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  • 特許-架橋された樹脂のペレット製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】架橋された樹脂のペレット製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20221031BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20221031BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20221031BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CES
B29B9/06
C08J11/06
B29K23:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020010976
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021116366
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-10-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 愛知県地域事務局愛知県中小企業団体中央会(愛知県名古屋市中村区名駅3-22-8)に「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」の補助金交付の申請書に本願発明の「架橋された樹脂のペレット製造方法」を記載した書類を添付して提出(令和1年5月8日)
(73)【特許権者】
【識別番号】396014050
【氏名又は名称】株式会社イケックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】池口 武徳
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-089563(JP,A)
【文献】特開平04-310706(JP,A)
【文献】特開2000-127150(JP,A)
【文献】特開平06-170839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28;99/00
B29B17/00-17/04
C08J11/00-11/28
B29B 7/00-11/14;13/00-15/06
B29C31/00-31/10;37/00-37/04;71/00-71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリエチレンまたは架橋ポリプロピレンを60重量%以上含む 樹脂材料を溶融混練し、得られた溶融樹脂材料を押出装置の小孔型の吐出部から押出し、前記吐出部に配置された切断手段により押出された前記溶融樹脂材料を押し出し直後に長さ6mm未満のペレット状物に切断し、前記ペレット状物を送風手段により吹き飛ばして冷却のための空冷装置に導入して、前記ペレット状物を空冷により冷却する
ことを特徴とする架橋された樹脂のペレット製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋された樹脂のペレット製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂成形品を構成する樹脂材料では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等の合成樹脂が使用される。これらの樹脂材料で構成される樹脂成形品は、廃棄された後、適宜回収されて、再生ペレットとしてリサイクルされることがある。再生ペレットを含む樹脂製のペレットは、樹脂成形品を成形するための原材料として使用される。この種の樹脂製のペレットは、回収された樹脂成形品等が粉砕され、押出装置等により溶融混練されて長いひも状に押し出され、冷却水等が貯留された水槽等で冷却された後、所定の大きさに切断されて得られる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、果物や野菜等の青果物を収容するトレーや包装体等の樹脂成形品では、収容する青果物が傷付きやすいことから、保護性が高く不定形な形状になじみやすい架橋ポリエチレン製のロール材が樹脂材料として好適に使用される。そして、この種の樹脂成形品の製造に際しては、大量の端材が発生する。そこで、環境負荷低減等の観点から、これらの端材等をリサイクルして有効利用することが求められている。
【0004】
しかしながら、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレン等の架橋された樹脂は、高分子の分子鎖が立体網目状に結合された分子構造により、成形品等が粉砕され溶融混錬された際に、溶融された粉砕物同士が結合しにくくなる傾向がある。そのため、押出装置等から溶融された樹脂材料(溶融樹脂材料)が押し出されても、溶融樹脂材料自体がもろくなって押し出し時の長いひも状の形状を保持することができず、水槽等での冷却を行う前にすぐに不規則な形状や長さで崩れてしまう。このように、一般的なペレット製造方法では架橋された樹脂をペレット化すること自体が極めて困難であった。
【0005】
また、架橋された樹脂の処理方法として、架橋された樹脂に化学反応させるための超臨界流体を混合させてペレット化する方法がある(例えば、特許文献2参照)。この処理方法では、超臨界流体を使用する高温高圧下で架橋された樹脂と超臨界流体とを混合させて架橋構造を破壊し、得られた処理物を冷却した後、切断してペレット化される。しかしながら、超臨界流体を使用する処理方法では、高温高圧が処理条件であるため、作業工程が煩雑となるばかりでなく、高いエネルギーが必要となってコスト面で不利となり、環境負荷の面でも好ましくない。
【0006】
このように、架橋された樹脂は、リサイクルの材料としての実用性が乏しい。そのため、架橋された樹脂を含む廃棄物は、多大な費用をかけて産業廃棄物処理をしなければならない。そこで、架橋された樹脂を含む廃棄物を適切にリサイクルすることが可能なペレット製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-140587号公報
【文献】特開2007-106827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、煩雑な作業を必要とせず、コストの増加を回避しながら、架橋された樹脂を含む樹脂材料を所定の長さで適切にペレット化することが可能なペレット製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、架橋ポリエチレンまたは架橋ポリプロピレンを60重量%以上含む樹脂材料を溶融混練し、得られた溶融樹脂材料を押出装置の小孔型の吐出部から押出し、前記吐出部に配置された切断手段により押出された前記溶融樹脂材料を押し出し直後に長さ6mm未満のペレット状物に切断し、前記ペレット状物を送風手段により吹き飛ばして冷却のための空冷装置に導入して、前記ペレット状物を空冷により冷却することを特徴とする架橋された樹脂のペレット製造方法に係る。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る架橋された樹脂のペレット製造方法は、架橋ポリエチレンまたは架橋ポリプロピレンを60重量%以上含む樹脂材料を溶融混練し、得られた溶融樹脂材料を押出装置の小孔型の吐出部から押出し、前記吐出部に配置された切断手段により押出された前記溶融樹脂材料を押し出し直後に長さ6mm未満のペレット状物に切断し、前記ペレット状物を送風手段により吹き飛ばして冷却のための空冷装置に導入して、前記ペレット状物を空冷により冷却するため、樹脂材料がリサイクル材料として容易に入手できて環境負荷低減にも貢献することができるとともに、ペレット状物を空冷装置へ迅速かつ適切に導入させることができ、かつ冷却時に水分が含まないように冷却固化させることができて煩雑な作業が不要でコストの増加も回避でき、従来ペレット化が極めて困難であった架橋された樹脂を含む樹脂材料を所定長さで適切にペレット化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】架橋された樹脂を含むペレットの製造装置の概略図である。
図2】押出装置の概略断面図である。
図3】押出装置の吐出部と切断部材との構造を表す概略正面図及び概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、架橋された樹脂(以下、架橋樹脂という)を含む樹脂材料から樹脂製のペレット成形体を成形するためのペレット製造方法であって、架橋樹脂を含む樹脂材料を溶融混練し、得られた溶融樹脂材料を押出装置の小孔型の吐出部から押出し、吐出部に配置された切断手段により押出された溶融樹脂材料を冷却固化前に長さ6mm未満のペレット状物に切断してなるものである。
【0013】
架橋樹脂は、合成樹脂に架橋処理を施すことにより、高分子の分子鎖が立体網目状に結合された分子構造(架橋構造)を有する樹脂である。本発明のペレット製造方法で使用される樹脂材料に含まれる架橋樹脂は、例えば、廃棄された架橋樹脂製の成形品や、架橋樹脂製成形品の製造時に発生した端材等の架橋樹脂廃棄物を主体とし、廃棄された架橋樹脂以外の架橋樹脂が含まれていてもよい。架橋樹脂としては、例えば、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレン等が挙げられる。架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンは、架橋樹脂製の成形品等によく使用される材料であり、リサイクル材料として容易に入手することができる。
【0014】
また、架橋樹脂を含む樹脂材料は、環境負荷低減の観点等から、架橋樹脂を50重量%以上含むことが好ましい。特に、架橋樹脂のみ(100重量%)で樹脂材料を構成すれば、環境負荷低減に大きく貢献することができる。架橋樹脂のみで構成しない場合は、無架橋の樹脂が添加される。無架橋の樹脂を添加する場合、例えば、架橋ポリエチレンに対しては無架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレンに対しては無架橋ポリプロピレン等のように、架橋樹脂と同種の無架橋樹脂が選択される。架橋樹脂に無架橋樹脂が添加されることにより、より適切に樹脂材料の溶融混錬が可能となるとともに、樹脂材料の保形性が向上する。
【0015】
ここで、架橋樹脂のペレット製造方法の好ましい実施形態について、図1に示すペレット製造装置10とともに、具体的に説明する。ペレット製造装置10は、粉砕手段20と、押出装置30と、切断手段40と、送風手段50と、冷却手段60とを備える。実施形態のペレット製造方法は、上記ペレット製造装置10を用いて、粉砕工程と、溶融混錬工程と、押出切断工程と、冷却工程とが行われる。図1において、符号70は成形されたペレット状物の貯留部である。
【0016】
粉砕工程は、ペレット成形体を成形する樹脂材料の元となる原材料の粉砕及び撹拌を行う工程であって、粉砕手段20によって行われる。粉砕手段20は、例えば、公知のミキサー等の粉砕装置が好適に使用される。原材料は、廃棄された樹脂成形品や樹脂製成形品の製造時に発生した端材等の樹脂廃棄物の他、成形品原料となる樹脂製ペレット等、適宜の材料が挙げられる。これらの原材料は、目的とする架橋樹脂の配合割合に応じて、架橋樹脂製の材料単独で供給、または架橋樹脂製の材料と無架橋樹脂製の材料とが所定の配合割合で供給される。粉砕された原材料は、ペレット成形体を成形するための樹脂材料として、公知のコンベア等の搬送手段21により、後述の押出装置30に搬送される。
【0017】
この粉砕工程は、特に、樹脂成形品等のリサイクルを行う場合に不可欠な処理である。リサイクルに際しては、樹脂成形品等を一旦溶融する必要があるが、成形品等がそのままの形状等で大きな塊となっていると、適切に溶融することが困難となる。そこで、成形品等を適切な大きさに粉砕することにより、樹脂材料を適切に溶融しやすくなる。なお、成形品等の粉砕物(樹脂材料)の大きさ等は、粉砕手段20の性能等に応じて適宜であるが、例えば2~5mm程度とされる。
【0018】
溶融混錬工程は、粉砕工程で粉砕されて得られた樹脂材料を溶融し、混錬して溶融樹脂材料を得る工程であって、押出装置30によって行われる。押出装置30は、公知の装置を好適に使用することができ、例えば、図2に示すように、樹脂材料が導入される本体部31と、粉砕手段20の搬送手段21から投入された樹脂材料を本体部31へ導入するホッパー等の投入部32と、本体部31内の樹脂材料を加熱して溶融するヒーター等の加熱部33と、導入された樹脂材料を混錬しながら先端側へ移送して溶融樹脂材料を得るスクリュ34と、スクリュ34を駆動するモータ等の駆動手段35と、溶融混錬されて得られた溶融樹脂材料が吐出される一または複数の小孔型の吐出部36とを有する。
【0019】
実施形態の押出装置30において、吐出部36は直径2~6mm程度の小径の開口部で構成される。この吐出部36は、図2,3に示すように、複数形成されることが生産効率上好ましい。実施形態では、複数の吐出部36は、例えば、図3(a)に示すように、押出装置30の先端面に円形に配置されている。
【0020】
溶融混錬工程では、まず、粉砕手段20の搬送手段21から粉砕された樹脂材料が投入部32へ投入されて押出装置30の本体部31内へ導入される。そして、押出装置30の本体部31内に導入された樹脂材料は、加熱部33によりその融点に対応して十分に溶融可能な温度で加熱されて溶融されるとともに、スクリュ34の回転により溶融された樹脂材料が混錬されて溶融樹脂材料が得られる。樹脂材料の溶融温度は樹脂材料の種類に応じて適宜であるが、例えば、樹脂材料の融点より30~80℃程度高く設定することが好ましい。設定される溶融温度が低すぎる場合は十分に溶融できないおそれがあり、高すぎる場合は溶融効果変化がなく経済的に不利となる。また、この溶融樹脂材料は、スクリュ34の回転により、混錬されながら押出装置30の先端側へ移送される。その際、必要に応じて、本体部31に真空装置等の脱気手段を設けて、溶融樹脂材料内の空気を除去(脱気)してもよい。脱気を行うことにより、溶融樹脂材料の保形性が向上する。
【0021】
上記のように、溶融混錬工程は、架橋樹脂を含む樹脂材料であっても、一般的な樹脂材料の溶融混錬処理と同等の処理工程で実施される。したがって、架橋樹脂のリサイクル等に対応する特別な処理が不要であり、そのための煩雑な作業やコストの増加等を回避することができる。
【0022】
押出切断工程は、押出装置30の吐出部36から押し出された溶融樹脂材料を冷却固化前に切断して長さ6mm未満のペレット状物を得る工程であって、押出装置30の吐出部36に配置された切断手段40により行われる。切断手段40は、図3に示すように、切断刃41と、切断刃41を回転させる回転手段42とを有する。実施形態の切断手段40では、図3(a)に示すように、押出装置30の先端面に円形に配置された複数の吐出部36の略中心部分に回転手段42が設けられ、切断刃41が吐出部36に近接配置されるように回転手段42から吐出部36方向へ延設されている。
【0023】
押出切断工程では、押出装置30のスクリュ24の回転速度に応じて吐出部36から適宜の押出速度で押し出された溶融樹脂材料が、所定の回転速度で回転された切断手段40の切断刃41により切断されて、長さ6mm未満のペレット状物が形成される。ペレット状物の長さは、6mm以上となると、架橋樹脂の特性からペレット状物の形状を保持することが困難となる等の不具合が生じる。このペレット状物の長さは、吐出部36からの溶融樹脂材料の押出速度と、切断刃41の回転速度とを調整することによって設定される。溶融樹脂の押出速度や、切断刃41の回転速度は、押出装置30や切断手段40の性能や大きさ等に応じて決定されるものであるが、例えば、押出速度は200~400rpm、回転速度は150~450rpm程度である。
【0024】
また特に、切断刃41が吐出部36に近接配置されているため、溶融樹脂材料は押し出し直後に切断される。すなわち、溶融樹脂材料は、冷却固化前、特に押し出し時の高温状態(樹脂材料の融点以上の温度)で切断される。押し出し時の溶融樹脂材料の温度は、溶融混錬時の設定温度(樹脂材料の融点より30~80℃程度高い温度)とほぼ同一である。冷却固化前の高温状態では、架橋樹脂を含む樹脂材料は比較的形状を保持しやすく、所定長さのペレット状物を容易に形成することができる。つまり、従来では、架橋樹脂を含む溶融樹脂材料を所定の長さに切断する前に形状を保持することができなくなって、ペレット化自体が不可能であったが、本発明では冷却して形状が保持できなくなる前の溶融樹脂材料を切断することで、所定の長さのペレット状物を得ることが可能となったのである。なお、複数の吐出部36から溶融樹脂材料を押し出して切断する場合には、得られたペレット状物が長すぎる(例えば、6mm以上)と、ペレット状物同士がくっつきやすくなって不良品が発生する等の不具合が生じる恐れがある。
【0025】
冷却工程は、切断手段40によって切断されて得られたペレット状物を冷却固化させてペレット成形体を得る工程であって、冷却手段60によって行われる。冷却手段60は、空冷によって冷却可能な公知の空冷装置等が好適に用いられる。また、切断手段40で切断されて得られたペレット状物は、適宜の手法で冷却手段60へ移送することが可能であるが、送風手段50によりペレット状物を吹き飛ばして冷却手段(空冷装置)60へ導入させることが好ましい。
【0026】
送風手段50は、切断手段40で切断された直後のペレット状物に圧縮空気を当てて吹き飛ばして冷却手段(空冷装置)60に導入する装置であって、エアコンプレッサ等の公知の送風装置が用いられる。切断手段40で切断されて得られたペレット状物は、長さが6mm未満の比較的小型な形状であることから、送風手段50の圧縮空気によって容易に吹き飛ばすことができる。また、ペレット状物が連続的に切断された場合、ペレット状物同士が接触することがある。その際、切断直後のペレット状物は高温で軟化していることから、接触したペレット状物同士が接着することがある。しかしながら、送風手段50の圧縮空気を接触しているペレット状物に当てることにより、接着したペレット状物同士を分離させて適切に吹き飛ばすことができる。このように、切断したペレット状物に送風手段50の圧縮空気を当てて吹き飛ばすことにより、ペレット状物を冷却手段(空冷装置)60へ迅速かつ適切に導入させることができる。符号51は切断手段40と冷却手段60とを連通させて送風手段50により吹き飛ばされたペレット状物を冷却手段60へ移送するための移送路である。
【0027】
冷却工程では、ペレット状物が空冷によって冷却されるため、ペレット状物が従来の水冷のように冷却時に冷却水等と接触することがない。ペレット状物は、水冷によって冷却した場合、水分を含んだ状態で冷却固化されることがある。冷却固化されたペレット成形体に水分が含まれていると、樹脂成形品の原材料等として使用されて成形される際に破裂する等の不具合が発生するおそれがある。そのため、ペレット状物を空冷によって冷却することにより、冷却時に水分が含まないように冷却固化されたペレット成形体を得ることができる。
【0028】
また、冷却工程では、必要に応じて、空冷装置内を振動させながらペレット状物を冷却してもよい。空冷装置内の振動により、冷却中にペレット状物同士が接着することを回避することができるとともに、空冷装置内のペレット状物が撹拌されて効率よく冷却することができる。なお、冷却固化されたペレット成形体は、エアコンプレッサ等の送風装置による送風、吸引装置による吸引、コンベア等の搬送装置による搬送等、適宜の手法により貯留部70へ移送されて貯留される。
【実施例
【0029】
[ペレット成形体の配合割合]
後述する試作例1~10の配合割合(重量%)に基づいて樹脂材料を配合し、押出装置に樹脂材料を導入して、試作例1~5は設定温度170℃、試作例6~10は設定温度190℃で溶融混錬し、得られた溶融樹脂材料を吐出部から押し出して、吐出部に近接配置された切断手段の回転刃で切断し、得られたペレット状物を送風手段により吹き飛ばして空冷装置へ移送した後、設定温度約7℃の空冷により冷却固化してペレット成形体を製造した。なお、押出装置は、直径5mmの吐出部が16個円形に配置されており、溶融樹脂材料の押出速度を300rpmとした。また、切断手段は、回転刃の回転速度を400rpmとした。
【0030】
[試作例1]
試作例1の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリエチレン(PE)60重量%、無架橋ポリエチレン40重量%とした。
【0031】
[試作例2]
試作例2の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリエチレン(PE)70重量%、無架橋ポリエチレン30重量%とした。
【0032】
[試作例3]
試作例3の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリエチレン(PE)80重量%、無架橋ポリエチレン20重量%とした。
【0033】
[試作例4]
試作例4の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリエチレン(PE)90重量%、無架橋ポリエチレン10重量%とした。
【0034】
[試作例5]
試作例5の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリエチレン(PE)単独(100重量%)とした。
【0035】
[試作例6]
試作例6の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリプロピレン(PP)60重量%、無架橋ポリプロピレン40重量%とした。
【0036】
[試作例7]
試作例7の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリプロピレン(PP)70重量%、無架橋ポリプロピレン30重量%とした。
【0037】
[試作例8]
試作例8の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリプロピレン(PP)80重量%、無架橋ポリプロピレン20重量%とした。
【0038】
[試作例9]
試作例9の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリプロピレン(PP)90重量%、無架橋ポリプロピレン10重量%とした。
【0039】
[試作例10]
試作例10の樹脂材料の配合割合は、架橋ポリプロピレン(PP)単独(100重量%)とした。
【0040】
[評価]
試作例1~10に関し、架橋樹脂の種類と配合割合(重量%)におけるペレット成形体の製造時の、切断後のペレット状物同士の接着、送風手段によるペレット状物の移送(吹き飛ばし)、ペレット成形体の保形性について評価した。切断後のペレット状物同士の接着では、送風手段による移送時にペレット状物同士が分離している場合は「〇」、一部のペレット状物同士が接着している場合は「△」、多くのペレット状物同士が接着している場合は「×」とした。送風手段によるペレット状物の移送(吹き飛ばし)では、ペレット状物を適切に移送可能である場合は「〇」、接着している一部のペレット状物が移送不可である場合は「△」、多くのペレット状物が移送不可(吹き飛ばない)である場合は「×」とした。ペレット成形体の保形性では、適切な大きさのペレット成形体が成形できた場合は「〇」、一部が接着により大きくなったり形が崩れた場合は「△」、多くが接着により大きくなったり形が崩れた場合は「×」とした。そして、総合評価として、接着、移送、保形性の各項目について、すべてが「〇」の場合は「〇」、1つでも「△」があり「×」がなければ「△」、1つでも「×」があれば「×」として評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から理解されるように、試作例1~10のいずれも良好な結果が得られた。特に、架橋樹脂単独(100重量%)で構成される試作例5,10においても、結果は良好であった。架橋樹脂に無架橋樹脂が添加されるほど樹脂材料や成形体の安定性が向上することが周知であることから、架橋樹脂の配合割合は任意とすることができる。そこで、環境負荷低減を考慮すると、架橋樹脂の配合割合は50%以上が好ましいことが分かった。
【0043】
[ペレット成形体の長さ]
前記のペレット製造方法の手順に基づき、架橋ポリエチレン60重量%と無架橋ポリエチレン40重量%で配合された樹脂材料を使用し、後述の試作例11~17のように切断手段の回転刃の回転速度を変化させて切断されるペレット状物の長さを調整して、ペレット成形体を得た。
【0044】
[試作例11]
試作例11は、切断刃の回転速度を400rpmとし、長さ約1mmに形成されたペレット成形体である。
【0045】
[試作例12]
試作例12は、切断刃の回転速度を350rpmとし、長さ約2mmに形成されたペレット成形体である。
【0046】
[試作例13]
試作例13は、切断刃の回転速度を300rpmとし、長さ約3mmに形成されたペレット成形体である。
【0047】
[試作例14]
試作例14は、切断刃の回転速度を250rpmとし、長さ約4mmに形成されたペレット成形体である。
【0048】
[試作例15]
試作例15は、切断刃の回転速度を200rpmとし、長さ約5mmに形成されたペレット成形体である。
【0049】
[試作例16]
試作例16は、切断刃の回転速度を150rpmとし、長さ約6mmに形成されたペレット成形体である。
【0050】
[試作例17]
試作例17は、切断刃の回転速度を100rpmとし、長さ約7mmに形成されたペレット成形体である。
【0051】
[評価]
試作例11~17に関し、ペレット成形体の製造時の、切断後のペレット状物同士の接着、送風手段によるペレット状物の移送(吹き飛ばし)、ペレット成形体の保形性について評価した。切断後のペレット状物同士の接着では、送風手段による移送時にペレット状物同士が分離している場合は「〇」、一部のペレット状物同士が接着している場合は「△」、多くのペレット状物同士が接着している場合は「×」とした。送風手段によるペレット状物の移送(吹き飛ばし)では、ペレット状物を適切に移送可能である場合は「〇」、接着している一部のペレット状物が移送不可である場合は「△」、多くのペレット状物が移送不可(吹き飛ばない)である場合は「×」とした。ペレット成形体の保形性では、適切な大きさのペレット成形体が成形できた場合は「〇」、一部が接着により大きくなったり形が崩れた場合は「△」、多くが接着により大きくなったり形が崩れた場合は「×」とした。そして、総合評価として、接着、移送、保形性の各項目について、すべてが「〇」の場合は「〇」、1つでも「△」があり「×」がなければ「△」、1つでも「×」があれば「×」として評価した。その結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2から理解されるように、試作例11~15(ペレット成形体の長さ約1~5mm)は、いずれも良好な結果が得られた。また、ペレット成形体の長さが約6mmである試作例16では、ペレット状物同士の接着が一部で見られ、分離せずに接着した状態が維持されて、少量の不良品が発生した。一方、ペレット成形体の長さが約7mmである試作例17では、ペレット状物同士の接着や切断されたペレット状物の型崩が多く見られ、大量の不良品が発生した。
【0054】
表2に示す結果から、溶融樹脂材料を切断する長さを7mm以上とすると、所望する長さのペレット成形体を得ることが極めて困難であることがわかった。また、切断する長さを約6mmとした場合、不良品が少量発生するが、良品が多く得られた。成形精度やコスト等の兼ね合いを考慮すると、切断されるペレット状物の長さは6mm未満が好ましいと考えられる。
【0055】
以上図示し説明したように、本発明の架橋樹脂のペレット製造方法は、架橋樹脂を含む溶融樹脂材料を押出装置の小孔型の吐出部から押出し、吐出部に配置された切断手段により溶融樹脂材料を冷却固化前に長さ6mm未満のペレット状物に切断するため、形状が保持できなくなる前に溶融樹脂材料が切断されて所定の長さのペレット状物を得ることができる。したがって、従来ペレット化が極めて困難であった架橋樹脂を含む樹脂材料を所定長さで適切にペレット化することが可能となる。また、架橋樹脂を含む樹脂材料の溶融混錬時に煩雑な作業が不要でコストの増加も回避でき、一般的なペレット製造方法とそん色ない作業性やコストでペレット成形体を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のとおり、本発明の架橋樹脂のペレット製造方法は、架橋樹脂を含む溶融樹脂材料を冷却固化前に長さ6mm未満のペレット状物に切断することにより、架橋樹脂を含む樹脂材料を適切にペレット化することができる。そのため、従来ペレット化できずに産業廃棄物として処理されていた架橋樹脂を含む廃棄物をリサイクル材料として利用することが可能となり、環境負荷低減への貢献が期待できる。
【符号の説明】
【0057】
10 ペレット製造装置
20 粉砕手段
21 搬送手段
30 押出装置
31 本体部
32 投入部
33 加熱部
34 スクリュ
35 駆動手段
36 吐出部
40 切断手段
41 切断刃
42 回動手段
50 送風手段
51 移送路
60 冷却手段
70 貯留部

図1
図2
図3