(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】インサート付きバンパービーム
(51)【国際特許分類】
B60R 19/18 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
B60R19/18 P
(21)【出願番号】P 2021513253
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2019055866
(87)【国際公開番号】W WO2020053674
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/056868
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジボー,エリー
(72)【発明者】
【氏名】ケヤティ,ヤニス
(72)【発明者】
【氏名】メネガディ,ナビル
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105691334(CN,A)
【文献】特開2013-123927(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00-19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用バンパービームのためのクロスメンバ(1)であって、
-横方向に沿って延在する外側ビーム(2)であって、上部ビーム壁(12)と、下部ビーム壁(14)と、上部ビーム壁(12)及び下部ビーム壁(14)を接続する前部ビーム壁(16)とを備える主ビーム部(3)と、上部ビーム壁(12)の後端及び下部ビーム壁(14)の後端に沿ってそれぞれ横方向に延在する上部ビームフランジ(20)及び下部ビームフランジ(22)と、を具備し、前記後端が、前部ビーム壁(16)の反対側に延在し、前記前部ビーム壁(16)から長手方向に離間され、前記上部ビーム壁(12)、下部ビーム壁(14)及び前部ビーム壁(16)が、前部ビーム壁(16)と反対側の後部方向に開口するビーム内部体積(17)を共に画定する、外側ビーム(2)と、
-前記ビーム内部体積(17)の少なくとも一部の内側に延在する内側補強要素(4)であって、前記内側補強要素(4)が、前部ビーム壁(16)に向かって突出する少なくとも2つの補強リブ(24)を備え、前記補強リブ(24)が、前部ビーム壁(16)とは反対側の、前記補強リブ(24)の少なくとも後端で、横方向に延在する上部横ブランチ(26)及び下部横ブランチ(28)によって共に接続されている、内側補強要素(4)と、
を備え、
-前記上部横ブランチ(26)及び下部横ブランチ(28)が、それぞれ、外側ビーム(2)の上部及び下部ビームフランジ(20)及び(22)に取り付けられ、
各補強リブ(24)が前部ビーム壁(16)に当接し、上部横ブランチ(26)の長さ、上部ビーム壁(12)の長さ、下部横ブランチ(28)の長さおよび下部ビーム壁(14)の長さが長手方向で測定されるとき、上部横ブランチ(26)の長さが上部ビーム壁(12)の長さよりも短く、下部横ブランチ(28)の長さが下部ビーム壁(14)の長さよりも短
く、
外側ビーム(2)が金属部品であり、内側補強要素(4)がプラスチック部品である、クロスメンバ(1)。
【請求項2】
クロスメンバ(1)が、ビーム内部体積(17)の反対側の、外側ビーム(2)の外側に取り付けられた外側補強要素(6)をさらに備える、請求項1に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項3】
外側補強要素(6)がプラスチック部品である、請求項
2に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項4】
上部横ブランチ(26)が、上部ビーム壁(12)の後端及び上部ビームフランジ(20)のみに延在し、下部横ブランチ(28)が、下部ビーム壁(14)の後端及び下部ビームフランジ(22)のみに延在する、請求項1~請求
項3のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項5】
各補強リブ(24)が、上部ビーム壁(12)に当接する上端部(23)と、下部ビーム壁(14)に当接する下端部(25)とを備える、請求項1~請求
項4のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項6】
内側補強要素(4)が、中央補強部(30)と、横方向に沿って前記中央補強部(30)の両側に延在する2つの側面補強部(32)とをさらに備え、前記中央補強部(30)がビーム内部体積(17)内に中央補強ビーム内部体積(34)を画定し、前記側面補強部(32)がビーム内部体積(17)内に側面補強ビーム内部体積(36)をそれぞれ画定し、前記中央補強ビーム内部体積(34)における内側補強要素(4)の体積密度が、前記側面補強ビーム内部体積(36)における内側補強要素(4)の体積密度よりも大きい、請求項1~請求
項5のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項7】
内側補強要素(4)が、中央補強部(30)と、横方向に沿って前記中央補強部(30)の両側に延在する2つの側面補強部(32)とをさらに備え、前記中央補強部(30)が、ビーム内部体積(17)内に中央補強ビーム内部体積(34)を画定し、前記側面補強部(32)が、ビーム内部体積(17)内に側面補強ビーム内部体積(36)をそれぞれ画定し、前記中央補強ビーム内部体積(34)における内側補強要素(4)の体積密度が15%~50%であり、前記側面補強ビーム内部体積(36)における内側補強要素(4)の体積密度が5%~50%である、請求項1~請求
項6のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項8】
内側補強要素(4)と外側ビーム(2)との取り付け領域における接着強度が、ラップせん断試験によって測定されるとき、10MPa超である、請求項1~請求
項7のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項9】
外側補強要素(6)と外側ビーム(2)との取り付け領域における接着強度が、ラップせん断試験によって測定されるとき、10MPa超である、請求項2~請求
項8のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項10】
外側ビーム(2)が950MPaの最小引張強度を有する、請求項1~請求
項9のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項11】
主ビーム部(3)が、中央ビーム部(8)と、前記中央ビーム部(8)の両側に横方向に沿って延在する2つのサイドビーム部(10)とを備え、前記中央ビーム部(8)が少なくとも0.6の衝突延性、及び少なくとも75°の最大曲げ角度を有する、請求項1~請求
項10のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項12】
外側ビーム(2)が、鋼製テーラーウェルドブランク又は鋼製テーラーロールドブランクからホットスタンプされる、請求項1~請求
項11のいずれか一項に記載のクロスメンバ(1)。
【請求項13】
外側ビーム(2)が、Ductibor1000(R)製の中央ビーム部(8)と、Usibor1500(R)で製造される2つのサイドビーム部(10)とを有する鋼製テーラーウェルドブランクからホットスタンプされる、請求
項12に記載のクロスメンバ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用バンパービームのためのクロスメンバに関する。本発明はさらに、このようなクロスメンバを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バンパービームクロスメンバは、自動車の前部及び/又は後部に配置され、一般に、通常はボルト締めによりクラッシュボックスに取り付けられる。クラッシュボックスは、それ自体が車両構造体に取り付けられる。前部又は後部の衝突の場合、クロスメンバは、障害物と最初に接触する車両の機械的要素である。高速衝突の場合、クロスメンバは、車両衝突管理システムに荷重を伝達する機能を有する。低速衝突の場合、クロスメンバが組み立てられたクラッシュボックスは、車両構造体の残りの部分を保護しつつ衝突エネルギーを吸収する機能を有する。いずれの場合も、衝突時にクロスメンバは変形するが、亀裂は生じないことが期待される。
【0003】
そのため、バンパービーム用クロスメンバは、衝突の荷重を車両の衝突管理システムに伝達するための十分な抵抗力を有し、同時に、衝撃点において亀裂を生じることなくエネルギーを吸収できる必要がある。
【0004】
衝突時のクロスメンバの適切な挙動を保証するために、公式のコンソーシアムによって、くつかの標準化された試験が規定されている。例えば、自動車修理研究協議会(RCAR)は、バンパー試験及び低速構造物衝突試験を規定する。また、クロスメンバは、ユーロNCAP(新車アセスメントプログラム)及びIIHS(米国道路安全保険協会)の「前面衝突全幅剛性障壁50Km/h」などの、フルラップ前面衝突試験としても知られている車両全体に関する他の試験にも関係する。
【0005】
さらに、自動車メーカは、クロスメンバの評価をさらに向上させるために、独自の試験手順を規定している。このような試験は標準化されておらず、一般に公開されていない。しかしながら、多くの自動車メーカは、ポール衝突試験として知られている、車両を低速、例えば時速約10Km/hで、車両の幅線方向の中央に配置された堅いポールに衝突させる試験を規定していることが知られている。このような試験は、車両を低速で操縦する場合、小さな衝撃をシミュレートすることを目的とする。
【0006】
このような試験の間、クロスメンバの中央部は、衝撃時にポールによって加えられる、非常に局所的な荷重の下で亀裂を発生させることなく変形するために、衝撃点において十分なエネルギー吸収能力及び十分な延性を有する必要がある。一方、例えばフルラップ前面衝突試験を考慮すると、クロスメンバの全幅は、障害物によって加えられる、非常に高い荷重の下で破損せず、かつ衝撃のエネルギーを車両衝突管理システムに伝達するために、十分な機械的抵抗を有する必要がある。
【0007】
座屈の開始を遅らせることによって、衝突の圧縮荷重に対するクロスメンバの抵抗力を増加することを意図して、クロスメンバの形状の設計に1つ又は複数のビードを含めることは、先行技術で知られている。
【0008】
クロスメンバの異なる部品は共に組み立てられて、次いでクロスメンバはクラッシュボックスにボルト締めされてバンパービームアセンブリを形成する。前記バンパービームアセンブリは、車両の残りの部分に装着される前に、車両の残りの部分とは独立して、電着(ED)によってコーティングされる。EDコーティング工程は、前記アセンブリを構成する個々の部品に対してではなく、バンパービームアセンブリに対して実施される。これは、組み立て工程に溶接が含まれていると、それによりEDコーティングが蒸発し、溶接された領域が前記EDコーティングによって保護されずに残るからである。
【0009】
少なくとも金属製外側ビームと、金属製外側ビームの内側に挿入されたプラスチック製補強要素とを用いて、バンパービームのためのクロスメンバを製造することが、先行技術から知られている。プラスチック製補強要素は、通常、EDコーティング工程に伴う高温に耐えることができないため、プラスチック製補強要素は、必然的にバンパービームアセンブリがEDコーティングされた後に、クロスメンバの外側ビーム内に挿入される。
【0010】
プラスチック製補強要素を使用することで、重量を大幅に増加させることなく、衝突時、クロスメンバによって吸収されるエネルギー量が増加する。
【0011】
しかしながら、プラスチック製内側補強材を使用すると、製造工程及び部品設計の点でいくつかの課題が発生する。例えば、オーバモールディングを使用する場合、先に組み立てられEDコーティングされたバンパービームアセンブリは、オーバモールディングツールに対して緊密で漏れがないように嵌合させるために、非常に厳しい幾何公差を満たさなければならない。バンパービームアセンブリなどの機械溶接されたアセンブリシステムにおいて、このような厳しい幾何公差を達成することは非常に困難であり、そのために、メーカは、特別な時間とコストのかかる対策を実施する必要がある。このような対策を講じても、メーカは多くの製品品質問題にさらされ、大量の不合格品に直面するであろう。さらに、外側ビームと補強要素との間での良好な協働を保証するために、衝突時に2つの部品が接着された状態を維持する必要がある。衝撃時に部品間の良好な接着を保証するためには、外側ビームの接触面を多く備える補強要素を設計する必要がある。これにより、補強要素の表面には、必ずしもエネルギーを吸収するために作用するのではなく、外側ビームとの良好な接着を保証するためだけに作用する表面が必要となる。換言すれば、これは、エネルギー吸収のために最適化されていないプラスチック補強形状を設計することにつながる。あるいは、部品間の良好な接着は、加熱活性化接着剤の硬化などの、製造工程で追加の時間及びコストがかかるステップを実施することによって保証されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の1つは、エネルギー吸収の点で最適化され、特別な予防措置無しに容易に製造できる、バンパービームのためのクロスメンバを提供することによって、これらの制限を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、以下を備えるバンパービームのためのクロスメンバに関する。
【0014】
-横方向に沿って延在する外側ビームであって、上部ビーム壁と、下部ビーム壁と、上部ビーム壁と下部ビーム壁とを接続する前部ビーム壁と、を具備する主ビーム部と、上部ビーム壁の後端及び下部ビーム壁の後端に沿ってそれぞれ横方向に延在する上部ビームフランジ及び下部ビームフランジと、を備え、前記後端が、前部ビーム壁の反対側に延在し、前記前部ビーム壁から長手方向に対して離間され、前記上部ビーム壁、下部ビーム壁及び前部ビーム壁が、前部ビーム壁と反対側の後部方向に開口するビーム内部体積を共に画定する外側ビームと、
-前記ビーム内部体積の少なくとも一部の内側に延在する内側補強要素であって、前記内側補強要素は、前部ビーム壁に向かって突出する少なくとも2つの補強リブを備え、前記補強リブが、前部ビーム壁とは反対側の、前記補強リブの少なくとも後端で、横方向に延在する上部横ブランチ及び下部横ブランチによって共に接続されている内側補強要素と、
を備え、
-前記上部及び下部横ブランチは、それぞれ、外側ビームの上部及び下部ビームフランジに取り付けられ、
各補強リブは前部ビーム壁に当接し、長さが長手方向で測定されるとき、上部横ブランチの長さは上部ビーム壁の長さよりも短く、下部横ブランチの長さは下部ビーム壁の長さよりも短い。
【0015】
本発明を適用することにより、圧縮衝撃力の影響によって外側ビームが開口することを防止し、衝突時に、当接する補強リブと前部ビーム壁との接点によって提供される部品間の大きい接触面積を介して接着を維持することによって、2つの部品は効果的に共に協働し、また、衝突時に、エネルギーを吸収するように作用しない横ブランチのプラスチック材料の量を最小限に抑える、金属製外側ビームとプラスチック製補強要素とを有するクロスメンバを製造することが可能になる。
【0016】
本発明によるクロスメンバは、単独で、又は任意の可能な技術的組み合わせで、請求項2~請求項19の特徴も具備することができる。
【0017】
また、本発明は、以下のステップを備える、上述したクロスメンバを製造する方法にも関する。
【0018】
-外側ビームを提供するステップ、
-内側補強要素を提供するステップ、
-少なくとも、外側ビームの上部ビームフランジを内側補強要素の上部横ブランチに、前記外側ビームの下部ビームフランジを前記内側補強要素の下部横ブランチに固定することによって、内側補強要素を外側ビームに取り付けるステップ。
【0019】
本発明による方法は、単独で、又は任意の可能な技術的組み合わせで、請求項21~請求項26の特徴も具備することができる。
【0020】
本発明の他の態様及び利点は、例示によって与えられ、添付図面を参照してなされた以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態によるクロスメンバの正面斜視図である。
【
図3】
図1のクロスメンバの分解背面斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、クロスメンバの外側ビームを形成するためのブランクの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明では、「上部」、「下部」、「前部」、「後部」、「横」及び「長手」という用語は、取り付けられた車両の通常の方向に従って定義される。より詳細には、「上部」及び「下部」という用語は、車両の仰角方向に従って定義され、「前部」、「後部」及び「長手」という用語は、車両の長手方向に従って定義され、「横」という用語は、車両の幅に従って定義される。「実質的に平行」又は「実質的に垂直」とは、平行又は垂直方向から15°以下のずれが生じ得る方向を意味する。
【0023】
より具体的には、「衝突延性」としても知られる「破壊ひずみ」という用語及び「最大曲げ角度」としても知られる「臨界曲げ角度」という用語は、Pascal DietschらによってMetallurgical Research Technology Volume 114,Number 6,2017の「Methodology to assess fracture during crash simulation:fracture strain criteria and their calibration」において定義された破壊ひずみ基準及び臨界曲げ角度基準を指す。臨界曲げ角度(最大曲げ角度としても知られる)は、標準化されたVDA-238-100標準に従って変形されたサンプルの外側面で最初の亀裂が検出される角度を定義する。破壊ひずみ(衝突延性としても知られる)は、臨界曲げ角度に達したときの変形点における、材料内の関連する等価ひずみである。
【0024】
図1及び
図2を参照して、自動車用バンパービームのためのクロスメンバ1について説明する。クロスメンバ1は、少なくとも外側ビーム2と内側補強要素4とを備える。特定の実施形態によれば、クロスメンバ1は、外側補強要素6をさらに備える。クロスメンバは、一般に、例えば2つのクラッシュボックス7のセットを介して、外側ビーム2の両側で、車両の残りの部分に取り付けられる。クロスメンバ1及びクラッシュボックス7のアセンブリは、バンパービームアセンブリと呼ばれる。前部クロスメンバ1の場合には前部衝突時に、又は後部クロスメンバ1の場合には後部衝突時に、
図1及び
図2に示すように、クロスメンバ1は圧縮衝撃力Fを受ける。
【0025】
外側ビーム2は、横方向に沿って延在し、主ビーム部3と、主ビーム部3の両側に横方向に沿って延在する2つのビーム端部5とを備える。前記ビーム端部5における外側ビーム2の形状は、
図2に示すように、クロスメンバ1をクラッシュボックス7に組み立てるために適した、平坦又は他の任意の形状とすることができる。
【0026】
主ビーム部3は、前記主ビーム部3の両端に横方向に延在し、かつ主ビーム部3の形状と2つのビーム端部5との間の遷移を保証する形状を有する、2つのビーム遷移部38を備える。
【0027】
主ビーム部3は、圧縮衝撃力Fを車両衝突管理システムに伝達することによって、前記圧縮衝撃力Fのエネルギーを吸収し、かつ車両への侵入を阻止するように機能する。主ビーム部3は、共に車両の仰角方向に実質的に垂直な上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14と、前記上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14を接合し、かつ前記上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14に実質的に垂直な前部ビーム壁16とを備える。クロスメンバ1が車両に取り付けられるとき、上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14は、例えば、実質的に水平である。変形例によれば、上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14は、前部ビーム壁16からクロスメンバ1の後部に向かって発散する方向に延在する。
【0028】
上部ビーム壁12、下部ビーム壁14及び前部ビーム壁16は、共に前部ビーム壁16の反対側の後部方向に対向して開口するビーム内部体積17を画定する。前部クロスメンバの場合には、後部方向は車両の後部を指向し、後部クロスメンバの場合には、後部方向は車両の前部を指向する。
【0029】
主ビーム部3は、上部ビーム壁12の後端に沿って横方向に延在する上部ビームフランジ20と、下部ビーム壁14の後端に沿って横方向に延在する下部ビームフランジ22とをさらに備える。上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14の後端は、それぞれ、前部ビーム壁16の反対側に後部方向に延在する。
【0030】
特定の実施形態によれば、外側ビーム2は、例えば鋼又はアルミニウムなどの金属材料で製造される。
【0031】
特定の実施形態によれば、外側ビーム2は、衝突時の高い応力に耐えるために、950MPaの最小極限引張強度を有する。
【0032】
図1~
図3に見られる特定の実施形態によれば、主ビーム部3は、中央ビーム部8と、前記中央ビーム部8の両側に沿って横方向に延在する2つのサイドビーム部10とをさらに備え、前記中央ビーム部8は、前記サイドビーム部10よりも高い衝突延性を有する。この実施形態では、中央ビーム部8は、例えば、その高い衝突延性のおかげで亀裂を生じることなく変形することにより、ポール衝突試験中、クロスメンバ2の中央の非常に高い応力集中に有利に適応し、一方、サイドビーム部10は変形に耐え、それにより、そのようなポール衝突試験中又は前面衝突試験などの高速衝撃試験中に、クロスメンバの物理的一体性を保証する。
【0033】
一実施形態によれば、外側ビーム2は、ホットスタンプされたテーラード溶接ブランクから製造される。
【0034】
外側ビーム2は、例えば、プレス硬化鋼部品である。より具体的には、中央ビーム部8は、例えば、炭素含有量は0.06重量%~0.1重量%であり、マンガン含有量が1.4重量%~1.9重量%であるプレス硬化鋼で製造される。さらに具体的には、中央ビーム部8の鋼組成は、合金元素としてNb、Ti、Bをさらに含んでもよい。中央ビーム部8は、例えば、少なくとも0.6の衝突延性、少なくとも75°の最大曲げ角度、1000MPa超の極限引張強度、及び700~950MPaの降伏強度を有するDuctibor1000(R)で製造される。
【0035】
各サイドビーム部10は、例えば、1300MPa超の引張強度を有するプレス硬化鋼で製造される。一実施形態によれば、サイドビーム部10の鋼組成物は、例えば、重量%で、0.20%≦C≦0.25%、1.1%≦Mn≦1.4%、0.15%≦Si≦0.35%、≦Cr≦0.30%、0.020%≦Ti≦0.060%、0.020%≦Al≦0.060%、S≦0.005%、P≦0.025%、0.002%≦B≦0.004%を含み、残りは鉄及び、精練に起因する不可避の不純物である。この組成範囲により、プレス硬化後のサイドビーム部10の引張強度は、1300~1650MPaとなる。
【0036】
別の実施形態によれば、サイドビーム部10の鋼組成物は、例えば、重量%で、0.24%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.10%≦Si≦0.70%、0.015%≦Al≦0.070%、Cr≦2%、0.25%≦Ni≦2%,0.015%≦Ti≦0.10%、Nb≦0.060%、0.0005%≦B≦0.0040%、0.003%≦N≦0.010%、S≦0.005%、P≦0.025%、%を含み、残りは鉄及び、精練に起因する不可避の不純物である。この組成範囲により、プレス硬化後のサイドビーム部10の引張強度は、1800MPa超となる。
【0037】
例えば、サイドビーム部10は、Usibor1500(R)又はUsibor2000(R)で製造される。
【0038】
さらなる特定の実施形態によれば、
図1に示すように、前部ビーム壁16はビード18を備え、ビード18は、それぞれが外側ビーム2の幅の少なくとも一部に沿って横方向に沿って延在し、かつ仰角方向に上下に配置される。前記ビード18は、その形状が衝突時に圧縮衝撃力Fと実質的に平行な要素を含むので、座屈の開始を遅らせることにより、圧縮荷重下での外側ビーム2の抵抗を有利に増加させることができる。
【0039】
図1~
図3に示す内側補強要素4は、ビーム内部体積17の少なくとも一部の内側に延在する。内側補強要素4は、前部ビーム壁16に向かって突出する少なくとも2つの補強リブ24を備える。前記補強リブ24は、その前端で前部ビーム壁16に当接し、前部ビーム壁16とは反対側の前記補強リブ24の少なくとも後端で、横方向に延在する上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28によって共に接続されており、前記上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28は、それぞれ、外側ビーム2の上部及び下部ビームフランジ20、22に取り付けられる。例えば、各補強リブ24の前端は、前記補強リブ24が前部ビーム壁16に当接する領域において、前記前部ビーム壁16の形状と実質的に一致する形状tを有する。例えば、これは、前部ビーム壁16にビード18が存在する場合、補強リブ24の前端の形状が、
図3に示すように前記ビード18の形状に概ね追従することを意味する。
【0040】
特定の実施形態では、内側補強要素4は、中央補強部30と、前記中央補強部30の両側に横方向に沿って延在する2つの側面補強部32とを備える。前記中央補強部30は、ビーム内部体積17内に中央補強ビーム内部体積34を画定し、前記側面補強部32は、それぞれビーム内部体積17内に側面補強ビーム内部体積36を画定する。
【0041】
上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28が存在することにより、有利には、内側補強要素4は単一の部品で作られ、外側ビーム2に取り付けられる前に、それ自体が良好な構造的一体性を有し、かつ自立することを保証する。これにより、前記内側補強4は、外側ビーム2に取り付けられる前に、容易に製造、保管、かつ取り扱うことが保証される。
【0042】
また、圧縮衝撃力Fが、前部ビーム壁16に局所的に、例えばポール衝突試験の場合において、前記前部ビーム壁16の中央に加えられるとき、上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28は、圧縮衝撃力Fから生じる荷重が内側補強要素4内で横方向に分散されることを保証するように機能し、従って、圧縮衝撃力Fが加えられる領域に局所的に配置された補強リブ24だけでなく、全ての補強リブ24がエネルギー吸収に寄与することを保証するようにさらに機能する。
【0043】
さらに、衝突時に、前部ビーム壁16に加えられた圧縮衝撃力Fによって、外側ビーム2は、それ自体が仰角方向に開口する傾向がある。換言すれば、圧縮衝撃力Fは、上部ビーム壁12と前部ビーム壁16との間の角度を増加し、下部ビーム壁14と前部ビーム壁16との間の角度を増加するように作用する。換言すれば、衝撃時、上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14は、互いに発散方向に離れる傾向がある。上部壁12及び下部壁14が、前記圧縮衝撃力Fに対して実質的に平行に維持されず、圧縮衝撃力Fの方向から遠ざかるようにこじ開けられるため、このように外側ビーム2が開口することは、クロスメンバ1によって吸収されるエネルギー量を低下させるおそれがある。換言すれば、圧縮衝撃力Fによって前記外側ビーム2が、こじ開けられる場合に、外側ビーム2が屈曲しない動きによって吸収される前記圧縮衝撃力Fによるエネルギーは、衝突時に、前記壁12及び14が圧縮衝撃力Fに対して実質的に平行を維持する場合に、下部壁12及び上部壁14の前記圧縮衝撃力Fに対する抵抗によって吸収されるエネルギーよりもはるかに小さい。有利には、内側補強4は、それ自体が補強リブ24に接続されている上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28を介して、上部及び下部ビームフランジ20、22の連結を提供するので、内側補強要素4は、圧縮衝撃力Fによる開口の影響を打ち消し、衝突時、上部壁12及び下部壁14が圧縮衝撃力Fに対して実質的に平行を維持することを保証するのに役立つ。
【0044】
上述説明に見られるように、上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28は、前記横ブランチを上部及び下部ビームフランジ20、22に接着することと、それらが補強リブ24間に提供する連結とにより、衝突時のエネルギー吸収に寄与する。換言すれば、上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28は、それ自体が衝突時に機械的エネルギーを吸収することを期待されているのではなく、むしろ、補強リブ24同士、及び内側補強要素4と外側ビーム2との、良好な結合とそれによる協働を促進することによって、間接的にエネルギー吸収を向上することが期待されている。このことを考慮すると、横ブランチ26、28は、圧縮衝撃力Fのエネルギーが吸収される方向である圧縮衝撃力Fに実質的に平行な方向に延在する大きな構成要素を有する必要はない。従って、本発明の特徴は、長さが長手方向で測定されるとき、上部横ブランチ26の長さが上部ビーム壁12の長さよりも短く、下部横ブランチ28の長さが下部ビーム壁14の長さよりも短いことである。横ブランチ26、28の長さを長手方向、すなわち圧縮衝撃力Fと実質的に平行な方向において限定することにより、横ブランチ26、28の設計は、衝突時にそれらの結合の役割に適合するように最適化され、それにより、内側補強要素4の製造に伴う材料の量を低減することにより、製造工程及び製造コストを最適化する。
【0045】
一実施形態によれば、横ブランチ26、28は、上部及び下部ビームフランジ20、22上にのみ延在する。換言すれば、横ブランチ26、28は、上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14上で、圧縮衝撃力Fに実質的に平行な長手方向には延在しない。
【0046】
図2及び
図3に示す別の実施形態によれば、長さが長手方向で測定されるとき、上部横ブランチ26の長さは、上部ビーム壁12の長さの1%~30%であり、下部横ブランチ28の長さは、下部ビーム壁14の長さの1%~30%である。横ブランチ26、28の長さの最小値は、後述するように、内側補強要素4のビーム内部体積17への把持及び嵌合を容易にする楔を形成するために、横ブランチ26、28に長手方向に延在する小さな部分を設けることが、外側ビーム2への内側補強要素4の組み立て工程中に有利となることができるという事実によって与えられる。一方、横ブランチ26、28の長さの最大値は、内側補強要素4の製造工程及び製造コストを最適化するために、横ブランチ26、28のサイズを最適化する必要性によって決定される。例えば、上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14が長手方向に70mmを測定する場合、横ブランチ26、28の長さは0.7mm~21mmである。
【0047】
特定の実施形態では、上部横ブランチ26は、上部ビーム壁12の後端及び上部ビームフランジ20のみに延在し、下部横ブランチ28は、下部ビーム壁14の後端及び下部ビームフランジ22のみに延在する。これは、上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28が、上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14の前部分には延在しないことを意味する。上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14の後端に横ブランチ26、28の一部が存在することは、後述するように、ビーム内部体積17での内側補強4の嵌合工程を容易にするように機能することができる。
【0048】
補強リブ24は、圧縮衝撃力Fと実質的に平行なその指向により、圧縮衝撃力Fの影響下でクロスメンバ1によって吸収されるエネルギーを増加させることに寄与する。補強リブ24が前部ビーム壁16に当接することにより、前記補強リブ24は、衝突直後からエネルギーの吸収を開始し、それにより吸収されるエネルギーの量を最適化する。
【0049】
特定の実施形態では、補強リブ24は、
図2に示す内側補強要素4の側面補強部32の場合のように、内側補強要素4の幅の少なくとも一部に沿って一連のV字形状に配置される。この構成において、2つの連続した補強リブ24は互いに隣接しており、互いに角度αを形成する。有利には、このような構成では、補強リブ24の前端は、前部ビーム壁16の大きな表面積を覆い、これは、衝突時の良好なエネルギー吸収と、内側補強要素4と外側ビーム2との間の良好な接着に寄与すると同時に、内側補強要素4の総体積を最小化し、これにより製造工程を容易にし、製造及び材料コストを小さくする。
【0050】
特定の実施形態では、補強リブ24は、
図2に示す内側補強要素4の中央補強部30の場合のように、内側補強要素4の少なくとも一部において、全て同じ方向を指向する。この構成において、前記補強リブ24は、すべて互いに実質的に平行である。有利には、このような構成は、所定の体積内に大量の補強リブ24を嵌合することを可能にし、それにより、前記体積内の補強リブの体積密度を増加させ、それにより、この領域における内側補強要素4のエネルギー吸収の寄与を増加させる。所定の体積内の体積密度とは、所定の体積内の内側補強要素4によって占有される体積と、所定の体積の総体積との比を意味する。例えば、この構成は、クロスメンバ1の中央に圧縮衝撃力Fが加えられるポール衝突試験の場合に、エネルギー吸収を増加させるために、中央補強部30に用いられる。
【0051】
特定の実施形態では、補強リブ24は、内側補強要素4の少なくとも一部で互いに交差する。例えば、補強リブ24は、互いにX字形状のパターンを形成する。換言すれば、補強リブ24は、長手方向に延在する線に沿って互いに交差し、互いにゼロではない角度を形成する。有利には、このような構成は、所定の体積内に大量の補強リブ24を嵌合することを可能にし、それにより、前記体積内の補強リブ24の体積密度を増加させ、それにより、この領域における内側補強要素4のエネルギー吸収の寄与を増加させる。例えば、この構成は、クロスメンバ1の中央に圧縮衝撃力Fが加えられるポール衝突試験の場合に、エネルギー吸収を増加させるために、中央補強部30に用いられる。
【0052】
上述した実施形態は、単一の内側補強要素4において、互いに組み合わせることができることに留意されたい。例えば、
図2及び
図3に示すように、側面補強部32は、V字形状に配置された補強リブ24を備え、中央補強部30は、互いに平行な補強リブ24を備える。異なる補強リブパターンを組み合わせることにより、必要に応じてクロスメンバ1の各領域における内側補強要素4の挙動を最適化することができる。
【0053】
特定の実施形態では、補強リブ24の少なくとも一部は、上部ビーム壁12に当接する上端部23と、下部ビーム壁14に当接する下端部25とを備える。有利には、このような構成では、補強リブ24は、仰角方向の測定において外側ビーム2の全高さに亘り、これは、補強リブ24が前部ビーム壁16の大きな表面積を覆うことを保証し、それにより、衝突時の良好なエネルギー吸収と、内側補強要素4と外側ビーム2との良好な接着に寄与する。さらに、この構成において、補強リブ24の上端部23を上部壁12に、補強リブ24の下端部25を下部壁14に、例えば接着剤接合により取り付け、それにより、内側補強要素4と外側ビーム2との接着を増加させ、これにより内側補強要素4と外側ビーム2との協働の促進に寄与し、外側ビーム2に対する圧縮衝撃力Fの、上述の開口の影響をさらに打ち消すことが可能となる。
【0054】
特定の実施形態では、補強リブ24が、それらの上端部23で上部ビーム壁12に取り付けられ、それらの下端部25で下部ビーム壁14に取り付けられるとき、前記補強リブ24は、
図3でより詳細に見られるように、それら上端部23及び下端部25において、それらの上端部23及び下端部25から離れた壁厚よりも厚い壁厚を有する。補強リブ24の壁厚とは、前記補強リブ24によって画定される平面に対して実質的に垂直な方向に測定される厚さを意味する。有利には、これにより、補強リブ24の上端部23と上部壁12との接触面積、及び補強リブ24の下端部25と下部壁14との接触面積を増加させることができ、それにより、内側補強要素4の外側ビーム2への接着を増加させ、従って、衝突の場合、前記内側補強要素4と前記外側ビーム2との協働を促進する。有利には、補強リブ24の上端部及び下端部23、25と、前記端部から離れた領域とで異なる壁厚を規定することにより、補強リブ24を製造するために使用される材料の量、従って、内側補強要素4の製造工程及びコストを、最適化することが可能である。これは、補強リブ24の上端部23及び下端部25で補強リブ24の壁厚に連結された上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14への前記補強リブ24の接着と、補強リブ24の上端部及び下端部から離れた補強リブ24の壁厚に連結された、前記補強リブ24のエネルギー吸収の寄与とを別々に最適化することにより可能である。
【0055】
特定の実施形態では、補強リブ24は、長手方向に沿って一定の断面積を有する。換言すれば、長手方向に沿って延在する線に沿って測定される補強リブ24の壁厚は一定である。有利には、これにより、補強リブ24のエネルギー吸収を最適化できる。実際、前記補強リブ24の厚さが長手方向で減少する場合、それ自体が長手方向に実質的に平行な圧縮衝撃力Fに対する前記補強リブ24の抵抗は、長手方向で減少する。工程の脱型ステップで、補強リブ24の長手方向の後方壁厚が減少していることが必要であるため、内側補強要素4を外側ビーム2にオーバモールディングすることによって、長手方向に沿って一定の断面積の補強リブ24を有する内側補強要素4を製造することは、当業者に知られているように不可能であろうことに留意されたい。
【0056】
特定の実施形態では、内側補強要素4は、
図3に示す、横方向に沿って内側補強要素4に延在する補強ケーシング42をさらに備える。前記補強ケーシング42は、上部補強ケーシング壁44と、下部補強ケーシング壁46と、前記上部補強ケーシング壁44及び下部補強ケーシング壁46を接続する前部補強ケーシング壁48とを備える。前記上部補強ケーシング壁44及び下部補強ケーシング壁46は、それぞれ、横方向に沿って上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14の一部に沿って延在し、前記上部ビーム壁12及び下部ビーム壁14に当接している。前記前部補強ケーシング壁48は、横方向に沿って前部ビーム壁16の少なくとも一部に沿って延在し、前記前部ビーム壁16に当接している。前部補強ケーシング壁48の形状は、前部ビーム壁16の形状に概ね追従する。特に、前部ビーム壁16にビード18が存在する場合、前部補強ケーシング壁48の形状は、
図3に示すように、前記ビード18内でも前部ビーム壁16に当接するように、前記補強ビード18に追従する。補強ケーシング42は、
図2に示すように、仰角方向において外側ビーム2の全高に亘り、上部補強ケーシング壁44及び下部補強ケーシング壁46を連結する補強リブ24を備える。前記補強リブ24の前端は、補強ケーシング前部壁48によって形成される。補強ケーシング前部壁48は前部ビーム壁16に当接するので、補強ケーシング42内に含まれる補強リブ24の前端も、前部ビーム壁16に当接する。特定の実施形態では、上部補強ケーシング壁44、下部補強ケーシング壁46、及び前部補強ケーシング壁48は、それぞれ、例えば接着剤接合によって、上部ビーム壁12、下部ビーム壁14及び前部ビーム壁16に取り付けられる。有利には、これにより、外側ビーム2と内側補強要素4との接着接触面積が増加し、それにより、2つの部品の協働が促進される。さらに、この場合、上部補強ケーシング壁44及び下部補強ケーシング壁46は補強リブ24によって接続されているので、補強ケーシング42は、また、外側ビーム2に対する圧縮衝撃力Fの上述の開口の影響を打ち消す。例えば、内側補強要素4は、
図3に示すように、中央補強部30に補強ケーシング42を備える。有利には、これにより、例えばポール衝突試験中、局所的な応力を受ける中央補強部30における補強要素4のエネルギー吸収を増加させることができる。
【0057】
特定の実施形態では、内側補強4の幅は、横方向に沿った主ビーム部3の幅と実質的に等しい。有利には、これにより、衝突時に、内側補強要素4のエネルギー吸収の寄与を最大化することができる。この場合、上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28もまた、主ビーム部3の幅と実質的に等しい幅を有することができる。この場合、内側補強要素4は、例えば、2つのビーム遷移部38に配置された2つの端部補強部40を備える。特定の実施形態では、前記端部補強部40の補強リブ24の形状は、内側補強要素4の残りの部分の補強リブ24の形状と異なり、ビーム遷移部38の特別な形状に適応し、前記端部補強部40の補強リブ24の長さを最大化し、それにより、補強リブ24のエネルギー吸収の寄与を最大化する。
【0058】
特定の実施形態では、
図2及び
図3に示すように、中央補強ビーム体積30における内側補強要素4の体積密度は、側面補強ビーム体積32における内側補強要素4の体積密度よりも大きい。内側補強要素4のエネルギー吸収の寄与は、前記内側補強要素4の体積密度と共に増加する。有利には、例えばポール衝突試験の場合、中央補強ビーム体積30における内側補強要素4の体積密度をより高くすることにより、クロスメンバ1の中央におけるエネルギー吸収を増加させ、クロスメンバ1の中央部における圧縮衝撃力Fの局在化に適応することができる。内側補強要素4の体積密度は、補強リブ24の数を調整することによって、及び/又は補強リブ24の壁厚を調整することによって調整することができる。
【0059】
特定の実施形態では、中央補強ビーム体積30における内側補強要素4の体積密度は15%~50%であり、側面補強ビーム体積32における内側補強要素4の体積密度は5%~50%である。中央補強ビーム体積30における最小体積密度は、例えばポール衝突試験の場合、圧縮衝撃力Fの局在化に耐えるための必要性によって決定される。側面補強ビーム体積32における最小体積密度は、圧縮衝撃力Fに耐え、クロスメンバ1内に前記圧縮衝撃力Fによって加えられる荷重を分散させるために、内側補強要素4の残りの部分に存在する最小量の補強リブ24の必要性によって決定される。中央及び外側補強ビーム体積30、32の両方の体積密度の最大値は、内側補強要素4を製造するために使用される材料の量を最適化し、それにより前記内側補強要素4の製造工程及び製造コストを最適化する必要性によって決定される。
【0060】
特定の実施形態では、内側補強要素4はプラスチック材料で製造される。有利には、プラスチックを使用することにより、クロスメンバ1に大きな重量を加えることなく、内側補強要素4の良好なエネルギー吸収の寄与を保証することができる。例えば、内側補強要素4は、ポリプロピレン108(PP108)で製造される。また、プラスチック材料は、ガラス繊維などの繊維で補強可能である。
【0061】
特定の実施形態では、内側補強要素4の最小引張強度は17MPaである。
【0062】
特定の実施形態では、内側補強要素4は、少なくとも上部横ブランチ26及び下部横ブランチ28を介して、外側ビーム2に接着剤接合により取り付けられる。一実施形態によれば、内側補強要素4は、補強リブ24の上端部及び下端部23、25を介して、及び/又は補強リブ24の前端を介して、及び/又は補強ケーシング42の上部壁、下部壁、及び前部壁を介して、接着剤接合によって、外側ビーム2にさらに取り付けられる。
【0063】
特定の実施形態では、内側補強要素4と外側ビーム2との取り付け領域における接着強度は、ラップせん断試験によって測定されるとき、10MPa超である。
【0064】
特定の実施形態では、クロスメンバ1は、
図1及び
図3に示すように、横方向に延在し、ビーム内部体積17の外側で外側ビーム2の少なくとも一部に取り付けられた外側補強要素6をさらに備える。前記外側補強要素6は、外側補強上部壁50と、外側補強下部壁52とを備え、前記外側補強上部壁50及び外側補強下部壁52は、外側補強前部壁54によって接続される。外側補強上部壁50、外側補強下部壁52及び外側補強前部壁54は、それぞれ、上部ビーム壁12、下部ビーム壁14及び前部ビーム壁16に沿って横方向に延在し、前記上部ビーム壁12、下部ビーム壁14及び前部ビーム壁16に当接する。さらに、外側補強上部壁50、外側補強下部壁52及び外側補強前部壁54は、例えば接着剤接合によって、上部ビーム壁12、下部ビーム壁14及び前部ビーム壁16に取り付けられる。外側補強前部壁54は、前部ビーム壁16に対して適用される背面56と、反対側を向いた正面58とを備える。背面56は、前部ビーム壁16の形状に概ね追従する形状を有する。特に、前部ビーム壁16がビード18を備える場合、背面56は、前記ビード18に追従する形状を有する。正面58は、背面56の形状とは異なる形状を有することができる。例えば、
図1及び
図3に示すように、正面は、仰角方向に実質的に平行な方向に延在する外側補強リブ60を備える。有利には、外側補強要素6の存在は、衝突時に緩衝材として作用するように機能する。特に、例えばポール衝突試験の場合のように、圧縮衝撃力Fが局所的である場合、圧縮衝撃力Fが加えられる領域における外側補強要素6の存在は、外側ビーム2を局所的に保護するように機能し、それにより、前記外側ビーム2にかかる応力の一部を緩和し、衝突時に、亀裂の形成を遅らせる。
【0065】
特定の実施形態では、外側補強要素6の幅は、横方向に沿った外側ビーム2の主ビーム部3の幅よりも短い。例えば、外側補強要素6の幅は、ポール衝突試験の場合、ポールとクロスメンバ1との衝撃面の幅に制限される。有利には、この実施形態では、外側補強要素6は、制限されたサイズでありがながら、ポール衝突試験中、その緩衝材の役割を果たし、それにより、製造工程を容易にし、製造コストを低減する。
【0066】
特定の実施形態では、外側補強要素6は、プラスチック材料で製造される。有利には、プラスチックを使用することにより、クロスメンバ1に大きな重量を加えることなく、外側補強要素6の良好なエネルギー吸収の寄与を保証することができる。例えば、外側補強要素6は、内側補強要素4と同じ材料、例えばPP108で製造される。
【0067】
特定の実施形態では、外側補強要素6の最小引張強度は17MPaである。
【0068】
特定の実施形態では、外側補強要素6と外側ビーム2との取り付け領域における接着強度は、ラップせん断試験によって測定されるとき、10MPa超である。
【0069】
特定の実施形態では、外側ビーム2は、テーラーウェルドブランドのホットスタンピングによって作製され、0.7mm~1.1mmの厚さを有するDuctibor1000(R)製の中央のビーム部8と、1.2mm~1.6mmの厚さを有するUsibor1500(R)製の2つのサイドビーム部10とを備え、内側補強要素4及び外側補強要素6は、共にPP108で製造される。
【0070】
既に知られているように、外側ビーム2は、横方向に沿って湾曲した形状であってよいことに留意されたい。この場合、内側補強要素4及び外側補強要素6もまた、横方向に沿って一致する湾曲形状を有してもよい。
【0071】
上述したバンパービームのためのクロスメンバは、外側ビームと、ビームフランジに取り付けられた横ブランチ及び前部ビーム壁に当接する補強リブを有する内側補強要素とを備え、複数の利点が存在するが、その内の1つは、製造工程及び製造コストの最適化を考慮して、内側補強要素の異なる構成要素の衝突吸収能力と、前記内側補強要素の外側ビームへの接着とを別々に最適化することが可能であることである。
【0072】
前記クロスメンバの別の利点は、上述のクロスメンバを製造する方法の説明で分かるように、外側ビームがバンパービームアセンブリに統合一体化されて、前記バンパービームアセンブリがEDコーティングされた後であっても、前記内側補強要素を前記外側ビームに容易に取り付けることが可能であることである。
【0073】
本方法は、外側ビーム2を提供するステップを含む。例えば、外側ビーム2は、鋼ブランク62のホットスタンピングによって製造される。
図4に示す本発明の特定の実施形態では、外側ビーム2は、中央ブランク部64と、横方向に沿って前記中央ブランク部64の両側に延在する2つの側面ブランク部66とを有するテーラーウェルドブランクのホットスタンピングによって製造される。ホットスタンピング後、中央ブランク部64及び側面ブランク部66は、それぞれ、中央ビーム部8及び2つのサイドビーム部10に対応することになる。例えば、上述したように、前記中央ビーム部8はDuctibor1000(R)で製造され、前記サイドビーム部10はUsibor1500(R)で製造される。有利には、これにより、高い衝突延性を有する中央ビーム部8と、非常に高い機械的抵抗を有する2つのサイドビーム部10とを備える外側ビーム2を、単一のステップで製造することができる。さらに、サイドビーム部10のために非常に高い機械的抵抗を有する鋼種を選択することにより、薄い鋼厚でサイドビーム部10の機械的抵抗を高くすることができ、それにより、クロスメンバ1の重量を最小限にすることに寄与することとなる。
【0074】
変形例によれば、外側ビーム2は、テーラードロールブランクのホットスタンピングによって製造される。
【0075】
製造された後、外側ビーム2は、バンパービームアセンブリを形成するためにクラッシュボックス7に組み立てられ、バンパービームアセンブリは、その後、腐食から保護するためにEDコーティングされる。前記バンパービームアセンブリは、車両の残りの部分に取り付けられる前に、車両の残りの部分とは独立してEDコーティングされる。EDコーティング工程は、前記アセンブリを構成する個々の部品に対してではなく、バンパービームアセンブリに対して実施される。これは、組み立て工程に溶接が含まれていると、それによりEDコーティングが蒸発し、溶接された領域が前記EDコーティングによって保護されずに残るからである。
【0076】
本方法は、内側補強要素4を提供するステップをさらに備える。内側補強要素4がプラスチックで製造される特定の実施形態では、内側補強要素4を製造するための方法は、例えば、独立型の鋳型での射出成形である。有利には、射出成形により、内側補強要素4の製造において非常に高い生産性が可能になる。
【0077】
方法は、内側補強要素4の少なくとも上部横ブランチ26を外側ビーム2の上部ビームフランジ20に、前記内側補強要素4の下部横ブランチ28を前記外側ビーム2の下部ビームフランジ22に、例えば接着剤接合により固定することによって、内側補強要素4を外側ビーム2に取り付けるステップをさらに備える。
【0078】
一実施形態によれば、内側補強要素4は、補強リブ24の上端部及び下端部23、25を介して、及び/又は前記補強リブ24の前端を介して、及び/又は補強ケーシング42の上部補強ケーシング壁44、下部補強ケーシング壁46、及び前部補強ケーシング壁48を介して、例えば接着剤接合によって、外側ビーム2にさらに取り付けられることができる。
【0079】
一実施形態によれば、補強要素4は、外側ビーム2のビーム内部体積17に圧力嵌めされる。圧力嵌めは、例えば接着剤接合と組み合わせて使用されることができる。有利には、これにより、内側補強要素4と外側ビーム2との非常に良好かつ緊密な接触が保証され、それにより部品間の良好な接着が促進される。圧力嵌めの適用を選択する場合、横ブランチ26、28は、圧力嵌めツールによる内側補強要素4の把持及び嵌合を容易にする楔を形成すために、長手方向に延在する小さな部分を有するように設計することが有利となることができる。
【0080】
特定の実施形態では、内側補強要素4を外側ビーム2に取り付けるステップは、外側ビーム2をバンパービームアセンブリに一体化するステップの後、かつ前記バンパービームアセンブリをEDコーティングするステップの後に実施される。有利には、これにより、内側補強要素4を製造するために使用される材料、及び、内側補強要素4を外側ビーム2に取り付けるために使用される技術の選択肢の自由度が大きくなる。実際、EDコーティング工程は、高温、例えば180℃を超える炉内でコーティングを焼き付けるステップを備える。内側補強要素4が、EDコーティングの前に外側ビーム2に取り付けられる場合、内側補強要素4の材料の選択肢は、180℃を超える温度に耐える材料に制限される。例えばプラスチック材料を内側補強要素4に使用する場合、これは、コストが高く、必ずしも内側補強要素4に最適となる、必要な機械的特徴及び成形性特徴を示さない耐熱性プラスチックに選択肢を制限する。同様に、内側補強要素4が、EDコーティングの前に外側ビーム2に取り付けられる場合、2つの部品を取り付けるための技術の選択肢も制限される。例えば接着剤接合を選択する場合、これは、180℃を超える温度に耐える接着剤に選択肢を制限する。そのような接着剤を使用すると、追加のコストがかかり、また、組み立て中に特別な対策を採る必要がある。前記外側ビーム2がバンパービームアセンブリに一体化されて、EDコーティングされた後に、内側補強要素4が外側ビーム2に取り付けられる場合、外側ビーム2にオーバモールディングすることによって、内側補強要素4を製造することは非常に困難であることに留意されたい。実際、オーバモールディング工程は、ツール内を所望の圧力にするために、かつ外側ビーム2の外側へプラスチック材料が漏れることを防止するために、オーバモールディングツールと外側ビームとの間に非常に精密な嵌合を必要とする。このような緊密な嵌合は、バンパービームアセンブリ全体の再現可能な非常に高い幾何公差を達成する必要がある。しかしながら、前記バンパービームアセンブリは、例えば複数の金属部品からなり、前記金属部品は、例えば機械溶接によって互いに組み立てられるので、前記バンパービームアセンブリは、必然的に、幾らかの幾何学的ばらつきを示す。前記幾何学的ばらつきを低減するために、メーカは、個々の部品の製造、バンパービームアセンブリを形成するための前記部品の組み立て、及びオーバモールディング工程自体の実施において、コスト及び時間のかかる対策を実施する必要がある。このような対策を適用しても、製造工程に品質問題が残り、メーカは多くのメンテナンス上の問題や大量の不合格品に直面にするおそれがある。さらに、オーバモールディングを使用すると、先に説明したように、補強リブ24の壁厚を後部に向かって減少させるなど、内側補強要素4の設計にいくつかの制限を課すことになる。
【0081】
一実施形態によれば、方法は、外側補強要素6を提供するステップをさらに備える。本方法は、外側補強上部壁50、外側補強下部壁52及び外側補強前部壁54を、例えば接着剤接合によって、上部ビーム壁12、下部ビーム壁14及び前部ビーム壁16に取り付けるステップをさらに備える。
【0082】
特定の実施形態では、上述と同様の理由により、外側補強要素6を外側ビーム2に取り付けるステップは、外側ビーム2をバンパービームアセンブリと一体化するステップの後、かつ前記バンパービームアセンブリをEDコーティングするステップの後に実施される。