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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】チャック包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/25 20060101AFI20221031BHJP
   A44B 19/16 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B65D33/25 A
A44B19/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022045378
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2022-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515266555
【氏名又は名称】MKR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】松永 茂伸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 辰哉
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-222287(JP,A)
【文献】実開平03-072817(JP,U)
【文献】特開2008-056279(JP,A)
【文献】特開2007-191557(JP,A)
【文献】特開2019-147605(JP,A)
【文献】実開平02-028483(JP,U)
【文献】特開2019-177907(JP,A)
【文献】特開2015-193419(JP,A)
【文献】特開平09-221539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/25
A44B 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する袋体と、
前記袋体の開口部に近接する内面に設けられているチャック機構と、を備え、
前記チャック機構の少なくとも一部は形状記憶樹脂によって形成されており、所定温度以上になると前記袋体の内圧を受けて前記開口部が開封されるようになっており、
前記チャック機構は、ポリオレフィン系樹脂から形成されるメス爪と、前記形状記憶樹脂としてのポリ乳酸樹脂から形成されるオス爪と、から構成され、所定温度以上になると前記オス爪が軟化するようになっており
前記オス爪は、前記袋体が内圧を受けて膨張することによって、前記メス爪に向かう方向から、前記袋体の外向き方向に折れ曲がるように形成されている、 チャック包装袋。
【請求項2】
内容物を収容する袋体と、
前記袋体の開口部に近接する内面に設けられているチャック機構と、を備え、
前記チャック機構の少なくとも一部は形状記憶樹脂によって形成されており、所定温度以上になると前記袋体の内圧を受けて前記開口部が開封されるようになっており、
前記チャック機構は、ポリオレフィン系樹脂から形成されるメス爪と、前記形状記憶樹脂としてのポリ乳酸樹脂から形成されるオス爪と、から構成され、所定温度以上になると前記オス爪が軟化するようになっており、
前記オス爪は、円形部と前記円形部に接続するネック部とから構成されるとともに、前記メス爪は、前記円形部に嵌合するC字状に形成され、
前記オス爪は、前記袋体が内圧を受けて膨張することによって、前記メス爪に向かう方向から、前記袋体の外向き方向に折れ曲がるように形成されている、 チャック包装袋。
【請求項3】
前記オス爪の前記円形部に近接する位置のネック部には、前記袋体の外側に向いた断面が切り欠かれた凹部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載された、チャック包装袋。
【請求項4】
前記チャック機構は、所定温度未満になると前記オス爪が再び硬化することで、前記メス爪と再び嵌合して、前記開口部を再び封止できるようになっている、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された、チャック包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック部に形状記憶樹脂を使用したチャック包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂製のチャックを袋体に取り付けておくことによって、いったん開封した後、チャックによって再び封止できるようにしたチャック包装袋が提案されている。このようなチャック包装袋は、再密封や再開封が可能であり密閉性に優れている。
【0003】
例えば、特許文献1には、チャック付きパウチ(P)において、前記チャック(10)が形状記憶性能を有する線状樹脂からなることを特徴とするチャック付きパウチが開示されている。この特許文献1のチャック付きパウチであれば、該パウチの開口部が口を開けたままの形を保持するようになるため、内容物を取り出し易くなる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-222287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、レトルト食品等の内容物をチャック包装袋に収容することが行われている。このような場合、チャック包装袋を電子レンジで加熱すると袋体が内圧によって膨張して破裂・飛散してしまうおそれがある。
【0006】
しかしながら、特許文献1のチャック付きパウチを含む現状のチャック包装体は、そのまま加熱されることを想定したものではなく、加熱時に開口されることで内部流体がスムーズに外部に流出するようにはなっていない。一部には袋体に弁を設けた例もあるが、弁を設けると構造が複雑になるうえ、密閉性も劣ることになる。
【0007】
そこで、本発明は、加熱時に開口されることで内部流体をスムーズに外部に流出するようになっている、チャック包装袋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のチャック包装袋は、内容物を収容する袋体と、前記袋体の開口部に近接する内面に設けられているチャック機構と、を備え、前記チャック機構の少なくとも一部は形状記憶樹脂によって形成されており、所定温度以上になると前記袋体の内圧を受けて前記開口部が開封されるようになっている。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明のチャック包装袋は、内容物を収容する袋体と、袋体の開口部に近接する内面に設けられているチャック機構と、を備え、チャック機構の少なくとも一部は形状記憶樹脂によって形成されており、所定温度以上になると袋体の内圧を受けて開口部が開封されるようになっている。したがって、加熱時にはチャック機構によって開口部が開封されて、内部流体(気体)をスムーズに外部に排出できるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】チャック包装袋の全体の斜視図である。
図2】チャック包装袋の全体の断面図である。
図3】室温時のチャック機構の拡大断面図である。
図4】加熱時のチャック機構の拡大断面図である。
図5】高温時のチャック機構の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例
【0012】
(全体構成)
まず、図1を用いて、本発明のチャック包装袋1の全体構成を説明する。本発明のチャック包装袋1は、図1に示すように、いわゆるフリーザーバッグであり、内容物を収容する袋体2と、袋体2の開口部21に近接する内面に設けられているチャック機構3と、を備えている。
【0013】
袋体2は、例えば、外面側のナイロン(ポリアミド合成樹脂)と、内面側の(高密度)ポリエチレン樹脂と、から構成される積層フィルムを袋状に成形したものである。袋体2は、具体的には、正面部20a、背面部20b、側面部20c、20c、及び、底面部20dから構成される。そして、正面部20a及び背面部20bの内面に、後述するチャック機構3が貼着される。
【0014】
そして、袋体2の開口部21に近接する内面-すなわち正面部20aの内面及び背面部20bの内面-には、チャック機構3が設けられている。このチャック機構3の少なくとも一部は形状記憶樹脂によって形成されており、所定温度以上になると袋体2の内圧を受けて開口部21が開封されるようになっている。
【0015】
袋体2の内部には、商品の製造工程において、食品等の内容物が密封状態(真空状態としてよい)で封入される。すなわち、袋体2には、開口部21を通じて内容物が投入されており、チャック機構3によって封止されている。なお、チャック機構3よりも外側に、溶着部(封止部)等をさらに設けることも好ましい
【0016】
(チャック機構の構成)
次に、図2-3を用いて、本実施例のチャック包装袋1のチャック機構3の構成について説明する。なお、図2は、チャック機構3を誇張して実際よりも大きく描いている。チャック機構3は、ポリオレフィン系樹脂から形成されるメス爪4と、形状記憶樹脂から形成されるオス爪5と、から構成されており、オス爪5が所定温度以上になると軟化するようになっている。なお、ここでは、正面部20aにメス爪4が貼着され、背面部20bにオス爪5が貼着される場合を例に挙げて説明するが、もちろん逆の対応関係であってもよい。
【0017】
メス爪4は、ポリオレフィン系樹脂、例えば、(高密度)ポリエチレンやポリプロピレンを押し出し成形することで得られる。すなわち、メス爪4は、断面形状に要求される基準形状がシビアであるため、ポリオレフィン系樹脂で成形する。この高密度ポリエチレンは、-30°C~+110°Cまで使用可能である。つまり、メス爪4は、後述するオス爪5と比べて、より高温度域まで剛性を保つようにされている。
【0018】
メス爪4は、具体的には、袋体2に貼着される板状のベース40と、ベース40から立ち上がる第1片41と、同様に、第1片41に対向するようにベース40から立ち上がる第2片42と、から構成されており、全体として、オス爪5に向いて開いたC字状になっている。
【0019】
すなわち、メス爪4は、基部から一方側(図中右側)に湾曲した第1爪41と、基部から他方側(図中左側)に湾曲した第2爪42と、が、向かい合うように延びることで、両者で囲まれた領域として円形断面のスペースを形成するようになっている。
【0020】
一方、オス爪5は、形状記憶樹脂、例えば、ポリ乳酸樹脂と、シール層としてのポリエチレン樹脂と、を、共押し出し成形することで得られる。すなわち、オス爪5の袋体2との接合面は、ヒートシール層であるポリエチレン樹脂とする。このポリ乳酸樹脂は、80°C以上でゴム状に軟化する。なお、形状記憶樹脂は、ポリ乳酸樹脂に限定されるものではなく、例えば、
【0021】
オス爪5は、具体的には、袋体2側に配置される板状のベース50と、ベース50から延びるネック部52と、ネック部52の先端側に形成される円形部(円形断面部)51と、から構成されている。すなわち、オス爪5は、円形断面を有する円形部51を先端側に有し、円形部51とベース50を接続する円形断面よりも細いネック部52を基端側に有する。
【0022】
そして、本実施例のオス爪5のネック部52には、袋体2の外側に向いた側面に、断面が切り欠かれた凹部53が設けられている。つまり、オス爪5のネック部52には、開口縁に向いた側であって、円形部51の付け根の断面が欠損している。すなわち、ネック部52は、円形部51に接続する箇所において(外向き面が)細くなっている。
【0023】
製品の出荷時には、チャック機構3は、図3に示すように、嵌合状態となっている。すなわち、オス爪5の先端側の円形部51は、メス爪4の左右の第1爪41及び第2爪42によって、抱え込まれている。換言すると、オス爪5は、C字状に開いたメス爪41、42が形成する円形(断面)スペースに嵌合している。
【0024】
したがって、メス爪4とオス爪5を引き離そうとする力に対しては、これに抵抗するようになっている。すなわち、メス爪4の第1片41及び第2片42の湾曲した先端近傍によって、オス爪5の円形部51を引っ掛けることで、両者は離れないようにされている。
【0025】
(チャック機構の作用)
次に、図3図5を用いて、本実施例のチャック包装袋1のチャック機構3の作用について説明する。
【0026】
室温時には、図3に示すように、チャック機構3は、嵌合状態となっている。すなわち、メス爪4の第1片41と第2片42によって、オス爪5の円形部51が抱え込まれている。つまり、オス爪5の円形部51は、メス爪4の第1片41及び第2片42によって引っ掛けられている。
【0027】
加熱時には、図4に示すように、チャック機構3は、嵌合状態が解除されることになる。袋体2が加熱されると、内部の食品等から水蒸気等が生じることで、袋体2の内部の圧力が高まるとともに、袋体2の内部の体積が増加する。そうすると、図示したように、チャック機構3を開くような力が作用することになる。
【0028】
これと同時に、加熱によって袋体2の内部の温度が上昇していく。その後、所定温度(例えば80°C)になると、オス爪5が軟化することで、変形しやすくなる。結果として、これらの相互作用によって、チャック機構3が解除されることになる。
【0029】
具体的には、オス爪5は、凹部53が設けられた外側に倒れるように変形する。一方で、メス爪4の第2片42は、オス爪5の円形部51から離脱することになる。最終的に、オス爪5の円形部51は、メス爪4の第1片41及び第2片42で区画されたスペースから脱出することになる。
【0030】
その後の高温時には、図5に示すように、チャック機構3は、嵌合が外れた解除状態となっており、袋体2の開口部21は開放されている。したがって、袋体2の内部の流体は、開口部21を通じてスムーズに外側に排出されるため、内圧が下がるようになっている。
【0031】
そして、時間が経過して所定温度未満になるとオス爪5が再び硬化することで、メス爪4と再び嵌合して、開口部21を再び封止できるようになっている。つまり、袋体2の内圧が解消されれば、メス爪4とオス爪5が正対するようになるため、メス爪4にオス爪5を嵌合させやすくなる。
【0032】
(効果)
次に、本実施例のチャック包装袋1が奏する効果を列挙して説明する
【0033】
(1)上述してきたように、本実施例のチャック包装袋1は、内容物を収容する袋体2と、袋体2の開口部21に近接する内面に設けられているチャック機構3と、を備え、チャック機構3の少なくとも一部は形状記憶樹脂によって形成されており、所定温度以上になると袋体2の内圧を受けて開口部21が開封されるようになっている。したがって、加熱時にはチャック機構3によって開口部21が開封されて、内部流体(気体)をスムーズに外部に排出できるようになっている。ここにおいて所定温度としては、限定されるものではないが、例えば80°Cとすることができる。
【0034】
すなわち、本実施例のチャック包装袋1は、低温状態から室温状態で、チャック嵌合能力を有するが、80°C以上の温度、及び、袋体2内の基準圧力以上の条件を満たす場合には、チャック嵌合能力が失われて、内部の流体を外部に排出するようになる。そのため、電子レンジなどで加熱しても、袋体2が膨張して破裂することを防止できる。
【0035】
また、チャック機構3が解除された後は、高温の気体(雰囲気)が外部に排出されて温度が室温近くまで下がるため、形状記憶樹脂で成形されたオス爪5は、再びチャック嵌合機能を有する程度の硬さ・形状に復帰する。すなわち、オス爪5は、再び、通常のチャック嵌合機能を有するようになる。このように、本実施例のチャック機構3を有するチャック包装袋1は、リユースが可能となる。
【0036】
(2)また、チャック機構3は、ポリオレフィン系樹脂から形成されるメス爪4と、形状記憶樹脂としてのポリ乳酸樹脂から形成されるオス爪5と、から構成され、所定温度以上になるとオス爪が軟化するようになっている。このように、メス爪4をオレフィン系樹脂で成形することで、必要な成形精度と高温域での剛性を持たせ、かつ、オス爪5を形状記憶樹脂で成形することで、高温域で軟化させて変形性能を持たせることができる。
【0037】
(3)さらに、オス爪5は、円形部51と円形部51に接続するネック部52とから構成されるとともに、メス爪4は、円形部51に嵌合するC字状に形成されている。このような形状とすれば、メス爪4とオス爪5が、正面(対向した状態)からは嵌合しやすく、かつ、オス爪5が回転(折れ曲がる)したときには外れやすくなる。
【0038】
(4)また、オス爪5は、袋体2が内圧を受けて膨張することによって、メス爪4に向かう方向から、袋体2の外向き方向に折れ曲がるように形成されていることが好ましい。このように、オス爪5が袋体2の内圧を受けて折れ曲がるようにしておけば、高温域で膨張した内部流体の作用でオス爪5が外側に倒れるため、メス爪4との嵌合が外れやすくなる。
【0039】
(5)具体的には、オス爪5の円形部51に近接する位置のネック部52には、袋体2の外側に向いた断面が切り欠かれた凹部53が設けられていることが好ましい。そうすれば、メス爪4の内側の第2片42が離れるように移動(折れ曲がり、揺動)したときに、いっそうオス爪5全体が凹部53のある外側に倒れやすくなる。
【0040】
さらに言えば、このように凹部53を設けておくことで、オス爪5とメス爪4が離れる方向に微動すると、オス爪5が少しずつ倒れ(傾き)始め、少し倒れることで、より第2片42側からの(引っ掻くような)力を受けにくくなる。すなわち、脱出作用が加速するようになる。
【0041】
(6)そして、チャック機構3は、所定温度未満になるとオス爪5が再び硬化することで、メス爪4と再び嵌合して、開口部21を再び封止できるようになっている。つまり、袋体2の内圧が解消されれば、メス爪4とオス爪5が正対するようになるため、メス爪4にオス爪5を嵌合させやすくなる。すなわち、チャック包装袋1を容易にリユースでき、リユースした際の気密状態に優れている。
【0042】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 チャック包装袋
2 袋体
21 開口部
3 チャック機構
4 メス爪
40 ベース
41 第1片
42 第2片
5 オス爪
50 ベース
51 円形部
52 ネック部
53 凹部
【要約】
【課題】加熱時に開口されることで内部流体をスムーズに外部に流出するようになっている、チャック包装袋を提供する。
【解決手段】本実施例のチャック包装袋1は、内容物を収容する袋体2と、袋体2の開口部21に近接する内面に設けられているチャック機構3と、を備え、チャック機構3の少なくとも一部は形状記憶樹脂によって形成されており、所定温度以上になると袋体2の内圧を受けて開口部21が開封されるようになっている。したがって、加熱時にはチャック機構3によって開口部21が開封されて、内部流体(気体)をスムーズに外部に排出できるようになっている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5