(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】人工心臓ポンプを管理する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/546 20210101AFI20221031BHJP
A61M 60/178 20210101ALI20221031BHJP
A61M 60/216 20210101ALI20221031BHJP
A61M 60/515 20210101ALI20221031BHJP
【FI】
A61M60/546
A61M60/178
A61M60/216
A61M60/515
(21)【出願番号】P 2019503530
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(86)【国際出願番号】 FR2017052093
(87)【国際公開番号】W WO2018020161
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-06-19
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518063115
【氏名又は名称】ファインハート
【氏名又は名称原語表記】FINEHEART
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガリグ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】マスカレル,アルノ
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-297174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0176896(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323796(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0178361(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓をアシストする人工心臓ポンプ(13)を管理する方法の各ステップを実行するのに適した命令を含む、コンピュータで実行されるときの、コンピュータ・プログラムであって、
上記人工心臓ポンプ(13)は、当該人工心臓ポンプ(13)の回転速度V
rpmに比例した流速で、上記心臓の大動脈弁を介して、加圧された血液を送るようになっており、
上記方法は、
上記心臓の心室脱分極を検出するために、上記心臓の電気的活動が測定されること;ならびに
上記心室脱分極の上記検出に対応する時点t
0から、同じ心室収縮中に、連続して実行される以下のステップ:
(a)上記心臓の僧帽弁が閉じていることを検出し、上記人工心臓ポンプ(13)の回転速度V
rpmが、上記人工心臓ポンプ(13)の上記回転速度の最大値V
rpm maxより完全に小さくなるようにすること、
(b)上記心臓の僧帽弁が閉じていることに対応する時点
t
1
後の時点
t
2
に上記人工心臓ポンプの上記回転速度が、上記回転速度の上記最大値V
rpm maxに等しくなるか、あるいは実質的に等しくなるように、時点t
1から人工心臓ポンプの回転速度V
rpmを速く
し、
上記時点t
1
後であり、上記心臓の大動脈弁を開けることが生理的に生じる時点t
physio
において、上記時点t
1
と時点t
2
とを分離する時間Δtが決定され、これにより、時点t
physio
の前に、時点t
physio
に、あるいは、時点t
physio
後に、上記人工心臓ポンプの回転速度の最大値V
rpm max
に達すること、
(c)大動脈弁が開かれる時間Tの少なくとも一部の間、上記人工心臓ポンプ(13)の上記の回転速度V
rpmを上記の最大値V
rpm maxに維持すること、および
次の心臓周期の少なくとも上記心室収縮の間に、上記ステップ(a)~(c)を随意に繰り返すこと、
を含んでいる、
コンピュータ・プログラム。
【請求項2】
大動脈弁が閉じていること、又は、実質的に閉じていることに対応する時点t
3において、上記人工心臓ポンプ(13)の上記回転速度の上記最大値であるV
rpm maxよりも完全に小さい回転速度に対する上記人工心臓ポンプの上記回転速度V
rpmを下げることを含む、更なるステップ(d)が実行されることを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項3】
上記人工心臓ポンプは、その回転速度V
rpmが、上記ステップ(b)~(d)以外の設定値に等しいか、あるいは、実質的に等しくなるように、設定されることを特徴とする請求項2に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項4】
上記設定値は、上記人工心臓ポンプ(13)の上記回転速度の最小値V
rpm minに対応していることを特徴とする請求項3に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項5】
上記僧帽弁が閉じていることを検出する上記ステップは、少なくとも一つの埋め込み可能な加速度計を用いて行われることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項6】
上記ステップ(a)、及び/又は、上記ステップ(d)において、上記人工心臓ポンプの上記回転速度V
rpmが、漸次、変更されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項7】
超音波検査、磁気共鳴映像法(MRI)、あるいは、陽電子放出断層撮影によって、上記患者のための等容性収縮期の持続期間が既に決定済みであり、上記ステップ(b)において、等容性収縮期のこの期間と等しいか、あるいは、実質的に等しい時間Δtを要することを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項8】
上記人工心臓ポンプの上記回転速度の上記最大値V
rpm maxが調整可能であり、患者のために、この最大値V
rpm maxは、患者の心拍数、及び/又は、対応する上記心室の容積の関数として、変えられることを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項9】
上記人工心臓ポンプの上記回転速度は、モニタされ、調整されることを特徴とする請求項1~
8のいずれか一項に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項10】
上記心臓の電気活動を測定し、かつ、上記測定から脈拍の不調を判定すると、2つの連続する心室収縮ごとに一度、上記ステップ(a)から(c)が行われ、所謂、休息中間収縮期の間、上記人工心臓ポンプの上記回転速度V
rpmが、最低値V
rpm minに維持されることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項11】
上記心臓の電気活動を測定し、その測定から患者が、心室性頻拍症、又は、心不全を示していると判定すると、上記人工心臓ポンプ(13)の上記回転速度V
rpmは、上記ステップ(a)から(c)に関係なく、その最大値V
rpm maxで一定に維持されることを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項12】
上記の人工心臓ポンプは、埋め込み可能な心室補助装置(VAD)であることを特徴とする請求項1~
11のいずれか一項に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項13】
電源(16)と、プロセッサを含む中央ユニット(17)とを含み、上記電源は、患者の心臓をアシストする人工心臓ポンプ(13)に電力を供給するようになっており、上記中央ユニット(17)は、一組のソフトウェア命令を含み、これらのソフトウェア命令は、上記プロセッサによって実行される場合、上記人工心臓ポンプを管理する方法の実行を可能にするものであり、上記人工心臓ポンプ(13)は、上記人工心臓ポンプの回転速度V
rpmに比例する流速で、加圧された血液を送り出すことができるようになっており、上記方法は、
上記心臓の心室脱分極を検出するために、上記心臓の電気的活動が測定されること;ならびに
上記心室脱分極の上記検出に対応する時点t
0から、同じ心室収縮中に、連続して実行される以下のステップ(a)~(c)を含むことを特徴とする管理ユニット(14);
(a)上記心臓の僧帽弁が閉じていることを検出し、上記人工心臓ポンプ(13)の上記回転速度V
rpmが、上記人工心臓ポンプ(13)の回転速度の最大値V
rpm maxより完全に小さくなるようにし、
(b)上記心臓の僧帽弁が閉じていることに対応する時点t
1の後、時点t
2に、上記人工心臓ポンプの上記回転速度が、回転速度の最大値V
rpm maxに等しくなるか、あるいは実質的に等しくなるように、時点t
1から上記人工心臓ポンプの上記回転速度V
rpmを速くし、
上記時点t
1
後であり、上記心臓の大動脈弁を開けることが生理的に生じる時点t
physio
において、上記時点t
1
と時点t
2
とを分離する時間Δtが決定され、これにより、時点t
physio
の前に、時点t
physio
に、あるいは、時点t
physio
後に、上記人工心臓ポンプの回転速度の最大値V
rpm max
に達し、
(c)大動脈弁が開かれる時間Tの少なくとも一部の間、上記人工心臓ポンプ(13)の回転速度V
rpmを上記の最大値V
rpm maxに維持し、
次の心臓周期の少なくとも上記心室収縮の間に、上記ステップ(a)~(c)を随意に繰り返す。
【請求項14】
上記中央ユニット(17)は、少なくとも一つの信号を受信する少なくとも一つの入力を含んでおり、各信号は、上記心臓の機械的活動にリンクされた可聴機械的振動または不可聴機械的振動にリンクされており、上記中央ユニット(17)は、上記一組のソフトウェア命令のうちの第1サブセットを含み、上記中央ユニット(17)は、それらが上記プロセッサによって実行された場合に、その第1サブセットは、上記少なくとも一つの信号を測定するための時間枠を決めることを可能にし、この時間枠の間に、上記中央ユニット(17)の入力がこのように受信した信号を分析し、対応する上記信号の少なくとも一つのパラメータを決定し、このように決定された各信号の上記少なくとも一つのパラメータと、中央ユニットの記憶ユニットに既に格納された少なくとも一つのデータとを比較し、上記僧帽弁が閉じていることに対応する上記信号を特定すると共に、上記の僧帽弁が閉じていることに対応する上記時点t
1を特定することを特徴とする請求項
13に記載の管理ユニット。
【請求項15】
上記心臓の電気活動は、少なくとも一つの電極(18、18’)を用いて測定され、少なくとも一つの測定信号は、上記中央ユニット(17)の少なくとも一つの他の入力において受信され、上記中央ユニット(17)は、上記一組のソフトウェア命令のうちの第2サブセットを含み、この第2サブセットは、上記プロセッサによって実行された場合に、リアルタイムでの上記患者
の心拍数を決定することを可能にするものであり、事前に決定された所定の規則に基づいて人工心臓ポンプ(13)を制御し、上記所定の規則は、事前に決定された上記心拍数の関数であって、上記人工心臓ポンプ(13)の回転速度V
rpmであることを特徴とする請求項
13または
14に記載の管理ユニット。
【請求項16】
上記第2サブセットの上記ソフトウェア命令も、上記プロセッサによって実行される場合、上記心臓の上記電気活動の測定から、心臓の脱分極、心室脱分極が生じる時点t
0のそれぞれを決定することができ、各時点t
0において、上
記方法に規定の上記ステップ(a)~(c)に同期させることを特徴とする請求項
15に記載の管理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔背景技術〕
〔技術分野〕
本発明は、埋め込み型人工心臓ポンプを管理する方法に関するものであり、心臓収縮期間に、弱くなった個体の心室をアシストすることを意図するものに関する。
【0002】
〔背景技術〕
心不全(CT: cardiac insufficiency)は、病的な状態であり、この状態になれば、患者の心臓は、人間の新陳代謝のニーズ(needs)に必要な血流を供給することができないことを示す。
【0003】
心不全を治療するために、心室の補助装置(VAD: ventricular assistance device)、即ち、人工心臓ポンプを埋め込むことは、周知のプラクティスである。
【0004】
この機械ポンプは、機能し続けている心臓を取り換えるのではなく、個体の必要性に相応するように血流を増加するために、弱くなった心室の補助手段を追加するものである。
【0005】
この補助装置は、心臓移植を行うため、結果がでるまでの間、一時的に利用できる移植片(graft)となり得る。
【0006】
しかしながら、そのような移植を受けない患者の比率が高いことに気付かされる。その理由として、それらの患者は、例えば、深刻な心不全であるので、そのような移植の候補者になることができない、あるいは、患者に適合する移植が入手可能ではなく、それゆえ、移植の候補者になることができないこと等が挙げられる。
【0007】
この場合、心室の補助装置は、最終結果として使用され、換言すれば、人工心臓ポンプは、長期間に亘って移植されることになる。
【0008】
これらの人工心臓ポンプは、心不全患者の延命と、心不全患者の生活の質の向上とを目指す真剣な探究を目的としている。近年、多くの進歩がなされ、心室補助装置(ventricular assistance device)は、今や、よりコンパクトに、より静かになり、且つ、耐用年数も長くなっている。
【0009】
最新技術の埋め込み可能な人工心臓ポンプは、一般的に統合的な電気モータが装備されており、これにより、人工心臓ポンプの動作を確実なものとし、弱くなった心室から全身に血液を循環させるために必要な力を供給する人工心臓ポンプの回転速度を確実なものとしている。
【0010】
上記人工心臓ポンプのコントローラと電源とは、一般に、患者の外に設置されている。腹部の皮膚を通してのライン(percutaneous line)は、上記心室の壁に固定された上記人工心臓ポンプと、これら外部素子との間の連結を確実にしている。
【0011】
心不全に苦しむ患者の生活の質の向上のためのプロセスの確かな指標を説明したとはいえ、依然として、多くの欠点が見られる。
【0012】
まず、患者が永久に連結される外付けのユニットの存在によって、患者は、彼の、又は、彼女の動きやすさが制限される。シャワーや入浴は、常にいつでもできるわけではない。何にもまして、皮膚を通してのラインの通過帯域(passage)である開口部において、感染症の危険性が生じる可能性が高い。
【0013】
それゆえ、出来る限り自立した人工心臓ポンプを、そのコントローラと、その電源と共に埋め込まれることが求められる。
【0014】
これによって、心不全によって影響を受けた個体は、身体上の完全な状態を保ち、動きやすさを増す。
【0015】
本特許出願人の名義でファイルされた国際特許出願(WO2013014339 A1)には、特に信頼性があり、取り付けが容易な電気心臓ポンプが記載されている。この電気心臓ポンプのコントロール・ユニットと電池も埋め込まれる。
【0016】
しかしながら、患者の即時のニーズに対する実際の調整がなされることなく、且つ、患者の身体活動に対する実際の調整がなされることなく、つい最近の心臓ポンプは、実質的には定率で動作することがよく見られる。
【0017】
更に、埋め込みバッテリの寿命は、外付けのバッテリよりも短い。このことは、埋め込み電池におけるより多くの定期的な再充電を意味する。
【0018】
この再充電は、皮膚を通してのエネルギ変換によって行われ得るとはいえ、患者にとっては、繰り返し発生するものであると共に、痛ましい束縛になる。
【0019】
それゆえ、再充電間の時間間隔を長くするために、埋め込み済の人工心臓ポンプを調整して、電力消費量の最適化を可能にする方法の提供が、緊急に必要とされる事項である。
【0020】
〔発明の目的〕
本発明の目的は、設計と動作モードとにおいて、シンプルで、信頼性があり、埋め込み可能な人工心臓ポンプの設定を個人の心臓の自然な鼓動に調整することができる埋め込み可能な人工心臓ポンプの管理をする方法を提案することによって、先行技術の課題を克服すると共に、上記の束縛を解くことにある。
【0021】
本発明の他の目的は、人工心臓ポンプが、個人の身体的努力に対して、リアルタイムで応答することを可能にする方法を提供することにある。
【0022】
本発明の更に他の目的は、個人の心臓が衰弱した場合、連続モードで人工心臓ポンプの動作を可能にする方法を提供することにある。
【0023】
本発明の更に他の目的は、また、中央ユニットと、人工心臓ポンプの電源とを備え、この中央ユニットが、この人工心臓ポンプを個人の心臓の自然な動作に設定することを可能にするソフトウェアを含む埋め込み可能な管理ユニットを提供することにある。
【0024】
〔発明の概要〕
上記目的を達成するために、本発明は、人工心臓ポンプを管理する方法に関するものであり、上記人工心臓ポンプは、患者の心臓をアシストすることを目的とし、この人工心臓ポンプの回転速度Vrpmに比例した流速で、患者の心臓の大動脈弁を介して、加圧された血液を送るように構成されている。
本発明によれば、同じ心室収縮の期間に、次のステップ(a)~(c)が実行される。
ステップ(a)において、心臓の僧帽弁が閉じていることを検出し、人工心臓ポンプの回転速度Vrpmが、完全に、上記人工心臓ポンプの回転速度の最大値Vrpm maxよりも小さくなるようにし、
ステップ(b)において、上記心臓の僧帽弁が閉じていることに対応する時点t1(instant t1)後の時点t2(instant t2)に、上記人工心臓ポンプの回転速度が、回転速度の最大回転速度Vrpm maxに等しくなるか、あるいは実質的に等しくなるように、人工心臓ポンプの回転速度Vrpmを速くし、
ステップ(c)において、大動脈弁が開かれる時間Tの少なくとも一部の間、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmを上記最大回転速度Vrpm maxに維持し、その後、次の心臓周期の少なくとも心室収縮の間に、上記ステップ(a)~(c)を随意に繰り返す。
このように、上記管理方法は、好都合には、「生理学上の」人工心臓ポンプの設定を可能にするものである。換言すれば、本管理方法は、出来得る限り、患者の心臓の自然な動作に設定することを可能にするものである。
【0025】
上記人工心臓ポンプは、大動脈を介して血液を拍出するのに必要な力を供給するためのみに、その最大の回転速度に到達し、好ましくは、この局面(phase)外では、人工心臓ポンプの回転速度を一定にするために、且つ、電力消費量を抑えるために、上記人工心臓ポンプは最小の回転速度を維持する。
【0026】
それゆえ、上記ステップ(a)において、等容性収縮(isovolumetric contraction)の期間の開始を決定する取り組みが存在する。その取り組みでは、上記人工心臓ポンプは、その最大の回転速度値にはないが、完全に低い回転速度値にあり、より一層良いのは、最小の回転速度値にある。
【0027】
上記ステップ(c)において、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmは、上記人工心臓ポンプの最大回転速度Vrpm maxに等しいか、あるいは、実質的に等しい回転速度に維持される。この時間T中、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmは、それゆえ、一定回転速度か、あるいは、実質的に一定の回転速度に維持される。
【0028】
明らかに、上記ステップ(c)の後に、更なるステップ(d)が実行されることが好ましい。このステップ(d)においては、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmは、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmが、完全に、上記最大回転速度Vrpm maxよりも遅い回転速度になるように減速される。
【0029】
そのような人工心臓ポンプは、一般に、大動脈弁を介して患者の身体に酸素を供給する血液循環のために設けられた心室に埋め込まれる。この役割は、通常、左心室に委ねられる。稀な場合、この機能を確保するのが右心室であることもある。こういうわけで、本明細書中、「僧帽弁」は、心室の入力バルブ(input valve)を意味すると理解されており、換言すれば、房室を意味すると理解されている。同様に、「大動脈弁」は、心室の出力バルブ(output valve)を意味すると理解されており、換言すれば、S字状の弁を意味すると理解されている。
【0030】
本発明の方法に係る異なる特定の複数の実施形態において、それぞれの実施形態は、特定の優位性を有していると共に、多数の可能な技術的組み合わせが利用できる。
大動脈弁が閉じていること(closing)、又は、実質的に閉じていることに対応する時点t3(instant t3)に、人工心臓ポンプの回転速度の最大値であるVrpm maxよりも完全に小さい回転速度に対する上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmを下げることを含む、更なるステップ(d)が実行される。
【0031】
好都合に、上記ステップ(d)の最後に、人工心臓ポンプの回転速度Vrpmは、上記ステップ(a)における上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmに、等しいか、あるいは、実質的に等しい。
【0032】
好ましくは、本発明の人工心臓ポンプは、その回転速度Vrpmが、上記ステップ(b)~(d)以外の設定値に等しいか、あるいは、実質的に等しくなるように、設定される。好都合に、この設定値は、人工心臓ポンプの回転速度の最小値Vrpm minに対応している。
【0033】
上記最小値Vrpm minは、動いている心室に存在する血液を維持するように決定され、人工心臓ポンプのモータの電力消費を最小化しながら、凝血が形成されることを回避している。
人工心臓ポンプの回転速度の上記最大値Vrpm maxおよび/または最小値Vrpm minは、好ましくは、所定の且つ調整可能な値に限定される。回転速度の上記最大値Vrpm maxは、このように、必ずしも、本発明の人工心臓ポンプが達成し得る回転速度の最大値に等しいとは限らない。それどころか、上記最大値Vrpm maxは、患者の生理学的パラメータによって決定されてもよいし、人工心臓ポンプの最大回転速度に対するある所定の百分比であってもよい。
【0034】
上記ステップ(a)の前に、心臓の心室脱分極(ventricular depolarization)を検出するために、心臓の電気的活動(electrical activity)が測定されると共に、上記の脱分極の検出に対応する時点t0から、上記ステップ(a)~(c)が連続して実行される。
【0035】
このように、上記方法の心臓の心室脱分極を測定することによって、好都合にも、患者の心臓の実際の働きに関する方法における別のステップに同期させることが可能となる。上記の脱分極の検出に対応する時点t0(instant t0)から、僧帽弁が閉じていることを検出するために予め定義されたものである、所定の検出期間(detection window)を開始する。上記検出は、好ましくは、可聴機械的振動、及び/又は、不可聴機械的振動を測定することによって実行され、心臓の機械的振動にリンクしている。これらの機械的振動の測定は、上記僧帽弁が閉じられたことにリンクした少なくとも1つの上記信号を検出するための手段として解析される信号を生成することができる。この測定は、マイクロフォン、加速度計、及び、これらの組み合わせから選択された少なくとも一つの振動センサという手段を用いて行われる。
【0036】
好ましくは、心臓の機械的活動にリンクされたこれらの振動の測定は、時点t0の後の時点t’0(= t0 + tblanking)において行われる。遅延時間(t’0 - t0)は、調整可能であると共に、上記僧帽弁が閉じたことの検出を容易にするために心臓の機械的活動にリンクされた偽のノイズを最小化または除外するように決定される。
【0037】
好都合にも、心臓の電気的活動の測定は、少なくとも一つの心室電極を用いて行われる。この心室電極は、心室の内壁(ventricular wall)に接触しており、この心室の内壁の内面又は外面に置かれ得る。
【0038】
上記僧帽弁が閉じていることを検出するステップは、少なくとも一つの埋め込み可能な加速度計を用いて行われる。
【0039】
少なくとも一つの埋め込みできない加速度計の実現は、心臓の機械的活動にリンクした不可聴機械的振動を検出することを可能にする。この加速度計は、好ましくは、事変を高精度に且つ高信頼度に判断することができるように、心室内部にできる限り僧帽弁の近くに設けられる。
【0040】
上記ステップ(a)、及び/又は、上記ステップ(d)において、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmは漸次変更される。
【0041】
上記人工心臓ポンプは、充電式で且つ埋め込み不可能なバッテリ等の電源によって動力が供給される電気モータを含み、上記人工心臓ポンプの回転速度を最小値Vrpm minから最大値Vrpm maxまで徐々に増加させることによって、エネルギ消費を最小化し、結果として、電源の使用期間を長くして充電までの電源の使用期間を長くすることができる。
【0042】
上記のステップ(b)において、時点t1後、時点tphysio(instant tphysio)に心臓の大動脈弁を開けることによって、時点t1と時点t2とを分離する時間Δtが決定される。これにより、時点tphysioの前に、時点tphysioに、あるいは、時点tphysio後に、人工心臓ポンプの回転速度の最大値Vrpm maxに達する。
【0043】
好都合にも、時点tphysio前に、人工心臓ポンプの回転速度Vrpmに達し、大動脈弁が早く開いてしまうということが引き起こされる。
【0044】
好ましくは、この時間Δtが、等容性収縮期(isovolumetric contraction phase)の期間に等しいか、あるいは、実質的に等しい。
【0045】
超音波検査、磁気共鳴映像法(MRI)、あるいは、陽電子放出断層撮影によって、上記患者のための等容性収縮期の持続期間が既に決定済みであり、上記ステップ(b)において、等容性収縮期の期間と等しいか実質的に等しい時間Δtと見做される。
【0046】
以上のように、実行に必要な計測(measurements)数を制限することによって、上記方法が簡素化される。
【0047】
上記人工心臓ポンプの回転速度の最大値Vrpm maxが調整可能であり、患者のために、この最大値Vrpm maxは、患者の心拍数、及び/又は、対応する心室の容積の関数として、変えられる。
【0048】
このようにして、患者の心拍数が増加した場合、上記の最大値Vrpm maxも増加される。同様に、例えば、追加の休息時間の心室における血液の量の増加に対して、上記の最大値Vrpm maxは、大動脈弁を介してより多くの血液を拍出するように増加される。
【0049】
上記人工心臓ポンプの回転速度は、モニタされ、調整される。
【0050】
好都合にも、人工心臓ポンプの回転速度の調整は、上記ステップ(b)、及び/又は、特に上記ステップ(d)において、上記回転速度におけるピークが出現することを回避するために行われる。上記心臓ポンプの回転速度の調整は、論理(logic)に基づき、(i)オープンループ・モード(収縮期の最後(大動脈弁が閉じていること)を測定し且つプログラムすることによる)において、又は、(ii)クローズドループ・モードにおいて、僧帽弁の閉じる際に生じるノイズを検出可能な加速度計の実行を介して行われるのみならず、心室収縮の終わりの兆しとなる、大動脈が閉じる際に生じるノイズを介しても行われる。
【0051】
上記測定から心臓の電気活動を測定し、上記測定から脈拍の不調(disorder)を判定すると、2つの連続する心室収縮ごとに一度、上記ステップ(a)から(c)が行われ、所謂、休息中間収縮期(rest intermediate systole)の間、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmが、最低値Vrpm minに維持される。
【0052】
人工心臓ポンプの回転速度Vrpmを最低値Vrpm minに維持することは、この中間収縮期(intermediate systole)の間中行われる。この、中間収縮期は、休息収縮期とも呼ばれる。
【0053】
心臓の電気活動を測定し、その測定から患者が、心室性頻拍症(ventricular tachycardia)、又は、心不全(cardiac arrest)を示していると判定すると、上記回転速度Vrpmは、上記ステップ(a)から(c)に関係なく、最大値Vrpm maxで一定に維持される。
【0054】
上記の人工心臓ポンプは、埋め込み可能な心室補助装置(VAD:ventricular assistance device)である。
【0055】
この心室補助装置は、好都合に、心臓の壁にしっかりと固定されているので、患者は、危険なしに、動き回ることができる。
【0056】
本発明は、また、前述したように、上記管理方法に記載の各ステップを実行するのに適した命令を含むコンピュータ・プログラムに関するものである。
【0057】
明らかに、「コンピュータ・プログラム」という表現は、「プログラム」や「ソフトウェア」という用語と同義である。同様に、「コンピュータ」という用語は、プログラム可能な装置であればどのような装置をも意味すると理解される。特定の実施形態において、このプログラム可能な装置は、患者の身体の中に埋め込み可能であると共に、好都合にも、埋め込み可能な電源によって動力が供給される。その結果、このプログラム可能な装置は、自動的に人工心臓ポンプを設定するように動作する。
【0058】
本発明は、また、埋め込み可能な管理ユニットに係るものである。本発明によれば、上記管理ユニットは、電源と、プロセッサを含む中央ユニットとを含み、上記電源は、心臓ポンプに動力を供給するようになっており、上記中央ユニットは、一組のソフトウェア命令を含み、これらのソフトウェア命令が、上記プロセッサによって実行されるときに、上記人工心臓ポンプを管理する方法の実行を可能にするものであり、上記心臓ポンプは、上記心臓ポンプの回転速度Vrpmに比例する流速で、加圧された血液を送り出すことができるようになっており、上記方法は、同じ心室収縮中に、以下のステップを含んでいる。
(a)上記心臓の僧帽弁が閉じていること(closing)を検出し、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmが、上記人工心臓ポンプの回転速度の最大値Vrpm maxよりも完全に小さくなるようにし、
(b)時点t2(上記心臓の僧帽弁が閉じていることに対応する時点t1の後)に、上記人工心臓ポンプの回転速度が、回転速度の最大値Vrpm maxに等しくなるか、あるいは実質的に等しくなるように、人工心臓ポンプの回転速度Vrpmを速くし、
(c)大動脈弁が開かれている時間Tの少なくとも一部の間、上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmを上記最大値Vrpm maxに維持し、
次の心臓周期の少なくとも心室収縮の間に、上記ステップ(a)~(c)を随意に繰り返す。
【0059】
上記管理ユニットは、好ましくは、有線のリンクを介して上記人工心臓ポンプにリンクされ、この人工心臓ポンプに動力を供給し、且つ、制御信号を送るようになっている。
【0060】
上記管理ユニットは、また、遠隔治療のフォローアップの目的のために、心拍数や埋め込まれた電源の状態等のデータを自動的に送信するためのワイヤレス・トランシーバを含んでいてもよい。
【0061】
例えば、Bluetooth(登録商標)やZigbeeプロトコルに基づいて、上記データの送信は、短距離無線通信(short range wireless communication)信号を用いて、ポータブルな外部端末機に対して行っても良い。この外部端末機は、上記のデータを、例えば、心臓内科医に送信するためのセルラ・アクセス・ネットワーク、及び/又は、インターネット・ネットワークを実行する通信手段を含んでいてもよい。
【0062】
上記セルラ・アクセス・ネットワークは、幾つかのタイプ(2G,3G、4G)であってもよく、これらのネットワークの各タイプは、幾つかのセルラアクセス技術(2G: EDGE, GPRS, 3G: UMTS, HSDPA, HSUPA, HSPA, HSPA+, 4G: LTE)に基づいてアクセス可能である。インターネットは、例えば、Wi-FiまたはWiMAXまたはLi-Fiネットワーク等のWLAN network等の無線非セルラアクセスポイントを含むネットワークである。この外部端末機は、ユーザがメッセージを読むことができたり、あるいは、ユーザがメニュー中のオプションを選択することができたりするディスプレイ装置を有するのであってもよい。
【0063】
好ましくは、中央ユニットは、少なくとも一つの信号を受信する少なくとも一つの入力を含んでおり、各入力は、心臓の機械的活動にリンクされた可聴機械的振動または不可聴機械的振動にリンクされており、上記中央ユニットは、上記一組のソフトウェア命令のうちの第1サブセットを含み、この第1サブセットは、上記プロセッサに実行されると、上記少なくとも一つの信号を測定するための時間枠(time window)を決定することを可能にするものであり、これにより、上記時間枠の間において、上記の中央ユニットの入力において受信した各信号を分析し、対応する信号における少なくとも一つのパラメータを決定し、これにより、正式に決定された(duly determined)信号それぞれにおける、少なくとも一つのパラメータと、中央ユニットの記憶ユニットに既に格納された少なくとも一つのデータとを比較して、僧帽弁が閉じていることに対応する信号を特定すると共に、僧帽弁が閉じていることに対応する時点t1を特定する。
【0064】
好都合にも、心臓の電気活動は、少なくとも一つの電極を用いて測定され、少なくとも一つの測定信号は、上記中央ユニットの少なくとも一つの他の入力において受信され、上記中央ユニットは、上記一組のソフトウェア命令のうちの第2サブセットを含み、この第2サブセットは、上記プロセッサによって実行されると、リアルタイムでの患者の心拍数を決定することを可能にするものであり、事前に決定された所定の規則(predetermined law)に基づいて人工心臓ポンプを制御し、その規則は事前に決定された心拍数、特に上記人工心臓ポンプの回転速度Vrpmの関数である。
【0065】
好ましくは、上記第2サブセットの上記ソフトウェア命令も、上記プロセッサによって実行されるときに、本管理方法の上記ステップ(a)~(c)に同期させるため、上記心臓の電気活動の測定から、上記心臓の脱分極、心室脱分極が生じるときに対応する各時点t0を決定することができる。
【0066】
その結果、人工心臓ポンプを備えた患者の心臓の自然な心拍数に、人工心臓ポンプの設定を同期させることができる。
【0067】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の他の優位性、目的、及び、特有の特徴は、添付図面に鑑み、説明の目的と非限定の目的のための以下の記載から明らかになるであろう。
図1は、個体の心臓の自然な機械的活動の関数として自然の人工心臓ポンプを管理するための方法における各工程を示す概略図である。
図2は、本発明の詳細な実施例に係る人工心臓ポンプの設定およびアッセンブリを示す電源概略図である。
【0068】
〔発明を実施するための形態〕
まず、図面は、原寸に比例したものではない。
【0069】
図1は、本発明の特定の態様に基づいて、人工心臓ポンプを個体の心臓の自然な機械的活動の関数として方法の異なるステップを概略的に示している。
安静時に心臓が収縮すると、不変のシーケンスが次に続く。この不変のシーケンスは、心臓の電気活動を測定することによって、フォロウすることができる。
図1に示すように、曲線10は、時間の関数として電気信号を得ることができる。
【0070】
上記曲線10は、人間の心臓の通常の電気活動を概略的に表しており、波形Pは、本質的に心臓の心房の収縮を表している。
図1中のQRSは、心室の収縮を表しており、波形Tは、心室の再分極(repolarization)に関連するものである。
【0071】
心臓の電気活動から、心臓の機械的活動における必然的結果が見出される。時間軸11に対して、今、丁度、心臓の左心室が記載されている。
【0072】
最初は、左心房が血液で満ちており、左心房における圧力は左心室の圧力よりも大きくなっている。それから、左心房は収縮し(
図1の波形P参照)、これにより血液の通過(passage)を左心室に押し進め、僧帽弁が開き、この通過を自由することができるようになる。波形Pと波形Rとを引き離す時間間隔の後、左心室が収縮し始め、圧力が増大して左心房の圧力を超えると、時点t
1において、僧帽弁が再度閉じる。
【0073】
しかしながら、左心室における圧力が、まだ、大動脈弁を開くのに十分ではないので、心室キャビティの容積が変化せず、その期間、等積収縮になる。
【0074】
その後、大動脈弁が時点tphysioで開くまで、左心室の圧力は高くなり続け、時点t1後、左心室に含まれる血液が、所謂、駆出段階(ejection phase)の間に、一斉循環に駆り立てられる。
【0075】
左心室における圧力が、動脈圧よりも低くなると、収縮段階(contraction phase)は、大動脈弁が閉じることで終了し、心室収縮と呼ばれる(上記曲線10上の電気曲線Q-Tの部分内に位置する時間間隔)。
【0076】
上記心臓は、ここでは、左心室から大動脈弁を介して血液を放出する際に、弱った左心室をアシストすることが可能な人工心臓ポンプ13を含んでいる。
【0077】
人工心臓ポンプ13は、大動脈弁を介して人工心臓ポンプ13の回転速度Vrpmに比例した流速で、加圧された血液を送ることを目的としている。
【0078】
上記人工心臓ポンプ13は、心臓壁(heart wall)を介して左心室に挿入されるインペラと、当該インペラと心臓壁とを確実にタイトに連結することができるシーリング膜とを有し、このシーリング膜は、直接または間接に、上記シーリング膜に固定されたケーシングで心臓の外壁に部分的に縫合され、このケーシングは、左心室内に位置し、左心室の底から血液を吸い込んだり、放出したりすることを目的とする電気モータを備えている。
【0079】
管理ユニット14は、上記人工心臓ポンプ13を制御することを可能にするものであり、有線ネットワーク15によってインペラに連結されている。
【0080】
上記管理ユニット14は、上記人工心臓ポンプ13および中央ユニット17に動力を供給するための電源16を備え、上記中央ユニット17は、プロセッサと記憶ユニットとを含んでいる。上記中央ユニット17は、また、一組のソフトウェア命令を含んでいる。これら一組のソフトウェア命令は、上記プロセッサによって実行された場合、上記人工心臓ポンプ13を管理するための方法を実行することができる。
【0081】
上記管理方法は、僧帽弁が閉じていることに対応する時点t1を検出することを目指すステップを含み、上記人工心臓ポンプ13の回転速度Vrpmは、最大値Vrpm maxよりも完全に小さい値に維持される。
【0082】
上記人工心臓ポンプ13の速度の変化を示す曲線12において表されるように、回転値のこの速度は、回転速度の最小値Vrpm minに等しいと共に、上記人工心臓ポンプ13の電力消費量を最小限に抑えながら、心室における血液のいかなる沈滞をも回避するように決定される。
【0083】
そして上記時点t1から、上記人工心臓ポンプ13の上記回転速度Vrpmが増加され、上記時点t1後の時点t2で、上記人工心臓ポンプ13の回転速度が、最大値Vrpm maxに、等しいか、あるいは、実質的に等しくなる。
【0084】
異常にエネルギを上記電源16から引き出さないように、上記人工心臓ポンプ13の回転速度が次第に増加することが好ましい。
【0085】
時点t2は、上記僧帽弁が開いていることに対応するように選択され、上記人工心臓ポンプ13は、回転速度の最大値Vrpm maxに到達すると、大動脈弁を介して血液を拍出する。
【0086】
図1に示されるように、上記人工心臓ポンプ13の回転速度は、その後、一定に、回転速度の最大値V
rpm maxに保持され、大動脈弁が開いている時間Tを通して、左心室に存在する血液の最大の拍出を確実にする。
【0087】
大動脈弁が閉じると、すなわち、時点t3に、上記人工心臓ポンプ13の回転速度は、漸次、回転速度の最低値Vrpm minに減速される。
【0088】
電源16のエネルギを最適化すると共に、上記電源16の2つの連続する再充電間の時間を削減するように、これら全てのステップが、それぞれ次の心室収縮ごとに繰り返されることが好ましい。
【0089】
本方法が、心不全を患っている患者の生活の質において、著しい向上を提供するものであったことが観察された。
【0090】
僧帽弁を閉じることを検出する第1のステップごとのパフォーマンスに先立って、そのような人工心臓ポンプ13を装着した患者の身体活動に自動的に適応するために、患者の心臓の心室脱分極を検出するように、当該患者の心臓の電気活動が測定されることが好ましい。
【0091】
この心室脱分極の測定は、少なくとも一つの心室電極(ventricular electrodes)18及び18’を介して行われた。
【0092】
そのような測定は、好都合にも、患者の心拍数に関連する上記管理方法の異なる複数のステップを同期させることを可能にする。
【0093】
更に、患者の新陳代謝のニーズに取り組むために、取り組みの際に、人工心臓ポンプの回転速度の最大値Vrpm maxは、調整可能であるので、必要な場合には、より多い血流量を確保するために増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】
図1は、個体の心臓の自然な機械的活動の関数として自然の人工心臓ポンプを管理するための方法における各工程を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の詳細な実施例に係る人工心臓ポンプの設定およびアッセンブリを示す電源概略図である。