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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】非鉄材料評価装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 46/00 20060101AFI20221031BHJP
   G01N 25/04 20060101ALI20221031BHJP
   G01N 25/06 20060101ALI20221031BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B22D46/00
G01N25/04 B
G01N25/06 B
B22D21/04 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021114892
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521307303
【氏名又は名称】カナエハイテック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 央
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝一
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-228340(JP,A)
【文献】特開平07-209220(JP,A)
【文献】特開平03-273147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 21/04,46/00
G01N 25/04,25/06,25/18,33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置であって、
前記非鉄材料が溶湯として注入される容器と、
前記容器に設けられる温度センサと、
時間をカウントするタイマーと、
コントローラを有し、前記コントローラは、
前記タイマーの出力信号と前記温度センサの出力信号に基づいて前記非鉄材料の温度変化を時間軸と温度軸における冷却曲線として得て、第1時間と第2時間の間における前記冷却曲線と基準温度による直線の間の評価面積を算出し、前記評価面積に基づいて前記非鉄材料を評価し、
前記評価面積は、(1)初晶過冷温度より前で初晶温度と同じ温度から初晶温度までの前記冷却曲線を含んで囲まれる初晶面積、または(2)前記初晶過冷温度から前記初晶温度より後ろで前記初晶過冷温度と同じ温度までの前記冷却曲線を含んで囲まれる初晶面積である 非鉄材料評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非鉄材料評価装置であって、
前記非鉄材料が前記溶湯として前記容器に注入された直後の温度が初期温度であり、前記初期温度に対応して評価数値を補正する補正値または補正関数を記憶するメモリを有し、
前記コントローラは、前記非鉄材料の前記初期温度を前記温度センサからの出力信号から取得し、前記補正値または前記補正関数を利用して前記評価面積から前記非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非鉄材料評価装置であって、
前記評価面積は、前記(1)において前記初晶温度を前記基準温度とする直線で囲まれる前記初晶面積、または前記(2)において前記初晶過冷温度を前記基準温度とする直線を含んで囲まれる前記初晶面積である 非鉄材料評価装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の非鉄材料評価装置であって、
前記コントローラは、前記初晶面積に基づいて前記非鉄材料の結晶状態を評価する 非鉄材料評価装置。
【請求項5】
非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置であって、
前記非鉄材料が溶湯として注入される容器と、
前記容器に設けられる温度センサと、
時間をカウントするタイマーと、
コントローラを有し、前記コントローラは、
前記タイマーの出力信号と前記温度センサの出力信号に基づいて前記非鉄材料の温度変化を時間軸と温度軸における冷却曲線として得て、第1時間と第2時間の間における前記冷却曲線と基準温度による直線の間の評価面積を算出し、前記評価面積に基づいて前記非鉄材料を評価し、
前記評価面積は、初晶過冷温度を始点とし、かつ共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度になる点あるいは前記点よりも以降を終点とする前記冷却曲線を含で囲まれる凝固面積である 非鉄材料評価装置。
【請求項6】
請求項に記載の非鉄材料評価装置であって、
前記非鉄材料が前記溶湯として前記容器に注入された直後の温度が初期温度であり、前記初期温度に対応して評価数値を補正する補正値または補正関数を記憶するメモリを有し、
前記コントローラは、前記非鉄材料の前記初期温度を前記温度センサからの出力信号から取得し、前記補正値または前記補正関数を利用して前記評価面積から前記非鉄材料を評価する 非鉄材料評価装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の非鉄材料評価装置であって、
前記評価面積は、前記共晶過冷温度を前記基準温度とする直線を含んで囲まれる凝固面積である非鉄材料評価装置。
【請求項8】
非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置であって、
前記非鉄材料が溶湯として注入される容器と、
前記容器に設けられる温度センサと、
時間をカウントするタイマーと、
コントローラを有し、前記コントローラは、
前記タイマーの出力信号と前記温度センサの出力信号に基づいて前記非鉄材料の温度変化を時間軸と温度軸における冷却曲線として得て、第1時間と第2時間の間における前記冷却曲線と基準温度による直線の間の評価面積を算出し、前記評価面積に基づいて前記非鉄材料を評価し、
前記評価面積は、初晶温度から共晶過冷温度までの前記冷却曲線を含で囲まれる速度面積である非鉄材料評価装置。
【請求項9】
請求項8に記載の非鉄材料評価装置であって、
前記非鉄材料が前記溶湯として前記容器に注入された直後の温度が初期温度であり、前記初期温度に対応して評価数値を補正する補正値または補正関数を記憶するメモリを有し、
前記コントローラは、前記非鉄材料の前記初期温度を前記温度センサからの出力信号から取得し、前記補正値または前記補正関数を利用して前記評価面積から前記非鉄材料を評価する 非鉄材料評価装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の非鉄材料評価装置であって、
前記評価面積は、前記共晶過冷温度を前記基準温度とする直線を含んで囲まれる速度面積である 非鉄材料評価装置。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の非鉄材料評価装置であって、
前記コントローラは、前記速度面積に基づいて前記非鉄材料の緻密性を評価する 非鉄材料評価装置。
【請求項12】
非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置であって、
前記非鉄材料が溶湯として注入される容器と、
前記容器に設けられる温度センサと、
時間をカウントするタイマーと、
コントローラを有し、前記コントローラは、
前記タイマーの出力信号と前記温度センサの出力信号に基づいて前記非鉄材料の温度変化を時間軸と温度軸における冷却曲線として得て、第1時間と第2時間の間における前記冷却曲線と基準温度による直線の間の評価面積を算出し、前記評価面積に基づいて前記非鉄材料を評価し、
前記評価面積は、(1)共晶過冷温度より前で共晶温度と同じ温度から共晶温度までの前記冷却曲線を含んで囲まれる共晶面積、または(2)前記共晶過冷温度から前記共晶温度より後ろで前記共晶過冷温度と同じ温度までの前記冷却曲線を含んで囲まれる共晶面積である 非鉄材料評価装置。
【請求項13】
請求項12に記載の非鉄材料評価装置であって、
前記非鉄材料が前記溶湯として前記容器に注入された直後の温度が初期温度であり、前記初期温度に対応して評価数値を補正する補正値または補正関数を記憶するメモリを有し、
前記コントローラは、前記非鉄材料の前記初期温度を前記温度センサからの出力信号から取得し、前記補正値または前記補正関数を利用して前記評価面積から前記非鉄材料を評価する 非鉄材料評価装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の非鉄材料評価装置であって、
前記評価面積は、前記(1)において前記共晶温度を前記基準温度とする直線で囲まれる前記共晶面積、または前記(2)において前記共晶過冷温度を前記基準温度とする直線を含んで囲まれる前記共晶面積である非鉄材料評価装置。
【請求項15】
請求項12~14のいずれかに記載の非鉄材料評価装置であって、
前記コントローラは、前記共晶面積に基づいて前記非鉄材料に含まれる添加剤を評価する非鉄材料評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置に関する。例えば、アルミニウム合金を溶湯状態から固体に向けて冷却する際の温度変化を利用してアルミニウム合金の清浄度や純度等の材料を評価する評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄材料は、例えばアルミニウム合金であって、鋳造、鍛造、プレス加工等によって製品に成形される。鋳造に利用する非鉄材料の評価方法として、特許文献1に開示された非鉄材料の清浄度判定方法が知られている。非鉄材料は、溶湯である初期温度(最高温度)から冷却されて初晶が生じる。この際、非鉄材料は、初晶過冷温度まで下がった後に初晶温度まで上昇する。従来方法では、初晶過冷温度と初晶温度の温度差を利用して非鉄材料の清浄度を評価している。非鉄材料は、初晶温度からさらに冷却されて、液体状態から半固相状態を経て固相状態になる。従来方法では、固相が晶出するまでの第一の凝固温度に到達した時間と、固相の状態になった直後の温度から温度降下中の範囲内で設定した第二の凝固温度に到達した時間との差の判定凝固時間から非鉄材料の清浄度を判定している。
【0003】
また、非鉄材料の清浄度を判定する他の方法として、加圧濾過法、Kモールド法も知られている。Kモールド法のK値とは、例えば、アルミニウム製の鋳型に溶湯を流し込み、凝固させた後に得られた短冊状の試験片をハンマー等で任意の片数に割り(破断)、破面に現れた介在物の総数を破面の総数(1箇所の破断に付き1破面として)で除した値である。例えば、K値が0.1以下の時「清浄な溶湯」とされ、0.1~0.5で「ほぼ清浄な溶湯」0.5~1.0で「やや汚れている溶湯」、1.0~10で「汚れている溶湯」、10以上で「著しく汚れている溶湯」と評価される。これら加圧濾過法、Kモールド法等によって非鉄材料の清浄度を判定する方法と比較すると、従来方法は、作業者の経験や能力の違いによる判定結果のバラつきを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4368933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来方法である特許文献1の初晶過冷温度幅(初晶過冷温度と初晶温度の温度差)は、容器に注入する非鉄材料の初期温度によってバラついてしまうことがあった。そのため、非鉄材料の初期温度と初晶過冷温度幅の相関を得ることができず、非鉄材料を精度良く評価できなかった。そこで、非鉄材料を精度良く評価できる非鉄材料評価装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴において、非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置は、非鉄材料が溶湯として注入される容器と、容器に設けられる温度センサと、時間をカウントするタイマーを有する。非鉄材料評価装置のコントローラは、タイマーの出力信号と温度センサの出力信号に基づいて非鉄材料の温度変化を時間軸と温度軸における冷却曲線として得る。次に、第1時間と第2時間の間における冷却曲線と基準温度による直線の間の評価面積を算出する。そして、評価面積に基づいて非鉄材料を評価する。
【0007】
本発明者は、誠意研究した結果、時間軸と温度軸における冷却曲線によって形成される面積が非鉄材料の初期温度に相関していることに気付いた。すなわち、非鉄材料の初期温度によって初晶過冷温度幅にバラつきが生じていても、冷却曲線によって形成される面積にバラつきが生じない、あるいはバラつきが小さいことに気付いた。そのため冷却曲線によって形成される面積に基づいて非鉄材料を評価することで非鉄材料を精度良く評価できる。
【0008】
また非鉄材料は、材料の種類や状態によって様々な冷却曲線を描く。例えば、非鉄材料を溶湯から冷却して初晶を生じる際に、初晶過冷温度を経ずに初晶温度に達し、初晶温度において温度が所定時間略一定になる場合がある。あるいは初晶が生じた後に、共晶が生じるが共晶過冷温度を経ずに共晶温度に達し、共晶温度において温度が所定時間略一定になる場合がある。あるいは、非鉄材料を溶湯から冷却する際に、温度が上昇したり、温度がやや一定になったりすることなく、徐々に温度が下がる場合がある。いずれの場合であっても冷却曲線と基準温度で囲まれる面積は、初期温度に対して相関があることが発明者の誠意研究によりわかった。
【0009】
なお基準温度は、冷却曲線よりも低い温度でも良いし、高い温度であっても良い。時間軸と温度軸は、例えば横軸が時間軸であり、縦軸が温度軸である。時間軸は、所定間隔で刻まれ、例えば、時間に対して等間隔である。温度軸は、所定間隔で刻まれ、例えば、摂氏温度に対して等間隔である。なお初期温度は、容器に注入された直後の温度であって、実質的に溶湯の最高温度である。しかし、初期温度は、最高温度に限定されることなく、最高温度の近傍の温度を含む温度である。またここで特定する各種温度は、臨界温度に限定されず、その近傍の温度も含むことを意味する。
【0010】
本開示の他の特徴において、非鉄材料が溶湯として容器に注入された直後の温度が初期温度である。非鉄材料評価装置は、初期温度に対応して評価数値を補正する補正値または補正関数を記憶するメモリを有する。コントローラは、非鉄材料の初期温度を温度センサからの出力信号から取得し、補正値または補正関数を利用して評価面積から非鉄材料を評価する。
【0011】
本発明者は、誠意研究した結果、冷却曲線によって形成される面積が非鉄材料の初期温度に相関していることに気付いた。したがってメモリに予め記憶されている初期温度と面積との関係から、非鉄材料の評価を補正できる。例えば、予め複数の初期温度に対応する実験を行い、複数の初期温度に対応する評価面積の評価方法、すなわち補正値または補正関数を得る。これら補正値または補正関数を利用することで、初期温度が異なる場合であっても、評価面積から非鉄材料をより精度よく評価できる。
【0012】
本開示の他の特徴において、評価面積は、(1)初晶過冷温度より前で初晶温度と同じ温度から初晶温度までの冷却曲線を含んで囲まれる初晶面積、または(2)初晶過冷温度から初晶温度より後ろで初晶過冷温度と同じ温度までの冷却曲線を含んで囲まれる初晶面積である。
【0013】
すなわち、評価面積は、少なくとも初晶過冷温度から初晶温度までの冷却曲線を含んで囲まれる初晶面積である。そして本発明者は、誠意研究した結果、初晶面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いた。例えば、初晶面積が大きいと、結晶核が少なく、且つ結晶粒が大きく少ないと評価できる。また、初晶面積が小さいと、結晶核が多く、且つ結晶粒が小さく多いと評価できる。
【0014】
本開示の他の特徴において、評価面積は、(1)において初晶温度を基準温度とする直線で囲まれる初晶面積、または(2)において初晶過冷温度を基準温度とする直線を含んで囲まれる初晶面積である。すなわち、評価面積は、初晶温度を基準温度とする直線、または初晶過冷温度を基準温度とする直線を含んで囲まれる初晶面積である。
【0015】
したがって比較的小さい初晶面積で評価する。そのため、相対的な評価としての精度を高めることができる。例えば、非鉄材料を溶湯から冷却して初晶を生じる際、非鉄材料の温度は、初晶過冷温度まで下降した後に初晶温度まで上昇し、再度下降する。したがって縦軸を温度とし、横軸を時間とすると、冷却曲線は、下に膨らんだ部分が生じた後に、上に膨らんだ部分が生じる。この特徴によると、初晶温度は、下に膨らんだ部分のみ、あるいは上に膨らんだ部分のみの面積として得る。そのため初晶面積が比較的小さいため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0016】
本開示の他の特徴において、コントローラは、初晶面積に基づいて非鉄材料の結晶状態を評価する。本発明者は、誠意研究した結果、初晶面積が非鉄材料の結晶状態に影響することに気付いた。例えば、非鉄材料の結晶状態は、結晶核の大きさ、結晶粒の大きさ、結晶核の数、結晶核の密度等である。したがって初晶面積に基づいて非鉄材料の結晶状態を知ることで、材料を適正に評価することができる。
【0017】
本開示の他の特徴において、評価面積は、初晶過冷温度を始点とし、かつ共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度になる点あるいは前記点よりも以降を終点とする冷却曲線を含で囲まれる凝固面積である。本発明者は、誠意研究した結果、凝固面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いた。例えば、非鉄材料に含まれる酸化物、異物、介在物等の割合を評価できることに気付いた。したがって凝固面積を評価することで非鉄材料を適正に評価することができる。
【0018】
本開示の他の特徴において、評価面積は、共晶過冷温度を基準温度とする直線を含んで囲まれる凝固面積である。したがって比較的小さい評価面積で評価する。そのため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0019】
例えば、非鉄材料を溶湯から冷却して共晶を生じる際、非鉄材料の温度は、初晶過冷温度まで下降した後、初晶温度まで上昇し、共晶過冷温度まで再度下降し、共晶温度まで再度上昇し、再度下降する。すなわち縦軸を温度とし、横軸を時間とすると、冷却曲線は、下に膨らんだ部分が生じた後に、上に膨らんだ部分が生じ、再度下に膨らんだ部分が生じた後に、再度上に膨らんだ部分が生じる。共晶過冷温度を基準温度とする直線を利用することで、2個所の上に膨らんだ部分のみの凝固面積を得る。これら凝固面積は、比較的小さいため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0020】
本開示の他の特徴において、評価面積は、初晶温度から共晶過冷温度までの冷却曲線を含で囲まれる速度面積である。本発明者は、誠意研究した結果、速度面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いた。例えば、非鉄材料の組織の緻密性(DAS)を評価できることに気付いた。したがって速度面積を評価することで非鉄材料の組織の緻密性を適正に評価することができる。
【0021】
本開示の他の特徴において、評価面積は、共晶過冷温度を基準温度とする直線を含んで囲まれる速度面積である。したがって比較的小さい評価面積で評価する。そのため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0022】
例えば、非鉄材料を溶湯から冷却して共晶を生じる際、非鉄材料の温度は、初晶温度から共晶過冷温度まで下降する。すなわち縦軸を温度とし、横軸を時間とすると、冷却曲線は、傾斜している。共晶過冷温度を基準温度とする直線を利用することで、略三角形の面積となる。この速度面積は、比較的小さいため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0023】
本開示の他の特徴において、コントローラは、速度面積に基づいて非鉄材料の緻密性を評価する。そのため、緻密性として、例えば、非鉄材料の機械的性質、曲げ、伸び、引っ張り、0.2%耐力等を評価できる。
【0024】
本開示の他の特徴において、評価面積は、(1)共晶過冷温度より前で共晶温度と同じ温度から共晶温度までの冷却曲線を含んで囲まれる共晶面積、または(2)共晶過冷温度から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度までの冷却曲線を含んで囲まれる共晶面積である。本発明者は、誠意研究した結果、共晶面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いた。例えば、非鉄材料に加えられる添加剤(例えば、改良剤)の効果との相関を得ることに気付いた。したがって共晶面積を評価することで非鉄材料を適正に評価することができる。
【0025】
本開示の他の特徴において、評価面積は、(1)において共晶温度を基準温度とする直線で囲まれる共晶面積、または(2)において共晶過冷温度を基準温度とする直線を含んで囲まれる共晶面積である。したがって比較的小さい評価面積で評価する。そのため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0026】
例えば、非鉄材料を溶湯から冷却して共晶を生じる際、非鉄材料の温度は、初晶温度から共晶過冷温度まで下降し、共晶温度まで上昇し、再度下降する。すなわち縦軸を温度とし、横軸を時間とすると、冷却曲線は、下に膨らんだ部分が生じた後に、上に膨らんだ部分が生じる。この特徴によると、共晶温度は、下に膨らんだ部分のみ、あるいは上に膨らんだ部分のみの面積として得る。そのため共晶温度が比較的小さいため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0027】
本開示の他の特徴において、コントローラは、共晶面積に基づいて非鉄材料に含まれる添加剤を評価する。添加剤は、主材料に対して各種特性を得るために加えられる材料、例えば改良剤である。例えば主材料がアルミニウムの場合、添加剤としてCa(カルシウム)、Na(ナトリウム)、Sr(ストロンチウム)、Sb(アンチモン)等が加えられる。本特徴によると、非鉄材料に対する添加材の効果を評価できる。その結果、非鉄材料を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る非鉄材料評価装置の全体図である。
図2図1の非鉄材料評価装置のブロック図である。
図3】非鉄材料を溶湯として容器に注入したときの冷却曲線において、初晶面積と共晶面積の算出を示す図である。
図4図3とは異なる初晶面積と共晶面積の算出を示す図である。
図5図3の冷却曲線において、凝固面積の算出を示す図である。
図6図3の冷却曲線において、速度面積の算出を示す図である。
図7】鋳造品の結晶粒が見える図であり、結晶粒の粗い鋳造品である。
図8】鋳造品の結晶粒が見える図であり、結晶粒の細かい鋳造品である。
図9】添加剤が無添加の状態を示す図である。
図10】Naが添加された状態を示す図である。
図11】Srが添加された状態を示す図である。
図12】Sbが添加された状態を示す図である。
図13】最高温度と初晶面積の相関を示す図である。
図14】最高温度と初晶過冷度の相関を示す図である。
図15】初晶面積と結晶粒径の相関図である。
図16】注湯温度と凝固面積の相関を示す図である。
図17】他の非鉄材料(展伸材)の冷却曲線を示す図である。
図18】他の非鉄材料(亜共晶溶湯と過共晶溶湯の分岐付近の材料)の冷却曲線を示す図である。
図19】他の非鉄材料(過共晶材料)の冷却曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1つの実施形態を、図1~19を参照して説明する。図1に示すように、非鉄材料評価装置1は、コントローラ2と溶湯注入体3を備える。本発明の装置は非鉄材料全般で使用可能ではあるが、ここでは説明に非鉄材料として、例えば最も標準的に主材料アルミニウム、副材料シリコンとするアルミ材料を例にすると、アルミ鋳造材料は日本ではJISに規格されている材料が多く流通している。この中で特に液相線と固相線の変化が一般的な材料は亜共晶材で(一般論としてSi%<12.6%の物)この材料においては、結晶核となるTi-B材や、シリコンの改良材となるCa、Na、Sr、Sb等の添加材を使う材料としてAC4CH材がある。一般的にAC4種系などと表現をするが、図3は一般的な冷却曲線としてAC4種材を例にしている。また、それ以外の固相線が現れないアルミ材料でいうSiが微量にしか含まれていない展伸材やその他の非鉄金属における主元素が99%近くを占める材料や、非鉄金属材料における過共晶の材料、また亜共晶と過共晶の分岐点に付近に存在する材料は別途後述する。
【0030】
図2に示すように、コントローラ2は、演算部20と、モニタ21と、モニタ21から操作可能な入力インターフェースであるタッチパネル22を備える。演算部20は、中央処理装置であるCPU20aと、各種プログラムおよび各種データを記憶可能なROMおよびRAMを有するメモリ20bと、タイマー20cを備える。演算部20は、モニタ21と、タッチパネル22と電気的に接続されている。
【0031】
図1に示すように、溶湯注入体3は、カップスタンド30と、カップスタンド30に着脱可能な容器33を備える。カップスタンド30は、筒状の金属製のカップスタンド本体31と、カップスタンド本体31の先端に組み付けられた樹脂製のプラグ32を備える。プラグ32は、一対の電極32aを備える。一対の電極32aは、コントローラ2の演算部20にケーブル34を介して電気的に接続されている。
【0032】
容器33は、例えば、使い捨てのものであり、非鉄材料の溶湯40を注入可能である。容器33の内部には、略棒状の温度センサ33a(例えば、熱電対)を備える。温度センサ33aは、その基端に一対の端子33bを備える。温度センサ33aは、容器33に注入された溶湯40の温度を測定可能である。カップスタンド30に容器33を装着すると、容器33の温度センサ33aの一対の端子33bとカップスタンド30のプラグ32の一対の電極32aが電気的に接続される。そのため、演算部20は、温度センサ33aが測定した溶湯40の温度を認識できる。
【0033】
続いて、非鉄材料評価装置1によって非鉄材料を評価する手順を説明する。まず、カップスタンド30に容器33を装着する作業を行う。次に、容器33に非鉄材料の溶湯40を注入する作業を行う。次に、タッチパネル22を操作して溶湯40の評価を開始する作業を行う。次に、コントローラ2の演算部20が注入した溶湯40の初期温度を捉えると、タイマー20cが時間をカウントし始めると共に、溶湯40の冷却曲線50を算出し始める。
【0034】
図3に示すように、冷却曲線50は、例えば、タイマー20cがカウントした時間(出力信号)と温度センサ33aが測定した温度(出力信号)に基づいて非鉄材料の溶湯40の温度変化を横軸である時間軸と縦軸である温度軸に算出したものである。算出した冷却曲線50は、作業者が目視できるようにコントローラ2のモニタ21に映される。
【0035】
ここで、冷却曲線50におけるA点~I点を説明する。A点は、初期温度を示している。初期温度は、実質的に、測定時の最も高い温度となる点である。B点は、初晶過冷温度を示している。初晶過冷温度は、初期温度から温度が下がって、発熱反応が出て初晶温度を検出するまでに得た最低温度となる点である。C点は、初晶温度を示している。初晶温度は、溶湯40に結晶ができ始める温度となる点であり、初晶過冷温度を過ぎてから再度温度上昇した際の最高温度となる点である。
【0036】
D点は、共晶過冷温度を示している。共晶過冷温度は、初晶温度以降で一度温度が下がって、発熱反応が出て共晶温度を検出するまでに得た最低温度となる点である。E点は、共晶温度を示している。共晶温度は、初晶過冷温度以降で一度温度が下がって、共晶過冷温度を過ぎてから再度温度上昇した際の最高温度となる点である。F点は、初晶過冷温度より前で、初晶温度と同じ温度となる点である。G点は、初晶温度より後ろで、初晶過冷温度と同じ温度となる点である。H点は、共晶過冷温度より前で、共晶温度と同じ温度となる点である。I点は、共晶温度より後ろで、共晶過冷温度と同じ温度となる点である。
【0037】
次に、コントローラ2の演算部20は、初晶過冷温度より前で初晶温度と同じ温度(F点)から初晶温度(C点)までの時間(第1時間と第2時間)における冷却曲線50と基準温度による直線の間の評価面積を算出する作業を行う。基準温度が、例えば、初晶温度の場合を説明する。図3に示すように、評価面積は、初晶過冷温度より前で初晶温度と同じ温度(F点)から初晶温度(C点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、初晶温度(C点)を基準温度とする直線L1で囲まれる初晶面積(第1初晶面積S1)となる。
【0038】
次に、コントローラ2の演算部20は、初晶面積(第1初晶面積S1)に基づいて、非鉄材料を評価する作業を行う。この評価にあたって、初晶面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いたため、例えば、初晶面積が大きいと、結晶核が少なく、且つ結晶粒が大きく少ないと評価できる。また、初晶面積が小さいと、結晶核が多く、且つ結晶粒が小さく多いと評価できる。なお、初晶面積は、算出する評価面積を基にして、最高温度補正を標準で組み込み、判定に使用している。例えば、初晶面積を4000を基準に設定した場合4000より小さければ汚れた溶湯であり、4000より大きければ綺麗な溶湯であると判定する事が出来るようになる。またTi-B等の結晶核添加材を使用している場合、4000よりも小さくなり、結晶核が有効に効いている事が容易に分かる。
【0039】
また、初晶面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より高い任意の温度(初晶温度より高い任意の温度であり、800°)の場合を説明する。図3に示すように、評価面積は、初晶過冷温度より前で初晶温度と同じ温度(F点)から初晶温度(C点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より高い任意の温度を基準温度とする直線L2で囲まれる初晶面積(第2初晶面積(S1+S2))となる。
【0040】
また、初晶面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より低い任意の温度(共晶過冷温度より低い任意の温度)の場合を説明する。図3に示すように、評価面積は、初晶過冷温度より前で初晶温度と同じ温度(F点)から初晶温度(C点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より低い任意の温度を基準温度とする直線L3で囲まれる初晶面積(第3初晶面積S3)となる。
【0041】
また、コントローラ2の演算部20は、初晶面積を算出する作業において、初晶過冷温度(B点)から初晶温度より後ろで初晶過冷温度と同じ温度(G点)までの時間(第1時間と第2時間)における冷却曲線50と基準温度による直線の間の評価面積を算出する作業を行ってもよい。
【0042】
初晶面積の算出において、基準温度が、例えば、初晶過冷温度の場合を説明する。図4に示すように、評価面積は、初晶過冷温度(B点)から初晶温度より後ろで初晶過冷温度と同じ温度(G点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、初晶過冷温度(B点)を基準温度とする直線L4で囲まれる初晶面積(第4初晶面積S4)となる。
【0043】
また、初晶面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より高い任意の温度(初晶温度より高い任意の温度であり、800°)の場合を説明する。図4に示すように、評価面積は、初晶過冷温度(B点)から初晶温度より後ろで初晶過冷温度と同じ温度(G点)までの冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より高い任意の温度を基準温度とする直線L2で囲まれる初晶面積(第5初晶面積S5)となる。
【0044】
また、初晶面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より低い任意の温度(共晶過冷温度より低い任意の温度)の場合を説明する。図4に示すように、評価面積は、初晶過冷温度(B点)から初晶温度より後ろで初晶過冷温度と同じ温度(G点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、共晶過冷温度より低い任意の温度を基準温度とする直線L3で囲まれる初晶面積(第6初晶面積(S4+S6))となる。
【0045】
このように、初晶面積を評価面積として算出するとき、初晶面積の算出のパターンは6パターン存在する。なお、本発明者は、誠意研究した結果、これら第2初晶面積(S1+S2)~第6初晶面積(S4+S6)が第1初晶面積S1に相関があることに気付いた。そのため、第2初晶面積(S1+S2)~第6初晶面積(S4+S6)を算出すると、第1初晶面積S1を算出したときと同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
次に、コントローラ2の演算部20は、共晶過冷温度より前で共晶温度と同じ温度(H点)から共晶温度(E点)までの時間(第1時間と第2時間)における冷却曲線50と基準温度による直線の間の評価面積を算出する作業を行う。基準温度が、例えば、共晶温度の場合を説明する。図3に示すように、評価面積は、共晶過冷温度より前で共晶温度と同じ温度(H点)から共晶温度(E点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、共晶温度(E点)を基準温度とする直線L5で囲まれる共晶面積(第1共晶面積S7)となる。
【0047】
次に、コントローラ2の演算部20は、共晶面積(第1共晶面積S7)に基づいて、非鉄材料を評価する作業を行う。この評価にあたって、共晶面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いたため、例えば、非鉄材料に加えられる添加剤(例えば、改良剤Ca、Na、Sr、Sb)の効果との相関を得ることができる。したがって、共晶面積を評価することで非鉄材料を適正に評価することができる。
【0048】
また、共晶面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より高い任意の温度(初晶温度より高い任意の温度であり、800°)の場合を説明する。図3に示すように、評価面積は、共晶過冷温度より前で共晶温度と同じ温度(H点)から共晶温度(E点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より高い任意の温度を基準温度とする直線L2で囲まれる共晶面積(第2共晶面積(S7+S8))となる。
【0049】
また、共晶面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より低い任意の温度(共晶過冷温度より低い任意の温度)の場合を説明する。図3に示すように、評価面積は、共晶過冷温度より前で共晶温度と同じ温度(H点)から共晶温度(E点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より低い任意の温度を基準温度とする直線L3で囲まれる共晶面積(第3共晶面積S9)となる。
【0050】
また、コントローラ2の演算部20は、共晶面積を算出する作業において、共晶過冷温度(D点)から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)までの時間(第1時間と第2時間)における冷却曲線50と基準温度による直線の間の評価面積を算出する作業を行ってもよい。
【0051】
共晶面積の算出において、基準温度が、例えば、共晶過冷温度の場合を説明する。図4に示すように、評価面積は、共晶過冷温度(D点)から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、共晶過冷温度(D点)を基準温度とする直線L6で囲まれる共晶面積(第4共晶面積S10)となる。
【0052】
また、共晶面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より高い任意の温度(初晶温度より高い任意の温度であり、800°)の場合を説明する。図4に示すように、評価面積は、共晶過冷温度(D点)から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より高い任意の温度を基準温度とする直線L2で囲まれる共晶面積(第5共晶面積S11)となる。
【0053】
また、共晶面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より低い任意の温度(共晶過冷温度より低い任意の温度)の場合を説明する。図4に示すように、評価面積は、共晶過冷温度(D点)から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)までの時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より低い任意の温度を基準温度とする直線L3で囲まれる共晶面積(第6共晶面積(S10+S12))となる。
【0054】
このように、共晶面積を評価面積として算出するとき、共晶面積の算出のパターンは6パターン存在する。なお、本発明者は、誠意研究した結果、これら第2共晶面積(S7+S8)~第6共晶面積(S10+S12)が第1共晶面積S7に相関があることに気付いた。そのため、第2共晶面積(S7+S8)~第6共晶面積(S10+S12)を算出すると、第1共晶面積S7を算出したときと同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
図7~8に示すように、鋳造品を切断、研磨後、腐食処理を行うと、図示するような状態となる。色の違うツブツブの一つ一つが結晶粒である。鋳造条件によって、大きい物や小さいものが存在している。コントローラ2は、溶湯40の状態でこの結晶粒が大きくなりやすいか、小さくなりやすいかが推定できる。結晶粒の粗い鋳造品であると、図7に示す状態となる。また、結晶粒の細かい鋳造品であると、図8に示す状態となる。
【0056】
図9~12に示すように、鋳造品の色違いのツブツブ一つ一つを金属顕微鏡で見ると、図示するような状態が見られる。図9は、添加剤が無添加の状態を示している。図10は、Na(ナトリウム)が添加された状態を示している。図11は、Sr(ストロンチウム)が添加された状態を示している。図12は、Sb(アンチモン)が添加された状態を示している。なお、シリコンの添加剤とは、黒いところがシリコンで、鼠色、または白色部がアルミニウムである。シリコンが針状(長くて大きい)状態から、Ca、Na、Sr、Sbを添加すると、粒状に変わる。この反応が「共晶過冷温度差(共晶過冷温度と共晶温度の温度差)」に出ると言われているが、最高温度の影響を考えると上述したように共晶面積で測定するのが良い。
【0057】
次に、コントローラ2の演算部20は、初晶過冷温度(B点)を始点とし、かつ共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)になる点を終点とする時間(第1時間と第2時間)における冷却曲線50と基準温度による直線の間の評価面積を算出する作業を行う。基準温度が、例えば、共晶過冷温度の場合を説明する。図5に示すように、評価面積は、初晶過冷温度(B点)を始点とし、かつ共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)になる点を終点とする時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、共晶過冷温度を基準温度とする直線L6で囲まれる凝固面積(第1凝固面積S13)となる。
【0058】
次に、コントローラ2の演算部20は、凝固面積(第1凝固面積S13)に基づいて、非鉄材料を評価する作業を行う。この評価にあたって、凝固面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いたため、例えば、非鉄材料に含まれる酸化物、異物、介在物等の割合を評価できることに気付いた。したがって凝固面積を評価することで非鉄材料を適正に評価することができる。なお、凝固面積は、算出する評価面積を基にして、最高温度補正を標準で組み込み、判定に使用している。例えば、凝固面積を2500を基準に設定した場合2500より小さければ綺麗な溶湯であり、2500より大きければ汚れた溶湯であると判定する事が出来るようになる。
【0059】
また、凝固面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より高い任意の温度(初晶温度より高い任意の温度であり、800°)の場合を説明する。図5に示すように、評価面積は、初晶過冷温度(B点)を始点とし、かつ共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)になる点を終点とする時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より高い任意の温度を基準とする直線L2で囲まれる凝固面積(第2凝固面積S14)となる。
【0060】
また、コントローラ2の演算部20は、凝固面積を算出する作業において、初晶過冷温度(B点)を始点とし、かつ共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)になる点よりも以降の点(J点)を終点とする時間(第1時間と第2時間)における冷却曲線50と基準温度による直線の間の評価面積を算出する作業を行ってもよい。
【0061】
凝固面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より高い任意の温度(初晶温度より高い任意の温度であり、800°)の場合を説明する。図5に示すように、評価面積は、初晶過冷温度(B点)から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)になる点よりも以降の点(J点)を終点とする時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より高い任意の温度を基準とする直線L2で囲まれる凝固面積(第3凝固面積(S14+S15))となる。
【0062】
また、凝固面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より低い任意の温度(共晶過冷温度より低い温度であり、500°)の場合を説明する。図5に示すように、評価面積は、初晶過冷温度(B点)から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)になる点よりも以降の点(J点)を終点とする時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より低い任意の温度を基準とする直線L7で囲まれる凝固面積(第4凝固面積(S13+S16))となる。
【0063】
また、凝固面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より低い任意の温度(500°より低い任意の温度)の場合を説明する。図5に示すように、評価面積は、初晶過冷温度(B点)から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)になる点よりも以降の点(J点)を終点とする時間における冷却曲線50を含んで囲まれ、且つ、冷却曲線50より低い任意の温度(500°より低い任意の温度)を基準とする直線L3で囲まれる凝固面積(第5凝固面積(S13+S16+S17))となる。
【0064】
このように、凝固面積を評価面積として算出するとき、凝固面積の算出のパターンは5パターン存在する。なお、本発明者は、誠意研究した結果、これら第2凝固面積S14~第5凝固面積(S13+S16+S17)が第1凝固面積S13に相関があることに気付いた。そのため、第2凝固面積S14~第5凝固面積(S13+S16+S17)を算出すると、第1凝固面積S13を算出したときと同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
次に、コントローラ2の演算部20は、初晶温度(C点)から共晶過冷温度(D点)までの冷却曲線50と基準温度による直線の間の評価面積を算出する作業を行う。基準温度が、例えば、共晶過冷温度の場合を説明する。図6に示すように、評価面積は、初晶温度(C点)から共晶過冷温度(D点)までの時間における冷却曲線50を含で囲まれ、且つ、共晶過冷温度を基準とする直線L6で囲まれる速度面積(第1速度面積S18)となる。
【0066】
次に、コントローラ2の演算部20は、速度面積(第1速度面積S18)に基づいて、非鉄材料を評価する作業を行う。この評価にあたって、共晶面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いたため、例えば、非鉄材料の組織の緻密性(D.A.S)を評価できる。したがって、速度面積を評価することで非鉄材料の組織の緻密性を適正に評価することができる。なお、D.A.Sとは、[Dendrite Arm Spacing]の略で、日本語で言うと「樹脂状に枝分かれした結晶の間隔」の事を表しており、機械的性質と相関があるので、曲げ、伸び、引張り、0.2%耐、等とも傾向が得られる値となる。
【0067】
また、速度面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より高い任意の温度(初晶温度より高い任意の温度であり、800°)の場合を説明する。図6に示すように、評価面積は、初晶温度(C点)から共晶過冷温度(D点)までの時間における冷却曲線50を含で囲まれ、且つ、冷却曲線50より高い任意の温度を基準とする直線L2で囲まれる速度面積(第2速度面積(S19))となる。
【0068】
また、速度面積の算出において、基準温度が、例えば、冷却曲線50より低い任意の温度(共晶過冷温度より低い任意の温度)の場合を説明する。図6に示すように、評価面積は、初晶温度(C点)から共晶過冷温度(D点)までの時間における冷却曲線50を含で囲まれ、且つ、冷却曲線50より低い任意の温度を基準温度とする直線L3で囲まれる速度面積(第3速度面積(S18+S20))となる。
【0069】
このように、速度面積を評価面積として算出するとき、速度面積の算出のパターンは3パターン存在する。なお、本発明者は、誠意研究した結果、これら第2速度面積(S19)~第3速度面積(S18+S20)が第1速度面積S18に相関があることに気付いた。そのため、第2速度面積(S19)~第3速度面積(S18+S20)を算出すると、第1速度面積S18を算出したときと同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
図13に示すように、本発明者は、誠意研究した結果、最高温度(縦軸)と初晶面積(横軸)には相関があることに気付いた。図13において、(1)で示すADC12材では、y=0.0384x+504.81という相関式で、相関係数R=0.998といった相関が得られている。この相関式から、例えば、最高温度が700°であれば、初晶面積が5000を得ることができる。また、(2)で示すAC2BM材では、y=0.0602x+594.29という相関式で、相関係数R=0.753といった相関が得られている。
【0071】
また、(3)で示すAC4CH材では、y=0.0378x+630.85という相関式で、相関係数R=0.903といった相関が得られている。また、(4)で示すAC4BH材では、y=0.0399x+537.42という相関式で、相関係数R=0.912といった相関が得られている。また、(5)で示すAC4A材では、y=0.0388x+574.07という相関式で、相関係数R=0.959といった相関が得られている。また、(6)で示すAC4MS材では、y=0.0433x+534.36という相関式で、相関係数R=0.905いった相関が得られている。ここでRとは相関係数で一般的に0.7以上で「強い正の相関がある」と言われる数値である。
【0072】
これらから明らかなように、かなり強い係数が得られている。また、ADC12材において、初晶過冷温度差は、「注湯温度によって影響を受けているが、初晶面積よりも精度が無い事」を示しており初晶面積を判定基準に使う事で精度が上がる事が分かる。また、ここで得られた数値は注湯温度によって補正をし、さらに所定の数値で管理する事で、その数値以上なら「綺麗な溶湯」、その数値以下なら「汚い溶湯」と管理することができる。
【0073】
図14に示すように、本発明者は、誠意研究した結果、最高温度(縦軸)と初晶過冷度(横軸)には相関があることに気付いた。図14において、(1)で示すADC12材では、y=92.085x+332.86という相関式で、相関係数R=0.565といった相関が得られている。また、(2)で示すAC2BM材では、y=52.651x+572.49という相関式で、相関係数R=0.631といった相関が得られている。
【0074】
また、(3)で示すAC4CH材では、y=33.594x+621.91という相関式で、相関係数R=0.847といった相関が得られている。また、(4)で示すAC4BH材では、y=45.175x+524.75という相関式で、相関係数R=0.537といった相関が得られている。また、(5)で示すAC4A材では、y=68.874x+486.29という相関式で、相関係数R=0.723といった相関が得られている。また、(6)で示すAC4MS材では、y=48.667x+524.26という相関式で、相関係数R=0.408いった相関が得られている。
【0075】
図13において、一番高い相関係数は、R=0.998であり、一番低い相関係数は、R=0.753である。残りの相関係数は、全て0.9以上である。これに対し、図14において、一番高い相関係数は、R=0.847であり、一番低い相関係数は、R=0.408である。図13図14の比較から明らかなように、初晶過冷度よりも初晶面積を使った方が精度が高いことが明らかである。
【0076】
図15に示すように、論文にも発表されているように結晶粒と初晶過冷度は相関があり、これを不安定な初晶過冷度ではなく初晶面積で引き直すと、図示したものとなる。図15において、y=0.3118e0.00004xという相関式で、相関係数R=0.993といった相関が得られている。この相関式から初晶面積が大きくなると結晶粒径も大きくなることが分かる。また、これによって精度高く溶湯の時点で結晶粒が粗いか、細かいかが想定出来るようになる。
【0077】
なお、図13に示すように、初晶面積では、それぞれの材料に分けて個別に補正が必要であった。これに対し、図16に示すように、凝固面積では、調査した全ての材料を1つのグラフに載せても図示するような相関を得ることができる。図16において、y=4.108597x-980.772264という相関式で、相関係数R=0.950といった相関が得られている。もちろん、個別に分けると、さらに精度を高めることができる。
【0078】
図17に示すように、展伸材(純アルミ系、Si%<1.0%)では、図示するような冷却曲線となる。Ca、Na、Sr、Sbのような添加剤は通常添加しないので共晶面積の測定の必要は無いが、初晶面積と凝固面積を求める事で今まで評価手法が少なかった展伸材の評価が出来るようになる。図18に示すように、亜共晶溶湯と過共晶溶湯の分岐付近の材料(例、ADC12系、9.6%<Si%<12%の中でもSiが多い方の時)では、図示するような冷却曲線となる。Ca、Na、Sr、Sbのような添加剤はこの材料にも一般的に入れる事は無いので、共晶面積の測定の必要はないが、添加した場合においても他の材質同様共晶部に変化が現れるので添加材の評価が出来るだけでなく、「溶湯清浄度は関係無い」と言われていたダイカスト鋳造用材料の日本の代表的材料であるADC12材で、清浄度を調査出来るようになるので、今後他の調査手法である加圧濾過装置やK-モールド法では評価が難しい清浄度判定が、初晶面積と凝固面積を使う事で精度の良い評価が出来るようになる。図19に示すように、過共晶材料(Si%>12%)では、図示するような冷却曲線となる。過共晶溶湯には共晶過冷温度と共晶温度があり、それ以外の面積も全て測定可能なので、測定は容易である。
【0079】
実施形態に係る非鉄材料評価装置1は、上述したように構成されている。この構成によれば、非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置1は、非鉄材料が溶湯40として注入される容器33と、容器33に設けられる温度センサ33aと、時間をカウントするタイマー20cを有する。非鉄材料評価装置1のコントローラ2は、タイマー20cの出力信号と温度センサ33aの出力信号に基づいて非鉄材料の温度変化を時間軸と温度軸における冷却曲線50として得る。次に、第1時間と第2時間の間における冷却曲線50と基準温度による直線の間の評価面積を算出する。そして、評価面積に基づいて非鉄材料を評価する。
【0080】
本発明者は、誠意研究した結果、時間軸と温度軸における冷却曲線50によって形成される面積が非鉄材料の初期温度に相関していることに気付いた。すなわち、非鉄材料の初期温度によって初晶過冷温度幅にバラつきが生じていても、冷却曲線50によって形成される面積にバラつきが生じない、あるいはバラつきが小さいことに気付いた。そのため冷却曲線50によって形成される面積に基づいて非鉄材料を評価することで非鉄材料を精度良く評価できる。
【0081】
また非鉄材料は、材料の種類や状態によって様々な冷却曲線50を描く。例えば、非鉄材料を溶湯40から冷却して初晶を生じる際に、初晶過冷温度を経ずに初晶温度に達し、初晶温度において温度が所定時間略一定になる場合がある。あるいは初晶が生じた後に、共晶が生じるが共晶過冷温度を経ずに共晶温度に達し、共晶温度において温度が所定時間略一定になる場合がある。あるいは、非鉄材料を溶湯40から冷却する際に、温度が上昇したり、温度がやや一定になったりすることなく、徐々に温度が下がる場合がある。いずれの場合であっても冷却曲線50と基準温度で囲まれる面積は、初期温度に対して相関があることが発明者の誠意研究によりわかった。
【0082】
なお基準温度は、冷却曲線50よりも低い温度でも良いし、高い温度であっても良い。時間軸と温度軸は、例えば横軸が時間軸であり、縦軸が温度軸である。時間軸は、所定間隔で刻まれ、例えば、時間に対して等間隔である。温度軸は、所定間隔で刻まれ、例えば、摂氏温度に対して等間隔である。なお初期温度は、容器33に注入された直後の温度であって、実質的に溶湯の最高温度である。しかし、初期温度は、最高温度に限定されることなく、最高温度の近傍の温度を含む温度である。またここで特定する各種温度は、臨界温度に限定されず、その近傍の温度も含むことを意味する。
【0083】
また、この構成によれば、非鉄材料が溶湯40として容器33に注入された直後の温度が初期温度である。非鉄材料評価装置1は、初期温度に対応して評価数値を補正する補正値または補正関数を記憶するメモリ20bを有する。コントローラ2は、非鉄材料の初期温度を温度センサ33aからの出力信号から取得し、補正値または補正関数を利用して評価面積から非鉄材料を評価する。
【0084】
本発明者は、誠意研究した結果、冷却曲線50によって形成される面積が非鉄材料の初期温度に相関していることに気付いた。したがってメモリ20bに予め記憶されている初期温度と面積との関係から、非鉄材料の評価を補正できる。例えば、予め複数の初期温度に対応する実験を行い、複数の初期温度に対応する評価面積の評価方法、すなわち補正値または補正関数を得る。これら補正値または補正関数を利用することで、初期温度が異なる場合であっても、評価面積から非鉄材料をより精度よく評価できる。
【0085】
また、この構成によれば、評価面積は、(1)初晶過冷温度より前で初晶温度と同じ温度(F点)から初晶温度(C点)までの冷却曲線50を含んで囲まれる初晶面積、または(2)初晶過冷温度(B点)から初晶温度より後ろで初晶過冷温度と同じ温度(G点)までの冷却曲線50を含んで囲まれる初晶面積である。
【0086】
すなわち、評価面積は、少なくとも初晶過冷温度から初晶温度までの冷却曲線50を含んで囲まれる初晶面積である。そして本発明者は、誠意研究した結果、初晶面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いた。例えば、初晶面積が大きいと、結晶核が少なく、且つ結晶粒が大きく少ないと評価できる。また、初晶面積が小さいと、結晶核が多く、且つ結晶粒が小さく多いと評価できる。初晶面積は結晶核と相関があり、基準となる綺麗な材料で最高温度の違いを事前に調べる事で、注湯温度による誤差を補正する事が出来るようになり、調査対象の材料が基準の材料と比べて、何がどの程度、良いのか、悪いのかを注湯温度による依存度を無くして、精度良く判定できる。
【0087】
また、この構成によれば、評価面積は、(1)において初晶温度を基準温度とする直線L1で囲まれる初晶面積、または(2)において初晶過冷温度を基準温度とする直線L4を含んで囲まれる初晶面積である。すなわち、評価面積は、初晶温度を基準温度とする直線L1、または初晶過冷温度を基準温度とする直線L4を含んで囲まれる初晶面積である。
【0088】
したがって比較的小さい初晶面積で評価する。そのため、相対的な評価としての精度を高めることができる。例えば、非鉄材料を溶湯から冷却して初晶を生じる際、非鉄材料の温度は、初晶過冷温度まで下降した後に初晶温度まで上昇し、再度下降する。したがって縦軸を温度とし、横軸を時間とすると、冷却曲線50は、下に膨らんだ部分が生じた後に、上に膨らんだ部分が生じる。この特徴によると、初晶温度は、下に膨らんだ部分のみ、あるいは上に膨らんだ部分のみの面積として得る。そのため初晶面積が比較的小さいため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0089】
また、この構成によれば、コントローラ2は、初晶面積に基づいて非鉄材料の結晶状態を評価する。本発明者は、誠意研究した結果、初晶面積が非鉄材料の結晶状態に影響することに気付いた。例えば、非鉄材料の結晶状態は、結晶核の大きさ、結晶粒の大きさ、結晶核の数、結晶核の密度等である。したがって初晶面積に基づいて非鉄材料の結晶状態を知ることで、材料を適正に評価することができる。
【0090】
また、この構成によれば、評価面積は、初晶過冷温度(B点)を始点とし、かつ共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)になる点あるいは前記点よりも以降を終点とする冷却曲線50を含で囲まれる凝固面積である。本発明者は、誠意研究した結果、凝固面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いた。例えば、非鉄材料に含まれる酸化物、異物、介在物等の割合を評価できることに気付いた。したがって凝固面積を評価することで非鉄材料を適正に評価することができる。
【0091】
また、この構成によれば、評価面積は、共晶過冷温度を基準温度とする直線L6を含んで囲まれる凝固面積である。したがって比較的小さい評価面積で評価する。そのため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0092】
例えば、非鉄材料を溶湯から冷却して共晶を生じる際、非鉄材料の温度は、初晶過冷温度まで下降した後、初晶温度まで上昇し、共晶過冷温度まで再度下降し、共晶温度まで再度上昇し、再度下降する。すなわち縦軸を温度とし、横軸を時間とすると、冷却曲線50は、下に膨らんだ部分が生じた後に、上に膨らんだ部分が生じ、再度下に膨らんだ部分が生じた後に、再度上に膨らんだ部分が生じる。共晶過冷温度を基準温度とする直線L6を利用することで、2個所の上に膨らんだ部分のみの凝固面積を得る。これら凝固面積は、比較的小さいため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0093】
また、この構成によれば、評価面積は、初晶温度から共晶過冷温度までの冷却曲線50を含んで囲まれる速度面積である。本発明者は、誠意研究した結果、速度面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いた。例えば、非鉄材料の組織の緻密性(DAS)を評価できることに気付いた。したがって速度面積を評価することで非鉄材料の組織の緻密性を適正に評価することができる。
【0094】
また、この構成によれば、評価面積は、共晶過冷温度を基準温度とする直線L6を含んで囲まれる速度面積である。したがって比較的小さい評価面積で評価する。そのため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0095】
例えば、非鉄材料を溶湯から冷却して共晶を生じる際、非鉄材料の温度は、初晶温度から共晶過冷温度まで下降する。すなわち縦軸を温度とし、横軸を時間とすると、冷却曲線50は、傾斜している。共晶過冷温度を基準温度とする直線L6を利用することで、略三角形の面積となる。この速度面積は、比較的小さいため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0096】
また、この構成によれば、コントローラ2は、速度面積に基づいて非鉄材料の緻密性を評価する。そのため、緻密性として、例えば、非鉄材料の機械的性質、曲げ、伸び、引っ張り、0.2%耐力等を評価できる。
【0097】
また、この構成によれば、評価面積は、(1)共晶過冷温度より前で共晶温度と同じ温度(H点)から共晶温度(E点)までの冷却曲線50を含んで囲まれる共晶面積、または(2)共晶過冷温度(D点)から共晶温度より後ろで共晶過冷温度と同じ温度(I点)までの冷却曲線50を含んで囲まれる共晶面積である。本発明者は、誠意研究した結果、共晶面積が非鉄材料の特性の一部に大きく依存することに気付いた。例えば、非鉄材料に加えられる添加剤(例えば、改良剤)の効果との相関を得ることに気付いた。したがって共晶面積を評価することで非鉄材料を適正に評価することができる。
【0098】
また、この構成によれば、評価面積は、(1)において共晶温度を基準温度とする直線L5で囲まれる共晶面積、または(2)において共晶過冷温度を基準温度とする直線L6を含んで囲まれる共晶面積である。したがって比較的小さい評価面積で評価する。そのため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0099】
例えば、非鉄材料を溶湯40から冷却して共晶を生じる際、非鉄材料の温度は、初晶温度から共晶過冷温度まで下降し、共晶温度まで上昇し、再度下降する。すなわち縦軸を温度とし、横軸を時間とすると、冷却曲線50は、下に膨らんだ部分が生じた後に、上に膨らんだ部分が生じる。この特徴によると、共晶温度は、下に膨らんだ部分のみ、あるいは上に膨らんだ部分のみの面積として得る。そのため共晶温度が比較的小さいため、相対的な評価としての精度を高めることができる。
【0100】
また、この構成によれば、コントローラ2は、共晶面積に基づいて非鉄材料に含まれる添加剤を評価する。添加剤は、主材料に対して各種特性を得るために加えられる材料、例えば改良剤である。例えば主材料がアルミニウムの場合、添加剤としてCa(カルシウム)、Na(ナトリウム)、Sr(ストロンチウム)、Sb(アンチモン)等が加えられる。本特徴によると、非鉄材料に対する添加材の効果を評価できる。その結果、非鉄材料を評価することができる。
【0101】
実施形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって実施形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば実施形態は、特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。
【0102】
上記構成によると、一般的な冷却曲線50としてAC4種材を例に説明した。しかし、これに代えて、JISに規格されているその他の材料一般的な鋳物材では AC1B、AC2A、AC2B、AC3A、AC4A、AC4B、AC4C、AC5A、AC7A、AC8A、AC8B、AC8C、AC9A、AC9B 等全材質、ダイカスト鋳造用に作られているADC1、ADC3、ADC5、ADC6、ADC10、ADC10Z、ADC12、ADC14、それ以外にもAl-Si12(Fe)、AlSi8Cu3等の元素と成分比率によって記載される全材料、また展伸材は1×××:純アルミ系、2×××:Al-Cu系、3×××:Al-Mn系、4×××:Al-Si系、5×××:Al-Mg系、6×××:Al-Mg-Si系、7×××Al-Zn-Mg系、8×××:これ以外の規格、と系統分けされているがこれら全材料、それぞれ1000番系、2000番系~等と呼称されている。ここで×××は改良合金の派生(100番台)や1000番台でのアルミの純度やそれ以外では以前の合金呼称(1~99番)となっている。これらのように規格化された材料でも良いし、今後新たに開発されるであろう材料でも構わない。また亜鉛メッキの材料となるAl-ZnでもZn系材料でも同様に評価出来るので、非鉄鋳物全般において利用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 非鉄材料評価装置
2 コントローラ
20c タイマー
33 容器
33a 温度センサ
40 溶湯
50 冷却曲線
L1 直線
S1 第1初晶面積(評価面積)
【要約】
【課題】非鉄材料を精度良く評価できる非鉄材料評価装置を提供すること。
【解決手段】非鉄材料を評価する非鉄材料評価装置は、非鉄材料が溶湯として注入される容器と、容器に設けられる温度センサと、時間をカウントするタイマーと、コントローラを有する。コントローラは、タイマーの出力信号と温度センサの出力信号に基づいて非鉄材料の温度変化を時間軸と温度軸における冷却曲線50として得て、第1時間と第2時間の間における冷却曲線50と基準温度による直線L1の間の評価面積S1を算出し、評価面積S1に基づいて非鉄材料を評価する。
【選択図】図3
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