(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】酸化炉
(51)【国際特許分類】
D01F 9/32 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
D01F9/32
(21)【出願番号】P 2016574163
(86)(22)【出願日】2015-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2015001215
(87)【国際公開番号】W WO2015192962
(87)【国際公開日】2015-12-23
【審査請求日】2018-05-28
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】102014009244.5
(32)【優先日】2014-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520086885
【氏名又は名称】ウォンチュン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ラルス マイネッケ
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】柳本 幸雄
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-237723(JP,A)
【文献】特開2002-194627(JP,A)
【文献】特開昭59-112063(JP,A)
【文献】特開2008-231610(JP,A)
【文献】国際公開第02/44636(WO,A2)
【文献】特開2002-130656(JP,A)
【文献】特開2008-100142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F9/32
F27B9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を酸化処理するための酸化炉であって、前記酸化炉が、
a) 内部空間(14)の中及び外へ繊維(22)を引き込み及び引き出すための水平方向の貫通開口(18,20)を有する以外では気密であるハウジング(12)であって、該ハウジング(12)の各端部にそれぞれ端壁(16a,16b)を有し、該端壁(16a,16b)には上から下に向かって前記貫通開口(18,20)が設けられている、ハウジング(12)と、
b) 前記ハウジング(12)の前記内部空間(14)内に位置する処理空間(28)と、
c) 方向変換ローラ(34)であって、前記端壁(16a,16b)の上から下に向かって連続して配置され、前記繊維(22)を繊維カーペット(22a)として相並んだ状態で蛇行状に前記処理空間(28)を通るように案内し、前記繊維カーペット(22a)が、互いに対向する前記方向変換ローラ(34)の間にそれぞれ1つの平面を形成する、方向変換ローラ(34)と、
d) 雰囲気装置(40)であって、高温の作業雰囲気(38)を生成することができ、少なくとも1つの流出口(54)を備えた吹き込み装置(42)を有しており、前記流出口(54)を通して、前記繊維カーペット(22a)の2つの隣接する平面間で前記処理空間(28)内に高温の作業雰囲気を吹き込むことができる、雰囲気装置(40)と、
を有しており、
e) 前記作業雰囲気(38)が流れ誘導装置(50)を介して前記処理空間(28)内に達するようになっている、
ものにおいて、
f) 前記流れ誘導装置(50)が、流れ貫通部(62)を備えた交換可能な流れ誘導エレメント(60)を有しており、前記流れ誘導エレメント(60)を、前記流出口(54)の前で前記吹き込み装置(42)に解離可能、および/または、移動可能に支承することができる、
ことを特徴とする酸化炉。
【請求項2】
前記流出口(54)が実質的に、前記ハウジング(12)の第1の長手方向壁(12c)から、対向する第2の長手方向壁(12d)へ延びている、ことを特徴とする請求項1に記載の酸化炉。
【請求項3】
前記流れ誘導エレメント(60)が保持装置(64)内に支承可能である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化炉。
【請求項4】
前記保持装置(64)が前記流れ誘導エレメント(60)のためのガイドレール(68a,68b)を有しており、前記ガイドレールが前記流出口(54)の上縁部及び下縁部に沿って延びている、
ことを特徴とする請求項3に記載の酸化炉。
【請求項5】
アクセス手段が設けられており、前記アクセス手段によって、前記流れ誘導エレメント(60)が前記処理空間(28)の外部からアクセス可能である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の酸化炉。
【請求項6】
前記アクセス手段が前記ハウジング(12)の長手方向壁(12c,12d)に設けられた貫通開口(70)によって、又は前記ハウジング(12)の互いに対向する2つの長手方向壁(12c,12d)に設けられた互いに対向する2つの貫通開口(70)によって形成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の酸化炉。
【請求項7】
前記流れ誘導エレメント(60)が長いプレート(66)として形成されており、前記長いプレートによって前記吹き込み装置(40)の流出口(54)を完全に覆うことができる、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の酸化炉。
【請求項8】
前記流れ誘導エレメント(60)が
、2つ又は3つ以上の流れ誘導モジュール(74)の形態で設けられており、前記流れ誘導モジュール(74)のうちの2つ又は3つ以上が流出口(54)を覆っている、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の酸化炉。
【請求項9】
前記流れ誘導エレメント(60)が巻きベルト(82)によって形成されており、前記巻きベルト(82)の一つの部分(80)が流出口(54)を覆うように、前記巻きベルトが源ローラ(84)と受容ローラ(86)との間で流出口(54)に沿って張設されており、そして移動可能である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化炉。
【請求項10】
前記
源ローラ(84
)および前記受容ローラ(86)が前記ハウジング(12)の外部に配置されており、前記巻きベルト(82)が、前記ハウジング(12)の互いに対向する2つの長手方向壁(12c,12d)に設けられた互いに対向する2つの貫通開口(70)を通って案内されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の酸化炉。
【請求項11】
清浄化装置(88)が設けられており、前記処理空間(28)を去った後、前記巻きベルト(82)が前記清浄化装置を通って案内される、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の酸化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に炭素繊維を製造するための、繊維を酸化処理するための酸化炉であって、酸化炉が、
a) 特に繊維のための貫通開口以外では気密であるハウジングと、
b) ハウジングの内部空間内に位置する処理空間と、
c) 方向変換ローラが、繊維を繊維カーペットとして相並んだ状態で蛇行状に処理空間を通るように案内し、繊維カーペットが、互いに対向する方向変換ローラの間にそれぞれ1つの平面を形成する、方向変換ローラと、
d) 雰囲気装置によって高温の作業雰囲気を生成することができ、雰囲気装置が、少なくとも1つの流出口を備えた吹き込み装置を有しており、流出口を通して、繊維カーペットの2つの隣接する平面間で処理空間内に高温の作業雰囲気を吹き込むことができる、雰囲気装置と、
を有しており、
e) 作業雰囲気が流れ誘導装置を介して処理空間内に達するようになっている
形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
市場において知られているこのような種類の酸化炉において、吹き込み装置は例えば複数の吹き込みボックスを有しており、これらの吹き込みボックスから、作業雰囲気が処理空間内に流入する。そこではそれぞれの吹き込みボックスの流出壁によって流出口が形成されている。流出壁は複数の流れ貫通部を有している。これらの流れ貫通部は相応に流れ誘導装置を形成し、作業雰囲気の流れは流れ誘導装置の配列及び幾何学的形状によって影響を受ける。
【0003】
酸化炉の運転中、流れ貫通部には、特に繊維からの二酸化ケイ素及び繊維破片の形態で不純物が堆積する。このような理由から、作業雰囲気流を再現可能に維持するためには、少なくとも流れ開口を規則的な時間間隔で清浄化しなければならない。
【0004】
吹き込みボックスは炉内に固定的に組み付けられており、その流れ貫通部は大抵の場合、アクセス性があるとしても悪いものにすぎない。さらに、充分な清浄化を実施可能にするためには、繊維をしばしば少なくとも方向変換ローラ上で変位させるか、又は処理空間から部分的又は全体的に取り除かなければならない。
【0005】
全体的に見て、清浄化過程はこれにより多大な時間及び労力を必要とし、従ってコスト的に高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、このような点を考慮した酸化炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題は、冒頭で述べた形式の酸化炉において、
f) 流れ誘導装置が、流れ貫通部を備えた交換可能な流れ誘導エレメントを有しており、流れ誘導エレメントを、流出口の前で吹き込み装置に解離可能、および/または、移動可能に支承することができる、
ことによって解決される。
【0008】
本発明によれば、さもなければ固定的に組み付けられた吹き込み装置において、少なくとも、交換可能な流れ誘導エレメントによって流れ貫通部を提供することができ、これらの流れ誘導エレメントは、清浄化を目的として、適時に処理空間から取り除き、無負荷の流れ誘導エレメントと交換することができることが判った。次いで、不純物を有する取り除かれた流れ誘導エレメントは処理空間とは別の場所で清浄化することができる。これにより、とりわけ炉内部の作業が省かれる。
【0009】
流出口が実質的に、ハウジングの第1の長手方向壁から、対向する第2の長手方向壁へ延びていると好都合である。これにより、酸化炉の全幅を覆うことができ、そして酸化炉の長手方向側からアクセスすることができるので有利である。
流れ誘導エレメントが保持装置内に支承可能であると有利である。
【0010】
保持装置が流れ誘導エレメントのためのガイドレールを有しており、ガイドレールが流出口の上縁部及び下縁部に沿って延びていると好都合であることが実地において判っている。これにより、流れ誘導エレメントが酸化炉の長手方向側からしか取り扱われない場合にも、流れ誘導エレメントの確実なガイドが保証される。
【0011】
処理空間内の作業を回避するために、アクセス手段が設けられており、アクセス手段によって、流れ誘導エレメントが処理空間の外部からアクセス可能であることが好ましい。
アクセス手段がハウジングの長手方向壁に設けられた貫通開口によって、又はハウジングの互いに対向する2つの長手方向壁に設けられた互いに対向する2つの貫通開口によって形成されていると、特に有利である。これは構造的に、特に容易に実現することができる。
【0012】
流れ誘導エレメントが長いプレートとして形成されており、長いプレートによって吹き込み装置の流出口を完全に覆うことができると有利である。このような長いプレートは例えば好ましくは鋼薄板であってよい。この場合、流れ誘導エレメントを交換するために、例えばそれぞれの貫通開口は、酸化炉の一方の長手方向壁だけに設けられていれば充分である。
【0013】
この代わりに又はこれに加えて、2つ又は3つ以上の流れ誘導エレメントが流れ誘導モジュールの形態で設けられており、流れ誘導モジュールのうちの2つ又は3つ以上が流出口を覆っていてもよい。この場合、これらの流れ誘導モジュールは例えば、酸化炉の長手方向壁に設けられた対向する貫通開口と協働するので、流れ誘導モジュールのうちのそれぞれ少なくとも1つがそれぞれの貫通開口を通って案内される。
【0014】
同様にこの代わりに又はこれに加えて、流れ誘導エレメントが巻きベルトによって形成されており、巻きベルトの一部分が流出口を覆うように、巻きベルトが源ローラと受容ローラとの間で流出口に沿って張設されており、そして移動可能であってよい。このような巻きベルトは完結的又は連続的に流出口の傍らを案内されてよい。
【0015】
ローラがハウジングの外部に配置されており、巻きベルトが、ハウジングの互いに対向する2つの長手方向壁に設けられた互いに対向する2つの貫通開口を通って案内されていると、処理空間内へのアクセスを必要とせずに、ローラを取り扱うことができるので有利である。
【0016】
清浄化装置が設けられており、処理空間を去った後、巻きベルトが清浄化装置を通って案内されると有利である。このようになっていると、清浄化をまだ炉の周辺で行うことができ、そして清浄化済の巻きベルトを場合によっては直接に循環させて再び使用することができる。
【0017】
本発明の実施例を図面に基づき以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】炉長手方向で炭素繊維を製造するための酸化炉であって、高温作業雰囲気を生成することができ、これを処理空間内に吹き込むことができる雰囲気装置と、雰囲気流を均質化するための流れ誘導装置とを有する酸化炉を示す鉛直方向断面図である。
【
図2】雰囲気装置の吹き込み装置と、流れ誘導装置の所属の流れ誘導エレメントとを見て示す斜視詳細部分図である。
【
図3】第1実施例に基づく流れ誘導装置を有する吹き込み装置を見て示す酸化炉の断面の部分図である。
【
図4】第2実施例に基づく流れ誘導装置を有する、
図3に相応する部分図である。
【
図5】第3実施例に基づく流れ誘導装置を有する、
図3及び4に相応する部分図である。
【
図6】第4実施例に基づく流れ誘導装置を有する、
図3~5に類似する部分図である。
【
図7】
図6の流れ誘導装置を上方から見て示す、
図1の断面図の部分図である。
【
図8】さらに変更を加えた流れ誘導装置を有する、
図7に相応する部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、酸化炉の鉛直方向断面を示す
図1を参照する。酸化炉は、炭素繊維を製造するために使用され、全体的に符号10で示されている。
酸化炉10はハウジング12を有している。ハウジング12は、酸化炉10の内部空間14を形成する通走空間を、天井壁12aと床壁12bと2つの鉛直方向の長手方向壁とによって仕切っている。2つの長手方向壁のうち、
図1では、断面平面の背後に位置する一方の長手方向壁12dだけを見ることができる。
【0020】
ハウジング12は端部にそれぞれ1つの端壁16a,16bを有している。端壁16aには、上方から下方に向かって交互に水平方向の入口スリット18及び出口スリット20の形態を成す貫通開口が設けられていて、そして端壁16bには、上方から下方に向かって交互に水平方向の出口スリット20及び入口スリット18の形態を成す貫通開口が設けられている。
これらのスリットは、明確さのために、全てが符号を有しているわけではない。入口スリット18及び出口スリット20を通して繊維22が内部空間14内へ引き込まれ、そして再びこの内部空間から引き出される。
入口スリット18及び出口スリット20は概ね、炭素繊維22のためのハウジング12の貫通領域を形成する。これらの貫通領域、及びさらに下述する貫通開口以外では、酸化炉10のハウジング12は気密である。
【0021】
内部空間14は長手方向で見て3つの領域に分けられており、端壁16aのすぐ傍らに配置された第1の前チャンバ24と、対向する端壁16bのすぐ傍らに隣接する第2前チャンバ26と、これらの前チャンバ24,26の間に位置する処理空間28とを有している。
前チャンバ24及び26は、内部空間14内もしくは処理空間28内への繊維22のための進入・進出ロックを同時に形成する。
【0022】
被処理繊維22は一種の繊維カーペット22aとして平行に延びて酸化炉10の内部空間14へ供給される。このために、繊維22は、炉ハウジング12の外部の端壁16aの傍らに位置する第1変更領域30から、端壁16aの最も上側の入口スリット18を通って第1の前チャンバ24内へ進入する。繊維22は次いで処理空間28を通り、そして第2の前チャンバ26を通って、炉ハウジング12の外部の端壁16bの傍らに位置する第2変更領域32へ供給され、そしてそこから再び戻される。
【0023】
全体的に見ると、繊維22は、上方から下方へ向かって連続する変更ローラ34を介して処理空間28を蛇行状に通走する。これらの方向変換ローラのうち2つだけが符号を有している。方向変換ローラ34の間では、相並んで走行する多数の繊維22によって形成された繊維カーペット22aがそれぞれ1つの平面を形成する。繊維は下方から上方へ向かって延びてもよく、また
図1に示されているものよりも多い又は少ない平面が形成されていてもよい。
【0024】
処理空間28を全体的に通走した後、繊維22はこの実施例では、端壁16aの最も下側の出口スリット20を通って酸化炉10を去る。端壁16aの最も上側の入口スリット18に達する前、そして端壁16aの最も下側の出口スリット20を通って酸化炉を去った後、繊維22はさらなるガイドローラ36を介して炉ハウジング12の外部で案内される。
【0025】
処理空間28は、処理条件下では高温作業雰囲気38によって貫流される。高温作業雰囲気38は雰囲気装置40によって形成される。大まかに表現すれば、この雰囲気装置40によって、高温作業雰囲気38を生成し、処理空間28内へ吹き込むことができる。高温作業雰囲気38は処理条件下では処理空間28を貫流する。
【0026】
この実施例では、それぞれ1つの矢印によって示されるそれぞれ1つの主要流れ方向を有する2つの反対向きの高温空気流38a,38bがある。これにより、処理空間28は流れ技術的に2つの処理空間部分28a,28bに分けられている。処理空間28の中央領域内には吹き込み装置42が配置されており、そして処理空間28の外側に位置する両端部領域内にはそれぞれ1つの吸い取り装置44が配置されている。これらの吸い取り装置は前チャンバ24,26に隣接している。
【0027】
吸い取り装置44から出て、空気は
図1において図平面の背後に位置する空気誘導空間46内へ搬送される。空気誘導空間内で空気は、ここではさほど重要ではない形式で調製されコンディショニングされる。具体的には空気の温度は、特には示されていない熱ユニットによって調節される。
【0028】
空気誘導空間46の領域内には、さらに2つの流出部48が設けられている。これらの流出部を介して、酸化処理時に発生する、又は新鮮空気として特には示されていない給気装置を通って処理空間28内に達するガス量もしくは空気量を導出し、これにより酸化炉10内の空気バランス(Lufthaushalt)を維持することができる。毒性成分を含有することもあり得る導出されたガスは熱的後燃焼装置に供給される。この際に生じ得る回収熱は少なくとも、酸化炉10に供給される新鮮空気の予熱のためために使用することができる。
【0029】
空気誘導空間46から、空気はそれぞれ吹き込み装置42に達する。吹き込み装置42は、今や循環させられてコンディショニングされた空気を、処理空間部分28内へ放出する。繊維22が処理空間28を蛇行状に通走している間、繊維22は今や高温の酸素含有空気流によって取り囲まれて酸化される。
【0030】
作業雰囲気38が処理空間28を充分に均質に貫流するように、作業雰囲気は流れ誘導装置50を介して処理空間部分28内に達する。流れ誘導装置50についてはさらに下で詳細に触れる。流れ誘導装置50の作用により、作業雰囲気38の流れはそれぞれ隣接する繊維カーペット22aの間で、炉断面全体にわたって充分に均一であるので、種々の平面において、具体的には処理空間28全体にわたる流れ速度及び温度分布に顕著な差異は存在しない。
【0031】
この実施例の場合、作業雰囲気38は方向変換領域30及び32に向かって互いに反対方向に流れるように、処理空間部分28a,28b内へ放出される。これらの処理空間部分内では、空気流38a,38bは互いに反対方向にそれぞれの吸い取り装置44へ流れる。このことは、
図1において対応矢印によって示されている。全体的に見て、このように2つの循環空気循環路は閉じられており、酸化炉10は上記の「センター-トゥ-エンド(center-to-end)」原理に従って流れ技術的に運転される。しかしながら、他のあらゆる周知の流れ原理を実現することもできる。
【0032】
吹き込み装置40は複数の吹き込みボックス52を有している。これらの吹き込みボックス52は、吹き込み装置40のそれぞれ1つの流れ技術的に開いた流出口54を形成している。流出口は炉長手方向に対してそれぞれ横方向に延びている。これらの流出口54は流出口に対向する吸い取り装置44の方向に向いている。吸い取り装置44はそれぞれ複数の吸い取りボックス56を有している。これらの吸い取りボックス56は、吸い取り装置54の流れ技術的に開いた流入口58を規定している。流入口58はそれぞれ対向する吹き込み装置42の方向に向いている。
【0033】
「流れ技術的に開いた」とは、それぞれの口54又は58を通ってガス流が吹き込み装置40から、もしくは吸い取り装置44内へ流れることができることを意味する。このために、口54,58は例えば、吹き込みボックス52もしくは吸い取りボックス56においてそれぞれの壁を取り去ることによって形成されていてよい。場合によっては、吹き込みボックス52もしくは吸い取りボックス56のその場所の壁が流れ貫通部を備えていてもよい。
【0034】
図2から判るように、流れ誘導装置50は、流れ貫通部62を備えた流れ誘導エレメント60を有している。それぞれ少なくとも1つの流れ誘導エレメント60が吹き込み装置42の流出口54の前に、すなわちこの実施例では、所属の吹き込みボックス52の流出口54の前に配置されている。1つの流れ誘導エレメント60だけ、そして流れ誘導エレメント60の1つの流れ貫通部62だけが符号を有している。
【0035】
流れ誘導装置50の少なくとも流れ開口62は、作業雰囲気38の流れを再現可能に維持するために、いまや規則的な時間間隔で清浄化しなければならない。このために、酸化炉10の運転中に流れ貫通部62に堆積した、冒頭で述べた不純物が取り除かれる。
【0036】
これを目的として、流れ誘導エレメント60はそれぞれ交換可能に形成されており、そしてそれぞれの流出口54の前で吹き込み装置42に解離可能、および/または、移動可能に支承されている。流れ誘導装置50はこのために保持装置64を有している。この保持装置64によって、流れエレメント60は解離可能、および/または、移動可能に支承することができる。
【0037】
流れ誘導エレメント60の流れ貫通部62は、作業雰囲気38によって、これが処理空間28内へ流入する前に貫流される。流れ貫通部62は作業雰囲気38の放出方向、放出速度、ひいては流れ圧力に影響を与える。流れ誘導エレメント60の流れ貫通部62は、作業雰囲気38の流れ全体が炉断面にわたって均質化されるように寸法設定され配置されている。流れ貫通部62は同一のものであってよいが、しかしこれらの幾何学的形状、寸法、及び配列が異なっていてもよい。
【0038】
図3には、流れ誘導装置50の第1実施例が示されている。ここでは、流れ誘導エレメント60は、流れ貫通部62を備えた長いプレート66として形成されている。この長いプレート66は、吹き込み装置40の流出口54を完全に覆うことができるように寸法設定されている。保持装置64は、流れ誘導エレメント60のためのガイドレール68a,68b対によって形成されている。それぞれ1つのガイドレール68aが上縁部に、そして1つのガイドレール68bが下縁部に、吹き込み装置42の流出口54に沿って延びており、それぞれ1つのレール対68a,68bが1つの流れ誘導エレメント60を受容することができる。
図3~6では、最も上側の吹き込みボックス52のレール対68a,68bだけが符号を有している。
【0039】
ガイドレール68a,68bは炉ハウジング12の一方の長手方向壁、この例では第1長手方向壁12cを貫通して延びている。この第1長手方向壁12c内にはそれぞれ各吹き込みボックス52の高さに、貫通スリット70の形態を成す貫通開口が設けられているので、流れ誘導エレメント60は長手方向壁12cを通ってガイドレール68a,68b内へ、そして所属の流出口54の前へ酸化炉10の内部空間14内に押し進め、そして再びここから取り出すことができる。
【0040】
大まかに表現すれば、貫通スリット70はアクセス手段の一例である。このアクセス手段によって、流れ誘導エレメント60が処理空間の外部からアクセス可能である。特には図示されていない変形例の場合、一方の長手方向壁12c又は12dにはドアが設けられていてもよい。このドアは酸化炉10の所要の高さにわたって延びているので、ドアが開かれると全ての流れ誘導エレメント60にアクセスすることができる。
【0041】
図3では、最も上側の流れ誘導エレメント60は、最も上側の吹き込みボックス52の流出口54の前の作業位置で示されている。中央の流れ誘導エレメント60は中間位置を占めている。この中間位置では中央の流れ誘導エレメント60はガイドレール68a,68b内へほぼ半分まで押し込まれており、流出口54をほぼ半分覆っている。このような中間位置は流れ誘導エレメント60の使用時にも取り外し時にも通る。
図3の下側の流れ誘導エレメント60は酸化炉10の内部空間14から取り除かれており、この場所で、汚染されていない流れ誘導エレメント60と交換することができる。次いで、この汚染されていない流れ誘導エレメント60は、
図3の下側の吹き込みボックス52の流出口54の前の作業位置に押し進めることができる。これにより、汚染された流れ誘導エレメント60が、不純物のない流れ誘導エレメント60と交換される。
【0042】
流れ誘導エレメント60を保守要員によって酸化炉10の内部空間14から手で取り外し、そして再び酸化炉10の内部空間14内へ押し込むことができるように、流れ誘導エレメント60は一方の端部にグリップ72を支持している。そこには、特には符号を有していないシール手段が設けられていてもよい。このシール手段によって、流れ誘導エレメント60が押し込まれているときには貫通スリット70はシールされているので、炉雰囲気が外方に向かって侵出することはない。
【0043】
図4は、流れ誘導装置50の第2実施例を示している。ここでは、流れ誘導エレメント60は、流れ貫通部62を備えたプレート状の流れ誘導モジュール74の形態で設けられており、流れ誘導モジュール74のうちのそれぞれ2つが相並んで流出口54を覆っており、流れ誘導モジュール74のグリップ72には、やはり特には符号を有していないシール手段が設けられている。
図面には、また以下では、流れ誘導モジュールは流れ誘導モジュール74a及び74bと記される。貫通スリット70は酸化炉10の第1長手方向壁12cだけではなく、対向する第2長手方向壁12dにも、同じ高さで設けられている。
こうして、第1流れ誘導モジュール74aはハウジング12の第1長手方向壁12cに設けられた貫通スリット70を通して、そして第2流れ誘導モジュール74bはハウジング12の第2長手方向壁12dに設けられた貫通スリット70を通して押し進めることができるので、流れ誘導モジュール74a及び74bから成る対は流れ誘導エレメント60として、吹き込み装置42のそれぞれの流出口54を覆う。
ガイドレール68a,68bは、長手方向壁12cにおけるのと同様に、長手方向壁12dに設けられた貫通スリット70をも通って延びている。
【0044】
図4では、最も上側の吹き込みボックス52における両流れ誘導モジュール74a,74bは、流出口54の前の作業位置で示されている。作業位置では、流れ誘導モジュール74a,74bは一緒に流れ誘導エレメント60を形成している。流れ誘導モジュール74a,74bは中央の吹き込みボックスにおいてそれぞれ中間位置を占めている。
この中間位置では流れ誘導モジュール74a,74bはそれぞれ貫通スリット70を通って突出している。
図4の下側の流れ誘導モジュール74a,74bは酸化炉10の内部空間14から取り除かれており、この場所で、汚染されていない流れ誘導モジュール74aもしくは74bとそれぞれ交換することができる。
次いで、この汚染されていない流れ誘導モジュール74aもしくは74bは、
図4の下側の吹き込みボックス52の流出口54の前の作業位置に押し進めることができる。
【0045】
図5は、流れ誘導装置50の第3実施例を示している。ここでは流れ誘導エレメント60が流れ誘導モジュール74の形態を成して形成されている。流れ誘導モジュール74のうち3つ以上が1つの流出口54を覆う。
この実施例の場合、このためにそれぞれ4つのプレート状の流れ誘導モジュール74が必要である。いくつかの流れ誘導モジュール74だけが符号を有している。これらのより多くの流れ誘導モジュール74は運転中、インターバルを置いて交換される。このために流れ誘導モジュール74は長手方向壁12dから長手方向壁12cへ向かってガイドレール68a,68bに沿って間欠的に走行して押し進められる。
さらに、
図5の中央吹き込みボックス52において示された第1変形例の場合、長手方向壁12dの側で、1つの流れ誘導モジュール74を貫通スリット70に加え、ガイドレール68a,68b内に押し込むことができる。これにより、長手方向壁12cの対向する端部に位置する流れ誘導モジュール74は、その場所にある貫通スリット70を通ってガイドレール68a,68bから押し出され、保守要員によって受け取ることができる。
【0046】
図5の下側の吹き込みボックス52において示された第2の変形例の場合、全ての流れ誘導モジュール74は同時に、工具76によってガイドレール68a,68bから引き出され、一連のものとして、汚染されていない流れ誘導モジュール74と交換される。
【0047】
スリット70はこのような実施例では、運動可能なフラップ78の形態を成すシール手段によってシールされている。これらのフラップは、記載された他の全ての実施例においても設けられていてよい。フラップ78の代わりに、例えばブラシシール、リーフシール、又は同様のものの形態を成す他のシール手段が設けられていてもよい。このようなシール部材は
図3及び4に示す実施例にも設けられていてよい。交換可能な栓を使用することもできる。
【0048】
図6及び
図7は流れ誘導装置50の第4実施例を示している。ここでは吹き込みボックス52の流出口54はそれぞれ、流れ貫通部62を備えた巻きベルト82の一部分によって覆われている。巻きベルトはこうして流れ誘導エレメント60を形成する。
巻きベルト82は、寸法が吹き込み装置42の流出口54に対して相補的であり、炉ハウジング12の長手方向壁12c,12dの互いに対向するそれぞれ2つの貫通スリット70を通って案内されている。従って、長手方向壁12dの貫通スリット70はそれぞれ、所属の巻きベルト82のための入口開口を形成し、そして対向する長手方向壁12cの貫通スリット70はそれぞれ、所属の巻きベルト82のための出口開口を形成する。
【0049】
炉ハウジング12の外部には、回転可能に支承された源ローラ84が位置している。この源ローラ84には巻きベルト82が予め保持されており、この源ローラ84から巻きベルト82は処理空間28を通って、炉ハウジング12の反対側へ、受容ローラ86に案内されている。受容ローラ86もやはりハウジング12の外部に支承されている。それぞれの源ローラ84及び受容ローラ86の鉛直方向回転軸線は
図6では符号84aもしくは86aで示されている。巻きベルト82は従って2つのローラ84,86の間で流出口54に沿って張設されており、そして移動可能である。
【0050】
1つの巻きベルト82の流れ貫通部62が、流れ誘導エレメント60の交換が適するほど汚染されている場合、巻きベルト82は、源ローラ84によって繰り出されるので、この部分80は処理空間28から出るように移動し、そして受容ローラ86に巻き取られる。
次いで、巻きベルト82の後続のきれいな部分80が、交換後の流れ誘導エレメント60を形成する。この流れ誘導エレメントは、前の巻きベルト部分80の形態を成して前の流れ誘導エレメント60に置き換わる。
【0051】
図6では、例えば下側の巻きベルト82において、その上方で延びる最も上側の巻きベルト82におけるよりも多くの巻きベルト82がすでに源ローラ82から繰り出されている。
図7はこの下側の巻きベルト82を示している。
このような変形例の場合、巻きベルト82は間欠的に動かされる。あるいは、この際に行われる流れ貫通部62の移動によって作業雰囲気38の流れ画像に望まれない形で影響を及ぼすことがない限り、巻きベルト82は連続的に動かされてもよい。
【0052】
源ローラ84及び受容ローラ86は巻きベルト82の移動のためにそれぞれモータで駆動するか、又は保守要員により手動で駆動することができる。
巻きベルト82が源ローラ84によって完全に繰り出されると、今や空の源ローラ84が、きれいな巻きベルト82を備えた源ローラ84と交換され、今や満杯の受容ローラ86が空の受容ローラ86と交換される。
【0053】
図8に示された変形例の場合、巻きベルト82が炉長手方向壁12dを通って処理空間28を去った後、清浄化装置88を通って案内される。清浄化装置88は貫通スリット12dと受容ローラ86との間に配置されている。
巻きベルト82は方向変換ローラ90を介して清浄化装置88へ方向変換される。巻きベルト82は方向変換ローラ90なしに直接に清浄化装置88内へ入ってもよい。
清浄化装置88内では、巻きベルト82は連続的、間欠的に走行して不純物及び堆積物を除去されるので、巻きベルト82が元の源ローラ84から完全に繰り出されると、受容ローラ86は源ローラ84になる。
【0054】
流れ誘導エレメント60は実地では、炉雰囲気に耐えることができる鋼薄板から製造されている。巻きベルト82は例えば相応に可撓性のばね鋼から製造されていてよい。
【0055】
吸い取り装置44の流入口58にも堆積物が生じる。これらの堆積物は時間の経過に伴って流路をますます縮小し、定期的なインターバルを置いて除去されなければならない。
従って、吹き込み装置42に関して上述したことは吸い取り装置44にも意味の上で相応に当てはまる。ここでも、時間の経過とともに不純物が沈殿し、これらの不純物は規則的な時間間隔で除去しなければならない。
各吸い取り装置44には吸い取り誘導装置92が対応配置されている。これらの吸い取り誘導装置92は
図1でだけ符号を有しており、これらの吸い取り誘導装置92を介して作業雰囲気はそれぞれの吸い取り装置44内へ流入する。
吸い取り装置44の吸い取り誘導装置92の流入口58の前には、今や同様に対応する交換可能な流れエレメントが設けられていてよい。流れエレメントは適時に交換し、清浄化することができる。
【0056】
1つの流れ誘導装置50において流れ誘導エレメント60の複数の実施例を実施することもできる。この場合、繊維カーペット22aのそれぞれ2つの平面間に異なる流れ誘導エレメント60が使用される。