(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】自動ドア用センサーの取付装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/74 20150101AFI20221031BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20221031BHJP
F16B 25/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
E05F15/74
F16B5/02 V
F16B25/00 Z
(21)【出願番号】P 2019013836
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390002668
【氏名又は名称】株式会社本田電子技研
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】野崎 博樹
(72)【発明者】
【氏名】石原 雅也
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-190225(JP,A)
【文献】特開2006-226101(JP,A)
【文献】実開平5-89922(JP,U)
【文献】特開平10-259810(JP,A)
【文献】実開昭57-61214(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
F16B 5/02
F16B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドア用のセンサーを保持するセンサーホルダーと、上記センサーホルダーと所定の被取付面との間に介装される角度調整用のスペーサと、ねじ軸の長さが異なる第1および第2の2種類のセルフタッピングねじとを備え、上記スペーサがねじ軸の短い第1セルフタッピングねじにて上記被取付面に取り付けられ、上記センサーホルダーがねじ軸の長い第2セルフタッピングねじにて上記スペーサに取り付けられる自動ドア用センサーの取付装置において、
上記スペーサに設けられる上記第2セルフタッピングねじ用の下穴のセンサーホルダー取付面側の一部分に、上記第1セルフタッピングねじを空回りとする座繰り部が形成されていることを特徴とする自動ドア用センサーの取付装置。
【請求項2】
上記座繰り部は、上記第1セルフタッピングねじのねじ軸の外径よりも大径で、かつ、そのねじ軸の軸長よりも大きな深さを有する凹部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動ドア用センサーの取付装置。
【請求項3】
上記被取付面が金属板よりなり、上記第1セルフタッピングねじには金属用のタッピンねじが用いられ、上記スペーサが樹脂製で、上記第2セルフタッピングねじには樹脂用のタップタイプが用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の自動ドア用センサーの取付装置。
【請求項4】
上記被取付面が無目で、上記センサーが赤外線反射型センサーであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動ドア用センサーの取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドア用センサーの取付装置に関し、さらに詳しく言えば、自動ドア用センサーがセンサーホルダーおよび角度調整用のスペーサを介して無目等の被取付面に取り付けられる自動ドア用センサーの取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動ドア用のセンサーの一つに赤外線反射型センサー(以下、単に「反射センサー」と言うことがある)がある。反射センサーは、発光素子(例えば、発光ダイオード)と受光素子(例えば、フォトダイオード)とを有し、発光素子から自動ドアの出入り口付近の床面(監視領域)に向けて赤外光を照射し、床面もしくは床面上の物体(主に人)からの反射光を受光素子にて受光し、その受光量に基づいてドア開信号もしくはドア閉信号を出力する。
【0003】
この種の反射センサーは、多くの場合、ドア上方の無目に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
図5を参照して、反射センサー1(作図の都合上、鎖線で示す)を無目に取り付けるにあたって、ABS等の樹脂製のセンサーホルダー10が用いられる。
【0004】
センサーホルダー10は、そのベース部11にねじ挿通孔12を有し、通常、セルフタッピングねじにより無目に取り付けられる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
無目はアルミニウム材等の金属材よりなるため、また、無目内にはドアコントローラ等の開閉制御器等が収納されているため、セルフタッピングねじには金属用でねじ軸の長さ(軸長)が短い例えば1種タッピンねじ(通称:Aタップ)が用いられる。
【0006】
取付方法は、まず、
図6(a)に示すように、無目3に下穴3aを開ける。そして、
図6(b)に示すように、センサーホルダー10のねじ挿通孔12にAタップS1を挿通して、AタップS1を下穴3aにねじ込む。
【0007】
ところで、無目3に対する反射センサー1の取付角度(発光素子2の照射方向)を変える場合には、
図7に示すようなくさび形状の角度調整用のスペーサ20が用いられる。取り付けにあたっては、
図7(a)に示すように、無目3に下穴3aを開けたのち、
図7(b)に示すように、AタップS1をスペーサ20のねじ挿通孔より下孔3aにねじ込んで無目3に固定する。
【0008】
そして、
図7(c)に示すように、センサーホルダー10をスペーサ20にねじ止めする。このねじ止めにもセルフタッピングねじが用いられるが、その種類として、スペーサ20はAES等の樹脂製であることから、樹脂用のタップタイプねじである例えばPタイプS2が用いられる。
【0009】
図8に示すように、スペーサ20には、タップタイプねじをねじ込むための下穴21が設けられており、センサーホルダー10のねじ挿通孔12よりその下穴21にPタイプS2をねじ込むことにより、センサーホルダー10が所定角度傾けられた状態でスペーサ20に取り付けられる。
【0010】
PタイプS2はAタップS1よりも軸長が長い。呼び長さは一例として、金属用のAタップS1が12mm,樹脂用のPタイプS2が16mmである。ともにセルフタッピングねじであるため、下穴があればねじ込み可能である。したがって、センサーホルダー10をスペーサ20にねじ止めする際、PタイプS2を用いるべきところ、間違ってAタップS1を用いてしまうことがあり得る。
【0011】
図9および
図10の両図を参照して、センサーホルダー10のねじ挿通孔12の長さ(ねじ挿通孔12の周りの肉厚)が5mmであるとして、下穴21へのねじ込み深さは、PタイプS2の場合には11mmとなるが、AタップS1の場合には先端が位置決めガイドとして尖っているため例えば有効ねじ軸の3.5mm長しか得られず、取り付け強度に問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2003-84073号公報
【文献】特開2000-304012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明の課題は、長さの異なる2種類のセルフタッピングねじを用いて、自動ドア用センサーをセンサーホルダーおよびスペーサを介して被取付面に取り付ける自動ドア用センサーの取付装置において、センサーホルダーをスペーサにねじ止めする際、適正な長さのセルフタッピングねじしか使えないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、自動ドア用のセンサーを保持するセンサーホルダーと、上記センサーホルダーと所定の被取付面との間に介装される角度調整用のスペーサと、ねじ軸の長さが異なる第1および第2の2種類のセルフタッピングねじとを備え、上記スペーサがねじ軸の短い第1セルフタッピングねじにて上記被取付面に取り付けられ、上記センサーホルダーがねじ軸の長い第2セルフタッピングねじにて上記スペーサに取り付けられる自動ドア用センサーの取付装置において、
上記スペーサに設けられる上記第2セルフタッピングねじ用の下穴のセンサーホルダー取付面側の一部分に、上記第1セルフタッピングねじを空回りとする座繰り部が形成されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、上記座繰り部は、上記第1セルフタッピングねじのねじ軸の外径よりも大径で、かつ、上記ねじ軸の軸長よりも大きな深さを有する凹部として形成される。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、上記被取付面が金属板よりなり、上記第1セルフタッピングねじには金属用のタッピンねじが用いられ、上記スペーサが樹脂製で、上記第2セルフタッピングねじには樹脂用のタップタイプが用いられる。
【0017】
本発明の取付装置は、上記被取付面が金属製の無目で、上記センサーが赤外線反射型センサーである場合に特に好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、センサーホルダーをスペーサにねじ止めする際、適正な長さのセルフタッピングねじしか使えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の自動ドア用センサーホルダーの取付装置の一実施形態を示す断面図。
【
図2】上記実施形態で用いる角度調整用のスペーサの一部を拡大して示す断面図。
【
図3】上記スペーサの下穴にタップタイプねじ(Pタイプ)をねじ込んだ状態を示す断面図。
【
図4】上記スペーサの下穴に1種タッピンねじ(Aタップ)をねじ込んだ状態を示す断面図。
【
図5】反射センサー用のセンサーホルダーを示す断面図。
【
図6】上記センサーホルダーを無目に取り付ける手順を示す説明図。
【
図7】上記センサーホルダーを角度調整用のスペーサを介して無目に取り付ける手順を示す説明図。
【
図8】スペーサに設けられる下穴の従来例を示す断面図。
【
図9】上記従来の下穴にタップタイプねじ(Pタイプ)をねじ込んだ状態を示す断面図。
【
図10】上記従来の下穴に1種タッピンねじ(Aタップ)をねじ込んだ状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、
図1ないし
図4により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、この実施形態においても、先の
図5で説明したセンサーホルダー10が用いられてよい。
【0021】
図1に示すように、本発明においても、センサーホルダー10を例えば無目3に取り付けるにあたって、センサーホルダー10の取付角度を変更する際に用いられる取付角度調整用のスペーサ200を備えている。
【0022】
図2を併せて参照して、スペーサ200はくさび状を呈しており、ねじ挿通孔22と、セルフタッピングねじのための下穴21とを備えている。ねじ挿通孔22は、スペーサ200の無目取付面201側(
図2において右側の面)に配置されている。
【0023】
スペーサ200の無目3への取り付けには、金属用でねじ軸の長さ(軸長)が短い例えば1種タッピンねじであるAタップS1が用いられる。スペーサ200は、AタップS1をねじ挿通孔22から無目3に開けられている下穴3aにねじ込むことにより、無目3に固定される。
【0024】
スペーサ200はAES等の樹脂製であるため、センサーホルダー10をスペーサ200にねじ止めするには、先にも説明したように、樹脂用のタップタイプねじである例えばPタイプS2が用いられる。
【0025】
下穴21にはPタイプS2がねじ込まれるが、本発明によると、下穴21のセンサーホルダー取付面202側(
図2において左側の面)の一部分には、AタップS1を空回りとする座繰り部211が形成されている。
【0026】
座繰り部211は、AタップS1のねじ軸の外径よりも大径で、かつ、そのねじ軸の軸長よりも大きな深さを有する大径の凹部として形成されている。この実施形態において、座繰り部211の深さは4mmである。
【0027】
これによれば、
図3に示すように、PタイプS2は座繰り部211を通して下穴21にねじ込むことができる。なお、PタイプS2を下穴21に入れやすくするため、座繰り部211の底部には、C0.5のC面取り212と、R0.25のR面213とが形成されている。
【0028】
PタイプS2のねじ軸の長さは16mm、センサーホルダー10のねじ挿通孔12の長さ(ねじ挿通孔12の周りの肉厚)が5mm、座繰り部211の深さが4mmであるから、PタイプS2の下穴21へのねじ込み深さは7mmであり、強度的には問題はない。
【0029】
これに対して、間違ってAタップS1を使用すると、
図4に示すように、下穴21まで届かず空回り状態となる。したがって、AタップS1の誤使用を確実に防止することができる。
【0030】
座繰り部211の深さは、AタップS1の先端の円錐状に尖っている位置決めガイド部を除く有効ねじ軸が下穴21に届かない深さであることが好ましいが、AタップS1の有効ねじ軸が下穴21に若干食い込むものの実質的に締め付けられないような深さであってもよく、このような態様も本発明に含まれる。
【0031】
なお、上記実施形態では金属用のセルフタッピングねじとしてAタップ、樹脂用のセルフタッピングねじとしてPタイプを用いているが、これに限定されるものではない。また、被取付面を無目としているが、無目以外の金属面であってもよい。
【0032】
いずれにしても、本発明によれば、樹脂製で角度調整用のスペーサを金属製の被取付面(例えば無目)に金属用の例えばAタップでねじ止めした後、そのスペーサにセンサーホルダーを樹脂用の例えばPタイプでねじ止めするところ、間違ってAタップを用いることを防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 自動ドア用センサー
3 無目
3a 下穴
10 センサーホルダー
12 ねじ挿通孔
20,200 スペーサー
21 下穴
211 座繰り部
212 C面取り
213 R面
S1 Aタップ
S2 Pタイプ