(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】包餡生地の製法
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20221031BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20221031BHJP
A21D 8/04 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L7/109 D
A21D8/04
(21)【出願番号】P 2019223488
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594101307
【氏名又は名称】協和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】荒井 友香
(72)【発明者】
【氏名】上條 岳巳
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-033646(JP,A)
【文献】特開2016-067228(JP,A)
【文献】特開2007-135486(JP,A)
【文献】特開平11-346663(JP,A)
【文献】特開2013-215173(JP,A)
【文献】特開2007-043932(JP,A)
【文献】特開2016-135118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉を主原料としてプロテアーゼを添加する酵素添加工程(3)
と、保温によりプロテアーゼを反応させる保温反応工程(5)とを、備え、
上記酵素添加工程(3)に於て、米粉 100gに対して 4,500U以上 900,000U以下の割合でプロテアーゼを添加し、
上記保温反応工程(5)に於ける保温温度を30℃~60℃に設定するとともに、保温時間を 0.5時間~16時間に設定して、包餡生地に伸展性及び成型性をもたせる
ことを特徴とする包餡生地の製法。
【請求項2】
米糠に水とプロテアーゼを添加して該プロテアーゼを反応させて抽出液を作製する抽出液作製工程(A)と、米粉を主原料として上記抽出液を添加する抽出液添加工程(18)とを、備え、
上記抽出液作製工程(A)に於て、米糠 100gに対して 360,000U以上 1,800,000U以下の割合のプロテアーゼ及び 300mL以上 700mL以下の割合の水を加えた後、濾過して抽出液を作成し、該抽出液を、上記抽出液添加工程(18)において米粉 100gに対して10g以上50g以下の割合で加える包餡生地の製法であって、
上記抽出液作製工程(A)が、米糠と水とプロテアーゼとを混合して水・米糠混合液を得る混合工程(13)と、上記水・米糠混合液を保温してプロテアーゼを反応させる保温反応工程(14)とを、備え、
上記保温反応工程(14)に於ける反応温度を30℃~60℃に設定するとともに、反応時間を 0.5時間~25時間に設定して、包餡生地に伸展性及び成型性をもたせることを特徴とする
包餡生地の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包餡生地の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
小籠包、シュウマイ、豚まん、お焼き等の皮として包餡生地が用いられてきた。従来、包餡生地の製法は、小麦粉を主原料として、水や調味料等を加えて混練し、製造していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の包餡生地の製法は、包餡生地に必要とされる伸展性等を得るために、小麦粉を主原料とし、小麦粉に含まれるグルテンによって、上記伸展性等を得ていた。しかし、グルテンによる食物アレルギー(即ち、小麦アレルギー)の問題があった。そこで、本発明は、小麦アレルギーを回避することができる包餡生地の製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る包餡生地の製法は、米粉を主原料としてプロテアーゼを添加する酵素添加工程と、保温によりプロテアーゼを反応させる保温反応工程とを、備え、上記酵素添加工程に於て、米粉 100gに対して 4,500U以上 900,000U以下の割合でプロテアーゼを添加し、上記保温反応工程に於ける保温温度を30℃~60℃に設定するとともに、保温時間を 0.5時間~16時間に設定して、包餡生地に伸展性及び成型性をもたせる方法である。
【0006】
また、米糠に水とプロテアーゼを添加して該プロテアーゼを反応させて抽出液を作製する抽出液作製工程と、米粉を主原料として上記抽出液を添加する抽出液添加工程とを、備え、上記抽出液作製工程に於て、米糠 100gに対して 360,000U以上 1,800,000U以下の割合のプロテアーゼ及び 300mL以上 700mL以下の割合の水を加えた後、濾過して抽出液を作成し、該抽出液を、上記抽出液添加工程において米粉 100gに対して10g以上50g以下の割合で加える包餡生地の製法であって、上記抽出液作製工程が、米糠と水とプロテアーゼとを混合して水・米糠混合液を得る混合工程と、上記水・米糠混合液を保温してプロテアーゼを反応させる保温反応工程とを、備え、上記保温反応工程に於ける反応温度を30℃~60℃に設定するとともに、反応時間を 0.5時間~25時間に設定して、包餡生地に伸展性及び成型性をもたせる方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の包餡生地の製法によれば、小麦アレルギーを回避することができる包餡生地を作製することができる。特に、米粉や(米由来の)米糠を用いて、小麦アレルギーを回避することができる包餡生地を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示すフローチャート図である。
【
図2】第2の実施の形態を示すフローチャート図である。
【
図3】第3の実施の形態を示すフローチャート図である。
【
図4】第4の実施の形態を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す。この包餡生地の製法は、小籠包、シュウマイ、豚まん、お焼き等の皮として用いられる包餡生地の製法である。包餡生地は、餡を包んだり、襞を寄せたりするので、伸展性が必要とされる。
【0010】
まず、米粉を混練器に投入する米粉投入工程1を行う。次に、米粉に対して、水を添加する水添加工程2、及び、プロテアーゼを添加する酵素添加工程3を行う。プロテアーゼは、例えば、オリエンターゼ90N (エイチビィアイ株式会社製、Bacillus subtilis 由来)である。使用するプロテアーゼは食品用として使用可能なプロテアーゼ(動物由来、植物由来、細菌由来および真菌由来等)であれば特に限定しない。米粉 100gに対して 4,500U以上 900,000U以下の割合でプロテアーゼを添加する。望ましくは、米粉 100gに対して18,000U以上 450,000U以下の割合でプロテアーゼを添加する。さらに望ましくは、米粉 100gに対して18,000U以上 225,000U以下の割合でプロテアーゼを添加する。プロテアーゼの添加量が、米粉 100gに対して 4,500U未満の場合、伸展性等が悪くなり、包餡生地として不適となる。プロテアーゼの添加量が、米粉 100gに対して 900,000Uを越える場合、プロテアーゼが多過ぎて無駄である。水添加工程2と酵素添加工程3の順序は、いずれが先でも良い。そして、米粉と水とプロテアーゼとを混練する第1混練工程4を行う。
【0011】
次に、保温によりプロテアーゼを反応させる保温反応工程5を行う。保温反応工程5に於ける保温温度を30℃~60℃に設定するとともに、保温時間を 0.5時間~16時間に設定する。最適温度は、プロテアーゼの種類によって決定される。反応速度は、プロテアーゼの種類と(プロテアーゼの米粉中のたんぱく質に対する)濃度と温度によって決定される。保温反応工程5に於ける保温温度を、上記最適温度に応じて(適切な範囲内に)、設定する。そして、保温反応工程5に於ける保温時間を、プロテアーゼの種類と(米粉中のたんぱく質に対するプロテアーゼの)濃度と設定温度によって決定された反応速度に応じて(適切な範囲内に)、設定する。保温反応工程5に於て、米粉に含まれるたんぱく質が、プロテアーゼによって異化(分解)されて、(伸展性等に関して)グルテンに代わるはたらきをする物質となる。
【0012】
次に混練工程を行うことで、包餡生地が作製される。また、保温反応工程5の後に、米粉、水、プロテアーゼ以外の材料(「その他原材料P」という。)を投入するその他原材料投入工程6を行う。その他原材料Pは、例えば、砂糖、ベーキングパウダー、ドライイースト、米油等である。その後、第2混練工程7を行う。即ち、米粉とプロテアーゼと水とを混合して保温したものに、砂糖、ベーキングパウダー、ドライイースト、米油等の材料を加えたものを、混練して、包餡生地が作製される。包餡生地には、小麦アレルギーの原因となるグルテンは、含まれない。
【0013】
次に、成型工程8を行う。成型工程8は、第2混練工程7にて作製した包餡生地を伸展して、所定形状に成型する。例えば、直方体状、円形薄皮、長円形薄皮、矩形薄皮等の形状に成型する。
【0014】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図2に示すように、保温反応工程5の後、その他原材料を投入せずに(即ち、その他原材料投入工程6を行わず)、第2混練工程7を行う。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0015】
図3は、本発明に係る第3の実施の形態を示す。抽出液作製工程Aを行う。抽出液作製工程Aは、米糠液作製工程9を備える。米糠液作製工程9は、具体的には、まず、米糠を混練器に投入する米糠投入工程10を行う。次に、米糠に対して、水を添加する水添加工程11、及び、プロテアーゼを添加する酵素添加工程12を行う。水添加工程11に於て、米糠 100gに対して 300mL以上 700mL以下の水を加える。米糠 100gに対して加える水が 300mL未満の場合、(後述の濾過工程16に於て)適切に濾過することができない。米糠 100gに対して加える水が 700mLを超える場合、抽出液中のグルテンに代わる物質の濃度が薄く、どのような割合で加えても、包餡生地として適切な特性を得ることができない。
【0016】
プロテアーゼは、例えば、オリエンターゼ90N (エイチビィアイ株式会社製、Bacillus
subtilis 由来)である。使用するプロテアーゼは食品用として使用可能なプロテアーゼ(動物由来、植物由来、細菌由来および真菌由来等)であれば特に限定しない。米糠 100gに対して 360,000U以上 1,800,000U以下の割合でプロテアーゼを添加する。望ましくは、米糠 100gに対して 450,000U以上 900,000U%以下の割合でプロテアーゼを添加する。プロテアーゼの添加量が、米糠 100gに対して 360,000U未満の場合、伸展性等が悪くなり、包餡生地として不適となる。プロテアーゼの添加量が、米糠 100gに対して 1,800,000Uを超える場合、プロテアーゼが多過ぎて無駄である。水添加工程11と酵素添加工程12の順序は、いずれが先でも良い。そして、米糠と水とプロテアーゼとを混合する混合工程13を行い、水・米糠混合液が得られる。
【0017】
次に、上記水・米糠混合液を保温してプロテアーゼを反応させる保温反応工程14を行う。反応温度を30℃~60℃に設定するとともに、反応時間を 0.5時間~25時間に設定する。最適温度は、プロテアーゼの種類によって決定される。反応速度は、プロテアーゼの種類と(米糠中のたんぱく質に対するプロテアーゼの)濃度と温度によって決定される。保温反応工程14に於ける保温温度を、上記最適温度に応じて(適切な範囲内に)、設定する。そして、保温反応工程14に於ける保温時間を、プロテアーゼの種類と(プロテアーゼの米糠中のたんぱく質に対する)濃度と設定温度によって決定された反応速度に応じて(適切な範囲内に)、設定する。保温反応工程14に於て、米糠に含まれるたんぱく質が、プロテアーゼによって異化(分解)されて、(伸展性等に関して)グルテンに代わるはたらきをする物質となる。
【0018】
プロテアーゼを失活させる加熱失活工程15を行い、米糠液が得られる。米糠液を濾過して濾過工程16を行い、抽出液が得られる。濾過工程16に於て、抽出液に、上記「グルテンに代わるはたらきをする物質」が含まれるように、濾過する。
【0019】
その後、ドウ(包餡生地)作製工程Bを行う。具体的には、まず、米粉を混練器に投入する米粉投入工程17を行う。次に、米粉に対して、(抽出液作製工程Aで作製した)抽出液を添加する抽出液添加工程18、及び、米粉、抽出液以外の材料(「その他原材料Q」という。)を投入するその他原材料投入工程19を行う。抽出液添加工程18に於て、抽出液を、米粉 100gに対して10g以上50g以下の割合で加える。抽出液が、米粉 100gに対して10g未満の場合、伸展性等が悪くなり、包餡生地として不適となる。抽出液が、米粉 100gに対して50gを超える場合、プロテアーゼが多過ぎて無駄である。その他原材料Qは、例えば、砂糖、ベーキングパウダー、ドライイースト、米油等である。抽出液添加工程18とその他原材料投入工程19の順序は、いずれが先でも良い。そして、米粉と抽出液とその他原材料Qとを混練する混練工程20を行って、包餡生地が作製される。包餡生地には、小麦アレルギーの原因となるグルテンは、含まれない。
【0020】
次に、成型工程21を行う。即ち、成型工程21は、混練工程20にて作製した生地を伸展して、所定形状に成型する。例えば、直方体状、円形薄皮、長円形薄皮、矩形薄皮等の形状に成型する。
【0021】
次に、第4の実施の形態について説明する。
図4に示すように、抽出液添加工程18の後、その他原材料を投入せずに(即ち、その他原材料投入工程19を行わず)、混練工程20を行う。その他の構成は、第3の実施の形態と同様である。
【0022】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲での変形や改良は、本発明の内容に含まれる。例えば、抽出液を煮沸濃縮,減圧濃縮,真空濃縮,凍結濃縮,膜濃縮等で濃縮液とし、該濃縮液を再稀釈させた場合、又は、ドラムドライヤー,スプレードライヤー,フリーズドライヤー等で一旦乾燥させて粉末状とし、該粉末を再溶解させた場合も、濃縮液が再稀釈した液体あるいは粉末が再溶解した液体を「抽出液」とみなす。また、第1の実施の形態又は第2の実施の形態に於て、第2混練工程7と成型工程8との間に、イースト菌を作用させるためのベンチタイムを設けるも好ましい。同様に、第3の実施の形態又は第4の実施の形態に於て、混練工程20と成型工程21との間に、イースト菌を作用させるためのベンチタイムを設けるも好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。まず、第1の実施の形態に関する包餡生地の包餡適性評価試験(試験1)を行った。表1に示す「材料1」を用いて、比較例1を作製する。また、表1に示す「材料2」を用いて、実施例1~実施例17を作製する。
【0024】
【0025】
具体的には、比較例1は、「材料1」を混練したものである。また、実施例1~実施例6は、いずれも、米粉(株式会社波里製 1番ミドルタイプ菓子・料理用)50gに所定量 2,250U又は 4,500U又は 9,000U又は18,000U又は27,000U又は36,000U又は45,000U又は54,000U又は 108,000Uのプロテアーゼ(オリエンターゼ90N )と水を加えて、混練し、酵素を作用させるために、50℃で所定時間(1時間又は3時間)保温した後(保温反応工程)、表1に示す材料2のうち米粉、酵素、水以外の材料を加えて混練したものである。
【0026】
表2・表3に試験結果を示す。
【0027】
【0028】
【0029】
「酵素添加量」は、米粉 100gに対してのプロテアーゼの添加量のユニットを示す。「保温時間」は、保温反応工程5での保温時間を示す。「混練」は、ドウを混ぜる際、混ぜ込むことができているかを表す。「ドウのこし」は、弾力のあるドウ(包餡生地)になっているかを表す。「のばし」は、厚さが1mmとなるように伸ばした際にひび割れなどせず伸ばせているかを表す。「成型」は、丸めるだけでなく、ひだを作りこむことができるかを表す。
【0030】
「混練」「ドウのこし」「のばし」「成型」のいずれにおいても、「○」は包餡生地として好適であることを示し、「×」は包餡生地として不適であることを示し、「△」は包餡生地にほぼ適していることを示す。即ち、「混練」は、ドウを混ぜる際、混ぜ込むことができているかを、評価した。「ドウのこし」は、弾力のあるドウになっているかを、評価した。「のばし」は、伸ばした際にひび割れなどせず伸ばせているかを、評価した。「成型」は、丸めるだけでなく、ひだを作りこむことができるかを、評価した。
【0031】
比較例1は、表2に示すように、包餡生地(ドウ)を適切に混ぜ込むことはできるものの、ドウに弾力(こし)がなく、伸ばした際にひび割れ等がおこって適切に伸ばすことができず、ひだを作り込むこともできないので、包餡生地として不適であることがわかる。また、表3から、比較例2~比較例4も包餡生地として不適であることがわかる。表3から、実施例1~実施例17は、いずれも包餡生地として適切であることがわかる。
【0032】
次に、第2の実施の形態に関する包餡生地の包餡適正評価試験(試験2)を行った。表4に示す「材料3」を用いて、比較例5を作製する。また、表4に示す「材料4」を用いて、比較例6~比較例10、及び、実施例18~実施例36を作製する。
【0033】
【0034】
具体的には、比較例5は、米粉(株式会社波里製 1番ミドルタイプ菓子・料理用)50.0gに、水37.0gを加えて、混練したものである。比較例6~比較例10、及び、実施例18~実施例36は、米粉(株式会社波里製 1番ミドルタイプ菓子・料理用)50.0gに、所定量( 9,000U又は13,500U又は18,000U又は、27,000U)のプロテアーゼ(オリエンターゼ90N )と水37.0gを加えて、混練し、酵素を作用させるために、所定温度(30℃又は40℃又は50℃)で所定時間(3時間又は6時間)保温した後(保温反応工程)、混練したものである。
【0035】
表5~表8に試験結果を示す。評価方法は、試験1と同様とする。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
表5~表7から、比較例5~比較例10は、包餡生地として不適であることがわかる。表6~表8から、実施例18~実施例36は、いずれも包餡生地として適切であることがわかる。
【0041】
次に、第3の実施の形態に関する包餡生地の包餡適性評価試験(試験3)を行った。表9に示す「材料5」を用いて、比較例11を作製した。また、表9に示す「材料6」を用いて、比較例12~比較例16を作製した。また、表9に示す「材料6」を用いて、実施例37~実施例43を作製した。
【0042】
【0043】
比較例11は、「材料5」を混練したものである。また、実施例37~実施例43、及び、比較例12~比較例16は、いずれも、米糠(みたけ食品工業株式会社製 いりぬか) 180gに所定量( 135,000U又は 270,000U)のプロテアーゼ(オリエンターゼ90N )と 150mLの水を加えて、混合し、所定温度(25℃又は50℃)にて所定時間(1時間又は3時間又は16時間)保温(酵素処理)した後、加熱して酵素(プロテアーゼ)を失活させ、濾過して抽出液を作製し、この抽出液37.0gを、表9に示す材料6のうち抽出液以外の材料に加えて、混練したものである。
【0044】
表10~表12に試験結果を示す。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
「酵素添加量」は、乾燥した米糠 100gに対してのプロテアーゼの添加量のユニットを示す。「保温時間」は、保温反応工程14での保温時間(酵素処理時間)を示す。「混練」は、ドウを混ぜる際、混ぜ込むことができているかを表す。「ドウのこし」は、弾力のあるドウになっているかを表す。「のばし」は、伸ばした際にひび割れなどせず伸ばせているかを表す。「成型」は、丸めるだけでなく、ひだを作りこむことができるかを表す。
【0049】
「混練」「ドウのこし」「のばし」「成型」のいずれにおいても、「○」は包餡生地として好適であることを示し、「×」は包餡生地として不適であることを示し、「△」は包餡生地にほぼ適していることを示す。即ち、「混練」は、ドウを混ぜる際、混ぜ込むことができているかを、評価した。「ドウのこし」は、弾力のあるドウになっているかを、評価した。「のばし」は、伸ばした際にひび割れなどせず伸ばせているかを、評価した。「成型」は、丸めるだけでなく、ひだを作りこむことができるかを、評価した。
【0050】
比較例11は、表10に示すように、ドウを適切に混ぜ込むことはできるものの、ドウに弾力がなく、伸ばした際にひび割れ等が生じて適切に伸ばすことができず、ひだを作り込むこともできないことがわかる。比較例12~比較例16は、表11及び表12に示すように、いずれも包餡生地として不適であることがわかる。また、表11及び表12から、実施例37~実施例43は、いずれも包餡生地として適切であることがわかる。
【0051】
以上のように、本発明は、米粉を主原料としてプロテアーゼを添加する酵素添加工程3を備えるので、小麦アレルギーを回避することができる包餡生地を作製することができる。特に、米粉を用いて、小麦アレルギーを回避することができる包餡生地を作製することができる。
また、米粉 100gに対して 4,500U以上 900,000U以下の割合でプロテアーゼを添加するので、小麦アレルギーを回避できる包餡生地を、効率良く作製することができる。
【0052】
また、米糠に水とプロテアーゼを添加して該プロテアーゼを反応させて抽出液を作製する抽出液作製工程Aと、米粉を主原料として上記抽出液を添加する抽出液添加工程18とを、備えるので、米糠に含まれるたんぱく質を有効利用して、小麦アレルギーを回避することができる包餡生地を作製することができる。特に、(米由来の)米糠を巧妙に有効活用できる。
また、米糠 100gに対して 360,000U以上 1,800,000U以下の割合のプロテアーゼ及び 300mL以上 700mL以下の割合の水を加えた後、濾過して抽出液を作成し、該抽出液を、上記抽出液添加工程18において米粉 100gに対して10g以上50g以下の割合で加えるので、小麦アレルギーを回避できる包餡生地を、効率良く作製することができる。
【符号の説明】
【0053】
3 酵素添加工程
18 抽出液添加工程
A 抽出液作製工程