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特許7166298バッテリセル内の自己放電不良を検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】バッテリセル内の自己放電不良を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/396 20190101AFI20221028BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20221028BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221028BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221028BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20221028BHJP
   G01R 31/3835 20190101ALI20221028BHJP
【FI】
G01R31/396
H02J7/02 H
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
G01R31/367
G01R31/3835
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019571578
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018069414
(87)【国際公開番号】W WO2019016218
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】1756838
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メンスラー, ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ドロベル, ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ドリエメイヤー フランコ, アナ ルシア
(72)【発明者】
【氏名】アルサック, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】折口 正人
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0099587(US,A1)
【文献】特開2017-059358(JP,A)
【文献】特開2010-032412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/396
H02J 7/02
H02J 7/00
H01M 10/48
G01R 31/367
G01R 31/3835
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセル(1、2、3、4)を有する蓄電バッテリ(10)におけるセル(1、2、3、4)内の自己放電不良を検出する方法であって、
- 前記バッテリセル(1、2、3、4)の電荷の平衡化が少なくとも部分的に実行され、
- 前記バッテリセル(1、2、3、4)の緩和が実行され、
- バッテリセル(i)ごとに、前記セル(i)の前記平衡化および緩和の最中の電荷平衡(Σ が計算され、
- 前記セル(i)の何らかの自己放電不良の可能性があることが、前記セル(i)について計算される前記平衡化および緩和の最中の前記電荷平衡(Σ に基づいてバッテリセル(i)ごとに検出される、方法。
【請求項2】
バッテリセル(i)ごとに、前記セル(i)の前記平衡化および緩和の最中の前記電荷平衡(Σ が、前記セル(i)の前記平衡化の開始直前の前記セル(i)について平衡化される電荷(qi,bal(t))、前記セル(i)の前記緩和の終了直後の前記セル(i)について平衡化される電荷(qi,bal(t))、および前記平衡化の最中の前記セル(i)について放出される電荷の量(Δq(T))を考慮に入れて計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
任意のバッテリセル(i)について、前記セル(i)の前記平衡化および緩和の最中の前記電荷平衡(Σ が、関係
Σ=qi,bal(t)+Δq(T)-qi,bal(t
を適用することによって計算され、
ここで、「Σ」は、前記セル(i)の前記平衡化および緩和の最中の前記電荷平衡を示し、
「qi,bal(t)」は、瞬間tにおける前記セル(i)について平衡化される電荷を示し、
「Δq(T)」は、間隔Tの最中の前記セル(i)についての前記放出される電荷の量を示し、
「t」は、前記セル(i)の前記平衡化の開始直前に位置する瞬間を示し、
「t」は、前記セル(i)の前記緩和の終了直後に位置する瞬間を示し、
「T」は、前記セル(i)の前記電荷の前記平衡化が実行されている最中の期間を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
セル(i)ごとに、前記平衡化は、前記セルについて平衡化される電荷(qi,bal)を計算するステップ(E02)と、前記セル(i)について放出される電荷の量(Δq(t))が計算される前記平衡化を実行するステップ(E03)とを含み、前記平衡化ステップ(E03)は、前記セル(i)について前記平衡化される電荷(qi,bal)が前記セル(i)について前記放出される電荷の量(Δq(t))よりも厳密に大きい限り継続される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
セル(i)ごとに、前記平衡化は、前記セル(i)について平衡化される電荷(qi,bal)を計算するステップ(E02)と、前記セル(i)について前記計算された平衡化される電荷(qi,bal)に基づいて前記セル(i)の平衡化時間(ti,bal)を計算するステップ(E02)とを含み、前記平衡化は、前記計算された平衡化時間(ti,bal)の最中に実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
セル(i)ごとに、前記セルについて平衡化される電荷(qi,bal)が、前記セル(i)の充電状態(SOC)、ターゲットセルの充電状態(SOCtarget)、前記セル(i)の容量(Q)、およびターゲットセルの容量(Qtargetに基づいて計算されまたは前記セル(i)の健康状態(SOH)、ターゲットセルの健康状態(SOHtarget)、前記セル(i)のゼロ電流電圧(OCV)、ターゲットセルのゼロ電流電圧(OCVtarget)、前記セル(i)の公称容量(Qi,nom)、およびターゲットセルの公称容量(Qtarget,nom )に基づいて計算され、ならびに/またはセル(i)ごとに、前記セル(i)についての期間(T)の最中の放出される電荷の量(Δq(T))が、平衡抵抗(Rbal)、前記期間(T)に属する瞬間(t)における前記セル(i)の端子における電圧(V(t))、前記蓄電バッテリ(10)の前記セル(1、2、3、4)の平衡化電流(Ibal)、および前記蓄電バッテリ(10)の前記セル(1、2、3、4)の公称電圧(Vnom)の中から選ばれたパラメータに基づいて計算される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1のバッテリセル内の自己放電不良の可能性があることが、前記第1のバッテリセル以外の任意の第2のバッテリセル(i)について、前記第2のバッテリセル(i)の前記緩和の終了直後に前記第2のバッテリセル(i)によって平衡化される電荷(qi,bal(t))が、前記第2のバッテリセル(i)の前記平衡化の開始直前に前記第2のバッテリセル(i)によって平衡化される電荷(qi,bal(t))よりも厳密に大きく、かつ、前記平衡化および緩和の最中に前記第2のバッテリセル(i)によって放出される電荷の量(Δq(T))が、ゼロ以外である場合に検出される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
セル(i)ごとに、前記セル(i)内の自己放電不良の可能性があることが、前記平衡化および緩和の最中の前記セルについて前記計算された電荷平衡(Σ が厳密に正の閾値(ε )を超える場合に検出され、前記閾値(ε )は、前記セル(i)の前記平衡化の開始直前の前記セル(i)について平衡化される電荷(δqi,bal(t))の誤差、前記セル(i)の前記緩和の終了直後の前記セル(i)について平衡化される電荷(δqi,bal(t))の誤差、および前記平衡化および緩和の最中の前記セル(i)について放出される電荷の量(δΔq(T))の誤差に基づいて決定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
任意のセル(i)について、前記閾値(ε)は、前記セル(i)についての前記平衡化される電荷(δqi,bal)の誤差に基づいて決定され、前記誤差(δqi,bal)は、任意の瞬間(t)について、数式
δqi,bal=|Q.δSOC|+|SOC.δQ|+|Qtarget.δSOCtarget|+|SOCtarget.δQtarget
に従って計算され、
ここで、「δqi,bal」は、前記瞬間における前記セル(i)によって前記平衡化される電荷の前記誤差を示し、
「δSOC」は、前記セル(i)の充電状態の誤差を示し、
「δQ」は、前記セル(i)の電荷の誤差を示し、
「SOC」は、前記瞬間(t)における前記セル(i)の充電状態を示し、
「Q」は、前記瞬間(t)における前記セル(i)の電荷を示し、
「δSOCtarget」は、ターゲットセルの充電状態の誤差を示し、
「δQtarget」は、前記ターゲットセルの電荷の誤差を示し、
「SOCtarget」は、前記瞬間(t)における前記ターゲットセルの充電状態を示し、
「Qtarget」は、前記瞬間(t)における前記ターゲットセルの電荷を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
任意のセル(i)について、前記閾値は、間隔(T)の最中の前記セル(i)について前記放出される電荷の量(δΔq(T))の誤差に基づいて決定され、前記誤差(δΔq(T))は、数式
およびδΔq(T)=|T.δIbal
の少なくとも1つを用いて計算され、
ここで、「T」は、前記間隔を表し、
「δΔq(T)」は、前記間隔(T)の最中の前記セル(i)についての前記放出される電荷の量の前記誤差を表し、
「Rbal」は、前記平衡化に使用される抵抗を表し、
前記間隔に属する任意の瞬間τについて、「V(τ)」は、前記瞬間τにおける前記セル(i)の端子で測定される電圧を示し、
「δIbal」は、前記蓄電バッテリ(10)の前記セル(1、2、3、4)の平衡化電流の許容された偏差を表す、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車車両に組み込まれるように意図された、複数のセルを有する蓄電バッテリの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電動自動車車両は、特に、純粋に電動式の自動車車両、ハイブリッド車両、または充電式ハイブリッド車両を含む。そのような車両は、多数のバッテリセルを有する蓄電バッテリを装備している。これらのセルは、直列および/または並列に設置され得る。
【0003】
概して、蓄電バッテリを形成するセルは、互いに同様の特性を有する。しかしながら、バッテリの寿命の間中に、ばらつきまたは差異が、これらのセルに現れ得る。例えば、セルの容量のばらつき、セルの抵抗のばらつき、あるいは場合によると、一時的な形で、セルの充電状態のばらつき、またはセルの温度のばらつきがあり得る。これらのばらつきによる、蓄電バッテリのセルごとの異なる程度のエージング、およびセルの健康状態のばらつきという結果になる。
【0004】
全体としての蓄電バッテリは、蓄電バッテリの構成セルに関連付けられたばらつきによって、および特に充電状態のばらつきによって直接悪影響を受ける。実際には、セル間の電荷の差異が増加すると、バッテリの使用可能な総容量が減少する。
【0005】
この問題を克服する通常のやり方は、セルの規則的な平衡化を実行することである。この平衡化は、自律的なやり方で動作するバッテリ管理システムによって直接行うことができる。例えば、セル平衡化は、消散的であり得、ターゲット充電状態に向けてセルを抵抗に放電することによってセルの充電状態を平衡化することにある。この解決策によって、負荷の状態のばらつきは、閾値未満に維持でき、したがって、バッテリの使用可能な総容量の低下を制限する。
【0006】
しかしながら、この解決策は、全く満足のいくものではない。実際には、蓄電バッテリのセルは、結果的に自己放電になる内部の問題に遭遇し、これにより自己放電が経時的に急速に増加し得る。この自己放電により、バッテリセル間の充電状態のばらつきを増大させる。自己放電があまりに大きくなる場合、平衡化システムは、平衡化システムの有効性を失い、最終的に蓄電バッテリのセル間の充電状態のばらつきを補償することができなくなる。これは、大抵、蓄電バッテリの容量の急速かつかなり大きな低下をもたらし、またはセルの故障ももたらし、全体として蓄電バッテリの故障という結果になる。
【0007】
文献CN105527583は、バッテリパックにおける自己放電を検出する方法を記載しており、セルの端子における電圧が2つの予め定められた瞬間の間にかなり大きく変化する場合に、バッテリセルの自己放電不良が検出される。そのような方法は、自己放電不良がセル内で検出されることを可能にし得るが、自己放電不良が検出されずにいる、および/または誤った自己放電不良警告が発せられる可能性もある。したがって、自己放電不良を検出するより信頼できる方法が提案される必要性がある。
【0008】
また、CN105527583に記載された方法は、電圧測定の2つの瞬間の間にセルについて長い緩和時間を必要とする。したがって、この方法は、例えば、車両が駐車場に置かれている間に、車両が長い期間作動していない間中にだけ使用され得る。そのような休止は、まれにしか生じない。したがって、自己放電不良の検出は、遅延され、または不可能でもある。
【発明の概要】
【0009】
上記に鑑みて、本発明の目的は、セル間の充電状態のばらつきを防ぐように早い段階で蓄電バッテリのセルの自己放電不良を検出することである。
【0010】
このために、複数のバッテリセルを有する蓄電バッテリにおけるセル内の自己放電不良を検出する方法であって、
- バッテリセルの電荷の平衡化が少なくとも部分的に実行され、
- バッテリセルの緩和が実行され、
- バッテリセルごとに、セルの平衡化および緩和の最中の電荷平衡が計算され、
- セルの何らかの自己放電不良の可能性があることが、セルについて計算される平衡化および緩和の最中の電荷平衡に基づいてバッテリセルごとに検出される、方法が提案される。したがって、セルの自己放電不良が、バッテリセルの平衡化の有効性を解析することによって検出される。これにより、このバッテリの各セルにおけるいずれかの自己放電不良の検出がより信頼できるものになる。
【0011】
有利には、バッテリセルごとに、セルの平衡化および緩和の最中の電荷平衡が、セルの平衡化の開始直前のセルについて平衡化される電荷、セルの緩和の終了直後のセルについて平衡化される電荷、および平衡化の最中のセルについて放出される電荷の量の中から選ばれた少なくとも1つの大きさを考慮に入れて計算される。
【0012】
好ましくは、任意のバッテリセルについて、セルの平衡化および緩和の最中の電荷平衡が、関係
Σ=qi,bal(t)+Δq(T)-qi,bal(t
を用いて計算され、
ここで、「Σ」は、セルの平衡化および緩和の最中の電荷平衡を示し、
「qi,bal(t)」は、瞬間tにおけるセルについて平衡化される電荷を示し、
「Δq(T)」は、間隔Tの最中のセルについての放出される電荷の量を示し、
「t」は、セルの平衡化の開始直前に位置する瞬間示し、
「t」は、セルの緩和の終了直後に位置する瞬間示し、
「T」は、セルの電荷の平衡化が実行されている最中の期間を示す。
【0013】
一実施形態では、セルごとに、平衡化は、セルについて平衡化される電荷を計算するステップと、セルについて放出される電荷の量が計算される平衡化を実行するステップとを含み、平衡化ステップは、セルについて平衡化される電荷がセルについて放出される電荷の量よりも厳密に大きい限り継続される。
【0014】
予想される平衡化される電荷が実際に放出される電荷の量と比較される本実施形態は、特に精確な平衡化を可能にする。自己放電不良の検出の正確さが改善される。
【0015】
別の実施形態では、セルごとに、平衡化は、セルについて平衡化される電荷を計算するステップと、セルについて計算された平衡化される電荷に基づいてセルの平衡化時間を計算するステップとを含み、平衡化は、計算された平衡化時間の最中に実行される。
【0016】
本実施形態は、予想される平衡化時間の計算に基づいて、自己放電不良を検出するために、比較的少ない計算リソースしか必要としない。
【0017】
有利には、セルごとに、セルについて平衡化される電荷は、セルの充電状態、ターゲットセルの充電状態、セルの容量、ターゲットセルの容量、セルの健康状態、ターゲットセルの健康状態、セルのゼロ電流電圧、ターゲットセルのゼロ電流電圧、セルの公称容量、およびターゲットセルの公称容量の中から選ばれた少なくとも1つのパラメータに基づいて計算される。
【0018】
好ましくは、セルごとに、期間の最中のセルについて放出される電荷の量は、平衡抵抗、期間内の瞬間におけるセルの端子における電圧、蓄電バッテリのセルの平衡化電流、および蓄電バッテリのセルの公称電圧の中から選ばれた少なくとも1つのパラメータに基づいて計算される。
【0019】
一実施形態では、第1のバッテリセル内の自己放電不良の存在は、第1のバッテリセル以外の任意の第2のバッテリセルについて、第2のセルの緩和の終了直後に第2のセルによって平衡化される電荷が、第2のセルの平衡化の開始直前に第2のセルによって平衡化される電荷よりも厳密に大きく、かつ、平衡化および緩和の最中に第2のセルによって放出される電荷の量が、ゼロ以外である場合に検出される。
【0020】
そのような実施形態は、自己放電不良が、充電状態がターゲットセルの充電状態に対応するバッテリセル内で検出されることを可能にする。
【0021】
セルごとに、当セル内の自己放電不良の存在の検出は、平衡化および緩和の最中のセルについて計算された電荷平衡が厳密に正の閾値を超える場合に考慮に入れることも可能であり、閾値は、セルの平衡化の開始直前のセルについての平衡化される電荷の誤差、セルの緩和の終了直後のセルについて平衡化される電荷の誤差、および平衡化および緩和の最中のセルについて放出される電荷の量の誤差の中から選ばれた少なくとも1つの誤差に基づいて決定される。
【0022】
そのような閾値を適用することによって、検出を妨げるまたは逆に誤検出という結果になる蓄電バッテリに関連付けられた不正確さの源を考慮に入れることも可能である。
【0023】
有利には、任意のセルについて、閾値は、セルについての平衡化される電荷の誤差に基づいて決定され、この誤差は、任意の瞬間について、数式
δqi,bal=|Q.δSOC|+|SOC.δQ|+|Qtarget.δSOCtarget|+|SOCtarget.δQtarget
に従って計算され、
ここで、「δqi,bal」は、瞬間におけるセルによって平衡化される電荷の誤差を表し、
「δSOC」は、セルの充電状態の誤差を表し、
「δQ」は、セルの電荷の誤差を表し、
「SOC」は、瞬間におけるセルの充電状態を表し、
「Q」は、瞬間におけるセルの電荷を表し、
「δSOCtarget」は、ターゲットセルの充電状態の誤差を表し、
「δQtarget」は、ターゲットセルの電荷の誤差を表し、
「SOCtarget」は、瞬間におけるターゲットセルの充電状態を表し、
「Qtarget」は、瞬間におけるターゲットセルの電荷を表す。
【0024】
好ましくは、任意のセルについて、閾値は、間隔の最中のセルについて放出される電荷の量の誤差に基づいて決定され、この誤差は、数式
を用いて計算され、
ここで、「T」は、間隔を表し、
「Δq(T)」は、間隔の間中のセルについて放出される電荷の量の誤差を表し、
「Rbal」は、平衡化に使用される抵抗を表し、
間隔に属する任意の瞬間τについて、「V(τ)」は、瞬間τにおけるセルの端子で測定される電圧を示す。
【0025】
任意のセルについて、間隔の最中のセルについて放出される電荷の量の誤差に基づいて閾値の決定を考慮に入れることも可能であり、この誤差は、数式
δΔq(T)=|T.δIbal
を用いて計算され、
ここで、「T」は、間隔を表し、
「δΔq(T)」は、間隔の間中のセルについて放出される電荷の量の誤差を表し、
「δIbal」は、該蓄電バッテリのセルの平衡化電流の誤差を表す。
【0026】
以下説明されるように、これらの誤差の計算は、蓄電バッテリ内で遭遇した不正確さの大部分を考慮に入れる。このようにして、閾値の計算が洗練され、したがって、自己放電不良の検出の信頼性が改善される。
【0027】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、下記添付図面を参照して非限定の例のみで与えられる以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】蓄電バッテリを概略的に示す図である。
図2】本発明の例示的な実施形態による検出方法を概略的に示す図である。
図3図1のバッテリのセルについて平衡化される電荷の計算を示す3つのグラフである。
図4】第1の動作ケースによる図1のバッテリのセルの平衡化および緩和中の電荷平衡を示すグラフである。
図5】第2の動作ケースによる図1のバッテリのセルの平衡化および緩和中の電荷平衡を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、蓄電バッテリ10が概略的に示されている。バッテリ10は、自動車車両のパワートレインに属する電気トラクション機械に給電するために電動自動車車両に組み込まれるように設計されている。
【0030】
バッテリ10は、2つの端子14を備える。バッテリ10は、1、2、3、および4でそれぞれ示された4つのバッテリセルを備える。例示した例では、セル1、2、3、および4は、直列に接続されている。しかしながら、本発明の範囲からそれにより逸脱することなく、配列に接続されたセルを有するように、または代替として並列に接続された一部のセルと直列に接続された残りのセルとを有するように実現可能である。同様に、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる個数のセルを有することが実現可能であるのは明らかである。
【0031】
バッテリ10は、管理システム12との情報接続を有する。管理システム12は、英語表現「バッテリ管理システム」によってまたは省略形「BMS」によっても知られている。システム12は、バッテリ10の寿命期間中に使用される様々な方法を管理する。例えば、以下説明されるように、管理システム12は、バッテリ10のセルを平衡化する方法を管理する。
【0032】
セル1、2、3、4の各々は、それぞれの平衡化回路16に関連している。例示した例では、平衡化回路16は、バッテリ10の全てのセルについて同一である。任意のセル1、2、3、または4について、このセルに関連した平衡化回路16は、このセルの2つの端子に接続された電気回路18を備える。電気回路18では、スイッチ20および平衡抵抗22が、直列に接続されている。しかしながら、本発明は、この形態の平衡化回路に限定されない。詳細には、バッテリ10の全てのセルに共通であるとともにセルのいずれか1つの平衡化を単独で実行することができる単一の平衡化回路を有することも、実現可能である。
【0033】
システム12は、破線23の矢印によって表されるように、セル1、2、3、および4に関連付けられたデータを受信するハードウェアおよびソフトウェア手段を装備している。システム12は、受信したデータに基づいて、セル1、2、3、および4に関連付けられた中間データを決定するハードウェアおよびソフトウェア手段を装備している。
【0034】
例えば、セル1、2、3、および4の中から選ばれた任意のセルiについて、システム12は、セルiの端子における電圧V、およびこのセルiの平衡化中にセルiを通じて流れる電流Ii,balを受信することができる。システム12は、英語表現「開回路電圧」によっても知られているセルiのゼロ電流電圧OCVと、英語表現「充電状態」によっても知られているセルiの充電状態SOCとを決定することができる。
【0035】
破線24の矢印によって表されるように、システム12は、セル1、2、3、および4にそれぞれ関連したスイッチ20を開閉させるためのハードウェアおよびソフトウェア手段を装備している。したがって、iが1から4の範囲内である任意のセルiについて、システム12がセルiの平衡化が実行されなければならないと判断する場合、システム12は、セルiに対応する平衡化回路16のスイッチ20を閉じさせる。セルiによって解放される電気エネルギーは、セルiに関連した平衡化回路16の平衡抵抗22において消散される。管理システム4がセルiの平衡化が停止されなければならないと判断する場合、管理システム4は、セルiに関連した平衡化回路16のスイッチ20を開かせる。
【0036】
次に、本発明による自己放電不良を検出する方法の実施について、図2から図5を参照して説明する。この方法は、管理システム12を用いてバッテリ10のセル1、2、3、および4における自己放電不良を検出するために実施される。本発明による方法の実施の一例は、図2に概略的に示されている。
【0037】
本発明による方法は、バッテリ10のセルの電荷を平衡化する第1の段階P01を含む。段階P01の説明において、それぞれのセル1、2、3、および4の容量Q、Q、Q、およびQの分布の第1のグラフ26を示す図3の参照がなされ得る。容量は、ガウス曲線分布に示されている。図3は、セルの充電状態SOCの関数としてセル1、2、3、および4のゼロ電流電圧OCV間の関係を示す第2のグラフ28を含む。
【0038】
段階P01は、ターゲットパラメータが決定される第1のステップE01を含む。より精確には、ターゲット充電状態SOCtargetおよびターゲット容量Qtargetが決定される。例示した例では、ターゲット充電状態SOCtargetおよびターゲット容量Qtargetは、最低の充電状態を有するセルiの充電状態SOCおよび容量Qとして定義される。図3の場合には、ターゲット充電状態SOCtargetは、
のように、セル4の充電状態SOCに相当し、ターゲット容量Qtargetは、セル4の容量Qに等しいと定義される。
【0039】
段階P01は、バッテリ10のセルについて予想される平衡化される電荷が計算される第2のステップE02を含む。任意のセルiについて、セルiについて予想される平衡化される電荷qi,balは、ターゲットセルに対してセルiを平衡化するためにセルiに関連した平衡化回路16の抵抗22に放出されなければならない電荷に相当する。このために、以下の式
i,bal=SOC×Q-SOCtarget×Qtarget (2)
が適用され得る。
【0040】
例示した例では、バッテリ10のセルの容量間にばらつきがないと仮定されるのが有利である。したがって、Qが全てのセルの容量を示す場合、電荷qi,balは、式
i,bal=(SOC-SOCtarget)×Q (3)
を適用することによって計算することができる。
【0041】
本発明による方法は、例によって上述された計算に限定されない。第1の変形例では、任意のセルiについて、電荷qi,balが、式
i,bal=f(OCV)×(SOH×Qi,nom)-f(OCVtarget)×(SOHtarget×Qtarget,nom) (4)
を適用することによって、本発明の範囲から逸脱することなく、計算され得る。
【0042】
この式では、関数fはグラフ表示が図3のグラフ28に対応している関数を示し、SOHは英語の用語「健康状態」によっても知られているセルiの健康状態を示し、Qi,nomはセルiの公称容量を示し、SOHtargetはターゲット健康状態を示し、Qtarget,nomはターゲット公称容量を示す。例えば、ターゲット健康状態SOHtargetおよびターゲット公称容量Qtarget,nomは、それぞれ、ターゲットセルの健康状態および公称容量であり、この場合には、セル4の健康状態SOHおよび公称容量Q4,nomである。
【0043】
特に、第1の変形例による式は、管理システム12がセル1から4の各々の健康状態を個々に決定する手段を装備している場合に使用され得る。
【0044】
本発明による方法の第2の変形例によれば、ターゲット充電状態SOCtargetを決定する異なるやり方が、選ばれてもよい。例えば、ターゲット充電状態SOCtargetは、バッテリ10の各セルの充電状態の平均であり得る。これは、セルiの予想される平衡化される電荷qi,balを負の値をとるようにさせ得る。しかしながら、平衡化システムが消散的であるので、対応するセルを再充電することは不可能である。そのような場合には、したがって、任意のセルiについて、予想される平衡化される電荷qi,balは、この電荷の計算が負の結果を与えるときに、ゼロに等しいと自動的に定められる。
【0045】
それぞれのセル1、2、3、および4の予想される平衡化される電荷q1,bal、q2,bal、q3,bal、およびq4,balは、図3の第3のグラフ30に概略的に示されている。グラフ30は、セル1、2、3、および4の中から選ばれたセルiごとに、セルの電荷qおよびターゲットセルの電荷、この場合にはqを示す。iが1から4の範囲内であるセルiごとに、予想される平衡化される電荷qi,balは、下向きの垂直矢印によって概略的に示されている。グラフ30に示されるように、ターゲットセル4の予想される平衡化される電荷q4,balは、ゼロに等しい。
【0046】
段階P01は、バッテリ10のセルの平衡化が実行される第3のステップE03を含む。このために、システム12は、平衡化される各セルに関連したスイッチ20を閉じさせる。同時に、瞬間tごとに、およびバッテリ10のセルiごとに、システム12は、瞬間tにおけるセルiについて実際に放出された電荷の量Δq(t)を計算する。バッテリ10の任意のセルiについて、瞬間tにおけるセルiによって実際に放出された電荷の量は、数式
に従って計算することができる。
【0047】
ここで、オームの法則は、
を表し、ここで、Rbalは、平衡化回路16の抵抗22の値である。
【0048】
したがって、量Δq(t)は、式
を適用することによって計算することができる。
【0049】
バッテリ10の任意のセルiについて、システム12は、常に、予想される平衡化される電荷qi,balと実際に放出された電荷の量Δq(t)を比較する。予想される平衡化される電荷qi,balが実際に放出された電荷の量Δq(t)よりも厳密に大きい限り、スイッチ20は閉じられたままである。電荷qi,balが量Δq(t)以上になる場合、セルiに関連したスイッチ20は開かれる。そして、セルiの平衡化が終了する。
【0050】
セル4についての予想される平衡化される電荷q4,balがゼロであるので、このセルによって実際に放出された電荷の量Δq(t)がいかなる瞬間tにおいても予想される平衡化される電荷よりも厳密に少ないことは不可能である。したがって、例示した例では、セル4に関連したスイッチ20は、ステップE03の最中、閉じられない。
【0051】
本発明による方法の第3の変形例によれば、平衡化は、計算された平衡化時間に基づいて制御され得る。本方法の変形例のステップE02では、バッテリ10の任意のセルiについて、セルiについて予想される平衡化される電荷qi,balは、セルiについての平衡化時間ti,balを計算するために使用される。セルiについてのこの平衡化時間ti,balは、式
を適用することによって計算され、ここで、
であり、ここで、Vnomは、バッテリ10のセルの公称電圧である。第3の変形例では、セルの平衡抵抗および公称電圧のばらつきは、ゼロであると仮定される。したがって、平衡化電流Ii,balは、全てのセルについて同一であると仮定され、Ibalと示される。
【0052】
上記に鑑みて、バッテリ10の任意のセルiについて、平衡化時間ti,balは、公式
を適用することによって計算することができる。
【0053】
第3の変形例のステップE03では、バッテリ10の任意のセルiについて、システム12は、瞬間tと瞬間t+ti,balの間にセルiに関連したスイッチ20を閉状態に設定し、ここで、tは、平衡化の開始の瞬間である。
【0054】
第3の変形例は、全てのセルについて量Δq(t)を常に計算する必要がないという点で有利である。したがって、計算リソースに関しての要求が減少する。しかしながら、一定であるセルの公称電圧がバッテリ10の使用中に変動する実際の電圧の代わりに平衡化時間の計算に使用されるので、平衡化はより近似する。
【0055】
第4の変形例では、ある瞬間tにおけるセルiによって実際に放出された電荷の量Δq(t)は、異なるやり方で計算することができる。この第4の変形例では、任意のセルiについて、量Δq(t)は、式
Δq(T)=Ibal×ti,bal (11)
を適用することによって計算される。
【0056】
概して、平衡化は、車両のミッションの最中、換言すると、車両が移動中でありかつ制御下にあるときにだけ可能である。そして、平衡化時間は、しばしば、単一のミッションで全てのセルの平衡化を可能にするにはあまりに短い。この場合には、平衡化は中断され、中断期間後に再開する。
【0057】
示された例示的な実施形態では、平衡化が中断後に再開されるときに、ターゲットパラメータが更新される。この選択は、平衡化が再開されるときにセルが高充電状態にあり得るので、特に、有利である。
【0058】
しかしながら、本発明は、この選択に限定されず、中断後に平衡化が再開されるときに、ターゲットパラメータが更新されない第5の変形例があることが実現可能である。この第5の例は、より少ない計算リソースしか必要としないという点で有利である。
【0059】
そして、本発明による検出の方法は、バッテリ10のセルごとに、セルの緩和の段階P02を含む。段階P02の最中、セルiの電流は、緩和時間Tの最中ゼロに等しく維持される。
【0060】
示された例示的な実施形態では、緩和時間Tは、バッテリ10のセルの平衡化時間ti,balに基づいて計算される。より精確には、Tは、バッテリ10のセルの平衡化時間ti,balの平均に0.5から1の範囲内の係数を乗じるものにほぼ等しい。
【0061】
図4は、本発明による方法の平衡化P01および緩和P02の段階を受けるバッテリ10のセルiにおける経時的な電荷の変動を示す。電荷の変動が図4に示されているセルiは、自己放電不良により、いかなる電荷の損失も被らない。
【0062】
平衡化は、瞬間tに開始され、平衡化期間Tの満了後に中断される。期間Tは、セルiについて計算される平衡化時間ti,bal以下であり得る。平衡化が中断される場合、セルiの緩和は、瞬間tまで実行される。
【0063】
正方形32は、瞬間tにおけるセルiの電荷q(t)を概略的に示す。正方形34は、瞬間tにおけるセルiの電荷q(t)を示す。水平線36は、瞬間tにおけるターゲットセルの電荷qtarget(t)を表す。水平線38は、瞬間tにおけるターゲットセルの電荷qtarget(t)を表す。第1の垂直下向き矢印40は、瞬間tに推定されるセルiについて予想される平衡化される電荷qi,bal(t)を表す。第2の垂直下向き矢印42は、平衡化の最中のセルiについて実際に放出された電荷の量Δq(T)を表す。第3の垂直下向き矢印44は、瞬間tに推定されるセルiについて予想される平衡化される電荷qi,bal(t)を概略的に示す。
【0064】
上述したように、図4の場合に、セルiは、何ら自己放電不良を示さない。したがって、セルiの電荷に関連付けられたデータは、以下の式
i,bal(t)=qi,bal(t)-Δq(T) (12)
に一致する。
【0065】
図5は、図4にあるように平衡化P01および緩和P02の同じ段階を受けるセルiにおける経時的な電荷の変動を示す。電荷の変動が図5に示されているセルiは、かなり大きい自己放電不良による電荷の損失を被る。
【0066】
図4にあるように、平衡化は、瞬間tに開始し、平衡化期間Tの満了後に中断され、次いでセルiは、瞬間tまで緩和される。
【0067】
図5のグラフは、第4の垂直下向き矢印46が、本発明による方法の段階P01およびP02の最中にセルiの自己放電Δqi,s(T+T)により放出される電荷の量を概略的に示すという点で図4のグラフとは異なる。
【0068】
図5の場合におけるセルiは自己放電不良を示すので、セルiの電荷に関連付けられたデータは、式(12)に一致することはできない。代わりに、図5の場合におけるセルiの電荷に関連付けられたデータは、式
i,bal(t)=qi,bal(t)-Δq(T)-Δqi,s(T+T) (13)
に一致する。
【0069】
セルiがとても大きい自己放電不良を示す、あるいは平衡化間隔Tおよび/または緩和間隔Tがとても大きい極端な場合には、瞬間tとtの間の放出される電荷の量は、場合によると、瞬間tに計算されるセルiによって予想される放出される電荷qi,bal(t)よりも大きい可能性がある。この場合には、
i,bal(t)-Δq(T)-Δqi,s(T+T)<0 (14)
である。
【0070】
上記に鑑みて、バッテリ10の任意のセルiについて、セルiの自己放電不良は、以下の式:
Σ=qi,bal(t)+Δq(T)-qi,bal(t) (15)
を適用することによりセルiについての電荷平衡Σを計算することによって検出することができる。
【0071】
理論モデルでは、バッテリ10の任意のセルiについて、電荷平衡Σがゼロである場合、セルiの自己放電不良はない。
【0072】
逆に、バッテリ10の任意のセルiについて、厳密に正の平衡Σが計算された場合、セルiの自己放電不良がある。この場合には、セルiの自己放電Δqi,s(T+T)による放出される電荷の量は、式
i,s(T+T)=qi,bal(t)-qi,bal(t)-q(T) (16)
を適用することによって計算することができる。
【0073】
セルiの自己放電電流Ii,sは、式
を適用することによって推定することができる。
【0074】
電荷平衡Σを計算することによってバッテリ10のセルiにおける自己放電不良の存在を検出する理論モデルは、先の文章に示されている。しかしながら、このモデルは、ターゲットセルには適用可能でない。次に、ターゲットセルにおける自己放電不良を検出するのに使用される別の計算を詳述する。
【0075】
この計算については、ターゲットセルがバッテリ10の他のセルよりも検出方法の過程でより急速に放出されるか検出することが必要である。より精確には、バッテリ10の任意のセルi(ここで、セルiはターゲットセル以外である)について、
(t)>q(t)、ここで、q(T)≠0 (18)
である場合、自己放電不良が、ターゲットセルにおいて検出される。
【0076】
したがって、上に示された理論モデルを使用して、バッテリ10のセルのいずれかにおける自己放電不良を検出することができる。しかしながら、実際には、検出を妨げるまたは逆に誤検出という結果になる不正確さの全ての源を考慮に入れるために、有効な検出を実現するように閾値が適用されなければならない。
【0077】
詳細には、バッテリ10の任意のセルiについて、不正確さは、セルiについて予想される平衡化される電荷qi,balの計算に出現し得る。これらの不正確さは、中でも以下の要素から、すなわち、
- ゼロ電流電圧OCVを測定する電圧センサ、
- ゼロ電流電圧OCVの測定前の不十分な緩和時間、
- 電圧OCVの関数として充電状態SOCの値を含むマップの近似、
- 計算または数学モデルによって推定できるにすぎない健康状態SOHを画定する際の近似、
- ファクトリーゲートにおける容量Qの公差における食い違い
から生じ得る。
【0078】
計算では、セルiに関係付けられた大きさについてのみならず、ターゲットセルに関係付けられた大きさについても、前述の不正確さについて考慮がなされなければならない。
【0079】
他の不正確さは、緩和間隔Tの最中にセルiによって実際に放出された電荷の量Δq(T)の計算に出現し得る。
【0080】
示された例によれば、バッテリ10の任意のセルiについて、実際に放出された電荷の量Δq(t)は、式
によって与えられる。
【0081】
この場合には、不正確さの原因は、特に、
- 温度で変化し得る抵抗Rbalの変動性、
- セルiの端子で電圧を測定する電圧センサ
を含む。
【0082】
バッテリ10の任意のセルiについて、実際に放出された電荷の量Δq(t)は、式
Δq(T)=Ibal×ti,bal (11)
によって得ることもできる。
【0083】
この場合には、不正確さの原因は、詳細には、電流センサによって測定されかつ全てのセルについて等しいと仮定される平衡化電流Ibalとセルiを通じて流れる真の平衡化電流Ii,balとの間の差を含む。
【0084】
上記に鑑みて、例示した例では、任意のセルiについて、上述した全ての不正確さを組み込む閾値εが定められる。閾値εを計算するために、セルiについて予想される平衡化される電荷の誤差δqi,bal、およびセルiについて実際に放出された電荷の量の誤差δΔq(T)を計算するための手順を詳述する。バッテリ10の任意のセルiについて、式
i,bal=SOC×Q-SOCtarget×Qtarget (2)
に基づいて、セルiについて予想される平衡化される電荷の一次微分は、
のように展開することができる。
【0085】
この式は、
dqi,bal=QdSOC+SOCdQ-QtargetdSOCtarget-SOCtargetdQtarget (20)
のように簡単にすることができる。
【0086】
したがって、バッテリ10の任意のセルiについて、セルiについて予想される平衡化される電荷の誤差δqi,balは、
δqi,bal=|Q.δSOC|+|SOC.δQ|+|Qtarget.δSOCtarget|+|SOCtarget.δQtarget| (21)
のように計算され、ここで、δSOCはセルiの充電状態の誤差を示し、δQはセルiのキャパシタンスの誤差を示し、δSOCtargetはターゲットセルの充電状態の誤差を示し、δQtargetはターゲットセルの容量の誤差を示す。
【0087】
誤差δqi,balを計算するための上記式は、瞬間tおよびtについて有効である。例えば、バッテリ10の任意のセルiについて、一般的なやり方で推定される充電状態SOCに関する3%の誤差は、δSOCの出現を0.03で置き換えることに相当する。同じことが、δQの出現にも当てはまる。
【0088】
いっそうさらに正確な誤差δqi,balの計算を得るために、誤差δQおよびδSOCは、式
i,bal=f(OCV)×(SOH×Qi,nom)-f(OCVtarget)×(SOHtarget×Qtarget,nom) (4)
を用いてさらに解析され得る。
【0089】
この場合には、バッテリ10の任意のセルiについて、充電状態SOCがゼロ電流電圧に基づいてセルiの緩和後に計算され、誤差δSOCが、
- ゼロ電流電圧OCVの測定前の不十分な緩和時間、
- ゼロ電流電圧OCVを測定する電圧センサ、
- 感度dOCV/dSOCが非線形関数であることにより感度dOCV/dSOCが電圧OCVの関数として変化する電圧OCVの関数として充電状態SOCの値を含むマップの近似
から生じる。
【0090】
実際に放出された電荷の量の誤差δΔq(T)に関しては、バッテリ10の任意のセルiについて、量Δq(T)は、式
によって得ることができる。
【0091】
この数式に基づいて、セルiについて実際に放出された電荷の量の一次微分は、
のように展開することができる。
【0092】
この式は、
のように簡単にすることができる。
【0093】
したがって、バッテリ10の任意のセルiについて、セルiについて実際に放出された電荷の量の誤差δΔq(T)は、
のように計算され、ここで、δRba1は平衡抵抗Rbalの誤差を示し、δγはセルiの端子における電圧の誤差を示す。
【0094】
セルiの端子における電圧の誤差δγは、本質的に白色雑音である。したがって、示された例示的な実施形態では、誤差δγは、ゼロに等しいと仮定される。量Δq(T)は、式
Δq(T)=Ibal×ti,bal (11)
によって得ることもできる。
【0095】
一次微分を展開することによって、
を得る。
【0096】
そして、バッテリ10の任意のセルiについて、セルiについて実際に放出された電荷の量の誤差Δq(T)は、
Δq(T)=|T.Ibal|+|Iba1.T| (26)
のように計算することができ、ここで、Ibalは平衡化電流の誤差を示し、Tは平衡化時間の誤差を示す。
【0097】
誤差Tが無視できるほど小さいので、誤差Tは、通常、ゼロとみなされ得る。
【0098】
上記に鑑みて、バッテリ10の任意のセルiについて、誤差Δq(T)は、2つの簡単にされた式
およびδΔq(T)=|T.δIbal| (28)
のうちの一方を適用することによって計算することができる。
【0099】
バッテリ10の任意のセルiについて、式
Σ=qi,bal(t)+Δq(T)-qi,bal(t) (15)
に基づいて、平衡Σの計算についての式を書くことができ、上記の誤差
Σ=(qi,bal(t)±δqi,bal(t))+(Δq(T)±δΔq(T))-(qi,bal(t)±δqi,bal(t)) (29)
を与える。
【0100】
したがって、式(29)は、
Σ=(qi,bal(t)+Δq(T)-qi,bal(t))±(δqi,bal(t)+δΔq(T)+δqi,bal(t)) (30)
と書くこともできる。
【0101】
したがって、閾値εは、誤差δqi,bal(t)、δqi,bal(t)、およびδΔq(T)について前述した数式を用いて
ε=δqi,bal(t)+δΔq(T)+δqi,bal(t) (31)
のように定められなければならない。
【0102】
そこで、次に、バッテリ10のセルのいずれかにおける自己放電不良を検出するやり方を、理論的にかつ実際的に説明された。図2を参照すると、本発明による方法は、式(15)を用いて電荷平衡Σを計算する第3の段階P03と、式(31)、(21)、(27)、および(28)を用いることによって閾値εを計算する第4の段階P04とを含む。最後に、この方法は、平衡Σと閾値εを比較する第5の段階P05を含む。段階P05において、平衡Σが任意のセルiについて閾値ε以上である場合、セルiについて自己放電不良が検出される。さらに、段階P05の最中、前述のテストは、式(18)の条件が満たされるか見ることによってターゲットセルが自己放電不良を有するか検出するために実行される。
【0103】
このように計算される閾値を用いることによって、自己放電不良の不検出および存在しない自己放電不良の誤検出を防ぐことが可能である。詳細には、閾値εは、蓄電バッテリのセル、特に自動車車両を電動にするタイプのバッテリに悪影響を及ぼす不正確さの大部分を考慮に入れるように適合される。このようにして、本発明による検出方法の信頼性が最大化される。
【0104】
一般的に言えば、本発明による方法は、ソフトウェアの改良を行うことによって、単純に、何らかのハードウェア装置を加えることなく早い段階でバッテリのセル内の自己放電不良を検出するために使用され得る。
【0105】
詳細には、本発明による方法は、長い緩和期間後のセルの充電状態の比較を必要としない。したがって、本発明による方法は、加速される自己放電不良の検出を可能にし、そのためこの検出は、より頻繁に実行することができ、したがって、より早い段階で実行することができる。
図1
図2
図3
図4
図5