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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】分級ローター及び分級装置
(51)【国際特許分類】
   B03B 5/28 20060101AFI20221028BHJP
   B07B 7/08 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B03B5/28 A
B07B7/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020547905
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048123
(87)【国際公開番号】W WO2020066046
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018180581
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516240525
【氏名又は名称】院去 貢
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】院去 貢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】荻原 正章
(72)【発明者】
【氏名】細野 裕太
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-043692(JP,A)
【文献】特開平09-179345(JP,A)
【文献】特開2015-066544(JP,A)
【文献】特開平05-068904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154395(US,A1)
【文献】特開2014-042900(JP,A)
【文献】特開平07-185465(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030429(WO,A1)
【文献】特開2002-346480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 5/28
B07B 7/08
B02C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間し同軸に配置した円形状の2枚の一方及び他方の円板と、該2枚の円板の外周部に形成された開口部から内部に流入した流体を外部に排出する、前記一方の円板の中心部に設けた排出口とよりなる回転自在な枠体と、
前記2枚の円板の互いに対向する面の外周側部分間に、円周方向に所望の間隔を存して複数連結して設けた分級羽根と、
該枠体内の、前記分級羽根より内側部分に、前記分級羽根及び前記排出口からそれぞれ所望の距離離間して、円周方向に所望の間隔を存して、回転中心から放射状に配置された、又は、回転中心から偏心して配置された複数の整流羽根とよりなることを特徴とする分級ローター。
【請求項2】
前記整流羽根は、基部から先端に向かう形状が直線状の平板であることを特徴とする請求項1に記載の分級ローター。
【請求項3】
前記整流羽根は、基部から先端に向かう形状が、ベルヌーイ曲線に従って形成された弧状形状であることを特徴とする請求項1に記載の分級ローター。
【請求項4】
前記分級羽根の方向と、前記枠体の回転方向とのなす角度が、所望の傾斜角度となるように、前記分級羽根を前記枠体に設けられ、
前記所望の傾斜角度とは、前記なす角度を、90度から徐々に少なくなるように前記分級羽根を傾斜させた場合に、分級精度が良くなる角度であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の分級ローター。
【請求項5】
前記所望の傾斜角度は、前記なす角度が0度より大きく45度以下であることを特徴とする請求項4に記載の分級ローター。
【請求項6】
前記分級羽根は、ベルヌーイ曲線に従って形成された弧状形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の分級ローター。
【請求項7】
隣接する前記分級羽根間に形成される分級室内の外周から内周までの半径方向全域で、分級される粒子径が一定となるように、前記分級羽根の形状が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の分級ローター。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1に記載の分級ローターを有する分級装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、気体中や、液体中の微細な粒子などを分級するための分級ローターに関するものである。また、本発明は、前記分級ローターを有する乾式又は湿式の分級装置に関するものである。本発明は、特に、極めて高い分級精度の分級ローター及び分級装置を提供するものである。そして、本発明によれば、粗粒の混入が非常に少なく、また、シャープな粒度分布を実現できる。
【背景技術】
【0002】
分級装置には、空気などの気体中の微粒子を分級する乾式タイプの分級装置と、スラリーなどの液体中の微粒子を分級する湿式タイプの分級装置とがある。いずれの分級装置も、分級羽根を円周方向に互いに離間して、回転中心から放射状に配置した分級ローターを高速回転させることにより、微粒子を分級する。或いは、いずれの分級装置も、分級羽根を円周方向に互いに離間して、回転中心から若干偏心させて配置した(半径方向から若干傾斜させて配置した)分級ローターを高速回転させることにより、微粒子を分級する。
【0003】
該分級の仕組みは次の通りである。まず、分級ローターの各隣接する分級羽根間に形成される分級室内に、気体又は液体などの流体が、外周部から流入する。そして、この流体が、外周部から内周側に向かって移動する間、流体中の粒子が分級ローターの高速回転による遠心力Fと、この遠心力の作用方向と逆向きの内周方向に向かって流れる流体の抗力Rを受ける。そして、両者がバランスする(F=Rとなる)分級粒子径より径が大きい粗粒は分級ローター外に排出される。また、両者がバランスする分級粒子径より径が小さい微粒は分級ローター内に流入するようになる。
【0004】
図16は、乾式タイプの分級装置1を備えた分級システム全体の概略構成図を示す。該分級装置1は、例えば、ハウジング2と、該ハウジング2内に設けられた分級ローター3と、該分級ローター3を回転させる回転手段4と、前記分級ローター3により分級され該分級ローター3内に流入した微粒を前記ハウジング2外に流出させる流出室5とよりなる。前記回転手段4は、例えば、モーター(図示せず)と、該モーターにより回転駆動される回転軸4aとよりなる。
【0005】
そして、前記分級装置1の前記ハウジング2内に、例えば、原料供給装置6からの原料が空気と共に供給口2aから供給される。そして、該原料は、該ハウジング2内に設けられた高速回転する分級ローター3により、粗粒と微粒とに分級される。そして、粗粒は、前記分級装置1のハウジング2の排出口2bから排出されて容器7に回収される。また、前記分級ローター3の外周部から分級ローター3内に流入した微粒は、該分級ローター3の中心部に形成された、前記分級ローター3の回転軸4aの周囲に形成された排出口8から、該排出口8に連通した流出室5に排出される。そして、該流出室5から前記ハウジング2外に流出した微粒は、例えば、微粒と空気を分離させるバグフィルター(図示せず)を介して、微粒回収タンク(図示せず)に回収される。
【0006】
また、図17は、湿式タイプの分級装置9を備えた分級システム全体の概略構成を示す。該分級装置9は、例えば、ハウジング10と、該ハウジング10内に設けられた分級ローター11と、該分級ローター11を回転させる回転手段12と、前記分級ローター11により分級され該分級ローター11内に入流した微粒を前記ハウジング10外に流出させる前記回転手段12の回転軸12aに形成した軸方向に延びる貫通孔13とよりなる。前記回転手段12は、例えば、モーター(図示せず)と、該モーターにより回転駆動される回転軸12aとよりなる。
【0007】
そして、該分級装置9の前記ハウジング10内に、例えば、原料スラリータンク14からの原料スラリーが定量ポンプ15により供給口10aから供給される。そして、該分級装置9内に設けられた高速回転する分級ローター11により、原料スラリーが粗粒と微粒とに分級される。そして、粗粒は、前記分級装置9のハウジング10の排出口10bからハウジング10外に排出される。また、前記分級ローター11の外周部から分級ローター11内に流入した微粒は、前記分級ローター11の中心部に形成された排出口16から、該排出口16に連通した、前記分級ローター11に固定された回転軸12aの貫通孔13を通って、回収タンク17に回収されるようになる。
【0008】
前記分級ローター3、11は、いずれも、外周部に、前記ハウジング内の気体や液体等の流体を内部に導入する開口部を有し、中央部に、前記分級ローター内部に流入した微粒を、分級ローター外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して、回転中心から放射状に配置された、又は、回転中心から若干偏心して配置された(半径方向から若干傾斜して配置された)分級羽根とよりなる。
【0009】
該分級ローター3、11は、例えば、図18及び図19に示すように、上下に離間し同軸に配置した2枚の同形の円板状の板18a、18bと、該上側の板18aの中心部に設けた排出口8(16)とよりなる枠体と、前記2枚の板18a、18bの互いに対向する面の外周側部分間に、周方向に等間隔で回転中心より放射状に設けるか、或いは、回転中心から若干偏心させて設けた(半径方向から若干傾斜させて設けた)複数の分級羽根19とよりなる。そして、各互いに隣接する前記分級羽根19、19間に分級室20が形成される。
【0010】
例えば、乾式の分級装置としては、例えば特許文献1がある。また、湿式タイプの分級装置としては、例えば、特許文献2がある。
【0011】
しかしながら、前記従来の分級装置は、分級室内では、遠心力と抗力とがバランスする分級粒子径が、内周に向かうほど大きくなる。そして、高速回転する分級ローターの外側の流体は乱流状態であるため、分級ローターの分級室内に、設計された分級粒子径より大きな粗粒が飛び込んだ場合でも、分級粒子径との粒径の差が小さいと、内周側に混ざり込んで中央に達し、そのまま回収される恐れがあった。
【0012】
そのため、分級室の外周(隣接する分級羽根の先端間の周)から内周(隣接する分級羽根の基部間の周)までの半径方向全域で、遠心力F=効力Rとなる分級粒子径が一定の径(同じ径)となるように形成した、改良された分級ローターがある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2011-72993号公報
【文献】特開2002-143707号公報
【文献】WO2018/030429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記改良された分級ローター3、11の一例は、例えば、図20及び図21に示す。該改良された分級ローター3、11の一例は、分級羽根19が、先端(外周端)から基部(内周端)に向かって、円周方向における厚みtが一定(同一)で、分級ローターの回転軸方向における高さが先端(外周端)から基部(内周端)に向かって高く形成されるように形成された分級ローターがある。
【0015】
そして、分級室20の直径d位置における分級羽根19の高さT(d)は、例えば、下記数1式により求められる。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、Qは、内周方向に向かう流体の流量、Nは、円周方向の分級室数、Dは、分級粒子径、nは、ローターの回転数、ηは、流体の粘度、ρは、流体の比重、ρは、粒子の比重、tは、羽根の厚み(一定)である。
【0018】
また、前記改良された分級ローター3、11の他の例は、例えば、図22及び図23に示す。該改良された分級ローター3、11の他の例は、分級羽根19が、先端から基部に向かって、分級ローターの回転軸方向の高さTが一定(同一)で、円周方向における厚みtが、基部(内周端)から先端(外周端)に向かって厚くなるように形成される。
【0019】
そして、分級室20の直径d位置における分級羽根の円周方向の厚みt(d)は、例えば、下記数2式により求められる。なお、円周方向の厚み(以下、単に羽根の厚みという)とその弦とは近似され、両者は実質的に同一のものとして扱われる。
【0020】
【数2】
【0021】
ここで、Qは、内周方向に向かう流体の流量、Nは、円周方向の分級室数、Dは、分級粒子径、nは、ローターの回転数、ηは、流体の粘度、ρは、流体の比重、ρは、粒子の比重、Tは、羽根の高さ(一定)である。
【0022】
なお、図23に示すように、分級羽根の内周端(基部)における羽根の厚みt(d)を0としてもよい。
【0023】
また、前記分級ローター3、11の更に他の例は、例えば、分級羽根19が、分級ローターの回転軸方向における高さが内周に向かって高く形成されると共に、円周方向における厚みが外周に向かって厚く形成されるように形成される。
【0024】
そして、この分級室20の直径d位置における分級羽根19の高さT(d)及び分級羽根19の厚みt(d)は、例えば、下記数3式、数4式、数5式により求められる。
【0025】
【数3】
【0026】
【数4】
【0027】
【数5】
【0028】
ここで、E(d)は、分級室の直径d位置における羽根間の間隙、aは、内周羽根間の間隙係数(πd-Nt)/(πd)、bは、外周羽根間の間隙係数(πd-Nt)/(πd)、dは、分級室の内周径、dは、分級室の外周径、tは、羽根の内周厚み、tは、羽根の外周厚み、Qは、内周方向に向かう流体の流量、Nは、円周方向の分級室数、D1は、分級粒子径、ηは、流体の粘度、ρは、流体の比重、ρは、粒子の比重である。
【0029】
該改良された分級ローターによれば、粗粒の飛び込みを防止し、分級精度を高めることができるようになる。
【0030】
また、該改良された分級ローターの分級羽根を、前記ローターの半径方向に対して、若干傾斜させた場合においても、同様に、粗粒の飛び込みを防止し、若干分級精度を高めることができるようになる(特許文献3図12参照)。
【0031】
本発明は、従来の分級ローターや、前記改良された分級ローターを、更に改良したものである。そして、本発明は、分級羽根の背面に生ずる剥離渦を防止し、分級精度を高めるものである。
【0032】
また、本発明は、この剥離渦の発生に起因した、分級作用に寄与しないエネルギーの浪費を防止できる分級ローターを提供するものである。更には、本発明は、分級ローターの摩耗を防止できる分級ローターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
前記の目的を達成すべく、本発明の分級ローターは、外周部に開口部を有し、該開口部から内部に流入した流体を外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の分級羽根とよりなり、該分級羽根の方向と、前記枠体の回転方向とのなす角度が、所望の傾斜角度となるように、前記分級羽根を前記枠体に設けられ、前記所望の傾斜角度とは、前記なす角度を、90度から徐々に少なくなるように前記分級羽根を傾斜させた場合に、分級精度が良くなる角度であることを特徴とする。
【0034】
また、前記所望の傾斜角度は、前記なす角度が0度より大きく45度以下(又は、未満)、又は、0度より大きく40度以下(又は、未満)、又は、0度より大きく30度以下(又は、未満)、又は、0度より大きく20度以下(又は、未満)となるように前記分級羽根を前記枠体に設けたことを特徴とする。
【0035】
また、前記枠体内の、前記分級羽根より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の整流羽根を更に設けたことを特徴とする。また、前記枠体内の、前記分級羽根より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して、回転中心から放射状に配置された、又は、回転中心から偏心して配置された複数の整流羽根を更に設けたことを特徴とする。
【0036】
また、本発明の分級ローターは、外周部に開口部を有し、該開口部から内部に流入した流体を外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の分級羽根と、該枠体内の、前記分級羽根より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の整流羽根とよりなることを特徴とする。また、本発明の分級ローターは、外周部に開口部を有し、該開口部から内部に流入した流体を外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して、回転中心から放射状に配置された、又は、回転中心から偏心して配置された複数の分級羽根と、該枠体内の、前記分級羽根より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して、回転中心から放射状に配置された、又は、回転中心から偏心して配置された複数の整流羽根とよりなることを特徴とする。
【0037】
また、前記分級羽根及び、又は、前記整流羽根は、ベルヌーイ曲線に従って形成された弧状形状であることを特徴とする。
【0038】
また、隣接する前記分級羽根間に形成される分級室内の外周から内周までの半径方向全域で、分級される粒子径が一定となるように、前記分級羽根の形状が形成されていることを特徴とする。
【0039】
また、本発明の分級装置は、前記分級ローターを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、粗粒の混入が非常に少なく、また、シャープな粒度分布を実現できるようになる。また、消費動力を小さくできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施例1の分級ローターの斜視図を示す。
図2】本発明の実施例1の分級ローターの側面図を示す。
図3図2のA-A線横断面図を示す。
図4】本発明の実施例1の他の実施例の分級ローターの横断面図を示す。
図5】分級羽根のなす角度がそれぞれ異なる分級ローター(形状1、形状2、形状3)の断面図を示す。
図6図4における各分級ローターの粒度分布を比較した図である。
図7】ベルヌーイ曲線に基づく分級羽根の分級ローター(形状4)の断面図を示す。
図8】形状3と形状4の分級ローターの粒度分布を比較した図である。
図9】なす角度を説明するための説明用縦断面図である。
図10】形状1、2、3,4の各分級ローターの形状係数Npを示した表である。
図11】本発明の実施例2の分級ローターの断面図である。
図12】本発明の実施例2の他の実施例の分級ローターの横断面図を示す。
図13】整流羽根がない場合の分級ローター(形状3)と、整流羽根(なす角度β=90度)がある場合の分級ローター(形状5)のローター内の流れをCFD解析した図を示す。
図14】前記形状3と形状5の場合の分級ローター内の流れの模式図を表した図である。
図15】形状3と形状5の分級ローターの粒度分布を比較した図である。
図16】従来の乾式タイプの分級装置を有する分級システム全体の概略図である。
図17】従来の湿式タイプの分級装置を有する分級システム全体の概略図である。
図18】従来の分級ローターの縦断側面図である。
図19図18のB-B線横断面図である。
図20】従来の改良された分級ローターの縦断側面図である。
図21図20のC-C線横断面図である。
図22】従来の改良された他の分級ローターの縦断側面図である。
図23図22のD-D線横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0043】
本発明の実施例1を図1図10によって説明する。
【0044】
本発明においては、前記従来の分級ローター3、11の代わりに、分級ローター21を用いる。
【0045】
該分級ローター21は、外周部に、前記ハウジング2、10内のスラリーなどの液体や気体などの流体を内部に導入する開口部を有し、中央部に、前記ローター内部に導入された微粒をローター外部に排出する排出口を有する回転自在な枠体と、該枠体内の外周側部分に、円周方向に所望の間隔を存して配置された複数の分級羽根とよりなり、該各分級羽根と前記分級ローター21の回転方向とのなす角度αが、所望の傾斜角度となるように、前記分級羽根を傾斜させて設ける。
【0046】
該分級ローター21は、例えば、図1図3に示すように、上下に離間し同軸に配置した2枚の同形の円形状の2枚の板21a、21bと、前記上側の円板21aの中心部に設けた排出口22とよりなる枠体と、前記2枚の板21a、21bの互いに対向する面の外周側部分間に、等間隔に複数連結して設けられた分級羽根23とよりなる。
【0047】
なお、24は、各隣接する分級羽根23、23間に形成される分級室を示す。
【0048】
なお、前記各分級羽根23は、例えば、それぞれ同一形状に形成される。また、前記各分級羽根23は、例えば、前面側の翼面(回転方向を向く面)23aの基部(内周端)から先端(外周端)に向かう形状が直線状の平板より成る。また、前記各分級羽根23は、例えば、前記分級ローター21の回転中心から等距離離間して、周方向に等間隔に配置して設けられる。また、前記各分級羽根23は、例えば、前記なす角度αが同じ角度になるように設けられる。
【0049】
そして、図3は、分級室内の半径方向全域で、遠心力F=効力Rとなる分級粒子径が一定(同一)となるように形成した分級羽根の例を示す。該分級羽根の例は、例えば、前記各分級羽根が、分級ローターの回転軸方向の高さTが一定(同一)で、円周方向における厚みが基部(内周端)から先端(外周端)に向かって厚くなるように形成された分級羽根の例を示す。なお、図4のように、分級室内において分級粒子径が一定(同一)ではない、例えば、厚みが一定(同一)の分級羽根であってもよい。
【0050】
また、前記各分級羽根23は、前面の基部(内周端)から先端(外周端)に向かう形状が直線状の平板以外に、基部から先端に向かう形状が円弧などの弧状であってもよい。また、該弧は、例えば、ベルヌーイ曲線からなる弧であってもよい。
【0051】
また、前記分級羽根23と前記分級ローター21の回転方向とのなす角度αとは、前記分級羽根23の前面側の翼面23aの先端から基部に向かう方向(前面側翼面の方向)と、該分級羽根23の前面側の翼面の先端における回転方向とのなす角度をいう。他の言葉で言えば、前記分級羽根23と前記分級ローター21の回転方向とのなす角度αとは、前記分級羽根23の前面側の翼面23aの先端(外周端)と基部(内周端)間に引かれた線と、前記分級ローター21の回転中心点から前記分級羽根23の前面側の先端(外周端)までの線と直角に交差する線とのなす角度をいう。具体的には、図3に示すように、該分級羽根の前面側の翼面の先端から基部に向かう方向Qと、分級羽根の前面側の翼面の前記先端における回転方向Pとのなす角度αをいう。
【0052】
そして、種々実験等の結果、前記なす角度αを90度から徐々に少なくなるように、前記分級羽根を傾斜させた場合に、初めは、分級精度が悪くなるが(粗粒の混入が多くなるが)、更に傾斜させた時に、分級精度が良くなる角度があることが分かり、該角度を所望の傾斜角度という。
そして、種々実験等の結果、前記なす角度αを90度から徐々に少なくなるように、前記分級羽根を傾斜させた場合に、初めは、分級精度が悪くなるが(粗粒の混入が多くなるが)、更に傾斜させ、特に、50度以下、又は、45度以下となる時から、それ以前の分級精度に比べて、大きく分級精度が良くなる角度があることが分かり、該角度を所望の傾斜角度という。
【0053】
なお、前記分級精度が良くなる角度とは、例えば、記なす角度αを90度から徐々に少なくなるように傾斜させた時に、分級精度が悪くなるところから、良くなり始めた角度をいう。或いは、前記分級精度が良くなる角度とは、例えば、前記良くなり始めた角度よりも更に傾斜し、なす角度90度から前記良くなり始めた角度の間の所望の角度の分級精度よりも良い分級精度となる角度をいう。或いは、前記分級精度が良くなる角度とは、例えば、前記良くなり始めた角度よりも更に傾斜し、なす角度90度から前記良くなり始めた角度の間で、一番分級精度が良い角度の分級精度よりも良い分級精度となる角度をいう。
【0054】
なお、前記分級精度が悪くなるところから、良くなり始めた角度が複数あるような場合には、いずれかひとつの角度を良くなり始めた角度と認定するようにする。
【0055】
また、前記角度は、例えば、後述する形状係数を考慮して決定するようにしてもよい。
【0056】
そして、該所望の傾斜角度は、種々実験等により設定される値であるが、例えば、前記なす角度αが、例えば、0度より大きく45度以下(又は未満)、又は、0度より大きく40度以下(又は未満)、又は、0度より大きく30度以下(又は未満)、又は、0度より大きく20度以下(又は未満)である。
【0057】
次に、本発明の分級ローター21の作用と効果を説明する。
【0058】
なお、下記では、湿式タイプの分級装置において説明するが、乾式タイプの分級装置でも同じである。
【0059】
例えば、湿式タイプの分級装置9において、該分級装置9の前記ハウジング10内に、例えば、原料スラリータンク14からの原料スラリーが定量ポンプ15により供給口10aから供給される。そして、該分級装置9内に設けられた高速回転する前記分級ローター21により、原料スラリーが粗粒と微粒とに分級される。そして、粗粒は、前記分級装置9のハウジング10の排出口10bからハウジング10外に排出される。また、前記分級ローター21の外周部から分級ローター21の分級室24内に流入した微粒は、前記分級ローター21の中心部に形成された排出口22から、該排出口22に連通した、前記分級ローター21に固定された回転軸12aに形成された貫通孔13を通って、回収タンク17に回収されるようになる。
【0060】
なお、原料スラリーとして、デンカ製溶解シリカ分散液(水道水)を使用した。また、分級ローターの周速を20m/sとした。
【0061】
そして、前記分級羽根23を、なす角度αを90度から徐々に減らして傾斜させた場合の分級精度について実験した。その結果、前記なす角度αを90度から45度程度まで傾斜させた場合、形状係数や、分級精度が悪くなるが、所望の傾斜角度以下、例えば、40度以下に急傾斜とした場合に、分級室内の渦流が軽減され、また、粗大粒子の混入防止により、分級精度が向上した。また、消費動力も低減するようになることが分かった。
【0062】
そこで、前記所望の傾斜角度を、前記なす角度αが、例えば、0度より大きく45度以下(又は未満)となるように、前記分級羽根を設ける。又は、所望の傾斜角度を、前記なす角度αが、0度より大きく40度以下(又は未満)となるように前記分級羽根を設ける。又は、所望の傾斜角度を、前記なす角度αが、0度より大きく30度以下(又は未満)となるように、前記分級羽根を設ける。又は、所望の傾斜角度を、前記なす角度αが、0度より大きく20度以下(又は未満)となるように、前記分級羽根を設ける。これら所望の傾斜角度とすることにより、分級精度を上げると共に、形状係数を小さくして動力を小さくできるので好ましい。
【0063】
なお、図5(a)、図5(b)、図5(c)は、それぞれ分級羽根のなす角度αが75度である分級ローター(形状1)の断面図と、分級羽根のなす角度αが60度である分級ローター(形状2)の断面図と、分級羽根のなす角度αが30度である分級ローター(形状3)の断面図を示す。また、図6は、原料スラリーを、前記形状1、2,3の分級ローターにより、それぞれ分級した場合の微粒の粒度分布を比較した図である。また、図6は、横軸が粒子径(μm)で、縦軸が体積基準頻度(%)を表したものである。
【0064】
図6に示すように、従来のローターであるなす角度αが75度の場合(形状1)に比べて、より傾斜させた、なす角度αが60度の場合(形状2)の粒度分布は、粗粒の混入が増えている。従って、なす角度αを60度にすることにより、分級精度が悪くなることが分かる。
【0065】
しかしながら、更に傾斜させた、なす角度αが30度の場合(形状3)の粒度分布は、なす角度αが75度の場合(形状1)や60度の場合(形状2)の分級分布に比べて、粗粒の混入が減っている。従って、分級羽根を急傾斜させることにより、分級精度が良くなっていることが分かる。
【0066】
また、図7は、分級羽根のなす角度αが30度であり、分級羽根の基部から先端に向かう形状をベルヌーイ曲線とした分級ロータ(形状4)の場合の断面図を示す。図8は、原料スラリーを、前記形状3、4の分級ローターにより、それぞれ分級した場合の微粒の粒度分布を比較した図である。また、図8は、横軸が粒子径(μm)で、縦軸が体積基準頻度(%)を表したものである。
【0067】
図8に示すように、分級羽根の基部から先端に向かう形状をベルヌーイ曲線としても、直線状の分級羽根と同様の分級精度を高く保つことができる。しかも、後述するように、分級羽根の基部から先端に向かう形状をベルヌーイ曲線とした場合、動力数Npを低減することができるので、不要な動力の消費と分級ローターの摩耗を低減することができる。
【0068】
なお、分級羽根の基部から先端に向かう形状が、例えば、翼面の前面側が凸状に膨らむベルヌーイ曲線など、弧状の場合には、前記なす角度αは、図9に示すように、前記分級羽根23の前面側の翼面23aの先端(外周端)から基部(内周端)に向かう方向と、該分級羽根23の前面側の翼面の先端(外周端)における回転方向とのなす角度をいう。他の言葉で言えば、前記なす角度αは、前記分級羽根23の前面側の翼面23aの先端(外周端)と基部(内周端)間に引かれた線と、前記分級ローター21の中心点から前記分級羽根23の前面側の先端(外周端)までの線と直角に交差する線とのなす角度をいう。
【0069】
また、図10は、前記形状1、2、3,4の各分級ローターの形状係数Npを示した表である。
【0070】
また、分級ローターの回転に要する消費動力Pは、数6式で表すことができる。
【0071】
【数6】
【0072】
Pは、消費動力、ρは流体密度、Nは回転体の回転数、dは回転体の直径、Npは、回転体およびケーシングの形状係数を示す。
【0073】
数6式より、分級ローターの消費動力Pの大小は、形状計数Npで表現することができる。そして、図10から、なす角度αが75度である分級ローター(形状1)より、なす角度αが60度である分級ローター(形状2)の方が形状係数Npが大きい。しかし、なす角度αが60度である分級ローター(形状2)より、なす角度αが30度である分級ローター(形状3)の方が形状係数Npが小さくなっている。従って、傾斜角度を所望の傾斜角度よりも小さくすることにより、本発明の回転ローターのNpは、小さくなるので、これにより消費動力Pを押えることができるようになることが分かった。
【0074】
また、分級羽根の基部から先端に向かう形状をベルヌーイ曲線とすることにより、直線状の分級羽根に比べて、動力数Npを低減することができる。従って、分級羽根の基部から先端に向かう形状をベルヌーイ曲線とすることにより、不要な動力の消費と分級ローターの摩耗を低減することができる。
【0075】
本発明によれば、分級羽根のなす角度αを前記角度にすることにより、粗粒の混入が非常に少なく、また、シャープな粒度分布を実現できるようになる。
【実施例2】
【0076】
本発明の実施例2においては、図11に示すように、前記実施例1の分級ローター21、又は、従来の分級ローター3、11、又は、改良された分級ローター等において、前記枠体内の、前記分級羽根23、19より内側部分に、円周方向に所望の間隔を存して、回転中心から放射状に配置された、又は、回転中心から偏心して配置された(半径方向から傾斜させて配置された)複数の整流羽根25を設ける。
【0077】
前記各整流羽根25は、例えば、それぞれ同形状に形成される。また、前記各整流羽根25は、例えば、前面側の翼面の基部(内周端)から先端(外周端)に向かう形状が直線状の平板よりなる。また、前記各整流羽根25は、例えば、前記分級ローター21、3、11の回転中心から等距離離間して、周方向に等間隔に配置して設けられる。また、前記各整流羽根25は、例えば、半径方向に対する傾斜角度が同じになるように設けられる。
【0078】
なお、前記分級羽根と整流羽根25の数は、特に限定はない。前記整流羽根25の数は、前記分級羽根の数よりも少ないこと望ましい。但し、あまり少なくなると、整流効果がなくなる為、前記整流羽根25の数は、例えば、前記分級羽根の数の1/4倍以上の整数の数、又は、1/3倍以上の整数の数、又は、1/2倍以上の整数の数である。
【0079】
また、前記分級羽根と、前記整流羽根25とは、所望の距離離間して設けられる。
【0080】
なお、図11に示す前記実施例2においては、該整流羽根25は、該整流羽根25と前記分級ローターの回転方向とのなす角度βを90度とした例である。該なす角度βを、図12に示すように、前記45度より大きく135度以下となるように傾斜させて設けるようにしてもよい。
【0081】
なお、前記整流羽根25と前記分級ローターの回転方向とのなす角度βとは、前記整流羽根25の前面側の翼面の先端(外周端)から基部(内周端)に向かう方向(前面側翼面の方向)と、該整流羽根25の前面側の翼面の先端(外周端)における回転方向とのなす角度をいう。他の言葉で言えば、前記整流羽根25と前記分級ローターの回転方向とのなす角度βとは、前記整流羽根25の前面側の翼面の先端(外周端)と基部(内周端)間に引かれた線と、前記分級ローター21の回転中心点から前記整流羽根25の前面側の先端(外周端)までの線と直角に交差する線とのなす角度をいう。具体的には、図12に示すように、該整流羽根の前面側の翼面の先端から基部に向かう方向Sと、整流羽根の前面側の翼面の前記先端における回転方向Rとのなす角度βをいう。
【0082】
なお、前記図12における分級ローターの例は、分級室内の半径方向全域で、遠心力F=効力Rとなる分級粒子径が一定となるように形成した分級羽根の例を示す。該分級羽根の例は、例えば、前記分級羽根が、分級ローターの回転軸方向の高さTが一定で、円周方向における厚みが基部(内周端)から先端(外周端)に向かって厚くなるように形成された分級羽根の例を示す。
【0083】
また、前記各整流羽根25は、基部から先端に向かう形状が、直線状の平板以外に、円弧などの弧状であってもよい。また、ベルヌーイ曲線からなる弧であってもよい。
【0084】
次に、本発明の整流羽根25を有する分級ローターの作用と効果を説明する。
【0085】
本実施例によれば、整流羽根25を設けることにより、ローター内の分級羽根よりも内側の流体の流れを、周方向において一様にすることができるようになる。
【0086】
図13は、分級羽根のなす角度αが30度の場合において、整流羽根がない場合の分級ローター(形状3)と、整流羽根(なす角度β=90度)がある場合の分級ローター(形状5)とのローター内の流れをCFD(computatinal fluid dynamics)解析した図を示す。整流羽根のない形状3においては、ローター内の分級羽根よりも内側の流体の流れの向きが円周方向の場所で一様になっていない。しかしながら、整流羽根のある形状5においては、流体の流れの向きが円周方向の場所で一様になっており、乱れが解消していることが分かる。
【0087】
また、図14は、前記形状3と形状5の場合の分級ローター内の流れの模式図を表した図である。前記整流羽根25のない形状3においては、隣接する分級羽根間で形成される、分級作用を持つ分級室内の乱れが見られる。しかしながら、整流羽根のある前記形状5においては、前記分級室から内周方向に向かう流体の流れの乱れが防止され、整流化されたことにより、前記分級室24内の乱れも防がれていることが分かる。
【0088】
そして、図15は、なす角度αを30度とし、整流羽根のない形状3と、整流羽根のある形状5の分級ローターにより、原料スラリーを、それぞれ分級した場合の微粒の粒度分布を比較した図である。図15は、横軸が粒子径(μm)で、縦軸が体積基準頻度(%)を表したものである。図15から、整流羽根のある形状5の分級精度が大幅に向上していることが分かる。
【0089】
従来の整流羽根のない分級ローターにおいては、外周部から流入し、分級羽根を超えた流体の流動状態が不安定になり、それが分級室内の流動状態に影響し、分級精度を悪くしていた。しかしながら、整流羽根を設けることで、分級羽根よりも内側の流体の流れを安定化させることができた。そして、これにより、分級室内における流動状態が安定化し、分級精度を大幅に改善することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の分級装置は、乾式、湿式におけるミクロンレベル及びサブミクロンまでのあらゆる粉体の分級を扱う各工業界全般に用いることができる。例えば、金属工業、化学工業、薬品工業、化粧品工業、顔料、セラミック工業、その他の工業に用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 分級装置
2 ハウジング
2a 供給口
2b 排出口
3 分級ローター
4 回転手段
4a 回転軸
5 流出室
6 原料供給装置
7 容器
8 排出口
9 分級装置
10 ハウジング
10a 供給口
10b 排出口
11 分級ローター
12 回転手段
12a 回転軸
13 貫通孔
14 スラリータンク
15 ポンプ
16 排出口
17 回収タンク
18a 板
18b 板
19 分級羽根
20 分級室
21 分級ローター
21a 板
21b 板
22 排出口
23 分級羽根
23a 翼面
24 分級室
25 整流羽根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23