(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】冷却用金型、樹脂成形品の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20221028BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221028BHJP
B29C 45/73 20060101ALI20221028BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
B29C45/73
B29C49/48
(21)【出願番号】P 2021513674
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2020015844
(87)【国際公開番号】W WO2020209294
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019073501
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 康秀
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0204607(US,A1)
【文献】国際公開第2012/057016(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0263820(US,A1)
【文献】特開2001-018274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 49/00-49/80
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部中心から外側に突出したゲート部を有する樹脂製のプリフォームを冷却するための冷却用金型であって、
前記冷却金型には、前記プリフォームを収容する収容空間が形成され、
前記収容空間において、前記プリフォームの胴部に臨む領域と前記プリフォームの底部に臨む底部領域は一体に形成されており、
前記収容空間において前
記底部領域は、前記プリフォームの底部に倣った形状であり、
前記底部領域には、前記プリフォームの底部中心からずれた位置に空気を吸引する空気吸引穴が形成される
冷却用金型。
【請求項2】
前記空気吸引穴は、前記プリフォームの底部中心を基準として回転対称をなすように前記底部領域に複数形成されている
請求項1に記載の冷却用金型。
【請求項3】
底部中心から外側に突出したゲート部を有する樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形された前記プリフォームを収容する請求項1または請求項2に記載の冷却用金型と、を備え、
前記冷却用金型は、前記空気吸引穴から空気を吸引して前記収容空間内に前記プリフォームを引き込み、前記底部領域で前記ゲート部を押し潰して前記ゲート部を除去する
樹脂成形品の製造装置。
【請求項4】
前記冷却用金型は、前記射出成形部から前記プリフォームを搬出する受け取り部および前記射出成形部から搬出された前記プリフォームを冷却する冷却部の少なくともいずれかに配置される
請求項3に記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項5】
前記冷却部で冷却された前記プリフォームを連続搬送して加熱する加熱部と、
加熱後の前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、をさらに備える
請求項4に記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項6】
前記ブロー成形部での前記ブロー成形のサイクルは、前記射出成形部での前記プリフォームの射出成形のサイクルより短く、
前記射出成形部の1回のサイクルで成形された複数の前記プリフォームが、複数回の前記ブロー成形のサイクルに分けてブロー成形される
請求項5に記載の樹脂成形品の製造装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の冷却用金型を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記冷却用金型の前記空気吸引穴から空気を吸引して前記収容空間内に前記プリフォームを引き込み、
前記底部領域で前記ゲート部を押し潰して前記ゲート部を除去する
樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却用金型、樹脂成形品の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製容器のブロー成形においては、射出成形型から離型した樹脂製のプリフォームを、射出成形型とは異なる冷却用金型を用いて強制冷却する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、この種の冷却用金型に関しては、金型とプリフォームとの間の空気を吸引することで金型表面にプリフォームを密着させるものも知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017-073791号公報
【文献】特表2004-521779号公報
【文献】特許第2509803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形されたプリフォームの底部には、製造工程上、ホットランナーから射出成形型への樹脂導入痕となるゲート部が形成される。プリフォームから容器をブロー成形するときには、成形後の容器の外観および品質の面からプリフォームのゲート部を底部から完全になくすことが好ましい。しかし、プリフォームのゲート部を高い精度で機械的に切除することは、プリフォーム等の成形条件や装置構成などの制約から実際には困難である。
【0005】
一方、ブロー成形の製造サイクルにおいては、容器の成形サイクル時間につき一層の短縮化が要望されている。例えば、プリフォームのゲート部を機械的に切除する工程を追加すると、追加される切除工程の時間だけ容器の成形サイクル時間が長くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、容器の成形サイクル時間を延長することなく、プリフォームのゲート部を高い精度で除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、底部中心から外側に突出したゲート部を有する樹脂製のプリフォームを冷却するための冷却用金型であって、前記冷却用金型には、プリフォームを収容する収容空間が形成され、前記収容空間において、前記プリフォームの胴部に臨む領域と前記プリフォームの底部に臨む底部領域は一体に形成されており、前記収容空間において前記底部領域は、前記プリフォームの底部に倣った形状であり、前記底部領域には、前記プリフォームの底部中心からずれた位置に空気を吸引する空気吸引穴が形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、容器の成形サイクル時間を延長することなく、プリフォームのゲート部を高い精度で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ブロー成形装置の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】射出成形部および冷却部のプリフォームの搬送の概略を示す図である。
【
図6】冷却ポットによるゲート部の除去を示す図である。
【
図7】本実施形態のブロー成形方法におけるプリフォームの温度変化例を示すグラフである。
【
図8】射出成形装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
<ブロー成形装置の説明>
まず、
図1を参照して樹脂製容器を製造する製造装置の一例であるブロー成形装置100について説明する。
図1は、ブロー成形装置の構成を模式的に示す平面図である。
図2は、射出成形部および冷却部のプリフォームの搬送の概略を示す図である。
【0012】
本実施形態のブロー成形装置100は、ホットパリソン方式とコールドパリソン方式の利点を併せ持つ1.5ステージ方式と称されるブロー成形方法を実行する。1.5ステージ方式のブロー成形方法では、基本的にホットパリソン方式(1ステージ方式)と同様に射出成形時の熱を保有したプリフォームをブロー成形して容器を製造する。ただし、1.5ステージ方式でのブロー成形のサイクルは、プリフォームの射出成形のサイクルよりも短く設定される。そして、1回の射出成形のサイクルで成形された複数のプリフォームは、複数回のブロー成形のサイクルに分けてブロー成形される。特に限定するものではないが、同時に射出成形されるプリフォームの数(N)と同時にブロー成形される容器の数(M)の比(N:M)は、例えば3:1などに設定される。
【0013】
図1に示すように、ブロー成形装置100は、射出成形部110と、冷却部120と、加熱部130と、ブロー成形部140とを備える。
また、ブロー成形装置100は、冷却部120から搬出されたプリフォーム200を、加熱部130を経由してブロー成形部140に搬送する連続搬送部150を備えている。連続搬送部150は、複数の湾曲部を有するループ状の搬送ライン151に沿って、プリフォーム200を保持する搬送治具152を連続的に搬送する構成の搬送装置である。すなわち、連続搬送部150は、ループ状の搬送ライン151に沿って各々の搬送治具152を繰り返し搬送可能である。
【0014】
射出成形部110は、樹脂成形品である有底筒状のプリフォーム200を射出成形する。
射出成形部110は、
図2に示すように、上方に配されたコア型111と、下方に配されたキャビティ型112と、タイバー113によりコア型111およびキャビティ型112を型締めする型締め機構114を備えている。射出成形部110は、コア型111およびキャビティ型112で形成される射出空間内に射出装置(不図示)から樹脂材料(原材料)を充填することでプリフォーム200を射出成形する。
【0015】
本実施形態の射出成形部110は、例えば、3列×4個(N=12個)のプリフォーム200を同時に成形する構成である。また、プリフォーム200は、射出成形部110では首部を上向きとした正立状態で成形され、射出成形部110では正立状態でプリフォーム200が搬送される。
【0016】
射出成形部110は、
図2に示すように、射出成形されたプリフォームを射出成形部110の外に取り出す受け取り部115を備えている。
受け取り部115は、コア型111の下側の受け取り位置からタイバー113で囲まれた空間よりも外側の受け渡し位置まで、水平方向(図中X方向)に移動可能に構成されている。
【0017】
受け取り部115は、射出成形部110で成形された3列×4個分のプリフォームをそれぞれ収容する12個の冷却ポット300を保持している。
各々の冷却ポット300は、冷却用金型の一例であって、プリフォーム200の外形に対応するプリフォーム200の収容空間を有する。受け取り部115の冷却ポット300は、収容されたプリフォーム200と接触することでプリフォームを冷却する機能を有する。また、冷却ポット300は、プリフォーム200のゲート部を除去する機能を有する。なお、冷却ポット300の構成については後述する。
【0018】
また、受け取り部115は、受け取り位置から受け渡し位置への移動中に冷却ポット300の列の間隔(図中X方向の間隔)を調整する機構(不図示)を備えている。これにより、受け取り部115は、プリフォーム200の列の間隔を受け取り位置の広ピッチ状態から受け渡し位置の狭ピッチ状態に変換する。
【0019】
ここで、
図3を参照して、本実施形態で適用されるプリフォーム200の一例を説明する。
図3(A)は、正立状態のプリフォーム200を正面方向からみた縦断面図であり、
図3(B)は、プリフォーム200の平面図である。なお、
図3(C)は、本実施形態の射出成形部110または冷却部120によりゲート部が除去された状態のプリフォーム200を示す縦断面図である。
【0020】
プリフォーム200の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム200は、円筒状に形成された胴部201と、胴部201の他端側を閉塞する底部202と、底部202に形成されるゲート部203と、胴部201の一端側の開口に形成された首部204とを備える。
ゲート部203は、ホットランナーからの樹脂導入痕であり、底部202の中心において底部202よりも外側に突出するように形成される。
【0021】
プリフォーム200の原材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器の用途に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0022】
射出成形部110で射出成形されたプリフォーム200は、射出成形部110から冷却部120に供給される。冷却部120は、射出成形部110で成形されたプリフォーム200を強制冷却する。プリフォーム200は、所定温度まで冷却された状態で冷却部120から搬出され、搬送ライン151に沿って連続的に搬送される。
【0023】
図2に示すように、射出成形部110と冷却部120の間には、受け取り部115から冷却部まで正立状態でプリフォーム200を搬送する搬送装置180が設けられている。搬送装置180は、正立状態のプリフォーム200の首部を保持する保持部181を備え、図示しないエアシリンダにより、垂直方向(図中Z方向)および水平方向(図中X方向)に保持部181を移動可能に構成されている。
【0024】
冷却部120は、
図4に示すように反転部121を有する。反転部121は、図中X方向に延びる軸122を回転軸として反転可能であり、図中Z方向(上下方向)に昇降可能に構成されている。反転部121の図中上側に示す第1面121aと、第1面121aと対向する第2面121bには、3列×4個分のプリフォーム200を収容するために、各面にそれぞれ12個ずつ冷却ポット300が配置されている。
【0025】
本実施形態において、反転部121の第1面121aおよび第2面121bに配置される冷却ポット300は、受け取り部115の冷却ポット300と同様の構成である。反転部121の冷却ポット300は、反転部121に設けられた冷媒通路(不図示)を循環する冷媒により冷却される。また、反転部121の冷却ポット300は、収容されたプリフォーム200を吸引して保持する機能と、プリフォームのゲート部を除去する機能を有する。
なお、以下の説明では、反転部121の第1面121aに配置された冷却ポット300を第1冷却ポット300aとも称し、反転部121の第2面121bに配置された冷却ポット300を第2冷却ポット300bとも称する。
【0026】
また、反転部121は、搬送装置180から受けた正立状態のプリフォーム200を、冷却時間中に首部を下向きとした倒立状態に反転させる。そして、倒立状態のプリフォーム200は、冷却部120の下方に複数列配置されている連続搬送部150の搬送治具152に受け渡される。プリフォーム200を保持した搬送治具152は、スプロケット154などの駆動力により搬送ライン151に沿って順次搬送される。
【0027】
加熱部130は、連続搬送部150によって連続搬送される倒立状態のプリフォーム200を延伸適温まで加熱する。加熱部130は、搬送ライン151の両側に、搬送ライン151に沿って所定間隔おきに配置された複数のヒーター(不図示)を備えている。加熱部130内では、プリフォーム200の軸方向を中心として倒立状態のプリフォーム200が自転しながら加熱され、プリフォーム200全体が均一に加熱される。
【0028】
また、ブロー成形装置100は、搬送ライン151における加熱部130の下流側に、間欠搬送部160と、受渡部170とを備えている。
間欠搬送部160は、加熱部130によって加熱された複数(M個、例えば4個)のプリフォーム200を保持してブロー成形部140に間欠的に搬送する。受渡部170は、連続搬送部150によって連続搬送されたプリフォーム200を搬送ライン151から間欠搬送部160に受け渡す。
【0029】
なお、本実施形態では、搬送方向にて連続する複数(例えば、8つ)の搬送治具152が連結部材(不図示)によって連結されている。そして、連続搬送部150は、所定半径で湾曲する湾曲搬送部155の下流側の搬送ライン151において、スプロケット154aの駆動と停止とを繰り返すことで、一度に、複数(M個、例えば4個)のプリフォーム200を受渡部170に供給する。
【0030】
受渡部170は、受渡位置P0に図示しない反転装置を備える。搬送ライン151に沿って倒立状態で搬送されたプリフォーム200は、受渡位置P0においてプリフォーム200の上側に配置された反転装置で反転されて正立状態になる。また、受渡部170は、例えば、反転装置を昇降させる昇降装置(不図示)を備え、正立状態のプリフォーム200を所定位置(受渡位置P1)まで上昇させた状態で間欠搬送部160に受け渡す。
【0031】
間欠搬送部160は、間欠搬送部160に設けられた開閉可能なブロー搬送用チャック部材(不図示)により、正立状態の各プリフォーム200の首部をそれぞれ把持する。そして、間欠搬送部160のチャック部材(不図示)は、受渡位置P0の上方に位置する受渡位置P1でプリフォーム200の首部を把持し、当該プリフォーム200を受渡位置P1からブロー成形位置P2まで移動せる。これにより、複数のプリフォーム200が所定間隔でブロー成形部140に搬送される。
【0032】
ブロー成形部140は、容器の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型141と、延伸ロッドを兼ねるエア導入部材(不図示)とを備える。ブロー成形部140では、受渡部170より受け取った所定個数のプリフォーム200を、ブローキャビティ型141に搬送し、ブローキャビティ型141でプリフォーム200を延伸ブロー成形することで容器を製造する。
なお、ブロー成形部140で製造された容器は、間欠搬送部160によりブロー成形部140の外側の取り出し位置P3まで搬送される。
【0033】
<冷却ポットの説明>
次に、
図5、
図6を参照しつつ、射出成形部110および冷却部120の冷却ポット300の構成例を説明する。
上記のように、冷却部120の第1冷却ポット300aおよび第2冷却ポット300bは受け取り部115の冷却ポット300と同様である。そのため、ここでは受け取り部115の冷却ポット300の構成を説明することで、重複説明は省略する。
【0034】
図5(A)は、冷却ポット300の平面図であり、
図5(B)は、
図5(A)のVb-Vb線断面図である。
冷却ポット300は、全体形状が有底円筒形状であって、上面側からプリフォーム200を挿入可能な冷却用金型である。冷却ポット300は、プリフォーム200の胴部201および底部202を収容可能であって上面側が開放された収容空間301を有する。収容空間301の内部形状は、プリフォーム200の胴部201および底部202の外形に倣った形状である。
【0035】
冷却ポット300の収容空間301において、プリフォーム200の底部202に臨む底部領域301aには金型とプリフォーム200との間の空気を吸引するための空気吸引穴302が形成されている。空気吸引穴302は、冷却ポット300に形成されたエア流路303を介して、空気吸引用のポンプ(不図示)に接続される。
【0036】
空気吸引穴302は、収容空間301の底部領域301aにおいてプリフォーム200の底部中心からずれた位置に形成されている。すなわち、冷却ポット300においてプリフォーム200のゲート部203に臨む位置(冷却ポット300の軸方向中心)には空気吸引穴302がなく、ゲート部203に対してプリフォーム200の底部202の外形に倣った底部領域301aの表面が臨むように構成されている。
【0037】
また、空気吸引穴302は、プリフォーム200の底部中心を基準として回転対称をなすように収容空間301の底部領域301aに形成されている。
図5(A)では、4つの空気吸引穴302が90度の間隔で、底部領域301aの中心(プリフォーム200の底部中心が臨む位置、冷却ポット300の軸方向中心)に対して点対称をなすように、底部領域301aの内周面の周方向に間隔をあけて配置された例を示している。なお、プリフォーム200の底部中心を基準として回転対称をなす配置であれば、空気吸引穴302を設ける数は4以外の数(2つや3つ、あるいはそれ以上の整数)であってもよい。また、プリフォーム200の底部中心と同心の環状の空気吸引穴(不図示)を形成するようにしてもよい。
【0038】
図6(A)は、冷却ポット300とプリフォーム200の間の空気を吸引する前の状態を示す模式図であり、
図6(B)は、冷却ポット300とプリフォーム200の間の空気を吸引した後の状態を示す模式図である。
【0039】
プリフォーム200を冷却ポット300の収容空間301内に配置した状態(
図6(A)参照)で空気吸引穴302から空気を吸引すると、プリフォーム200が収容空間301の内側に引き込まれて冷却ポット300と密着する(
図6(B)参照)。
これにより、プリフォーム200の胴部201および底部202が収容空間301の表面と面接触し、冷却ポット300との熱交換によってプリフォーム200が効率的に冷却される。冷却ポット300の収容空間301の形状はプリフォーム200の外形に倣っているので、冷却のときにプリフォーム200の形状は冷却ポット300によって維持される。
【0040】
ここで、プリフォーム200は射出成形時の保有熱を有するので、ゲート部203は変形しやすい状態にある。そのため、上記のようにプリフォーム200を収容空間301の内側に引き込むと、プリフォーム200の底部中心に位置するゲート部203は、対向する底部領域301aの表面で押し潰される。これにより、
図6(B)に示すように、プリフォームの底部の形状は収容空間301の底部領域301aに倣った曲面となる。
以上のようにして、本実施形態においては、冷却ポット300でプリフォーム200を冷却する工程のときに、プリフォーム200の底部202からゲート部203が高い精度で除去される。
【0041】
また、空気吸引穴302はプリフォーム200の底部中心からずれた位置にあるが、回転対称をなすように配置されているので、プリフォーム200を引き込むときの吸引力はプリフォーム200の底部202に対してほぼ均等に作用する。したがって、プリフォーム200が収容空間301の内側に引き込まれるときに、プリフォーム200の底部202に歪みが生じることを抑制できる。
【0042】
冷却部120の第1冷却ポット300aおよび第2冷却ポット300bも、上記の冷却ポット300と同様に機能する。なお、冷却部120は正立状態で受けたプリフォーム200を倒立状態に反転させるが、空気吸引穴302から空気を吸引することにより、冷却部120では倒立状態のプリフォーム200を吸着して保持できる。
【0043】
<ブロー成形方法の説明>
次に、本実施形態のブロー成形装置100によるブロー成形方法について説明する。
図7は、本実施形態のブロー成形方法におけるプリフォーム200の温度変化を説明する図である。
図7の縦軸はプリフォーム200の温度を示し、
図7の横軸は時間を示す。
図7において、本実施形態のプリフォームの温度変化例は
図7中(A)で示す。また、後述する比較例(従来方法)のプリフォームの温度変化例は
図7中(B)で示す。
【0044】
(1)まず、射出成形部110において、コア型111およびキャビティ型112で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置から樹脂を射出し、N個のプリフォーム200が製造される。
【0045】
本実施形態では、樹脂充填の終了直後または樹脂充填後に設けられた最小限の冷却時間後に射出成形部110が型開きされ、プリフォーム200の外形が維持できる程度の高温状態でプリフォーム200がコア型111およびキャビティ型112から離型される。つまり、本実施形態では、樹脂材料の融点以上の温度で樹脂材料が射出されると、射出成形部110では射出成形後のプリフォーム200の最小限の冷却のみを行い、受け取り部115の冷却ポット300や、冷却部120の第1冷却ポット300aまたは第2冷却ポット300bにてプリフォーム200の冷却を行う。
【0046】
本実施形態において、樹脂材料の射出が完了してから射出成形部110で樹脂材料を冷却する時間(冷却時間)は、樹脂材料を射出する時間(射出時間)に対して1/2以下であることが好ましい。また、上記の樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料の重量に応じて、樹脂材料を射出する時間に対してより短くすることができる。樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料を射出する時間に対して2/5以下であるとより好ましく、1/4以下であるとさらに好ましく、1/5以下であると特に好ましい。後述の比較例よりも冷却時間を著しく短縮させているため、プリフォームのスキン層(固化状態にある表面層)は従来より薄く、コア層(軟化状態または溶融状態にある内層)は従来より厚く形成される。つまり、比較例と比べて、スキン層とコア層との間の熱勾配が大きく、高温で保有熱が高いプリフォームが成形される。
【0047】
一方、比較例として、コア型111およびキャビティ型112内でプリフォーム200の冷却を行う場合のプリフォームの温度変化例(
図7の(B))を説明する。
比較例では、射出成形部110の金型内でプリフォーム200を本実施形態よりも低い温度まで冷却する。そのため、比較例ではプリフォームの成形サイクルの時間が本実施形態よりも長くなり、結果的に容器の成形サイクルの時間も長くなってしまう。
【0048】
(2)射出成形部110で製造されたN個のプリフォーム200は、正立状態で受け取り部115の冷却ポット300に受け渡されて射出成形部110から搬出される。各々の冷却ポット300では、上記のようにプリフォーム200の冷却とゲート部203の除去が行われる。
【0049】
(3)受け取り部115の受け渡し位置にて、N個のプリフォーム200は搬送装置180に受け渡されて正立状態のまま冷却部120に搬送される。冷却部120において、搬送されたN個のプリフォーム200は第1冷却ポット300aまたは第2冷却ポット300bのいずれかに収容される。その後に冷却部120が反転してプリフォーム200は倒立状態となり、連続搬送部150の搬送治具152に受け渡される。
【0050】
冷却部120の第1冷却ポット300aおよび第2冷却ポット300bでは、プリフォーム200の冷却が行われる。このとき、第1冷却ポット300a、第2冷却ポット300bでは、空気の吸引によるプリフォーム200の吸着保持が行われるとともに、ゲート部203のさらなる除去が行われる。受け取り部115の冷却ポット300と、冷却部120の第1冷却ポット300aまたは第2冷却ポット300bとの2回にわたって、上記のゲート部203の除去が実行されることで、プリフォーム200のゲート部203をより高い精度で除去できる。
【0051】
また、本実施形態においては、例えば、第mサイクルで射出成形された正立状態のN個のプリフォーム200は、第1冷却ポット300aで保持された後に反転部121により反転されて倒立状態で冷却される。この間に、第mサイクルの次のサイクル(第m+1サイクル)で射出成形された正立状態のN個のプリフォーム200は、第2冷却ポット300bで保持されて冷却される。つまり、冷却部120では、第1面121aと第2面121bで異なるサイクルのプリフォーム200を同時に冷却できる。
以上のように、冷却部120は、射出成形部110でN個のプリフォーム200を射出成形するときの射出成形のサイクル時間以上の時間に亘って、プリフォーム200を強制冷却できる。
【0052】
冷却部120で強制冷却されるプリフォーム200は室温まで冷却される必要はなく、プリフォーム200は射出成形時の熱を保有しているので、本実施形態においても1ステージ方式のエネルギー効率上の利点を共有できる。
また、加熱直前のN個のプリフォーム200は射出成形時の保有熱を有するが、ブロー成形のサイクルの時間差による自然冷却の時間に依存して、後述のブロー成形のサイクル間で明らかな温度差が生じうる。冷却部120での強制冷却は、同時に射出成形されたN個のプリフォーム200が加熱開始タイミングを変えて加熱される場合に、ブロー成形の各サイクルにおける加熱直前のプリフォーム200の温度差を抑制する点で有効である。
【0053】
(4)倒立状態のプリフォーム200は、連続搬送部150の搬送ライン151に沿って連続搬送されて加熱部130を通過する。これにより、プリフォーム200は均温化や偏温除去が行われるとともに、延伸適温まで加熱される。
ここで、第mサイクルで同時に射出成形されたN個のプリフォーム200は、M個ずつ複数回(3回)に分けてブロー成形される。そのため、
図7の温度変化を示す線は、ブロー成形のサイクルごとに異なるものとなる。つまり、
図7において、連続搬送部150に搬入されるまでのプリフォームの温度変化は、ブロー成形のサイクルに拘わらず共通する。しかし、加熱からブロー成形までのプリフォームの温度変化は、ブロー成形のサイクルに応じた時間差を有する3種類の線で示される。
【0054】
(5)加熱部130を通過したプリフォーム200は、受渡部170によって、同時にブロー成形される容器の個数(M個)ごとに間欠搬送部160に受け渡される。間欠搬送部160は、M個のプリフォームをブロー成形部140に間欠的に搬送する。
【0055】
(6)ブロー成形部140においては、プリフォーム200の延伸ブロー成形が行われて容器が製造される。その後、ブロー成形部140で製造された容器は、間欠搬送部160によりブロー成形部140から搬出される。
以上で、ブロー成形方法の一連の工程が終了する。
【0056】
以下、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態によれば、プリフォーム200を冷却するための冷却ポット300の収容空間301とプリフォーム200との間の空気を吸引し、収容空間301の底部領域301aの表面でプリフォーム200のゲート部203を押し潰す。これにより、プリフォーム200の底部202の形状は収容空間301の底部領域301aに倣った曲面となるので、プリフォーム200の底部202からゲート部203を高い精度で除去でき、製造される容器の美観を向上させることができる。
【0057】
また、上記のゲート部203の除去は、射出成形されたプリフォーム200を冷却する工程を利用し、冷却ポット300にプリフォーム200を収容するときに同時に行われる。そのため、本実施形態においては、プリフォーム200のゲート部203を切除する工程等を新たに追加する必要がないので、ゲート部203の除去によって容器の成形サイクル時間が延長されることはない。
【0058】
また、上記のゲート部203の除去では、ゲート部203は押し潰されてプリフォームの底部202と一体になるので、ゲート部203の除去に伴って破片が生じることはない。そのため、ゲート部203の破片の廃棄や再生処理などは不要になるので、容器の製造に伴うコストを抑制できる。
さらに、上記のゲート部203の除去は、受け取り部115の冷却ポット300と、冷却部120の第1冷却ポット300aまたは第2冷却ポット300bとの2回にわたって実行できる。このように、2回にわたって上記のゲート部203の除去を行うことで、プリフォーム200の底部202からゲート部203をより高い精度で除去できる。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
例えば、上記実施形態では、受け取り部115および冷却部120に本発明の冷却ポット300を配置する例を説明したが、本発明の冷却ポットをいずれか一方にのみ配置するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態では、一例として、1.5ステップ方式のブロー成形装置に冷却ポット300を適用する構成を説明した。しかし、ブロー成形部を有しない射出成形機に本実施形態の冷却ポット300を適用し、ゲート部の除去を行うようにしてもよい。
【0061】
図8は、射出成形装置400の構成を模式的に示す図である。
図8の射出成形装置400は、プリフォーム200を高速で製造するために使用される装置である。射出成形装置400は、射出成形部401と、後冷却部402と、取出部403と、搬送機構としての回転板405とを備える。
【0062】
射出成形部401、後冷却部402および取出部403は、回転板404の周方向において所定角度(例えば120度)ずつ回転した位置に配置されている。射出成形装置400では、回転板405の回転により、回転板405に首部が保持されたプリフォーム200が、射出成形部401、後冷却部402、取出部403の順に搬送される。
【0063】
射出成形部401は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、プリフォーム200を射出成形で製造する。射出成形部401には、プリフォーム200の原材料である樹脂材料を供給する射出装置404が接続されている。
後冷却部402は、取出部403でプリフォーム200を硬化状態で排出可能な程度に短時間で冷却可能な構成である。後冷却部402は、上記の冷却ポット300を備え、空気の吸引によってプリフォーム200を冷却ポット300内に収容し、冷却とゲートの除去を同時に行う。
取出部403は、プリフォーム200の首部を回転板405から開放し、プリフォーム200を射出成形装置400の外部へ取り出すように構成されている。
【0064】
射出成形装置400においては、射出成形部401の下流側に後冷却部402を設けることで、後冷却部402においてプリフォーム200の追加冷却を行うことができる。後冷却部402でプリフォーム200の追加冷却を行うことで、射出成形部401ではプリフォーム200を高温の状態でも離形でき、射出成形部401におけるプリフォーム200の冷却時間を大幅に短縮できる。これにより、次のプリフォーム200の成形を早く開始できるので、射出成形装置400でのプリフォーム200の成形サイクル時間を短縮できる。
また、射出成形装置400の後冷却部402では、上記の冷却ポット300を用いることで、プリフォーム200からゲート部を良好に除去することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、冷却ポット300の空気吸引穴302が回転対称に配置される例を説明したが、空気吸引穴302の配置は上記に限定されるものではない。例えば、2以上の空気吸引穴302において、中心軸からの空気吸引穴302の径方向の距離がそれぞれ異なっていてもよい。例えば、空気吸引穴302は、冷却ポット300の底面領域301aにおいて、プリフォーム200のゲート部203が当接する中心(冷却ポット300の中心軸)から外れた上下方向に延びる所定範囲の内周面上に、2つ以上設けられる構成であっても構わない。
【0066】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
100…ブロー成形装置、110…射出成形部、115…受け取り部、120…冷却部、130…加熱部、140…ブロー成形部、150…連続搬送部、200…プリフォーム、202…底部、203…ゲート部、300…冷却ポット、301…収容空間、301a…底部領域、302…空気吸引穴、400…射出成形装置