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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】ウェザーストリップ及びその組付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/86 20160101AFI20221028BHJP
   B60J 10/24 20160101ALI20221028BHJP
   B60J 10/33 20160101ALI20221028BHJP
【FI】
B60J10/86
B60J10/24
B60J10/33
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019558952
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039706
(87)【国際公開番号】W WO2019116747
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2017238165
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(72)【発明者】
【氏名】峠田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特許第5715780(JP,B2)
【文献】特開平10-226233(JP,A)
【文献】特開2015-107704(JP,A)
【文献】特開2010-208514(JP,A)
【文献】特開2010-076466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/86
B60J 10/24
B60J 10/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアサッシュの外周部位の外周側に設けられた車外側係止部と車内側係止部との間に組付けられる組付け部と、該組付け部の車内側及び車外側にそれぞれ一体成形され、ドア閉時にはボディパネルのドア開口縁の車内側の面及び車外側の面に弾接する中空シール部とアウターリップ部を備え、前記ドアサッシュへの固定は前記組付け部においてのみ行われ、前記中空シール部は前記ドアサッシュに直接固定されることなく、前記組付け部と前記中空シール部とを柱部で連結したウェザーストリップであって、
前記ドア閉時に、前記ボディパネルのドア開口縁に弾接するボディシールリップを前記中空シール部に設置し、
前記中空シール部は、前記ドアサッシュの車内側面に沿って略並行に設定された底壁部と、その底壁部の車外側端部から車内外方向に略垂直な方向に立設された立上壁部と、その立上壁部の端部と前記底壁部の車内側端部に接続され外方向に膨出湾曲したシール壁部からなるとともに、前記シール壁部は前記立上壁部に対して車内側に屈曲するように接続され、
前記ドアサッシュに弾接する取付面シールリップを前記中空シール部の底壁部の下側面から延設し、
前記ボディシールリップを、前記シール壁部と前記立上壁部の接続位置より前記シール壁部側に寄った位置から車外側に向けて延びるように設置したことを特徴とするウェザーストリップ。
【請求項2】
自動車のドアサッシュの外周部位の外周側に設けられた車外側係止部と車内側係止部との間に組付けられる組付け部と、該組付け部の車内側及び車外側にそれぞれ一体成形され、ドア閉時にはボディパネルのドア開口縁の車内側の面及び車外側の面に弾接する中空シール部とアウターリップ部を備え、前記ドアサッシュへの固定は前記組付け部においてのみ行われ、前記中空シール部は前記ドアサッシュに直接固定されることなく、前記組付け部と前記中空シール部とを柱部で連結したウェザーストリップであって、
前記ドア閉時に、前記ボディパネルのドア開口縁に弾接するボディシールリップを前記中空シール部に設置し、
前記中空シール部は、前記ドアサッシュの車内側面に沿って略並行に設定された底壁部と、その底壁部の車外側端部から車内外方向に略垂直な方向に立設された立上壁部と、その立上壁部の端部と前記底壁部の車内側端部に接続され外方向に膨出湾曲したシール壁部からなるとともに、前記シール壁部は前記立上壁部に対して車内側に屈曲するように接続され、
前記ドアサッシュに弾接する高発泡のスポンジ材を前記中空シール部の底壁部の下側面に設け、
前記ボディシールリップを、前記シール壁部と前記立上壁部の接続位置より前記シール壁部側に寄った位置から車外側に向けて延びるように設置したことを特徴とするウェザーストリップ。
【請求項3】
前記ボディシールリップの付け根部車外側に凹部を設けることで構成される薄肉部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のウェザーストリップ。
【請求項4】
前記車外側係止部を車内側から覆って弾接する覆いリップを前記組付け部の車外側部分から延設したことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のウェザーストリップ。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載のウェザーストリップを前記ドアサッシュに組付ける構造であって、
前記ドア閉時に前記中空シール部が弾接する前記ボディパネルのドア開口縁の車内側の面と、前記アウターリップ部が弾接する前記ボディパネルのドア開口縁の車外側の面を、車外側から車内側に下降する傾斜面で連設して段差を形成し、前記ドア閉時には前記ボディシールリップの先端を先ず前記傾斜面に当接させるようにしたことを特徴とするウェザーストリップの組付け構造。
【請求項6】
前記ドア閉時に前記中空シール部が弾接する前記ボディパネルのドア開口縁の車内側の面を、前記ドア閉時に前記ドアサッシュの車内側面と略平行にし、前記ボディパネルの前記ドア開口縁の車内側の面と前記傾斜面の連設位置に前記中空シール部を弾接させたことを特徴とする請求項5に記載のウェザーストリップの組付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアサッシュに取付けられ、ボディパネルのドア開口縁に弾接してボディパネルとドアサッシュとの間をシールするウェザーストリップ及びそのウェザーストリップの組付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、自動車のサイドドア1の周縁にはウェザーストリップ50が取付けられ、サイドドドア1の閉時にボディ3側に弾接してサイドドア1とボディ3の間をシールしている。
このようなウェザーストリップ50として、図7に示すように、自動車のドアサッシュ2に組付けられる組付け部51と、その組付け部51の車内側及び車外側にそれぞれ一体成形され、ドア閉時にはボディパネル3のドア1開口縁の車内側及び車外側に弾接する中空シール部52とアウターリップ部53を備え、組付け部51と中空シール部52を一本の柱部54で連結したものが知られている(例えば、特許文献1の図1(a))。
【0003】
ウェザーストリップ50の組付け部51は、ドアサッシュ2の外周部位2Aの外周側に設けられた車外側係止部5Xと車内側係止部5Yとの間に組付けられ、ドアサッシュ2に対するウェザーストリップ50の固定は組付け部51においてのみ行われ、中空シール部52はドアサッシュ2に直接固定されていない。
【0004】
また、ドアサッシュ2の内周部位2Bには、断面略コ字状の取付基部21と、取付基部21の両端に一体成形され、昇降するドアガラス4の車外側及び車内側に摺接する車外側リップ部22及び車内側リップ部23を備えるグラスラン20が取付けられている。
【0005】
このように構成されたウェザーストリップ50によれば、組付け部51と中空シール部52とを一本の柱部54で連結するので、中空シール部52を直接、ドアサッシュ2やドアサッシュ2に設けられたガーニッシュ7などにラップさせても、ドアサッシュ2に対するウェザーストリップ50の組付け時には、中空シール部52の全体が柱部54と組付け部51との連結位置を中心に車外側に向かって回転し、このとき中空シール部52の形状はそのままの状態で維持され変形しない。よって、中空シール部52が部分的に変形して中空シール部52に縮む部分と伸びる部分が生じることはないので、中空シール部52のシール機能が特に劣化するおそれはないといった効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5715780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなウェザーストリップ50においては、洗車などにより車外側から車内側に向けて高圧水がかかった場合にはその水をアウターリップ部53が受けるが、かなり大きい水圧がかかった場合には、ボディパネル3とアウターリップ部53の間から一部の水が入り込みさらにはボディパネル3と中空シール部52の間から車内側に水が浸入するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、シール機能を一層向上したウェザーストリップ及びその組付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のウェザーストリップは、自動車のドアサッシュ(2)の外周部位(2A)の外周側に設けられた車外側係止部(15X)と車内側係止部(15Y)との間に組付けられる組付け部(31)と、該組付け部(31)の車内側及び車外側にそれぞれ一体成形され、ドア(1)閉時にはボディパネル(3)のドア(1)開口縁の車内側の面(3a)及び車外側の面(3b)に弾接する中空シール部(32)とアウターリップ部(33)を備え、前記ドアサッシュ(2)への固定は前記組付け部(31)においてのみ行われ、前記中空シール部(32)は前記ドアサッシュ(2)に直接固定されることなく、前記組付け部(31)と前記中空シール部(32)とを柱部(34)で連結したウェザーストリップ(30)であって、
前記ドア(1)閉時に、前記ボディパネル(3)のドア(1)開口縁に弾接するボディシールリップ(35)を前記中空シール部(32)に設置し、
前記中空シール部(32)は、前記ドアサッシュ(2)の車内側面(2C)に沿って略並行に設定された底壁部(32A)と、その底壁部(32A)の車外側端部から車内外方向に略垂直な方向に立設された立上壁部(32B)と、その立上壁部(32B)の端部と前記底壁部(32A)の車内側端部に接続され外方向に膨出湾曲したシール壁部(32C)からなるとともに、前記シール壁部(32C)は前記立上壁部(32B)に対して車内側に屈曲するように接続され、
前記ドアサッシュ(2)に弾接する取付面シールリップ(36)を前記中空シール部(32)の底壁部(32A)の下側面から延設し、
前記ボディシールリップ(35)を、前記シール壁部(32C)と前記立上壁部(32B)の接続位置より前記シール壁部(32C)側に寄った位置から車外側に向けて延びるように設置したことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、自動車のドアサッシュ(2)の外周部位(2A)の外周側に設けられた車外側係止部(15X)と車内側係止部(15Y)との間に組付けられる組付け部(31)と、該組付け部(31)の車内側及び車外側にそれぞれ一体成形され、ドア(1)閉時にはボディパネル(3)のドア(1)開口縁の車内側の面(3a)及び車外側の面(3b)に弾接する中空シール部(32)とアウターリップ部(33)を備え、前記ドアサッシュ(2)への固定は前記組付け部(31)においてのみ行われ、前記中空シール部(32)は前記ドアサッシュ(2)に直接固定されることなく、前記組付け部(31)と前記中空シール部(32)とを柱部(34)で連結したウェザーストリップ(30)であって、
前記ドア(1)閉時に、前記ボディパネル(3)のドア(1)開口縁に弾接するボディシールリップ(35)を前記中空シール部(32)に設置し、
前記中空シール部(32)は、前記ドアサッシュ(2)の車内側面(2C)に沿って略並行に設定された底壁部(32A)と、その底壁部(32A)の車外側端部から車内外方向に略垂直な方向に立設された立上壁部(32B)と、その立上壁部(32B)の端部と前記底壁部(32A)の車内側端部に接続され外方向に膨出湾曲したシール壁部(32C)からなるとともに、前記シール壁部(32C)は前記立上壁部(32B)に対して車内側に屈曲するように接続され、
前記ドアサッシュ(2)に弾接する高発泡のスポンジ材(39)を前記中空シール部(32)の底壁部(32A)の下側面に設け、
前記ボディシールリップ(35)を、前記シール壁部(32C)と前記立上壁部(32B)の接続位置より前記シール壁部(32C)側に寄った位置から車外側に向けて延びるように設置したことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記ボディシールリップ(35)の付け根部車外側に凹部を設けることで構成される薄肉部(38)を形成したことを特徴とする。
【0012】
また請求項4に係る発明は、前記車外側係止部(15X)を車内側から覆って弾接する覆いリップ(37)を前記組付け部(31)の車外側部分から延設したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るウェザーストリップの組付け構造は、前記請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載のウェザーストリップ(30)を前記ドアサッシュ(2)に組付ける構造であって、
前記ドア(1)閉時に前記中空シール部(32)が弾接する前記ボディパネル(3)のドア(1)開口縁の車内側の面(3a)と、前記アウターリップ部(33)が弾接する前記ボディパネル(3)のドア(1)開口縁の車外側の面(3b)を、車外側から車内側に下降する傾斜面(3c)で連設して段差を形成し、前記ドア(1)閉時には前記ボディシールリップ(35)の先端(35a)を先ず前記傾斜面(3c)に当接させるようにしたことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記ドア(1)閉時に前記中空シール部(32)が弾接する前記ボディパネル(3)のドア(1)開口縁の車内側の面(3a)を、前記ドア(1)閉時に前記ドアサッシュ(2)の車内側面(2C)と略平行にし、前記ボディパネル(3)のドア(1)開口縁の車内側の面(3a)と前記傾斜面(3c)の連設位置(P)に前記中空シール部(32)を弾接させたことを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドア閉時に、ボディパネルのドア開口縁に弾接するボディシールリップを中空シール部に設置したので、アウターリップ部で洗車などにより高圧水を受けることができず、高圧水がボディパネルとアウターリップ部の間から車内側に侵入することがあったとしても、ボディシールリップによって受け止められるので水が車内側にさらに侵入することは防止される。
【0018】
また本発明によれば、ボディシールリップの付け根部車外側には凹部を設けることで構成される薄肉部が形成されているので、ボディシールリップは撓み易く、中空シール部がボディパネルに弾接したときに中空シール部の断面全体による圧縮荷重を極力上昇させないようにすることができる。また、凹部を設けることで構成される薄肉部をボディシールリップの付け根部車外側に形成したことでボディシールリップの先端は車内側に向けて倒れるようにしてボディパネルに弾接するのでシール性が高まる。
【0019】
また本発明によれば、ウェザーストリップの中空シール部の底壁部の下側面からドアサッシュに弾接する取付面シールリップを延設しているので、仮に高圧水が車外側係止部に沿って組付け部の底部(下部)とドアサッシュの間に入り込むことがあったとしても、取付面シールリップで受け止められ、水が車内側にさらに侵入することは防止される。しかも、中空シール部がボディパネルに弾接することで取付面シールリップの反力が向上するので水を受け止める能力は増大する。
また本発明によれば、ウェザーストリップの中空シール部の底壁部の下側面に、ドアサッシュに弾接する高発泡のスポンジ材を設けているので、仮に高圧水が車外側係止部に沿って組付け部の底部(下部)とドアサッシュの間に入り込むことがあったとしても、高発泡のスポンジ材で受け止められ、水が車内側にさらに侵入することは防止される。しかも、中空シール部がボディパネルに弾接することで高発泡のスポンジ材の反力が向上するので水を受け止める能力は増大する。
【0020】
また本発明によれば、ウェザーストリップの組付け部の車外側部分からは車外側係止部を車内側から覆って弾接する覆いリップが延設されているので、高圧水が車外側係止部に沿って組付け部の底部(下部)とドアサッシュの間に入り込むことを抑制することができる。
【0021】
また本発明によれば、中空シール部を底壁部と、立上壁部と、それら底壁部と立上壁部間でかつ立上壁部に対して車内側に屈曲するように接続されたシール壁部で構成し、ボディシールリップをシール壁部と立上壁部の接続位置よりシール壁部側に寄った位置から車外側に向けて設けたので、ドア閉時にボディパネルに対するボディシールリップの撓み方向を規制して安定した状態でシールさせることができる。
【0022】
また本発明によれば、ボディパネルのドア開口縁の車内側の面と車外側の面を段違いに設けるとともに車外側から車内側に下降する傾斜面で連設して、ドア閉時にはボディシールリップの先端を先ず傾斜面に当接させ、その後、傾斜面から車外側の面側にスライドするように移動させてボディシールリップの先端の上面側が車外側の面に弾接するようにしたので、ボディパネルに対してボディシールリップは十分密着し優れたシール機能が得られる。
【0023】
また本発明によれば、ドア閉時に中空シール部が弾接するボディパネルのドア開口縁の車内側の面を、ドア閉時にドアサッシュの車内側面と略平行にし、車内側の面と傾斜面の連設位置に中空シール部を弾接させるようにしたので、ドア閉時に中空シール部の納まりがよく安定した状態でシールさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るウェザーストリップの組付け構造を示す、図6のA-A線拡大断面図である。
図2図1に示したウェザーストリップがボディパネル側に弾接した状態を示す、図6のA-A線拡大断面図である。
図3図1に示したウェザーストリップがボディパネル側に弾接したときに高圧水がかかった状態を示す、図6のA-A線拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る別のウェザーストリップの組付け構造を示す、図6のA-A線拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るさらに別のウェザーストリップの組付け構造を示す、図6のA-A線拡大断面図である。
図6】自動車の外観側面図である。
図7】従来例に係るウェザーストリップの組付け構造を示す、図6のA-A線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係るウェザーストリップ30とその組付け構造について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るウェザーストリップ30の組付け構造を示す、図6のA-A線拡大断面図であり、ボディパネル3に弾接する前のレイアウト状態を示している。また、図2は、図1に示したウェザーストリップ30がボディパネル3に弾接して撓んだ状態を示す断面図である。従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0026】
本発明の実施形態に係るウェザーストリップ30は、図1に示すように、自動車のドアサッシュ2の外周部位2Aの外周側に組付けられる組付け部31と、その組付け部31の車内側と車外側にそれぞれ一体成形され、ドア1の閉時にはボディパネル3のドア開口縁の車内側の面3a及び車外側の面3bに弾接してボディパネル3とドアサッシュ2との間をシールする中空シール部32とアウターリップ部33を備えている。
組付け部31と中空シール部32とは一本の柱部34で連結されている。またウェザーストリップ30のドアサッシュ2に対する固定は、組付け部31においてのみ行われ、中空シール部32はドアサッシュ2に直接固定されていない。
また、ドアサッシュ2の内周部位2Bには、断面略コ字状の取付基部21と、取付基部21の両端に一体成形され、昇降するドアガラス4の車外側及び車内側に摺接する車外側リップ部22及び車内側リップ部23を備えるグラスラン20が取付けられている。
【0027】
ウェザーストリップ30の組付け部31は、その底側(ドアサッシュ2側)の車外側に形成された車外側突出端部31aが、ドアサッシュ2の外周部位2Aの外周側に設けられ、車内側に向けて開口した断面凹形状の受け部を湾曲形成してなる車外側係止部15Xに嵌め込まれるとともに、底側(ドアサッシュ2側)の車内側に形成された車内側突出端部31bが、ドアサッシュ2の外周部位2Aの外周側に設けられ、車外側に向けて開口した断面凹形状の受け部を湾曲形成してなる車内側係止部15Yに嵌め込まれるようにして、車外側係止部15Xと車内側係止部15Yとの間に組付けられている。
また、組付け部31の上部側(ボディパネル3側)の車外側部分からは、車外側係止部15Xを車内側から覆って弾接する覆いリップ37が延設されている。これにより、ウェザーストリップ30の組付け部31が一旦、車外側係止部15Xと車内側係止部15Yとの間に組付けられると容易に外れないようにされている。
【0028】
車外側係止部15Xと車内側係止部15Yは、一枚の板金をロールフォーミングで折曲成形することで形成することもできるが、ここでは、アルミダイキャストのものを使用して、車外側に露出してドアサッシュ2を装飾するモール部15aと車内側に延びるリテーナ部15bが略T字状に形成されたモール材15におけるリテーナ部15bの車外側と車内側に形成した。モール材15は、ドアサッシュ2にリベット6で取付けられている。モール材15は、「光モール」と呼ばれるもので、モール部15aが銀色で鏡面に仕上げられており、銀色に光っているように見せることで自動車に高級感を与えている。
【0029】
ウェザーストリップ30の中空シール部32は、切れ目のない断面環状であり、ドアサッシュ2の車内側面2Cに沿って略並行に設定された底壁部32Aと、その底壁部32Aの車外側端部から車内外方向に略垂直な方向に立設された立上壁部32Bと、その立上壁部32Bの端部と底壁部32Aの車内側端部に接続され外方向に膨出湾曲したシール壁部32Cからなる。特にシール壁部32Cは立上壁部32Bに対して車内側に屈曲するように接続されている。
シール壁部32Cの肉厚は、底壁部32A側より立上壁部32B側の方が厚くなるようにしている。また、立上壁部32Bの車内側面に対するシール壁部32Cの内面(ドアサッシュ2側の面)の延びる角度θを鈍角とし、ここでは約100度(特に限定されるわけではない)に設定している。
【0030】
また、中空シール部32は、ドアサッシュ2の車内側に設けられたガーニッシュ7との間に隙間が生じないように、ウェザーストリップ30を組付けた後には、ガーニッシュ7の外表面に接触するように設定されている。
【0031】
ウェザーストリップ30のアウターリップ部33は、断面略舌状で組付け部31の車外側突出端部31aと車内側突出端部31bとの間で付根部は車内側突出端部31b寄りで外周側に一体成形され、ドア1閉時の位置では組付け部31から対向するボディパネル3側に向かって起立するように延びている。
【0032】
組付け部31と中空シール部32を連結する一本の柱部34は、組付け部31側では上部側(ボディパネル3側)の車内側に連結され、中空シール部32側では底壁部32Aと立上壁部32Bの接続位置に連結されている。柱部34の断面形状における長さは立上壁部32Bの長さよりも長くかつ底壁部32Aの長さよりも短くしている。ここでは、柱部34の断面形状における長さを組付け部31の(車内外方向の)幅と略同等にしている。
【0033】
そして、中空シール部32に、ドア1の閉時に、ボディパネル3のドア1開口縁に弾接するボディシールリップ35を設置している。
ボディシールリップ35は、先細で、シール壁部32Cと立上壁部32Bの接続位置Rよりシール壁部32C側に寄った位置から車外側に向けて斜めに延びるように設置している。ここでは、ボディパネル3に弾接する前の状態で、ボディシールリップ35の延びる方向をアウターリップ部33が延びる方向と略平行になるようにしている。
ボディシールリップ35の付け根部車外側には、凹部を設けることで構成される薄肉部38が形成され、ドア1開口縁に弾接したときにボディシールリップ35を撓み易くするとともに中空シール部32の弾接時にかかる荷重が大きく上がることを防止している。
【0034】
また、中空シール部32の底壁部32Aの下側面から、ドアサッシュ2に弾接する取付面シールリップ36を延設している。取付面シールリップ36は、底壁部32Aと立上壁部32Bの接続位置Sより車内側に少し寄った位置から車外側に向けて延びるように設けられている。
取付面シールリップ36を設置することで、車外側係止部15X,車内側係止部15Yと、組付け部31の間から入り込んだ水が中空シール部32とドアサッシュ2の間から車内側にさらに侵入することを防止することができる。
【0035】
ドアサッシュ2は、一枚の板金をロールフォーミングで折曲成形することで形成することもできるが、ここでは、インナパネルとアウタパネルの二枚の板金を上下二箇所でフランジ状に接合することで形成したものである。ドアサッシュ2の車内側面2Cは、そのフランジ状に接合された部分から車内側に下降する傾斜面になっていて、さらに車内側では下側に折れ曲がりそこに形成された窪みにガーニッシュ7が配置されている。
また、ボディパネル3のドア1開口縁の車内側の面3aは、ボディパネル3のドア1開口縁の車外側の面3bよりも下側に配置され、ドア1開口縁の車内側の面3aと車外側の面3bとは車外側から車内側に下降する傾斜面3cで連設され、上下に段差が形成されている。また、ドア1開口縁の車外側の面3bは略車内外方向に延びるのに対して、ドア1開口縁の車内側の面3aは車外側から車内側に下降する傾斜面となっている。なお、その傾斜面の傾斜角度は、車内側の面3aと車外側の面3bを連設する傾斜面3cの傾斜角度よりも小さくなっている。
また、車内側の面3aはドア1の閉時にドアサッシュ2の車内側面2Cと略平行になっている。
【0036】
ドア1を開いた状態から閉じると、図2に示すように、ウェザーストリップ30の中空シール部32は、ボディパネル3のドア1開口縁の車内側の面3a及び傾斜面3cに弾接し、ウェザーストリップ30のアウターリップ部33は、ボディパネル3のドア1開口縁の車外側の面3bに弾接する。そして、ウェザーストリップ30の中空シール部32に設置されたボディシールリップ35の先端35aは先ず、ボディパネル3の車内側の面3aと車外側の面3bを連設する傾斜面3cに当接し、その後、中空シール部32とともに撓んでボディシールリップ35の先端35aは傾斜面3cから車外側の面3b側にスライドするように移動してボディシールリップ35の先端35aの車内側面側が車外側の面3bに弾接する。同様に、アウターリップ部33もその先端33aの車内側面側が車外側の面3bに弾接してさらに車外側にスライドするように移動する。このとき、中空シール部32が車内側の面3a及び傾斜面3cに弾接すると中空シール部32の底壁部32Aの下側面から延設された取付面シールリップ36はドアサッシュ2の車内側面2Cに強く押し当てられる。
【0037】
以上のように構成された本実施形態に係るウェザーストリップ30及びそのウェザーストリップ30の組付け構造によれば、ドア1の閉時に、ボディパネル3のドア1開口縁に弾接するボディシールリップ35を中空シール部32に設置したので、シール性能をより優れたものにすることができる。
すなわち、ウェザーストリップ30がボディパネル3側に弾接した状態で、図3に示すように、例えば洗車時などに高圧水Wが車外側から車内側に向けてかかり、アウターリップ部33で高圧水Wを受けきることができず、高圧水Wの一部がボディパネル3とアウターリップ部33の間から車内側に侵入することがあったとしても、ボディシールリップ35によって受け止められるので水Wは、矢印Xで示すように、中空シール部32と柱部34の上部の間に溜まりウェザーストリップ30の長手方向に沿って流れて外部に排出される。
【0038】
しかも、ボディシールリップ35を、シール壁部32Cと立上壁部32Bの接続位置Rよりシール壁部32C側に寄った位置から車外側に向けて延びるように設置したので、ボディシールリップ35の撓み方向をボディパネル3のドア開口縁の車外側の面3bへの弾接力が強化される方向に規制することができ、ボディシールリップ35のシール機能を向上させることができる。
【0039】
さらに、ボディシールリップ35の付け根部車外側には凹部を設けることで構成される薄肉部38が形成されているので、ボディシールリップ35は撓み易く、中空シール部32がボディパネル3に弾接したときに中空シール部32の断面全体による圧縮荷重を極力上昇させないようにすることができる。また、凹部を設けることで構成される薄肉部38をボディシールリップ35の付け根部車外側に形成したことでボディシールリップ35の先端35aは車内側に向けて倒れるようにしてボディパネル3に弾接するのでシール性が更に高まる。
【0040】
また、組付け部31の車外側部分からは車外側係止部15Xを車内側から覆って弾接する覆いリップ37が延設されているので、高圧水Wが車外側係止部15Xに沿って組付け部31の底部(下部)とドアサッシュ2の間に入り込むことが抑制される。
仮に高圧水Wの一部が車外側係止部15Xに沿って組付け部31の底部(下部)とドアサッシュ2の間に入り込むことがあったとしても、中空シール部32の底壁部32Aの下側面からドアサッシュ2に弾接する取付面シールリップ36で受け止められるので水Wは、矢印Yで示すように、ドアサッシュ2と柱部34の下部の間に溜まりウェザーストリップ30の長手方向に沿って流れて外部に排出される。しかも、中空シール部32がボディパネル3に弾接することで取付面シールリップ36の反力が向上するので水Wを受け止める能力は増大する。
【0041】
またボディパネル3のドア開口縁の車内側の面3aと車外側の面3bを段違いに設けるとともに車外側から車内側に下降する傾斜面3cで連設して、ドア閉時にはボディシールリップ35の先端35aを先ず傾斜面3cに当接させ、その後、傾斜面3cから車外側の面3b側にスライドするように移動させてボディシールリップ35の先端35aの車内側面側が車外側の面3bに弾接するようにしたので、ボディパネル3に対してボディシールリップ35は十分密着し優れたシール機能が得られる。
【0042】
さらにドア閉時に中空シール部32が弾接するボディパネル3のドア開口縁の車内側の面3aを、ドア閉時にドアサッシュ2の車内側面2Cと略平行にし、車内側の面3aと傾斜面3cの連設位置Pに中空シール部32を弾接させるようにしたので、ドア閉時に中空シール部32の納まりがよく安定した状態でシールさせることができる。
【0043】
なお、中空シール部32の全体が一本の柱部34で支持されているので、中空シール部32をドアサッシュ2に設けられたガーニッシュ7にラップさせるものであっても、ドアサッシュ2に対するウェザーストリップ30の組付け時には、柱部34と組付け部31との連結位置Qを中心に中空シール部32の全体が車外側に向かって(図1では時計回りに)回転するので、中空シール部32の形状は維持されたままである。したがって、中空シール部32に部分的に変形して縮む部分と伸びる部分が生じることはないので、ドア1の閉特にボディパネル3に弾接して隙間を塞ぐシール機能が特に劣化するおそれはない。
【0044】
また、図3に示したように、本実施形態に係るウェザーストリップ20が組付けられた状態で、高圧水Wを、モール材15に設けられた車外側係止部15X側から車内側に向けて噴射した場合であっても、水Wが中空シール部32を乗り越えて車内側に侵入することはなかった。
【0045】
なお、本実施形態では、中空シール部32、ボディシールリップ35、柱部34、組付け部31を一材質表記としている。適用可能な材質としては、ゴム様弾性体であれば、特に限定はされないが、ゴムの場合は、EPDMスポンジゴムが好ましく、樹脂の場合は、熱可塑性エラストマー(TPE)の発泡体または低硬度非発泡材等が好ましい。
また、組付け部31の一部分に、組付作業性向上目的で、他の部分より硬質な材料を使用しても、良い。
なお、本実施形態では、中空シール部32からボディパネル3側に延びるボディシールリップ35の付け根部車外側に凹部を設けることで構成される薄肉部38を設けてボディシールリップ35を撓み易くしたが、図4に示すように、ボディシールリップ35の付け根部車外側にその周りよりも硬度の低い材質Mのものを使用してもよい。また、ボディシールリップ35の付け根部車外側に凹部を設けることで構成される薄肉部38を設けたり、あるいは硬度の低い材質Mのものを使用しない態様の場合は、中空シール部32がボディパネル3に弾接したときの反力が幾分かアップするが高圧水Wを受け止め水Wが車内側に侵入することを防止するには有効である。
また中空シール部32の底側からドアサッシュ2側に延びる取付面シールリップ36を設置したが、それにかえて、図4に示すように、高発泡のスポンジ材39を設けるようにしてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、中空シール部32を、底壁部32Aと、立上壁部32Bと、それら底壁部32Aと立上壁部32B間でかつ立上壁部32Bに対して車内側に屈曲するように接続されたシール壁部32Cで構成し、ボディシールリップ35をシール壁部32Cと立上壁部32Bの接続位置よりシール壁部32C側に寄った位置から車外側に向けて設けることで、ボディシールリップ35の撓み方向を規制するようしたが、シール壁部32Cと立上壁部32Bの接続位置からボディシールリップ35を延設するようにしてもよい。(図示は省略)
また、図5に示すように、シール壁部32Cが立上壁部32Bに対して車内側に屈曲するような部分をなくして、中空シール部32の断面形状においてシール壁部を大きく丸みを帯びるようにし、その中空シール部32の車外側にボディシールリップ35を設けるようにしてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、ウェザーストリップ30の中空シール部32をドアサッシュ2に設けられたガーニッシュ7に対して接触設定する例を示したが、ガーニッシュ7にかわる敷設物や、あるいはガーニッシュ7を設けることなく、直接、ドアサッシュ2に対して接触設定するようにしてもよいし、接触設定とするかわりに、中空シール部32が押し付けられるようにラップ設定にしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ドア
2 ドアサッシュ
2A 外周部位
2B 内周部位
2C 車内側面
3 ボディパネル
3a ボディパネルのドア開口縁の車内側の面
3b ボディパネルのドア開口縁の車外側の面
3c 傾斜面
4 ドアガラス
5X 車外側係止部
5Y 車内側係止部
6 リベット
7 ガーニッシュ
15 モール材
15a モール部
15b リテーナ部
15X 車外側係止部
15Y 車内側係止部
20 グラスラン
21 取付基部
22 車外側リップ部
23 車内側リップ部
30 ウェザーストリップ
31 組付け部
31a 車外側突出端部
31b 車内側突出端部
32 中空シール部
32A 底壁部
32B 立上壁部
32C シール壁部
33 アウターリップ部
33a アウターリップ部の先端
34 柱部
35 ボディシールリップ
35a ボディシールリップの先端
36 取付面シールリップ
37 覆いリップ
38 凹部を設けることで構成される薄肉部
39 高発泡のスポンジ材
50 ウェザーストリップ
51 組付け部
52 中空シール部
53 アウターリップ部
54 柱部
M 低硬度材質
P 連設位置
Q 連結位置
R 接続位置(連結位置)
S 接続位置(連結位置)
W 高圧水(水)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7