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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】深礎掘削機
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/413 20060101AFI20221028BHJP
   E02F 3/47 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
E02F3/413
E02F3/47 A
E02F3/47 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022511731
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009328
(87)【国際公開番号】W WO2021199965
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020063331
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020063338
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 香純
(72)【発明者】
【氏名】稲元 昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】関 誠治
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特公昭57-36373(JP,B2)
【文献】特開昭52-131602(JP,A)
【文献】特開昭56-159434(JP,A)
【文献】実開昭58-176157(JP,U)
【文献】特開昭52-108602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/413
E02F 3/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、
前記作業装置は、前記車体に設けられたブームと、前記ブームの先端に設けられたアームと、前記アームに設けられたバケット昇降・開閉装置と、前記アームに対して昇降可能に設けられ前記バケット昇降・開閉装置による昇降動作と開閉動作によって立坑を掘削するクラムシェルバケットとを備え、
前記バケット昇降・開閉装置は、
前記アームに設けられた昇降シリンダと、
前記昇降シリンダの一端側に取付けられ前記昇降シリンダの伸縮方向に移動する第1昇降用シーブおよび第1開閉用シーブと、
前記第1昇降用シーブに対し前記昇降シリンダの伸縮方向に離間して前記アームに設けられた第2昇降用シーブと、
前記第1開閉用シーブに対し前記昇降シリンダの伸縮方向に離間して前記アームに設けられた第2開閉用シーブと、
前記アームに設けられ前記第1開閉用シーブに対して前記第2開閉用シーブを接近、離間させる開閉シリンダと、
長さ方向の一端が前記アームに取付けられると共に他端が前記クラムシェルバケットに取付けられ、中間部が前記第1昇降用シーブと前記第2昇降用シーブとに巻回された昇降ロープと、
長さ方向の一端が前記アームに取付けられると共に他端が前記クラムシェルバケットに取付けられ、中間部が前記第1開閉用シーブと前記第2開閉用シーブとに巻回された開閉ロープとを備えてなる深礎掘削機において、
前記アームに設けられ前記開閉ロープの緩みを調整するために伸縮する緩み調整シリンダと、
前記緩み調整シリンダの一端に取付けられた状態で前記開閉ロープの中間部が巻回され、前記緩み調整シリンダの伸縮動作に応じて前記第2開閉用シーブに対して接近、離間する方向に移動する緩み調整用シーブとが設けられていることを特徴とする深礎掘削機。
【請求項2】
前記バケット昇降・開閉装置は、
前記開閉シリンダを操作する開閉用操作具と、
前記昇降シリンダを操作する昇降用操作具と、
前記開閉ロープに作用する張力が所定値以下になったか否かを検出する検出器と、
前記検出器が前記開閉ロープに作用する張力が所定値以下になったことを検出したときに前記開閉用操作具の操作対象を前記開閉シリンダから前記緩み調整シリンダに切換えるシリンダ切換弁と、
前記昇降用操作具が前記クラムシェルバケットを上昇させる上昇側に操作されたときに前記緩み調整シリンダを縮小させるシリンダ縮小手段と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の深礎掘削機。
【請求項3】
前記シリンダ縮小手段は、前記緩み調整シリンダの縮小速度を制限する絞りを有していることを特徴とする請求項2に記載の深礎掘削機。
【請求項4】
前記シリンダ縮小手段は、
前記緩み調整シリンダのボトム側油室と作動油タンクとを接続している排液管路と、
前記排液管路に設けられ、前記昇降用操作具が前記クラムシェルバケットを上昇させる上昇側に操作されたときに前記ボトム側油室の作動油が前記作動油タンクに向けて流通するのを許すパイロット操作チェック弁と、を備えていることを特徴とする請求項2に記載の深礎掘削機。
【請求項5】
前記シリンダ縮小手段は、前記昇降用操作具が前記クラムシェルバケットを上昇させる上昇側に操作されたときに、前記緩み調整シリンダのロッド側油室に作動油が供給されるように緩み取り切換弁を切換える強制切換パイロット管路を備えていることを特徴とする請求項2に記載の深礎掘削機。
【請求項6】
前記昇降シリンダ、前記開閉シリンダ、および前記緩み調整シリンダは、それぞれ前記アームの長手方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の深礎掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立坑を掘削するのに好適に用いられる深礎掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の高層ビルの建設現場では、工期の短縮や、軟弱地盤でも地下工事を安定して行うことができるように、地上と地下を同時に施工する逆打ち工法が用いられている。この逆打ち工法を行う現場では、立坑を掘削する深礎掘削機が使用される。
【0003】
深礎掘削機は、自走可能な車体と、車体に設けられた作業装置とを有している。この作業装置は、車体に設けられたブームと、ブームの先端に設けられたアームと、アームに設けられたバケット昇降装置と、クラムシェルバケットとを備えている。クラムシェルバケットはアームに対して昇降可能に設けられ、バケット昇降装置による昇降動作と開閉動作によって立坑を掘削する。
【0004】
この種のバケット昇降装置として、クラムシェルバケットを昇降させる昇降シリンダと、クラムシェルバケットを開閉させる開閉シリンダとを備えた装置が提案されている(特許文献1)。昇降シリンダは、可動シーブと固定シーブとの間隔を変化させて昇降ロープを巻出し、巻取ることによりクラムシェルバケットを昇降させる。開閉シリンダは、可動シーブと固定シーブとの間隔を変化させて開閉ロープを巻出し、巻取ることによりクラムシェルバケットを開閉させる。この特許文献1によるバケット昇降装置は、クラムシェルバケットが地面に着地したことを検知して昇降シリンダによるバケットの下降を停止することにより、昇降ロープが緩んでシーブから離脱するのを防止する構成としている。
【0005】
しかし、特許文献1のバケット昇降装置では、クラムシェルバケットが地面に着地したときにバケットの下降が停止する。このため、クラムシェルバケットは、地面に着地した位置で停止してしまい、自重によって地中に潜り込むことができない。この結果、、開閉シリンダによってクラムシェルバケットを閉じたとしても、多くの土砂を掬うことができないという問題がある。
【0006】
一方、他の従来技術によるバケット昇降装置として、ブームに昇降ロープと開閉ロープとが巻回されるドラムが設けられ、このドラムが、クラムシェルバケットの上昇、下降、および自重による下降(自由落下)の3態様に切換えられる構成となった装置が提案されている(特許文献2)。この特許文献2によるバケット昇降装置は、ブームに取付けられたアームに揺動リンクの下端が取付けられている。揺動リンクの上端に設けられたシーブには、ドラムとクラムシェルバケットとの間を接続する開閉ロープが巻回されている。このバケット昇降装置は、揺動リンクに接続されたシリンダを伸縮させて揺動リンクを揺動させることにより、クラムシェルバケットを開閉する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-147800号公報
【文献】特公昭57-36373号公報
【発明の概要】
【0008】
特許文献2によるバケット昇降装置は、ドラムを自由落下の態様とすることにより、クラムシェルバケットを自重によって地中に潜り込ませることができる。そして、クラムシェルバケットが地中に潜り込んだ状態で、揺動リンクを揺動させてクラムシェルバケットを閉じる。これにより、バケット昇降装置は、1回の掘削動作で多くの土砂を掬うことができ、掘削効率を高めることができる。
【0009】
しかし、特許文献2によるバケット昇降装置は、クラムシェルバケットを開閉するために、アーム上に搭載された揺動リンクを揺動させる必要がある。このため、掘削作業時に揺動リンクが揺動する範囲を含めた車体の高さが大きくなり、例えば逆打ち工法を行う現場等の高さ制限がある作業現場に適用することができないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、土砂の掘削効率を高めることができ、かつ掘削作業時の車体の高さを抑えることができるようにした深礎掘削機を提供することにある。
【0011】
本発明の一実施形態は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、前記作業装置は、前記車体に設けられたブームと、前記ブームの先端に設けられたアームと、前記アームに設けられたバケット昇降・開閉装置と、前記アームに対して昇降可能に設けられ前記バケット昇降・開閉装置による昇降動作と開閉動作によって立坑を掘削するクラムシェルバケットとを備え、前記バケット昇降・開閉装置は、前記アームに設けられた昇降シリンダと、前記昇降シリンダの一端側に取付けられ前記昇降シリンダの伸縮方向に移動する第1昇降用シーブおよび第1開閉用シーブと、前記第1昇降用シーブに対し前記昇降シリンダの伸縮方向に離間して前記アームに設けられた第2昇降用シーブと、前記第1開閉用シーブに対し前記昇降シリンダの伸縮方向に離間して前記アームに設けられた第2開閉用シーブと、前記アームに設けられ前記第1開閉用シーブに対して前記第2開閉用シーブを接近、離間させる開閉シリンダと、長さ方向の一端が前記アームに取付けられると共に他端が前記クラムシェルバケットに取付けられ、中間部が前記第1昇降用シーブと前記第2昇降用シーブとに巻回された昇降ロープと、長さ方向の一端が前記アームに取付けられると共に他端が前記クラムシェルバケットに取付けられ、中間部が前記第1開閉用シーブと前記第2開閉用シーブとに巻回された開閉ロープとを備えてなる深礎掘削機において、前記アームに設けられ前記開閉ロープの緩みを調整するために伸縮する緩み調整シリンダと、前記緩み調整シリンダの一端に取付けられた状態で前記開閉ロープの中間部が巻回され、前記緩み調整シリンダの伸縮動作に応じて前記第2開閉用シーブに対して接近、離間する方向に移動する緩み調整用シーブとが設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、昇降シリンダの作動によりクラムシェルバケットを地面に着地させた後に、さらに昇降シリンダを作動させることにより、昇降ロープと開閉ロープを緩ませることができる。この状態で、緩み調整シリンダを作動させて開閉ロープの緩みを除去した後、開閉シリンダを作動させることにより、クラムシェルバケットを迅速に閉じることができる。このとき、昇降ロープには緩みがあるため、クラムシェルバケットは自重によって地中に潜り込むことができる。従って、クラムシェルバケットを閉じることにより、クラムシェルバケットは多くの土砂を掬うことができるので、掘削効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る深礎掘削機を示す左側面図である。
図2】バケット昇降・開閉装置を模式的に示す構成図である。
図3】バケット昇降・開閉装置の油圧回路図である。
図4】クラムシェルバケットが下降するときのバケット昇降・開閉装置の動作を模式的に示す動作説明図である。
図5】クラムシェルバケットが地面に着地したときのバケット昇降・開閉装置の動作を模式的に示す動作説明図である。
図6】クラムシェルバケットが着地した後に昇降ロープと開閉ロープを緩めた状態を模式的に示す動作説明図である。
図7】クラムシェルバケットを閉じる前に開閉ロープの緩みを取った状態を模式的に示す動作説明図である。
図8】クラムシェルバケットを閉じて土砂を掘削するときのバケット昇降・開閉装置の動作を模式的に示す動作説明図である。
図9】クラムシェルバケットを地面から持上げるときのバケット昇降・開閉装置の動作を模式的に示す動作説明図である。
図10】第2の実施形態によるバケット昇降・開閉装置を模式的に示す構成図である。
図11】第3の実施形態によるバケット昇降・開閉装置を模式的に示す構成図である。
図12】第3の実施形態によるバケット昇降・開閉装置の油圧回路図である。
図13】第4の実施形態によるバケット昇降・開閉装置を模式的に示す構成図である。
図14】第4の実施形態によるバケット昇降・開閉装置の油圧回路図である。
図15】第5の実施形態に係るバケット昇降・開閉装置の油圧回路図である。
図16】第6の実施形態に係るバケット昇降・開閉装置の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る深礎掘削機について添付図面に従って詳細に説明する。まず、図1ないし図9は本発明の第1の実施形態を示している。
【0015】
図1において、深礎掘削機1は、例えばクローラ式の油圧ショベルをベースにして製造されている。深礎掘削機1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回動作が可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3に設けられた後述の作業装置5とにより構成されている。下部走行体2と上部旋回体3は、深礎掘削機1の車体を構成している。
【0016】
上部旋回体3の左前側には、運転室を画成するキャブ4が設けられている。このキャブ4には、下部走行体2、作業装置5等を操作するためにオペレータが搭乗する。キャブ4内には、オペレータが着座する運転席(図示せず)が設けられ、この運転席の周囲には、後述する昇降操作ペダル36、開閉操作レバー39、緩み操作ペダル42等が配設されている。
【0017】
作業装置5は、上部旋回体3に俯仰の動作が可能に設けられたブーム6と、ブーム6の先端に回動可能に設けられたアーム7と、後述のバケット昇降・開閉装置11と、クラムシェルバケット10とを含んで構成されている。上部旋回体3とブーム6との間には、上部旋回体3に対してブーム6を俯仰動させるブームシリンダ8が設けられている。ブーム6とアーム7との間には、ブーム6に対してアーム7を回動させるアームシリンダ9が設けられている。
【0018】
アーム7は、例えば長尺な角筒体として形成されている。図2に示すように、アーム7にはバケット昇降・開閉装置11が搭載されている。アーム7の先端部には、後述の昇降ロープ24を下方に案内する昇降ガイドシーブ22と、後述の開閉ロープ25を下方に案内する開閉ガイドシーブ23とが設けられている。
【0019】
クラムシェルバケット10は、バケット支持部10Aと、バケット支持部10Aの下側に開閉可能に設けられた一対のバケット10Bと、連結ブラケット10Cと、一対の開閉アーム10Dとを有している。連結ブラケット10Cには、一対のバケット10Bが回動可能に連結されている。一対の開閉アーム10Dは、バケット支持部10Aと一対のバケット10Bとの間を連結している。バケット支持部10Aには、複数枚の上側シーブ10Eが設けられている。連結ブラケット10Cには、上側シーブ10Eと上下方向で対向する複数枚の下側シーブ10Fが設けられている。
【0020】
クラムシェルバケット10のバケット支持部10Aには、昇降ロープ24の他端24Bが取付けられている。また、クラムシェルバケット10の上側シーブ10Eと下側シーブ10Fには、開閉ロープ25が交互に巻回されている。開閉ロープ25の他端25Bは、クラムシェルバケット10のバケット支持部10Aに取付けられている(図4参照)。
【0021】
バケット昇降・開閉装置11は、アーム7に設けられている。バケット昇降・開閉装置11は、クラムシェルバケット10の昇降動作と開閉動作を含む各種動作を行う。図2に示すように、バケット昇降・開閉装置11は、後述の昇降シリンダ12、第1昇降用シーブ14、第1開閉用シーブ15、第2昇降用シーブ17、開閉シリンダ18、第2開閉用シーブ20、昇降ロープ24、開閉ロープ25、緩み調整シリンダ26、緩み調整用シーブ28を含んで構成されている。
【0022】
昇降シリンダ12は、アーム7の長手方向に沿ってアーム7に設けられている。昇降シリンダ12は、後述する昇降操作ペダル36の踏込み操作に応じて伸長または縮小することにより、クラムシェルバケット10を昇降させる。昇降シリンダ12は、基端がアーム7に取付けられたチューブ12Aと、チューブ12A内に挿嵌されたピストン12Bと、ロッド12Cとを有している。ロッド12Cは、基端がチューブ12A内でピストン12Bに取付けられ、先端がチューブ12Aから伸縮可能に突出している。
【0023】
第1軸部材13は、昇降シリンダ12のロッド12Cの先端に連結されている。第1軸部材13は、昇降シリンダ12の伸縮方向、即ち、アーム7の長手方向と交差する横方向(幅方向)に延び、第1昇降用シーブ14と第1開閉用シーブ15とを回転可能に支持している。
【0024】
第1昇降用シーブ14は、第1軸部材13を介して昇降シリンダ12の一端側となるロッド12Cの先端に取付けられている。第1昇降用シーブ14は、第1軸部材13に横方向に重なった状態で複数枚(図2では3枚を例示)設けられ、昇降シリンダ12の伸縮方向(アーム7の長手方向)に移動可能となっている。第1昇降用シーブ14の枚数は、必要とされる垂直掘削深さに応じて設定される。
【0025】
第1開閉用シーブ15は、第1昇降用シーブ14と共に、第1軸部材13を介して昇降シリンダ12の一端側となるロッド12Cの先端に取付けられている。第1開閉用シーブ15は、例えば昇降シリンダ12を挟んで第1昇降用シーブ14とは反対側に配置されている。第1開閉用シーブ15は、第1軸部材13に横方向に重なった状態で複数枚(図2では3枚を例示)設けられ、昇降シリンダ12の伸縮方向に移動可能となっている。従って、これら複数の第1開閉用シーブ15と複数枚の第1昇降用シーブ14とは、昇降シリンダ12の伸縮動作によって一体的にアーム7の長手方向に移動する。
【0026】
第2軸部材16は、昇降ガイドシーブ22および開閉ガイドシーブ23が設けられたアーム7の先端側に取付けられている。第2軸部材16は、昇降シリンダ12の伸縮方向と交差する方向(横方向)に延び、複数枚の第2昇降用シーブ17を回転可能に支持している。
【0027】
第2昇降用シーブ17は、複数枚の第1昇降用シーブ14に対し昇降シリンダ12の伸縮方向に離間した状態で、第2軸部材16に回転可能に支持されている。第2昇降用シーブ17は、第2軸部材16に横方向に重なった状態で複数枚(図2では3枚を例示)設けられ、アーム7に対して昇降シリンダ12の伸縮方向に固定されている。従って、昇降シリンダ12の伸縮動作に応じて、第1昇降用シーブ14は第2昇降用シーブ17に対して接近、離間する。
【0028】
開閉シリンダ18は、昇降シリンダ12と並行(平行)するように、アーム7の長手方向に延びて設けられている。開閉シリンダ18は、後述する開閉操作レバー39の傾転操作に応じて伸長または縮小することにより、クラムシェルバケット10を開閉させる。開閉シリンダ18は、基端がアーム7に取付けられたチューブ18Aと、チューブ18A内に挿嵌されたピストン18Bと、ロッド18Cとを有している。ロッド18Cは、基端がチューブ18A内でピストン18Bに取付けられ、先端がチューブ18Aから伸縮可能に突出している。
【0029】
第3軸部材19は、開閉シリンダ18のロッド18Cの先端に連結されている。第3軸部材19は、昇降シリンダ12の伸縮方向、即ち、アーム7の長手方向と交差する横方向に延び、第2開閉用シーブ20を回転可能に支持している。
【0030】
第2開閉用シーブ20は、複数枚の第1開閉用シーブ15に対し昇降シリンダ12の伸縮方向に離間した状態で、第3軸部材19に回転可能に支持されている。第2開閉用シーブ20は、第3軸部材19に横方向に重なった状態で複数枚(図2では2枚を例示)設けられ、開閉シリンダ18の伸縮方向(アーム7の長手方向)に移動可能となっている。開閉シリンダ18は、伸縮動作に応じて第2開閉用シーブ20をアーム7の長手方向に移動させることにより、第1開閉用シーブ15に対して第2開閉用シーブ20を接近、離間させる。
【0031】
第4軸部材21は、アーム7の先端部に設けられている。第4軸部材21は、昇降シリンダ12の伸縮方向、即ち、アーム7の長手方向と交差する横方向に延び、昇降ガイドシーブ22と開閉ガイドシーブ23とを回転可能に支持している。
【0032】
昇降ガイドシーブ22と開閉ガイドシーブ23は、第4軸部材21を介してアーム7の先端部に設けられている。昇降ガイドシーブ22と開閉ガイドシーブ23は、第4軸部材21に回転可能に支持されている。昇降ガイドシーブ22は、アーム7(バケット昇降・開閉装置11)からクラムシェルバケット10に向けて後述の昇降ロープ24を案内している。一方、開閉ガイドシーブ23は、アーム7からクラムシェルバケット10に向けて後述の開閉ロープ25を案内している。
【0033】
昇降ロープ24は、アーム7とクラムシェルバケット10との間に設けられ、クラムシェルバケット10を昇降可能に支持している。昇降ロープ24は、ワイヤロープからなり、長さ方向の一端24Aはアーム7に取付けられている。昇降ロープ24の長さ方向の他端24Bは、昇降ガイドシーブ22から下向きに延び、クラムシェルバケット10のバケット支持部10Aに取付けられている(図4参照)。昇降ロープ24の中間部24Cは、複数枚の第1昇降用シーブ14と複数枚の第2昇降用シーブ17に交互に巻回されている。
【0034】
開閉ロープ25は、アーム7とクラムシェルバケット10との間に設けられ、クラムシェルバケット10の一対のバケット10Bを開閉させる。開閉ロープ25はワイヤロープからなり、長さ方向の一端25Aはアーム7に取付けられている。開閉ロープ25の長さ方向の他端25Bは、開閉ガイドシーブ23から下向きに延び、クラムシェルバケット10のバケット支持部10Aに取付けられている(図4参照)。開閉ロープ25の中間部25Cは、複数枚の第1開閉用シーブ15と複数枚の第2開閉用シーブ20に交互に巻回されている。また、開閉ロープ25の他端25B側は、クラムシェルバケット10を構成する複数枚の上側シーブ10Eと複数枚の下側シーブ10Fとに交互に巻回されている。
【0035】
従って、クラムシェルバケット10は、昇降シリンダ12が縮小して第1昇降用シーブ14が第2昇降用シーブ17に接近することにより下降する。また、クラムシェルバケット10は、昇降シリンダ12が伸長して第1昇降用シーブ14が第2昇降用シーブ17から離間することにより上昇する。この場合、第1昇降用シーブ14と第2昇降用シーブ17の枚数を増やしたり、昇降シリンダ12のストロークを変えることにより、クラムシェルバケット10の下降距離(最大深度)を自由に設定することができる。
【0036】
一方、クラムシェルバケット10は、開閉シリンダ18が縮小して第2開閉用シーブ20が第1開閉用シーブ15に接近することにより開く。また、クラムシェルバケット10は、開閉シリンダ18が伸長して第2開閉用シーブ20が第1開閉用シーブ15から離間することにより閉じる。この場合、開閉シリンダ18のストロークを変えることで、クラムシェルバケット10の開閉ストロークに対応可能となる。
【0037】
ここで、クラムシェルバケット10を閉じるときに開閉シリンダ18から開閉ロープ25に作用する力(引上げ力)は、クラムシェルバケット10の重量よりも小さく設定されている。これにより、クラムシェルバケット10を閉じて土砂を掬ったときに、開閉シリンダ18から開閉ロープ25に作用する力によってクラムシェルバケット10が持上げられない構成となっている。また、昇降ロープ24の撚り方向と開閉ロープ25の撚り方向とは、クラムシェルバケット10を保持した状態で互いに逆向きとなるように設定されている。これにより、クラムシェルバケット10が昇降時に回転振れするのを抑え、昇降ロープ24と開閉ロープ25とによってクラムシェルバケット10を円滑に昇降させることができる構成となっている。
【0038】
緩み調整シリンダ26は、昇降シリンダ12と並行するように、アーム7の長手方向に延びて設けられている。緩み調整シリンダ26は、後述する緩み操作ペダル42の踏込み操作に応じて伸長または縮小することにより、立坑の掘削作業状態に応じて開閉ロープ25の張力を調整する。緩み調整シリンダ26は、基端がアーム7に取付けられたチューブ26Aと、チューブ26A内に挿嵌されたピストン26Bと、ロッド26Cとを有している。ロッド26Cは、基端がチューブ26A内でピストン26Bに取付けられ、先端がチューブ26Aから伸縮可能に突出している。
【0039】
第5軸部材27は、緩み調整シリンダ26のロッド26Cの先端に連結されている。第5軸部材27は、昇降シリンダ12の伸縮方向、即ち、アーム7の長手方向と交差する横方向に延び、後述の緩み調整用シーブ28を回転可能に支持している。
【0040】
緩み調整用シーブ28は、第2開閉用シーブ20に対し昇降シリンダ12の伸縮方向に離間した状態で、第5軸部材27に回転可能に支持されている。緩み調整用シーブ28は、開閉ロープ25の一端25A側が巻回され、緩み調整シリンダ26の伸縮方向(アーム7の長手方向)に移動可能となっている。従って、緩み調整用シーブ28は、緩み調整シリンダ26の伸縮動作に応じて第2開閉用シーブ20に対して接近、離間する。そして、立坑の掘削作業時にクラムシェルバケット10が地面に着地した状態において、緩み調整シリンダ26を伸長させる。これにより、緩み調整用シーブ28を第2開閉用シーブ20から離間させ、開閉ロープ25の緩みを取る(除去する)ことができる構成となっている。
【0041】
次に、バケット昇降・開閉装置11を構成する昇降シリンダ12、開閉シリンダ18、緩み調整シリンダ26を駆動する油圧回路について、図3を参照して説明する。
【0042】
油圧ポンプ29は、タンク30と共に油圧源を構成している。油圧ポンプ29は、深礎掘削機1に搭載された原動機によって駆動される。油圧ポンプ29にはパイロットポンプ31が接続され、パイロットポンプ31は油圧ポンプ29と一緒に原動機によって駆動される。油圧ポンプ29から吐出した圧油は、センタバイパス型の主管路32を通じて昇降シリンダ12、開閉シリンダ18、緩み調整シリンダ26に選択的に供給される。
【0043】
主管路32のうち油圧ポンプ29と昇降シリンダ12との間には、昇降切換弁33が設けられている。また、主管路32のうち油圧ポンプ29と開閉シリンダ18との間には、開閉切換弁34が設けられている。昇降切換弁33および開閉切換弁34は、例えば6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。
【0044】
昇降切換弁33は、中立位置から切換位置(a)に切換えられることにより、油圧ポンプ29からの圧油を昇降シリンダ12のロッド側油室に供給し、昇降シリンダ12を縮小させる。一方、昇降切換弁33は、中立位置から切換位置(b)に切換えられることにより、油圧ポンプ29からの圧油を昇降シリンダ12のボトム側油室に供給し、昇降シリンダ12を伸長させる。
【0045】
開閉切換弁34は、中立位置から切換位置(c)に切換えられることにより、油圧ポンプ29からの圧油を開閉シリンダ18のロッド側油室に供給し、開閉シリンダ18を縮小させる。一方、開閉切換弁34は、中立位置から切換位置(d)に切換えられることにより、油圧ポンプ29からの圧油を開閉シリンダ18のボトム側油室に供給し、開閉シリンダ18を伸長させる。
【0046】
主管路32のうち油圧ポンプ29と緩み調整シリンダ26との間には、緩み調整切換弁35が設けられている。緩み調整切換弁35は、例えば6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。緩み調整切換弁35は、中立位置から切換位置(e)に切換えられることにより、油圧ポンプ29からの圧油を緩み調整シリンダ26のロッド側油室に供給し、緩み調整シリンダ26を縮小させる。一方、緩み調整切換弁35は、中立位置から切換位置(f)に切換えられることにより、油圧ポンプ29からの圧油を緩み調整シリンダ26のボトム側油室に供給し、緩み調整シリンダ26を伸長させる。
【0047】
昇降操作ペダル36、開閉操作レバー39、および緩み操作ペダル42は、深礎掘削機1のキャブ4内に設けられている。昇降操作ペダル36は、一対の減圧弁部37A,37Bを有する減圧弁型のパイロット操作弁37に取付けられ、縮小側また伸長側に踏込み操作される。昇降操作ペダル36が縮小側に踏込まれたときには、パイロットポンプ31からのパイロット圧がパイロット管路38Aを通じて昇降切換弁33に供給される。これにより、昇降切換弁33は切換位置(a)に切換えられて昇降シリンダ12が縮小する。一方、昇降操作ペダル36が伸長側に踏込まれたときには、パイロット圧がパイロット管路38Bを通じて昇降切換弁33に供給される。これにより、昇降切換弁33は切換位置(b)に切換えられて昇降シリンダ12が伸長する。
【0048】
開閉操作レバー39は、一対の減圧弁部40A,40Bを有する減圧弁型のパイロット操作弁40に取付けられている。開閉操作レバー39は、オペレータによって縮小側または伸長側に傾転操作される。例えば開閉操作レバー39が縮小側に傾転されたときには、パイロット圧がパイロット管路41Aを通じて開閉切換弁34に供給される。これにより、開閉切換弁34は切換位置(c)に切換えられて開閉シリンダ18が縮小する。一方、開閉操作レバー39が伸長側に傾転されたときには、パイロット圧がパイロット管路41Bを通じて開閉切換弁34に供給される。これにより、開閉切換弁34は切換位置(d)に切換えられて開閉シリンダ18が伸長する。
【0049】
緩み操作ペダル42は、一対の減圧弁部43A,43Bを有する減圧弁型のパイロット操作弁43に取付けられている。緩み操作ペダル42は、オペレータによって縮小側または伸長側に踏込み操作される。例えば緩み操作ペダル42が縮小側に踏込まれたときには、パイロット圧がパイロット管路44Aを通じて緩み調整切換弁35に供給される。これにより、緩み調整切換弁35は切換位置(e)に切換えられて緩み調整シリンダ26が縮小する。一方、緩み操作ペダル42が伸長側に踏込まれたときには、パイロット圧がパイロット管路44Bを通じて緩み調整切換弁35に供給される。これにより、緩み調整切換弁35は切換位置(f)に切換えられて緩み調整シリンダ26が伸長する。
【0050】
このように、昇降シリンダ12、開閉シリンダ18、緩み調整シリンダ26は、昇降操作ペダル36、開閉操作レバー39、緩み操作ペダル42によって、それぞれ個別に独立して操作される構成となっている。
【0051】
本実施形態による深礎掘削機1は、上述の如き構成を有するもので、以下、深礎掘削機1を用いて立坑を掘削する作業について説明する。
【0052】
キャブ4に搭乗したオペレータは、立坑を掘削すべき地面の上方にクラムシェルバケット10を閉じた状態で配置する。この状態で、オペレータが昇降操作ペダル36を縮小側に踏込む。これにより、パイロット管路38Aを通じて昇降切換弁33にパイロット圧が供給され、昇降切換弁33が切換位置(a)に切換わる。これにより、昇降シリンダ12が縮小し、第1昇降用シーブ14が第2昇降用シーブ17に接近すると共に、第1開閉用シーブ15が第2開閉用シーブ20に接近する。この結果、昇降ロープ24と開閉ロープ25がアーム7から送り出され、クラムシェルバケット10が下降する。
【0053】
クラムシェルバケット10が下降し、地面から数メートル(例えば2~3メートル)の位置に達すると、オペレータは、昇降操作ペダル36の踏込み操作を停止してクラムシェルバケット10の下降動作を一旦停止させる。また、オペレータは、開閉操作レバー39を縮小側に傾転させる。これにより、パイロット管路41Aを通じて開閉切換弁34にパイロット圧が供給され、開閉切換弁34が切換位置(c)に切換わる。従って、開閉シリンダ18が縮小し、第2開閉用シーブ20が第1開閉用シーブ15に接近する。この結果、開閉ロープ25がアーム7から送り出され、図4に示すように、クラムシェルバケット10の一対のバケット10Bが全開となる。
【0054】
このようにして、クラムシェルバケット10を全開とした後、オペレータは、開閉操作レバー39の操作を停止すると共に、再び昇降操作ペダル36を縮小側に踏込む。これにより、全開となったクラムシェルバケット10が下降していき、図5に示すように、一対のバケット10Bの下端が地面に着地する。
【0055】
クラムシェルバケット10の下端が地面に着地した後、オペレータは、昇降操作ペダル36の縮小側への踏込み操作を継続する。これにより、クラムシェルバケット10が着地した位置を保持したまま、昇降ロープ24と開閉ロープ25が更に送り出される。このため、図6に示すように、昇降ロープ24と開閉ロープ25が緩みを生じる。クラムシェルバケット10は、その自重によって地面から地中に潜り込むことにより大量の土砂を掬う。このため、クラムシェルバケット10の下端が地面に着地した後に、昇降ロープ24と開閉ロープ25を緩ませることにより、この緩み分に応じてクラムシェルバケット10を地中に潜り込ませることができる。
【0056】
次に、オペレータは、クラムシェルバケット10を閉じる前に、緩み操作ペダル42を伸長側に踏込む。これにより、パイロット管路44Bを通じて緩み調整切換弁35にパイロット圧が供給され、緩み調整切換弁35が切換位置(f)に切換わる。従って、図7に示すように、緩み調整シリンダ26が伸長して緩み調整用シーブ28が第2開閉用シーブ20から離間する。この結果、昇降ロープ24は緩んだまま、開閉ロープ25の緩みのみが取られた状態となる。
【0057】
次に、オペレータは、開閉操作レバー39を伸長側に傾転させる。これにより、パイロット管路41Bを通じて開閉切換弁34にパイロット圧が供給され、開閉切換弁34が切換位置(d)に切換わる。従って、図8に示すように、開閉シリンダ18が伸長して第2開閉用シーブ20が第1開閉用シーブ15から離間することにより、開閉ロープ25が引上げられる。この結果、クラムシェルバケット10は、自重によって地中に潜り込みながら閉じていき、大量の土砂を掬うことができる。この場合、クラムシェルバケット10を閉じる前段階では、昇降ロープ24が緩んだまま、開閉ロープ25の緩みのみが取られている。これにより、開閉シリンダ18が伸長すると同時にクラムシェルバケット10を閉じることができ、迅速に土砂を掘削することができる。
【0058】
ここで、クラムシェルバケット10を閉じるときに開閉シリンダ18から開閉ロープ25に作用する力(引上げ力)は、クラムシェルバケット10の重量よりも小さく設定されている。これにより、クラムシェルバケット10を閉じて土砂を掬った後に、開閉シリンダ18から開閉ロープ25に作用する力によってクラムシェルバケット10が持上げられるのを抑えることができる。このとき、昇降ロープ24は、クラムシェルバケット10が十分に地中に潜り込むことができるように予め緩められているため、クラムシェルバケット10が地中で閉じた状態で、ある程度の緩みが残っている。
【0059】
クラムシェルバケット10を閉じて土砂を掬った後、オペレータは、昇降操作ペダル36を伸長側に踏込むと共に、緩み操作ペダル42を縮小側に踏込む。この昇降操作ペダル36の操作により、パイロット管路38Bを通じて昇降切換弁33にパイロット圧が供給され、昇降切換弁33が切換位置(b)に切換わる。また、緩み操作ペダル42の操作により、パイロット管路44Aを通じて緩み調整切換弁35にパイロット圧が供給され、緩み調整切換弁35が切換位置(e)に切換わる。
【0060】
従って、図9に示すように、緩み調整シリンダ26が縮小して初期位置に戻り、緩み調整用シーブ28が第2開閉用シーブ20に接近して開閉ロープ25が緩む。一方、昇降シリンダ12が伸長し、第1昇降用シーブ14が第2昇降用シーブ17から離間して昇降ロープ24が引上げられると共に、第1開閉用シーブ15が第2開閉用シーブ20から離間して開閉ロープ25が引上げられる。この結果、昇降ロープ24と開閉ロープ25とがアーム7へと引上げられ、クラムシェルバケット10は、土砂を保持した状態で昇降ロープ24と開閉ロープ25とによって持上げられて上昇する。
【0061】
ここで、クラムシェルバケット10を閉じた状態で、開閉ロープ25には緩みがなく張っており、昇降ロープ24には緩みが残っている場合がある。この場合には、昇降シリンダ12を伸長させたときに、開閉ロープ25に作用する張力と昇降ロープ24に作用する張力とが不均一となる。この結果、持上げられるクラムシェルバケット10の姿勢が不安定化し、クラムシェルバケット10からの荷こぼれが発生する虞がある。
【0062】
これに対し、本実施形態では、昇降シリンダ12を伸長させてクラムシェルバケット10を引き上げるときに、少し遅らせて緩み調整シリンダ26を縮小させる。これにより、開閉ロープ25の張力を保ったまま、荷こぼれを発生させずにクラムシェルバケット10を持上げることができる。従って、クラムシェルバケット10を持上げるときに昇降ロープ24と開閉ロープ25とに作用する張力を均一化することができる。この結果、クラムシェルバケット10を、安定した姿勢を保った状態で持上げることができ、かつ、昇降ロープ24と開閉ロープ25の寿命を延ばすことができる。
【0063】
このようにして、クラムシェルバケット10を立坑の外部まで上昇させる。その後、例えば上部旋回体3を旋回させてダンプトラック(図示せず)の荷台の上方までクラムシェルバケット10を移動させる。この状態で、オペレータは、開閉操作レバー39を縮小側に傾転させる。これにより、パイロット管路41Aを通じて開閉切換弁34にパイロット圧が供給され、開閉切換弁34が切換位置(c)に切換わる。従って、開閉シリンダ18が縮小して第2開閉用シーブ20が第1開閉用シーブ15に接近して開閉ロープ25が引出される。この結果、クラムシェルバケット10が開き、掘削した土砂をダンプトラックの荷台に放土することができる。
【0064】
そして、ダンプトラックの荷台に土砂を放土した後には、上部旋回体3を旋回させてクラムシェルバケット10を立坑の上方に移動させ、前述した作業(操作)を繰り返すことにより、立坑を掘削することができる。
【0065】
かくして、本実施形態によれば、深礎掘削機1のバケット昇降・開閉装置11は、アーム7に設けられた昇降シリンダ12と、昇降シリンダ12の一端側に取付けられ昇降シリンダ12の伸縮方向に移動する第1昇降用シーブ14および第1開閉用シーブ15と、第1昇降用シーブ14に対し昇降シリンダ12の伸縮方向に離間してアーム7に設けられた第2昇降用シーブ17と、第1開閉用シーブ15に対し昇降シリンダ12の伸縮方向に離間してアーム7に設けられた第2開閉用シーブ20と、アーム7に設けられ第1開閉用シーブ15に対して第2開閉用シーブ20を接近、離間させる開閉シリンダ18と、長さ方向の一端24Aがアーム7に取付けられると共に他端24Bがクラムシェルバケット10に取付けられ、中間部が第1昇降用シーブ14と第2昇降用シーブ17とに巻回された昇降ロープ24と、長さ方向の一端25Aがアーム7に取付けられると共に他端25Bがクラムシェルバケット10に取付けられ、中間部が第1開閉用シーブ15と第2開閉用シーブ20とに巻回された開閉ロープ25とを備えている。
【0066】
そして、深礎掘削機1は、アーム7に設けられ開閉ロープ25の緩みを調整するために伸縮する緩み調整シリンダ26と、緩み調整シリンダ26の一端に取付けられた状態で開閉ロープ25の中間部が巻回され、緩み調整シリンダ26の伸縮動作に応じて第2開閉用シーブ20に対して接近、離間する方向に移動する緩み調整用シーブ28とが設けられている。
【0067】
この構成によれば、昇降ロープ24と開閉ロープ25によって保持したクラムシェルバケット10を下降させ、クラムシェルバケット10の下端が地面に着地した後に、昇降ロープ24と開閉ロープ25を緩ませる。これにより、クラムシェルバケット10が自重によって地中に潜り得る状態とすることができる。この状態で、緩み調整シリンダ26によって開閉ロープ25の緩みを取ると共に、開閉シリンダ18によってクラムシェルバケット10を閉じていく。従って、クラムシェルバケット10は、地中に潜り込みつつ閉じることにより、1回の掘削動作で大量の土砂を掬うことができ、土砂の掘削効率を高めることができる。
【0068】
一方、土砂を掬ったクラムシェルバケット10を立抗の底から持上げるときに、開閉ロープ25には緩みがなく、昇降ロープ24には緩みが残っている場合がある。この場合には、昇降シリンダ12を伸長させてクラムシェルバケット10を引き上げるときに、少し遅らせて緩み調整シリンダ26を縮小させる。これにより、開閉ロープ25の張力を保ったまま、荷こぼれを発生させずにクラムシェルバケット10を持上げることができる。従って、クラムシェルバケット10を持上げるときに昇降ロープ24と開閉ロープ25とに作用する張力を均一化することができる。この結果、クラムシェルバケット10を、安定した姿勢を保った状態で持上げることができる。従って、クラムシェルバケット10からの荷こぼれを抑えることにより、掘削した土砂をダンプトラック等の荷台に安全に放土することができる。また、昇降ロープ24と開閉ロープ25の寿命を延ばすことができる。
【0069】
しかも、本実施形態による深礎掘削機1は、特許文献2のバケット昇降装置のような揺動リンクを、アームに取付ける必要がない。このため、掘削作業時の深礎掘削機1の車体高さを小さく抑えることができ、例えば逆打ち工法を行う現場等の高さ制限がある作業現場にも適用することができる。
【0070】
また、実施形態では、昇降シリンダ12、開閉シリンダ18、緩み調整シリンダ26は、それぞれアーム7の長手方向に沿って配置されている。この構成によれば、昇降シリンダ12、開閉シリンダ18、緩み調整シリンダ26を、アーム7内にコンパクトに収容することができ、深礎掘削機1の作業装置5を可及的に小型化することができる。
【0071】
次に、図10は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、バケット昇降・開閉装置の昇降ロープと開閉ロープとが、それぞれ2本ずつ設けられていることにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図中、バケット昇降・開閉装置11を構成する複数枚の追加第1昇降用シーブ14′は、第1昇降用シーブ14と共に第1軸部材13に回転可能に支持されている。複数枚の追加第1開閉用シーブ15′は、第1開閉用シーブ15と共に第1軸部材13に回転可能に支持されている。複数枚の追加第2昇降用シーブ17′は、追加第1昇降用シーブ14′に対し昇降シリンダ12の伸縮方向に離間した状態で、第2昇降用シーブ17と共に第2軸部材16に回転可能に支持されている。複数枚の追加第2開閉用シーブ20′は、追加第1開閉用シーブ15′に対し昇降シリンダ12の伸縮方向に離間した状態で、第2開閉用シーブ20と共に第3軸部材19に回転可能に支持されている。追加昇降ガイドシーブ22′、および追加開閉ガイドシーブ23′は、それぞれアーム7の先端に回転可能に取付けられている。
【0073】
追加昇降ロープ24′は、昇降ロープ24と対をなす2本目の昇降ロープである。追加昇降ロープ24′の一端24A′はアーム7に取付けられている。追加昇降ロープ24′の他端(図示せず)は、追加昇降ガイドシーブ22′から下向きに延び、クラムシェルバケット10のバケット支持部10Aに取付けられている。追加昇降ロープ24′の中間部24B′は、追加第1昇降用シーブ14′と追加第2昇降用シーブ17′に交互に巻回されている。
【0074】
追加開閉ロープ25′は、開閉ロープ25と対をなす2本目の開閉ロープである。追加開閉ロープ25′の一端25A′はアーム7に取付けられている。追加開閉ロープ25′の他端(図示せず)は、追加開閉ガイドシーブ23′から下向きに延び、クラムシェルバケット10のバケット支持部10Aに取付けられている。追加開閉ロープ25′の中間部25B′は、追加第1開閉用シーブ15′と追加第2開閉用シーブ20′に交互に巻回されている。
【0075】
このように、第2の実施形態では、クラムシェルバケット10は、昇降ロープ24と追加昇降ロープ24′とからなる2本の昇降ロープと、開閉ロープ25と追加開閉ロープ25′とからなる2本の開閉ロープとによって支持されている。そして、これら合計4本のロープ24、24′、25、25′は、昇降シリンダ12の伸縮動作に同期して移動し、クラムシェルバケット10を昇降させる。
【0076】
追加緩み調整用シーブ28′は、追加第2開閉用シーブ20′に対し昇降シリンダ12の伸縮方向に離間した状態で、緩み調整用シーブ28と共に第5軸部材27に回転可能に支持されている。追加緩み調整用シーブ28′には、追加開閉ロープ25′の一端25A′側が巻回されている。従って、緩み調整用シーブ28と追加緩み調整用シーブ28′とは、緩み調整シリンダ26の伸縮動作に同期して移動することにより、開閉ロープ25の緩みと追加開閉ロープ25′の緩みを同時に調整する。
【0077】
第2の実施形態による深礎掘削機は、クラムシェルバケット10が、昇降ロープ24と追加昇降ロープ24′とからなる2本の昇降ロープと、開閉ロープ25と追加開閉ロープ25′とからなる2本の開閉ロープとによって支持されるもので、その基本的作用については、第1の実施形態と格別差異はない。然るに、第2の実施形態によれば、クラムシェルバケット10を合計4本のロープ24、24′、25、25′によって支持することにより、クラムシェルバケット10の昇降時の安定性を高めることができる。また、各ロープ24、24′、25、25′の寿命を延ばしたり、各ロープ24、24′、25、25′を細くしてメンテナンス性を高めるといった目的に合うバケット昇降・開閉装置11を構成することが可能となる。
【0078】
次に、図11および図12は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、バケット昇降・開閉装置の昇降シリンダが2本のシリンダによって構成されていることにある。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
図中、バケット昇降・開閉装置11を構成する2本の昇降シリンダ45,46は、それぞれアーム7の長手方向に沿ってアーム7に設けられている。これら2本の昇降シリンダ45,46は、第1の実施形態に用いられる昇降シリンダ12に比較して外径寸法が小さく設定されている。一方の昇降シリンダ45のロッド45Aと他方の昇降シリンダ46のロッド46Aには、第1軸部材13が取付けられている。
【0080】
図12に示すように、2本の昇降シリンダ45,46は、主管路32を介して油圧ポンプ29に並列に接続されている。従って、昇降操作ペダル36が伸長側に踏込まれたときには、パイロット管路38Bを通じて昇降切換弁33にパイロット圧が供給され、昇降切換弁33が切換位置(b)に切換わる。これにより、昇降シリンダ45,46のボトム側油室に圧油が同時に供給され、昇降シリンダ45,46が同期して伸長する。また、昇降操作ペダル36が縮小側に踏込まれたときには、パイロット管路38Aを通じて昇降切換弁33にパイロット圧が供給され、昇降切換弁33が切換位置(a)に切換わる。これにより、昇降シリンダ45,46のロッド側油室に圧油が同時に供給され、昇降シリンダ45,46が同期して縮小する。
【0081】
第3の実施形態による深礎掘削機は、2本の昇降シリンダ45,46を備えるもので、その基本的作用については、第1の実施形態と格別差異はない。然るに、第3の実施形態によれば、アーム7内の機器収容空間が狭い場合に、外径寸法が大きな1本の昇降シリンダ12をアーム7内にレイアウトするのが困難な場合でも、昇降シリンダ12よりも外径寸法が小さな2本の昇降シリンダ45,46を用いることにより、アーム7内でのレイアウトを可能とすることができる。
【0082】
なお、第1の実施形態では、昇降操作ペダル36の踏込み操作によって昇降シリンダ12を操作する場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、昇降操作レバーの傾転操作によって昇降シリンダ12を操作する構成としてもよい。これと同様に、開閉操作レバー39に代えて開閉操作ペダルによって開閉シリンダ18を操作してもよく、緩み操作ペダル42に代えて緩み操作レバーによって緩み調整シリンダ26を操作する構成としてもよい。
【0083】
また、第1の実施形態では、昇降シリンダ12、開閉シリンダ18、緩み調整シリンダ26に対し、一つの油圧ポンプ29から吐出した圧油が選択的に供給される場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば原動機によって同時に駆動される3つの油圧ポンプ(3連ポンプ)を用い、これら3つの油圧ポンプからの圧油を、昇降シリンダ、開閉シリンダ、緩み調整シリンダに個別に供給する構成としてもよい。
【0084】
次に、図13および図14は、本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、開閉ロープに作用する張力が所定値以下になったことを検出したときに、開閉用操作具の操作対象を開閉シリンダから緩み調整シリンダに切換える構成としたことにある。なお、第4の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
上述したように、第1の実施形態では、クラムシェルバケット10が自重によって地面に潜り込むように開閉ロープ25を緩ませた後、緩み操作ペダル42を操作して開閉ロープ25の緩みを除去する。このように、予め開閉ロープ25の緩みを除去した状態で開閉操作レバー39を操作することにより、クラムシェルバケット10を迅速に閉じることができ、掘削作業の作業性を高めることができる。
【0086】
しかし、クラムシェルバケット10が着地した後に、開閉ロープ25にどの程度の緩みを形成するかは、緩み操作ペダル42を操作するオペレータの熟練度によって異なる。そこで、第4の実施形態では、オペレータの熟練度に関係なく、クラムシェルバケット10が着地したときに開閉ロープ25に適度な緩みを形成し、かつクラムシェルバケット10を迅速に閉じて土砂を効率良く掬うことができる構成としている。
【0087】
図13に示すように、第4の実施形態によるバケット昇降・開閉装置51は、第1の実施形態によるバケット昇降・開閉装置11と同様に、昇降シリンダ12、第1昇降用シーブ14、第1開閉用シーブ15、第2昇降用シーブ17、開閉シリンダ18、第2開閉用シーブ20、昇降ロープ24、開閉ロープ25、緩み調整シリンダ26、緩み調整用シーブ28を含んで構成されている。しかし、本実施形態によるバケット昇降・開閉装置51は、開閉ロープ25の緩みを検出する検出装置52が設けられている点で、第1の実施形態と相違している。
【0088】
次に、バケット昇降・開閉装置51に設けられた検出装置52の構成と機能について詳しく説明する。
【0089】
検出装置52は、アーム7と開閉ロープ25の一端25Aとの間に設けられている。検出装置52は、ばね部材53と検出器54とにより構成されている。ばね部材53は、アーム7と開閉ロープ25の一端25Aとの間に挟まれた圧縮ばねとして形成されている。ばね部材53は、アーム7に対してクラムシェルバケット10が吊るされている状態で、圧縮されるように荷重特性が設定されている。即ち、ばね部材53は、クラムシェルバケット10の重量を受けて収縮する。一方、図1に示すように、クラムシェルバケット10が着地して開閉ロープ25が緩んだときには、ばね部材53は伸びる。
【0090】
検出器54は、開閉ロープ25の緩み、即ち、ばね部材53の自由状態を検出する。検出器54は、レバー54Aの傾きでONとOFFとが切換わる接触式のセンサ(スイッチ)として形成されている。一方で、磁力や光源の変化でONとOFFとが切換わる非接触式のセンサを検出器として用いてもよい。
【0091】
検出器54は、ばね部材53が圧縮されて開閉ロープ25の一端25Aがレバー54Aから離れる方向に移動し、レバー54Aが初期位置に戻るとOFFになる。一方、検出器54は、開閉ロープ25が緩んでばね部材53によって開閉ロープ25の一端25Aがレバー54Aを押すと、レバー54Aが傾いてONに切換わる。そして、検出器54は、開閉ロープ25に作用する張力が所定値以下となったタイミングでONに切換わるから、このときの検出信号に基づいて後述するシリンダ切換弁63の電磁パイロット部63Aに給電する。
【0092】
次に、バケット昇降・開閉装置51の昇降シリンダ12、開閉シリンダ18、緩み調整シリンダ26を動作させるための油圧回路について説明する。
【0093】
上部旋回体3は、メインポンプ55、パイロットポンプ56および作動油タンク57を有している。また、キャブ4には、操作レバー、操作ペダル等からなる昇降用操作具58と開閉用操作具59が設けられている。
【0094】
昇降用操作具58は、第1パイロット管路58Aと第2パイロット管路58Bを通じて昇降切換弁60に接続されている。この昇降切換弁60は、昇降シリンダ12の伸縮動作を停止させる閉弁位置と、昇降シリンダ12のロッド12Cを伸長させる伸長位置と、昇降シリンダ12のロッド12Cを縮小させる縮小位置との3位置を有している。昇降切換弁60は、この3位置が昇降用操作具58によって切換操作される。
【0095】
昇降切換弁60は、昇降シリンダ12のボトム側油室12Dにボトム側管路60Aを介して接続され、ロッド側油室12Eにロッド側管路60Bを介して接続されている。ここで、昇降切換弁60を伸長位置に切換えるための第1パイロット管路58Aには、後述するパイロット操作チェック弁64Bにパイロット圧を供給するための追加パイロット管路64Eが接続されている。
【0096】
開閉用操作具59は、第1パイロット管路59Aと第2パイロット管路59Bを通じて開閉切換弁61に接続されている。この開閉切換弁61は、昇降切換弁60と同様に、開閉シリンダ18の伸縮動作を停止させる閉弁位置と、開閉シリンダ18のロッド18Cを伸長させる伸長位置と、開閉シリンダ18のロッド18Cを縮小させる縮小位置との3位置を有している。開閉切換弁61は、この3位置が開閉用操作具59によって切換操作される。
【0097】
開閉切換弁61は、開閉シリンダ18のボトム側油室18Dにボトム側管路61Aを介して接続され、ロッド側油室18Eにロッド側管路61Bを介して接続されている。ここで、開閉切換弁61を開閉シリンダ18のロッド18Cの伸長側に切換えるための第2パイロット管路59Bには、後述するシリンダ切換弁63が接続されている。
【0098】
緩み取り切換弁62は、緩み調整シリンダ26の伸縮動作を停止させる閉弁位置と、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを伸長させる伸長位置との2位置を有している。緩み取り切換弁62は、この2位置が開閉用操作具59等によって切換操作される。
【0099】
緩み取り切換弁62は、緩み調整シリンダ26のボトム側油室26Dにボトム側管路62Aを介して接続され、ロッド側油室26Eにロッド側管路62Bを介して接続されている。ここで、緩み取り切換弁62には、伸長位置に切換えるためのパイロット管路62Cが設けられている。
【0100】
緩み取り切換弁62のパイロット管路62Cは、シリンダ切換弁63を介して作動油タンク57または開閉用操作具59に接続されている。
【0101】
シリンダ切換弁63は、開閉用操作具59の第2パイロット管路59Bおよび緩み取り切換弁62のパイロット管路62Cの途中に設けられている。シリンダ切換弁63は、検出装置52の検出器54が開閉ロープ25に作用する張力が所定値以下になったことを検出したときに、開閉用操作具59の操作対象を開閉シリンダ18から緩み調整シリンダ26に切換える。
【0102】
シリンダ切換弁63は、開閉用操作具59からのパイロット圧(作動油)を開閉切換弁61に供給することができる切換位置(g)と、開閉用操作具59からのパイロット圧を緩み取り切換弁62に供給することができる切換位置(h)との2位置を有している。また、シリンダ切換弁63は、電磁パイロット部63Aが検出装置52の検出器54に接続されている。これにより、シリンダ切換弁63は、検出器54がONになったときに、電磁パイロット部63Aが給電されることで切換位置(h)に切換えられる。
【0103】
シリンダ縮小手段64は、昇降用操作具58がクラムシェルバケット10を上昇させる上昇側に操作されたときに、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを縮小させる。より詳しく述べると、シリンダ縮小手段64は、開閉用操作具59の操作対象が緩み調整シリンダ26に切換えられてロッド26Cが伸長した後に、昇降用操作具58がクラムシェルバケット10を上昇するように操作されたときに、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを縮小させる。
【0104】
シリンダ縮小手段64は、緩み調整シリンダ26のボトム側油室26Dと作動油タンク57とを接続している排液管路64Aと、排液管路64Aに設けられたパイロット操作チェック弁64Bおよび絞り64Cと、緩み取り切換弁62のボトム側管路62Aに設けられたチェック弁64Dと、昇降用操作具58の第1パイロット管路58Aとパイロット操作チェック弁64Bとを接続した追加パイロット管路64Eとにより構成されている。
【0105】
パイロット操作チェック弁64Bは、通常時は閉弁して排液管路64Aを遮断している。一方、パイロット操作チェック弁64Bは、追加パイロット管路64Eからパイロット圧が供給されたときに開弁し、排液管路64Aで作動油を流通させる。このときに、絞り64Cは、作動油の流量を絞ることで緩み調整シリンダ26のロッド26Cが縮小する速度を制限している。また、チェック弁64Dは、ボトム側油室26Dの作動油が緩み取り切換弁62側に逆流するのを防止している。
【0106】
この上で、追加パイロット管路64Eは、昇降用操作具58がクラムシェルバケット10を上昇させる上昇側に操作されたときに、パイロット操作チェック弁64Bに向けてパイロット圧を供給する。これにより、緩み調整シリンダ26のボトム側油室26Dの作動油は、排液管路64A等を通じて作動油タンク57に排出される。即ち、昇降用操作具58がクラムシェルバケット10を上昇させる上昇側に操作されたときに、緩み調整シリンダ26のロッド26Cが伸長している場合には、このロッド26Cが徐々に縮小されて最縮小状態となる。
【0107】
次に、本実施形態のバケット昇降・開閉装置51およびクラムシェルバケット10を用いて立坑を掘削するときの操作手順の一例について説明する。
【0108】
キャブ4に搭乗したオペレータは、掘削位置の上方にクラムシェルバケット10を閉じた状態で配置する。このクラムシェルバケット10の吊り下げ状態では、クラムシェルバケット10の重量を受けてばね部材53が圧縮されているから、検出装置52の検出器54はOFFになっている。クラムシェルバケット10を掘削位置の上方に配置したら、昇降用操作具58を下降側に操作する。これにより、昇降切換弁60が第2パイロット管路58Bからのパイロット圧によって縮小位置に切換えられて昇降シリンダ12が縮小される。昇降シリンダ12が縮小されると、各第1昇降用シーブ14が各第2昇降用シーブ17側に移動し、各第1開閉用シーブ15が各第2開閉用シーブ20側に移動するから、昇降ロープ24と開閉ロープ25がアーム7から送り出されてクラムシェルバケット10が下降する。
【0109】
クラムシェルバケット10の下降動作が進み、クラムシェルバケット10が地面から数メートル(例えば2~3メートル)の位置に達したら、オペレータは、開閉用操作具59を開き側に操作してクラムシェルバケット10の各バケット10Bを全開にする。クラムシェルバケット10を全開にしたら、再び昇降用操作具58を下降側に操作してクラムシェルバケット10を下降させる。
【0110】
図1に示すように、クラムシェルバケット10が地面に着地すると、オペレータは、さらに昇降用操作具58を下降側に操作することにより、昇降ロープ24と開閉ロープ25にクラムシェルバケット10を地面に潜り込ませる分の緩みを形成する。
【0111】
昇降ロープ24と開閉ロープ25に掘削用の緩みを形成したら、開閉用操作具59を閉じ側に操作する。ここで、クラムシェルバケット10が地面に着地した状態では、開閉ロープ25が緩むから、検出装置52の検出器54がばね部材53の緩みを検出してシリンダ切換弁63の電磁パイロット部63Aに給電する。
【0112】
従って、シリンダ切換弁63は、開閉用操作具59からのパイロット圧を緩み取り切換弁62に供給することができる切換位置(h)に切換えられる。これにより、開閉用操作具59からのパイロット圧は、緩み取り切換弁62を伸長位置に切換えるから、緩み調整シリンダ26は、ロッド26Cを伸長させて開閉ロープ25の緩みを自動的に取ることができる。さらに、開閉ロープ25の緩みが無くなると、開閉ロープ25に所定値以上の張力が作用するから、シリンダ切換弁63が自動的に切換位置(g)に戻される。
【0113】
これにより、オペレータは、開閉用操作具59によってクラムシェルバケット10を閉じることができる。このクラムシェルバケット10の閉じ操作時には、意識することなく自動的に開閉ロープ25の緩みを取ることができる。
【0114】
次に、クラムシェルバケット10を閉じて土砂を掘削したら、昇降用操作具58を上昇側に操作し、クラムシェルバケット10を上昇させる。この場合、開閉ロープ25は、緩み調整シリンダ26によって緩みが取られて張った状態となっているから、このままの状態で、クラムシェルバケット10を上昇させると、開閉ロープ25だけでクラムシェルバケット10を吊上げることになる。
【0115】
しかし、本実施形態では、昇降用操作具58を上昇側に操作したときには、第1パイロット管路58Aを通じて昇降切換弁60に供給されるパイロット圧の一部が、追加パイロット管路64Eを通じてシリンダ縮小手段64のパイロット操作チェック弁64Bに供給される。従って、シリンダ縮小手段64は、パイロット操作チェック弁64Bが開弁して緩み調整シリンダ26のボトム側油室26Dの作動油を作動油タンク57側に排出する。これにより、緩み調整シリンダ26は、そのロッド26Cを縮小させる。このときに、絞り64Cは、ボトム側油室26Dから流出する作動油の流量を絞ることにより、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを徐々に縮小させることができる。
【0116】
即ち、シリンダ縮小手段64は、クラムシェルバケット10を上昇させるときに、その上昇操作と共に緩み調整シリンダ26のロッド26Cを縮小させることにより、昇降ロープ24と開閉ロープ25との2本のロープのテンションを合わせながらクラムシェルバケット10を安定した状態で上昇させることができる。しかも、シリンダ縮小手段64は、開閉ロープ25の張力(テンション)が昇降ロープ24の張力よりも小さくならないように、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを徐々に縮小させているから、これによってもクラムシェルバケット10を安定した状態で上昇させることができる。
【0117】
クラムシェルバケット10を地切りしたら、引き続き昇降用操作具58を操作して昇降シリンダ12を伸長させてクラムシェルバケット10を上昇させる。そして、クラムシェルバケット10を例えば地上まで引き上げたら、ダンプトラック(図示せず)等の上方に移動し、開閉用操作具59を開き側に操作して開閉ロープ25を緩めることで、クラムシェルバケット10を開いてダンプトラックの荷台に放土する。この放土時には、緩み調整シリンダ26が最縮小状態になっているから、開閉ロープ25を緩めても昇降ロープ24によってクラムシェルバケット10を保持することができる。
【0118】
そして、ダンプトラックの荷台に土砂を載せたら、クラムシェルバケット10を立坑の上方に戻し、前述した作業(操作)を繰り返すことにより、深礎掘削機1によって立坑を掘削することができる。
【0119】
かくして、本実施形態によれば、バケット昇降・開閉装置51は、昇降シリンダ12を操作する昇降用操作具58と、開閉シリンダ18を操作する開閉用操作具59と、開閉ロープ25に作用する張力が所定値以下になったか否かを検出する検出装置52の検出器54と、検出器54が開閉ロープ25に作用する張力が所定値以下になったことを検出したときに、開閉用操作具59の操作対象を開閉シリンダ18から緩み調整シリンダ26に切換えるシリンダ切換弁63と、緩み調整シリンダ26を縮小させるシリンダ縮小手段64と、を有している。
【0120】
従って、立坑の掘削作業時には、昇降ロープ24と開閉ロープ25とに作用する張力を操作状況に応じて自動的に合わせることができるから、掘削からの地切り作業、ダンプトラックへの放土作業を安定して行うことができる。この結果、クラムシェルバケット10による掘削作業を熟練度に関係なく、容易に、かつ正確に操作することができる。
【0121】
また、昇降ロープ24と開閉ロープ25とに均等に張力を作用させることにより、各ロープ24,25の耐久性を向上することができる。一方、各シーブ14,15,17,20は、複数枚を重ねて配置しているから、昇降シリンダ12のストロークを短くすることができ、バケット昇降・開閉装置51を小型化することができる。これにより、狭い作業現場での作業性を向上することができる。さらに、昇降シリンダ12と開閉シリンダ18、緩み調整シリンダ26とは、アーム7の横方向に並んで(並列に)配置しているから、この点でもバケット昇降・開閉装置51を小型化することができる。
【0122】
次に、図15は本発明の第5の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、シリンダ縮小手段の絞りに作動油の流量を調整する調整部を設けていることにある。なお、第5の実施形態では、前述した第4の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0123】
図15において、第5の実施形態によるシリンダ縮小手段71は、第4の実施形態によるシリンダ縮小手段64と同様に、排液管路71A、パイロット操作チェック弁71B、絞り71C、チェック弁71D、追加パイロット管路71Eを備えている。しかし、第5の実施形態によるシリンダ縮小手段71は、絞り71Cに調整部71C1が設けられている点で、第4の実施形態によるシリンダ縮小手段64と相違している。絞り71Cの調整部71C1は、例えば開口面積を調整することで、流通する作動油の流量を調整する。
【0124】
かくして、このように構成された第5の実施形態においても、前述した第4の実施形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第5の実施形態によれば、調整部71C1は、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを最縮小させるまでの時間を調整することができる。この結果、掘削する土砂の固さやオペレータの好みに合わせることができ、作業効率を高めることができる。
【0125】
次に、図16は本発明の第6の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、シリンダ縮小手段は、昇降用操作具がクラムシェルバケットを上昇させる上昇側に操作されたときに、緩み取りシリンダのロッド側油室に作動油が供給されるように緩み取り切換弁を切換える強制切換パイロット管路を備えていることにある。なお、第6の実施形態では、前述した第4の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0126】
図16において、第6の実施形態によるシリンダ縮小手段81は、緩み取り切換弁82のロッド側管路82Bに設けられた調整部81A1付きの絞り81Aと、絞り81Aをバイパスしたバイパス管路81Bに設けられたチェック弁81Cと、昇降用操作具58の第1パイロット管路58Aと緩み取り切換弁82とを接続した強制切換パイロット管路81Dとを備えている。緩み取り切換弁82は、ボトム側管路82Aとパイロット管路82Cとを有している。
【0127】
絞り81Aは、作動油の流量を絞ることで緩み調整シリンダ26のロッド26Cが縮小する速度を制限している。また、調整部81A1は、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを最縮小させるまでの時間を調整することができる。
【0128】
また、チェック弁81Cは、ロッド側油室26Eの作動油が緩み取り切換弁82側に流れるのを許し、逆向きの流れを阻止している。即ち、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを縮小させる場合には、絞り81Aによって作動油の流量が絞られているから、ロッド26Cは徐々に縮小される。
【0129】
さらに、強制切換パイロット管路81Dは、昇降用操作具58がクラムシェルバケット10を上昇させる上昇側に操作されたときに、緩み調整シリンダ26のロッド側油室26Eに作動油が供給されるように緩み取り切換弁82を切換える。
【0130】
このように構成されたシリンダ縮小手段81は、昇降用操作具58がクラムシェルバケット10を上昇させる上昇側に操作されると、強制切換パイロット管路81Dは、第1パイロット管路58Aを通じて昇降切換弁60に供給されるパイロット圧の一部を用いて、緩み取り切換弁82を縮小位置に切換える。これにより、緩み取り切換弁82は、ロッド側管路82Bを通じて緩み調整シリンダ26のロッド側油室26Eに作動油を供給する。このときに、絞り81Aは、作動油の流量を絞ることで緩み調整シリンダ26のロッド26Cが縮小する速度を制限することができる。また、調整部81A11は、緩み調整シリンダ26のロッド26Cを最縮小させるまでの時間を調整することができる。
【0131】
かくして、このように構成された第6の実施形態においても、前述した第4、第5の実施形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。
【0132】
なお、第1の実施形態では、アーム7を水平姿勢に保持した状態で立坑の掘削作業を行っている状態を図1に示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、アーム7を垂直姿勢、傾斜姿勢等の他の姿勢で立坑の掘削作業を行うようにしてもよい。この構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0133】
また、第1の実施形態では、昇降シリンダ12のロッド12Cを縮小させたときにクラムシェルバケット10が下降し、伸長させたときにクラムシェルバケット10が上昇するように構成している。しかし、本発明はこれに限らず、昇降シリンダ12のロッド12Cを縮小させたときにクラムシェルバケット10が上昇し、伸長させたときにクラムシェルバケット10が下降するように構成してもよい。同様に、開閉シリンダ18の伸縮動作とクラムシェルバケット10の開閉動作を逆にしてもよい。さらに、緩み調整シリンダ26の伸縮動作と緩み調整用シーブ28による緩み取り動作を逆にしてもよい。これらの構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0134】
さらに、第1の実施形態では、アーム7を長尺な角筒体として形成し、その外周上にバケット昇降・開閉装置11を搭載した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、アーム7を長尺な角筒体として形成し、その内部にバケット昇降・開閉装置11を設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 深礎掘削機
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
5 作業装置
6 ブーム
7 アーム
10 クラムシェルバケット
11,51 バケット昇降・開閉装置
12,45,46 昇降シリンダ
14 第1昇降用シーブ
14′ 追加第1昇降用シーブ
15 第1開閉用シーブ
15′ 追加第1開閉用シーブ
17 第2昇降用シーブ
17′ 追加第2昇降用シーブ
18 開閉シリンダ
20 第2開閉用シーブ
20′ 追加第2開閉用シーブ
24 昇降ロープ
24′ 追加昇降ロープ
24A,25A,24A′ 一端
24B,25B 他端
24C,25C,24B′ 中間部
25 開閉ロープ
26 緩み調整シリンダ
28 緩み調整用シーブ
28′ 追加緩み調整用シーブ
54 検出器
58 昇降用操作具
59 開閉用操作具
60 昇降切換弁
61 開閉切換弁
62,82 緩み取り切換弁
63 シリンダ切換弁
64,71,81 シリンダ縮小手段
64A,71A 排液管路
64B,71B パイロット操作チェック弁
64C,71C,81C 絞り
81D 強制切換パイロット管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16