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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】油圧式型合わせ装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/02 20060101AFI20221031BHJP
   B30B 15/22 20060101ALI20221031BHJP
   B30B 15/18 20060101ALI20221031BHJP
   B30B 15/16 20060101ALI20221031BHJP
   B30B 15/24 20060101ALI20221031BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B30B15/02 C
B30B15/22 B
B30B15/18 E
B30B15/16 D
B30B15/24 B
B30B15/00 B
B30B15/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019010966
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020116617
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591153651
【氏名又は名称】浅井興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 由美
(72)【発明者】
【氏名】亀田 佳洋
(72)【発明者】
【氏名】安田 祐輝
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-175018(JP,A)
【文献】特開平11-333852(JP,A)
【文献】特開平06-246499(JP,A)
【文献】特開2001-129695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/02
B30B 15/22
B30B 15/18
B30B 15/16
B30B 15/24
B30B 15/00
B29C 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とに分割できる金型に圧力を加える油圧式型合わせ装置であって、
前記下型を保持する下テーブルと、
前記上型を保持し、前記下テーブルに対して移動する上テーブルと、
前記上テーブルに保持された前記上型を前記下型に向けて油圧により加圧する油圧部と、
前記油圧部が加圧する加圧力を検出して加圧力データとして出力することを継続的に実行可能な加圧力検出部と、
前記加圧力データに基づいて、設定された加圧条件で加圧するように前記油圧部を制御するとともに、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し終えるときの前記加圧力データを上型加圧力として出力する制御部と、
前記上型加圧力を記録する記録部と、
を備え、
前記制御部は、さらに、前記記録部に記録された前記上型加圧力に基づき、前記加圧条件を設定したうえで、前記上型を加圧するよう前記油圧部の制御が再現可能な、
油圧式型合わせ装置。
【請求項2】
請求項1に記載された油圧式型合わせ装置であって、
さらに、前記油圧部に対する前記上型の位置を検出して位置データとして出力することを継続的に実行可能な上型位置検出部を備え、
前記制御部は、さらに、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し終えるときの前記位置データを加圧位置として前記記録部に記録させるとともに、
前記記録部に記録された前記加圧位置に基づき、前記加圧条件を設定したうえで、前記上型を加圧するよう前記油圧部の制御が再現可能な、
油圧式型合わせ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された油圧式型合わせ装置であって、
さらに時刻を出力する時計を備え、
前記制御部は、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し続けた時間間隔を加圧時間として前記記録部に記録させるとともに、
前記記録部に記録された前記加圧時間に基づき、前記加圧条件を設定したうえで、前記上型を加圧するよう前記油圧部の制御が再現可能な、
油圧式型合わせ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された油圧式型合わせ装置であって、
さらに、前記上型の分割面もしくは前記下型の分割面の少なくとも1つを撮影して、その撮影画像を分割面画像データとして出力可能なカメラを備え、
前記制御部は、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し終えた後の、前記分割面画像データを、仕上状態画像として前記記録部に記録させるとともに、
前記記録部に記録された前記仕上状態画像を読み出すことが可能であり、
前記仕上状態画像の表示に関するデータ変換処理をした上で、画像を表示させる表示処理を実行可能な、
油圧式型合わせ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された油圧式型合わせ装置であって、
さらに、前記下テーブルの上部に対する、前記上テーブルの下部の傾きを検出して、上テーブル傾斜度データとして出力することを継続的に実行可能な上テーブル傾きセンサを備え、
前記制御部は、さらに、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し終えるときの上テーブル傾斜度データを、加圧時上テーブル傾斜度として前記記録部に記録させるとともに、
前記記録部に記録された前記加圧時上テーブル傾斜度を読み出すことが可能な、
油圧式型合わせ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された油圧式型合わせ装置であって、
前記制御部は、コンピュータ・ネットワークに接続され、
前記コンピュータ・ネットワーク経由で、前記金型に関する情報である金型データを記憶している金型情報記憶装置に接続されており、
前記上型加圧力だけでなく、前記金型情報記憶装置に記憶されている前記金型データをも参照して算出された前記加圧条件を設定したうえで、前記上型を加圧するよう前記油圧部の制御が可能な、
油圧式型合わせ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上型と下型とに分割できる金型に圧力を加える油圧式型合わせ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成型では、内部に空洞を備える金型が用いられている。そして、射出成型では、金型の内部の空洞に、加熱して流動性を持たせた状態の樹脂を充填し、冷却して硬化させることで成形品を生成する。生成される成形品を金型から取り外せるように、通常、金型は上型と下型とに分割できるように構成されている。上型および下型それぞれについて、上型と下型とが密着する面は分割面と呼ばれる。なお、分割面は、パーティング面や、PL面とも呼ばれる。上型や下型の分割面に過分な凹凸がある場合は、上型と下型を密着させたときに、分割面にて隙間が生じる。そして、射出成型時において、上記の隙間に、加熱して流動性を持たせた状態の樹脂が侵入し、硬化することで成形不良が生じ、例えば、生成される成形品にいわゆるバリが生じる。
【0003】
ダイカストでは、上記の射出成型と同様に、加熱して流動性を持たせた状態の金属を、金型の内部の空洞に充填し、冷却して硬化させることで成形品を生成する。ダイカストに用いられる金型の構成は、上記の射出成型用の金型と同様である。また、上記と同様に、ダイカストにおいても分割面にて隙間が生じる場合、ダイカストの成形品に成形不良が生じる。一般的に、ダイカスト用の金型の仕上げも、射出成型用の金型の仕上げも、以下に説明するように行われている。
【0004】
新品の金型の仕上げや、金型の修理における金型の仕上げには、上型と下型とが分割面で隙間なく密着するように上型と下型とを調整する工程が行われており、この工程は型合わせと呼ばれている。型合わせの工程は、上型および下型の分割面を、型合わせ装置を用いて調べる工程を含んでいる。従来より型合わせ装置として、ダイスポッティングプレスやトライアルプレス等が用いられており、例えば、特許文献1に、180°反転式ダイスポッティングプレスおよび型合わせについて開示されている。また、型合わせ装置として、油圧により上型を下型に向けて加圧することができる油圧式型合わせ装置が広く用いられている。油圧式型合わせ装置は、特許文献1に開示されている180°反転式ダイスポッティングプレスと同様に、上型と下型とを別々に取り付けることができる。そして、油圧式型合わせ装置は、上型を上下に移動させること、上型に圧力を加えて上型と下型を密着させること、および、上型と下型とを離間させることができる。
【0005】
上型および下型の分割面は、例えば、次の様に調べることができる。まず、油圧式型合わせ装置に、上型と下型とを取り付け、上型と下型とを離間させる。次に、粉状の塗料(例えば、四酸化三鉛(Pb34)を成分に含む赤色の顔料)を下型の分割面に塗布する。そして、上型と下型とを分割面で密着する様に上型を下型に向けて加圧する。これにより、下型の分割面に塗布された粉状の塗料の一部は、上型の分割面に付着する。
【0006】
ここで、もし仮に、上型の分割面および下型の分割面に過分な凹凸がなく、上型の分割面と下型の分割面とが密着できるならば、下型の分割面に塗布された粉状の塗料は、上型の分割面に均一に付着するはずである。一方、上型の分割面および下型の分割面のいずれかに過分な凹凸がある場合、下型の分割面に塗布された粉状の塗料は、上型の分割面に均一には付着せず、上型の分割面には、粉状の塗料が比較的多く付着している部分や、この逆に、粉状の塗料が比較的少なく付着している部分などがあり、上型の分割面に付着した粉状の塗料において付着のムラが生じ、さらに、下型の分割面に付着した粉状の塗料の付着においても付着にムラが生じるはずである。そこで、次に上型と下型とを離間させ、上型の分割面および下型の分割面に付着した粉状の塗料の付着における付着のムラを調べる。そして、調べたムラから、上型の分割面および下型の分割面において、過分な凹凸のある個所を特定する。金型の修理や金型の仕上げに行われる型合わせの工程では、以上で説明した様に、上型の分割面および下型の分割面における過分な凹凸のある個所を特定し、さらにこの過分な凹凸のある個所が平坦になるよう加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-129695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の油圧式型合わせ装置では、上型および下型が密着するように上型を下型に向けて加圧するときの、加圧力等の加圧条件の設定と、加圧の制御について、以下に説明するように課題があった。上記の上型を下型に向けて加圧するとき、加圧力が高いほど、下型の分割面に塗布された粉状の塗料は、上型の分割面に付着しやすい。そして、粉状の塗料が上型の分割面に付着しすぎても、付着しなさすぎても、上型の分割面に対する粉状の塗料の付着にムラがあるかないかを適切に判断することが困難になる。このため、上型を加圧するときに、設定する加圧等の加圧条件を適切に設定できなければ、金型を型合わせで良好に仕上げることが困難である。
【0009】
また、型合わせの工程において油圧式型合わせ装置は、上型を下型に向けて加圧することで、上型および下型が密着するように金型を加圧している。そして、射出成型やダイカスト等の成形品製造装置を用いて金型で成型品を製造するときにも、上型および下型が密着するように金型を加圧している。一般的に、金型を加圧する加圧力は、油圧式型合わせ装置と、成形品製造装置とでは、異なっている。このため、型合わせの工程で、一見、金型が良好に仕上がっていると判断できたとしても、金型を用いて成型品(例えば、試作品)を製造してみると、成形品に成形不良が生じ、金型の仕上がりが良好ではなかったことが明らかになる場合がある。ここで、成形不良か否かの判断は、例えば、成形品に求められる形状精度に基づいて判断される。
【0010】
従って、場合によっては、型合わせの工程における、上型および下型が密着するように加圧するときの加圧条件は、金型で成型品を製造するときの状態や、金型で製造される予定の成形品に求められる形状精度を考慮したうえで試行錯誤し、設定する必要がある。また、上記の様に成形品を製造してみて、初めて金型の仕上がりが良好ではないことが明らかになる場合には、再び、金型を仕上げ直す必要が生じる。これにより、金型を仕上げ直すための時間および費用がかかる分、成形品の製造開始日が遅れるだけでなく、製造コストが上がることになる。これに対して、金型を用いて成型品を製造したときに、成形不良が生じないように、型合わせの工程において油圧式型合わせ装置が上型を下型に向けて加圧する際に、加圧力等の加圧条件を適切に設定することが求められる。
【0011】
これに対して、従来の油圧式型合わせ装置では、例えば、バルブのひねり具合で大まかに加圧力を設定するなど、加圧条件の設定は大まかにしかなされていなかった。さらに、加圧力の大きさは、駆動オイルの油温や劣化の状態の影響を受けて変化するため、実際に上型にかかる加圧力は設定したようにはならないおそれもあった。この様に、従来の油圧式型合わせ装置は、設定した加圧条件どおりに加圧することが困難なため、使用者は、勘と経験に頼り、さらに試行錯誤して加圧条件を設定せざるを得なかった。また、従来の油圧式型合わせ装置は、設定した加圧条件どおりに加圧することが困難なため、現在の加圧条件を用い、次回の型合わせにおいて現在の加圧力を再現するといった、現在の加圧条件を将来的に活用することが容易ではなかった。
【0012】
本発明は、上述した問題を解決するものとして創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、設定した加圧条件にて、上型を下型に向けて加圧することができると共に、その加圧条件を記録して将来的に活用し得る油圧式型合わせ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一つの特徴によると、油圧式型合わせ装置は、上型と下型とに分割できる金型に圧力を加える油圧式型合わせ装置であって、前記下型を保持する下テーブルと、前記上型を保持し、前記下テーブルに対して移動する上テーブルと、前記上テーブルに保持された前記上型を前記下型に向けて油圧により加圧する油圧部と、前記油圧部が加圧する加圧力を検出して加圧力データとして出力することを継続的に実行可能な加圧力検出部と、前記加圧力データに基づいて、設定された加圧条件で加圧するように前記油圧部を制御するとともに、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し終えるときの前記加圧力データを上型加圧力として出力する制御部と、前記上型加圧力を記録する記録部と、を備え、前記制御部は、さらに、前記記録部に記録された前記上型加圧力に基づき、前記加圧条件を設定したうえで、前記上型を加圧するよう前記油圧部の制御が再現可能である。
【0014】
油圧式型合わせ装置は、新品の金型の仕上げや、修理における金型の仕上げのための型合わせの工程で、上型および下型を次の様に調べるために用いることができる。ここで、上型および下型それぞれについて、上型と下型とが密着する面は分割面と呼ばれる。まず、下型の分割面に粉状の塗料を塗布する。そして、油圧式型合わせ装置にて、上型を下型に向けて油圧により加圧することで、下型の分割面に塗布された粉状の塗料の一部を上型の分割面に付着させる。この様に上型を下型に向けて油圧により加圧させた後、上型と下型とを離間させ、上型の分割面および下型の分割面に付着している粉状の塗料における付着のムラを調べる。そして、調べたムラから、上型の分割面および下型の分割面において、過分な凹凸のある個所を特定する。また、金型の仕上げでは、さらにこの過分な凹凸のある個所を平坦になるよう加工することで、上型および下型の分割面を仕上げる。
【0015】
ここで、油圧式型合わせ装置が、上型を下型に向けて油圧により加圧するときの加圧条件により、下型の分割面に塗布された粉状の塗料の一部が上型の分割面に付着する度合いが変わる。この付着する度合いにより、上型の分割面および下型の分割面に付着した粉状の塗料における付着のムラは変化する。従って、この付着のムラは、上記の加圧条件をどの様に設定するかによって変化する。また、上記の様に、この付着のムラから、上型および下型の分割面における過分な凹凸のある個所を調べる。そして、この凹凸のある個所を特定できれば、この凹凸のある個所が平坦になるよう加工できる。従って、上記の加圧条件をどの様に設定するかによって、特定できる上記の過分な凹凸のある個所が変わり、ひいては、過分な凹凸のある個所をどの程度まで平坦にできるかが変わる。従って、金型の仕上がりが良好になるか否かは、加圧条件に大きな影響を受ける。
【0016】
上記の構成により、油圧式型合わせ装置では、加圧力検出部が検出する、油圧部が上型を加圧する加圧力を加圧力データとして制御部が受け取り、制御部は、受け取った加圧力データに基づき、設定された加圧条件で加圧するように油圧部を制御する。ここで、加圧力データは、駆動オイルの油温や劣化の状態に影響されることはなく、油圧部の制御は、上型を加圧する加圧力に基づく。このため、油圧式型合わせ装置は、設定した加圧条件にて、上型を下型に向けて加圧し得る。
【0017】
また、制御部は、記録部に記録された上型加圧力データに基づき、加圧条件を設定したうえで、上型を加圧するよう油圧部の制御が再現可能である。また、このように、再現できれば、上型と下型を含めた金型の型合わせの仕上がりの状態も、再現できると考えることができる。従って、油圧式型合わせ装置では、以下に例を説明する様に、加圧条件を記録して将来的に活用し得る。
【0018】
加圧条件を記録して将来的に活用することの例として、金型の仕上げの状態が良好となっていることの保証、すなわち、金型の仕上げの品質保証について説明する。品質保証では、まず、次の様に、好適な加圧条件を調べる。油圧部に上型を加圧させるための加圧条件を設定したうえで型合わせし、さらに金型の仕上がりを評価することを、複数回行う。その際、設定する加圧条件を種々変更し、金型の型合わせの仕上がりを評価し、仕上がりの状態を比較する。そして、良好な仕上がりとなる場合の加圧条件を、好適な加圧条件とする。ここで、金型の仕上がりの評価の基準には、次の種々の事項を考慮することができる。この事項として、例えば、金型の分割面の平面度、上型や下型を構成する構成部品の形状精度、金型で成型品を製造するときにおける金型に加えられる圧力や水平面に対する金型の分割面の向き、さらに、金型を用いて製造された成型品に要求される形状精度、が挙げられる。金型の仕上がりを評価するために考慮するこれらの事項の数は、必要に応じて増加するため、金型の仕上がりの評価の基準は、評価する金型によって変わり得る。
【0019】
上記の好適な加圧条件を用いて、金型の型合わせをすれば、金型を適切に仕上げることができると考えることができる。換言すれば、金型が、好適な加圧条件を用いて型合わせされたものであれば、金型を良好に仕上げられている金型とみなすことができると考えることもできる。従って、好適な加圧条件を用いて型合わせされたことが、仕上げの状態が良好となっていることの保証になると考えることができる。さらに、金型のメンテナンスのために、金型を仕上げ直すときにも、この様に品質保証により、仕上げ直した金型の状態が確実に良好であると保証し得る。
【0020】
一般的に、金型の仕上げの状態が良好か否かを確かめるために、金型を用いて試作品を作成する。そして、試作品を用いて金型の仕上げの状態が良好か否かを検証し、検証の結果、金型の仕上げの状態が良好でないときは金型を仕上げ直すことが行われている。そして、この様に金型を仕上げ直す回数が増える程、金型を仕上げ直す時間と費用がかさむ。また、一般的に、金型の仕上げの状態が、良好か否か不確実なため、メンテナンスのための時間や費用を正しく見積もることが困難であり、ひいては、金型を用いた成形品の製造コストを正しく見積もることも困難であった。
【0021】
一方、上記の様に金型仕上げの品質保証によって、金型の仕上げの状態を確実に良好にし得る。仮に、金型の仕上げの状態を確実に良好に仕上げることができるとすれば、金型を仕上げ直す手間を省き得り、金型を用いて試作品を作成する手間を省き得り、さらに、試作品を用いて金型の仕上げの状態が良好か否かを検証する手間を省き得る。また、仮に、上記の様に金型仕上げの品質保証を行うことで、金型を仕上げ直す回数の増加が抑制され、金型を仕上げ直すための時間や費用が抑制されるとすれば、金型を仕上げるための製造コストを抑え、金型を仕上げ直すために成形品の製造開始日が遅れることが抑制される。これは、金型のメンテナンスのために、金型を仕上げ直すときにも同様である。ひいては、金型の設計から成形品を製造するまでにおいて、トータルのコストのより正確な算出や、金型の運用コストのより正確な算出を容易にし得る。
【0022】
次に、他の特徴によると、さらに、前記油圧部に対する前記上型の位置を検出して位置データとして出力することを継続的に実行可能な上型位置検出部を備え、前記制御部は、さらに、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し終えるときの前記位置データを加圧位置として前記記録部に記録させるとともに、前記記録部に記録された前記加圧位置に基づき、前記加圧条件を設定したうえで、前記上型を加圧するよう前記油圧部の制御が再現可能なことが好ましい。
【0023】
これにより、油圧式型合わせ装置は、記録部に記録された、油圧部が上型を下型に向けて加圧し終えるときの上型加圧力だけでなく、加圧位置に基づく加圧条件を設定したうえで、上型を加圧することができる。加圧位置を加圧条件に含めるのは、上型の位置により、上型の分割面と下型の分割面とが密着する度合いが変わり、密着する度合いによって、下型の分割面に塗布された粉状の塗料が上型の分割面に付着する付着のしやすさが変わる場合があると考えられるからである。このため、油圧式型合わせ装置では、上型加圧力および加圧位置が記録されたときの状態を、より高い再現性で再現して、上型を加圧し得る。
【0024】
次に、他の特徴によると、さらに時刻を出力する時計を備え、前記制御部は、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し続けた時間間隔を加圧時間として前記記録部に記録させるとともに、前記記録部に記録された前記加圧時間に基づき、前記加圧条件を設定したうえで、前記上型を加圧するよう前記油圧部の制御が再現可能なことが好ましい。
【0025】
これにより、油圧式型合わせ装置は、記録部に記録された、油圧部が上型を下型に向けて加圧し終えるときの上型加圧力だけでなく、加圧時間に基づいて加圧条件を設定したうえで、上型を加圧することができる。加圧時間を加圧条件に含めるのは、上型を下型に向けて加圧する時間が長いほど、下型の分割面に塗布された粉状の塗料は、上型の分割面に付着しやすいと考えることができるからである。このため、油圧式型合わせ装置では、上型加圧力および加圧時間が記録されたときの状態を、より高い再現性で再現して、上型を加圧し得る。
【0026】
次に、他の特徴によると、さらに、前記上型の分割面もしくは前記下型の分割面の少なくとも1つを撮影して、その撮影画像を分割面画像データとして出力可能なカメラを備え、前記制御部は、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し終えた後の、前記分割面画像データを、仕上状態画像として前記記録部に記録させるとともに、前記記録部に記録された前記仕上状態画像を読み出すことが可能であり、前記仕上状態画像の表示に関するデータ変換処理をした上で、画像を表示させる表示処理を実行可能なことが好ましい。
【0027】
上述した様に、型合わせの工程において、上型を下型に向けて油圧により加圧させた後、上型と下型とを離間させ、上型の分割面および下型の分割面における粉状の塗料の付着のムラを調べる。そして、調べたムラから、上型の分割面および下型の分割面において、過分な凹凸のある個所を特定する。また、金型の仕上げでは、さらにこの過分な凹凸のある個所を平坦になるよう加工することで、上型および下型の分割面を仕上げる。
【0028】
ここで、上記構成により、油圧式型合わせ装置は、油圧部が上型を下型に向けて加圧し終えた後の、上型の分割面もしくは下型の分割面の少なくとも1つを撮影した撮影画像を分割面画像データとして出力し、この分割面画像データを仕上状態画像として記録部に記録させることができる。そして、直近の仕上状態画像、および、記録部に記録された仕上状態画像に対して、仕上状態画像の表示に関するデータ変換処理をした上で、画像を表示させる表示処理を実行できる。これにより、操作者は、上型の分割面および下型の分割面における粉状の塗料の付着のムラを、表示された仕上状態画像から判断しうる。これにより、操作者は、上型の分割面および下型の分割面において、過分な凹凸のある個所をより容易に特定し得る。
【0029】
また、上述した様に、油圧部に上型を加圧させるための加圧条件を設定したうえで型合わせし、さらに金型の仕上がりを評価することを、複数回行う場合には、設定する加圧条件を種々変更し、金型の仕上がりを評価し、金型の仕上がりの状態を比較することで、好適な加圧条件を調べる。ここで、例えば、加圧条件のデータ、金型のデータ(下記)、および製造時の金型に関するデータ(下記)だけでなく、仕上状態画像を用い、多変量解析のアルゴリズムや、人工知能(AI)のアルゴリズム等により、金型の仕上がりの評価および比較を行ってもよい。そして、この評価は、制御部が行ってもよい。また、制御部が、外部のコンピュータに、加圧条件や仕上状態画像を送信するものとし、さらに、外部のコンピュータが上記の評価を行ってもよい。この様に評価することで、金型の型合わせの仕上がりの評価をより容易にし得る。ひいては、好適な加圧条件をより容易に調べ得る。
【0030】
金型のデータとして、例えば、金型の設計図のデータ、金型の材質のデータ、金型の分割面の平面度、そして、上型や下型を構成する構成部品の形状精度のデータを挙げることができる。また、製造時の金型に関するデータとして、例えば、金型を用いて成形品を製造する工程において、金型を用いて成形品の製造を開始してから金型の修理が必要となる程度に劣化するまでの間に製造できた成形品の数のデータ、金型が成型品を製造するときにおける金型に加えられる圧力や水平面に対する金型の分割面の向き、そして、金型を用いて製造された成型品に要求される形状精度を挙げることができる。
【0031】
次に、他の特徴によると、さらに、前記下テーブルの上部に対する前記上テーブルの下部の傾きを検出して、上テーブル傾斜度データとして出力することを継続的に実行可能な上テーブル傾きセンサを備え、前記制御部は、さらに、前記油圧部が前記上型を前記下型に向けて加圧し終えるときの上テーブル傾斜度データを、加圧時上テーブル傾斜度として前記記録部に記録させるとともに、前記記録部に記録された前記加圧時上テーブル傾斜度を読み出すことが可能な、ことが好ましい。
【0032】
また、上述した様に、油圧部に上型を加圧させるための加圧条件を設定したうえで型合わせし、さらに金型の仕上がりを評価することを、複数回行う場合には、設定する加圧条件を種々変更し、金型の型合わせの仕上がりを評価し、仕上がりの状態を比較することで、好適な加圧条件を調べる。上記の構成により、制御部は、油圧部が上型を下型に向けて加圧し終えるときの下テーブルの上部に対する上テーブルの下部の傾きを、上テーブル傾斜度データとして記録部に記録し、読み出すことができる。これにより、金型の型合わせの仕上がりの評価のために、上テーブル傾斜度データを用いることで、金型の型合わせの仕上がりの評価をより容易にし得る。
【0033】
ここで、例えば、加圧条件のデータおよ上記の金型のデータや、上記の製造時の金型に関するデータだけでなく、上テーブル傾斜度データを用い、多変量解析のアルゴリズムや、人工知能(AI)のアルゴリズム等により、金型の仕上がりの評価および比較を行ってもよい。そして、この評価は、制御部が行ってもよい。また、制御部が、外部のコンピュータに、加圧条件や上テーブル傾斜度データを送信するものとし、さらに、外部のコンピュータが上記の評価を行ってもよい。また、外部のコンピュータは、他のコンピュータから上記の金型のデータや、上記の製造時の金型に関するデータを受け取ったうえで、上記の評価を行ってもよい。この様に評価することで、金型の型合わせの仕上がりの評価をより容易にし得る。ひいては、好適な加圧条件をより容易に調べ得る。
【0034】
次に、他の特徴によると、前記制御部は、コンピュータ・ネットワークに接続され、前記コンピュータ・ネットワーク経由で、前記金型に関する情報である金型データを記憶している金型情報記憶装置に接続されており、前記上型加圧力だけでなく、前記金型情報記憶装置に記憶されている前記金型データをも参照して算出された前記加圧条件を設定したうえで、前記上型を加圧するよう前記油圧部の制御が可能な、ことが好ましい。
【0035】
上記構成により、制御部は、コンピュータ・ネットワーク経由で金型情報記憶装置に記憶されている金型データを参照することができる。そして、制御部は、上型加圧力だけでなく、金型情報記憶装置に記憶されている金型に関する情報である金型データをも参照して算出された加圧条件を設定したうえで、上型を加圧するよう油圧部の制御が可能である。金型データとしては、例えば、上記の金型のデータや、上記の製造時の金型に関するデータを挙げることができる。加圧条件の算出は、コンピュータ・ネットワークに接続された加圧条件を算出するためのコンピュータを設け、このコンピュータに行わせてもよい。あるいは、金型情報記憶装置に加圧条件を算出するためのコンピュータを敷設し、このコンピュータに加圧条件を算出させてもよい。また、加圧条件の算出は、場合によっては、AIのアルゴリズムを用いることで、設計段階の金型に対しても行い得る。
【発明の効果】
【0036】
本発明の油圧式型合わせ装置は、設定した加圧条件にて、上型を下型に向けて加圧することができると共に、その加圧条件を記録して将来的に活用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置の構成を示す説明図である。
図2】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置の上テーブル傾きセンサの説明図である。
図3】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置を用いて下型の分割面との分割面とを調べる方法を説明する図である。
図5】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置を用いて下型の分割面との分割面とを調べる方法を説明する図である。
図6】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置を用いて下型の分割面との分割面とを調べる方法を説明する図である。
図7】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置を用いて下型の分割面との分割面とを調べる方法を説明する図である。
図8】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置を用いて下型の分割面との分割面とを調べる方法を説明する図である。
図9】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置を用いて下型の分割面との分割面とを調べる方法を説明する図である。
図10】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置を用いて下型の分割面との分割面とを調べる方法を説明する図である。
図11】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置を用いて下型の分割面との分割面とを調べる方法を説明する図である。
図12】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置の表示部に表示させる画像の例である。
図13】実施形態1に係る油圧式型合わせ装置の表示部に表示させる画像の例である。
図14】実施形態2に係る油圧式型合わせ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<<1.実施形態1>>
本発明を実施するための実施形態1について、以下、図面を用いて説明する。図1に示す様に、本実施形態の油圧式型合わせ装置100は、下型210と上型220とに分割できる金型200に対し、金型200の上型220と下型210とを密着するように油圧により圧力を加える油圧式型合わせ装置100である。図1に示す様に、油圧式型合わせ装置100は、下型210を保持する下テーブル111と、上型220を保持する上テーブル121とを備えている。そして、下テーブル111は、油圧式型合わせ装置100の内側から外側にかけて移動(図1では右から左に移動)する。また、上テーブル121は、油圧式型合わせ装置100の内部を移動(図1では上下に移動)する。
【0039】
ここで、図1に示す様に、下テーブル111の移動方向について、油圧式型合わせ装置100の内部側を前方とし、その反対方向を後方とする。また、図1に示す様に、上テーブル121の移動方向については、油圧式型合わせ装置100の内部に下型210があるときにおいて、下型210に向かう方向を下方とし、下方の反対方向を上方とする。そして、前方、後方、上方、下方が記載されているすべての図において、これらの方向は同一の方向を示し、以下の説明において方向に関する記述はこれらの方向を基準とすることがある。また、以下の説明において、油圧式型合わせ装置100の付随的な構成については、その図示および詳細な説明を省略する。
【0040】
<1-1.油圧式型合わせ装置100の構成(図1図3)>
図1は、油圧式型合わせ装置100を模式的に示した図である。ただし、図1は、油圧式型合わせ装置100の詳細な構造の図示を省略した図である。図1に示す様に、油圧式型合わせ装置100は、下型210を保持する下テーブル部110と、上型220を保持する上テーブル部120と、上テーブル部120を油圧する油圧部130と、油圧部130を保持するフレーム140と、下テーブル部110、上テーブル部120および油圧部130を制御する制御部150と、制御部150に接続された表示部160と、使用者から入力された指示を制御部150に出力する入力部170と、制御部150に時刻を出力する時計180(図1には不図示)と、制御部150から出力されるデータを記録する記録部190と、を備えている。
【0041】
これらのうち、下テーブル部110、上テーブル部120、油圧部130、フレーム140は、従来の180°反転式ダイスポッティングプレスと同様の構成を備えており、その細部の図示および詳細な説明を省略する。ただし、詳細は後述するが、フレーム140は、上型220の分割面221および下型210の分割面211を撮影して、その撮影画像を分割面画像データとして制御部150に出力可能なカメラ141を備えている。カメラ141は、上型220の分割面221もしくは下型210の分割面211の少なくとも1つを撮影し、その撮影画像を分割面画像データとして制御部150に出力可能なものとして構成してもよい。
【0042】
下テーブル部110は、図1に示すように、下型210を保持する下テーブル111と、水平面に対する下テーブル111の上部の傾きを検出し、下テーブル上部傾斜度データとして制御部150に出力することを、継続的に実行可能な下テーブル上部傾きセンサ112と、下テーブル111を保持し、下テーブル111を前後に移動させる下テーブルガイド113を備えている。そして、下テーブル部110は、制御部150に接続されており、下テーブル111の前後の移動が制御部150に制御される。
【0043】
上テーブル部120は、上型220を保持する上テーブル121と、油圧部130に保持され、上テーブル121を保持するスライド122と、上テーブル121を後端側中心に任意の角度に回転できるように、上テーブル121をスライド122に保持する上テーブル保持部123と、上テーブル121の下部の傾きを検出し、上テーブル下部傾斜度データとして制御部150に出力することを継続的に実行可能な上テーブル下部傾きセンサ124と、を備えている。制御部150は、上テーブル部120と接続されており、上型220を保持した上テーブル121を、上テーブル121の後端部を中心にして任意の角度に回転させることができる。
【0044】
ここで、図2に、上テーブル121に設けられた上テーブル下部傾きセンサ124の配置が示されている。図2に示されている様に、上テーブル下部傾きセンサ124は、上テーブル右前部位置センサ124a、上テーブル右後部位置センサ124b、上テーブル左前部位置センサ124c、上テーブル左後部位置センサ124dの4つのセンサを備えている。これら4つの全てのセンサは、次の様に位置のデータを検出すると、上テーブル121の傾斜度に関するデータを制御部150に出力することを継続的に実行可能である。すなわち、図2に示す様に、上テーブル右前部位置センサ124aは、上テーブル121の右端部の前端側に設けられており、上テーブル右前部位置センサ124aの上下方向の位置を検出し、上テーブル右前部位置データとして、制御部150に出力することを継続的に実行可能である。上テーブル右後部位置センサ124bは、上テーブル121の右端部の後端側に設けられており、上テーブル右後部位置センサ124bの上下方向の位置を検出し、上テーブル右後部位置データとして、制御部150に出力することを継続的に実行可能である。上テーブル左前部位置センサ124cは、上テーブル121の左端部の前端側に設けられており、上テーブル左前部位置センサ124cの上下方向の位置を検出し、上テーブル左前部位置データとして、制御部150に出力することを継続的に実行可能である。上テーブル左後部位置センサ124dは、上テーブル121の左端部の後端側に設けられており、上テーブル左後部位置センサ124dの上下方向の位置を検出し、上テーブル左後部位置データとして、制御部150に出力することを継続的に実行可能である。
【0045】
ここで、下テーブル上部傾きセンサ112、上テーブル右前部位置センサ124a~上テーブル左後部位置センサ124dの5つのセンサを併せて、1つの上テーブル傾きセンサとする。制御部150は、上テーブル傾きセンサが検出した、下テーブル上部傾斜度データと、上テーブル右前部位置データと、上テーブル右後部位置データと、上テーブル左前部位置データと、上テーブル左後部位置データとを受け取ると、直ちに、下テーブル111の上部に対する、上テーブル121の下部の傾きのデータである上テーブル傾斜度データを算出する。
【0046】
本実施形態では、上テーブル傾斜度データとして、上テーブル平行度を用いる。上テーブル平行度は、右前部位置と、右後部位置と、左前部位置と、左後部位置との4つのデータを1つにまとめたデータである。これらの右前部位置、右後部位置、左前部位置、左後部位置は、下テーブル111上面と上テーブル右前部位置センサ124aのとの距離を基準とした、下テーブル111上面と上テーブル下部傾きセンサ124それぞれ(上テーブル右前部位置センサ124a~上テーブル左後部位置センサ124d)の相対的な距離を表すデータであり、下テーブル111の上部に対する、上テーブル121の下部の傾きを表すデータである。すなわち、右前部位置は、上テーブル右前部位置センサ124aを基準とした上テーブル右前部位置センサ124aの相対位置であるため0となる。また、右後部位置は、下テーブル111上面と平行な平面であり、上テーブル右前部位置センサ124aの位置にある点が面上にある仮想平面と、上テーブル右後部位置センサ124bとの距離である。同様に、左前部位置は上記の仮想平面と上テーブル左前部位置センサ124cとの距離であり、左後部位置は上記の仮想平面と上テーブル左後部位置センサ124dとの距離である。
【0047】
また、上述した様に、下テーブル上部傾きセンサ112は下テーブル上部傾斜度データを、制御部150に出力することを継続的に実行可能である。同様に、上テーブル右前部位置センサ124a~上テーブル左後部位置センサ124dそれぞれは、上テーブル右前部位置データ、上テーブル左前部位置データ、上テーブル右後部位置データ、上テーブル左後部位置データそれぞれを制御部150に出力することを継続的に実行可能である。これらのデータを制御部150が受け取るやいなや、制御部150は、これらのデータを用いて、上テーブル平行度(右前部位置、右後部位置、左前部位置、左後部位置)を上テーブル傾斜度データとして算出する。これにより、制御部150は、下テーブル111の上部に対する上テーブル121の下部の傾きを、上テーブル平行度として、リアルタイムに把握することができる。
【0048】
油圧部130は、下端にスライド122が取り付けられ、油圧によりスライド122を下方に向けて加圧する油圧シリンダ131と、油圧シリンダ131がスライド122を加圧する加圧力を検出する加圧力検出部132と、スライド122の位置を検出する上型位置検出部133とを備えている。
【0049】
油圧シリンダ131は、制御部150により油圧が制御されている。すなわち、詳細な説明を省略するが、油圧部130は、油圧シリンダ131に駆動オイルを供給するポンプアッセンブリを備えており、制御部150は、ポンプアッセンブリを制御することで、油圧シリンダ131の油圧を制御する。図1に示す様に、スライド122は、油圧シリンダ131の下端にとりつけられており、制御部150が油圧シリンダ131の油圧を制御することで、油圧シリンダ131がスライド122を加圧する加圧力や、スライド122の上下の位置を制御できる。これにより、スライド122に上型220が保持されているとき、制御部150は、油圧シリンダ131の油圧を制御することで、油圧シリンダ131がスライド122を介して上型220を加圧する加圧力や、スライド122に保持された上型220の上下の位置を制御できる。
【0050】
加圧力検出部132は、油圧シリンダ131がスライド122を加圧する加圧力を検出する加圧力センサ(不図示)を備えている。加圧力検出部132は、油圧部130の油圧シリンダ131がスライド122を加圧する加圧力を加圧力センサで検出して、加圧力データとして制御部150に出力することを、継続的に実行可能である。このように、加圧力検出部132は、油圧部130が加圧する加圧力を検出して加圧力データとして制御部150に出力することを継続的に実行する。これにより、制御部150は、油圧シリンダ131がスライド122を加圧する加圧力の大きさをリアルタイムに把握することができる。
【0051】
図1に示す様に、上テーブル121に上型220が取り付けられた場合では、油圧シリンダ131が上テーブル部120を介して上型220を加圧できる。ここで、油圧シリンダ131が上テーブル部120を介して上型220を加圧する加圧力の値は、油圧シリンダ131が上テーブル部120のスライド122を加圧する加圧力の値と等しいと考えることができる。そこで、制御部150が受け取る加圧力データは、油圧シリンダ131が上型220を加圧する加圧力の値とみなすことができる。したがって、制御部150は、加圧力検出部132から継続的に加圧力データを受け取ることで、油圧シリンダ131が上型220を加圧する加圧力の大きさをリアルタイムに把握することができる。
【0052】
上型位置検出部133は、油圧部130の油圧シリンダ131に対する上テーブル121の上下の位置を検出する上テーブル位置センサ(不図示)を備えている。上型位置検出部133は、油圧シリンダ131に対する上テーブル121の上下の位置を検出して、位置データとして出力することを、継続的に実行可能である。ここで、上テーブル121に上型220が取り付けられた場合は、スライド位置センサが検出する上テーブル121の上下の位置は、上型220の上下の位置に対応付けることができる。このため、制御部150は、上型位置検出部133から位置データを継続的に受け取って、位置データから上型220の位置をリアルタイムに把握することができる。なお、以上では、上テーブル位置センサは、上テーブル121の上下の位置として検出するのは、油圧部130の油圧シリンダ131に対する上テーブル121の上下の位置であるが、上テーブル121の上下の位置として、上テーブル121を保持するスライド122の上下の位置を検出してもよい。
【0053】
上述した様に、制御部150は、下テーブル部110、上テーブル部120、油圧部130を制御する(図1参照)。また、上述した様に、制御部150は、下テーブル上部傾きセンサ112、上テーブル下部傾きセンサ124(上テーブル右前部位置センサ124a、上テーブル右後部位置センサ124b、上テーブル左前部位置センサ124c、上テーブル左後部位置センサ124d)、加圧力検出部132、上型位置検出部133、カメラ141に接続されている。制御部150は、加圧力検出部132からの出力によって油圧シリンダ131が上テーブル部120を介して上型220を加圧する加圧力をリアルタイムに把握することができる。また、上型位置検出部133の出力によって上型220の上下の位置をリアルタイムに把握することができる。従って、制御部150は、油圧シリンダ131が上型220を加圧する加圧力と、上型220の上下の位置とをリアルタイムに把握した上で、油圧シリンダ131が上テーブル部120を介して上型220を加圧する加圧力や、上テーブル部120の上テーブル121に保持された上型220の上下の位置を制御できる。
【0054】
制御部150は、油圧シリンダ131に上テーブル部120を介して上型220を加圧させるための加圧条件を設定したうえで、油圧部130を制御し、油圧シリンダ131に上テーブル部120を介して上型220を加圧させることができる。図3には、油圧式型合わせ装置100の構成を示すブロック図を示した。図3に示す様に、油圧式型合わせ装置100は、制御部150に接続された、表示部160、入力部170、時計180、記録部190を備えている。なお、制御部150は、CPUで実行されるコンピュータープログラムとして構成することもでき、LSIを含む電子回路として構成することもでき、更にこれらの組合せとして構成することもできる。
【0055】
表示部160は、制御部150から出力された信号に基づいて画像を表示する。表示部160として、例えば、液晶表示パネルや有機ELパネルを用いることができる。
【0056】
入力部170は、後述する様に、使用者の指示を入力し、この指示を制御部150に出力することができるように構成されている。入力部170は、例えば、複数のボタン、キーボード、マウス、タッチパッド、あるいはこれらを組み合わせたものとして構成することができる。また、表示部160と入力部170とをあわせて一体に構成してもよく、その場合、例えばタッチパネルを用いることができる。
【0057】
時計180は、時刻を制御部150に出力する。また、記録部190は、制御部150からの出力を記憶できる。そして、制御部150は、記録部190に自在にアクセスすることができる。記録部190は、情報を記憶させるために、電源を供給しなくても記憶を保持できる記憶媒体(不図示)を備えている。この記憶媒体は、例えば、SD(登録商標)、CF カード、メモリースティック(登録商標)、マルチメディアカード(Multi Media Card(登録商標))、などのメモリカード(Memory card)、Flash ROM(又はFlash Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの不揮発性メモリ(Non-volatile memory)、HDD(Hard Disk Drive)および円盤型磁性体ディスクなどの磁気ディスク、CD―R(Compact Disk Recordable)、DVD-R(DVDは登録商標)、Blu-ray(登録商標) Discなどの光ディスク、並びに、SSD(Solid state drive)、MO(Magneto-optical)ディスクなどの不揮発性記憶装置(Non-volatile storage)、USBメモリであってもよい。
【0058】
<1-2.油圧式型合わせ装置100の使用方法(図1図4図13)>
以下では、油圧式型合わせ装置100の使用方法について説明する。油圧式型合わせ装置100は、金型200の修理や仕上げのために行われる型合わせと呼ばれる工程(本明細書では、型合わせの工程とも称する)に用いられる。上述した様に、金型200は、下型210と上型220とに分割できる。下型210および上型220それぞれについて、下型210と上型220とが密着する面は分割面と呼ばれる。なお、分割面は、パーティング面や、PL面とも呼ばれる。
【0059】
型合わせでは、下型210と上型220とが互いの分割面で隙間なく密着するように調整する。下型210と上型220とが隙間なく密着できない場合は、下型210の分割面211(図1参照)や上型220の分割面221(図1参照)に過分な凹凸があるため、密着できないと考えることができる。そこで、型合わせでは、まず、下型210の分割面211と上型220の分割面221とを、以下に説明する様に調べる。そして、下型210の分割面211や上型220の分割面221に過分な凹凸があれば、研磨や肉盛り溶接により、過分な凹凸を平坦にする。この様に、下型210の分割面211や上型220の分割面221が有する過分な凹凸を調べ、さらに、過分な凹凸を平坦にすることを、型合わせでは、下型210と上型220とが隙間なく密着できるまで繰り返し行う。
【0060】
<1-2-1.下型210の分割面211と上型220の分割面221とを調べる方法(図4図11)>
以下では下型210の分割面211と上型220の分割面221とを調べる方法について図4図11を用いて説明する。なお、図4図11では、わかりやすくするために、制御部150、表示部160、入力部170、時計180、記録部190などの図示を省略した。
【0061】
(A)金型200を搬入する工程。
図4に示す様に、まず、下テーブル111を後側に移動し、次に下テーブル111に金型200を載せる。ここで、図4に示す様に、金型200は、下型210の上に上型220が積み重ねられた状態で下テーブル111に載せられる。さらに、下テーブル111に下型210を保持させる。そして、図4の矢印で示す様に、下テーブル111を前側に移動させることで、下テーブル111とともに金型200を油圧式型合わせ装置100の内部に移動させる。さらに、図5に示す様に、上テーブル121を下方に移動させた後、上テーブル121に上型220を保持させる。
【0062】
(B)上型220と下型210とを離間させる工程。
次に、図6に示す様に、上テーブル121に上型220を保持させたまま、上テーブル121を上方に移動させる。これにより、下型210と上型220とが離間する(図7参照)。
【0063】
(C)下型210の分割面211へ粉状の塗料を塗布する工程。
次に、図7に示す様に、上型220と下型210とを離間させたまま、下型210の分割面211に粉状の塗料(例えば、四酸化三鉛(Pb34)を成分に含む赤色の顔料)を塗布する。
【0064】
(D)上型220を下型210に向けて油圧により加圧する工程。
次に、加圧条件を設定する。加圧条件の設定については、下記の<1-2-2>に詳細を説明する。そして、図7の矢印に示す様に、上テーブル121を上型220とともに、下方に向けて移動させ、さらに、図8に示す様に、上テーブル121を上型220とともに下型210に向けて、油圧部130の油圧により設定した加圧条件に基づき加圧する。これにより、下型210の分割面211と、上型220の分割面221とが密着し、さらに、上型220が下型210に向けて、設定された加圧条件で加圧される。これにより、下型210に塗布された粉状の塗料(例えば、四酸化三鉛(Pb34)を成分に含む赤色の顔料)の一部は、上型220の分割面221に付着する。
【0065】
ここで、もし仮に、上型220の分割面221および下型210の分割面211に過分な凹凸がなく、上型220の分割面221と下型210の分割面211とが密着できるならば、下型210の分割面211に塗布された粉状の塗料は、上型220の分割面221に均一に付着するはずである。一方、上型220の分割面221および下型210の分割面211のいずれかに過分な凹凸がある場合、下型210の分割面211に塗布された粉状の塗料は、上型220の分割面221に均一には付着せず、上型220の分割面221には、粉状の塗料が比較的多く付着している部分や、この逆に、粉状の塗料が比較的少なく付着している部分などがあり、上型220の分割面221の粉状の塗料の付着にムラが生じるはずである。そして、ムラが生じているならば、ムラに基づき、上型220の分割面221および下型210の分割面211において、過分な凹凸のある個所を特定することができる。すなわち、上型220の分割面221の粉状の塗料の付着の状態を調べることで、上型220の分割面221および下型210の分割面211において、過分な凹凸のある個所について調べることができる。
【0066】
また、詳細は後述するが、制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの加圧力データを上型加圧力として、記録部190に記録させる。また、制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの位置データを加圧位置として、記録部190に記録させる。また、制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの上テーブル傾斜度データを、加圧時上テーブル傾斜度として記録部190に記録させる。さらに、制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し続けた時間間隔を加圧時間として記録部190に記録させる。
【0067】
(E)上型220の分割面221を移動させる工程。
次に、上型220の分割面221の粉状の塗料の付着の状態を調べる。そのために、まず、図8の上向きの矢印に示す様に、上テーブル121を上型220とともに上方に移動させ、上型220を下型210から離間させる。そして、図9に示す様に、下テーブル111を下型210とともに、後方へ移動させる。さらに、図10に示す様に、上テーブル保持部123により上テーブル121を反転させるとともに、下方に移動させる。その結果、図11に示す様に、上型220の分割面221は上方を向く。そして、使用者は、上型220の分割面221の粉状の塗料の付着の状態を調べることで、上型220の分割面221および下型210の分割面211において、過分な凹凸のある個所について調べることができる。
【0068】
図11に示されているように、下型210の分割面211および上型220の分割面221が上を向いている状態(図11参照)では、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えた後の、上型220の分割面221および下型210の分割面211を、カメラ141が撮影できる状態となっている。そこで、カメラ141は、上型220の分割面221および下型210の分割面211を撮影して、その撮影画像を分割面画像データとして制御部150に出力する。そして、制御部は、カメラ141から受け取った分割面画像データを、仕上状態画像として記録部190に記録させる。制御部150は、記録部190に記録されている仕上状態画像を読み出すことが可能である。なお、上記では、カメラ141は、上型220の分割面221および下型210の分割面211を撮影するが、上型220の分割面221もしくは下型210の分割面211の少なくとも1つを撮影して、その撮影画像を分割面画像データとして制御部150に出力するものとしてもよい。
【0069】
また、制御部150は、仕上状態画像の表示に関するデータ変換処理をした上で、画像を表示させる表示処理を実行する。データ変換処理として、例えば、表示部160が仕上状態画像を表示できるように仕上状態画像のデータを変換する処理を行ってもよい。また、データ変換処理として、例えば、仕上状態画像にコントラストを上げる処理を施し、さらに、表示部160が表示できるようにデータ変換する処理を行ってもよい。ここで、表示部160に表示される仕上状態画像はコントラストを上げる処理が施こされたことにより、上型220の分割面221における粉状の塗料の付着に関するムラが浮き彫りにされている。このため、上型および下型の分割面における過分な凹凸のある個所を調べることをより容易にし得る。
【0070】
<1-2-2.加圧条件の表示および設定について(図12図13)>
以下に詳細を説明するように、油圧式型合わせ装置100は、加圧条件を記録し、将来、記録された加圧条件に基づき、加圧条件を設定したうえで、上型220を加圧するよう油圧部130の制御が再現可能である。上述した様に、上型220が下型210に向けて、設定された加圧条件で加圧することで、下型210に塗布された粉状の塗料(例えば、四酸化三鉛(Pb34)を成分に含む赤色の顔料)の一部を、上型220の分割面221に付着させる。そして、上型220の分割面221に付着した粉状の塗料における付着のムラを調べる。このために、上型220の分割面221に付着させる粉状の塗料の量は、ムラを調べやすい程度にする必要がある。
【0071】
ここで、上型220を下型210に向けて加圧する加圧力が高いほど、下型210の分割面211に塗布された粉状の塗料は、上型220の分割面221に付着しやすい。そして、粉状の塗料が上型220の分割面221に付着しすぎても、付着しなさすぎても、上型220の分割面221に対する粉状の塗料の付着におけるムラを調べることが困難になる。そこで、油圧式型合わせ装置100は、加圧力等の加圧条件を設定したうえで、上型220を下型210に向けて加圧する。
【0072】
油圧式型合わせ装置100は、設定する加圧条件として、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧する加圧力と、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの位置である加圧位置と、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し続けた時間間隔である加圧時間との3つを設定する。ここで、油圧部130が上型220を下型210に向けて設定された加圧力で加圧すれば、加圧し終えるときの加圧力(その加圧力のデータは上型加圧力となる)も設定された加圧力となるよう油圧部130が制御される。このため、この様に加圧力が設定されることで、上型加圧力が、設定された加圧力となるように制御される。
【0073】
なお、加圧位置を加圧条件に含めるのは、上型220の位置により、上型220の分割面221と下型210の分割面211とが密着する度合いが変わり、密着する度合いによって、下型210の分割面211に塗布された粉状の塗料が上型220の分割面221に付着する付着のしやすさが変わる場合があると考えられるからである。また、加圧時間を加圧条件に含めるのは、上型220を下型210に向けて加圧する時間が長いほど、下型210の分割面211に塗布された粉状の塗料は、上型220の分割面221に付着しやすいと考えることができるからである。
【0074】
制御部150は、上型220を下型210に向けて加圧する際に、上型220が実際に下型210を加圧しているか否かについての検出を行う。この検出は、加圧力検出部132が出力する加圧力データを制御部150が分析することによって実現される。この検出において、上型220が実際に下型210を加圧していることが検出された場合、制御部150は、まず、上型220の上下の位置が上述した(D)の工程にて設定された加圧位置付近にあるか否かを判定する。ここで、「加圧位置付近」とは、下型210に対する上下位置の範囲であり、あらかじめ設定されたものである。
【0075】
上記判定の結果が「否」である(すなわち、上型220の上下位置が上記加圧位置付近にない)場合、制御部150は、上型220による下型210の加圧を停止させる。一方、記判定の結果が「是」である(すなわち、上型220の上下位置が上記加圧位置付近にある)場合、制御部150は、油圧部130を制御して、(D)の工程にて設定された加圧条件に基づく、上型220による下型210の加圧を実現させる。ここで、上記加圧条件は、上型220の上下位置を(D)の工程にて設定された加圧位置にあわせること、上型220による下型210の加圧力を(D)の工程にて設定された加圧力にすること、および上型220による下型210の加圧時間を(D)の工程にて設定された加圧時間にすることを含む。
【0076】
そして、制御部150は、上記加圧条件に基づいた上型220による下型210の加圧が終了するタイミングにおいて、このタイミングにおける上型220の位置データ、上型220の加圧力データ、上型220による加圧の継続時間、および、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えたときの時刻のそれぞれを、加圧位置、上型加圧力、加圧時間、および、加圧日時として記録部190に出力する。これに対し、記録部190は、制御部150の出力である加圧位置、上型加圧力、加圧時間、および、加圧日時を記録する。
【0077】
さらに、制御部150は、上記加圧条件に基づいた上型220による下型210の加圧が終了するタイミングにおいて、上テーブル傾きセンサ(下テーブル上部傾きセンサ112、上テーブル右前部位置センサ124a~上テーブル左後部位置センサ124d)が出力したデータ(上テーブル右前部位置データ、上テーブル右後部位置データ、上テーブル左前部位置データ、上テーブル左後部位置データ)を受け取る。すると、制御部150は、直ちに、上テーブル平行度(右前部位置、右後部位置、左前部位置、左後部位置)を上テーブル傾斜度データとして算出し、さらにこの上テーブル傾斜度データを加圧時上テーブル傾斜度として記録部190に出力する。そして、記録部190は、制御部150から出力された加圧時上テーブル傾斜度を記録する。また、図11を用いて上述した様に、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えた後の、上型220の分割面221および下型210の分割面211の撮影画像を分割面画像データとして制御部150に出力する。そして、制御部は、カメラ141から受け取った分割面画像データを、仕上状態画像として記録部190に出力し、記録部190は受け取った仕上状態画像を記録する。
【0078】
以上により、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの加圧力データを上型加圧力として出力し、記録部190は、この上型加圧力を記録する。また、制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの位置データを加圧位置として記録部190に出力し、記録させる。また、制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し続けた時間間隔(上記の加圧の継続時間)を加圧時間として記録部190に記録させる。制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えた後の、分割面画像データを、仕上状態画像として記録部190に記録させる。さらに制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの上テーブル傾斜度データを、加圧時上テーブル傾斜度として記録部190に記録させる。
【0079】
ここで、制御部150は、以上の情報6つの情報を対応付けたデータベースを作成し、記録部190に記録させる。すなわち、1、油圧部130が上型220を加圧する加圧力(上型加圧力)。2、油圧部130に対する上型220の位置(加圧位置)。3、下テーブルの上部に対する、上テーブルの下部の傾き(加圧時上テーブル傾斜度)。4、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し続けた時間間隔(加圧時間)。5、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えたときの時刻(以下、加圧日時とする)。6、仕上状態画像。制御部150は、これら、上型加圧力と、加圧位置と、加圧時上テーブル傾斜度と、加圧時間と、加圧日時と、仕上状態画像の6つ情報を対応づけたデータベースを記録部190に記録し、記録部190に記録したこれらの6つの情報を読み取ることができる。そして、この様に6つの情報をデーターベースとして記録部190に記録することで、以下に説明する様に、これら6つの情報の活用を容易にし得る。
【0080】
以上で説明した加圧条件を、上述した(D)の工程にて設定するために、制御部150は、上記の6つの情報を記録部190から呼び出し、例えば図12に示す画像を表示部160に表示させてもよい。以下では、図12および図13を用いて、使用者が加圧条件を入力する方法の1つの例を説明する。以下の説明では、今回型合わせをする金型200と同型の金型や類似の金型を、油圧式型合わせ装置100を用いて既に型合わせし、そのときの加圧条件が記録部190に記録されているとする。図12の太線で描かれた欄は、使用者が入力部170を用いて入力可能な欄である。すなわち、図12に示す「今回の金型番号」の欄は、今回型合わせをする金型200の型番を入力する欄である。「加圧力」、「加圧位置」、「加圧時間」の欄は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧するときの条件を入力する欄である。「加圧力」は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧するときの加圧力を入力する欄である。そして、「加圧位置」の欄は油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの、上型220の上下の位置である加圧位置を入力する欄である。そして、「加圧時間」の欄は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し続しける時間間隔である加圧時間を入力する欄である。
【0081】
加圧条件の設定は、次の様に行うことができる。まず、使用者が入力部170を用いて、今回型合わせをする金型200の型番を「今回の金型番号」の欄に入力する。すると、制御部150は、図13に示す画像を表示部160に表示させる。図13の「今回の金型番号」の欄に示す様に、ここでは例として入力した金型番号を「H30M08a」とした。そして、図13に示す様に、過去に記録した加圧条件に関するデータが表示される。図13では、左の「番号」の欄の数字が大きいほど過去のデータとなる。「金型番号」の欄には、過去に型合わせを行った金型の型番(金型番号A~金型番号E)が表示されている。「日時」の欄には、上述の、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えたときの時刻である加圧日時(日時a~日時e)が表示されている。そして、上型加圧力の欄である「加圧力」、「加圧位置」、「加圧時間」の欄それぞれに、加圧条件として設定した値の欄の「設定値」と、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えたときの値の欄の「記録値」とが表示されている。
【0082】
また、図13に示す「加圧時 上テーブル平行度」の欄には、日時の欄に対応する加圧時上テーブル傾斜度として、上テーブル平行度(右前部位置、右後部位置、左前部位置、左後部位置)が表示される。図13に示す「右前」が右前部位置に対応し、「左前」が左前部位置に対応し、「右後」が右後部位置に対応し、「左後」が左後部位置に対応する。ここで、加圧時上テーブル傾斜度は、上述した様に、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときにおける上テーブル傾斜度データである。本実施形態では、加圧時上テーブル傾斜度(上テーブル傾斜度データ)を、上テーブル平行度(右前部位置、右後部位置、左前部位置、左後部位置)のデータとしている。図2を用いて上述した様に、これらの右前部位置、右後部位置、左前部位置、左後部位置は、下テーブル111上面に対する上テーブル右前部位置センサ124aのとの距離を基準とした、下テーブル111上面からの相対的な距離であり、下テーブル111の上部に対する、上テーブル121の下部の傾きのデータである。加圧時上テーブル傾斜度の値は、例えば、金型で成型品を製造するときにおける金型に加えられる圧力や水平面に対する金型の分割面の向きを考慮して型合わせを行う場合に参考にすることができる。
【0083】
図13に示す画像の「仕上状態画像」の欄は、数字を二重線で囲んだ欄となっている。使用者が、この二重線で囲まれている領域をクリックする等の指示を入力すると、制御部150は、番号に対応する仕上状態画像を記録部190から読み出し、表示部160に表示させる。この様に、仕上状態画像を表示部160に表示させることで、下型210の分割面211および上型220の分割面221に対する粉状の塗料の付着におけるムラを使用者が調べることがより一層容易になり得る。
【0084】
使用者は「設定番号」の欄の右の枠内に、番号(1~5)を入力すると、下欄の番号に対応する「設定値」の加圧条件が、今回の加圧条件として設定される。また、「今回の設定値」の欄の右の枠内に3つの加圧条件を個別に入力しても、入力された加圧条件を今回の加圧条件として設定できる。こうして設定した設定値は、制御部150が記録部190に上記データーベースに含める情報として記録させる。
【0085】
上記では、加圧条件の設定を、(D)上型220を下型210に向けて油圧により加圧する工程で行う。しかし、加圧条件の設定は、(D)の工程よりもさらに前に行うことにしてもよく、例えば、(A)金型200を搬入する工程の際に行うものとしてもよい。
【0086】
また、図13に示す画像において、適宜検索する欄を設け、記録部190の上記データーベースに含まれる情報として記録部190に記録されている、上型加圧圧力や、加圧位置や、加圧時間を検索し、該当する過去の加圧条件や仕上げ状態画像を呼び出す機能を実現してもよい。また、この様に呼び出した過去の加圧条件を今回の加圧状態に設定する機能を実現してもよい。
【0087】
<1-3.油圧式型合わせ装置100の作用効果について>
以上で説明した構成を備える本実施形態の油圧式型合わせ装置100は、以下のような作用効果を奏する。上記の構成により、油圧式型合わせ装置100では、加圧力検出部132が検出する、油圧部130が上型220を加圧する加圧力を加圧力データとして制御部150が受け取り、制御部150は、受け取った加圧力データに基づき、設定された加圧条件で加圧するように油圧部130を制御する。ここで、加圧力データは、駆動オイルの油温や劣化の状態に影響されることはなく、油圧部130の制御は、上型220を加圧する加圧力に基づく。油圧式型合わせ装置100は、設定した加圧条件にて、上型220を下型210に向けて加圧し得る。
【0088】
また、制御部150は、記録部190に記録された上型加圧力データに基づき、加圧条件を設定したうえで、上型220を加圧するよう油圧部130の制御が再現可能である。また、このように、再現できれば、上型220と下型210を含めた金型200の型合わせの仕上がりの状態も、再現できると考えることができる。従って、油圧式型合わせ装置100では、以下に詳細な例を説明する様に、加圧条件を記録して将来的に活用し得る。
【0089】
加圧条件を記録して将来的に活用することの例として、金型200の仕上げの状態が良好となっていることの保証、すなわち、金型200の仕上げの品質保証について説明する。品質保証では、まず、次の様に、好適な加圧条件を調べる。油圧部に上型220を加圧させるための加圧条件を設定したうえで型合わせし、さらに金型200の仕上がりを評価することを、複数回行う。その際、設定する加圧条件を種々変更し、金型200の型合わせの仕上がりを評価し、仕上がりの状態を比較する。そして、良好な仕上がりとなる場合の加圧条件を、好適な加圧条件とする。ここで、金型200の仕上がりの評価の基準には、次の種々の事項を考慮することができる。この事項として、例えば、金型200の分割面(211、221)の平面度、上型220や下型210を構成する構成部品の形状精度、金型200で成型品を製造するときにおける金型200に加えられる圧力や水平面に対する金型200の分割面(211、221)の向き、さらに、金型200を用いて製造された成型品に要求される形状精度、が挙げられる。金型200の仕上がりを評価するために考慮するこれらの事項の数は、必要に応じて増加するため、金型200の仕上がりの評価の基準は、評価する金型によって変わり得る。
【0090】
上記の好適な加圧条件を用いて、金型200の型合わせをすれば、金型200を適切に仕上げることができると考えることができる。換言すれば、金型200が、好適な加圧条件で型合わせされたものであれば、金型200を良好に仕上げられている金型200とみなすことができると考えることもできる。従って、好適な加圧条件を用いて型合わせされたことが、仕上げの状態が良好となっていることの保証になると考えることができる。さらに、金型200のメンテナンスのために、金型200を仕上げ直すときにも、この様に品質保証により、仕上げ直した金型200の状態が確実に良好であると保証し得る。
【0091】
一般的に、金型200の仕上げの状態が良好か否かを確かめるために、金型200を用いて試作品を作成し、試作品を用いて金型200の仕上げの状態が良好か否かを検証し、検証の結果、金型200の仕上げの状態が良好でないときは金型200を仕上げ直すことが行われている。そして、この様に金型200を仕上げ直す回数が増える程、金型200を仕上げ直す時間と費用がかさむ。一般的に、金型200の仕上げの状態が、良好か否か不確実なため、メンテナンスにかかる時間や費用を正しく見積もることが困難であり、ひいては、金型200を用いた成形品の製造コストを正しく見積もることも困難であった。
【0092】
一方、上記の様に金型仕上げの品質保証によって、金型200の仕上げの状態を確実に良好にし得る。仮に、金型200の仕上げの状態を確実に良好にできるとすれば、金型200を仕上げ直す手間を省き得り、金型200を用いて試作品を作成する手間を省き得り、さらに、試作品を用いて金型200の仕上げの状態が良好か否かを検証する手間を省き得る。また、仮に、上記の様に金型仕上げの品質保証を行うことで、金型200を仕上げ直す回数の増加が抑制され、金型200を仕上げ直すための時間や費用が抑制されるとすれば、金型200を仕上げるための製造コストを抑え、金型200を仕上げ直すために成形品の製造開始日が遅れることが抑制される。これは、金型200のメンテナンスのために、金型200を仕上げ直すときにも同様である。ひいては、金型200の設計から成形品を製造するまでにおいて、トータルのコストのより正確な算出や、金型200の運用コストのより正確な算出を容易にし得る。
【0093】
油圧式型合わせ装置100は、記録部190に記録された、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの上型加圧力だけでなく、加圧位置に基づく加圧条件を設定したうえで、上型220を加圧することができる。加圧位置を加圧条件に含めるのは、上型220の位置により、上型220の分割面221と下型210の分割面211とが密着する度合いが変わり、密着する度合いによって、下型210の分割面211に塗布された粉状の塗料が上型220の分割面221に付着する付着のしやすさが変わる場合があると考えられるからである。このため、油圧式型合わせ装置100では、上型加圧力および加圧位置が記録されたときを、より高い再現性で再現して、上型220を加圧し得る。
【0094】
油圧式型合わせ装置100は、記録部190に記録された、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの上型加圧力だけでなく、加圧時間に基づいて加圧条件を設定したうえで、上型220を加圧することができる。加圧時間を加圧条件に含めるのは、上型220を下型210に向けて加圧する時間が長いほど、下型210の分割面211に塗布された粉状の塗料は、上型220の分割面221に付着しやすいと考えることができるからである。このため、油圧式型合わせ装置100では、上型加圧力および加圧時間が記録された時を、より高い再現性で再現して、上型220を加圧し得る。
【0095】
上述した様に、型合わせの工程において、上型220を下型210に向けて油圧により加圧させた(図8参照)後、上型220と下型210とを離間させ(図9参照)、上型220の分割面221および下型210の分割面211における粉状の塗料の付着のムラを調べる(図11参照)。そして、調べたムラから、上型220の分割面221および下型210の分割面211において、過分な凹凸のある個所を特定する。また、金型の仕上げでは、さらにこの過分な凹凸のある個所を平坦になるよう加工することで、上型220および下型210の分割面211を仕上げる。
【0096】
ここで、上記構成により、油圧式型合わせ装置100は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えた後の、上型220の分割面221もしくは下型210の分割面211の少なくとも1つを撮影した撮影画像を分割面画像データとして出力し、この分割面画像データを仕上状態画像として記録部190に記録させることができる。そして、直近の仕上状態画像、および、記録部190に記録された仕上状態画像に対して、仕上状態画像の表示に関するデータ変換処理をした上で、画像を表示させる表示処理を実行できる。これにより、操作者は、上型220の分割面221および下型210の分割面211における粉状の塗料の付着のムラを、表示された仕上状態画像から判断しうる。これにより、操作者は、上型220の分割面221および下型210の分割面211において、過分な凹凸のある個所をより容易に特定し得る。
【0097】
また、上述した様に、油圧部130に上型220を加圧させるための加圧条件を設定したうえで型合わせし、さらに金型200の仕上がりを評価することを、複数回行う場合には、設定する加圧条件を種々変更し、金型200の型合わせの仕上がりを評価し、仕上がりの状態を比較することで、好適な加圧条件を調べる。ここで、例えば、加圧条件のデータ、金型200のデータ(下記)、および製造時の金型200に関するデータ(下記)だけでなく、仕上状態画像を用い、多変量解析のアルゴリズムや、人工知能(AI)のアルゴリズム等により、金型200の仕上がりの評価および比較を行ってもよい。そして、この評価は、制御部150が行ってもよい。また、制御部150が、外部のコンピュータに、加圧条件や仕上状態画像を送信するものとし、さらに、外部のコンピュータが上記の評価を行ってもよい。この様に評価することで、金型の型合わせの仕上がりの評価をより容易にし得る。ひいては、好適な加圧条件をより容易に調べ得る。
【0098】
金型200のデータとして、例えば、金型200の設計図のデータ、金型200の材質のデータ、金型200の分割面(211、221)の平面度、そして、上型220や下型210を構成する構成部品の形状精度のデータを挙げることができる。また、製造時の金型200に関するデータとして、例えば、金型200を用いて成形品を製造する工程において、金型200を用いて成形品の製造を開始してから金型200の修理が必要となる程度に劣化するまでの間に製造できた成形品の数のデータ、金型200が成型品を製造するときにおける金型200に加えられる圧力や水平面に対する金型200の分割面(211、221)の向き、そして、金型200を用いて製造された成型品に要求される形状精度を挙げることができる。
【0099】
また、上述した様に、油圧部130に上型220を加圧させるための加圧条件を設定したうえで型合わせし、さらに金型200の仕上がりを評価することを、複数回行う場合には、設定する加圧条件を種々変更し、金型200の型合わせの仕上がりを評価し、仕上がりの状態を比較することで、好適な加圧条件を調べる。上記の構成により、制御部150は、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えるときの下テーブルの上部に対する上テーブルの下部の傾きを、上テーブル傾斜度データとして記録部190に記録し、読み出すことができる。これにより、金型200の型合わせの仕上がりの評価のために、上テーブル傾斜度データを用いることで、金型200の型合わせの仕上がりの評価をより容易にし得る。
【0100】
ここで、例えば、加圧条件のデータおよび上記の金型200のデータや、上記の製造時の金型200に関するデータだけでなく、上テーブル傾斜度データを用い、多変量解析のアルゴリズムや、人工知能(AI)のアルゴリズム等により、金型200の仕上がりの評価および比較を行ってもよい。そして、この評価は、制御部150が行ってもよい。また、制御部150が、外部のコンピュータに、加圧条件や上テーブル傾斜度データを送信するものとし、さらに、外部のコンピュータが上記の評価を行ってもよい。また、外部のコンピュータは、他のコンピュータから上記の金型200のデータや、上記の製造時の金型200に関するデータを受け取ったうえで、上記の評価を行ってもよい。この様に評価することで、金型200の型合わせの仕上がりの評価をより容易にし得る。ひいては、好適な加圧条件をより容易に調べ得る。
【0101】
<<2.実施形態2(図14)>>
次に、実施形態2の油圧式型合わせ装置1100について、図14を用いて説明する。油圧式型合わせ装置1100において、油圧式型合わせ装置100と構成及び作用が実質的に同じとなる箇所については、これらと同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態の油圧式型合わせ装置1100の構成で、実施形態1の油圧式型合わせ装置100の構成と異なる点は、制御部1150が、コンピュータ・ネットワークNWに接続されていることにある。コンピュータ・ネットワークNWは、金型データとして、上記の金型200のデータ、もしくは、上記の製造時の金型200に関するデータのうち、少なくともいずれか1つを記憶している金型情報記憶装置1500に接続している。制御部1150は、コンピュータ・ネットワークNW経由で金型情報記憶装置1500に記憶されている金型200のデータや、製造時の金型200に関するデータを参照することができる。制御部1150は、上型加圧力だけでなく、コンピュータ・ネットワークNWを介して金型情報記憶装置1500に記憶されている金型データをも参照して好適な加圧条件を算出することができる。油圧式型合わせ装置1100は、この様に算出された加圧条件を設定したうえで、上型220を加圧するよう油圧部130の制御が可能である。
【0102】
<2-1.油圧式型合わせ装置1100の作用効果について>
上記構成により、制御部1150は、コンピュータ・ネットワークNW経由で金型情報記憶装置1500に記憶されている金型データを参照することができる。そして、制御部1150は、上型加圧力だけでなく、金型情報記憶装置1500に記憶されている金型200に関する情報である金型データをも参照して算出された加圧条件を設定したうえで、上型220を加圧するよう油圧部130の制御が可能である。金型データとしては、例えば、上記の金型200のデータや、上記の製造時の金型200に関するデータを挙げることができる。加圧条件の算出は、コンピュータ・ネットワークNWに接続された加圧条件を算出するためのコンピュータ1600(図14参照)を設け、このコンピュータ1600に行わせてもよい。あるいは、金型情報記憶装置1500に加圧条件を算出するためのコンピュータを敷設し、このコンピュータに加圧条件を算出させてもよい。また、加圧条件の算出は、場合によっては、AIのアルゴリズムを用いることで、設計段階の金型に対しても行い得る。
【0103】
<<3.その他の実施形態>>
以下で説明するその他の実施形態において、上述した実施形態1で説明した油圧式型合わせ装置100と実質的な構成及び作用が同じとなる箇所については、これらと同一の符号を付して説明を省略し、異なる箇所について詳しく説明することとする。その他の実施形態として、例えば、上述した実施形態1の油圧式型合わせ装置100は、加圧条件として、上型加圧圧力、加圧時間、加圧位置の3つを設定できる。しかし、加圧条件は、これらの3つ以外の条件を含んでもよく、1つ以上であればよい。例えば、加圧条件は、上型加圧圧力のみでもよい。また、加圧条件は、上型加圧圧力および加圧時間の2つでもよい。また、加圧条件は、上型加圧圧力および加圧位置の2つでもよい。
【0104】
上述した実施形態1の油圧式型合わせ装置100の構成は、下テーブル111および上テーブル121の水平面に対する傾きを変える機構を備えない構成とした。しかし、実施形態1の油圧式型合わせ装置100または実施形態2の油圧式型合わせ装置1100において、下テーブル111もしくは上テーブル121の少なくとも1つが、水平面に対する傾きを変える機構を備える構成としてもよい。
【0105】
上述した実施形態1では、下テーブル上部傾きセンサ112、上テーブル右前部位置センサ124a~上テーブル左後部位置センサ124dの5つのセンサを併せて、1つの上テーブル傾きセンサとしており、これら5つのセンサで上テーブル傾きセンサは構成されている。そして、これらのセンサが検出した値を用いて、制御部150は、下テーブル111の上部に対する上テーブル121の下部の傾きのデータである、上テーブル傾斜度データを算出する。しかし、上テーブル傾きセンサを、上テーブル右前部位置センサ124a~上テーブル左後部位置センサ124dの4つのセンサで構成してもよい。その場合、右前部位置、右後部位置、左前部位置、左後部位置は、上テーブル右前部位置センサ124aの上下方向の位置を基準とした上下方向の相対的な位置とすることができる。(右前部位置は上テーブル右前部位置センサ124aの位置とし、右後部位置は上テーブル右後部位置センサ124bの位置とし、左前部位置は上テーブル左前部位置センサ124cの位置とし、左後部位置は上テーブル左後部位置センサ124dの位置とする。)
【0106】
上述した実施形態1の油圧式型合わせ装置100では、加圧条件を記録した日時(すなわち、油圧部130が上型220を下型210に向けて加圧し終えた直後の日時)を記録部190に記録し、図13に示されている様に、表示部160に日時を表示する。ここで、日時に代えて日付を用いてもよい。すなわち、日付を記録部190に記録し、日付を表示部160に表示されている日時の箇所に表示(図13参照)してもよい。
【0107】
上述した実施形態1の油圧式型合わせ装置100は、下テーブル111が前後に移動するよう構成されているが、例えば、下テーブル111をフレーム140の下部で固定されている構成のように、下テーブル111が前後に移動しない構成であってもよい。また、上述した実施形態1の油圧式型合わせ装置100は、上型220を回転可能に保持するために上テーブル保持部123を備えているが、必ずしも上型220を回転させる必要がないため、上テーブル保持部123を備えなくともよい。
【0108】
本発明の油圧式型合わせ装置100は、上記の実施の形態にて説明した構造、構成、外観、形状等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【符号の説明】
【0109】
100 油圧式型合わせ装置
110 下テーブル部
111 下テーブル
112 下テーブル上部傾きセンサ
113 下テーブルガイド
120 上テーブル部
121 上テーブル
122 スライド
123 上テーブル保持部
124 上テーブル下部傾きセンサ
124a 上テーブル右前部位置センサ
124b 上テーブル右後部位置センサ
124c 上テーブル左前部位置センサ
124d 上テーブル左後部位置センサ
130 油圧部
131 油圧シリンダ
132 加圧力検出部
133 上型位置検出部
140 フレーム
141 カメラ
150 制御部
160 表示部
170 入力部
180 時計
190 記録部
200 金型
210 下型
211 分割面
220 上型
221 分割面
1100 油圧式型合わせ装置
1500 金型情報記憶装置
1600 コンピュータ
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