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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブおよび流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/02 20060101AFI20221031BHJP
   F16K 31/126 20060101ALI20221031BHJP
   F16K 31/165 20060101ALI20221031BHJP
   F16K 7/17 20060101ALI20221031BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
F16K31/02 A
F16K31/126 Z
F16K31/165
F16K7/17 Z
G05D7/06 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018151129
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020026829
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】相川 献治
(72)【発明者】
【氏名】執行 耕平
(72)【発明者】
【氏名】稲田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-197754(JP,A)
【文献】特開2009-014030(JP,A)
【文献】実開平05-036173(JP,U)
【文献】特開平11-353030(JP,A)
【文献】特開2016-050645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/02
F16K 31/126
F16K 31/165
F16K 7/17
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラムを作動させる積層された圧電素子を内蔵する圧電アクチュエータと、
第1の開口部と前記第1の開口部よりも面積の小さい第2の開口部とを有し内部に液体が充填される液圧室と、前記第1の開口部に変位可能又は変形可能に設けられ前記液圧室と外部とを隔てかつ前記圧電アクチュエータの伸びが入力される第1の隔離部材と、
前記第2の開口部に変位可能又は変形可能に設けられ前記液圧室と外部とを隔てる第2の隔離部材と、を備える液圧式変位拡大機構と、を有し、
前記圧電アクチュエータの伸びが前記液圧式変位拡大機構の第1の隔離部材に直接的に入力されるように前記圧電アクチュエータを保持しつつ前記液圧式変位拡大機構と連結された保持機構を有し、
前記保持機構は、前記圧電アクチュエータの長手方向に沿って延在しかつ前記圧電アクチュエータの側面に嵌合する第1および第2の柱部を有し、
前記第1および第2の柱部は、先端部が互いに連結され、基端部が前記液圧式変位拡大機構の前記液圧室を画定する液室部材にそれぞれ連結される、ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記第1の隔離部材と前記第2の隔離部材とは、前記液圧室を介して対向配置されている、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記第1および第2の隔離部材の少なくとも一方がダイヤフラムからなる、請求項1又は2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記第1の隔離部材が、ダイヤフラムからなり、前記第2の隔離部材がベローズからなる、請求項1ないし3のいずれかに記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記第1および第2の柱部の先端部を連結する連結部は、前記圧電アクチュエータの一端を受け止める受け止め面を有する、請求項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載のダイヤフラムバルブを有する流量制御装置。
【請求項7】
上流側から下流側に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、請求項1ないしのいずれかに記載のダイヤフラムバルブ又は請求項に記載の流量制御装置を含む、流体制御装置。
【請求項8】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項1ないしのいずれかに記載のダイヤフラムバルブ又は請求項に記載の流量制御装置を用いる、半導体製造装置。
【請求項9】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項1ないしのいずれかに記載のダイヤフラムバルブ又は請求項に記載の流量制御装置を用いる、半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブ、流量制御装置、流体制御装置、流体制御方法、半導体製造装置及び半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、圧力センサとオリフィスによってガスの流量を測定し、測定された流量値を基に積層圧電アクチュエータにより駆動されるダイヤフラムバルブをフィードバック制御することで、指示された流量のガスを流すことができ、かつ、小型化された圧力式流量制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開番号WO2017/033423A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような流量制御装置を小型化しつつ大流量化するためには、積層圧電アクチュエータにより駆動されるダイヤフラムバルブの開度を拡大する必要がある。
しかしながら、積層圧電アクチュエータのストローク量が十分でなく、ストローク量を伸ばすには積層圧電アクチュエータも大型化する必要があり、小型化の要求に応えることが困難であった。
【0005】
本発明の目的の一つは、小型化を維持しつつ大流量化された積層圧電アクチュエータを用いたダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダイヤフラムバルブは、ダイヤフラムを作動させる積層された圧電素子を内蔵する圧電アクチュエータと、
第1の開口部と前記第1の開口部よりも面積の小さい第2の開口部とを有し内部に液体が充填される液圧室と、前記第1の開口部に変位可能又は変形可能に設けられ前記液圧室と外部とを隔てかつ前記圧電アクチュエータの伸びが入力される第1の隔離部材と、前記第2の開口部に変位可能又は変形可能に設けられ前記液圧室と外部とを隔てる第2の隔離部材と、を備える液圧式変位拡大機構と、を有する。
【0007】
好適には、前記第1の隔離部材と前記第2の隔離部材とは、前記液圧室を介して対向配置されている、構成を採用できる。
さらに好適には、前記第1および第2の隔離部材の少なくとも一方がダイヤフラムからなる、構成を採用できる。
【0008】
代替的には、前記第1の隔離部材が、ダイヤフラムからなり、前記第2の隔離部材がベローズからなる、構成を採用できる。
【0009】
本発明のダイヤフラムバルブは、前記圧電アクチュエータの伸びが前記液圧式変位拡大機構の第1の隔離部材に直接的に入力されるように前記圧電アクチュエータを保持しつつ前記液圧式変位拡大機構と連結された保持機構を有する。
【0010】
好適には、前記保持機構は、前記圧電アクチュエータの長手方向に沿って延在しかつ前記圧電アクチュエータの外周面に嵌合する第1および第2の柱部を有し、
前記第1および第2の柱部は、先端部が互いに連結され、基端部が前記液圧式変位拡大機構の前記液圧室を画定する液室部材にそれぞれ連結される、構成とすることができる。
【0011】
本発明の流量制御装置は、上記構成のダイヤフラムバルブを有する。
【0012】
本発明の流体制御装置は、上流側から下流側に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、上記構成のダイヤフラムバルブ又は流量制御装置を含む。
【0013】
本発明の半導体製造装置は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に上記のダイヤフラムバルブ又は流量制御装置を用いる。
【0014】
本発明の半導体製造情報は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に上記構成のダイヤフラムバルブ又は流量制御装置を用いる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型化を維持しつつ積層圧電アクチュエータの伸びを増幅してダイヤフラムバルブの開度を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る圧電アクチュエータユニットの外観斜視図。
図2図1の圧電アクチュエータユニットの縦断面図。
図3A】本発明の一実施形態に係る液圧式変位拡大機構の斜視図。
図3B図3Aの液圧式変位拡大機構の断面図。
図4】液圧式変位拡大機構の動作を説明するための断面図。
図5】本発明の一実施形態に係る流量制御装置の外観斜視図。
図6図5の流量制御装置の縦断面図。
図7】操作部材と圧電アクチュエータユニットとの関係を示す断面斜視図。
図8】本発明の他の実施形態に係る液圧式変位拡大機構の拡大断面図。
図9】本発明のダイヤフラムバルブの半導体製造プロセスへの適用例を示す概略図。
図10】本実施形態の一実施形態に係る流量制御装置およびダイヤフラムを用いる流体制御装置の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。説明において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電アクチュエータユニット50の外観斜視図であり、図2図1の圧電アクチュエータユニット50の縦断面図である。なお、図2において、圧電アクチュエータ2は断面としていない。
圧電アクチュエータユニット50は、後述するように、ダイヤフラムバルブのダイヤフラムを作動させるのに用いられる。
【0018】
圧電アクチュエータユニット50は、圧電アクチュエータ2と、変位拡大機構100と、保持機構としての保持部材120とを有する。
圧電アクチュエータ2は、円筒状のケース2hに図示しない積層された圧電素子を内蔵している。ケース2hは、ステンレス合金等の金属製で、半球状の先端部2a側の端面2bおよび基端部側の端面2dが閉塞している。ケース2hは、積層された圧電素子に電圧を印可して伸長させることで、ケース2hの先端部2a側の端面2bが弾性変形し、半球状の先端部2aが長手方向において変位する。すなわち、ケース2hは、積層された圧電素子に電圧を印可することで、先端部2aから端面2dまでの全長が伸びる。なお、本実施形態では、圧電アクチュエータ2の先端部2aを半球状としたが、これに限定されるわけではなく、先端部が平坦面であってもよい。
【0019】
保持部材120は、金属材料等で略円筒状に形成されており、圧電アクチュエータ2を挟むようにかつ圧電アクチュエータ2の長手方向に沿って延在する第1および第2の柱部121,121と、第1および第2の柱部121,121の先端部を連結する連結部122と、第1および第2の柱部121,121の基端部から外方に向けてそれぞれ突出する連結部123とを有する。第1および第2の柱部121,121の圧電アクチュエータ2の外周面2cに対向する面は、当該外周面2cに嵌合するように円弧状に湾曲している。連結部122は、圧電アクチュエータ2が伸長した際に、圧電アクチュエータ2の端面2dを受け止める受け止め面122bとなっている。保持部材120は、一体的に形成され、上記構造により、圧電アクチュエータ2を保持している。保持部材120の円筒状部分を第1および第2の柱部121,121に分けたのは、後述するダイヤフラムバルブに組み込んだ際に、幅方向の寸法が拡大するのを防ぐためである。
【0020】
変位拡大機構100は、図3A図3Bに示すように、液室部材101と、大径ダイヤフラム105と、小径ダイヤフラム106と、液室部材101の内部に充填されたシリコンオイル等の液体Lとを有する。なお、液体Lはシリコンオイルに限られない。
液室部材101は、金属合金製で、上面101aおよび下面101bの外輪郭形状は、保持部材120の下端面の外輪郭形状に略一致するように形成されている。液室部材101の円筒状の外周面101cは、幅方向の寸法が拡大するのを防ぐため、対向する2箇所が面取りされて平行な平坦面101dとなっている。外周面101cの対向する2箇所から外方に突出して形成された連結部103,103には、上面101aから下面101bに向けて貫通するねじ孔104が形成されている。ねじ孔104にボルトBTをねじ込むことにより、保持部材120の連結部122は、液室部材101の上面101aに固定される。
液圧室102は、上面101a側に形成された大径の液圧室102aと、これに連通するとともに同心かつ小径の液圧室102bで形成されている。大径の液圧室102aは、上面101aで開口する開口部102cを有し、小径の液圧室は下面101bで開口する開口部102dを有する。
上面101a側の開口部102cは、下面101b側の開口部102dよりも大きな面積を有している。
上面101aには、開口部102cを閉塞するように平板状の大径ダイヤフラム105が固定されている。
下面101bには、開口部102dを閉塞するように平板状の小径ダイヤフラム106が固定されている。
大径ダイヤフラム105および小径ダイヤフラム106は、例えば、ニッケル合金薄板、ステンレス鋼薄板、ニッケル・コバルト合金薄板等の金属板で形成され、外力を受けると弾性変形可能となっている。
大径ダイヤフラム105および小径ダイヤフラム106は、液室部材101の上面101aおよび下面101bに、例えば、溶接によって固定される。
液体Lは、液室部材101に形成された図示しない供給口を通じて液圧室102内に充填され、充填ののちに供給口が封止される。大径ダイヤフラム105および小径ダイヤフラム106および液圧室102によって画定される閉空間内には、液体Lが充填される。
【0021】
図4を参照して変位拡大機構100の動作を説明する。
大径ダイヤフラム105は、外力が作用していない状態では平坦な状態であるが、図4に示すように、図示しない圧電アクチュエータ2の先端部2aの変位により液圧室102内に向けて弾性変形する。これにより、液圧室102内の液体に圧力が印可され、小径ダイヤフラム106にも圧力が作用することで、小径ダイヤフラム106も弾性変形して下面101bから下方に向けて膨出する。
大径ダイヤフラム105の液室部材101の上面101aからの最大変位をd1とし、小径ダイヤフラム106の液室部材101の下面101bからの最大変位をd2とすると、出力側の最大変位d2は入力側の最大変位d1よりも大きくなる。大径ダイヤフラム105が受圧面積は、開口部102cの面積で決まり、小径ダイヤフラム106の受圧面積は開口部102dの面積で決まる。したがって、大径ダイヤフラム105に入力された圧電アクチュエータ2の変位量(伸び)は、開口部102cと開口部102dとの面積比に応じて、拡大(増幅)される。
変位拡大機構100では、圧電アクチュエータ2の伸びが大径ダイヤフラム105に入力され、これが拡大増幅されて小径ダイヤフラム106から小径ダイヤフラム106の変形量として出力される。
【0022】
図5および図6に、上記した圧電アクチュエータユニット50によりダイヤフラムバルブが駆動される圧力式の流量制御装置1を示す。
図5において、流量制御装置1の全体を覆うカバーやフィードバック制御用の基板が実際には存在するが、説明の便宜上図示していない。
流量制御装置1は、圧電アクチュエータユニット50に加えて、バルブボディ16、下流側ブロック25、操作部材8、ばね9、ダイヤフラム17、ダイヤフラム押え19、押えアダプタ20、圧力検出器22、オリフィス21、Oリング14、圧力検出器26、位置決めピン11、支持プレート3、ボンネット10、一対の変位伝達部材5、連結部材6、調節ねじ7および緩み止めナット13を有する。
【0023】
バルブボディ16には、流路16a,16b、16cが形成されており、流路16aは
バルブボディ16の上部で開口し、この開口周囲にダイヤフラム17が当接離隔するバルブシートが形成されている。ダイヤフラム17の外周縁部は環状の押えアダプタ20が接触しており、押えアダプタ20を介してボンネット10の下端部によりバルブボディ16に押圧されて気密に固定されている。ダイヤフラム17がダイヤフラム押え19により押圧されてバルブシートに当接することにより、流路16aと流路16bとの連通が遮断され、ダイヤフラム17がバルブシートから離隔することにより、流路16aと流路16bとが連通する。このように、流量制御装置1内ではダイヤフラムバルブが構成されている。
【0024】
操作部材8は、ステンレス合金等の金属材料で形成され、その先端部には、ダイヤフラム17を押圧する合成樹脂製のダイヤフラム押え19が取り付けられている。ダイヤフラム17は、本実施形態では、特殊ステンレス鋼等の金属製薄板及びニッケル・コバルト合金薄板の中央部を上方へ膨出させることにより、上に凸の円弧状が自然状態の球殻状とされている。ダイヤフラム17は、例えば、ステンレス、NiCo系合金などの金属やフッ素系樹脂で球殻状に弾性変形可能に形成されている。
【0025】
ばね9は、操作部材8と支持プレート3との間に配置され、操作部材8をダイヤフラム17に向けて付勢している。
ダイヤフラム17の下流側の流路16b内にオリフィス21(この実施形態では、ガスケット型オリフィス)が設けられている。オリフィス21の上流側の流路16c内には、圧力を検出する上流側の圧力検出器22が設けられている。
下流側ブロック25は、バルブボディ16にボルトにより連結され、バルブボディ16の下流側の流路16bに連通する下流側流路25aを有し、下流側流路25a内の圧力を検出する下流側の圧力検出器26が設けられている。
図示しない制御装置により、各圧力検出器22,26の検出値に基づいてダイヤフラムバルブが開閉制御される。
【0026】
バルブボディ16は、上流側の圧力検出器22に接続される流路16cと、流路16cとガスケット型のオリフィス21とを接続する流路16bとを備えている。本実施形態においては、流路16b及び流路16cは、円形の断面形状を有し、その内径を0.5mm~1.0mmとしている。その結果、圧電駆動バルブのダイヤフラム17とガスケット型のオリフィス21との間の流路16bの内容積を従来の圧力式流量制御装置に比較して略半分以下にすることができ、流量制御装置1の立下り特性を向上させることができる。
バルブボディ16、各圧力検出器22,26及び下流側ブロック25は、圧電アクチュエータ2と略同幅に設計されている。
【0027】
流量制御装置1は、バルブボディ16、各圧力検出器22,26及び下流側ブロック25も、圧電アクチュエータ2と略同幅に形成されているため、装置全体の薄型化が図られている。
【0028】
支持プレート3は、ステンレス材等の金属材により圧電アクチュエータ2の外形寸法と同一若しくは同程度の幅寸法に形成されており、二本の位置決めピン11により位置決めされた状態でボンネット10上に設置されている。ここで同程度の寸法とは、圧電アクチュエータ2の幅(直径)寸法に対して±1mm位の範囲内の寸法を言う。以下、同程度の寸法とは、前記の数値の範囲内の寸法を言う。尚、この実施形態では、支持プレート3の最大幅寸法は、圧電アクチュエータ2の幅(直径)寸法よりも少し小さめの寸法に形成されている。
圧電アクチュエータユニット50の変位拡大機構100の小径ダイヤフラム106は、支持プレート3の上面に接している。
【0029】
一対の変位伝達部材5は、熱膨張係数の小さいインバー材等の金属材料で形成され、圧電アクチュエータユニット50の外周面に沿う円弧状内周面を有し且つ円弧状内周面に連なる平行な側面を有する長尺板状に形成されている。一対の変位伝達部材5は、圧電アクチュエータユニット50を囲う大きさの金属製円筒状部材の対向する部分を平行状にカットし、円筒状部材を長手方向に沿って二つに分割した形態を呈している。その結果、一対の変位伝達部材5の最大幅は、圧電アクチュエータユニット50の幅(直径)と同一若しくは同程度の寸法に形成されることになる。この実施形態においては、一対の変位伝達部材5の最大幅寸法は、圧電アクチュエータユニット50の幅(直径)寸法よりも少し大きめの寸法に形成されている。
【0030】
一対の変位伝達部材5の上端部は、連結部材6により連結されている。連結部材6は、止め螺子12により各変位伝達部材5に固定されている。連結部材6の最大幅寸法は、圧電アクチュエータ2の幅(直径)寸法よりも少し大きめの寸法に形成されている。
【0031】
連結部材6の中央部には、調節ねじ7が上下動可能に螺合しており、調節ねじ7の先端部が保持部材120の凹部122aに当接している。
調節ねじ7の締め付け度合いを調節することにより、保持部材120に対する一対の変位伝達部材5の相対高さ位置を調節可能となっている。調節ねじ7には、緩み止めナット13が螺合されている。
【0032】
ここで、図7を参照して、圧電アクチュエータユニット50とダイヤフラム17を操作する操作部材8との関係について説明する。
操作部材8は、図7に示すように、一対の変位伝達部材5の下端部に形成された各係止部5aがそれぞれ係合するアーム部8aを備えている。操作部材8は、上記したように、ばね9により下方向A2に付勢されている。圧電アクチュエータ2が伸長すると、圧電アクチュエータ2の伸びが、変位拡大機構100の大径ダイヤフラム105に入力され、図4において説明したように、大径ダイヤフラム105の変形が増幅され、小径ダイヤフラム106から出力される。小径ダイヤフラム106が液室部材101の下面101bから膨出すると、液室部材101の下面101bが支持プレート3の上面3aから上方向A1に向けて移動し、保持部材120が上方向A1に押し上げられ、一対の変位伝達部材5も上方向A1に押し上げられる。その結果、操作部材8もばね9の付勢力に抗して一対の変位伝達部材5により上方向A1に引き上げられる。
操作部材8の上方向A1への移動量は、変位拡大機構100により圧電アクチュエータ2単体のみの伸びよりも拡大されている。操作部材8の先端部のダイヤフラム押え19の上方向A1へのリフト量も圧電アクチュエータ2のみの伸びよりも拡大されるので、図7において図示しないダイヤフラム17のバルブシートからのリフト量も圧電アクチュエータ2単体のみの伸びよりも拡大される。ダイヤフラム17のリフト量が拡大されることで、ダイヤフラムバルブの大流量化が可能となる。
【0033】
本実施形態によれば、変位拡大機構100の液圧室102をプレート状の液室部材101で形成し、この液室部材101の上面101a,下面101bに薄板からなる大径ダイヤフラム105,小径ダイヤフラム106を固定している。このため、変位拡大機構100を薄型化できる。加えて、変位拡大機構100の外形状を保持部材120の外形状と略同形状にしているので、圧電アクチュエータユニット50全体の寸法の拡大も可能な限り抑制できる。
変位拡大機構100は薄型化されているので、応答性が高く、圧力検出器22,26の検出値に基づいてダイヤフラムバルブをフィードバック制御する制御系の周波数特性を高く維持することができる。
本実施形態では、変位拡大機構100を圧電アクチュエータ2と支持プレート3との間に配置する構成としたが、これに限定されるわけではなく、変位拡大機構100の配置は適宜変更可能である。
本実施形態では、変位拡大機構100と圧電アクチュエータ2とを保持部材120で連結してユニット化することにより、ユニット単体で検査することが可能となる。なお、変位拡大機構100と圧電アクチュエータ2と別々に配置することも可能である。
本実施形態では、大径ダイヤフラム105と小径ダイヤフラム106とを対向するように配置したが、これに限定されるわけではなく、大径ダイヤフラム105と小径ダイヤフラム106との相対位置は任意に設定できる。
【0034】
図8に本発明の他の実施形態に係る変位拡大機構を示す。
本実施形態に係る変位拡大機構100Aと上記の変位拡大機構100との間で異なる点は、小径ダイヤフラム106に代えてベローズ107を設けた点である。
ベローズ107は、金属材料又は合成樹脂材料で形成されている。大径ダイヤフラム105の変形量が拡大されてベローズ107が伸長するようになっている。
ベローズ107を採用することにより、ダイヤフラムと比べて、変形量を大きくとることが容易となる。
【0035】
上記各実施形態では、第1の隔離部材として大径ダイヤフラム105、第2の隔離部材として小径ダイヤフラム106またはベローズ107を採用した場合を例示したが、本発明はこれらに限定されるわけではない。例えば、大径ダイヤフラム105の代わりにベローズを採用することも可能であるし、第1および第2の隔離部材として液圧室に対してピストンを変位可能に設けることも可能である。
【0036】
次に、図9を参照して、上記したダイヤフラムバルブの他の適用例について説明する。
図9に示す半導体製造装置980は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition 法)による半導体製造プロセスを実行するための装置であり、981はプロセスガス供給源、982はガスボックス、983はタンク、984は開閉バルブ、985は制御部、986は処理チャンバ、987は排気ポンプを示している。例えば、ALD法等においては、基板に膜を堆積させる処理プロセスに使用する処理ガスをより大きな流量で安定的に供給することが求められている。
ガスボックス982は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ986に供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体制御機器を集積化してボックスに収容した集積化ガスシステム(流体制御装置)である。
タンク983は、ガスボックス982から供給される処理ガスを一時的に貯留するバッファとして機能する。
開閉バルブ984は、上記した変位拡大機構を内蔵したダイヤフラムバルブである。
制御部985は、開閉バルブ984への操作ガスの供給制御による流量調整制御を実行する。
処理チャンバ986は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ987は、処理チャンバ986内を真空引きする。
【0037】
上記のようなシステム構成によれば、制御部985から開閉バルブ984に制御指令を送れば、処理ガスの流量制御が可能になる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、上記適用例では、開閉バルブ984をALD法による半導体製造プロセスに用いる場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、本発明は、例えば原子層エッチング法(ALE:Atomic Layer Etching 法)等、精密な流量調整が必要なあらゆる対象に適用可能である。
【0039】
上記実施形態では、開閉バルブ984を流体制御装置としてのガスボックス982の外部に配置する構成としたが、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化してボックスに収容した流体制御装置に上記実施形態のダイヤフラムバルブを含ませることも可能である。
【0040】
図10を参照して、本発明が適用される流体制御装置の他の例を説明する。
図10に示す流体制御装置には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる金属製のベースプレートBSが設けられている。なお、W1は正面側、W2は背面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。ベースプレートBSには、複数の流路ブロック992を介して各種流体機器991A~991Eが設置され、複数の流路ブロック992によって、上流側G1から下流側G2に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
【0041】
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D、マスフローコントローラ991E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管993は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。
【0042】
本発明は、上記した開閉弁991A、991D、レギュレータ991B等の種々のダイヤフラムバルブに適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 :流量制御装置
2 :圧電アクチュエータ
2a :先端部
2b :端面
2d :端面
2h :ケース
3 :支持プレート
3a :上面
5 :変位伝達部材
5a :係止部
6 :連結部材
7 :調節ねじ
8 :操作部材
8a :アーム部
9 :皿ばね
10 :ボンネット
11 :位置決めピン
12 :止め螺子
13 :止めナット
14 :Oリング
16 :バルブボディ
16a :流路
16b :流路
16c :流路
17 :ダイヤフラム
19 :ダイヤフラム押え
20 :押えアダプタ
21 :オリフィス
22 :圧力検出器
25 :下流側ブロック
25a :下流側流路
26 :圧力検出器
50 :圧電アクチュエータユニット
100,100A :変位拡大機構
101 :液室部材
101a :上面
101b :下面
101c :外周面
101d :平坦面
102 :液圧室
102a :液圧室
102b :液圧室
102c :開口部
102d :開口部
103 :連結部
104 :ねじ孔
105 :大径ダイヤフラム
106 :小径ダイヤフラム
107 :ベローズ
120 :保持部材
121 :第2の柱部
122 :連結部
122a :凹部
122b :受け止め面
123 :連結部
980 :半導体製造装置
982 :ガスボックス
983 :タンク
984 :開閉バルブ
985 :制御部
986 :処理チャンバ
987 :排気ポンプ
991A~991E :流体機器
992 :流路ブロック
993 :導入管
A1 :上方向
A2 :下方向
BS :ベースプレート
BT :ボルト
G1 :長手方向(上流側)
G2 :長手方向(下流側)
L :液体
W1,W2 :幅方向
d1 :最大変位
d2 :最大変位
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10