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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】観賞魚用水質浄化剤
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20221031BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20221031BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20221031BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A01K63/04 A ZAB
B01J20/20 D
B01J20/28 A
C02F1/28 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018179754
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020048447
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】595116212
【氏名又は名称】信濃建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113033
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 精孝
(72)【発明者】
【氏名】野竹 和秀
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-075546(JP,A)
【文献】特開昭61-278392(JP,A)
【文献】特開2011-212653(JP,A)
【文献】特開平05-017778(JP,A)
【文献】特開平05-000293(JP,A)
【文献】特開2000-236774(JP,A)
【文献】特開昭63-107717(JP,A)
【文献】特開昭64-037412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00 - 63/10
B01J 20/20
B01J 20/28
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾殻灰ゼオライト10~30質量部と籾殻燻炭90~70質量部との合計100質量部を含上記籾殻灰ゼオライトの平均粒径が、5~100μmであり、かつ、その比表面積が、50~500m /gである、観賞魚用水質浄化剤。
【請求項2】
上記籾殻燻炭が、長さ0.3~5mm、幅0.2~1mm、厚さ0.1~0.6mmの薄片状粒子を40質量%以上含み、かつ、その比表面積が、50~350m/gである、請求項記載の観賞魚用水質浄化剤。
【請求項3】
多孔質の不織布から成る袋状物に内包された、請求項1又は2に記載の観賞魚用水質浄化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観賞魚用水質浄化剤に関し、更に詳しくは、観賞魚用水槽中の飼育水と接触せしめて、該飼育水を効果的に浄化して、長期間に亘って清澄に保持し得る、観賞魚用水質浄化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱帯魚、鯉、金魚等の観賞魚用水槽中の飼育水を浄化する方法としては、水槽中の飼育水を、ポンプ等を使用して循環し、その循環経路に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の不織布を用いたフィルター等の浄化装置を設置して浄化する方法、又は、水槽内に砂利を敷き詰めて浄化する方法等が一般的であった。上記の浄化装置に使用する改良されたフィルターとしては、例えば、銀、銅のうち少なくとも1つの金属化合物を担持した炭酸カルシウム粉体、又は前記金属化合物を担持したリン酸カルシウム粉体と、核部とこの核部から異なる4軸方向に伸びた針状結晶部とを有する単結晶体からなる酸化亜鉛ウィスカと、凝集剤と、酸中和剤と、トリアジン系化合物とを含んでなる観賞魚用フィルター(特許文献1)、少なくとも2層の繊維層よりなり、構成繊維が互いに交絡され、バインダーにより接着一体化されていて、水槽中に設置されたとき、水槽内を循環する水の入口側から出口側に粗から密への密度勾配を有している観賞魚用水槽に用いるフィルターであって、該フィルターは総目付に対して10~40重量%のバインダーを含み、かつ該バインダーには水に溶ける乳化剤等の助剤が使用されていない観賞魚用水槽に用いるフィルター(特許文献2)、及び、観賞魚用水槽に投入して水の濾過を行わせるのに適したフィルター材において、不織布構造の繊維質からなるシート体を用いて袋状に製作された袋体の内部に、上記シート体の最大孔径よりも大きくかつ所望の吸着効率を発揮しうる粒径の微粒状濾材を内蔵してなることを特徴とする観賞魚用フィルター材(特許文献3)等が知られている。しかし、これらのフィルターは、浄化能力に優れるものもあるが高価であり、その一方、安価なものは浄化能力が劣るものが多かった。
【0003】
また、上記のようなフィルターと共に又は単独で使用して、観賞魚用水槽中の飼育水を浄化する剤としては、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、パーライト、多孔質ガラス等が知られている。また、これらの剤に、酸化チタン等の光触媒を担持させた水質浄化剤も知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-190370号公報
【文献】特開2004-141080号公報
【文献】特開2000-236774号公報
【文献】特開2006-110470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、著しく長期間に亘って、観賞魚用水槽中の飼育水を浄化して清澄に保持し得る観賞魚用水質浄化剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々の検討を試みた。その結果、観賞魚用水質浄化剤として、籾殻灰ゼオライトと籾殻燻炭とを下記の所定量で含めると、飼育水中のアンモニアを籾殻灰ゼオライトが効果的に吸着して生物分解を促し、かつ、観賞魚の糞等の有機物及び臭いを籾殻燻炭が効果的に吸着除去すると共に、例えば、ポンプにより飼育水を循環しつつ該水質浄化剤の層を通過せしめると、籾殻燻炭の持つ籾殻特有の細長い形状により、飼育水が、該水質浄化剤層を通過する際に多方向に分散されて流れることから、該水質浄化剤層での異物による目詰まりを起こし難く、長期間に亘って飼育水をスムーズに循環することができて、それにより、著しく長期間に亘って、観賞魚用水槽中の飼育水を浄化して、清澄に保持し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)籾殻灰ゼオライト10~30質量部と籾殻燻炭90~70質量部との合計100質量部を含む、観賞魚用水質浄化剤である。
【0008】
好ましい態様として、
(2)上記籾殻灰ゼオライトの含有量が、15~25質量部であり、かつ、上記籾殻燻炭の含有量が、85~75質量部である、上記(1)記載の観賞魚用水質浄化剤、
(3)上記籾殻灰ゼオライトの含有量が、18~22質量部であり、かつ、上記籾殻燻炭の含有量が、82~73質量部である、上記(1)記載の観賞魚用水質浄化剤、
(4)上記籾殻灰ゼオライトの平均粒径が、5~100μmであり、かつ、その比表面積が、50~500m/gである、上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(5)上記籾殻灰ゼオライトの平均粒径が、5~50μmであり、かつ、その比表面積が、100~450m/gである、上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(6)上記籾殻灰ゼオライトの平均粒径が、5~30μmであり、かつ、その比表面積が、200~400m/gである、上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(7)上記籾殻燻炭が、長さ0.3~5mm、幅0.2~1mm、厚さ0.1~0.6mmの薄片状粒子を40質量%以上含む、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(8)上記籾殻燻炭が、長さ0.3~5mm、幅0.2~1mm、厚さ0.1~0.6mmの薄片状粒子を50質量%以上含む、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(9)上記籾殻燻炭が、長さ0.3~5mm、幅0.2~1mm、厚さ0.1~0.6mmの薄片状粒子を60質量%以上含む、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(10)上記籾殻燻炭が、長さ0.4~4mm、幅0.2~1mm、厚さ0.2~0.5mmの薄片状粒子を40質量%以上含む、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(11)上記籾殻燻炭が、長さ0.4~4mm、幅0.2~1mm、厚さ0.2~0.5mmの薄片状粒子を50質量%以上含む、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(12)上記籾殻燻炭が、長さ0.4~4mm、幅0.2~1mm、厚さ0.2~0.5mmの薄片状粒子を60質量%以上含む、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(13)上記籾殻燻炭の比表面積が、50~350m/gである、上記(1)~(12)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(14)上記籾殻燻炭の比表面積が、100~350m/gである、上記(1)~(12)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(15)上記籾殻燻炭の比表面積が、200~350m/gである、上記(1)~(12)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤、
(16)多孔質の不織布から成る袋状物に内包された、上記(1)~(15)のいずれか一つに記載の観賞魚用水質浄化剤
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の観賞魚用水質浄化剤は、飼育水中のアンモニアを籾殻灰ゼオライトが効果的に吸着して生物分解を促し、かつ、観賞魚の糞等の有機物及び臭いを籾殻燻炭が効果的に吸着除去すると共に、籾殻燻炭の持つ籾殻特有の細長い形状により、飼育水が水質浄化剤の層を通過する際に多方向に分散されて流れることから、該水質浄化剤内での目詰まりを起こし難くすることができて、長期間に亘って飼育水をスムーズに循環することができる。従って、著しく長期間に亘って、観賞魚用水槽中の飼育水を浄化して、清澄に保持し得る。好ましくは、本発明の観賞魚用水質浄化剤を、多孔質の不織布から成る袋状物に内包せしめることにより、より効果的に、飼育水中の浮遊物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例で使用した観賞魚用水槽の概略側面図である。
図2図2は、本発明で使用する籾殻燻炭の形状の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の観賞魚用水質浄化剤は、籾殻灰ゼオライト10~30質量部と籾殻燻炭90~70質量部との合計100質量部を含む。好ましくは、籾殻灰ゼオライト15~25質量部と籾殻燻炭85~75質量部との合計100質量部を含み、より好ましくは、籾殻灰ゼオライト18~22質量部と籾殻燻炭82~73質量部との合計100質量部を含む。通常、籾殻灰ゼオライト20質量部と籾殻燻炭80質量部とを含む観賞魚用水質浄化剤が使用される。籾殻灰ゼオライトの含有量が上記下限未満であり、かつ、籾殻燻炭の含有量が上記上限を超えては、飼育水中のアンモニアの吸着を十分に達成することができず、長期間に亘って飼育水を浄化して、清澄に保持し得ることができないことがある。一方、籾殻灰ゼオライトの含有量が上記上限を超え、かつ、籾殻燻炭の含有量が上記下限未満では、観賞魚の糞等の有機物及び臭いを十分に取り除くことができないことがあり、加えて、水質浄化剤層に目詰まりが生ずることがあり、結局、長期間に亘って飼育水を浄化して、清澄に保持し得ることができなくなることがある。
【0012】
上記籾殻灰ゼオライトの平均粒径は、好ましくは5~100μmであり、より好ましくは5~50μmであり、更に好ましくは5~30μmである。また、該籾殻灰ゼオライトの比表面積は大きいほどよいが、好ましくは50~500m/gであり、より好ましくは100~450m/gであり、更に好ましくは200~400m/gである。籾殻灰ゼオライトの平均粒径が上記上限を超えては、該ゼオライトに所定の比表面積を付与することができないことがあり、一方、上記下限未満では、飼育水中に多くの粒子が浮遊して却って飼育水が濁ってしまうことがある。また、該籾殻灰ゼオライトの比表面積が上記上限を超えても、効果の著しい増加は期待できず、該ゼオライトの製造コストが増大するばかりであり、一方、上記下限未満では、飼育水中のアンモニアの吸着を十分に達成できないことがある。ここで、籾殻灰ゼオライトの平均粒径は、レーザー光散乱法により測定したものであり、比表面積は、BET法により測定したものである。
【0013】
本発明に使用する籾殻灰ゼオライトとしては、市販品を使用することができる。例えば、太盟實業コフン・コンス(台湾)製ICOM(商標)等を挙げることができる。ここで、籾殻灰ゼオライトとは、好ましくは、米、麦等の穀類の籾殻をシリカ原料として使用して製造したものをいう。このような籾殻灰ゼオライトは、通常、公知の方法、例えば、特開昭64-37412号公報記載の方法で製造することができる。例えば、殻類の籾殻をアルカリ性溶液と反応させて得られるケイ素含有アルカリ性溶液をシリカ源として用いて水熱合成反応を行うゼオライトの製造方法、殻類の籾殻をアルカリ性溶液及び3価金属化合物と反応させて得られるケイ素及び3価金属を含むアルカリ性溶液をシリカ源及び3価金属酸化物源として用いて水熱合成反応を行うゼオライトの製造方法、及び、殻類の籾殻をそのままシリカ源として用いて水熱合成反応を行うゼオライトの合成方法等が挙げられる。上記の方法において原料とする籾殻としては、ケイ素を含むものであれば特に制限はないが、上記のように、好ましくは、米、麦等の殻類の籾殻が使用される。該籾殻はそのまま、又は、微粉砕して用いることが好ましい。上記のゼオライト合成方法においては、籾殻がシリカ源として用いられる。この場合、籾殻はそのままシリカ源として使用することもできるが、アルカリ性水溶液と反応させてケイ素を含むアルカリ性溶液として使用することが好ましい。上記のアルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を含むアルカリ性水溶液が用いられる。該アルカリ性水溶液のpHは、好ましくは8~14、より好ましくは10~14である。籾殻とアルカリ性水溶液との反応は、アルカリ性水溶液中に籾殻を浸漬することによって実施される。反応温度は、好ましくは0~300℃、より好ましくは20~120℃である。該反応により、籾殻中のケイ素分と水溶液中のアルカリ分とが反応して活性なケイ素含有アルカリ性溶液を生成する。ゼオライトを得るための水熱合成反応は、通常、公知の方法を使用することができる。例えば、上記のようにして得たアルカリ性溶液又は籾殻自体に、必要に応じて、アルカリ金属イオン源、骨格構造調節剤等の補助成分を加え、水熱処理すればよい。また、上記成分の他、Y源、例えば、アルミニウム、鉄、ガリウム等の3価金属の水溶性塩を加えて水熱処理を実施してもよい。水熱合成反応は、密閉容器中で、温度80~200℃、自生圧下に加熱撹拌することによって実施することができる。上記の水熱合成反応で得られた反応混合物を、濾過又は遠心分離等により固形物と水溶液とに分離する。固形物は、更に、水洗することにより余剰のイオン性物質を除去し、次いで、乾燥することにより有機物を含んだ結晶性ゼオライトとすることができる。これを、空気中で300~900℃、好ましくは400~700℃の温度で1~100時間焼成することによって、有機物のない結晶性ゼオライトを得ることができる。
【0014】
上記籾殻燻炭は、好ましくは、米、麦等の穀類の籾殻を原料とするものであり、通常、薄く細長い形状を有している。本発明においては、下記のようにして製造された籾殻燻炭をそのまま使用することもできるが、更に、粗粉砕して得られた籾殻燻炭を使用することが好ましい。まず、粗粉砕前の籾殻燻炭同士を、すり潰し機により、圧密しながらすり合わせて粗粉砕し、次いで、10mm目の振動篩機で篩うことが好ましい。篩上の大きな粒子の籾殻燻炭は、更に粗粉砕を繰り返して、ほぼ全量が上記の篩目を通るように調製する。このようにして得られた粗粉砕した籾殻燻炭は、通常、粒子の細かいものから大きいものまで含んでおり、大きいものでは、長さ4~8mm程度、幅1~3mm程度の薄片状粒子であって、全体の約10質量%以下含まれており、粗粉砕した籾殻燻炭は、いずれも原料である籾殻の形状を留めており、幅方向に緩やかな弧を描いている。10mm目の振動篩機で篩ったのちの籾殻燻炭は、更に、1.0mm目の振動篩機で目詰まりが生じないように、篩面を水平から傾斜をつけて、好ましくは10~15度の傾斜をつけて篩う。これにより得られた籾殻燻炭は、好ましくは、長さ(l)0.3~5mm、幅(W)0.2~1mm、厚さ(T)0.1~0.6mmの薄片状粒子であり、より好ましくは、長さ(L)0.4~4mm、幅(W)0.2~1mm、厚さ(T)0.2~0.5mmの薄片状粒子であり、更に好ましくは、長さ(L)1~4mm、幅(W)0.4~0.8mm、厚さ(T)0.3~0.4mmの薄片状粒子である。篩上は上記の篩上と一緒に又は別途単独で、更に上記の粗粉砕を繰り返して、ほぼ全量が上記の篩目を通るように調製する。図2には、本発明で使用する粗粉砕した籾殻燻炭の形状の一実施態様を示した。該粗粉砕した籾殻燻炭は、上記寸法を有する薄片状粒子を、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上含む。ここで、粗粉砕した籾殻燻炭の粒子寸法は、任意に採取した約100個の粒子を拡大視野においてノギスを使用して測定したものである。また、該籾殻燻炭の比表面積は、好ましくは50~350m/gであり、より好ましくは100~350m/gであり、更に好ましくは200~350m/gである。該籾殻燻炭の比表面積が上記上限を超えても、効果の著しい増加は期待できず、該籾殻燻炭の製造コストが増大するばかりであり、また、そのような比表面積を有する籾殻燻炭を製造することが容易ではなく、一方、上記下限未満では、飼育水中に観賞魚の糞等の有機物及び臭いを十分に除去できないことがある。ここで、籾殻燻炭の比表面積は、籾殻灰ゼオライトと同一の方法で測定したものである。
【0015】
本発明に使用する籾殻燻炭としては、市販品、例えば、株式会社コメリ等から籾殻燻炭として広く販売されているものを、上記のように粗粉砕して使用することができる。このような籾殻燻炭は、通常、公知の方法で製造することができる。例えば、従来から一般的に行われている籾殻を燻炭化する方法としては、煙突を上部に備えたドラム缶内に籾殻を入れ、ドラム缶の下部から直火又は燃焼炭等により加熱して籾殻に着火して籾殻燻炭を製造する方法が挙げられる。また、該従来法を改良したものとして、耐熱、保熱性部材からなり籾殻供給用の開口部を備えた有底筒状容器と、この容器の底部に配置され前記容器内に入れられた籾殻を電気的に着火させる着火手段とを有する籾殻燻炭装置を使用して、該容器内に籾殻を収容し、容器底部から加熱することにより籾殻に着火させ、着火後加熱を停止し、容器内に空気の対流を生じさせないようにして燻炭を生成する籾殻燻炭方法が知られている(特開平5-17778号公報)。該装置及び方法によれば、籾殻出入用の蓋を開けて所定量の籾殻を容器内に入れて必要に応じて蓋を閉じ、着火手段により籾殻に着火させ、籾殻が着火した後、所定日数、例えば、1~2日間放置する。この間、容器の底部及び下部には通気孔がないので、籾殻は密封容器内の限られた酸素のみで燃焼するため空気の対流が起らず灰にならずに燻炭となる。
【0016】
本発明の観賞魚用水質浄化剤は、多孔質の不織布から成る袋状物に内包して使用することが好ましい。多孔質の不織布から成る袋状物としては、従来、公知のものを使用することができる。例えば、上記特許文献3に記載の所定の観賞魚フィルターを袋状に成形して使用することができる。不織布の材質としては、特に制限はないが、多孔質構造であって、通気性、濾過性等の性質を十分に発揮し得、かつ、安価である、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が使用される。該不織布から、例えば、縦10cm×横11cm程度の袋状物を作成して、その中に、約50グラムの観賞魚用水質浄化剤を内包せしめ、溶着用ヒーターで密封して使用される。この際、予め、籾殻燻炭に20~30質量%程度の水を含ませ、これに乾燥した籾殻灰ゼオライトを混合して、袋状物に内包せしめることが好ましい。これにより、籾殻燻炭に籾殻灰ゼオライトが付着して、見かけ上大きな粒子となり、保存に際にして、通常、約5~30μmの孔径を持つ不織布の網目から、袋状物に内包された観賞魚用水質浄化剤が外部に出ることを防止することができる。そして、例えば、このようにして出来上がった、観賞魚用水質浄化剤が内包された袋状物を、複数袋毎、例えば、5袋毎、所定のビニール袋、例えば、チャック付ビニール袋等に入れて乾燥を防ぎ、保存することが好ましい。実際に観賞魚用水槽において使用するに際しては、例えば、観賞魚用水槽の上部等に、上記の観賞魚用水質浄化剤を内包した袋状物を設置して、ポンプ等で飼育水を循環しながら使用すると、内包されている水質浄化剤の粒度にもよるが、通常、約10~20質量%程度の水質浄化剤が袋状物から流出して飼育水中に分散する。
【0017】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
観賞魚用水質浄化剤として、籾殻灰ゼオライト10グラム(20質量部)と籾殻燻炭40グラム(80質量部)とをよく混合して、ポリエステル製不織布の袋(縦10cm×横11cm、不織布孔径約5~30μm)に入れ、次いで、溶着用ヒーターを使用して密封した。籾殻灰ゼオライトしては、太盟實業コフン・コンス製ICOM(商標)を使用した。該籾殻灰ゼオライトの平均粒径は約30μmであり、比表面積は約400m/gであった。また、籾殻燻炭としては、株式会社コメリから販売されている土壌改良材としての籾殻燻炭を、すり潰し器(宝田工業株式会社製手回し粉ひきハンディII、寸法:高さ325mm×幅240mm×奥行240mm)を使用して、すり潰すことにより粗粉砕し、次いで、1.0mm目の振動篩を用いて、篩い面を水平から10~15度程度の傾斜を付けながら手動で篩って、その篩下を使用した。該籾殻燻炭は、長さ(l)0.4~4mm、幅(w)0.2~1mm、厚さ(t)0.2~0.5mmの薄片状粒子を全体の約55質量%含むものであり、比表面積は約320m/gであった。観賞魚用水槽としては、図1に示したものを使用した。該水槽の各寸法は、縦30cm×横60cm×深さ35cm(体積:63,000cm)であった。該水槽内に、予めカルキ抜きをした水道水55,000cmを飼育水として装入し、その中に観賞用魚として、体長約50mmの和金5尾を入れた。図1に示すように、観賞魚用水槽(1)上部の観賞魚用水質浄化剤設置部(3)に、上記の不織布入り観賞魚用水質浄化剤を5袋(合計250グラム)並べて設置し、ポンプで飼育水を循環して飼育水の浄化を開始した。和金に与える餌としては、日本ペットフード株式会社製エンゼル色揚げを使用した。該餌は浮上性であり、直径約2mmのおよそ球状の粒であった。給餌は、1日3回、午前8時、午後1時、午後7時頃に、和金1匹あたり1回につき約5粒を目安に給餌した。最初の給餌から定期的に水槽内の飼育水を目視観察したところ、1ヶ月経過後においても、飼育水が汚れることは全くなかった。また、飼育水が悪臭を放つこともなかった。該水槽については、そのまま同一条件下で5ヶ月経過後まで飼育水を観察したが、同様に飼育水が汚れることはなかった。また、飼育水が悪臭を放つこともなかった。
【0019】
(実施例2)
観賞魚用水質浄化剤として、1袋中に籾殻灰ゼオライト5グラム(10質量部)と籾殻燻炭45グラム(90質量部)とを入れた以外は、実施例1と同一に実施した。実施例1と同じく1ヶ月後に目視観察したところ、飼育水の汚れは観察されなかった。また、飼育水が悪臭を放つこともなかった。そのまま同一条件下で飼育水の観察を続けたところ、約2ヶ月経過した時点から飼育水の汚れが観察され始めた。
【0020】
(実施例3)
観賞魚用水質浄化剤として、1袋中に籾殻灰ゼオライト15グラム(30質量部)と籾殻燻炭35グラム(70質量部)とを入れた以外は、実施例1と同一に実施した。実施例1と同じく1ヶ月後に目視観察したところ、飼育水は全く汚れていなかった。また、飼育水が悪臭を放つこともなかった。そのまま同一条件下で飼育水の観察を続けたところ、約2.5ヶ月経過した時点から飼育水の汚れが観察され始めた。
【0021】
(比較例1)
観賞魚用水質浄化剤として、1袋中に籾殻灰ゼオライト2.5グラム(5質量部)と籾殻燻炭47.5グラム(95質量部)とを入れた以外は、実施例1と同一に実施した。実施例1と同様に飼育水を目視観察したところ、15日間を過ぎるころから飼育水の汚れが観察され始め、1ヶ月経過した時点では飼育水の汚れが目立ち始めていた。
【0022】
(比較例2)
観賞魚用水質浄化剤として、1袋中に籾殻灰ゼオライト17.5グラム(35質量部)と籾殻燻炭32.5グラム(65質量部)とを入れた以外は、実施例1と同一に実施した。実施例1と同様に飼育水を目視観察したところ、20日間を過ぎるころから飼育水の汚れが観察され始め、1ヶ月経過した時点では飼育水の汚れは目立ち、悪臭を放ち始めていた。
【0023】
(比較例3)
観賞魚用水質浄化剤として、2~3mm程度の粒径の天然ゼオライトを不織布に封入したA社製の市販品を使用した。他の実施例及び比較例と条件を合わせるために、該観賞魚用水質浄化剤50グラム(1袋中の量)を、実施例1で使用した不織布の袋に封入して使用し、他の条件は実施例1と同一にして実施した。飼育水を目視観察したところ、1週間を過ぎるころから飼育水の汚れが目立ち、悪臭を放ち始めていた。
【0024】
(比較例4)
観賞魚用水質浄化剤として、B社製の市販品である活性炭水質浄化剤(粒径:8~10mm程度)を使用した。他の実施例及び比較例を合わせるために、該観賞用水質浄化剤50グラム(1袋中の量)を、実施例1で使用した不織布の袋に封入して使用し、他の条件は実施例1と同一にして実施した。飼育水を目視観察したところ、10日を過ぎるころから飼育水の汚れが目立ち始めた。その時点で悪臭はなかった。
【0025】
(比較例5)
観賞魚用水質浄化剤として、C社製の市販品である天然ゼオライト(粒径:5~10mm程度)を使用し、この250グラムを水槽底面の底砂利(4)の上に一様に敷き詰めた。水槽上部に、実施例1で使用した不織布入り観賞魚用水質浄化剤の5袋に代えて、同じくC社製の市販品であるポリエステル製フィルター式濾過材(縦11.4cm×横39cm×厚さ1.5cmの直方体)を、観賞魚用水質浄化剤設置部(3)に丁度収まるようにして設置した以外、他の条件は実施例1と同一にして実施した。飼育水を目視で観察したところ1週間を過ぎるころから飼育水の汚れが目立ち始め、悪臭を放ち始め水換えが必要となった。
【0026】
上記の実施例1~3は、籾殻灰ゼオライトと籾殻燻炭との含有量を本発明の範囲内で変化させたものである。いずれの観賞魚用水質浄化剤も、著しく長期間に亘って、観賞魚用水槽中の飼育水を浄化して清澄に保持し得ることが分かった。とりわけ、実施例1においては、著しく長期間に亘って、良好な効果を保持し得ることが分かった
【0027】
一方、比較例1及び2は、籾殻灰ゼオライトと籾殻燻炭との含有量を本発明の範囲外にしたものである。いずれも15日~20日間程度で、飼育水に汚れが生じ、悪臭を放ち始めた。また、比較例3は、市販品である、2~3mm程度の粒径の天然ゼオライトを使用したものであるが、およそ1週間で観賞魚用水槽中の飼育水に汚れが生じ、悪臭を放ち始めていた。比較例4は、市販品である、8~10mm程度の粒径の活性炭水質浄化剤を使用したものである。悪臭はなかったが、10日を過ぎるころから飼育水の汚れが目立ち始めた。比較例5は、市販品である、5~10mm程度の粒径の天然ゼオライトを水槽底面に一様に敷き詰め、かつ、水槽上部に、同社製の市販品である、縦11.4cm×横39cm×厚さ1.5cmの直方体のポリエステル製フィルター式濾過材を設置したものである。1週間を過ぎるころから飼育水の汚れが目立ち始め、悪臭を放ち始めた。このように比較例の観賞魚用水質浄化剤を使用した場合には、かなりの頻度で飼育水の交換が必要であることが分かった。なお、上記の実施例及び比較例は、飼育槽を同一の室内(室温約25℃)に横一列に並べて、いずれもほぼ同時に実験を開始して、各飼育槽内の飼育水が比較観察できるようにして実施したものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の観賞魚用水質浄化剤は、著しく長期間に亘って、観賞魚用水槽中の飼育水を浄化して清澄に保持し得ることから、今後、観賞魚用水槽中の飼育水の浄化に大いに使用されることが期待される。
【符号の説明】
【0029】
1 観賞魚用水槽
2 飼育水
3 観賞魚用水質浄化剤設置部
4 底砂利
5 飼育水循環方向
l 籾殻燻炭の長さ
w 籾殻燻炭の幅
t 籾殻燻炭の厚さ
図1
図2