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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】情報提供システムおよび情報提供方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20221031BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20221031BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20221031BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20221031BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G01C21/34
B60L3/00 S
G01C21/26 C
G09B29/00 A
G09B29/10 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019003168
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020112425
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-03-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 雅浩
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-242329(JP,A)
【文献】特開2014-145748(JP,A)
【文献】特開2010-101745(JP,A)
【文献】特開2010-156573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12、 7/00-13/00、
15/00-58/40
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車の現在位置を検出する自車状態検出部と、
前記電気自動車のバッテリ残量を検出するバッテリ残量検出部と、
前記自車状態検出部により検出された前記電気自動車の現在位置を基点として分散された方向に複数の仮目的地を設定する仮目的地設定部と、
前記電気自動車の走行に伴うバッテリの消費に関する共通の探索条件に従って前記仮目的地設定部により設定された前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう経路のそれぞれを探索する仮経路探索部と、
前記仮経路探索部により探索された経路のそれぞれを走行した場合に前記バッテリ残量検出部により検出されたバッテリ残量で走行可能な距離のそれぞれを算出する走行可能距離算出部と、
前記走行可能距離算出部により算出された距離に基づく情報を提供する情報提供部とを備え、
前記仮経路探索部は、前記電気自動車が経路を走行したときの燃費を悪化させる共通の探索条件に従って前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう経路のそれぞれを探索する
ことを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記情報提供部は、前記走行可能距離算出部により算出された距離のそれぞれのうち、最も短い距離を示す情報を少なくとも提供する
ことを特徴とする請求項に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記仮経路探索部により探索された経路のそれぞれを走行した場合に前記バッテリ残量検出部により検出されたバッテリ残量で到達可能な位置のそれぞれを算出する到達位置算出部を更に備え、
前記情報提供部は、
前記走行可能距離算出部により算出された距離に基づく情報を提供する一方、前記電気自動車の現在位置を含み、前記到達位置算出部により算出された位置のそれぞれを表示可能な程度に広域な地図を表示部に表示すると共に、前記到達位置算出部により算出された位置のそれぞれを地図上に表示する
ことを特徴とする請求項に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記情報提供部は、前記走行可能距離算出部により算出された距離のそれぞれのうち、最も短い距離について、燃費が悪い経路を走行した場合、当該最も短い距離しか走行できない可能性がある旨の文言を提供する
ことを特徴とする請求項に記載の情報提供システム。
【請求項5】
電気自動車の現在位置を検出する自車状態検出部と、
前記電気自動車のバッテリ残量を検出するバッテリ残量検出部と、
前記自車状態検出部により検出された前記電気自動車の現在位置を基点として分散された方向に複数の仮目的地を設定する仮目的地設定部と、
前記電気自動車の走行に伴うバッテリの消費に関する共通の探索条件に従って前記仮目的地設定部により設定された前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう経路のそれぞれを探索する仮経路探索部と、
前記仮経路探索部により探索された経路のそれぞれを走行した場合に前記バッテリ残量検出部により検出されたバッテリ残量で走行可能な距離のそれぞれを算出する走行可能距離算出部と、
前記走行可能距離算出部により算出された距離に基づく情報を提供する情報提供部とを備え、
前記仮経路探索部は、前記電気自動車が経路を走行したときの燃費を良好化させる共通の第1探索条件に従って前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう第1経路のそれぞれを探索すると共に、前記電気自動車が経路を走行したときの燃費を悪化させる共通の第2探索条件に従って前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう第2経路のそれぞれを探索し、
前記走行可能距離算出部は、前記仮経路探索部により探索された前記第1経路のそれぞれを走行した場合に前記バッテリ残量検出部により検出されたバッテリ残量で走行可能な第1距離のそれぞれを算出すると共に、前記仮経路探索部により探索された前記第2経路のそれぞれを走行した場合に前記バッテリ残量検出部により検出されたバッテリ残量で走行可能な第2距離のそれぞれを算出し、
前記情報提供部は、前記走行可能距離算出部により算出された前記第1距離に基づく情報を提供すると共に、前記第2距離に基づく情報を提供する
ことを特徴とする記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記情報提供部は、前記走行可能距離算出部により算出された前記第1距離のそれぞれのうち、最も短い距離を示す情報を少なくとも提供すると共に、前記第2距離のそれぞれのうち、最も短い距離を示す情報を少なくとも提供する
ことを特徴とする請求項に記載の情報提供システム。
【請求項7】
前記自車状態検出部は、前記電気自動車の進行方向を更に検出し、
前記仮目的地設定部は、前記電気自動車の現在位置を基点として前記進行方向を含む複数の方向に複数の前記仮目的地を設定し、
前記情報提供部は、
前記走行可能距離算出部により算出された前記第1距離に基づく情報を提供すると共に、前記第2距離に基づく情報を提供する一方、
前記電気自動車の現在位置を含む領域の地図を表示部に表示すると共に、前記仮経路探索部により探索された前記第1経路のうち、前記電気自動車の現在位置を基点として前記進行方向に位置する前記仮目的地に向かう経路を地図上に表示する
ことを特徴とする請求項に記載の情報提供システム。
【請求項8】
前記仮経路探索部により探索された前記第1経路および前記第2経路のそれぞれを走行した場合に前記バッテリ残量検出部により検出されたバッテリ残量で到達可能な位置のそれぞれを算出する到達位置算出部を更に備え、
前記情報提供部は、
前記走行可能距離算出部により算出された前記第1距離に基づく情報を提供すると共に、前記第2距離に基づく情報を提供する一方、
前記電気自動車の現在位置を含み、前記到達位置算出部により算出された位置のそれぞれを表示可能な程度に広域な地図を表示部に表示すると共に、前記到達位置算出部により算出された位置のそれぞれを地図上に表示する
ことを特徴とする請求項に記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記情報提供部は、
前記走行可能距離算出部により算出された前記第1距離のそれぞれのうち、最も短い距離について、燃費が良い経路を走行したとしても当該最も短い距離しか走行できない可能性がある旨の文言を提供し、
前記走行可能距離算出部により算出された前記第2距離のそれぞれのうち、最も短い距離について、燃費が悪い経路を走行した場合、当該最も短い距離しか走行できない可能性がある旨の文言を提供する
ことを特徴とする請求項に記載の情報提供システム。
【請求項10】
前記仮目的地設定部は、前記電気自動車による所定の交差点の通過を検出し、前記所定の交差点の通過を検出するごとに前記複数の仮目的地を設定する処理を実行することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の情報提供システム。
【請求項11】
前記仮目的地設定部は、前記電気自動車を基点として等間隔に4つ以上に分散された方向に複数の仮目的地を設定することを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の情報提供システム。
【請求項12】
情報提供システムの仮目的地設定部が、電気自動車の現在位置を基点として分散された方向に複数の仮目的地を設定する第1ステップと、
前記情報提供システムの仮経路探索部が、前記電気自動車の走行に伴うバッテリの消費に関する共通の探索条件に従って前記仮目的地設定部により設定された前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう経路のそれぞれを探索する第2ステップと、
前記情報提供システムの走行可能距離算出部が、前記仮経路探索部により探索された経路のそれぞれを走行した場合に現時点のバッテリ残量で走行可能な距離のそれぞれを算出する第3ステップと、
前記情報提供システムの情報提供部が、前記走行可能距離算出部により算出された距離に基づく情報を提供する第4ステップとを含み、
前記第2ステップにおいて前記仮経路探索部は、前記電気自動車が経路を走行したときの燃費を悪化させる共通の探索条件に従って前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう経路のそれぞれを探索する
ことを特徴とする情報提供方法。
【請求項13】
情報提供システムの仮目的地設定部が、電気自動車の現在位置を基点として分散された方向に複数の仮目的地を設定する第1ステップと、
前記情報提供システムの仮経路探索部が、前記電気自動車の走行に伴うバッテリの消費に関する共通の探索条件に従って前記仮目的地設定部により設定された前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう経路のそれぞれを探索する第2ステップと、
前記情報提供システムの走行可能距離算出部が、前記仮経路探索部により探索された経路のそれぞれを走行した場合に現時点のバッテリ残量で走行可能な距離のそれぞれを算出する第3ステップと、
前記情報提供システムの情報提供部が、前記走行可能距離算出部により算出された距離に基づく情報を提供する第4ステップとを含み、
前記第2ステップにおいて前記仮経路探索部は、前記電気自動車が経路を走行したときの燃費を良好化させる共通の第1探索条件に従って前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう第1経路のそれぞれを探索すると共に、前記電気自動車が経路を走行したときの燃費を悪化させる共通の第2探索条件に従って前記複数の仮目的地のそれぞれに向かう第2経路のそれぞれを探索し、
前記第3ステップにおいて前記走行可能距離算出部は、前記仮経路探索部により探索された前記第1経路のそれぞれを走行した場合に現時点のバッテリ残量で走行可能な第1距離のそれぞれを算出すると共に、前記仮経路探索部により探索された前記第2経路のそれぞれを走行した場合に現時点のバッテリ残量で走行可能な第2距離のそれぞれを算出し、
前記第4ステップにおいて前記情報提供部は、前記走行可能距離算出部により算出された前記第1距離に基づく情報を提供すると共に、前記第2距離に基づく情報を提供する
ことを特徴とする情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置および情報提供方法に関し、特に、電気自動車の走行可能距離に関する情報を提供する情報提供システムおよび情報提供方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車に搭載された車載装置について、目的地までの誘導経路が設定された上で、誘導経路を電気自動車で走行した場合の走行可能距離を情報として提供するものが存在する。ユーザは、提供された情報を認識することにより、電気自動車に誘導経路を走行させた場合に充電することなくあとどのくらい走行できるのかを把握することができ、適切なタイミングで電気自動車を給電することができる。
【0003】
また、電気自動車の走行可能距離に関する情報の提供に関して、以下の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、走行開始初期段階に、標準状態で電装品が使用された場合の走行可能距離を算出すると共に、標準状態よりも電力消費が大きい状態で所定の電装品が使用された場合の走行可能距離を算出し、算出した走行可能距離の双方を情報として提供する技術が記載されている。この特許文献1の技術によれば、ユーザは、電装品を標準的な態様で使用した場合だけでなく、高い電力消費を伴う態様で電装品を使用した場合に、電気自動車があとどのくらい走行できるのかを把握することができる。
【0004】
また、特許文献2には、誘導経路が設定されていない状況で、以下の方法で走行可能距離を推定し、情報として提供する技術が記載されている。すなわち、電気自動車の現在位置に最も近い主要道路を特定し、現在位置から主要道路を道なりに通る仮経路を設定する。そして、この仮経路を電気自動車が走行するものとして走行可能距離を推定し、推定した走行可能距離を示す情報を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-205470号公報
【文献】特開2012-242329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電気自動車の燃費(電費と表現される場合もある)について、燃費は、車両が走行する経路が異なると燃費が大きく変化するという特性がある。経路が異なると、燃費に影響を与える道路の状況(勾配の状況や、道路の形状の複雑さ(カーブの多さや、カーブの曲率の大きさ等)、信号の多寡、道路幅、車線の数等)が異なるからである。特に、電力を回生可能な電気自動車については、車両が走行する経路によって燃費が顕著に変化する。このため、目的地までの誘導経路が設定されていない状況では、電気自動車がどのような経路を走行するのかが分からないため、高い精度の走行可能距離を算出するのが難しく、走行可能距離に関する情報を高い精度で提供するのが困難であるという問題が従来から存在する。
【0007】
特許文献1の技術は、目的地までの誘導経路が設定されていない状況下での走行可能距離に関する情報を提供するものであるが、走行可能距離の算出にあたって、電装品による電力消費が考慮される一方、「車両が走行する経路が異なると燃費が大きく変化するという特性」が考慮されておらず、その点で課題があった。
【0008】
特許文献2の技術も、目的地までの誘導経路が設定されていない状況下での走行可能距離に関する情報を提供するものである。具体的には、特許文献2の技術では、電気自動車の現在位置に最も近い主要道路を道なりに通る仮経路を設定し、この仮経路を走行したときの走行可能距離を算出し、情報として提供する。このため、特許文献2の技術によれば、実際に電気自動車が仮経路が設定された主要道路を走行する場合には、高い精度の走行可能距離を情報として提供可能である。しかしながら、電気自動車が主要道路を走行するとは限らず、電気自動車が主要道路を走行しない場合には、車両が走行する経路が異なると燃費が大きく変化するという特性上、低い精度の走行可能距離が提供されることになってしまう。すなわち、特許文献2の技術では、電気自動車に主要道路を走行させる予定の特定のユーザにのみ有益な情報を提供でき、その他のユーザには有益な情報を提供できない、という課題がある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、目的地までの誘導経路が設定されていない状況下で、電気自動車が今後どのような経路を走行するかにかかわらず、車両が走行する経路が異なると燃費が大きく変化するという特性を考慮した走行可能距離に関する有益な情報を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、電気自動車の現在位置を基点として分散された方向に複数の仮目的地を設定し、電気自動車の走行に伴うバッテリの消費に関する共通の探索条件に従って、複数の仮目的地のそれぞれに向かう経路のそれぞれを探索し、探索した経路のそれぞれを走行した場合に現時点のバッテリ残量で走行可能な距離のそれぞれを算出し、算出した距離に基づく情報を提供するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、電気自動車が走行する経路が判明していない状況において、特定の単一の経路についての走行可能距離を示す情報を提供するのではなく、電気自動車の現在位置を基点として分散された複数の経路について算出された複数の走行可能距離を勘案した情報を提供できる。このようにして提供される情報は、電気自動車の現在位置を基点として分散された複数の経路、つまり、電気自動車が今後走行し得る複数の経路についての走行可能距離を踏まえているという点で、電気自動車が走行する経路が異なると燃費が大きく変化するという特性を考慮した、走行可能距離に関する有益な情報ということができる。つまり、本発明によれば、目的地までの誘導経路が設定されていない状況下で、電気自動車が今後どのような経路を走行するかにかかわらず、電気自動車が走行する経路が異なると燃費が大きく変化するという特性を考慮した走行可能距離に関する有益な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る情報提供装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】自車位置を中心とする地図上で仮目的地、良好燃費経路および悪化燃費経路を示す図である。
図3】通常地図画面の一例を示す図である。
図4】到達位置表示画面の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る情報提供装置の動作例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る情報提供装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る情報提供システム1の情報提供装置2の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る情報提供装置2は、車両に搭載された、いわゆるナビゲーション装置であり、ユーザにより設定された目的地までの経路を探索し案内する機能を備えている。なお、情報提供装置2は、車両に固定的に搭載された専用機である必要はなく、例えば、車両の搭乗者が所有し、車両内に持ち込んだ携帯端末(例えば、スマートフォンや、タブレット型PC、ノート型PC)であってもよい。以下の説明では、情報提供装置2が搭載された車両を「自車両」という。
【0014】
本実施形態に係る情報提供装置2は、電力を回生可能な電気自動車(EVやPHV等)に搭載されている。電気自動車では、減速時や、下り坂の走行時に電力の回生が行われるため、車両が走行する道路の状況(勾配の状況や、道路の形状の複雑さ(カーブの多さや、カーブの曲率の大きさ等)、信号の多寡、道路幅、車線の数等)に応じて燃費および走行可能距離が大きく変わる、という特性がある。なお、以下の説明において「燃費」と表現する場合、電力の回生可能性も考慮した燃費を意味している。
【0015】
図1に示すように、情報提供装置2には、タッチパネル3(特許請求の範囲の「表示部」に相当)が接続されている。タッチパネル3は、液晶表示パネルや有機ELパネル等の表示パネルと、表示パネルに重ねて配置され、ユーザによるタッチ操作を検出するタッチセンサとを含んで構成されている。タッチパネル3は、自車両のダッシュボードの中央部等、タッチパネル3の表示領域を運転手が視認可能な位置に設けられている。
【0016】
図1に示すように、情報提供装置2は、機能構成として、自車状態検出部10、バッテリ残量検出部11、仮目的地設定部12、仮経路探索部13、走行可能距離算出部14、情報提供部15および到達位置算出部16を備えている。上記各機能ブロック10~16は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~16は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0017】
また、図1に示すように、情報提供装置2は、記憶手段として、記憶部20を備えている。記憶部20は、ハードディスク、EEPROM等の不揮発性記憶装置を含んで構成され、各種データを記憶する。記憶部20には、地図データ21が記憶されている。地図データ21は、地図の描画に用いられるデータを含んでいる。
【0018】
また、地図データ21は、自車位置から目的地までの経路の探索に用いられる道路データを含んでいる。道路データは、道路網における結節点について定義されたノードごとにノードデータを有しており、また、ノードとノードとの間の道路区間について定義されたリンクごとにリンクデータを有している。ノードデータは、ノードの地図上の位置を示す情報や、ノードに接続するリンクに関する情報、ノードが交差点である場合にその交差点に設けられたレーンに関する情報、ノード属性を示す情報等のノードに関する情報に加え、ノード側バッテリ消費量計算用情報を有している。ノード側バッテリ消費量計算用情報は、自車両がノードを通過する際のバッテリ消費量を計算するための情報であり、ノードが交差点である場合には、交差点で行うアクション(右折、左折等)に応じたバッテリ消費量を計算するために必要な情報が含まれている。
【0019】
リンクデータは、道路区間の道路属性を示す情報や、道路種別を示す情報、道路長を示す情報、道路幅を示す情報、道路の方位を示す情報、通常リンクコスト(燃費について限定的にしか反映していないリンクコスト)等のリンクに関する情報に加え、リンク側バッテリ消費量計算用情報、良好燃費リンクコストおよび悪化燃費リンクコストを有している。
【0020】
リンク側バッテリ消費量計算用情報は、対応する道路区間を一端から他端まで走行した場合のバッテリ消費量を計算するために必要な情報である。リンク側バッテリ消費量計算用情報は、燃費に影響する種々の要因(道路区間の勾配の状況や、道路区間を走行したときのスムーズさ、電力の回生可能性等)を考慮して適切に設定されている。
【0021】
良好燃費リンクコストは、燃費に影響する種々の要因を考慮して、道路区間を良好な燃費で走行できるほど、コスト値の低下に寄与するようにコスト値が設定されたリンクコストである。従って、仮に目的地との関係で他の条件が全く同じ道路区間が2つあったとして、一方の道路区間が電力の回生効率が低い上り坂であり、他方の道路区間が電力の回生効率が高い下り坂であるとした場合、他方の道路区間(下り坂に係る道路区間)に係る良好燃費リンクコストのコスト値の方が、一方の道路区間(上り坂に係る道路区間)に係る良好燃費リンクコストのコスト値よりも小さい。
【0022】
悪化燃費リンクコストは、良好燃費リンクコストとは逆に、燃費に影響する種々の要因を考慮して、燃費が悪い道路区間ほどコスト値の低下に寄与するようにコスト値が設定されたリンクコストである。悪化燃費リンクコストのコスト値の設定方法の基本的な考え方は、良好燃費リンクコストのコスト値の低下に寄与する条件の成立度が大きいほどコスト値の増大に寄与し、良好燃費リンクコストのコスト値の増大に寄与する条件の成立度が大きいほどコスト値の低下に寄与するように、そのコスト値を設定するというものである。
【0023】
例えば、良好燃費リンクコストは、対応する道路区間が上り坂である場合と比較して、下り坂の方がコスト値が小さくなるが、悪化燃費リンクコストは、対応する道路区間が上り坂である場合と比較して、下り坂の方がコスト値が大きくなる。また、対応する道路区間が上り坂である場合において、良好燃費リンクコストは、勾配が急であればあるほどコスト値が大きくなるが、悪化燃費リンクコストは、勾配が急であればあるほどコスト値が小さくなる。また、良好燃費リンクコストは、対応する道路区間で対向車とすれ違う際に速度を落とす必要性が小さいほど、また、すれ違う頻度が少ないほどコスト値が小さくなるが、悪化燃費リンクコストは、その必要性が大きいほど、また、その頻度が多いほどコスト値が小さくなる。
【0024】
自車状態検出部10は、GPSユニット、加速度センサ、ジャイロセンサおよび車速センサ等の各種センサ(いずれも不図示)の検出結果を入力し、これらの検出結果および記憶部20に記憶された地図データ21に基づいて、自車位置および自車両の進行方向を検出する。自車位置および自車両の進行方向の検出は既存の技術に基づいて適切に行われる。
【0025】
バッテリ残量検出部11は、自車両のバッテリ残量を検出する。バッテリ残量は、例えば、SOC(State of Charge:バッテリの最大の容量に対する残量の比率)として表されるものである。バッテリ残量検出部11は、例えば、バッテリ残量を管理するECUと通信し、バッテリ残量を検出する。
【0026】
仮目的地設定部12は、動作モードが「走行可能距離関連情報提供モード」の場合に、以下の処理を実行する。走行可能距離関連情報提供モードは、ユーザ(以下の説明では、運転手であるものとする)が情報提供装置2に対して目的地を設定していない状況下で、走行可能距離に関する有益な情報が自動で提供される動作モードである。走行可能距離とは、バッテリの充電を行うことなく走行可能な距離を意味し、航続距離と呼ばれる場合もある。
【0027】
なお、以下の説明では、走行可能距離関連情報提供モードのときは、情報提供装置2に対して目的地が設定されていないものとする。また、走行可能距離関連情報提供モードのときは、後述する例外を除き、基本的には情報提供部15によってタッチパネル3の表示領域に通常地図画面23(図3)が表示されているものとする。通常地図画面23は、自車両の現在位置が中央下部に配置された所定スケールの地図が表示された画面である。情報提供部15は、記憶部20に記憶された地図データ21および自車状態検出部10の検出結果に基づいて、既存の技術によりタッチパネル3に通常地図画面23を表示する。
【0028】
さて、動作モードが走行可能距離関連情報提供モードの場合において、仮目的地設定部12は、記憶部20に記憶された地図データ21および自車状態検出部10により検出される自車位置に基づいて、自車両が交差点を通過したか否かを監視する。自車両が交差点を通過したことを検出した場合、仮目的地設定部12は、以下の仮目的地設定処理を実行する。つまり、仮目的地設定部12は、自車両が交差点を通過する度に仮目的地設定処理を実行する。なお、通過したか否かを監視する対象とする交差点を、3差路以上の交差点等の特定の態様の交差点としてもよい。
【0029】
仮目的地設定処理において、仮目的地設定部12は、自車状態検出部10により検出された自車位置および進行方向を認識する。更に、仮目的地設定部12は、バッテリ残量検出部11により検出されたバッテリ残量を認識する。ここで仮目的地設定部12により認識されたバッテリ残量は、現時点の自車両の実際のバッテリ残量である。次いで、仮目的地設定部12は、認識したバッテリ残量に基づいて、仮目的地距離を決定する。仮目的地距離がどのような値とされるかについては後述する。
【0030】
次いで、仮目的地設定部12は、自車位置を基点として分散された8つの方向に向かって、仮目的地距離分、直線的に離間した位置のそれぞれに、仮目的地を設定する。つまり、自車位置と、仮目的地とのそれぞれは、直線距離で仮目的地距離分、離間している。8つの方向は、(1)進行方向、(2)進行方向と逆方向(以下「逆方向」という)、(3)進行方向に向かって右方向(以下「右方向」という)、(4)進行方向に向かって左方向(以下「左方向」という)、(5)進行方向と右方向との中間の方向(以下「右進行方向」という)、(6)進行方向と左方向との中間の方向(以下「左進行方向」という)、(7)逆方向と右方向との中間の方向(以下「右逆方向」という)、(8)逆方向と左方向との中間の方向(以下「左逆方向」という)である。
【0031】
図2は、仮目的地の説明に利用する図であり、自車位置を示す点Oを基点とする地図上の領域に8つの仮目的地M1~M8が設定された様子を示している。なお、図2は、後述する良好燃費経路、悪化燃費経路、良好燃費距離および悪化燃費距離の説明にも用いる。図2の例では、地図上で自車位置Oから進行方向に仮目的地距離D分、直線的に離間した位置に仮目的地M1が設定されている。同様に、自車位置Oから右進行方向に仮目的地距離D分、直線的に離間した位置に仮目的地M2が、自車位置Oから右方向に仮目的地距離D分、直線的に離間した位置に仮目的地M3が、自車位置Oから右逆方向に仮目的地距離D分、直線的に離間した位置に仮目的地M4が、自車位置Oから逆方向に仮目的地距離D分、直線的に離間した位置に仮目的地M5が、自車位置Oから左逆方向に仮目的地距離D分、直線的に離間した位置に仮目的地M6が、自車位置Oから左方向に仮目的地距離D分、直線的に離間した位置に仮目的地M7が、自車位置Oから左進行方向に仮目的地距離D分、直線的に離間した位置に仮目的地M8が設定されている。仮目的地は、自車位置から仮目的地距離分、離間した位置の付近で、自車両が通常の走行により到達可能な地点(例えば、自車両が通行可能な道路の道路沿いの地点)が適切に設定される。
【0032】
ここで、仮目的地距離について説明する。後に説明するように、設定された仮目的地ごとに、自車位置から仮目的地に至る良好燃費経路が探索される。そして、仮目的地距離は、この仮目的地距離だけ直線的に離間した位置に仮目的地を設定した場合に、この仮目的地に至る良好燃費経路がどのような態様の経路であったとしても、良好燃費経路の総走行距離(自車位置から良好燃費経路を通って仮目的地に至るまでの走行距離)が、自車両が良好燃費経路を走行した場合の走行可能距離(自車位置から良好燃費経路を通って仮目的地に向かって走行したときに、途中で充電することなく走行可能な最大の距離)よりも大きくなるような値とされる。従って、バッテリの充電を行うことなく自車両が良好燃費経路を走行した場合、仮目的地に到達する前に自車両のバッテリが不足することになる。
【0033】
例えば、仮目的地距離は、「上下線が分かれた平坦な道路を平均的な頻度で信号を通過しながら直線的に進んだ場合に、現時点のバッテリ残量で走行可能な距離」にマージンを足した値とされる。この場合、例えば、仮目的地距離は、バッテリ残量を変数の1つとする計算式により算出された値にマージンを付加することによって算出される。計算式は、事前のテストやシミューレーションに基づいて導出される。良好燃費経路がどのような態様の経路であったとしても、「上下線が分かれた平坦な道路を平均的なピッチで信号を通過しながら直線的に進む経路」と比較して多少燃費は悪くなると想定され、更にマージンが考慮されるため、このような方法で仮目的地距離の値を設定することにより、仮目的地距離の値を、上述した仮目的地距離に求められる要件を満たした値とすることができる。更に、このような方法で仮目的地距離の値を設定することにより、仮目的地距離の値が不必要に大きな値とならないようにすることができる。仮目的地距離の値が不必要に大きな値とならないようにする(=仮目的地が不必要に自車位置から離れた位置に設定されないようにする)ことによって、後に説明する良好燃費経路および悪化燃費経路が不必要に長くならないようにすることができ、良好燃費経路および悪化燃費経路の探索に要する処理負荷を低減できる。
【0034】
仮経路探索部13は、仮目的地設定部12により仮目的地が設定された場合(=自車両が交差点を通過した場合)に以下の処理を実行する。すなわち、仮経路探索部13は、自車両(電気自動車)が経路を走行したときの燃費を良好化させる共通の第1探索条件に従って複数の仮目的地のそれぞれに向かう良好燃費経路(特許請求の範囲の「第1経路」に相当)のそれぞれを探索する。更に、仮経路探索部13は、自車両が経路を走行したときの燃費を悪化させる共通の第2探索条件に従って複数の仮目的地のそれぞれに向かう悪化燃費経路(特許請求の範囲の「第2経路」に相当)のそれぞれを探索する。以下、仮経路探索部13の処理について詳述する。
【0035】
仮経路探索部13は、地図データ21の良好燃費リンクコストに基づいて、8つの仮目的地のそれぞれについて、8つの良好燃費経路を探索する。すなわち、仮経路探索部13は、8つの仮目的地のうちの一の仮目的地について、良好燃費リンクコストを用いて、自車位置から当該一の仮目的地に至る良好燃費経路を探索する。仮経路探索部13は、他の7つの仮目的地についても同様にして良好燃費経路を探索する。上述したように、良好燃費リンクコストは、燃費に影響する種々の要因を考慮して、対応する道路区間を良好な燃費で走行できるほど、コスト値の低下に寄与するようにコスト値が設定されたリンクコストである。従って、一の仮目的地についての良好燃費経路は、現在位置から当該一の仮目的地に至る種々の経路のうち、燃費の良い道路区間が優先的に選択された経路(理想的には最も燃費の良い経路)である。なお、8つの仮目的地に係る良好燃費経路のそれぞれは、良好燃費リンクコストが共通して用いられて探索された経路であり、自車両が経路を走行したときの燃費を良好化させる共通の第1探索条件に従って探索された経路に相当する。
【0036】
更に、仮経路探索部13は、地図データ21の悪化燃費リンクコストに基づいて、8つの仮目的地のそれぞれについて、8つの悪化燃費経路を探索する。すなわち、仮経路探索部13は、8つの仮目的地のうちの一の仮目的地について、悪化燃費リンクコストを用いて、自車位置から当該一の仮目的地に至る悪化燃費経路を探索する。仮経路探索部13は、他の7つの仮目的地についても同様にして悪化燃費経路を探索する。上述したように、悪化燃費リンクコストは、燃費に影響する種々の要因を考慮して、燃費が悪い道路区間ほどコスト値の低下に寄与するようにコスト値が設定されたリンクコストである。従って、一の仮目的地についての悪化燃費経路は、現在位置から当該一の仮目的地に至る種々の経路のうち、燃費の悪い道路区間が優先的に選択された経路である。なお、8つの仮目的地に係る悪化燃費経路のそれぞれは、悪化燃費リンクコストが共通して用いられて探索された経路であり、自車両が経路を走行したときの燃費を悪化させる共通の第2探索条件に従って探索された経路に相当する。
【0037】
図2において、符号GR1は、仮目的地M1に対応する良好燃費経路を示し、符号BR1は、仮目的地M1に対応する悪化燃費経路を示している。図2の良好燃費経路GR1および悪化燃費経路BR1が示すように、自車位置Oから仮目的地M1に至る経路の候補が十分にある場合、良好燃費経路GR1と悪化燃費経路BR1とは相互に異なる経路となることが想定される。図2において、符号GR2、符号BR2はそれぞれ、仮目的地M2に対応する良好燃費経路、悪化燃費経路を示し、符号GR3、符号BR3はそれぞれ、仮目的地M3に対応する良好燃費経路、悪化燃費経路を示し、符号GR4、符号BR4はそれぞれ、仮目的地M4に対応する良好燃費経路、悪化燃費経路を示し、符号GR5、符号BR5はそれぞれ、仮目的地M5に対応する良好燃費経路、悪化燃費経路を示し、符号GR6、符号BR6はそれぞれ、仮目的地M6に対応する良好燃費経路、悪化燃費経路を示し、符号GR7、符号BR7はそれぞれ、仮目的地M7に対応する良好燃費経路、悪化燃費経路を示し、符号GR8、符号BR8はそれぞれ、仮目的地M8に対応する良好燃費経路、悪化燃費経路を示している。
【0038】
走行可能距離算出部14は、仮経路探索部13により良好燃費経路および悪化燃費経路が探索された場合に以下の処理を実行する。すなわち、走行可能距離算出部14は、仮経路探索部13により探索された良好燃費経路のそれぞれについての良好燃費距離(特許請求の範囲の「第1距離」に相当)のそれぞれを算出する。更に、走行可能距離算出部14は、仮経路探索部13により探索された悪化燃費経路のそれぞれについての悪化燃費距離(特許請求の範囲の「第2距離」に相当)のそれぞれを算出する。以下、走行可能距離算出部14の処理について詳述する。
【0039】
走行可能距離算出部14は、バッテリ残量検出部11により検出されたバッテリ残量を認識する。次いで、走行可能距離算出部14は、良好燃費経路のそれぞれについて、良好燃費距離を算出する。良好燃費距離とは、良好燃費経路上を自車両が走行した場合の走行可能距離(現時点のバッテリ残量で充電を伴うことなく走行可能な距離)のことである。ここで算出される良好燃費距離は、良好燃費経路を走行したときに最終的に到達可能な位置と自車位置とを結ぶ直線の直線距離として表される距離ではなく、良好燃費経路上を走行したときの走行距離として表される距離である。このことは後述する悪化燃費距離についても同様である。
【0040】
一の良好燃費経路についての良好燃費距離の算出に際し、走行可能距離算出部14は、以下の処理を実行する。すなわち、当該一の良好燃費経路は、リンク(道路区間)とノードとの組み合わせとして定義された経路である。これを踏まえ、走行可能距離算出部14は、記憶部20に記憶された地図データ21を参照し、一の良好燃費経路を構成するリンクのリンク側バッテリ消費量計算用情報およびノードのノード側バッテリ消費量計算用情報を取得し、取得したこれら情報および現時点のバッテリ残量を示す情報に基づいて、良好燃費距離を算出する。
【0041】
なお、例示した良好燃費距離の算出方法は、説明の便宜のために単純化したものであり、他の方法で良好燃費距離が算出される構成でもよい。例えば、走行可能距離算出部14が、良好燃費経路に含まれる各道路区間の混雑具合や、道路工事等の原因による通行止めの状況、天候等の燃費に影響を与える環境的な要素に関する情報を外部のサーバや道路交通情報通信システム等を利用して認識し、これらを反映させて良好燃費距離を算出する構成でもよい。また、走行可能距離算出部14が、バッテリの電力を消費する部材(情報提供装置2のほか、空気調和装置や、オーディオ機器、各種点灯装置等)の消費電力を反映させて良好燃費距離を算出する構成でもよい。つまり、良好燃費距離の算出は、種々既存の技術を用いて実行することが可能である。以上のことは悪化燃費距離の算出方法についても同様である。
【0042】
更に、走行可能距離算出部14は、悪化燃費経路のそれぞれについて、悪化燃費距離を算出する。悪化燃費距離とは、悪化燃費経路上を自車両が走行した場合の走行可能距離(現時点のバッテリ残量で充電を伴うことなく走行可能な距離)のことである。走行可能距離算出部14は、良好燃費距離を算出するときと同様の方法で悪化燃費距離を算出する。悪化燃費経路は、良好燃費経路と比較して燃費が悪い経路であるため、悪化燃費距離は、良好燃費距離よりも短いものと想定される。
【0043】
図2において、符号GR1pは、良好燃費経路GR1について走行可能距離算出部14により算出された良好燃費距離だけ、自車位置から良好燃費経路GR1に沿って走行した場合に至る位置を示している。この位置GR1pは、後述する到達位置算出部16により算出される良好燃費経路到達位置に相当する。図2において、符号BR1pは、悪化燃費経路BR1について走行可能距離算出部14により算出された悪化燃費距離だけ、自車位置から悪化燃費経路BR1に沿って走行した場合に至る位置を示している。位置BR1pは、後述する到達位置算出部16により算出される悪化燃費経路到達位置に相当する。
【0044】
同様に、図2において、符号GR2p、GR3p、GR4p、GR5p、GR6p、GR7p、GR8pはそれぞれ、良好燃費経路GR2、GR3、GR4、GR5、GR6、GR7、GR8上で自車位置から対応する良好燃費距離だけ自車両が走行した場合に至る位置を示している。また、図2において、符号BR2p、BR3p、BR4p、BR5p、BR6p、BR7p、BR8pはそれぞれ、悪化燃費経路BR2、BR3、BR4、BR5、BR6、BR7、BR8上で自車位置から対応する悪化燃費距離だけ自車両が走行した場合に至る位置を示している。
【0045】
情報提供部15は、走行可能距離算出部14の算出結果に基づいて以下の処理を実行する。すなわち、情報提供部15は、8つの仮目的地ごとに算出された8つの良好燃費距離のうち、最も短い(最も値が小さい)距離を特定する。例えば、図2において、仮目的地M1~M8に係る良好燃費距離のうち、仮目的地M1に係る良好燃費距離が最も短い距離であったとする。この場合、情報提供部15は、仮目的地M1に係る良好燃費距離を、8つの良好燃費距離のうち最も短い距離として特定する。以下、ここで特定された良好燃費距離、すなわち、算出された複数の良好燃費距離のうち最も値が小さい良好燃費距離を「最小良好燃費距離」という。
【0046】
次いで、情報提供部15は、8つの仮目的地ごとに算出された8つの悪化燃費距離のうち、最も短い(最も値が小さい)距離を特定する。例えば、図2において、仮目的地M1~M8に係る悪化燃費距離のうち、仮目的地M2に係る悪化燃費距離が最も短い距離であったとする。この場合、情報提供部15は、仮目的地M2に係る悪化燃費距離を、8つの悪化燃費距離のうち最も短い距離として特定する。以下、ここで特定された悪化燃費距離、すなわち、算出された複数の悪化燃費距離のうち最も値が小さい悪化燃費距離を「最小悪化燃費距離」という。
【0047】
次いで、情報提供部15は、最小良好燃費距離を示す情報および最小悪化燃費距離を示す情報を、タッチパネル3の表示領域に表示された通常地図画面23上に表示することによって、これら情報をユーザに提供する。図3は、通常地図画面23に最小良好燃費距離を示す情報および最小悪化燃費距離を示す情報が表示された様子の一例を示す図である。図3の例では、タッチパネル3の表示領域の全域に地図画面が表示されると共に、画面を正面視したときの左下部に、ポップアップにより、最小良好燃費距離を示す情報を含む情報J1、および、最小悪化燃費距離を示す情報を含む情報J2が表示されている。
【0048】
図3の例では、最小良好燃費距離は「80km」であり、情報J1は『燃費が良い経路を走行しても、80kmしか走行できない可能性があります』との文言である。また、最小悪化燃費距離は「60km」であり、情報J2は『燃費が悪い経路を走行した場合、60kmしか走行できない可能性があります』との文言である。ユーザ(本実施形態では、運転手)は、情報J1および情報J2を視認することにより、最小良好燃費距離および最小悪化燃費距離を認識できる。
【0049】
以下、ユーザに最小良好燃費距離および最大良好燃費距離を示す情報を提供することの意義について説明する。現状、電気自動車のバッテリを充電可能な充電スタンドは、ガスリンスタンドほどは普及していない。従って、電気自動車がバッテリ不足となったとき、または、バッテリ不足となりそうになったときに、電気自動車のバッテリを充電可能な充電スタンドが車両の近くにない、といった事態はガソリン車と比較して容易に起こり得ると想定される。また、バッテリ不足となった場合に、ガソリン車と比較して、バッテリを充電するために要する労力が大きくなる場合が多いと想定される。このため、電気自動車を運転するユーザには、電気自動車を走行させているときにバッテリ不足とならないよう、できるだけ有効な態様で走行可能距離を認識したいとするニーズがある。しかしながら、上述したように、動作モードが走行可能距離関連情報提供モードの場合、目的地までの誘導経路が設定されているわけではなく、情報提供装置2は、自車両が今後どのような経路を走行するのかを把握し得ない。従って、情報提供装置2が、今後自車両が実際に走行する経路上の走行可能距離を高い精度で算出し、情報として提供することは困難である。
【0050】
一方で、本実施形態では、自車位置から8方向に分散した位置のそれぞれに仮目的地が設定される。仮目的地は、自車位置を基点として8方向に偏りなく分散されているため、自車両は、交差点を通過した後に8つの仮目的地の何れかに向かう経路に近い経路を走行する可能性が高いと言える。そして、一の仮目的地に対応する良好燃費経路は、自車位置から当該一の仮目的地に向かう経路のうち、燃費の良い経路(理想的には最も燃費の良い経路)である。また、当該一の仮目的地に対応する良好燃費経路について算出された良好燃費距離は、当該一の仮目的地に向かってできるだけ燃費の良い経路を走行した場合に、バッテリを充電することなく走行可能な距離である。従って、最小良好燃費距離は、自車両が今後どのような経路を走行するかは不明であるが、仮に燃費の良い経路を走行し続けたとしても、バッテリ不足が発生し得る最小の距離とみなすことができる。
【0051】
また、一の仮目的地に対応する悪化燃費経路は、自車位置から当該一の仮目的地に向かう経路のうち、燃費の悪い経路である。また、当該一の仮目的地に対応する悪化燃費経路について算出された悪化燃費距離は、当該一の仮目的地に向かって燃費の悪い経路を走行した場合に、バッテリを充電することなく走行可能な距離である。従って、最小悪化燃費距離は、自車両が今後どのような経路を走行するかは不明であるが、仮に燃費の悪い経路を走行し続けた場合に、バッテリ不足が発生し得る最小の距離と言える。
【0052】
以上を踏まえ、ユーザは、最小良好燃費距離を認識することにより、今後、仮に燃費の良い経路を走行し続けたとしても、最小良好燃費距離だけしか走行できない可能性があることを認識できる。更に、ユーザは、最小悪化燃費距離を認識することにより、今後、燃費の悪い経路を走行し続けた場合、最小悪化燃費距離だけしか走行できない可能性があることを認識できる。ユーザは、これらの認識に基づいて、適切なタイミングでバッテリを充電することを検討することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、動作モードが走行可能距離関連情報提供モードの場合、自車両が交差点を通過する度に、最小良好燃費距離を示す情報および最小悪化燃費距離を示す情報がタッチパネル3に表示され、ユーザに提供されることになる。ここで、一の交差点の通過に応じて表示された各情報の値は、当該一の交差点を通過した時点から時間が経過するほど内容が古くなり、誤差が大きくなる。これを踏まえ、情報提供部15が各情報を一定期間だけ表示する構成でもよい。この場合、自車両が交差点を通過する度に一定期間だけ最新の最小良好燃費距離を示す情報および最小悪化燃費距離を示す情報がタッチパネル3に表示されることになる。
【0054】
更に、情報提供部15は、仮経路探索部13により探索された8つの良好燃費経路のうち、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路を示すルート画像24を通常地図画面に表示する。例えば、図2の例の場合、情報提供部15は、進行方向に位置する仮目的地M1に対応する良好燃費経路GR1を示すルート画像24を、通常地図画面に表示する。図3では、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路を示すルート画像24が通常地図画面に表示された様子を示している。図3の例では、良好燃費経路を示すルート画像24は、道路に重ねて描画される線状の画像であり、ユーザは、良好燃費経路を示すルート画像24を参照することにより、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路を認識することができる。
【0055】
以下、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路がルート画像24として表示されることの意義について説明する。上述したように、仮目的地は、自車位置を基点として8方向に分散された位置に配置されているが、現時点から当面の間は、自車両が進行方向に向かって継続して走行する可能性は、他の7つの方向に向かって走行する可能性より高いということが言える。従って、ルート画像24として示された良好燃費経路は、8つの仮目的地に対応する良好燃費経路のうち、自車両が走行する可能性が最も高い方面に向かって引かれた経路ということができる。以上を踏まえ、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路がルート画像24として表示されることにより、ユーザは、進行方向に向かって引き続き自車両を走行させる場合(上述したように、この可能性は高いと言える)に、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路を示すルート画像24を参照することによって、燃費の良い道路を選択しつつ自車両を走行させることができる。
【0056】
更に、本実施形態では、最小良好燃費距離を示す情報の提供にあたって、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路の探索は必ず行われる処理であるため、演算処理結果を有効活用し、不必要に処理負荷を増大させることなく、ルート画像24を表示できる。
【0057】
更に、情報提供部15は、後述する所定の場合に、到達位置算出部16の処理結果に基づいてタッチパネル3に所定の情報を表示する。この処理については後述する。
【0058】
到達位置算出部16は、以下の処理を実行する。すなわち、図3に示すように、動作モードが走行可能距離関連情報提供モードの場合、タッチパネル3の表示領域には、到達位置表示指示ボタン25が表示される。ユーザによって到達位置表示指示ボタン25がタッチ操作されたことを検出すると、到達位置算出部16は、直近で仮経路探索部13により探索された8つの良好燃費経路および8つの悪化燃費経路と、直近で走行可能距離算出部14により算出された8つの良好燃費距離および8つの悪化燃費距離とを認識する。
【0059】
次いで、到達位置算出部16は、記憶部20に記憶された地図データ21に基づいて8つの良好燃費経路のそれぞれについて良好燃費経路到達位置を算出すると共に、8つの悪化燃費経路のそれぞれについて悪化燃費経路到達位置を算出する。良好燃費経路到達位置とは、自車位置から良好燃費経路に沿って良好燃費距離だけ自車両が走行した場合に至る位置である。悪化燃費経路到達位置とは、自車位置から悪化燃費経路に沿って悪化燃費距離だけ自車両が走行した場合に至る位置である。上述の通り、図2において、符号GR1p~GR8pは良好燃費経路到達位置を示しており、符号BR1p~BR8pは悪化燃費経路到達位置を示している。
【0060】
情報提供部15は、到達位置表示指示ボタン25に対するタッチ操作をトリガとして、到達位置算出部16により良好燃費経路到達位置および悪化燃費経路到達位置が算出された場合に、以下の処理を実行する。すなわち、情報提供部15は、タッチパネル3の画面を、通常地図画面23から到達位置表示画面26(図4)に切り替える。図4は、到達位置表示画面26の一例を示す図であり、特に、良好燃費経路到達位置および悪化燃費経路到達位置が図2で例示する態様で地図上の領域に配置されている場合の到達位置表示画面26を示している。図2図4とでは、共通する良好燃費経路到達位置および悪化燃費経路到達位置に同一の符号を付している。
【0061】
図4に示すように、到達位置表示画面26には、良好燃費経路到達位置GR1p~GR8pおよび悪化燃費経路到達位置BR1p~BR8pのそれぞれが表示可能な程度に広域な地図が表示される。情報提供部15は、地図データ21に基づいて地図を表示する。更に、到達位置表示画面26には、8つの良好燃費経路到達位置GR1p~GR8pの各位置に、各位置の目印となる良好ポイントQ1~Q8が表示され、隣り合う良好ポイントが細い線状の画像により図4に示す態様で接続される。以下、良好ポイントQ1~Q8および良好ポイントを結ぶ線状の画像の組み合わせを良好燃費範囲画像という。また、到達位置表示画面26には、8つの悪化燃費経路到達位置BR1p~BR8pの各位置に、各位置の目印となる悪化ポイントR1~R8が表示され、隣り合う悪化ポイントが細い線状の画像により図4に示す態様で接続される。以下、悪化ポイントR1~R8および悪化ポイントを結ぶ線状の画像の組み合わせを悪化燃費範囲画像という。
【0062】
良好燃費範囲画像は、良好燃費経路到達位置を結ぶことによって形成される地図上のポリゴン領域を表しており、自車両が燃費の良い経路を選択して走行した場合に充電を行うことなく到達可能な地図上の平面的な領域を表していると言える。従って、ユーザは、良好燃費範囲画像を参照することにより、燃費の良い経路を走行した場合に、地図上で大体どの程度の範囲まで充電することなく到達可能であるか(換言すれば、どの程度の範囲までしか走行できないか)を、直感的にかつ感覚的に認識できる。また、悪化燃費範囲画像は、悪化燃費経路到達位置を結ぶことによって形成される地図上のポリゴン領域を表しており、自車両が燃費の悪い経路を選択して走行した場合に充電を行うことなく到達可能な地図上の平面的な領域を表していると言える。従って、ユーザは、悪化燃費範囲画像を参照することにより、燃費の悪い経路を走行した場合に、地図上で大体どの程度の範囲まで充電することなく到達可能であるか(換言すれば、どの程度の範囲までしか走行できないか)を、直感的にかつ感覚的に認識できる。
【0063】
図4に示すように、到達位置表示画面26には、切替ボタン27が表示される。情報提供部15は、切替ボタン27がタッチ操作されたことを検出すると、画面を到達位置表示画面26から通常地図画面23へと切り替える。
【0064】
次に、情報提供装置2の動作についてフローチャートを用いて説明する。図5は、最小良好燃費距離および最小悪化燃費距離を示す情報を提供するときの情報提供装置2の動作を示すフローチャートである。図5のフローチャートの開始時点では、動作モードが走行可能距離関連提供モードであり、タッチパネル3には通常地図画面23が表示されているものとする。
【0065】
図5に示すように、情報提供装置2の仮目的地設定部12は、自車両が交差点を通過したか否かを監視する(ステップSA1)。自車両が交差点を通過したことを検出した場合(ステップSA1:YES)、仮目的地設定部12は、自車状態検出部10により検出された自車位置および進行方向を認識する(ステップSA2)。更に、仮目的地設定部12は、バッテリ残量検出部11により検出されたバッテリ残量を認識する(ステップSA3)。次いで、仮目的地設定部12は、ステップSA3で認識したバッテリ残量に基づいて、仮目的地距離を決定する(ステップSA4)。次いで、仮目的地設定部12は、自車位置を基点として分散された8つの方向に仮目的地を設定する(ステップSA5)。
【0066】
仮目的地設定部12による仮目的地の設定に応じて、仮経路探索部13は、8つの仮目的地に対応する8つの良好燃費経路を探索する(ステップSA6)。更に、仮経路探索部13は、8つの仮目的地に対応する8つの悪化燃費経路を探索する(ステップSA7)。
【0067】
仮経路探索部13による良好燃費経路および悪化燃費経路の探索に応じて、走行可能距離算出部14は、良好燃費経路のそれぞれについての良好燃費距離のそれぞれを算出する(ステップSA8)。更に、走行可能距離算出部14は、仮経路探索部13により探索された悪化燃費経路のそれぞれについての悪化燃費距離のそれぞれを算出する(ステップSA9)。
【0068】
走行可能距離算出部14による良好燃費距離および悪化燃費距離の算出に応じて、情報提供部15は、8つの良好燃費距離のうち、最も短い(最も値が小さい)距離を、最小良好燃費距離として特定する(ステップSA10)。更に、情報提供部15は、8つの悪化燃費距離のうち、最も短い(最も値が小さい)距離を、最小悪化燃費距離として特定する(ステップSA11)。次いで、情報提供部15は、最小良好燃費距離を示す情報および最小悪化燃費距離を示す情報をタッチパネル3の表示領域に表示された通常地図画面23上に表示する(ステップSA12)。更に、情報提供部15は、仮経路探索部13により探索された8つの良好燃費経路のうち、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路を示すルート画像24を通常地図画面に表示する(ステップSA13)。最小良好燃費距離を示す情報および最小悪化燃費距離を示す情報の表示や、ルート画像24の表示は、例えば図3で例示した態様で行われる。ステップSA13の処理後、処理手順がステップSA1に戻り、情報提供装置2は、ステップSA1の処理の実行を開始する。
【0069】
図6は、到達位置表示画面26を表示するときの情報提供装置2の動作を示すフローチャートである。図6のフローチャートの開始時点では、動作モードが走行可能距離関連提供モードであり、タッチパネル3には通常地図画面23が表示されているものとする。
【0070】
図6に示すように、到達位置算出部16は、ユーザによって到達位置表示指示ボタン25がタッチ操作されたか否かを監視する(ステップSB1)。到達位置表示指示ボタン25がタッチ操作されたことを検出すると、到達位置算出部16は、直近で仮経路探索部13により探索された8つの良好燃費経路および8つの悪化燃費経路と、直近で走行可能距離算出部14により算出された8つの良好燃費距離および8つの悪化燃費距離とを認識する(ステップSB2)。次いで、到達位置算出部16は、8つの良好燃費経路のそれぞれについて良好燃費経路到達位置を算出する(ステップSB3)。更に、到達位置算出部16は、8つの悪化燃費経路のそれぞれについて悪化燃費経路到達位置を算出する(ステップSB4)。
【0071】
到達位置算出部16による良好燃費経路到達位置および悪化燃費経路到達位置の算出に応じて、情報提供部15は、タッチパネル3の画面を、通常地図画面23から到達位置表示画面26に切り替える(ステップSB5)。上述したように、到達位置表示画面26には、良好燃費範囲画像(良好ポイントとこれらを結ぶ線の画像)および悪化燃費範囲画像(悪化ポイントとこれらを結ぶ線の画像)とが表示される。
【0072】
情報提供部15は、切替ボタン27がタッチ操作されたか否かを監視する(ステップSB6)。切替ボタン27がタッチ操作されたことを検出した場合(ステップSB6:YES)、情報提供部15は、画面を到達位置表示画面26から通常地図画面23へと切り替える(ステップSB7)。
【0073】
なお、本実施形態では、通常地図画面23(図3)の到達位置表示指示ボタン25がタッチ操作された場合に、到達位置表示画面26(図4)を表示する構成である。しかしながら、これはあくまで一例である。例えば、自車両のエンジンの起動に応じて、到達位置表示画面26を表示するために必要な情報を収集する処理を行って到達位置表示画面26を表示する構成でもよい。この構成によれば、ユーザ(運転手)は、自車両の走行を開始させる前に、現状、大体どの程度の範囲で自車両を走行させるのかを認識することができ、バッテリの充電に関する計画を立てることが可能である。このほか、自車両が走行した後に、所定の事象をトリガとして随時、到達位置表示画面26を表示する構成でもよい。
【0074】
以上詳しく説明したように、本実施形態に係る情報提供装置2は、電気自動車である自車両の現在位置を基点として分散された方向に複数の仮目的地を設定し、自車両の走行に伴うバッテリの消費に関する共通の探索条件に従って、複数の仮目的地のそれぞれに向かう経路のそれぞれを探索し、探索した経路のそれぞれを走行した場合に現時点のバッテリ残量で走行可能な距離のそれぞれを算出し、算出した距離に基づく情報を提供するようにしている。なお、本実施形態では、提供される情報は、最小良好燃費距離を示す情報を含む情報、および、最小悪化燃費距離を示す情報を含む情報であり、これら情報は、特定の単一の経路についての走行可能距離ではなく、電気自動車の現在位置を基点として分散された複数の経路、つまり、電気自動車が今後走行し得る複数の経路についての走行可能距離が勘案された情報である。
【0075】
この構成によれば、電気自動車である自車両が走行する経路が判明していない状況において、特定の単一の経路についての走行可能距離を示す情報を提供するのではなく、自車両の現在位置を基点として分散された複数の経路について算出された走行可能距離を総合的に勘案した情報(本実施形態では、最小良好燃費距離を示す情報を含む情報、および、最小悪化燃費距離を示す情報)を提供できる。このようにして提供される情報は、車両の現在位置を基点として分散された複数の経路、つまり、自車両が今後走行し得る複数の経路についての走行可能距離を踏まえているという点で、車両が走行する経路が異なると燃費が大きく変化するという特性を考慮した、走行可能距離に関する有益な情報ということができる。つまり、本実施形態に8よれば、目的地までの誘導経路が設定されていない状況下で、自車両が今後どのような経路を走行するかにかかわらず、電気自動車が走行する経路が異なると燃費が大きく変化するという特性を考慮した走行可能距離に関する有益な情報を提供できる。
【0076】
<第1変形例>
次に、上記実施形態の第1変形例について説明する。上記実施形態では、仮経路探索部13は、8方向の仮目的地に対応する8つの良好燃費経路および8つの悪化燃費経路を探索した。また、走行可能距離算出部14は、8つの良好燃費経路に対応する8つの良好燃費距離および8つの悪化燃費経路に対応する8つの悪化燃費距離を算出した。また、情報提供部15は、最小良好燃費距離を示す情報および最小悪化燃費距離を示す情報の双方を提供した。一方で、第1変形例では、仮経路探索部13は、8つの良好燃費経路を探索する一方、悪化燃費経路の探索を行わない。これに応じて、走行可能距離算出部14は、良好燃費距離を算出する一方、悪化燃費距離を算出せず、また、情報提供部15は、最小良好燃費距離を示す情報を提供する一方、最小悪化燃費距離を示す情報を提供しない。なお、情報提供部15は、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路を示すルート画像24の表示を行う。この場合、例えば、図3で例示する通常地図画面23において、情報J2が表示されない状態の画面がタッチパネル3に表示される。
【0077】
また、到達位置表示指示ボタン25がタッチ操作された場合、到達位置算出部16および情報提供部15が協働して、良好燃費範囲画像が表示される一方、悪化燃費範囲画像が表示されない到達位置表示画面26を表示する。この場合、例えば、図4で例示する通常地図画面23において、悪化燃費範囲画像が表示されていない状態の画面がタッチパネル3に表示される。
【0078】
本変形例によれば、ユーザは、最小良好燃費距離を示す情報を参照することにより、最小良好燃費距離を認識し、仮に自車両に燃費の良い経路を走行させたとしても最小良好燃費距離だけしか走行できない可能性があることを認識でき、この認識に基づいて、バッテリを充電するタイミングを検討することが可能である。また、本変形例によれば、ユーザは、良好燃費範囲画像を参照することにより、燃費の良い経路を走行した場合に、地図上で大体どの程度の範囲まで充電することなく到達可能であるか(換言すれば、どの程度の範囲までしか走行できないか)を、直感的にかつ感覚的に認識できる。また、本変形例によれば、最小悪化燃費距離の算出に関連する処理が実行されないため、その分、処理負荷が小さい。
【0079】
<第2変形例>
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。本変形例に係る仮経路探索部13は、8つの悪化燃費経路を探索する一方、良好燃費経路の探索を行わない。これに応じて、走行可能距離算出部14は、悪化燃費距離を算出する一方、良好燃費距離を算出せず、また、情報提供部15は、最小悪化燃費距離を示す情報を提供する一方、最小良好燃費距離を示す情報を提供しない。なお、本変形例に係る情報提供部15は、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路を示すルート画像24の表示を行わない。良好燃費経路の探索が行われないからである。この場合、例えば、図3で例示する通常地図画面23において、情報J1およびルート画像24が表示されない状態の画面がタッチパネル3に表示される。
【0080】
また、到達位置表示指示ボタン25がタッチ操作された場合、到達位置算出部16および情報提供部15が協働して、悪化燃費範囲画像が表示される一方、良好燃費範囲画像が表示されない到達位置表示画面26を表示する。この場合、例えば、図4で例示する通常地図画面23において、良好燃費範囲画像が表示されていない状態の画面がタッチパネル3に表示される。
【0081】
本変形例によれば、ユーザは、最小悪化燃費距離を示す情報を参照することにより、最小悪化燃費距離を認識し、自車両に燃費の悪い経路を走行させた場合、最小悪化燃費距離だけしか走行できない可能性があることを認識でき、この認識に基づいて、バッテリを充電するタイミングを検討することが可能である。また、本変形例によれば、ユーザは、悪化燃費範囲画像を参照することにより、燃費の悪い経路を走行した場合に、地図上で大体どの程度の範囲まで充電することなく到達可能であるか(換言すれば、どの程度の範囲までしか走行できないか)を、直感的にかつ感覚的に認識できる。また、本変形例によれば、最小良好燃費距離の算出に関連する処理が実行されないため、その分、処理負荷が小さい。
【0082】
以上、本発明の一実施形態をその変形例と共に説明したが、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0083】
例えば、上述した実施形態では、情報提供部15は、走行可能距離算出部14により算出された8つの良好燃費距離のうち、最小の良好燃費距離を情報として提供した。この点に関し、最小の良好燃費距離を示す情報と併せて、他の良好燃費距離を示す情報を提供(表示)する構成でもよい。この場合において、特に最大の良好燃費距離(以下、「最大良好燃費距離」という)を示す情報を表示することにより、以下の効果を奏する。すなわち、ユーザは、仮に車両に燃費の良い経路を走行させ続けた場合、最大で最大良好燃費距離だけ走行できる可能性があることを認識でき、バッテリを充電するタイミングを検討する上で有益な情報として利用できる。また、情報提供部15が、最小良好燃費距離を示す情報と併せて、複数の良好燃費距離について統計学的手法(例えば、平均)を用いて算出した距離を示す情報を提供する構成でもよい。また、情報提供部15が、最小良好燃費距離を示す情報に代えて、他の良好燃費距離を示す情報を提供する構成でもよい。この場合、最大良好燃費距離を示す情報を提供する構成とすることにより、上述した効果を奏する。
【0084】
また、情報提供部15が最小悪化燃費距離を示す情報と併せて、または、最小悪化燃費距離を示す情報に代えて、悪化燃費距離に関する他の情報を表示する構成でもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、仮目的地が設定される方向は、8方向であった。この点について、仮目的地が設定される方向は、例示した8方向に限定されるものではない。しかしながら、仮目的地が設定される方向を均等に分散するという観点から、仮目的地が設定される方向は、等間隔に4つ以上に分散された方向であることが望ましい。特に、進行方向、逆方向、右方向および左方向の4方向が含まれていることが望ましい。また、自車両は少なくともしばらくの間は進行方向に向かって走行する可能性が高い点、および、ルート画像24の表示にあたって進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路の探索結果を利用する点を踏まえると、仮目的地を設定する方向に進行方向を含めることが望ましい。
【0086】
また、上記実施形態では、仮目的地の設定、および、仮目的地の設定に基づく最小良好燃費距離を示す情報および最大良好燃費距離を示す情報の更新は、交差点を通過するタイミングで行われた。この点に関し、例えば、他のタイミングで上記処理が行われる構成でもよい。一例として、所定の周期で定期的に上記処理が行われる構成でもよい。ただし、交差点を通過するタイミングで進行方向が変わり得る点を考慮すると、交差点を通過するタイミングで上記処理を実行することは適切である。
【0087】
また、進行方向に位置する仮目的地に対応する良好燃費経路のルート画像24の表示を行わない構成でもよい。この場合に、ルート画像24を表示するかしないかをユーザが選択できる構成としてもよい。
【0088】
また、情報提供装置2が実行した処理の少なくとも一部を情報提供装置2以外の外部装置が実行する構成でもよい。一例として、仮目的地設定部12(当然、他の機能ブロックでもよい)が実行する処理の一部または全部を、情報提供装置2とネットワークを介して接続されたクラウドサーバが実行する構成でもよい。
【0089】
また、地図データ21を情報提供装置2以外の外部装置が記憶し、情報提供装置2が随時アクセスして必要な情報を得る構成でもよい。また、最小良好燃費距離を示す情報および最小悪化燃費距離を示す情報の提供が音声によって行われる構成でもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 情報提供システム
2 情報提供装置
10 自車状態検出部
11 バッテリ残量検出部
12 仮目的地設定部
13 仮経路探索部
14 走行可能距離算出部
15 情報提供部
16 到達位置算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6