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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】角速度センサおよびセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5621 20120101AFI20221028BHJP
【FI】
G01C19/5621
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021014863
(22)【出願日】2021-02-02
(62)【分割の表示】P 2019539446の分割
【原出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2021067701
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2017164318
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】副島 宗高
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-156832(JP,A)
【文献】特開2013-167459(JP,A)
【文献】特開2016-90254(JP,A)
【文献】特開2015-87334(JP,A)
【文献】特開2010-171966(JP,A)
【文献】特開2014-157162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/56-5628
H01L 27/02
H01L 41/00-41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の実装枠と、
x軸に沿って延びている主部と、z軸方向に見て、前記実装枠に囲まれているとともに、前記主部の両端と前記実装枠の内側とを接続しており、少なくとも一部がx軸に交差する方向に延びている1対の延長部と、を有したフレームと、
x軸方向に互いに離れた位置にて前記主部からy軸方向に互いに並列に延びている1対の第1駆動腕と、
x軸方向にて前記1対の第1駆動腕の間となる位置において前記主部からy軸方向に延びている第1検出腕と、を有した圧電体を備える、
センサ素子。
【請求項2】
前記1対の第1駆動腕、前記第1検出腕および前記1対の延長部は、互いに同一側へ前記主部から延びており、
前記圧電体は、前記フレーム、前記1対の第1駆動腕および前記第1検出腕の組み合わせを、前記フレームの前記1対の第1駆動腕が延びている側とは反対側を互いに対向させて2組有しており、
2つの前記フレームは、前記実装枠の内側に接続している
請求項1に記載のセンサ素子
【請求項3】
前記圧電体は単結晶からなり、前記フレームのxy平面に交差する面は結晶面によって構成されている、
請求項1または2に記載のセンサ素子
【請求項4】
前記第1検出腕は、前記1対の第1駆動腕の間の中央に位置している、
請求項1~のいずれか1項に記載のセンサ素子
【請求項5】
前記実装枠は、x軸方向に沿って延びる1対の2辺およびy軸方向に沿って延びる1対の他の2辺を有している、
請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項6】
前記1対の2辺は、前記1対の他の2辺よりも短い、
請求項5に記載のセンサ素子。
【請求項7】
前記実装枠は、幅が異なる部位を有している、
請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項8】
前記実装枠は、x軸方向に互いに離れている1対の支持部を有しており、
前記1対の支持部の下面に配された複数のパッドをさらに有している、
請求項1~7のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項9】
前記フレームは、x軸方向に互いに離れた位置にて、前記1対の第1駆動腕と同様の方向へ延びている1対の第2駆動腕をさらに有している、
請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項10】
前記1対の第1駆動腕は、ハンマ形状を有している、
請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項11】
前記第1検出腕は、ハンマ形状を有している、
請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項12】
前記1対の延長部のそれぞれは、y軸方向に沿って伸びる第1部分と、x軸方向に沿って伸びる第2部分と、を有している、
請求項1~11のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項13】
前記1対の延長部は、前記主部よりも幅の大きい部位を有している、
請求項1~12のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項14】
前記第1検出腕の長さは、前記第1駆動腕の長さと同等である、
請求項1~13のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項15】
前記主部の幅は、前記実装枠の幅よりも小さい、
請求項1~14のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のセンサ素子と、
前記センサ素子の前記圧電体に電圧を印加する駆動回路と、
前記センサ素子の前記圧電体に生じる信号を検出する検出回路と、をさらに備え、
前記駆動回路は、前記第1駆動腕に電気的に接続しており、
前記検出回路は、前記第1検出腕に電気的に接続している、
角速度センサ。
【請求項17】
前記駆動回路は、前記1対の第1駆動腕をx軸方向において互いに逆側へ曲げて振動させる互いに逆の位相の電圧を前記1対の第1駆動腕に印加し、
前記検出回路は、前記第1検出腕のz軸方向またはx軸方向における曲げ変形により生じる信号を検出する、
請求項16に記載の角速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、角速度センサおよび当該角速度センサに用いられるセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
角速度センサとして、いわゆる圧電振動式のものが知られている(例えば特許文献1)。このセンサにおいては、圧電体に交流電圧を印加して圧電体を励振する。この励振されている圧電体が回転されると、回転速度(角速度)に応じた大きさで、励振方向と直交する方向にコリオリの力が生じ、このコリオリの力によっても圧電体は振動する。そして、このコリオリの力に起因する圧電体の変形に応じて生じる電気信号を検出することにより、圧電体の角速度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-037235号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る角速度センサは、圧電体と、前記圧電体に電圧を印加する駆動回路と、前記圧電体に生じる信号を検出する検出回路と、を有している。前記圧電体は、1対の支持部と、フレームと、1対の駆動腕と、検出腕と、を有している。前記1対の支持部は、直交座標系xyzのx軸方向において互いに離れている。前記フレームは、x軸に沿って延びている主部と、z軸方向に見て、前記主部の両端と前記1対の支持部の内側とを接続しており、少なくとも一部がx軸に交差する方向に延びている1対の延長部とを含んでいる。前記1対の駆動腕は、x軸方向に互いに離れた位置にて前記主部からy軸方向に互いに並列に延びている。前記検出腕は、x軸方向にて前記1対の駆動腕の間となる位置において前記主部からy軸方向に延びている。前記駆動回路は、前記1対の駆動腕をx軸方向において互いに逆側へ曲げて振動させる互いに逆の位相の電圧を前記1対の駆動腕に印加する。前記検出回路は、前記検出腕のz軸方向またはx軸方向における曲げ変形により生じる信号を検出する。
【0005】
本開示の一態様に係るセンサ素子は、圧電体を有しているとともに、前記圧電体に配置されている複数の励振電極、複数の検出電極および複数の配線を有している。前記圧電体は、1対の支持部と、フレームと、1対の駆動腕と、検出腕と、を有している。前記1対の支持部は、直交座標系xyzのx軸方向において互いに離れている。前記フレームは、x軸に沿って延びている主部と、z軸方向に見て、前記主部の両端と前記1対の支持部の内側とを接続しており、少なくとも一部がx軸に交差する方向に延びている1対の延長部とを含んでいる。前記1対の駆動腕は、x軸方向に互いに離れた位置にて前記主部からy軸方向に互いに並列に延びている。前記1対の検出腕は、x軸方向にて前記1対の駆動腕の間となる位置において前記主部からy軸方向に延びている。前記複数の励振電極は、前記1対の駆動腕をx軸方向に励振する電圧を印加可能な配置で設けられている。前記複数の検出電極は、前記検出腕のx軸方向またはz軸方向の振動によって生じる信号を検出可能な配置で設けられている。前記複数の配線は、前記1対の駆動腕をx軸方向において互いに逆側へ曲げて振動させる互いに逆の位相が前記複数の励振電極から前記1対の駆動腕に印加される接続関係で前記複数の励振電極を接続している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の実施形態に係るセンサ素子の圧電体を示す斜視図である。
図2図2(a)は図1のセンサ素子の一部を拡大して示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)のIIb-IIb線における断面図である。
図3図3(a)、図3(b)、図3(c)および図3(d)は図1のセンサ素子の作用を説明するための模式図である。
図4図4(a)は第2実施形態に係るセンサ素子の一部を拡大して示す斜視図であり、図4(b)は図4(a)のIVb-IVb線における断面図である。
図5図5(a)および図5(b)は図4(a)のセンサ素子の作用を説明するための模式図である。
図6】第3または第4実施形態に係るセンサ素子の構成を示す平面図である。
図7図7(a)および図7(b)は図6のセンサ素子の作用を説明するための模式図である。
図8図8(a)、図8(b)、図8(c)および図8(d)は図6のセンサ素子の作用を説明するための模式図である。
図9】第5実施形態に係るセンサ素子の構成を示す平面図である
図10図9のX-X線における断面図である。
図11図11(a)および図11(b)は図9のセンサ素子の作用を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本開示に係る実施形態について説明する。以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがあり、また、寸法比率等は現実のものと必ずしも一致しない。また、複数の図面相互の寸法比率も必ずしも一致しない。
【0008】
また、各図には、説明の便宜のために、直交座標系xyzを付している。直交座標系xyzは、センサ素子(圧電体)の形状に基づいて定義されている。すなわち、x軸、y軸およびz軸は、結晶の電気軸、機械軸および光軸を示すとは限らない。センサ素子は、いずれの方向が上方または下方として使用されてもよいものであるが、以下では、便宜上、z軸方向の正側を上方として、上面または下面等の用語を用いることがある。また、単に平面視という場合、特に断りがない限り、z軸方向に見ることをいうものとする。
【0009】
同一または類似する構成については、「駆動腕7A」、「駆動腕7B」のように、互いに異なるアルファベットの付加符号を付すことがあり、また、この場合において、単に「駆動腕7」といい、これらを区別しないことがある。
【0010】
第2実施形態以降において、既に説明された実施形態の構成と共通または類似する構成について、既に説明された実施形態の構成に付した符号を用い、また、図示および/または説明を省略することがある。既に説明された実施形態の構成と対応(類似)する構成については、既に説明された実施形態の構成と異なる符号を付した場合においても、特に断りがない点は、既に説明された実施形態の構成と同様である。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るセンサ素子1の構成を示す斜視図である。ただし、この図では、センサ素子1の表面に設けられる導電層の図示は基本的に省略されている。
【0012】
センサ素子1は、例えば、x軸回りの角速度を検出する圧電振動式の角速度センサ51(符号は図2(b))を構成するものである。センサ素子1は、圧電体3を有している。圧電体3に電圧が印加されて圧電体3が振動している状態で、圧電体3が回転されると、コリオリの力による振動が圧電体3に生じる。このコリオリの力による振動によって生じる電気信号(例えば電圧または電荷)を検出することによって角速度が検出される。具体的には、以下のとおりである。
【0013】
(圧電体の形状)
圧電体3は、例えば、その全体が一体的に形成されている。圧電体3は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。また、圧電体3の材料は適宜に選択されてよく、例えば、水晶(SiO)、LiTaO、LiNbO、PZTまたはシリコンである。
【0014】
圧電体3において、電気軸乃至は分極軸(以下、両者を代表して分極軸のみに言及することがある。)は、x軸に一致するように設定されている。分極軸は、所定の範囲(例えば15°以内)でx軸に対して傾斜していてもよい。また、圧電体3が単結晶である場合において、機械軸および光軸は、適宜な方向とされてよいが、例えば、機械軸はy軸方向、光軸はz軸方向とされている。
【0015】
圧電体3は、例えば、全体として厚さ(z軸方向)が一定にされている。また、圧電体3は、例えば、概略、y軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称の形状に形成されている。
【0016】
圧電体3は、例えば、フレーム5と、フレーム5から延びている1対の駆動腕7Aおよび7Bならびに検出腕9と、フレーム5を支持している1対の実装腕11とを有している。
【0017】
1対の駆動腕7は、電圧(電界)が印加されることによって励振される部分である。検出腕9は、コリオリの力によって振動し、角速度に応じた電気信号を生成する部分である。フレーム5は、駆動腕7および検出腕9の支持、および駆動腕7から検出腕9への振動の伝達に寄与する部分である。実装腕11は、不図示の実装基体(例えばパッケージの一部または回路基板)へセンサ素子1を実装することに寄与する部分である。
【0018】
フレーム5は、例えば、全体として長尺であり、1対の実装腕11に架け渡されている。従って、フレーム5は、平面視において、両端が支持された梁のように撓み変形が可能となっている。
【0019】
フレーム5は、例えば、中央側の主部5aと、その両端に位置する1対の延長部5bとを有している。主部5aは、1対の駆動腕7および検出腕9が連結される部分となっている。1対の延長部5bは、1対の実装腕11の内側(1対の実装腕11の互いに対向する面)に接続される部分となっている。
【0020】
主部5aがx軸(1対の実装腕11の対向方向)に沿って延びているのに対して、1対の延長部5bは、少なくとも一部がx軸に交差する方向に延びている。従って、フレーム5は、その全体がx軸に沿って延びている場合に比較して、長くなっている。その結果、フレーム5は、平面視において撓み変形しやすくなっている。
【0021】
主部5aは、例えば、直線状に延びている。主部5aの横断面の形状は、例えば、全長に亘って概ね一定であり、また、概ね矩形である。主部5aの幅(y軸方向)および厚さ(z軸方向)は、いずれが他方よりも大きくてもよい。
【0022】
延長部5bは、例えば、主部5aからy軸に沿って直線状に(y軸に平行に)延び出ている延長本体部5baと、延長本体部5baと実装腕11とを接続している接続部5bbとを有している。
【0023】
延長本体部5baの横断面の形状は、例えば、全長に亘って概ね一定であり、また、概ね矩形である。延長本体部5baの幅(x軸方向)および厚さ(z軸方向)は、いずれが他方よりも大きくてもよい。延長本体部5baの幅は、主部5aの幅よりも大きくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、小さくてもよい。
【0024】
接続部5bbは、例えば、x軸に沿って直線状に(x軸に平行に)延びている。また、接続部5bbの横断面の形状は、全長に亘って概ね一定であり、また、概ね矩形である。接続部5bbの幅(y軸方向)および厚さ(z軸方向)は、いずれが他方よりも大きくてもよい。接続部5bbの幅は、主部5aまたは延長本体部5baの幅よりも大きくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、小さくてもよい。
【0025】
フレーム5の各種寸法は適宜に設定されてよい。フレーム5は、後述するように、平面視において撓み変形することが予定されている。従って、フレーム5の幅は、比較的小さくされてよい。例えば、主部5a、延長本体部5baおよび/または接続部5bbの幅は、実装腕11の幅(x軸方向)以下もしくは実装腕11の幅未満とされてよい。図示の例では、フレーム5のいずれの位置の幅も実装腕11の幅よりも小さい。また、例えば、主部5a、延長本体部5baおよび接続部5bbの幅は、フレーム5の厚さの2倍以下、または1倍以下とされてよい。また、例えば、フレーム5の長さおよび幅は、平面視における撓み変形の固有振動数が、駆動腕7の、電圧印加によって励振される方向における固有振動数、および/または検出腕9の、コリオリの力によって振動する方向における固有振動数に近づくように調整されてよい。
【0026】
駆動腕7は、フレーム5(主部5a)からy軸方向に延びており、その先端は自由端とされている。従って、駆動腕7は、片持ち梁のように撓み変形が可能となっている。1対の駆動腕7は、x軸方向に互いに離れた位置にて互いに並列(例えば平行)に延びている。1対の駆動腕7は、例えば、フレーム5の中央を通り、y軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称の位置に設けられている。
【0027】
後述するように(図3(a)および図3(b))、1対の駆動腕7は、x軸方向の励振によってフレーム5を平面視において撓み変形(振動)させることが意図されている。従って、例えば、1対の駆動腕7のフレーム5に対するx軸方向の位置は、1対の駆動腕7の振動によってフレーム5の撓み変形が大きくなるように適宜に設定されてよい。例えば、フレーム5のx軸方向における長さを3等分したときに、1対の駆動腕7は、両側の領域にそれぞれ位置している。
【0028】
駆動腕7の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、駆動腕7は、長尺の直方体状とされている。すなわち、断面形状(xz平面)は矩形である。特に図示しないが、駆動腕7は、先端側部分において幅(x軸方向)が広くなるハンマ形状とされていてもよい。1対の駆動腕7は、例えば、概略、互いに線対称の形状および大きさとされている。従って、両者の振動特性は互いに同等である。
【0029】
駆動腕7は、後述するように、x軸方向において励振される。従って、駆動腕7は、その幅(x軸方向)が大きくなると、励振方向(x軸方向)における固有振動数が高くなり、その長さ(別の観点では質量)が大きくなると、励振方向における固有振動数は低くなる。駆動腕7の各種の寸法は、例えば、駆動腕7の励振方向における固有振動数が励振させたい周波数に近くなるように設定される。
【0030】
検出腕9は、フレーム5(主部5a)からy軸方向に延びており、その先端は自由端とされている。従って、検出腕9は、片持ち梁のように撓み変形が可能となっている。また、検出腕9は、1対の駆動腕7の間において、1対の駆動腕7に対して並列(例えば平行)に延びている。検出腕9は、例えば、フレーム5のx軸方向中央に位置し、および/または1対の駆動腕7の間の中央に位置している。
【0031】
検出腕9の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、検出腕9は、長尺の直方体状とされている。すなわち、断面形状(xz平面)は矩形である。検出腕9は、先端側部分において幅(x軸方向)が広くなるハンマ形状とされていてもよい(後述する図6の検出腕309参照)。
【0032】
検出腕9は、後述するように、本実施形態においては、コリオリの力によってz軸方向に振動する。従って、検出腕9は、その厚さ(z軸方向)が大きくなると、振動方向(z軸方向)における固有振動数が高くなり、その長さ(別の観点では質量)が大きくなると、振動方向における固有振動数は低くなる。検出腕9の各種の寸法は、例えば、検出腕9の振動方向における固有振動数が、駆動腕7の励振方向における固有振動数に近くなるように設定される。検出腕9の長さは、例えば、駆動腕7の長さと同等である。ただし、両者は異なっていてもよい。
【0033】
1対の実装腕11は、例えば、y軸方向を長手方向とする形状に形成されている。より具体的には、例えば、実装腕11は、z軸方向を厚み方向とする、平面形状が矩形の板状である。実装腕11の幅(x軸方向)は、例えば、上述のようにフレーム5の幅よりも広く、また、駆動腕7の幅(x軸方向)および検出腕9の幅(x軸方向)よりも広い。従って、実装腕11は、他の部位(5、7および9)に比較して平面視において撓み変形(振動)し難くなっている。ただし、実装腕11は、一部または全部において、他の部位のいずれかに比較して幅が狭くされていてもよい。実装腕11の長さは、適宜に設定されてよい。
【0034】
1対の実装腕11の下面には、少なくとも4つのパッド13が設けられている。パッド13は、不図示の実装基体に設けられたパッドに対向し、その実装基体のパッドに対して半田乃至は導電性接着剤からなるバンプにより接着される。これにより、センサ素子1と実装基体との電気的な接続がなされ、また、センサ素子1(圧電体3)は、駆動腕7および検出腕9が振動可能な状態で支持される。4つのパッド13は、例えば、1対の実装腕11の両端に設けられている。
【0035】
(励振電極、検出電極および配線)
図2(a)は、センサ素子1の一部を拡大して示す斜視図である。また、図2(b)は、図2(a)のIIb-IIb線における断面図である。
【0036】
センサ素子1は、駆動腕7に電圧を印加するための励振電極15Aおよび15Bと、検出腕9に生じた信号を取り出すための検出電極17Aおよび17Bと、これらを接続する複数の配線19とを有している。これらは、圧電体3の表面に形成された導体層によって構成されている。導体層の材料は、例えば、Cu,Al等の金属である。
【0037】
励振電極15および検出電極17の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、後述するように、一の駆動腕7の励振電極15Aと、他の駆動腕7の励振電極15Aとは同電位とは限らない。励振電極15Bについても同様である。検出腕9が複数本設けられる態様(後述する実施形態)において、検出電極17Aおよび17Bについても同様である。
【0038】
励振電極15Aは、各駆動腕7において、上面および下面(z軸方向の両側に面する1対の面)それぞれに設けられている。また、励振電極15Bは、各駆動腕7において、1対の側面(x軸方向の両側に面する1対の面)それぞれに設けられている。
【0039】
後述する実施形態においては、フレーム5からy軸方向の負側に延びる駆動腕7が設けられることがある。そのような駆動腕7においても、励振電極15の付加符号Aは、上面および下面に対応し、励振電極15の付加符号Bは、側面に対応するものとする。
【0040】
各駆動腕7の上下左右の各面において、励振電極15は、例えば、各面の大部分を覆うように形成されている。ただし、励振電極15Aおよび15Bは、互いに短絡しないように、少なくとも一方(本実施形態では励振電極15A)が各面よりも幅方向において小さく形成されている。また、駆動腕7の根元側および先端側の一部も、励振電極15の非配置位置とされてよい。
【0041】
各駆動腕7において、2つの励振電極15Aは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの励振電極15Aは、配線19により互いに接続されている。また、各駆動腕7において、2つの励振電極15Bは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの励振電極15Bは、配線19により互いに接続されている。
【0042】
このような励振電極15の配置および接続関係において、励振電極15Aと励振電極15Bとの間に電圧を印加すると、例えば、駆動腕7においては、上面から1対の側面(x軸方向の両側)に向かう電界および下面から1対の側面に向かう電界が生じる。一方、分極軸は、x軸方向に一致している。従って、電界のx軸方向の成分に着目すると、駆動腕7のうちx軸方向の一方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは一致し、他方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは逆になる。
【0043】
その結果、駆動腕7のうちx軸方向の一方側部分はy軸方向において収縮し、他方側部分はy軸方向において伸長する。そして、駆動腕7は、バイメタルのようにx軸方向の一方側へ湾曲する。励振電極15Aおよび15Bに印加される電圧が逆にされると、駆動腕7は逆方向に湾曲する。このような原理により、交流電圧が励振電極15Aおよび15Bに印加されると、駆動腕7はx軸方向において振動する。
【0044】
特に図示しないが、駆動腕7の上面および/または下面に、駆動腕7の長手方向に沿って延びる1以上の凹溝(当該凹溝は複数の凹部が駆動腕7の長手方向に配列されて構成されてもよい)が設けられ、励振電極15Aは、この凹溝内に亘って設けられてもよい。この場合、励振電極15Aと励振電極15Bとが凹溝の壁部を挟んでx軸方向において対向することになり、励振の効率が向上する。
【0045】
1対の駆動腕7においては、駆動腕7Aの励振電極15Aと駆動腕7Bの励振電極15Bとが同電位とされ、駆動腕7Aの励振電極15Bと駆動腕7Bの励振電極15Aとが同電位とされる。同電位とされるべき励振電極15同士は、例えば、配線19によって接続されている。
【0046】
このような接続関係において励振電極15Aと励振電極15Bとの間に交流電圧を印加すると、1対の駆動腕7は、互いに逆の位相の電圧が印加されることになり、x軸方向において互いに逆向きに撓み変形するように振動する。
【0047】
検出電極17Aは、検出腕9において、x軸方向の負側に面する面のうちのz軸方向の正側(例えば当該面の中央よりも正側)の領域、およびx軸方向の正側に面する面のうちのz軸方向の負側(例えば当該面の中央よりも負側)の領域にそれぞれ設けられている。検出電極17Bは、検出腕9において、x軸方向の負側に面する面のうちのz軸方向の負側(例えば当該面の中央よりも負側)の領域、およびx軸方向の正側に面する面のうちのz軸方向の正側(例えば当該面の中央よりも正側)の領域にそれぞれ設けられている。
【0048】
後述する実施形態においては、フレーム5からy軸方向の負側に延びる検出腕9が設けられることがある。そのような検出腕9においても、検出電極17の付加符号Aは、-xの側面の+zの領域および+xの側面の-zの領域に対応し、検出電極17の付加符号Bは、-xの側面の-zの領域および+xの側面の+zの領域に対応するものとする。
【0049】
検出腕9の各側面において、検出電極17Aおよび17Bは、互いに短絡しないように適宜な間隔を空けて、検出腕9に沿って延びている。2つの検出電極17A同士は、例えば、配線19により接続されている。また、2つの検出電極17B同士は、例えば、配線19により接続されている。
【0050】
このような検出電極17の配置および接続関係において、検出腕9がz軸方向に撓み変形すると、例えば、z軸方向に平行な電界が生じる。すなわち、検出腕9の各側面においては、検出電極17Aと検出電極17Bとの間に電圧が生じる。電界の向きは、分極軸の向きと、湾曲の向き(z軸方向の正側または負側)とで決定され、x軸方向の正側部分と負側部分とで互いに逆である。この電圧(電界)が検出電極17Aおよび検出電極17Bに出力される。検出腕9がz軸方向に振動すると、電圧は交流電圧として検出される。電界は、上記のようにz軸方向に平行な電界が支配的であってもよいし、x軸方向に平行で、z軸方向の正側部分と負側部分とで互いに逆向きな電界の割合が大きくてもよい。いずれにせよ、検出腕9のz軸方向への撓み変形に応じた電圧が検出電極17Aと検出電極17Bとの間に生じる。
【0051】
複数の配線19は、上述したように励振電極15および検出電極17を接続している。また、複数の配線19は、電位の観点から2組に分けられた励振電極15と、電位の観点から2組に分けられた検出電極17との合計4組の電極と、4つのパッド13とを接続している。複数の配線19は、圧電体3の種々の部分の上面、下面および/または側面において適宜に配されることによって、その全体が圧電体3の表面に設けられる態様で、互いに短絡することなく、上述した接続を実現可能である。ただし、圧電体3上に位置する配線19の上に絶縁層を設け、その上に他の配線19を設けることによって、立体配線部が形成されても構わない。
【0052】
図2(b)に示すように、角速度センサ51は、励振電極15に電圧を印加する駆動回路103と、検出電極17からの電気信号を検出する検出回路105とを有している。
【0053】
駆動回路103は、例えば、発振回路および増幅器を含んで構成されており、所定の周波数の交流電圧を励振電極15Aと励振電極15Bとの間に印加する。周波数は、角速度センサ51内にて予め定められていてもよいし、外部の機器等から指定されてもよい。
【0054】
検出回路105は、例えば、増幅器および検波回路を含んで構成されており、検出電極17Aと検出電極17Bとの電位差を検出し、その検出結果に応じた電気信号を外部の機器等に出力する。より具体的には、例えば、上記の電位差は、交流電圧として検出され、検出回路105は、検出した交流電圧の振幅に応じた信号を出力する。この振幅に基づいて角速度が特定される。また、検出回路105は、駆動回路103の印加電圧と検出した電気信号との位相差に応じた信号を出力する。この位相差に基づいて回転の向きが特定される。
【0055】
駆動回路103および検出回路105は、全体として制御回路107を構成している。制御回路107は、例えば、チップIC(Integrated Circuit)によって構成されており、センサ素子1が実装される回路基板または適宜な形状の実装基体に実装されている。
【0056】
(角速度センサの動作)
図3(a)および図3(b)は、圧電体3の励振を説明するための模式的な平面図である。両図は、励振電極15に印加されている交流電圧の位相が互いに180°ずれている。これらの模式図においては、フレーム5は直線状に描かれている。
【0057】
上述のように、駆動腕7Aおよび7Bは、励振電極15に交流電圧が印加されることによってx軸方向において互いに逆向きに変形するように互いに逆の位相で励振される。
【0058】
このとき、図3(a)に示すように、1対の駆動腕7が互いにx軸方向の外側(1対の駆動腕7が互いに離れる側)に撓むと、その曲げモーメントがフレーム5に伝わり、フレーム5はy軸方向の正側へ撓む。その結果、検出腕9がy軸方向の正側へ変位する。
【0059】
逆に、図3(b)に示すように、1対の駆動腕7が互いにx軸方向の内側(1対の駆動腕7が互いに近づく側)に撓むと、その曲げモーメントがフレーム5に伝わり、フレーム5はy軸方向の負側へ変位する。その結果、検出腕9がy軸方向の負側へ変位する。
【0060】
従って、1対の駆動腕7が励振されることによって、検出腕9がy軸方向において振動することになる。
【0061】
図3(c)および図3(d)は、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な斜視図である。図3(c)および図3(d)は、図3(a)および図3(b)の状態に対応している。この図では、駆動腕7およびフレーム5の変形については図示が省略されている。
【0062】
図3(a)および図3(b)を参照して説明したように圧電体3が振動している状態で、センサ素子1がx軸回りに回転されると、検出腕9は、y軸方向に振動(変位)していることから、コリオリの力によって回転軸(x軸)と振動方向(y軸)とに直交する方向(z軸方向)において振動(変形)する。この変形によって生じる信号(例えば電圧)は、上述のように検出電極17によって取り出される。コリオリの力(ひいては検出される信号の電圧)は、角速度が大きいほど大きくなる。これにより、角速度が検出される。
【0063】
以上のとおり、角速度センサ51は、圧電体3、駆動回路103および検出回路105を有している。圧電体3は、1対の実装腕11、フレーム5、1対の駆動腕7および検出腕9を有している。1対の実装腕11は、直交座標系xyzのx軸方向において互いに離れている。フレーム5は、x軸に沿って延びている主部5aと、z軸方向に見て、主部5aの両端と1対の実装腕11の内側とを接続しており、少なくとも一部がx軸に交差する方向に延びている1対の延長部5bとを含んでいる。1対の駆動腕7は、x軸方向に互いに離れた位置にて主部5aからy軸方向に互いに並列に延びている。検出腕9は、x軸方向にて1対の駆動腕7の間となる位置において主部5aからy軸方向に延びている。駆動回路103は、1対の駆動腕7がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように1対の駆動腕7に互いに逆の位相の電圧を印加する。検出回路105は、検出腕9のz軸方向またはx軸方向(本実施形態ではz軸方向)における曲げ変形により生じる信号を検出する。
【0064】
別の観点では、センサ素子1は、圧電体3、複数の励振電極15、複数の検出電極17および複数の配線19を有している。圧電体3は、1対の実装腕11、フレーム5、1対の駆動腕7および検出腕9を有している。1対の実装腕11は、直交座標系xyzのx軸方向において互いに離れている。フレーム5は、x軸に沿って延びている主部5aと、z軸方向に見て、主部5aの両端と1対の実装腕11の内側とを接続しており、少なくとも一部がx軸に交差する方向に延びている1対の延長部5bとを含んでいる。1対の駆動腕7は、x軸方向において互いに離れた位置にて主部5aからy軸方向に互いに並列に延びている。検出腕9は、x軸方向において1対の駆動腕7の間となる位置にて主部5aからy軸方向に延びている。複数の励振電極15は、1対の駆動腕7をx軸方向に励振する電圧を印加可能な配置で設けられている。複数の検出電極17は、検出腕9のz軸方向またはx軸方向(本実施形態ではz軸方向)の振動によって生じる信号を検出可能な配置で設けられている。複数の配線19は、1対の駆動腕7がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように複数の励振電極15から1対の駆動腕7に互いに逆の位相が印加されるように複数の励振電極15を接続している。
【0065】
従って、1対の駆動腕7の励振によってフレーム5を湾曲(振動)させ、検出腕9を変位(振動)させ、この変位している検出腕9に作用するコリオリの力によって角速度を検出するという新たな振動態様による検出が可能になる。フレーム5は、x軸に交差する方向に延びる部分(延長部5b)を含んでいることから、例えば、フレーム5が1対の実装腕11間に亘って直線状に延びる態様(このような態様も新規である)に比較して、湾曲しやすい。その結果、例えば、検出感度の向上と小型化とを両立させることが容易になる。
【0066】
比較例としては、例えば、励振されている駆動腕にコリオリの力を作用させて振動させ、このコリオリの力による振動を検出腕に伝達するものが挙げられる。本実施形態では、そのような比較例とは異なり、検出腕に直接的にコリオリの力が作用する。その結果、例えば、検出感度が向上する。
【0067】
また、比較例として、例えば、駆動腕の振動方向(x軸方向)と同一方向において検出腕を曲げ変形(振動)させておき、この振動している検出腕にコリオリの力を作用させる態様が挙げられる。本実施形態は、そのような態様とは検出腕の振動方向が異なり、前述の比較例では角速度を検出できなかった回転軸(x軸)について角速度を検出することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、検出腕9は、1対の駆動腕7の間の中央に位置している。
【0069】
フレーム5の撓み変形は、1対の駆動腕7の間の中央において大きくなりやすい。そのような位置に検出腕9が位置していることによって、検出腕9の振幅を大きくして検出感度を大きくすることができる。特に、1対の駆動腕7とフレーム5の両端(支持される位置)とが同一の対称軸に対して線対称の配置である場合においては、検出腕9の振幅を最も大きくすることができる。上記において比較例として、駆動腕の振動方向において検出腕を曲げ変形(振動)させておき、その振動している検出腕にコリオリの力を作用させる技術について言及した。この比較例では、その原理上、例えば、1対の駆動腕の間の中央に対して線対称に1対の検出腕が配置されたり、音叉のように1本の駆動腕と1本の検出腕とが配置されたりしている。
【0070】
また、本実施形態では、圧電体3は、フレーム5から延び、電圧が印加されて振動する腕として、1対の駆動腕7のみを有している(後述するように1対の駆動腕7と並列に延びる他の駆動腕7を設けることも可能である。)。すなわち、フレーム5から駆動腕7とは反対側(図示の例ではy軸方向の負側)に延びる他の駆動腕は設けられていない。
【0071】
従って、例えば、1対の駆動腕7によってフレーム5に確実に撓み変形を生じさせることができる。比較例において、1対の駆動腕の中央に検出腕を位置させる場合がある(特許文献1参照)。この場合、比較例では、例えば、1対の駆動腕とは反対側へ延びる他の1対の駆動腕が設けられ、1対の駆動腕と同一の位相で他の1対の駆動腕が励振されている。すなわち、フレーム5に相当する基部において本実施形態のような湾曲が生じないようにされている。
【0072】
<第2実施形態>
(角速度センサの構成)
図4(a)は、第2実施形態に係るセンサ素子201の一部を拡大して示す、図2(a)と同様の斜視図である。図4(b)は、第2実施形態に係る角速度センサ251を示す、図2(b)と同様の図であり、図4(a)のIVb-IVb線に対応する断面図を含んでいる。
【0073】
第2実施形態に係る角速度センサ251は、第1実施形態に係る角速度センサ51と同様に、1対の駆動腕7をx軸方向に振動させることによって、フレーム5を湾曲(振動)させ、ひいては、検出腕9をy軸方向に変位(振動)させる。そして、検出腕9に直接的にコリオリの力を作用させる。ただし、角速度センサ51がx軸回りの回転を検出するものであったのに対して、角速度センサ251は、z軸回りの回転を検出するものとされている。具体的には、以下のとおりである。
【0074】
センサ素子201は、圧電体3、複数の励振電極15、複数の検出電極217、複数のパッド13(ここでは不図示)および複数の配線19を有している。これらの符号から理解されるように、複数の検出電極217(これに関わる配線19)を除いては、センサ素子201の基本的な構成は、概ね、第1実施形態のセンサ素子1と同様とされてよい。図1は、センサ素子201を示す斜視図として捉えられてよい。
【0075】
ただし、本実施形態においては、検出腕9は、第1実施形態とは異なり、コリオリの力によってx軸方向に振動することが意図されている。このような相違に基づいて、各種の寸法は、第1実施形態と異なっていてよい。
【0076】
例えば、検出腕9は、その幅(x軸方向)が大きくなると、振動方向(x軸方向)における固有振動数が高くなり、その長さ(別の観点では質量)が大きくなると、振動方向における固有振動数は低くなる。検出腕9の各種の寸法は、例えば、検出腕9の振動方向における固有振動数が、駆動腕7の励振方向における固有振動数に近くなるように設定される。例えば、検出腕9の長さおよび幅は、例えば、駆動腕7の長さおよび幅と同等である。ただし、両者の寸法は異なっていてもよい。
【0077】
検出電極217Aおよび217Bは、検出腕9のx軸方向の曲げ変形によって生じる信号を取り出すものであるので、例えば、駆動腕7をx軸方向に励振させるための励振電極15Aおよび15Bと同様の構成とされる。従って、第1実施形態における励振電極15についての説明は、励振電極15を検出電極217に読み替えて、検出電極217についての説明としてよい。1対の検出電極217A同士の接続、および1対の検出電極217B同士の接続についても同様である。
【0078】
第1実施形態の説明において、駆動腕7の上面および/または下面に、励振電極15Aが配置される凹溝が設けられてもよいことについて言及した。同様に、第2実施形態の検出腕9は、その上面および/または下面に、検出電極217Aが配置される凹溝が設けられてよい。
【0079】
(角速度センサの動作)
第2実施形態における圧電体3の励振は、第1実施形態におけるものと同様である。図3(a)および図3(b)は、第2実施形態における圧電体3の励振状態を示している図として捉えられてよい。従って、1対の駆動腕7はx軸方向において互いに近接および離反するように振動し、検出腕9はy軸方向において変位(振動)する。
【0080】
図5(a)および図5(b)は、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な平面図である。図5(a)および図5(b)は、図3(a)および図3(b)の状態に対応している。
【0081】
図3(a)および図3(b)を参照して説明したように圧電体3が振動している状態で、センサ素子1がz軸回りに回転されると、検出腕9は、y軸方向に振動(変位)していることから、コリオリの力によって回転軸(z軸)と振動方向(y軸)とに直交する方向(x軸方向)において振動(変形)する。この変形によって生じる信号(例えば電圧)は、検出電極217によって取り出されて検出回路105に入力される。コリオリの力(ひいては検出される信号の電圧)は、角速度が大きいほど大きくなる。これにより、角速度が検出される。
【0082】
以上のとおり、本実施形態においても、フレーム5は、x軸方向に互いに離れた1対の実装腕11に架け渡され、駆動腕7は、x軸方向に互いに離れた位置にてフレーム5の主部5aからy軸方向に互いに並列に延び、検出腕9は、x軸方向において1対の駆動腕7の間となる位置にて主部5aからy軸方向に延び、駆動回路103は、1対の駆動腕7がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように1対の駆動腕7に互いに逆の位相の電圧を印加し(そのような電圧印加が可能に複数の励振電極15が配置され)、検出回路105は、検出腕9の適宜な方向(本実施形態ではx軸方向)における曲げ変形により生じる信号を検出する(そのような検出が可能に複数の検出電極217が配置される)。
【0083】
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、新たな振動態様による検出が可能になる。また、例えば、検出腕に直接にコリオリの力が作用し、検出感度の向上が期待される。また、例えば、駆動腕の振動方向(x軸方向)と同一方向において検出腕を曲げ変形(振動)させておき、この振動している検出腕にコリオリの力を作用させる比較例では角速度を検出できなかった軸(z軸)について角速度を検出することが可能となる。
【0084】
<第3および第4実施形態>
第1および第2実施形態から理解されるように、本開示においては、x軸回りの回転を検出する角速度センサと、z軸回りの回転を検出する角速度センサとを比較すると、基本的には、その構成においては、検出電極17および217(およびこれに係る配線19)の構成が異なるだけであり、その作用においては、コリオリの力が作用する方向が異なるだけである。そこで、x軸回りの回転を検出する第3実施形態に係る角速度センサと、z軸回りの回転を検出する第4実施形態に係る角速度センサとを共に説明することとする。当該説明においては、両者の符号を同一図面に付すことがある。
【0085】
(角速度センサの構成)
図6は、第3実施形態に係るセンサ素子301または第4実施形態に係るセンサ素子401の構成を示す平面図である。ただし、この図では、センサ素子の表面に設けられる導電層の図示は基本的に省略されている。
【0086】
センサ素子301または401の圧電体303は、まず、第1および第2実施形態の圧電体3を2つ組み合わせたような形状を含んでいる。すなわち、圧電体303は、2つのユニット304Aおよび304Bを有しており、各ユニット304は、フレーム305(305Aまたは305B)と、フレーム305からy軸方向に互いに並列に延びる少なくとも1対(本実施形態では2対)の駆動腕7(7C~7J)および検出腕309(309Aまたは309B)とを有している。
【0087】
2つのユニット304は、駆動腕7および検出腕309が延びる方向とは反対側同士を対向させるように配置されている。2つのユニット304間の距離は、例えば、フレーム305Aおよび305Bが互いに接触しないように適宜に設定されてよい。2つのユニット304同士は、例えば、概略、同一の形状および大きさ(x軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称の形状および大きさ)である。
【0088】
また、第1実施形態の圧電体3は、フレーム5を支持する部分として1対の実装腕11を有していたのに対して、圧電体303は、フレーム305を支持する部分として枠状(環状)の実装枠311を有している。このような実装枠311は、例えば、1対の実装腕11に比較して、振動が生じにくい。その結果、例えば、実装枠311と不図示の回路基板との間の接合のばらつきが検出精度に及ぼす影響が低減される。
【0089】
実装枠311の平面視における形状は、例えば、概略、x軸またはy軸に平行な4辺を有する矩形状である。実装枠311のうち、y軸に平行な部分は、第1実施形態の1対の実装腕11と同様に、フレーム305の両端が接続されてフレーム305を支持する1対の支持部311aとなっている。2つのユニット304は、共通の実装枠311(共通の1対の支持部311a)に支持されている。4つのパッド13は、実装枠311の適宜な位置に配置されてよい。図示の例では、4つのパッド13は、実装枠311の4隅に配置されている。
【0090】
実装枠311の横断面(各辺に直交する断面)の形状および寸法は、その全長に亘って一定であってもよいし、適宜に変化してもよい。図示の例では、横断面は、実装枠311の全長に亘って、矩形かつ一定の厚さ(z軸方向)とされている。ただし、部位によって幅が異なっている。具体的には、x軸に平行な辺(短辺)に対してy軸に平行な辺(長辺)は幅が狭くなっている。また、長辺内において、1対のフレーム305の接続部305bb間に位置する部分は、その外側に比較して幅が狭くなっている。短辺が相対的に太くされることにより、例えば、実装枠311の振動が抑制される。長辺の中央側が細くされることにより、例えば、駆動腕7から外部へ伝わる振動が吸収され、および/または外部からの衝撃が吸収される。
【0091】
第1実施形態の圧電体3は、1本のフレーム5に対して1対の駆動腕7を有していたところ、圧電体303のユニット304は、1本のフレーム305に対して2対の駆動腕7を有している。後述するように(図6(a)および図6(b))、互いに隣接する2本の駆動腕7同士(7Cおよび7Dの2本、7Eおよび7Fの2本、7Gおよび7Hの2本、ならびに7Iおよび7Jの2本)は、互いにx軸方向の同一側へ共に曲がるように同一の位相で電圧が印加される。従って、互いに隣接する2本の駆動腕7は、第1実施形態の1本の駆動腕7に相当すると捉えられてよい。このように第1実施形態の駆動腕7を2本に分割することによって、例えば、駆動腕7の長さを短くしても駆動腕7全体としての質量を確保することができ、ひいては、小型化と検出感度の向上とを両立できる。駆動腕7は、1本のフレームに対して2対よりも多く設けられてもよい。
【0092】
互いに隣接する2本の駆動腕7の間の中央の位置(または各駆動腕7の位置)は、例えば、第1実施形態において説明した駆動腕7の位置と同様とされてよい。互いに隣接する2本の駆動腕7の距離は、適宜に設定されてよい。互いに隣接する2本の駆動腕7の形状および寸法は、例えば、概略、互いに同一である。ただし、互いに異なっていてもよい。圧電体303は、例えば、概略、不図示の対称軸(検出腕309)に対して線対称の形状であり、複数の駆動腕7の形状および配置も概ね線対称である。
【0093】
第1実施形態の検出腕9は、横断面(xz断面)の形状が全長に亘って概ね一定であったのに対して、本実施形態の検出腕309は、先端において幅が広くなる、いわゆるハンマ形状とされている。ハンマ形状によって、例えば、検出腕309を長くすることなく検出腕309の質量を確保して、検出感度を向上させることができる。
【0094】
フレーム305の形状および寸法は、第1実施形態のフレーム5と同様でよい。ただし、図6では、図1とは若干異なる形状および寸法が例示されている。具体的には、延長本体部305baは、主部305aよりも幅が狭くなっている。接続部305bbは、x軸に対して斜めに、かつ若干湾曲するように、また、実装枠311側ほど幅が広くなるように延びている。主部305aの幅は、実装枠311の最も幅が狭い部分(長辺の中央側部分)と同等となっている。延長部305bの少なくとも一部が主部305aよりも細くされることによって、例えば、平面視において主部305aの両端が回転しやすくなる。その結果、例えば、検出腕309のz軸方向における変位を大きくして検出精度を向上させることができる。
【0095】
x軸回りの回転を検出するセンサ素子301(第3実施形態)は、2つのセンサ素子1(第1実施形態)を組み合わせたものに相当するから、センサ素子301の各ユニット304における励振電極15および検出電極17の構成および接続関係は、センサ素子1のものと同様でよい。同様に、z軸回りの回転を検出するセンサ素子401(第4実施形態)は、2つのセンサ素子201(第2実施形態)を組み合わせたものに相当するから、センサ素子401の各ユニット304における励振電極15および検出電極217の構成および接続関係は、センサ素子201のものと同様でよい。
【0096】
互いに隣接する2本の駆動腕7は、第1実施形態の1本の駆動腕7に相当し、互いに同一位相で電圧が印加されるものであるから、この2本の駆動腕7間においては、励振電極15A同士が同電位とされ(例えば励振電極15A同士が配線19によって接続され)、励振電極15B同士が同電位とされる(例えば励振電極15B同士が配線19によって接続される)。
【0097】
ユニット304間における、励振電極15および検出電極17(または217)の接続関係については、以下の動作の説明において説明する。
【0098】
(角速度センサの動作)
図7(a)および図7(b)は、第3または第4実施形態における圧電体303の励振状態を示す模式的な平面図であり、第1実施形態の図3(a)および図3(b)に対応している。これらの模式図では、実装枠311は、支持部311aの一部のみが示されている。また、フレーム305は、直線状に描かれている。
【0099】
各ユニット304における励振は、第1実施形態における圧電体3の励振と基本的に同様である。ただし、各ユニット304においては、互いに隣接する2本の駆動腕7は、互いに同一側に共に曲がるように同一の位相で電圧が印加され、圧電体3の1本の駆動腕7に相当する。
【0100】
2つのユニット304同士においては、例えば、検出腕309に対してx軸方向の同一側(正側または負側)に位置する駆動腕7同士がx軸方向の同一側に曲がるように同一の位相で電圧が印加される。従って、フレーム305Aおよび305Bは、互いに逆方向へ撓む。また、検出腕309Aおよび309Bは、互いに逆方向へ変位する。
【0101】
上記のような電圧印加のために、例えば、検出腕309に対してx軸方向の同一側に位置する駆動腕7(7C、7D、7Gおよび7H、または7E、7F、7Iおよび7J)においては、励振電極15A同士が同一の電位とされ、励振電極15B同士が同一の電位とされる。同電位となるべき励振電極15同士は、例えば、複数の配線19によって互いに接続されている。そして、全ての励振電極15は、4つのパッド13のうち2つを介して駆動回路103に接続されている。
【0102】
図8(a)および図8(b)は、x軸回りの回転を検出する第3実施形態に係るセンサ素子301における、コリオリの力による検出腕309の振動を説明するための模式的な斜視図である。図8(a)および図8(b)は、図7(a)および図7(b)の状態に対応している。これらの図において、フレーム305および駆動腕7の変形の図示は省略されている。
【0103】
図7(a)および図7(b)を参照して説明したように圧電体303が振動している状態で、センサ素子301がx軸回りに回転されると、各ユニット304においては、第1実施形態と同様に、コリオリの力によって検出腕309がz軸方向に振動する。このとき、検出腕309Aおよび309Bは、y軸方向において互いに逆側へ変位する位相で振動しているから、x軸回りの回転方向に対して同一側にコリオリの力を受ける。別の観点では、検出腕309Aおよび309Bは、z軸方向において互いに逆側へ曲がるように振動する。
【0104】
このような検出腕309Aおよび309Bにおいて生じる信号を加算するために、例えば、検出腕309Aの検出電極17Aと検出腕309Bの検出電極17Bとが接続され、検出腕309Aの検出電極17Bと検出腕309Bの検出電極17Aとが接続される。当該接続は、例えば、複数の配線19によってなされる。そして、全ての検出電極17は、4つのパッド13のうち2つを介して検出回路105に接続されている。
【0105】
図8(c)および図8(d)は、z軸回りの回転を検出する第4実施形態に係るセンサ素子401における、コリオリの力による検出腕309の振動を説明するための模式的な平面図である。図8(c)および図8(d)は、図7(a)および図7(b)の状態に対応している。これらの図において、フレーム305および駆動腕7の変形の図示は省略されている。
【0106】
図7(a)および図7(b)を参照して説明したように圧電体303が振動している状態で、センサ素子401がz軸回りに回転されると、各ユニット304においては、第2実施形態と同様に、コリオリの力によって検出腕309がx軸方向に振動する。このとき、検出腕309Aおよび309Bは、y軸方向において互いに逆側に変位する位相で振動しているから、z軸回りの回転方向に対して同一側にコリオリの力を受ける。別の観点では、検出腕309Aおよび309Bは、x軸方向において互いに逆側へ曲がるように振動する。
【0107】
このような検出腕309Aおよび309Bにおいて生じる信号を加算するために、例えば、検出腕309Aの検出電極217Aと検出腕309Bの検出電極217Bとが接続され、検出腕309Aの検出電極217Bと検出腕309Bの検出電極217Aとが接続される。当該接続は、例えば、複数の配線19によってなされる。そして、全ての検出電極17は、4つのパッド13のうち2つを介して検出回路105に接続されている。
【0108】
以上のとおり、第3または第4実施形態の角速度センサまたはセンサ素子は、第1または第2実施形態の角速度センサまたはセンサ素子を含むものであり、第1または第2実施形態の角速度センサまたはセンサ素子と同様の効果が奏される。例えば、新たな振動態様による検出が可能になる。
【0109】
また、第3および第4実施形態では、圧電体303は、フレーム305、(少なくとも)1対の駆動腕7および検出腕309の組み合わせ(ユニット304)を有している。各ユニット304において、1対の駆動腕7、検出腕309および延長部305bは、主部305aから互いに同一側へ延び出ている(平行である必要はない。)。圧電体303は、フレーム305の1対の駆動腕7が延び出る側とは反対側を互いに対向させて2つのユニット304を有している。2つのフレーム305は、共通の1対の支持部311aに架け渡されている。
【0110】
従って、例えば、2つのユニット304において検出された信号を加算することによって検出感度を向上させることができる。また、例えば、第1実施形態では、1対の実装腕11の間かつy軸方向の負側の領域がデッドスペースになっているが、このようなスペースの有効利用が図られる。その結果、感度向上と小型化との両立が図られる。
【0111】
また、2つのフレーム305の延長部305bが互いに逆側へ主部305aから延び出るから、例えば、z軸方向の片面または両面からのウェットエッチングによって圧電体303の平面形状を形成する際に、エッチング時間を短縮することが可能である。例えば、2つのフレームが1対の支持部311a間に亘ってx軸に沿って延びている場合(このような場合も既述のように新規である。)、圧電体303をz軸方向に貫通するスリットが2つのフレーム間に形成されるまでに長いエッチング時間を要することがある。しかし、2つのフレーム305から互いに逆側に延長部305bが延びていることにより、2つの主部305a間のスリットs1(図6)は、両端においてy軸方向に延びるスリットs2(図6)に接続される。その結果、2つの主部305a間は、z軸方向だけでなく、スリットs2側からもエッチングされることになる。その結果、スリットs1が形成される時間が短縮される。別の観点では、同一のエッチング時間でスリットs1の幅を狭くすることができ、圧電体303を小型化することができる。
【0112】
上記のようなエッチング時間の短縮効果は、圧電体303が単結晶からなり、当該単結晶がウェットエッチングに対して異方性を有し、かつz軸方向からのエッチングに関して、スリットs1の幅方向(y軸方向)に面する結晶面によって生じるエッチングストップが、スリットs2の幅方向(x軸方向)に面する結晶面によって生じるエッチングストップよりも生じやすい場合に顕著となる。一例として、水晶においては、電気軸、機械軸および光軸がx軸、y軸およびz軸に概ね平行である場合において、上記の効果が顕著となる。
【0113】
ウェットエッチングによって単結晶からなる圧電体303を形成した場合、フレーム305の側面(xy平面に交差する面)は、結晶面(エッチングストップを生じた結晶面とは限らない。)によって構成されている。従って、圧電体303が単結晶からなり、2つのフレーム305のxy平面に交差する面が結晶面によって構成されている場合、上記の効果が得られたといえる。
【0114】
<第5実施形態>
(センサ素子)
図9は、第5実施形態に係るセンサ素子501の構成を示す平面図である。ただし、この図では、センサ素子501の表面に設けられる導電層の図示は基本的に省略されている。
【0115】
センサ素子501は、第1実施形態のセンサ素子1と同様に、x軸回りの角速度を検出するセンサ素子として構成されている。センサ素子501(圧電体503)は、主として、検出腕の形状が他の実施形態と相違する。
【0116】
検出腕509(509Aおよび509B)の形状以外は、他の実施形態と同様でよい。図示の例では、センサ素子501は、第3実施形態と同様に、2つのユニット504Aおよび504Bを有する構成とされている。ただし、ユニット504を支持する部分は、第1実施形態と同様に、1対の実装腕11とされている。また、各ユニット504のフレーム5Aおよび5Bの具体的な形状および寸法は、第3実施形態よりも第1実施形態に近いものとされている。複数の励振電極15の配置およびその接続関係は、第3実施形態と同様でよい。
【0117】
検出腕509の全体としての位置および形状は、他の実施形態と同様でよい。すなわち、検出腕509は、少なくとも1対の駆動腕7の間に位置しており、フレーム5からy軸方向に延びている。
【0118】
ただし、検出腕509は、フレーム5から延びている第1腕521(521Aおよび521B)と、第1腕521の先端側かつ側方からフレーム5側へ延びている第2腕523とを有している。第2腕523の先端は、フレーム5に連結されておらず、自由端となっている。1対の第1腕521は、圧電体503の不図示の中心線に対して線対称の形状であり、その間に第2腕523が位置している。第1腕521および第2腕523の各種の寸法および両者の間の大小関係等は適宜に設定されてよい。
【0119】
特に図示しないが、1本の第1腕521が圧電体503の中心線上においてフレーム5から延び、そのx軸方向両側において1対の第2腕523が第1腕521の先端からフレーム5へ延びていてもよい。
【0120】
また、検出腕509は、z軸方向に貫通し、検出腕509に沿って延びる1以上の貫通溝(符号省略)を有している。別の観点では、検出腕509は、互いに並列に延び、根元および先端において互いに連結されている複数の分割腕524を有している。本実施形態のように検出腕509が第1腕521および第2腕523を有している態様においては、第1腕521および第2腕523のいずれに貫通溝が設けられてもよく、図示の例では、双方に設けられている。
【0121】
分割腕524の本数および寸法は、適宜に設定されてよい。図示の例では、各第1腕521は、2本の分割腕524によって構成され、第2腕523は、3本の分割腕524によって構成されている。
【0122】
(検出電極)
図10は、図9のX-X線における断面図である。
【0123】
検出腕509においては、例えば、第1腕521および第2腕523それぞれに検出電極17が設けられている。また、これら各腕(521、523)においては、複数の分割腕524それぞれに検出電極17が設けられている。
【0124】
各分割腕524における検出電極17の配置は、第1実施形態と同様である。すなわち、最も紙面左側の分割腕524に符号を付して示すように、検出電極17Aは、各分割腕524において、-xの側面の+zの領域および+xの側面の-zの領域に設けられている。検出電極17Bは、各分割腕524において、-xの側面の-zの領域および+xの側面の+zの領域に設けられている。
【0125】
各分割腕524においては、検出電極17A同士が接続され、検出電極17B同士が接続されている。従って、第1実施形態の検出腕9と同様に、分割腕524がz軸方向に撓むと、検出電極17Aおよび17Bによって分割腕524の撓み量に応じた信号が取り出される。
【0126】
第1腕521および第2腕523それぞれにおいては、複数の分割腕524間において、検出電極17A同士が接続され、検出電極17B同士が接続されている。従って、各腕(521および523)がz方向に撓むと、各腕においては、複数の分割腕524の検出信号が加算される。
【0127】
各検出腕509において、第1腕521と第2腕523との間においては、検出電極17Aと検出電極17Bとが接続されている。従って、第1腕521および第2腕523は、z軸方向において互いに逆側に曲がるように撓み変形したときに、互いの検出信号が加算される。
【0128】
2本の第1腕521間においては、検出電極17A同士が接続され、検出電極17B同士が接続されている。本実施形態とは異なり、1本の第1腕521の両側に2本の第2腕523を設けた場合においては、2本の第2腕523間においては、検出電極17A同士が接続され、検出電極17B同士が接続される。
【0129】
検出腕509Aと検出腕509Bとの間においては、第3実施形態と同様に、検出電極17Aと検出電極17Bとが接続される。従って、検出腕509Aおよび509Bがz軸方向の互いに逆側にコリオリの力を受けて撓み変形するときに、両者において生じる信号が加算される。
【0130】
複数の検出電極17の接続は、例えば、配線19によってなされている。2組に分けられた全ての検出電極17は、配線19によって4つのパッド13のうち2つに接続され、ひいては、検出回路105に接続されている。
【0131】
(角速度センサの動作)
複数の駆動腕7の励振は、第3実施形態(図7(a)および図7(b))と同様である。従って、フレーム5Aおよび5Bは、互いに逆側へ撓む。また、検出腕509Aおよび509Bは、互いに逆側へ変位する。
【0132】
図11(a)および図11(b)は、センサ素子501における、コリオリの力による検出腕509の振動を説明するための模式的な斜視図であり、図8(a)および図8(b)の状態に対応している。これらの図では、フレーム5および駆動腕7の変形は図示が省略されている。
【0133】
図7(a)および図7(b)を参照して説明した振動が生じている状態で、センサ素子501がx軸回りに回転されると、第3実施形態と同様に、検出腕509Aおよび509Bは、z軸方向において互いに逆側にコリオリの力を受ける。そして、2つの検出腕509において生じた信号は加算される。
【0134】
各検出腕509において、第2腕523は、矢印y11で示すコリオリの力の方向へ曲がるように撓み変形する。また、このような撓み変形を第2腕523に生じさせる曲げモーメントは、矢印y12で示すように第1腕521に伝わり、第1腕521をコリオリの力の方向とは反対側へ曲がる撓み変形を生じさせるように第1腕521に作用する。従って、第1腕521と第2腕523とはz軸方向において互いに逆側に撓み変形することになる。
【0135】
第1腕521および第2腕523それぞれにおけるz軸方向における撓み変形によって生じる信号(電圧)は、検出電極17によって取り出される。そして、第1腕521および第2腕523において生じた信号は加算される。
【0136】
以上の第5実施形態においても、フレーム5は、x軸方向に互いに離れた1対の実装腕11に架け渡され、駆動腕7は、x軸方向に互いに離れた位置にてフレーム5の主部5aからy軸方向に互いに並列に延び、検出腕509は、x軸方向において1対の駆動腕7の間となる位置にて主部5aからy軸方向に延び、駆動回路103は、1対の駆動腕7がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように1対の駆動腕7に互いに逆の位相の電圧を印加し(そのような電圧印加が可能に複数の励振電極15が配置され)、検出回路105は、検出腕509のz軸方向における曲げ変形により生じる信号を検出する(そのような検出が可能に複数の検出電極17が配置される)。
【0137】
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、新たな振動態様による検出が可能になる。また、例えば、検出腕に直接にコリオリの力が作用し、検出感度の向上が期待される。
【0138】
また、本実施形態では、検出腕509を複数の分割腕524によって構成したり、検出腕509を第1腕521および第2腕523によって構成したりしている。これにより、例えば、センサ素子501の小型化と検出感度の向上とを両立させることができる。
【0139】
以上の第1~第5実施形態において、実装腕11および支持部311aは支持部の一例である。
【0140】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0141】
上述した複数の実施形態は、適宜に組み合わされてよい。例えば、1対の実装腕11と実装枠311とは置換可能である。第3および第4実施得形態の検出腕309のハンマ形状は第1および第2実施形態に適用されてもよい。第5実施形態の分割腕524は他のいずれの実施形態に適用されてもよい。第5実施形態の第1腕521および第2腕523は第1および第3実施形態に適用されてもよい。
【0142】
圧電体は、y軸方向の一方側に延びる(少なくとも)1対の駆動腕、およびy軸方向の他方側に延びる1本の検出腕のみを有する構成(2つ又のフォークのような形状)であってもよい。すなわち、1対の駆動腕と、検出腕とは、同一方向に(並列に)延びている必要はない。この場合、例えば、駆動腕と検出腕とがx軸方向において互いに当接するおそれがない。
【0143】
1本のフレームから延びる駆動腕の本数と検出腕の本数との組み合わせは適宜である。例えば、1対の駆動腕に対して、y軸方向の正側に延びる検出腕と、y軸方向の負側に延びる検出腕とが設けられてもよい。また、1対の駆動腕の間に、互いに並列に延びる2本以上の検出腕が設けられてもよい。
【0144】
また、例えば、1本のフレームから互いに逆側に延びる2対の駆動腕を設けてもよい。この場合、+y側に延びる1対の駆動腕と、-y側に延びる1対の駆動腕とは、互いにx軸方向において逆側に振動するように(例えば+y側の1対の駆動腕が互いに離反するときは-y側の1対の駆動腕は互いに近接するように)励振される。これにより、2対の駆動腕からのモーメントが1本のフレームに加算される。
【0145】
第3および第4実施形態では、2つのユニット304は、駆動腕および検出腕が延び出る側とは反対側を対向させて共通の支持部に支持された。ただし、2つのユニット304は、駆動腕および検出腕が延び出る側を対向させて共通の支持部に支持されてもよい。
【0146】
センサ素子または角速度センサは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の一部として構成されてよい。この場合において、MEMSの基板上にセンサ素子を構成する圧電体が実装されてもよいし、MEMSの基板が圧電体によって構成されており、その一部によってセンサ素子の圧電体が構成されてもよい。
【0147】
フレームの延長部の形状は、L字またはL字に類するものに限定されない。延長部がx軸に交差(実施形態では直交)する部分を含む限り、フレーム全体がx軸に平行な場合に比較して、フレームは長くされる。例えば、延長部は、U字またはΩ字を含んでもよいし、S字のように蛇行する形状とされてもよい。上記の例示から理解されるように、延長部の両端(主部との接続位置および支持部との接続位置)のy軸方向の位置は、互いに同一であってもよい。ただし、延長部の形状がL字またはL字に類するもの(主部からy軸に沿って延び出る部分(延長本体部5ba等)と、当該部分からy軸に交差する方向に延びて支持部に接続される部分(接続部5bb等)からなる形状)であれば、振動腕の励振によって生じるフレームの挙動の予測が容易であり、ひいては、設計が容易である。
【符号の説明】
【0148】
1…センサ素子、3…圧電体、5…フレーム、5a…主部、5b…延長部、7…駆動腕、9…検出腕、11…実装腕(支持部)、51…角速度センサ、103…駆動回路、105…検出回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11