(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】長尺ワークの支持装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/76 20060101AFI20221031BHJP
B23B 5/22 20060101ALI20221031BHJP
B23B 25/00 20060101ALI20221031BHJP
B24B 5/04 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
B23Q1/76 R
B23B5/22
B23B25/00 Z
B24B5/04
(21)【出願番号】P 2018062345
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃大
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-118892(JP,A)
【文献】特開2003-225801(JP,A)
【文献】特開昭62-063036(JP,A)
【文献】特開昭63-272414(JP,A)
【文献】特開2005-161423(JP,A)
【文献】実開昭61-191841(JP,U)
【文献】特開昭56-146606(JP,A)
【文献】実開昭55-151430(JP,U)
【文献】特開昭55-005244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/76
B23B 5/22
B23B 25/00
B24B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタリングした状態の長尺ワークを支持するための装置であって、
前記長尺ワークの外周面に当接する複数の爪部と、
油圧で作動し、前記各爪部をそれぞれ前記外周面に対して進退可能に駆動する前記爪部と同数の油圧アクチュエータ部と、
前記複数の油圧アクチュエータ部に前記油圧を供給する油圧供給部とを備え、
前記油圧アクチュエータ部は、第一油室と第二油室とを有し前記第一油室と前記第二油室とが直動部で区画された油圧シリンダであって、
前記油圧供給部と前記各油圧シリンダとの間には、
前記油圧供給部
から分岐して前記
各油圧
シリンダの前記第一油室にそれぞれ
直結される
第一油圧供給路
と、前記油圧供給部から分岐して前記各油圧シリンダの前記第二油室にそれぞれ直結される第二油圧供給路とが設けられ、
前記第一油圧供給路と前記第二油圧供給路の何れか一方に前記油圧供給部から前記油圧が供給され、
前記
第一油圧供給路は、
前記油圧供給部から供給された前記油圧を、等しい大きさの
油圧として前記全ての油圧
シリンダの第一油室に供給
し、かつ
前記第二油圧供給路は、前記油圧供給部から供給された前記油圧を、等しい大きさの油圧として前記全ての油圧シリンダの第二油室に供給されるように
構成されている、長尺ワークの支持装置。
【請求項2】
前記長尺ワークは、旋盤の主軸にセンタリングされた状態で取り付けられ、
前記旋盤は、工具を装着可能な工具台を有し、前記工具台は、前記工具台に装着した状態の前記工具に駆動力を付与する電動モータを有し、
前記油圧供給部は前記
第一及び第二油圧供給路を介して前記複数の油圧
シリンダと接続される油圧ポンプを有し、前記油圧ポンプが、前記電動モータの駆動力を受けて前記油圧を発生可能なように、前記電動モータに接続されている請求項1に記載の長尺ワーク支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺ワークの支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車エンジン用のクランクシャフトは、通常、鍛造等で成形したクランクシャフト素材(以下、本明細書ではクランクシャフトと称する。)に対して、まずその軸方向両端面を切削し、センタリング加工を施すことで、クランクシャフトの全長決めと、回転中心の設定を行う。次いで、ジャーナル部の外周面に切削加工を施すと共に、ピン部の外周面に切削加工を施す。また、油穴開け加工やねじタップ加工などの機械加工を施す(例えば、特許文献1を参照)。また、必要に応じて、熱処理後にリセンタ加工などの機械加工を施す場合もある。
【0003】
このうち、ねじタップ加工などの端面加工は、クランクシャフトの軸方向一端側のみを旋盤の主軸で支持した状態で行われる。そのため、上記端面加工の際には、クランクシャフトが片持ち支持の状態とならないように、クランクシャフトの軸方向他端側を振れ止め装置で支持することが多い。
【0004】
ここで、例えば特許文献2には、クランクシャフトのピン部を研削する際に使用する振れ止め装置が提案されている。この振れ止め装置は、各先端がクランクシャフトの外周面と当接する三つの振れ止めアームと、各振れ止めアームを駆動する三つのサーボモータとを有する。各振れ止めアームとサーボモータとはそれぞれ、スクリューシャフト、さらにはロッドを介して相互に連結されており、ロッドはサーボモータの回転量に応じて前後動する。これにより、各振れ止めアームの駆動量(外周面に対する各アーム先端部の位置)は、サーボモータの回転量に応じて決定される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-31542号公報
【文献】特開平11-179640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の振れ止め装置は、サーボモータの駆動力でクランクシャフトを支持する構造をとっている。そのため、上述のように、クランクシャフトを長手方向一端側のみで支持(片持ち支持)した状態であっても直前のセンタリング状態を維持する必要がある場合、上記構造の振れ止め装置では、支持力(振れ止め力)が十分とはいえなかった。また、上述のように各振れ止めアームがサーボモータでそれぞれ独立駆動される構造を採る場合、クランクシャフトのセンタリング位置がずれないように、各振れ止めアームの駆動を各サーボモータで制御することは非常に困難であった。
【0007】
上記課題は何もクランクシャフトの加工工程に限ったことではなく、センタリングした状態を維持して長尺ワークを支持する必要がある場合全てに起こり得る。
【0008】
以上の事情に鑑み、本発明では、センタリング状態を維持して長尺ワークを支持することのできる支持装置を提供することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る長尺ワークの支持装置によって達成される。すなわち、この支持装置は、センタリングした状態の長尺ワークを支持するための装置であって、長尺ワークの外周面に当接する複数の爪部と、油圧で作動し、各爪部をそれぞれ外周面に対して進退可能に駆動する爪部と同数の油圧アクチュエータ部と、複数の油圧アクチュエータ部に油圧を供給する油圧供給部とを備え、油圧供給部は、分岐して複数の油圧アクチュエータ部にそれぞれ接続される油圧供給路を有する点をもって特徴付けられる。
【0010】
このように、本発明に係る長尺ワークの支持装置では、それぞれ油圧アクチュエータ部で駆動する複数の爪部で長尺ワークの外周面を支持すると共に、爪部と同数の油圧アクチュエータ部に油圧を供給する油圧供給部に、分岐して複数の油圧アクチュエータ部にそれぞれ接続される油圧供給路を設けた構成とした。このように、分岐して複数の油圧アクチュエータ部にそれぞれ接続される油圧供給路を通じて、各油圧アクチュエータ部に油圧を供給可能とすることにより、均等な大きさの油圧が各油圧アクチュエータ部に供給される。よって、各油圧アクチュエータの作動により、対応する各爪部を介して自動的に複数の方向から均等な力で長尺ワークの外周面を支持することができる。これにより、既にセンタリングされた状態の長尺ワークの位置(センタリング位置)を維持しつつ、長尺ワークの外周面を支持することが可能となる。また、上述のように油圧供給路を設けることで、支持装置の幾何学中心が長尺ワークのセンタリング位置からずれていても、均等な大きさの油圧が各油圧アクチュエータ部に供給されることで、長尺ワークのセンタリング位置を保ちつつ、複数の方向から均等な力で長尺ワークの外周面を支持することが可能となる。従って、例えば旋盤の主軸によりセンタリング状態で支持されるクランクシャフトに対して高精度な端面加工を施すことが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る長尺ワークの支持装置においては、長尺ワークは、旋盤の主軸にセンタリングされた状態で取り付けられ、旋盤は、工具を装着可能な工具台を有し、工具台は、工具台に装着した状態の工具に駆動力を付与する電動モータを有し、油圧供給部は油圧供給路を介して三つの油圧アクチュエータと接続される油圧ポンプを有し、油圧ポンプが、電動モータの駆動力を受けて油圧を発生可能なように、電動モータに接続されてもよい。
【0012】
本発明に係る支持装置は、長尺ワークをセンタリングした状態の長尺ワークに所定の加工を施す加工装置上であれば、任意の位置に設置することができるが、設備小型化の観点から、上述のように工具台に取付けるのがよい。具体的には、長尺ワークが旋盤の主軸にセンタリングされた状態で取り付けられる場合、油圧供給部に油圧ポンプを設けて、この油圧ポンプを、旋盤の工具台に内蔵された電動モータに接続するのがよい。このように構成することで、加工装置(旋盤)の駆動装置(電動モータ)とは別に油圧供給のための動力源を設けることなく、油圧アクチュエータ部に油圧を供給できる。よって、支持装置をコンパクトに構成できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る長尺ワークの支持装置によれば、センタリング状態を維持して長尺ワークを支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクランクシャフトの加工方法の手順を示したフローである。
【
図2】
図1に示すクランクシャフトの加工方法を実施するための加工ラインの一構成例を概念的に示した平面図である。
【
図3】
図2に示す機械加工工程で使用される加工装置の平面図である。
【
図5】
図4に示すクランプ装置のアンクランプ状態におけるA矢視図である。
【
図6】
図4に示すクランク装置のクランプ状態におけるA矢視図である。
【
図7】
図4に示すクランプ装置の油圧回路図である。
【
図8】
図3に示す加工装置を用いたクランクシャフトの全長決め工程とセンタリング工程の一実施例を説明するための側面図である。
【
図9】
図3に示す加工装置を用いたクランクシャフトのジャーナル部切削工程の一実施例を説明するための側面図である。
【
図10】ピン部切削用の切削ユニットの要部側面図である。
【
図12】
図10に示す切削ユニットを用いたクランクシャフトのピン部切削工程の一実施例を説明するための側面図である。
【
図13】クランクシャフトの支持装置の側面図である。
【
図15】
図13に示す支持装置を具備した加工装置を用いたクランクシャフトのねじタップ加工工程の一実施例を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る長尺ワークの支持装置の内容を図面に基づき説明する。本実施形態では、クランクシャフトの加工ラインを例にとって、いかに説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るクランクシャフトの加工方法の手順を示したフローである。この加工方法は、例えば鍛造等で成形したクランクシャフトに対して所定の機械加工を施して所定の形状にクランクシャフトを加工する機械加工工程S1と、機械加工工程S1を経たクランクシャフトに所定の熱処理を施す熱処理工程S2と、熱処理工程S2後のクランクシャフトを所定の製品形状に仕上げる仕上げ加工工程S3とを具備する。
【0017】
このうち、機械加工工程S1は、クランクシャフトの軸方向両端面を切削して、クランクシャフトの軸方向全長を設定する全長決め工程S11と、クランクシャフトにセンタリング加工を施して軸方向両端面にセンタ穴を設けるセンタリング工程S12と、クランクシャフトのジャーナル部に切削加工を施すジャーナル部切削工程S13と、クランクシャフトのピン部に切削加工を施すピン部切削工程S14と、クランクシャフトに油穴加工を施す油穴加工工程S15、及びクランクシャフトの軸方向両端面にねじタップ加工を施すねじタップ加工工程S16とを備える。また、仕上げ加工工程S3は、クランクシャフトの両端面を研削する端面研削工程S31と、クランクシャフトのピン部を研削するピン部研削工程S32と、クランクシャフトのジャーナル部を研削するジャーナル部研削工程S33とを備える。なお、クランクシャフトの種類、仕様によっては、上記以外の加工工程をさらに具備することはもちろんである。
【0018】
図2は、
図1に示す手順でクランクシャフトを加工するためのクランクシャフトの加工ライン1の全体構成を示す平面図である。この図に示すように、本実施形態に係るクランクシャフトの加工ライン1は、機械加工工程S1と、熱処理工程S2と、仕上げ加工工程S3とを直列的に配設してなるもので、機械加工工程S1は、
図1に示す全ての機械加工工程(全長決め工程S11、センタリング工程S12、ジャーナル部切削工程S13、ピン部切削工程S14、油穴加工工程S15、ねじタップ加工工程S16)を実施する機械加工装置10を備える。また、熱処理工程S2は、クランクシャフトに所定の熱処理を施すための熱処理装置20を備え、仕上げ加工工程S3は、端面研削工程S31でクランクシャフトの両端面に研削加工を施すための第一研削加工装置30aと、ピン部研削工程S32でクランクシャフトのピン部に研削加工を施すための第二研削加工装置30b、及びジャーナル部研削工程S33でクランクシャフトのジャーナル部に研削加工を施すための第三研削加工装置30cとを備える。以下、機械加工装置10の詳細を説明する。
【0019】
機械加工装置10は、
図3に示すように、旋盤40と、クランプ装置50とを主に有する。このうち、旋盤40は、ベッド41と、ベッド41に取付けられる主軸42と、主軸42に対して相対移動する心押し台43と、第一工具台44及び第二工具台45とを有する。第一工具台44及び第二工具台45はベッド41に対して三次元に移動可能(
図3でいえばXYZ全ての方向に移動可能)に構成されている。本実施形態では、第一工具台44の工具取付け部44aに、フライス46やドリル47などの工具が装着され、第二工具台45の工具取付け部45aに本発明に係るクランプ装置50が装着されている。
【0020】
クランプ装置50は、
図4~
図6に示すように、油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51で発生させた油圧で作動する油圧アクチュエータ52と、油圧アクチュエータ52の作動によりクランクシャフトW(
図5中、二点鎖線で示している)をクランプする一対のクランプ部53,53とを主に有する。本実施形態では、長尺ワークとしてのクランクシャフトWを軸方向に離間した二箇所でクランプするため、二対のクランプ部53,53,54,54が油圧アクチュエータ52に取付けられている(
図4を参照)。
【0021】
ここで、油圧ポンプ51は、第二工具台45の工具取付け部45a外周に装着されている。工具取付け部45aには駆動装置としての電動モータ45bが内蔵されており(
図4中、破線で示している)、この電動モータ45bの駆動力で油圧ポンプ51が油圧を発生可能なように、電動モータ45bの出力軸45b1と油圧ポンプ51の入力軸(図示は省略)とが連結可能に構成されている。なお、本実施形態では、工具取付け部45aが回転することで、工具取付け部45aに装着されたクランプ装置50も一体的に回転する。そして、工具台45に内蔵される電動モータ45bの位相と油圧ポンプ51の位相とを一致させることで、電動モータ45bの出力軸45b1に油圧ポンプ51の入力軸が連結されるようになっている。後述する切削ユニット60の油圧ポンプ63と電動モータ45bとの連結態様、及び、支持装置70の油圧ポンプ73と電動モータ45bとの連結態様についても同様である。
【0022】
油圧アクチュエータ52は、本実施形態では
図5に示すように、油圧シリンダ55と、油圧シリンダ55の運動方向を、一対のクランプ部53,53のクランプ方向に転換するリンク部56と、油圧ポンプ51で発生させた油圧を油圧シリンダ55内に供給する油圧供給路57a,57bとを有する。本実施形態では、油圧シリンダ55は、いわゆる復動式の油圧シリンダであって、油圧ポンプ51の第一ポート51aと、油圧シリンダ55の第一油室55aとが、第一油圧供給路57aで接続されている。また、油圧ポンプ51の第二ポート51bと、油圧シリンダ55の第二油室55bとが、第二油圧供給路57bで接続されている。第一油室55aと第二油室55bとは、直動部55cで区画されている。これにより、油圧ポンプ51の回転駆動方向に応じて、油圧シリンダ55の第一油室55aと第二油室55bの何れか一方に油圧が供給され、油圧シリンダ55の直動部55cが所定の向きに直線移動するようになっている。
【0023】
具体的には、油圧ポンプ51が、電動モータ45b(
図4を参照)の回転駆動方向に応じて、第一の方向R1(
図7を参照)に回転した場合、第一ポート51aから第一油圧供給路57aを介して所定の油圧が油圧シリンダ55の第一油室55aに供給される。これにより、油圧シリンダ55の直動部55cは油圧ポンプ51側に押し込まれるので、リンク部56を介して一対のクランプ部53,53が互いに接近する向きに移動する(
図6に示す状態)。また、油圧ポンプ51が、電動モータ45bの回転駆動方向に応じて、第二の方向R2(
図7を参照)に回転した場合、第二ポート51bから第二油圧供給路57bを介して所定の油圧が油圧シリンダ55の第二油室55bに供給される。これにより、油圧シリンダ55の直動部55cはクランクシャフトW側に押し込まれるので、リンク部56を介して一対のクランプ部53,53が互いに離れる向きに移動する(
図5に示す状態)。なお、
図5及び
図6には、油圧シリンダ55とリンク部56が一個ずつ示されているが、実際には、二対のクランプ部53,53(54,54)それぞれに油圧シリンダ55とリンク部56が設けられている。
【0024】
また、本実施形態に係る機械加工装置10は、旋盤40と、クランプ装置50に加えて、クランクシャフトWの外周面を切削するための切削ユニット60(
図10を参照)と、クランクシャフトWを回転可能に支持するための支持装置70(
図13を参照)とをさらに有する。
【0025】
このうち、切削ユニット60は、例えば
図10及び
図11に示すように、旋盤40の第二工具台45に装着した状態で使用するもので、クランクシャフトWの外周面に切削加工を行うための切削用カッタ61と、切削用カッタ61を回転させる回転装置62とを備える。本実施形態では、切削用カッタは外刃切削用カッタである。また、回転装置62は、第二工具台45の電動モータ45bに接続される油圧ポンプ63と、電動モータ45bの駆動により油圧ポンプ63で生じた油圧で作動する油圧モータ64とを有する。
【0026】
ここで、電動モータ45bの出力軸45b1と油圧ポンプ63の入力軸(図示は省略)とは、電動モータ45bの駆動力で油圧ポンプ63が油圧を発生可能なように、相互に連結されている。また、油圧モータ64の一次側と油圧ポンプ63とは、油圧供給路65aを介して接続されており、油圧モータ64の二次側は油圧排出路65bに接続されている。これにより、油圧ポンプ63で発生させた油圧が油圧供給路65aを介して一次側から油圧モータ64に供給され、油圧モータ64の二次側から排出される。このような油圧の移動に伴い、油圧モータ64の回転軸64aが所定の向きに回転し、回転軸64aと連結部材66を介して連結される切削用カッタ61が所定の向きに回転するようになっている。
【0027】
支持装置70は、センタリングした状態のクランクシャフトWを回転可能に支持するための装置であって、
図13に示すように、第二工具台45の工具取付け部45aに装着される。この支持装置70は、
図14に示すように、クランクシャフトWの外周面に当接可能な複数の爪部71,71,71と、油圧で作動し、各爪部71,71,71をそれぞれクランクシャフトWの外周面に対して進退可能に駆動する爪部と同数の油圧アクチュエータ部としての油圧シリンダ72,72,72と、複数の油圧シリンダ72,72,72に油圧を供給する油圧供給部としての油圧ポンプ73とを有する。本実施形態では、三つの爪部71,71,71と、三つの油圧シリンダ72,72,72と、一つの油圧ポンプ73とが支持装置70に設けられている。
【0028】
また、油圧ポンプ73は、分岐して三つの油圧シリンダ72,72,72にそれぞれ接続される油圧供給路74を有する。具体的には、油圧供給路74は、
図14に示すように、油圧ポンプ73の第一ポート73aと、各油圧シリンダ72,72,72の第一油室72a,72a,72aとを相互に接続する第一油圧供給路74aと、油圧ポンプ73の第二ポート73bと、各油圧シリンダ72,72,72の第二油室72b,72b,72bとを相互に接続する第二油圧供給路74bとを有する。第一油室72aと第二油室72bとは、直動部72cで区画されている。これにより、油圧ポンプ73の回転駆動方向に応じて、各油圧シリンダ72の第一油室72aと第二油室72bの何れか一方に油圧が供給され、油圧シリンダ72の直動部72cが所定の向きに直線移動するようになっている。
【0029】
また、上述した三つの油圧シリンダ72,72,72の各第一油室72a,72a,72aは、第一油圧供給路74aを介して、相互に油圧の伝達媒体(通常、油)を流通可能としている。また、三つの油圧シリンダ72,72,72の各第二油室72b,72b,72bは、第二油圧供給路74bを介して、相互に油圧の伝達媒体を流通可能としている。そのため、各油圧シリンダ72の第一油室72a側及び第二油室72b側から直動部72cに作用する油圧の大きさが、全ての油圧シリンダ72,72,72において均等になるよう、油圧の均等化が自動的に図られるようになっている。
【0030】
また、油圧ポンプ73は、第二工具台45に内蔵された電動モータ45bとの間で動力伝達が可能となるように構成されている。具体的には、クランプ装置50の油圧ポンプ51と同様、電動モータ45bの駆動力で油圧ポンプ73が油圧を発生可能なように、電動モータ45bの出力軸45b1と油圧ポンプ73の出力軸(図示は省略)とが連結可能に構成されている。
【0031】
上記構成の機械加工装置10を用いたクランクシャフトWの機械加工工程S1は、例えば以下のようにして行われる。
【0032】
(S11)全長決め工程
(S12)センタリング工程
上記工程では、旋盤40の第二工具台45に装着したクランプ装置50を用いて、クランクシャフトWを保持した状態で、クランクシャフトWの両端面Wc,Wcに切削加工を施す。また、両端面Wc,Wcにセンタリング加工(図示しないセンタ穴を開ける加工)を施す。具体的には、まず
図8に示すように、第二工具台45の工具取付け部45aを回転させて、二対のクランプ部53,53(54,54)がともに上方(
図8でいえばZ方向)を指向する位置に、クランプ装置50を配置する。そして、図示しないガントリローダ等で吊り下げ支持した状態のクランクシャフトWをクランプ装置50上に移動させ、あるいはクランクシャフトWの下方位置まで第二工具台45を移動させた状態から、クランクシャフトWを下降させる。これにより、各一対のクランプ部53,53(54,54)間にクランクシャフトWのジャーナル部Waを導入する(
図5に示す状態)。
【0033】
そして、各一対のクランプ部53,53(54,54)間にクランクシャフトWが導入された状態で、第二工具台45の電動モータ45bを駆動し、電動モータ45bの出力軸45b1と連結状態にあるクランプ装置50の油圧ポンプ51を作動させる。これにより、油圧が発生すると共に、発生した油圧が、第一ポート51a、さらには第一油圧供給路57aを介して、油圧シリンダ55の第一油室55aに供給される。これにより、油圧シリンダ55の直動部55cが油圧ポンプ51側に押し込まれ、リンク部56と各一対のクランプ部53,53(54,54)との協働により、各一対のクランプ部53,53(54,54)が互いに接近する向きに移動する。この結果、
図6に示すように、各一対のクランプ部53,53(54,54)によりクランクシャフトWのジャーナル部Waが二箇所でクランプされ、所定の位置で固定される。
【0034】
このようにして、旋盤40の主軸42から外れた位置でクランクシャフトWを固定した状態で、第一工具台44の工具取付け部44aを回転する等して、工具取付け部44aに装着した状態のフライス46を第一工具台44に内蔵した電動モータ44bの出力軸44b1と連結した状態とする。そして、電動モータ44bの駆動によりフライス46を回転させながら、クランクシャフトWの軸方向両端面Wc,Wcに当接させる。これにより、クランクシャフトWの両端面Wcに対する切削加工を開始する。この結果、クランクシャフトWの軸方向全長が所定の大きさに設定される(全長決め工程S11)。なお、この際、クランクシャフトWを完全に固定した状態で、フライス46(第一工具台44)のみを移動させて、両端面Wc,Wcに順次切削加工を施してもよいし、第一工具台44と共に第二工具台45を移動させて、両端面Wc,Wcに順次切削加工を施してもよい。何れにしても、上記切削加工の間、クランクシャフトWや各工具台44,45との干渉を回避する目的で、心押し台43を主軸42に対して後退させておくのがよい。後述するセンタリング工程S12の際も同様である。
【0035】
また、工具取付け部44aの回転等により、フライス46と同じく第一工具台44の工具取付け部44aに装着したドリル47を電動モータ44bの出力軸44b1と連結した状態とし、電動モータ44bの駆動によりドリル47を回転させながら、クランクシャフトWの両端面Wc,Wcに押し込む。これにより、クランクシャフトWの両端面Wc,Wcにセンタリング加工を施し、センタ穴(図示は省略)を各端面Wc,Wcに形成する(センタリング工程S12)。
【0036】
(S13)ジャーナル部切削工程
この工程では、
図8に示す状態から、第二工具台45を移動させて、クランプ装置50で保持されているクランクシャフトWを主軸42と心押し台43との間に移載する。具体的には、第二工具台45とともにクランプ装置50を移動させて、クランクシャフトWの軸方向一端部を主軸42に導入し、主軸42のチャック部42aでクランクシャフトWの一端部を保持する。そして、心押し台43を主軸42に接近させ、両端面Wc,Wcに形成したセンタ穴を利用して、主軸42と心押し台43とでクランクシャフトWをセンタリングした状態で支持する。このようにして、主軸42と心押し台43とでクランクシャフトWが回転支持された状態を確認した後、電動モータ45bの回転駆動により油圧ポンプ51を第二の方向R2に回転させ(
図7を参照)、各一対のクランプ部53,53(54,54)によるクランプ状態を解除する(
図5に示す状態)。クランプ状態の解除後、第二工具台45を移動させてクランプ装置50をクランクシャフトWから離脱させる。
【0037】
そして、主軸42の回転駆動により、クランクシャフトWを回転させた状態で、フライス46やドリル47と同じく第一工具台44の工具取付け部44aに装着した切削用バイト48をクランクシャフトWのジャーナル部Waに当接させる(
図9を参照)。これにより、クランクシャフトWの各ジャーナル部Waの外周面を所定の外径寸法に切削する(ジャーナル部切削工程S13)。
【0038】
(S14)ピン部切削工程
この工程では、
図9に示す状態から、すなわち主軸42と心押し台43とでクランクシャフトWを回転可能に支持した状態から、第一工具台44を退避させると共に、第二工具台45の工具取付け部45aに装着した状態の切削ユニット60を、第二工具台45に内蔵した電動モータ45bの出力軸45b1と連結した状態とする。そして、主軸42の回転駆動によりクランクシャフトWを回転させると共に、電動モータ45bの駆動により油圧ポンプ63で油圧を発生させ、発生させた油圧で油圧モータ64を回転駆動する。これにより、油圧モータ64の回転軸64aに連結された切削ユニット60の切削用カッタ61を回転させながら、切削用カッタ61の外周面をクランクシャフトWのピン部Wb外周面に当接させる(
図12を参照)。また、クランクシャフトWの回転に応じて切削用カッタ61(第二工具台45)を移動させる。以上の動作により、ピン部Wbの外周面を全周及び軸方向全長にわたって切削する(ピン部切削工程S14)。
【0039】
(S15)油穴加工工程
この工程では、
図12に示す状態から、第一工具台44の工具取付け部44aに装着した状態の油穴開け用ドリル(図示は省略)を電動モータ44bの出力軸44b1と連結した状態とする。そして、電動モータ44bの駆動により油穴開け用ドリルを回転させながら、クランクシャフトWの所定部位に油穴開け用ドリルを押し込む。これにより、クランクシャフトWの所定部位に所定の油穴を形成する(油穴加工工程S15)。
【0040】
(S16)ねじタップ加工工程
この工程では、主軸42と心押し台43とで回転可能に支持された状態のクランクシャフトWを、第二工具台45の工具取付け部45aに装着した状態の支持装置70で回転可能に支持する。具体的には、工具取付け部45aの回転等により、支持装置70の油圧ポンプ73を第二工具台45の電動モータ45bの出力軸45b1に連結した状態とする。そして、第二工具台45を移動させて、クランクシャフトWの所定部位(例えば最も主軸42から離れたジャーナル部Wa)を、支持装置70の三つの爪部71,71,71間に導入する(
図14及び
図15を参照)。
【0041】
然る後、第二工具台45の電動モータ45bを回転駆動して、油圧ポンプ73で所定の油圧を発生させると共に、発生させた油圧を、第一ポート73a、さらには第一油圧供給路74aを介して、三つの油圧シリンダ72,72,72の各第一油室72a,72a,72aに供給する。これにより、三つの油圧シリンダ72,72,72の各直動部72c,72c,72cがクランクシャフトW側に向けて押し込まれ、各直動部72c,72c,72cに連結した状態の爪部71,71,71がクランクシャフトWの外周面に押し付けられる。また、この際、各直動部72c,72c,72cに均等な大きさの油圧が作用することで、クランクシャフトWが三方向から均等な力で押圧されるので、主軸42と心押し台43とでセンタリングされた状態を維持した状態で、クランクシャフトWが支持装置70により回転可能に支持される。
【0042】
然る後、心押し台43を後退させて、心押し台43によるクランクシャフトWの支持状態を解消する。これにより、クランクシャフトWは、従前のセンタリング状態を維持したままで、主軸42と支持装置70により回転可能に支持された状態となる(
図15を参照)。
【0043】
そして、この状態から、第一工具台44の工具取付け部44aに装着した状態のねじタップ49を、第一工具台44の電動モータ44bの出力軸44b1と連結した状態とし、電動モータ44bの回転駆動によりねじタップ49を回転させながら、クランクシャフトWの主軸42から遠い側の軸方向端面Wcに予め形成しておいたねじ穴内部に導入する(
図15を参照)。これにより、軸方向端面Wcにねじ穴が形成される(ねじタップ加工工程S16)。
【0044】
以上のようにして、クランクシャフトWに対する複数の機械加工工程S1(S11~S16)を施した後、図示しない搬送手段により、一又は複数のクランクシャフトWを熱処理工程S2に搬送する。そして、熱処理装置20で所定の熱処理(例えば焼入れ処理)を施した後、同じく図示しない搬送手段により、一又は複数のクランクシャフトWを仕上げ加工工程S3に搬送する。そして、各研削加工装置30a~30c…でクランクシャフトWの所定部位に研削等の仕上げ加工を施すことにより、クランクシャフトWを所定の製品形状に仕上げる。この後、必要に応じて、洗浄、検査等を行うことで、製品としてのクランクシャフトWが得られる。
【0045】
このように、本発明に係る支持装置70によれば、分岐して複数の油圧シリンダ72,72,72にそれぞれ接続される油圧供給路74(74a,74b)を通じて、各油圧シリンダ72,72,72の第一油室72a,72a,72a又は第二油室72b,72b,72bに油圧が供給されることにより、均等な大きさの油圧が各油圧シリンダ72,72,72の直動部72c,72c,72cに作用する。よって、各油圧シリンダ72,72,72の作動により、対応する各爪部71,71,71を介して自動的に複数の方向から均等な力でクランクシャフトWの外周面を支持することができる。これにより、既にセンタリングされた状態のクランクシャフトWの位置(センタリング位置)を維持しつつ、クランクシャフトWの外周面を支持することが可能となる。従って、旋盤40の主軸42によりセンタリング状態で支持されるクランクシャフトWに対して高精度な端面加工を施すことが可能となる。
【0046】
また、本実施形態のように、三つの爪部71,71,71でクランクシャフトWの外周面を支持する構造とすることで、なるべく少ない数の爪部および油圧アクチュエータ部でクランクシャフトをセンタリング位置で精度よく維持することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るクランクシャフトWの加工ライン1においては、センタリング工程S12を実施するための装置を旋盤40で構成すると共に、同一の旋盤40で、センタリング工程S12後の機械加工工程(例えばジャーナル部切削工程S13など)を実施するための装置を構成した。これにより、センタリング工程S12や全長決め工程S11だけでなく、クランクシャフトWの回転が必要となるジャーナル部切削工程S13などの機械加工工程についても全て一台の機械加工装置10(
図3等を参照)で行うことができる。これにより各機械加工工程S11~S13…を従来以上に集約することができるので、生産性の向上を図ることができ、また設備コストひいては生産コストの大幅な低減化が可能となる。
【0048】
また、本実施形態に係るクランクシャフトWの加工ライン1においては、従来、専用の加工装置(ミラー加工機など)を用いて行っていたピン部Wb外周面の切削加工を、旋盤40を有する機械加工装置10で実施可能とした。具体的には、旋盤40と、クランクシャフトWのピン部Wb外周面に切削加工を施すための切削用カッタ61と、切削用カッタ61を回転させる回転装置62とを備えた切削ユニット60を旋盤40の第二工具台45に装着し、第二工具台45の電動モータ45bで発生させた駆動力を利用して、切削用カッタ61を回転可能とした。このように切削ユニット60を構成することによって、旋盤40の主軸42でクランクシャフトWを支持した状態で、ピン部Wbの外周面に切削加工を実施することができる。これにより、ピン部切削工程S14を含むセンタリング加工後の全ての機械加工工程S13~S16についても一台の旋盤40(機械加工装置10)で行うことができる。従って、複数の機械加工工程をさらに集約することができ、更なる生産性の向上を図ることができると共に、設備コストひいては生産コストの更なる大幅な低減化が可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係るクランクシャフトWの加工ライン1においては、全長決め工程S11とセンタリング工程S12、及びセンタリング工程S12後の全ての機械加工工程S13~S16で、旋盤40の駆動装置(各工具台44,45に内蔵の電動モータ44b,45b)を利用して、クランクシャフトWの保持及び機械加工を行うようにしたので、新たに専用の保持装置や加工装置を旋盤40に取付けることなく、各機械加工工程S11~S16を実施することができる。これにより、専用の装置を取付けたり取り外したりする手間を省いて、一台の旋盤40上で各機械加工工程S11~S16をスムーズに順次実施することが可能となる。
【0050】
また、上述のように全ての機械加工工程S11~S16を一台の機械加工装置10で実施できるようにしたので、従来、場合によっては必要であった熱処理工程S2後のリセンタ加工工程を省略できる。すなわち、焼入れ等の熱処理を施すことによりクランクシャフトWは少なからずひずみを生じる。そのため、従来の加工ラインにおいては、熱処理後にセンタリング加工をやり直す(リセンタ加工工程を熱処理工程S2の後に設ける)ことは半ば必須であったところ、本実施形態に係る加工ライン1のように、全ての機械加工工程S11~S16を熱処理工程S2の前に実施することで、リセンタ加工工程を省略することができ、これにより更なる生産コストの低減化を図ることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係るクランクシャフトWの加工ライン1においては、旋盤40の駆動装置(第二工具台45の電動モータ45b)でクランプ装置50の油圧ポンプ51を作動させ、当該作動により発生した油圧で油圧アクチュエータ52(油圧シリンダ55)を作動させて、クランクシャフトWをクランプ可能な構成とした。これにより、電動モータ45bを駆動源としつつも、電動モータ45bで直接一対のクランプ部53(54)を作動させる場合と比べて大きなクランプ力を発揮することができる。よって、クランクシャフトWを強固に保持して精度よく各種加工(端面切削加工、センタリング加工)を施すことが可能となる。また、電動モータ45bを動力源として油圧アクチュエータを作動可能としたので、旋盤40の周囲から電線や油圧ホースなどを延長して接続せずに済む。これにより、旋盤40の可動部(心押し台43、第一及び第二工具台44,45など)との干渉を回避して、複数の機械加工を一台の旋盤上でよりスムーズに順次実施することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る長尺ワークの支持装置は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0053】
例えば上記実施形態では、油圧アクチュエータとして油圧シリンダ72を採用した場合を例示したが、これ以外の油圧アクチュエータを採用することも可能である。例えば図示は省略するが、油圧アクチュエータとして、油圧の大きさに応じてトルクを出力する油圧モータを採用することも可能である。この場合、例えば油圧モータの出力軸(回転軸)にボールねじ機構の回転部を取付け、直動部に爪部71を取付けることで、爪部71を直線運動させる油圧アクチュエータを構成することが可能である。
【0054】
また、爪部71の形状、材質についても任意であり、例えばクランクシャフトWとの摺動を考慮して接触面の形状や材質を設定してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、三つの爪部71,71,71と三つの油圧アクチュエータ部(油圧シリンダ72,72,72)を有する支持装置70を例示したが、もちろん、爪部や油圧アクチュエータの数は任意である。二つ以上の爪部71と、爪部71と同数の油圧アクチュエータ部とを有する限りにおいて、その数は任意に設定可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、第二工具台45に内蔵の電動モータ45bを駆動装置として支持装置70を作動させる構成を例示したが、もちろん、これ以外の駆動装置を支持装置70の駆動源として用いてもかまわない。また、その場合、支持装置70を工具台(第一工具台44,第二工具台45)以外の旋盤40の可動部に取付けて使用してもかまわない。
【0057】
もちろん、旋盤40を用いた上記一連の機械加工に悪影響を及ぼさないようであれば、支持装置70を旋盤40のベッド41に固定してクランクシャフトWを支持してもかまわない。また、この際、旋盤40を用いた上記一連の機械加工に悪影響を及ぼさないようであれば、旋盤40の外部から駆動力を得て支持装置70を作動させてもかまわない。その場合、工具台は一台のみでも支障はない。
【0058】
また、上記実施形態では、本発明に係る長尺ワークの支持装置を、クランクシャフトWの加工ライン1に適用した場合を例示したが、もちろんこれ以外に適用することも可能である。すなわち、センタリングした状態の長尺ワークの外周面を支持可能な限りにおいて、任意の長尺ワークの製造ラインに本発明に係る支持装置を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 クランクシャフトの加工ライン
10 機械加工装置
20 熱処理装置
30a,30b,30c 研削加工装置
40 旋盤
41 ベッド
42 主軸
42a チャック部
43 心押し台
44,45 工具台
44a,45a 工具取付け部
44b,45b 電動モータ
46 フライス
47 ドリル
48 切削用バイト
49 ねじタップ
50 クランプ装置
51 油圧ポンプ
52 油圧アクチュエータ
53,54 一対のクランプ部
55 油圧シリンダ
55a 第一油室
55b 第二油室
55c 直動部
56 リンク部
57a,57b 油圧供給路
58 切替え弁
59 貯油タンク
60 切削ユニット
61 切削用カッタ
62 回転装置
63 油圧ポンプ
64 油圧モータ
64a 回転軸
66 連結部材
70 支持装置
71 爪部
72 油圧シリンダ
72a 第一油室
72b 第二油室
72c 直動部
73 油圧ポンプ
74,74a,74b 油圧供給路
S1 機械加工工程
S2 熱処理工程
S3 仕上げ加工工程
S11 全長決め工程
S12 センタリング工程
S13 ジャーナル部切削工程
S14 ピン部切削工程
S15 油穴加工工程
S16 タップ加工工程
W クランクシャフト
Wa ジャーナル部
Wb ピン部
Wc 軸方向端面