(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】高効率大面積ペロブスカイト太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 51/48 20060101AFI20221031BHJP
H01L 51/44 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H01L31/04 180
H01L31/04 112Z
(21)【出願番号】P 2018549152
(86)(22)【出願日】2017-03-16
(86)【国際出願番号】 IB2017051538
(87)【国際公開番号】W WO2017158551
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-13
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514095985
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク フェデラル ドゥ ローザンヌ(エーペーエフエル)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】リー シオーン
(72)【発明者】
【氏名】イー チェンイー
(72)【発明者】
【氏名】ピー トンチン
(72)【発明者】
【氏名】シャイク モハンメド ザケールディン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル グレツェル
(72)【発明者】
【氏名】アンデルス ハグフェルト
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035917(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0073821(KR,A)
【文献】特表2017-530546(JP,A)
【文献】XIE, Feng Xian et al.,Vacuum-Assisted Thermal Annealing of CH3NH3PbI3 for Highly Stable and Efficient Perovskite Solar Cells,ACS NANO,2015年,Vol.9,pp.639-646
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持層を用意する工程;
前記導電性支持層上に金属酸化物層を適用する工程;
前記金属酸化物層上に有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む1つの増感剤層を用意する工程であって、以下の別々の連続する工程:
1種のペロブスカイト前駆体もしくは混合ペロブスカイト前駆体又は混合カチオン及びアニオンを有する1種又は2種以上のペロブスカイト前駆体の溶液の形態にある有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜を堆積させる工程;
前記増感剤層のアニール前に、
前記金属酸化物層上に堆積された前記有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜に真空を適用する工程;及び
真空により処理された前記有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜をアニールする工程;
を含む工程;及び
前記増感剤層上に対電極を設ける工程;
を含む、固体太陽電池の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記増感剤層を適用する前に、電荷輸送層を構成する第1の層を前記金属酸化物層上に適用することを含み、前記第1の層は、前記増感剤層により覆われ、かつ、その上に前記有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜が堆積される先行層である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の層が前記増感剤層上に適用され、前記第2の層は、電荷輸送層、保護層又は両方の層の組み合わせから選択され、前記対電極が前記第2の層を覆う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜を堆積させる前記工程が、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、及びこれらの堆積法の組み合わせから選ばれた堆積法により実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記真空の圧力が、1~20Paの範囲内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記真空の適用が、1~20秒間続く、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の層が、正孔輸送材料を含む電荷輸送層である、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記増感剤層が、下記式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)及び/又は(Ig):
AA’MX
4 (I)
AMX
3 (Ia)
AA’N
2/3X
4 (Ib)
AN
2/3X
3 (Ic)
BN
2/3X
4 (Id)
BMX
4 (Ie)
AA’A
1MΧ
3 (If)
AA
1MΧ
3 (Ig)
[式中、
A及びA’は、窒素含有複素環及び環系を包含する、第1級、第2級、第3級又は第4級有機アンモニウム化合物から独立に選ばれた有機一価カチオンであり、A及びA’は、独立に、1個~60個の炭素及び1個~20個のヘテロ原子を有し;
A
1は、Cs
+、Rb
+及びK
+から選ばれた無機カチオンであり;
Bは、1個~60個の炭素及び2個~20個のヘテロ原子を有し、2個の正電荷を帯びた窒素原子を有する第1級、第2級、第3級又は第4級有機アンモニウム化合物から選ばれた有機二価カチオンであり;
Mは、Cu
2+、Ni
2+、Co
2+、Fe
2+、Mn
2+、Cr
2+、Pd
2+、Cd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、Eu
2+、Yb
2+、[Sn
iPb
(1-i)]
2+、[Sn
jGe
(1-j)]
2+、及び[Pb
kGe
(1-k)]
2+から選ばれ、ここで、i、j及びkは0.0~1.0の数であり;
Nは、Bi
3+及びSb
3+からなる群から選ばれ;
Xは、Cl
-、Br
-、I
-、NCS
-、CN
-及びNCO
-から、[I
(3-m)Cl
m]
-、[I
(3-n)Br
n]
-及び[Br
(3-u)Cl
u]
-(m、n及びuは0.0~3.0の数である)から、並びにCl
-、Br
-及びI
-から選ばれた2種のアニオンの組み合わせから、独立に選ばれる。]
のペロブスカイト構造のいずれか1つに従う有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率大面積ペロブスカイト太陽電池、大面積(>1cm2)の高品質有機-無機ペロブスカイト膜を有する有機-無機ペロブスカイト系光電変換デバイス、大面積の高品質有機-無機ペロブスカイト膜、それらの製造方法、特に、それらを製造するための真空フラッシュ支援溶液プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜型の第3世代の光起電力装置(PV)を使用して太陽エネルギーを電流に変換することがここ20年間で広く調査されてきた。メソポーラスフォトアノード、有機-無機光捕集剤、酸化還元電解質/固体正孔伝導体、及び対電極からなるサンドウィッチ/モノリシック型のPVデバイスは、製造のしやすさ、材料選択の融通性、及び費用効果のために、かなり関心を集めている。さらに、光捕集剤として従来の金属有機錯体又は有機分子の代わりに、スズに基づく有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト(CsSnX3)又は鉛に基づく有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト(CH3NH3PbX3)が導入された。有機-無機ハイブリッド鉛ハロゲン化物又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト光起電力装置は、現在、製造及び材料の低コスト及び高い太陽光-電力変換効率(PCE)のために、多大な研究上の関心を集めている。過去5年間で、ペロブスカイト太陽電池(PSC)のPCEは、約3%から22.0%に急激に上昇しており、これは太陽光発電分野においてこれまでにないものである。
【0003】
国際公開第2014/020499A1号には、導電性支持層、表面増加足場構造体(surface-increasing scaffold structure)、足場構造体上に設けられた1又は2つ以上の有機-無機ペロブスカイト層、及び対電極を含む固体太陽電池が開示されている。この文献に報告されている太陽電池では、有機正孔輸送材料又は液体電解質なしで顕著な変換効率が達成され、これにより後者は任意となった。TiO2上へのCH3NH3PbX3の堆積のための最適なプロトコールは、メソポーラスTiO2膜上への前駆体(CH3NH3X及びPbX2、X=Cl、Br、I)溶液のスピンコーティングと、それに続く低温アニール工程によって達成された。アニールプロセスは、結晶性CH3NH3PbX3をもたらす。経験から、この種の溶液処理中に形成されたペロブスカイト結晶の形態は、十分に制御することができず、PVセル性能の再現性が低い理由の1つである。
【0004】
ペロブスカイト合成の顕著な進歩にもかかわらず、研究のほとんどは、小面積(<0.2cm-2)のペロブスカイトを使用して行われ、大面積のPSCを製造する試みはほんの僅かであった。公式の太陽光効率表に入る資格がある、1cm2の臨界閾値を超えるサイズを有するセルの最良の認証PSCは15.6%である。これは、小さな実験室セルで達成された22%をはるかに下回る。これは、現行のペロブスカイト膜の製造方法を用いてPSCのサイズをスケールアップしたときにトップレベルの効率を維持することの重大な問題を反映している。これはまた、現在のところ小さな実験室セルに対して最高の効率を与えたアンチソルベント沈殿法を含む、現在適用されている堆積手順を用いて、大面積の均質で高品質のペロブスカイト膜を製造することの大きな困難性を反映している。
【0005】
ペロブスカイト膜の形態を制御してデバイスの安定性及び再現性を向上させることは依然として困難である。細孔形成を最低限に抑えることによってペロブスカイト膜の品質を改善する1つの試みは、メチルアンモニウム鉛ハロゲン化物ペロブスカイトの形成中に副生成物(塩化メチルアンモニウム:MACl)を完全に除去するために真空支援熱アニール方法(アニール工程中に真空を適用する)を使用することからなる(Fengxian Xie et al. Proc. SPIE 9567, Organic Photovoltaics XVI, 95670L (September 9, 2015); doi:10.1117/12.2187973)。かかる細孔フリーで滑らかなペロブスカイト膜は、太陽電池に良好な効率と安定性をもたらすが、かかる太陽電池のPCEの値(14.5%)は依然として低いと考えられる。さらに、ペロブスカイト前駆体の結晶化、ペロブスカイト粒子の形成、及び結晶配向の最適化についての制御はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液体電解質を含むデバイスの欠点、例えば、長期密封の困難さ、特に温度サイクル試験における長期密封の困難さによって引き起こされる溶媒蒸発及び太陽電池への水の浸透の問題などの欠点に対処する。
【0007】
本発明は、高効率の小さな実験室セルの生産を、より大きな面積のペロブスカイト太陽電池の生産に、その高効率を維持しつつ、スケールアップするという問題に対処する。
【0008】
本発明は、大面積PSCを製造する信頼性の高い手順がなく、より大きな面積の場合に、それらの効率を維持するという問題に対処する。
【0009】
本発明は、ペロブスカイト膜を溶液から堆積させるための真空法、及び、膜の熱アニールの間に例えば塩化メチルアンモニウムなどの反応生成物を除去するための真空法の欠点に対処する。
【0010】
本発明は、多目的に使用できず、アンチソルベント(anti-solvent)法を使用し、そして、より大きなスケールのPSCを製造するために適応させることができない他のペロブスカイト膜製造方法の欠点に対処する。
【0011】
本発明は、小さいサイズのPSCにおけるJ-V(電流-電圧)曲線におけるヒステリシスの存在の問題に対処する。
【0012】
本発明は、上記の問題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
注目すべきことには、いくつかの態様において、本発明者らは、導電性支持層及び金属酸化物層を含む基材上への増感剤膜の作製の間に、増感剤層の堆積後であって、増感剤のアニール前に、真空乾燥工程を適用することによって、開口面積が1cm2より大きく、認証PCEが19.6%である、有機-無機ペロブスカイトを含む固体太陽電池を製造することが可能であることを見出した。このようにして、本発明の方法は、アンチソルベントの使用を避けることによって、より大きなスケールのPSCを製造するための手順を提供する。
【0014】
本発明は、固体太陽電池を製造するための方法、特に、有機-無機ペロブスカイト又は有機-無機ペロブスカイト膜及び/又は層を含む固体太陽電池を製造する方法であって、金属酸化物層上又は金属酸化物層を覆う任意の層上への有機-無機ペロブスカイト又は有機-無機ペロブスカイト膜及び/又は層の堆積後であって、有機-無機ペロブスカイトを含む増感剤層のアニール前に、真空により処理された有機-無機ペロブスカイト又は有機-無機ペロブスカイト膜及び/又は層を含む固体太陽電池を製造する方法を提供する。
【0015】
本発明の方法は、迅速な溶媒除去によって、ペロブスカイト核生成を促進することを可能にする。これは、ペロブスカイトの結晶化のための核のバーストを生じ、また、膜のディウェッティング(de-wetting)を防止することによりピンホール形成を回避する。このようにして、本発明の方法は、同様のサイズの今日の最良のCdTe及びCIGS薄膜光起電力装置に匹敵するPCEを達成し、ヒステリシスを事実上示さない、1cm2よりも大きな面積の固体太陽電池を製造することを可能にする。さらに、本発明の方法の再現性は優れている。
【0016】
一態様において、本発明は、導電性支持層又は電流コレクタを用意する工程、導電性支持層上に金属酸化物層を適用する工程、金属酸化物層上に有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む少なくとも1つの増感剤層を適用する工程、及び増感剤層上に対電極又は金属電極を設ける工程を含み、
少なくとも1つの増感剤層を適用する上記工程が、1種のペロブスカイト顔料もしくは混合ペロブスカイト顔料の膜又は混合カチオン及びアニオンを有する1種又は2種以上のペロブスカイト顔料の膜の下に有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを設ける工程、金属酸化物である先行層上に堆積された有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜に真空を適用する工程、及び真空により処理された有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜をアニールする工程を含むことを特徴とする、固体太陽電池の製造方法を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、導電性支持層又は電流コレクタ、金属酸化物層、増感剤層、及び対電極又は金属電極を含み、金属酸化物層が、導電性支持層又は電流コレクタを覆っており、少なくとも1つの増感剤層が金属酸化物層と接触しており、対電極又は金属電極が少なくとも1つの増感層を覆っている固体太陽電池であって、少なくとも1つの増感剤層が、均質なピンホールフリーの有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜を含み、当該均質なピンホールフリーの有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜が、金属酸化物層を完全に覆っており、金属酸化物層とともに、連続な金属酸化物層/有機-無機ペロブスカイトナノ複合体を形成しており、当該連続な金属酸化物層/有機-無機ペロブスカイトナノ複合体は、緻密な有機-無機ペロブスカイトキャッピング層によって覆われており、かつ、400~800nmの厚さを有することを特徴とする、固体太陽電池を提供する。
【0018】
一態様において、本発明は、固体太陽電池の製造方法であって、
導電性支持層又は電流コレクタを用意する工程;
導電性支持層上に金属酸化物層を適用する工程;
金属酸化物層上又は金属酸化物層を覆う第1の任意の層上に少なくとも1つの増感剤層を適用する工程、ここで、前記第1の任意の層は電荷輸送層を構成する;
増感剤層上に第2の任意の層を適用する工程、ここで、前記第2の任意の層は、電荷輸送層、保護層、又は両方の層の組み合わせから選ばれる;及び
増感剤層又は第2の任意の層の上に対電極又は金属電極を設ける工程;
を含み、
少なくとも1つの増感剤層が、有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含み、かつ、増感剤層のアニールの前に真空の適用によって処理されることを特徴とする、固体太陽電池の製造方法を提供する。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、導電性支持層又は電流コレクタと、金属酸化物層と、電荷輸送層を構成する第1の任意の層と、増感剤層と、電荷輸送層、保護層又は両方の層の組み合わせから選ばれた第2の任意の層と、対電極又は金属電極とを含み、
金属酸化物層が、導電性支持層又は電流コレクタを覆っており、必要に応じて、第1の任意の層によって覆われており、
少なくとも1つの増感剤層が、金属酸化物層又は第1の任意の層と接触しており、必要に応じて、第2の任意の層により覆われており、
対電極又は前記金属電極が、少なくとも1つの増感層又は第2の任意の層を覆っている固体太陽電池であって、
少なくとも1つの増感剤層が、有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含み、かつ、増感剤層のアニールの前に真空の適用によって処理されたことを特徴とする、固体太陽電池を提供する。
【0020】
本発明のさらなる態様及び好ましい実施形態は、本明細書において以下、及び、添付の従属請求項で詳述される。本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に示す好ましい実施形態の説明から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、真空支援溶液プロセス(VASP)及び当該プロセスなし(CP)の(FA
0.85MA
0.15)
0.95Pb(I
0.85Br
0.15)ペロブスカイト膜間の劇的な差異を明らかにする走査型電子顕微鏡の上面画像(
図1a)及び断面画像(
図1b)を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示したとおりのVASP処理あり及びなしのペロブスカイト膜のXRDグラフを示す。
【
図3】
図3は、VASP処理後であって、熱アニール前のメソポーラスp-TiO
2/FTO基材上に堆積されたばかりのペロブスカイト膜の表面のSEM画像を示す。
【
図4】
図4は、未処理のペロブスカイト膜のUV-可視(vis)及びフォトルミネッセンス(PL)測定結果(黒色トレース(曲線、下側のトレース/曲線))及びVASP処理されたペロブスカイト膜のUV-可視(vis)及びフォトルミネッセンス(PL)測定結果(赤色トレース/曲線又は上側のトレース/曲線)を示す。
図4a及び
図4bは、上記ペロブスカイト膜のUV-visスペクトル及び定常状態PL発光スペクトル(
図4a)及び時間分解PL減衰(
図4b)を示す。
【
図5】
図5は、本発明の方法による光起電力デバイスの構造を示す。
図5aは、平滑で緻密なペロブスカイトキャッピング層(perovskite capping layer)がメソポーラスTiO
2層(mp-TiO
2)を完全に覆っているペロブスカイト太陽電池の構成の概略図を示す。FTO、フッ素ドープ酸化スズ;bl-TiO
2、TiO
2コンパクト層。
図5bは、完成した太陽電池の高分解能断面SEM画像を示す。
【
図6】
図6は、光起電力特性を示す。
図6a)CP(従来のプロセス)又はVASP法により作製された20個のデバイスについてのPV指標。
図6b)標準的なAM1.5太陽照射下で測定された、CP(黒色の曲線/下側の曲線)及びVASP(赤の曲線/上側の曲線)法によって作製されたペロブスカイト膜を使用した最良性能のデバイスについての電流-電圧(J-V)曲線。
図6c)実線:CP法で作製したセルのIPCE曲線(黒色の曲線/下側の曲線)及びVASP法で作製したセルのIPCE曲線(赤色の曲線/上側の曲線)。測定は、太陽光強度5%に対応する白色光バイアスの下で、断続単色光で行った。破線:標準的なAM1.5太陽照射を用いてIPCEスペクトルの重なり積分から計算された短絡光電流密度。
図6d)逆(V
OCからJ
SCまで)(明色の曲線)及び順(J
SCからV
OCまで)(暗色の曲線)の走査方向で50mV・s
-1の走査速度で記録された、VASP法を用いた最良のセルについてのJ-V曲線。2つの電流-電圧曲線から導出された光起電力も挿入図に示されている。
図6e)疑似ワンサン(1sun)照明の下で、d)に示したものと同じ最良のセルについての時間の関数としての安定した電力出力及び最大電力点での光電流密度。
【
図7】
図7は、大気中での有機-無機ペロブスカイト系光起電力デバイスの安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、固体太陽電池の製造方法、特に、その堆積後、かつ、そのアニール前に真空により処理された有機-無機ペロブスカイト又は有機-無機ペロブスカイト膜及び/又は層を含む固体太陽電池の製造方法を提供する。
【0023】
固体太陽電池の製造方法は、
導電性支持層又は電流コレクタを用意する工程;
導電性支持層上に金属酸化物層を適用する工程;
金属酸化物層上又は金属酸化物層を覆う第1の任意の層上に少なくとも1つの増感剤層を適用する工程、ここで、前記第1の任意の層は電荷輸送層を構成する;
増感剤層上に第2の任意の層を適用する工程、ここで、前記第2の任意の層は、電荷輸送層、保護層又は両方の層の組み合わせから選ばれる;及び
増感剤層又は第2の任意の層上に対電極又は金属電極を設ける工程;
を含み、
少なくとも1つの増感剤層が、有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含み、かつ、増感剤のアニール前に真空の適用によって処理されることを特徴とする。
【0024】
一実施形態によれば、本発明の方法は、有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む又はからなる増感剤層を提供する。前記有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、1種のペロブスカイト顔料もしくは混合ペロブスカイト顔料の膜、又は、混合カチオン及びアニオンを有する1種又は2種以上のペロブスカイト顔料の膜の下に設けられる。前記有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトは膜を形成し、この膜は、1種又は2種以上の同じ又は異なる有機-無機ペロブスカイト顔料又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト顔料の1又は2つ以上の層からなっていてもよい。前記有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト、あるいは、有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜は、その堆積後に、真空の適用により処理され、この真空の適用は、真空チャンバ内で行うことができる。この工程により、溶媒を迅速に除去することができる。次に、有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜をアニール処理する。
【0025】
理論に縛られるわけではないが、増感剤層の適用の第1段階の間、すなわち、1種のペロブスカイト顔料もしくは混合ペロブスカイト顔料の膜又は混合カチオン及びアニオンを有する1種又は2種以上のペロブスカイト顔料の膜の下に有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを設ける間に、溶媒を含む溶液中のペロブスカイト前駆体が適用される。増感剤層の適用の第2段階の間に、真空処理をペロブスカイト前駆体の堆積膜に適用して、制御された様式で溶媒を除去し、層構造を有するペロブスカイト中間体に相当するルイス酸塩基タイプの付加物を含む繊維状材料の急速な結晶化を促進する。増感剤層の適用の第3段階におけるその後のアニールの際に、繊維状ペロブスカイト中間体は、ペロブスカイト中間体中に存在する弱塩基の放出によって表面エネルギーが最低限になるオストワルド熟成プロセスによって再整列及び合着し、増感剤の均質な膜又はコーティング、すなわち、大きな粒子及び最適な結晶配向を有する有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化ペロブスカイトをもたらす。
【0026】
「ペロブスカイト」という用語は、本明細書において、「ペロブスカイト構造」を指し、特にペロブスカイト材料CaTiO3を意味するものではない。本明細書において、「ペロブスカイト」は、チタン酸カルシウムと同じタイプの結晶構造を有し、2価のカチオンが2つの別個の1価のカチオンで置換された材料でできた任意の材料を包含し、好ましくは、かかる材料に関する。ペロブスカイト構造は、一般的化学量論的組成AMX3(式中、「A」及び「M」はカチオンであり、「X」はアニオンである)を有する。「A」及び「M」カチオンは、種々の電荷を有することができ、元のペロブスカイト鉱物(CaTiO3)において、Aカチオンは2価であり、Mカチオンは4価である。本発明において、上記のペロブスカイトの式は、本明細書の他の箇所に示した式に従って、同じであるか又は異なっていることができる3つ又は4つのアニオン、及び/又は1つ又は2つの有機カチオン、及び/又は2又は3の正電荷を有する金属原子を有する構造を包含する。
【0027】
前記少なくとも1つの増感剤層又は増感剤は有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトの1又は2以上の層を含むことができる。前記デバイスにおいて有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトの最上層は、電荷輸送材料を含む第2の任意の層により被覆される。好ましくは、前記電荷輸送材料は正孔輸送材料である。
【0028】
一実施形態において、増感剤層は、下記式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)及び/又は(Ig)のペロブスカイト構造のいずれか1つに従う有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む:
AA’MX4 (I)
AMX3 (Ia)
AA’N2/3X4 (Ib)
AN2/3X3 (Ic)
BN2/3X4 (Id)
BMX4 (Ie)
AA’A1MΧ3 (If)
AA1MΧ3 (Ig)
ここで、
A及びA’は、窒素含有複素環及び環系を包含する、第1級、第2級、第3級又は第4級有機アンモニウム化合物から独立に選ばれた有機一価カチオンであり、A及びA’は、独立に、1個~60個の炭素及び1個~20個のヘテロ原子を有し;
A1は、Cs+、Rb+及びK+から選ばれた無機カチオン、好ましくはCs+であり;
Bは、1個~60個の炭素及び2個~20個のヘテロ原子を有し、2個の正電荷を帯びた窒素原子を有する第1級、第2級、第3級又は第4級有機アンモニウム化合物から選ばれた有機二価カチオンであり;
Mは、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+、Yb2+、[SniPb(1-i)]
2+
、[SnjGe(1-j)]
2+
、及び[PbkGe(1-k)]
2+
から選ばれ、ここで、i、j及びkは0.0~1.0の数であり;
Nは、Bi3+及びSb3+からなる群から選ばれ;
Xは、Cl-、Br-、I-、NCS-、CN-及びNCO-から、[I(3-m)Clm]-、[I(3-n)Brn]-及び[Br(3-u)Clu]-(m、n及びuは0.0~3.0の数である)から、並びにCl-、Br-及びI-から選ばれた2種のアニオンの組み合わせから、独立に選ばれる。
【0029】
特に、3つ又は4つのXは同じであっても異なっていてもよい。例えば、AMX3(式Ia)は下記式(Ia’)として表すことができる:
AMXiXiiXiii (Ia’)
ここで、Xi、Xii及びXiiiは、Cl-、Br-、I-、NCS-、CN-及びNCO-から、[I(3-m)Clm]-、[I(3-n)Brn]-及び[Br(3-u)Clu]-(m、n及びuは0.0~3.0の数である)から、並びにCl-、Br-及びI-から選ばれた2種のアニオンの組み合わせから、好ましくはハライド(Cl-、Br-、I-)から独立に選ばれ、A及びMは、本明細書の他の箇所で定義したとおりである。そのため、Xi、Xii及びXiiiは、この場合、同じであっても異なっていてもよい。
【0030】
好ましくは、式(Ia)及び(Ic)におけるXi、Xii及びXiii、あるいは式(I)、(Ib)、(Id)又は(Ie)におけるXi、Xii、Xiii及びXivが、異なるアニオンXを含む場合、2種を超える異なるアニオンは存在しない。例えば、Xi及びXiiは同じであり、XiiiはXi及びXiiと異なるアニオンである。
【0031】
式(If)又は(Ig)のペロブスカイト構造によれば、A及びA’は、メチルアンモニウムカチオン、ホルムアミジニウムカチオン、ヨードカルバミミドイルカチオン又は前記カチオンの組み合わせから独立に選ばれる。
【0032】
好ましい一実施形態によれば、前記有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト層は、式(Ih)~(Im)のいずれか1つに従うペロブスカイト構造を含む:
APbX3 (Ih)
ASnX3 (Ii)
ABiX4 (Ij)
AA’PbX4 (Ik)
AA’SnX4 (IIj)
BPbX4 (Il)
BSnX4 (Im)
ここで、A、A’、B及びXは、本明細書において上で定義したとおりである。好ましくは、Xは、好ましくはCl-、Br-及びI-から選ばれ、最も好ましくは、Xは、I-、又はBr-とI-の混合物である。
【0033】
有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む少なくとも1つの増感剤層は、式(Ih)~(Im)、より好ましくは式(Ih)及び/又は(Ii)のいずれか1つに従うペロブスカイト構造を含むことができる。
【0034】
一実施形態において、A及びA’は、下記式(20)~(28)の化合物のいずれか1つから独立に選ばれた1価のカチオンである:
【化1】
【0035】
ここで、R7、R8、R9及びR10は、0~15個のヘテロ原子を含むC1-C15有機置換基から独立に選ばれる。
【0036】
前記C1-C15有機置換基の一実施形態では、前記置換基中の任意の1つ、いくつか又は全ての水素がハロゲンにより置換されていてもよく、前記有機置換基は15個以下のN、S又はOのヘテロ原子を含み、ここで、化合物(20)~(28)のいずれにおいても、存在する置換基(該当する場合、R7、R8、R9及びR10)のうちの2つ又は3つ以上が互いに共有結合的に連結して置換又は非置換の環又は環系を形成していてもよい。好ましくは、前記C1-C15有機置換基の複数の原子の鎖において、任意のヘテロ原子が少なくとも1個の炭素原子に連結していてもよい。好ましくは、隣接するヘテロ原子は存在せず、及び/又は、ヘテロ原子-ヘテロ原子結合は0~15個のヘテロ原子を含む前記C1-C15有機置換基中に存在しない。ヘテロ原子はN、O及び/又はSから選ぶことができる。
【0037】
一実施形態では、R7、R8、R9及びR10は、C1-C15脂肪族及びC4-C15芳香族又は複素芳香族置換基から独立に選ばれ、前記置換基中の任意の1つ、いくつかの又はすべての水素がハロゲンにより置換されていてもよく、ここで、化合物(20)~(28)のいずれにおいても、存在する置換基のうちの2つ又は3つ以上が互いに共有結合的に連結して置換又は非置換の環又は環系を形成していてもよい。
【0038】
好ましい一実施形態では、有機-無機ペロブスカイトは、式(I)、(Ia)、(If)又は(Ig)の化合物から選ばれる。
【0039】
一実施形態では、Bは、下記の式(49)及び(50)の化合物のいずれか1つから選ばれた2価カチオンである:
【0040】
【0041】
ここで、式(29)の化合物において、Gは、1~10個の炭素と、N、S及び/又はOから選ばれる0~5個のヘテロ原子とを有する有機リンカー構造であり、前記G中の1又は2個以上の水素原子はハロゲンにより置換されていてもよく;
R11及びR12は、式(20)~(28)のいずれか1つの化合物から独立に選ばれ;
式(30)の化合物において、2つの正電荷を帯びた窒素原子を含む円は、4~15個の炭素原子及び2~7個のヘテロ原子を含む、又は4~10個の炭素原子及び2~5個のヘテロ原子を含む、置換又は非置換の芳香族環又は環系を表し、前記窒素原子は前記環又は環系の環ヘテロ原子であり、前記ヘテロ原子の残りは、N、O及びSから独立に選ばれることができ、R13及びR14は、Hから、及び式(20)~(28)のいずれか1つの化合物から独立に選ばれる。前記2~7個のヘテロ原子に加えて、又は、前記2~7個のヘテロ原子とは独立に、水素原子を全部又は部分的に置換したハロゲン原子が存在していてもよい。
【0042】
好ましくは、G中の炭素の数が少ない場合、ヘテロ原子の数はその炭素数より少ない。好ましくは、式(30)の環構造において、環ヘテロ原子の数は炭素原子数より少ない。一実施形態では、Gは炭素数1~10の脂肪族、芳香族又は複素芳香族リンカー構造である。
【0043】
一実施形態では、R7、R8、R9及びR10は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C4-C10ヘテロアリール及びC6-C10アリールから独立に選ばれ、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは、それらが3個以上の炭素を含む場合、直鎖状、分岐状又は環状であることができ、前記ヘテロアリール及びアリールは置換されていても置換されていなくてもよく、R7、R8、R9及びR10中の幾つかの又は全ての水素がハロゲンにより置換されていてもよい。
【0044】
一実施形態では、R7、R8、R9及びR10は、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C4-C8ヘテロアリール及びC6-C8アリールから独立に選ばれ、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは、それらが3個以上の炭素を含む場合、直鎖状、分岐状又は環状であることができ、前記ヘテロアリール及びアリールは置換されていても置換されていなくてもよく、R7、R8、R9及びR10中の幾つかの又は全ての水素がハロゲンにより置換されていてもよい。
【0045】
一実施形態では、R7、R8、R9及びR10は、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C4-C6ヘテロアリール及びC6アリールから独立に選ばれ、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは、それらが3個以上の炭素を含む場合、直鎖状、分岐状又は環状であることができ、前記ヘテロアリール及びアリールは置換されていても置換されていなくてもよく、R7、R8、R9及びR10中の幾つかの又は全ての水素がハロゲンにより置換されていてもよい。
【0046】
一実施形態では、R7、R8、R9及びR10は、C1-C4アルキル、C2-C4アルケニル及びC2-C4アルキニルから独立に選ばれ、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは、それらが3個以上の炭素を含む場合、直鎖状、分岐状又は環状であることができ、R7、R8、R9及びR10中の幾つかの又は全ての水素がハロゲンにより置換されていてもよい。
【0047】
一実施形態では、R7、R8、R9及びR10は、C1-C3、好ましくはC1-C2アルキル、C2-C3、好ましくはC2アルケニル、及びC2-C3、好ましくはC2アルキニルから独立に選ばれ、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは、それらが3個以上の炭素を含む場合、直鎖状、分岐状又は環状であることができ、R7、R8、R9及びR10中の幾つかの又は全ての水素がハロゲンにより置換されていてもよい。
【0048】
一実施形態では、R7、R8、R9及びR10は、C1-C4、より好ましくはC1-C3アルキル、さらに好ましくはC1-C2アルキルである。最も好ましくは、R7、R8、R9及びR10はメチルである。この場合にも、前記アルキルは完全に又は部分的にハロゲン化されていてもよい。
【0049】
一実施形態では、A、A’及びBは、それぞれ、1つ、2つ又は3つ以上の窒素ヘテロ原子を含む置換及び非置換C5~C6環から選ばれた1価(A及びA’の場合)又は2価(Bの場合)のカチオンであり、前記窒素原子のうちの1つ(A及びA’の場合)又は2つ(Bの場合)は正電荷を有する。かかる環の置換基は、ハロゲンから、及び、先に定義したC1-C4アルキル、C2-C4アルケニル及びC2-C4アルキニルから、好ましくは先に定義したC1-C3アルキル、C3アルケニル及びC3アルキニルから選ぶことができる。前記環は、さらにヘテロ原子を含んでいてもよく、当該ヘテロ原子はO、N及びSから選ぶことができる。2つの正電荷を帯びた環窒素原子を含む2価の有機カチオンBは、例えば上記式(30)の化合物によって例示される。かかる環は芳香族又は脂肪族であることができる。
【0050】
A、A’及びBは、2つ又は3つ以上の環を含む環系を構成していてもよく、それらの環系の少なくとも1つは、先に定義したような置換及び非置換C5-C6環である。式(30)の化合物中の楕円形に描いた円は、例えば、2つ又は3つ以上の環、しかし好ましくは2つの環を含む環系を表していてもよい。また、A及び/又はA’が2つの環を含む場合、さらなる環ヘテロ原子が存在していてもよく、当該環ヘテロ原子は、例えば、好ましくは例えば電荷を帯びていない。
【0051】
しかし、一実施形態では、有機カチオンA、A’及びBは、1つ(A、A’の場合)の、2つ(Bの場合)又はそれ以上の窒素原子を含むが、O又はSを含まないか、カチオンA及び/又はB中の1つ又は2つ以上の水素原子を置換し得るハロゲンを除いて、任意の他のヘテロ原子を有さない。
【0052】
A及びA’は、好ましくは、1つの正電荷を帯びた窒素原子を含む。Bは、好ましくは2つの正電荷を帯びた窒素原子を含む。
【0053】
A、A’及びBは、式(31)及び(32)(A、A’の場合)及び下記(33)~(35)(Bの場合)の例示的な環又は環系から選ぶことができる:
【0054】
【0055】
【0056】
ここで、R7及びR8は、先に定義したとおりの置換基から選ばれ、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は、H、ハロゲン及びR7、R8、R9及びR10について先に定義したとおりの置換基から独立に選ばれる。好ましくは、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は、H及びハロゲンから選ばれ、最も好ましくは、Hである。
【0057】
有機カチオンA、A’及びBにおいて、水素原子は、F、Cl、I及びBr等のハロゲン、好ましくはF又はClによって置換されていてもよい。かかる置換は、1又は複数のペロブスカイト層の吸湿特性を低下させることが期待され、したがって本明細書に記載の目的に対して1つの有用な選択肢を提供することができる。
【0058】
好ましい一実施形態では、A及びA’は、式(20)及び/又は式(28)の有機カチオンから独立に選ばれる。
【0059】
好ましい一実施形態では、金属Mは、好ましくは、Sn2+及びPb2+から選ばれ、好ましくはPb2+である。好ましい実施形態では、NはSb3+である。
【0060】
好ましい一実施形態では、3つ又は4つのXが、Cl-、Br-及びI-から独立に選ばれる。
【0061】
一実施形態では、本発明の方法は、10nm~800nm、15nm~400nm又は100nm~300nmの厚さを有する増感剤層を提供する。増感剤層は、20nm~350nm又は60nm~350nm、好ましくは250nm~350nmの厚さを有する。好ましくは、増感剤層は、有機-無機ペロブスカイトを含むか、又は有機-無機ペロブスカイトからなり、先に定義したとおりの厚さ、すなわち、10nm~800nm、15nm~400nm、100nm~300nm、20nm~350nm又は60nm~350nm、好ましくは250nm~350nmの厚さを有する。
【0062】
さらなる実施形態では、本発明の方法は、増感剤のアニール前に真空によって増感剤層を処理することを備える。真空の圧力は、1~30Pa、10~20Paの範囲内、好ましくは20Paである。
【0063】
別の実施形態において、真空の適用は、1~20秒間、1~10秒間、好ましくは10秒間続く。
【0064】
金属酸化物層により覆われた導電性支持層又は電流コレクタ、又は第1の任意の層(存在する場合)により覆われ、さらに有機-無機ペロブスカイトを含む増感剤層により覆われた金属酸化物層は、アニールを行うために、先に定義した条件の真空チャンバ内に配置され、次いで、加熱される。
【0065】
電流コレクタ又は導電性支持体層を設ける工程及び/又は金属酸化物を適用する工程は、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、インクジェット印刷、及びメニスカスコーティングから選ばれた堆積法により実施される。
【0066】
電流コレクタ又は導電性層は、≦30nm、≦50nm、≦70nm、≦90nm、又は≦110nm、好ましくは≦70nmの厚さを有する。
【0067】
真空処理された増感剤層のアニールは、80℃~140℃の温度で、好ましくは100℃で、5~70分間、好ましくは10~60分間実施される。
【0068】
本発明の方法の別の実施形態によれば、有機-無機ペロブスカイトを含む増感剤層を適用する工程は、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、及び前記堆積方法の組み合わせから選ばれる堆積方法により実施される。好ましくは、堆積方法はスピンコーティングである。有機-無機ペロブスカイト前駆体は、DMSO及びジヒドロフラン-2(3H)-オンを含む混合溶媒中の溶液の形態であってもよく、スピンコーティングによって塗布されてもよい。
【0069】
溶液からの堆積方法には、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、及びインクジェット印刷法が含まれる。もし、溶液、分散体、コロイド、結晶又は塩が前記有機-無機ペロブスカイトを含む場合には、有機-無機ペロブスカイトである増感剤は、溶液、分散体、コロイド、結晶又は塩からの堆積方法のいずれか1つにより1ステッププロセスで適用することもできる。有機-無機ペロブスカイトのさらなる適用方法は、欧州特許第13166720.6号に記載されている。
【0070】
一実施形態によれば、本発明の方法は、さらに、少なくとも1つの増感剤層を適用する前に、電荷輸送層を構成する第1の層を金属酸化物層上に適用する工程を含み、前記第1の層は、少なくとも1つの増感剤層により覆われ、かつ、その上に有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜が堆積される先行層である。この第1の層は任意の層であり、本出願では第1の任意の層として定義される。
【0071】
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つの増感剤層又は増感剤層は、金属酸化物層上に直接適用される。金属酸化物層と導電性支持層との間に電荷輸送層は存在しない。
【0072】
電荷輸送層は、正孔輸送材料又は電子輸送材料から選ぶことができる電荷輸送材料を含む。
【0073】
電流コレクタの導電性支持層上の金属酸化物層を覆う第1の任意の層は、電子電荷輸送材料を含む任意の電荷輸送層である。
【0074】
電子輸送材料は、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、(C60-Ih)[5,6]フラーレン(C60)、(C70-D5h)[5,6]フラーレン(C70)、[6,6]-フェニルC71酪酸メチルエステル(PC70BM)、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)、1,3,5-トリ(フェニル-2-ベンズイミダゾリル)-ベンゼン(TPBI)、好ましくは、PCBM、HAT-CN、C60、C70、PC70BM、及び金属酸化物から選ぶことができる。金属酸化物は、Ti、Sn、Cs、Fe、Zn、W、Nb、SrTi、Si、Ti、Al、Cr、Sn、Mg、Mn、Zr、Ni及びCuからなる群から選ばれた金属の酸化物である。
【0075】
さらなる実施形態では、本発明の方法は、第2の層を増感剤層上に適用する工程を含み、前記第2の層は、電荷輸送層、保護層又は両方の層の組み合わせから選ばれ、対電極又は金属電極が前記第2の層を覆う。この第2層は任意の層であり、この任意の層は、本願では第2の任意の層としても定義される。
【0076】
電荷輸送層は、電子輸送材料を含み、≦10nm、≦20nm、≦50nm、好ましくは≦10nmの厚さを有する。
【0077】
別の実施形態によれば、第2の任意の層は、正孔輸送材料を含む電荷輸送層である。
【0078】
本発明の方法の一実施形態において、正孔輸送材料である電荷輸送材料を含む第2の任意の層の適用又は堆積は、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、インクジェット印刷、及びメニスカスから選ばれた溶液からの堆積法によって、好ましくはメニスカスコーティングによって、実施される。適用される溶液は、1種又は2種以上の正孔輸送材料を含むことができ、あるいは、2つ又は3つ以上の溶液が、1ステッププロセス又は2つ以上の逐次ステップのプロセスのいずれかで混合及び適用され、有機-無機増感剤を含む又はからなる増感剤層上に膜を形成する。
【0079】
さらなる態様によれば、本発明は、導電性支持層又は電流コレクタと、金属酸化物層と、電荷輸送層を構成する第1の任意の層と、増感剤層と、電荷輸送層、保護層又は両方の層の組み合わせから選ばれた第2の任意の層と、対電極又は金属電極とを含む固体太陽電池であって、
金属酸化物層が、導電性支持層又は電流コレクタを覆い、必要に応じて第1の任意の層によって覆われており;
少なくとも1つの増感剤層が、金属酸化物層又は第1の任意の層と接触しており、必要に応じて、第2の任意の層によって覆われており;
対電極又は前記金属電極が、少なくとも1つの増感層又は第2の任意の層を覆っており、そして
少なくとも1つの増感剤層が、有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含み、増感剤層のアニール前に真空の適用によって処理されたことを特徴とする固体太陽電池を提供する。
【0080】
本明細書で述べるように、少なくとも1つの増感剤層は金属酸化物層上に直接適用することができる。なぜなら、第1の層は任意の層であるからである。
【0081】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの増感剤層は、均質なピンホールのない有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜を含み、当該均質なピンホールのない有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜は、金属酸化物層を完全に覆って、金属酸化物層とともに、緻密な有機-無機ペロブスカイトキャッピング層によって覆われ、400~800nmの厚さを有する連続な金属酸化物層/有機-無機ペロブスカイトナノ複合体を形成している。ここで、真空及びアニールの処理後に得られる増感剤(ペロブスカイト)を具体的に述べる「膜」という用語は、「コーティング」を意味し、真空及びアニールの処理前に用意されるペロブスカイト顔料膜と混同してはならない。
【0082】
一実施形態では、増感剤層は、有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含み、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング及び前記堆積方法の組み合わせから選ばれたいずれかの堆積方法によって適用される。増感剤層は、本明細書で特定されるさらなる方法によって堆積されてもよい。増感剤層は、11又は2つ以上の層を形成する1種又は2種以上の有機-無機ペロブスカイト顔料又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト顔料を含むことができる。これは有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜を構成する。
【0083】
さらなる実施形態によれば、本発明の固体太陽電池は、電荷輸送層である第2の任意の層、好ましくは正孔輸送材料を含む電荷輸送層を含む。
【0084】
「正孔輸送材料(hole transport material)」、「正孔輸送性材料(hole transporting material)」、「有機正孔輸送材料」及び「無機正孔輸送材料」などは、当該材料又は組成物中の電子又は正孔の移動(電子運動)によって電荷が輸送される任意の材料又は組成物を意味する。したがって、「正孔輸送材料」は導電性材料である。かかる正孔輸送材料等は、電解質とは異なる。後者では、電荷は分子の拡散によって輸送される。
【0085】
正孔輸送材料は、好ましくは、有機正孔輸送材料及び無機正孔輸送材料から選ぶことができる。
【0086】
当業者は、本明細書の他の箇所に開示された導電性ポリマーのような、多種多様な有機正孔輸送材料を認識している。例えば、国際公開第2007107961号には、本発明の目的のために使用することができる液体及び非液体の有機正孔導体が開示されている。また、欧州特許第1160888号及び他の刊行物には、有機正孔輸送材料(「有機導電剤」)が開示されている。
【0087】
一実施形態では、正孔輸送材料は、トリフェニルアミン、カルバゾール、N,N,(ジフェニル)-N’,N’-ジ-(アルキルフェニル)-4,4’-ビフェニルジアミン、(pTPDs)、ジフェニルヒドラゾン、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](ポリTPD)、電子ドナー基及び/又はアクセプター基で置換されたポリTPD、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-alt-N-(4-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン(TFB)、2,2’,7,7’-テトラキス-N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン-9,9’-スピロビフルオレン)(スピロ(spiro)-OMeTAD)、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン(TPD)から選ばれる。
【0088】
さらなるイオン性化合物が有機正孔輸送材料中に存在してもよく、前記イオン性化合物は、TBAPF6、NaCF3SO3、LiCF3SO3、LiClO4及びLi[(CF3SO2)2N]から選ばれる。有機正孔輸送材料中に存在し得る他の化合物は、例えば、アミン、4-tert-ブチルピリジン、4-ノニル-ピリジン、イミダゾール、N-メチルベンゾイミダゾールである。
【0089】
正孔輸送材料は無機正孔輸送材料であってもよい。多種多様な無機正孔輸送材料が市販されている。無機正孔輸送材料の非限定的な例は、Cu2O、CuNCS、CuI、MO3及びWO3である。
【0090】
固体太陽電池は、第2の任意の層として保護層を含むことができる。この保護層は、Mg酸化物、Hf酸化物、Ga酸化物、In酸化物、Nb酸化物、Ti酸化物、Ta酸化物、Y酸化物及びZr酸化物から選ばれた材料を含む金属酸化物層であることができる。この層の厚さは、1.5nm以下、好ましくは1nm以下である。前記金属酸化物層は、特に、例えばペロブスカイト材料との光生成電子の再結合を低減又は防止する「バッファ層」である。
【0091】
さらなる実施形態によれば、導電性支持層又は電流コレクタは、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO-Ga2O3、ZnO-Al2O3、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、SrGeO3及び酸化亜鉛から選ばれた材料を含む。
【0092】
材料は、好ましくは、例えばプラスチック又はガラスなどの透明な基材上にコーティングされる。この場合、プラスチック又はガラスは、層の支持構造を提供し、引用した導電性材料は、導電性を提供する。かかる支持層は、一般的に、それぞれ、導電性ガラス及び導電性プラスチックとして知られており、したがって、本発明に従う好ましい導電性支持層である。導電性支持層は、導電性ガラス又は導電性プラスチックを含むことができる。
【0093】
電流コレクタは、例えばチタン又は亜鉛箔などの導電性金属箔により提供することができる。不透明な導電性材料は、特にデバイスによって捕捉される光に曝されないデバイスの側で電流コレクタとして使用され得る。
【0094】
一実施形態では、金属酸化物層が導電性支持層に適用される。金属酸化物層は、Si、TiO2、SnO2、Fe2O3、ZnO、WO3、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、SrTiO3、GaP、InP、GaAs、CuInS2、及びCuInSe2から選ばれた金属酸化物を含む。金属酸化物層は、導電性支持層の表面を増加させる足場構造を形成することができる。
【0095】
さらなる態様によると、本発明の固体太陽電池は導電性層を含み、当該導電性層は、電荷輸送材料を含む第2の任意の層を覆っており、かつ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート):グラフェンナノコンポジット(PEDOT:PSS:グラフェン)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、及びスルホン化ポリ(ジフェニルアミン)(SPDPA)、好ましくはPEDOT:PSS、PEDOT:PSS:グラフェン及びPVK、より好ましくはPEDOT:PSSから選ばれた1又は2種以上の導電性材料を含む。導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリベンゼン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリプロピレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン、及び前述のものの2種以上の組み合わせから選ぶこともできる。本発明の導電性ポリマーは、好ましくは、水性分散液中の上記ポリマーから選ばれる。
【0096】
導電性層を適用する工程は、1種又は2種以上の導電性材料の1又は2つ以上の溶液から、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、及びインクジェット印刷から選ばれた堆積法、好ましくはスピンコーティングによって、実施することができる。溶液は、1種又は2種以上の導電性材料を含むことができ、あるいは、2つ又は3つ以上の溶液が、1ステッププロセスで混合及び適用されて正孔コレクタ上に膜を形成するか、あるいは、2つ以上の逐次ステップを含むプロセスで適用される。
【0097】
導電性層を適用する工程は、本明細書で定義されるような物理蒸着法群から及び/又は化学蒸着法から選ばれた方法によって実施される。
【0098】
本発明の太陽電池は、好ましくは、対電極を含む。対電極は、一般的に、デバイスの内側に向かって電子を提供する及び/又は正孔を埋めるのに適切な触媒的に活性な材料を含む。したがって、対電極は、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、In、Ru、Pd、Rh、Ir、Os、C、導電性ポリマー及び前述のものの2種以上の組み合わせから選ばれた1種又は2種以上の材料を含むことができる。
【0099】
さらなる実施形態では、固体太陽電池は、>0.9cm2の開口面積、好ましくは≧1.0cm2の開口面積を有する。
【0100】
電流コレクタは、デバイスの内側に向かって電子を提供する及び/又は正孔を埋めるのに適切な触媒的に活性な材料を含むことができる。電流コレクタは、金属又は導体を含んでいてもよいし、あるいは、金属層又は導体層であってもよい。電流コレクタは、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、In、Ru、Pd、Rh、Ir、Os、及びCから選ばれた金属、又はカーボンナノチューブ、グラフェン及びグラフェン酸化物、導電性ポリマー及び前述のものの2種以上の組み合わせから選ばれた導体である1種又は2種以上の材料を含むことができる。導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリベンゼン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリプロピレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン、及び前述のものの2種以上の組み合わせを含むポリマーから選ぶことができる。好ましくは、電流コレクタは、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、In、Ru、Pd、Rh、Ir、Osから選ばれた金属、好ましくはAuを含む。電流コレクタは、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO-Ga2O3、ZnO-Al2O3、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、SrGeO3及び酸化亜鉛から選ばれた透明材料である導体を含むことができる。
【0101】
電流コレクタは外部回路に接続される。デバイスの第1の面に関して、例えば導電性ガラス又はプラスチックなどの導電性支持体は、第2の面にある対向電極に電気的に接続されてもよい。
【0102】
以下、本発明を実施例により説明する。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0103】
実施例1:本発明の固体太陽電池の製造及び光起電力特性評価
真空フラッシュ支援溶液プロセス(VASP)による固体太陽電池の作製
予め清浄にしたFTO(NSG)上に、7mlの無水イソプロパノール中の0.6mlのチタンジイソプロポキシド及び0.4mlのビス(アセチルアセトネート)の前駆体溶液から、450℃で、搬送ガスとしてO2を使用して、噴霧熱分解によって、30nmのTiO2ブロッキング層を堆積させた。エタノール中の希釈30nm粒子ペースト(Dyesol)から、勾配2000rpm・s-1で速度5000rpmで10秒間のスピンコーティングにより基材上に150nmのメソポーラスTiO2をコーティングし、次に、基材を500℃で20分間焼結した。TiO2(Dyesolペースト)とエタノールの重量比は6:1であった。ペロブスカイト膜が、スピンコーティングによって、TiO2基材上に堆積された。[FAI)0.81(PbI2)0.85(MAPbBr3)0.15前駆体溶液を、グローブボックス内で、DMF、GBL及びDMSOの混合溶媒中の1.35MのPb2+(PbI2及びPbBr2)溶液から調製した。GBL/DMFのモル比は1.1:1であり、Pb2+/[(DMSO)0.9(チオウレア)0.1]のモル比は1:1であった。スピンコーティング操作は、大気中で、第1回目は、1000rpmで28秒間であり、勾配は200rpm・s-1であり、第2回目は、4000rpmで18秒間であり、勾配は2000rpm・s-1であった。真空処理実験のために、基材をガスポンプ系に接続している試料チャンバに入れた。試料チャンバと低圧系とを接続するバルブを開き、20Paで10秒間維持した後、直ちに試料チャンバ内に大気を完全に導入した。
次に、基材をホットプレート上に100℃で1時間置いた。室温に冷却した後、スピロ-OMeTADの正孔輸送材料を、スピンコーティングにより上部に堆積させた。スピンコーティング操作は、乾燥空気流グローブボックス内で行い、第1回目は、1500rpmで10秒間であり、勾配は200rpm・s-1であり、第2回目は、4500rpmで30秒間であり、勾配は2000rpm・s-1であった。スピロ-OMeTAD溶液は、クロロベンゼン中に65mMの濃度でスピロ-OMeTADを溶解させ、アセトニトリル中のストック溶液から30mMのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを添加し、200mMのtert-ブチルピリジンを添加して調製した。最後に、電極をパターン化するために、シャドウマスクを用いて熱蒸着により80nmの金を堆積させた。
【0104】
光起電力特性
電流-電圧特性は、生成した光電流をデジタルソースメーター(Keithley Model 2400)により記録しながら、電池に外部電位バイアスを印加することによって記録した。光源は、ランプの発光スペクトルをAM 1.5G標準に適合させるためにSchott K113 Tempax太陽光フィルター(Praezisions Glas & Optik GmbH)を備えた450Wキセノンランプ(Oriel)であった。各測定の前に、正確な光強度を、赤外カットオフフィルター(KG-3、Schott)を備えた較正済Si対照標準ダイオードを用いて測定した。測定のために1cm2のマスクを適用した。
【0105】
X線回折(XRD)スペクトルは、セラミック管放射及びRTMS X’Celerator(PANalytical)を備えたX’Pert MPD PRO(PANalytical)により記録した。測定は、BRAGG-BRENTANOジオメトリで行った。試料を、さらに変更することなく取り付け、自動発散スリット(10mm)及びビームマスク(10mm)を膜の寸法に調整した。270.57秒・度-1の取得時間のために0.008°のステップサイズを選択した。全てのX線粉末回折図にベースライン補正を適用して、FTOガラス及びアナターゼ基材に由来するブロードな特徴を補償した。
【0106】
走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、高分解能走査型電子顕微鏡(ZEISS Merlin)を使用して記録した。
【0107】
吸収スペクトルは、PerkinElmer UV-Vis分光光度計により測定した。積分球を用いた透過率測定から吸光度を求めた。我々は、同じ会社の積分球システム“60nm InGaAs積分球”で“PerkinElmer Lambda 950nm”セットアップを使用した。光源は重水素ランプ及びタングステンハロゲンランプであり、信号はPeltier制御PbS検出器を備えたグリッドレス光電子増倍管によって検出した。UV WinLabソフトウェアは、データの処理を可能にする。
【0108】
原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、平方インチの膜表面にわたって分布するそれぞれ10×10マイクロメートルの大きさの9個のスポットの表面粗さを測定した。
【0109】
フォトルミネッセンス(PL)及び時間分解フォトルミネッセンス(TRPL)実験
PLスペクトルは、メソポーラスTiO2上に堆積されたペロブスカイト試料を、標準450WキセノンCWランプにより460nmで励起することによって記録した。シグナルを分光蛍光光度計(Horiba Jobin Yvon Technology製のFluorolog,FL1065)により記録し、ソフトウェアFluorEssenceにより分析した。PL減衰実験は、406nmのパルス光源(Horibaの製NanoLED 402-LH、パルス幅<200ps、11pJ/パルス、約1mm2のスポットサイズ)を用いて、同じFluorologにより同じ試料に対して行い、シグナルを時間相関単一光子計数(Time Correlated Single Photon Counting)(TCSPC)技術によって記録した。試料は、周囲条件下でペロブスカイト側から励起した。
【0110】
実施例2:本発明の有機-無機系太陽電池
ここでは、急速な溶媒除去によって核生成を促進するために、溶液からペロブスカイト膜を堆積する間に、真空フラッシュ工程を初めて適用することによって、大面積PSC用の高品質ペロブスカイト膜を製造する簡単で有効な方法を示す。これは、ペロブスカイト膜を堆積させるため又は膜の熱アニールの間に反応生成物、すなわち塩化メチルアンモニウムを昇華により除去するために真空法を用いた以前の研究とは異なる。この方法を使用することによって、1cm2のデバイスに対して19.6%の認証PCEが達成された。
【0111】
VASP法は、PSCの悪名高い問題であるJ-V曲線のヒステリシスをなくすことも可能にする。
【0112】
本発明の例示の固体太陽電池は、組成[FA085MA(015)PbI0.85Br0.15]のホルムアミジニウム(FA)及びメチルアンモニウム(MA)混合カチオン/混合アニオンペロブスカイトを含む。本発明の方法は、また、セシウム(Cs)混合ペロブスカイト[FAxCS(1-x)PbX3]配合物を含む固体太陽電池にも有効である。
【0113】
本発明の方法(VASP)は、産業レベルに容易に拡張可能である。これは、ペロブスカイト型太陽電池を大規模に実用化するための新たなベンチマークを提供する。
【0114】
VASP法(本発明の方法)によるペロブスカイト膜の主な製造工程は以下のとおりである。
ペロブスカイト前駆体溶液を、文献(Burschka, J. et al. Sequential deposition as a route to high-performance perovskite-sensitized solar cells, Nature 499, 316 (2013))に記載されているように作製されたメソポーラスTiO2膜の上に、最初にスピンコートした。続いて、残留溶媒の大部分を除去することによってペロブスカイト核形成を促進するために、膜を真空チャンバ内に数秒間置いた。短い真空処理の間に、膜の色がわずかに黒ずんだ。次に、これを100℃で10分間アニールして、滑らかで光沢のある高結晶性のペロブスカイト膜を得た。その後、正孔輸送層(HTL)をペロブスカイト膜上にスピンコートした。我々は、tert-ブチルピリジン(t-BP)及びリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Li TFSI)を添加剤として含む2,29,7,79-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)を使用した。最後に、80nmの金の薄い層を正孔輸送層上に蒸着して、完全なデバイスを作製した。
【0115】
図1は、真空フラッシュあり(
図1a、b)及びなし(
図1c、d)の(FA
0.85MA
0.15)
0.95Pb(I
0.85Br
0.15)ペロブスカイト膜の劇的な違いを明らかにする走査型電子顕微鏡画像を示す。従来の単一ステップ溶液堆積(従来のプロセス、CP)により作製された膜の上面図は、メソポーラスTiO
2がペロブスカイトにより完全に被覆されていないことを示している。大きい顔料粒子は、どうやらペロブスカイトの形成中の膜の濡れによる多数のピンホールによって囲まれた島を形成する。対照的に、VASP法はピンホールのない均質な膜を生じ、TiO
2はペロブスカイト粒子によって完全に被覆されており、それらのサイズは400nm~1000nmである。断面SEM画像から、VASPにかけられた膜とかけられなかった膜との間の形態上の差異で顕著な差異が確認される。VASP処理なしでは、TiO
2の大部分が露出したままであり、他の部分が覆われている。VASPを適用した場合には、ペロブスカイトはメソポーラスTiO
2膜に十分に浸透し、連続的なTiO
2/ペロブスカイトナノ複合体を形成し、これは厚さ約400nmの緻密なキャッピング層によって覆われる。キャッピング層中のペロブスカイト結晶子の大部分のサイズは、その厚さと同程度である。したがって、キャッピング層全体にわたって殆ど粒界が見えない。これは、粒界と関連するトラップサイトで起こりそうな、放射線なしの電荷再結合を低減するはずである。
【0116】
大面積のVASP系(FA
0.85MA
0.15)
0.95Pb((I
0.85Br
0.15))
2.9ペロブスカイト膜の均一性をさらに精査するために、我々は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、平方インチの膜表面上にわたって分布するそれぞれ10×10マイクロメーターの大きさの9個のスポットの表面粗さを測定した。これらの領域のすべてが、30±5nmの同じ表面粗さを示した。AFM画像で観察された見かけの粒度は、
図1aのSEMで見られたものと一致している。
【0117】
真空フラッシュ処理されたばかりの膜(
図3)のSEM上面図は、スピンコーティングされた(FA
0.85MA
0.15)
0.95Pb((I
0.85Br
0.15))
2.9前駆体膜からのペロブスカイトの形成についての重要な手がかりを有する。画像は、凝集ナノファイバーからなる粒子の存在を明らかにする。ナノファイバーは、おそらく前駆体溶液とペロブスカイトとの間の中間体であろう。束になった繊維は、ネットワークを形成しており、結晶核に帰属させることができるそれらの端部に輝点を有する。多量の結晶核は、ディウェッティングを防止することにより均質な膜を生成させるのを助けるであろう。これらは、アニールの間に垂直方向に成長することができ、これは真空処理されたペロブスカイト膜の断面SEM像とよく一致する。ナノファイバーのほかに、おそらくペロブスカイト粒子を示す数個の明るい粒子が観察される。アニールの間、粒子はオストワルド熟成によってより大きなペロブスカイト粒子に成長することができる。
【0118】
スピンコーティングの後に、残留溶媒がペロブスカイト前駆体とともに残留して準安定膜を形成する。そのガラス転移温度より高い温度で膜をアニールすると、ペロブスカイト前駆体の移動度が増加し、ディウェッティングをもたらす。溶媒のフラッシュ蒸発が、スピンコート膜の粘度及びガラス転移温度を増加させ、ペロブスカイト粒子を成長させるための核のバーストを生じるため、この望ましくないディウェッティングプロセスは、VASP処理によって防止される。
【0119】
図2は、(FA
0.85MA
0.15)
0.95Pb(I
0.85Br
0.15)ペロブスカイト膜のXRDスペクトルを示す。真空処理された膜(4.87)の2q=14.15°のペロブスカイトピークと2q=37.73°のFTOとの間の相対強度は、真空処理なしの膜(3.05)のそれよりかなり高い。これは、FTOを遮蔽するVASP法によって形成されたペロブスカイトキャッピング層の連続的で緻密な特徴に起因する。VASPは、膜の結晶化度も向上し、これは、観測されるピーク比の増加に寄与する。XRDスペクトルから、我々は、真空フラッシュ処理が結晶方位にも影響を及ぼすことを推論する。例えば、真空処理された膜及び真空処理されていない膜の(-111)面
5に対応する14.15度のピークと(120)面
36に対応する20.05度のピークの相対強度はそれぞれ6.2及び4.0である。真空処理された膜の半値幅(FWHM)のラインブロードニングは、同じ角度で、真空処理されていない膜のそれよりも小さい。例えば、14.15度の真空処理された膜及び真空処理されていない膜の半値幅は0.13度及び0.156度であり、28.5度でのFWHMはそれぞれ0.156度及び0.208度である。これは、真空処理された膜のペロブスカイト微結晶の平均サイズが、真空処理されていない膜のそれよりも大きいことを示す。
【0120】
図4は、ペロブスカイト膜のUV-vis吸光度と発光スペクトルを示す。フラッシュ真空処理されたペロブスカイト膜は、より良好な均質性のため、対照標準よりも高い吸光度を示す。蛍光測定は、真空処理された膜についてもより強い発光を示した。時間分解フォトルミネセンス
図4bは、真空処理された膜が、未処理の対照標準よりも著しく長い蛍光寿命を有することを示している。フォトルミネッセンス寿命がより長いほど、無放射減衰がより少ないことを意味し、これは、ひいては、光起電力結果と良好に一致して光電圧を増加させる。
【0121】
本発明の方法により作製された構造のメゾスコピックPSCは、
図5に示されており、光捕集剤(増感剤)として組成(FA
0.85MA
0.15)
0.95Pb(I
0.85Br
0.15)のペロブスカイト薄膜を含む。我々は、光電流密度対電圧(J-V)曲線とその入射光-電流変換効率(IPCE)を測定することによってデバイスの光起電力指標を評価し、それらの安定化最大出力を試験した。我々は、開口面積1.0×1.0cm
2のブラックマスクによりデバイスを覆った。
【0122】
【0123】
【0124】
表1及び表2は、PSCのPV指標に関する統計的データを提供する。
【0125】
図6aに示すように、VASPは、CP法と比較してデバイスの性能と再現性を大幅に改善した。CP法により得られた20個のPSCの平均PCEは、17.25±0.49mA・cm
-2の短絡光電流密度(J
SC)、938±15mVの開放電圧(V
OC)、0.578±0.030の曲線因子(FF)で、9.62±0.67%であった。VASP法を使用すると、23.12±0.28mA・cm
-2のJ
SC、1130±8mVのV
OC、0.737±0.010のFFで、平均PCEは、19.58±0.37%に2倍以上に増加した。
図6bの最良のセルについての光電流密度対電圧(電流-電圧)曲線を示す。VASP手順によってもたらされる実質的な性能改善は、全ての光起電力指標の値に反映されている。標準的なCP手順により作製された最良のセルは、15.6mA・cm
-2のJ
SC、949mVのV
OC及び0.609のFFから得られる10.79%のPECを与えた。対照的に、VASP法を適用することにより成長したペロブスカイト膜は、23.19mA・cm
-2の優れたJ
SC、1141mVのV
OC、及び0.757のFFを示し、標準AM1.5太陽照明下で20%のPCEに達した。
図6cは、400nm~800nmのスペクトル範囲にわたる入射光子-電流変換効率(IPCE)を示す。VASP技術は、CP法よりもはるかに高いIPCEを達成し、これは、これらの2つの手順から得られたデバイス光電流の差とつじつまが合う。
我々は、
図6dに示すように、異なる走査方向を使用して我々のセルのヒステリシスを調べた。順方向走査と逆方向走査との間の差はごくわずかであり、VASP法によって制御されるペロブスカイト膜の形態が、通常の走査条件下でJ-Vヒステリシスを緩和することができるロバストな低インピーダンスインターフェースを生成するのを助ける。PSCの性能をさらに検証するために、それらの安定化電力出力を、最大電力点近くで時間とともに監視した。
図6eは、
図3dの同じ大面積デバイスについて、21.25mA・cm
-2の光電流密度で20.32%の安定化PCE出力が達成されたことを示す。これは、走査J-V試験と良好に一致する。我々は、>1cm
2面積のPSCについてのこの高い効率レベルが、VASPにより作製されたペロブスカイト薄膜の複数の長さスケールで、高い結晶性及び均一性に帰すると考える。我々の1.0×1.0cm
2デバイスの1つを、Newport Corporation PV Lab(米国Bozeman)によって試験したところ、22.6mA・cm
-2のJ
SC、1143mVのV
OC及び75.7%のFFで、19.6%の認証PCEを示した。
【0126】
予備的な安定性調査は、デバイスが比較的安定であり、最終PCEが39日間の間にわずかに増加したことを示した(
図7)。周囲温度で暗所でのエージングの間に、デバイス性能パラメータの変化が記録された。積層デバイスを大気中で39日間保持し。PV性能測定基準は、室温で疑似全天日射量AM1.5の光を使用して、3日間の規則的な間隔で測定した。
【0127】
さらに、この方法は、前駆体成分及びペロブスカイト組成のバリエーションに関して汎用性がある。デモンストレーションとして、最近現れたペロブスカイト材料であるCsxFA(1-x)PbX3を使用して試験を行った。最初の試験で18%に近い優れたPCEが得られ、詳細な光起電力パラメータが表3に示されている。
【0128】
【0129】
要約すると、我々は、高効率大面積ペロブスカイト太陽電池のための高品質ペロブスカイト膜を製造するための真空支援溶液プロセスを報告した。産業用途のために容易に実施及びスケールアップすることができる。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
導電性支持層又は電流コレクタを用意する工程;
前記導電性支持層上に金属酸化物層を適用する工程;
前記金属酸化物層上に有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む少なくとも1つの増感剤層を適用する工程;及び
前記増感剤層上に対電極又は金属電極を設ける工程;
を含み、
少なくとも1つの増感剤層を適用する前記工程が、
1種のペロブスカイト顔料もしくは混合ペロブスカイト顔料の膜又は混合カチオン及びアニオンを有する1種又は2種以上のペロブスカイト顔料の膜の下に有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを設ける工程;
金属酸化物である先行層上に堆積された前記有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜に真空を適用する工程;及び
真空により処理された前記有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜をアニールする工程;
を含むことを特徴とする、固体太陽電池の製造方法。
[態様2]
さらに、前記少なくとも1つの増感剤層を適用する前に、電荷輸送層を構成する第1の層を前記金属酸化物層上に適用することを含み、前記第1の層は、前記少なくとも1つの増感剤層により覆われ、かつ、その上に前記有機-無機ペロブスカイト膜又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜が堆積される先行層である、態様1に記載の方法。
[態様3]
第2の層が前記増感剤層上に適用され、前記第2の層は、電荷輸送層、保護層又は両方の層の組み合わせから選択され、前記対電極又は金属電極が前記第2の層を覆う、態様1又は2に記載の方法。
[態様4]
1種のペロブスカイト顔料もしくは混合ペロブスカイト顔料の膜又は混合カチオン及びアニオンを有する1種又は2種以上のペロブスカイト顔料の膜の下に有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを設ける前記工程が、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、及びこれらの堆積法の組み合わせから選ばれた堆積法により実施される、態様1~3のいずれか一つに記載の方法。
[態様5]
前記真空の圧力が、1~20Paの範囲内である、態様1~4のいずれか一つに記載の方法。
[態様6]
前記真空の適用が、1~20秒間続く、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
[態様7]
前記第2の層が、正孔輸送材料を含む電荷輸送層である、態様3~6のいずれか一つに記載の方法。
[態様8]
前記増感剤層が、下記式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)及び/又は(Ig):
AA’MX
4
(I)
AMX
3
(Ia)
AA’N
2/3
X
4
(Ib)
AN
2/3
X
3
(Ic)
BN
2/3
X
4
(Id)
BMX
4
(Ie)
AA’A
1
MΧ
3
(If)
AA
1
MΧ
3
(Ig)
[式中、
A及びA’は、窒素含有複素環及び環系を包含する、第1級、第2級、第3級又は第4級有機アンモニウム化合物から独立に選ばれた有機一価カチオンであり、A及びA’は、独立に、1個~60個の炭素及び1個~20個のヘテロ原子を有し;
A
1
は、Cs
+
、Rb
+
及びK
+
から選ばれた無機カチオンであり;
Bは、1個~60個の炭素及び2個~20個のヘテロ原子を有し、2個の正電荷を帯びた窒素原子を有する第1級、第2級、第3級又は第4級有機アンモニウム化合物から選ばれた有機二価カチオンであり;
Mは、Cu
2+
、Ni
2+
、Co
2+
、Fe
2+
、Mn
2+
、Cr
2+
、Pd
2+
、Cd
2+
、Ge
2+
、Sn
2+
、Pb
2+
、Eu
2+
、Yb
2+
、[Sn
i
Pb
(1-i)
]
+
、[Sn
j
Ge
(1-j)
]
+
、及び[Pb
k
Ge
(1-k)
]
+
から選ばれ、ここで、i、j及びkは0.0~1.0の数であり;
Nは、Bi
3+
及びSb
3+
からなる群から選ばれ;
Xは、Cl
-
、Br
-
、I
-
、NCS
-
、CN
-
及びNCO
-
から、[I
(3-m)
Cl
m
]
-
、[I
(3-n)
Br
n
]
-
及び[Br
(3-u)
Cl
u
]
-
(m、n及びuは0.0~3.0の数である)から、並びにCl
-
、Br
-
及びI
-
から選ばれた2種のアニオンの組み合わせから、独立に選ばれる。]
のペロブスカイト構造のいずれか1つに従う有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む、態様1~7のいずれか一つに記載の方法。
[態様9]
導電性支持層又は電流コレクタ、金属酸化物層、増感剤層、及び対電極又は金属電極を含み、前記金属酸化物層が、前記導電性支持層又は電流コレクタを覆っており、前記少なくとも1つの増感剤層が前記金属酸化物層と接触しており、前記対電極又は金属電極が前記少なくとも1つの増感層を覆っている固体太陽電池であって、前記少なくとも1つの増感剤層が、均質なピンホールフリーの有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜を含み、前記均質なピンホールフリーの有機-無機ペロブスカイト又は金属ハロゲン化物ペロブスカイト膜が、前記金属酸化物層を完全に覆っており、前記金属酸化物層とともに、連続な金属酸化物層/有機-無機ペロブスカイトナノ複合体を形成しており、前記連続な金属酸化物層/有機-無機ペロブスカイトナノ複合体は、緻密な有機-無機ペロブスカイトキャッピング層によって覆われており、かつ、400~800nmの厚さを有することを特徴とする、固体太陽電池。
[態様10]
さらに第1の層を含み、前記第1の層は、電荷輸送層を構成し、前記金属酸化物層を覆っており、前記少なくとも1つの増感剤層が前記第1の層と接触している、態様9に記載の固体太陽電池。
[態様11]
さらに、電荷輸送層、保護層又は両方の層の組み合わせから選択された第2の層を含み、前記第2の層は、前記少なくとも1つの増感剤層を覆っており、前記対電極又は金属電極が前記第2の層を覆っている、態様9又は10に記載の固体太陽電池。
[態様12]
前記第2の層が、正孔輸送材料を含む電荷輸送層である、態様11に記載の固体太陽電池。
[態様13]
前記正孔輸送材料が、トリフェニルアミン、カルバゾール、N,N,(ジフェニル)-N’,N’-ジ-(アルキルフェニル)-4,4’-ビフェニルジアミン、(pTPDs)、ジフェニルヒドラゾン、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](ポリTPD)、電子ドナー基及び/又はアクセプター基で置換されたポリTPD、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-alt-N-(4-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン(TFB)、2,2’,7,7’-テトラキス-N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン-9,9’-スピロビフルオレン)(スピロ-OMeTAD)、及びN,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン(TPD)から選ばれる、態様12に記載の固体太陽電池。
[態様14]
前記導電性支持層又は電流コレクタが、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO-Ga
2
O
3
、ZnO-Al
2
O
3
、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、SrGeO
3
及び酸化亜鉛から選ばれた材料を含む、態様9~13のいずれか一つに記載の固体太陽電池。
[態様15]
前記金属酸化物層が、Si、TiO
2
、SnO
2
、Fe
2
O
3
、ZnO、WO
3
、Nb
2
O
5
、CdS、ZnS、PbS、Bi
2
S
3
、CdSe、CdTe、SrTiO
3
、GaP、InP、GaAs、CuInS
2
、及びCuInSe
2
から選ばれた金属酸化物を含む、態様9~14のいずれか一つに記載の固体太陽電池。
[態様16]
導電性層が、電荷輸送材料を含む第2の任意の層を覆っており、かつ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート):グラフェンナノコンポジット(PEDOT:PSS:グラフェン)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、及びスルホン化ポリ(ジフェニルアミン)(SPDPA)から選ばれた1又は2種以上の導電性材料を含む、態様9~15のいずれか一つに記載の固体太陽電池。
[態様17]
>0.9cm
2
の開口面積を有する、態様9~16のいずれか一つに記載の固体太陽電池。