえば、プロバイオティック組成物)についての製剤は、芽胞発芽及び/または細菌増殖を促進する、他のプロバイオティック剤または栄養剤を含むことができる。例示的な材料は、有益なプロバイオティック細菌の増殖を促進する、ビフィズス菌オリゴ糖である。いくつかの実施形態において、このプロバイオティック細菌組成物は、抗生物質(好ましくは、広域スペクトル)、または抗真菌剤の治療有効量で投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される、これらの組成物は、腸溶性コーティングされた、徐放されるカプセルまたは錠剤中に被包される。腸溶性コーティングは、カプセル/錠剤が胃腸管を通過する場合に、ある一定の時間後まで、及び/またはGI管のある特定の部分(たとえば、小腸)に到達するまで、未変化のままである(すなわち、溶解しない)ことを可能にする。徐放される成分は、所定の期間、本明細書に記載されるこれらの組成物中のプロバイオティック菌種の「放出」を防止する。
【0030】
この組成物は、限定されないが、乳製品などの、食品であることができる。この乳製品は、発酵または未発酵の乳製品(たとえば、牛乳)であることができる。発酵乳製品の非限定的な例は、ヨーグルト、カッテージチーズ、サワークリーム、ケフィア、バターミルクなどを含む。また乳製品は、さまざまな特殊な乳製品成分、たとえば、乳清、脱脂粉乳、乳清タンパク質濃縮固形分などを含むことが多い。乳製品は、香料、増粘力、栄養、特異的な微生物及びカビ増殖制御などの他の特性のような望ましい品質を達成する、当該技術分野において知られているいずれかの方式において加工処理されることができる。本発明のこれらの組成物は、既知の抗酸化剤、緩衝剤、及び着色料、着香料、ビタミン類、またはミネラル類などの他の薬剤を含むこともできる。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明のこれらの組成物は、投与される対象(複数可)の胃腸組織と生理学的適合性がある担体(たとえば、薬学的に許容可能な担体)と混合される。これらの担体は、錠剤、カプセル剤もしくは粉末形態への製剤化のために固体ベースの乾燥材料を含むことが可能である、またはこの担体は、液体もしくはゲル形態への製剤化のために液体もしくはゲルベースの材料を含むことが可能である。担体の具体的な種類、及び最終製剤は、選択された投与経路(複数可)に部分的に依存する。また本発明の治療組成物は、さまざまな担体及び/または結合剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、この担体は、1グラムの投薬総重量を完成させるのに十分な量内に加えられる微結晶セルロース(MCC)である。担体は、錠剤、カプセル剤または粉末形態への製剤化のために固体ベースの乾燥材料であることが可能であり、液体またはゲル形態への製剤化のために液体またはゲルベースの材料であることが可能であり、どの形態かは、投与経路に部分的に依存する。乾燥製剤化用の一般的な担体は、トレハロース、マルト-デキストリン、米粉、微結晶セルロース(MCC)、ステアリン酸マグネシウム(magnesium sterate)、イノシトール、FOS、GOS、ブドウ糖、ショ糖、及び同様の担体を含むが、これらに限定されない。適切な液体またはゲルベースの担体は、水及び生理的食塩水;尿素;アルコール類及び誘導体(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール);グリコール類(たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、及び同様のもの)を含むが、これらに限定されない。好ましくは、水性担体は、中性pH値(すなわち、pH7.0)を有する。本明細書に記載されるこれらの組成物を投与するための他の担体または薬剤は、米国特許第6,461,607号などの、当該技術分野において知られている。
【0032】
いくつかの実施形態において、この組成物は、胃腸管にコロニー形成することが知られている他の細菌または微生物をさらに含む。たとえば、この組成物は、Firmicutes門、Proteobacteria門、Tenericutes門、Actinobacteria門、またはそれらの組み合わせに属する種を含むことができる。本発明の組成物に含まれることができる追加の細菌及び微生物の例は、Saccharomyces、Bacteroides、Eubacterium、Clostridium、Lactobacillus、Fusobacterium、Propionibacterium、Streptococcus、Enteroccus、Lactococcus及びStaphylococcus、Peptostreptococcusを含むが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、この組成物は、発作のリスクを上昇させる、またはその他の方法によりケトン食療法の効果を損なう細菌を実質的に含まない。このような細菌は、Bifidobacteriumの細菌を含む。したがって、いくつかの実施形態において、この組成物は、Bacteroidesの細菌を実質的に含まない。組成物は、細菌タイプが組成物中の細菌の10%未満、組成物中の細菌の、好ましくは5%未満、さらにより好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満、またはさらに0%を構成する場合、この細菌タイプを実質的に含まない。
【0033】
いくつかの実施形態において、この組成物は、Akkermansia(Akk)の少なくとも1種、及びParabacteroides(Pb)の少なくとも1種を含有する糞便試料を含む。いくつかの実施形態において、糞便試料は、糞便バンクからのものである。いくつかの実施形態において、対象への投与前に、これらの組成物を糞便試料に加えることができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるのは、Akkermansia(Akk)の少なくとも1種、及びParabacteroides(Pb)の少なくとも1種を濃縮した組成物(たとえば、糞便試料)を対象へ投与することによって、発作などの病態を処置する、または予防する方法である。糞便試料中の細菌の少なくとも0.01%、少なくとも0.02%、少なくとも0.03%、少なくとも0.04%、少なくとも0.05%、少なくとも0.06%、少なくとも0.07%、少なくとも0.08%、少なくとも0.09%、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、または少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%がAkkermansia(Akk)である場合に、糞便試料は濃縮されている。いくつかの実施形態において、糞便試料中の細菌の少なくとも0.01%、少なくとも0.02%、少なくとも0.03%、少なくとも0.04%、少なくとも0.05%、少なくとも0.06%、少なくとも0.07%、少なくとも0.08%、少なくとも0.09%、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、または少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%がParabacteroides(Pb)である場合に、糞便試料は濃縮されている。いくつかの実施形態において、糞便試料は、糞便バンクからのものである。いくつかの実施形態において、糞便試料は、ドナーからのものである。
【0035】
この組成物は、栄養剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、栄養剤は、細菌(たとえば、本明細書に開示される細菌)の増殖を補助する。いくつかの実施形態において、栄養剤は、
図12に列挙される成分である。いくつかの実施形態において、栄養剤は、脂質(たとえば、リノール酸(lineoleic acid)、ステアリン酸、またはパルミチン酸)である。いくつかの実施形態において、栄養剤は、本明細書に開示される組成物と合わせて投与されることができる。本明細書に使用されるように、語句「合わせて投与」は、先に投与された薬剤が体内でまだ有効でありながら第二の薬剤を投与するような、2つ以上の異なる薬剤(たとえば、本明細書に開示される組成物、及び本明細書に開示される栄養剤)の投与のいずれかの形式を指す。たとえば、本明細書に開示される組成物及び本明細書に開示される栄養剤は、同じ製剤、または別々の製剤のいずれか一方で、付随してか、順次にかのいずれか一方で、投与されることが可能である。
【0036】
薬学的組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性なしで、特定の患者、組成物、及び投与様式について所望の治療反応を達成するのに有効である活性成分の量を得るために変えることができる。
【0037】
選択された投与量レベルは、用いられている特定の薬剤の活性、投与経路、投与時間、用いられている特定の化合物の排泄または代謝率、処置持続時間、用いられる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康及び以前の病歴、ならびに医学分野において周知である同様の要因を含む、多様な要因に依存する。
【0038】
当業者の医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することが可能である。たとえば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成し、所望の効果を達成するまで投与量を徐々に増加させるために、必要とされるものより低レベルで薬学的組成物に用いられる化合物の投与量を処方する、及び/または投与することが可能である。
【0039】
ここで一般的に記載されている本発明は、本発明のある特定の態様及び実施形態の例示目的のために含まれるに過ぎず、本発明を限定することを意図されない、以下の例を参照してさらに容易に理解される。
【実施例】
【0040】
例証
[実施例1:材料及び方法]
動物及び食餌制限
3から4週齢のSPF野生型Swiss Websterマウス(Taconic Farms)、GF野生型Swiss Websterマウス(Taconic Farms)及びSPF C3HeB/FeJ KCNA1 KOマウス(Jackson Laboratories)は、UCLAのCenter for Health Sciences Barrier Facilityにおいて飼育された。飼育動物に「ブリーダー」固形飼料(Lab Diets 5K52)を与えた。実験動物に標準的な固形飼料(Lab Diet 5010)、6:1のケトン食療法(Harlan Teklad TD.07797.PWD)、またはビタミン及びミネラルが適合した対照食餌制限(Harlan Teklad TD.150300)を与えた。幼若マウスを使用して、i)小児及び青年のてんかん患者を治療するためのKDの一般的な使用を模倣し、ii)3週齢のマウスにおける神経発達の重要な段階は2から3歳のヒトの脳60の神経発達の重要な段階に匹敵するため、幼児期のヒトの脳発達とマウスの脳発達のタイミングを整合させ、iii)母性行動及び生理機能における食餌制限の効果が出生児における食餌制限の直接効果を交絡させるため、離乳前食餌制限処置を排除した。マウスを実験群に無作為に割り当てた。すべての動物実験は、UCLA Animal Care and Use Committeeによって承認された。
【0041】
6Hzの精神運動発作アッセイ
6Hzの試験を先に記載される通りに行った13。パイロット研究は、発作閾値において性的二形性を示さなかった。その後のすべての実験コホートは、オスマウスを含んだ。刺激の10~15分前に、一滴(約50ul)の0.5%テトラカイン塩酸塩の点眼液を、各マウスの角膜に適用した。角膜電極を電極ゲル(Parker Signagel)の薄層によってコーティングした。定電流装置(ECT Unit 57800、Ugo Basile)を使用し、3秒の持続時間で、0.2msのパルス幅及び6パルス/秒の頻度で電流を送達した。CC50(実験群の50%において発作を誘発するために必要とされる電流強度)を発作感受性についての測定基準として測定した。パイロット実験を行い、24mAをSPF野生型Swiss WebsterマウスについてのCC50として特定した。各マウスに1回だけ発作試験をしたため、少なくともn>6匹のマウスを使用し、各実験群に十分に電力を供給した。各実験群についてCC50を決定するために、24mAの電流は、1コホートにつき1実験群あたりの最初のマウスに投与した後、2mAの間隔で一定の増加、または減少を行った。マウスを刺激中に手で拘束した後に、行動観察のために新しいケージに放した。Ethovision XTソフトウェア(Noldus)を使用して自発運動行動を記録し、転倒、尾背屈(ストラウブ挙尾)、前肢クローヌス、眼/感覚毛単収縮及び行動寛解についての定量的測定値を手動でスコア化した。各行動パラメータについて、我々は、24mA中の発作インシデントの割合と微生物叢状態または群の発作感受性との間に相関性がなく、症状または形態よりもむしろ発作インシデントについて微生物叢の主な効果を示唆したことを観察した。探索までの潜時(実験マウスを観察ケージに放した(角膜刺激後)ときからマウスの最初の側方移動までに経過した時間)は、Ethovisionを使用して、また手動で電子タイマーによってスコア化された。食餌制限群内では、盲検によって試験された。異なる食餌制限群にわたる標準の盲検化は、糞便色における食餌制限誘発性変化により不可能であった。しかしながら、パイロット実験からの結果は、盲検化試験対非盲検化試験を受けた同一の実験群から取得された結果の間に有意差がなかったことを明らかにする。マウスが発作行動を示さず、10秒以内に通常の探索行動を再開した場合、発作を予防されているとマウスをスコア化した。発作閾値(CC50)は、実験群あたりの電流ステップの平均ログ間隔を使用して、先に記載されるように決定され61、そこで試料nは、頻度の少ない発作行動を表す動物のサブセットとして定義される。またCC50を計算するために使用されるデータを、各電流強度について探索するまでの潜時として表示し、そこでnは、発作結果にかかわらず、1群あたりの生物学的反復実験の総数を表す。
【0042】
グルコース測定
心臓穿刺によって血液試料を採取し、この血液試料を血清分離用にSSTバキュテナー(Becton Dickinson)を通じて回転させた。製造元(Cayman Chemical)の指示に従い、比色アッセイによって血清中のグルコースレベルを検出した。複数の実験にわたりまとめられたデータを、各実験内のSPF対照に対して正規化されたグルコース濃度として表す。
【0043】
ベータ-ヒロドキシ酪酸(BHB)測定
心臓穿刺によって、血液を採取し、この血液を血清分離用にSSTバキュテナー(Becton Dickinson)を通じて回転させた。結腸をPBSによって洗い流し、内腔内容物を除去した。前頭皮質、海馬、視床下部及び小脳を顕微解剖し、肝臓を回収し、PBS中で洗浄した。組織試料をRIPA溶解緩衝液(Thermo Scientific)中の氷上において20mV、10秒間隔で超音波処理した。製造元(Cayman Chemical)の指示に従い、比色アッセイによって血清中でBHBレベルを検出した。データは、BCAアッセイによって検出される総タンパク質量に対して正規化された。複数の実験にわたりまとめられたデータを、各実験内のSPF対照に対して正規化されたBHB濃度として表す。
【0044】
16S rDNAマイクロバイオームプロファイリング
MoBio PowerSoil Kitを使用して、マウス糞便試料または結腸内腔内容物から細菌ゲノムDNAを抽出し、この試料nは、1ケージあたり3匹のマウスを含む独立したケージを反映する。
62から適合された方法に従い、ライブラリを作製した。16S rDNA遺伝子のV4領域は、個別にバーコード化されたユニバーサルプライマー、及び30ngの抽出されたゲノムDNAを使用してPCR増幅された。PCR反応を三連で設定し、Qiaquick PCR精製キット(Qiagen)を使用してPCR産物を精製した。等しいモル濃度で、精製されたPCR産物をプールし、Kapaライブラリ定量キット(Kapa Biosystems、KK4824)によって定量化し、ペアエンドシーケンシングのためにIllumina MiSeqプラットフォーム及び2×250bp試薬キットを使用して、Laragen,Inc.によって配列決定した。Greengenes13_5データベースに類似する97%の配列に基づくオープンリファレンス操作的分類単位(OTU)ピッキングによって、OTUを選択した。1サンプルあたり85,134個のリードを使用して、QIIME1.8.0
63を用いて分類学的な割り当て及び希薄化を実施した。メタゲノムは、PICRUSt
64を使用してクローズドリファレンスOTU表から推測された。
図S7Cにおいて、結果をフィルタリングし、アミノ酸代謝に関連した上位72個の遺伝子を表示する。
【0045】
微生物叢コンベンショナル化
糞便試料は、成体SPF Swiss Websterマウスから新たに採取され、1個のペレットあたり1mlに事前に還元されたPBS中でホモジナイズされた。100ulの沈降した懸濁液を、経口経管栄養によってレシピエントGFマウスへ投与した。ニセの処置のために、事前に還元されたPBSによってマウスに経管栄養を行った。
【0046】
抗生物質処置
Reikvam et al.,PloS one(6),2011によって以前に記載された方法に従い、バンコマイシン(50mg/kg)、ネオマイシン(100mg/kg)及びメトロニダゾール(100mg/kg)の溶液によって、7日間毎日12時間毎にSPFマウスに経管栄養を行った。アンピシリン(1mg/ml)を適宜、飲料水中に与えた。ニセの処置のために、通常の飲料水によって7日間毎日12時間毎にマウスに経管栄養を行った。Kcna1-/-マウスに、バンコマイシン(500mg/ml)、ネオマイシン(1mg/ml)及びアンピシリン(1mg/ml)を含む飲料水を1週間補給し、発作易発性マウスにおける経口経管栄養のストレスを防止した。
【0047】
抗生物質処置されたマウスにおけるノトバイオートコロニー形成及び細菌濃縮
A.muciniphila(ATCC BAA835)を嫌気性条件下で0.05%のブタ胃ムチンIII型(Sigma Aldrich)によって補充されたブレインハートインヒュージョン(BHI)培地中で培養した。P.merdae(ATCC 43184)及びP.distasonis(ATCC 8503)を増強されたクロストリジウム培地(RCM)中の嫌気性条件内で増殖させた。109cfuの細菌を200ulの事前に還元されたPBS中で懸濁させ、これらにより抗生物質処置されたマウス、または無菌マウス中に経口で経管栄養を行った。「A.muciniphila及びParabacteroides菌種」として同時投与されるときに、2:1:1の比をA.muciniphila:P.merdae:P.distasonisに対して使用した。ニセの処置について、事前に還元されたPBSによってマウスに経管栄養を行った。パイロット研究は、細菌負荷に関連した測定値としての、糞便DNA濃度または16S rDNA増幅におけるコロニー形成群間に有意差がなかったことを明らかにした。マイクロアイソレーターケージ内でマウスを維持し、無菌的に取り扱った。コロニー形成の14日後にマウスを発作試験した。
【0048】
糞便微生物叢移植
14日間KDまたはCDを給餌されたドナーマウスから糞便試料を新たに採取し、事前に還元されたPBS中に50mg/mlに懸濁した。抗生物質処置されたマウスに、100ulの懸濁液の経口経管栄養によってコロニー形成した。ニセの処置のために、事前に還元されたPBSによってマウスに経管栄養を行った。マウスをマイクロアイソレーターケージ中に収容し、無菌的に取り扱った。発作試験を移植の4日後に行った。
【0049】
細菌処置
A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonisは、上述されるような嫌気性条件において新たに培養された後に、洗浄され、ペレット状にされ、事前に還元されたPBS中の5×109cfu/mlに再懸濁された。Parabacteroides菌種を含むA.muciniphilaを2:1:1の比で調製した。加熱殺菌のために、細菌を95℃に10分間置いた。ビークル対照として、28日間12時間毎に、200ulの細菌懸濁液または無菌の事前に還元されたPBSによってマウスに経管栄養を行った。
【0050】
Kcna1発作記録
EEG移植及び回復。オス及びメスKcna1-/-マウスからのEEGを6~7週齢に記録した。Kcna1+/+同腹仔を対照として使用した。我々は、発作頻度及び持続時間においてオスとメスとの間に有意差がなかったことを観察した。提示されたデータは、両方の性別を含む。マウスをイソフルラン(5%の導入、2%の維持)、及び各眼に塗布された眼軟膏によって麻酔した。頭部沿いの毛を除去し、この面積をクロロヘキシジン及び70%のイソプロパノールのどちらかの3回のスクラブによって洗浄した。バイオセーフティキャビネット中の、定位固定装置(Harvard Biosciences)内にマウスを置き、1mg/kgのリドカイン+1mg/kgのブピバカインを局所的に切開部位沿いに塗布した。滅菌の手術器具を使用して、2cmの切開を眼の後嚢縁から肩甲骨間の中点へ背側正中線沿いに行った。背側側腹部沿いに皮下ポケットを作製し、このポケットを滅菌生理食塩水によって洗浄した。頭蓋に向けられた双電位リード線を備える無線テレメトリトランスミッタを挿入した。3%の過酸化水素後に70%のイソプロパノールによって頭蓋骨を洗浄した。1.0mmのマイクロドリルビットを使用して、頭蓋骨を穿孔し、2つの小さな孔部を十字縫合と人字縫合との間の中間で、矢状縫合から1~2mmに生成した。両側EEG記録電極(Data Sciences International(DSI)PhysioTel、ETA-F10)を硬膜外に前頭頭頂皮質経由で移植した。滅菌アクリルを乾燥領域に塗布した。切開部位を吸収性5-0縫合糸によって閉じ、3%の過酸化水素後、70%のエタノールによって洗浄した。動物をオートクレーブ処理したマイクロアイソレーターケージ中に個別に収容し、記録を開始する前の3~5日間に回復させた。
【0051】
データ取得及び分析
EEG記録中に、動物を自由に運動させ、実験食餌制限について維持した。DSI Ponemah V5.1データ取得システムを使用して、3日かけてEEGトレースを取得した。行動発作の同時ビデオ記録をEEG記録と相関させ、適合したRacineスケールに基づきスコア化し、1)ミオクローヌス発作、2)頭部常同症及び顔面クローヌス、3)両側及び交互前肢/後肢クローヌス、4)立ち上がり行動及び転倒、ならびに5)全身性強直間代性エピソードの5段階まで定義した。盲検研究者は、Neuroscore CNSソフトウェア(DSI)を使用してデータを分析した。10Hzのハイパスフィルタを使用してEEG信号をフィルタリングし、盲検手動スコア化によって発作事象を検出した。6秒を上回る持続時間を有するバックグラウンドより少なくとも2倍大きい振幅を有する高頻度、高電圧同期不均一棘波形のパターンとして、発作を定義した。棘波頻度は、所与の発作におけるベースラインを上回り発生する棘波数として決定され、棘波出現間隔は、1匹のマウスあたりの各段階における5つの代表的な発作についての棘波間の時間の関数として分析された。1匹のマウスあたりの各段階における5つの代表的な発作についてのベースラインの3倍の大きさであった棘波に費やされた時間パーセントとして最大棘波振幅の持続時間を決定した。
【0052】
結腸内腔及び血清メタボロミクス
1ケージあたり少なくとも2匹のマウスを含む、独立したケージ中に収容されたマウスから試料を採取した。末期マウスの解剖から結腸内腔内容物を採取し、直ちに液体窒素中で急速凍結させ、-80℃で保管した。心臓穿刺によって血清試料を採取し、SSTバキュテナーチューブを使用して分離させ、-80℃に凍結させた。試料を自動MicroLab STARシステム(Hamilton Company)を使用して調製し、Metabolon,Inc.によるGC/MS、LC/MS及びLC/MS/MSプラットフォーム上で分析した。有機水性溶媒による連続抽出によってタンパク質分画を除去し、TurboVapシステム(Zymark)を使用して濃縮し、吸引減圧乾燥させた。LC/MS及びLC-MS/MSについて、リニアイオントラップフロントエンド及びフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計バックエンドによって、>11の注入標準物質を含有する酸性または塩基性LC適合性溶媒中で試料を再構成し、Waters ACQUITY UPLC及びThermo-Finnigan LTQ質量分析計上で実施した。GC/MSについて、ビストリメチル-シリル-トリフルオロアセトアミドを使用して乾燥窒素下で試料を誘導体化し、電子衝撃イオン化を使用して、Thermo-Finnigan Trace DSQ高速走査シングル四重極質量分析計上で分析した。精製標準物質のメタボロームライブラリエントリーと比較して化学薬品を同定した。各化合物について最小観察値とのログ変換及びインピュテーション後に、一元配置分散分析を使用してデータを分析し、群効果について試験した。二元配置分散分析の対比に基づき、P及びq値を計算した。主成分分析を使用して、分散分布を視覚化した。教師ありランダムフォレスト分析を行い、メタボロミクス予測精度を同定した。
【0053】
海馬メタボロミクス
海馬組織を1mlの80%の冷MeOH中でホモジナイズし、氷上で激しく撹拌した後、遠心分離した(1.3*104rpm、4℃)。5ugの上澄みをガラスバイアス中に移し、5nmol D/Lのノルバリンを補充し、吸引減圧乾燥させ、最後に70%のアセトニトリル中で再懸濁させた。試料の質量分析に基づく分析のために、5lをLuna NH2(150mm×2mm、Phenomenex)カラム上に注入した。これらの試料は、Q Exactive質量分析計(Thermo Scientific)に連結されたUltiMate3000RSLC(Thermo Scientific)によって分析された。このQ Exactiveは、70~1050m/zの範囲を有するフルスキャンモードで極性スイッチング(+4.00kV/-4.00kV)によって行われた。A)5mM NH4AcO(pH9.9)、及びB)ACNを使用して、分離を達成した。この勾配は、15%のA)によって開始し、18分かけて90%のA)まで進行し、9分間アイソクラティックステップを行い、7分間最初の15%のA)に戻した。正確な質量測定値(≦3ppm)、純粋な標準物質の保持時間、及びMS2フラグメンテーションパターンを使用してTraceFinder3.3によって、代謝産物を定量化した。Rを使用して、主成分分析及び階層的クラスタリングを有するデータ分析を実行した。
【0054】
アミノ酸補給
上記の方法に記述されるように、4週齢のSwiss Webster SPFマウスを抗生物質によって処置し、A.muciniphila及びParabacteroides菌種によってコロニー形成し、KDを14日間与えた。11日目の夕方から、3日間12時間毎に、滅菌PBS中のケト原性アミノ酸カクテル(Sigma Aldrich)--L-ロイシン(2.0mg/kg)、L-リジン(2.0mg/kg)、L-チロシン(2.4mg/kg)、L-トリプトファン(1.6mg/kg)、及びL-スレオニン(3.1mg/kg)をマウス腹腔内に注入した。濃縮は、マウス血液26中の各アミノ酸について報告された生理的レベルに、また対照SPF CD及びAkkPb KDマウス間の各アミノ酸についての我々のメタボロミクスデータセット中で観察された倍率変化に基づく(表S4)。ビークル処置されたマウスにPBS(200ul/30gマウス)を注入した。14日目に、前の1時間の行動試験室中での順化期間を含む、最後の朝のアミノ酸注入の2時間後に6Hz発作についてマウスを試験した。
【0055】
GGsTop処置
野生型マウスについて:4週齢のSPF Swiss WebsterマウスにCDを14日間適宜給餌した。11日目の夕方から、12時間毎に滅菌水中の13.3mg/kgの3-[[(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)メトキシホスフィニル]オキシ]ベンゼン酢酸(GGsTop、Tocris Bioscience)によってマウスに経口経管栄養を行った。ビークル処置されたマウスに滅菌水(200ul/30gマウス)によって経管栄養を行った。14日目に、行動試験室中での前の1時間の順化期間を含む、最後の朝のGGsTop経管栄養の2時間後に、6Hz発作についてマウスを試験した。Kcna1マウスについて:3~4週齢のKcna1-/-マウスにCDを23日間適宜に給餌した。15日目に、上記の節のKcna1発作記録に記述されるように、EEG伝達物質を移植した。18日目の夕方に、12時間毎に21日目の朝まで、13.3mg/kgのGGsTopによってマウスに経口経管栄養を行った。EEGによって最終経管栄養の2時間後に記録を開始し、3日間かけて発作を記録した。
【0056】
交差給餌インビトロアッセイ
前述のように交差給餌を測定した。嫌気性チューブの底部に1%の寒天によって補充された5mlの事前に還元されたCDまたはKDベースの液体培地中に2×106cfu/mlでA.muciniphilaを包埋し、その上にP.merdaeを5mlの事前に還元されたM9最少培地中に6×106cfu/mlで重層した。上述されたマウスKD対CD食餌制限をM9培地中で2kcal/mlへ無菌的に懸濁することによって、食餌制限に基づく培地を作製した。パイロット実験は、寒天区画から上記のM9液体区画中へ包埋されたA.muciniphilaの異所転位がないことを確認した。各時点に、頂部及び底部区画からアリコートを取り、濃厚培地中の希釈系列(P.merdaeについてRCM、及びA.muciniphilaについてBHI+0.05%のムチン)に蒔き、コロニーを計数した。GGsTop前処置実験について、RCM培地中でP.merdaeを500uMのGGsTop対ビークルによって37℃で2時間インキュベートした後に、滅菌培地によって洗浄した。パイロット実験は、P.merdae生存率についてGGsTop前処置の有意な効果がなかったことを明らかにした。
【0057】
GGT活性アッセイ
van der Stel,Frontiers in Microbiology(6),567(2015)に以前に記載されたように、GGT活性を測定した。嫌気性培養のために、CD及びKDベースの培地中に3×105cfu/mlで細菌を播種した。1mlの細菌懸濁液をペレット状にし、-80℃で1時間冷凍した。細菌cfuによる後のデータ正規化のために、同一の懸濁液の別々のアリコートをBHIムチン寒天培地またはRCM中に蒔き、Coy嫌気性チャンバ中に37℃でインキュベートした。つぎにペレットを250ulの溶解緩衝液(1ug/mlのリゾチームを含む50mMのTris-HCl)中で再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。糞便試料について、1つのペレットを計量し、1mlの溶解緩衝液中でホモジナイズした。つぎに細菌及び糞便懸濁液を超音波処理し(QSonica 125)、10分間4℃で12000xgにおいて遠心分離した。20ulの上澄みを180ulの基質緩衝液(2.9mM L-ガンマ-グルタミル-3-カルボキシ-4-ニトロアニリド(Gold Bio)、100mMのグリシルグリシン(Sigma Aldrich)、100mMのTris-HCl)、及び500uMのGGsTop(注記がある場合)と撹拌した。自動マルチモードプレートリーダー(Biotek Synergy H1)を使用して1時間毎分37℃で、3-カルボキシ-4-ニトロアニリンの生成を示す405nmで吸光度を測定した。
【0058】
腸管透過性アッセイ
0.6g/kgの4kDa FITC-デキストラン(Sigma Aldrich)による経管栄養前に、午前7時に開始して4時間マウスを絶食させた。経管栄養の4時間後に、心臓穿刺によって血清試料を採取し、水中で3倍に希釈し、水中で3倍に希釈された通常のマウス血清中のFITC-デキストランストックの標準希釈系列に対して、Synergy H9マルチモードプレートリーダー(Biotek)を使用して蛍光強度について521nmで二度繰り返して読んだ。
【0059】
統計学的解析
Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して統計学的解析を実行した。データを正規分布について評価し、平均値±の標準誤差として図中にプロットした。各図について、n=独立した生物学的反復実験数。試料または動物をこれらの解析から除外しなかった。ウェルチの補正による両側の、対応しないスチューデントt検定を使用して、2つの処置群間の差を評価した。ボンフェローニの事後検定による一元配置分散分析を使用して1つの変数のみを有する>2群間の差を評価した。ダンの事後検定によるノンパラメトリック一元配置分散分析によって、Kcna1マウスについてのデータを解析した。2つの変数を有する≧2群(たとえば、発作時間経過、BHB時間経過、メタボロミクスデータ、細菌増殖曲線)に対してボンフェローニの事後検定による二元配置分散分析を使用した。GGTアッセイに対して、反復測定及びボンフェローニ事後検定による一元配置分散分析を使用した。上記の検定から現れる有意差を、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001によって図中に示す。注目すべき、ほぼ有意な差(0.5<P<0.1)を図中に示した。注目すべき、有意ではない(及びほぼ有意ではない)差を図中に「n.s.」によって示す。
【0060】
[実施例2:ケトン食療法は腸内微生物叢を変えて発作に対する予防を与える]
難治性てんかんの6Hzの精神運動発作モデルは、低周波数角膜刺激を伴い、ヒト側頭葉てんかんの焦点性認知障害性発作を誘発する。KDは、試験される対象の50%に発作を誘発するために必要とされる上昇した電流強度(CC50、発作閾値)によって示されるような、6Hz発作を予防する。特定病原体除去(SPF)Swiss Websterマウスに6:1の脂肪:タンパク質KD、またはビタミン及びミネラルが適合した対照食餌療法(CD)を給餌した。CD対照と比較して、KDを摂取するマウスは、6Hzの刺激に応答して上昇した発作閾値(
図1A)、減少した血清グルコース(
図1B)及び増加した血清β-ヒドロキシ酪酸(BHB;
図1C)を示した。CD群対KD群にわたる摂食量、または体重増加における有意差がなかった。
【0061】
発作閾値を上昇させることに加えて、ケトン食療法は、腸内微生物叢の組成物を変え(
図1D)、α-多様性を低下させ(
図1E)、Akkermansia muciniphilaの相対的存在量を増加させた(
図1F)。Parabacteroides、Sutterella及びErysipelotrichaceae菌種は、KD給餌されたマウスにおいても増加したが、Allobaculum、Bifidobacterium及びDesulfovibrio菌種は、対照食餌制限を給餌されたマウスにおいて増加した(
図2)。これらの結果は、腸内微生物叢の組成物がKDに応答して迅速、かつ有意に変わったことを明らかにした。
【0062】
[実施例3:腸内微生物叢はケトン食療法の抗発作効果を与える]
腸内微生物叢がケトン食療法の抗発作効果に必要であったかどうかを判定するために、無菌(GF)及び抗生物質(Abx)処置されたSPFマウスについての6Hz精神運動発作閾値を測定した。
【0063】
CD対照(SPF CD)と比較して、KD(SPF KD)を14日間給餌されたSPFマウスは、上昇した発作閾値を示し、微生物叢を変えた(
図3A及び
図1D)。これは、GFマウス(
図3A)及びAbx処置されたSPFマウス(
図3C)において抑制され、発作予防において、KDが媒介した増加のために腸内微生物叢を必要としたことを示した。SPF腸内微生物叢を含むGFマウスのコンベンショナル化は、KD関連発作予防を天然SPF KDマウスに見られるレベルへ回復させ(
図3A)、KD発作抵抗性の微生物媒介が離乳前微生物叢コロニー形成に依存しなかったこと、及びこの微生物叢がKDによる発作予防を能動的に媒介したことを示唆した。注目すべきことに、KD関連発作抵抗性の微生物調節は、血清BHBまたはグルコースレベルにおける変化と相関しなかった(
図3B及び
図3D)。また、腸、肝臓、または脳のBHBレベルにおいて群間の有意差がなかった。全体として、これらのデータは、腸内微生物叢が6Hzの発作モデルにおけるKDの抗発作効果に必要とされたことを実証し、さらに腸内微生物がBHBレベルにおける変化を伴わない機構を通して発作感受性を調節したことを示唆した。
【0064】
特異的細菌分類群がKDに反応して発作予防を媒介したかどうかを判定するために、Abx処置されたSPFマウスに選択KD関連細菌によってコロニー形成し、これらのマウスにKDを給餌した後、6Hz発作について試験した(
図4)。10
9cfuの細菌:i)A.muciniphila;ii)KDによって濃縮されたParabacteroides操作的分類単位リードへ最も高い相同性を有するヒト微生物叢からの代表的な腸内Parabacteroides菌種として、Parabacteroides merdae及びP.distasonisの1:1の割合(
図1D);またはiii)A.muciniphila、P.merdae及びP.distasonisの2:1:1の割合によってマウスに経管栄養を行った。経管栄養の14日後に、結腸内腔内容物の16S rDNAシーケンシングは、A.muciniphilaで処置されたマウスは、43.7±0.4%の相対的存在量のA.muciniphilaを含み、両方の分類群によって経管栄養を行われたマウスは、49.0±4.1%のA.muciniphila及び22.5±5.4%のParabacteroidesを含んだことを明らかにした。これと一致して、A.muciniphila及びParabacteroides菌種によって処置されたマウスからの結腸切片のFISHプロセシングは、A.muciniphilaプローブMUC1437、ならびにBacteroides及びParabacteroides菌種プローブBAC303の増加したハイブリダイゼーションを示し、BAC303陽性細胞から最も近いMUC1437陽性細胞への平均距離は、0.64±0.09ミクロンである。A.muciniphila及びParabacteroides菌種の両方は、粘膜間隙ではなく、マウス結腸の内腔に局在した。CD対KDを給餌されたマウスにわたる、体重、血清グルコースレベル、またはA.muciniphila及びParabacteroides菌種の濃縮において有意差がなかった。コロニー形成及び発作病態にかかわらず、KD給餌群において、BHBを同様に引き起こした。これらのデータは、Abx処置による微生物叢枯渇後の外因性細菌の経口経管栄養が播種後14日までにそれらの持続的な腸内濃縮をもたらしたことを明らかにした。
【0065】
KD単独による処置は、SPF CDマウスにおける19.4±0.8mAから、SPF KDマウスにおける24.2±0.3mAへ、24.5%発作閾値を上昇させた。A.muciniphila及びParabacteroides菌種の同時投与がKDを給餌されたAbx処置マウスにおける6Hz発作に対する予防を回復させながら、Abx KDマウスにおける19.9±0.3mAから、AkkPb KDマウスにおける27.0±0.5mAへ、36.0%閾値を上昇させた(
図4A)。A.muciniphila及びP.distasonisによって経管栄養を行われたマウスが発作予防の回復がなかったことを示したため、細菌濃縮の発作予防効果は、P.merdaeを含むA.muciniphilaに特異的であった。A.muciniphilaまたはParabacteroides菌種単独のいずれか一方の濃縮後に、発作閾値における有意な上昇がなく(
図4A)、これらの両方がケトン食療法の抗発作効果を媒介するために必要とされたことを示した。また、CD処置されたマウスにおいて増加した(
図1F)、Bifidobacterium longumによる処置の効果がなかった(
図4A)。さらに、GFマウス中のParabacteroides単一コロニー形成、またはA.muciniphila単一コロニー形成に比較したとき、GFマウスにおけるA.muciniphila及びParabacteroides菌種の同時コロニー形成は、KDに反応して発作予防を促進した(
図4C)。全体として、これらの知見は、A.muciniphila及びParabacteroides菌種がケトン食療法に反応して増殖し、その予防効果を6Hz発作モデルにおいて媒介したことを明らかにした。
【0066】
[実施例4:腸内微生物叢は対照食餌制限を給餌されたマウスに発作予防を十分に与える]
KD関連腸内微生物も対照食餌制限を給餌されたマウスに抗発作効果を与えたかどうかを判定するために、Abx処置されたマウスは、SPFマウスからCD対KD微生物叢を移植され、CDまたはKDを給餌され、4日間の食餌処置後に6Hz発作へのこれらのマウスの感受性について試験された。Abx処置されたマウスを使用し、天然微生物叢を枯渇させるためにAbxによる前処置を伴う臨床糞便移植手法を模倣した。4日目は、i)その時点までに有意な微生物叢変化を誘導するKDの能力(
図1D、
図1F、及び
図5A)と、ii)KD微生物叢がKDからCDへ切り換えた4日後に、CDプロファイルへの不完全な復帰を示す証拠(
図6A)とに基づき選択した。CD微生物叢を移植され、KDを4日間給餌されたマウスは、CD給餌された対照と比較して、上昇した発作閾値を示した(
図5A)。KDマイクロバイオームを移植したが、4日間CDを給餌されたAbx処置マウスも、同様の発作予防を示した。これは、KD微生物叢によるコロニー形成がCDを給餌されたマウスにおける発作閾値を上昇させたことを示唆した。注目すべきことに、しかしながら、28日目にCDプロファイルへKD微生物叢の完全な復帰後に発作予防を抑制し(
図6B)、KD微生物叢、食餌制限及び神経活性間の持続的な相互作用を必要としたことを示唆した。同様な抗発作効果は、Parabacteroides菌種、A.muciniphilaまたはB.longum対照と比較して、CDを給餌されたAbx処置SPFマウスにおいて、A.muciniphila及びParabacteroides菌種を濃縮した後に見られた(
図5B)。しかしながら、SPF CD対照と比較してAbx単独によって処置されたSPF CDマウス中の発作閾値における上昇は、これらの結果の解釈を混乱させた(
図5B)。この不確実性を明らかにするために、A.muciniphila及びParabacteroides菌種による外因性の処置がCDを給餌されたマウスに抗発作効果を与えたかどうかを調査する細菌処置手法を適用した。10
9cfuのA.muciniphila及びParabacteroides菌種による、またはビークルによる、28日間1日2回の経管栄養をSPF CDマウスに行った。この細菌処置は、ビークル経管栄養対照と比較して、発作閾値を上昇させた(
図6C)。ケトン食療法を給餌されたマウスにおける実験(
図4)と一致して、この発作予防は、A.muciniphila単独によって処置された動物において観察されず、発作予防のためにA.muciniphila及びParabacteroides菌種の同時投与を必要としたことを明らかにした(
図5C)。さらに、加熱殺菌された細菌による処置は、ビークル処置された対照と比較して、発作閾値を低下させ、生菌が抗発作効果を与えるために必要であり、細菌細胞表面及び/または細胞内因子の放出が6Hz発作への感受性を促進したことを示唆した。発作閾値における上昇が21日間処置を止めた後に失われたため、A.muciniphila及びParabacteroides菌種への持続的な曝露を必要とした(
図6C)。加えて、発作予防は、4日間だけ処置されたマウスにおいて観察されず(
図6D)、長期間の曝露を必要としたことを示唆した。まとめると、これらの知見は、KD微生物叢の糞便移植、及びKD関連分類群A.muciniphila及びParabacteroides菌種による細菌処置が対照食餌制限を給餌されたマウスにおける6Hz精神運動発作に対する予防を与えたことを明らかにした。
【0067】
[実施例5:KD関連細菌はKcna1
-/-マウスにおける強直間代性発作を減少させた]
てんかんは、多様な臨床症状を有する不均一な疾患である。微生物叢が異なる発作タイプに影響したかどうかを判定するために、側頭葉てんかん、及びてんかんにおける予期せぬ突然死(SUDEP)についてのKcna1
-/-マウスのモデルにおいて、全般性強直間代性発作を調節する際に腸内微生物叢についての役割を試験した。Kcna1
-/-マウスは、電位開口型カリウムチャネルKv1.1アルファサブユニットにヌル変異体を含み、てんかん、発作性運動失調症及びSUDEPとヒトKCNA1遺伝子バリアントの関連性を模倣する。Kcna1
-/-マウスは、KDによって54%減少する、重度の自発性反復性発作を発症する。Kcna1
-/-SPF C3HeB/FeJマウスをAbxまたはビークルによって1週間処置し、これらのマウスにビークル、またはA.muciniphila及びParabacteroides菌種によって経管栄養を行い、3週間KDまたはCDを給餌した。発作頻度及び持続時間をEEGによって3日かけて記録し、エレクトログラフィック発作を5段階:A)低電圧棘波を有する、低周波バックグラウンド、B)同期した高周波、高電圧棘波、C)高周波、低電圧棘波、D)同期しなかった高周波、高電圧棘波、及びE)高周波、バースト棘波(
図7C)からなる特徴的なてんかん様棘波パターンに基づき特定した。さらに、EEG発作パターンは、5段階によって特定される常同発作行動によって実証された。KD対CDを給餌されたマウス間の体重増加、摂食量における有意差がなかった。群にわたる生存率における差は、観察されなかった。CDを給餌されたKcna1
-/-対照と比較して、KDを給餌されたKcna1
-/-マウスは、A.muciniphila及びParabacteroides菌種における増加を有する、腸内微生物叢プロファイルの変化を示した(
図7A)。注目すべきことに、これらの変化は、Swiss Websterマウスに見られるKD誘導型濃縮(
図1F)と比較して、穏やかで、統計学的に有意ではなく、ベースライン微生物叢組成物、及びKDへの反応についての宿主遺伝型の効果を強調した。ビークル処置されたKcna1
-/-マウスは、490±26uVの平均最大棘波振幅を有する、15~180秒持続した発作を示した(
図7C)。CDを給餌されたKcna1
-/-対照と比較して、KDを給餌されたKcna1
-/-マウスにおける発作発生率及び持続時間における減少を観察し(
図7D)、前述されるようにKD媒介型発作予防と一致していた。Abxによって前処置され、腸内微生物叢を枯渇させたKcna1
-/-マウスは、ビークル処置され、KDを給餌されたKcna1
-/-対照と比較して、1日あたりの発作、及び合計発作持続時間に有意な増加を示した(
図7D)。1発作あたりの棘波頻度、棘波内間隔、及び平均持続時間における有意差がなく、発作出現率についてAbx処置及び腸内微生物叢の枯渇の主な効果を示唆した。さらに、A.muciniphila及びParabacteroides菌種によるAbx処置されたKcna1
-/-マウスのコロニー形成は、ビークル処置され、KDを給餌されたKcna1
-/-対照に見られたレベルに対して、発作頻度、及び発作の合計持続時間を減少させた(
図7D)。これは、A.muciniphila及びParabacteroides菌種による処置が異なるベースライン及び食餌制限を変更された微生物叢(この事例において、C57B1/6対C3HeB/FeJ)を含むマウス系統において発作予防を同様に与えたことを示唆した。まとめると、これらの結果は、常在性腸内微生物叢からの選択細菌種が変化した発作タイプ及びモデルにわたりKDの抗発作効果を媒介した概念を支持した。
【0068】
[実施例6:微生物叢は腸、血清、及び脳のメタボロームを調節した]
メタボロームプロファイリングを使用して、CDを給餌されたSPFマウスと、KDを給餌されたSPF、Abx処置されたSPF、ならびにA.muciniphila及びParabacteroides菌種の濃縮されたマウスとの結腸内腔内容物及び血清における候補の微生物叢依存性分子を特定した(
図8A及び
図9A)。結腸内腔内容物及び血清におけるメタボロームプロファイルにより、結腸内腔代謝産物について94%、及び血清代謝産物について87.5%の予測精度で、発作感受性(CDを給餌されたビークル処置SPFマウス、及びKDを給餌されたAbx処置SPFマウス)群から発作予防した(KDを給餌されたビークル処置SPFマウス、及びKDを給餌されたParabacteroides菌種を含むA.muciniphila濃縮マウス)群を識別した。群識別へ非常に寄与した代謝産物の大部分は、リジン、チロシン及びスレオニンの誘導体を含む、アミノ酸代謝に関連した。加えて、発作感受性群と比較して、発作予防群からの結腸内腔内容物(
図8C)及び血清(
図8D)中のケト原性ガンマグルタミル化アミノ酸(ガンマ-グルタミル(GG)-ロイシン、GG-リジン、GG-スレオニン、GG-トリプトファン及びGG-チロシン)のサブセットにおける広範な減少を観察した。これは、腸内微生物叢がガンマ-グルタミル化自体、またはケト原性GGアミノ酸の選択的代謝を調節したこと、及び増加したケト原性GGアミノ酸を発作感受性と関連付けたことを示唆した。この概念を支持するように、補完を行ったメタゲノムが、アミノ酸代謝に関連する細菌遺伝子中のKD関連変化を予測した。これらのデータは、KDに対する腸管及び全身性メタボローム応答について腸内微生物叢の有意な効果を明らかにし、さらにケト原性GGアミノ酸のレベルにおける、KD誘導型発作予防と微生物叢依存性変化との間の関連性を明らかにした。
【0069】
脳は、神経伝達物質生合成に補給するために必須アミノ酸の能動的移入に依存するため、末梢アミノ酸の生物学的利用率における変動に感受性がある。GGアミノ酸は、特に、非ガンマ-グルタミル化形態と比較して、増加した輸送特性を示すと仮定される。血清のケト原性アミノ酸中の食餌制限及び微生物叢依存性変化、アミノ酸移入と脳GABAレベルとの間の関連、ならびにGABAがKDの抗発作効果に寄与したという一般的な理論を明らかにしたデータに基づき、発作伝播についての重要な領域である海馬中のGABA及びグルタミン酸塩のバルクレベルを検討した。海馬代謝産物プロファイルは、発作予防マウス対発作感受性マウスについての試料を区別した。海馬のGABA/グルタミン酸塩の比は、CDを給餌された対照と比較して、KDを給餌されたSPFマウスにおいて有意に増加する(
図8D、左側)。これらの増加は、KDを給餌されたAbx処置マウスにおいて抑制され、Abx処置マウスにA.muciniphila及びParabacteroides菌種を濃縮後に回復した(
図8D)。同様の変化は、グルタミンの海馬レベル、グルタミン酸塩及びGABAの前駆体について見られた(
図8D、右側)。全体として、これらの結果は、グルタミンの生物学的利用率における食餌制限及び微生物叢依存性調節、ならびに発作予防マウスにおけるグルタミン酸塩と比較して海馬GABAレベルにおける優先的な上昇を明らかにした。
【0070】
[実施例7:細菌ガンマ-グルタミル化は発作感受性に影響した]
本質的なケト原性GGアミノ酸が発作予防実験群対発作感受性実験群の結腸内腔及び血清において減少した知見に基づき、ケト原性GGアミノ酸の微生物叢依存性制限がKDの抗発作効果を媒介するために重要であると仮定された。アミノ酸のガンマ-グルタミル化形態は、グルタチオンからアミノ酸上へのGG部分のペプチド転移によって生成された。アミノ酸のガンマ-グルタミル化が発作感受性に影響するかどうかを判定するために、SPF CDマウスに経管栄養を3日間、GGTの選択的不可逆的阻害剤であるGGsTopによって行った。GGsTopによって処置されたSPF CDマウスは、SPF KDマウスに見られたレベルに対して発作閾値において増加を示した(
図10A)。同様に、GGsTopによって処置されたCD給餌SPF Kcna1
-/-マウスのEEG記録は、1日あたりの発作における有意な減少を示した(
図7E)。これは、ガンマ-グルタミル化の末梢阻害、及びGGアミノ酸の制限が発作予防を促進したことを実証し、発作感受性対照と比較して、発作予防群からの結腸内腔内容物及び血清中のケト原性GGアミノ酸のメタボローム減少が観察されたことと一致している。グルタチオンの異化よりもむしろ、アミノ酸の制限がKD微生物叢の抗発作効果のために必要であったかどうかを判定するために、KDを給餌されたA.muciniphila及びParabacteroides菌種濃縮マウスは、3日間、1日2回、併用のロイシン、リジン、スレオニン、トリプトファン及びチロシンによる腹腔内注入によって補われた後に、6Hz発作について試験された。それぞれについての投与量が血中濃度をSPF CD対照に見られた血中濃度まで回復させるように、血清メタボロームデータに基づき、生理学的に適切なアミノ酸濃度を計算した。ケト原性アミノ酸の全身レベルの上昇は、ビークル処置されたSPF CD対照に見られたレベルまで発作閾値を低下させた(
図10B)。これは、末梢ケト原性アミノ酸の制限が発作抵抗性における微生物叢及びKD依存性向上を媒介するために必要であったことを示唆した。
【0071】
宿主細胞と特定の細菌種との両方は、GGT活性を示す。KD、及びA.muciniphilaとParabacteroides菌種との間の相互作用がインビボで細菌のガンマ-グルタミル化を抑制したかどうかの洞察を得るために、CDもしくはKDを給餌されたSPFマウス、またはA.muciniphila及びParabacteroides菌種濃縮マウスから採取された糞便試料において、GGT活性を測定した。SPFマウスにKDを給餌することは、CD対照と比較して糞便GGT活性を低下させた(
図10C)。糞便GGT活性における同様の低下は、CDを給餌されたマウスにおいてA.muciniphila及びParabacteroides菌種を濃縮した後に見られた。さらに、A.muciniphila及びParabacteroides菌種を濃縮すること、ならびにKDを給餌することにより、SPF KD及びSPF CDマウスに見られたものと比較して、糞便GGT活性をさらに低下させた。すべての糞便試料をGGT阻害剤、GGsTopに曝露することにより、検出されたシグナルを除去し、測定値がGGT活性を反映したことを確認した。これと一致して、A.muciniphila及びParabacteroides菌種によるCD給餌SPFマウスの処置は、ビークル処置対照、及び加熱殺菌細菌によって処置されたマウスと比較して、糞便GGT活性を低下させた(
図10D)。全体として、A.muciniphila及びParabacteroides菌種について濃縮、またはこれらによる外因性処置が糞便GGT活性を低下させたことを明らかにし、これにより、発作予防マウスにおいて観察された結腸及び血清GGアミノ酸の低レベルを説明することが可能である。
【0072】
細菌ガンマ-グルタミル化がA.muciniphilaとParabacteroides菌種との間の相互作用によって影響されたかどうかを探索するために、インビトロ交差給餌システムにおいて増殖した細菌のGGT活性を測定した。A.muciniphilaがCDまたはKDベースの寒天中に包埋され、P.merdaeがM9最少培地中に寒天上で重層されたときに、両方の細菌は、増強された増殖を示し(
図10E及び
図10F)、A.muciniphilaが可溶性因子を遊離させ、P.merdae増殖を可能にし、今度はP.merdaeがA.muciniphila増殖を増強したことを示唆した。パイロット実験は、KDまたはCD寒天中に包埋されたP.merdae上に重層されたときにM9培地中でA.muciniphilaの増殖がなかったことを明らかにし、A.muciniphilaが持続するP.merdaeからの交差給餌だけに頼ることが不可能であることを示唆した。
【0073】
P.merdaeは、CDまたはKD寒天中に包埋されたA.muciniphilaの追加によって除去された、高いGGT活性を示した(
図10G及び
図10H)。P.merdae中のGGT活性の低下がA.muciniphila増殖を促進したかどうかを判定するために、P.merdaeをビークルまたはGGsTopによって前処置し、交差給餌アッセイで試験する前にGGT活性を薬理学的に阻害した。GGsTopによって前処置されたP.merdaeに曝露されたA.muciniphilaは、ビークル処置されたP.merdaeに曝露されたA.muciniphilaと比較して、インキュベーションの24時間後に増加した増殖を示した(
図11B)。まとめると、これらの知見は、A.muciniphilaがP.merdae増殖を支持するためにKD及びCD食餌制限から成分を代謝することが可能であったこと、ならびに協同的相互作用がGGT活性を低下させたことを示唆した。つぎに、P.merdae中のGGT活性における低下は、A.muciniphila増殖を促進する。これは、A.muciniphila及びParabacteroides菌種の濃縮が糞便GGT活性、結腸内腔GGアミノ酸及び血清GGアミノ酸を低下させた知見と一致していた。これは、発作予防のためにアミノ酸制限を必要としたこと、及びGGT阻害が発作予防を促進したことを実証した。これは、GGT活性を変化した発作重症度と関連付ける以前の研究と整合した。75名のてんかん患者の研究において、高い血清GGT活性は、対照と比較して、84.5%の患者において観察された。ラット発作モデルにおいて、GGT活性は、5回連続、毎日の電気ショック送達後に上昇した。動物及びヒトにおける、さまざまな末梢アミノ酸における減少は、KD媒介発作抑制と関連している。
【0074】
本明細書におけるデータ、及び脳神経伝達物質生合成のための基質としての末梢アミノ酸についての役割に関する既存の文献に基づき、GGアミノ酸の細菌調節がGABA/グルタミン酸塩の代謝を補給するアミノ酸の脳移入を変えたと仮定した(
図8)。注目すべきことに、いくつかの腸内細菌は、新たなGABAを合成することが報告されているが、GABAの循環が血液脳関門にわたり輸送が制限されていることを示す。加えて、腸内微生物叢における変化は、脳GABAレベルにおける変化と関連付けられているが、関与した分子機構は、不明なままである。GGアミノ酸がアミノ酸の脳輸送、及びグルタミン酸塩対GABAの局所合成に影響するかどうかを判定するために、追加の研究を必要とする。
【0075】
全体的に見て、本研究は、難治性てんかんについてのマウスモデルにおける発作予防を媒介して与える際に、特定のKD関連腸内細菌(A.muciniphila及びParabacteroides菌種)についての新しい役割を実証した。A.muciniphilaにおける増加は、ヒト、ハムスター、リス、及びパイソンにおける絶食中に、またマウスにおけるカロリー制限及び高多価不飽和脂肪食餌制限に応答して、同様に観察された。またA.muciniphila及びParabacteroides菌種は、ヒトにおけるケトン症の増加及びケトン食療法と陽性に関連する。本明細書におけるデータは、海馬におけるグルタミン酸塩と比較して、ケト原性GGアミノ酸の宿主レベルを低下させ、GABAの全体の生物学的利用率を上昇させた特定の微生物間相互作用をKDが促進したことにより可能性のある経路を明らかにする。ガンマ-グルタミル化の薬理学的阻害は、発作閾値を上昇させ、GGT活性の低下がマウスにおけるKD関連腸内微生物叢の抗発作効果を媒介するために重要であったことを示唆した。注目すべきことに、GF条件中の細菌GGT活性の欠如が発作感受性と関連したことを考えると、A.muciniphila及びParabacteroides菌種がGGT活性の抑制に加えて、発作予防に貢献することもできる機能に寄与したという可能性がある。
【0076】
参照による援用
本明細書において言及されるすべての刊行物及び特許は、それぞれの個々の刊行物または特許が具体的に、かつ個別に参照により援用されるように示されたかのように、本明細書によってそれらの全体が参照により援用される。矛盾がある場合、本明細書のいかなる定義をも含む本出願が支配する。
【0077】
均等物
本発明の特定の実施形態を考察したが、上記の明細書は、例示であり、限定ではない。本明細書、及び以下の特許請求の範囲を検討すると、本発明の多くの変形形態は、当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲に加え、それらの均等物の全範囲、及び本明細書に加え、このような変形形態への参照によって決定されるべきである。 本発明は、以下を提供する。
(1) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象におけるケトン食療法に応答性である病態を予防する、または処置する方法。
(2) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象内の神経伝達物質生合成を変えることによって、前記対象におけるケトン食療法に応答性である病態を予防する、または処置する方法。
(3) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象内の血清ケト原性アミノ酸を変えることによって、前記対象におけるケトン食療法に応答性である病態を予防する、または処置する方法。
(4) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象内のガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ活性を低下させることによって、前記対象におけるケトン食療法に応答性である病態を予防する、または処置する方法。
(5) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象内のグルタミン合成酵素活性を低下させることによって、前記対象におけるケトン食療法に応答性である病態を予防する、または処置する方法。
(6) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象内のガンマ-グルタミルアミノ酸を減少させることによって、前記対象におけるケトン食療法に応答性である病態を予防する、または処置する方法。
(7) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象内のGABA/グルタミン酸塩比のレベルを上昇させることによって、前記対象におけるケトン食療法に応答性である病態を予防する、または処置する方法。
(8) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象内のグルタミンレベルを上昇させることによって、前記対象におけるケトン食療法に応答性である病態を予防する、または処置する方法。
(9) Akkermansia(Akk)属の前記細菌は、Akkermansia muciniphilaを含む、上記のいずれかに記載の方法。
(10) Parabacteroides(Pb)属の前記細菌は、Parabacteroides merdaeを含む、上記のいずれかに記載の方法。
(11) Parabacteroides(Pb)属の前記細菌は、Parabacteroides distasonisを含む、上記のいずれかに記載の方法。
(12) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも10%は、Akkermansia(Akk)である、上記のいずれかに記載の方法。
(13) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも30%は、Akkermansia(Akk)である、上記のいずれかに記載の方法。
(14) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも50%は、Akkermansia(Akk)である、上記のいずれかに記載の方法。
(15)前記組成物中の前記細菌の少なくとも70%は、Akkermansia(Akk)である、上記のいずれかに記載の方法。
(16) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも90%は、Akkermansia(Akk)である、上記のいずれかに記載の方法。
(17) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも10%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記のいずれかに記載の方法。
(18) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも30%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記のいずれかに記載の方法。
(19) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも50%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記のいずれかに記載の方法。
(20) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも70%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記のいずれかに記載の方法。
(21) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも90%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記のいずれかに記載の方法。
(22) 前記病態は、発作であり、任意選択で対象は、たとえば、てんかん、自閉症スペクトラム症、レット症候群、注意欠陥障害、及び脆弱X症候群から選択される、神経発達病態を有する、上記のいずれかに記載の方法。
(23) 前記対象は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん、脳卒中、代謝疾患、ミトコンドリア病、うつ状態、片頭痛、及び外傷性脳損傷(TBI)から選択される病態を有する、上記(1)から(22)のいずれかに記載の方法。
(24) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、対照食事制限である、上記(1)から(23)のいずれかに記載の方法。
(25) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、ケトン食療法である、上記(1)から(24)のいずれかに記載の方法。
(26) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、高脂肪食である、上記(1)から(25)のいずれかに記載の方法。
(27) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、低炭水化物食である、上記(1)から(26)のいずれかに記載の方法。
(28) 前記組成物は、経口送達用に製剤化される、上記(1)から(27)のいずれかに記載の方法。
(29) 前記組成物は、食品である、上記(1)から(28)のいずれかに記載の方法。
(30) 前記食品は、乳製品である、上記(29)に記載の方法。
(31) 前記食品は、ヨーグルトである、上記(29)に記載の方法。
(32) 前記組成物は、直腸送達用に製剤化される、上記(1)から(27)のいずれかに記載の方法。
(33) 前記組成物は、自己投与される、上記(1)から(32)のいずれかに記載の方法。
(34) 対象におけるケトン食療法に応答性である病態を処置する、または予防する方法であって、
(a)前記対象の腸内微生物叢を枯渇させること、
(b)Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を前記対象に投与すること、
を備える、前記方法。
(35) 前記組成物は、経口送達用に製剤化される、上記(34)に記載の方法。
(36) 前記組成物は、食品である、上記(34)または上記(35)に記載の方法。
(37) 前記組成物は、直腸送達用に製剤化される、上記(34)に記載の方法。
(38) 前記組成物は、Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)を含有する糞便試料を含む、上記(30)に記載の方法。
(39) 前記糞便試料は、糞便バンクからのものである、上記(38)に記載の方法。
(40) 抗生物質を前記対象に投与し、前記対象の腸内微生物叢を枯渇させることをさらに備える、上記(34)から(39)のいずれかに記載の方法。
(41) 前記対象の腸内微生物叢を配列決定することをさらに備える、上記(34)から(40)のいずれかに記載の方法。
(42) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、対照食事制限である、上記(34)から(41)のいずれかに記載の方法。
(43) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、ケトン食療法である、上記(34)から(42)のいずれかに記載の方法。
(44) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、高脂肪食である、上記(34)から(43)のいずれかに記載の方法。
(45) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、低炭水化物食である、上記(34)から(43)のいずれかに記載の方法。
(46) 前記組成物は、自己投与される、上記(34)に記載の方法。
(47) 前記病態は、発作であり、任意選択で前記対象は、たとえば、てんかん、自閉症スペクトラム症、レット症候群、注意欠陥障害、及び脆弱X症候群から選択される、神経発達病態を有する、上記(34)から(46)のいずれかに記載の方法。
(48) 前記病態は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん、脳卒中、代謝疾患、ミトコンドリア病、うつ状態、片頭痛、及び外傷性脳損傷(TBI)から選択される、上記(34)から(47)のいずれかに記載の方法。
(49) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含む組成物。
(50) Akkermansia(Akk)属の前記細菌は、Akkermansia muciniphilaを含む、上記(49)に記載の組成物。
(51) Parabacteroides(Pb)属の前記細菌は、Parabacteroides merdaeを含む、上記(49)に記載の組成物。
(52) Parabacteroides(Pb)属の前記細菌は、Parabacteroides distasonisを含む、上記(49)に記載の組成物。
(53) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも10%は、Akkermansia(Akk)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(54) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも30%は、Akkermansia(Akk)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(55) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも50%は、Akkermansia(Akk)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(56) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも70%は、Akkermansia(Akk)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(57) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも90%は、Akkermansia(Akk)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(58) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも10%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(59) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも30%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(60) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも50%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(61) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも70%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(62) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも90%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(49)から(52)のいずれかに記載の組成物。
(63) 前記組成物は、経口送達用に製剤化される、上記(49)に記載の組成物。
(64) 前記組成物は、食品である、上記(63)に記載の組成物。
(65) 前記食品は、乳製品である、上記(64)に記載の組成物。
(66) 前記乳製品は、ヨーグルトである、上記(65)に記載の組成物。
(67) 前記組成物は、直腸送達用に製剤化される、上記(49)に記載の組成物。
(68) Akkermansia(Akk)及びParabacteroides(Pb)属の細菌を含有する組成物を対象に投与することを備える、前記対象内の病態を予防する、または処置する方法。
(69) 前記病態は、自閉症スペクトラム症、てんかん、発作、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、がん、脳卒中、代謝疾患、ミトコンドリア病、うつ状態、片頭痛、レット症候群、注意欠陥障害、脆弱X症候群、及び外傷性脳損傷(TBI)である、上記(68)に記載の方法。
(70) Akkermansia(Akk)属の前記細菌は、Akkermansia muciniphilaを含む、上記(68)または(69)に記載の方法。
(71) Parabacteroides(Pb)属の前記細菌は、Parabacteroides merdaeを含む、上記(68)から(70)のいずれかに記載の方法。
(72) Parabacteroides(Pb)属の前記細菌は、Parabacteroides distasonisを含む、上記(68)から(71)のいずれかに記載の方法。
(73) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも10%は、Akkermansia(Akk)である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(74) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも30%は、Akkermansia(Akk)である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(75) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも50%は、Akkermansia(Akk)である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(76) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも70%は、Akkermansia(Akk)である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(77) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも90%は、Akkermansia(Akk)である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(78) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも10%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(79) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも30%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(80) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも50%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(81) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも70%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(82) 前記組成物中の前記細菌の少なくとも90%は、Parabacteroides(Pb)の細菌である、上記(68)から(72)のいずれかに記載の方法。
(83) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、対照食事制限である、上記(68)から(82)のいずれかに記載の方法。
(84) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、ケトン食療法である、上記(68)から(83)のいずれかに記載の方法。
(85) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、高脂肪食である、上記(68)から(84)のいずれかに記載の方法。
(86) 前記対象は、食事制限中であり、前記食事制限は、低炭水化物食である、上記(68)から(85)のいずれかに記載の方法。
(87) 前記組成物は、経口送達用に製剤化される、上記(68)から(86)のいずれかに記載の方法。
(88) 前記組成物は、食品である、上記(68)から(87)のいずれかに記載の方法。
(89) 前記食品は、乳製品である、上記(88)に記載の方法。
(90) 前記食品は、ヨーグルトである、上記(88)に記載の方法。
(91) 前記組成物は、直陽送達用に製剤化される、上記(68)から(86)のいずれかに記載の方法。
(92) 前記組成物は、自己投与される、上記(68)から(91)のいずれかに記載の方法。