(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】細胞培養のための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20221028BHJP
C12M 1/10 20060101ALN20221028BHJP
C12M 3/00 20060101ALN20221028BHJP
【FI】
C12N5/07
C12M1/10
C12M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019568768
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2018065723
(87)【国際公開番号】W WO2018229160
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】102017209942.9
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508291825
【氏名又は名称】エヌエムイー ナトゥルヴィッセンシャフトリヘス ウント メディツィニシェス インスティトゥト アン ダー ウニヴェルジテート テュービンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロスキル,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,オリバー
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-512783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0106714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/07
C12M 1/10
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)細胞を提供すること、及び、
少なくとも一つの第一のキャリアプレート(111)と、その上又はその下に配置された第二のキャリアプレート(112)とを含むキャリアプレートユニット(110)を含み、前記第一のキャリアプレート(111)は、少なくとも一つのアクセス開口部(130)と、少なくとも一つの培養チャンバ(140)と、前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)を前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)に接続する少なくとも一つのチャネル(150)と、を有
し、前記第二のキャリアプレート(112)は、少なくとも一つの培地開口部(160)と、少なくとも一つの培地チャンバ(170)と、前記少なくとも一つの培地開口部(160)を前記少なくとも一つの培地チャンバ(170)に接続する少なくとも一つの培地チャネル(180)とを有する、細胞を培養するための装置を提供すること、
b)前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)を通して前記細胞を前記装置に導入すること、
c)前記装置の回転を可能にする回転装置(300)に前記装置を導入すること、
d)前記装置を回転させること、
e)前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)で細胞を取得すること、並びに、
f)前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)で前記細胞を培養すること、
を含む細胞群の製造方法であって、
前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)で前記細胞を培養することによって、細胞
群を生成する、方法。
【請求項2】
前記装置は中心回転軸(120)を有し、前記アクセス開口部(130)は前記回転軸(120)に対して近位に、前記培養チャンバ(140)は前記回転軸(120)に対して遠位に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリアプレートユニット(110)は、少なくとも一つの接続装
置を備えた、回転装置(300)のための中央領域(121)を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記装置は
、回転装置(300)のための少なくとも一つのロック装置を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つのチャネル(150)は、分岐又は非分岐チャネルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも一つのチャネル(150)は、前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)を少なくとも二つの培養チャンバ(140)に接続する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記チャネル(150)は、その長さの少なくとも一部にわたって、前記チャネル(150)に直接隣接する少なくとも二つの培養チャンバ(140)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記チャネル(150)は、その長さの少なくとも一部にわたって湾曲している、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記チャネル(150)は、静的湾曲又は角度依存性の湾曲を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)は、少なくとも二つのアクセス開口部(131, 132)を有する充填チャンバ(190)として構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つの培地チャネル(180)は、少なくとも二つの培地開口部(160)を、少なくとも一
つの培地チャンバ(170)に接続する、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一のキャリアプレート(111)と前記第二のキャリアプレート(112)との間に、少なくとも一つの分離装置(135
)が配置されている、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のキャリアプレート(111)の前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)と、前記第二のキャリアプレート(112)の前記少なくとも一つの培地チャンバとが重複して構成され、流体接続している、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記キャリアプレートユニット(110)は、更に、液体
用のリザーバを含む、請求項11から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記キャリアプレートユニット(110)は円板の形状を有する、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記キャリアプレートユニット(110)は、マイクロタイタープレートとして構成されている、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記キャリアプレートユニット(110)は、ガラス又はポリマー材料から構成されている、請求項1から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリアプレートユニット(110)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又はシクロオレフィン共重合体(COC)から構成されている、請求項1から
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
更に、方法ステップ
g)細胞培養培地を、前記少なくとも一つの培地開口部(160)に導入すること、
h)請求項
1から
18のいずれか一項に記載の前記装置を、回転させること、及び、
i)前記培養チャンバ(140)において前記細胞を供給するための前記少なくとも一つの培地チャンバ(170)で細胞培養培地を取得すること
が実行される、請求項
1から
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
圧力勾配の生成、外部若しくは統合ポンプ、又は前記装置の回転により、細胞培養培地を含む前記培地チャネル(180)及び前記培地チャンバ(170)を通る連続的又は脈動的な貫流が可能になる、請求項
1から
19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を提供すること、及び、少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、アクセス開口部を培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと、を有するキャリアプレートユニットを含む、細胞、特に組織を培養するための装置を提供することを含む、細胞群の製造方法、並びに、本方法を利用して製造した細胞群に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体臓器オンチップシステムは、組織チップ又はマイクロ生理学システム(MPS)とも称され、細胞及び組織を最も小規模で培養でき、医薬物質又は化粧物質を試験できるシステムであるが、近年、概念的なアイデアから破壊的新技術へと発展した。それらは、医薬開発における動物実験の代替手段、及びスクリーニングツールとして、毒性測定及び個人化医療において、高いポテンシャルを有すると考えられている。臓器オンチップシステムの基本原則は、人間及び動物の臓器組織及び細胞を培養するために、制御された、マイクロメートルサイズの環境を生成することにある。
【0003】
臓器オンチップシステムにおける組織の統合又は生成のために、細胞、細胞クラスタ、又は組織成分をマイクロメートルサイズの環境に導入する必要がある。生体内組織に対応する生理学的細胞密度を生成するために、特に非増殖細胞タイプの場合には、細胞、細胞クラスタ、又は組織成分が既に最初に高密度で注入される必要がある。これは、多くの場合、注入された細胞に高い変動性及び大きな負荷を伴う複雑な方法によってのみ可能である。
【0004】
大抵の場合、特に増殖細胞の場合、細胞は可変密度で注入された後、チップ内の細胞の分化及び/又は増殖によって所望の細胞密度が達成される。細胞を培養チャンバに輸送する、及び/又はそこで最初に高い細胞密度を達成するために、従来技術では、圧力勾配が生成されるため、細胞懸濁液は陽圧でマイクロチャネルに注入されるか、又は陰圧でチャネル内に吸入される(PCT/米国特許出願公開第2014/047482号; A.マーサー(A. Mathur)、P.ロスキル(P. Loskill)、K. シャオ(K. Shao)、N.ヒュプシュ(N. Huebsch)、S.ホン(S. Hong)、S. G.マルクス(S. G. Marcus)、N.マルクス(N. Marks)、M.マンデガー(M. Mandegar)、B. R.コンクリン(B. R. Conklin)、L. P. リー(L. P. Lee)他、Sci. Rep. 2015, 5, 8883)。或いは、バイオプリンティングによっても個々の細胞を直接チップに被覆するか(S.ノウルトン(S. Knowlton)、B.イェニルメツ(B. Yenilmez)、S.タソグル(S. Tasoglu), Trends Biotechnol. 2016, 34, 685-688)、又は事前に形成されたスフェロイドを注入することもできる(N. S. ビセ(N. S. Bhise)、J.リバス(J. Ribas)、V.マノハラン(V. Manoharan)、Y. S.ツァン(Y. S. Zhang)、A.ポリーニ(A. Polini)、S.マサ(S. Massa)、M. R.ドクメシ(M. R. Dokmeci)、A.カデムホッセイニ(A. Khademhosseini)、J. Control. 2014発行, 190, 82-93; J.-Y.キム(J.-Y. Kim)、D. A.フルリ(D. A. Fluri)、R.マルカン(R. Marchan)、K.ボーネン(K. Boonen)、S.モハンティ(S. Mohanty)、P.サイン(P. Singh)、S.ハマド(S. Hammad)、B.ランデュイト(B. Landuyt)、J. G.ヘンスラー(J. G. Hengstler)、J. M.ケルム(J. M. Kelm)他、J. Biotechnol. 2015, 205, 24-35)。
【0005】
特に高い細胞密度を培養及び提供するための、特に細胞群及び組織を製造するための、細胞を培養するための従来技術において知られている方法及び装置は、細胞の生存能力及び/又は培養能力を損なう使用される細胞培養条件に関して、例えば増加するせん断力及び/又は圧力勾配に関して多くの場合不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】PCT/米国特許出願公開第2014/047482号
【非特許文献】
【0007】
【文献】A.マーサー(A. Mathur)、P.ロスキル(P. Loskill)、K. シャオ(K. Shao)、N.ヒュプシュ(N. Huebsch)、S.ホン(S. Hong)、S. G.マルクス(S. G. Marcus)、N.マルクス(N. Marks)、M.マンデガー(M. Mandegar)、B. R.コンクリン(B. R. Conklin)、L. P. リー(L. P. Lee)他、Sci. Rep. 2015, 5, 8883
【文献】S.ノウルトン(S. Knowlton)、B.イェニルメツ(B. Yenilmez)、S.タソグル(S. Tasoglu), Trends Biotechnol. 2016, 34, 685-688
【文献】N. S. ビセ(N. S. Bhise)、J.リバス(J. Ribas)、V.マノハラン(V. Manoharan)、Y. S.ツァン(Y. S. Zhang)、A.ポリーニ(A. Polini)、S.マサ(S. Massa)、M. R.ドクメシ(M. R. Dokmeci)、A.カデムホッセイニ(A. Khademhosseini)、J. Control. 2014発行, 190, 82-93;
【文献】J.-Y.キム(J.-Y. Kim)、D. A.フルリ(D. A. Fluri)、R.マルカン(R. Marchan)、K.ボーネン(K. Boonen)、S.モハンティ(S. Mohanty)、P.サイン(P. Singh)、S.ハマド(S. Hammad)、B.ランデュイト(B. Landuyt)、J. G.ヘンスラー(J. G. Hengstler)、J. M.ケルム(J. M. Kelm)他、J. Biotechnol. 2015, 205, 24-35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が基礎とする技術的問題は、従来技術における前述の欠点を克服する、特に、細胞及び細胞群を不利な負荷、例えば不確定の圧力又はせん断力にさらすことなく、細胞を培養し、細胞群を製造することを可能にする、細胞群を製造するための改善された方法を提供することである。
【0009】
特に、基礎となる技術的問題は、特に高い、好ましくは生理学上の細胞密度で細胞を培養し、細胞群、特に組織、顕微鏡組織、臓器又は臓器等価物を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下を含む細胞群の製造方法を提供することにより、本発明が基礎とする技術的問題を解決する。
a)少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと、を有するキャリアプレートユニットを含む、細胞及び細胞を培養するための装置を提供すること、
b)少なくとも一つのアクセス開口部を通して細胞を装置に導入すること、
c)装置の回転を可能にする回転装置に装置を導入すること、
d)装置を回転させること、
e)少なくとも一つの培養チャンバで細胞を取得すること、並びに、
f)少なくとも一つの培養チャンバで細胞を培養し、少なくとも一つの培養チャンバで細胞を培養することによって、細胞群、特に三次元細胞群を生成すること。
【0011】
よって、本発明は、細胞群の製造方法を企図し、この方法は、細胞を培養するための装置、好ましくはマイクロ流体装置を使用する。これらのマイクロ流体装置は、少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと、を有するキャリアプレートユニットを有する。
【0012】
従って、本発明は、細胞及びそのような装置を提供すること、少なくとも一つのアクセス開口部を通してこれらの細胞をこの装置に導入すること、次に、装置を回転可能にする装置にこの装置を導入すること、この回転装置を回転させ、装置の回転により、細胞が少なくとも一つの培養チャンバ内で取得及びそこで培養され、少なくとも一つの培養チャンバ内で細胞を培養することにより、細胞群、特に三次元細胞群が発生することを企図する。
【0013】
本発明の特に好ましい第一の実施形態では、細胞を培養するための装置は、中心回転軸を有するキャリアプレートユニットを有し、この形態では、この中心回転軸の近位に少なくとも一つのアクセス開口部が、この中心回転軸の遠位に少なくとも一つの培養チャンバが配置されている。
【0014】
よって、特に本発明は、以下を含む細胞群を製造するための方法を提供することにより、本発明が基礎とする技術的問題を解決する。
a1)細胞及び細胞を培養するための装置、特に、好ましくは三次元の細胞培養システムであって、回転軸の近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部と、回転軸の遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと、を備える、中心回転軸を有するキャリアプレートユニットを含む、細胞培養システムを提供すること、
b1)少なくとも一つのアクセス開口部を通じて装置に細胞を導入すること、
c1)装置の回転を可能にする回転装置に装置を導入すること、
d1)装置を回転させること、
e1)少なくとも一つの培養チャンバで細胞を取得すること、並びに、
f1)少なくとも一つの培養チャンバで細胞を培養し、少なくとも一つの培養チャンバで細胞を培養することによって、細胞群、特に三次元細胞群を生成すること。
【0015】
特に好ましい実施形態では、細胞を培養するための装置は、少なくとも一つの配置されたアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと、を有するキャリアプレートユニット、特にキャリアプレートである。
【0016】
特に好ましい実施形態では、細胞を培養するための装置は、回転軸の近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部と、回転軸の遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと、を有する回転軸を有するキャリアプレートユニット、特にキャリアプレートである。特に、本発明によって好ましく使用される装置は、その中心回転軸の周りで回転できるように、即ち、回転され得るように構成されている。
【0017】
本発明に関連して、中心回転軸という用語は、その周りを装置が回転できる直線、並びに、特に最大主慣性モーメントを有する装置のマクロ的形状の対称軸に対応する直線、及び、装置の幾何学的中心点を通る直線であると理解される。特に、中心回転軸は、上から見て好ましくは円形である装置に垂直に立つ。
【0018】
よって、細胞を培養するための本発明によって企図される装置は、好ましい一実施形態において、中心回転軸を有するキャリアプレートユニットを含み、特にキャリアプレートユニットから構成され、キャリアプレートユニットは、回転軸の近位に配置され、キャリアプレートユニットの外部からアクセス可能な少なくとも一つのアクセス開口部と、回転軸の遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する、好ましくは半径方向に向けられた少なくとも一つのチャネルと、を有する。少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、これら二つの構造を接続する少なくとも一つのチャネルとは、キャリアプレートユニットの本体、特にキャリアプレート、又はその表面に形成されている。好ましい実施形態では、少なくとも一つのアクセス開口部は回転軸に空間的に近接して、即ち近位に配置されている一方、少なくとも一つの培養チャンバは遠位に、即ち回転軸から更に離れて配置されており、即ちキャリアプレートユニットの周辺領域に存在していることが企図される。よって、回転軸に対する少なくとも一つのアクセス開口部の距離(r1)は、回転軸に対する少なくとも一つの培養チャンバの距離(r2)より小さい。本発明によって好ましくは設けられている、少なくとも一つの培養チャンバへの少なくとも一つのアクセス開口部の空間配置構成によって、装置がその回転軸の周りを回転する際、遠心力により、アクセス開口部に導入された細胞、細胞培養培地又は細胞懸濁液が、遠心力の方向へキャリアプレートユニットの周辺領域へ搬送される。更に、障害となる気泡は反対方向、即ち、アクセス開口部の方向へ、装置から除去される。特に、アクセス開口部に導入された細胞は、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルを介して、遠心力によって少なくとも一つの培養チャンバに到達する。本発明によって好ましい実施形態において企図されるように、二つ以上のアクセス開口部及び二つ以上の培養チャンバが設けられている場合、個々のアクセス開口部及び培養チャンバのそれぞれについて、培養チャンバはアクセス開口部よりも回転軸に対して大きな距離に配置されていること、即ち、培養チャンバは、回転軸に対して近位に、アクセス開口部はこれに対して遠位に配置されていることが好ましい。特に、少なくとも一つのアクセス開口部は、中心回転軸から距離r1に位置し、少なくとも一つの培養チャンバは、中心回転軸から距離r2にあり、この時r1<r2である。
【0019】
有利には、アクセス開口部を通じてキャリアプレートユニットに導入された細胞、特に細胞懸濁液、場合により又、細胞培養培地は、即ち、本発明による装置の回転中、即ち遠心力(Fz=m ω2r)により、回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部からアクセス開口部を培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルを通じて、回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバに輸送される。角速度ωでの回転により、細胞又は細胞懸濁液は、少なくとも一つの培養チャンバの距離r2で、a=ω2r2で加速する。有利にはこれにより、細胞は少なくとも一つの培養チャンバ内に、即ち、キャリアプレートユニットの周辺領域内に蓄積する。有利には、細胞は、不確定の圧力又はせん断力が細胞に作用することなく、少なくとも一つの培養チャンバ内で遠心力によって蓄積される。次いで、より少ない回転において、又は装置の更なる回転なしにのいずれかで、好ましくは培養培地による供給により、細胞を培養チャンバ内で培養することができる。細胞の培養により、好ましくは、細胞が少なくとも一つの培養チャンバを完全に充填し、ひいては三次元細胞群を形成することになる。有利には、本発明によって使用される装置は、少なくとも一つの培養チャンバ内で高い細胞密度を有する組織及び細胞群を再現可能かつ並列化可能に製造することを可能にし、装置は更に容易に操作可能である。
【0020】
本発明の更なる第二の実施形態では、本発明が基礎とする技術的問題は、細胞を培養するための装置のキャリアプレートユニットが中心回転軸を有さない細胞群を製造するための方法の提供によって解決される。この実施形態では、キャリアプレートユニットは、装置の回転を可能にする回転装置に装置を導入し、存在しない中心回転軸の周りではなく、回転装置の回転軸の周りで装置を回転させた後に、回転する。中心回転軸を有するキャリアプレートユニットにおけるのと同様に、少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、これら二つの構造を接続する少なくとも一つのチャネルとは、キャリアプレートユニットの本体、特にキャリアプレート、又はその表面に形成されている。少なくとも一つの培養チャンバへの少なくとも一つのアクセス開口部の本発明によって企図される適切な空間配置構成により、装置が回転装置内で回転する際に、アクセス開口部に導入された細胞、細胞培養培地又は細胞懸濁液が遠心力によって、遠心力の方向に、少なくとも一つの培養チャンバが存在するキャリアプレートユニットの領域内に搬送されることになる。更に、障害となる気泡は反対方向、即ち、アクセス開口部の方向へ、装置から除去される。特に、アクセス開口部に導入された細胞は、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルを介して、遠心力によって少なくとも一つの培養チャンバに到達する。本発明によって好ましい実施形態において企図されるように、二つ以上のアクセス開口部及び二つ以上の培養チャンバが設けられている場合、アクセス開口部及び培養チャンバのそれぞれについて、装置を装置の回転を可能にする回転装置へ導入し、装置を回転させた後で、アクセス開口部に導入された細胞が、チャネルを通じて、少なくとも一つの培養チャンバへ遠心力によって到達するように培養チャンバが配置されていることが好ましい。有利には、アクセス開口部を通じてキャリアプレートユニットに導入された細胞、特に細胞懸濁液、場合により又、細胞培養培地は、即ち、本発明による装置の回転中、即ち遠心力(Fz=m ω2r)により、アクセス開口部からアクセス開口部を培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルを通じて、少なくとも一つの培養チャンバに輸送される。角速度ωでの回転により、細胞又は懸濁液は加速する。これにより、有利には、細胞は少なくとも一つの培養チャンバ内に蓄積する。細胞は、有利には、規定の圧力又は重力が細胞に作用することなく、少なくとも一つの培養チャンバ内で遠心力によって蓄積される。次いで、より少ない回転において、又は装置の更なる回転なしにのいずれかで、好ましくは培養培地による供給により、細胞を培養チャンバで培養することができる。細胞の培養により、好ましくは、細胞が少なくとも一つの培養チャンバを完全に充填し、ひいては三次元細胞群を形成することになる。有利には、本発明によって使用される装置は、少なくとも一つの培養チャンバ内で高い細胞密度を有する組織及び細胞群を再現可能かつ並列化可能に製造することを可能にし、装置は更に容易に操作可能である。
【0021】
本発明のこの第二の実施形態では、細胞群を製造するための方法で使用される細胞を培養するための装置、特にキャリアプレートユニットは、回転装置の回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部と、回転装置の回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバと、アクセス開口部を培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと、を有する。
【0022】
本発明によって使用される装置、即ち、中心回転軸を有する装置及び中心回転軸を有さない装置は、とりわけ、細胞を多数の培養チャンバに同時に導入することにより、細胞培養装置、特に臓器オンチップシステムの特に並列化を可能にするという点で有利である。本発明によって使用される装置及び手順は、特に、注入、即ち細胞の導入にポンプが使用されず、回転により装置から気泡を除去でき、処理時間が短く、取り扱いがより容易になり、かつ一つのみの構造単位が使用されることによっても、微小生理学的生体内細胞培養システムの取り扱いを簡素化する。有利には、装置の回転によって、培養チャンバ内の空気ポケットを簡単な方法で除去又は回避できることも明らかになる。
【0023】
本発明によって使用される装置及び方法は、特に、動物実験の代替手段として、基礎研究のために、但し又、応用研究開発において、及び治療製剤又は化学物質のためのスクリーニングシステムとしても使用することができる。本発明によって使用される装置及び本発明による方法は、細胞群を製造するために、人工組織又は混合組織を生成するために、特に再生医療及び/又は個人化医療のためにも使用される。
【0024】
特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレートユニットは、少なくとも二つのキャリアプレート、特に第一及び第二のキャリアプレートを有するが、場合によって、三つ、四つ、五つ、又は六つ以上のキャリアプレートを設けてもよい。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレートユニット、特に第一及び第二のキャリアプレートは、上から見た場合に円形形状を有する。特に、それは略平面状の、即ち平坦な、三次元の物体として構成されている。特に、本発明によって使用される装置は、平坦な円筒、特に円板(即ちディスク)の形状を有する。よって、本発明によって好ましくは平坦な三次元形状で存在する、本発明によって使用される装置の水平方向に平らな拡がりは、それらの垂直方向の拡がりよりも大幅に大きく、この時、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレート、並びに、開口部、チャネル及びチャンバ等のそこに存在する構造の水平方向の拡がりは長さ及び幅と称され、垂直方向の拡がりは高さと称される。本発明によって使用される装置、特に第一及び第二のキャリアプレート、又はそれらの構造の長さ及び幅(長さは幅よりも大きな水平方向の拡がりである)によって拡がる面は、本発明によって使用される装置、キャリアプレート又は構造の水平面と称される。
【0026】
特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレートユニットは、上から見た場合に即ち円形を有し、好ましい実施形態では、回転軸は、存在する場合には、上から見た場合に円形状、特に円板状に存在する装置の中心点を通じて、円に垂直に立つように延び、この時円の幾何学的中心点と円の外周との間の距離は半径rと称される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、好ましくは円板状に存在する、本発明によって使用される装置の直径は、1~80cm、特に5~64cm、特に5~30cm、好ましくは7~20cm、好ましくは15cm、特に好ましくは10cmである。
【0028】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、本発明によって使用される装置、特に中心回転軸を有する又は有さない本発明によって使用される装置、特にキャリアプレートユニット、特に第一及び第二のキャリアプレートは、上から見ると長方形、好ましくは正方形の形状を有する。しかし、本発明によって使用される装置、特に、中心回転軸を有する又は有さない本発明によって使用される装置の他の形状も本発明によって考えられる。特に、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレートユニット、特に第一及び第二のキャリアプレートは、略平面状の、即ち平坦な三次元の物体として形成されている。特に、本発明によって使用される装置、特に、本発明によって使用される中心回転軸を有する又は有さない装置は、平坦な直方体の形状を有する。その際、本発明によって好ましくは平坦な三次元形状で存在する、本発明によって使用される装置の水平方向に平らな拡がりは、好ましくは、それらの垂直方向の拡がりよりも大幅に大きく、この時、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレート、並びに、開口部、チャネル及びチャンバ等のそこに存在する構造の水平方向の拡がりは長さ及び幅と称され、垂直方向の拡がりは高さと称される。本発明によって使用される装置、特に第一及び第二のキャリアプレート、又はそれらの構造の長さ及び幅(長さは幅よりも大きな水平方向の拡がりである)によって拡がる面は、本発明によって使用される装置、キャリアプレート又は構造の水平面と称される。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレートユニット、特に第一及び第二のキャリアプレートは、特にマイクロタイタープレートの形態のマイクロタイタープレートとして構成されている。
【0030】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレートユニット、特に第一及び第二のキャリアプレートは、特にマイクロタイタープレートの形態のマイクロタイタープレートとして構成され、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は、中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部は、本発明によって使用される装置の規定の位置において配置されており、好ましくは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された全てのアクセス開口部は、本発明による装置の規定の位置に配置されている。好ましくは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部は、マイクロタイタープレート、好ましくは96ウェルプレート、好ましくは384ウェルプレートの穴位置の一つにある。好ましくは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された全てのアクセス開口部は、マイクロタイタープレート、好ましくは96ウェルプレート、好ましくは384ウェルプレートの穴位置にある。この実施形態によれば、有利には、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部の自動充填は、ピペッティングロボットによって可能である。
【0031】
ここで使用される、細胞を培養するための装置は、細胞群を製造するための装置でもある。本明細書において、細胞群という用語は、組織、特に顕微鏡組織、組織群、臓器又は臓器等価物であるとも理解される。特に、細胞群という用語は、高い細胞密度及び三次元の拡がりを有する細胞群であるとも理解される。
【0032】
特に、本発明によって使用される装置は、マイクロ流体装置、特に細胞培養システム、特にマイクロ流体細胞培養システム、特にディスク上の臓器システム、特にディスク上のマイクロ流体臓器システムを表す。
【0033】
本発明に関連して、装置の中央領域は、中心回転軸をより直接取り囲む領域であると理解される。これは、好ましくは、上から見た場合に、円形装置の幾何学的中心点から始まるキャリアプレートユニットの半径rz(中央領域の半径)=1/4rから1/10rの好ましくは円形状周縁内の面であり得る。特に、キャリアプレートユニットの中央領域(rz)の半径は、少なくともキャリアプレートユニットのrz=1/10rであり、多くてもキャリアプレートユニットのrz=1/4rである。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明によって好ましくは使用される装置の中央領域は、装置の回転を可能にする回転装置、例えば外部回転駆動装置、例えばモータのための少なくとも一つの接続装置を有する。接続装置は、特に、少なくとも一つの貫通開口部、例えば二つ、三つ、四つ、五つ若しくは六つの貫通開口部、又は少なくとも一つの係止装置、例えば二つ、三つ、若しくは四つの係止装置である。接続装置、特に少なくとも一つの貫通開口部又は少なくとも一つの係止装置は、本発明による装置を、回転を可能にし、本発明による装置を回転させることができる回転装置に固定するために機能する。
【0035】
好ましくは、貫通開口部は、好ましくは、穴、ハブ、若しくはねじ、又はその一部である。係止装置は、好ましくは、差し込み・折り畳み・ラッチ・スナップイン若しくはクランプ接続装置又はその一部である。
【0036】
本発明によって使用される装置が、回転装置のための、好ましくは周辺に配置された少なくとも一つのロック装置を有することが企図されてもよい。このロック装置は、例えば、本発明によって使用される装置をその縁部、特に最外縁部でクランプする少なくとも一つのクランプとすることができる。
【0037】
本発明によれば、装置は、存在する場合には、中央領域の少なくとも一つの接続装置を用いて、及び/又は周辺に配置された少なくとも一つのロック装置を用いて、回転装置に取り付けることが企図され得る。更に、本発明によれば、本発明によって使用される装置自体が接続装置又はロック装置を有さず、回転装置が本発明によって使用される装置のための固定装置を有することが可能である。この固定装置は、本発明によって使用される装置の周縁に適合する回転装置の収容部であってよい。
【0038】
本発明によって使用される装置の好ましい実施形態では、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルは、非分岐チャネルである。しかし、本発明によって好ましくは、チャネルは、単一、複数、又は複数に分岐したチャネルであってもよく、特にチャネルと培養チャンバとの相互の並列配置構成で、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも二つの培養チャンバに接続する。これにより、一つのアクセス開口部を介して複数の培養チャンバに細胞を並行して同時に充填できる。好ましい実施形態では、分岐チャネルは、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも三つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも四つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも五つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも六つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも七つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも八つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも九つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも十の培養チャンバ、好ましくは少なくとも11の培養チャンバ、好ましくは少なくとも12の培養チャンバ、好ましくは少なくとも13の培養チャンバ、好ましくは少なくとも14の培養チャンバ、好ましくは少なくとも15の培養チャンバ、好ましくは少なくとも20の培養チャンバ、好ましくは少なくとも25の培養チャンバ、好ましくは少なくとも30の培養チャンバ、好ましくは少なくとも35の培養チャンバ、好ましくは少なくとも40の培養チャンバ、好ましくは少なくとも45の培養チャンバ、好ましくは少なくとも50の培養チャンバ、好ましくは少なくとも60の培養チャンバ、好ましくは少なくとも70の培養チャンバ、好ましくは少なくとも80の培養チャンバ、好ましくは少なくとも90の培養チャンバ、好ましくは少なくとも100の培養チャンバに、好ましくはチャネルと培養チャンバとの相互の並列配置構成でそれぞれ接続する。
【0039】
本発明によって使用される装置の好ましい実施形態において、少なくとも一つのチャネルは、分岐チャネル又は非分岐チャネルであり、これは、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも二つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも三つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも四つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも五つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも六つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも七つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも八つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも九つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも十の培養チャンバ、好ましくは少なくとも11の培養チャンバ、好ましくは少なくとも12の培養チャンバ、好ましくは少なくとも13の培養チャンバ、好ましくは少なくとも14の培養チャンバ、好ましくは少なくとも15の培養チャンバ、好ましくは少なくとも20の培養チャンバ、好ましくは少なくとも25の培養チャンバ、好ましくは少なくとも30の培養チャンバ、好ましくは少なくとも35の培養チャンバ、好ましくは少なくとも40の培養チャンバ、好ましくは少なくとも45の培養チャンバ、好ましくは少なくとも50の培養チャンバ、好ましくは少なくとも60の培養チャンバ、好ましくは少なくとも70の培養チャンバ、好ましくは少なくとも80の培養チャンバ、好ましくは少なくとも90の培養チャンバ、好ましくは少なくとも100の培養チャンバに、好ましくはチャネルと培養チャンバとの相互の並列配置構成でそれぞれ接続する。
【0040】
少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバ、好ましくは少なくとも二つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルは、好ましい実施形態では、10~1000μm、好ましくは10~800μm、好ましくは10~600μm、好ましくは10~500μm、好ましくは10~400μm、特に50~150μm、特に70μmの幅を有することができる。特に好ましい実施形態では、少なくとも一つのチャネルは、10~400μm、特に50~150μm、特に70μmの高さを有する。特に好ましい実施形態では、少なくとも一つのチャネルは、好ましくは半径方向に分岐することができ、特に0~10、好ましくは一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つの分岐を有することができる。チャネル高さ及び/又はチャネル幅は、特に好ましくは、分岐の数とともに増加できる。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置のチャネルは、その長さの少なくとも一部にわたって、少なくとも二つ、好ましくは少なくとも三つ、好ましくは少なくとも四つ、好ましくは少なくとも五つ、好ましくは少なくとも六つ、好ましくは少なくとも七つ、好ましくは少なくとも八つ、好ましくは少なくとも九つ、好ましくは少なくとも十、好ましくは少なくとも11、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも13、好ましくは少なくとも14、好ましくは少なくとも15、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも25、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも35、好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも45、好ましくは少なくとも50、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも80、好ましくは少なくとも90、好ましくは少なくとも100の、チャネルに直接隣接する培養チャンバを有する。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態では、チャネルに直接隣接する培養チャンバは、チャネルの長さの少なくとも一部にわたって互いに平行に配置されている。
【0043】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、少なくとも一つのチャネルは、その長さの少なくとも一部にわたって湾曲している。少なくとも一つのチャネルは、その長さの少なくとも一部にわたって静的湾曲を有することが好ましい。少なくとも一つのチャネルは、好ましくは、その長さの少なくとも一部にわたって角度依存性の湾曲を有する。特に好ましい実施形態では、少なくとも一つのチャネルは、その長さの少なくとも一部にわたって、回転により生成される遠心力の方向に規定の角度だけ湾曲している。本発明の特に好ましい実施形態では、少なくとも一つのチャネルの曲率は、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部から、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバの方向へ減少する。好ましくは、少なくとも一つのチャネルの曲率は、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部から、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバの方向へ連続的に減少する。
【0044】
特に好ましい実施形態では、少なくとも一つのアクセス開口部は、0.2~20mm、好ましくは0.5~10mm、好ましくは1~8mm、特に3mmの直径を有する。
【0045】
本発明の特に好ましい一実施形態では、本発明によって使用される装置は、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つのチャネルとの間に接続領域を有する。好ましくは、接続領域は、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部から、少なくとも一つのチャネルへ斜めに降下する。そのような斜めに降下する接続領域を用いて、有利には、少なくとも一つのアクセス開口部を通ってキャリアプレートユニットに導入された細胞の、特に細胞懸濁液の、場合によって細胞培養培地の、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部から、接続領域を介して、少なくとも一つのチャネルへの、改善された流れを確保することが可能である。
【0046】
好ましい一実施形態では、本発明によって使用される装置の少なくとも一つのアクセス開口部は、少なくとも二つのアクセス開口部を有する充填チャンバとして構成されている。少なくとも一つのアクセス開口部を充填チャンバとして構成することにより、有利には、本発明によって使用される装置の装填効率を改善することが可能である。その際、充填チャンバは少なくとも二つのアクセス開口部を有し、これらのアクセス開口部を通じて、好ましくは充填チャンバ内で流れを生成することができる。充填チャンバによって、本発明によって使用される装置の回転時に、少なくとも一つの培養チャンバに実際に輸送される細胞の数を増加させることが可能である。
【0047】
特に好ましい実施形態では、円形状の少なくとも一つの培養チャンバは、0.05~10mm、好ましくは0.1~9mm、好ましくは0.2まで8mmまで、特に2mmの水平直径を有する。特に好ましい実施形態では、装置の中心への、特に中心回転軸を有する装置の中心回転軸への培養チャンバの半径方向距離(r2)は、1~30cm、好ましくは1~20cm、好ましくは2~15cm、特に4.5cmである。a(ω)の比は、有利には、装置の中心点、特に中心回転軸を有する装置の中心回転軸までの培養チャンバの半径方向距離(r2)、又は回転装置の回転軸に対する培養チャンバの半径方向距離(r2)を介して設定することができる。
【0048】
特に好ましい実施形態では、少なくとも一つのバーベル型培養チャンバは、0.3~10mm、好ましくは1mmのウェブ間隔を有する。ウェブ幅は、50μm~500μm、好ましくは150μmである。両端部は、100μm~2mm、好ましくは550μmのウェブに垂直な拡開部を有する。拡開部は90°で急激に発生するか、又は、0°~90°の間、好ましくは42°の任意の角度で台形に増加する。端部は、100μm~1mm、好ましくは300μmの半径方向の拡がりを有する。バーベル型チャンバの均一な充填を確保するために、好ましい実施形態では、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して遠位側が丸くなっている。
【0049】
特に好ましい実施形態では、長方形の少なくとも一つの培養チャンバは、0.05~10mm、好ましくは500μmの幅、及び0.05~10mm、好ましくは1500μmの高さを有する。
【0050】
特に好ましい実施形態では、キャリアプレートユニット、特に第一のキャリアプレートの高さは0.8~20mm、好ましくは1.5~4mm、特に1.7~2.5mm、特に2mmである。装置の十分な安定性を確保するために、好ましくは、第一のキャリアプレートの高さは、チャネルの高さに少なくとも0.5ミリメートル、好ましくは1ミリメートルを加えたものに対応するのが望ましい。
【0051】
少なくとも一つの培養チャンバは、好ましくは、円形、楕円形、長方形、台形、バーベル形、円形セグメント又は円形セクタの形状、及び言及した形状の一部又は組み合わせで形成することができる。
【0052】
特に好ましい実施形態では、キャリアプレートユニットは一体に実施されている。
【0053】
特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置はキャリアプレートユニットである。特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置、特にキャリアプレートユニットは、キャリアプレート、特に第一のキャリアプレート、即ち、細胞の培養が行われ、少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部と少なくとも一つの培養チャンバとを接続する少なくとも一つのチャネルとが存在することによって区別されているキャリアプレートである。
【0054】
キャリアプレートユニット、特に第一のキャリアプレートに形成された、少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部と少なくとも一つの培養チャンバとを接続する少なくとも一つのチャネルとは、キャリアプレートユニット、特に第一のキャリアプレートに統合されるか、又はその表面に配置され、好ましい実施形態では、キャリアプレートの水平面で完全に又は部分的に開口しており、即ち、それぞれ、キャリアプレートユニット、特にキャリアプレートにそれぞれ底部及び壁部を、並びに水平面に開口部を有する。
【0055】
本発明に関連して、少なくとも一つの培養チャンバの開口部を有するキャリアプレートユニット、特に第一のキャリアプレートの水平面は、第一のキャリアプレート又はキャリアプレートユニットの上面又は上向きの面と称される。
【0056】
特に好ましい実施形態では、キャリアプレートユニット、特に第一のキャリアプレートは、好ましくは可逆的に取り付け可能な蓋又は層、例えばPDMS層によって、上向きに完全に又は部分的に閉鎖することができるため、少なくとも一つの培養チャンバ及び少なくとも一つのチャネルは、外側に対して液密に閉鎖されている。少なくとも一つのアクセス開口部は、好ましくは、細胞及び/又は培地で満たされ、その後閉じられることを可能にするために可逆的に閉鎖可能に構成することができる。少なくとも一つのアクセス開口部は、場合によって、キャリアプレートユニット、特に第一のキャリアプレートの上部水平面と反対向きに配置されている下部水平面上に配置してもよい。
【0057】
好ましい一実施形態では、キャリアプレートユニットは、少なくとも二つのキャリアプレートを含み、特にキャリアプレートユニットは、少なくとも二つのキャリアプレート、特に第一及び第二のキャリアプレートから成り、これらは別個の構成要素として存在し、可逆的又は非可逆的に接合した後、好ましい実施形態では、互いに重なって、好ましくは互いに一致して配置され、キャリアプレートユニットを形成する。好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置は、特にキャリアプレートユニット、即ち、特に細胞を培養するための少なくとも一つの第一のキャリアプレートと、二つのキャリアプレートを接合した後にその上又はその下に配置され、それと好ましくは外側に対して液密に接続された、特に培養チャンバ内にある細胞に培地を供給するための少なくとも一つの第二のキャリアプレートと、を含む。
【0058】
この実施形態では、第一のキャリアプレートは、少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部と少なくとも一つの培養チャンバとを接続する少なくとも一つのチャネルと、を有する。本発明によれば、好ましくは、第一のキャリアプレート上に、好ましくは外部に対して液密に配置された第二のキャリアプレートは、キャリアプレートユニットの外部からアクセス可能な少なくとも一つの培地開口部と、少なくとも一つの培地チャンバと、少なくとも一つの培地開口部を少なくとも一つの培地チャンバに接続する少なくとも一つの培地チャネルと、を有し、少なくとも一つの培地チャンバは開口部、特に二つのキャリアプレートを接合した後、第二のキャリアプレートの下方又は上方に配置された第一のキャリアプレートの少なくとも一つの培養チャンバへの流体接続を可能にする開口部を有し、培地開口部は、培地への流入口又は流出口として、特にキャリアプレートユニットの外側からアクセス可能な開口部として実施されている。少なくとも一つの培地開口部は、好ましくは、第一のキャリアプレートとは反対側の第二のキャリアプレートの上部水平面に配置されている。少なくとも一つの培地開口部と、少なくとも一つの培地チャンバと、少なくとも一つの培地開口部と少なくとも一つの培地チャンバとを接続する少なくとも一つの培地チャネルとは、第二のキャリアプレートに組み込まれるか、又は、その表面に配置され、好ましい実施形態では、キャリアプレートの水平面に完全に又は部分的に開口しており、即ち、キャリアプレートにそれぞれ底部及び壁部を、並びに水平面に開口部を有する。
【0059】
好ましい実施形態では、第二のキャリアプレートは、少なくとも二つの培地開口部、特に少なくとも一つの培地流入口及び少なくとも一つの培地流出口を有し、これらは少なくとも一つの培地チャネル及び少なくとも一つの培地チャンバを介して互いに接続されている。好ましくは、少なくとも一つの培地チャネルは、少なくとも二つの培地開口部を少なくとも一つ、好ましくは少なくとも二つの培地チャンバに接続する。
【0060】
特に好ましい一実施形態では、キャリアプレートユニット、特に第一のキャリアプレートの少なくとも一つのアクセス開口部は、第二のキャリアプレートとは反対側の、第一のキャリアプレートの下向き水平面に配置することができる。好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地チャネルは、少なくとも一つの培地チャンバと同様に、二つのキャリアプレートが接合された後、第一のキャリアプレートに面する下部水平面に対して開口しており、第一のキャリアプレートとの接合後、好ましくはその下に位置する少なくとも一つのチャネル、及びその下に位置する少なくとも一つの培養チャンバと流体接続することができる。
【0061】
しかしながら、特に好ましい実施形態では、第一のキャリアプレートは、第二のキャリアプレートの上に配置することもできるか、又は場合によって、培地開口部、培地チャネル及び培地チャンバを有する二つのキャリアプレートの間に配置してもよい。
【0062】
本発明によれば、好ましくは、第二のキャリアプレートの培地チャンバのみが第一のキャリアプレートの培養チャンバと流体接続し、第一のキャリアプレートのチャネル及び第二のキャリアプレートの培地チャネルはそれぞれ液密であり、場合によっては又、互いに重複しないように構成されることが企図されてもよい。
【0063】
本発明によれば好ましい実施形態において、少なくとも二つのキャリアプレート、特に第一及び第二のキャリアプレートが設けられている場合、第二のキャリアプレートは、第一のキャリアプレートと一緒に接合された後、その上面にある、少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのチャネルと、場合によって少なくとも一つのアクセス開口部との上向き開口部を、上向きに、好ましくは液密に密閉し、第一のキャリアプレートの少なくとも一つの培養チャンバと、第二のキャリアプレートの少なくとも一つの培地チャンバとが、互いに流体接続している。
【0064】
好ましい実施形態では、少なくとも一つの第二のキャリアプレートにおいて、二つのキャリアプレートが接合された後、第二のキャリアプレートの下方に配置された第一のキャリアプレートのアクセス開口部のための通路が実施されることが企図されている。この通路は、可逆的に閉鎖可能に構成できる。
【0065】
従って、本発明によれば、第一のキャリアプレートの少なくとも一つの培養チャンバと第二のキャリアプレートの少なくとも一つの培地チャンバとは、互いに重なり合うように配置され、互いに流体接続することが特に好ましい。従って、培養チャンバ内にある細胞には、特に細胞培養培地を加えることにより、培地開口部と、培地チャネルと、培地チャンバとを介して栄養素を供給することができる。更に、第二のキャリアプレートに形成された培地開口部と、培地チャネルと、培地チャンバとを介して、治療用、医薬品又は化粧品の調製物及び物質を細胞に投与できることが好ましい。これにより、有利には、培養チャンバ内の細胞又は組織群に対する物質の治療効果又は毒性の簡単な試験が可能となる。
【0066】
特に好ましい実施形態では、第一のキャリアプレートは、少なくとも一つのアクセス開口部と、少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルとを有し、この第一のキャリアプレートは、細胞の培養、特に細胞群の製造、特に組織の製造のために機能し、第一のキャリアプレート上に、好ましくは液密に配置された第二のキャリアプレートは、培養された細胞の供給のために機能し、特に少なくとも一つの培地開口部と、少なくとも一つの培地チャンバと、少なくとも一つの培地開口部を少なくとも一つの培地チャンバに接続する少なくとも一つの培地チャネルとを有し、その際、培地開口部及びアクセス開口部の両方が、キャリアプレートユニットの外側からアクセス可能な開口部として実施されており、少なくとも一つの培養チャンバは、少なくとも一つの培地チャンバと少なくとも重なり合っており、互いに流体接続されているため、培養チャンバには培地チャンバによって培地を供給することが可能となることが企図できる。好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地チャネルは又、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと重なり、流体接続するように実施してもよい。
【0067】
特に好ましい実施形態では、第一のキャリアプレートは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部と、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバと、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと、を有し、この第一のキャリアプレートは、細胞の培養、特に細胞群の製造、特に組織の製造のために機能し、第一のキャリアプレート上に好ましくは液密に配置された第二のキャリアプレートは、培養された細胞の供給のために機能し、特に少なくとも一つの培地開口部と、少なくとも一つの培地チャンバと、少なくとも一つの培地開口部を少なくとも一つの培地チャンバに接続する少なくとも一つの培地チャネルとを有し、その際、培地開口部及びアクセス開口部の両方が、キャリアプレートユニットの外側からアクセス可能な開口部として実施されており、少なくとも一つの培養チャンバは、少なくとも一つの培地チャンバと少なくとも重なり合っており、互いに流体接続されているため、培養チャンバには培地チャンバによって培地を供給することが可能となることも企図できる。好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地チャネルは又、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルと重なり、流体接続するように実施してもよい。
【0068】
好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地開口部を少なくとも一つの培地チャンバに接続する第二のキャリアプレートの少なくとも一つの培地チャネルは、非分岐の培地チャネルである。本発明によれば、培地チャネルは、好ましくは、単一、複数又は多数分岐した培地チャネルであってもよく、少なくとも一つの培地開口部、好ましくは少なくとも二つの培地開口部を少なくとも二つの培地チャンバに並列又は直列に接続する。これにより、培地開口部を通じて、細胞培養培地、医薬物質又は化粧物質等を、複数の培地チャンバに並行して充填することができる。好ましい実施形態では、分岐培地チャネルは、少なくとも一つの培地開口部を、少なくとも三つの培地チャンバ、好ましくは少なくとも四つの培地チャンバ、好ましくは少なくとも五つの培地チャンバ、好ましくは少なくとも六つの培地チャンバ、好ましくは少なくとも七つの培地チャンバ、好ましくは少なくとも八つの培地チャンバ、好ましくは少なくとも九つの培地チャンバ、好ましくは少なくとも十の培地チャンバ、好ましくは少なくとも11の培地チャンバ、好ましくは少なくとも12の培地チャンバ、好ましくは少なくとも13の培地チャンバ、好ましくは少なくとも14の培地チャンバ、好ましくは少なくとも15の培地チャンバ、好ましくは少なくとも20の培地チャンバ、好ましくは少なくとも25の培地チャンバ、少なくとも30の培地チャンバ、好ましくは少なくとも35の培地チャンバ、好ましくは少なくとも40の培地チャンバ、好ましくは少なくとも45の培地チャンバ、好ましくは少なくとも50の培地チャンバ、好ましくは少なくとも60の培地チャンバ、好ましくは少なくとも70の培地チャンバ、好ましくは少なくとも80の培地チャンバ、好ましくは少なくとも90の培地チャンバ、好ましくは少なくとも100の培地チャンバに、それぞれ互いに平行な培地チャネルと培地チャンバとの配置構成において接続する。
【0069】
特に好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地開口部を少なくとも一つの培地チャンバに接続する第二のキャリアプレートの少なくとも一つの培地チャネルは、回転により生成される遠心力の方向に垂直に延びる部分を有さない。この実施形態によれば、有利には、空気の含有を有利に防止することができ、回転により最適な培地供給を確保することができる。
【0070】
好ましい一実施形態では、少なくとも一つの培地チャネルが、少なくとも一つの培地開口部を、直列に配置された少なくとも二つ以上の培地チャンバに接続することも企図できる。即ち、少なくとも一つの培地チャネルが少なくとも二つの培地チャンバを直列に接続する。更に、少なくとも一つの培地チャネルが、少なくとも二つの培地開口部を、直列に配置された少なくとも一つ、好ましくは少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ又は十の培地チャンバに接続することが企図できる。ここで、少なくとも二つの培地開口部のうちの一つが培地流入口として機能し、二つ目が培地流出口として機能するため、培地、特に培養培地が培地チャネルを貫流し、特に循環し得ることが企図できる。培養培地は、好ましくは、培地チャネルを連続的又は脈動的に貫流する。その際、更に、培地を流すことを可能にするために、ポンプ、又は圧力勾配等が存在するか、若しくは統合されているか、又は装置の回転を利用することが企図できる。これらの実施形態では、少なくとも一つの培地チャネルは、少なくとも二つの培地開口部を少なくとも二つ以上の培地チャンバに接続するが、分岐培地チャネルではない。
【0071】
本発明によれば、同様に、第二のキャリアプレートが、少なくとも一つ又は少なくとも二つの培地開口部を少なくとも二つの培地チャンバに並列に接続する分岐培地チャネルと、少なくとも一つ又は少なくとも二つの培地開口部を少なくとも二つの培地チャンバに直列に接続する非分岐培地チャネルとを備えることも企図できる。
【0072】
特に好ましい一実施形態では、少なくとも一つの培地チャネルの幅は、5~600μm、好ましくは10~400μm、好ましくは50~150μm、特に70μmである。特に好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地チャネルの高さは、5~600μm、好ましくは10~400μm、好ましくは50~150μm、特に70μmである。特に好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地チャネルは分岐することができ、特に0~10、好ましくは一つ、二つ、三つ、四つ、五つ又は六つの分岐を有することができる。培地チャネルの高さ及び/又は培地チャネルの幅は、特に好ましくは、分岐の数とともに増加し得る。
【0073】
特に好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地開口部の直径は、0.5~20mm、好ましくは0.7~10mm、好ましくは1~8mmである。これにより、第二のキャリアプレートの高さと組み合わせて、1~200μl、好ましくは2~100μl、特に5~50μlの培地容量を導入できる。
【0074】
特に好ましい実施形態では、円形状の少なくとも一つの培地チャンバは、0.1~10mm、好ましくは0.2~8mm、特に2mmの水平直径を有する。特に好ましい実施形態では、培地チャンバと中心点との間の半径方向距離、特に培地チャンバと中心回転軸を備えた装置の中心回転軸との間の半径方向距離は、1~20cm、好ましくは2~10cm、特に4.5cmである。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも一つの培地チャンバは、円形、楕円形、長方形、台形、バーベル形、円形セグメント又は円形セクタの形状、及び既述の形状の一部又は組み合わせで実施されていてよい。
【0076】
本発明によれば、第二のキャリアプレートが、培地の供給を確保する一つ以上の一体化された又は外部のポンプを有することが企図されてもよい。
【0077】
特に好ましい実施形態では、第二のキャリアプレートの高さは0.8~20mm、好ましくは1.5~4mm、特に1.7~2.5mm、特に2mmである。好ましくは、第二のキャリアプレートの高さは、装置の十分な安定性を確保するために、培地チャネルの高さに少なくとも0.5ミリメートル、好ましくは1ミリメートルを加えたものに対応することが望ましい。
【0078】
特に好ましくは、少なくとも一つの分離装置、特に膜が、第一のキャリアプレートと第二のキャリアプレートとの間に配置されている。好ましい実施形態では、分離装置は、第一及び第二のキャリアプレートよりも薄い。分離装置、特に膜は、好ましくは内皮様及び/又は多孔性である。好ましい実施形態では、分離装置は、第一及び第二のキャリアプレート間で、特に第二のキャリアプレートの少なくとも一つの培地チャンバと第一のキャリアプレートの少なくとも一つの培養チャンバとの間で、拡散物質交換を可能にする。好ましい実施形態では、培養チャンバと培地チャンバとの間にそれぞれ膜が被覆されるか、或いは、キャリアプレートのサイズの単一の膜、又はそのリング状の、若しくは任意のサイズのセクション部分が培地チャンバ及び/又は培養チャンバの幅において使用されることが企図できる。少なくとも一つの分離装置、特に膜は、好ましくは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、又はネガティブレジスト材料、特にエポキシフォトレジスト(SU-8又は1002F-50)から製造されている。好ましくは、分離装置、特に膜は、ポリオレフィン、ポリスチレン、「細胞培養処理」ポリスチレン、ポリアルキルメタクリレート及びポリアルキルアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノール、アミノエポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリグリコール酸(PGA)及びその他の分解性ポリエステル、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)、ポリホスファゼン、ポリプロピレン、及びシリコーンエラストマー、並びに共重合体及びそれらの組み合わせから製造できる。一実施形態では、膜は分解性、特に生分解性であってもよい。
【0079】
特に好ましくは、分離装置は、培養組織の光学的検査を可能にするために、正確で、規定の構造、生物学的適合性、及び低い自己蛍光を有する。分離装置は、有利には、用途及び培養される細胞タイプに応じて個別化することができ、即ち、細孔サイズ、多孔度、及び細孔の配置を適合させることができる。細胞を培養チャンバから洗い流さないために、使用する細胞よりも細孔が小さいことが好ましい。
【0080】
好ましい実施形態では、1~20%、好ましくは5~10%の多孔度及び1~5μm、好ましくは4μmの細孔サイズを有する六角形グリッドが分離装置に使用される(
図10を参照)。透過性細孔は、特に好ましくは、この領域のみでの拡散を確保するために、培養チャンバと培地チャンバとの重複部分のみにある。
【0081】
特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置、特に第一のキャリアプレート、分離装置及び第二のキャリアプレートを有する装置の高さは、2~40mm、好ましくは2~30mm、好ましくは2~20mm、好ましくは2~10mm、特に2~5mmである。
【0082】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、本発明によって使用される装置のキャリアプレートユニットは、液体用、特に細胞培養培地又は調査対象の活性物質用のリザーバを含む。
【0083】
好ましくは、キャリアプレートユニットは、第一のキャリアプレートに加えて、好ましくは第一及び第二のキャリアプレートに加えて、液体用、特に細胞培養培地又は調査対象の活性物質用のリザーバを含む。
【0084】
好ましくは、キャリアプレートユニットは、第一のキャリアプレート、好ましくは第一のキャリアプレートの上に配置された第二のキャリアプレート、及び液体用、特に細胞培養培地又は検査される活性物質用の、好ましくは第二のキャリアプレート上に配置されたリザーバを含む。
【0085】
本発明の特に好ましい実施形態では、リザーバは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器を有する。
【0086】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、リザーバは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器、及び回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器を有し、この時、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して近位に配置された容器、好ましくは培地容器、及び回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を有する装置の中心回転軸に対して遠位に配置された容器、好ましくは培地容器は、互いに流体接続している。
【0087】
好ましくは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器は、少なくとも一つの培地開口部、好ましくは少なくとも一つの培地流出口を含む。
【0088】
好ましくは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器は、少なくとも一つの培地開口部、好ましくは少なくとも一つの培地流入口を含む。
【0089】
好ましい一実施形態によれば、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器にある液体、好ましくは細胞培養培地が、回転軸の周り、特に回転装置の回転軸の周り、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸の周りをキャリアプレートユニットが回転する際に、少なくとも一つの培地開口部、好ましくは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された容器の少なくとも一つの培地流出口を通り、流体接続された培地開口部に、好ましくは第二のキャリアプレートの流体接続された培地流入口に供給され、第二のキャリアプレートユニットにある非分岐又は分岐培地チャネルを介して、少なくとも一つの培地開口部、好ましくは第二のキャリアプレートの少なくとも一つの培地流出口まで搬送される。少なくとも一つの培地開口部、好ましくは第二のキャリアプレートの少なくとも一つの培地流出口から、液体、好ましくは細胞培養培地が、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器の、少なくとも一つの流体接続された培地開口部、好ましくは少なくとも一つの流体接続された培地流入口を介して供給される。液体、好ましくは細胞培養培地が、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された容器、好ましくは培地容器から、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して遠位に配置された容器、好ましくは培地容器へ、第二のキャリアプレートの培地チャネル及び培地チャンバを介して、好ましくは連続的又は脈動的に流入することにより、第一のキャリアプレートの少なくとも一つの培養チャンバにある細胞への液体、好ましくは細胞培養培地の供給が確保できる。
【0090】
このようにして、有利には、本発明によって使用される装置の少なくとも一つの培養チャンバ内にある細胞に、好ましくは連続的又は脈動的に、より大量の液体、好ましくは細胞培養培地を供給することができる。
【0091】
好ましい実施形態では、キャリアプレートユニット、特に第一及び/又は第二のキャリアプレート、好ましくは第一及び/又は第二のキャリアプレート及び/又はリザーバは、ガラス又はポリマー材料から構成されている。ポリマー材料から成るキャリアプレートユニットは、特に好ましくは、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメチルアクリレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、COC(シクロオレフィン共重合体)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、ポリイミド、ポリウレタン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエステル、特にポリカプロラクトン(PCT)、又はそれらの組み合わせから構成されている。
【0092】
本発明は、細胞群の製造方法であって、細胞は、好ましくはヒト又は動物細胞、特にそのような細胞の細胞懸濁液である、方法に関する。
【0093】
特に、本発明によって使用される装置において細胞群を製造するための細胞の培養は、以下によって行われる:a)細胞を、場合によって、例えば細胞培養培地、架橋又は非架橋ヒドロゲルにおける懸濁液の形態で提供し、本発明によって使用される装置を提供すること、b)細胞を、場合によって、例えば細胞培養培地、架橋又は非架橋ヒドロゲルにおける懸濁液の形態で、本発明によって使用される装置に少なくとも一つのアクセス開口部を通じて導入すること、c)回転を可能にする回転装置に本発明によって使用される装置を導入すること、d)本発明によって使用される装置を回転させること、e)少なくとも一つの培養チャンバで細胞を取得すること、f)少なくとも一つの培養チャンバで細胞を培養すること。本発明によれば、ステップc)がステップb)の前に実行されることが企図されてもよい。少なくとも一つの培養チャンバで細胞を培養することにより、細胞群、特に組織群が生成する。
【0094】
特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置は、充填される際にチャネル及び/又は培地チャネルのより良好な湿潤を達成するために、使用前に最初にO2プラズマで活性化される。特に500W、60s及び1mbarは、パラメータとして使用される。
【0095】
細胞の培養、特に細胞群の製造のための本発明の方法では、好ましくは、方法ステップb)を実行する前に、方法ステップx)で、細胞培養培地を少なくとも一つのアクセス開口部を通じて導入することが企図され、この細胞培養培地が、その次に、方法ステップy)で回転によって、即ち遠心力によって、少なくとも一つのアクセス開口部を少なくとも一つの培養チャンバに接続する少なくとも一つのチャネルを通って培養チャンバに輸送されることが企図されてもよい。これにより、細胞の培養を妨げる気泡が除去される。その次に、本発明によれば、好ましくは、方法ステップb)からd)、特にb)からf)が実行されることが企図される。
【0096】
更に、本発明によれば、好ましくは、方法ステップg)細胞培養培地を少なくとも一つの培地開口部に導入すること、方法ステップh)装置を回転させること、及び、方法ステップi)培養チャンバで細胞を供給するための少なくとも一つの培地チャンバで細胞培養培地を取得することが実行される。
【0097】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、特に細胞群を製造するための細胞の培養方法は、方法ステップg)回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された、リザーバの少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器へ細胞培養培地を導入すること、h)装置を回転させること、及び、i)培養チャンバで細胞を供給するための少なくとも一つの培地チャンバで細胞培養培地を取得することを含む。
【0098】
特にその際、圧力勾配の生成、外部若しくは統合ポンプ、又は装置の回転により、細胞培養培地を含む培地チャネル及び培地チャンバを通る連続的又は脈動的な貫流が可能になる。
【0099】
細胞の培養に使用される細胞培養培地は、好ましくは、使用される細胞種に適合され、例えば、線維芽細胞には10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMが使用される。場合によって、細胞培養培地は、細胞付着のための生体分子を含んでもよい。特に、ステップx)で、細胞培養培地がアクセス開口部にピペットで入れられ、容積は装置の幾何学的形状に応じて培養チャンバの容積に適合される。好ましくは、1~40μl、特に10~20μlの体積の細胞培養培地が、アクセス開口部に導入され、次いで、方法ステップy)において、回転により培養チャンバへ輸送される。
【0100】
方法ステップb)では、細胞、特に細胞培養培地又はヒドロゲルに存在する細胞がアクセス開口部に導入され、細胞濃度は、培養チャンバの容積及び所望の充填率、並びに使用する細胞タイプ及びより具体的な細胞の幾何学的形状に適合される。本発明によれば、好ましくは、103~108、特に104~107/10μlの細胞濃度を有する細胞培養培地又はヒドロゲル1~40μl、特に10~20μlがアクセス開口部に導入される。
【0101】
好ましい実施形態では、細胞培養培地、ヒドロゲル及び細胞は、ピペッティング、注入又は他の適切な方法により導入される。
【0102】
特に好ましい実施形態では、方法ステップe)の後、少なくとも一つの培地開口部を介して、少なくとも一つの培地チャンバと、ひいては少なくとも一つの培地チャンバに流体接続された少なくとも一つの培養チャンバにも培地を供給し、特に好ましい培養を実行することが企図できる。この方法ステップは、好ましくは、回転が終了した後に実行することができ、従って、特に好ましくは、本発明によって使用される装置の静止時に、培地の供給及び細胞の培養を実行することが企図される。更に、本発明によれば、培地の供給に回転を使用することで、細胞の培養、即ち本発明による方法のステップf)が回転して行われることも企図できる。
【0103】
本発明の好ましい一実施形態では、方法ステップe)の後に、少なくとも一つの培地開口部を介して、好ましくは、回転軸に対して、特に回転装置の回転軸に対して、又は中心回転軸を備えた装置の中心回転軸に対して近位に配置された、リザーバの少なくとも一つの別個の容器、好ましくは培地容器の少なくとも一つの培地流出口を介して、及びそれに流体接続された第二のキャリアプレートの少なくとも一つの培地開口部を介して、少なくとも一つの培地チャンバ、ひいては少なくとも一つの培地チャンバに流体接続された少なくとも一つの培養チャンバにも培地を供給し、特に好ましい培養を実行することが企図できる。この実施形態によれば、培地の供給に回転を使用することで、細胞の培養、即ち、本発明による方法のステップf)が回転して行われることが企図される。
【0104】
特に好ましい実施形態では、本発明によって使用される装置は、0~4000rpmの回転速度で、特に0.1~30分間、特に1500~2500rpmで、特に60~360秒間回転される。これらのパラメータは、特に培養チャンバ、培地チャンバ、チャネル、及び培地チャネルの充填に適用される。細胞を回転させながらの培養を企図する場合、即ち、回転を細胞への培地供給に使用する場合、好ましくは、0~1000rpm、特に0~100rpm、好ましくは10~50rpmの回転速度であることが企図される。
【0105】
本発明によれば、本発明によって使用される装置の少なくとも一つの培養チャンバ内で細胞を培養することにより細胞群が生成する。
【0106】
従って、本発明は、細胞を培養するための本発明による方法が実行され、細胞群が得られることを特徴とする、細胞群の、特に三次元細胞群の製造方法に関する。
【0107】
本発明は又、本発明によって使用するための装置の製造方法に関し、特に、そのような方法は、その枠内で、第一の方法ステップにおいて、キャリアプレートユニットを形成する少なくとも一つの材料、特にポリマー材料が提供され、これが、形状と安定性とを付与する方法、特にリソグラフィ法、好ましくはソフト又はUVリソグラフィ法において、本発明による装置を形成するように構成されている方法である。
【0108】
即ち、本発明によって使用される装置は、フォトリソグラフィ、ソフトリソグラフィ、選択的レーザー焼結、レーザー切断及びミリング、レーザーアブレーション、フォトポリマーを使用したインクジェット印刷、溶融コーティング(熱可塑性押出)、LOM(Laminated Object Manufacturing:積層物体製造)、ステレオリソグラフィ、ホットスタンピング(ホットエンボス、特にマイクロホットスタンピング)、ミリング(CNCミリング、特にマイクロミリング)、プラスチック射出成形(射出成形、特にマイクロ射出成形)及び/又は3D印刷を用いて製造されることが好ましい。これらの方法は、直接に装置の製造、又は、金型テンプレートの製造及びそれに続く装置の成形のいずれかのために使用することができる。
【0109】
特に、本発明は、本発明によって使用するための装置の製造方法にも関し、以下の方法ステップ
i)少なくとも一つのネガ型レジスト材料、少なくとも一つのシリコン基板、及びキャリアプレートユニットを形成する少なくとも一つの材料を提供すること、
ii)UVリソグラフィにより、シリコン基板上のネガ型レジスト材料から特に第一のキャリアプレートのキャリアプレートユニット用の金型テンプレートを製造すること、
iii)キャリアプレートユニットを形成する材料を金型テンプレートに流し込むこと、
iv)金型テンプレート内でキャリアプレートユニットを形成する材料を硬化させること、並びに、
v)キャリアプレートユニット、特に第一のキャリアプレートを取得すること
を含む。
【0110】
本発明は又、前述の装置の製造方法にも関し、更に方法ステップii)で、第二のキャリアプレート用の金型テンプレートを製造すること、更に方法ステップiii)で、キャリアプレートユニットを形成する材料で第二のキャリアプレート用の金型テンプレートに流し込むこと、更に方法ステップiv)で、キャリアプレートユニットを形成する材料を第二のキャリアプレート用の金型テンプレート内で硬化させること、及び、更に方法ステップv)で、第二のキャリアプレートを取得し、その後、第一のキャリアプレートと組み合わせることを含む。
【0111】
キャリアプレートユニットを形成する材料として、PDMSが特に好ましく使用され、ステップiii)で、リソグラフィで製造された型に流し込まれ、50~100℃、好ましくは60~80℃で0.5~12時間、好ましくは1~2時間硬化される。
【0112】
更なる好ましい一実施形態では、更に方法ステップi)で、少なくとも一つの分離装置、特に少なくとも一つの膜を提供すること、並びに、更に方法ステップv)で、第一のキャリアプレート、少なくとも一つの分離装置及び第二のキャリアプレートを組み合わせることが企図される。
【0113】
リソグラフィを使用して製造された膜(例えば1002F-50又はSU-8に基づく)を使用する場合、装置を組み合わせるために、N2プラズマを使用して第一のキャリアプレート、膜、及び第二のキャリアプレートを互いに接続する。他の膜材料の場合、O2プラズマを使用して接続することもできる。
【0114】
特に、組み合わせるために、まず膜の幾何学的形状に応じて、第一又は第二のキャリアプレートのいずれかがN2プラズマで活性化され、そのために、好ましくは、30~100W、30~120秒及び0.3~1.5mbarのパラメータが使用される。活性化されたキャリアプレートは、シリコン基板上にある膜上に位置合わせされ、重み付けされ、結合物はオーブン内で60~120℃で0.5-24時間硬化される。その次に、キャリアプレートと膜とから成る結合層が、H2O内でSi基板から外される。更なるキャリアプレートは、ここで、上記パラメータによってN2プラズマ内でアクティブ化され、フリー膜側に位置合わせされ、重み付けされ、上記パラメータで、オーブン内で結合物が硬化される。モータに取り付けるために、組み合わせられ硬化されたディスクの中央に、更に四つの貫通開口部が作製される。
【0115】
本発明の更なる有利な形態は、従属請求項から生じる。
【0116】
以下の実施例及び関連する図面を参照して、本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】中心回転軸(110)を備えた本発明によって使用されるキャリアプレートユニットを概略的に示す図である。
【
図2】第一のキャリアプレート(111)の構造を概略的に示す図である。
【
図3】第一のキャリアプレート(111)の詳細を示す図である。
【
図4】第一のキャリアプレート(111)の、重なって配置された培養チャンバ(140)と、第二のキャリアプレート(112)の培地チャンバ(170)とを示す図である。
【
図5】本発明によって使用される装置の断面図を示す図である。
【
図6】第一のキャリアプレート(111)の構造を概略的に示す図である。
【
図7】着色された培養チャンバ(140)及びチャネル(150)を備えた第一のキャリアプレート(111)を示す図である。
【
図8】培養チャンバの可能な幾何学的形状a)円形、b)長方形、及びc)バーベル型を示す図である。
【
図9】第二のキャリアプレート(112)の構造を概略的に示す図である。
【
図10】膜(135)の構造を概略的に示す図である。
【
図11】第一及び第二のキャリアプレート(111、112)と、その間にある膜(135)とを有する、本発明によって使用される装置を示す図である。
【
図12】培養チャンバ(140)を充填するために必要なステップを示す図である。
【
図13】細胞で充填された丸い培養チャンバ(140)を示す図である。
【
図14】細胞で充填されたバーベル型培養チャンバ(140)を示す図である。
【
図15】細胞で充填されたレーザーカット培養チャンバ(140)を示す図である。
【
図16】培養チャンバ(140)と角度αだけ傾斜したチャネル(150)を示す図である。
【
図17】回転により引き起こされる培養チャンバの充填を概略的に示す図である。
【
図18】細胞で充填された八つの培養チャンバ(140)を示す図である。
【
図19】本発明によって使用される中心回転軸を有する第一のキャリアプレート(111)の可能な構造を概略的に示す図である。
【
図20】中心回転軸を有する本発明によって使用される第一のキャリアプレート(111)の更なる可能な構造を概略的に示す図である。
【
図21】本発明によって使用される装置の一実施形態を概略的に示す図であり、アクセス開口部(130)は、充填チャンバ(190)として構成されている。
【
図22】マイクロタイター形式の中心回転軸を有する本発明によって使用される装置を概略的に示す図である。
【
図23】中心回転軸を有する本発明によって使用される装置の、細胞培養培地又は調査対象の活性物質用のリザーバ(200)の構造を示す図である。
【
図24】Aにおいて、本発明によって使用される装置の構造を示し、Bにおいて、培養チャンバへの培地供給を示す図である。
【
図25】Aにおいて、横側にアクセス開口部を有する本発明によって使用される装置を示す図である。Bにおいて、チャネル(150)の底部がガラス板によって形成されている本発明によって使用される装置を示す図である。
【
図26】Aにおいて、傾斜チャネル(150)及び培養チャンバ(140)を有する本発明によって使用される装置を示し、Bにおいて、回転装置(300)の回転軸の周りにおける回転前(上)及び最中(下)の、本発明によって使用される装置を示す図である。
【
図27】マイクロタイター形式の中心回転軸のない本発明によって使用される装置を示す図である。
【
図28】本発明によって使用される装置を、中心回転軸なしで、マイクロタイター形式で導入することができる回転装置(300)を示す図である。
【
図29】中心回転軸のない本発明によって使用される装置が、本発明による方法を実施するために、従来の実験用遠心分離機の遠心分離管に導入された一実施形態を示す図である。
【
図30】別個の(A)及び統合された(B)リザーバを介した培養チャンバへの培地供給を示す図である。
【
図31】回転速度に応じて実験的に決定及び計算された、本発明による装置における体積流量を示す図である。
【実施例】
【0118】
本発明によって使用される装置の製造
例示的な臓器ディスクの製造について以下に説明する。本発明によって使用されるディスク、即ちキャリアプレートユニットは、ポリジメチルシロキサン(PDMS、ダウコーニングからSylgard 184として入手)から製造される。個々のキャリアプレートは、ソフトリソグラフィによって製造され、フォトレジストSU-8からUVリソグラフィを使用して、シリコン基板(ウェハ)上に必要なチャネル高さの各キャリアプレートの金型テンプレートが最初に作製される。金型テンプレートは、記載のディスクに対して以下の特性を有する。
【0119】
例示的なディスクの第一のキャリアプレートは、ディスクの中心、即ち中心回転軸から4.5cmの半径方向距離に配置された直径2mmの45の培養チャンバを含む。
図6に、使用するキャリアプレートの設計を示す。キャリアプレートユニットの中央には、追加的に、ディスクをモータに取り付けるための四つの開口部が設けられている。チャンバは、高さ50μmのチャネルを通って12のアクセス開口部を介して充填される。アクセス開口部を培養チャンバに接続するチャネルの3分の1は、50μm、100μm、及び150μmのチャネル幅を有する。チャネル幅ごとに四種類の対称分岐:0分岐(チャンバに直接接続されたアクセス開口部)、1分岐(二つのチャンバに接続されたアクセス開口部)、2分岐(四つのチャンバに接続されたアクセス開口部)、3分岐(八つのチャンバに接続されたアクセス開口部)がある。アクセス開口部の直径及び貫通開口部の直径は3mmである。
【0120】
第二のキャリアプレートは、第一のキャリアプレートの培養チャンバに適合するように配置された培地チャンバを含む。各培地開口部に一つの培地チャネルがあり、これが培地開口部に接続された全ての培地チャンバに供給する。全ての培地チャネルは、幅80μm、高さ50μmである。各培地チャネルには二つの培地開口部があり、一つの培地開口部は培地流出口として機能し、第一のキャリアプレートのチャネルの外側にある。培地開口部の培地開口部直径は1mmである。
【0121】
PDMSは、最初に二成分ベース:反応剤が10:1の比率で混合され、真空下で、30分間乾燥器で脱気される。21gのPDMSをそれぞれ、リソグラフィで作製された第一及び第二のキャリアプレート用の金型テンプレートに注ぎ、60℃で14時間硬化させる。成形された構造で使用されるシリコン基板の直径は10cmである。シリコン基板に固定された追加のアクリルリングは、PDMSの流出を防ぎ、ディスクは最終ディスク直径9.5cmに成形される。ディスクの縁部領域のキャリアプレートの厚さの不規則性を避けるため、アクリルリングは上部までPDMSが充填され、これにより、第一及び第二のキャリアプレートの高さが3mmになる。
【0122】
二つのキャリアプレートが硬化した後、第一及び第二のキャリアプレートに予め形成された貫通孔が打ち抜かれる。第二のキャリアプレートでは更に、直径3mmのアクセス開口部と直径1mmの培地開口部とが打ち抜かれている。ここで両方のキャリアプレートをイソプロパノールで洗浄し、窒素で乾燥させる。キャリアプレートは、表面の不純物を除去するために粘着テープで更に覆われ、この粘着テープは再び剥がされる。
【0123】
エポキシフォトレジスト(1002F)に基づく膜が、図示の例に使用されている。膜は、ディスク全体に関しキャリアプレートサイズで製造される。完全なディスクに使用される膜の設計が
図10に示されている。ここで、ディスク膜は、細孔サイズが3μm(I)、3μm(II)、5μm(III)、3μm(IV)、及び、多孔度が12.7%(I)、5.6%(II)、5.6%(III)、3.2%(IV)の四つの象限に分類されている。透過性細孔は、この領域での拡散を確保するために、4.0~4.6cmの半径方向の距離を有する縁部領域のみで、即ち、培養チャンバと培地チャンバとの重複箇所で、六角形のグリッドに配置されている。更に、膜はアクセス開口部の箇所において透過性である。厚さ約10μmの膜は、製造後、クリーンルームで、リソグラフィによってシリコンウェーハ上に配置され、H
2Oで剥がすことができる。
【0124】
臓器ディスクを組み立てるために、個々の層は、N2プラズマを用いて互いにボンディング、即ち、互いに接続されている。このために、最初にN2プラズマで第一のキャリアプレートを活性化し、そのために、50W、90s、及び流量0.2Nl/hのパラメータが使用される。活性化されたキャリアプレートは、シリコン基板上に配置された膜上に位置合わせされ、重み付けされ、結合物は60℃で一晩、即ちオーブンで少なくとも14時間硬化させる。その次に、キャリアプレートと膜とから成る結合層をH2O(Milli-Q超純水)に入れる。約5分後、膜の下の石鹸層が溶解することにより、結合層をシリコン基板から取り外すことができる。ここで、第二のキャリアプレートも同様に上記パラメータでN2プラズマにおいて活性化され、フリー膜側に位置合わせされ、重み付けされ、結合物が上記パラメータにおいてオーブンで硬化する。このステップ後、ディスクは完成し、使用可能な状態になる。
【0125】
ディスクの使用
本実施例では、ディスクを使用して、培養チャンバ内の線維芽細胞を濃縮し、後でこれらを培養する。ディスクを使用するためには、最初にこれらをO2プラズマで活性化して、充填時にチャネルをより湿らせる。50W、60秒、及び0.2Nl/hのO2流量がパラメータとして使用される。
【0126】
線維芽細胞用の細胞培養培地(10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM)10μlをアクセス開口部にピペットで入れる。その次に、臓器ディスクを蓋で閉じ、貫通穴を介してモータにねじ留めする。
【0127】
ディスクを2000rpmで3分間回転させることにより、第一のキャリアプレートのチャネル及び培養チャンバに培地を充填する。
【0128】
その次に、ディスクをモータから再び取り外し、蓋を開けて、アクセス開口部内の残りの培地量をピペットで吸い取る。次のステップでは、細胞懸濁液をアクセス開口部にピペットで入れる。このために、実施例では105細胞/10μlの濃度の線維芽細胞の細胞懸濁液10μlが使用される。
【0129】
ディスクが再び閉鎖され、モータに取り付けられる。その後、ディスクを2000rpmで3分間回転させて、充填された細胞を培養チャンバに搬送する。これは、線維芽細胞の遠心分離に一般的である200gの加速度に相当する(回転速度ω=2000rpm、r2=0.045m:a=5*10-5*rpm2gにおけるチャンバの外縁に対するg)。
【0130】
この時、培養チャンバは線維芽細胞で充填されているため、モータからディスクを取り外して、静止時に使用できる。このために、外部ポンプを用いて、規定の培地流が培地開口部を介して提供される。
【0131】
細胞群の製造
本発明による方法を使用して細胞群を製造するために、回転によって生成される遠心力FCの方向に対して傾斜したチャネル(150)を備えた装置が使用され、その長さに沿って八つの培養チャンバ(140)が配置されている。
【0132】
チャネル(150)を通気するために、装置を最初に200gで2分間回転させた。その次に、80,000個の心筋細胞を含む懸濁液をアクセス開口部(130)に導入した。アクセス開口部(130)を閉じた後、装置を200gで10分間遠心分離し、それにより心筋細胞を培養チャンバ(140)に搬送した。
【0133】
図18は、装置の八つの培養チャンバ(140)における高密度の三次元細胞群の形成を示す。得られた細胞群を更に培養するために、培養チャンバ(140)内の細胞に、その次に、外部シリンジポンプにより50μl/hの流量で培地を供給した。
【0134】
回転によって搬送される体積流量の測定
回転によって搬送される体積流量は、捕捉された搬送体積の重量測定によって測定された。このために、異なる回転速度(rpm)での中心回転軸を有する本発明によって使用される装置における、培地チャネルを通った、一定の充填レベルを有するリザーバからの水の体積流量を決定した(表1)。
【0135】
【0136】
図31は、中心回転軸を有する本発明によって使用される装置において、重量測定により回転速度に応じて決定された水の体積流量が、理論的に計算された体積流量とほぼ一致することを示す。
【0137】
従って、試験は、中心回転軸を有する本発明によって使用される装置では、外部ポンプがなくても、中心回転軸の周りを回転することにより、液体、特に培地を、中心回転軸に対して近位に配置された少なくとも一つのアクセス開口部から、チャネルを介して、中心回転軸に対して遠位に配置された少なくとも一つの培養チャンバへ搬送可能であることを示す。
【0138】
図の説明
図1は、ディスクの形態の、本発明によって使用されるキャリアプレートユニット(110)を示す。キャリアプレートユニット(110)は、中心回転軸(120)と、これを囲む中心領域(121)とを有する。アクセス開口部(130)は、中心回転軸(120)に対して近位に配置され、チャネル(150)を介して培養チャンバ(140)に接続されている。
【0139】
図2は、中心回転軸(120)と、これに対して距離r
1で近位に配置されたアクセス開口部(130)と、中心回転軸(120)に対して距離r
2で遠位に配置された培養チャンバ(140)と、を備えた第一のキャリアプレート(111)を示し、アクセス開口部(130)を培養チャンバ(140)に接続するチャネル(150)は分岐チャネルである。
【0140】
図3は、第一のキャリアプレート(111)の中心回転軸(120)、並びに、中心回転軸(120)に対して距離r
1で近位に配置されたアクセス開口部(130)、距離r
2で遠位に配置された培養チャンバ(140)、及びアクセス開口部(130)と培養チャンバ(140)とを接続する分岐チャネル(150)の詳細を示す。角速度ωでキャリアプレートを回転させることにより培養チャンバ(140)に細胞が充填される。
【0141】
図4は、第二のキャリアプレートの二つの培地チャンバ(170)と重なるように配置され、膜によって分離された、第一のキャリアプレートの二つの培養チャンバ(140)を示す。チャネル(150)は(図示しない)アクセス開口部を第一のキャリアプレートの培養チャンバ(140)に接続し、培地チャネル(180)は(図示しない)培地開口部を第二のキャリアプレートの第一の培地チャンバ(170)及び第二の培地チャンバ(170)に接続する。第一のキャリアプレートの培養チャンバ(140)及びチャネル(150)は破線で示されている。
【0142】
図5は、第一のキャリアプレート(111)と、第一のキャリアプレート(111)の上に配置された第二のキャリアプレート(112)とから成る、本発明によって使用されるキャリアプレートユニット(110)の断面を示す。第一のキャリアプレート(111)と第二のキャリアプレート(112)との間に、分離装置、特に膜(135)が配置されている。これは、第一のキャリアプレート(111)の培養チャンバ(140)を第二のキャリアプレート(112)の培地チャンバ(170)から分離する。
【0143】
図6は、チャネル(150)を介して一つ以上の培養チャンバ(140)に接続されているアクセス開口部(130)と、装置を外部回転装置に接続するための貫通開口部(125)とを有する第一のキャリアプレート(111)の概略構造を示す。
【0144】
図7は、第一のキャリアプレート(111)の構造を示し、アクセス開口部(130)、チャネル(150)、及び培養チャンバ(140)は、強調するためにインクで着色されている。貫通開口部(125)は着色されていない。キャリアプレートは、構造化されていないPDMS層で密封されている。
【0145】
図8は、培養チャンバの可能な幾何学形状の概略図を示す。a)は単一の円形状培養チャンバ(140)を示し、b)は三つの長方形培養チャンバ(140)を示し、c)は心筋細胞用に特別に構成された三つのバーベル型培養チャンバ(140)を示す。
【0146】
図9は、中央領域(121)に配置された接続装置、特に貫通開口部(125)、培地開口部(160)、培地チャンバ(170)、及び培地開口部(160)を培地チャンバ(170)に接続するチャネル(180)、を有する第二のキャリアプレート(112)の概略図を示す。ここで、二つの培地開口部(160)は、一つの培地チャンバ(170)又は複数の培地チャンバ(170)にそれぞれ接続され、これらはその後直列に接続されている。
【0147】
図10は、第一のキャリアプレート(111)と第二のキャリアプレートとの間に配置された分離装置(135)の概略構造を示す。黒い点は六角形のグリッドに配置されている透過性の細孔を表している。細孔の異なる密度は、分離装置(135)、特に膜の異なる多孔度の領域を表す。
【0148】
図11は、第一のキャリアプレート(111)、膜(135)及び第二のキャリアプレート(112)から成る、本発明によって使用される装置を示す。中央領域(121)に、装置は四つの接続装置、特に装置を外部モータに取り付けるための貫通開口部(125)を有する。これに近位して、より大きなアクセス開口部(130)及びより小さな培地開口部(160)があるのが分かり、かつ第一のキャリアプレート(111)のチャネル(150)、及び第二のキャリアプレート(112)の培地チャネル(180)、並びに、重複して配置された培養チャンバ(140)、及び培地チャンバ(170)が分かる。
【0149】
図12は、培養チャンバ(140)を充填するために必要なステップ:a)細胞培地をアクセス開口部(130)にピペットで入れること、b)全てのチャネル(150)と培養チャンバ(140)とが培地で充填され、気泡が除去されるように、装置をt
1の時間回転(ω
1)させること、c)細胞懸濁液をアクセス開口部(130)にピペットで入れること、及び、d)全ての細胞が培養チャンバ(140)に搬送され、そこで好ましくは高密度で存在するように、t
2の時間新たに回転(ω
2)させること、を示す。
【0150】
図13は、細胞(線維芽細胞)で充填された第一のキャリアプレート(111)の丸い培養チャンバ(140)を示す。細胞は、キャリアプレートの回転により培養チャンバ(140)に搬送され、そこで蓄積された。
【0151】
図14は、細胞(線維芽細胞)で充填された第一のキャリアプレートのバーベル型培養チャンバ(140)を示す。
【0152】
図15は、細胞(線維芽細胞)で充填された第一のキャリアプレートのレーザー切断培養チャンバ(140)を示す。
【0153】
図16は、チャネル(150)に沿って配置された培養チャンバ(140)を示す。その際チャネル(150)は、回転によって生成される遠心力F
cの方向に対して規定の角度αだけ傾斜している。
【0154】
図17は、角度αだけ傾斜したチャネル(150)に沿って被駆動力F
IIと、角度αだけ傾斜したチャネル(150)の周囲にあるチャネル壁に垂直に作用する押圧力F
⊥とに分解可能である遠心力F
Cによって、培養チャンバ(140)を充填することを概略的に示す。
【0155】
図18は、チャネル(150)に沿って配置された装置の八つの培養チャンバ(140)において本発明による方法によって得られた三次元細胞群(心筋細胞)を示す。
【0156】
図19は、本発明によって使用される装置の一実施形態を示し、そこでは第一のキャリアプレート(111)上で、中心回転軸の周りに配置された複数のアクセス開口部(130)は、それぞれ傾斜したチャネル(150)を介してチャネル(150)に沿って配置された培養チャンバ(140)に接続されている。
【0157】
図20は、本発明によって使用される装置の一実施形態を示し、そこでは第一のキャリアプレート(111)上で、中心回転軸の周りに配置された複数のアクセス開口部(130)は、それぞれ湾曲したチャネル(150)を介してチャネル(150)に沿って配置された培養チャンバ(140)に接続されている。細胞は、遠心力F
Cによって培養チャンバ(140)に搬送される。
【0158】
図21は、本発明によって使用される装置の一実施形態を示し、そこでは少なくとも一つのアクセス開口部(130)は、二つのアクセス開口部(131、132)を含む充填チャンバ(190)として構成されている。
【0159】
図22は、中心回転軸を含む装置が、マイクロタイタープレート形式で細胞を培養するために構成されている一実施形態を示す。チャネル(150)、培地チャネル(180)、及び膜(135)が示されている。
【0160】
図23は、本発明によって使用される装置の一実施形態を示し、そこではキャリアプレートユニット(110)は、液体用、特に細胞培養培地又は調査対象の活性物質用のリザーバ(200)を更に含み、リザーバ(200)は第二のキャリアプレート(112)の上に配置され、キャリアプレートユニットの中心にある回転軸に対して近位に配置された、培地流出口(165)を有する別個の容器(205)と、キャリアプレートユニットの中心にある回転軸に対して遠位に配置された、培地流入口(166)を有する別個の容器(206)と、を含み、培地流出口(165)はそれぞれ、その下に位置する第二のキャリアプレート(112)の培地開口部(160)及び培地チャネル(180)を介して、培地流入口(166)と流体接続している。
【0161】
図24は、Aにおいて、二つのそれぞれ分岐のチャネル(150)及び培養チャンバ(140)を有する中心回転軸のない本発明によって使用される装置の構造を示し、Bにおいて、培地開口部(160)、培地チャンバ(170)及び培地開口部(160)を培地チャンバ(170)に接続するチャネル(180)を有する培養チャンバ(140)の培地供給を示す。
【0162】
図25は、Aにおいて、横側にアクセス開口部(130)を備えた本発明によって使用される装置を示し、Bにおいて、チャネル(150)の底部がガラス板によって形成されている本発明によって使用される装置を示す。
【0163】
図26は、Aにおいて、アクセス開口部(130)、傾斜したチャネル(150)、及びチャネル(150)に直接隣接する培養チャンバ(140)を備えた本発明によって使用される装置を示し、Bにおいて、回転装置(300)の回転軸の周りにおける回転前(上)及び最中(下)の、本発明によって使用される装置を示す。
【0164】
図27は、アクセス開口部(130)、傾斜したチャネル(150)、及びチャネル(150)に直接隣接する培養チャンバ(140)を備えたマイクロタイター形式の中心回転軸のない本発明によって使用される装置を示す。
【0165】
図28は、本発明によって使用される装置を、中心回転軸なしで、マイクロタイター形式で導入することができる回転装置(300)を示す。
【0166】
図29は、中心回転軸のない本発明によって使用される装置が、本発明による方法を実施するために、従来の実験用遠心分離機の遠心分離管に導入された一実施形態を示す。
【0167】
図30は、回転装置(300)の回転軸に対して近位に配置された、培地流出口(165)を有する別個の容器(205)、及び回転装置(300)の回転軸に対して遠位に配置された、培地流入口(166)を有する別個の容器(206)を備えた、別個の(A)及び統合(B)リザーバ(200)を介した、本発明によって使用される装置の回転装置(300)上での培養チャンバの培地供給を示す。
【0168】
図31は、計算上決定された値(理論値)と比較した回転速度(実験値)に応じて、本発明による装置における重量測定によって実験的に決定された体積流量を示す。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
a)細胞を提供すること、及び、少なくとも一つのアクセス開口部(130)と、少なくとも一つの培養チャンバ(140)と、前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)を前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)に接続する少なくとも一つのチャネル(150)と、を有するキャリアプレートユニット(110)を含む、細胞を培養するための装置を提供すること、
b)前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)を通して前記細胞を前記装置に導入すること、
c)前記装置の回転を可能にする回転装置(300)に前記装置を導入すること、
d)前記装置を回転させること、
e)前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)で細胞を取得すること、並びに、
f)前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)で前記細胞を培養すること、
を含む細胞群の製造方法であって、
前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)で前記細胞を培養することによって、細胞群、特に三次元細胞群を生成する、方法。
(実施形態2)
前記装置は中心回転軸(120)を有し、前記アクセス開口部(130)は前記回転軸(120)に対して近位に、前記培養チャンバ(140)は前記回転軸(120)に対して遠位に配置されている、実施形態1に記載の方法。
(実施形態3)
前記キャリアプレートユニット(110)は、少なくとも一つの接続装置、特に少なくとも一つの貫通開口部、又は少なくとも一つの係止装置(125)を備えた、回転装置(300)のための中央領域(121)を有する、実施形態1又は2に記載の方法。
(実施形態4)
前記装置は、好ましくは周辺に配置された、回転装置(300)のための少なくとも一つのロック装置を有する、実施形態1から3のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態5)
前記少なくとも一つのチャネル(150)は、分岐又は非分岐チャネルである、実施形態1から4のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態6)
前記少なくとも一つのチャネル(150)は、前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)を少なくとも二つの培養チャンバ(140)に接続する、実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態7)
前記チャネル(150)は、その長さの少なくとも一部にわたって、前記チャネル(150)に直接隣接する少なくとも二つの培養チャンバ(140)を有する、実施形態1から6のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態8)
前記チャネル(150)は、その長さの少なくとも一部にわたって湾曲している、実施形態1から7のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態9)
前記チャネル(150)は、静的湾曲又は角度依存性の湾曲を有する、実施形態8に記載の方法。
(実施形態10)
前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)は、少なくとも二つのアクセス開口部(131, 132)を有する充填チャンバ(190)として構成されている、実施形態1から9のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態11)
前記キャリアプレートユニット(110)は、少なくとも一つの第一のキャリアプレート(111)と、その上又はその下に配置された第二のキャリアプレート(112)とを含む、実施形態1から10のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態12)
前記第一のキャリアプレート(111)は、前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)と、前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)と、前記少なくとも一つのアクセス開口部(130)と前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)とを接続する前記少なくとも一つのチャネル(150)とを有する、実施形態1から11のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態13)
前記第二のキャリアプレート(112)は、少なくとも一つの培地開口部(160)と、少なくとも一つの培地チャンバ(170)と、前記少なくとも一つの培地開口部(160)を前記少なくとも一つの培地チャンバ(170)に接続する少なくとも一つの培地チャネル(180)とを有する、実施形態1から12のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態14)
前記少なくとも一つの培地チャネル(180)は、少なくとも二つの培地開口部(160)を、少なくとも一つ、好ましくは二つの培地チャンバ(170)に接続する、実施形態1から13のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態15)
前記第一のキャリアプレート(111)と前記第二のキャリアプレート(112)との間に、少なくとも一つの分離装置(135)、特に少なくとも一つの膜、が配置されている、実施形態1から14のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態16)
前記第一のキャリアプレート(111)の前記少なくとも一つの培養チャンバ(140)と、前記第二のキャリアプレート(112)の前記少なくとも一つの培地チャンバとが重複して構成され、流体接続している、実施形態1から15のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態17)
前記キャリアプレートユニット(110)は、更に、液体用、特に細胞培養培地又は調査対象の活性物質用のリザーバを含む、実施形態11から16のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態18)
前記キャリアプレートユニット(110)は円板の形状を有する、実施形態1から17のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態19)
前記キャリアプレートユニット(110)は、マイクロタイタープレートとして構成されている、実施形態1から17のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態20)
前記キャリアプレートユニット(110)は、ガラス又はポリマー材料から構成されている、実施形態1から19のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態21)
前記キャリアプレートユニット(110)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又はシクロオレフィン共重合体(COC)から構成されている、実施形態1から20のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態22)
更に、方法ステップ
g)細胞培養培地を、前記少なくとも一つの培地開口部(160)に導入すること、
h)実施形態13から21のいずれか一項に記載の前記装置を、回転させること、及び、
i)前記培養チャンバ(140)において前記細胞を供給するための前記少なくとも一つの培地チャンバ(170)で細胞培養培地を取得すること
が実行される、実施形態13から21のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態23)
圧力勾配の生成、外部若しくは統合ポンプ、又は前記装置の回転により、細胞培養培地を含む前記培地チャネル(180)及び前記培地チャンバ(170)を通る連続的又は脈動的な貫流が可能になる、実施形態13から22のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態24)
実施形態1から23のいずれか一項に記載の方法によって製造される細胞培養物、特に細胞群。