(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】タービンを制御するための制御システム、タービンを制御するための方法、及び風車
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20221028BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20221028BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F03D7/04 A
F03D1/06 A
G01S17/88
(21)【出願番号】P 2020543585
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2019053814
(87)【国際公開番号】W WO2019097092
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】102018001172.1
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507054917
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート シュトゥットガルト
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【氏名又は名称】吉田 昌司
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ダービト、シュリップ
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン、ラアッハ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン、ハイツマン
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特許第6195039(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0075546(US,A1)
【文献】特開2016-211989(JP,A)
【文献】特開2002-185720(JP,A)
【文献】特開2017-067680(JP,A)
【文献】国際公開第2018/002980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
F03D 1/06
G01S 17/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン用の制御システムであって、
前記タービンの上流側の流れ場の少なくとも1つの特定のパラメータに基づいて前記タービンを制御するための制御信号を生成するように構成されている、制御ユニットと、
少なくとも1つの測定信号に基づいて、前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータに関して少なくとも1つの測定値を測定するように構成されている少なくとも1つの測定ユニットであって、各測定信号は、前記流れ場の測定点(1、2、3、4)の各々に放射されうるものである、前記測定ユニットと、
前記少なくとも1つの測定値に基づいて、前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータを決定するように構成されている、少なくとも1つの決定ユニットと、
を備え、
前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記少なくとも1つの測定ユニットと前記各測定点(1、2、3、4)との間で、
前記タービンのローターブレード(30)によって少なくとも1つの測定信号が遮断されたことに起因して誤った測定値を検出するように構成されており、かつ、その結果生じる流れ場の前記少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するために、少なくとも1つの再構成方法を使用して誤った測定値を置き換えるように構成されている、制御システム。
【請求項2】
前記タービンが風車(風力タービン)であり、前記流れ場が風場である、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記風場の前記少なくとも1つの特定のパラメータが、ローター実効風速および/またはウインドシアおよび/または風向である、請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの制御ユニットが、前記少なくとも1つの決定ユニットを含んでいるか、あるいは、
前記少なくとも1つの測定ユニットが、前記少なくとも1つの決定ユニットを含んでいる、
請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの測定ユニットは、前記少なくとも1つの測定信号と並行して、少なくとも1つの品質信号を出力するように設計されており、
前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記少なくとも1つの品質信号に基づいて、前記測定値の誤りを検出するように構成されている、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの測定ユニットがLidarシステムとして設計されている、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記Lidarシステムの少なくとも1つの測定信号が、少なくとも1つの測定ビーム(S1、S2、S3、S4)を含む、請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの決定ユニットが、一組の測定点(1、2、3、4)に基づいて、流れ場の少なくとも1つのパラメータを決定するように設計されている、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの決定ユニットは、誤った測定値を、前記測定点の組(1、2、3、4)の別の測定点(1、2、3、4)の測定値で置き換えることにより、流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている、請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの決定ユニットが、前記測定点の組みの少なくとも2つの他の測定点(1、2、3、4)の測定値に基づく推定測定値に基づいて、誤った測定値を置き換えることにより、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている、請求項8または9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの決定ユニットが、誤った測定値を、各1つの測定点(1、2、3、4)の以前の測定値で置き換えることによって、前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの決定ユニットが、前記1つの測定点(1、2、3、4)の少なくとも2つの以前の測定値に基づき補間された測定値で誤った測定値を置き換えることによって、前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの決定ユニットが、誤った測定値を、各1つの測定点(1、2、3、4)の少なくとも1つの前の測定値および次の測定値に基づいて補間された測定値で置き換えることによって、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項14】
前記制御ユニットは、
前記タービンの測定信号に基づいて、前記タービンを制御するための少なくとも1つのフィードバック制御信号を生成するフィードバック制御装置を備えるか、および/または
前記流れ場の前記少なくとも1つの特定のパラメータに基づいて前記タービンを制御するための少なくとも1つのフィードフォワード制御信号を生成するフィードフォワード制御装置を備える、
請求項1から13のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの決定ユニットが、さらに、電磁干渉および/またはタービン振動および/または測定ユニットの取り付け部の振動を検出し、かつ、結果として生じる流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように構成されている、請求項1から14のうちのいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項16】
請求項1から15のうちのいずれか一項に記載の制御システムと、少なくとも1つの
ローターブレード(30)とを備えた風力発電装置。
【請求項17】
タービンを制御する方法であって、
少なくとも1つの測定ユニットから、前記タービンの上流の流れ場のそれぞれの測定点(1、2、3、4)に、少なくとも1つの測定信号を放射することと、
前記少なくとも1つの測定信号に基づいて、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータに関して少なくとも1つの測定値を測定することと、
少なくとも1つの測定ユニットとそれぞれの測定点(1,2,3,4)との間の少なくとも1つの測定信号が、
前記タービンのローターブレード(30)によって遮断されていることに起因して、誤った測定値を検出することと、
前記少なくとも1つの測定値に基づいて前記流れ場の少なくとも1つのパラメータを決定することであって、少なくとも1つの再構成方法を使用して誤った測定値を置き換えることにより前記流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定が補償されることと、
前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータに基づきタービンを制御することと、
を備えたタービンを制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンを制御するための制御システム、このような制御システムを備えた風車(風力タービン)、およびタービンを制御するための方法に関するものである。
【0002】
Lidar(ライダー)は、レーザー光をターゲットに当てて距離を測る専門家に知られた測量技術である。Lidarは「Light Detection And Ranging」の頭文字をとったもので、元々は「光」と「レーダー」を組み合わせて作られたものである。Lidarは一般的に測地学、地理学、考古学、考古学、地理学、地質学、地形学、地震学、林業、大気物理学、空中発射レーザースワスマッピング(ALSM)、レーザー高度測定などの分野に応用され、高解像度の地図を作成するための技術として使用されている。Lidarとして知られているものは、単純にレーザースキャンや3Dスキャンと呼ばれることもあり、地上、空中、モバイルでの利用が可能である。
【0003】
Lidarは紫外線、可視光、あるいは近赤外光を利用して物体を撮像する。非金属物、岩石、雨、化学化合物、エアロゾル、雲、さらには単一分子など、幅広い物質をターゲットにすることができる。狭いレーザービームは、非常に高い解像度で物理的フィーチャをマッピングすることができ、例えば、飛行機は30cm以上の解像度で地形をマッピングすることができる。
【0004】
Lidarは、大気の研究や気象学に広く利用されている。航空機や人工衛星に搭載されたLidar装置は、測量や地図作成を行うもので、最近の例としては「U.S. Geological Survey Experimental Advanced Airborne Research Lidar」がある。NASAは、将来のロボットや有人月面着陸機による安全で自律的な精密着陸を実現するためのキーテクノロジーとして、Lidarを挙げている。
【0005】
Lidar測定で使用する波長は、ターゲットによって約10マイクロメートルから紫外(約250nm)まで様々である。一般的に、光は後方散乱によって反射される。レイリー散乱、三重散乱、ラマン散乱、蛍光など、さまざまな種類の散乱がLidarの用途に応じて使用される。異なる種類の後方散乱に基づいて、Lidarは、それに応じてレイリーLidar、三重Lidar、ラマンLidar、Na/ Fe/ K蛍光Lidarなどと呼ばれる。波長の適切な組み合わせは、返された信号の強度の波長依存性の変化を識別することにより、大気内容物のリモートマッピングを可能とすることができる。
【0006】
Lidarを用いた制御は、風力タービン制御の分野で重要な研究テーマとなっている。初期のフィールドテストでは、さまざまなフィールドテストにおいて、コレクティブピッチフィードフォワードコントローラは、全負荷運転中のローター速度変化と構造物負荷を低減することができた。部分負荷運転では、Lidar支援トルク制御は、発電量にはわずかなメリットしかない一方で構造物の負荷に悪影響を与えることがわかった。コレクティブピッチのみを使用する非線形モデル予測制御(NMPC)は、全負荷運転中にコレクティブピッチフィードフォワードコントローラと同様の性能を示すが、追加の発電機トルクを使用した部分負荷運転と全負荷運転の間の移行では性能が向上することを示している。NMPCは計算的には有効になってきているが、タービンメーカーにとっては、フィードバックコントローラを置き換えることは魅力的ではない。フラットネスベースのアプローチでは,ローター速度とタワーの運動の軌跡に基づいて制御動作を計算することができ,遷移領域での制御性能の向上を示すが,チューニング(調整)が困難である。
【0007】
そのため、現状の技術状況から、風力発電機の回転数制御の改善、すなわち、部分負荷と全負荷との間の移行時におけるエネルギー収率の向上と構造的負荷の低減が求められている。本発明は、特に、ローターの回転数制御を改善し、構造的負荷を低減し、移行時のエネルギー収量を増加させることを目的としている。
【0008】
特に、風車の負荷低減のための技術として、風車用のLidarを用いた制御システムが有望視されている。ここでは、Lidarの生データ(見通し風速("line-of-sight" wind speed))を使用して、風場再構成と呼ばれるローター実効風速(rotor-effective wind speed)を推定している。ローター実効風速という用語は、風力発電技術の分野ではよく知られており、例えば、David Schlipf博士の博士論文「Lidar-Assisted Control Concepts for Wind Turbines」(University of Stuttgart, 2016)で定義されている。ここで、ローター実効風速とは、不均一な乱流風場(ローターディスク上に定義された3次元ベクトル場)と同じかそれに匹敵する動的効果を風力タービンにもたらすスカラー風速のことである。ローター実効風速は、重み付け有りまたは無しで、ローターディスク上の平均値として計算することができる。このようなローター実効風速の推定または計算に基づくコントローラおよび制御システムは、例えば、独国特許公報DE102016212362号明細書に記載されており、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0009】
ここで、ローター実効風速とは、風力に基づいて運転されるタービンとの関係で定義される。ローター実効風速は、例えば、水流に基づいて、水中で運転されるタービンに直接伝達することができる。特にLidarの生データ(見通し流速("line-of-sight " flow velocity))は、流れ場再構成と呼ばれるローター実効流速の推定に使用されている。ローター実効流速という用語は、ローター実効風速と類似して定義される。ここで、ローター実効流速とは、タービンに不均一な乱流場(ローターディスク上に定義された3次元ベクトル場)と同じかそれに匹敵する動的効果をもたらすスカラー流速のことである。ローター実効流速は、重み付け有りまたは無しで、ローターディスク全体にわたる平均として計算することができる。
【0010】
本明細書の文脈では、明確化のため、ローター実効風速を使用し、すなわち、本発明は風車に基づいて説明される。ただし、このことを限定と解釈してはならない。本発明は、特に、任意の媒体におけるローターおよびタービンの制御システムに適用することができる。
【0011】
このような、ローター実効風速の計算または推定に基づくシステムでは、風場(wind field)とタービンの特定の条件の下では、タービンに負荷の増加が生じることが判明している。
【発明の概要】
【0012】
そこで、本発明の目的は、ローターの回転数制御を向上させ、構造的な負荷を低減するために、タービンを制御するための制御システムを提供することにある。
【0013】
この課題は、独立請求項に記載された制御システム、風車(風力タービン)、およびタービンを制御する方法によって解決される。好ましい実施形態は従属請求項の主題となる。
【0014】
ある一つの側面はタービン用の制御システムに関し、当該制御システムは、前記タービンの上流側の流れ場の少なくとも1つの特定のパラメータに基づいて前記タービンを制御するための制御信号を生成するように構成されている、制御ユニットと、少なくとも1つの測定ユニットであって、前記少なくとも1つの測定ユニットが、少なくとも1つの測定信号に基づいて、前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータに関して少なくとも1つの測定値を測定するように構成され、かつ、各測定信号が流れ場または風場の各測定点に放射され得るようになっているか、あるいは、前記少なくとも1つの測定ユニットが、各測定信号を流れ場または風場の各測定点に放射することができるように構成されている、前記少なくとも1つの測定ユニットと、前記少なくとも1つの測定値に基づいて、前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータを決定するように構成されている、少なくとも1つの決定ユニットと、を備え、前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記少なくとも1つの測定ユニットと前記各測定点との間で少なくとも1つの測定信号が、特に、タービンのローターブレードによって遮断されたことに起因して誤った(不正確な)測定値を検出するように構成されており、かつ、その結果生じる流れ場の前記少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように構成されている。
【0015】
前記少なくとも1つの制御ユニットは、電子部品として設計され、少なくとも1つのプロセッサを含むことができる。特に、前記少なくとも1つの制御ユニットは、制御信号を介してタービンを制御ないし調節するために、タービンに電子的に接続することができる。制御ユニットは、データ導体を介して、または無線接続を介して、タービンに物理的に接続することができる。
【0016】
前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータは、前記流れ場の物理パラメータであってもよく、ここで、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータは、ローター実効風速、および/または、ウインドシア(wind shear)、および/または、風向を含む。しかし、前記少なくとも1つのパラメータは、これらの量に限定されるものではなく、流れ場の任意の物理パラメータであってもよく、ここで、前記少なくとも1つのパラメータは多次元パラメータであってもよい。流れ場は、ある空間領域内で物質または力効果(相互作用)のような他の特性を輸送する流れ(flow or current)を記述するものである。
【0017】
タービンは特に風車(風力タービン)であってもよく、そのとき流れ場は風場である。しかし、上記で説明したように、タービンは、風車として設計されたものに限定されるものではない。特に、タービンは、例えば、流体発電所として少なくとも部分的に水中に設けられるものであってもよく、および/または、任意の媒体の流れ場によって駆動されるように設計されたものであってもよい。タービンは、特に3枚の回転翼を有するものとすることができるが、1枚、2枚、または3枚より多い回転翼を有するタービンであってもよい。
【0018】
前記少なくとも1つの測定ユニットは、前記少なくとも1つの測定信号に基づいて、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータに関連して前記少なくとも1つの測定値を測定するように構成されている。前記各測定信号は、前記流れ場または前記風場の1つの測定点にそれぞれ放射され得るようになっているか、あるいは、前記少なくとも1つの測定ユニットが、前記各測定信号を前記流れ場または前記風場の1つの測定点に放射するように構成されている。言い換えれば、前記少なくとも1つの測定ユニットは、それぞれの測定点において前記少なくとも1つのパラメータに関して少なくとも1つの測定値を測定するために、流れ場または風場のそれぞれの測定点に少なくとも1つの測定信号を放射するように特に設計することができる。特に、前記少なくとも1つの測定ユニットは、(1つの)測定点で(1つの)測定値を測定するために、流れ場または風場の各測定点に丁度1つの測定信号を放射するように設計することができ、これにより、特に、費用対効果の高いおよび/または単純な測定ユニットの使用を可能にする。さらに、前記少なくとも1つの測定値は、それぞれの測定点における、特に、流れ場の流速、または、風場の(例えば、見通し)風速とすることができる。
【0019】
前記少なくとも1つの測定ユニットは、特に、前記少なくとも1つの測定信号を放射ないし送信するように設計された少なくとも1つの放射装置を有していてもよい。前記少なくとも1つの測定信号は、特に、電磁波および/または音響波であってもよい。前記少なくとも1つの測定ユニットは、特に、前記少なくとも1つの測定信号の反射を受信してデータ信号に変換するように設計された少なくとも1つの受信装置を有していてもよい。
【0020】
前記少なくとも1つの測定ユニットは、特に、各測定点において、少なくとも1つのパラメータに関連する測定値を、時間的に、例えば一定の時間間隔で、順次または連続的に測定するように設計されていてもよい。言い換えれば、前記少なくとも1つの測定ユニットは、各測定点における測定点測定周期で、前記少なくとも1つのパラメータに関連する測定値を、順次にまたは時間順に測定するように特に設計することができる。特に、それぞれの測定点の測定周期(周波数)は、流れ場の特定のパラメータに基づいて、および/またはそれぞれの測定点の少なくとも1つの以前の測定値に基づいて動的に調整することができる。したがって、特に、パラメータの決定(測定)は、状況に関連した状況または環境関連した状況に動的に適応させることができ、例えば、流れ場の流速が増加したなら測定周波数の増加によって、適応させることができる。特に、ある一つの測定点における以前の測定値は、以前の時点において各測定点で前記少なくとも1つの測定ユニットによって測定された測定値に対応させることができる。ある一つの測定点の次の測定値は、特に、次の時点において各測定点で前記少なくとも1つの測定ユニットによって測定された測定値に対応させることができる。
【0021】
さらに、前記少なくとも1つの測定ユニットは、前記少なくとも1つの測定点において、前記少なくとも1つのパラメータに対する前記少なくとも1つの測定値を、前記測定サイクルにおいて時間的に順次または連続して測定するように構成されていてもよい。前記少なくとも1つの測定ユニットは、特に、複数の測定サイクルを次々に、あるいは連続的に、あるいは時系列的に次々に、実行するように設計されていてもよい。
【0022】
少なくとも1つの決定ユニットは、電子部品として設計され、少なくとも1つのプロセッサを含むことができる。特に、少なくとも1つの決定ユニットは、測定装置から少なくとも1つの測定値を受信するために、少なくとも1つの測定ユニットに電子的に接続することができる。ここで、少なくとも1つの決定ユニットは、データ導体(データライン)を介して、または無線接続を介して、少なくとも1つの測定ユニットに物理的に接続することができる。特に、前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記流れ場の少なくとも1つの特定のパラメータを前記少なくとも1つの制御ユニットに送信するために、前記少なくとも1つの制御ユニットに電子的に接続されていてもよい。この場合、少なくとも1つの決定ユニットは、データ導体を介して、または無線接続を介して、少なくとも1つの制御ユニットに物理的に接続することができる。
【0023】
前記少なくとも1つの決定ユニットはさらに、前記少なくとも1つの測定ユニットと前記各測定点との間の少なくとも1つの測定信号の遮断、特に、タービンのローターブレードによる遮断に起因する誤った測定値を検出するように構成されている。これに関連して、前記少なくとも1つの決定ユニットは、好ましくは、周期的な遮断、例えばタービン回転翼の回転による遮断に起因するような周期的な誤った測定値と、例えば動物の通過による遮断に起因するような非周期的な誤った測定値とを区別するように設計することができる。その際、前記少なくとも1つの決定ユニットは、例えば、反射され遮断された測定信号の信号対雑音比を分析するように、および/または、少なくとも1つの測定ユニットからの遮断の距離を測定するように設計されていてもよい。特に、前記少なくとも1つの決定ユニットは、そのような遮断が検出された場合、決定されたパラメータまたは決定されたパラメータに基づく制御信号における共振の形成を回避または防止するために、測定値に基づくパラメータの決定を補償するように設計されている。この目的のために、少なくとも1つの決定ユニットは、特に、以下に説明するように、遮断が原因の誤った測定値を置き換えるために、少なくとも1つの再構成方法を使用するように設計されている。言い換えれば、前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記少なくとも1つの決定ユニットが誤った測定値を代替の測定値で置き換えるように設計されていることによって、誤った測定値の結果として生じる少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように特に設計することができる。この目的のために、前記少なくとも1つの決定ユニットは、特に、例えば、以下に説明するように、少なくとも1つの再構成手段によって代用測定値を決定するように設計することができる。特に、少なくとも1つの決定ユニットは、以前の測定値および/または以前に決定されたパラメータおよび/または局所的な流れの条件に基づいて、遮断を原因とする誤った測定値を置き換えるために、以下に説明する再構成方法のうちの1つを動的に選択して適用するように設計されていてもよい。特に、少なくとも1つの決定ユニットは、遮断が原因の誤った測定値を置き換えるために、後述する1つ以上の再構成方法を使用するように設計されていてもよい。このように、流れ場の少なくとも1つのパラメータの決定のこのような補償によって、タービンのローター回転周波数と、前記少なくとも1つの測定ユニットの測定周波数特にLidar測定周波数との間の干渉を回避することができ、それによって流れ場の少なくとも1つのパラメータの正しい計算または決定または推定を可能にすることができる。
【0024】
上述したような負荷増加の理由の調査の過程において、本発明者らは、これのことは、特にタービンのローター実効風速の計算または推定に使用される測定ビームの遮断またはシェーディング(本明細書の範囲内では、ブレードシェーディングも互換的に、等価的に使用される)によるものであることを見出した。(特に、例えば、Lidar)測定値とローターの回転との動的な干渉は、本発明に従った測定信号または測定値の動的な考察によってのみ顕著になる。これまでは、これがタワーの振動の励振にもつながり得ることは認識されていなかった。これとは対照的に、上述したような「ブレード遮断」すなわち回転翼による測定ビームのシェーディング(遮蔽)の問題は、Lidar測定器の利用可能性の分析の中でしか言及されていない。
【0025】
風力タービンのナセル上のLidarシステムでは、個々のLidarビームは、測定周波数とローター速度に応じて、ローターブレードによって遮断される。これはLidarシステムによって認識され、測定されたデータは伝統的には風場の再構成では無視される。本発明の過程で、ブレードシェーディングがそのような従来の風場の再構成と一緒になると、ローター実効風速の信号に共振をもたらすことが示された。これらの共振は、制御に重要な周波数範囲にあり、したがって、それらから生成された制御信号がタービンを制御するために使用される場合、タービンの負荷増加につながり得る。
【0026】
現在、各測定面j及び測定周期kに対するローター実効風速v
oL,jkは、以下に示すように補正測定値の移動平均値として決定されている。
【数1】
ここで、npは測定周期ごとの測定点数、x
iは測定形態に応じた補正値、V
ijkは測定点i、測定面jおよび測定周期kからの視線風速(測定値)である。次の時間ステップでは、最も古い測定値を除いて最新の測定値を追加し、その後、最新のn
p測定点について風場再構成を繰り返す。
【0027】
例えば、現在の市販の装置のように、4つのLidarビームを有する測定システムが使用される場合には、第1の測定サイクルの後に、各測定面に対しする値(v1j1; v2j1; v3j1; v4j1)が平均化される。次の時間ステップ(第2の測定サイクルの開始)で、再び点1で測定を行った場合には、vij1は除かれ、新しい測定値vij2に置き換えられる。したがって、平均化は、(v1j1; v2j1; v3j1; v4j1)に対して実行される。
【0028】
ブレードシェーディングが原因で測定サイクル中に1つ以上の測定値が省かれた場合、通常は残りの測定点に亘って平均値が計算される。上記の例では、第2の測定周期において、第2の測定点が遮断されているかまたはシェーディングされている場合には、現在、3つの測定(v
1j2; v
3j1; v
4j1)に亘って平均化が実行される。第3の測定点で再び測定値が得られる場合、(v
1j2; v
3j2; v
4j1)に亘って平均化が行われる。さらなるステップの一例を表1に示す。
【表1】
【0029】
しかし、ウインドシアなどの悪条件の下では、周期的な変動が発生する。例えば、表2(後述)の点で4ビームの測定を行い、垂直方向の直線風速が0.04(m/s)/mの場合、上の2点の測定値は17.2m/s、下の2点の測定値は14.8m/sとなる。従来のように6回目の測定をすべて省くと、例えば、特にブレードシェーディングを原因として1/3Hzの共振が発生する。
【表2】
【0030】
本発明の過程で、測定データが周期的に欠落し、測定点の平均値が異なることが共振の原因であることが認識された。有利にも、請求項1に係る制御システムによれば、このような周期的な計測データの欠落の発生を伴わないタービンの制御が可能となるため、上述した共振の発生を防止することが可能となる。
【0031】
特に、前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記少なくとも1つの測定信号に基づいて、特に、前記少なくとも1つの測定ユニットとそれぞれの測定点との間のそれぞれの測定信号の遮断に起因する測定値の誤りを決定するように設計することができる。好ましくは、少なくとも1つの決定ユニットは、遮断の特徴、例えば周期性または反射率を検出するように設計することができる。
【0032】
好ましくは、前記少なくとも1つの測定ユニットは、前記少なくとも1つの測定信号と並行して、前記少なくとも1つの品質信号、特に信号対雑音比を出力するように設計されていてもよい。ここで、前記少なくとも1つの品質信号は、電磁信号および/または音響信号であってもよい。前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記少なくとも1つの品質信号に基づいて、特に、前記少なくとも1つの測定ユニットと前記各測定点との間の前記各測定信号の遮断に起因する前記測定値の誤りを検出するように構成することができる。好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットは、少なくとも1つの品質信号に基づいて、遮断の特性、例えば周期性または反射率を検出するように設計することができる。
【0033】
好ましくは、前記少なくとも1つの制御ユニットが、前記少なくとも1つの決定ユニットを含んでもよい。これにより、少なくとも1つの決定ユニットと少なくとも1つの制御ユニットの機能に必要な演算能力を集中的に提供することができる。これに代えて、好ましくは、前記少なくとも1つの測定ユニットが、前記少なくとも1つの決定ユニットを含んでいてもよい。さらにこれに代えて、前記少なくとも1つの制御ユニットおよび前記少なくとも1つの測定ユニットが、それぞれ、前記少なくとも1つの決定ユニットの一部を含んでいてもよい。例えば、誤った測定値を補償する前記少なくとも1つの決定ユニットの一部は、前記少なくとも1つの測定ユニットによって構成されてもよく、これにより誤った測定値の送信が不要となり、その一方で、(複数の)測定値に基づいて前記少なくとも1つのパラメータを決定する前記少なくとも1つの決定ユニットの一部は、前記少なくとも1つの制御ユニットによって構成されてもよい。このようにして、制御システムの機能分割が可能となる。好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットの機能は、制御システムから、例えば、それぞれのユニットの現在の作業量(使用状況)に基づいて、前記少なくとも1つの測定ユニットおよび前記少なくとも1つの制御ユニットに動的に分配することができる。
【0034】
好ましくは、前記少なくとも1つの測定ユニットは、Lidarシステムとして設計されている。ここで、Lidarシステムの前記少なくとも1つの測定信号は、少なくとも1つの測定ビーム、好ましくは4つの測定ビームで構成することができる。
【0035】
好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットは、1セットの測定点、特に予め定められた(複数の)測定点に基づいて、流れ場の前記少なくとも1つのパラメータを決定するように構成されている。ここで、測定点のセットは、前記少なくとも1つの測定ユニットが測定値を測定するすべての測定点、または前記少なくとも1つの測定ユニットが測定値を測定する測定点のサブセットを含むことができる。
【0036】
好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットは、誤った測定値を、前記測定点セットの別の測定点の測定値、好ましくは、それぞれの誤りのある測定点に最も近い測定点セットの別の測定点の測定値で置き換えることによって、流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている。特に、このような誤った測定値の直接的な置換により、迅速かつ効率的な誤った測定値の置換を行うことができる。特に、最も近い他の測定点は、最小の空間距離を有する測定点、および/または、誤りのある測定点の測定時に最小の時間間隔を有する測定点とすることができる。
【0037】
好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットは、誤った測定値を、測定点セットの少なくとも2つの他の測定点からの測定値に基づく推定測定値で置き換えることによって、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように構成されている。ここで、前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記少なくとも2つの他の測定値の平均値を形成することができる。ただし、前記少なくとも1つの決定ユニットは、このような設計に限定されるものではない。その代わりに、前記少なくとも1つの決定ユニットは、前記少なくとも2つの他の測定値に基づいて任意の数学的計算によって推定測定値を計算することができる。4つの別々の測定点を有する制御システムにおいて、前記少なくとも1つの決定ユニットは、例えば、4つの角が4つの測定点に対応する正方形の第1の対角線に沿った測定点の測定値の合計が、正方形の第2の対角線に沿った測定点の測定値の合計と等しくなるような方法で、推定値を計算することができる。
【0038】
好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットは、誤った測定値を、各1つの(それぞれの)測定点の以前の、特に直前の測定値で置き換えることによって、流れ場の前記少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている。それぞれの測定点の以前の測定値は、特に、各測定点の時間的に以前の、または直前の測定値とすることができる。特に、以下の表3に示すように、この結果は良好な風場再構成をもたらし、表3は表1の値にこのような風場再構成を適用したことを示している。
【0039】
【0040】
特に、前記少なくとも1つの測定ユニットおよび/または前記少なくとも1つの制御ユニットおよび/または前記少なくとも1つの決定ユニットは、検索(引き出し)可能な方法で各測定点の少なくとも1つの前の、特に時間的に前の測定値を記憶するように設計された少なくとも1つのメモリ要素(記憶要素)を含んでいてもよい。好ましくは、前記少なくとも1つの記憶要素は、各測定点の少なくとも前の3つの、特に時間的に前の3つの測定値を検索(引き出し)可能な方法で記憶するように設計されている。
【0041】
好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットは、誤った測定値を、各1つの測定点の少なくとも2つの以前の測定値に基づいて補間された測定値、特に線形補間された測定値で置き換えることによって、流れ場の前記少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている。それぞれの測定点の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの以前の測定値は、遮断が検出された後に、例えば、前記少なくとも1つの記憶要素から直接取り出すことができる。線形補間は誤った測定値の効率的な置き換えを可能とするが、スプライン補間などの他の補間も使用することができる。特に、前記少なくとも1つの決定ユニットは、1つのタイプの補間に限定されるものではなく、任意のタイプの補間を使用するように設計することができる。
【0042】
好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットは、誤った測定値を、各1つの測定点の少なくとも1つの前の測定値および1つの次の測定値に基づいて補間された測定値、特に線形補間された測定値で置き換えることによって、流れ場の前記少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている。このように、ある1つの測定点の前の測定値と後のすなわち次の測定値とに基づいて補間を行うことにより、当該測定点の測定値にそれに続く大きな変動を生じさせることなく、誤った測定値の効率的な置換を可能とすることができる。
【0043】
好ましくは、制御装置はフィードバック制御装置を備え、当該フィードバック制御装置は、タービンの測定信号、特にタービンのローター速度および/またはタービンの発電機速度に基づいてタービンを制御するための少なくとも1つのフィードバック制御信号を生成する。好ましくは、制御ユニットはフィードフォワード制御器を備え、当該フィードフォワード制御器は、流れ場の少なくとも1つの特定のパラメータに基づいてタービンを制御するための少なくとも1つのフィードフォワード制御信号を生成する。
【0044】
好ましくは、前記少なくとも1つの決定ユニットは、さらに、電磁干渉および/またはタービンの振動および/または測定ユニットの保持部の振動を検出し、その結果生じる流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定を補償するように設計されている。特に、電磁干渉および/またはタービンの振動および/または測定ユニットの保持部の振動により、測定ユニットが所定の測定点で測定値を測定しない、特に定期的に測定値を測定しないことがあり、その結果、各測定点で誤った測定値が測定されることがある。前記少なくとも1つの決定ユニットは、特に、前記誤った測定値を代替測定値で置き換えるように設計されていてもよく、この代替測定値は、特に、前記再構成方法のうちの少なくとも1つによって決定することができる。制御システムは、特に、少なくとも1つの電磁センサおよび/または少なくとも1つのモーションセンサおよび/または少なくとも1つのジャイロスコープ要素を有していてもよい。
【0045】
このように、本明細書に開示された解決策は、(特にLidar)測定の空間的および時間的分解能の関係の理解、およびシェーディング、シアリング(shearing)およびデータ処理の相互作用の理解、ならびに、例えば、タワー振動の励起が特にLidarベースの制御システムに及ぼす影響の理解、に基づいており、したがって、ローター速度制御を改善し、構造的負荷を低減するためのタービンを制御するための制御システムを提供することができる。
【0046】
本開示の他の利点は、タービン運転中またはオンラインアプリケーション中にノッチフィルタの使用または適用を回避することができることにもある。ノッチフィルタは、問題を潜在的に低減しうるだけであり、問題を排除することはできない。しかし、特に、そのようなフィルタは、信号または制御信号の追加的な望ましくない位相オフセットを引き起こし、および/または、信号または制御信号がタービン制御のためには遅すぎるようにしてしまう可能性がある。
【0047】
別の側面は、制御システムと少なくとも1つの回転翼とからなる風力発電機に関する。制御システムは、本明細書に記載された特徴の任意の組み合わせを有することができる。
【0048】
さらに別の側面は、タービンを制御するための方法に関するものであり、当該方法は、少なくとも1つの測定ユニットから、前記タービンの上流の流れ場のそれぞれの測定点に、少なくとも1つの測定信号を放射することと、前記少なくとも1つの測定信号に基づいて、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータに関して少なくとも1つの測定値を測定することと、少なくとも1つの測定ユニットとそれぞれの測定点との間の少なくとも1つの測定信号が、特にタービンのローターブレードによって、遮断されていることに起因して、誤った測定値を決定することと、前記少なくとも1つの測定値に基づいて前記流れ場の少なくとも1つのパラメータを決定することであって、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータの誤った決定が補償されることと、前記流れ場の前記少なくとも1つのパラメータに基づきタービンを制御することと、を備えている。
【0049】
ここで、タービンは風車であってもよく、このとき流れ場が風場である。しかし、上記で説明したように、本方法は、風車への適用に限定されるものではない。特に、タービンは、例えば、少なくとも部分的に水中で、および/または任意の媒体の流れ場によって駆動されるように設計された流れ発電装置として設計することができる。タービンは、特に3枚のローターブレード(回転翼)を有するものであるが、1枚、2枚、または3枚より多い数のローターブレードを有していてもよい。
【0050】
前記流れ場の少なくとも1つのパラメータは、前記流れ場の物理パラメータであってもよく、ここで、前記流れ場の少なくとも1つのパラメータには、ローター実効風速および/またはウインドシアおよび/または風向が含まれる。前記少なくとも1つのパラメータは、これらの変数(量)に限定されるものではなく、流れ場の任意の物理パラメータであってもよい。流れ場は、空間領域内で物質または力の効果(相互作用)のような他の特性を輸送する流れ(flowまたはcurrent)を記述する。
【0051】
前記少なくとも1つの測定信号は、特に、少なくとも1つの放射装置によって放射または送信されてもよい。前記少なくとも1つの測定信号は、特に電磁波および/または音響波であってもよい。前記少なくとも1つの測定信号は、特に、前記少なくとも1つの測定点において前記少なくとも1つのパラメータに関して前記少なくとも1つの測定値を測定するために、1つの測定点にそれぞれ放射することができる。前記少なくとも1つの測定値の測定には、特に、前記少なくとも1つの測定信号の少なくとも1つの反射を受信することを含めることができ、受信した少なくとも1つの反射は、少なくとも1つのデータ信号に変換されてもよい。
【0052】
遮断の検出には、例えばタービンのローターブレードの回転によって引き起こされる遮断などの周期的な誤った測定に起因する周期的な遮断と、例えば動物の飛行通過によって引き起こされる非周期的な遮断に起因する非周期的な遮断と、を区別することを含めることができる。このとき、検出は、例えば、反射され遮断された測定信号の信号対雑音比の分析、および/または前記少なくとも1つの測定ユニットからの遮断距離測定を含む。
【0053】
前記少なくとも1つのパラメータの決定には、特に、例えばそのような遮断が原因で特に誤った測定値が検出された場合、特定のパラメータの共振または当該特定のパラメータに基づく制御信号における共振の形成を回避または防止するために、誤った測定値を補償することを含む。この目的のために、補償は、特に、上述したように遮断が原因の誤った測定値を置き換えるために、少なくとも1つの再構成方法を適用することを含んでもよい。
【0054】
また、この方法は、本明細書に記載された特徴の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0055】
別の側面は、コンピュータまたはプロセッサによって実行されると、コンピュータまたはプロセッサが上述した方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【0056】
以下、図示された実施形態およびグラフに基づいて、本発明をさらに説明する。図示された実施形態は、限定的ものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】4つの測定ビームを有する例示的な測定ユニットである。
【
図2】表2および
図1の値に基づくローター実効風速を表すグラフである。
【
図3】1つの測定ユニットを有する例示的な風車を示す図である。
【
図4】従来の風場再構成と本発明による例示的な風場再構成とグラフ比較図である。
【
図5】
図4に示した従来の風場再構成および本発明による例示的な風場再構成での電力密度スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、4つの測定点1、2、3、4のうちの1つで流れ場の測定値を測定する例示的な測定ユニット10を示している。特に、測定ユニット10は、測定ユニット10から対応する測定点1,2,3,4に測定ビームを放射し、測定点1,2,3,4のデータおよび座標は、特に上記の表2に示されたデータに対応する。ここで、測定ユニット10は、測定点1から測定点4までの流れ場の測定値を連続して測定しており、これにより測定ユニット10の測定周期が定義されている。
【0059】
図2は、表2及び
図1の値に基づくローター実効風速をグラフ化したものである。特に、表2のデータは、垂直方向のウインドシアを持つ流れ場を表している。例えば、表2の点で
図1に示すような4本のビーム測定器10を測定し、垂直方向のリニアシアが0.04(m/s)/mであった場合、上側2点の測定値はそれぞれ17.2m/s、下側2点の測定値はそれぞれ14.8m/sとなる。例えば、ブレードシェーディング(遮光)などで測定ビームが遮られて各6回目の測定が省かれると、
図2に示すように、決定されたローター実効風速に1/3Hzのところで共振が生じる。このような共振は、決定されたローター実効風速がタービンを制御するために使用される場合、タービンの負荷の増加につながる可能性がある。
【0060】
図3は、測定ユニット10を備えた例示的な風車(風力タービン)を示しており、
図1に示すように、測定ユニット10は、4つの測定点1,2,3,4のそれぞれにおいて、流れ場の測定値を測定する。 特に、測定ユニット10は、測定ユニット10から、対応する測定点1,2,3,4に向けて測定ビームを放射する。
【0061】
測定ユニット10は、風車のナセル20上に配置されている。しかし、ここに示された測定ユニット10の配置は、あくまでも一例として解釈されるべきである。測定ユニット10は、測定ユニット10の測定ビームS1,S2,S3,S4が少なくとも一時的に測定点1,2,3,4を検出することができるのであれば、ナセル20の任意の位置に配置することができる。この場合、複数の測定ユニット10をナセル20上に配置することも可能であり、例えば、風車の脚から離れる方向を向いた上側と、風車の脚の方を向いた下側とに配置することも可能である。
【0062】
図3は、特に、測定ビームS1,S3,S4が測定ユニット10に妨げられることなく、それぞれの測定点1,3,4を測定できるようにした風力発電機の構成を示している。測定ユニット10から測定点2に向けて出射された測定ビームS2は、点Aで風車の
ローターブレード(回転翼
)30に衝突し、それによって遮断される。このように、測定ユニット10は、測定点2の誤測定値を測定し、制御システム(図示せず)は、
ローターブレード30による遮断を検出して誤った測定値を補償する。
【0063】
図4は、従来の風場再構成と、本発明による例示的な風場再構成とのグラフ比較を示す。特に、
図4のグラフは、表2の測定点1、2、3、4を用いた4ビームLidarシステムの乱流風場のシミュレーションでのローター実効風速の表示を示している。
図5は、
図4に示された従来の風場再構成でのパワースペクトル密度(PSD)と、本発明による例示的な風場再構成でのパワースペクトル密度(PSD)を示している。
【0064】
ここでは、平均風速10m/s、乱流強度6%の風場を生成し、4ビームLidarシステムでスキャンした。
図2と同様に、毎6番目の値でブレードシェーディングが生じることをシミュレートした。以前の方法では、1/3 Hzと高調波(2/3 Hz、4/3 Hz、5/3 Hz)に共振が発生している。この信号をLidarベースの制御に用いると、これらの周波数で風力エネルギープラントの振動が励起される。これにより、負荷減少ではなく負荷増大につながり得る。
【0065】
この結果により、新しいプロセスでは、ブレードシェーディングとの共鳴が生じないことが明らかになった。平均化は1秒間の全測定サイクルに亘って実行されるので、1 Hzと2 Hzでのスペクトルの典型的な減少がもたらされる。しかし、これらは、例えばLidarベースパイロット制御などのLidarベース制御には関係ない。
【0066】
記載されている実施形態は、限定的なものと解釈してはならない。むしろ、本明細書および各図に記載された特徴の任意の数の特徴の組み合わせを実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3、4 測定点
10 測定ユニット
20 ナセル
30 ローターブレード
S1、S2、S3、S4 測定ビーム
A 点(ローターブレードへの衝突点)