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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】生体信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20221031BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20221031BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20221031BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61B5/11 100
A61B5/0245 100C
A61B5/113
A61B5/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022016964
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2022-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020830
【氏名又は名称】トミタテクノロジー・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】富田誠次郎
(72)【発明者】
【氏名】富田雄一
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064338(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084473(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3198194(JP,U)
【文献】特開2008-206882(JP,A)
【文献】特開2002-102187(JP,A)
【文献】特開2001-046347(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104769596(CN,A)
【文献】特開2014-036800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的動きを含む生体の動きに応じて変化する生体信号をそれぞれ異なるプロセスを経て生成する複数の生体信号生成部と、
前記複数の生体信号生成部のそれぞれにて生成される前記生体信号における前記生体の周期的動きに応じて変化する信号成分の周期を検出する周期検出部と、
前記周期検出部にて検出される周期の信頼の度合いを判定する信頼度判定部と、
それぞれが前記周期検出部により得られた複数の周期から、当該複数の周期のそれぞれについて前記信頼度判定部により得られた前記信頼の度合いに基づいて、最も確からしい周期を生体動周期として決定する生体動周期決定部と、を有する生体信号処理装置。
【請求項2】
前記複数の生体信号生成部のそれぞれは、前記生体の異なる複数の部位のうちの一の部位を通して得られる当該生体の動きに応じた検出信号を出力する検出器と、
前記検出器から出力される検出信号から前記生体の周期的動きに応じて変化する信号成分を含む信号を前記生体信号として抽出する生体信号抽出部と、を有する請求項1記載の生体信号処理装置。
【請求項3】
前記複数の生体信号生成部は、前記生体の所定部位を通して得られる当該生体の動きに応じた検出信号を出力する共通の検出器を有し、
前記複数の生体信号生成部のそれぞれは、
前記検出器から出力される検出信号を、前記複数の生体信号生成部に割り当てられた複数の変換特性のうちの一の変換特性に従って変換する信号変換部と、
前記信号変換部にて得られる信号から前記生体の周期的動きに応じて変化する信号成分を含む信号を前記生体信号として抽出する生体信号抽出部と、を有する請求項1記載の生体信号処理装置。
【請求項4】
前記生体信号抽出部は、前記生体の心拍動に応じて変化する信号成分を含む心拍信号を前記生体信号として抽出する心拍信号抽出部を含む、請求項2または3記載の生体信号処理装置。
【請求項5】
前記生体信号抽出部は、前記生体の呼吸動に応じて変化する信号成分を含む呼吸信号を前記生体信号として抽出する呼吸信号抽出部を含む、請求項2または3記載の生体信号処理装置。
【請求項6】
前記周期検出部は、
前記心拍信号抽出部により得られる前記心拍信号から所定時間分の信号部分を切り出して切り出し波形部分として保持する信号切り出し部と、
前記信号切り出し部により得られた前記切り出し波形部分をある時間幅ずつ移動させて、その移動毎に、当該切り出し波形部分と前記心拍信号の波形部分とを比較してそれらの一致の度合いを表す類似度を演算する類似度演算部と、
前記類似度演算部にて得られる類似度にて表される前記切り出し波形部分と前記心拍信号の波形部分との一致の度合いがピークになるタイミングに基づいて前記心拍信号の周期を決定する心拍周期決定部と、を有する請求項4記載の生体信号処理装置。
【請求項7】
前記信頼度判定部は、前記心拍周期決定部が前記心拍信号の周期を決定した際に用いた前記類似度に基づいて、当該心拍周期決定部にて決定された前記心拍信号の周期の信頼の度合いを判定する、請求項6記載の生体信号処理装置。
【請求項8】
前記信号切り出し部は、前記切り出し波形部分の切り出しタイミングを、当該切り出し波形部分の時間幅より短い時間ずつずらす、請求項6または7記載の生体信号処理装置。
【請求項9】
前記周期検出部は、
前記呼吸信号抽出部により得られる前記呼吸信号のピーク値としての信号値を検出するピーク検出部と、
前記呼吸信号のボトム値としての信号値を検出するボトム検出部と、
前記ピーク検出部にてピーク値として検出された信号値が当該ピーク値として所定時間維持されたときに、当該信号値をピーク値として確定させ、前記ボトム検出部にてボトム値として検出された信号値が当該ボトム値として所定時間維持されたときに、当該信号値をボトム値として確定させる制御部と、
前記制御部により確定された前記ピーク値及び前記ボトム値の少なくともいずれか一方の検出タイミングに基づいて前記呼吸信号の周期を決定する呼吸周期決定部と、を有する請求項5記載の生体信号処理装置。
【請求項10】
前記信頼度判定部は、それぞれ前記制御部によって確定された前記ピーク値と前記ボトム値との差に基づいて、前記呼吸周期決定部にて決定された前記呼吸信号の周期の信頼の度合いを判定する、請求項9記載の生体信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の心拍動や呼吸動等の周期的な動きを含む当該生体の動きに応じて変化する生体信号を処理する生体信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人等の生体の動きに応じて変化する生体信からその生体の呼吸数や心拍数を検出する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、ベッドに設置された荷重に応じて変化する検出信号を出力するセンサを備え、そのベッドに人が横たわった状態で、センサから出力される検出信号の周波数分析(例えば、FFT法)を行う。そして、前記検出信号の周波数分析の結果に基づいて呼吸に対応する周波数成分や脈拍(心拍)に対応する周波数成分等の生体生理情報が抽出される。このような装置によれば、ベッドに横たわる人に接触することなく、その人の呼吸や心拍等についての生体生理情報を知ることができ、また、その人が生存しているか否かについても確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したような検出信号の周波数分析(例えば、FFT法)を用いる装置では、得られたデータを複数求めて統計によって信頼性を上げるために、処理に時間がかかる。このため、リアルタイムで呼吸数や心拍数を表示させたり、その呼吸数や心拍数に基づいてアラートが必要なシステムには使用することができない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、多くの処理時間をかけることなく、周期性のある生体動の周期を高い信頼性をもって得ることのできる生体信号処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る生体信号処理装置は、周期的動き(心拍動、呼吸動)を含む生体の動きに応じて変化する生体信号をそれぞれ異なるプロセスを経て生成する複数の生体信号生成部と、前記複数の生体信号生成部のそれぞれにて生成される前記生体信号における前記生体の周期的動きに応じて変化する信号成分の周期を検出する周期検出部と、前記周期検出部にて検出される周期の信頼の度合いを判定する信頼度判定部と、それぞれが前記周期検出部により得られた複数の周期から、当該複数の周期のそれぞれについて前記信頼度判定部により得られた前記信頼の度合いに基づいて、最も確からしい周期を生体動周期として決定する生体動周期決定部と、を有する構成となる。
【0007】
このような構成により、異なるプロセスを経て複数の生体信号生成部のそれぞれが生体の動きに応じて変化する生体信号を生成する。複数の生体信号生成部のそれぞれにて生成される生体信号における生体の周期的動きに応じて変化する信号成分の周期が検出されるとともに、その検出される周期の信頼の度合いが判定される。そして、複数の生体信号生成部にて生成される複数の生体信号から得られる複数の周期から、当該複数の周期のそれぞれについて得られた信頼の度合いに基づいて、最も確からしい周期が生体動周期として決定される。
【0008】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記複数の生体信号生成部のそれぞれは、前記生体の異なる複数の部位のうちの一の部位を通して得られる当該生体の動きに応じた検出信号を出力する検出器と、前記検出器から出力される検出信号から前記生体の周期的動きに応じて変化する信号成分を含む信号を前記生体信号として抽出する生体信号抽出部と、を有する構成とすることができる。
【0009】
このような構成により、複数の生体信号生成部では、生体の複数の部位に対応した異なる検出器のそれぞれからの検出信号から生体の周期的動きに応じて変化する信号成分を含む信号が生体信号として抽出される。そして、異なる検出器を用いることにより異なるプロセスを経て生成されることとなった複数の生体信号のそれぞれの生体の周期的動きに応じて変化する信号成分の周期が検出されるとともに、その検出される周期の信頼の度合いが判定される。
【0010】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記複数の生体信号生成部は、前記生体の所定部位を通して得られる当該生体の動きに応じた検出信号を出力する共通の検出器を有し、前記複数の生体信号生成部のそれぞれは、前記検出器から出力される検出信号を、前記複数の生体信号生成部に割り当てられた複数の変換特性のうちの一の変換特性に従って変換する信号変換部と、前記信号変換部にて得られる信号から前記生体の周期的動きに応じて変化する信号成分を含む信号を前記生体信号として抽出する生体信号抽出部と、を有する構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、複数の生体信号生成部では、共通の検出器からの検出信号が複数の変換特性に従って変換され、その変換後の複数の信号のそれぞれから生体の周期的動きに応じて変化する信号成分を含む信号が生体信号として抽出される。そして、異なる変換特性によって変換されることにより異なるプロセスを経て生成されることとなった複数の生体信号のそれぞれの生体の周期的動きに応じて変化する信号成分の周期が検出されるとともに、その検出される周期の信頼の度合いが判定される。
【0012】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記生体信号抽出部は、前記生体の心拍動に応じて変化する信号成分を含む心拍信号を前記生体信号として抽出する心拍信号抽出部を含む、構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、複数の生体信号生成部のそれぞれにおいて、生体の心拍動に応じて変化する信号成分を含む心拍信号が生体信号として抽出される。そして、その心拍信号の心拍動に応じて変化する信号成分の周期が検出されるとともに、その検出される周期の信頼の度合いが判定される。
【0014】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記生体信号抽出部は、前記生体の呼吸動に応じて変化する信号成分を含む呼吸信号を前記生体信号として抽出する呼吸信号抽出部を含む、構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、複数の生体信号生成部のそれぞれにおいて、生体の呼吸動に応じて変化する信号成分を含む呼吸信号が生体信号として抽出される。そして、その呼吸信号の呼吸動に応じて変化する信号成分の周期が検出されるとともに、その検出される周期の信頼の度合いが判定される。
【0016】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記周期検出部は、前記心拍信号抽出部により得られる前記心拍信号から所定時間分の信号部分を切り出して切り出し波形部分として保持する信号切り出し部と、前記信号切り出し部により得られた前記切り出し波形部分をある時間幅ずつ移動させて、その移動毎に、当該切り出し波形部分と前記心拍信号の波形部分とを比較してそれらの一致の度合いを表す類似度を演算する類似度演算部と、前記類似度演算部にて得られる類似度にて表される前記切り出し波形部分と前記心拍信号の波形部分との一致の度合いがピークになるタイミングに基づいて前記心拍信号の周期を決定する心拍周期決定部と、を有する構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、複数の生体信号生成部のそれぞれにて得られる心拍信号から所定時間分の信号部分が切り出し信号波形部分として切り出され、その切り出し波形部分を所定時間幅ずつ移動させる毎に、その切り出し波形部分と前記心拍信号の波形部分とが比較されてそれらの一致の度合いを表す類似度が演算される。そして、前記類似度にて表される前記切り出し波形部分と前記心拍信号の波形部分との一致の度合いがピークになるタイミングに基づいて前記心拍信号の周期が決定される。
【0018】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記信頼度判定部は、前記心拍周期決定部が前記心拍信号の周期を決定した際に用いた前記類似度に基づいて、当該心拍周期決定部にて決定された前記心拍信号の周期の信頼の度合いを判定する、構成とすることができる。
【0019】
このような構成により、心拍信号の周期を決定した際に用いた類似度、即ち、切り出し波形部分を移動させる過程で得られるピークの類似度に基づいて、当該心拍信号について決定された周期の信頼の度合いが判定される。
【0020】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記信号切り出し部は、前記切り出し波形部分の切り出しタイミングを、当該切り出し波形部分の時間幅より短い時間ずつずらす、構成とすることができる。
【0021】
このような構成により、心拍信号から切り出し波形部分を切出すタイミングが、当該切り出し波形部分の時間部分より短い時間ずつずらされる。そして、心拍信号から切り出し波形部分が切り出される毎に、当該切り出し波形部分を移動させて心拍信号の周期が決定される。
【0022】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記周期検出部は、前記呼吸信号抽出部により得られる前記呼吸信号のピーク値としての信号値を検出するピーク検出部と、前記呼吸信号のボトム値としての信号値を検出するボトム検出部と、前記ピーク検出部にてピーク値として検出された信号値が当該ピーク値として所定時間維持されたときに、当該信号値をピーク値として確定させ、前記ボトム検出部にてボトム値として検出された信号値が当該ボトム値として所定時間維持されたときに、当該信号値をボトム値として確定させる制御部と、前記制御部により確定された前記ピーク値及び前記ボトム値の少なくともいずれか一方の検出タイミングに基づいて前記呼吸信号の周期を決定する呼吸周期決定部と、を有する構成とすることができる。
【0023】
このような構成により、複数の生体信号生成部のそれぞれにて得られる呼吸信号において、ある信号値がピーク値として検出されると、その信号値を超える信号値がなく、そのその信号値がピーク値として所定時間維持されたときに、当該信号値がピーク値として確定される。また、前記呼吸信号において、ある信号値がボトム値として検出されると、その信号値を下回る信号値がなく、その信号値がボトム値として所定時間維持されたときに、当該信号値がボトム値として確定される。そして、確定された前記ピーク値及びボトム値の少なくとも一方の検出タイミングに基づいて前記呼吸信号の周期が決定される。
【0024】
本発明に係る生体信号処理装置において、前記信頼度判定部は、それぞれ前記制御部によって確定された前記ピーク値と前記ボトム値との差に基づいて、前記呼吸周期決定部にて決定された前記呼吸信号の周期の信頼の度合いを判定する、構成とすることができる。
【0025】
このような構成により、呼吸信号中に生体の呼吸動に基づかない疑似的なピークが生じた場合、その疑似的なピークの値と呼吸信号のボトム値との差は、通常のピーク値とボトム値との差と異なるようになるので、疑似的なピークの値を用いて決定される周期の信頼度を、正常なピーク値を用いて決定される周期の信頼度と異ならせる、例えば、低くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、異なるのプロセスを経て生成される複数の生体信号から得られる複数の周期から、当該複数の周期のそれぞれについて得られた信頼の度合いに基づいて、最も確からしい周期が生体動周期として決定されるので、多くの処理時間をかけることなく、周期性のある生体動の周期を高い信頼性をもって得ることのができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、ベッドにおける複数のセンサパッドの配置例を示す図である。
図2図2は、ベッドにおける複数のセンサパッドとベッド上の生体(人間)との位置関係を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の第1の実施の形態に係る生体信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、図3に示す生体信号処理装置における選択部の機能的な構成を示すブロック図である。
図5図5は、SSF処理部における、心拍信号f(x)から切り出し波形部分g(x)の切り出し、及びその切り出し波形部分g(x)の移動(シフト)について説明するための図である。
図6図6は、SSF処理部における、心拍信号f(x)から切り出し波形部分g(x)の切り出しの他の一例を示す図である。
図7図7は、PBD処理部で処理される呼吸信号と、呼吸信号の周期を決定する手順を説明するための図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る生体信号処理装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0029】
本発明の第1の実施の形態に係る生体信号処理装置では、図1及び図2に示すように配置される複数(例えば、4つ)のセンサパッドが用いられる。
【0030】
図1及び図2において、ベッド100には4つのセンサパッド10a、10b、10c、10dが設けられる。これらのセンサパッド10a~10dのそれぞれは、例えば、特許第44423481号に記載される「センサーパッド」と同様に構成され、圧電素子11a~11d(検出器)を含む。4つのセンサパッド10a~10dは、ある間隔をもって、例えば、ベッド100に仰向けに横たわる人H(生体)の、肩あたりの部位に、胸あたりの部位に、腹あたりの部位に、及び腰あたりの部位に、それぞれ対応するように配置される。各圧電素子11a~11dは、人Hから対応するセンサパッド10a~10dに伝わる振動に応じて振幅が変化する検出信号を出力する。なお、第1の実施の形態の説明において、総称としてのセンサパッドに対して参照番号10を用い、総称としての圧電素子に対して参照番号11を用いる。
【0031】
本発明の第1の実施の形態に係る生体信号処理装置は、図3に示すように構成される。この生体信号処理装置は、前述した4つの圧電素子11a(センサパッド10a)~11d(センサパッド10d)を用いることにより異なるプロセスでの処理を行うことになる4つの処理チャンネルCH1~CH4を備えている。4つの処理チャンネルCH1~CH4は同様の構成となり、それぞれは、プリアンプ12、ハイパスフィルタ(HPF)13、ローパスフィルタ(LPF)14、SSF(Slide Shift Fitting)処理部15及びPBD(Peak Bottom Detection)処理部16を有している。
【0032】
センサパッド10の圧電素子11から、センサパッド10を通して当該圧電素子11に伝わるベッド100上の人H(生体)の動き(振動)に応じた検出信号が出力される。圧電素子11から出力される検出信号はプリアンプ12でのインピーダンス変換を経てハイパスフィルタ13とローパスフィルタ14に並列的に提供される。ハイパスフィルタ13は、前記検出信号から比較的高い周波数成分の信号を、人Hの心拍動に応じて変化する信号成分を含む心拍信号として抽出する(心拍信号抽出部:生体信号抽出部)。ローバスフィルタ14は、前記検出信号から比較的低い周波数成分の信号を、人Hの呼吸動に応じて変化する信号成分を含む呼吸信号として抽出する(呼吸信号抽出部:生体信号抽出部)。ここで、各処理チャンネルCH1~CH4において、圧電素子11、プリアンプ12及びハイパスフィルタ13が生体信号である心拍信号を生成する生体信号生成部を構成する。また、各チャンネルCH1~CH4において、圧電素子11、プリアンプ12及びローパスフィルタ14が生体信号である呼吸信号を生成する生体信号生成部を構成する。
【0033】
SSF処理部15は、ハイパスフィルタ13(心拍信号抽出部)から提供される心拍信号に基づいて心拍動の周期を検出する処理(周期検出部)と、その検出された周期の信頼の度合いを表す信頼度を生成する処理(信頼度判定部)と、を行う。そして、SFF処理部15は、その処理の結果得られる心拍周期Hpn(n=1、2、3、4)の情報及び信頼度Hrn(n=1、2、3、4)の情報を出力する。PBD処理部16は、ローバスフィルタ14(呼吸信号抽出部)から提供される呼吸信号に基づいて呼吸動の周期を検出する処理(周期検出部)と、その検出された周期の信頼の度合いを表す信頼度値を生成する処理(信頼度判定部)と、を行う。そして、PBD処理部16は、その処理の結果得られる呼吸周期Bpn(n=1、2、3、4)の情報及び信頼度Brn(n=1、2、3、4)の情報を出力する。
【0034】
生体信号処理装置は、更に、生体動周期決定部20を有する。この生体動周期決定部20は、例えば、図4に示すように、構成することができる。図4において、生体動周期決定部20は、心拍周期選択部21、心拍周期信頼度比較部22、呼吸周期選択部23及び呼吸周期信頼度比較部24を有している。心拍周期信頼度比較部22は、前述した4つの処理チャンネルCH1~CH4(SSF処理部15)から出力される心拍周期についての信頼度Hr1~Hr4を比較して最も高い信頼度Hriに対応した心拍周期Hpiの選択指示を出力する。心拍周期選択部21は、前述した4つの処理チャンネルCH1~CH4(SSF処理部15)から出力される心拍周期Hp1~Hp4のうち、心拍周期信頼度比較部22からの選択指示により指示される心拍周期Hpiを決定心拍周期Hpとして出力する。呼吸周期信頼度比較部24は、前述した4つの処理チャンネルCH1~CH4(PBD処理部16)から出力される呼吸周期についての信頼度Br1~Br4を比較して最も高い信頼度Briに対応した呼吸周期Bpiの選択指示を出力する。呼吸周期選択部23は、前述した4つの処理チャンネルCH1~CH4(PBD処理部16)から出力される呼吸周期Bp1~Bp4のうち、呼吸周期信頼度比較部24からの選択指示により指示される呼吸周期Bpiを決定呼吸周期Bpとして出力する。
【0035】
このように、生体動周期決定部20は、4つの処理チャンネルCH1~CH4から出力される4つの心拍周期Hp1~Hp4から、信頼度Hr1~Hr4に基づいて最も確からしい心拍周期Hpiを決定(選択)し、その心拍周期Hpiを決定心拍周期Hpとして出力する。また、生体動周期決定部20は、4つの処理チャンネルCH1~CH4から出力される4つの呼吸周期Bp1~Bp4から、信頼度Br1~Br4に基づいて最も確からしい呼吸周期Bpiを決定(選択)し、その呼吸周期Bpiを決定呼吸周期Bpとして出力する。
【0036】
SSF処理部15の具体的な処理について、図5を参照して、説明する。
【0037】
ハイパスフィルタ13から提供される心拍信号f(x)から所定時間分(例えば、6秒分)の信号部分が切り出され、その信号部分が切り出し波形部分g(x)としてメモリ内に保持される(信号切出し部)。その切り出し波形部分g(x)をある時間幅tずつ移動(シフト)させて、その移動毎に、当該切り出し波形部分g(x)と心拍信号f(x)の波形部分f(x+t)とが比較され、それらの一致の度合いを表す類似度が演算される(類似度演算部)。この類似度dは、例えば、
d=∫|f(x+t)-g(x)|dx ・・・(1)
に従って、切り出し波形部分g(x)と心拍信号の波形部分f(x+t)との差分の累積値(デジタル的な可算値)として算出される(絶対値法)。この類似度dは、t=0のとき、心拍信号f(x)と切り出し波形部分g(x)とがずれなく重なった状態で、それらの差分がゼロになる。この類似度d=0は、切り出し波形部分g(x)と心拍信号の波形部分f(x+0)とが最も類似している状態を表す。
【0038】
また、SSF処理部15は、切り出し波形部分g(x)を順次ずらしながら得られる類似度d(前記(1)式参照)にて表される切り出し波形部分g(x)と心拍信号の波形部分f(x+t)との一致の度合いがピークになるタイミングに基づいて心拍信号f(x)の周期を決定する(心拍信号決定部)。例えば、心拍信号f(x)から所定時間分の波形部分g(x)が切り出されたタイミング(類似度d=0:一致の度合いがピーク)から、その切り出し波形部分g(x)を順次ずらして次に類似度dにて表される一致の度合いがピークになるタイミングまでの時間に基づいて心拍信号f(x)の周期が決定される。このことは、心拍信号f(x)が、例えば、理想的な波形(例えば、正弦波形)である場合に、1周期(整数倍周期)ずらした波形はもとの波形(例えば、正弦波形)に重なる、ということに基づいている。
【0039】
SSF処理部15は、このように決定された周期を心拍周期Hpiとして出力する。そして、SSF処理部15は、当該心拍周期Hpiを決定した際に用いた類似度d(一致の度合いがピーク)に基づいて前記心拍周期Hpiの信頼の度合いを表す信頼度Hriを決定し、前記心拍周期Hpiとともにその信頼度Hriを出力する。類似度dで表される一致の度合いが高ければ高いほど、より高い信頼の度合いを表す信頼度Hriが決定される。
【0040】
例えば、心拍信号を125Hzの周期で800ポイントをサンプリングした波形部分を切出し波形部分とすると、その切り出し波形部分は、心拍信号の約6秒分の波形部分である。この場合、切り出し波形部分に約8つのパルス(心拍)が存在し得る。心拍信号を約6秒毎に切り出す場合、ある切り出しブロックでの処理においてミスが発生すると、約6秒間の計測値が欠落してしまい、連続的な精度の良い周期検出に支障をきたしてしまう。
【0041】
そこで、SFF処理部15では、その切り出しタイミングを、例えば、図6に示すように、切り出し波形部分g(x)の時間長(所定時間:例えば、約6秒)ずつずらすのではなく、その切り出し波形部分g(x)の時間長より短い時間長Δxずつずらすことができる。このようにすれば、切り出しブロックでの処理においてミスが発生したとしても、欠落する計測値は、その短い時間長Δx分だけとなり、連続的により精度の良い周期検出が可能になる。
【0042】
上述したような生体信号処理装置によれば、人Hの異なる部位に対応して設置された複数の圧電素子11a~11d(センサパッド10a~11d)からの検出信号に基づいて生成される複数の心拍信号Hpnから、当該複数の心拍信号Hpnのそれぞれについて得られる信頼度Hrnに基づいて、最も確からしい心拍周期(決定心拍周期Hp)が決定されるので、多くの処理時間をかけることなく、周期性のある心拍信号の周期を高い信頼性をもって得ることのができる。
【0043】
なお、前述したSSF処理部15では、切り出し波形部分g(x)と心拍信号の波形部分f(x+t)との一致の度合いを表す類似度dは、式(1)に従って演算されたもの(絶対値法)であったが、これに限定されない。例えば、
d=∫(f(x+t)*g(x))dx ・・・(2)
に従って類似度dを演算する(相関法)ようにしても、また、
d=∫(f(x+t)-g(x))dx ・・・(3)
に従って類似度dを演算する(二乗法)ようにしてもよい。
また、前述した式(1)、(2)、(3)のいずれかに従った演算値に他の手法(平均化、正規化等の手法)を適用して数値化した値を類似度(信頼度)とすることも、更に、他の手法に従って類似度d(信頼度)を演算することもできる。
【0044】
次に、PBD処理部16の具体的な処理について、図7を参照して、説明する。
【0045】
PBD処理部16では、制御部(図示略)での制御のもと、ローパスフィルタ14から供給される呼吸信号X(t)の信号値がサンプリングされてピークホールド回路(例えば、メモリまたはレジスタで構成される:図示略)に順次保持される。呼吸信号X(t)の信号値が増加している間では、ピークホールド回路に保持される信号値が順次更新される。そして、図7に示すように、時刻t1においてピークホールド回路に呼吸信号X(t)のピークとなる信号値P1が保持される(ピーク検出部)と、以後、サンプリングされる信号値は、信号値P1より小さいので、ピークホールド回路に信号値P1が保持された状態が維持される。そして、ピークホールド回路に保持された信号値P1が更新されることなく所定時間Δtが経過すると、制御部での制御のもと、この信号値P1が呼吸信号X(t)のピーク値P1として確定される。
【0046】
その後、PBD処理部16では、ピークホールド回路からボトムホールド回路(例えば、メモリまたはレジスタで構成される:図示略)への切換えが行われ、ローパスフィルタ14から供給される呼吸信号X(t)の信号値がサンプリングされてボトムホールド回路に順次保持される。呼吸信号X(t)の信号値が減少している間では、ボトムホールド回路に保持される信号値が順次更新される。そして、図7に示すように、時刻t2においてボトムホールド回路にボトムとなる信号値B1が保持される(ボトム検出部)と、以後、サンプリングされる信号値は、信号値B1より大きいので、ボトムホールド回路に信号値B1が保持された状態が維持される。そして、ボトムホールド回路に保持された信号値B1が更新されることなく所定時間Δtが経過すると、制御部での制御のもと、この信号値B1が呼吸信号X(t)のボトム値B1として確定される。
【0047】
その後、PBD処理回路16では、ボトムホールド回路がピークホールド回路に切換えられ、上述したピークホールドに係る処理が行われる。そして、図7に示すように、時刻t3において呼吸信号X(t)の信号値P2がピーク値としてピークホールド回路に保持される。信号値P2が保持されてから所定時間Δtが経過する前に、呼吸信号X(t)が減少して信号値がボトム値B2になって更に増加する状況では、前記信号値P2がピークホールド回路に保持された時刻t3から所定時間Δt経過後、呼吸信号X(t)の信号値は、ピークホールド回路にピーク値として保持された信号値P2より大きくなる。この場合、ピークホールド回路に保持された信号値P2はピーク値として確定されない。そして、ピークホールド回路からボトムホールド回路への切換えが行われることなく、引き続きピークホールド回路に保持される信号値が順次更新されていく。この状況では、制御部は、呼吸信号X(t)のピークとなる信号値P2をピーク値として確定させず、また、時刻t4で呼吸信号X(t)のボトムとなる信号値B2もボトム値として確定させない。
【0048】
このように,、ピークホールド回路に保持される信号値が更新される過程で、時刻t5においてピークホールド回路に呼吸信号X(t)のピークとなる信号値P3が保持されると、以後、ピークホールド回路にその信号値P3が保持された状態が維持される。そして、ピークホールド回路に保持された信号値P3が更新されることなく所定時間Δtが経過すると、制御部での制御のもと、この信号値P3が呼吸信号X(t)のピーク値P3として確定される。
【0049】
PBD処理部16では、制御部での制御のもと、上述したように、ピーク値検出、ピーク値確定、ボトム値検出、及びボトム値確定の各処理が繰り返し実行される。そして、確定された2つのピーク値の時間間隔に基づいて呼吸信号X(t)の周期が(確定された2つのピーク値の時間間隔そのものが呼吸信号X(t)の周期として)演算される(呼吸周期決定部)。なお、確定されたピーク値とボトム値との時間間隔に基づいて呼吸信号X(t)の周期を算出することも可能であり、また、確定された2つのボトム値の時間間隔に基づいて呼吸信号X(t)の周期を算出することもできる。
【0050】
更に、PBD処理部16では、前述したように呼吸信号X(t)の周期を算出(周期検出部)するとともに、その算出された周期の信頼の度合いを表す信頼度を決定する(信頼度判定部)。例えば、その周期に含まれる確定されたピーク値と確定されたボトム値との差に基づいて信頼度が決定される。確定されたピーク値と確定されたボトム値との差が大きいほど信頼度が高いとすることができる。このようにすると、図7においてピーク値P2(ボトム値B2)のような疑似ピークの信号値が確定されたピーク値として決定されたとしても、ボトム値との差が小さいので、その疑似ピークに基づいて決定される周期の信頼度は小さいものとなり得る。
【0051】
なお、疑似ピークが大きな信号値となる場合、周期の精度が低下してしまう。これを防止するために、ローパスフィルタ14の特性、例えば、呼吸信号のカットオフ周波数をできるだけ低く設定することができる。
【0052】
PBD処理部16は、上述したように決定された周期を呼吸周期Bpiとして、また、上述したように周期決定で用いた確定されたピーク値と確定されたボトム値とに基づいて算出された信頼度を呼吸信頼度Briとして出力する。
【0053】
また、上述したような生体信号処理装置によれば、人Hの異なる部位に対応して設置された複数の圧電素子11a~11d(センサパッド10a~11d)からの検出信号に基づいて生成される複数の呼吸信号Bpnから、当該複数の呼吸信号Bpnのそれぞれについて得られる信頼度Brnに基づいて、最も確からしい呼吸周期(決定呼吸周期Hp)が決定されるので、多くの処理時間をかけることなく、周期性のある呼吸信号の周期を高い信頼性をもって得ることができる。
【0054】
上述した生体信号処理装置において、プリアンプ12、ハイパスフィルタ13、及びローパスフィルタ14は種々の電子部品によるハードウエアにて構成することができる。SSF処理部15及びPBD処理部16のそれぞれは、A/D変換器、メモリ及び処理ユニット(CPU含む)等のハードウエアを含み、種々の処理を処理ユニットが実行するソフトウエアによって実現させている。
【0055】
なお、上述した生体信号処理装置は、生体信号として心拍信号及び呼吸信号の双方を抽出するものであったが、これに限定されずいずれか1つ(心拍信号または呼吸信号)を抽出し、心拍信号及び呼吸信号のいずれかの周期を検出するものであってもよい。
【0056】
また、上述した生体信号処理装置では、4つの異なる系統(CH1~CH4)から4つの生体信号(心拍信号及び呼吸信号のそれぞれ)を生成するものであったが、更に多くの系統から更に多くの生体信号を生成し、それらのより多くの生体信号から得られるより多くの周期から最も確からしい周期を生体動周期として決定することができる。例えば、特性の異なる複数のハイパスフィルタを用い、特性の異なる複数ローパスフィルタを用いることにより更に多くの心拍信号や呼吸信号を抽出するようにしてもよい。また、SSF処理部15では、心拍信号から複数のサイズの信号を切出し、複数の切り出し信号波形のそれぞれを処理する(周期の検出、信頼度の演算)ようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る生体信号処理装置について説明する。この生体信号処理装置は、単一の圧電素子(検出器)を用い、その圧電素子に対して異なるプロセスを経て処理を行う複数の処理系を有する点で、前述した第1の実施の形態に係る生体信号処理装置と相違する。
【0058】
本発明の第2の実施の形態に係る生体信号処理装置は、図8に示すように構成される。
【0059】
ベッド100には、単一のセンサパッド10が、例えば、仰向けに横たわる人Hの胸あたりの部位に対応するように設けられている。センサパッド10には圧電素子11が含まれており、圧電素子11は、ベッド100上の人Hからセンサパッド10に伝わる振動に応じて振幅が変化する検出信号を出力する。図8において、この生体信号処理装置は、第1の増幅率の増幅特性(変換特性)を有する第1増幅器17(HGA:信号変換部)及び第1の増幅率より低い第2の増幅率の増幅特性(変換特性)を有する第2増幅器18(LGA:信号変換部)を有している。また、この生体信号処理装置は、第1増幅器17を含む処理系と第2増幅器18を含む処理系との異なるプロセスを経て生体信号(心拍信号、呼吸信号)を生成する2つの処理系を有する。第1増幅器17を含む処理系(一方の処理系)及び第2増幅器18を含む処理系(他方の処理系)のそれぞれは、第1の実施の形態に係る生体信号処理装置における各チャンネルCH1~CH4と同様(図3参照)に、ハイパスフィルタ13、ローバスフィルタ14、SSF処理部15及びPBD処理部16を有している。更に、この生体信号処理装置は、第1の実施の形態に係る生体信号処理装置における各チャンネルCH1~CH4と同様(図3参照)に、生体動周期決定部20を有している。
【0060】
一方の処理系では、第1増幅器17を経て増幅された(インピーダンス変換も含む)検出信号が、ハイパスフィルタ13(生体信号抽出部)を経ることにより、人Hの心拍動に応じて変化する信号成分を含む心拍信号が当該検出信号から抽出される。また、第1増幅器17を経て増幅された検出信号が、ローパスフィルタ14(生体信号抽出部)を経ることにより、人Hの呼吸動に応じて変化する信号成分を含む呼吸信号が当該検出信号から抽出される。他方の処理系でも同様に、第2増幅器18を経て増幅された(インピーダンス変換も含む)検出信号から心拍信号及び呼吸信号が抽出される。
【0061】
各処理系では、第1の実施の形態に係る生体信号処理装置における各チャンネルCH1~CH4と同様に、前記SSF処理部15は、ハイパスフィルタ15から提供される心拍信号に基づいて心拍動の周期を検出する処理(図5図6参照)と、その検出された周期の信頼の度合いを表す信頼度を生成する処理とを行う。そして、SFF処理部15は、その処理の結果得られる心拍周期Hpn(n=1、2)の情報及び信頼度Hrn(n=1、2)の情報を出力する。PBD処理部16も、第1の実施の形態の場合と同様に、ローパスフィルタ16から提供される呼吸信号に基づいて呼吸動の周期を検出する処理(図7参照)と、その検出された周期の信頼の度合いを表す信頼度値を生成する処理とを行う。そして、PBD処理部16は、その処理の結果得られる呼吸周期Bpn(n=1、2)の情報及び信頼度Brn(n=1、2)の情報を出力する。
【0062】
生体動周期決定部20は、第1の実施の形態の場合と同様に構成され(図4参照)、2つの処理系(SSF処理部15)から出力される2つの心拍周期Hp1、Hp2から、信頼度Hr1、Hr2に基づいて最も確からしい心拍周期Hpiを決定(選択)し、その心拍周期Hpiを決定心拍周期Hpとして出力する。また、生体動周期決定部20は、2つの処理系(PBD処理部16)から出力される2つの呼吸周期Bp1、Bp2から、信頼度Br1、Br2に基づいて最も確からしい呼吸周期Bpiを決定(選択)し、その呼吸周期Bpiを決定呼吸周期Bpとして出力する。
【0063】
本発明の第2の実施の形態に係る生体信号処理装置では、上述したように、単一の圧電素子11からの検出信号が2つの異なる増幅特性(変換特性)を有する第1増幅器17と第2増幅器18とによって増幅され、その増幅後の2つの信号のそれぞれから心拍動に応じて変化する信号成分を含む信号が心拍信号(生体信号)として抽出され、また、呼吸動に応じて変化する信号成分を含む信号が呼吸信号(生体信号)として抽出される。このように異なる増幅特性によって増幅されることによって異なるプロセスを経て生成されることとなった複数の生体信号(心拍信号、呼吸信号)のそれぞれの周期が検出されるとともに、その検出される周期の信頼の度合いが判定される。そして、最も信頼の度合いが高い周期がその生体信号(心拍信号、呼吸信号)の周期(決定心拍周期Hp、決定呼吸周期Bp)として決定される。
【0064】
このような生体信号処理部によれば、異なる増幅特性によって増幅されることによって異なるプロセスを経て生成される複数の生体信号(心拍信号、呼吸信号)から得られる複数の周期から、当該複数の周期のそれぞれについて得られた信頼の度合いに基づいて、最も確からしい周期が生体動周期(決定心拍周期Hp、決定呼吸周期Bp)として決定されるので、多くの処理時間をかけることなく、周期性のある生体動(心拍動、呼吸動)の周期を高い信頼性をもって得ることのができるようになる。
【0065】
なお、第1増幅器17及び第2増幅器18それぞれの増幅特性(増幅率)は、対象となる人(H)の属性(年齢、性別、身長、体重等)に応じて適宜設定することができる。また、更に多くの処理系を設けて、単一の検出器(圧電素子11)から得られるより多くの生体信号(心拍信号、呼吸信号)の周期から最も確からしい周期を決定することもできる。
【0066】
また、複数の処理系のそれぞれにおいて適用される検出器からの検出信号を変換するための変換特性は、前述したような増幅特性(増幅率)に限定されず、例えば、平滑化特性、先鋭化特性や、複数の変換特性から合成され得る変換特性等、他の変換特性であってもよい。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る生体信号処理装置は、多くの処理時間をかけることなく、周期性のある生体動の周期を高い信頼性をもって得ることのできるという効果を有し、生体の心拍動や呼吸動等の周期的な動きを含む当該生体の動きに応じて変化する生体信号を処理する生体信号処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0069】
10a、10b、10c、10d センサパッド
11a、11b、11c、11d 圧電素子
12 プリアンプ
13 ハイパスフィルタ(心拍信号抽出部)
14 ローパスフィルタ(呼吸信号抽出部)
15 SFF処理部
16 PBD処理部
20 生体動周期決定部
21 心拍周期選択部
22 心拍周期信頼度比較部
23 呼吸周期選択部
24 呼吸周期信頼度比較部
【要約】
【課題】多くの処理時間をかけることなく、周期性のある生体動の周期を高い信頼性をもって得ることのできる生体信号処理装置を提供することである。
【解決手段】周期的動き(心拍動、呼吸動)を含む生体の動きに応じて変化する生体信号をそれぞれ異なるプロセスを経て生成する複数の生体信号生成部(13、14)と、前記生体信号における前記生体の周期的動きに応じて変化する信号成分の周期を検出する周期検出部(15、16)と、前記周期検出部にて検出される周期の信頼の度合いを判定する信頼度判定部(15、16)と、それぞれが前記周期検出部により得られた複数の周期から、当該複数の周期のそれぞれについて前記信頼度判定部により得られた前記信頼の度合いに基づいて、最も確からしい周期を生体動周期として決定する生体動周期決定部(20)と、を有する構成となる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8