(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】ロースター
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20221031BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20221031BHJP
F24F 13/26 20060101ALI20221031BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A47J37/06 316
F24F9/00 A
F24F13/26
F24F7/06 101Z
(21)【出願番号】P 2019233831
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2021-12-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 納品日 別紙参照 納品場所 別紙参照 公開者 サンタ株式会社 〔刊行物等〕 発行日 2019年7月1日 刊行物 小虎「BT-4R/4S」パンフレット 公開者 サンタ株式会社
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599094990
【氏名又は名称】サンタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【氏名又は名称】宮田 誠心
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴博
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3110729(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0168975(US,A1)
【文献】特開2002-153385(JP,A)
【文献】特開2004-309101(JP,A)
【文献】特開2005-021593(JP,A)
【文献】特開2008-068053(JP,A)
【文献】特開2006-247042(JP,A)
【文献】実開平3-92437(JP,U)
【文献】中国実用新案第209610879(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0048513(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24F 9/00
F24F 13/26
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体と、
筐体内部に設けられている熱源と
、
熱源の上方に設けられ、加熱対象物を載置する焼面と、
筐体内部において熱源の周囲に配置され、加熱対象物から落下する油等を受ける水槽とを有するロースターであって、
焼面の上方に設けられる排煙装置の吸込口による吸い込みのみによって、
筐体の下端側から筐体内部へと空気が入り、
筐体内で位置決めされた水槽と筒状の筐体の側周面との間の隙間を通って、
筒状の筐体の内周面近傍から筐体内部の空気が上方に通過可能となっていることを特徴とするロースター。
【請求項2】
焼面は、水槽に載置されていることを特徴とする請求項1に記載のロースター。
【請求項3】
水槽は、ドーナツ状の底板と、底板の外周端から立ち上がる外周壁と、底板の内周端から立ち上がる内周壁とを有し、水槽を筐体の内部に設置すると内周壁に囲まれた穴に熱源が挿入された状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載のロースター。
【請求項4】
筐体内部において、水槽の底板の下方に油受けがさらに配置されていることを特徴とする請求項3に記載のロースター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱調理するロースターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼肉店や焼き鳥店等の飲食店において、ロースターで肉等の食材を加熱する際に発生する煙の処理は重要である。
【0003】
煙の処理方法の一つとして、焼肉店等の飲食店において、ロースターから発生して上昇する煙を、ロースターの上方に設置された吸引口で吸引して、ダクト等を通して店外に排気する発明が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の処理方法の吸込排気では、ロースターと吸込口との間にある程度の距離がある。ある程度の距離が存在していても、ロースターで発生した煙を吸込口で吸引できるように、吸込口の断面積、排気量が設定されている。
【0006】
しかしながら、空調の影響や、店内での人の動きなどによって、ロースターと吸込口との間で吸い込みによって発生する気流が乱れ、煙が吸込口から逸れて店内に広がってしまうという問題がある。
【0007】
また、ロースター又はロースターの周辺に空気の吐出口を設けて、この吐出口から吸込口に向かって空気を吐出することでエアカーテンを形成し、煙が吸込口から逸れてしまうことを防止する方法もある。
【0008】
しかしながら、吐出口から吸込口に向かって空気を吐出する設備がさらに必要となり、煙が吸込口から逸れることを防止して吸込排気するために必要なエネルギーが増加するという問題がある。
【0009】
さらに、ロースターの筐体が熱伝導率の高い材料である場合、加熱調理中にロースターの表面温度が上昇し、ロースターの表面に触れると火傷するおそれがあるという問題もある。
【0010】
そこで、上記問題を解決すべく、本発明は、吐出口から吸込口に向かって空気を吐出する設備がなくても、煙が吸込口から逸れることを防止して、ロースターで発生した煙を確実に吸込口で吸込排気が可能となるとともに、筐体の温度上昇を抑制することができるロースターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のロースターは、筒状の筐体と、筐体内部に設けられている熱源と、熱源の上方に設けられ、加熱対象物を載置する焼面と、筐体内部において熱源の周囲に配置され、加熱対象物から落下する油等を受ける水槽とを有するロースターであって、焼面の上方に設けられる排煙装置の吸込口による吸い込みのみによって、筐体の下端側から筐体内部へと空気が入り、筐体内で位置決めされた水槽と筒状の筐体の側周面との間の隙間を通って、筒状の筐体の内周面近傍から筐体内部の空気が上方に通過可能となっている。
【0012】
請求項1のロースターによれば、筒状の筐体の内周面近傍から、筐体内部の空気が上方に通過して、ロースターの上方に設けられている吸込口に吸い込まれ続けることによって、ロースターと吸込口との間にエアカーテンが形成される。
【0013】
請求項1のロースターによれば、筒状の筐体の内周面近傍から上方に通過する筐体内部の空気が筐体の熱を奪い続けることとなるので、筐体の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
請求項1のロースターは、筐体内部において、筒状の筐体の内周面近傍から上方に通過する空気は、不完全燃焼を防止するために熱源に供給される空気とは、異なる経路を通る。
【0015】
筐体内部において、熱源の不完全燃焼を防止するために、空気を供給しなければならない場合がある。不完全燃焼を防止するための空気の経路は、筐体内部に配置された各部材によって、筐体内部からスムーズに上方に通過できるものとはなっていない。
【0016】
請求項1のロースターによれば、筒状の筐体の内周面近傍から上方に通過する空気は、不完全燃焼を防止するために熱源に供給される空気とは、異なる経路を通ることにより、スムーズに筐体内部の空気が上方に通過できるようになっている。
【0017】
請求項2のロースターは、請求項1に記載のロースターにおいて、焼面は、水槽に載置されている。
【0018】
請求項3のロースターは、請求項1又は2に記載のロースターにおいて、水槽は、ドーナツ状の底板と、底板の外周端から立ち上がる外周壁と、底板の内周端から立ち上がる内周壁とを有し、水槽を筐体の内部に設置すると内周壁に囲まれた穴に熱源が挿入された状態となる。
【0019】
請求項4のロースターは、請求項3に記載のロースターにおいて、筐体内部において、水槽の底板の下方に油受けがさらに配置されている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1から4のロースターは、吐出口から吸込口に向かって空気を吐出する設備がなくても、煙が吸込口から逸れることを防止して、ロースターで発生した煙を吸込口で吸込排気することができるとともに、筐体の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態を示すロースターの斜視図である。
【
図5】
図1のロースターの切り欠き斜視図で合って、一部の部品を取り外した状態を示す。
【
図6】
図1のロースターと排煙装置の吸込口との位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態のロースター1を各図面に基づいて説明する。なお、
図5では、実施形態の説明に必要がない部材を省略している。
【0023】
図1に示すように、ロースター1は、筒状の筐体2と、筐体2の側周面から突出するように設けられている操作部3とを有する。
【0024】
筒状の筐体2は、横断面が円の円筒形状となっている。
図3に示すように、筐体2の下端の円形開口には、底面視で、その円形に内接する五角形の底板21が取り付けられている。筐体2の下端の円形開口は、底板21に完全に閉塞されていない。つまり、
図3及び
図4の矢印Aに示すように、筐体2の下端側から筐体2の内部へと空気が入るようになっている。
【0025】
底板21の下面には、複数の脚部22が設けられている。
図4に示すように、脚部22が接地することによって、筐体2の下端の円形開口とロースター1が載置される面との間に空間を形成することができる。
【0026】
操作部3は、熱源の火力を調節する操作つまみ31とガス接続口32とを有する。筐体2の内部には、熱源であるバーナー4が設けられている。操作部3及び筐体2の内部において、操作部3のガス接続口32からバーナー4まで、ガス供給経路が設けられている。
【0027】
バーナー4は、
図4及び
図6を参照して分かるように、上面視で、筐体2の横断面の円の中心位置に立設されている。バーナー4の上端には、バーナーキャップ41が取り付けられる。立設するバーナー4には着火ユニット42が取り付け可能となっている。
【0028】
立設するバーナー4の周囲には、加熱対象物から落下する油等を受けるための水槽5が配置される。水槽5は筐体2の内部に収容可能な大きさとなっている。
【0029】
水槽5は、ドーナツ状の底板51と、底板51の外周端から立ち上がる外周壁52と、底板51の内周端から立ち上がる内周壁53とを有する。内周壁53は外周壁52より低くなっている。水槽5を筐体2の内部に設置すると内周壁53に囲まれた穴にバーナー4が挿入されている状態となる。
【0030】
外周壁52の上端からは、さらに外側に向かって延出する一対の持ち手54が設けられている。
図1及び
図2に示すように、水槽5は、持ち手54が筐体2の上端に引っかかることで、位置決めされた状態で筐体2の内部に設置される。
【0031】
位置決めされた状態で筐体2の内部に設置された水槽5は、外周壁52と筐体2との側周面との間に空気が通過可能な空間が形成される。
【0032】
この空間によって筒状の筐体2の内周面近傍から、筐体2の内部の空気が上方に通過可能となっている。
【0033】
水槽5の外周壁52の上端付近には、焼面となるロストル6を載置するための段部55が形成されている。水槽5の外周壁52の段部55に焼面となるロストル6を設置すると、
図4の矢印Bに示すように、焼面となるロストル6の周囲に筐体2の内部の空気が上方に通過可能な隙間23が形成されるように、焼面となるロストル6が配置されていることとなる。
【0034】
バーナー4の不完全燃焼を防止するために供給される空気は、筐体2の下端側から筐体2の内部へと入ってきた空気が、
図4の矢印Cに示すように、筐体2の内部に設置された水槽5の内周壁53に囲まれた穴を通って、バーナーキャップ41周辺に到達する経路となっている。
【0035】
これに対して、筐体2の内部において、筒状の筐体2の内周面近傍から上方に通過する空気は、筐体2の下端側から筐体2の内部へと入ってきた空気が、筐体2の内部に設置された水槽5の外周壁52と筐体2の側周面との間の隙間23を通って、筒状の筐体2の内周面近傍に到達する経路となっている。
【0036】
つまり、筐体2の内部において、筒状の筐体2の内周面近傍から上方に通過する空気は、不完全燃焼を防止するために熱源であるバーナー4に供給される空気とは、異なる経路を通る。
【0037】
筐体2の底板21と水槽5の底板51との間に空間には、油受け7が配置されている。
【0038】
バーナー4及びバーナーキャップ41近くに落下する油は、筐体2内部の底板21上に到達することがある。筐体2の底板21上には、バーナー4やガス供給経路があり、容易に清掃できないような箇所に油が入り込み、ロースター1を清潔に保つことができないという問題がある。また、バーナー4及びバーナーキャップ41近くに落下する油がロースターを載置したテーブル等に到達することがあり、テーブル等の油の清掃に手間がかかるという問題もある。
【0039】
油受け7は、バーナー4及びバーナーキャップ41近くに落下する油が筐体2内部で広がらないようにすることを目的とする。
【0040】
油受け7は、傾斜板71及び油貯72とを有する。油貯め72は、筐体2の底板21上において位置決め可能となっている。
【0041】
傾斜板71は、断面が逆M字状の折板からなる。傾斜板71は、油貯72に向かって傾斜した状態で設置される。傾斜板71の中央には、バーナー4が挿通されるための穴が設けられている。
【0042】
傾斜板71上に落ちた油は、傾斜板71の断面が逆M字状であることによって山折り線から遠ざかる方向に流れるとともに、油貯72に向かって傾斜した状態で設置されることによってその傾斜に沿って流れるようになっている。したがって、バーナー4及びバーナーキャップ41近くに落下する油は、傾斜板71によって、油貯72に集められるようになっている。
【0043】
図6に示すように、ロースター1の上方に設けられた排煙装置の吸込口8での吸い込みによって、気体の流れの速度分布が吸込口8周りに生じる。
【0044】
速度分布は、吸引口8から離れるにしたがって、速度が小さくなっている。
図6に示すように、ロースター1及び排煙装置の吸引口8を側面から見た場合の二次元の速度分布は、複数の等速度線が吸引口から波紋のように広がる。吸引口から離れるにしたがって、各等速度線の速度が小さくなっている。
図6中の二点鎖線が等速度線を示し、破線が気体の流線を示す。
【0045】
吸引口8から離れた位置の煙が吸引口8に吸いこまれるかどうかは、その離れた位置において、吸い込みによって発生する気体の速度が所定の速度(制御風速)以上であるかどうかによる。ロースター1及び排煙装置の使用環境にもよるが、この所定の速度は、0.2m/s~0.3m/sである。
【0046】
ロースター1は、筒状の筐体2と、筐体2内部に設けられている熱源であるバーナー4とを有し、筒状の筐体2の内周面近傍から、筐体2内部の空気が上方に通過可能となっている。
【0047】
このロースター1の筐体2内部の空気が上方に通過する位置が、気体の流れの速度分布において、吸込口8に吸引するために必要な気体の速度以上の範囲となるように、排煙装置の吸引口8とロースター1とが配置されている。
【0048】
筐体2の内周面近傍の隙間23から吸込口8に向かって、筐体2の内部の空気が連続的に吸引され続ける。
図6において、左右最も外側に位置する破線が隙間23から吸込口8へと連続的に吸引される空気の流線である。左右最も外側に位置する破線の空気の流線が、ロースター1と排煙装置の吸込口8との間に形成されるエアカーテンとなる。
【0049】
このエアカーテンの内側で発生した煙は、エアカーテンの外側に出ることなく、排煙装置の吸引口8に吸い込まれる。したがって、吐出口から吸込口に向かって空気を吐出する設備がなくても、煙が吸込口8から逸れることを防止して、ロースター1で発生した煙を確実に吸込口8で吸込排気できる。
【0050】
上記実施形態では、筒状の筐体2の横断面が円の円筒形状となっている場合について説明したがこれに限定されることはない。例えば、筒体の横断面が四角形、五角形等の多角形の筒体であってもよい。
【0051】
上記実施形態では、筐体2の下端の円形開口には、上面視で、その円形に内接する五角形の底板21が取り付けられている場合について説明したがこれに限定されることはない。筐体の下端の開口が底板に完全に閉塞されていない、つまり筐体の下端側から筐体の内部へと空気が出入りできるようになっている底板であれば、どのような形状であってもよい。
【0052】
上記実施形態では、熱源はガスが供給されるバーナー4である場合について説明したが、これに限定されることはない。炭、ラジエントヒーター、IHヒーター等の別の熱源であってもよい。
【0053】
上記実施形態では、水槽5の外周壁51の段部55に焼面となるロストル6を設置する場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば水槽の外周壁の段部には焼面として焼き網など加熱対象物を載置して加熱できるものを設置してもよい。
【0054】
焼面として焼き網を設置する場合、バーナーキャップと後述する焼面となるロストルとの間には、熱板が設けられている。熱板は、水槽内に設置され、平面視でバーナーキャップよりも広い外形を有する。バーナー単独では、焼面が焼き網だった場合、での実質的な加熱調理可能な範囲が狭くなってしまうことがある。熱板がバーナーによって加熱されることによって、焼面が焼き網だった場合でも、焼き網の広い範囲で加熱対象物を加熱できるようになっている。
【0055】
上記実施形態では、排煙装置が上引きである場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、意匠登録第1642418号の使用状態を示す参考図に示すような下引きの排煙装置のように、ロースターの上方に吸引口が設けられているものであればよい。
【0056】
上記実施形態では、排煙装置の吸引口が筒の端である場合について説明したが、これに限定されることはない。排煙装置の吸引口は、例えば、フードや遮板付きの吸引口等のように、気体の流れの速度分布が吸込口周りに生じ、ロースターの筐体内部の空気が上方に通過する位置が、吸込口に吸引するために必要な速度以上の範囲にある速度分布となればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 ロースター
2 筐体
3 操作部
4 バーナー
5 水槽
6 ロストル
7 油受け
8 吸込口
21 底板
22 脚部
23 隙間
32 ガス接続口
41 バーナーキャップ
42 着火ユニット
51 底板
52 外周壁
53 内周壁
54 持ち手
55 段部
71 傾斜板
72 油貯