(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20221028BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20221028BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B23Q3/157 M
B23Q11/08 Z
B23Q3/155 G
(21)【出願番号】P 2020554683
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2018040596
(87)【国際公開番号】W WO2020090055
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 政寿
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-030062(JP,A)
【文献】特開2010-228063(JP,A)
【文献】実開平04-013234(JP,U)
【文献】特開平11-099435(JP,A)
【文献】特開2012-200856(JP,A)
【文献】特開2014-151390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155-3/157
B23Q 7/00-7/18
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具保管室に保管された複数の工具のなかから選択された工具を用いて、加工室においてワークを加工する工作機械において、
前記加工室の主軸と前記工具保管室の次工具待機位置との間で工具を交換するため
、前記主軸に装着された工具及び前記次工具待機位置にある工具に係合するための工具係合位置と、当該アームが待機するためのアーム待機位置と、の間を回転可能であり、かつ、工具を前記主軸から取り外すための前進位置と、工具を前記主軸と係合させるための後退位置と、の間を前記アームの回転軸に沿って並進可能であるアームと、
前記加工室と前記工具保管室とを仕切る壁に画定された開口部に設けられたシャッタであって、全開位置と全閉位置との間を移動可能である、シャッタと、
前記シャッタを開閉させるための第1のモータと、
前記シャッタの位置を前記全開位置及び前記全閉位置の間の全域において検出可能なシャッタ位置検出器と、
前記アームの所定の動作と関連付けられた前記シャッタの所定の位置を記憶する記憶装置と、
前記シャッタ位置検出器で検出された前記シャッタの前記位置と、前記記憶装置に記憶された前記シャッタの前記所定の位置とに基づいて、前記アームの前記所定の動作を実行するように構成された制御装置と、
前記アームを回転させるための第2のモータと、
前記アームを並進させるための第3のモータと、
前記アームの並進位置を前記前進位置と前記後退位置との間の全域において検出可能なアーム並進位置検出器と、
を備え、
前記制御装置は、
前記シャッタ位置検出器で検出された前記シャッタの前記位置と、前記記憶装置に記憶された前記シャッタの前記所定の位置とに基づいて、前記アームの回転動作及び並進動作の少なくとも一方を制御するように、前記第2のモータ及び前記第3のモータの少なくとも一方を制御し、
前記アーム並進位置検出器が、前記アームが前記前進位置から前記後退位置に移動開始したことを検出したときに、前記シャッタを前記全開位置から前記全閉位置へと向けて移動を開始させるように、前記第1のモータを制御し、
続いて、前記シャッタ位置検出器が、前記シャッタが全開位置から前記所定の位置に移動したことを検出したときに、前記アームが前記工具係合位置から前記アーム待機位置へと向けて回転を完了しているかを確認し、完了していない場合には前記シャッタの移動を止めるように制御する、
ことを特徴とした工作機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記シャッタ位置検出器が、前記シャッタが全閉位置から前記所定の位置に移動したことを検出したときに、前記アームを前記アーム待機位置から前記工具係合位置へと回転させるように、前記第2のモータを制御する、
請求項
1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記アームが前進又は後退するときに、前記アームに保持した工具のシャンク部分に気体を吹きかけるブロアを備え、
前記記憶装置は、それぞれの工具が標準工具であるか又は高精度工具であるかを記憶し、
前記制御装置は、前記主軸に装着される工具が高精度工具である場合、前記アームが前進又は後退するときに、前記アームの並進速度を標準工具のときよりも遅くし又は前記アームを複数回往復させ、前記気体を吹き付ける時間を長くする、
請求項
1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御装置は、前記主軸が工具交換の位置まで移動する際に、先に前記第2のモータによって前記アームを前記アーム待機位置から前記工具係合位置へと回転動作を完了させ、前記主軸の移動によって前記主軸に保持した工具を前記アームに係合させる、
請求項
2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、主軸に取り付けられる工具を交換するために、複数の工具を収容する工具交換装置を有する場合がある。例えば、特許文献1は、複数の工具を収容する工具マガジンと、主軸と工具マガジンとの間に配置された工具交換アームと、を有する工作機械を開示している。主軸が配置された室と、工具マガジン及び工具交換アームが配置された室とは、カバーによって仕切られている。カバーには開口部が形成されており、開口部には側扉が設けられている。工具交換時には側扉は開けられ、ワーク加工時にはクーラント及び切りくずの飛散を防止するために側扉は閉じられる。側扉の開閉動作は、工具交換アームの駆動装置に設けられたカム機構によって工具交換アームの運動と同期されている。このようなメカニカルな構成によって、工具交換アーム及び側扉の動作が同期されている。
【0003】
特許文献2は、自動工具交換装置(ATC(Automatic Tool Changer))のATCシャッタを開示している。ATCシャッタは、作業中には閉じ且つ工具交換時には開くように構成されている。工具は、回転アームによって交換される。ATCシャッタの開放開始位置及び開放終了位置の各々には、リミットスイッチが設けられており、ATCシャッタがこれらの位置に到達したときに、リミットスイッチから開放開始信号及び開放終了信号がそれぞれ送信される。ATCシャッタの開放開始信号及び開放終了信号は、回転アームの駆動源に送信され、それぞれ、回転アームの回転開始信号及び回転終了信号として使用される。このように、ATCシャッタの開放開始位置及び開放終了位置に設けられたリミットスイッチによって、ATCシャッタ及び回転アームの動作が関連付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-60596号公報
【文献】特開2007-030062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工作機械の分野においては、リードタイムを短縮するために、工具交換時間をより短縮することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、工具保管室に保管された複数の工具のなかから選択された工具を用いて、加工室においてワークを加工する工作機械において、加工室の主軸と工具保管室の次工具待機位置との間で工具を交換するため、主軸に装着された工具及び次工具待機位置にある工具に係合するための工具係合位置と、当該アームが待機するためのアーム待機位置と、の間を回転可能であり、かつ、工具を主軸から取り外すための前進位置と、工具を主軸と係合させるための後退位置と、の間をアームの回転軸に沿って並進可能であるアームと、加工室と工具保管室とを仕切る壁に画定された開口部に設けられたシャッタであって、全開位置と全閉位置との間を移動可能である、シャッタと、シャッタを開閉させるための第1のモータと、シャッタの位置を全開位置及び全閉位置の間の全域において検出可能なシャッタ位置検出器と、アームの所定の動作と関連付けられたシャッタの所定の位置を記憶する記憶装置と、シャッタ位置検出器で検出されたシャッタの位置と、記憶装置に記憶されたシャッタの所定の位置とに基づいて、アームの所定の動作を実行するように構成された制御装置と、アームを回転させるための第2のモータと、アームを並進させるための第3のモータと、アームの並進位置を前進位置と後退位置との間の全域において検出可能なアーム並進位置検出器とを備え、
制御装置は、シャッタ位置検出器で検出されたシャッタの位置と、記憶装置に記憶されたシャッタの所定の位置とに基づいて、アームの回転動作及び並進動作の少なくとも一方を制御するように、第2のモータ及び第3のモータの少なくとも一方を制御し、アーム並進位置検出器が、アームが前進位置から後退位置に移動開始したことを検出したときに、シャッタを全開位置から全閉位置へと向けて移動を開始させるように、第1のモータを制御し、続いて、シャッタ位置検出器が、シャッタが全開位置から所定の位置に移動したことを検出したときに、アームが工具係合位置からアーム待機位置へと向けて回転を完了しているかを確認し、完了していない場合にはシャッタの移動を止めるように制御する工作機械である。
【0007】
本開示の一態様に係る工作機械では、シャッタ位置検出器で検出されたシャッタの位置と、アームの動作と関連付けられ且つ記憶装置に記憶されたシャッタの特定の位置とに基づいて、アームの動作が実行される。シャッタ位置検出器はシャッタの位置を全開位置及び全閉位置の間の全域において検出することができるので、記憶しておくシャッタの位置を調節することによって、アームの動作を実行するタイミングを調整することができる。したがって、アームの動作を実行するタイミングをシャッタの動作と関連付けて最適化することができ、これによって、工具交換時間を短縮することができる。
【0008】
アームは、主軸に装着された工具及び次工具待機位置にある工具に係合するための工具係合位置と、当該アームが待機するためのアーム待機位置と、の間を回転可能であってもよく、アームは、工具を主軸から取り外すための前進位置と、工具を主軸と係合させるための後退位置と、の間をアームの回転軸に沿って並進可能であってもよく、工作機械は、アームを回転させるための第2のモータと、アームを並進させるための第3のモータと、を備えてもよく、制御装置は、シャッタ位置検出器で検出されたシャッタの位置と、記憶装置に記憶されたシャッタの所定の位置とに基づいて、アームの回転動作及び並進動作の少なくとも一方を制御するように、第2のモータ及び第3のモータの少なくとも一方を制御してもよい。この場合、アームの回転及び並進が別々の第2及び第3のモータによって操作されるので、アームの動作を更に細かく調整することができる。
【0009】
制御装置は、シャッタ位置検出器が、シャッタが全閉位置から所定の位置に移動したことを検出したときに、アームをアーム待機位置から工具係合位置へと回転させるように、第2のモータを制御してもよい。この場合、シャッタが開いている最中に同時にアームも回転するので、アームの回転動作をより早く終了することができる。
【0010】
工作機械は、アームの並進位置を前進位置と後退位置との間の全域において検出可能なアーム並進位置検出器を備えてもよく、記制御装置は、アーム並進位置検出器が、アームが前進位置から後退位置に移動したことを検出したときに、シャッタを全開位置から全閉位置へと向けて移動を開始させるように、第1のモータを制御し、続いて、シャッタ位置検出器が、シャッタが全開位置から所定の位置に移動開始したことを検出したときに、アームが工具係合位置からアーム待機位置へと向けて回転を完了しているか確認し、完了していない場合にはシャッタの移動を止めるように制御してもよい。この場合、アームが後退位置に移動する(すなわち、工具が主軸に取り付けられる)とシャッタが閉まり始め、シャッタが閉まっている最中に同時にアームも回転するので、アームの回転動作をより早く終了することができる。
【0011】
工作機械は、アームが前進又は後退するときに、アームに保持した工具のシャンク部分に気体を吹きかけるブロアを備えてもよく、記憶装置は、それぞれの工具が標準工具であるか又は高精度工具であるかを記憶してもよく、制御装置は、主軸に装着される工具が高精度工具である場合、アームが前進又は後退するときに、アームの並進速度を標準工具のときよりも遅くし又はアームを複数回往復させ、気体を吹き付ける時間を長くしてもよい。この場合、高精度工具のシャンク部分には気体を長く吹き付けることができる。
【0012】
制御装置は、主軸が工具交換の位置まで移動する際に、先に第2のモータによってアームをアーム待機位置から工具係合位置へと回転動作を完了させてもよく、主軸の移動によって主軸に保持した工具をアームに係合させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、工具交換時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る工作機械を示す概略側面図である。
【
図3】シャッタ及びアームを示す概略斜視図である。
【
図4】アームが前進位置にあるときのアーム及びアーム駆動装置を示す概略側面図である。
【
図5】アームが後退位置にあるときのアーム及びアーム駆動装置を示す概略側面図である。
【
図6】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図7】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図8】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図9】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図10】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図11】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図12】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図13】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図14】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図15】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図16】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【
図17】シャッタ及びアームの動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る工作機械を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺は変更されている場合があり、さらに、ある図に示されている構成要素は、他の図面においては省略されている場合がある。
【0016】
図1は、実施形態に係る工作機械100を示す概略側面図である。工作機械100は、例えば、横形のマシニングセンタであることができ、主軸5の回転軸Ospが水平方向に設定されている。工作機械100は、立形であってもよく、また、マシニングセンタ以外の工作機械であってもよい。工作機械100は、例えば、ベッド(基台)1と、テーブル2と、コラム3と、主軸頭4と、主軸5と、スプラッシュガード6(
図2参照)と、シャッタ7と、工具交換装置50と、機械制御装置(制御装置)60と、NC装置70と、を備えることができる。工作機械100は、他の構成要素を更に有してもよい。なお、
図1では、理解を容易にするために、スプラッシュガード6及びシャッタ7は省略されていることに留意されたい。
【0017】
図1を参照して、工作機械100の機械座標系に関して、回転軸Ospに平行な方向がZ軸方向(前後方向とも称される)である。コラム3に対してテーブル2が在る側が前であり、反対側が後である。鉛直方向がY軸方向(上下方向とも称される)であり、Z軸及びY軸の双方に垂直な方向がX軸方向(左右方向とも称される)である。
【0018】
ベッド1は、例えば工場の床に設置される。テーブル2は、ワークを支持する。ワークは、冶具によって直接的にテーブル2に取り付けられることができ、又は、他の実施形態では、ワークは、パレットを介して間接的にテーブル2に取り付けられてもよい。テーブル2は、ベッド1上に移動可能に配置されている。
【0019】
図2は、
図1の工作機械100を示す概略平面図である。工作機械100は、テーブル2をベッド1に対してZ軸に沿って移動させるZ軸駆動装置11を備えている。Z軸駆動装置11は、Z軸に沿ってベッド1上に配置された一対のリニアガイドL1を有しており、テーブル2がリニアガイドL1のレール上を移動する。Z軸駆動装置11は、テーブル2に連結されたボールねじB1と、ボールねじB1を回転させるためのモータM1と、を更に有している。Z軸駆動装置11によるテーブル2のZ軸方向の送りは、NC装置70によって制御される。
【0020】
コラム3は、Z軸方向においてテーブル2と対向するように、ベッド1上に移動可能に配置されている。工作機械100は、コラム3をX軸に沿って移動させるX軸駆動装置12を備えている。X軸駆動装置12は、X軸に沿ってベッド1上に配置された一対のリニアガイドL2を有しており、コラム3がリニアガイドL2のレール上を移動する。X軸駆動装置12は、コラム3に連結されたボールねじB2と、ボールねじB2を回転させるためのモータM2と、を更に有している。X軸駆動装置12によるコラム3のX軸方向の送りは、NC装置70によって制御される。
【0021】
主軸頭4は、コラム3に移動可能に配置されている。主軸頭4は、コラム3の前面から後面まで貫通している。工作機械100は、主軸頭4をY軸に沿って移動させるY軸駆動装置13を備えている。Y軸駆動装置13は、Y軸に沿ってコラム3に配置されたリニアガイド(不図示)を有しており、主軸頭4がリニアガイドのレール上を移動する。Y軸駆動装置13は、主軸頭4に連結されたボールねじ(不図示)と、当該ボールねじを回転させるためのモータM3と、を更に有している。Y軸駆動装置13による主軸頭4のY軸方向の送りは、NC装置70によって制御される。
【0022】
主軸5は、主軸頭4の内部に回転可能に配置されている。主軸5は、工具Tを保持する。主軸5の回転は、NC装置70によって制御される。
【0023】
スプラッシュガード6は、ワークを加工するための加工室R1と、複数の工具Tを収容するための工具保管室R2と、を仕切っている。スプラッシュガード6は、クーラント及び切りくずが加工室R1の外へ飛散することを防止する。
【0024】
図3は、シャッタ7及びアーム53を示す概略斜視図である。スプラッシュガード6には、工具交換の際に工具Tを通すための開口6aが画定されている。シャッタ7は、開口6aに設けられている。シャッタ7は、
図3に示されるような全開位置と、全閉位置(
図6参照)と、の間を移動可能である。
【0025】
図3を参照して、工作機械100は、シャッタ7を開閉させるための第1のモータSV1を備えている。第1のモータSV1は、カバー7cに固定されている。カバー7cは、スプラッシュガード6又は他の枠体等の固定された構成要素に固定されることができる。第1のモータSV1のシャフトには、ねじ部7aが連結されている。ねじ部7aには、ナット部7bが係合している。ナット部7bは、シャッタ7に連結されている。ねじ部7a及びナット部7bは、カバー7cによって囲われており、これによって、クーラント及び切りくずから保護されている。第1のモータSV1がねじ部7aを回転させると、ナット部7b及びシャッタ7がねじ部7aに沿って移動する。シャッタ7の移動は、機械制御装置60によって制御される。
【0026】
第1のモータSV1は、例えば、サーボモータであることができ、エンコーダEN1を含むことができる。この場合、エンコーダEN1は、シャッタ7の位置を全開位置及び全閉位置の間の全域において検出可能なシャッタ位置検出器として機能する。具体的には、
図2を参照して、機械制御装置60のプロセッサ61は、メモリ62に記憶されたねじ部7a及びナット部7bのピッチと、エンコーダEN1から受け取った第1のモータSV1の回転量と、に基づいて、原点(例えば、全開位置又は全閉位置)からのシャッタ7の移動量を算出することができ、したがって、シャッタ7の位置を検出することができる。このように、エンコーダEN1は、シャッタ位置検出器として機能することができる。
【0027】
工具交換装置50は、複数の工具Tを収容し、主軸5に取り付けられる工具Tを交換するように構成されている。工具交換装置50は、工具マガジン51と、シフタ52と、アーム53と、を有している。
【0028】
工具マガジン51は、複数の工具Tを収容する。工具マガジン51は、例えば、マガジン本体51aと、複数の工具ポット保持部51bと、を有している。
図1を参照して、マガジン本体51aは、概ね、円環形状、又は、円形の無端形状(若しくは、閉じた線形状)を有している。マガジン本体51aは、主軸5の側方において、その無端形状がYZ平面に沿うように配置されている。マガジン本体51aの配置の方向は、これに限られない。
【0029】
マガジン本体51aは、例えば、フレーム51cに設けられた複数のローラ51dによって、回転可能に支持されることができる。マガジン本体51aは、ベルト、チェーン及び/又は歯車等を介して、モータ等の駆動装置に接続されている(不図示)。
図2を参照して、マガジン本体51aは、X軸方向に平行な回転軸Omの周りに回転するように構成されている。マガジン本体51aの回転は、機械制御装置60によって制御される。
【0030】
複数の工具ポット保持部51bは、マガジン本体51aの無端形状に沿って配置されている。したがって、マガジン本体51aが回転するにつれて、複数の工具ポット保持部51bは、YZ平面に沿った円形の循環経路(又は、無端経路)を移動する。工具マガジン51は、選択された工具ポット保持部51bを、選択位置S1に配置するように構成されている。
【0031】
工具ポット保持部51bの各々は、工具ポットPを取外し可能に保持する。工具ポット保持部51bは、例えば、工具ポットPを保持するための板バネ等の弾性手段を含むことができる。工具ポットPは、図示しない周知の手段を用いて、工具Tを取外し可能に収納する。
【0032】
シフタ52は、選択位置S1にある工具ポット保持部41bと、次工具待機位置S2と、の間で、工具ポットPを移動可能である。シフタ52は、主軸5と工具マガジン51との間に配置されている。シフタ52は、工具ポットPをクランプ及びアンクランプすることが可能な、爪状のクランプ機構(不図示)を有している。シフタ52は、回転軸Oshの周りに回転可能である。シフタ52は、回転軸Oshの周りに、選択位置S1と、次工具待機位置S2と、の間を移動する。
【0033】
次工具待機位置S2は、工具マガジン51の円周方向において、選択位置S1と同じ角度に位置する。また、次工具待機位置S2は、工具マガジン51の半径方向において、選択位置S1よりも内側に位置する。選択位置S1と次工具待機位置S2との間の回転角度は、例えば90°である。シフタ52の回転動作は、例えばモータ(不図示)によって駆動されることができる。シフタ52の回転動作は、機械制御装置60によって制御される。
【0034】
図3を参照して、アーム53は、主軸5と、次工具待機位置S2にある工具ポットPと、の間で工具Tを交換する。アーム53は、主軸5とシフタ52との間に配置されている。アーム53は、主軸5の回転軸Ospと平行な回転軸Oa周りの回転動作と、回転軸Oaに沿った並進動作と、が可能である。アーム53は、ギアボックス55に回転可能に且つ並進可能に取り付けられている。ギアボックス55は、アーム53を動作させるための歯車53d~53g(
図4参照。詳しくは後述)を収容している。
【0035】
図3を参照して、アーム53は、シャフト部53aと、アーム部53bと、を有している。シャフト部53aは、回転軸Oaに沿って延びている。アーム部53bは、シャフト部53aから径方向に両側に延在しており、その両端に工具を把持するための2つのグリッパー53cを含んでいる。
【0036】
図4は、アーム53が前進位置St1にあるときのアーム53及びアーム駆動装置54を示す概略側面図であり、
図5は、アーム53が後退位置St2にあるときのアーム53及びアーム駆動装置54を示す概略側面図である。
図4を参照して、アーム53のシャフト部53aは、第1のシャフト部53a1と、第2のシャフト部53a2と、継手53a3と、を含んでいる。
【0037】
第1のシャフト部53a1は、ギアボックス55に対して回転可能に取り付けられており、回転軸Oaに沿って並進はしない。第2のシャフト部53a2は、第1のシャフト部53a1の径方向内側に配置されており、回転軸Oaに沿って第1のシャフト部53a1の内側を並進する。第2のシャフト部53a2には、アーム部53bが固定されている。第2のシャフト部53a2の一部には、回転軸Oaに沿って延びる突起を含むスプライン53a4が設けられており、第1のシャフト部53a1の内周面には対応する溝(不図示)が設けられている。このような構成によって、第1のシャフト部53a1の回転動作が、第2のシャフト部53a2及びそれに固定されたアーム部53bに伝達される。継手53a3は、第2のシャフト部53a2に対して回転可能に取り付けられている。したがって、継手53a3は、第2のシャフト部53a2と共に並進するが、第2のシャフト部53a2と共に回転はしない。
【0038】
工作機械100は、アーム53を動作させるためのアーム駆動装置54を備えている。アーム駆動装置54は、アーム部53bを回転させるための第2のモータSV2と、アーム部53bを並進させるための第3のモータSV3と、を有している。
【0039】
第2のモータSV2のシャフトには、第1の傘歯車53dが連結されている。アーム53の第1のシャフト部53a1には、第1の傘歯車53dと噛み合う第2の傘歯車53eが設けられている。第2のモータSV2が第1の傘歯車53dを回転させると、第2の傘歯車53e及び第1のシャフト部53a1が回転軸Oa周りに回転し、さらに、スプライン53a4を介して第2のシャフト部53a2及びアーム部53bが回転軸Oa周りに回転する。アーム部53bの回転は、機械制御装置60によって制御される。
【0040】
第2のモータSV2は、例えば、サーボモータであることができ、エンコーダEN2を含むことができる。この場合、エンコーダEN2は、アーム部53bの回転位置を全域において検出可能なアーム回転位置検出器として機能する。具体的には、機械制御装置60のプロセッサ61が、メモリ62に記憶された第1の傘歯車53d及び第2の傘歯車53eの間のギア比と、エンコーダEN2から受け取った第2のモータSV2の回転量と、に基づいて、原点(例えば、工具係合位置Sr1又はアーム待機位置Sr2(詳しくは後述))からのアーム部53bの回転量を算出することができ、したがって、アーム部53bの回転位置を検出することができる。このように、エンコーダEN2は、アーム回転位置検出器として機能することができる。
【0041】
第3のモータSV3のシャフトには、第3の傘歯車53fが連結されており、第3の傘歯車53fと噛み合う第4の傘歯車53gが、ギアボックス55に回転可能に取り付けられている。第4の傘歯車53gとアーム53の継手53a3とは、クランク53hによって連結されている。クランク53hの連結部の一方は、第4の傘歯車53gに固定されており、連結部の他方は、継手53a3に対して回転可能に且つ
図4において上下方向に移動可能に結合されている。第3のモータSV3が第3の傘歯車53fを回転させると、第4の傘歯車53g及びクランク53hが回転し、これによって、継手53a3を介して第2のシャフト部53a2及びそれに固定されたアーム部53bが回転軸Oaに沿って並進する。アーム部53bの並進は、機械制御装置60によって制御される。
【0042】
第3のモータSV3は、例えば、サーボモータであることができ、エンコーダEN3を含むことができる。この場合、エンコーダEN3は、アーム部53bの並進位置を全域において検出可能なアーム並進位置検出器として機能する。具体的には、機械制御装置60のプロセッサ61が、メモリ62に記憶された第3の傘歯車53f及び第4の傘歯車53gの間のギア比と、クランク53hの連結部間の長さと、エンコーダEN3から受け取った第3のモータSV3の回転量と、に基づいて、原点(例えば、前進位置St1又は後退位置St2)からのアーム53の並進量を算出することができ、したがって、アーム53の並進位置を検出することができる。このように、エンコーダEN3は、アーム並進位置検出器として機能することができる。
【0043】
図6~
図17は、シャッタ7及びアーム53の動作を示す概略図であり、
図6~
図17の各々において、左図は概略平面図であり、右図は概略正面図である。
図6~
図17の例では、主軸5に取り付けられた長い工具T1と、次工具待機位置S2にある短い工具T2とが交換される。
【0044】
アーム53の回転動作に関して、
図6~
図17の右図を参照して、アーム53は、主軸5に装着された工具T及び次工具待機位置S2にある工具Tに係合するための工具係合位置Sr1と(
図8,9,10,11,12,13,14の右図を参照)、アーム53が待機するためのアーム待機位置Sr2と(
図6,7,15,16,17の右図を参照)、の間を回転可能である。
【0045】
図8の右図を参照して、工具係合位置Sr1においては、グリッパー53cの一方が加工室R1に位置し他方が工具保管室R2に位置するように、アーム53が配置される。工具係合位置Sr1においては、グリッパー53cの一方が主軸5に装着された工具Tのホルダに係合し、他方が次工具待機位置S2にある工具Tのホルダに係合する。
図6及び
図8の右図を参照して、アーム待機位置Sr2(
図6の右図)は、回転軸Oaを中心にして、工具係合位置Sr1(
図8の右図)から時計回りに又は反時計回りに90°離間している。
図6の右図を参照して、アーム待機位置Sr2においては、グリッパー53cの双方が工具保管室R2に位置するように、アーム53が配置される。
【0046】
アーム53の並進動作に関して、
図6~
図17の左図を参照して、アーム53は、工具Tを主軸5から取り外し且つ工具Tを次工具待機位置S2にある工具ポットPから抜き出すための前進位置St1と(
図9,10,11,12の左図を参照)、工具Tを主軸5に係合させ且つ工具Tを次工具待機位置S2にある工具ポットPに挿入するための後退位置St2と(
図6,7,8,13,14,15,16,17の左図を参照)、の間を回転軸Oaに沿って並進可能である。
【0047】
図1を参照して、機械制御装置60は、制御プログラムに基づいて、工具交換装置50の動作を制御する。また、機械制御装置60は、NC装置70により制御される構成要素(例えば、X軸駆動装置12、Y軸駆動装置13、Z軸駆動装置11及び主軸5等)以外の工作機械100中の他の機械構成要素の動作を制御することもできる。機械制御装置60は、例えば、プロセッサ61と、メモリ62と、入力装置63と、表示装置64と、インターフェース65と、を有することができ、これらの構成要素は例えばバス等によって互いに接続されている。機械制御装置60は、他の構成要素を更に有してもよい。プロセッサ61は、例えば、1つ又は複数のCPU(Central Processing unit)であることができる。
【0048】
メモリ62は、例えば、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、及び、ハードディスクドライブ等の記憶装置を含むことができる。メモリ62は、工具交換動作(詳しくは後述)の際に、プロセッサ61がシャッタ7の位置に関連させてアーム53の動作を制御するためのプログラムを記憶している。また、メモリ62は、プロセッサ61が実行する他の様々な制御プログラムを記憶することができる。また、メモリ62は、シャッタ7の位置の算出に関連して、上記のねじ部7a及びナット部7bのピッチを記憶することができる。これによって、プロセッサ61は、第1のモータSV1のエンコーダEN1から回転量を受信すると、メモリ62に記憶されたねじ部7a及びナット部7bのピッチと、受信した回転量と、に基づいて、シャッタ7の位置を算出することができる。また、メモリ62は、アーム部53bの回転位置の算出に関連して、上記の第1の傘歯車53d及び第2の傘歯車53eの間のギア比を記憶することができる。また、メモリ62は、アーム部53bの並進位置の算出に関連して、第3の傘歯車53f及び第4の傘歯車53gの間のギア比、並びに、クランク53hの連結部間の長さを記憶することができる。
【0049】
また、メモリ62は、アーム53の所定の動作と関連付けられたシャッタ7の1つ又は複数の所定の位置を記憶することができる。プロセッサ61は、算出したシャッタ7の位置がメモリ62に記憶されている所定の位置に一致すると、アーム53の所定の動作を開始するように、第2のモータSV2及び第3のモータSV3の少なくとも一方に信号を送信する(詳しくは後述)。
【0050】
シャッタ7の所定の位置と関連付けられるアーム53の所定の動作は、様々な動作を含むことができる。また、メモリ62に記憶されるシャッタ7の所定の位置は、シャッタ7の全閉位置及び全開位置を含む、全閉位置と全開位置との間の任意の位置であることができる。
【0051】
図7,8を参照して、例えば、アーム53の所定の動作は、シャッタ7が開いている最中に、アーム待機位置Sr2(
図7の右図)から工具係合位置Sr1(
図8の右図)への回転動作(90°)である。この場合、メモリ62に記憶されるシャッタ7の第1の所定の位置Ss1(
図7,8の左図参照)は、アーム53がシャッタ7に接触しないように全閉位置から離れた位置である。
【0052】
なお、
図6及び
図7の段階において主軸5は既に工具交換のための位置まで移動を完了しているが、先にアーム53が回転動作し、後から主軸5が
図6~
図8に図示されている工具交換の位置まで移動してもよい。
図8の段階までは、主軸5の移動及びアーム53の回転の動作完了はどちらが先であってもよい。アーム53が先に動作完了している場合には、主軸5は、保持する工具がグリッパー53cに係合できる方向からアーム53に接近すればよい。
【0053】
また、
図8,9を参照して、例えば、アーム53の所定の動作は、シャッタ7が開いている最中に、後退位置St2(
図8の左図)から前進位置St1(
図9の右図)への並進動作である。この場合、メモリ62に記憶されるシャッタ7の第2の所定の位置Ss2は、前進したアーム部53bがシャッタ7に接触しないように全閉位置から離れた位置であることができる。代替的に、アーム53は、シャッタ7が開き終わった後に(
図12参照)、後退位置St2から前進位置St1へ並進してもよい。この場合、メモリ62に記憶されるシャッタ7の第4の所定の位置Ss4は、全開位置であることができる。
【0054】
また、
図10,11を参照して、例えば、アーム53の所定の動作は、シャッタ7が開いている最中に、工具T1と工具T2とを交換するべく、一方の工具係合位置Sr1(
図10参照)から他方の工具係合位置Sr1(
図11参照)への回転動作(180°)である。この場合、メモリ62に記憶されるシャッタ7の第3の所定の位置Ss3は、アーム53に保持されている工具T1,T2(特に、長い工具T1)がシャッタ7に接触しないように全閉位置から離れた位置であることができる。代替的に、アーム53は、シャッタ7が開き終わった後に(
図12参照)、工具T1と工具T2とを交換するべく180°回転してもよい。この場合、メモリ62に記憶されるシャッタ7の第4の所定の位置Ss4は、全開位置であることができる。
【0055】
また、
図14,15を参照して、例えば、アーム53の所定の動作は、工具T1,T2の交換が完了した後にシャッタ7が閉じている最中に、工具係合位置Sr1(
図14の右図)からアーム待機位置Sr2(
図15の右図)への回転動作(90°)である。この場合、メモリ62に記憶されるシャッタ7の第5の所定の位置Ss5(
図15の左図参照)は、アーム53がシャッタ7に接触しないように全閉位置から離れた位置であることができる。
【0056】
メモリ62は、シャッタ7の所定の位置を、工具の特徴に応じて、工具毎に記憶することができる。また、メモリ62は、例えば、シャッタ7の移動速度、アーム53の並進速度、及び、アーム53の回転速度のうちの少なくとも1つを、工具の特徴に応じて工具毎に記憶することができる。
【0057】
例えば、メモリ62は、シャッタ7の所定の位置を、工具の長さ(例えば、長い、標準、及び、短い等)に応じて、工具毎に記憶することができる。例えば、上記のように、シャッタ7が開いている最中にアーム53が工具T1と工具T2とを交換するべく180°回転する場合(
図10,11参照)、シャッタ7の第3の所定の位置Ss3は、アーム53に保持されている工具T1,T2(特に、長い工具T1)がシャッタ7に接触しないように、全閉位置から離れた位置でなければならない。したがって、長い工具T1には、短い工具T2と比較して、全閉位置からより離れた位置が記憶される。なお、アーム53が長い工具T1と短い工具T2とを保持している場合には、プロセッサ61は、安全のために、長い工具T1に対して記憶された位置を用いることに留意すべきである。
【0058】
また、例えば、メモリ62は、シャッタ7の所定の位置を、工具の重さ(例えば、重い、標準、及び、軽い等)に応じて、工具毎に記憶することができる。例えば、上記のように、シャッタ7が開いている最中にアーム53が工具Tを交換するべく180°回転する場合(
図10,11参照)、シャッタ7の第3の所定の位置Ss3は、アーム53に保持されている工具Tがシャッタ7に接触しないように、全閉位置から離れた位置でなければならない。このとき、アーム53が重い工具Tを保持している場合、アーム53の回転が遅くなる可能性がある。また、アーム53が重い工具Tを保持している場合、工具Tの接触によってシャッタ7が大きく破損する可能性がある。したがって、重い工具Tには、軽い工具Tと比較して、全閉位置からより離れた位置が記憶される。なお、アーム53が重い工具Tと軽い工具Tとを保持している場合には、プロセッサ61は、安全のために、重い工具Tに対して記憶された位置を用いることに留意すべきである。
【0059】
また、例えば、メモリ62は、シャッタ7の移動速度を、工具の精度(例えば、高精度及び標準等)に応じて、工具毎に記憶することができる。例えば、
図11,12を参照して、工作機械100は、工具Tのシャンク部分に付着したほこり及び/又は切りくずを取り除くために、ブロワ8を有することができる。ブロワ8は、例えば、主軸5又はその他の構成要素に設けられることができる。ブロワ8は、主軸5に工具Tが取り付けられる前に、工具Tのシャンク部分に気体(例えば、空気)を吹き付けることができる。シャンク部分に気体を吹き付けるときには、アーム53を前後に並進させることによって、工具Tを往復移動させてもよい。これによって、工具Tのシャンク部分に付着したほこり及び/又は切りくずを効率的に取り除くことができる。アーム53が高精度の工具Tを保持している場合、シャンク部分にほこり及び/又は切りくずが付着したまま工具Tが主軸5に取り付けられると、高い加工精度が得られない可能性がある。したがって、アーム53が高精度の工具Tを保持している場合、シャンク部分により長い期間気体を吹き付けるために、シャッタ7の移動を遅くすることが好ましい。したがって、高精度の工具Tには、標準の工具Tと比較して、シャッタ7に対して低い移動速度が設定されることができる。
【0060】
入力装置63は、例えば、マウス、キーボード及び機械式のボタン等を含むことができ、表示装置64は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等を含むことができる。入力装置63及び表示装置64として、タッチパネルが使用されてもよい。インターフェース65は、機械制御装置60を外部装置に接続するためのインターフェース回路を有することができる。
【0061】
NC装置70は、NCプログラムに基づいて、上記のX軸駆動装置12、Y軸駆動装置13、Z軸駆動装置11、及び、主軸5を制御するように構成されている。NC装置70は、機械制御装置60と同様に、例えば、プロセッサ、メモリ、入力装置、表示装置、及び、インターフェース等の構成要素を有することができる。機械制御装置60及びNC装置70は、互いに通信可能であってもよく、必要なときには協働することができる。
【0062】
次に、工作機械100の工具交換動作について説明する。以下の工具交換動作の間、プロセッサ61は、メモリ62を参照しながらシャッタ7が所定の位置Ss1~Ss5に到達したか否かを判断し、メモリ62に記憶されているプログラムにしたがってシャッタ7の位置に関連させてアーム53の動作を制御する。
【0063】
図2を参照して、先ず、機械制御装置60のプロセッサ61が工具マガジン51の駆動装置に信号を送り、工具マガジン51が所望の工具T2を選択位置S1に移動させる。これによって、シフタ52が、工具T2を保持する工具ポットPを保持する。続いて、プロセッサ61が、シフタ52の駆動装置に信号を送り、シフタ52が選択位置S1から次工具待機位置S2へと回転する。
図6を参照して、この時点で、主軸5には長い工具T1が取り付けられており、次工具待機位置S2には短い工具T2が位置している。シャッタ7は、全閉位置Ss0に位置する。
【0064】
図7を参照して、プロセッサ61が第1のモータSV1に信号を送り、シャッタ7が全閉位置Ss0から全開位置Ss4へと向かって移動を開始する。シャッタ7は、第1の所定の位置Ss1に到達する。
【0065】
図8を参照して、エンコーダEN1からの信号に基づいて、シャッタ7がメモリ62に記憶されている第1の所定の位置Ss1に到達したとプロセッサ61が判断すると、プロセッサ61が第2のモータSV2に信号を送り、アーム53がアーム待機位置Sr2から工具係合位置Sr1へと回転する(
図8の右図参照)。
【0066】
図9を参照して、引き続きシャッタ7が全開位置Ss4へと向かって移動を続け、シャッタ7が、第2の所定の位置Ss2に到達する。エンコーダEN1からの信号に基づいて、シャッタ7がメモリ62に記憶されている第2の所定の位置Ss2に到達したとプロセッサ61が判断すると、プロセッサ61が第3のモータSV3に信号を送り、アーム53が後退位置St2から前進位置St1へと並進する。これによって、主軸5から工具T1が取り外され、次工具待機位置S2にある工具ポットPから工具T2が引き抜かれる。
【0067】
図10を参照して、引き続きシャッタ7が全開位置Ss4へと向かって移動を続け、シャッタ7が、第3の所定の位置Ss3に到達する。
【0068】
図11を参照して、エンコーダEN1からの信号に基づいて、シャッタ7がメモリ62に記憶されている第3の所定の位置Ss3に到達したとプロセッサ61が判断すると、プロセッサ61が第2のモータSV2に信号を送り、アーム53が反対側の工具係合位置Sr1へと180°回転する。これによって、長い工具T1は次工具待機位置S2側に移動し、短い工具T2は主軸5側に移動する。また、プロセッサ61は、ブロワ8に信号を送り、気体が工具T2のシャンク部に吹き付けられる。
【0069】
図12を参照して、引き続きシャッタ7が全開位置Ss4へと向かって移動を続け、シャッタ7が、全開位置Ss4に到達する。
【0070】
図13を参照して、エンコーダEN1からの信号に基づいて、シャッタ7がメモリ62に記憶されている全開位置Ss4に到達したとプロセッサ61が判断すると、プロセッサ61が第3のモータSV3に信号を送り、アーム53が前進位置St1から後退位置St2に移動する。これによって、長い工具T1は次工具待機位置S2に保持された工具ポットPに挿入され、短い工具T2は主軸5に取り付けられる。また、プロセッサ61は、ブロワ8に信号を送り、ブロワ8が停止する。
【0071】
図14を参照して、エンコーダEN3からの信号に基づいて、アーム53が前進位置St1から後退位置St2に移動したとプロセッサ61が判断すると、プロセッサ61が第1のモータSV1に信号を送り、シャッタ7が全開位置Ss4から全閉位置Ss0へと向かって移動を開始する。
【0072】
図15を参照して、シャッタ7が第5の所定の位置Ss5に到達する。エンコーダEN1からの信号に基づいて、シャッタ7がメモリ62に記憶されている第5の所定の位置Ss5に到達したとプロセッサ61が判断すると、プロセッサ61が、アーム53が工具係合位置Sr1からアーム待機位置Sr2への回転を完了していることを確認する(
図15の右図参照)。回転が完了していない場合には、シャッタの移動を止める。
【0073】
図16を参照して、アーム53がアーム待機位置Sr2へと回転した後に、プロセッサ61は、シフタ52に信号を送り、シフタ52が次工具待機位置S2から選択位置S1へと回転する(
図16の左図参照)。これによって、工具T1が工具マガジン51に戻される。また、引き続き、シャッタ7は全閉位置Ss0へと向かって移動を続ける。
【0074】
図17を参照して、シャッタ7が全閉位置Ss0に到達し、一連の工具交換動作が終了する。
【0075】
以上のように、実施形態に係る工作機械100では、エンコーダEN1で検出されたシャッタ7の位置と、アーム53の動作と関連付けられ且つメモリ62に記憶されたシャッタ7の所定の位置Ss1~Ss5とに基づいて、アーム53の動作が実行される。エンコーダEN1はシャッタ7の位置を全開位置Ss4及び全閉位置Ss0の間の全域において検出することができるので、記憶しておくシャッタ7の位置を調節することによって、アーム53の動作を実行するタイミングを調整することができる。したがって、アーム53の動作を実行するタイミングをシャッタ7の動作と関連付けて最適化することができ、これによって、工具交換時間を短縮することができる。
【0076】
また、実施形態に係る工作機械100では、アーム53は、主軸5に装着された工具T及び次工具待機位置S2にある工具Tに係合するための工具係合位置Sr1と、当該アーム53が待機するためのアーム待機位置Sr2と、の間を回転可能であり、且つ、工具Tを主軸5から取り外すための前進位置St1と、工具Tを主軸5と係合させるための後退位置St2と、の間をアーム53の回転軸Oaに沿って並進可能であり、工作機械100は、アーム53を回転させるための第2のモータSV2と、アーム53を並進させるための第3のモータSV3と、を備えており、機械制御装置60は、エンコーダEN1で検出されたシャッタ7の位置と、メモリ62に記憶されたシャッタ7の所定の位置Ss1~Ss5とに基づいて、アーム53の回転動作及び並進動作の少なくとも一方を制御するように、第2のモータSV2及び第3のモータSV3の少なくとも一方を制御する。したがって、アーム53の回転及び並進が別々の第2のモータSV2及び第3のモータSV3によって操作されるので、アーム53の動作を更に細かく調整することができる。
【0077】
また、実施形態に係る工作機械100では、機械制御装置60は、エンコーダEN1が、シャッタ7が全閉位置Ss0から所定の位置Ss1(
図7,8の左図参照)に移動したことを検出したときに、アーム53をアーム待機位置Sr2から工具係合位置Sr1へと回転させるように、第2のモータSV2を制御する。したがって、シャッタ7が開いている最中に同時にアーム53も回転するので、アーム53の回転動作をより早く終了することができる。
【0078】
また、実施形態に係る工作機械100は、アーム53の並進位置を前進位置St1と後退位置St2との間の全域において検出可能なエンコーダEN3を備えており、機械制御装置60は、エンコーダEN3が、アーム53が前進位置St1から後退位置St2(
図13の左図参照)に移動したことを検出したときに、シャッタ7を全開位置Ss4から全閉位置Ss0へと向けて移動を開始させるように、第1のモータSV1を制御し、続いて、エンコーダEN1が、シャッタ7が全開位置Ss4から所定の位置Ss5(
図15の左図参照)に移動したことを検出したときに、アーム53を工具係合位置Sr1からアーム待機位置Sr2(
図15の右図参照)へと向けて回転を開始させるように、第2のモータSV2を制御する。したがって、アーム53が後退位置St2に移動する(すなわち、工具Tが主軸5に取り付けられる)とシャッタ7が閉まり始め、シャッタ7が閉まっている最中に同時にアーム53も回転するので、アーム53の回転動作をより早く終了することができる。
【0079】
工作機械の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解するだろう。
【0080】
例えば、上記の実施形態では、長い工具T1が次工具待機位置S2側に移動し短い工具T2が主軸5側に移動した後に(
図11の左図参照)、アーム53が全開位置Ss4まで移動している(
図12左図参照)。しかしながら、他の実施形態では、アーム53は、第3の位置Ss3(
図11の左図参照)で並進を停止してもよく、全開位置Ss4まで移動しなくてもよい。この場合、アーム53の停止位置Ss3は、工具Tの長さに応じて変わり、メモリ62は、工具Tの長さに応じてアーム53の停止位置Ss3を記憶する。
【符号の説明】
【0081】
5 主軸
6 スプラッシュガード(加工室と工具保管室とを仕切る壁)
6a 開口
7 シャッタ
53 アーム
60 機械制御装置(制御装置)
61 プロセッサ
62 メモリ
100 工作機械
EN1 エンコーダ(シャッタ位置検出器)
EN2 エンコーダ(アーム回転位置検出器)
EN3 エンコーダ(アーム並進位置検出器)
Oa アームの回転軸
R1 加工室
R2 工具保管室
S2 次工具待機位置
Sr1 工具係合位置
Sr2 アーム待機位置
Ss1~Ss5 シャッタの所定の位置
St1 前進位置
St2 後退位置
SV1 第1のモータ
SV2 第2のモータ
SV3 第3のモータ
T,T1,T2 工具