(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】最適化を用いたイオンビーム治療のための可変サイズのスポットの分布の決定
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 H
(21)【出願番号】P 2019570853
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2018067058
(87)【国際公開番号】W WO2019002261
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516027694
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ,エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】イングウォール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】グリメリウス,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ジャンソン,マーティン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-212253(JP,A)
【文献】特開2010-279702(JP,A)
【文献】特開2004-358237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0006778(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的体積(3)内にスポットを提供するためのイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポッ
トの分布を含む治療計画を決定するための方法であって、
各スポットは、特定の横方向位置における特定のエネルギーおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表し、前記方法は、治療計画システム(1)において行われ、かつ
前記治療計画において使用されるエネルギー層を選択する工程(40)と、
使用する
1つより多くのスポットサイ
ズを選択する工程(42)と、
各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成し、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集める工程(44)と、
前記スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた
スポット重量を繰り返し変え、かつ前記
スポット重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、
性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化する工程(46)であって、前記性能測定値は、複数の評価基準を組み合わせることによって計算され、前記複数の評価基準は、総治療時間が減少した場合に前記性能測定値を高める第1の基準と
、治療体積における所望の線量分布が達成された場合に前記性能測定値を高める第2の基準とを含
む工程(46)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記最適化する工程は、スポット濾過を行って閾値未満の
スポット重量を有するスポットを除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スポットを最適化する工程の後に、
前記エネルギー層のそれぞれのコピーの異なるサイズのスポットによって覆われている単一のエネルギー層の任意の多重スポットサイズ領域を見つける工程(48)と、
各多重スポットサイズ領域においてどの単一のスポットサイズを維持するかを選択し、かつ前記多重スポットサイズ領域における他のスポットサイズのスポットを除去する工程(50)と、
前記スポットを最適化する工程(46)に戻る工程と、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
どのスポットサイズを維持するかを選択する工程(50)の後に、
各多重スポットサイズ領域において前記維持するスポットサイズが前記多重スポットサイズ領域において最も大きいスポットサイズでない場合に前記維持するスポットサイズのスポットを追加して被覆範囲を高める工程(52)
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記どのスポットサイズを維持するかを選択する工程(50)は、ユーザパラメータに従ってスポットサイズを維持することを決定する工程を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の基準は、前記標的体積(3)の外側の半影が減少した場合に前記性能測定値を高める
、請求項
1乃至5のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項7】
標的体積(3)内にスポットを提供するためのイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポッ
トの分布を含む治療計画を決定するための治療計画システム(1)であって、
各スポットは、特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表し、前記治療計画システム(1)は、
プロセッサ(60)と、
前記プロセッサによって実行された場合に前記治療計画システム(1)に、
前記治療計画において使用されるエネルギー層を選択
することと、
使用する
1つより多くのスポットサイ
ズを決定
することと、
各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成させ、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集め
ることと、
前記スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた
スポット重量を繰り返し変え、かつ前記
スポット重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、
性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化することであって、前記性能測定値は、複数の評価基準を組み合わせることによって計算され、前記複数の評価基準は、総治療時間が減少した場合に前記性能測定値を高める第1の基準と
、治療体積における所望の線量分布が達成された場合に前記性能測定値を高める第2の基準とを含む
ことと、
を行わせる命令(67)を格納するメモリ(64)と、
を備える、治療計画システム(1)。
【請求項8】
前記プロセッサによって実行された場合に前記治療計画システム(1)に、
前記エネルギー層のそれぞれのコピーの異なるサイズのスポットによって覆われている単一のエネルギー層の任意の多重スポットサイズ領域を見つけさせ、
各多重スポットサイズ領域においてどの単一のスポットサイズを維持するかを決定させ、かつ前記多重スポットサイズ領域における他のスポットサイズのスポットを除去させ、かつ
前記スポットを最適化させる命令に戻らせる
命令(67)をさらに含む、請求項7に記載の治療計画システム(1)。
【請求項9】
前記プロセッサによって実行された場合に前記治療計画システム(1)に、
各多重スポットサイズ領域において前記維持するスポットサイズが前記多重スポットサイズ領域において最も大きいスポットサイズでない場合に前記維持するスポットサイズのスポットを追加して被覆範囲を高める
命令(67)をさらに含む、請求項8に記載の治療計画システム(1)。
【請求項10】
どのスポットサイズを維持するかを決定する命令は、前記プロセッサによって実行された場合に前記治療計画システム(1)にユーザパラメータに従ってスポットサイズを維持することを決定させる命令(67)を含む、請求項8または9に記載の治療計画システム(1)。
【請求項11】
前記第2の基準は、前記標的体積(3)の外側の半影が減少した場合に前記性能測定値を高める、請求項7乃至10のいずれか
一項に記載の治療計画システム(1)。
【請求項12】
標的体積(3)内にスポットを提供するためのイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポッ
トの分布を含む治療計画を決定するための治療計画システム(1)であって、
各スポットは、特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表し、前記治療計画システム(1)は、
前記治療計画に使用されるエネルギー層を選択するための手段と、
使用する
1つより多くのスポットサイ
ズを決定するための手段と、
各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成し、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集めるための手段と、
前記スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた
スポット重量を繰り返し変え、かつ前記
スポット重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、
性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化するための手段であって、前記性能測定値は、複数の評価基準を組み合わせることによって計算され、前記複数の評価基準は、総治療時間が減少した場合に前記性能測定値を高める第1の基準と
、治療体積における所望の線量分布が達成された場合に前記性能測定値を高める第2の基準とを含
む手段と、
を備える、治療計画システム(1)。
【請求項13】
標的体積(3)内にスポットを提供するためのイオンビーム治療と共に使用するためのスポッ
トの分布を含む治療計画を選択するためのコンピュータプログラム(67、91)であって、
各スポットは、特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表し、前記コンピュータプログラムは、治療計画システム(1)で実行された場合に前記治療計画システム(1)に、
前記治療計画において使用されるエネルギー層を選択
することと、
使用する
1つより多くのスポットサイ
ズを決定
することと、
各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成させ、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集め
ることと、かつ
前記スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた
スポット重量を繰り返し変え、かつ前記
スポット重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、
性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化するための手段であって、前記性能測定値は、複数の評価基準を組み合わせることによって計算され、前記複数の評価基準は、総治療時間が減少した場合に前記性能測定値を高める第1の基準と
、治療体積における所望の線量分布が達成された場合に前記性能測定値を高める第2の基準とを含む
ことと、
を行わせるコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムおよび前記コンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読手段を含むコンピュータプログラム製品(64、90)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポットの分布のための方法、治療計画システム、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビーム治療では、イオン(例えばプロトンまたはより重いイオン)のビームが標的体積に向かって方向づけられる。標的体積は例えば癌腫瘍を表すことができる。それらの粒子は組織を透過し、細胞死を誘導するためのエネルギーの線量を送達する。イオンビーム治療の利点は、ブラッグピークとして知られている線量分布における顕著なピークが存在することである。ブラッグピークは特定の深さで生じる線量送達のピークであり、その後に線量送達は急激に減少する。これは、最大線量が常に浅い深さで生じ、かつ遠位での線量減少をイオン治療の場合と同じ急激な減少により制御することができない電子線治療またはX線治療と比較することができる。
【0003】
患者におけるブラッグピークの深さは粒子の運動エネルギーを調整することによって制御することができる。横方向位置は、その焦点ビームを偏向させるための電磁石を用いて制御することができる。これにより、患者の体内の良好に制御された位置への非常に局所化された線量の送達が可能になる。運動エネルギーとビームの横方向への偏向との特定の組み合わせにより送達される線量はスポットと呼ばれる。スポットに送達される粒子の数は一般にスポット重量と呼ばれる。三次元空間内の多くの異なる位置にスポットを提供することによって標的体積を所望の線量分布で覆うことができる。スポットの運動エネルギーは多くの場合、必ずしもではないが、多くの離散的エネルギーのために分布される。同じ運動エネルギーを有するが異なる横方向への偏向を有するスポットのグループはエネルギー層と呼ばれることが多い。この手順はペンシルビームスキャニングとしても知られているアクティブスキャニングイオンビーム治療と呼ばれる。
【0004】
どのようにスポットを送達すべきかという計画は治療計画システムにおいて行われる。治療計画システムは、使用されるエネルギー層ならびにその中のスポットの分布および重量を決定するが、治療計画システムはイオンビームを送達しない。これは、治療計画システムに公知の方法で接続されているイオンビームシステムによって行われる。患者における所与の設定および所与の位置のためのスポットのサイズはイオンビームシステムによって指示される。スポットサイズは特定のエネルギーに対して固定されていることが多いが、いくつかのイオンビームシステムは同じエネルギー層における横方向のスポットサイズの制御を可能にする。エネルギー層のために特定のスポットサイズを得るための機械設定はスポットサイズ設定と呼ぶことができる。
【0005】
標的体積および周囲の健康な組織に関するスポットの分布を決定するのは複雑な作業である。スポットサイズの調整を可能にすることで、この作業はさらにより複雑なものになる。
【発明の概要】
【0006】
スポットのサイズを調整することができる場合にスポットを標的体積の中および周囲に分布させる方法を改善することを目的とする。
【0007】
第1の態様によれば、標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポット(各スポットは特定の横方向位置における特定のエネルギーおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す)の分布を含む治療計画を決定するための方法が提供される。本方法は治療計画システムにおいて行われ、かつ、治療計画に使用されるエネルギー層を選択する工程と、使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定する工程と、各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成し、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集める工程と、当該スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む複数の評価基準を組み合わせることによって計算される性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化する工程とを含む。
【0008】
最適化する工程は、スポット濾過を行って閾値未満の重量を有するスポットを除去することを含んでもよい。
【0009】
本方法はスポットを最適化する工程の後に、エネルギー層のそれぞれのコピーの異なるサイズのスポットによって覆われている単一のエネルギー層の任意の多重スポットサイズ領域を見つける工程と、各多重スポットサイズ領域においてどの単一のスポットサイズを維持するかを決定し、かつ多重スポットサイズ領域における他のスポットサイズのスポットを除去する工程と、スポットを最適化する工程に戻る工程とをさらに含んでもよい。
【0010】
本方法はどのスポットサイズを維持するかを決定する工程の後に、各多重スポットサイズ領域において維持するスポットサイズが多重スポットサイズ領域において最も大きいスポットサイズでない場合に維持するスポットサイズのスポットを追加して被覆範囲を高める工程をさらに含んでもよい。
【0011】
どのスポットサイズを維持するかを決定する工程は、ユーザパラメータに従ってスポットサイズを維持することを決定することを含んでもよい。
【0012】
第2の基準は、標的体積の外側の半影が減少した場合に性能測定値を高めてもよい。
【0013】
第2の態様によれば、標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポット(各スポットは特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す)の分布を含む治療計画を決定するための治療計画システムが提供される。本治療計画システムは、プロセッサと、プロセッサによって実行された場合に本治療計画システムに、治療計画において使用されるエネルギー層を選択させ、使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定させ、各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成させ、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集めさせ、かつ当該スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む複数の評価基準を組み合わせることによって計算される性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化させる命令を格納するメモリとを備える。
【0014】
本治療計画システムは、プロセッサによって実行された場合に本治療計画システムに、エネルギー層のそれぞれのコピーの異なるサイズのスポットによって覆われている単一のエネルギー層の任意の多重スポットサイズ領域を見つけさせ、各多重スポットサイズ領域においてどの単一のスポットサイズを維持するかを決定させ、かつ多重スポットサイズ領域における他のスポットサイズのスポットを除去させ、かつスポットを最適化するための命令に戻らせる命令をさらに含んでいてもよい。
【0015】
本治療計画システムは、プロセッサによって実行された場合に本治療計画システムに、各多重スポットサイズ領域において維持するスポットサイズが多重スポットサイズ領域において最も大きいスポットサイズでない場合に維持するスポットサイズのスポットを追加させて被覆範囲を高めさせる命令をさらに含んでいてもよい。
【0016】
どのスポットサイズを維持するかを決定するための命令は、プロセッサによって実行された場合に本治療計画システムに、ユーザパラメータに従ってスポットサイズを維持することを決定させる命令を含んでもよい。
【0017】
第2の基準は、標的体積の外側の半影が減少した場合に性能測定値を高めてもよい。
【0018】
第3の態様によれば、標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポット(各スポットは特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す)の分布を含む治療計画を決定するための治療計画システムが提供される。本治療計画システムは、治療計画に使用されるエネルギー層を選択するための手段と、使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定するための手段と、各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成し、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集めるための手段と、当該スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む複数の評価基準を組み合わせることによって計算される性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化するための手段とを備える。
【0019】
第4の態様によれば、標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するためのスポット(各スポットは特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す)の分布を含む治療計画を決定するためのコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、治療計画システムで実行された場合に本治療計画システムに、治療計画において使用されるエネルギー層を選択させ、使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定させ、各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成させ、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集めさせ、当該スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む複数の評価基準を組み合わせることによって計算される性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化させるコンピュータプログラムコードを含む。
【0020】
第5の態様によれば、第4の態様に係るコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読手段を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0021】
一般に、特許請求の範囲で使用されている全ての用語は、本明細書において特に明示的に定義されていない限り当該技術分野でのそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「一/一つの/その要素、装置、成分、手段、工程など」への全ての言及は、特に明示的に記載されていない限り、当該要素、装置、成分、手段、工程などの少なくとも1つの例に公に言及しているものとして解釈されるべきである。本明細書に開示されている任意の方法の工程は、明示的に記載されていない限り、開示されている正確な順序で行われる必要はない。
【0022】
次に、添付の図面を参照しながら本発明を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本明細書に示されている実施形態を適用することができる環境を示す概略図である。
【
図2】
図1の標的体積におけるエネルギー層のブラッグピーク深さを示す概略図である。
【
図3A】最適化戦略に使用するためのエネルギー層のコピーを示す概略図である。
【
図3B】最適化戦略に使用するためのエネルギー層のコピーを示す概略図である。
【
図4】最適化が実行された後に得られたエネルギー層を示す概略図である。
【
図5】
図1の治療計画システムにおいて行われる、スポットの分布を決定するための方法の実施形態を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る
図1の治療計画システムの構成要素を示す概略図である。
【
図7】コンピュータ可読手段を含むコンピュータプログラム製品の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照しながら本発明をより完全に説明する。但し、本発明は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載されている実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、それどころかこれらの実施形態は、本開示を徹底的かつ完全なものとし、かつ本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために例として提供されている。同様の番号は本明細書を通して同様の要素を指す。
【0025】
本明細書に示されている実施形態によれば、イオンビーム治療を用いる可変サイズのスポットの分布を決定する。これは、各層のために各スポットサイズのための層の1つのコピーを作り出し、その後に最適化を行うことによって達成される。最適化のための基準は、短い治療時間および所望の線量分布の両方が好ましくなるように設定される。次いで最適化により、各エネルギー層の異なる位置に適当なサイズのスポットを生じさせる。
【0026】
図1は、本明細書に示されている実施形態を適用することができる環境を示す概略図である。治療計画システム1は、イオンビーム治療のためのスポットの分布を決定する。これは、スポット分布データセット12としてイオンビームシステム2に伝達される。スポット分布データセットに基づいて、イオンビームシステム2は患者の標的体積3にスポットを提供するためのイオンビーム7を生成する。標的体積3は縁部4によって区切られている。
【0027】
座標系において、
図1では深さはz軸に沿って表されており、y軸は上向きである。従って、
図1の表示は側面図であるとみなすことができる。深さ方向のスポットの位置、すなわちz軸に沿った位置はイオンのエネルギーによって制御され、すなわちより高いエネルギーによりスポットのより深い位置が得られる。さらに、y軸およびx軸(
図1には図示せず)に沿った横方向位置は、ビーム7を偏向させるための電磁石を用いて制御される。このように、スポットを提供して標的体積3を三次元で覆う線量分布を達成することができる。
【0028】
図2は
図1の標的体積3のエネルギー層を示す概略図である。
図2は
図1の表示と同じ視点からの側面図である。上で説明したように、ブラッグピークの深さ(z方向)はエネルギーレベルによって決まる。ここでは、標的体積3において17a~fで示されている6種類のエネルギーレベルが存在する。これらのエネルギーレベルは、異なる横方向位置にあるが同じエネルギーのイオンのブラッグピークが生じる場所を示す。例えば、第1のエネルギーレベル17aは、
図1のシステムにおけるイオンビーム治療を用いて第1の量のエネルギーのイオンが供給された場合にブラッグピークが生じる場所を示す。第2のエネルギーレベル17bは、第2の量のエネルギーのイオンが供給された場合にブラッグピークが生じる場所を示す(後略)。イオンビームが通過する組織の幾何学的形状、密度および物質組成が深さに影響を与えることに留意されたい。例えば、当該ビームが骨を通過する場合、これにより当該ビームが筋肉組織を通過する場合とは異なる深さのブラッグピークが生じる。従って、各エネルギーレベル17a~fは特定の深さの直線である必要はない。
【0029】
図3A~
図3Bは最適化戦略に使用するためのエネルギー層のコピーを示す概略図である。エネルギー層(例えば、
図2のエネルギー層17a~fのうちの1つ)はx-y平面に沿って示されている。エネルギー層は患者において完全に平らである必要はないが、エネルギー層はここでは、患者が存在していない場合に見えるであろうように扁平な層として示されている。治療計画システム1は各エネルギー層の任意の点のz位置を推定することができるため、任意のスポットを扁平な二次元空間におけるエネルギー層上での位置と三次元空間における位置との間で変換することができる。
【0030】
本明細書に示されている実施形態によれば、最適化を使用して各エネルギー層において異なるサイズのスポットの好適な分布が得られる。以下により詳細に説明されているように、最適化は各エネルギー層のコピーに基づいており、ここでは各コピーは異なるスポットサイズから構成されている。この例では、
図3Aは、より小さいスポット14aを有するエネルギー層のコピーを示す。
図3Bは、
図3Aと同じエネルギー層のコピーを示すが、ここではより大きいスポット14bが集められている。
図3A~
図3Bにおいて「より大きい」および「より小さい」とは、ここでは2つのスポットサイズ14a~bの間で相互に相対的な用語である。より多くのスポットサイズが使用されている場合、各スポットサイズのためにエネルギー層の1つのコピーが存在するように、エネルギー層のより多くのコピーが存在する。
【0031】
図3A~
図3Bは1つのエネルギー層のコピーのみを開示しているが、標的体積のために使用される各エネルギー層のために対応するコピーが存在する。さらに、患者における実際のスポットサイズはイオンビームが通過する組織によって決まり、この際一般により大きいビームは高密度物質では拡散される。
【0032】
実際のスポットサイズもエネルギーレベルによって決まり、すなわち、通常は同じスポットサイズ設定では、エネルギーが増加するにつれてビームの拡散は減少することに留意されたい。
【0033】
図4は、最適化が実行された後に得られたエネルギー層を示す概略図である。
図4は、
図3A~
図3Bのために使用された同じエネルギー層のスポットを示す。
【0034】
図4では、最適化により標的体積3の縁部4に沿ってより小さいスポット14aが得られているが、より小さいスポット14aの内側の中央領域にある標的体積の内側領域にはより大きいスポット14bが得られている。
【0035】
最適化された結果は、各エネルギーレベル内の様々なスポットサイズの有利な条件を利用していくつかの有利な効果を達成する。小さいスポットサイズにより、より小さい横方向ビーム半影(すなわち、標的体積の外側の横方向線量の減少)が得られる。但し、多くの小さいスポットは治療時間を長引かせる。故に、より大きいスポットがビーム半影に与える影響の程度はより小さいため、これらのスポットを標的体積の中央領域に使用することができる。より大きいスポットにより、より短い治療時間およびロバスト性の向上を得ることができる。「ロバストである」とはここでは、患者設定および密度推定エラーならびにその送達によるあらゆる干渉を含む臓器運動により生じるエラーに関してロバストであり、すなわちこれらのエラーのいずれかが生じたとしても線量分布は好適であると解釈されるべきである。
【0036】
好適な基準を提供することによって最適化を設定して、
図4に示されているような結果に向かってナビゲートすることができる。そのような基準は、標的領域の外側の半影を減少させるための基準および治療時間を減少させるための基準の両方を含むことができる。
【0037】
図4は1つのエネルギー層のスポット分布のみを開示しているが、標的体積のために使用される各エネルギー層のために決定される対応するスポット分布が存在する。
【0038】
図5は、本治療計画システムにおいて行われるスポットの分布を決定するための方法の実施形態を示すフローチャートである。上に記載したように、スポットの分布は標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用することを目的としている。各スポットは、特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す。
【0039】
以下では、条件付き工程は本方法が2つの異なる可能な経路に分岐する工程である。任意の工程は行う必要がない工程である。
【0040】
エネルギー層を選択する工程40では、治療計画において使用されるエネルギー層を選択する。エネルギー層の数は、標的体積および患者の幾何学的形状によって決まる。これによりNelエネルギー層が得られる。
【0041】
スポットサイズを決定する工程42では、使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定する。使用するスポットサイズの数は、治療計画を受信するイオンビームシステムによってサポートされている必要はない。スポットサイズのnで示される任意の好適な数を決定することができる。この数はユーザパラメータであってもよく、あるいは本治療計画システムによって選択することができる。例えば、全ての利用可能なスポットサイズを使用することができる。あるいは、異なるスポットサイズのセットを異なる治療部位のために使用することができる。例えば、頭頸部の治療は腸および骨盤領域における治療よりも小さいセットのスポットサイズを使用することができる。
【0042】
コピーを生成して集める工程44では、本治療計画システムは各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのためのエネルギー層の1つのコピーを生成する。さらに、各コピーにはそのコピーのためのスポットサイズのスポットが集められている。これは
図3A~
図3Bに示されており、かつ上に記載されている。
【0043】
最適化する工程46では、全てのエネルギー層の全てのコピー、すなわち全部でNel×n個のエネルギー層のコピーのスポットを最適化させる。この最適化は、当該スポットの少なくともサブセットのスポットに送達されるイオンの数に関連づけられた重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで性能測定値に対する効果を計算することによって達成される。性能測定値はスカラーであり、このスキームにより、スポット重量のさらなる調整により最終結果が高められることのない少なくとも局所の最適が得られる。
【0044】
この重量はスポットに送達されるイオンの数に関連づけられており、従ってスポットの線量を制御する。
【0045】
性能測定値は複数の評価基準を組み合わせることによって計算する。複数の評価基準は、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む。
【0046】
第1の基準は治療時間を減少させることを目指す。大部分のイオン送達システムには、スポットの送達間に不感時間、すなわち連続スポット間の移動および安定化時間が存在する。より小さいスポットからより大きいスポットに切り換える際の治療時間における最大の利得は、スポット間のこの不感時間を減少させるという点に認めることができ、従って、特定のスポットのスポット重量(および実際の送達)には直接関連づけられていない。スポット重量の変動に関する最適化の文脈では、第1の基準はスポット特有の尺度を含み、これは各スポットのためにスポット間の不感時間を考慮する。そのような尺度はスポットサイズに依存し、かつ送達時間に直接もしくは間接的に関連づけることができる。それは多くの異なる方法で公式化することができ、例えば以下の任意の1つ以上に基づいていてもよい。
a)スポットサイズ。より大きいスポットは、同じエネルギーを有するより小さいスポットと比較して治療時間を減少させる。これは、大部分のイオンビーム送達システムでは、より大きいスポットを有するエネルギー層のコピーがより小さいスポットを有するエネルギー層のコピーよりも少ないスポットを含むということを考慮すると、より多くの小さいスポットよりもより少ない大きいスポットから線量を送達する方がより時間効率が良いという事実に基づいている。従って蓄積される不感時間は、より小さいスポットを有するエネルギー層のコピーと比較して、より大きいスポットを有するエネルギー層のコピーでは短くなる。最適化の性能測定値はこの場合、より小さいスポットと比較してより大きいスポットの場合に高められる。
b)スポット間隔。より大きいスポット間隔(同じエネルギー層のコピーにおける最近接点までの距離)を有するスポットでは、治療時間はより小さいスポット間隔を有するスポットと比較して減少する。この理由は、より大きいスポット間隔を有するエネルギー層のコピーにおいてより少ないスポットが存在し、かつ完全なエネルギー層のコピーの蓄積される不感時間がより短くなるからである。最適化の性能測定値はこの場合、より小さいスポット間隔を有するスポットと比較してより大きいスポット間隔を有するスポットの場合に高められる。イオンビーム治療のための治療計画では、同じエネルギーのスポットを有する層のエネルギーフルエンスが粗すぎるスポット間隔格子によりあらゆる変動を示さないように、最初のスポット間隔(スポット間隔格子ともいう)を実際のスポットサイズに基づいて手動または自動的に選択することが有利である。より大きいスポットにより、より小さいスポットよりも粗いスポット間隔格子が可能になる。この尺度は、同じエネルギー層のコピー内の各スポットの最近接点までの実際の距離またはスポット依存性ではないスポット間隔格子内の最初のスポット間隔に基づいていてもよく、かつこの代替法では同じ量が同じエネルギー層のコピー内の全てのスポットのために割り当てられる。
c)エネルギー層のコピーの送達時間。この尺度では、スポット間の不感時間を含む各エネルギー層のコピーの送達時間を推定する。特定のエネルギー層のコピー内の各スポットには送達時間に直接比例する量が割り当てられる。代替法として、エネルギー層のコピー内の各スポットには、そのエネルギー層のコピー内の全てのスポット間の蓄積される不感時間に直接比例する量を割り当てることができる。両方の代替法のために、割り当てられる量は同じエネルギー層のコピー内の全てのスポットで同じになる。エネルギー層のコピー内のより大きいスポットは、より少ないスポットおよびスポット間のより短い蓄積される不感時間により、より小さいスポットと比較してより短い送達時間が得られる。最適化の性能測定値はこの場合、エネルギー層のコピーの送達時間またはエネルギー層のコピーにおけるスポット間の蓄積される不感時間が、より長い送達時間または蓄積される不感時間を有するエネルギー層のコピーにおけるスポットと比較してより短くなるエネルギー層のコピーにおけるスポットでは高められる。
【0047】
治療時間またはスポットサイズに直接もしくは間接的に関連する他の尺度も使用することができる。
【0048】
線量分布に関連する第2の基準は、標的体積の外側の半影が減少した場合にそれが性能測定値を高めるように定めることができる。
【0049】
最適化の工程では、スポットの重量を上述のように繰り返し変えて性能測定値を高める。線量分布はスポットの重量を変えることによって直接変更し、スポット重量と線量分布に関する第2の基準についての性能測定値に対する効果との間には直接的な関係が存在する。治療時間に関する第1の基準についてはそのような直接的な関係は存在しない。上記治療時間尺度は個々のスポットの送達間の不感時間に関連づけられており、従って明示的にスポット重量に依存していない。但し、スポット重量に関して最適化が行われるので、好ましい尺度(大きいスポットサイズ、大きいスポット距離、短い送達時間)を有するスポットについてスポット重量が増加する場合に第1の基準に関連づけられた性能測定値が高められるように、スポット重量と治療時間尺度との間に人工的関係を確立させる。第1の基準をスポットサイズに基づかせる場合、これは、例えばより小さいスポットサイズを有するスポットのために高いスポット重量をペナルティとして科し、次いでこれにより、より大きいスポットサイズを有するスポットではより高いスポット重量が有利になるようにすることによる最適化において達成することができる。
【0050】
第1の基準および第2の基準は均衡基準である。第1の基準(送達時間に関する)が性能測定値の一部を形成していない場合、最適化により各エネルギー層において最も小さいスポットサイズが生じ、過剰な送達時間が生じる場合がある。他方、第2の基準(線量分布に関する)が性能測定値の一部を形成していない場合、最適化により各エネルギー層において最も大きいスポットサイズが生じる場合があり、これにより適当な線量分布を得ることができない。
【0051】
最適化する工程46の最終の行為ではスポット濾過を行う。スポット濾過により、イオン送達システムの能力に基づいてユーザまたは本システムによって直接設定することができる特定の閾値未満の重量を有するスポットを除去する。
【0052】
(一つまたは複数の)任意の多重スポットサイズ領域に関する条件付き工程48では、本治療計画システムは、エネルギー層のそれぞれのコピーの異なるサイズのスポットによって覆われている単一のエネルギー層の任意の多重スポットサイズ領域を見つけることができるかを決定する。多重スポットサイズ領域は、例えば最も大きいスポットサイズであってもよい。任意のそのような多重スポットサイズ領域が見つかった場合、本方法は任意のスポットサイズを維持することを決定する工程50に進む。そうでなければ本方法は終了する。
【0053】
任意のスポットサイズを維持することを決定する工程50では、本治療計画システムは、各多重スポットサイズ領域においてどの単一のスポットサイズを維持するかを決定する。多重スポットサイズ領域における他のスポットサイズのスポットを除去し、すなわちそれらの重量をゼロに設定する。多重スポットサイズ領域のスポットを単一のサイズのスポットに減少させることによって送達時間を減少させる。どのスポットサイズを維持するかを決定するための方法は、例えばスポットサイズ、各スポットサイズの総スポットフルエンス、またはスポットの蓄積重量、あるいはこれらのパラメータの組み合わせに基づいていてもよい。
【0054】
任意に、どのスポットを維持するかの決定はユーザパラメータに基づいている。
【0055】
任意の最も大きいスポットサイズが維持されているかに関する条件付き工程51では、本治療計画システムは、特定の多重スポットサイズ領域において維持するスポットサイズが多重スポットサイズ領域において最も大きいスポットサイズであるかを決定する。これがそうであれば、本方法は最適化する工程46に戻る。そうでなければ、本方法は、任意のスポットを追加する工程52に進む。
【0056】
任意のスポットを追加する工程52では、本治療計画システムは各多重スポットサイズ領域に維持するスポットサイズのスポットを追加して、被覆範囲を高める。より大きいスポットがより良好な被覆範囲を有するので、これは多重スポットサイズ領域においてより大きいスポットが除去された場合に行うことを必要としてもよい。この工程の後に、本方法は最適化する工程46に戻る。
【0057】
この方法は連続的スキャニング(ラインスキャニング)および離散的スポットスキャニング(ステップアンドシュート(step-and-shoot)スポットスキャニング)の両方に適用することができる。スポットサイズは連続的飛程内および離散的処置の両方において変化してもよい。
【0058】
図6は一実施形態に係る
図1の治療計画システム1の構成要素を示す概略図である。プロセッサ60は、メモリ64に格納されており、従ってコンピュータプログラム製品であってもよいソフトウェア命令67を実行することができる好適な中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路などのうちの1つ以上の任意の組み合わせを用いて提供される。プロセッサ60は、上の
図5を参照して記載されている方法を実行するように構成することができる。
【0059】
メモリ64は、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリーメモリ(ROM)の任意の組み合わせであってもよい。メモリ64は、例えば、磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリまたはさらにはリモートでマウントされたメモリのうちの任意の1つまたは組み合わせであってもよい永続ストレージも含む。
【0060】
プロセッサ60におけるソフトウェア命令の実行中にデータを読み出し、かつ/または格納するためのデータメモリ66も提供される。データメモリ66は、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリーメモリ(ROM)の任意の組み合わせであってもよい。データメモリ66は例えばスポットサイズ分布69を含んでいてもよい。
【0061】
治療計画システム1は、他の外部実体との通信のためのI/Oインタフェース62をさらに備える。任意にI/Oインタフェース62はユーザインタフェースも含む。
【0062】
治療計画システム1の他の構成要素は本明細書に示されている概念を曖昧にしないために省略されている。
【0063】
図7はコンピュータ可読手段を含むコンピュータプログラム製品の一例を示す。このコンピュータ可読手段にはコンピュータプログラム91を格納することができ、このコンピュータプログラムはプロセッサに本明細書に記載されている実施形態に係る方法を実行させることができる。この例では、コンピュータプログラム製品は、CD(コンパクトディスク)またはDVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)またはブルーレイディスクなどの光ディスクである。上で説明したように、
図6のコンピュータプログラム製品64などのコンピュータプログラム製品は装置のメモリ内にも具体化することができる。コンピュータプログラム91は描写されている光ディスク上のトラックとしてここに概略的に示されているが、コンピュータプログラムは、取外し可能なソリッドステートメモリ、例えばユニバーサル・シリアル・バス(USB)ドライブなどのコンピュータプログラム製品に適した任意の方法で格納することができる。
【0064】
次に、ここではローマ数字と共に列挙されている別の視点からの実施形態の一覧が続く。
【0065】
i.標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポット(各スポットは特定の横方向位置における特定のエネルギーおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す)の分布を含む治療計画を決定するための方法であって、治療計画システムにおいて行われ、かつ
治療計画に使用されるエネルギー層を選択する工程と、
使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定する工程と、
各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのための1つのコピーを生成し、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集める工程と、
当該スポットの少なくともサブセットの重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む複数の評価基準を組み合わせることによって計算される性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化する工程と
を含む方法。
【0066】
ii.最適化する工程は、スポット濾過を行って閾値未満の重量を有するスポットを除去することを含む、実施形態iに係る方法。
【0067】
iii.スポットを最適化する工程の後に、
異なるサイズのスポットによって覆われている単一のエネルギー層の任意の多重スポットサイズ領域を見つける工程と、
各多重スポットサイズ領域においてどの単一のスポットサイズを維持するかを決定し、かつ多重スポットサイズ領域における他のスポットサイズのスポットを除去する工程と、
スポットを最適化する工程に戻る工程と
をさらに含む、実施形態iまたはiiに係る方法。
【0068】
iv.どのスポットサイズを維持するかを決定する工程の後に、
各多重スポットサイズ領域において維持するスポットサイズが多重スポットサイズ領域において最も大きいスポットサイズでない場合に維持するスポットサイズのスポットを追加して被覆範囲を高める工程
をさらに含む、実施形態iiiに係る方法。
【0069】
v.どのスポットサイズを維持するかを決定する工程は、ユーザパラメータに従ってスポットサイズを維持することを決定することを含む、実施形態iiiまたはivに係る方法。
【0070】
vi.第2の基準は標的体積の外側の半影が減少した場合に性能測定値を高める、上記実施形態のうちのいずれかに係る方法。
【0071】
vii.標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポット(各スポットは特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す)の分布を含む治療計画を決定するための治療計画システムであって、
プロセッサと、
プロセッサによって実行された場合に本治療計画システムに、
治療計画において使用されるエネルギー層を選択させ、
使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定させ、
各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのための1つのコピーを生成し、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集めさせ、かつ
当該スポットの少なくともサブセットの重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む複数の評価基準を組み合わせることによって計算される性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化させる
命令を格納するメモリと
を備える、治療計画システム。
【0072】
viii.プロセッサによって実行された場合に本治療計画システムに、
異なるサイズのスポットによって覆われている単一のエネルギー層の任意の多重スポットサイズ領域を見つけさせ、
各多重スポットサイズ領域においてどの単一のスポットサイズを維持するかを決定させ、かつ多重スポットサイズ領域における他のスポットサイズのスポットを除去させ、かつ
スポットを最適化するための命令に戻らせる
命令をさらに含む、実施形態viiに係る治療計画システム。
【0073】
ix.プロセッサによって実行された場合に本治療計画システムに、
各多重スポットサイズ領域において維持するスポットサイズが多重スポットサイズ領域において最も大きいスポットサイズでない場合に維持するスポットサイズのスポットを追加して被覆範囲を高めさせる
命令をさらに含む、実施形態viiiに係る治療計画システム。
【0074】
x.どのスポットサイズを維持するかを決定するための命令は、プロセッサによって実行された場合に本治療計画システムに、ユーザパラメータに従ってスポットサイズを維持することを決定させる命令を含む、実施形態viiiまたはixに係る治療計画システム。
【0075】
xi.第2の基準は標的体積の外側の半影が減少した場合に性能測定値を高める、実施形態vii~xのいずれかに係る治療計画システム。
【0076】
xii.標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するための可変サイズのスポット(各スポットは特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す)の分布を含む治療計画を決定するための治療計画システムであって、
治療計画に使用されるエネルギー層を選択するための手段と、
使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定するための手段と、
各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのための1つのコピーを生成し、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集めるための手段と、
当該スポットの少なくともサブセットの重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む複数の評価基準を組み合わせることによって計算される性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化するための手段と
を備える治療計画システム。
【0077】
xiii.標的体積内にスポットを提供するためにイオンビーム治療と共に使用するためのスポット(各スポットは特定の横方向位置における特定のエネルギーレベルおよび特定のスポットサイズのイオンの集合体を表す)の分布を含む治療計画を決定するためのコンピュータプログラムであって、治療計画システムで実行された場合に本治療計画システムに、
治療計画において使用されるエネルギー層を選択させ、
使用するスポットサイズの2つ以上の数を決定させ、
各エネルギー層のために、使用する各スポットサイズのための1つのコピーを生成し、かつそのコピーのためのスポットサイズのスポットを有する各コピーを集めさせ、かつ
当該スポットの少なくともサブセットの重量を繰り返し変え、かつその重量のばらつきにより閾値を超えて性能測定値を高めることができなくなるまで、総治療時間が減少した場合に性能測定値を高める第1の基準と治療体積における所望の線量分布が達成された場合に性能測定値を高める第2の基準とを含む複数の評価基準を組み合わせることによって計算される性能測定値に対する効果を計算することによって、全てのエネルギー層の全てのコピーのスポットを最適化させる
コンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【0078】
xiv.実施形態xiiiに係るコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読手段を含むコンピュータプログラム製品。
【0079】
本発明を主に数個の実施形態を参照しながら上に説明してきた。但し当業者によって容易に理解されるように、上に開示されているもの以外の他の実施形態が、添付の特許請求の範囲によって定められているように本発明の範囲内で同等に可能である。