(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】植毛技術に基づいて製造される非燃焼式タバコ支柱及び該タバコ支柱の製造方法
(51)【国際特許分類】
A24D 1/20 20200101AFI20221028BHJP
A24C 5/01 20200101ALI20221028BHJP
【FI】
A24D1/20
A24C5/01
(21)【出願番号】P 2021518605
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 CN2020085362
(87)【国際公開番号】W WO2021077698
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】517283640
【氏名又は名称】雲南中煙工業有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】韓▲いー▼
(72)【発明者】
【氏名】鞏効偉
(72)【発明者】
【氏名】李寿波
(72)【発明者】
【氏名】朱東来
(72)【発明者】
【氏名】洪▲りゅう▼
(72)【発明者】
【氏名】湯建国
(72)【発明者】
【氏名】李廷華
(72)【発明者】
【氏名】趙偉
(72)【発明者】
【氏名】張霞
(72)【発明者】
【氏名】呉俊
(72)【発明者】
【氏名】尚善斎
(72)【発明者】
【氏名】鄭緒東
(72)【発明者】
【氏名】▲こん▼為民
(72)【発明者】
【氏名】▲みお▼明明
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-514438(JP,A)
【文献】中国実用新案第207400333(CN,U)
【文献】米国特許第03016904(US,A)
【文献】英国特許出願公告第01297091(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第00762467(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24C 1/00-5/60
A24D 1/00-1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛技術に基づいて製造される非燃焼式タバコ支柱であって、中空の円筒構造を有する巻きタバコ紙層(31)を含み、前記巻きタバコ紙層(31)の内壁には粘着剤層(21)が設けられ、前記粘着剤層(21)上には、タバコ充填物ペレット(11)、タバコ充填物フィラメント、又はタバコ充填物繊維が固着される、ことを特徴とする、タバコ支柱。
【請求項2】
前記タバコ充填物ペレット(11)が、前記巻きタバコ紙層(31)の内壁に沿って周方向に配列されてタバコ充填物ペレット層を形成し、前記タバコ充填物ペレット層の数は少なくとも一層であり、前記粘着剤層(21)の数は少なくとも一層であり、
前記タバコ充填物フィラメント又はタバコ充填物繊維が、前記巻きタバコ紙層(31)の内壁円周に沿って径方向に配列され、前記巻きタバコ紙層(31)の内部に無数の径方向通路が形成される、ことを特徴とする、請求項1に記載のタバコ支柱。
【請求項3】
前記巻きタバコ紙層(31)の内部に、前記タバコ充填物ペレット(11)が中空又は中実に充填され、
前記タバコ充填物ペレット層の数が2層以上の場合、前記タバコ充填物ペレット層と前記粘着剤層(21)とは、前記タバコ支柱の径方向に交互に配列される、ことを特徴とする、請求項2に記載のタバコ支柱。
【請求項4】
前記巻きタバコ紙層(31)の内部に、前記タバコ充填物フィラメント又はタバコ充填物繊維が中空又は中実に充填され、
前記タバコ充填物フィラメント又はタバコ充填物繊維の一端が、前記粘着剤層(21)に固着され、他端が前記粘着剤層(21)から延在する、ことを特徴とする、請求項2に記載のタバコ支柱。
【請求項5】
前記粘着剤層(21)が、接着剤の被覆から成り、前記接着剤が、アクリル酸エステル類、天然ゴムと合成ゴム類、エチレン‐酢酸ビニル共重合体を含む、エマルジョンタイプの感圧接着剤から選択される、ことを特徴とする、請求項1に記載のタバコ支柱。
【請求項6】
請求項1に記載の非燃焼式タバコ支柱の製造方法であって、植毛工程とタバコ支柱巻き取り工程とを含み、前記植毛工程は植毛ステップを含み、前記植毛ステップは巻きたばこ紙(3)の表面にタバコ充填物(1)を植毛し、前記タバコ充填物(1)は、タバコ充填物ペレット(11)、タバコ充填物フィラメント、又はタバコ充填物繊維である、ことを特徴とする、製造方法。
【請求項7】
前記植毛ステップは、静電植毛、機械植毛、又はそれらの両方の方式の組み合わせを採用し、前記植毛工程は、順次、布巻きステップと、接着剤塗布ステップ(8)と、前記植毛ステップと、乾燥ステップ(9)と、洗浄ステップ(10)とを含む、ことを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記植毛工程の各ステップの具体的な動作は、
前記布巻きステップが、前記巻きタバコ紙(3)のリールを給紙システムに配置し、
前記接着剤塗布ステップ(8)が、前記巻きタバコ紙(3)の内面に接着剤(2)を吹き付け、
前記植毛ステップが、前記タバコ支柱の巻きタバコ紙(3)の内壁に塗布された前記接着剤(2)の中に前記タバコ充填物(1)を埋め込み固定し、
前記乾燥ステップ(9)が、一定の温度で、前記タバコ充填物(1)が植毛された前記巻きタバコ紙(3)の表面の前記接着剤(2)を乾燥硬化させて、前記接着剤(2)を前記巻きタバコ紙(3)の内面に固着させると同時に、前記タバコ充填物(1)を前記接着剤(2)上に固着させ、
前記洗浄ステップ(10)が、前記巻きタバコ紙(3)の表面の過剰な前記タバコ充填物(1)を除去することである、ことを特徴とする、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記静電植毛方式は、帯電した前記タバコ充填物(1)が、静電場の作用下で、接着剤(2)が塗布された前記巻きタバコ紙(3)の表面に向けて整然とした配向で移動し、前記接着剤(2)の中に埋め込まれ、前記巻きタバコ紙(3)の表面に植毛層(20)を形成することをもたらし、
前記静電場は、直流又は交流の高電圧静電場であり、前記静電場の電場強度、電極間距離、植毛時間、又は前記タバコ充填物(1)の含水量を調整することにより、前記タバコ充填物(1)が前記接着剤(2)に埋め込まれる深さ、植毛密度、及び前記タバコ充填物(1)の前記接着剤(2)上での方向を調整する、ことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記機械植毛方式は、接着剤(2)が塗布された巻きタバコ紙(3)が多角形のローラー(7)群の上を通過し、前記ローラー(7)を回転させて前記巻きタバコ紙(3)を振動させ、ホッパー(4)から落下したタバコ充填物(1)を前記接着剤(2)の中に打ち込み、前記巻きタバコ紙(3)の表面に粘着させて植毛層(20)を形成することをもたらす、ことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱式巻きタバコの製造技術の分野に属し、特に、植毛技術に基づいて製造される非燃焼式タバコ支柱及び該タバコ支柱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、iQOSに代表される市販の加熱不燃焼式新型タバコ製品の売上は上昇を続けており、消費者の認知度と受容度が大幅に向上し、その加熱不燃焼式タバコ棒(タバコ支柱)は、従来のタバコ支柱の形状により近く、タバコ棒内のタバコ充填物は、フィラメント状の充填物で、タバコ支柱の軸方向に沿って充填配列される形態を採り、タバコ棒の軸方向に沿ってタバコ棒に挿入された中央加熱片により、上記タバコ棒(タバコ支柱)を加熱して吸引可能な煙を生成する。ploom techに代表されるもう一つの種類の加熱不燃焼式新型タバコ製品は、従来のタバコ支柱の形状と液体タバコオイルとの間のカートリッジ(カプセル)の形態を採り、その中にはペレット状タバコが含まれており、周方向加熱方式により吸入可能な煙を生成する。
【0003】
フィラメント状のタバコ充填物又はペレット状のタバコ充填物の何れの形態を採るかにかかわらず、上記の二種類の代表的な製品は、燃焼を回避しているために従来の巻きタバコに比べて害が少なく、特にタールなどの有害物質の放出が大幅に抑えられている。また、副流煙を生成しないため、環境への影響が改善され、他人の健康への危害も軽減される。また、製品自体にタバコが含まれているため、消費者のニコチンに対する生理的欲求を満たすことができる。
【0004】
しかし、製品自体の性能や消費者の体験の面では、以下のような欠点がある。例えば、
1.タバコ棒型の加熱不燃焼式製品の予熱時間は長く、タバコ支柱の軸方向に沿ってフィラメント状のタバコ充填物が緊密に充填されているため、中央加熱片からタバコ支柱の径方向に沿って周縁のタバコ充填物への熱の伝播が妨げられ、タバコ棒の中央領域は十分に加熱されるが、中央加熱片から遠い周縁領域は十分に加熱されず、熱利用効率が低く、タバコ棒の全体的な受熱が不均一になる。また、軸方向に配列される刻みタバコの充填物が緊密に充填され、加熱片がタバコ棒の軸方向に沿って挿入されるため、タバコ棒を挿抜する際の抵抗が大きく、加熱片が破損し易い。
2.ペレット状タバコ型の加熱不燃焼式製品は、互換性が低く、自蔵式カートリッジでしか使用できず、煙量が少なく、タバコの味が薄い。その外観は、従来の電子タバコに似ており、巻きタバコのタバコ支柱との違いが比較的大きいため、一部の消費者には受け入れられていない。従来のタバコ支柱と同様の外観を有する、タバコペレット型の加熱不燃焼式タバコ支柱が報告されているが(CN201811489706.3、CN201811487278.0、CN201811488351.6)、タバコ支柱を製造するために主として紙製の中空管の中にペレット状タバコ充填物を添加しており、このような非巻き式タバコ支柱内ではペレットが緩んだ状態になり、タバコ支柱からペレットが落下するのを防止するために、タバコ支柱の先端(開口端)に、ペレットを封止するための封止装置を追加する必要があり、タバコ支柱製造の複雑さを増大させるとともに、封止装置の耐高温性、密封性、通気性などの新たな課題を提示する。紙製の中空管は、紙を多層に貼り合わせているため、比較的硬く、通気性や熱伝達効率が悪い。また、紙製の中空管にペレットを充填してタバコ支柱を製造しているため、巻き取り工程でタバコ支柱を製造することができず、自動化された巻きタバコ製造設備を用いてパイプライン式の作業でタバコ支柱を製造することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、植毛技術に基づいて製造される非燃焼式タバコ支柱を提供し、前記タバコ支柱は、中空の円筒構造を有する巻きタバコ紙層31を含み、前記巻きタバコ紙層31の内壁には粘着剤層21が設けられ、前記粘着剤層21上には、タバコ充填物ペレット11、タバコ充填物フィラメント、又はタバコ充填物繊維が固着される。
【0007】
ここで、繊維とは、連続又は不連続な細い糸から成る物質である。
【0008】
前記タバコ支柱は、最外周に巻き付けられた前記巻きタバコ紙層31を含むタバコセグメントを含む。
【0009】
好適には、前記タバコ充填物ペレット11が、前記巻きタバコ紙層31の内壁に沿って周方向に配列されてタバコ充填物ペレット層を形成し、前記タバコ充填物ペレット層の数は少なくとも一層であり、前記粘着剤層21の数は少なくとも一層である。
【0010】
好適には、前記タバコ充填物フィラメント又はタバコ充填物繊維が、前記巻きタバコ紙層31の内壁円周に沿って径方向に配列され、前記巻きタバコ紙層31の内部に無数の径方向通路が形成される。
【0011】
好適には、前記巻きタバコ紙層31の内部に、前記タバコ充填物ペレット11が中空又は中実に充填される。
【0012】
好適には、前記タバコ充填物ペレット層の数が2層以上の場合、前記タバコ充填物ペレット層と前記粘着剤層21とは、前記タバコ支柱の径方向に交互に配列される。
【0013】
好適には、前記巻きタバコ紙層31の内部に、前記タバコ充填物フィラメント又はタバコ充填物繊維が、中空又は中実に充填される。
【0014】
好適には、前記タバコ充填物フィラメント又はタバコ充填物繊維の一端が、前記粘着剤層21に固着され、他端が前記粘着剤層21から延在する。
【0015】
好適には、前記粘着剤層21が、接着剤の被覆(コーティング)から成る。
【0016】
本発明の第2の態様は、第1の態様の前記非燃焼式タバコ支柱の製造方法を提供し、前記製造方法は、植毛工程とタバコ支柱巻き取り工程とを含み、前記植毛工程は植毛ステップを含み、前記植毛ステップは巻きたばこ紙3の表面にタバコ充填物1を植毛する。
【0017】
好適には、前記植毛工程が、順次、布巻きステップと、接着剤塗布ステップ8と、前記植毛ステップと、乾燥ステップ9と、洗浄ステップ10とを含む。
【0018】
好適には、前記植毛ステップが、静電植毛、機械植毛、又はそれらの両方の方式の組み合わせを採用する。
【0019】
好適には、前記植毛工程の各ステップの具体的な動作は以下の通りである、すなわち、
前記布巻きステップが、前記巻きタバコ紙3のリールを給紙システムに配置し、
前記接着剤塗布ステップ8が、前記巻きタバコ紙3の内面に接着剤2を吹き付け、
前記植毛ステップが、前記タバコ支柱の巻きタバコ紙3の内壁に塗布された前記接着剤2の中に前記タバコ充填物1を埋め込み固定し、
前記乾燥ステップ9が、一定の温度で、前記タバコ充填物1が植毛された巻きタバコ紙3の表面の前記接着剤2を乾燥硬化させて、前記接着剤2を前記巻きタバコ紙3の内面に固着させると同時に、前記タバコ充填物1を前記接着剤2上に固着させ、
前記洗浄ステップ10が、前記巻きタバコ紙3の表面の過剰な前記タバコ充填物1を除去する。
【0020】
好適には、前記静電植毛方式は、帯電した前記タバコ充填物1が、静電場の作用下で、接着剤2が塗布された前記巻きタバコ紙3の表面に向けて整然とした配向で移動し、前記接着剤2の中に埋め込まれ、前記巻きタバコ紙3の表面に植毛層20を形成することをもたらす。
【0021】
好適には、前記静電場が、直流又は交流の高電圧静電場であり、前記静電場の電場強度、電極間距離、植毛時間、又は前記タバコ充填物1の含水量を調整することにより、前記タバコ充填物1が前記接着剤2に埋め込まれる深さ、植毛密度、及び前記タバコ充填物1の前記接着剤2上での方向を調整する。
【0022】
好適には、前記機械植毛方式は、接着剤2が塗布された巻きタバコ紙3が多角形のローラー7群の上を通過し、前記ローラー7を回転させて前記巻きタバコ紙3を振動させ、ホッパー4から落下したタバコ充填物1を前記接着剤2の中に打ち込み、前記巻きタバコ紙3の表面に粘着させて植毛層20を形成することをもたらす。
【0023】
好適には、前記タバコ充填物1が、タバコ充填物ペレット11、タバコ充填物フィラメント、又はタバコ充填物繊維である。
【0024】
好適には、前記接着剤2が、アクリル酸エステル類、天然ゴムと合成ゴム類、エチレン‐酢酸ビニル共重合体を含む、エマルジョンタイプの感圧接着剤から選択される。
【0025】
好適には、前記接着剤2の固溶物含有量が、40重量%~65重量%である。
【0026】
前記接着剤は低毒性で、無有機溶剤で、無臭で、無色で、適切な温度で迅速に粘着硬化させてしっかりと粘着でき、多孔質の巻きタバコ紙をよく濡らして浸透させることができ、良好な通気性があり、耐湿性、耐高温性、及び汚染防止性を有する。
【0027】
好適には、前記タバコ充填物フィラメントが、再生タバコ葉フィラメント、タバコ葉フィラメント、タバコ茎フィラメント、又は非タバコ植物フィラメントを含み、前記タバコ充填物繊維が、タバコ植物繊維又は非タバコ植物繊維を含み、前記タバコ充填物ペレット11が、タバコペレット又は非タバコ植物ペレットを含む。
【0028】
前記タバコ充填物フィラメント、タバコ充填物繊維、又はタバコ充填物ペレット11は、以下のものであってよい。すなわち、既存のタバコ支柱充填物から作製されたフィラメント状、繊維状、又はペレット状物質の何れかである。前記タバコ支柱充填物は、タバコ又は非たばこ原料を使用することができる。
【0029】
前記タバコ支柱の内部がタバコ充填物ペレット11である場合、タバコ支柱の設計サイズ、ペレット充填率、加熱方式、及び喫煙感などの要求に基づいて、タバコ支柱内のタバコ充填物ペレット11の植毛層の数やペレットのレイアウトをランダムに調整することができ、ペレットは、タバコ支柱の内壁円周に沿って単層の中空配列、多層の中空配列、又は多層の中実配列を呈することができる。ペレットの多層配列を形成するために、接着剤塗布ステップ8と植毛ステップとを、単層ペレット層上で繰り返してもよい。ここで、前記植毛層の数は、前記タバコ充填物ペレット層の数である。
【0030】
単層又は多層の中空に配列されたペレットのレイアウトでは、使用する中央加熱片又は加熱針などの幅や直径に応じて、タバコ支柱の中央空洞のサイズを調整することができるので、加熱片又は加熱針をタバコ支柱の中央空洞に容易に挿入することができ、移動抵抗が生じたり、或いはペレットが落下したりすることがない。
【0031】
ペレットを多層中実に配列したレイアウトでは、外周加熱方式を採用することができる。
【0032】
植毛とは、繊維状、フィラメント状、及びペレット状の綿、レーヨン、アクリル、ナイロン、ポリエステルなどの植毛材を、接着剤を塗布した基材上に固定する方法である。布、皮革、紙、プラスチック、ガラス、金属、ゴム、スポンジ、セラミック、樹脂などの様々な種類の基材の表面に植毛することができる。機械的、静電的、又はそれらの両方の組み合わせ方式で、様々な基材の表面に植毛することができる。植毛材は、静電気又は重力の作用下で、接着剤が塗布された基材に向けて移動し、その中に埋め込まれる。植毛は、紡績工業、工芸品業界、包装業界、自動車業界などの幅広い分野で応用されている。
【0033】
本発明には以下のような有益な効果がある。すなわち、
本発明は、植毛技術に基づいて製造される非燃焼式タバコ支柱、及び植毛技術によって該タバコ支柱を製造する方法を、初めて提案する。本発明では、巻きタバコ紙の表面にフィラメント状、繊維状、又はペレット状のタバコを自動的に植毛する工程と、その後に続く巻きタバコ巻き取り工程とを採用し、非燃焼式タバコ支柱を得ることができる。
【0034】
植毛材すなわち前記タバコ充填物1がタバコ充填物ペレット11である場合、以下の通りである。すなわち、
1.ペレットが巻きタバコ紙の内壁の接着剤にしっかりと結合されているので、本発明の方法で得られたタバコ支柱は、巻き取り、包装、輸送、及び喫煙の過程で、タバコ充填物ペレットが、タバコ支柱の中から落下することがなく、タバコ支柱の開口端で封止装置を採用する複雑な工程を省くことができる。
2.植毛工程を採用してタバコ充填物ペレットを巻きタバコ紙の中に植毛してから巻き取るので、植毛工程の後段では巻きタバコ巻き取り工程とシームレスに接続することができ、植毛設備を巻き取り機に直接接続したユニットを実現することができ、タバコ支柱の巻き取りを完成し、従来の紙空管を採用してペレットを充填する非自動化生産方式に代わって、巻きタバコ製造技術による自動化生産の基礎を築いた。
3.タバコ支柱の設計サイズ、ペレット充填率、加熱方式、及び喫煙感などの要求に基づいて、タバコ支柱内のタバコ充填物ペレットの植毛層の数やペレットのレイアウトをランダムに調整することができる。タバコ充填物ペレットを充填したタバコ支柱は、タバコ支柱内のペレットのレイアウトに応じて、中央加熱や外周加熱などの異なる加熱方式を採用することができる。中央加熱又は外周加熱の何れを採用するかにかかわらず、ペレットは接着剤を介して巻きタバコ紙の内壁上に強固に付着されているか又は互いに強固に粘着しており、使用される接着剤は良好な熱安定性を有するので、喫煙中に、充填されたペレットが、接着剤の無効化及び重力の作用によって、タバコ支柱の開口端に向けて沈み込み、加熱された高温下で凝集することによって、塊になることを回避することができる。そのため、ペレットの充填状態やレイアウトの変化を回避し、ペレット式タバコ支柱の喫煙過程において、本来のペレットのレイアウトが変化することによる局所的な加熱ムラ、吸引不良、及び吸引味の変化などの不具合を改善した。
4.使用されている接着剤の通気性が良いため、タバコ支柱の加熱過程で、熱が接着剤とペレットとの間の隙間を通ってスムーズに伝播する。
【0035】
植毛材すなわち前記タバコ充填物1が、タバコ充填物フィラメント又はタバコ充填物繊維である場合、以下の通りである。すなわち、
1.本発明の方法で得られるタバコ支柱内のタバコ充填物フィラメント又は繊維は、タバコ支柱の円周に沿って径方向に形成される無数の熱伝播方向通路と同じ方向に配列される。これらの通路は短くて直線的であるため、タバコ支柱の径方向に熱が伝播する際の熱抵抗が大幅に低減され、既存の加熱不燃焼式タバコ支柱(タバコ充填物の多くは、軸方向に配列されているか又は無秩序である)の熱抵抗が比較的高く、熱伝達速度が比較的遅く、受熱が不均一であるという欠陥を改善した。
2.本発明のタバコ充填物フィラメント又は繊維の長さ及び植毛密度は、異なる仕様、充填率、加熱方式、及び喫煙要件に合わせてランダムに調整することができる。短繊維と長繊維のタバコ充填物を植毛材料として使用することができ、それぞれ短繊維中空配列、長繊維中空配列、又は長繊維中実配列の3種類の配列方式を形成することができる。中央加熱又は外周加熱の何れの方式を採用しても、このタイプのタバコ支柱は適応することができ、タバコ支柱の径方向の熱伝播速度と熱利用効率を大幅に向上させることができる。繊維の長さや植毛密度を調整することで充填率を変えることができるほか、異なるサイズの加熱部材に適応することができるので、タバコ支柱の仕様や加熱方法の選択の多様性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施例1の植毛技術に基づいて非燃焼式タバコ支柱を製造する方法における植毛工程のプロセスフロー図であり、植毛方式は静電植毛である。
【
図2】実施例2の植毛技術に基づいて非燃焼式タバコ支柱を製造する方法における植毛工程のプロセスフロー図であり、植毛方式は機械植毛である。
【
図3】実施例3の植毛されたタバコ充填物ペレット11の非燃焼式タバコ支柱のタバコセグメントの径方向断面図であり、
図3‐1は、実施例3の植毛された単層タバコ充填物ペレット11の中空タバコセグメントの断面図、
図3‐2は、実施例3の植毛された多層タバコ充填物ペレット11の中空タバコセグメントの断面図、
図3‐3は、実施例3の植毛された多層タバコ充填物ペレット11の中実タバコセグメントの断面図である。
【
図4】実施例4の植毛されたタバコ充填物繊維の非燃焼式たばこ支柱のタバコセグメントの径方向断面図であり、
図4‐1は、実施例4の植毛されたタバコ充填物短繊維12の中空タバコセグメントの断面図、
図4‐2は、実施例4の植毛されたタバコ充填物長繊維13の中空たばこセグメントの断面図、
図4‐3は、実施例4の植毛されたタバコ充填物長繊維13の中実タバコセグメントの断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 タバコ充填物、11 タバコ充填物ペレット、12 タバコ充填物短繊維、13 タバコ充填物長繊維、2 接着剤、3 巻きタバコ紙、4 ホッパー、5 電極、6 接地電極、7 ローラー、8 接着剤塗布ステップ、9 乾燥ステップ、10 洗浄ステップ、20 植毛層、21 粘着剤層、31 巻きタバコ紙層。
【発明を実施するための形態】
【0038】
具体的な実施例
以下、具体的な実施例を挙げて本発明の内容を更に説明する。
【0039】
実施例1
植毛技術に基づいて非燃焼式タバコ支柱を製造する方法であって、植毛工程とタバコ支柱巻き取り工程とを含み、前記植毛工程は、順次、布巻きステップと、接着剤塗布ステップ8と、植毛ステップと、乾燥ステップ9と、洗浄ステップ10とを含む。前記植毛ステップは、静電植毛方式を採用する。
【0040】
図1で示されているように、前記植毛工程の各ステップの具体的な動作は以下の通りである。すなわち、
前記布巻きステップが、巻きタバコ紙3のリールを給紙システムに配置し、
前記接着剤塗布ステップ8が、巻きタバコ紙3の内面に接着剤2を吹き付け、
前記植毛ステップが、前記タバコ支柱の巻きタバコ紙3の内壁に塗布された前記接着剤2の中にタバコ充填物1を埋め込み固定し、
前記乾燥ステップ9が、一定の温度で、前記タバコ充填物1が植毛された巻きタバコ紙3の表面の前記接着剤を乾燥硬化させて、前記接着剤2を前記巻きタバコ紙3の内面に固着させると同時に、前記タバコ充填物1を前記接着剤2上に固着させ、
前記洗浄ステップ10が、吸気、ブラッシング、叩きなどにより、前記巻きタバコ紙3の表面の過剰な前記タバコ充填物1を除去する。
【0041】
前記静電植毛ステップで使用される装置は、既存の静電植毛装置を使用して、巻きタバコ紙とタバコ充填物との特性のみに合わせて、装置の機械的及び電気的パラメータを調整することができる。
【0042】
前記静電植毛は、帯電した前記タバコ充填物1が、静電場の作用下で、接着剤2が塗布された巻きタバコ紙3の表面に向けて整然とした配向で移動し、接着剤2の中に埋め込まれることをもたらす。
【0043】
前記静電植毛方式の具体的な動作は以下のとおりである。すなわち、
前記タバコ充填物1をホッパー4の中に入れる。ホッパー4の下に配置された電極5によって、前記タバコ充填物1を帯電させる。前記巻きタバコ紙3の下端には、タバコ充填物1を巻きタバコ紙3上に吸着可能な接地電極6が設けられており、その帯電電荷の電気的性質は電極5とは反対であり、電極5の帯電電荷と同じ電気的性質を有するタバコ充填物1を吸着するように移動させることができる。前記タバコ充填物1は、電場の作用下で、巻きタバコ紙3の表面に垂直に粘着し、密に積層された植毛層20を形成する。
【0044】
前記静電場は、直流又は交流の高電圧静電場である。前記タバコ充填物1の接着剤への埋め込み深さ、植毛密度、及び接着剤上での配向は、静電場の電場強度、電極間の距離、及び植毛時間と関係する。
【0045】
前記タバコ充填物1は、親水性の繊維であり、それ自体を帯電させて電荷を保持することができ、一端に正の電荷が付与され、他端に負の電荷が付与され、電位勾配の方向に移動するように配向される。タバコ充填物1の含水量や湿度を制御又は調整することによって、静電場での自由な移動が確保され、静電活性を維持しつつ同時に、凝集したり塊になったりすることがなく、巻きタバコ紙3の表面の接着剤2の中に均一に植毛することができる。
【0046】
その後のタバコ支柱巻き取り工程は、従来のタバコ支柱巻き取り工程を使用してもよい。
【0047】
図1は、実施例1の植毛技術に基づいて非燃焼式タバコ支柱を製造する方法における植毛工程のプロセスフロー図であり、植毛方法は静電植毛である。
【0048】
実施例2
植毛技術に基づいて非燃焼式タバコ支柱を製造する方法であって、実施例1と異なるのは、前記植毛ステップが機械植毛方式を採用する点である。
【0049】
前記機械植毛ステップで使用される装置は、既存の適切な機械植毛装置を使用して、巻きタバコ紙とタバコ充填物との特性のみに合わせて、装置の機械的及び電気的パラメータを調整することができる。
【0050】
具体的な動作は以下のとおりである。すなわち、
接着剤2が塗布された巻きタバコ紙3は、多角形のローラー7群の上を通過し、ローラー7を高速回転させて巻きタバコ紙3を振動させ、タバコ充填物1を接着剤2の中に打ち込む。前記タバコ充填物1は、ホッパー4から重力によって巻きタバコ紙3上に付加される。前記タバコ充填物1は、巻きタバコ紙3の表面に粘着し、密に重ねられた植毛層20を形成する。
【0051】
図2は、実施例2の植毛技術に基づいて非燃焼式タバコ支柱を製造する方法における植毛工程のプロセスフロー図であり、植毛方法は機械植毛である。
【0052】
実施例3
本発明の実施例2の製造方法を使用して製造された非燃焼式タバコ支柱のタバコセグメントの径方向断面図を、
図3の3‐1で示している。前記タバコ支柱は、最外周に巻き付けられた前記巻きタバコ紙層31を含むタバコセグメントを含む。前記巻きタバコ紙層31は、中空の円筒構造であり、前記巻きタバコ紙層31の内壁には粘着剤層21が設けられ、前記粘着剤層21上にはタバコ充填物ペレット11が固着されている。前記タバコ充填物ペレット11は、前記巻きタバコ紙層31の内壁に沿って周方向に配列されてタバコ充填物ペレット層を形成し、前記タバコ充填物ペレット層の数は一層であり、前記粘着剤層の数は一層である。前記巻きタバコ紙層31の内部には、タバコ充填物ペレット11が中空に充填されている。前記粘着剤層21は、接着剤2の被覆から成る。前記接着剤2は、エマルジョン(水性)タイプの感圧接着剤アクリル酸エステル類から選択される。前記接着剤2の固溶物含有量は、40重量%~65重量%である。
【0053】
図3‐2で示されているように、本実施例は、タバコ支柱内のタバコ充填物ペレット層の第2の配列方式も提供する。
前記タバコ充填物ペレット層の数は3層であり、前記タバコ充填物ペレット層と前記粘着剤層21とは、前記タバコ支柱の径方向に交互に配列されている。前記巻きタバコ紙層31の内部には、タバコ充填物ペレット11が中空に充填されている。
【0054】
図3‐3で示されているように、本実施例は、タバコ支柱内の前記タバコ充填物ペレット層の第3の配列方式も提供する。
前記タバコ充填物ペレット層と前記粘着剤層21とは、前記タバコ支柱の径方向に交互に配列されている。前記巻きタバコ紙層31の内部には、前記タバコ充填物ペレット11が中実に充填されている。前記タバコ充填物ペレット層上の被覆から成る粘着剤層21は図示されていない。
【0055】
図3‐2及び
図3‐3で示されているように、ペレットの多層配列を形成するために、接着剤塗布ステップ8及び植毛ステップは、単層ペレット層上で繰り返されてよい。前記タバコ充填物ペレット層上の被覆から成る粘着剤層21は図示されていない。
【0056】
実施例4
本発明の実施例1の方法を使用して製造された非燃焼式タバコ支柱のタバコセグメントの径方向断面図が、
図4の4‐1で示されている。前記タバコ支柱は、最外周に巻き付けられた前記巻きタバコ紙層31を含むタバコセグメントを含む。前記巻きタバコ紙層31は、中空の円筒構造であり、前記巻きタバコ紙層31の内壁には粘着剤層21が設けられ、前記粘着剤層21上にはタバコ充填物繊維が固着されている。前記タバコ充填物繊維は、タバコ充填物短繊維12である。本明細書中で、前記短繊維12の長さは2~3.5mmである。前記タバコ充填物繊維は、前記巻きタバコ紙層の内壁円周に沿って径方向に配列され、前記巻きタバコ紙層の内部に無数の径方向通路が形成される。前記巻きタバコ紙層の内部には、前記タバコ充填物繊維が中空に充填されている。前記タバコ充填物繊維は、一端が前記粘着剤層に固着され、他端が前記粘着剤層から延在する。前記粘着剤層21は、接着剤2の被覆から成り、前記接着剤2は、エマルジョン(水性)タイプの感圧接着剤天然ゴム類から選択される。前記接着剤の固溶物含有量は、40重量%~65重量%である。
【0057】
図4‐2で示されているように、本実施例は、タバコ支柱内の前記タバコ充填物繊維の第2の配列方式も提供する。
図4‐1と比較して、その違いは、前記タバコ充填物繊維がタバコ充填物長繊維13である点である。ここで、前記長繊維13の長さは、3.5mmより大きい。
【0058】
図4‐3で示されているように、本実施例は、タバコ支柱内の前記タバコ充填物繊維の第3の配列方式も提供する。
図4‐1と比較して、その違いは、前記タバコ充填物繊維がタバコ充填物長繊維13である点である。前記巻きタバコ紙層31の内部には、前記タバコ充填物繊維が中実に充填されている。
【0059】
以上は本発明の具体的な実施例に過ぎないが、本発明の保護範囲は、これに限定されるものではなく、本発明によって開示された技術的範囲内で当業者が容易に考えられる変形や置換は、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準ずるものとする。