(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】B細胞培養法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0781 20100101AFI20221028BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20221028BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221028BHJP
【FI】
C12N5/0781 ZNA
C12N5/078
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2020529602
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(86)【国際出願番号】 EP2018082401
(87)【国際公開番号】W WO2019105864
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-10
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】オフナー ソニア
(72)【発明者】
【氏名】ユング フリーデリケ
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169579(JP,A)
【文献】特表2014-533514(JP,A)
【文献】国際公開第2017/167714(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐ 1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と共培養する段階
を含む、1個または複数個のB細胞を培養するための方法であって、
該EL-4 B5細胞が、該共培養の前に3~7 Gyの線量で照射されており、かつ
該共培養する段階の開始時のEL-4 B5細胞の数が、B細胞1個当たり10,000~30,000個である、
該方法。
【請求項2】
前記共培養する段階がさらにフィーダー混合物の存在下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィーダー混合物が、
(i) インターロイキン-1βおよび腫瘍壊死因子α、
(ii) インターロイキン-2 (IL-2) および/またはインターロイキン-10 (IL-10)、
(iii) 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) 株Cowan細胞 (SAC)、
(iv) インターロイキン-21 (IL-21) および任意でインターロイキン-2 (IL-2)、
(v) 腫瘍壊死因子ファミリーのB細胞活性化因子 (BAFF)、
(vi) インターロイキン-6 (IL-6)、
(vii) インターロイキン-4 (IL-4)、ならびに
(viii) 胸腺細胞培養上清
のうちの1つまたは複数を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィーダー混合物が、
2 ng/mlの(マウス)IL-1β、
2 ng/mlの(マウス)TNFα、
50 ng/mlの(マウス)IL-2、
10 ng/mlの(マウス)IL-10、および
10 ng/mlの(マウス)IL-6、
を含むか、
または
前記各成分を前記各濃度以下の濃度で含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記
各濃度以下の濃度が、IL-1β、TNFα、IL-2、IL-10、およびIL-6の前記濃度の各々の1.0~0.015倍の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィーダー混合物が
、0.125 ng/ml~1 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
単一の置かれたB細胞の培養のためのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記共培養する段階が5~10日間である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1個または複数個のB細胞を共培養する段階が
、3 Gy
~6 Gyの範囲内の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細
胞 10,000
~30,000個を伴う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1個または複数個のB細胞を共培養する段階が
、3 Gy
~6 Gyの範囲内の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細
胞 10,000
~30,000個を伴い、前記フィーダー混合物が
、0.06 ng/mlのIL-1β
、0.06 ng/mlのTNFα
、1.5 ng/mlのIL-2
、0.3 ng/mlのIL-10
、0.3 ng/mlのIL-6、およ
び0.25 ng/ml~0.5 ng/mlのPMAを含む、請求項
2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィーダー混合物が
、0.06 ng/ml
~0.2 ng/mlのIL-1β
、0.06 ng/ml
~0.2 ng/mlのTNFα
、1.5 ng/ml
~5 ng/mlのIL-2
、0.3 ng/ml
~1 ng/mlのIL-10
、0.3 ng/ml
~1 ng/mlのIL-6、およ
び0.43 ng/ml~0.73 ng/mlのPMAを含む、請求項
2~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
10 Gy未満の線量で照射されているEL-4 B5フィーダー細胞とB細胞を共培養するための方法が本明細書において報告される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
モノクローナル抗体を分泌する細胞を得るためには、KoehlerおよびMilsteinによって開発されたハイブリドーマ技術が広く用いられている。しかし、ハイブリドーマ技術では、免疫化実験動物から採取されたB細胞のごく一部のみが融合および増殖され得るにすぎない。B細胞の供給源は一般的に、免疫化実験動物の脾臓などの臓器である。
【0003】
Zubler et al.は、1984年に、モノクローナル抗体を分泌する細胞を得るための異なるアプローチを開発し始めた(例えば、Eur. J. Immunol. 14 (1984) 357-63, J. Exp. Med. 160 (1984) 1170-1183(非特許文献1)を参照されたい)。そこでは、免疫化実験動物の血液からB細胞を採取し、フィーダー混合物を構成するサイトカインの存在下でこれをマウスEL-4 B5フィーダー細胞と共培養する。この方法論では、共培養の10~12日後に、最大で50 ng/mlまでの抗体を得ることができる。
【0004】
Weitkamp, J-H. et al. (J. Immunol. Meth. 275 (2003) 223-237(非特許文献2)) は、蛍光ウイルス様粒子を用いて選択された単一の抗原特異的B細胞からの、ロタウイルスに対する組換えヒトモノクローナル抗体の作製を報告している。複数の同族抗原に対する複数の単離された抗体を生成する方法は、US 2006/0051348(特許文献1)において報告されている。WO 2008/144763(特許文献2)およびWO 2008/045140(特許文献3)では、IL-6に対する抗体およびその使用、ならびに抗原特異的B細胞のクローン集団を得るための培養法がそれぞれ報告されている。抗原特異的B細胞のクローン集団を得るための培養法は、US 2007/0269868(特許文献4)において報告されている。Masri et al. (Mol. Immunol. 44 (2007) 2101-2106(非特許文献3)) は、炭疽毒素に対する単一のヒトリンパ球から得られた機能的Fab断片の大腸菌 (E. coli) におけるクローニングおよび発現を報告している。免疫グロブリンライブラリーを調製するための方法は、WO 2007/ 031550(特許文献5)において報告されている。一般的に、用いられるフィーダー細胞はそれらの成長を阻害するために照射される。
【0005】
WO 84/04458(特許文献6)において、エンドトキシンコアと反応するモノクローナル抗体が開示されている。
【0006】
Pike, B.L.およびNossal, G.J.V.は、推定増殖分化因子のアッセイに適している単一ハプテン特異的Bリンパ球のための高効率クローニング系を報告した (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 (1985) 3395(非特許文献4))。
【0007】
EP 0 488 470(特許文献7)において、抗体を生成する方法が開示されている。WO 90/003400(特許文献8)において、細胞間接着分子およびそれらの結合リガンドが開示されている。Steenbakkers, P.G.A., et al.は、ヒトまたはマウス抗体産生ハイブリドーマを作製するための新たなアプローチを報告した (J. Immunol. Meth. 152 (1992) 69-77(非特許文献5))。WO 93/15205(特許文献9)において、合成インフルエンザ菌 (haemophilus influenzae) コンジュゲートワクチンが開示されている。
【0008】
Steenbakkers, P.G., et al.は、予め選択された抗原特異的B細胞からのヒト抗サイトメガロウイルスIgGモノクローナル抗体の効率的な作製を報告した (Hum. Antibody. Hybridom. 4 (1993) 166-173(非特許文献6))。
【0009】
EP 0 856 520(特許文献10)において、モノクローナル抗体、薬学的組成物、および診断用試薬を調製する方法が開示されている。WO 02/14361(特許文献11)において、がんの処置および検出において有用な、83P2H3およびCaTrF2E11と命名された核酸および対応するタンパク質が開示されている。WO 02/072785(特許文献12)において、がんの処置および検出において有用な、125P5C8と命名された核酸および対応するタンパク質が開示されている。
【0010】
WO 2005/042019(特許文献13)において、抗胸腺細胞抗血清およびB細胞アポトーシスを誘発するためのその使用が開示されている。WO 2011/147903(特許文献14)において、単一B細胞培養法が報告されている。US 7,807,415(特許文献15)において、安定した不死化Bリンパ球を生成する方法が報告されている。
【0011】
WO 2017/167714(特許文献16)は、任意の供給源であってよい単一の置かれたB細胞を、適切な共培養用培地中でフィーダー細胞と共培養するための方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】US 2006/0051348
【文献】WO 2008/144763
【文献】WO 2008/045140
【文献】US 2007/0269868
【文献】WO 2007/ 031550
【文献】WO 84/04458
【文献】EP 0 488 470
【文献】WO 90/003400
【文献】WO 93/15205
【文献】EP 0 856 520
【文献】WO 02/14361
【文献】WO 02/072785
【文献】WO 2005/042019
【文献】WO 2011/147903
【文献】US 7,807,415
【文献】WO 2017/167714
【非特許文献】
【0013】
【文献】Zubler et al., Eur. J. Immunol. 14 (1984) 357-63, J. Exp. Med. 160 (1984) 1170-1183
【文献】Weitkamp, J-H. et al., J. Immunol. Meth. 275 (2003) 223-237
【文献】Masri et al., Mol. Immunol. 44 (2007) 2101-2106
【文献】Pike, B.L. and Nossal, G.J.V., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 (1985) 3395
【文献】Steenbakkers, P.G.A.et al., J. Immunol. Meth. 152 (1992) 69-77
【文献】Steenbakkers, P.G.et al., Hum. Antibody. Hybridom. 4 (1993) 166-173
【発明の概要】
【0014】
任意の供給源のものであってよい単一の置かれたB細胞を、適切な共培養用培地中でEL-4 B5フィーダー細胞と共培養するための方法が、本明細書において報告される。本明細書において報告される方法では、EL-4 B5細胞は、10 Gy未満、好ましくは6 Gyまたはそれ未満の線量で照射されている。それによって、培養においてEL-4 B5細胞は、高い生存率で分裂する能力を維持する。したがって、特に低照射線量が用いられる場合には、分裂EL-4 B5細胞による単一B細胞およびその子孫の過剰増殖を妨げるために、EL-4 B5細胞の細胞数を減少させることが賢明である。
【0015】
本発明による方法は、治療用抗体の作製中の最初の段階の1つとして用いられる。
【0016】
本発明による方法は、血液もしくは脾臓などの任意の起源の、または例えば、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、もしくはヒトトランスジェニック動物などの任意の動物由来の任意のB細胞と共に用いることができる。供給源がヒトトランスジェニック動物である場合、本発明による方法で同定され単離されたB細胞によって産生された抗体は、治験に直接使用することができる。
【0017】
本発明は、少なくとも一部は、単一の置かれたB細胞との共培養において用いようとするEL-4 B5フィーダー細胞の照射の線量を、共培養するB細胞の増殖を刺激するというEL-4 B5フィーダー細胞の目的を妨げることなく、0~9.5 Gyまで低下させることができるという知見に基づく。
【0018】
本発明は、少なくとも一部は、(単一の置かれた)B細胞との共培養法において、0 Gy~9.5 Gy、すなわち9.5 Gyまたはそれ未満の低照射線量で前処理されたEL-4 B5細胞を用いる場合、B細胞のIgG産生が増加し得るという知見に基づく。
【0019】
本発明は、少なくとも一部は、(単一の置かれた)B細胞との共培養法において、約4 Gyの低照射線量で前処理されたEL-4 B5細胞を用いる場合、とりわけ、IgG陽性ウェルの数が増加し得るという知見に基づく。
【0020】
本発明は、少なくとも一部は、(単一の置かれた)B細胞との共培養法において、非照射EL-4 B5細胞を使用することも可能であるという知見に基づく。
【0021】
本発明は、少なくとも一部は、フィーダー細胞の照射線量を低下させることにより、減少した数のフィーダー細胞が共培養に必要であるという知見に基づく。フィーダー細胞はまた、それ自体で生成されなければならない。これは、照射前の付加的な培養において行われる。共培養1回当たりに必要なフィーダー細胞の数を減少させることにより、同じフィーダー細胞培養物から、増加した数の共培養物を接種することができる。それにより、操作時間 (hands-on-time) およびコストが減少する。同様に、フィーダー細胞はより生存可能であるため、フィーダー混合物の量を減少させることができ、これによって関連コストもまた減少する。
【0022】
本発明は、少なくとも一部は、EL-4 B5フィーダー細胞の照射線量と、(i) 共培養において必要な細胞の数と、(ii) 単一の置かれたB細胞と、必要なフィーダー混合物の濃度と、(iii) IgG陽性培養物の生産性および数と、ならびに(iv) 時間およびコストとの間の相互関係の知見に基づく。
【0023】
これは、とりわけ、必要な非照射EL-4 B5細胞数の減少、およびそれによって物品の関連コストの減少をもたらす。
【0024】
本明細書において報告される個々の局面は、
(i) 単離されたB細胞またはB細胞クローンが、標的に特異的に結合する抗体を産生する、B細胞の集団からのB細胞またはB細胞クローンの単離、
(ii) 単一の置かれたB細胞の共培養、および
(iii) 抗体の生成
のための方法である。
【0025】
前記方法に付随して、対応する使用もまた包含および開示される。
【0026】
本明細書において報告される1つの局面は、
‐ 1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と共培養する段階
を含む、1個または複数個のB細胞を共培養するための方法であって、
EL-4 B5細胞が、共培養の前に9.5 Gyまたはそれ未満の線量で照射されている、方法である。
【0027】
1つの態様において、前記方法は、
‐ 1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と混合する段階、および
‐ 1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と共培養する段階
を含む。
【0028】
1つの態様において、EL-4 B5細胞の数(共培養の開始時)は、B細胞1個当たり5×104個未満である。
【0029】
1つの態様において、照射は、9.5 Gyまたはそれ未満でかつ0 Gyを超える線量による。
【0030】
本発明による方法の1つの態様において、EL-4 B5細胞の数は、B細胞1個当たりEL-4 B5細胞1×104個未満である(本態様において、照射は0 Gyによる)。1つの態様において、EL-4 B5細胞の数は、B細胞1個当たりEL-4 B5細胞7.5×103個未満である。
【0031】
本発明による方法の1つの態様において、共培養する段階はさらにフィーダー混合物の存在下である。
【0032】
1つの態様において、フィーダー混合物(サイトカイン混合物、CM)は、
(i) インターロイキン-1βおよび腫瘍壊死因子α、
(ii) インターロイキン-2 (IL-2) および/またはインターロイキン-10 (IL-10)、
(iii) 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) 株Cowan細胞 (SAC)、
(iv) インターロイキン-21 (IL-21) および任意でインターロイキン-2 (IL-2)、
(v) 腫瘍壊死因子ファミリーのB細胞活性化因子 (BAFF)、
(vi) インターロイキン-6 (IL-6)、
(vii) インターロイキン-4 (IL-4)、ならびに
(viii) 胸腺細胞培養上清
のうちの1つまたは複数を含む。
【0033】
1つの態様において、フィーダー混合物は、
約2 ng/mlまでの(マウス)IL-1β、
約2 ng/mlまでの(マウス)TNFα、
約50 ng/mlまでの(マウス)IL-2、
約10 ng/mlまでの(マウス)IL-10、および
約10 ng/mlまでの(マウス)IL-6、
またはそれらの一部分を含む。
【0034】
1つの態様において、フィーダー混合物は、
5.5~14*108 IU/mgを有する約2 ng/mlまでの(マウス)IL-1β、
2.3~2.9*108 U/mgを有する約2 ng/mlまでの(マウス)TNFα、
6~7(好ましくは6.3)*106 IU/mgを有する約50 ng/mlまでの(マウス)IL-2、
6~7.5*105 IU/mgを有する約10 ng/mlまでの(マウス)IL-10、および
9.2~16.1 *108 U/mgを有する約10 ng/mlまでの(マウス)IL-6、
またはそれらの一部分を含む。
【0035】
したがって、濃度は上限値である。
【0036】
1つの態様において、フィーダー混合物の割合は、IL-1β、TNFα、IL-2、IL-10、およびIL-6の前記濃度の各々の1.0~0.015倍の範囲内である。
【0037】
1つの態様において、フィーダー混合物の割合は、IL-1β、TNFα、IL-2、IL-10、およびIL-6の前記濃度の各々の0.75倍、0.5倍、0.32倍、0.25倍、0.1倍、0.066倍、0.032倍、0.015倍、0.01倍、0.0075倍、および0.0038倍からなる割合の群より選択される。
【0038】
1つの態様において、フィーダー混合物は、約0.01 ng/ml~1.0 ng/mlのホルボールミリステートアセテート (PMA) をさらに含む。1つの態様において、フィーダー混合物は、約0.01 ng/ml~0.5 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。
【0039】
1つの態様において、1個または複数個のB細胞を共培養するための方法は、
- フィーダー混合物の存在下で1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と共培養する段階
を含み、ここで、
EL-4 B5細胞は、共培養の前に9.5 Gyまたはそれ未満の線量で照射されており、
EL-4 B5細胞の数(共培養する段階の開始時)は、B細胞1個当たりEL-4 B5細胞4×104個未満であり、
フィーダー混合物フィーダー混合物は、
5.5~14*108 IU/mgを有する約2 ng/mlまでの(マウス)IL-1β、
2.3~2.9*108 U/mgを有する約2 ng/mlまでの(マウス)TNFα、
6~7(好ましくは6.3)*106 IU/mgを有する約50 ng/mlまでの(マウス)IL-2、
6~7.5*105 IU/mgを有する約10 ng/mlまでの(マウス)IL-10、および
9.2~16.1 *108 U/mgを有する約10 ng/mlまでの(マウス)IL-6、
またはIL-1β、TNFα、IL-2、IL-10、およびIL-6の該濃度の各々の0.75倍、0.5倍、0.32倍、0.25倍、0.1倍、0.066倍、0.032倍、0.015倍、0.01倍、0.0075倍、もしくは0.0038倍の割合
を含み、
かつ
フィーダー混合物は、約0.01 ng/ml~1.0 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。
【0040】
1つの態様において、フィーダー混合物は、黄色ブドウ球菌株Cowans細胞 (SAC) および胸腺細胞培養上清を含む。
【0041】
1つの態様において、前記方法は1個のB細胞の共培養のためのものである。1つの好ましい態様において、1個のB細胞は単一の置かれたB細胞である。
【0042】
1つの態様において、共培養する段階は5~10日間である。1つの好ましい態様において、共培養する段階は約7日間である。
【0043】
本明細書において報告される1つの局面は、
- フィーダー混合物の存在下で1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と共培養する段階
を含む、1個または複数個のB細胞の生産性を高めるための方法であり、ここで、
EL-4 B5細胞は、共培養の前に9.5 Gyまたはそれ未満の線量で照射されており、
EL-4 B5細胞の数(共培養する段階の開始時)は、B細胞1個当たりEL-4 B5細胞4×104個未満であり、
フィーダー混合物フィーダー混合物は、照射線量に応じて、IL-1β、TNFα、IL-2、IL-10、およびIL-6の以下の濃度:
5.5~14*108 IU/mgを有する約2 ng/mlの(マウス)IL-1β、
2.3~2.9*108 U/mgを有する約2 ng/mlの(マウス)TNFα、
6~7(好ましくは6.3)*106 IU/mgを有する約50 ng/mlの(マウス)IL-2、
6~7.5*105 IU/mgを有する約10 ng/mlの(マウス)IL-10、および
9.2~16.1 *108 U/mgを有する約10 ng/mlの(マウス)IL-6、
の各々の0.75倍、0.5倍、0.32倍、0.25倍、0.1倍、0.066倍、0.032倍、0.015倍、0.01倍、0.0075倍、または0.0038倍の割合
を含み、
かつ、フィーダー混合物は、約0.01 ng/ml~1.0 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。
【0044】
本明細書において報告される1つの局面は、
- フィーダー混合物の存在下で1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と共培養する段階
を含む、単一の置かれたかつ培養されたB細胞のIgG陽性ウェルの数を増加させるための方法であり、ここで、
EL-4 B5細胞は、共培養の前に9.5 Gyまたはそれ未満の線量で照射されており、
EL-4 B5細胞の数(共培養する段階の開始時)は、B細胞1個当たりEL-4 B5細胞4×104個未満であり、
フィーダー混合物フィーダー混合物は、照射線量に応じて、IL-1β、TNFα、IL-2、IL-10、およびIL-6の以下の濃度:
5.5~14*108 IU/mgを有する約2 ng/mlの(マウス)IL-1β、
2.3~2.9*108 U/mgを有する約2 ng/mlの(マウス)TNFα、
6~7(好ましくは6.3)*106 IU/mgを有する約50 ng/mlの(マウス)IL-2、
6~7.5*105 IU/mgを有する約10 ng/mlの(マウス)IL-10、および
9.2~16.1 *108 U/mgを有する約10 ng/mlの(マウス)IL-6、
の各々の0.75倍、0.5倍、0.32倍、0.25倍、0.1倍、0.066倍、0.032倍、0.015倍、0.01倍、0.0075倍、または0.0038倍の割合
を含み、
かつ、フィーダー混合物は、約0.01 ng/ml~1.0 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。
【0045】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される共培養法を含む、抗体を生成するための方法である。
【0046】
本明細書において報告されるすべての方法および使用は、
- (単一の置かれた各)B細胞またはB細胞(のプール)を、フィーダー混合物が補充された共培養用培地中でフィーダー細胞と(個々に)共培養する段階
を含む。
【0047】
共培養の結果は、B細胞クローン、すなわち、単一B細胞の子孫であるB細胞の集団である。
【0048】
1つの態様において、本明細書において報告される方法は、共培養する段階の前に、
‐ 1~3種類の蛍光標識抗B細胞表面マーカー抗体と接触させ、該抗体に基づいてかつそれによりフルオロフォアがB細胞に結合しているおよび/または結合していないB細胞の集団のB細胞を、単一B細胞として置く段階
をさらに含む。
【0049】
1つの態様において、本明細書において報告される方法は、共培養する段階の前に、
‐ 異なるB細胞表面抗原にそれぞれが特異的に結合し、1~3種類の蛍光色素で標識されている2~4種類の抗体と接触させたB細胞の集団のB細胞を、単一細胞として置く段階であって、各抗体が異なる蛍光色素にコンジュゲートされている、段階
をさらに含む。
【0050】
標識化は、1つの態様において、B細胞集団を(連続してまたは同時に)2~4種類の蛍光標識抗体と接触させることによる。それによって、標識B細胞集団が得られる。蛍光標識抗体の各々は、異なるB細胞表面マーカー/標識に結合する。
【0051】
置く段階は、標識されたB細胞調製物をフローサイトメーターに導入し、かつ1~3種類の蛍光標識で標識された細胞を単一細胞として置くことによる。セルソーターにおいて細胞を選別するために用いられるより多くの蛍光色素と共に細胞をインキュベートすることが可能であるため、細胞を特定の表面マーカーの存在、および(任意で)同時に他の表面マーカーの非存在について選択することができる。
【0052】
標識化および単一細胞デポジションは、意図される特徴を有する抗体を産生する可能性が低いB細胞を枯渇させることによりB細胞集団の複雑さを減少させるために行われる。標識抗体は、B細胞の表面上に提示された特定のポリペプチドに結合し、したがって陽性選択標識を提供する。同様に、B細胞と共にインキュベートされた標識抗体の数と比較して、少ない数の蛍光色素でしか標識されない細胞、例えば2種類のうち1種類(すなわち、2種類の蛍光標識抗体とのインキュベーションが行われたが、そのうちの1種類のみがB細胞に結合する)の蛍光標識を有する細胞などを選択することも可能である。B細胞集団の個々のB細胞に対する蛍光標識抗体の結合/非結合に基づき、マイクロ流体選別装置を用いて標的B細胞を同定および分離することが可能である。選別と同時に、標識の量を決定することもできる。
【0053】
1つの態様において、本明細書において報告される方法は、単一細胞を置くこと/単一細胞デポジションの前に、B細胞の集団を共培養用培地中で、フィーダー細胞なしで/フィーダー細胞の非存在下でインキュベートする段階をさらに含む。1つの態様において、インキュベートする段階は約37℃である。1つの態様において、インキュベートする段階は約0.5~約2時間である。1つの態様において、インキュベートする段階は約1時間である。1つの好ましい態様において、インキュベートする段階は約37℃で約1時間である。
【0054】
1つの態様において、本明細書において報告される方法は、置く段階の後、かつ共培養する段階の前であるがEL-4 B5フィーダー細胞の添加後に、単一細胞として置かれたB細胞を遠心分離する段階をさらに含む。この理論によって縛られることはないが、それによりフィーダー細胞とB細胞との間の物理的接触が増えると想定される。1つの態様において、遠心分離する段階は約1分~約30分間である。1つの態様において、遠心分離する段階は約5分間である。1つの態様において、遠心分離する段階は約100×g~約1,000×gである。1つの態様において、遠心分離する段階は約300×gである。1つの好ましい態様において、遠心分離する段階は約300×gで約5分間である。
【0055】
1つの態様において、B細胞(クローン)を選択する/得るための方法は、
(a) (任意で、B細胞集団を、2~5種類の異なる所定のB細胞表面マーカーに特異的に結合する2~5種類の蛍光標識抗体と共にインキュベートすることにより)B細胞の集団のB細胞を(1~5種類の)蛍光色素で標識する段階、
(b) 任意で、標識細胞を共培養用培地中でインキュベートする段階、
(c) 少なくとも1種類(1~5種類)の蛍光色素で標識された(および任意で、他の蛍光色素で標識されていない)B細胞の集団のB細胞を、9.5 Gyまたはそれ未満の線量で照射されたEL-4 B5フィーダー細胞上に単一細胞として置く段階、
(d) 任意で、単一の置かれたB細胞/フィーダー細胞混合物を遠心分離する段階、
(e) 単一の置かれた各B細胞を、フィーダー混合物が補充された共培養用培地中でフィーダー細胞と(個々に)共培養する段階、
(f) 段階(e)における、増殖しかつ抗体を分泌するB細胞クローンを選択する段階
をさらに含む。
【0056】
1つの態様において、標的に特異的に結合する抗体を生成するための方法は、
(a) (任意で、B細胞集団を、2~5種類の異なる所定のB細胞表面マーカーに特異的に結合する2~5種類の蛍光標識抗体と共にインキュベートすることにより)B細胞の集団のB細胞を(1~5種類の)蛍光色素で標識する段階、
(b) 任意で、細胞を共培養用培地中でインキュベートする段階、
(c) 少なくとも1種類(1~5種類)の蛍光色素で標識された(および任意で、他の蛍光色素で標識されていない)B細胞の集団のB細胞を、9.5 Gyまたはそれ未満の線量で照射されたEL-4 B5フィーダー細胞上に単一細胞として置く段階、
(d) 任意で、単一の置かれたB細胞/フィーダー細胞混合物を遠心分離する段階、
(e) 単一の置かれた各B細胞を、フィーダー混合物が補充された共培養用培地中でフィーダー細胞と(個々に)共培養する段階、
(f) 抗体を分泌する、段階(e)のB細胞クローンを選択する段階、
(g)(i) 段階(g)において選択されたB細胞クローンから、分泌された抗体の可変ドメインをコードする1つまたは複数の核酸を得る段階、
(ii) B細胞クローンがヒトB細胞クローンではない場合、可変ドメインをヒト化し、各コード核酸を提供する段階、および
(iii) 1つまたは複数の核酸を、定常領域をコードする核酸配列とインフレームで、1つまたは複数の発現ベクターに導入する段階、
(h) 段階(g)の1つまたは複数の発現ベクターでトランスフェクトした細胞(任意で、CHO細胞およびBHK細胞より選択される)を培養し、細胞または細胞培養上清から抗体を回収し、それによって抗体を生成する段階
をさらに含む。
【0057】
1つの態様において、抗体を生成するための方法は、
(a) (任意で、B細胞集団を、2~5種類の異なる所定のB細胞表面マーカーに特異的に結合する2~5種類の蛍光標識抗体と共にインキュベートすることにより)B細胞の集団のB細胞を(1~5種類の)蛍光色素で標識する段階、
(b) 任意で、細胞を共培養用培地中でインキュベートする段階、
(c) 少なくとも1種類(1~5種類)の蛍光色素で標識された(および任意で、他の蛍光色素で標識されていない)B細胞の集団のB細胞を、9.5 Gyまたはそれ未満の線量で照射されたEL-4 B5フィーダー細胞上に単一細胞として置く段階、
(d) 任意で、単一の置かれたB細胞/フィーダー細胞混合物を遠心分離する段階、
(e) 単一の置かれた各B細胞を、フィーダー混合物が補充された共培養用培地中でフィーダー細胞と(個々に)共培養する段階、
(f) 共培養されたB細胞の培養用培地中に分泌された抗体の結合特異性を、各上清について個々に決定する段階、
(g) 分泌された抗体の結合特性に基づいて、段階(f)のB細胞クローンを選択する段階、
(h) 逆転写PCRおよびヌクレオチド配列決定により、段階(g)において選択されたB細胞クローンから、分泌された抗体の可変ドメインをコードする1つまたは複数の核酸を得る、(およびそれによってモノクローナル抗体可変軽鎖および重鎖ドメインをコードする核酸を得る)段階、
(i) B細胞が非ヒトB細胞である場合、可変軽鎖および重鎖ドメインをヒト化し、ヒト化可変ドメインをコードする核酸を提供する段階、
(j) モノクローナル抗体可変軽鎖および重鎖可変ドメインをコードする核酸を、(ヒトまたはヒト化)抗体の発現のために、(抗体定常ドメインをコードする核酸配列とインフレームで)1つまたは複数の発現ベクターに導入する段階、
(k) 発現ベクターを哺乳動物細細胞(任意で、CHO細胞およびBHK細胞より選択される)に導入する段階、
(l) 細胞を培養し、細胞または細胞培養上清から抗体を回収し、それによって抗体を生成する段階
をさらに含む。
【0058】
1つの態様において、B細胞クローンから、分泌された抗体の可変ドメインをコードする1つまたは複数の核酸を得る段階は、
‐ 抗体産生B細胞クローンからの全RNAを抽出する段階、
‐ 抽出されたポリA+ mRNAの一本鎖cDNA合成/逆転写を実施する段階、
‐ 1組の種特異的プライマーを用いたPCRを実施する段階、
‐ 任意で、PCRプライマーを除去/PCR産物を精製する段階、
‐ 任意で、PCR産物を配列決定する段階
をさらに含む。
【0059】
1つの態様において、モノクローナル抗体可変軽鎖および/または重鎖可変ドメインをコードする核酸を、(ヒトまたはヒト化)抗体の発現のために発現ベクターに導入する段階は、
‐ 可変軽鎖および重鎖可変ドメインのT4ポリメラーゼインキュベーション段階、
‐ 発現ベクターの線状化および増幅の段階、
‐ 増幅された発現ベクターのT4ポリメラーゼインキュベーション段階、
‐ 増幅された発現ベクター中への、可変ドメインをコードする核酸の配列決定およびライゲーション非依存的クローニングの段階、ならびに
‐ ベクターで形質転換された大腸菌 (E. coli) 細胞のプールからのベクターの調製段階
をさらに含む。
【0060】
すべての局面の1つの態様において、前記方法は、標識する段階の直前に、
‐ B細胞の集団を、固体表面上に固定化されている(標的)抗原と共にインキュベートし、固定化抗原に結合しているB細胞(のみ)を回収する段階
をさらに含む。
【0061】
すべての局面の1つの態様において、B細胞の集団は非ヒト動物B細胞集団である。1つの態様において、B細胞集団は、マウスB細胞集団、またはハムスターB細胞集団、またはウサギB細胞集団、またはヒト免疫グロブリン遺伝子座トランスジェニック動物B細胞集団である。1つの好ましい態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団またはヒト免疫グロブリン遺伝子座トランスジェニックウサギB細胞集団である。
【0062】
すべての局面の1つの態様において、B細胞の集団は、免疫化の少なくとも4日後に非ヒト動物の血液から採取される。1つの態様において、B細胞の集団は、免疫化の4日後から最長13日後までに非ヒト動物の血液から採取される。
【0063】
1つの態様において、B細胞集団はヒトB細胞集団である。
【0064】
すべての局面の1つの態様において、B細胞の集団は密度勾配遠心分離によって血液から採取される。
【0065】
すべての局面の1つの態様において、B細胞は成熟B細胞である。
【0066】
すべての局面の1つの態様において、単一細胞はマルチウェルプレートのウェル中に(個々に)置かれる。
【0067】
すべての局面の1つの態様において、フィーダー混合物は、天然胸腺細胞培養上清 (TSN) または規定および/もしくは合成フィーダー混合物である。1つの態様において、胸腺細胞培養上清は若年動物の胸腺の胸腺細胞から得られる。
【0068】
すべての局面の1つの特定の態様において、フィーダー混合物は規定および/または合成フィーダー混合物である。1つの態様において、規定および/または合成フィーダー混合物は、
(i) インターロイキン-1βおよび腫瘍壊死因子α、ならびに/または
(ii) インターロイキン-2 (IL-2) および/もしくはインターロイキン-10 (IL-10) 、ならびに/または
(iii) 黄色ブドウ球菌株Cowan細胞 (SAC)、ならびに/または
(iv) インターロイキン-21 (IL-21) および任意でインターロイキン-2 (IL-2)、ならびに/または
(v) 腫瘍壊死因子ファミリーのB細胞活性化因子 (BAFF)、ならびに/または
(vi) インターロイキン-6 (IL-6)、ならびに/または
(vii) インターロイキン-4 (IL-4)
を含む。
【0069】
1つの態様において、フィーダー混合物は、IL-1βと、TNF-αと、IL-10、IL-21、SAC、BAFF、IL-2、IL-4、およびIL-6より選択される1つまたは複数とを含む。
【0070】
1つの態様において、フィーダー混合物はIL-1β、TNF-α、IL-10、SAC、およびIL-2を含む。
【0071】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団であり、フィーダー混合物は胸腺細胞培養上清である。
【0072】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団であり、フィーダー混合物は、IL-1β、TNF-α、ならびにIL-2、IL-6、およびIL-10のうちの任意の2つからなる。
【0073】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団であり、フィーダー混合物はIL-1β、TNF-α、IL-6、およびIL-10からなる。
【0074】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団であり、フィーダー混合物はIL-1β、TNF-α、IL-10、SAC、およびIL-2またはIL-6を含む。
【0075】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団であり、フィーダー混合物は、IL-1β、TNF-α、IL-21、ならびにIL-2、IL-10、およびIL-6のうちの少なくとも1つを含む。
【0076】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はマウスB細胞集団であり、フィーダー混合物は、IL-1β、TNF-α、ならびに任意でBAFF、SAC、IL-21、およびIL-6のうちの1つまたは複数を含む。
【0077】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はマウスB細胞集団であり、フィーダー混合物は、IL-1β、IL-2、IL-10、TNF-α、BAFF、および任意でIL-4を含む。
【0078】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はマウスB細胞集団であり、フィーダー混合物はIL-1β、IL-2、IL-10、TNF-α、およびIL-6を含む。
【0079】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はハムスターB細胞集団であり、フィーダー混合物は、IL-1β、TNF-α、ならびにIL-2、IL-6、およびIL-10のうちの任意の1つからなる。
【0080】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はハムスターB細胞集団であり、フィーダー混合物は、IL-2またはIL-10およびIL-1βおよびTNF-α、ならびに任意でSAC、IL-21、およびBAFFのうちの1つまたは複数を含む。
【0081】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はハムスターB細胞集団であり、フィーダー混合物はIL-1β、TNF-α、IL-2、IL-6、およびIL-10からなる。
【0082】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はハムスターB細胞集団であり、フィーダー混合物はIL-1β、TNF-α、IL-2、IL-6、IL-10、およびSACからなる。
【0083】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はハムスターB細胞集団であり、フィーダー混合物は、IL-1β、TNF-α、IL-6、任意でSAC、IL-2およびIL-10および任意でIL-4のうちの少なくとも1つを含む。
【0084】
すべての局面の1つの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。
【0085】
すべての局面の1つの態様において、B細胞の集団のB細胞の標識化は、(全)B細胞集団の細胞の0.1%~2.5%の標識化をもたらす。
【0086】
すべての局面の1つの態様において、標識化はB細胞表面IgGのものである。
【0087】
すべての局面の1つの好ましい態様において、インキュベーションは蛍光標識抗IgG抗体および蛍光標識抗IgM抗体を伴い(標識化は細胞表面IgGおよび細胞表面IgMのものである)、選択は細胞表面IgGについて陽性でかつ細胞表面IgMについて陰性の細胞のものである(IgG+IgM--B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)。
【0088】
すべての局面の1つの態様において、インキュベーションは蛍光標識抗IgG抗体および蛍光標識抗軽鎖抗体を伴い(標識化は細胞表面IgGおよび細胞表面抗体軽鎖のものである)、選択は細胞表面IgGについて陽性でかつ細胞表面抗体軽鎖について陽性の細胞のものである(IgG+LC+-B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)。
【0089】
すべてのこれまでの態様の1つの態様において、インキュベーションは加えて蛍光標識抗軽鎖抗体を伴い(標識化は、他の2つの標識に加えて細胞表面抗体軽鎖のものである)、選択は細胞表面抗体軽鎖について陽性の細胞のものである(LC+-B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)。
【0090】
すべての局面の1つの好ましい態様において、インキュベーションは蛍光標識抗IgG抗体および蛍光標識抗IgM抗体を伴い(標識化は細胞表面IgGおよび細胞表面IgMのものである)、選択は細胞表面IgGについて陽性でかつ細胞表面IgMについて陰性の細胞のものであり(IgG+IgM--B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)、この場合、B細胞の集団は、固体表面上に固定化されている(標的)抗原と共にインキュベートされ、かつ固定化抗原に結合しているB細胞(のみ)が回収されて蛍光標識抗体とのインキュベーションに供される。
【0091】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団であり、インキュベーションは蛍光標識抗IgG抗体を伴い(標識化は細胞表面IgGのものである)、選択は細胞表面IgGについて陽性の細胞のものである(IgG+-B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)。
【0092】
すべての局面の1つの態様において、ウサギB細胞のインキュベーションは加えて蛍光標識抗軽鎖抗体を伴い(標識化は、他の2つの標識に加えて細胞表面抗体軽鎖のものである)、選択は細胞表面抗体軽鎖について陽性の細胞のものである(LC+-B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)。
【0093】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団であり、インキュベーションは蛍光標識抗IgG抗体および蛍光標識抗IgM抗体を伴い(標識化は細胞表面IgGおよび細胞表面IgMのものである)、選択は細胞表面IgGについて陽性でかつ細胞表面IgMについて陰性の細胞のものである(IgG+IgM--B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)。
【0094】
すべての局面の好ましい態様において、B細胞集団はウサギB細胞集団であり、インキュベーションは、蛍光標識抗IgG抗体、蛍光標識抗IgM抗体、および蛍光標識抗軽鎖抗体を伴い(標識化は細胞表面IgG、細胞表面IgM、および細胞表面軽鎖のものである)、選択は細胞表面IgGおよび軽鎖について陽性でかつ細胞表面IgMについて陰性の細胞のものである(IgG+IgM--B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)。
【0095】
すべての局面の1つの態様において、B細胞集団はマウスB細胞集団であり、インキュベーションは蛍光標識抗IgG抗体を伴い(標識化は細胞表面IgGのものである)、選択は細胞表面IgGについて陽性の細胞のものである(IgG+-B細胞の単一細胞デポジションをもたらす)。
【0096】
すべての局面の1つの態様において、共培養する段階は、10% (v/v) FCS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む1% (w/v) の200 mMグルタミン溶液、2% (v/v) の100 mMピルビン酸ナトリウム溶液、ならびに1% (v/v) の1 M 2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン)-エタンスルホンサン (HEPES) 緩衝液を補充したRPMI 1640培地を含む共培養用培地中においてである。1つの態様において、共培養用培地は0.05 mM β-メルカプトエタノールをさらに含む。
【0097】
1つの態様において、動物は実験動物である。1つの態様において、実験動物はマウス、ハムスター、およびウサギより選択される。1つの態様において、実験動物はウサギである。
[本発明1001]
‐ 1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と共培養する段階
を含む、1個または複数個のB細胞を培養するための方法であって、
該EL-4 B5細胞が、該共培養の前に9.5 Gyまたはそれ未満の線量で照射されており、かつ
該共培養する段階の開始時のEL-4 B5細胞の数が、B細胞1個当たり5×10
4
個未満である、
該方法。
[本発明1002]
前記共培養する段階がさらにフィーダー混合物の存在下である、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記フィーダー混合物が、
(i) インターロイキン-1βおよび腫瘍壊死因子α、
(ii) インターロイキン-2 (IL-2) および/またはインターロイキン-10 (IL-10)、
(iii) 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) 株Cowan細胞 (SAC)、
(iv) インターロイキン-21 (IL-21) および任意でインターロイキン-2 (IL-2)、
(v) 腫瘍壊死因子ファミリーのB細胞活性化因子 (BAFF)、
(vi) インターロイキン-6 (IL-6)、
(vii) インターロイキン-4 (IL-4)、ならびに
(viii) 胸腺細胞培養上清
のうちの1つまたは複数を含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記フィーダー混合物が、
約2 ng/mlの(マウス)IL-1β、
約2 ng/mlの(マウス)TNFα、
約50 ng/mlの(マウス)IL-2、
約10 ng/mlの(マウス)IL-10、および
約10 ng/mlの(マウス)IL-6、
またはそれらの一部分
を含む、本発明1002または1003の方法。
[本発明1005]
前記フィーダー混合物の割合が、IL-1β、TNFα、IL-2、IL-10、およびIL-6の前記濃度の各々の1.0~0.015倍の範囲内である、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記フィーダー混合物が、約0.125 ng/ml~1 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む、本発明1003~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
単一の置かれたB細胞の培養のためのものである、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記共培養する段階が5~10日間である、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
前記1個または複数個のB細胞を共培養する段階が、約3 Gy~約6 Gyの範囲内の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細胞 約10,000~約30,000個を伴う、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記1個または複数個のB細胞を共培養する段階が、約3 Gy~約6 Gyの範囲内の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細胞 約10,000~約30,000個を伴い、前記フィーダー混合物が、約0.06 ng/mlのIL-1β、約0.06 ng/mlのTNFα、約1.5 ng/mlのIL-2、約0.3 ng/mlのIL-10、約0.3 ng/mlのIL-6、および約0.25 ng/ml~0.5 ng/mlのPMAを含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記1個または複数個のB細胞を共培養する段階が、0 Gy~3 Gy未満の範囲内の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細胞 約2,500~約7,500個を伴う、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記1個または複数個のB細胞を共培養する段階が、0 Gy~3 Gy未満の範囲内の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細胞 約2,500~約7,500個を伴い、前記フィーダー混合物が、約0.06 ng/ml~約0.2 ng/mlのIL-1β、約0.06 ng/ml~約0.2 ng/mlのTNFα、約1.5 ng/ml~約5 ng/mlのIL-2、約0.3 ng/ml~約1 ng/mlのIL-10、約0.3 ng/ml~約1 ng/mlのIL-6、および約0.43 ng/ml~0.73 ng/mlのPMAを含む、本発明1001~1008および1011のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】0 Gy~50 Gyの線量による照射後7日間の期間にわたって測定された、(x日目における全細胞数と0日目における全細胞数の比 (dx/d0) として算出された)EL-4 B5細胞の相対的増殖。
【
図2】単一の置かれたB細胞と、それぞれ3 Gy、4 Gy、5 Gy、8 Gy、10 Gy、または50 Gyで照射されたEL-4 B5細胞20,000個 (20k) または50,000個 (50k) との共培養後の、全ウェルに対する%でのrbIgG+ウェル(ウサギIgG陽性ウェル)の頻度。3枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
【
図3】単一の置かれたB細胞と、それぞれ3 Gy、4 Gy、5 Gy、8 Gy、10 Gy、または50 Gyで照射された20kまたは50k EL-4 B5細胞との共培養後の、μg/mlでの、IgG分泌B細胞クローン(単一の置かれたB細胞子孫)の平均IgG濃度、すなわち生産性。3枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
【
図4】単一の置かれたB細胞と、(4 Gyで照射された)10k~50k/ウェルの異なるEL-4 B5細胞数との共培養後の、全ウェルに対する%でのrbIgG+ウェルの頻度。4枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
【
図5】単一の置かれたB細胞と、(4 Gyで照射された)10k~50k/ウェルの異なるEL-4 B5細胞数との共培養後の、μg/mlでの、IgG分泌B細胞クローン(単一の置かれたB細胞子孫)の平均IgG濃度、すなわち生産性。4枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
【
図6】単一の置かれたB細胞と、1k~50k/ウェルの異なる細胞数の非照射EL-4 B5細胞との共培養後の、全ウェルに対する%でのrbIgG+ウェルの頻度。50 Gyで照射された50k/ウェルの細胞数のEL-4 B5細胞との培養を陽性対照とした。
【
図7】単一の置かれたB細胞と、(4 Gyで照射された)10k~50k/ウェルの異なるEL-4 B5数との共培養後の、μg/mlでの、IgG分泌B細胞クローン(単一の置かれたB細胞子孫)の平均IgG濃度、すなわち生産性。4枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
【
図8】B細胞クローンの収率における、フィーダー細胞の照射線量とTSN(天然種特異的フィーダー混合物)濃度との相互関係。
図8A:4 Gyまたは50 Gyで照射されたEL-4 B5細胞と共培養されたIgG分泌B細胞クローンの頻度(全ウェルに対する%でのIgG+ウェル)を示す。
図8B:4 Gyまたは50 Gyで照射されたEL-4 B5細胞と共培養されたIgG分泌B細胞クローンの平均IgG濃度 (μg/ml)、すなわち生産性を示す。培地には、それぞれ1.25 vol-%、2.5 vol-%、または5 vol-% TSNを補充した。3枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
【
図9】単一の置かれたB細胞とEL-4 B5細胞との共培養後の、全ウェルに対する%でのrbIgG+ウェルの頻度における、フィーダー細胞の照射線量とサイトカイン濃度との相互関係。
図9A:ウェル当たり4 Gyで照射された20k EL-4 B5細胞を用いたデータ。培地には、1×~0.1×(実験1、上部の棒図表)および0.1×~0.01×(実験2、下部の棒図表)の濃度割合のサイトカイン混合物 (CM) を補充した。3枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
図9B:ウェル当たり50 Gyで照射された50k EL-4 B5細胞を用いたデータ。培地には、1×~0.1×(実験1、上部の棒図表)および0.1×~0.01×(実験2、下部の棒図表)の濃度割合のサイトカイン混合物 (CM) を補充した。3枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
【
図10】単一の置かれたB細胞とEL-4 B5細胞との共培養後のrbIgG+ウェルにおけるB細胞クローンの平均IgG濃度、すなわち生産性における、フィーダー細胞の照射線量とサイトカイン濃度との相互関係。
図10A:4 Gyで照射されたEL-4 B5細胞(20k/ウェル)。培地には、1×~0.1×(実験1、上部の棒図表)および0.1×~0.01×(実験2、下部の棒図表)の濃度割合のサイトカイン混合物 (CM) を補充した。3枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
図10B:50 Gyで照射されたEL-4 B5細胞(50k/ウェル)。培地には、1×~0.1×(実験1、上部の棒図表)および0.1×~0.01×(実験2、下部の棒図表)の濃度割合のサイトカイン混合物 (CM) を補充した。3枚の96ウェルプレートのSDを伴う平均値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
定義
「グレイ」または省略形の「Gy」という用語は、電離放射線量の一般的に使用される単位を示す。それは、1キログラムの物質、今回の例では1キログラムの細胞(湿潤細胞重量)当たりの1ジュールの放射エネルギーの吸収と定義される。それによって、吸収された線量が測定され得る。この単位は純粋に物理的であり、生物学的パラメータに依存せず、または生物学的パラメータを考慮に入れず、すなわち、「グレイ」は、それが付与される物質とは無関係に定義される。米国で用いられるラド単位の変換に関しては、以下の変換係数を用いることができる:1ラド=0.01 Gy。
【0100】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合的相互作用の総計の強度を指す。別段の指示がない限り、本明細書で用いられる場合、「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般的に、解離定数 (kd) によって表すことができる。親和性は、本明細書において記載されるものを含めた、当技術分野で公知の通常の方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な説明的および例示的態様を以下に記載する。
【0101】
本明細書における「抗体」という用語は、天然に存在するそれらの構造変種を含めた、天然に存在する抗体を意味するために用いられる。
【0102】
例えば、天然(ヒト、マウス、ラット、ウサギ)IgG抗体は、約150,000ダルトンの分子量を有するヘテロ四量体糖タンパク質である。天然IgG抗体は、鎖間および鎖内ジスルフィド結合を含む2本の同一軽鎖および2本の同一重鎖から構成され、結果として4本の鎖はすべて互いに共有結合している。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも称される可変領域 (VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有し、この場合、第1定常ドメインと第2定常ドメインの間には可動性のヒンジ領域が位置している。抗体の重鎖は、それらの配列およびドメイン構造に応じて、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMと称される5つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る(抗体の「クラス」)。これらのうちのいくつかはさらに、サブタイプ(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと称される。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも称される可変領域 (VL)、続いて定常軽鎖定常ドメイン (CL) を有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、カッパ (κ) およびラムダ (λ) と称される2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0103】
例えば、天然(ラクダ科の動物、すなわち、ラクダ、ヒトコブラクダ、およびラマを含むラクダ科、ラクダ亜目由来)の重鎖のみの抗体(VHH抗体)は、従来のIgG重鎖において見出される古典的なCH1ドメインを含まず、したがって抗体のヒンジ-CH2-CH3ドメインに直接融合されたVHHドメインとして発現される。例えばラマ由来VHH抗体からの可変領域配列は、ヒトVH3ファミリーの可変ドメインにおける配列に類似している (Schroeder et al., Int. Immunol. 2 (1989) 41-50)。IgGタイプの抗体と比較して、L. ラマVHHドメインにおけるCDR3ドメインアミノ酸配列は、重鎖および軽鎖を含む古典的なIgGタイプ抗体の大部分のCDR3ドメインよりも平均して長い。古典的なIgG抗体と同様に、VHH抗体におけるCDRの位置も、当技術分野で周知の方法によって決定することができる(例えば、US 5,637,677を参照されたい)。残基11、37、44、45、および47は、鎖界面の形成に重要である(例えば、WO 99/42077を参照されたい)。
【0104】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体(IgG/VHH=4本の鎖/2本の鎖)が結合するのと同じ抗原に結合する、インタクトな抗体の一部のみを含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);単一ドメイン抗体;および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
「細胞」という用語は、プラスミドの増殖のために用いられる原核細胞、および核酸の発現のために用いられる真核細胞の両方を含む。1つの態様において、真核細胞は哺乳動物細胞である。1つの態様において、哺乳動物細胞は、CHO細胞、任意で、CHO K1細胞(例えば、ATCC CCL-61もしくはDSM ACC 110)、またはCHO DG44細胞(CHO-DHFR[-]、例えばDSM ACC 126としても公知である)、またはCHO XL99細胞、CHO-T 細胞(例えば、Morgan, D., et al., Biochemistry 26 (1987) 2959-2963を参照されたい)、またはCHO-S細胞、またはSuper-CHO細胞 (Pak, S.C.O., et al. Cytotechnol. 22 (1996) 139-146)、またはBHK細胞、またはNS0細胞、またはSp2/0細胞、またはHEK 293細胞、またはHEK 293 EBNA細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞、またはCOS細胞である。これらの細胞が無血清培地中または懸濁液中での増殖に適合しない場合には、本方法における使用の前に適合化を行うことができる。本明細書で用いられる場合、「細胞」という表現は、対象細胞およびその子孫を含む。したがって、「形質転換体」および「形質転換細胞」という語は、初代対象細胞、および移行または継代培養の回数に関係なくそれらに由来する培養物を含む。意図的または偶発的な変異のために、すべての子孫のDNA内容物が正確に同一でなくてもよいこともまた理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変種子孫が含まれる。
【0106】
「クローン」という用語は、単一のB細胞から生じる/起こる、分裂しかつ抗体を分泌するB細胞の集団を意味する。したがって、B細胞クローンは、B細胞の均一な集団であり、モノクローナル抗体を産生する。
【0107】
「同族の抗体可変ドメイン対」という用語は、単一の抗体分泌B細胞(クローン)から得られた、すなわち免疫原性分子との接触により哺乳動物の免疫応答の際に対として生成された、またはディスプレイアプローチの際に無作為に組み立てられた1対の抗体可変ドメインを意味する。
【0108】
「実験動物」という用語は、非ヒト動物を意味する。1つの態様において、実験動物は、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ラマ、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、サメ、およびハ虫類より選択される。1つの態様において、実験動物はウサギである。
【0109】
本明細書で用いられる「発現」という用語は、細胞内で起こる転写および/または翻訳ならびに分泌過程を指す。細胞における関心対象の核酸配列の転写レベルは、細胞内に存在する対応するmRNAの量に基づいて決定することができる。例えば、関心対象の配列から転写されたmRNAは、qPCRもしくはRT-PCRによって、またはノーザンハイブリダイゼーションによって定量することができる(Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989) を参照されたい)。核酸によってコードされるポリペプチドは、様々な方法によって、例えば、ELISAによって、ポリペプチドの生物学的活性をアッセイすることによって、またはポリペプチドを認識して結合する免疫グロブリンを用いる、ウェスタンブロッティングもしくはラジオイムノアッセイなどの、そのような活性に依存しないアッセイを用いることによって、定量することができる(Sambrook, et al., (1989)、前記を参照されたい)。
【0110】
当業者にとって、例えばポリペプチドのアミノ酸配列を、このアミノ酸配列をコードする対応する核酸配列に変換するための、およびその逆のための手法および方法は周知である。したがって、核酸は、個別のヌクレオチドからなるその核酸配列によって、および同様に、それによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列によって特徴決定される。
【0111】
抗体は一般的に、それを産生する細胞によって培養液中に分泌される。
【0112】
「フィーダー混合物」という用語は、増殖因子、サイトカイン、ならびに/またはB細胞の活性化および/もしくは生存ならびに/または抗体分泌を促進するさらなるタンパク質などの様々な添加物の組み合わせを意味する。フィーダー混合物は、例えば胸腺細胞の培養上清 (TSN) から得られた、サイトカインの規定されていない組み合わせである天然フィーダー混合物であり得る。または、フィーダー混合物は、増殖因子、サイトカイン、ならびに/または、B細胞の活性化および/もしくは生存ならびに/または抗体分泌を促進するさらなるタンパク質などの、組換えによって産生されたまたは化学的に合成された様々な添加物の規定された組み合わせである、合成フィーダー混合物である。
【0113】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に用いられ、そのような細胞の子孫も含め、外因性の核酸が導入されている細胞を指す。宿主細胞は、初代形質転換細胞、および継代回数に関係なくそれらに由来する子孫を含む、「形質転換体」または「トランスフェクタント」および「形質転換細胞」および「トランスフェクトした細胞」を含む。子孫は、核酸内容物が親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫は、本明細書中に含まれる。
【0114】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、具体的に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0115】
「個体」または「対象」は脊椎動物である。1つの態様において、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるがこれらに限定されない。ある特定の態様において、個体または対象はヒトである。他の態様において、個体または対象はウサギである。
【0116】
「標識化」という用語は、特異的に結合しかつ標識された抗表面マーカー抗体の細胞に対する結合/非結合によって判定され得る、表面マーカーの有無を判定するための過程を意味する。したがって、表面マーカーの存在は、例えば蛍光標識の場合には蛍光の出現によって判定され、表面マーカーの非存在は、特異的に結合しかつ標識された各抗表面マーカー抗体と細胞とのまたは細胞の集団とのインキュベーション後の蛍光の非存在によって判定される。
【0117】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、単一細胞クローンによって産生された実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、例えば自然に生じる変異を含むかまたはモノクローナル抗体調製物の生成中に生じる可能性のある、一般的に少量で存在する変種抗体を除いて、同一でありかつ/または同じエピトープと結合する。典型的に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られたという抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って用いられるべきモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含むトランスジェニック動物を用いる方法を含むがこれに限定されない種々の技術によって作製され得、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法およびその他の例示的な方法は、本明細書において記載されている。
【0118】
「PMA」という用語は、小化合物であるホルボール-12-ミリステート-13-アセテートを意味する。そのIPUAC名は、(1aR,1bS,4aR,7aS,7bS,8R,9R,9aS)-9a-(アセチルオキシ)-4a,7b-ジヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-1,1,6,8-テトラメチル-5-オキソ-1a,1b,4,4a,5,7a,7b,8,9,9a-デカヒドロ-H-シクロプロパ[3,4]ベンゾ[1,2-e]アズレン-9-イルミリステートである。この化合物は、TPA、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート、テトラデカノイルホルボールアセテート (tetradecanoylphorbol acetate)、テトラデカノイルホルボールアセテート(tetradecanoyl phorbol acetate)、ホルボールミリステートアセテート、12-0-テトラデカノイルホルボール13-アセテート、12-テトラデカノイルホルボール13-アセテート、12-テトラデカノイルホルボール13-モノアセテート、13-0-アセチルホルボール12-ミリステート、4β-ホルボール12-ミリステート13-アセテート、1,1aα,1bβ,4,4a,7aα,7b,8,9,9a-デカヒドロ-4aβ,7bα,9β,9aα-テトラヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-1,1,6,8α-テトラメチル-5H-シクロプロパ[3,4]ベンズ[1,2-e]アズレン-5-オン9a-アセテート, (+)-を伴うミリスチン酸, 9-エステル、ホルボール12-ミリステート13-アセテート、ホルボール12-テトラデカノエート13-アセテート、ホルボールミリステートアセテート、PMA、PMA(腫瘍プロモーター)、テトラデカン酸, (1aR,1bS,4aR,7aS,7bS,8R,9R,9aS)-9a-(アセチルオキシ)-1a,1b,4,4a,5,7a,7b,8,9,9a-デカヒドロ-4a,7bジヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-1,1,6,8-テトラメチル-5-オキソ-1H-シクロプロパ[3,4]ベンズ[1,2-e]アズレン-9-イルエステル、テトラデカン酸, 9a-(アセチルオキシ)-1a,1b,4,4a,5,7a,7b,8,9,9a-デカヒドロ-4a,7b-ジヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-1,1,6,8-テトラメチル-5-オキソ-1H-シクロプロパ[3 ,4]ベンズ[1,2-e]アズレン-9-イルエステル, [1aR(1aα,1bβ,4aβ,7aα,7bα,8α,9β,9aα)]-、TPA、およびTPA(ホルボール誘導体)としても表示される。
【0119】
「特異的に結合する」という用語およびその文法的同等物は、抗体がその標的に10-7 Mまたはそれ未満、1つの態様においては10-8 M~10-13 M、さらなる態様においては10-9 M~10-13 Mの解離定数 (KD) で結合することを意味する。本用語はさらに、抗体が、存在するその他の生体分子に特異的に結合しないこと、すなわち抗体が他の生体分子に10-6 Mまたはそれ以上、1つの態様においては10-6 M~1 Mの解離定数 (KD) で結合することを示すために用いられる。
【0120】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体のその抗原への結合に関与する、抗体重鎖または軽鎖の領域を指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は、一般的に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む(例えば、Kindt, T.J., et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), page 91を参照されたい)。抗原結合特異性を付与するには、単一のVHまたはVLドメインで十分な場合がある。さらに、特定の抗原と結合する抗体に由来するVHまたはVLドメインを用いて、それぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングして、その抗原と結合する抗体を単離することができる(例えば、Portolano, S., et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887;Clarkson, T., et al., Nature 352 (1991) 624-628を参照されたい)。
【0121】
発明の態様の詳細な説明
本発明は、少なくとも一部は、9.5 Gyまたはそれ未満の線量のγ線照射で照射されたEL-4 B5細胞が、B細胞共培養 (BCC) 法において用いられる場合に有利な特性を有するという知見に基づく。
【0122】
I. 一般的な局面
免疫化
治療用抗体の作製については、非ヒト動物を治療標的で免疫化して(単独で、または免疫原性刺激と組み合わせて)免疫応答を誘発するか、またはファージディスプレイライブラリーなどの合成アプローチを使用するかのいずれかである。トランスジェニック動物(すなわち、ヒト免疫系を有する)またはヒトファージディプレイライブラリーが用いられる場合には、ヒト抗体が得られる。そうでなければ、非ヒト動物抗体が得られ、これはその後ヒト化される。潜在的な治療用抗体を得るための稀な可能性は、疾患から回収されたヒトの血液によるものである。
【0123】
多くの場合、抗体に基づく治療法を評価するための動物モデルとして、マウス、ウサギ、ハムスター、およびラットなどの非ヒト動物が用いられる。したがって、通常は、非ヒト動物抗原およびヒト抗原に結合する交差反応性抗体を提供することが必要である。
【0124】
本明細書において報告される方法では、任意の供給源、例えば、ヒト、マウス、ハムスター、またはウサギから採取されたB細胞を用いることができる。B細胞の供給源に応じて、フィーダー細胞およびフィーダー混合物が調整/選択される。
【0125】
1つの態様において、ウサギは、ニュージーランドホワイト (NZW) ウサギ、ツィンマーマンウサギ (ZIKA)、Alicia変異株ウサギ、basilea変異株ウサギ、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックウサギ、rbIgMノックアウトウサギ、およびそれらの交雑種より選択される。
【0126】
1つの態様において、ハムスターは、アルメニアンハムスター(タビキヌゲネズミ (Cricetulus migratorius))、チャイニーズハムスター(モンゴルキヌゲネズミ (Cricetulus griseus))、およびシリアンハムスター(ゴールデンハムスター (Mesocricetulus auratus))より選択される。1つの好ましい態様において、ハムスターはアルメニアハムスターである。
【0127】
B細胞の供給源および単離
血液は、高度な多様性の抗体産生B細胞を提供する。それから採取されたB細胞クローンは、高度な多様性を示す抗体を分泌する。
【0128】
1つの態様において、例えば血液に由来するB細胞は、免疫化の4日後から非ヒト動物の免疫化または最も近い追加免疫の最長13日後までに採取される。この期間により、本明細書において報告される方法では高い適応性が可能になる。この期間中に、最も親和性の高い抗体を提供するB細胞が脾臓から血液に移動する可能性が高い(例えば、Paus, D., et al., JEM 203 (2006) 1081-1091;Smith, K.G.S., et al., The EMBO J. 16 (1997) 2996-3006;Wrammert, J., et al., Nature 453 (2008) 667-672を参照されたい)。
【0129】
例えば非ヒト動物の血液由来またはヒト血液由来のB細胞は、当技術分野で公知の任意の方法によって採取することができる。例えば、密度勾配遠心分離 (DGC) または赤血球溶解(溶解)を用いることができる。密度勾配遠心分離は低張溶解と比較して、より高い全収率、すなわちB細胞クローン数を提供する。加えて、密度勾配遠心分離によって採取された細胞からは、共培養段階においてより多数の細胞が分裂し、増殖する。また、分泌された抗体の濃度は、異なる方法で採取された細胞と比較してより高い。したがって、1つの態様において、B細胞の集団の提供は密度勾配遠心分離による。代替的な方法は同様にB細胞の単離のために用いることができる。
【0130】
共培養前の選択段階
抗原と特異的に結合する抗体を産生するB細胞を、末梢血単核細胞 (PBMC) から濃縮することができる。したがって、本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、B細胞集団は末梢血単核細胞 (PBMC) から濃縮される。
【0131】
本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、PBMCからマクロファージを枯渇させる。このことは、共培養段階のために、ウサギ起源のB細胞にとって有利である。
【0132】
マクロファージは、細胞培養プレートの表面への接着によってPBMCから枯渇させることができる(プレインキュベーション段階を参照されたい)。
【0133】
単一細胞を置く前にB細胞の集団を共培養用培地中でインキュベートすることにより、非ヒト動物の血液からB細胞の集団を単離し、任意で濃縮した直後に単一細胞を置く場合と比較して、単一細胞を置いた後に得られる抗体分泌細胞の総数が増加する(1つの態様において、非ヒト動物はウサギである)。具体的には、インキュベーションは、例えば細胞培養インキュベーターを用いた、EL-4 B5培地中で約37℃で約1時間である。
【0134】
本明細書において報告される方法の1つの態様では、細胞は、タンパク質免疫化動物に由来し、かつ、標識化の前にマクロファージが枯渇する。
【0135】
抗原と結合する抗体を産生しない細胞、または同様に抗原に結合する抗体を産生する細胞を、パニングアプローチを用いてそれぞれ減少させるまたは濃縮することができる。そこでは、各抗原が表面に結合して提示され、それに結合する細胞は、結合した細胞をさらに処理する場合には細胞集団内で選択的に濃縮されるか、または溶液中に残存する細胞をさらに処理する場合には細胞集団内で減少する。
【0136】
本明細書において報告される方法は、1つの態様において、単一細胞を置く前に、特異的および/または非交差反応性抗体を産生するB細胞が細胞表面マーカーおよび蛍光活性化細胞選別/ゲーティングに基づいて選択される選択段階を含む。1つの態様において、成熟B細胞が選別/濃縮/選択される。異なる非ヒト動物種からB細胞を選択するためには、異なる細胞表面マーカーを用いることができる。
【0137】
非標的細胞集団および非特異的結合リンパ球を標識することにより、これらの細胞を選択的に枯渇させることが可能である。この枯渇段階では、部分的な枯渇が達成され得るにすぎない。枯渇は定量的でないにもかかわらず、これにより、妨害細胞の数を減少することまたはさらには最小限にすることができるために残存細胞のその後の蛍光標識化における利点が与えられる。標識化を用いる蛍光活性化細胞選別により成熟B細胞(記憶B細胞、親和性成熟形質芽球、および形質細胞)を単一細胞として置くことによって、共培養段階においてより多くの数のIgG+ウェル/細胞クローンを得ることができる。
【0138】
異なる細胞集団は、CD3+細胞(T細胞)、CD19+細胞(B細胞)、IgM+細胞(成熟ナイーブB細胞)、IgG+細胞(成熟B細胞)、CD38+細胞およびCD138細胞(例えば、形質芽球)、ならびにIgG+CD38+CD27+細胞(前形質細胞)などの異なる表面マーカーを用いることによって標識することができる。
【0139】
記憶B細胞、形質芽球、および形質細胞などの成熟IgG+ B細胞を選択するための免疫蛍光標識化が使用可能である。B細胞の選択または濃縮のためには、細胞を単一標識するか、または二重標識するか、または三重標識するかのいずれかである。また、全細胞集団のうちの約0.1%~2.5%の標識化された細胞をもたらす標識も必要とされる。
【0140】
1つの態様においては、集団中のB細胞の0.1%~2.5%に、別の態様においては、集団のB細胞の0.3%~1.5%に、さらなる態様においては、集団のB細胞の0.5%~1%に存在する表面分子の標識化によって選択された単一細胞として、B細胞が置かれる。
【0141】
CD27+CD138+細胞またはCD3-CD27+細胞の標識化はそれぞれ、標識される細胞集団の細胞の約1.5%をもたらす。
【0142】
PBMC集団内のIgG+ B細胞のうち、0.5%~1%が、IgG+CD19+細胞、IgG+CD38+細胞、およびIgG+CD268+細胞として二重標識され得る。
【0143】
PBMC集団内のIgG- B細胞のうち、0.5%~1%がIgG-CD138+細胞として二重標識され得る。
【0144】
PBMC集団内のIgG+ハムスターB細胞のうち、0.6%±0.1%がIgG+IgM-ハムスターB細胞として二重標識され得る。
【0145】
本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、非免疫化非ヒト動物またはヒトから採取されたB細胞から、IgG+CD19+ B細胞を単一細胞として置く。
【0146】
IgG+CD19+マウスB細胞の単一細胞としてのデポジションは、その後の共培養段階においてIgG+ウェルの数の改善をもたらす。
【0147】
IgG-CD138+マウスB細胞の単一細胞としてのデポジションは、最大数のB細胞クローンおよび最高濃度のIgGを生じる細胞をもたらす。
【0148】
1つの態様において、前記方法は、細胞がウサギ起源のものである場合には、標識化はIgG+ B細胞および/またはCD138+ B細胞のものではないという条件付きである。
【0149】
(表)マウス、ハムスター、およびウサギの成熟B細胞についての判定のための例示的な免疫蛍光標識化
【0150】
1つの態様において、方法は、B細胞集団からマクロファージを枯渇させ、標的抗原と特異的に結合する抗体を分泌するB細胞集団のB細胞を濃縮する段階を含む。
【0151】
単一細胞を置くこと
本明細書において報告される方法は、B細胞集団のB細胞を単一細胞として置く段階を含む。本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、単一細胞として置く段階は蛍光活性化細胞選別 (FACS) による。FACSで単一細胞を置く段階に必要な標識化のために用いられる表面マーカーは、本明細書において概説されるような特異的マーカー組み合わせであってよい。
【0152】
単一細胞を置く段階の後かつ共培養前のさらなる遠心分離段階は、抗体分泌細胞の数を増加させ、かつ分泌されるIgGの量を増加させる。
【0153】
本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、方法は、共培養の前に、単一の置かれた細胞を遠心分離する段階を含む。1つの好ましい態様において、遠心分離する段階は300×gで5分間である。
【0154】
共培養
単一の置かれたB細胞をフィーダー混合物の存在下でフィーダー細胞と共培養する。1つの態様において、単一の置かれたB細胞を、フィーダー細胞としてのマウスEL-4 B5細胞と共培養する。
【0155】
上記に概説されるように、適切な免疫蛍光標識化によって、共培養段階における収率(IgG+ウェル/細胞クローンの数およびIgG濃度)の増加、ならびにまたPBMCからの成熟IgG+ B細胞の濃縮または単離が達成され得る。
【0156】
新たに単離されたPBMCからのIgG+CD19+ B細胞および/またはIgG+CD38+ B細胞を単一細胞として置くことにより、得られ得る最大数のIgG+ウェル/細胞クローンがもたらされる。
【0157】
マクロファージまたはKLH特異的細胞(キーホールリンペットヘモシアニン)の枯渇後にIgG+CD19+ B細胞、IgG+CD38+ B細胞、および/またはIgG-CD138+ B細胞を単一細胞として置くことにより、良好な結果が得られ得る。
【0158】
抗原特異的B細胞の枯渇後にIgG+CD19+ B細胞、IgG+CD38+ B細胞、および/またはIgG-CD138+ B細胞を単一細胞として置くことにより、改善された結果が得られ得る。
【0159】
上記に概説されるような標識化に基づく単一細胞としてのデポジションは、最大率のIgG+ウェル/細胞クローン、および上清中に最高IgG濃度を有するウェル/細胞クローンをもたらす。
【0160】
マウスB細胞については、各濃縮段階および/または枯渇段階後にIgG+CD19+細胞の単一細胞を置くことにより、共培養後の最大数のIgG+ウェル/細胞クローンが得られ得る。あるいは、IgG-CD138+細胞の単一細胞を置くことにより、上清中に最大IgG濃度を有するウェル/細胞クローンが得られ得る。免疫化非ヒト動物由来のB細胞については、IgG-CD138+細胞の単一細胞を置くことが使用され得る。非免疫化非ヒト動物由来のB細胞については、IgG+CD19+細胞の単一細胞を置くことが使用され得る。
【0161】
免疫化および非免疫化非ヒト動物のハムスターB細胞については、IgG+IgM-細胞の単一細胞を置くことが使用され得る。
【0162】
ウサギB細胞については、IgG+ B細胞および/またはIgG+CD138+ B細胞および/またはCD138+ B細胞および/またはIgG+IgM- B細胞の単一細胞を置くことが使用され得る。
【0163】
実験用非ヒト動物の血液から採取されたB細胞に対して用いられる免疫蛍光標識化はまた、マウス、ハムスター、およびウサギなどの実験用非ヒト動物の脾臓およびその他の免疫器官から採取されたB細胞の標識化に用いることもできる。マウスB細胞については、脾臓由来のIgG+ B細胞の割合は、IgG+CD19+細胞の0.4%に対して約0.8%であった。ハムスターB細胞については、それぞれの数は1.9%および0.5% IgG+IgM-細胞である。ウサギ血液由来B細胞については、マクロファージの枯渇後に0.2%のIgG+細胞が見出された。マクロファージの枯渇後に、ウサギ由来のパイエル板は0.4%のIgG+細胞を示し、脾臓は0.3%のIgG+細胞を示した。
【0164】
本明細書において報告される方法により、共培養の約7日後に、すなわち5、6、7、または8日後に、特に7または8日後に、約30 ng/mlから最大15μg/mlまでまたはそれ以上の抗体濃度が得られ得る(平均値約500 ng/ml)。例えば結合特異性に関して、より詳細に抗体を特徴決定するために、それによって提供される抗体量を用いて、多数の異なる解析を行うことができる。スクリーニング/選択過程のこの初期段階における抗体の特徴決定の改善により、行うべき必要な核酸単離および配列決定反応の回数を減らすことが可能である。加えて、B細胞クローンは、縮重PCRプライマーの使用を可能にする一定量の、モノクローナル軽鎖および重鎖可変領域をコードするmRNAを提供し、それによって高度に特異的なプライマーの必要性がなくなる。また、必要なPCRサイクル数も減少する。したがって、1つの態様において、逆転写PCRは、軽鎖および重鎖可変ドメイン用の縮重PCRプライマーを用いて行われる。
【0165】
いくつかのさらなる段階が先行しておよびまた後続して、フィーダー細胞との共培養段階を行うことができる。
【0166】
本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、フィーダー混合物は胸腺細胞培養上清である。特定の態様において、胸腺細胞培養上清は、各若年非ヒト動物の胸腺の胸腺細胞から得られる。血液成体非ヒト動物からの胸腺細胞の単離と比較して、若年非ヒト動物の胸腺を用いることが特に適している。「若年非ヒト動物」という用語は、性成熟が起こる前の非ヒト動物を意味する。若年ハムスターは、例えば6週齢未満、特に4週齢未満のものである。若年マウスは、例えば8週齢未満、特に5週齢未満のものである。
【0167】
培養胸腺細胞の上清(胸腺細胞培養上清(thymocyte cultivation supernatant‐TSN)に由来するフィーダー混合物の起源に起因して、かなりのバッチ間変動が生じる。
【0168】
この変動性を克服するために、規定(合成)成分からなる規定(および合成)フィーダー混合物を用いることができる。
【0169】
Tucci, A., et al., J. Immunol. 148 (1992) 2778-2784により、IL-1β(インターロイキン-1β)、TNF-α(腫瘍壊死因子α)、IL-2(インターロイキン-2)、およびIL-10(インターロイキン-10)からなる規定(合成)フィーダー混合物が公知である。
【0170】
規定(合成)フィーダー混合物用のB細胞種特異的添加物は、各B細胞クローンによる分泌抗体の量の増加をもたらす。同時に、高産生細胞はより多くのmRNAを含み、次にこれにより、例えば重複非特異的プライマーセットを用いたコード核酸の逆転写および配列決定が容易になる。
【0171】
SAC(黄色ブドウ球菌株Cowans細胞、単一のSACロットを使用した)の添加により、共培養後の抗体分泌B細胞の数および上清中の平均IgG濃度を増加させることができる。共培養におけるSACの添加については、SAC濃度の低下および上昇により、分泌抗体の量が減少するため、濃度範囲が規定され得る。
【0172】
1:20000~1:150000のSAC比がIgG+ウェル/細胞クローンの数の増加をもたらし、1:50000~1:100000の比率が最大数を示す。1つの態様において、希釈系列を提供して、添加したSACが最大数のIgG陽性ウェル/細胞クローンをもたらす希釈度を決定することによって、培養用培地に添加するSACの量を決定する。
【0173】
共培養にPBL(例えば、B細胞および内因性T細胞)混合物を用いた場合には、B細胞増殖が阻害されたのに対して、フィーダー混合物へのSACの添加により、単一の置かれたB細胞のみが増殖において利点を有するというようにB細胞の共培養が変化する。
【0174】
本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、マウスB細胞の共培養のための規定(合成)フィーダー混合物は、IL-1β、IL-2、IL-10、TNF-α、およびBAFFを含む。1つの態様において、BAFFは5 ng/mlの濃度で添加される。
【0175】
本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、ハムスターB細胞の共培養のための規定(合成)フィーダー混合物は、IL-1β、IL-2、IL-10、TNF-α、IL-6、およびSACを含む。1つの態様において、IL-6は10 ng/mlの濃度で添加される。1つの態様において、SACは1:75,000比で添加される。
【0176】
IL-2なし、IL-10なし、ならびにIL-2およびIL-10なしでのフィーダー細胞とマウスB細胞の共培養は、IgG濃度が低下するにもかかわらず、IgG+ウェルの収率の増加をもたらす。TNFαなしでは、IgG濃度がやはり低下する。IL-1βなしでは、上清中にIgGが認められない。
【0177】
それぞれIL-2なしおよびIL-10なしでのハムスターB細胞の共培養は、検出可能なIgG濃度を有するIgG+ウェルをもたらす。これとは対照的に、IL-2およびIL-10なしでの共培養では、B細胞増殖がほとんど検出され得ない。TNF-αまたはIL-1βの非存在下では、IgG分泌は測定され得ない。
【0178】
EL-4 B5フィーダー細胞の存在下において、マウス、ハムスター、およびウサギB細胞の共培養には、少なくともIL-1βおよびTNFαが必要である。マウス細胞の共培養には、IL-2およびIL-10を省略することができる。ハムスターB細胞は、IL-2またはIL-10のいずれかの非存在下で培養することができる。ウサギB細胞は、IL-2またはIL-10またはIL-6のいずれかの非存在下で培養することができる。
【0179】
マウスおよびハムスターB細胞については、フィーダー混合物へのIL-4の添加により、IgG+ウェル/細胞クローンの数および上清中のIgG濃度が増加する。したがって、本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、マウスまたはハムスターB細胞の共培養のためのフィーダー混合物はIL-4を含む。
【0180】
マウスB細胞またはハムスターB細胞の共培養のためのフィーダー混合物へのIL-6の添加は、それぞれIgG+ウェル/細胞クローンの数の増加またはIgG濃度の上昇をもたらす。したがって、本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、マウスB細胞またはハムスターB細胞の共培養のためのフィーダー混合物はIL-6を含む。1つの態様において、IL-6は50 ng/mlの濃度で添加される。1つの態様において、高いIgG濃度が必要である場合には、IL-6は10 ng/mlの濃度で添加される。1つの態様において、IL-6の添加は、選択されたB細胞とEL-4 B5細胞の共培養の3日後である。
【0181】
1つの態様において、IL-1β、TNF-α、IL-2、IL-10、およびIL-21は、組換えマウスIL-1β、マウスTNF-α、マウスIL-2、マウスIL-10、およびマウスIL-21である。
【0182】
1つの態様において、BAFFは5 ng/mlの濃度で添加される。
【0183】
1つの態様において、IL-6は10 ng/mlの濃度で添加される。
【0184】
1つの態様において、SACは1:75,000比で添加される。
【0185】
1つの態様において、フィーダー細胞はマウスEL-4 B5細胞である。
【0186】
ある種のカリウムチャネルの阻害剤(=PAP-1,5-(4-フェノキシブトキシ)ソラレン)の添加により、B細胞クローンの数が減少することなく、濃度依存的様式でB細胞のrbIgG分泌が増加する。通常は、rbIgG生産性を誘導したサイトカインは、B細胞クローンの総数の減少と相関し得る。これはPAP-1には当てはまらなかった。
【0187】
7.5%のTSN濃度で、上清中の最高IgG濃度が得られ得る。
【0188】
共培養は、本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、丸底を有するウェルを備えたポリスチレンマルチウェルプレート中においてである。ウェルの作業容積は、本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、50μl~250μlである。1つの態様において、ウェルは、ポリマープラスチック樹脂と両親媒性分子の混合物から調製された非繊維性基材で少なくとも部分的にコーティングされ、両親媒性分子は親水性部分および疎水性領域を含み、疎水性領域は該基材内に固定され、親水性部分は該基材上に露出している。1つの態様において、両親媒性分子は、エトキシ化アルキルアミン、ポリ(エチレンイミン)、オクチルデカミン、またはそれらの混合物より選択される(例えばEP 1 860 181を参照されたい)。
【0189】
共培養した細胞の特徴決定
共培養後の分泌されたIgGの(定性的および定量的)測定には、一般的に、ELISAなどの当業者に公知のすべての方法を用いることができる。本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、ELISAが用いられる。
【0190】
特徴決定の結果に応じて、B細胞クローンを得ること、すなわち選択することができる。「クローン」という用語は、単一のB細胞から生じる/起こる、分裂しかつ抗体を分泌するB細胞の集団を意味する。したがって、B細胞クローンはモノクローナル抗体を産生する。
【0191】
mRNA単離、クローニング、および配列決定
B細胞から全mRNAを単離し、cDNAに転写することができる。特異的プライマーを用いて、同族のVH領域およびVL領域コード核酸を増幅することができる。同一の配列はほとんど得られない。前記方法は、同一抗原に結合する高度に多様な抗体を提供する。
【0192】
VHコード核酸を増幅するために用いられるプライマーは、NMRIマウス、アルメニアンハムスター、Balb/cマウス、ならびにシリアンハムスター、およびウサギに由来する細胞から得られたcDNAに用いることができる。
【0193】
本明細書において報告されるすべての方法の1つの態様では、アミノ酸配列は増幅されたVHコード核酸から導かれ、正確な開始点および終点は、EVQL/QVQL~VSS(VH領域)ならびにDIVM/DIQM~KLEIK(VL領域)のアミノ酸配列を位置づけることによって同定される。
【0194】
本明細書において、
(a) (実験用非ヒト動物の血液から採取された)(成熟)B細胞の集団を提供する段階、
(b) B細胞の集団の細胞を少なくとも1種類の蛍光色素で(1つの態様においては、1~3種類または2~3種類の蛍光色素で)染色する段階、
(c) 個々の容器(1つの態様においては、容器はマルチウェルプレートのウェルである)に、染色されたB細胞の集団の単一細胞を置く段階、
(d) 置かれた個々のB細胞をフィーダー細胞およびフィーダー混合物(1つの態様においてフィーダー細胞はEL-4 B5細胞であり、1つの態様においてフィーダー混合物は天然のTSNであり、1つの態様においてフィーダー混合物は規定(および/または合成)のフィーダー混合物である)の存在下で培養する段階、
(e) 個々のB細胞の培養において分泌された抗体の結合特異性を測定する段階、
(f) 逆転写PCRおよびヌクレオチド配列決定により、特異的結合抗体の可変軽鎖および重鎖ドメインのアミノ酸配列を決定し、それによってモノクローナル抗体可変軽鎖および重鎖ドメインをコードする核酸を得る段階、
(g) モノクローナル抗体軽鎖および重鎖可変ドメインをコードする核酸を、抗体発現用の発現カセットに導入する段階、
(h) 該核酸を細胞に導入する段階、
(i) 細胞を培養し、細胞または細胞培養上清から抗体を回収し、それによって抗体を生成する段階
を含む、抗体を生成するための方法もまた報告される。
【0195】
1つの態様において、非ヒト動物は、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類より選択される。
【0196】
II. 本発明による方法の例示的態様
本発明は、少なくとも一部は、9.5 Gyまたはそれ未満の線量のγ線照射で照射されたEL-4 B5細胞が、B細胞共培養 (BCC) 法において用いられる場合に有利な特性を有するという知見に基づく。
【0197】
本発明は、少なくとも一部は、1個または複数個のB細胞の共培養においてフィーダー細胞として用いられるEL-4 B5細胞に適用される照射線量を低下させることができるという知見に基づく。照射線量の低下に付随して、B細胞に対するEL-4 B5細胞の比率も下げなければならず、フィーダー混合物の成分の濃度も調整しなければならない。この適合化により、とりわけ、1個もしくは複数個のB細胞の生産性を高めることができ、および/またはEL-4 B5細胞によるB細胞の過剰増殖を妨げることができる。
【0198】
当技術分野において、B細胞の共培養において使用するためのEL-4 B5細胞は、すべてのフィーダー細胞と同様に、必要な細胞数を得るために最初に増大され、その後、B細胞とのその後の共培養におけるフィーダー細胞の増殖を阻害するために、高線量のγ線照射で照射する。当技術分野において、一般的に、50 Gyの線量のγ線照射がEL-4 B5細胞に適用される。照射の2日後には約3分の1のみ、および照射の7日後には平均して約15%のみの細胞は、生存能力がある、すなわち生存している。
【0199】
より詳細には、EL-4 B5細胞を実施例6の方法で増大させた。γ-照射の前に、細胞密度を細胞10×10
6個/mlに調整した。使用した線量は50 Gyであった。照射後、細胞をEL-4 B5培地中でさらに培養した。毎日、(ViCell装置およびトリパンブルー染色を用いて)細胞数および細胞生存率を測定した。50 Gy γ線放射による照射後の各日における平均生存能力(生細胞の相対数)を、以下の表に提示する(n=データ点の数)。
【0200】
平均的なBCCでは、照射EL-4 B5細胞50.000個/ウェルが用いられる。EL-4 B5増大における最大細胞密度は限定されるため(当技術分野によると、最大細胞密度は細胞 約0.5×106個/mlである)、非照射EL-4 B5細胞の必要数の作製は、大きな培養容積および高いコストと関連している。例えば、3匹の実験動物を免疫化し、4回採血する場合には、単一の置かれたB細胞のすべてを共培養するために、EL-4 B5細胞 約1×109個が必要である。
【0201】
用いられるγ線放射線量の低下が可能であり、それによって、BCCにおける照射EL-4 B5細胞の数を少なくとも3分の1、またはさらには最大80%まで減少させることができるため、必要な非照射EL-4 B5細胞の数が有意に減少し得ることが、ここで見出された。
【0202】
EL-4 B5細胞の照射はまた完全に省略することができることが、さらに見出された。
【0203】
必要な非照射EL-4 B5細胞数の減少により、一方では、高価な照射装置および付随する安全性負担の必要性がもはや必要なくなり、他方では、γ線放射によってEL-4 B5細胞において誘導される損傷が減少する。この理論によって縛られることはないが、細胞損傷の減少は生存能力(生存率)の上昇をもたらし、次にこれにより、B細胞との共培養において用いられるEL-4 B5フィーダー細胞の数の減少が可能になると想定される。これは培養条件の改善をもたらす。
【0204】
したがって、本明細書において報告される1つの局面は、
‐ 1個または複数個のB細胞をEL-4 B5細胞と共培養する段階
を含む、1個または複数個のB細胞を共培養するための方法であって、
EL-4 B5細胞が、共培養の前に9.5 Gyまたはそれ未満の線量のγ線放射で照射されている、方法である。
【0205】
1つの態様において、照射は、約3 Gy~約7 Gyの範囲内の線量による。1つの態様において、照射は、約3 Gy~約6 Gyの範囲内の線量による。1つの態様において、照射は、約3 Gy~約5 Gyの範囲内の線量による。1つの好ましい態様において、照射は約4 Gyの線量による。
【0206】
1つの態様において、1個または複数個のB細胞を共培養する段階は、EL-4 B5細胞30,000個またはそれ未満を伴う。1つの態様において、共培養する段階は、EL-4 B5細胞5,000~30,000個を伴う。1つの態様において、共培養する段階は、EL-4 B5細胞10,000~30,000個を伴う。
【0207】
1つの好ましい態様において、1個または複数個のB細胞を共培養する段階は、約3 Gy~約6 Gyの範囲内の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細胞 約10,000~約30,000個を伴う。
【0208】
1つの態様において、共培養する段階はTSNの存在下である。1つの態様において、共培養する段階は、最大5 vol-%までのTSNの存在下である。1つの態様において、共培養する段階は、約1.25 vol-%~約3.75 vol-% TSNの存在下である。1つの好ましい態様において、共培養する段階は、約2.5 vol-% TSNの存在下である。
【0209】
1つの態様において、共培養する段階は、フィーダー混合物(サイトカイン混合物、CM)の存在下である。
【0210】
1つの態様において、フィーダー混合物は、
約2 ng/ml(まで)の(マウス)IL-1β、
約2 ng/ml(まで)の(マウス)TNFα、
約50 ng/ml(まで)の(マウス)IL-2、
約10 ng/ml(まで)の(マウス)IL-10、および
約10 ng/ml(まで)の(マウス)IL-6、
またはそれらの一部分を含む。
【0211】
1つの態様において、フィーダー混合物は、
5.5~14*108 IU/mgを有する約2 ng/ml(まで)の(マウス)IL-1β、
2.3~2.9*108 U/mgを有する約2 ng/ml(まで)の(マウス)TNFα、
6~7(好ましくは6.3)*106 IU/mgを有する約50 ng/ml(まで)の(マウス)IL-2、
6~7.5*105 IU/mgを有する約10 ng/ml(まで)の(マウス)IL-10、および
9.2~16.1 *108 U/mgを有する約10 ng/ml(まで)の(マウス)IL-6、
またはそれらの一部分を含む。
【0212】
1つの態様において、フィーダー混合物の割合は、0.75、0.5、0.32、0.25、0.1、0.066、0.032、0.015、0.01、0.0075、0.0038からなる割合の群より選択される。1つの態様において、フィーダー混合物の割合は1.0~0.015の範囲内である。1つの好ましい態様において、フィーダー混合物の割合は0.1~0.015の範囲内である。
【0213】
1つの態様において、共培養は約0.3 ng/ml~3 ng/mlのホルボールミリステートアセテートの存在下である。
【0214】
1つの態様において、フィーダー混合物は約0.01 ng/ml~1.5 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。1つの態様において、フィーダー混合物は約0.125 ng/ml~1 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。1つの好ましい態様において、フィーダー混合物は約0.25 ng/ml~0.5 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。
【0215】
1つの態様において、フィーダー混合物の割合は0.1~0.015の範囲内であり、フィーダー混合物は約0.01 ng/ml~1.0 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。1つの好ましい態様において、フィーダー混合物の割合は約0.03であり、フィーダー混合物は約0.25 ng/ml~0.5 ng/mlのホルボールミリステートアセテートをさらに含む。
【0216】
1つの好ましい態様において、1個または複数個のB細胞を共培養する段階は、約3 Gy~約6 Gyの範囲内(好ましくは約4 Gy)の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細胞 約10,000~約30,000個を伴い、ここで、フィーダー混合物は、約0.06 ng/mlの(マウス)IL-1β、約0.06 ng/mlの(マウス)TNFα、約1.5 ng/mlの(マウス)IL-2、約0.3 ng/mlの(マウス)IL-10、約0.3 ng/mlの(マウス)IL-6、および約0.25 ng/ml~0.5 ng/mlのPMAを含む。
【0217】
1つの好ましい態様において、1個または複数個のB細胞を共培養する段階は、0 Gy~3 Gy未満の範囲内の線量のγ線放射で照射されたEL-4 B5細胞 約2,500~約7,500個(好ましくは約5,000個)を伴い、ここで、フィーダー混合物の割合は0.03~0.1である(フィーダー混合物は、約0.06 ng/ml~約0.2 ng/mlの(マウス)IL-1β、約0.06 ng/ml~約0.2 ng/mlの(マウス)TNFα、約1.5 ng/ml~約5 ng/mlの(マウス)IL-2、約0.3 ng/ml~約1 ng/mlの(マウス)IL-10、約0.3 ng/ml~約1 ng/mlの(マウス)IL-6、および約0.43 ng/ml~0.73 ng/mlのPMA(好ましくは0.73 ng/ml)を含む)。
【0218】
各照射線量について、それぞれのフィーダー細胞数、フィーダー混合物の割合、およびPMA濃度が同定され得る。
【0219】
より詳細には、EL-4 B5細胞を実施例6による方法で増大させた。その後、その一定分量を、0.5~50 Gyの範囲の異なる照射線量による単回γ線照射に供した。加えて、非照射EL-4 B5細胞も含めた。すべての試料を、EL-4 B5培養用培地中でさらに7日間独立して培養した。毎日、(ViCell装置およびトリパンブルー染色を用いて)生存能力(生存率)および絶対細胞数を測定した。結果を以下の表に示す(n.d.=未測定;3 Gy、5 Gy、および50 Gyを除くすべてを、同じ実験において測定した)。
【0220】
【0221】
全細胞数 [n*10
5個]:0 Gy、0.5 Gy、2 Gy、4 Gy、6 Gy、8 Gy、10 Gy(実験1);3 Gy、5 Gy、50 Gy(実験2):
【0222】
x日目における全細胞数と0日目における全細胞数の比 (dx/d0) として算出された相対的増殖:
【0223】
【0224】
実施例8に従って、3 Gy、4 Gy、5 Gy、8, Gy、および10 Gyの線量で照射したEL-4 B5細胞を、非免疫化野生型ウサギから(マクロファージを枯渇させて)得られた単一の置かれたB細胞のB細胞共培養 (BCC) において用いた。単一の置かれたB細胞当たり用いられたEL-4 B5細胞の数は、それぞれ50,000個および20,000個であった。(3枚の96ウェルプレートから得られた)平均結果を、以下の表ならびに
図2および3に示す。上清中のIgGは、実施例9のアッセイを用いて測定した。
【0225】
【0226】
【0227】
データから、より低い照射線量では、増殖率および生産性の改善を達成するために、EL-4 B5細胞の数を、単一の置かれたB細胞当たりEL-4 B5細胞50,000個という標準値と比較して減少させなければならないことがわかる。
【0228】
実施例8に従って、4 Gyの線量で照射したEL-4 B5細胞を、非免疫化野生型ウサギから(マクロファージを枯渇させて)得られた単一の置かれたB細胞のB細胞共培養 (BCC) において用いた。単一の置かれたB細胞当たり用いられたEL-4 B5細胞の数は、それぞれ10,000~50,000個であった。(4枚の96ウェルプレートから得られた)平均結果(プレート上のウェルの平均値であるプレートの値の平均)を、以下の表ならびに
図4および
図5に示す。上清中のIgGは、実施例9のアッセイを用いて測定した。
【0229】
【0230】
ウェルおよびB細胞1個当たりEL-4 B5細胞22,500個までの範囲において、同等の値を得ることができ、その中で11,300~22,500個の範囲が増殖率に関して好ましいことがわかる。IgG産生に関しては、13,700~22,500個の範囲が好ましい。
【0231】
この実験はまた、非照射EL-4 B5細胞を用いて行った。結果を以下の表および
図6に示す。参照に関して、50 Gyで照射したEL-4 B5細胞50,000個を用いた例を示す。
【0232】
【0233】
非照射EL-4 B5細胞に関して、ウェル当たりおよび単一の置かれたB細胞当たりの細胞数を、細胞 約10,000個またはそれ未満まで減少させなければならないことがわかる。
【0234】
次の実験では、実施例1に従ってヒトVEGFで免疫化された野生型ウサギから、実施例2および3に従って得られたB細胞を、BCCにおいて使用した。B細胞を、実施例4に従って、捕捉試薬としてのビオチンにコンジュゲートされたビオチン化ヒトVEGFで前処理した。実施例8に従って、4 Gyの線量で照射したEL-4 B5細胞を、単一の置かれたB細胞のB細胞共培養 (BCC) において用いた。単一の置かれたB細胞当たり用いられたEL-4 B5細胞の数は、それぞれ12,500~30,000個であった。(3枚の96ウェルプレートから得られた)平均結果を、以下の表に示す。上清中のIgGは、実施例9のアッセイを用いて測定した。参照に関して、50 Gyで照射したEL-4 B5細胞50,000個を用いた例を示す。
【0235】
【0236】
実験を繰り返し、実施例1に従ってヒト血清アルブミン (HSA) で免疫化された野生型ウサギから、実施例2および3に従って得られたB細胞を、BCCにおいて使用した。B細胞を実施例4に従って前処理した。実施例8に従って、4 Gyの線量で照射したEL-4 B5細胞を、単一の置かれたBのB細胞共培養 (BCC) において用いた。単一の置かれたB細胞当たり用いられたEL-4 B5細胞の数は、それぞれ5,000~50,000個であった。(4枚の96ウェルプレートから得られた)平均結果を、以下の表および
図7(生産性データ)に示す。上清中のIgGは、実施例9のアッセイを用いて測定した。
【0237】
【0238】
次の実験では、フィーダー混合物の影響を調べた。
【0239】
最初に、天然フィーダー混合物TSNを使用した。この実験では、実施例8に従って、それぞれ4 Gyおよび50 Gyの線量で照射したEL-4 B5細胞を、非免疫化野生型ウサギから得られた単一の置かれたB細胞と共培養した。結果を以下の表および
図8に示す。
【0240】
4 Gyの低線量で照射されたEL-4 B5細胞に関して、TSNの必要量は5 %から1.25 %~2.5 %まで減少させることができ、それでもなお、50 Gyの線量で照射されたEL-4 B5細胞および5% TSNと同じ頻度のIgG陽性ウェルおよびウェル当たりの同じ生産性が得られ得ることがわかる。したがって、高価なTSNの必要量を少なくとも50%減少させることができる。
【0241】
非照射EL-4 B5細胞を用いて同じ実験を行った。結果を以下の表に示す(全ウェル=84個)。
【0242】
フィーダー混合物としての規定(合成)サイトカイン混合物(CM)の効果もまた試験した。この実験では、実施例8に従って、それぞれ4 Gyおよび50 Gyの線量で照射したEL-4 B5細胞を、非免疫化野生型ウサギから(マクロファージを枯渇させて)得られた単一の置かれたB細胞と共培養した。3枚の96ウェルプレートからの全ウェルを解析した。結果を以下の表ならびに
図9および
図10に示す。
【0243】
データから、4 Gyで照射されたEL-4 B5フィーダー細胞が、50 Gyで照射されたEL-4 B5細胞よりも高い増殖率をもたらすことがわかる。単一ウェル生産性に関して、50 Gyで照射されたEL-4 B5細胞は、高濃度のサイトカイン混合物を必要とする(1×CMで生産性が最も高い)ことがわかる。4 Gyの線量で照射されたEL-4 B5細胞は、約0.03×CM、すなわち30倍低い濃度で最も高い生産性を示す。
【0244】
次の実験では、PMA(ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート)の影響を調べた。
【0245】
非免疫化動物の単一の置かれた細胞と組み合わせて、異なるPMA濃度を試験した。結果を次の表に示す。
【0246】
50 Gyで照射されたEL-4 B5細胞に関して、PMAの添加に関する濃度依存的効果が見られ得ることがわかる。それとは対照的に、4 Gyで照射されたEL-4 B5細胞に関して、そのような効果は見られない。したがって、0.015 ng/ml~1.3 ng/mlの濃度範囲において、PMA濃度はIgG陽性ウェルの頻度にも生産性にも影響を及ぼさない。
【0247】
3匹のHSA免疫化ウサギを用いて実験を繰り返した。それぞれの結果を以下の表に提示する。
【0248】
【0249】
全IgG+ウェルの平均IgG生産性 [μg/ml]
【0250】
HSA(絶対補正)頻度/OD>cのプレート [全体に対する%]
【0251】
HSA(絶対補正)頻度/OD>cかつrbIgG+のプレート [IgGに対する%]
【0252】
IgG陽性ウェルの頻度、生産性、および抗原特異的IgGを産生するウェルの頻度というパラメータを取り入れた場合の有益なPMA濃度範囲は、0~8 Gyで照射されたEL-4 B5細胞を用いる場合、0.03のCM割合について0.1 ng/ml~0.5 ng/mlのPMAの範囲内、好ましくは0.25 ng/ml~0.5 ng/mlの範囲内であることがわかる。
【0253】
ウェル当たり単一の置かれたB細胞当たり非照射EL-4 B5細胞5,000個を用いて得られた結果を、以下の表に示す。
【0254】
rbIgG陽性ウェルのプレート当たりの頻度[全体に対する%]
【0255】
rbIgG陽性ウェルのプレート当たりの平均生産性[全体に対する%]
【0256】
以下の実施例は本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の精神から逸脱することなく、記載の手法において修正がなされ得ることが理解される。
【実施例】
【0257】
材料および方法
組換えDNA法
Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989) に記載されているような標準方法を用いて、DNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造業者の説明書に従って使用した。
【0258】
サイトカイン
Zubler混合物:2 ng/mlのマウスIL-1β、50 ng/mlのマウスIL-2、10 ng/mlのマウスIL-10、および2 ng/mlのマウスTNFα(最終濃度)
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
実施例1
動物の管理および免疫化
免疫化には、Charles River Laboratories International, Inc.から入手したNZWウサギを使用した。動物は、AAALACiによって認可された動物施設において、Appendix A 「Guidelines for accommodation and care of animals」に従って収容した。動物の免疫化プロトコールおよび実験はすべて、オーバーバイエルンの政府によって承認され(許可番号55.2-1-54-2532-90-14)、ドイツ動物福祉法 (German Animal Welfare Act) ならびに欧州議会および理事会 (European Parliament and Council) の指令2010/63に従って実施した。
【0263】
12~16週齢のNZWウサギを、組換えヒト血清アルブミンタンパク質(HSA;CAS RN 70024-90-7;Sigma)または組換えVEGF-KLHタンパク質のいずれかで免疫化した。
【0264】
一組のウサギを、0日目に皮内適用によって、完全フロイントアジュバントで乳化された400μg HSAで免疫化し、続いて1、2、6、10、および23週目に、筋肉内注射と皮下注射を交互に行うことによって、完全または不完全フロイントアジュバントで乳化された200μg HSAで免疫化した。
【0265】
0日目に皮内適用による、完全フロイントアジュバントで乳化されたVEGF-KLH 400μg 抗原の免疫化、続いて1、2、7、および10週目に、筋肉内注射と皮下注射を交互に行うことによって、完全フロイントアジュバントで乳化された200μg VEGF-KLHの免疫化について。
【0266】
3回目の免疫化から開始してそれ以降、免疫化後の4、5、および6日目に血液(推定全血液量の10%)を採取した。ELISAによる免疫原特異的IgG力価測定のために、血清を調製した。
【0267】
実施例2
血液の取り出し(免疫化および非免疫化ウサギ)
一般的に、ウサギ由来の血液は、耳静脈、またはより大量の場合には耳動脈の穿刺によって採取した。免疫化ウサギから、3度目、4度目、5度目、および6度目の免疫化の4~6日後に、EDTAを含む全血 (16 ml) を収集し、FACSによる単一細胞選別に使用した。
【0268】
実施例3
末梢血単核細胞 (PBMC) の単離
末梢血単核細胞 (PBMC) の単離は、製造業者の説明書A(Lympholyte(登録商標)-mammal、Cedarlane)に従ってLympholyte(登録商標)を用いて密度勾配分離により行った。
【0269】
採血した血液をリン酸緩衝生理食塩水 (PBS) で1:2に希釈した。遠心管中で、推奨される容積の密度分離培地に希釈血液を注意深く重層した。バイアルを、ブレーキをかけずに800×gで20分間遠心分離した。白い中間層からリンパ球を採取した。取り出した細胞をPBSで2回洗浄し、800×gで10分間遠心分離した。
【0270】
滅菌6ウェルプレート(細胞培養等級)を使用して、非特異的接着によりマクロファージおよび単球を枯渇させた。ウェルを、コーティングしなかったか、またはKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)でもしくはストレプトアビジンでコーティングした。各ウェルを、1 ml~(最大)2 mlの培地、および免疫化ウサギ由来の最大で6×106個までの末梢血単核細胞で満たし、インキュベーター内で37℃において60~90分間結合させた。その後、リンパ球含有上清を遠心分離バイアルに移し、かつ800×gで10分間遠心分離した。ペレットを培地に再懸濁した。
【0271】
実施例4
抗原特異的B細胞の濃縮
抗原を、最終濃度2μg/mlまでコーティング緩衝液で希釈した。この溶液4 mlを6ウェルマルチウェルプレートのウェルに添加し、室温で一晩インキュベートした。使用する前に上清を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。各ウェルを、1 ml~(最大)2 mlの培地および最大で6×106個までの末梢血リンパ球で満たした。プレートを37℃で60分間インキュベートした。上清を廃棄した。ウェルを1×PBSで1~4回注意深く洗浄することにより、非接着細胞を除去した。付着性の抗原特異的B細胞を回収するため、1 mlのトリプシン/EDTA溶液をマルチウェルプレートのウェルに添加し、37℃で5~10分インキュベートした。培地を添加することによりインキュベーションを停止し、上清を遠心分離バイアルに移した。ウェルを培地で2回洗浄し、この上清を他の上清と混合した。細胞を800×gで10分間遠心分離してペレット化した。細胞は、免疫蛍光染色まで氷上で維持した。任意で、ペレットをPBSに再懸濁した。
【0272】
実施例5
胸腺細胞上清 (TSN) の生成
手法1:
T細胞の培養
4~5週齢のウサギの胸腺からT細胞を単離した。細胞を遠心分離し、直ちに培養するか、または細胞3×107個の一定分量で凍結した。胸腺細胞は、175 cm2培養フラスコ中で、細胞5×105個/EL-4 B5培地1 mlの最小細胞密度で播種し、37℃で48時間インキュベートした。
【0273】
マクロファージの培養
ウサギ由来の血液単核細胞を、175 cm2培養フラスコ中、細胞 少なくとも1×105個/mlの細胞密度で、EL-4 B5培地中で37℃にて1.5時間培養した。その後、培地を除去し、温めたEL-4 B5培地で洗浄することにより付着したマクロファージから付着しなかった細胞を除去し、続いて35 ml培地中で48時間培養した。
【0274】
T細胞とマクロファージの共培養
T細胞およびマクロファージを別々のフラスコ中で48時間培養した。両方の細胞集団を混合する前に、T細胞を800×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを培地10 mlに再懸濁した。T細胞を細胞5×105個/mlの最小細胞密度に調整し、培地1 ml当たり10 ngホルボール-12-ミリステート-13-アセテート (PMA) および5μgまたは50μgフィトヘマグルチニンM (PHA-M) を添加した。マクロファージから培養用培地を除去し、マクロファージを含むフラスコにT細胞懸濁液を添加した。36時間の共培養後に培養用培地を取り出し、これをTSN溶液と命名した。残存細胞を除去するため、TSN溶液を0.22μmフィルターを通して濾過した。TSN溶液を4 mlの一定分量で-80℃で凍結した。
【0275】
手法2:
T細胞の培養
それぞれ3~4週齢のマウスおよびハムスターまたは4~5週齢のウサギの胸腺からT細胞を単離した。細胞を遠心分離し、直ちに培養するか、または細胞4~5×107個の一定分量で凍結した。胸腺細胞は、175 cm2培養フラスコ中で、細胞5×105個/EL-4 B5培地1 mlの最小細胞密度で播種し、37℃で最長48時間まで(マクロファージが用いられるTSN生成法に応じて40~48時間;実施例9および10を参照されたい)インキュベートした。
【0276】
マクロファージの培養
それぞれ少なくとも3ヵ月齢のマウスおよびハムスターの腹腔からマクロファージを単離した。マウスもしくはハムスター由来の腹腔マクロファージ、またはウサギ由来の血液単核細胞を、175 cm2培養フラスコ中、細胞 少なくとも1×105個/mlの細胞密度で、EL-4 B5培地中で37℃にて1.5時間培養した。その後、培地を除去し、温めたEL-4 B5培地で洗浄することにより付着したマクロファージから付着しなかった細胞を除去し、続いて35 ml培地中で48時間培養した。
【0277】
T細胞とマクロファージの共培養
T細胞およびマクロファージを別々のフラスコ中で培養した。両方の細胞集団を混合する前に、T細胞を800×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットをEL-4 B5培地10 mlに再懸濁した。最終培養用培地は、細胞5×105個/mlの細胞密度に調整されたT細胞、培地1 ml当たり10 ngホルボール-12-ミリステート-13-アセテート (PMA)、および培地1 ml当たり5μgフィトヘマグルチニンM (PHA-M) を含んだ(=T細胞懸濁液)。その後、マクロファージから培養用培地を除去した(=培地枯渇マクロファージ)。培地枯渇マクロファージを含むフラスコにある量/容積のT細胞懸濁液を添加して、マクロファージ1.25~2×106個/mlの最終的なしかし規定されたマクロファージ細胞密度を得た。30~46時間の共培養後に培養用培地を取り出し、これをTSN溶液と命名した。残存細胞を除去するため、TSN溶液を0.22μmフィルターを通して濾過した。TSN溶液を(4.2 mlの)一定分量で-80℃で凍結した。
【0278】
実施例6
EL-4 B5細胞の培養
凍結EL-4 B5細胞を37℃の水浴中で迅速に融解し、EL-4 B5培地10 mlで希釈した。300×gで10分間遠心分離した後、上清を廃棄し、ペレットを培地1 mlに再懸濁した。
【0279】
EL-4 B5細胞をT175培養フラスコ中に細胞8×10個/mlの細胞密度で接種した。細胞密度を1日おきに測定し、細胞8×104個/mlに調整した。細胞はおよそ18時間の倍加時間を有する。
【0280】
十分量の細胞および細胞0.5×106から1~2×106個/mlの密度に到達した後、細胞を収集し、137Cs源からの外部放射の単回線量で照射した。
【0281】
照射の2日後には約3分の1のみ、および照射の7日後には平均して約15%のみの細胞は、生存能力がある、すなわち生存している。
【0282】
より詳細には、EL-4 B5細胞を本実施例に記載される方法で増大させた。γ-照射の前に、細胞密度を細胞10×10
6個/mlに調整した。使用した線量は50 Gyであった。照射後、細胞をEL-4 B5培地中でさらに培養した。毎日、(ViCell装置およびトリパンブルー染色を用いて)細胞数および細胞生存率を測定した。50 Gy γ線放射による照射後の各日における平均生存能力(生細胞の相対数)を、以下の表に提示する(n=データ点の数)。
【0283】
実施例7
免疫蛍光染色および単一細胞デポジション
プロトコール1:
染色しようとする細胞の数に応じて、細胞をそれぞれ培地100μl(細胞106個未満)または培地200μl(細胞106個超)中に提供した。蛍光標識抗体を実験動物の5%血清およびFACS緩衝液で、それぞれ100μlまたは200μlの最終量に希釈した。反応混合物をローラーラック上で、暗所で4℃にて40分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を300×gで5分間、2回洗浄した。ペレットをPBS 400μlに再懸濁し、70μmふるいを通して濾過した。濾過した溶液をFACSバイアルに移し、FACS実験の直前に、死細胞をヨウ化プロピジウム (6.25μg/ml) の添加により染色した。標識抗体がビオチンで標識されている場合には、該抗体はストレプトアビジン標識Alexa Fluor(登録商標)647(抗体197)を用いて第2段階で検出した。
【0284】
プロトコール2:
単一細胞選別のために使用した抗ウサギ IgG FITCは、AbD Serotec(STAR121F、Dusseldorf, Germany)から入手した。
【0285】
表面染色のために、細胞を、FACS緩衝液で最適に希釈した抗ウサギIgG FITC抗体と共に、回転させながら暗所で4℃にて30分間インキュベートした。遠心分離後に、上清を吸引によって除去した。PBMCを2サイクルの遠心分離に供し、氷冷PBSで洗浄した。最後に、PBMCを氷冷PBSに再懸濁し、直ちにFACS解析に供した。FACS解析の前に5μg/mlの濃度のヨウ化プロピジウム(BD Pharmingen、San Diego, CA, USA)を添加して、死細胞と生細胞を区別した。他の実験では、染色細胞をFACSによって単一で置いた。
【0286】
コンピュータおよびFACSDivaソフトウェア(BD Biosciences、USA)を備えたBecton Dickinson FACSAriaを用いて、データを収集し解析した。
【0287】
免疫蛍光染色用のFACS緩衝液は、1×PBSおよび0.1% BSAを含んだ。
【0288】
実施例8
B細胞とEL-4 B5細胞の共培養
単一細胞選別したB細胞を96ウェルプレート中で、Pansorbin細胞 (SAC)(Calbiochem (Merck)、Darmstadt, Deutschland)、EL-4 B5細胞(0~5×104個/ウェル)、およびウサギ胸腺細胞上清またはサイトカイン混合物を有する200μl/ウェルEL-4 B5培地を用いて、それぞれ、インキュベーター内の5% CO2の雰囲気中37℃で7日間培養した。スクリーニングのためにB細胞培養上清を取り出し、細胞は可変領域遺伝子クローニングのために直ちに回収するか、またはRLT緩衝液(Qiagen、Hilden, Germany)100μl中-80℃で凍結した。
【0289】
実施例9
IgGの定量化
0.5μg/mlのビオチン化マウス抗ウサギIgG抗体 (Sigma-Aldrich) および0.35μg/ml抗ウサギIgG HRPコンジュゲート (Sigma-Aldrich) の混合物を、384ウェル ストレプトアビジンコーティングマイクロタイタープレート (MicroCoat Biotechnologie GmbH) に移した。0.5% BSAおよび0.05% Tween(登録商標)-20が補充されたPBS中のB細胞上清の希釈物を添加し、RTで90分間インキュベートした。PBST(0.2% Tween(登録商標)-20を含むリン酸緩衝生理食塩水)緩衝液で繰り返し洗浄した後 (6×)、プレートをBM blue(登録商標)HRP基質溶液で発色させ、色形成を370 nmにおける吸光度によって測定した。市販のウサギIgG (Sigma-Aldrich) を較正標準として使用した。
【0290】
実施例10
抗原結合免疫アッセイ
アッセイは、0.5%ゼラチンおよび0.025% Tween(登録商標)-20が補充されたPBS(リン酸緩衝生理食塩水)緩衝液を用いて、384-ウェルMaxiSorpマイクロタイタープレート (Thermo Scientific) において室温 (RT) で行った。プレートを0.5μg/mlのヒト血清アルブミン(HSA、Sigma-Aldrich)で少なくとも2時間から一晩コーティングした。PBST(0.1% Tween(登録商標)-20を含むPBS)緩衝液で洗浄した後 (3×)、0.5%ゼラチンおよび0.1% Tween(登録商標)-20を含むPBSでウェルをブロッキングした。再度、プレートを3回洗浄し、その後B細胞上清の希釈物を添加した。60分のインキュベーションおよびPBSTによる3回の洗浄段階の後、HRP結合抗ウサギIgG抗体 (Amersham) の1:4,000希釈物をウェルに移し、60分間インキュベートした。最後に、プレートをPBSTで繰り返し洗浄し (6×)、BM blue(登録商標)HRP基質溶液で30分間発色させた。392~405 nmで吸光度を測定した。
【配列表】