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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】生体情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
A01K29/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021134769
(22)【出願日】2021-08-20
(62)【分割の表示】P 2020176441の分割
【原出願日】2016-07-14
(65)【公開番号】P2021191288
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 博一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 芳晴
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6783572(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/073754(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0095292(US,A1)
【文献】特開2006-42670(JP,A)
【文献】特開2007-135501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
G06T 7/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物を撮像した撮像画像から、予め定められた生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記動物から、個体を識別可能な固有情報を取得する固有情報取得部と、
撮像される前記動物から取得された前記固有情報を、予め記憶されている1つ以上の個体の識別情報と照合する照合部と、
前記照合の結果に基づき、前記生体情報を処理する処理部とを備え、
前記動物のトイレへの入室が検知されたとき、前記撮像が可能なように撮像部の電源を投入し、当該トイレからの退室が検知されたとき当該電源を遮断する、生体情報処理装置。
【請求項2】
前記識別情報は、個体の予め定めた部位の画像の特徴量を含み、
前記固有情報取得部は、
前記撮像画像から前記部位の特徴量を抽出する特徴抽出部を含み、
前記照合部は、
前記撮像画像から抽出された特徴量を、予め記憶されている1つ以上の特徴量と照合する特徴照合部を含む、請求項1に記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記照合の結果が一致を示すとき、前記生体情報を前記識別情報と関連付けて記憶するための記憶処理部を、含む、請求項2に記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記撮像画像は、前記動物の体表面の温度が画像化された温度画像を含み、
前記生体情報取得部は、
前記動物を撮像した撮像画像の温度画像から、前記動物の体表面の温度を取得する、請求項1から3のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
前記照合の結果が不一致を示すとき、前記撮像画像を記憶する、請求項1から4のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記動物が入室するトイレの床面に設けられた荷重センサを、さらに備え、
前記荷重センサの出力から前記入室または前記退室を検知する、請求項1から5のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記動物が入室するトイレの床面に設けられた荷重センサを、さらに備え、
前記荷重センサの出力から前記動物の体重と排泄量を測定する、請求項1から6のいずれか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
生体情報処理方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記生体情報処理方法は、
動物を撮像した撮像画像から、予め定められた生体情報を取得するステップと、
前記動物から、個体を識別可能な固有情報を取得するステップと、
撮像される前記動物から取得された前記固有情報を、予め記憶されている1つ以上の個体の識別情報と照合するステップと、
前記照合の結果に基づき、前記生体情報を処理するステップと、
前記動物のトイレへの入室が検知されたとき、前記撮像が可能なように撮像部の電源を投入し、トイレからの退室が検知されたとき当該電源を遮断するステップを、を備える、プログラム。
【請求項9】
前記生体情報処理方法は、さらに、
前記動物が入室するトイレの床面に設けられた荷重センサの出力から前記入室または前記退室を検知するステップを備える、請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記生体情報処理方法は、さらに、
前記動物が入室するトイレの床面に設けられた荷重センサの出力から前記動物の体重と排泄量を測定するステップを備える、請求項8または9に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報処理装置に関し、特に、動物の画像から取得される生体情報を処理する生体情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触でペットにストレスを与えることなく、異常を検知することのできるペットの生体データ計測システムが提供されている。例えば、特許文献1(特開2009-165416号公報)は、自然の状態で暮らすペットに対し積極的に刺激を与えるなどの方法で、ペットの視線を引き付けて顔画像を撮影し、撮影された画像データから、瞳孔の大きさ、目の温度、鼻の光沢度の少なくとも1つの生体データを抽出する。特許文献1では、この抽出データから、ペットの健康状態が判断されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-165416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、ペットの個体識別の方法を開示していない。近年は、何匹もペットを飼育する多頭飼いのケースが多くなりつつあり、1匹毎に生体データを管理したいとの要望があるが、特許文献1では、ペットの識別方法を提案していないために、当該要望に応えることは困難であった。
【0005】
それゆえに本開示の目的は、動物の個体を識別しながら個体の生体情報を処理することが可能な生体情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る生体情報処理装置は、動物を撮像した撮像画像から、予め定められた生体情報を取得する生体情報取得部と、動物から、個体を識別可能な固有情報を取得する固有情報取得部と、撮像される前記動物から取得された固有情報を、予め記憶されている1つ以上の個体の識別情報と照合する照合部と、照合の結果に基づき生体情報を処理する処理部と、を備える。
【0007】
好ましくは、識別情報は、個体の予め定めた部位の画像の特徴量を含み、固有情報取得部は、撮像画像から部位の特徴量を抽出する特徴抽出部を含み、照合部は、撮像画像から抽出された特徴量を、予め記憶されている1つ以上の特徴量と照合する特徴照合部を含む。
【0008】
好ましくは、処理部は、照合の結果が一致を示すとき、生体情報を識別情報と関連付けて記憶するための記憶処理部を、含む。
【0009】
好ましくは、撮像画像は、動物の体表面の温度が画像化された温度画像を含み、生体情報取得部は、温度画像から、動物の体表面の特定部位の表面温度を取得する。
【0010】
好ましくは、照合の結果が不一致を示すとき、撮像画像を記憶する。
【発明の効果】
【0011】
本開示のある局面では、動物の個体を識別しながら個生体情報を処理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るネコのトイレ200が3個並んだ状態を示す図である。
図2】トイレ200に、ネコが侵入する態様を模式的に示す図である。
図3】実施の形態1に係る撮像部20によるネコの顔の撮像画像202と、撮像画像202から抽出される顔の特徴量203を模式的に示す図である。
図4】実施の形態1に係る撮像部20によるネコの顔のサーモグラフィ画像204を示す図である。
図5】実施の形態に係る生体データ処理装置100のハードドウェア構成を模式的に示す図である。
図6】実施の形態1に係る生体データ処理装置100の機能構成を模式的に示す図である。
図7】実施の形態1に係る生体情報の格納の一例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態に係るデータ処理のためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、各実施の形態の体動信号処理装置を説明する。なお、以下参照される図面において同一の符号が付されている部位は、同一の機能を果たすものであるため、特に必要がない限り、その説明は繰り返さない。
【0014】
[概要]
本開示に係る生体データ処理装置100は、ペット等の動物の個体から当該個体を識別可能な情報であって、個体に固有の固有情報を取得し、また、動物の撮像画像から当該動物の生体情報を取得する。処理部は、取得された固有情報を、予め記憶された1つ以上の個体の識別情報と照合し、照合の結果に基づき当該生体データを処理する。
【0015】
したがって、ペット等の動物を、各個体の識別しながら、取得された生体情報を処理することができる。
【0016】
各実施の形態では、生体情報が取得されるべき個体を、ペットとして多頭飼育されているネコを例示するが、ネコに限定されず、動物一般に適用することができる。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態に係るネコのトイレ200が3個並んだ状態を示す図である。図2はトイレ200に、ネコが侵入する態様を模式的に示す図である。猫の行動に着目すると、トイレ200に入る時には、必ず、頭から入る。また、トイレ200は、入り口が設けられていることにより、確実に頭からトイレ200に入ることを促すことができる。
【0018】
猫の排泄習性として砂上で排泄することから、トイレ200の床面上には猫砂201が敷き詰めてある。さらに、トイレ200の床面には、荷重を測定する体重計を構成するロードセル14が設けられている。
【0019】
したがって、ネコがトイレ200に侵入した場合には、ロードセル14の出力は変化する。また、トイレ200には、後述する撮像部20を備える生体データ処理装置100が取付けらえている。撮像部20の被写体撮像方向は、図2に示すように、ネコがトイレ200の入り口から侵入した場合に、ネコの顔が撮像範囲に位置するように取付けられている。撮像部20は、通常の画像を撮影するカメラ16(後述する)および赤外線カメラであるサーモグラフィ17(後述する)を含む。したがって、トイレ200内のネコは、撮像部20により顔を中心に撮影されて、生体データ処理装置100は、撮像画像に含まれる顔の部分画像から個体を識別する個体に固有の固有情報を非接触で検出し、さらに、目および目の周辺の画像から検出される温度分布から体温を非接触で検出する。上記の固有情報は、顔画像から色成分を分析し、毛色の分布を分析することで取得される。
【0020】
(撮像画像と特徴量)
図3は、実施の形態1に係る撮像部20によるネコの顔の撮像画像202と、撮像画像202から抽出される顔の特徴量203を模式的に示す図である。撮像部20は、ネコがトイレ200の入り口から入ったときに、顔を中心にして顔の正面から撮影できるように、入り口とは反対側に設置されている。図3の(A)の撮像画像202は、ネコの顔の全体をほぼ正面から撮影した場合を示している。
【0021】
撮像画像202は、図3の(B)に示すように、顔の毛色の分布を示す顔画像の特徴量203を有する。特徴量203は、顔画像におけるR(赤),G(緑),B(青)の3原色の色分布を示している。一般的に、ネコの顔の毛色の分布は、個体に固有であって、当該個体を他と識別する情報となり得ることが知られている。
【0022】
なお、実施の形態1では、個体を識別する固有情報として、図3の(B)の毛色の分布を表す特徴量203を用いるが、これに限定されない。例えば、顔のパーツ(キズ、目、口、鼻等)の配置パターンの特徴量であってもよく、または両方の特徴量を組合わせたものであってもよい。組合わせを用いて個体識別を実施する場合には、特徴量203のみを用いる場合に比べて識別精度を向上させることができる。なお、顔のパーツの配置パターンの特徴量の抽出方法には、周知の技術を用いることができるので、ここでは詳細は繰返さない。
【0023】
図4は、実施の形態1に係る撮像部20によるサーモグラフィ画像204を示す図である。図4のサーモグラフィ17による撮像画像であるサーモグラフィ画像204では、顔表面の温度が色による区別されている。ここで、ネコの体温は、目および目の周辺で測定できることが知られているから、サーモグラフィ画像204において、上記の配置パターンのマッチングにより、目および目の周辺の位置を特定し、特定された位置の色情報からの温度を、すなわち体温を検出することができる。
【0024】
なお、図4では、左上に、目および目の周辺での測定体温(36.6℃)が表示され、下段には顔表面の温度が略25℃~36℃の範囲を有していることが示されているが、サーモグラフィ17から実際に出力されるサーモグラフィ画像204には、これら情報は含まれていない。
【0025】
(生体データ処理装置100の構成)
図5は、実施の形態に係る生体データ処理装置100のハードドウェア構成を模式的に示す図である。図5を参照して、生体データ処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)を有する制御部10を備える。制御部10には、外部の有線または無線のネットワークNTと通信するための通信部12、液晶などのディスプレイを含む表示部13、ロードセル14、ロードセル14のセンサを駆動するためのセンサ駆動部15、被写体を撮像するための撮像部20、および記憶部11を接続する。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびHDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体を含む。
【0026】
撮像部20は、CCD(Charge Coupled Device)等からなるカメラ16およびサー
モグラフィ17を含む。生体データ処理装置100の各部には、電源部18から電力が供給される。電源部18は、充電可能なバッテリを含む。ネットワークNTは、クラウドサーバ装置に相当するデータ蓄積部250が接続される。生体データ処理装置100は、ネットワークNTを介してデータ蓄積部250と通信する。なお、生体データ処理装置100は、自装置に対するユーザ指示を受付けるためのスイッチ等を含む操作部を備えてもよい。
【0027】
図6は、実施の形態1に係る生体データ処理装置100の機能構成を模式的に示す図である。図6の各部の機能は、主にCPUを有した制御部10が、記憶部11に格納されるプログラムを読出して実行することにより実現される。または、プログラムと回路の組合せにより実現される。
【0028】
図6を参照して、生体データ処理装置100は、撮像画像入力部30Aと、動物(ネコ)を撮像した撮像画像から、予め定められた生体情報を取得する生体情報取得部38と、動物の個体から、当該個体に固有の情報を取得する固有情報取得部32と、取得された固有情報を、記憶部11に予め記憶されている1つ以上の個体の識別情報と照合する照合部37と、この照合の結果に基づき、生体データを処理する処理部40と、を備える。撮像画像入力部30Aは、画像取得部30とサーモグラフィ画像取得部31を含む。画像取得部30は、カメラ16から出力される画像データを入力し、雑音処理等をした後に、撮像画像202を出力する。サーモグラフィ画像取得部31は、サーモグラフィ17から出力される撮像画像データを入力し、雑音処理等をした後のサーモグラフィ画像204を出力する。
【0029】
上記の識別情報は、動物の顔画像の特徴量を含み、固有情報取得部32は、撮像画像から顔画像の特徴量を抽出する特徴抽出部32Aを含む。また、照合部37は、撮像画像から抽出された特徴量を、記憶部11に記憶された1つ以上の個体の顔画像の特徴量と照合する特徴照合部37Aを含む。
【0030】
処理部40は、照合部37から出力される照合の結果が一致を示すとき、生体情報取得部38から出力される生体情報を、上記に述べた識別情報と関連付けて記憶部11に記憶するための記憶処理部42を、含む。また、処理部40は、照合の結果が不一致を示すときは、撮像画像入力部30Aから出力される画像、より特定的には画像取得部30からの出力画像を記憶部11の予め定めた領域に記憶する。
【0031】
処理部40は、取得された生体情報と識別子とをネットワークNTを介してデータ蓄積部250に格納するよう通信部12を制御する通信処理部43と、取得された情報(生体情報を含む)を表示するように表示部13を制御する表示処理部41を含む。
【0032】
温度分布分析部36は、サーモグラフィ画像取得部31から出力されるサーモグラフィ画像204を入力し、サーモグラフィ画像204から上記のパターンマッチングにより顔画像における目、目の周囲の領域を抽出し、抽出した領域の部分画像の色の分布を検出する。そして、温度分布分析部36は、検出した色の情報を生体情報取得部38に出力する。生体情報取得部38の温度取得部39は、温度分布分析部36からの色情報に基づき記憶部11に予め格納された色-温度の対応関係が登録された色温度テーブル(図示しない)を検索し、色温度テーブルから対応する温度データを読出す。これにより、生体情報取得部38により、ネコの生体情報として体温が取得される。取得された体温データは、処理部40に出力される。
【0033】
固有情報取得部32の特徴抽出部32Aは、画像取得部30から出力される撮像画像202を入力する。特徴抽出部32Aでは、顔認識部33が、目・鼻・口分析部35による上述したパターンマッチングより撮像画像202において顔の部分画像を特定する。色成分分析部34は、特定された部分画像の色分布を分析して、分析された色分布情報を照合部37に出力する。色分布情報は、ネコに固有の毛色の分布を示し、各個体の識別情報の一例である。
【0034】
照合部37は、固有情報取得部32から出力される固有情報(すなわち、毛色の色分布情報)と、記憶部11に予め格納されている1つ以上の識別情報とを照合する。1つ以上の識別情報は、トイレ200を使用する可能性がある各個体を一意に識別するための情報であり、実施の形態1では顔の毛色の分布を表す情報としている。照合部37の特徴照合部37Aは、固有情報取得部32からのトイレ200内のネコの色分布情報(固有情報)と、記憶部11の識別情報(トイレ200を使用する可能性がある各個体の顔の毛色の分布を表す情報)とを照合し、照合の結果(照合一致、不一致)を処理部40に出力する。
【0035】
処理部40は、上述の照合結果に基づき、生体情報取得部38からの生体情報(体温データ)を表示処理部41、記憶処理部42または通信処理部43により処理する。
【0036】
(生体情報の他の例)
実施の形態1では、ネコの生体情報として、体温を取得するが、生体情報の種類は、体温に限定されない。例えば、体重、鼻の乾きの程度等であってもよい。体重は、生体情報取得部38が、ネコがトイレ200に侵入した際のロードセル14の出力変化から検出する。また、鼻の乾きの程度は、生体情報取得部38が、特徴抽出部32Aからの出力に基づき、鼻の部位の色情報から検出する。
【0037】
(記憶データの内容)
図7は、実施の形態1に係る生体情報の格納の一例を示す図である。記憶部11には、1つ以上のネコの個体の識別情報51と、各識別情報51に関連付けて、体温データ52、体重データ53および鼻の乾きの程度を示すデータ54が格納されている。図7では、記憶部11におけるデータの格納形式を示したが、同様の格納形式に従って、データ蓄積部250において個体毎の生体情報が格納される。なお、データの格納式はこれに限定されない。
【0038】
(フローチャート)
図8は、本発明の実施の形態に係るデータ処理のためのフローチャートである。図8のフローチャートに従うプログラムは、予め記憶部11に格納されて、制御部10のCPUが記憶部11からこのプログラムを読出し、読出されたプログラムを実行することにより処理が実現される。
【0039】
まず、CPUは、トイレ200に、ネコが侵入(入室)したか否かを判断する(ステップS1)。この検出は、たとえば、ロードセル14の出力の変位が予め定められた閾値を超えたとき、対象(ネコ)が入室したと判断する。また、CPUは、入室したことを判断したときは、撮影可能なようにカメラ16およびサーモグラフィ17の電源を投入する。また、入室を判断した後において、CPUは、ロードセル14の出力の変位が予め定められた閾値を超えたと判断したときは、トイレ200からの退室と判断し、カメラ16およびサーモグラフィ17の電源を遮断する。これにより、消費電力を節約することができる。
【0040】
CPUは、ネコの入室を判断しない間は(ステップS1でNO)、ロードセルからの出力に基づき入室の判断を繰返す(ステップS1)。
【0041】
CPUは、ネコが入室したことを判断したとき(ステップS1でYES)、カメラ16およびサーモグラフィ17のシャッタ制御を行なう。これにより、入口付近におけるネコの顔を中心とした画像が撮影される(ステップS3)。
【0042】
撮影により取得された撮像画像202とサーモグラフィ画像204は、撮像画像入力部30Aを介して固有情報取得部32および温度分布分析部36に、それぞれ出力される。固有情報取得部32は、特徴抽出部32Aを用いて撮像画像202から顔の毛色の特徴量である色情報を取得し、照合部37に出力する(ステップS5)。
【0043】
照合部37では、特徴照合部37Aは固有情報取得部32から出力される毛色の色情報と、記憶部11の各個体の識別情報とを照合する。照合の結果(色情報が識別情報に一致するか否か)が処理部40に出力される。
【0044】
処理部40は、照合の結果が一致を示すか否かを判断する(ステップS7)。照合結果は一致を示さないと判断したとき(ステップS7でNO)、一連の処理は終了するが、一致を示すと判断したとき(ステップS7でYES)、処理はステップS9に移行する。
【0045】
ステップS9では、温度分布分析部36はサーモグラフィ画像204から、目と目の周囲の温度の分布を表す色分布情報を検出して、色分布情報を生体情報取得部38に出力する。生体情報取得部38では、温度取得部39が、温度分布分析部36からの色分布情報に基づき、色分布に対応した温度、すなわち体温を取得する(ステップS9)。
【0046】
処理部40は、生体情報取得部38からの生体情報、すなわち体温を表示処理部41、記憶処理部42または通信処理部43を用いて処理する。記憶処理部42は、体温を、記憶部11に、対応する識別情報51に関連付けて体温データ52として格納する。なお、ステップS9では、体重または鼻の乾きの程度を示す生体情報が取得されてもよい。その場合には、ステップS11では、体重および鼻の乾きの程度は、対応する識別情報51と関連付けて体重データ53および鼻の乾きの程度のデータ54として、記憶部11に格納される。
【0047】
実施の形態1における体温測定においては、目などの特徴部位をフォーカス撮影することで、画像処理における積分平均の精度を上げて、体温測定精度を向上させるようにしてもよい。
【0048】
また、顔画像の特徴量から非接触で個体識別、体温測定を可能とすることで、複数のトイレ200、多頭飼いにも対応可能となり、各個体の健康管理を個体に対してストレスを与えることなしに、また飼い主の負担も軽減しながら実現可能となる。
【0049】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1の変形例を説明する。図8では、個体が識別できたとき(すなわち、照合結果が一致を示すとき)に(ステップS7でYES)、生体情報を取得している(ステップS9)が、生体情報を取得する順序はこれに限定されない。例えば、生体情報を取得した後に、照合の一致・不一致の判定が実施されてもよい。この場合において、照合結果が不一致の場合には、処理部40は、撮像画像202を記憶部11の予め定めた領域に格納する。この結果、照合の不一致が予め定めた回数に達した場合には、すなわち予め定めた数の撮像画像202が格納されたときは、CPUは、照合不一致の回数が低減されるように、特徴照合部37Aに設定された照合の一致/不一致を判断するための参照閾値を変更する。または、撮像画像から、照合の不一致は、撮像範囲のずれに起因すると判断した場合には、カメラの撮影角度を調整する。
【0050】
(実施の形態3)
上記の各実施の形態では、個体を識別するために毛並みの色分布情報を用いたが、これに限定されない。例えば、固有情報取得部32は、動物の体内に埋め込まれた固体識別のための電子チップからの受信情報、撮像画像202から抽出される鼻紋の情報および個体に装着された首輪の印字情報等を取得し、これを個体の固有情報として用いてもよい。
【0051】
また、個体の固有情報として、個体の予め定めた部位の一例である顔の画像の毛色の特徴量を用いたが、特徴量を抽出する部位は、顔に限定されない。
【0052】
また、温度取得部39は、サーモグラフィ画像204から、体表面の特定部位の一例である目,目の周辺の表面温度を取得したが、表面温度の取得部位は、目,目の周辺に限定されない。
【0053】
(実施の形態4)
上記の各実施の形態の変形例を示す。各実施の形態では、生体データ処理装置100をトイレ200に設置したが、設置される対象はトイレ200に限定されない。測定対象の個体の顔画像を、ストレスを与えることなく撮像できる設置態様であればよく、例えば給水器、給餌器等に取付けるとしてもよい。
【0054】
(実施の形態5)
上記の各実施の形態の変形例を説明する。各実施の形態では、生体データ処理装置100はトイレ200と一体型に取付けたが、生体データ処理装置100は、トイレ200に着脱自在であってもよい。または、ロードセル14、カメラ16およびサーモグラフィ17をトイレ200に取付けて、制御部10は、これらの出力データを遠隔通信により受信して処理するとしてもよい。
【0055】
(実施の形態6)
上記の各実施の形態の変形例を説明する。各実施の形態では、生体情報として体温、体重、鼻の乾きの程度を取得したが、これらに限定されない。例えば、ロードセル14の出力に基づきトイレ200への入室前と退室後のロードセル14の出力の差異に基づき、個体の排泄量(尿量等)と排泄時間とを測定し、これを識別情報51と関連付けて記憶するようにしてもよい。これにより、排泄量と時間を、個体毎に管理することが可能となる。
【0056】
(実施の形態7)
実施の形態7では、上述の各実施の形態に従う処理をCPUに実行させるためのプログラムが提供される。このようなプログラムは、生体データ処理装置100のコンピュータ(制御部10)に付属するフレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、記憶部11のHDDなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークNTを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0057】
なお、プログラムは、コンピュータのOS(オペレーティングシステム)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。
【0058】
また、実施の形態7にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態7にかかるプログラムに含まれ得る。
【0059】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0060】
[実施の形態の効果]
特許文献1のペット生体データ計測システムによる非接触での測定においては、顔画像を取得するために、ペットに匂いなどの積極的な刺激を与えることで、視線をカメラに誘導している。
【0061】
しかし、ペットが、積極的な刺激に反応して、カメラ等の期待する方向に視線を向けるとは限らない。その場合には、顔画像を撮影することはまた、識別できないということは、健康状態を確認できない。1頭飼いのユーザにのみ、適用可能な技術と限定されているため、多頭飼いをしているユーザには、利用できないとの課題がある。これに対し、各実施の形態の生体データ処理装置100は、各個体を識別しながら生体情報を処理する構成であるから、この課題を解消することができる。
【0062】
また、特許文献1は、ペットに積極的に刺激を与えることで、ペットの視線をカメラに誘導することが必須となっているおり、また、必ずしも、匂いなどの積極的な刺激に対して、期待する方向に視線を誘導し、顔画像が撮影できるとは、限らない。また、識別できないということは、健康状態を確認できない。これに対して、各実施の形態では、トイレ200に個体が侵入するという自然な行動に伴い顔画像を撮影する構成であるから、特許文献1の撮影ができないケースを防止することができる。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
10 制御部、11 記憶部、12 通信部、13 表示部、14 ロードセル、16 カメラ、17 サーモグラフィ、18 電源部、20 撮像部、30 画像取得部、30A 撮像画像入力部、31 サーモグラフィ画像取得部、32 固有情報取得部、32A 特徴抽出部、33 顔認識部、34 色成分分析部、35 目・鼻・口分析部、36 温度分布分析部、37 照合部、37A 特徴照合部、38 生体情報取得部、39 温度取得部、40 処理部、41 表示処理部、42 記憶処理部、43 通信処理部、51 識別情報、52 体温データ、53 体重データ、54 鼻の乾きの程度のデータ、100 生体データ処理装置、200 トイレ、202 撮像画像、203 特徴量、204 サーモグラフィ画像、250 データ蓄積部、NT ネットワーク。
図1
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図8