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特許7166577コラーゲン産生促進剤及びそれを含む皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】コラーゲン産生促進剤及びそれを含む皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221031BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221031BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20221031BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221031BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
A61K31/7048
A61P17/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022540703
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2022010995
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021073458
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021155274
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅和
(72)【発明者】
【氏名】河合 有香
(72)【発明者】
【氏名】小島 弘之
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-084321(JP,A)
【文献】特開2012-036128(JP,A)
【文献】特開2011-213699(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099570(WO,A1)
【文献】特開2011-016726(JP,A)
【文献】特開2007-223918(JP,A)
【文献】特開2006-045092(JP,A)
【文献】特開2003-002819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
C07H 1/00- 99/00
A61K 31/33- 33/44
A61P 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
(式中、Rは水素原子又はラムノシル基を示し、Rはグルコシル基又はラムノシル基を示す。)で表される化合物、その有機酸エステル又はそれらの塩を含有する、女性ホルモン作用の促進用の剤。
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物が、
下記式(II):
【化2】
下記式(III):
【化3】
及び/又は
下記式(IV)
【化4】
で表される化合物、である、請求項1に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【クロスリファレンス】
【0001】
本出願は、日本国において、2021年4月23日に出願された特願2021-073458及び2021年9月24日に出願された特願2021-155274号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願に記載された内容は全て、参照によりそのまま本明細書に援用される。また、本願において引用した全ての特許、特許出願及び文献に記載された内容は全て、参照によりそのまま本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ケンフェロール配糖体、その誘導体又はそれらの塩を有効成分として含有するコラーゲン産生促進用の剤及びこの剤を含有する皮膚外用剤等に関する。
【背景技術】
【0003】
肌は、加齢などの内的因子や紫外線、活性酸素などの外的因子によって、本来維持している収縮性、柔軟性、保湿性等の機能が衰え、様々なトラブルを発生する。例えば、目の下のシワや目尻のシワについては、その主な原因が、加齢によるコラーゲン・エラスチンの低下(ハリの低下)、真皮の細胞外マトリックスを産生する細胞数の減少、コラーゲン線維の減少及び変性、皮下脂肪組織の減少等により、弾力性の損失が起こることが原因であると考えられる。従来、このようなシワの改善方法としては、例えば、化粧品・医薬部外品として、好中球エラスターゼ抑制成分(三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸Na(ニールワン))、保湿成分配合(ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン)、高保湿成分(ワセリン、セラミド、ヒアルロン酸)、ハリ改善成分(ビタミンC誘導体、レチノール、コラーゲン)、コラーゲン促進成分(レチノール)等が用いられている。
【0004】
ケンフェロールは茶、ブロッコリー、グレープフルーツ、キャベツ、ケール、豆類、キクヂシャ、セイヨウニラネギ、トマト、イチゴ、ブドウ、メキャベツ、リンゴ、キヌア、西洋わさび等多くの食用植物に含まれる天然フラボノイドの一種である。ケンフェロールを含む天然フラボノイドについてはその多様な生理作用に着目した研究がなされており、例えば、ケンフェロール配糖体が、カーネーションの花色を青くするための発色補助因子(コピグメント)であること(非特許文献1参照)や、ケンフェロール類縁体又はその配糖体が、運動効率向上、疲労軽減及び動体視力改善などの作用を有することの報告がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Y.Fukui,Y.Tanaka,T.Kusumi,T.Iwashita,K.Nomoto,Phytochemistry.2003May;63(1):15-23.
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2019/044964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、皮膚のやわらかさを保ち、肌に復元力(ハリ)を与えるような有効成分を含む素材(剤)などを見出すことなどである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、所望の天然物(カーネーションの花など)に含まれるケンフェロール配糖体が、コラーゲン産生を促進し、皮膚のやわらかさを保ち、肌に復元力(ハリ)を与える作用を有することなどを見出して本発明を完成した。すなわち本発明は以下の実施形態を含む。
【0009】
[1]下記式(I):
【化1】
(式中、Rは水素原子又はラムノシル基を示し、Rはグルコシル基又はラムノシル基を示す。)で表される化合物、その有機酸エステル又はそれらの塩を含有するコラーゲン産生促進用の剤。
[2]式(I)で表される化合物、その有機酸エステル又はそれらの塩を含有する、女性ホルモン作用の促進用の剤。
[3]式(I)で表される化合物が、下記式(II):
【0010】
【化2】
で表される化合物である[1]に記載のコラーゲン産生促進用の剤又は[2]に記載の女性ホルモン作用の促進用の剤。
[4]式(I)で表される化合物が、下記式(III):
【0011】
【化3】
又は(IV):
【0012】
【化4】
で表される化合物である[1]に記載のコラーゲン産生促進用の剤又は[2]に記載の女性ホルモン作用の促進用の剤。
[5]有機酸エステルが、式(I)~(IV)の何れかの化合物のリンゴ酸エステルである[1]~[4]のいずれか1つに記載の剤。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載の剤を含有する皮膚外用剤。
[7]シワ改善用である[6]に記載の皮膚外用剤。
[8]皮膚のコラーゲン密度を増加させるための[6]又は[7]に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の剤は、例えば、化粧品や医薬部外品の成分として使用したときに、皮膚のやわらかさを保ち、肌に復元力(ハリ)を与える効果をなど、有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、カーネーション花抽出物から本発明の有効成分を分画する方法の概略を示す。
図2図2は、正常ヒト成人皮膚線維芽胞におけるコラーゲン産生促進作用を測定した結果を示す。
図3図3は、ヒト線維芽細胞増殖能を測定した結果を示す。
図4図4は、ヒトでの皮膚モニター試験の測定部位を示す。
図5図5は、試験例3のシワ改善効果を確認した結果を示す。
図6図6は、試験例4の真皮コラーゲン線維密度改善効果を確認した結果を示す。図の白が、
図7図7は、試験例5で用いた皮膚の力学的パラメータの測定方法を示す。
図8図8は、試験例5の結果を示す。
図9図9は、試験例6のアト付き予防効果を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
(コラーゲン産生促進用の剤)
本発明は、1つの実施形態において、以下の有効成分を含有するコラーゲン産生促進用の剤を提供する。本実施形態の剤は、下記式(I):
【0017】
【化5】
で表される化合物、その有機酸エステル又はそれらの塩、を有効成分として含む。ここで、上記式中、Rは水素原子又はラムノシル基を示し、Rはグルコシル基又はラムノシル基を示す。上記式(I)において、Rがラムノシル基であり、かつRがグルコシル基の場合の化合物は上述した式(II)で表すことができ、ケンフェロール-3-(6’’’-ラムノシル-2’’’-グルコシル-グルコシド)、又はケンフェロール-3-O-[2-O-β-D-グルコシル-6-O-α-ラムノシル]-β-D-グルコシド(CAS No.55696-58-7)とも称する。1つのラムノースと2つのグルコースが分岐鎖状に結合したケンフェロール配糖体である。後述する実施例では、KMP-2と称する。式(I)の化合物のヒドロキシ基には、リンゴ酸、コハク酸及び/又はマロン酸等の有機酸が結合していてもよく、これらの糖や有機酸が付くことでアグリコンであるケンフェロールを水に溶けやすく安定化している。
【0018】
また、式(I)において、Rが水素原子であり、かつRがグルコシル基の場合の化合物は上述した式(III)で表すことができ、後述する実施例では、KMP-3と称する。さらに、式(I)において、Rが水素原子であり、かつRがラムノシル基の場合の化合物は上述した式(IV)で表すことができ、後述する実施例では、KMP-5と称する。
【0019】
なお、上記式(I)~(IV)で表される化合物は、遊離体のままでもよいが、ヒドロキシ基が適度な酸性を有する場合は塩の形態であってもよい。ヒドロキシ基の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩類;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アンモニウム塩等が挙げられる。また、本実施形態の化合物(I)の遊離体又はヒドロキシ基の塩は、水和物として存在することもある。
【0020】
上記有効成分をカーネーションから抽出する場合、抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、花弁等である。抽出方法としては、溶媒を用いて直接抽出することで得られるものの他、圧搾処理を施した後に得られる圧搾液及び/又は残渣に溶媒を加えて抽出することができる。好ましくは、50%エタノール水溶液を抽出溶媒として用いる。本実施形態においては、カーネーションの花弁を用いたエタノール抽出物を用いることが好ましい。抽出液中における有効成分の含有量は、ケンフェロール配糖体換算値として測定することができる。本明細書中、「ケンフェロール配糖体換算値」とは、本発明の有効成分の量を、特定の標準品の質量に換算した値を意味する。標準品としては、例えば、ケンフェロール-3-グルコシド等の入手が容易なケンフェロール配糖体が挙げられる。具体的には、抽出液を、例えば、逆相HPLC(カラム:Imtakt UK-C18)で分析し、メタノール:リン酸=37:63の溶出液で分離したときの340nmの吸光度で検出したピーク面積を、種々の濃度のケンフェロール-3-グルコシドを用いて作成した検量線に当てはめて換算することができる。
【0021】
本実施形態のコラーゲン産生促進用の剤は、上記有効成分そのものであっても、あるいは当該有効成分を所定濃度以上に含有する組成物であってもよい。好ましくは、カーネーションの花等の植物抽出物の形態でありうる。本実施形態の剤に含まれる上記有効成分の量は、この剤を皮膚外用剤等に添加したときにコラーゲン産生促進作用が発揮される量であれば特に制限されない。例えば、質量換算で0.1%のコラーゲン産生促進用の剤を皮膚外用剤に添加する場合には、1000倍希釈してもコラーゲン産生促進作用を発揮しうる濃度で当該有効成分を含有すればよい。したがって、本実施形態のコラーゲン産生促進用の剤に含まれる上記有効成分の量の下限及び上限は、ケンフェロール配糖体換算値として、当該換算値の下限は、好ましくは1μg/mL、より好ましくは5μg/mL、更に好ましくは10μg/mL、であり、当該換算値の上限は、好ましくは1000μg/mL、より好ましくは750μg/mL、より好ましくは500μg/mL、さらに好ましくは250μg/mL、である。
【0022】
本実施形態のコラーゲン産生促進用の剤に含まれる上記各有効成分の量は、ケンフェロール配糖体換算値として、この換算値の下限は、好ましくは0.05μg/mL、より好ましくは0.5μg/mL、さらに好ましくは5μg/mL、であり、この換算値の上限は、好ましくは500μg/mL、より好ましくは250μg/mL、さらに好ましくは100μg/mL、である。
【0023】
本実施形態のコラーゲン産生促進用の剤は、例えば、皮膚外用剤、飲食品又は医薬組成物に含有させることができる。飲食品又は医薬組成物としては、例えば機能性表示食品、特定保健用食品、健康食品、栄養補助食品(サプリメント)、医療用食品などの飲食品又は経口用組成物として利用されうる。その場合、上記有効成分の他に、薬学的に許容される基剤や担体、食品に使用可能な添加物等を添加して、経口投与製剤に製剤化されうる。本実施形態のコラーゲン産生促進用の剤を含有する皮膚外用剤については以下に詳細に説明する。
【0024】
(女性ホルモン)
女性ホルモンは、生殖機能を支配するステロイドホルモンであり、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の総称であり、例えば、17β-エストラジオール、エストロン、エストリオール、17α-エストラジオール、エチニルエストラジオール、それらの抱合体、又はそれらに類した女性ホルモン様物質、である。中でもエストロゲンは、女性生殖器の発達、機能維持などの役割を果たし、発情作用を示すホルモン及び類似の作用を有する物質の総称として用いられている。天然にはエストロン、エストラジオール、エストリオール、エステトロールが存在し、エストラジオールが主要なものである。また、それらと同等の生物活性を有する合成エストロゲンも知られており、スチルベンステロールなどの合成型の一部を除いて、エストロゲンはスチルベン構造を有している。
【0025】
エストロゲンの分泌源は主に卵巣の顆粒膜細胞であるが、妊娠時の胎児胎盤系、副腎、卵巣などからも分泌される。卵巣からのエストロゲンの分泌は、下垂体前葉より分泌される性腺刺激ホルモンにより支配されるが、逆にエストロゲンによる間脳下垂体型へのフィードバック作用が認められ、両者の相互作用により性周期が成立する。
【0026】
エストロゲンはその受容体を介して働き、主な生理作用は、子宮内膜の増殖、子宮筋の発育、第二次性徴の発現、月経周期の成立の媒介、妊娠時の母体変化の惹起、乳腺管の増殖分泌促進などである。さらに、エストロゲンは標的組織である間脳-下垂体前葉-生殖器及び乳腺のみならず、種々の組織に受容体を有しているため、生殖機能への上記作用だけでなく、脳、心血管、骨格、皮膚、その他の全身の組織に作用し、成人女性の健康に深く関わっており、女性を創るホルモンとされている。
したがって、本明細書において、上記で例示したような女性ホルモンの有する作用の1つまたは複数を促進する剤を、「女性ホルモン作用の促進用の剤」又は「女性ホルモン様作用の促進剤」と称し、同義的に用いられる。
【0027】
(皮膚外用剤の形態)
本発明の一実施形態における皮膚外用剤は、上記コラーゲン産生促進のための剤を含有することを特徴とする。本実施形態の皮膚外用剤は、上記有効成分の1種のみを含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。本実施形態の皮膚外用剤は、上記コラーゲン産生促進用の剤を含有させることにより、優れたシワ形成に対する予防又は改善作用を発揮する。また、本実施形態の皮膚外用剤は、シワ形成に対する予防又は改善作用以外の作用を奏してもよい。そのような作用としては、保湿作用、光線性角化症又は非光線性角化症改善作用、皮膚の剥離、表皮更新の刺激及び老化改善作用などが挙げられる。
【0028】
本実施形態の皮膚外用剤は、必須成分であるコラーゲン産生促進用の剤以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。
【0029】
本実施形態のコラーゲン産生促進用の剤及び任意成分を常法に従って処理し、アンプル、カプセル、粉末、顆粒、液体、ゲル、気泡、エマルジョン、シート、ミスト、スプレー剤等利用上の適当な形態の1)医薬品類、2)医薬部外品類、3)局所用又は全身用の皮膚外用剤類(例えば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック等の基礎化粧料、固形石鹸、液体ソープ、ハンドウォッシュ等の洗顔料や皮膚洗浄料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、除毛剤、脱毛剤、髭剃り処理料、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等のメークアップ化粧料、香水類、美爪剤、美爪エナメル、美爪エナメル除去剤、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、シート剤、貼付剤、エアゾール剤等)、4)頭皮・頭髪に適用する薬用又は/及び化粧用の製剤類(例えば、シャンプー剤、リンス剤、ヘアートリートメント剤、プレヘアートリートメント剤、パーマネント液、染毛料、整髪料、ヘアートニック剤、育毛・養毛料、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、シート剤、エアゾール剤等)、5)浴湯に投じて使用する浴用剤、6)その他、腋臭防止剤や消臭剤、制汗剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ等が挙げられる。本実施形態の皮膚外用剤は、皮膚に適応させることの出来る剤型であれば、いずれの剤型でも可能であるが、有効成分が皮膚に浸透して効果を発揮することから、皮膚への馴染みの良い、ローション、乳液、クリーム、エッセンスなどの剤型が好ましい。
【0030】
本実施形態の皮膚外用剤に含有される上記コラーゲン産生促進用の剤の量の下限及び上限は、皮膚外用剤全量に対し、総量で、この下限は、好ましくは0.001質量%、より好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.1質量%、であり、この上限は、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%、さらに好ましくは2質量%である。
【0031】
本実施形態の皮膚外用剤に含有される上記有効成分の含有量の下限及び上限は、皮膚外用剤全量に対し、ケンフェロール配糖体換算値として、当該換算値の下限は、好ましくは10ng/mL、より好ましくは50ng/mL、更に好ましくは100ng/mL、であり、当該換算値の上限は、好ましくは10μg/mL、より好ましくは7.5μg/mL、より好ましくは5μg/mL、さらに好ましくは2.5μg/mL、である。
【0032】
本実施形態の皮膚外用剤に含有される上記有効成分の量は、ケンフェロール配糖体換算値として、この換算値の下限は、好ましくは0.05μg/mL、より好ましくは0.5μg/mL、さらに好ましくは5μg/mL、であり、この換算値の上限は、好ましくは5μg/mL、より好ましくは2.5μg/mL、さらに好ましくは1μg/mL、である。
【0033】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例
【0034】
[実施例1]カーネーション花抽出物の調製
カーネーションの生の花部(ガクより上)の乾燥物100gを、1kgの50%エタノール水溶液に常温で1週間浸漬させた後にろ過し、粗抽出液約0.95kgを得た。次に粗抽出液を濃縮しエタノールをとばした後、50%ブチレングリコール水溶液を加え0.95kgの液体のカーネーション花抽出物を得た。この抽出液中の有効成分の濃度は、以下の分析条件でHPLC分析したときのピーク面積をケンフェロール-3-グルコシド(MERCK)を標準品として用いた検量線により換算した。得られた抽出液における有効成分の濃度は、ケンフェロール配糖体換算値で102.1μg/mL(90μg/mL~110μg/mL)である。
【0035】
LC1
装置:SHIMADZU LC-20A
カラム:Mightysil RP-18 GP 250×4.6mm(5μm)
移動相:CH3CN:0.1%HPO=(10:90)→(100:0)/30分
流速:1mL/分
温度:40℃
検出器:SPD M10Avp 340nm
【0036】
[実施例2]ケンフェロール配糖体の精製
実施例1で調製したカーネーション花抽出物の50%エタノール水溶液から疎水性吸着樹脂を用いて精製を行った。カーネーション花抽出物の有効成分を分画する方法の概略を図1に示す。カーネーション花抽出物の50%エタノール水溶液を、最初にダイヤイオンHP20(三菱ケミカル株式会社)を充填したカラムで粗分画した。40%エタノールで溶出されるフラクション03を水で希釈して、さらに同じカラムに吸着させた後、30%エタノール水溶液で溶出されるフラクション13に、後述するコラーゲン産生促進活性が回収された。このフラクション13について、以下の条件による分取液体クロマトグラフィー分取LC1を行ってメインピークを回収した。
【0037】
分取LC1
装置:Agilent Technologies(Agilent 1260 InfinityII)
カラム:Develosil ODS、7μm、20×250mm
流速:10mL/分
検出器:Diode Array Detector WR 340nm
移動相:MeOH:0.1%ギ酸=37:63
【0038】
このメインピークには、複数の成分が含まれていたため、この画分についてさらに以下の条件で液体クロマトグラフィー分取LC2を行ったところ単一に分かれた2つのピーク(フラクション21及び22)が得られた。
【0039】
分取LC2
装置:SHIMADZU 10A
カラム:Mightysil RP-18 GP 4.6×250mm
流速:1mL/分
検出器:SPD M10Avp 340nm
移動相:MeOH:0.1ギ酸=35:65
【0040】
フラクション21及び22に含まれる化合物の濃度を以下の条件(LC2)を行ったところ、ケンフェロール配糖体換算値で、それぞれ、43.4μg/mL及び58.7μg/mLであった。
【0041】
LC2
装置:SHIMADZU 10A
移動相:メタノール:リン酸=37:63
流速:0.7mL/分
カラム:Imtakt Unison UK-C18
温度:40℃
検出器:SPD M10Avp 340nm
【0042】
フラクション21及び22に回収された化合物をNMRで分析した結果、それぞれケンフェロール-3-(6’’’-ラムノシル-2’’’-(6-マリル-グルコシル)-グルコシド)(KMP-1)及びケンフェロール-3-(6’’’-ラムノシル-2’’’-グルコシル-グルコシド)(KMP-2)であることが分かった。KMP-1は、KMP-2の末端グルコシル基の6位にリンゴ酸が付加した化合物である。なお、核磁気共鳴装置JEOL(日本電子株式会社)JNM-ECA500で測定したKMP2の測定データを以下表1に示す。なお、表1に示す「a」は、overlapping signalsを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
[試験例1]コラーゲン産生量の測定
カーネーション花抽出物中に含まれる上記有効成分を投与した場合、コラーゲン産生量(合成能)が変化するかどうかを確認した。細胞は正常ヒト成人皮膚線維芽細胞を用いた。前培養は5%FBSを含むDMEMを使用し、本実験では1%FBSを含むDMEMを使用した。5%CO、37℃の条件で培養した。
【0045】
5×10個の正常ヒト成人皮膚線維芽細胞(Cell applications)を24ウェルプレートに播種し75%コンフルエント状態になるまで培養した。その後、1%FBSを含むDMEMに置換し、24時間培養した後、新たな1%FBSを含むDMEMに置換し、試料(実施例1で調製したカーネーション花抽出物並びに実施例2で精製したKMP-1及びKMP-2)を添加し、72時間培養した。その後、培地中の3型コラーゲンの濃度を、Human PIIINP(N-Terminal Procollagen III Propeptide)ELISA kit(Elabscience社製)を用いて、評価した。結果を図2に示す。なお、試料中の有効成分の濃度は、HPLCで測定し、カーネーション花抽出物に含まれるそれぞれの化合物の濃度と同じになるように50%ブチレングリコール水溶液で調製した。
【0046】
図2は、未添加群(cntと表示)の3型コラーゲン合成能を1とした場合の各試料の3型コラーゲン合成能を表す。図2において、crudeと表示した実施例1の抽出物添加群は1.30、KMP1と表示したKMP1添加群は1.21、及びKMP-2と表示したKMP-2添加群は1.52であった。図2から明らかなように、カーネーション花抽出物、KMP-1及びKMP-2の添加により、3型コラーゲン産生が促進されることが分かった。
【0047】
[試験例2]ヒト線維芽細胞増殖能の測定
実施例1で得られたカーネーション花抽出物及び実施例2で精製した2つの画分(KMP-1及びKMP-2)についてのヒト線維芽細胞増殖能の有無を評価した。5%FBSを含むDMEM培地を用いて、正常ヒト皮膚線維芽細胞(Cell applications)を、96ウェルプレートに2.5×10個/ウェルの細胞数となるように播種した。播種後、37℃、5%COの環境下で、24時間、当該正常ヒト皮膚線維芽細胞を培養した。その後、5%FBSを含むDMEM培地から1%FBSを含むDMEM培地へ置換後、以下試料を各ウェルに投与し、37℃、5%COの環境下で、5日間、当該正常ヒト皮膚線維芽細胞を培養した。5日間の培養後、Cell Counting Kit-8(DOJINDO)を用いて、各群(試料1から試料7の群)の正常ヒト皮膚線維芽細胞数を測定した。当該測定は、各群(試料1から試料7の群)において6サンプルずつ行った。
【0048】
・試料1の群:コントロールとして、所定量の50%ブチレングリコール水溶液を投与。
・試料2の群:0.5%となるように、実施例1で得られたカーネーション花抽出物を投与。
・試料3の群:1%となるように、実施例1で得られたカーネーション花抽出物を投与。
・試料4の群:0.5%となるように、KMP-1を投与。
・試料5の群:1%となるように、KMP-1を投与。
・試料6の群:0.5%となるように、KMP-2を投与。
・試料7の群:1%となるように、KMP-2を投与。
なお、試料4~7に含まれる有効成分の濃度は、カーネーション花抽出物を含む群(試料2または3)に対応し、試料4及び6は試料2に、試料5及び7は試料3に含まれるそれぞれの化合物と同じ濃度になるように50%ブチレングリコール水溶液で調製したものを検体として使用した。
【0049】
測定結果を図3に示す。試料1の群(cntと表示)の線維芽細胞増殖能を1とした場合の、試料2及び3の群(crudeと表示)はそれぞれ1.33及び1.75、試料4及び5の群(KMP-1と表示)はそれぞれ1.03及び1.34、試料6及び7の群(KMP2と表示)はそれぞれ1.16及び1.10の線維芽細胞増殖能を示した。図3から明らかなように、カーネーション花抽出物は濃度依存的に、KMP-1は1%で線維芽細胞の増殖が促進されることが分かった。一方、KMP-2は細胞増殖には影響を与えなかった。
【0050】
[実施例3]ローションの作製
下記モニター試験で用いるローションを次のように作製した。表2に示す組成で、実施例1で調製したカーネーション花抽出物を1%含有したローション(表2ローション)を作製した。表3に示す組成で、プラセボ(当該カーネーション花抽出物を含有しないローション)を作製した。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
[試験例3]ヒトでの皮膚モニター試験(シワ改善効果の確認)
健康な30代から40代の女性12名(平均年齢41.2歳)の顔の口角横(ほうれい線、図4参照)に、表2ローション(表2に記載のローションで、カーネーション花抽出物を含むローション)と、プラセボ(表3に記載のローションで、カーネーション花抽出物を含まないローション)とを塗布することにより、2020年12月から1月の間に試験を行った。当該被験者は、自覚症状として、皮膚のたるみ、小じわ及び/又は皮膚の脆弱性を感じている方々である。表2ローションを被験者の顔の左半分に所定間隔にて塗布し、プラセボを被験者の顔の右半分に所定間隔にて塗布した。この所定間隔は、1日2回ずつ(朝晩)1ヶ月間塗布とした。そして、これらのローションの塗布前の0日目(ベースライン)と、ローションを塗布してから4週間目に、所定部位表面を3Dで特定波長の光を照射して撮影し画像処理することで、シワ全体の大きさ、シワの平均幅及び平均深度を測定した(測定装置;皮膚分析器「ANTERA3DTM」、ガデリウス・メディカル株式会社)。その結果を図5に示す。
【0054】
図5は、シワ全体の大きさ、シワの平均幅及び平均深度について、0日目の値を100として、プラセボ(図5では「プラセボ」と表記)及び表2ローション(図5では「表2ローション」と表記)を塗布したときの相対値を示す。図5(a)に示したように、シワ全体の大きさは、プラセボ塗布群が101.4、表2ローション塗布群が94.7であった。図5(b)に示したように、シワ平均幅は、プラセボ塗布群が100.0、表2ローション塗布群が97.5であった。また、図5(c)に示したように、シワ平均深度は、プラセボ塗布群が101.6、表2ローション塗布群が93.6であった。これらの結果より、表2ローションの塗布により、シワ全体の大きさ、シワの平均幅及び平均深度ともに小さくなった。なお、棒グラフのそれぞれの値は12人の測定値の平均値及び標準誤差で示した。図中、*及び**は、0日目の測定値と比較したときのウィルコクソンの検定で、それぞれp<0.05及びp<0.01の有意差があることを示し、†及び††は、スチューデントのt検定でp<0.05及びp<0.01の有意差を示す。
【0055】
[試験例4]ヒトでの皮膚モニター試験(真皮コラーゲン線維密度改善試験)
測定部位を、顔の口角横(ほうれい線)から、頬(鼻翼側部、図4参照)に変更したこと以外は、試験例3と同じ条件で各ローションを塗布し、当該部位の真皮コラーゲン線維密度を、DermaLab(登録商標)Comboを用いて測定した。その結果を図6に示す。これは、皮膚表面から入射した超音波の反射強度(エコー)の違いから皮膚の深さ方向におけるコラーゲン線維の密度を可視化および定量化する装置として利用することが可能な装置である。
【0056】
表2ローションを塗布した被験者の0日目及び4週目の鼻翼側部内の状態をDermaLabにて観測し、得られた真皮内画像を図6(A)に示した。この測定装置のパラメータであるIntensity Score(エコー強度)がコラーゲン線維密度の指標として画像化され、この値が大きいほどコラーゲンが豊富で真皮コラーゲンの状態が良いとされる。画像中の明部(図6の矢印の部位)は高密度、暗部は低密度を示している。表皮は超音波の反射性が高く、高反射エコーとなり、白く画像処理される。この画像から明らかなように、0日目と比較して明部が増加しており、真皮内のコラーゲン線維密度が高まっていた。このIntensity Scoreを数値化し、コラーゲン密度とした。図6(B)は、コラーゲン密度について、0日目の値を100として、プラセボ(図6(B)では「プラセボ」と表記)、及び表2ローション(図6(B)では「表2ローション」と表記)を塗布したときの相対値を示す。図6(B)に示したように、プラセボ塗布群は96.8に対し、表2ローション塗布群は105.2となった。これらの結果より、表2ローションの塗布により、真皮コラーゲン線維密度は有意に増加した。なお、棒グラフのそれぞれの値は12人の測定値の平均値及び標準誤差である。図中、††は、スチューデントのt検定でp<0.01の有意差があることを示す。
【0057】
[試験例5]ヒトでの皮膚モニター試験
測定部位を、顔の口角横(ほうれい線)から、下眼瞼部(図4参照)に変更したこと以外は、試験例3と同じ条件で各ローションを塗布し、当該部位の皮膚のやわらかさと復元力を、キュートメーターMPA580を用いて計測した。キュートメーターによる弾性の測定は、吸引口2ミリのプローブを用い500mb吸引圧で5秒間吸引し、その後開放したときの変形する皮膚の変位を解析した。図7は、横軸の測定時間に対し、縦軸の変位を示す。図中(A)がやわらかさ、(B)が復元力、B/Aが弾性(変形した物体が元の形に戻ろうとする性質)を表す。弾性は加齢により低下することより、高いほど良いとされる。
【0058】
その結果を図8に示す。図8(A)は、やわらかさについて、図8(B)は復元力について、及び図8B/Aは弾性についての結果を示す。それぞれ、0日目の値を100として、プラセボ(図8では「プラセボ」と表記)、及び表2ローション(図8では「表2ローション」と表記)を塗布したときの相対値を示す。図8(A)に示したように、プラセボ塗布群のやわらかさは99.5に対し、表2ローション塗布群のやわらかさは104.6であった。図8(B)に示したように、プラセボ塗布群の復元力は99.6に対し、表2ローション塗布群の復元力は109.4であった。また、図8(B/A)に示したように、プラセボ塗布群の弾性は99.1に対し、表2ローション塗布群の弾性は105.8であった。これらの結果より、表2ローションの塗布により、やわらかさは増加傾向、復元力及び弾性が有意に増加した。なお、棒グラフのそれぞれの値は12人の測定値の平均値及び標準誤差で示した。図中、*は、0日目の測定値と比較したときのウィルコクソン検定でp<0.05の有意差があることを示し、†は、スチューデントのt検定でp<0.05の有意差があることを示す。
【0059】
[試験例6]ヒトでの皮膚モニター試験(アト付き予防効果試験)
健康な30代から40代の女性12名(平均年齢41.2歳)の左右どちらかの前腕内側部(図4参照)に、表2ローションと、プラセボとを塗布することにより、2020年12月から1月の間に試験を行った。当該被験者は、自覚症状として、皮膚のたるみ、小じわ及び/又は皮膚の脆弱性を感じている方々である。表2ローションを被験者の左腕の所定部位に所定間隔にて塗布し、プラセボを被験者の右腕の所定部位に所定間隔にて塗布した。この所定間隔は、1日2回ずつ(朝晩)1ヶ月間塗布である。そして、これらのローションの塗布前の0日目と、ローションを塗布してから4週間目に、両腕に所定時間輪ゴムを巻き付けて付け、輪ゴムを外した後のゴム跡のくぼみ体積を測定した(測定装置;皮膚分析器「ANTERA3DTM」、ガデリウス・メディカル株式会社)。
【0060】
その結果を図9に示す。くぼみ体積について、0日目の値を100として、プラセボ(図9では「プラセボ」と表記)、及び表2ローション(図8では「表2ローション」と表記)を塗布したときの相対値を示す。図9に示したように、プラセボ塗布群の弾性は96.8に対し、表2ローション塗布群の弾性は73.2であった。これらの結果より、表2ローションの塗布により、0日目よりも有意にくぼみ体積が減少した。なお、棒グラフのそれぞれの値は12人の測定値の平均値及び標準誤差である。図中、**は、0日目の測定値と比較したときのウィルコクソン検定でp<0.01の有意差があることを示す。
【0061】
[試験例7]女性ホルモン様作用の確認試験(5α-reductase enzyme activity)
毛乳頭細胞にて、カーネーション花抽出物(carnation flower extract:CFE)の添加並びに当該抽出物に含有されるKMP-1及びKMP-2の添加の有無により、男性ホルモンTestosterone(T)がDihydrotestosterone(DHT)に変換および分泌される量の変化を確認した。
【0062】
先ず、以下を準備した。
・上述の実施例1のカーネーション花抽出物:試験例7の記載において以下「抽出物」と記載。
・上述の実施例2のケンフェロール配糖体の精製過程で得られるメインピークの組成物(KMP-1及びKMP-2が含有):試験例7の記載において以下「KMPs」と記載。
・成人ヒト毛乳頭細胞:Cell Applications、San Diego、CA、USA(HFDPC、ヒト頭髪毛乳頭細胞(adult)、CA60205a)
・毛乳頭細胞培養培地:PromoCell、Heidelberg、Germany(毛乳頭細胞増殖培地キット:Follicle Dermal Papilla Cell Growth Medium Kit(製品コード:C-26502))。この培地に、この製品コードに含まれるサプリメントとして挙げられるFCS (Foetal Calf Serum)も添加した。
・FBS (Fetal Bovine Serum):Merck、Fetal Bovine Serum (Cat#173012)。
・Dulbecco’s Modified Eagle Medium (DMEM) 培地:富士フイルム和光純薬、D-MEM(低グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド含有)、041-29775。
・Testosterone(T):富士フイルム和光純薬(Cat#201-20551)。
・β-estradiol(E2):(富士フイルム和光純薬、052-04041)。
・Dihydrotestosterone ELISA Kit:Abnova、KA1886。
・Human 3-oxo-5-alpha-steroid 4-dehydrogenase 2(SRD5A2)ELISA kit:CUSABIO、 CSB-EL022654HU。
【0063】
(1)成人ヒト毛乳頭細胞を起こす工程
成人ヒト毛乳頭細胞を2×10個/ウェルの細胞数で、24ウェルプレートに播種した。当該播種後、当該細胞を5%CO、37℃の条件で24時間培養した。当該培養後、1%FBSを含むDMEM培地に置換した。当該置換後の培地で、当該細胞を、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。
【0064】
(2)(1)の工程後での、Tなどを添加する工程
(1)の工程後、培地を、1%FBS/DMEM 培地に置換した。その際に、1%FBS/DMEM培地において、各群において、以下のようにTなどの添加(又は未添加)を行った。なお、下記DHT 量の測定のために各群それぞれ6サンプル(n=6)、5α-還元酵素II型の量の測定を行った群については各群それぞれ4サンプル(n=4)を作製した。
・未添加群: Tを添加していない群。
・コントロール群:T(最終濃度10nM)を添加した群。
・E2群:T(最終濃度10nM)及びE2(最終濃度10nM)を添加した群。この試験例7において、ポジティブコントロールの位置付けの実験群(参考文献:Eur. J. Dermatol.2001,11,195-198,Influence of estrogens on the androgen metabolism in different subunits of human hair follicle.)
・抽出物0.5群:T(最終濃度10nM)及び抽出物0.5%を添加した群。
・抽出物1.0群:T(最終濃度10nM)及び抽出物1.0%を添加した群。
・KMPs0.025群・T(最終濃度10nM)及びKMPs0.025%を添加した群。抽出物0.5群に含有されるKMPsと同じ量と想定して、この添加(KMPs0.025%の添加)を行った。
・KMPs0.050群:T(最終濃度10nM)及びKMPs0.050%を添加した群。抽出物1.0群に含有されるKMPsと同じ量と想定して、この添加(KMPs0.050%の添加)を行った。
【0065】
これらの群を作成後、5%CO、37℃の条件で72時間培養した。その後、上清を回収し、上清中のDHT量を、Dihydrotestosterone ELISA Kitを用いて測定した。当該測定した結果を以下表4に示す。
【0066】
以下のように算出して、表4に記載する数値(相対値)を算出した。先ず、各群(n=6)の測定結果の平均値を算出した。次に、当該平均値について、各群のコントロール群の数値を1として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を算出した。**は、StudentのT検定で、コントロール群に対して、有意差(p<0.01)が認められたデータを示す。††は、Dunnett’s testにて、コントロール群に対して、有意差(p<0.01)が認められたデータを示す。
【0067】
さらに、当該培養後にプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を添加したPassive Lysis Buffer(Promega社製)で均質化処理した細胞懸濁液を用いて、5α-還元酵素II型の量をHuman 3-oxo-5-alpha-steroid 4-dehydrogenase 2(SRD5A2)ELISA kitを用いて測定した。得られた値は、bradford法により細胞懸濁液のタンパク質量を求め、補正した。この測定した結果を以下表5に示す。なお、この測定は、論文(J.Cosmet.Dermatol.2019,18,414-421.)を参考にして行った。
【0068】
以下のように算出して、表5に記載する数値(相対値)を算出した。先ず、各群(n=4)の測定結果の平均値を算出した。次に、当該平均値について、各群のコントロール群の数値を1として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を算出した。**は、StudentのT検定で、コントロール群に対して、有意差(p<0.01)が認められたデータを示す。††は、Dunnett’s testにて、コントロール群に対して、有意差(p<0.01)が認められたデータを示す。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
表4及び表5に示す結果から、抽出物及びKMPsの添加でも、E2の添加群と同様の効果、すなわち女性ホルモン様作用が確認できた。
エストロゲン(エストラジオール)は、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)を増やし、活性型テストステロン(フリーテストステロン)およびアンドロゲン受容体の活性化を抑制する(参考文献:J Am Acad Dermatol.2016,74,945-973、参考文献:Endocr Rev.2000,21,363-392)。エストロゲンは、5α-還元酵素活性を抑制し、テストステロンからDHTへの変換を減少させる(参考文献:J Am Acad Dermatol,2019,80,1509-1521、参考文献:Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol.2004,vol112,136-141)。DHTは、女性型脱毛症(FPHL)に関係しており、毛包内の5α-還元酵素量が健常者と比較して高い値を示す(参考文献:Arch Dermatol Res.2018,310,77-83)。
よって、これらの参考文献の記載からも、表4及び表5に示す結果は、男性ホルモン作用と拮抗することでの女性ホルモン様作用と考えられる。
【0072】
[実施例4]カーネーション花抽出物の調製
カーネーション(キュイン)の生の花部(ガクより上)の乾燥物100gを、1kgの50%エタノール水溶液に常温で1週間浸漬させた後にろ過し、粗抽出液約0.95kgを得た。次に粗抽出液を濃縮しエタノールをとばした後、50%ブチレングリコール水溶液を加え0.95kgの液体のカーネーション(キュイン)の花抽出物を得た。
【0073】
[実施例5]ケンフェロール配糖体(KMP-3)の精製
実施例4で得られたカーネーション(キュイン)の花抽出物の50%エタノール水溶液から疎水性吸着樹脂を用いて、実施例2と同様の方法にて精製を行った。すなわち、図1に示すように、カーネーション花抽出物の50%エタノール水溶液を、最初にダイヤイオンHP20(三菱ケミカル株式会社)を充填したカラムで粗分画した。40%エタノールで溶出されるフラクション03(Fr03)を水で希釈して、さらに同じカラムに吸着させた後、40%エタノール水溶液で溶出されるフラクション14(Fr14)について、以下の条件による分取液体クロマトグラフィー分取LC3を行ってメインピーク(フラクション31)を回収した。
【0074】
分取LC3
装置:Agilent Technologies(Agilent 1260 InfinityII)
カラム:Develosil ODS、7μm、20×250mm
流速:10mL/分
検出器:Diode Array Detector WR 340nm
移動相:MeOH:0.1%ギ酸=37:63
【0075】
フラクション31に含まれる化合物の濃度を以下の条件(LC3)を行ったところ、ケンフェロール配糖体換算値で、48.66μg/mLであった。
【0076】
LC3
装置:SHIMADZU 10A
移動相:メタノール:リン酸=35:65
流速:0.8mL/分
カラム:Imtakt Unison UK-C18
温度:40℃
検出器:SPD M10Avp 340nm
【0077】
フラクション31に回収された化合物をNMRで分析した結果、ケンフェロール-3-(2’’-グルコシル-グルコシド)(KMP-3)であることが分かった。なお、核磁気共鳴装置JEOL(日本電子株式会社)JNM-ECA500で測定したKMP3の測定データを以下表6に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
[実施例6]ケンフェロール配糖体(KMP-5)の精製
実施例4で調製したカーネーション(キュイン)花抽出物の50%エタノール水溶液について以下の条件による分取液体クロマトグラフィー分取LC4を行ってメインピークを回収した。
【0080】
分取LC4
装置:Agilent Technologies(Agilent 1260 InfinityII)
カラム:Develosil ODS、7μm、20×250mm
流速:10mL/分
検出器:Diode Array Detector WR 340nm
移動相:MeOH:0.1%ギ酸=35:65
【0081】
当該水溶液に含まれる化合物の濃度を下記の条件(LC4)を行ったところ、ケンフェロール配糖体換算値で、53.53μg/mLであった。
【0082】
LC4
装置:SHIMADZU 10A
移動相:メタノール:リン酸=35:65
流速:0.8mL/分
カラム:Imtakt Unison UK-C18
温度:40℃
検出器:SPD M10Avp 340nm
【0083】
フラクション41に回収された化合物をNMRで分析した結果、ケンフェロール-3-ネオヘスペリドシド(KMP-5)であることが分かった。なお、核磁気共鳴装置JEOL(日本電子株式会社)JNM-ECA500で測定したKMP-5の測定データを以下表7に示す。
【0084】
【表7】
【0085】
[試験例8]コラーゲン産生量の測定
実施例4及び5で精製した2つの画分(KMP-3及びKMP-5)を細胞に添加した場合、並びにカーネーション花抽出物中に含まれる上記有効成分を投与した場合、コラーゲン産生量(合成能)が変化するかどうかを確認した。細胞は正常ヒト成人皮膚線維芽細胞を用いた。前培養は5%FBSを含むDMEMを使用し、本実験では1%FBSを含むDMEMを使用した。5%CO、37℃の条件で培養した。
【0086】
5×10個の正常ヒト成人皮膚線維芽細胞(Cell applications)を24ウェルプレートに播種し75%コンフルエント状態になるまで培養した。その後、1%FBSを含むDMEMに置換し、24時間培養した後、新たな1%FBSを含むDMEMに置換し、以下の試料を添加し、72時間培養した。
【0087】
・試料1の群:コントロールとして、所定量の50%ブチレングリコール水溶液を投与。
・試料2の群:0.5%となるように、KMP-3を投与。
・試料3の群:0.5%となるように、KMP-5を投与。
なお、試料2と試料3に含まれる有効成分の濃度は、カーネーション(キュイン)の花抽出物に含まれるそれぞれの化合物の濃度と同じになるように50%ブチレングリコール水溶液で調製した。
【0088】
その後、培地中の3型コラーゲンの濃度を、Human PIIINP(N-Terminal Procollagen III Propeptide)ELISA kit(Elabscience社製)を用いて、測定した。当該測定は、各群(試料1から試料3の群)において5サンプルずつ行った。
【0089】
測定結果を以下記載する。当該測定結果は、各群において測定した値の平均値を示す。試料1の群の平均値を1とした場合、試料2の群の平均値は1.283、試料3の群の平均値は1.379、であった。この試料2及び試料3の群の平均値は、試料1の群の平均値に対して、Dunnett’s testにて、コントロール群に対して、有意差(p<0.01)が認められたデータであった。試料2と試料3の群の添加により、3型コラーゲン産生が促進されることが分かった。
【0090】
以上、本発明の実施の形態(実施例も含め)について、図面を参照して説明してきたが、本発明の具体的構成は、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、設計変更等があっても、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の剤を含む皮膚外用剤は、コラーゲン産生を促進し、肌の柔らかさと復元力を改善することによりシワ改善に有効であることなどが確認できた。したがって、本発明の皮膚外用剤は、シワの改善用化粧品などとして利用できる可能性がある。

【要約】
【課題】皮膚のやわらかさを保ち、肌に復元力(ハリ)を与えるような天然物由来の有効成分を含む剤を見出すこと、などである。
【解決手段】下記式(I):
(式中、Rは水素原子又はラムノシル基を示し、Rはグルコシル基又はラムノシル基を示す。)で表される化合物、その有機酸エステル又はそれらの塩を含有するコラーゲン産生促進用又は女性ホルモン作用の促進用の剤。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9