IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

<>
  • 特許-電子装置および方法 図1
  • 特許-電子装置および方法 図2
  • 特許-電子装置および方法 図3
  • 特許-電子装置および方法 図4
  • 特許-電子装置および方法 図5
  • 特許-電子装置および方法 図6
  • 特許-電子装置および方法 図7
  • 特許-電子装置および方法 図8
  • 特許-電子装置および方法 図9
  • 特許-電子装置および方法 図10
  • 特許-電子装置および方法 図11
  • 特許-電子装置および方法 図12
  • 特許-電子装置および方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】電子装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20221028BHJP
   H04W 74/02 20090101ALI20221028BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20221028BHJP
   H04W 84/12 20090101ALN20221028BHJP
【FI】
H04W16/28 150
H04W74/02
H04W28/04 110
H04W84/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021096669
(22)【出願日】2021-06-09
(62)【分割の表示】P 2018161575の分割
【原出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2021145383
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マダヴァン ナレンダー
(72)【発明者】
【氏名】関谷 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 寿久
(72)【発明者】
【氏名】中西 研介
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0236777(US,A1)
【文献】国際公開第2017/119184(WO,A1)
【文献】特表2016-501465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置であって、
第1無線装置から、前記電子装置と、前記電子装置とは異なる第2無線装置とを示すアドレスを単一の第1宛先として含む、単一の第1データフレームから構成される第1物理フレームを受信する受信手段と、
第1アドレスを保持するアドレス管理手段と、
前記第1データフレームの受信が成功される場合、前記第1無線装置に対して、前記第1データフレームに対する応答として第1応答フレームを送信する送信手段と
を備え、
前記アドレス管理手段は、前記第1アドレスと前記第1宛先とを比較し、その比較結果を前記送信手段に通知し、
前記送信手段は、
前記比較結果に基づき、前記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が成功される場合に、前記第1データフレームに対する応答として送信される第2応答フレームの物理ヘッダと一致する前記第1応答フレームの物理ヘッダを生成し、前記第2無線装置のPHYパラメータと同一のPHYパラメータを用いて、前記第1応答フレームに対して送信処理を実行し、
前記第1応答フレームおよび前記第2応答フレームは、フレーム制御フィールドと、デュレーション/IDフィールドと、アドレス1フィールドとから構成される応答フレームであり、
前記送信手段は、
前記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が成功され、前記第2無線装置によって前記第2応答フレームが前記第1物理フレームの終端から第1時間経過後に送信される場合と同様に、前記第1応答フレームを前記第1物理フレームの終端から前記第1時間経過後に送信し、
前記受信手段は、
前記第1データフレームの受信に成功し、前記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が失敗される場合、前記第1データフレームが再送されずに、前記第1宛先を含み、前記第1データフレームとは異なる単一の第2データフレームから構成される第2物理フレームを受信する、
電子装置。
【請求項2】
前記第1及び第2応答フレームの伝送レートは同一であり、
前記第1及び第2応答フレームの伝送レートは、前記第1物理フレームの伝送レートにしたがって定められる、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第1アドレスは、前記第2無線装置を特定するグローバルアドレスもしくはローカルアドレスであり、
前記アドレス管理手段は、前記第1アドレスと前記第1宛先とを比較し、両者が一致する場合に、前記第1データフレームを自局宛てのデータフレームであると判定する
請求項1または請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第1アドレスは、前記電子装置を特定するグローバルアドレスもしくはローカルアドレスであり、
前記アドレス管理手段は、さらにマスクビット情報を保持し、
前記アドレス管理手段は、前記マスクビット情報に従い、前記第1アドレスと前記第1宛先との特定のビット位置を比較し、両者が一致する場合に、前記第1データフレームを自局宛てのデータフレームであると判定する
請求項1または請求項2に記載の電子装置。
【請求項5】
前記送信手段は、
前記第1物理フレームが、ブロックAck要求フレームでない場合は、前記第1応答フレームを前記第1無線装置に送信し、
前記第1物理フレームもしくは1つ以上の前記第1データフレームを含む前記第1無線装置によって送信される第2物理フレームが、ブロックAck要求フレームである場合は、前記第1データフレームに対する応答に関するフレームを前記第1無線装置に送信しない、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記送信手段は、
前記受信手段により再送される前記第1データフレームが所定回数以上受信される場合、前記第1無線装置への前記第1応答フレームの送信を停止する、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
前記第2無線装置は、前記第1無線装置とアソシエーションを行っていて、
前記電子装置は、前記第1無線装置とアソシエーションを行っていない、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記送信手段は、
前記第2無線装置のスクランブルシードと同一のスクランブルシードを用いて、前記第1応答フレームに対して送信処理を実行する、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項9】
前記アドレス管理手段は、さらに、前記第1無線装置を特定する第2アドレスを保持し、
前記送信手段は、
前記第1データフレームに含まれる送信元アドレスと、前記第2アドレスとを比較し、当該比較の結果に基づいて、前記第1応答フレームを送信するか否かを判定する、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項10】
電子装置であって、
第1無線装置から、前記電子装置と、前記電子装置とは異なる第2無線装置とを示すアドレスを単一の第1宛先として含む、単一の第1RTSフレームから構成される第1物理フレームを受信する受信手段と、
第1アドレスを保持するアドレス管理手段と、
前記第1RTSフレームの受信が成功される場合、前記第1無線装置に対して、前記第1RTSフレームに対する応答として第1CTSフレームを送信する送信手段と
を備え、
前記アドレス管理手段は、前記第1アドレスと前記第1宛先とを比較し、その比較結果を前記送信手段に通知し、
前記送信手段は、
前記比較結果に基づき、前記第2無線装置によって前記第1RTSフレームの受信が成功される場合に、前記第1RTSフレームに対する応答として送信される第2CTSフレームの物理ヘッダと一致する前記第1CTSフレームの物理ヘッダを生成し、前記第2無線装置のPHYパラメータと同一のPHYパラメータを用いて、前記第1CTSフレームに対して送信処理を実行し、
前記第1CTSフレームおよび前記第2CTSフレームは、フレーム制御フィールドと、デュレーション/IDフィールドと、アドレス1フィールドとから構成されるCTSフレームであり、
前記送信手段は、
前記第2無線装置によって前記第1RTSフレームの受信が成功され、前記第2無線装置によって前記第2CTSフレームが前記第1物理フレームの終端から第1時間経過後に送信される場合と同様に、前記第1CTSフレームを前記第1物理フレームの終端から前記第1時間経過後に送信し、
前記受信手段は、
前記第1RTSフレームの受信に成功し、前記第2無線装置によって前記第1RTSフレームの受信が失敗される場合、前記第1RTSフレームが再送されずに、前記第1宛先を含み、前記第1RTSフレームとは異なる単一の第2RTSフレームから構成される第2物理フレームを受信する、
電子装置。
【請求項11】
電子装置において実行される方法であって、
第1無線装置から、前記電子装置と、前記電子装置とは異なる第2無線装置とを示すアドレスを単一の第1宛先として含む、単一の第1データフレームから構成される第1物理フレームを受信することと、
第1アドレスを管理し、前記第1アドレスと前記第1宛先とを比較し、その比較結果を通知することと、
前記第1データフレームの受信が成功される場合、前記第1無線装置に対して、前記第1データフレームに対する応答として第1応答フレームを送信することと
を備え、
前記第1応答フレームを送信することは、
前記比較結果に基づき、前記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が成功される場合に、前記第1データフレームに対する応答として送信される第2応答フレームの物理ヘッダと一致する前記第1応答フレームの物理ヘッダを生成し、前記第2無線装置のPHYパラメータと同一のPHYパラメータを用いて、前記第1応答フレームに対して送信処理を実行することを含み、
前記第1応答フレームおよび前記第2応答フレームは、フレーム制御フィールドと、デュレーション/IDフィールドと、アドレス1フィールドとから構成される応答フレームであり、
前記第1応答フレームを送信することは、
記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が成功され、前記第2無線装置によって前記第2応答フレームが前記第1物理フレームの終端から第1時間経過後に送信される場合と同様に、前記第1応答フレームを前記第1物理フレームの終端から前記第1時間経過後に送信することを含
前記第1データフレームの受信に成功し、前記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が失敗される場合、前記第1データフレームが再送されずに、前記第1宛先を含み、前記第1データフレームとは異なる単一の第2データフレームから構成される第2物理フレームを受信する、
方法。
【請求項12】
第1無線装置にデータフレームを送信する送信手段と、前記第1無線装置からの応答フレームを受信する受信手段と
を備え、
前記送信手段は、
前記第1無線装置を特定する第1アドレスを単一の第1宛先として含む、単一の第1データフレームから構成される第1物理フレームを送信し、
前記第1無線装置によって前記第1データフレームの受信が成功される場合に、前記第1データフレームに対する応答として前記第1無線装置により前記第1物理フレームの終端から第1時間経過後に送信される第1応答フレームと、前記第1無線装置とは異なる第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が成功される場合に、前記第1データフレームに対する応答として前記第2無線装置により前記第1物理フレームの終端から前記第1時間経過後に送信される第2応答フレームとは、フレーム制御フィールドと、デュレーション/IDフィールドと、アドレス1フィールドとから構成される応答フレームであり、
前記受信手段は、
前記第1応答フレームおよび前記第2応答フレームの少なくとも1つを受信した場合に、前記第1データフレームの送信が成功したと判断する、
電子装置。
【請求項13】
前記送信手段は、
前記第1データフレームに対して、前記第1応答フレームおよび前記第2応答フレームが送信されることを期待する場合、前記第1アドレスとして、前記第1無線装置と前記第2無線装置とを示す共通のアドレスを設定し、
前記第1データフレームに対して、前記第1応答フレームのみが送信されることを期待する場合、前記第1アドレスとして、前記第1無線装置のみを示すアドレスを設定する、
請求項12に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信の信頼性を向上させるための種々様々な技術が提案されている。その中の一つに、1台の無線端末が複数台の無線基地局に対して同時に一つのデータを送信する技術がある。これによれば、無線端末は、複数台の無線基地局からの応答を参照することが可能となるので、通信の信頼性を向上させることが可能となる。
【0003】
しかしながら、上記した技術では、無線端末は複数台の無線基地局からの応答を時分割で順に参照するため、オーバーヘッドを増加させてしまうという不都合がある。このため、このような不都合を解消し得る新たな技術の実現が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2008/0273547号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、オーバーヘッドの増加を抑止しつつ、高信頼な無線通信を実現させることが可能な電子装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、電子装置は、受信手段と、アドレス管理手段と、送信手段とを備える。前記受信手段は、第1無線装置から、前記電子装置と、前記電子装置とは異なる第2無線装置とを示すアドレスを単一の第1宛先として含む、単一の第1データフレームから構成される第1物理フレームを受信する。前記アドレス管理手段は、第1アドレスを保持する。前記送信手段は、前記第1データフレームの受信が成功される場合、前記第1無線装置に対して、前記第1データフレームに対する応答として第1応答フレームを送信する。前記アドレス管理手段は、前記第1アドレスと前記第1宛先とを比較し、その比較結果を前記送信手段に通知する。前記送信手段は、前記比較結果に基づき、前記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が成功される場合に、前記第1データフレームに対する応答として送信される第2応答フレームの物理ヘッダと一致する前記第1応答フレームの物理ヘッダを生成し、前記第2無線装置のPHYパラメータと同一のPHYパラメータを用いて、前記第1応答フレームに対して送信処理を実行する。前記第1応答フレームおよび前記第2応答フレームは、フレーム制御フィールドと、デュレーション/IDフィールドと、アドレス1フィールドとから構成される応答フレームである。前記送信手段は、前記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が成功され、前記第2無線装置によって前記第2応答フレームが前記第1物理フレームの終端から第1時間経過後に送信される場合と同様に、前記第1応答フレームを前記第1物理フレームの終端から前記第1時間経過後に送信する。前記受信手段は、前記第1データフレームの受信に成功し、前記第2無線装置によって前記第1データフレームの受信が失敗される場合、前記第1データフレームが再送されずに、前記第1宛先を含み、前記第1データフレームとは異なる単一の第2データフレームから構成される第2物理フレームを受信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る無線通信環境の一例を示す図。
図2】同実施形態に係る無線通信環境において用いられるMACフレームのフレームフォーマットの一例を示す図。
図3】同実施形態に係る無線通信環境において用いられるPHYフレームのフレームフォーマットの一例を示す図。
図4】同実施形態に係る無線通信環境において用いられるAckフレームのフレームフォーマットの一例を示す図。
図5】同実施形態に係る電子装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図6】同実施形態に係る電子装置の機能構成の一例を示す図。
図7】同実施形態に係る電子装置の動作の概要を示す図。
図8】同実施形態に係る電子装置の動作の一例を示すフローチャート。
図9】同実施形態に係る電子装置のさらなる機能を説明するための図。
図10】同実施形態に係る電子装置のさらなる機能を説明するための別の図。
図11】同実施形態に係る電子装置の別の動作の概要を示す図。
図12】同実施形態に係る電子装置の別の動作の概要を示す別の図。
図13】同実施形態に係る電子装置の別の動作の概要を示すさらに別の図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
高信頼な無線通信を実現させる仕組みの一例では、1台の無線端末は複数台の無線基地局に対して同時に一つのデータを送信する(例えば、米国特許出願公開第2008/0273547号を援用)。各無線基地局は、無線端末からのデータを受信すると、当該無線端末に対して応答フレーム(Ackフレーム)を時分割で順に返信する。この仕組みによれば、無線端末は複数台の無線基地局に対して一つのデータを同時に送信するので、複数台の無線基地局からのAckフレームを参照して、当該データが他の無線端末に届いたか否かを確認することができ、無線端末にとって高信頼な無線通信を実現させることができる。
【0010】
すなわち、この仕組みにおいては、無線端末から送信されるデータの宛先となる無線基地局の台数が増える程、無線通信の信頼性を向上させることができる。一方で、無線端末から送信されるデータの宛先となる無線基地局の台数が増えると、当該無線端末におけるAckフレームの受信にかかる時間もまた増加することになるので、結果的に、オーバーヘッドを増加させてしまうことになる。このため、オーバーヘッドを増加させることなく、高信頼な無線通信を行うことが可能な新たな技術の実現が要求されている。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子装置を含む無線通信システム(無線通信環境)の概略構成例を示す。図1に示す無線通信システムには、無線端末STAと当該無線端末STAと通信可能に接続される第1無線基地局AP(「メインAP(Access Point)」と称されても良い)とによって構成される無線LANシステムと、第1無線基地局APとは異なる第2無線基地局AP(「サブAP」と称されても良い)とが含まれている。なお、本実施形態に係る電子装置は、第2無線基地局APに相当する。本実施形態において、無線端末STAは第2無線基地局APとは接続(アソシエーション)していないものとする。
【0012】
なお、本実施形態において、上記した無線LANシステムは、1台の無線基地局APと、少なくとも1台以上の無線端末STAとによって構成されるインフラストラクチャモードのネットワークシステムである場合を想定するが、これに限定されず、例えば、複数台の無線端末STAが無線基地局APを介さずに直接通信を行うアドホックモードのネットワークシステムであっても良い。但し、この場合においては、複数台の無線端末STAのうちのいずれかが、アドホックネットワーク内のオーナーとして動作していることを条件とする。また、無線LANシステムに含まれる無線基地局APは、所定の地点に固定された無線基地局でなくても良く、例えば、動作モードを変更することによって簡易的な無線基地局として機能している無線端末STAが、無線LANシステムに含まれる無線基地局とみなされても良い。
【0013】
なお、第1及び第2無線基地局AP,APはイーサネット(登録商標)を介して図示しない制御装置と接続されていても良い。詳細については後述するが、この制御装置は、高信頼な無線通信を行うために必要な各種パラメータの設定を、第1及び第2無線基地局AP,APに対して行うものである。
【0014】
以下では、無線端末STAにとって高信頼な無線通信を実現可能な第2無線基地局APについて説明する前に、図2図4を参照して、図1に示す無線通信システムにおいて用いられるフレームフォーマットについて順に説明する。
図2は、MAC(Media Access Control)フレームのフレームフォーマットを示す。MACフレームは、図2に示すように、MACヘッダ11と、フレームボディ12と、フレームチェックシーケンス(FCS: Frame Check Sequence)13とによって構成される。
【0015】
MACヘッダ11には、MAC層における受信処理に必要な情報が設定される。フレームボディ12には、フレームの種類に応じた情報が設定される。FCS13には、MACヘッダ11とフレームボディ12とを正常に受信することができたか否かを判定するために計算された誤り検出コード(CRC: Cyclic Redundancy Code)が設定される。
【0016】
MACヘッダ11は、図2に示すように、フレーム制御フィールド111と、デュレーション/IDフィールド112と、複数のアドレスフィールド113a~113dと、シーケンス制御フィールド114と、QoS(Quality of Service)制御フィールド115とを含んでいる。なお、MACヘッダ11に含まれる各種フィールドは、上記したフィールドに限定されず、例えば新規のフィールドがさらに追加されても良いし、一部のフィールドが削除されても良い。
【0017】
フレーム制御フィールド111には、フレームの種類に応じた値が設定される。
より詳しくは、フレーム制御フィールド111は、図2に示すように、プロトコルバージョンフィールド111a、タイプフィールド111b、サブタイプフィールド111c、ToDSフィールド111d、FromDSフィールド111e、モアフラグメントフィールド111f、リトライフィールド111g、プロテクトフィールド111h及び+HTC/オーダーフィールド111i、等を含んでいる。
【0018】
プロトコルバージョンフィールド111aには、使用するプロトコルバージョンを示す情報が設定される。
タイプフィールド111bには、MACフレームの種類に関する情報が設定され、MACフレームの種類(フレームタイプ)が管理フレーム、制御フレーム及びデータフレームのうちのいずれであるかを示す。
サブタイプフィールド111cには、タイプフィールド111bによって示されるフレームタイプ内におけるフレームの種類を示す情報が設定される。
【0019】
ToDSフィールド111dには、宛先に関する情報が設定され、宛先が無線基地局APであるか、無線端末STAであるかを示す。具体的には、ビットが1の場合は宛先が無線基地局APであることを示し、0の場合は宛先が無線端末STAであることを示している。
FromDSフィールド111eには、送信元に関する情報が設定され、送信元が無線基地局APであるか、無線端末STAであるかを示す。具体的には、ビットが1の場合は送信元が無線基地局APであることを示し、0の場合は送信元が無線端末STAであることを示している。
【0020】
モアフラグメントフィールド111fは、上位レイヤのパケットをフラグメントして送信する時に用いられ、後続にフラグメントフレームが存在するか否かを示す情報が設定される。具体的には、ビットが1の場合は後続にフラグメントフレームがあることを示し、0の場合は後続にフラグメントフレームがないことを示している。
【0021】
リトライフィールド111gには、当該フレームが再送されたフレーム(再送フレーム)であるか否かを示す情報が設定される。具体的には、ビットが1の場合は当該フレームが再送フレームであることを示し、0の場合は当該フレームが再送フレームでないことを示している。
プロテクトフィールド111hには、当該フレームが暗号化されているか否かを示す情報が設定される。具体的には、ビットが1の場合は当該フレームが暗号化されていることを示し、0の場合は当該フレームが暗号化されていないことを示している。
【0022】
+HTC/オーダーフィールド111iは、non-QoSデータフレームが送信される場合は、フレームを中継する際に、フレームの順序を入れ替えてはいけないことを示し、IEEE 802.11n/ac/ax物理フレームでQoSデータフレームが送信される場合は、MACヘッダに、図示しないHT制御フィールドが含まれることを意味する。HT制御フィールドを含める場合は、QoS制御フィールド115とフレームボディ12との間に含まれ、IEEE 802.11n/ac/axで規定される機能の一部を通知するために用いられる。
【0023】
なお、フレーム制御フィールド111に含まれる各種フィールドは、上記したフィールドに限定されず、例えば新規のフィールドがさらに追加されても良いし、一部のフィールドが削除されても良い。
デュレーション/IDフィールド112は、16ビットの長さを有しており、最上位ビット(MSB: More Significant Bit)が0の場合、下位15ビットが送信禁止期間(NAV: Network Allocation Vector)を示し、最上位ビットが1の場合、下位15ビットの一部は、無線基地局APに接続している無線端末STAに割り当てられた識別番号を示す。
【0024】
アドレス1フィールド113aには、直接の受信局のMACアドレスが設定され、例えば、当該フレームが自装置宛てのフレームであるか否かを判定する際に用いられる。
アドレス2フィールド113bには、直接の送信局のMACアドレスが設定される。
アドレス3フィールド113cには、アップリンクにおいては最終的な宛先となる装置のMACアドレスが設定され、ダウンリンクにおいては送信元である装置のMACアドレスが設定される。
アドレス4フィールド113dは、無線基地局APが別の無線基地局APにフレームを送信する場合にのみ設定され、送信元である装置のMACアドレスが設定される。
【0025】
シーケンス制御フィールド114は、送信するフレームのシーケンス番号と、フラグメントのためのフラグメント番号とを示している。
QoS制御フィールド115は、タイプフィールド111bによって示されるフレームタイプがデータフレームであり、且つサブタイプフィールド111cによって示されるMACフレームの種類がQoSデータである場合に付加されるフィールドである。QoS制御フィールド115は、データのトラフィックに応じた識別子が設定されるTID(Traffic ID)フィールドや、送達確認方式が設定されるAckポリシーフィールド等を含んでいる。例えば、TIDフィールドは、データのトラフィック種別を判定する際に用いられる。また、Ackポリシーフィールドは、QoSデータが、ノーマルAckポリシー、ブロックAckポリシー及びノーAckポリシーのうちのいずれのポリシーにしたがって送信されたのかを判定する際に用いられる。
【0026】
図3は、PHY(物理)フレームのフレームフォーマットを示す。PHYフレームは、図3に示すように、PHYヘッダ21と、PHYペイロード22とによって構成される。PHYヘッダ21は、図3に示すように、L-STF(non-HT Short Training field)21a、L-LTF(non-HT Long Training field)21b及びL-SIG(non-HT Signal field)21cをさらに含んでいる。
【0027】
L-STF21a及びL-LTF21bは、既知のビットパターンを示しており、例えば、当該フレームを受信する受信装置は、当該ビットパターンを参照して、受信電力調整やタイミング同期、チャネル推定等を行う。また、L-SIG21cは、伝送レートを示す情報やフレーム長を示す情報、帯域幅情報、等を含んでいる。
PHYペイロード22は、OFDM(Orthogonal Frequency Divisional Multiplexing)変調処理が施された後のMACフレームを示す情報を含んでいる。すなわち、PHYペイロード22は、図2に示したMACフレームに相当する部分である。
【0028】
なお、図3では、IEEE 802.11aに規定されるPHYフレームのフレームフォーマットについて説明したが、その他のIEEE 802.11規格に規定されるPHYフレームのフレームフォーマットが図1に示す無線通信システムにおいて使用されても良い。
【0029】
図4は、Ackフレームのフレームフォーマットを示す。Ackフレームは、MACフレームの一種であり、図4に示すように、フレーム制御フィールド31と、デュレーション/IDフィールド32と、アドレス1フィールドと、FCS34とによって構成される。なお、各種フィールド31~34については既に説明したため、ここではこれらの詳しい説明は省略するが簡単に補足すると、Ackフレームの場合、フレーム制御フィールド31(のタイプフィールド及びサブタイプフィールド)にはAckフレームであることを示す情報が設定され、アドレス1フィールド33にはAckフレームの宛先を示す情報が設定される。
以上が、図1に示す無線通信システムにおいて用いられる各種フレームフォーマットである。
【0030】
次に、図5を参照して、図1に示す第2無線基地局APのハードウェア構成について説明する。第2無線基地局APは、図5に示すように、アンテナ41、無線部42、A/D変換部43、復調部44、ホストプロセッサ45、メモリ46、I/O部47、変調部48及びD/A変換部49、等を備えている。
【0031】
ホストプロセッサ45は、バスを介してメモリ46及びI/O部47と接続している。ホストプロセッサ45は、I/O部47によって外部装置からダウンロードされ、メモリ46に格納されているプログラムを実行すること(つまり、ソフトウェア)によって、後述する各種機能を実現するとしても良いし、ハードウェアによって各種機能を実現するとしても良いし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって各種機能を実現するとしても良い。
【0032】
アンテナ41は、例えば2.4GHz帯や5GHz帯の周波数を用いて、無線信号を送受信する。無線部42は、アンテナ41によって受信された無線信号を適切な周波数帯の信号に周波数変換する。A/D変換部43は、無線部42によって周波数変換されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。復調部44は、A/D変換部43によって周波数変換されたデジタル信号に対して、所定の規格(例えば、IEEE 802.11a、IEEE 802.11b、IEEE 802.11g、IEEE 802.11n、IEEE 802.11ac、IEEE 802.11ax等、また今後規定される802.11規格も含むものとする)に準拠した復調処理及び復号処理を含む受信処理を実行し、当該デジタル信号を当該所定の規格で規定されるMACフレームに変換する。変換されたMACフレームは、ホストプロセッサ45へと転送される。
【0033】
なお、上記した復調部44においては、A/D変換部43によって変換されたデジタル信号に対して、受信処理として、OFDMシンボルタイミング同期処理、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)処理、デインタリーブ処理、誤り訂正復号処理、等が実行される。また、復調部44は、図3にて説明したPHYヘッダ21に含まれる情報(PHYヘッダ情報)の抽出も行う。抽出されたPHYヘッダ情報はホストプロセッサ45に転送される。以上が、受信処理時に使用される構成とその機能である。
【0034】
続いて、送信処理時に使用される構成とその機能について説明する。
変調部48は、ホストプロセッサ45から転送されて来るMACフレーム(例えばAckフレーム)に対して、所定の規格に準拠した変調処理及び符号化処理を含む送信処理を実行し、当該MACフレームをデジタル信号に変換する。なお、詳細については後述するが、変調部48には、変調処理時に使用するPHYパラメータがホストプロセッサ45より通知される。D/A変換部49は、変調部48によって変換されたデジタル信号をアナログ信号(ベースバンド信号)に変換する。無線部42は、D/A変換部49によって変換されたベースバンド信号を、所定の周波数帯(例えば、2.4GHz帯や5GHz帯等)にアップコンバートする。アップコンバートされた信号は無線信号としてアンテナ41により無線端末STAに送信される。
【0035】
次に、図6を参照して、ホストプロセッサ45がメモリ46に格納されたプログラムを実行することによって実現される機能部について説明する。なお、ここでは、各種機能部がソフトウェアによって実現されている場合を例示しているが、既述したように、各種機能部はハードウェアによって実現されても良いし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されても良い。
【0036】
ホストプロセッサ45は、図6に示すように、アドレス管理部451、PHYパラメータ設定部452、フレーム解析部453、応答判定部454、時間計測部455及び制御部456、等を備えている。
アドレス管理部451は、自装置(自局)に設定されたMACアドレスの管理を行う。
【0037】
PHYパラメータ設定部452は、無線端末STAに対してAckフレームを送信するために必要なPHYパラメータを生成し、当該生成されたPHYパラメータを変調部48に通知する。PHYパラメータは、変調部48による変調処理時に使用されるパラメータであり、具体的には、Ackフレームの伝送レート、Ackフレームの長さ(バイト数)、スクランブルシード(スクランブリング・シーケンス)、等を示す情報である。なお、PHYパラメータ設定部452は、第1無線基地局APにて使用されるPHYパラメータと一致するPHYパラメータを生成する。また、本実施形態では、PHYパラメータには、スクランブルシードを示す情報が含まれるとしたが、これに限定されず、PHYヘッダを生成するためのスクランブルの仕方を規定するものであればどのようなものであっても良い。
【0038】
ここで、PHYパラメータの生成方法(決定方法)について補足的に説明する。
PHYパラメータによって示されるAckフレームの伝送レートは、無線LANの規格にしたがって決定される。具体的には、Ackフレームの伝送レートは、受信フレームが送信された際の伝送レートの値(すなわち、PHYヘッダ情報によって示される伝送レートの値)以下であって、必須レートの中で最も高い伝送レートの値に決定される。例えば無線LANの規格がIEEE 802.11aである場合、使用可能な伝送レートとしては、6,9,12,18,24,36,48,54[Mbps]の8種類がある。これら8種類の伝送レートのうち、6,12,24[Mbps]の3種類が必須レートと称される伝送レートである。
【0039】
このため、例えば、受信フレームが送信された際の伝送レートの値が24~54[Mbps]である場合、24[Mbps]以下の必須レートの中で最も高い値を示す24[Mbps]がAckフレームの伝送レートに決定される。同様に、受信フレームが送信された際の伝送レートの値が12~18[Mbps]であった場合、12[Mbps]以下の必須レートの中で最も高い値を示す12[Mbps]がAckフレームの伝送レートに決定される。さらに、受信フレームが送信された際の伝送レートの値が6~9[Mbps]であった場合、6[Mbps]以下の必須レートの中で最も高い値を示す6[Mbps]がAckフレームの伝送レートに決定される。
【0040】
PHYパラメータによって示されるAckフレームのフレーム長は、無線LANの規格にしたがって決定される。具体的には、Ackフレームのフレーム長は、一例として、図4に示したように、フレーム制御フィールド31が2バイト、デュレーション/IDフィールド32が2バイト、アドレス1フィールド33が6バイト、FCS34が4バイトとなり、合計14バイトである。Ackフレームのフレーム長は、これに限られず、無線通信の標準規格において定められうる。
PHYパラメータによって示されるスクランブルシードは、無線端末STAから送信されて来たデータフレームに挿入されているスクランブルシードと同一のスクランブルシードに決定される(換言すると、無線端末STAがデータフレームを送信した際に適用されたスクランブルシードと同一のスクランブルシードに決定される)。あるいは、スクランブルシードは、上記した制御装置からの指示にしたがって決定される。なお、上記したように、PHYパラメータは、第1及び第2無線基地局AP,APで一致している必要があるため、上記した制御装置からの指示は、第1及び第2無線基地局AP,APの両者に共通して通知される。
【0041】
再度、各種機能部の説明に戻る。
フレーム解析部453は、復調部44から転送されて来るMACフレーム及びPHYヘッダ情報に基づいた解析を行う。
具体的には、フレーム解析部453は、復調部44から転送されて来るMACフレームに含まれるアドレス1フィールド113aから、当該MACフレームを受信する受信局のMACアドレスを抽出する。抽出されたMACアドレスは、転送されて来たMACフレームが自局宛てのものであるか否かを判定するために使用される。
【0042】
また、フレーム解析部453は、復調部44から転送されて来るPHYヘッダ情報を参照して、復調部44から転送されて来たMACフレームがIEEE 802.11規格(例えばIEEE 802.11n)で規定されるA-MPDU(Aggregate MPDU(medium access control protocol data unit))フレームであるか否かを判定する。あるいは、フレーム解析部453は、復調部44から転送されて来るMACフレームに含まれるフレーム制御フィールド111(のタイプフィールド111b及びサブタイプフィールド111c)を参照して、当該MACフレームがブロックAckを要求するブロックAck要求フレームであるか否かを判定する。
なお、上記した二つの判定手法のうちの前者は、MACフレームがブロックAck要求フレームであるか否かを間接的に判定する手法であり、後者はMACフレームがブロックAck要求フレームであるか否かを直接的に判定する手法である。
【0043】
さらに、フレーム解析部453は、復調部44から転送されて来るMACフレームに含まれるフレーム制御フィールド111(のタイプフィールド111b)を参照して、当該MACフレームがデータフレームであるか否かを判定する。また、フレーム解析部453は、復調部44から転送されて来るMACフレームに基づいてチェックサムを計算し、当該計算されたチェックサムと、当該MACフレームに設定(記載)されているチェックサムとが同一であるか否かを判定する(換言すると、MACヘッダ11とフレームボディ12とを正常に受信することができたか否かを判定する)。
【0044】
応答判定部454は、無線端末STAから送信されて来た無線信号(換言すると、復調部44から転送されて来たMACフレーム)が自局宛てに送信されたものであるか否かを判定する。具体的には、応答判定部454は、アドレス管理部451にて管理されている自局のMACアドレスと、フレーム解析部453によって抽出されたMACアドレスとを比較し、二つのMACアドレスが一致しているか否かを判定することで、自局宛てに送信されたものであるか否かを判定する。
【0045】
時間計測部455は、無線端末STAにAckフレームを返信することが決定された場合に、受信フレーム(換言すると、復調部44から転送されて来たMACフレーム)の終端からの経過時間を計測し、SIFS(Short Inter-frame Spacing)と称される期間が経過すると、この旨をホストプロセッサ45に通知する。SIFSとは、Ackフレームを返信するまでの最も短い待ち時間を示し、例えば16[μsec]である。ホストプロセッサ45は、当該通知を受けると、変調部48に対してAckフレームの送信指示を通知する。
制御部456は、上記した各種機能部451~455の制御を行う。
【0046】
続いて、図5及び図6に示した構成を有する第2無線基地局APが、無線端末STAにとって高信頼な無線通信を実現させるために実行する動作の一例について説明する。なお、ここでは、図1に示した無線通信環境下において、第1無線基地局AP宛ての無線信号(ここではデータフレームとする)が無線端末STAによって送信された場合の第2無線基地局APの動作の一例について説明する。
【0047】
第1無線基地局AP宛てのデータフレームが無線端末STAによって送信された場合、通常であれば、第1無線基地局APのみが無線端末STAに対してAckフレームを返信する。しかしながら、図7に概要を示すように、本実施形態に係る第2無線基地局APは、本来他局宛てのデータフレームである当該データフレームを自局宛てのデータフレームであると認識した場合、当該データフレームの終端からSIFSと称される期間が経過した後に、無線端末STAに対してAckフレームを返信する動作を実行する。
第2無線基地局APによるAckフレームの送信タイミングは、第1無線基地局APによるAckフレームの送信タイミングに対して、Ackフレームのガードインターバルの時間(例えば、IEEE 802.11a規格での0.8μsecや、その他の規格で定められた所定時間長)を超えないように制御することが好ましい(つまり、IEEE 802.11a規格の例では、第1無線基地局APが送信するAckフレームよりも早くに送信される場合でもその差が0.8μsec以下、遅くに送信される場合でもその差が0.8μsec以下となるように制御することが好ましい)。これによれば、第1無線基地局APによりAckフレームが送信される期間と、第2無線基地局APによりAckフレームが送信される期間とは、少なくとも一部重複する。
ガードインターバルとは、物理フレームにおける連続するOFDMシンボルの間をあけるための時間を指し、前後のOFDMシンボル信号がマルチパスの影響等により重なりにくくするための仕組みである。
【0048】
図8は、図7に概要を示した第2無線基地局APの動作をより詳しく説明するためのフローチャートである。
まず、第2無線基地局APは、アンテナ41を介して第1無線基地局AP宛ての無線信号を受信する。その後、第2無線基地局APは、無線部42、A/D変換部43及び復調部44により、受信した無線信号をMACフレームに変換し、これをホストプロセッサ45へと転送する。また、この時、復調部44は、受信フレームのPHYヘッダ21に含まれるPHYヘッダ情報を抽出し、当該抽出したPHYヘッダ情報もホストプロセッサ45へと転送する。
これにより、第2無線基地局APのホストプロセッサ45は、第1無線基地局AP宛てのMACフレームを受信すると共に、復調部44によって抽出されたPHYヘッダ情報の入力を受け付ける(ブロックB1)。
【0049】
次に、ホストプロセッサ45の機能部であるフレーム解析部453は、受信したMACフレームがブロックAck要求フレームであるか否かを判定する(ブロックB2)。なお、MACフレームがブロックAck要求フレームであるか否かを判定する手法は、既述したように、復調部44から転送されて来たPHYヘッダ情報を参照して、MACフレームがA-MPDUフレームであるか否かを判定する間接的な手法であっても良いし、MACフレームのフレーム制御フィールド111を参照して判定する直接的な手法であっても良い。
【0050】
受信したMACフレームがブロックAck要求フレームであると判定された場合(ブロックB2のYES)、ホストプロセッサ45は、無線端末STAに対してAckフレームを返信しないことを決定し、受信したMACフレームを廃棄して(ブロックB3)、ここでの一連の動作を終了させる。
【0051】
一方で、受信したMACフレームがブロックAck要求フレームでないと判定された場合(ブロックB2のNO)、フレーム解析部453は、受信したMACフレームのフレーム制御フィールド111を参照して、当該MACフレームがデータフレームであるか否かを判定する(ブロックB4)。なお、受信したMACフレームがデータフレームでないと判定された場合(ブロックB4のNO)、ホストプロセッサ45は、上記したブロックB3の処理を実行し、ここでの一連の動作を終了させる。
【0052】
受信したMACフレームがデータフレームであると判定された場合(ブロックB4のYES)、フレーム解析部453は、受信したMACフレームのアドレス1フィールド113aに設定されているMACアドレスを抽出する(ブロックB5)。抽出されたMACアドレスは応答判定部454へと転送される。
【0053】
応答判定部454は、フレーム解析部453から転送されて来たMACアドレスと、アドレス管理部451によって管理されている自局のMACアドレスとを比較し、二つのMACアドレスが一致しているか否かを判定する(ブロックB6)。なお、二つのMACアドレスが一致していないと判定された場合(ブロックB6のNO)、ホストプロセッサ45は、上記したブロックB3の処理を実行し、ここでの一連の動作を終了させる。
【0054】
一方で、二つのMACアドレスが一致していると判定された場合(ブロックB6のYES)、応答判定部454は、この判定結果をフレーム解析部453に通知する。フレーム解析部453は、応答判定部454からの通知を受けると、受信したMACフレームに基づいてチェックサムを計算し、当該計算されたチェックサムと、当該MACフレームに設定されているチェックサムとが一致しているか否かを判定する(ブロックB7)。なお、チェックサムが一致していないと判定された場合(ブロックB7のNO)、ホストプロセッサ45は、上記したブロックB3の処理を実行し、ここでの一連の動作を終了させる。
【0055】
チェックサムが一致していると判定された場合(ブロックB7のYES)、ホストプロセッサ45(の応答判定部454)は、無線端末STAに対してAckフレームを返信することを決定し、Ackフレームを生成すると共に、この旨をPHYパラメータ設定部452及び時間計測部455に通知する(ブロックB8)。時間計測部455は、この通知を受けると、受信したMACフレームの終端からの経過時間を計測し始める。
【0056】
続いて、PHYパラメータ設定部452は、無線端末STAに対してAckフレームを返信することが決定した旨の通知を受けると、当該Ackフレームを返信するための変調処理時に必要となるPHYパラメータを生成し、これを変調部48へと転送する(ブロックB9)。
【0057】
しかる後、ホストプロセッサ45は、時間計測部455からSIFSと称される期間が経過した旨の通知を受けると、変調部48に対して、Ackフレームの送信指示を通知すると共に、生成したAckフレームを転送し(ブロックB10)、ここでの一連の動作を終了させる。これによれば、第2無線基地局APから無線端末STAに対してAckフレームが返信される。
【0058】
なお、無線端末STAは、第1及び第2無線基地局AP,APから返信された各Ackフレームのチェックサムを計算し、各チェックサムが各Ackフレームに設定されているチェックサムと一致している場合に、Ackフレームを正常に受信することができたと判断する。
【0059】
あるいは、無線端末STAは、送信したデータフレームの終端からSIFSが経過した後に、何かしらの無線信号が検出された場合に(CCA(Clear Channel Assessment)がBusy状態であると判定された場合に)、Ackフレームを受信したと判断しても良い。但し、上記したBusy状態の期間は、送信したデータフレームの終端からSIFSが経過した時点を始点として、PHYプリアンブルの長さ(例、8μsec)もしくはPHYヘッダの長さ(例、20μsec)以上、Ackフレームの最大送信時間(例、44μsec)以下であるものとする。
【0060】
または、無線端末STAは、送信されて来るフレームのPHYヘッダまでを確認し、PHYヘッダによって示されるフレーム長が14に設定されていた場合に、Ackフレームを受信したと判断しても良い。
さらには、無線端末STAは、送信されて来るMACフレームに含まれるフレーム制御フィールド31のタイプフィールド及びサブタイプフィールドを確認し、Ackフレームを示す情報が設定されていた場合に、Ackフレームを受信したと判断しても良い。
あるいは、無線端末STAは、送信されて来るMACフレームに含まれるアドレス1フィールド33を確認し、自装置のMACアドレスを示す情報が設定されていた場合に、Ackフレームを受信したと判断しても良い。
なお、ここでは、無線端末STAが、Ackフレームを受信したと判断するいくつかの手法を示したが、上記した手法は任意に組み合わせて用いられても良い。
また、無線端末STAは、第1及び第2無線基地局AP,APから返信されるAckフレームのうちの少なくとも一方を正常に受信することができれば、たとえ一方からのAckフレームを正常に受信することができていなかったとしても、既に送信したデータフレームを再送せずに、新たな次のデータフレームを送信する。
【0061】
以上説明した一連の動作によれば、第2無線基地局APは、他局宛てのデータフレームに対してAckフレームを返信することができるため、無線端末STAにとって、高信頼な無線通信を実現させることが可能となる。また、無線端末STAは、第2無線基地局AP宛てにデータフレームを送信している訳ではないので、既述の従来方式のように、第1及び第2無線基地局AP,APからのAckフレームを時分割で順に受信する必要がなく、オーバーヘッドの増加を抑止することが可能となる。
【0062】
なお、第2無線基地局APが他局宛てのデータフレームに対してAckフレームを返信するためには、上記したブロックB6において説明したように、受信したMACフレームのアドレス1フィールド113aに設定されているMACアドレスと、アドレス管理部451によって管理されているMACアドレスとが一致している必要がある。すなわち、第2無線基地局APが、他局宛てのデータフレームを自局宛てのデータフレームであると認識する必要がある。このため、本実施形態においては、第2無線基地局APのMACアドレスを、以下に示す方法のいずれかにて設定する。
【0063】
一つ目に、第2無線基地局APのMACアドレスを、第1無線基地局APのユニークなMACアドレスと同一のMACアドレスに設定する方法が挙げられる。なお、第1無線基地局APのMACアドレスは、第1無線基地局APから取得されても良いし、上記した制御装置を介して取得されても良い。
【0064】
この一つ目の設定方法によれば、アドレス管理部451によって管理されるMACアドレスは、第1無線基地局APのMACアドレスと同一となるため、第2無線基地局APは、無線端末STAから、他局である第1無線基地局APに対して送信される全てのデータフレームを自局宛てのデータフレームとして認識することができるようになる。
【0065】
二つ目に、第2無線基地局APに二つのMACアドレスを設定する方法が挙げられる。より詳しくは、第1アドレスとして、第1無線基地局APのユニークなMACアドレスとは異なるユニークなMACアドレスを設定し、第2アドレスとして、第1無線基地局APのユニークなMACアドレスとは異なるが、第1無線基地局APと共通のMACアドレスを追加で設定する方法が挙げられる。すなわち、第1及び第2無線基地局AP,APの両者には、二つのMACアドレスがそれぞれ設定され、その内の一つが共通のMACアドレスとなるように設定される。
【0066】
第1及び第2無線基地局AP,APに第2アドレスとして共通のMACアドレスを設定する方法としては、例えば、ローカルアドレスを利用した方法が挙げられる。すなわち、グローバルアドレスとして機能するMACアドレスを第1アドレスとして設定し、ローカルアドレスとして機能するMACアドレスを第2アドレスとして設定する。具体的には、G/Lビットを1に設定した状態で、それ以外のフィールドを適切なバイト列に設定したMACアドレスを第2アドレスとして生成し、これを第1及び第2無線基地局AP,APに設定する。なお、第2アドレスは、例えば、上記した制御装置により生成され、第1及び第2無線基地局AP,APのそれぞれに通知され、設定される。
【0067】
この二つ目の設定方法によれば、無線端末STAは、高信頼な無線通信を行いたい場合にのみ、第1無線基地局APから通知される第2アドレスを宛先として使用し、高信頼な無線通信が不要な場合には、第1無線基地局APから通知される第1アドレスを宛先として使用するといったように高信頼な無線通信を選択的に実現させることができるようになる。すなわち、第2無線基地局APは、無線端末STAから第1無線基地局APに対して送信される全てのデータフレームを自局宛てのデータフレームとして認識するのではなく、必要に応じて、第1無線基地局APに対して送信されたデータフレームを自局宛てのデータフレームとして認識することができるようになる。
【0068】
三つ目は、第2無線基地局APのMACアドレスを、第1無線基地局APのユニークなMACアドレスと連番となるように設定する方法が挙げられる。但し、この方法の場合、第2無線基地局APのアドレス管理部451は、上記したブロックB6の処理の際に比較しないビットを指定可能なマスクビットを、MACアドレスと共に管理するものとする。
【0069】
この方法について、具体的に説明する。例えば、第1無線基地局APのMACアドレスが「AB:CD:E0:00:12:34」である場合、第2無線基地局APのMACアドレスは「AB:CD:E0:01:12:34」に設定される。また、この時、アドレス管理部451は、マスクビットとして「00:00:00:01:00:00」を管理するものとする。マスクビットは、1が設定されているビット位置のMACアドレスを比較対象としない(Don’t care扱いとする)ことを意味している。このため、第1無線基地局APのMACアドレス「AB:CD:E0:00:12:34」と第2無線基地局APのMACアドレス「AB:CD:E0:01:12:34」とは、上記したブロックB6の処理の際には、実質的に同一となるので、第2無線基地局APは、他局である第1無線基地局AP宛てのデータフレームを自局宛てのデータフレームとして認識することができるようになる。なお、ここでは、MACアドレスに含まれるシリアル番号をマスクビットによりマスクする場合を例示したが、これに限定されず、任意のビットがマスクビットによりマスクされて構わない。
【0070】
この三つ目の設定方法によれば、上記した一つ目の設定方法と同様な効果を得ることができる。また、マスクビットを動的に変更することで(例えば、ある時は「00:00:00:01:00:00」とし、別の時は「00:00:00:00:00:00」とする等)、二つ目の設定方法と同様な効果を得ることもできる。
【0071】
なお、本実施形態においては、他局宛てのデータフレームとは、第2無線基地局APの観点によれば、自局とは異なる第1無線基地局AP宛てのデータフレームのことを指すものとしたが、これに限定されず、例えば、上記した二つ目の方法における第1アドレスとは異なるMACアドレス(例えば第2アドレス)を宛先としたデータフレームのことを他局宛てのデータフレームと称しても良い。また、無線端末STAが接続(アソシエーション)する無線基地局(ここでは第1無線基地局AP)宛てに送信されるデータフレームを他局宛てのデータフレームと称しても良い。
無線端末STAが送信するデータフレームを複数の無線基地局に受信させるためには、データフレームの第1アドレスにブロードキャストのようなグループアドレスを設定する方法もあるが、第1アドレスにはユニキャストアドレスを設定する方が好ましい。その理由としては、例えば、データフレームの第1アドレスがグループアドレスの場合、そのデータフレームを受信する必要がない無線装置も当該データフレームを受信することになってしまうので、余分な動作電力を浪費させてしまうことや、ブロードキャストのデータフレームに対して無線基地局が応答フレームを送信するための追加の仕組みが、ユニキャストのデータフレームの場合には必要ないこと、等が挙げられる。一方で、データフレームの第1アドレスにブロードキャストのようなグループアドレスを設定する方法には、実装の容易さといった利点が挙げられる。
【0072】
また、本実施形態においては、PHYパラメータは、Ackフレームの伝送レート、Ackフレームのフレーム長、スクランブルシードを示す情報であるとしたが、これに限定されず、PHYパラメータは、次のような情報をさらに示すとしても良い。
例えば、第1及び第2無線基地局AP,APが複数アンテナ(MIMO機能)を有している場合、PHYパラメータは、ストリーム数とアンテナ数とをさらに示すとしても良い。一般的に、無線基地局APがMIMO機能を有している場合であって、送信フレーム(Ackフレーム)のストリーム数よりもアンテナ数が多くなるような送信の場合、サイクリックシフトを行うことがIEEE 802.11規格によって規定されている。これによれば、意図しない指向性の発生を回避することが可能となる一方で、サイクリックシフトが行われると、無線端末STA側においては、マルチパスが長くなったように認識されるため、マルチパスがガードインターバルを超えてしまう可能性がある。これによれば、無線端末STAは干渉が生じていると誤認してしまう可能性がある。このため、PHYパラメータを利用して、ストリーム数とアンテナ数とを一致させることで、上記した事態の発生を抑止することができるようになる。
【0073】
あるいは、PHYパラメータは、無線端末STAとの中心周波数のズレをさらに示すとしても良い。一般的に、無線基地局APと無線端末STAとは同じ周波数チャネルを使用していたとしても、その中心周波数にはズレが生じることが往々にしてある。このため、中心周波数のズレを解析し、これをPHYパラメータとして設定することで、第1及び第2無線基地局AP,APは、無線端末STAにAckフレームを返信する際に中心周波数のズレを補正した上で、Ackフレームを返信することができるようになる。
【0074】
なお、第2無線基地局APは、上記した機能に加えて、例えば図9に示すように、無線端末STAから他局宛ての再送フレームを所定回数連続して受信した場合、自身が送信しているAckフレームが悪影響を及ぼしている可能性があると判断して、当該再送フレームに対するAckフレームの返信を停止する機能をさらに有していても良い。なお、第2無線基地局APは、他局宛てのデータフレームに含まれるフレーム制御フィールド111のリトライフィールド111gを参照することによって、当該データフレームが再送フレームであるか否かを判定することが可能である。または、第2無線基地局APは、他局宛てのデータフレームに含まれるシーケンス制御フィールド114を参照し、シーケンス番号が同じであるフレームを所定回数以上受信したか否かを判定することで、当該データフレームが再送フレームであるか否かを判定することも可能である。さらには、第2無線基地局APは、他局宛てのデータフレームに含まれるフレーム制御フィールド111のリトライフィールド111g及びシーケンス制御フィールド114を参照し、リトライフィールド111gが1を示し、且つ同じシーケンス番号であるフレームを所定回数以上受信したか否かを判定することで、当該データフレームが再送フレームであるか否かを判定することも可能である。
【0075】
また、第2無線基地局APは、Ackフレームを返信したとしても高信頼な無線通信を実現することができない無線端末STAのMACアドレスを予め認識しておくことで、図10に示すように、当該無線端末STAから送信されたデータフレームに対してはAckフレームを返信しない機能をさらに有していても良い。例えば、高信頼な無線通信を実現することができない無線端末STAのMACアドレスは予め制御装置によって第2無線基地局APに設定されていても良い。あるいは、第2無線基地局APが、過去の無線通信履歴の情報(例えば、第2無線基地局APがAckフレームを返信しても、無線端末STAがデータフレームを再送する頻度が所定回数を超えていることを示す情報等)から、高信頼な無線通信を実現することができない無線端末STAのMACアドレスのリストを作成しても良い。なお、第2無線基地局APは、他局宛てのデータフレームに含まれるアドレス2フィールド113bを参照することによって、当該データフレームを送信した無線端末STAのMACアドレスを把握することが可能であり、当該無線端末STAが高信頼な無線通信を実現することができない無線端末STAであるか否かを判定することが可能である。
【0076】
なお、本実施形態においては、第2無線基地局APが、無線端末STAから他局である第1無線基地局APに送信されたデータフレームを自局宛てのデータフレームと認識して、Ackフレームを返信する場合について説明したが、例えば図11に示すように、第2無線基地局APは、無線端末STAから他局である第1無線基地局APに送信されたRTS(Request to Send)フレームを自局宛てのRTSフレームと認識して、CTS(Clear to Send)フレームを返信することも可能である。なお、RTSフレーム及びCTSフレームは共に、次にデータフレームを送信するための通信期間を予約するためのフレームである。
【0077】
さらに、本実施形態においては、第2無線基地局APが、無線端末STAから他局である第1無線基地局APに送信されたデータフレームを自局宛てのデータフレームと認識して、Ackフレームを返信する場合について説明したが、例えば図12に示すように、第2無線基地局APは、無線端末STAから他局である第1無線基地局APに送信されたトリガフレームとA-MPDUフレームとを自局宛てのフレームと認識して、ブロックAckフレームを返信することも可能である。ブロックAckフレームは、A-MPDUフレームに含まれる複数のデータフレームのうちの少なくとも一つに対する送達確認の情報を含む応答フレームである。但し、この場合、第2無線基地局APは、図12に示すように、トリガフレームにて指示されている周波数位置とは異なる周波数位置を利用して(すなわち、第1無線基地局APとは異なる周波数を利用して)、ブロックAckフレームを無線端末STAに返信する。なお、第1及び第2無線基地局AP,APから返信されるブロックAckフレームのPHYヘッダは同一である。トリガフレームとは、上記したようにブロックAckフレームの送信に利用する周波数を指示するためのフレームである。
なお、無線端末STAが第2無線基地局APの存在を予め把握しているような状況においては、無線端末STAはトリガフレームにて第1無線基地局APが利用する周波数位置と、第2無線基地局APが利用する周波数位置とをそれぞれ指示するとしても良い。この場合、第1及び第2無線基地局AP,APは、トリガフレームにて指示されている周波数位置を利用して、ブロックAckフレームを無線端末STAに返信する。
【0078】
なお、上記した制御装置によって、ブロックAckフレームを送信する際に利用する周波数が第1及び第2無線基地局AP,APの両者に予め通知されている場合、図13に示すように、無線端末STAはトリガフレームを送信しないとしても良い。
【0079】
以上説明した一実施形態によれば、オーバーヘッドの増加を抑止しつつ、高信頼な無線通信を実現させることを可能にする。
【0080】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
41…アンテナ、42…無線部、43…A/D変換部、44…復調部、45…ホストプロセッサ、46…メモリ、47…I/O部、48…変調部、49…D/A変換部、451…アドレス管理部、452…PHYパラメータ設定部、453…フレーム解析部、454…応答判定部、455…時間計測部、456…制御部、AP…第1無線基地局(メインAP)、AP…第2無線基地局(サブAP)、STA…無線端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13