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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】メタルマスク
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20221031BHJP
   B41N 1/24 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H05K3/34 505D
B41N1/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022049639
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-03-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 環旭電子股■有限公司(令和3年10月6日)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592173412
【氏名又は名称】株式会社プロセス・ラボ・ミクロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正直
(72)【発明者】
【氏名】山口 正浩
(72)【発明者】
【氏名】木暮 竜
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-314580(JP,A)
【文献】特開2014-218732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
B41N 1/24
B41C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の薄板である矩形状の平板部と、
前記平板部の面内に、印刷パターンに対応した形状と配置で形成された複数の印刷用開口と、前記印刷用開口が形成されていない領域のスキージ面側に、略直方体の窪み状に形成された部品収納部と、前記部品収納部の面に形成された線状の構造物である補強構造と、
を備えることを特徴とする、メタルマスク。
【請求項2】
記補強構造は、前記部品収納部の上面または側面に形成されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項3】
前記補強構造は、該補強構造が形成されている前記部品収納部の面の略対角方向に沿って線状に形成されている、
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のメタルマスク。
【請求項4】
前記補強構造は、前記平板部のスキージ面側に形成されている、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のメタルマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路や半導体製造工程において、基板やウエハーなどのワークに、はんだなどのペーストを印刷するためのメタルマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路実装工程や半導体製造工程において、電子部品を基板に実装をしたり、バンプ電極を形成したりするときは、基板やシリコンウエハーなどのワーク上に、はんだなどの導電性ペーストを印刷し、これをリフロー炉で高温処理をして溶接する方法が一般的に用いられている。
【0003】
はんだ印刷には、金属の薄板に微細な開口部が形成された孔版であるメタルマスクが一般に使用されている。メタルマスクの開口部は、ワーク上の電極に対応するパターンで形成されており、印刷機に設置されたメタルマスクが、ワークに対して適正な位置に配置されたとき、開口部を介して電極上に適正にペーストを印刷できるように形成されている。ここで、プリント基板上に印刷されたペーストに電子部品を搭載する基板実装の形態は、表面実装といわれる。
【0004】
メタルマスクは、一般には面内に開口部が加工された金属の薄い平板を、ポリエステルのメッシュスクリーンが所定の張力で張設されたアルミ製の金属枠(以下「スクリーン枠」という)にメッシュスクリーンを介して張設した、メタルマスク印刷版として使用される。そして、一方の面(転写面)が基板に対向する状態で設置して、反対面(スキージ面)よりスキージでペーストを開口に充填して、基板上に転写印刷をする。
【0005】
一方、基板実装は、前記の表面実装の他に、電子部品のリード線を、基板に形成された穴に挿入して、裏面よりはんだ付けをする、挿入実装がある。挿入実装は、比較的大きな電子部品を実装する際に使われ、さらに、これら両方が同一基板上で同時に使用される混載実装が存在する。
【0006】
混載実装においては、先に挿入実装で電子部品を実装した後、表面実装を行うが、その際に使用されるメタルマスク100は、図9のように、電子部品Pとの接触を避けるために、部品収納部103が設けられたものが使用されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0007】
ここで、部品収納部103は、一般には、メタルマスク100の面内に、スキージ面側に突出した、略直方体の窪み状に形成されており、この窪みの内側に部品Pが収納され、保護されるようになっている。
【0008】
ところで、先述のように、メタルマスク100をスクリーン枠に張設したとき、スクリーン枠からメタルマスク100に張力が加わり、そのため、部品収納部103の上面が歪み、それにより印刷精度が低下したり、メタルマスク100が破損したりする現象が発生することが問題となっていた。特に、近年、基板実装の微細化が進むに伴い、メタルマスク100が薄型化することで、従来のメタルマスク100の構造では対応しきれないことが懸念されていた。
【0009】
これに対する対策として、部品収納部103の上面や側面の一部または全部に、電気ニッケルメッキで、ニッケル皮膜を厚く形成して部品収納部103を補強することが考えられていたが、その他の部分(平板部101、開口部102など)も同様に厚くできないため、メッキが形成されないように、レジストで部分的に被覆するなどの工夫が必要であり、工程を複雑にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平05-220920号公報
【文献】特開平06-092053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、上記事情に鑑み、微細部品実装に対応可能であり、従来のものに比べ、部品収納部の歪みや破損が発生しにくく、高い印刷精度を有するメタルマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金属製の薄板である矩形状の平板部と、前記平板部の面内に、印刷パターンに対応した形状と配置で形成された複数の印刷用開口と、前記印刷用開口が形成されていない領域のスキージ面側に、略直方体の窪み状に形成された部品収納部と、前記部品収納部の面に形成された補強構造と、を備えることを特徴とする、メタルマスクである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のメタルマスクであって、前記補強構造は、前記部品収納部の上面または側面の一部または全部形成されている、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載のメタルマスクであって、前記補強構造は、その一部または全部が、該補強構造が形成されている前記部品収納部の面の略対角方向に沿って線状に形成されている、ことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のメタルマスクであって、前記補強構造は、前記平板部のスキージ面側に形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、3、4に記載の発明によれば、メタルマスクをスクリーン枠に所定の張力で張設したときに、部品収納部に加わる力が、補強構造によって緩和されるため、微細部品実装に使用されるメタルマスクにおいても、部品収納部の歪みや破損を抑制するとともに、印刷精度の低下を防止することが可能である。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、部品収納部に加わる力に沿って補強構造が形成されているため、微細部品実装に使用されるメタルマスクにおいても、有効に力を緩和して、部品収納部の歪みや破損を抑制するとともに、印刷精度の低下を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るメタルマスクの概略の正面図(a)と側面断面図(b)である。
図2】本発明の実施の形態に係るメタルマスクの概略斜視部である。
図3】本発明の実施の形態に係るメタルマスクの製造方法を示す概略フロー図である。
図4】本発明の実施の形態に係るメタルマスクの部品収納部に作用する張力を示す模式図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係るメタルマスクの部品収納部の概略正面図である。
図6】本発明の他の実施の形態に係るメタルマスクの部品収納部の概略正面図である。
図7】本発明の他の実施の形態に係るメタルマスクの部品収納部の概略正面図である。
図8】本発明の他の実施の形態に係るメタルマスクの部品収納部の概略側面断面図である。
図9】従来のメタルマスクの使用状態を示す概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面において、図面中の各部の構成の大きさ、間隔、数、その他詳細は、視認と理解の助けのために、実際の物に比べて大幅に簡略化して表現している。
【0017】
図1は、メタルマスク1の概略の正面図(a)と側面断面図(b)である。メタルマスク1は、平板部11と、その面内に形成された印刷用開口12と、部品収納部13と、部品収納部13に形成された補強構造から構成される印刷孔版である。
【0018】
平板部11は、一辺が300~500mmの矩形状かつ平板状のニッケル板であり、厚さは0.05~0.1mmに設定されている。本実施の形態では、ニッケルめっきで作製されたものを使用している。また、厚さはメタルマスク1全体(平板部11、部品収納部13、補強構造14)を通じて略均一である(すなわちメタルマスク1の強度やペーストの印刷精度に影響を与えるほどの厚さの変動はない)ものとし、本実施の形態では、上記の設定値の10%以内の範囲に収められている。
【0019】
メタルマスク1の厚さは0.1mmより厚くても特段の支障はないが、本願発明の効果がより顕著に得られる厚さとして、本実施の形態では上記の厚さに設定している。すなわち、0.1mmより厚くなると、素材自体の強度が高くなり、本願発明の効果が目立たなくなり、一方、0.05mmより薄いと、素材の強度が低くなりすぎるので、効果が確認しにくくなる。
【0020】
印刷用開口12は、平板部11の面内に、プリント基板への印刷パターンに対応した形状と配置で、複数形成されている。その形状は円状、四角形状等、印刷するペーストの形状に合わせたものに設定されており、直径若しくは一辺の長さは0.05~0.5mmである。
【0021】
部品収納部13は、平板部11の、印刷用開口12が形成されていない領域の一方の面側に、上面が一辺20~150mmの長方形で、高さが1~3mmの略直方体状に形成された窪み状の形状であり、本実施の形態では、ニッケルめっきで平板部11と一体的に形成されたものを使用している。
【0022】
また、部品収納部13は、メタルマスク1のスキージ面側に、平板部11に対して略垂直に突出した形状になるように形成されている。
【0023】
補強構造14は、部品収納部13の上面に形成された線状の構造物であり、本実施の形態では、正面視した時に、部品収納部12の上面に、スキージ面側に略垂直に突出したX字状の形状をしている。また、補強構造14の線幅は、約1~4mmであり、その高さは0.1~0.5mmに設定されている。ここで高さは、0.1mmより低くなると、本願発明の効果が少なくなり、0.3mmより高くなると、後述するように製造工程において作業性に影響するため、0.1~0.3mmがより好ましい。
【0024】
次に、図3に基づいて、本実施の形態に係る、メタルマスクの製造方法について説明する。
【0025】
まず、部品収納部13と補強構造14に対応する形状と配置で、凹部Dが形成されたメッキ基材Sを準備する(図3(a))。メッキ基材Sの厚さは、約3~5mmであり、少なくとも凹部Dの最大深さ、ずなわち、部品収納部13の高さと、補強構造14の高さの和より厚くする必要がある。なお、本実施の形態において、凹部Dは、機械加工またはエッチングにより形成されている。
【0026】
凹部Dのうち、補強構造14に対応する部分は、メッキ基材Sからメタルマスク1を分離するときに、スムーズに剥離できるように、深くなりすぎず適正な深さに設定される。具体的には、0.3mm以下が好ましい。
【0027】
次に、メッキ基材Sの表面を、バフ研磨やアルカリ脱脂、酸洗浄などを処置して適正に整面し、フォトリソグラフィ法で印刷用開口12に対応する形状とパターンで、レジストRのパターンを形成する(図3(b))。
【0028】
次に、ニッケルめっき浴で、メッキ基材S上に、ニッケルメッキ皮膜を0.05~0.3mm成長させて、メタルマスク1の各部位を形成する(図3(c))。本実施の形態では、電流量によりメッキ速度を制御することができ、短時間で設計された厚さのニッケルメッキ皮膜が形成できる、電気ニッケルメッキを用いた。
【0029】
次に、ニッケルメッキ皮膜を、メッキ基材Sごとレジスト剥離液に浸漬させて、レジストRを除去する(図3(d))。本実施の形態では、レジスト剥離液は苛性ソーダを使用した。
【0030】
次に、メッキ基材Sから、メタルマスク1を剥がして分離する(図3(e))。
【0031】
最後に、スクリーン枠にメタルマスク1を張設することで、メタルマスク印刷版(図示略)として使用可能になる。
【0032】
次に、本実施の形態に係る、メタルマスク1の作用について、図4を参照しながら説明する。
メタルマスク1を、所定の張力でスクリーン枠に張設したとき、メタルマスク1および部品収納部13には、枠辺に沿って縦方向の力F、横方向の力Fが加わる。
【0033】
、Fは互いに垂直な方向に向いており、これらが合成されて斜め方向の力F、F、F、Fとなる。ここで、本実施の形態のように、部品収納部13の上面の略対角方向に沿って補強構造14が形成されている場合、斜め方向の力F、F、F、Fと略同方向になるため、これを有効に緩和して、部品収納部13の上面の歪みの発生を抑制する。
【0034】
この発明によれば、メタルマスク1をスクリーン枠に所定の張力で張設したときに、部品収納部13に加わる力が、補強構造14によって緩和されるため、部品収納部13の歪みや破損を抑制するとともに、印刷精度の低下を防止することが可能である。
【0035】
また、部品収納部13に加わる力に沿って補強構造14が形成されているため、有効に力を緩和して、さらに部品収納部13の歪みや破損を抑制するとともに、印刷精度の低下を防止することが可能である。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本願発明の範囲は以上の実施の形態に限られるものではなく、これと同視しうる他の形態に対しても及ぶ。
【0037】
例えば、図5の補強構造24のようにX字形状に対してさらに形状を加えることで、効果を向上させることが可能となる。
【0038】
一方で、図6のように、横一本(図6(a))、縦一本(同(b))、十文字(同(c))のように、本実施の形態とは異なる簡易的な形態であっても、一定の効果は得られる。さらに、線を円形状や四角形状にし、両端をつないでドーナツ形状や枠形状にしてもよい。
【0039】
また、補強構造14は、必ずしもスキージ面に突出している必要はなく、図8の補強構造84の様に、部品収納部83の内側に向かって窪んだ形状をしていても良い。
【0040】
さらに、平板部11と部品収納部13は、必ずしも同時に一体的に成型する必要はなく、別々に成型したものを、溶接や接着剤などの手段で接合してもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、補強構造14は、部品収納部13の上面に形成されていたが、これに限らず、上面と側面を含む部品収納部の面の一部または全部に形成しても効果がある。例えば、図7(a)は、部品収納部63の側面に、平板部11と水平方向に補強構造64を形成した場合であり、図7(b)は、部品収納部73の側面に、平板部11に垂直方向に、補強構造74を形成した場合である。この場合でも、もちろん本実施の形態に係る図1や、図5、6の形態と組み合わせることも可能である。
【0042】
1 メタルマスク
11 平板部
12 印刷用開口
13、23、33、43、53、63、73、83 部品収納部
14、24、34、44、54、64、74、84 補強構造
【要約】
【課題】
表面実装と挿入実装が同一基板上で同時に使用される混載実装において、微細部品の実装に対応可能であり、従来のものに比べ、部品収納部の歪みや破損が少なく、高い印刷精度を有するメタルマスクを提供する。
【解決手段】
メタルマスク1の平板部11の面内には、挿入実装により実装された部品を収納するために、略直方体の窪み状の部品収納部13が形成され、その上面には、X字状等の突起である補強構造14が形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9