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特許7166747磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221031BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 382
G01N24/08 510Y
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017135731
(22)【出願日】2017-07-11
(65)【公開番号】P2018175829
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-06-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】15/487,099
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 美津恵
(72)【発明者】
【氏名】チャン・オウヤン
【合議体】
【審判長】長井 真一
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046209(JP,A)
【文献】特開2016-059796(JP,A)
【文献】特開2013-215570(JP,A)
【文献】特表2008-538972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0047874(US,A1)
【文献】米国特許第10481232(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルサンプリングによりデータ収集を行う第1のパルスシーケンスを実行し、
MT(Magnetization Transfer)パルスを印加したのち、カーテシアンサンプリングによりデータ収集を行う、第2のパルスシーケンスを、前記MTパルスの周波数を変えながら複数回実行するシーケンス制御部と、
前記第1のパルスシーケンス及び前記第2のパルスシーケンスにより得られたデータに基づいて、CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)効果の大きさを表すスペクトルを算出する画像生成部とを備える、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記シーケンス制御部は、前記第2のパルスシーケンスにおいて、脂肪飽和パルスを更に印加する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲を算出する制御部を更に備え、
前記シーケンス制御部は、前記制御部が算出したk空間の範囲で、前記カーテシアンサンプリングによりデータ収集を行う、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記シーケンス制御部は、前記第1のパルスシーケンスを、複数回にわけて実行する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記シーケンス制御部は、前記第2のパルスシーケンスにおける前記カーテシアンサンプリングを、複数回にわけて実行する、請求項1、2又は4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
撮像対象に関する情報に基づいて、前記カーテシアンサンプリングが複数回にわけて実行されるk空間のセグメント分割の仕方を算出する制御部を更に備え、
前記シーケンス制御部は、前記制御部が算出した前記セグメント分割に基づいて、前記第2のパルスシーケンスにおける前記カーテシアンサンプリングを、複数回にわけて実行する、請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
ユーザからROI(Region Of Interest)の選択の入力を受け付ける受付部を更に備え、
前記画像生成部は、前記受付部が受け付けた入力に基づいて、前記スペクトルを算出する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記シーケンス制御部は、黄金角サンプリングパターンを用いて、前記第1のパルスシーケンスにおける前記ラジアルサンプリングを行う、請求項1~7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
磁気共鳴イメージング装置において実行される磁気共鳴イメージング方法であって、
シーケンス制御回路により、ラジアルサンプリングによりデータ収集を行う第1のパルスシーケンスを実行し、
前記シーケンス制御回路により、MT(Magnetization Transfer)パルスを印加したのち、カーテシアンサンプリングによりデータ収集を行う、第2のパルスシーケンスを、前記MTパルスの周波数を変えながら複数回実行し、
画像生成部により、前記第1のパルスシーケンス及び前記第2のパルスシーケンスにより得られたデータに基づいて、CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)効果の大きさを表すスペクトルを算出する
ことを含む、磁気共鳴イメージング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングにおいて、CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)効果を用いた手法が知られている。この手法では、自由水プロトン以外のプロトンの共鳴周波数に対応するMT(Magnetization Transfer)パルスが飽和パルスとして印加される。続いて、自由水プロトンの共鳴周波数に対応するRF(Radio Frequency)パルスが印加される。続いて、所定の時間経過時に自由水プロトンの信号が収集される。これにより、アミド基(-NH)、ヒドロキシル基(-OH)、アミノ基(-NH)などのいわゆる交換可能プロトン(exchaneable proton)から自由水プロトンへの磁化移動に関するデータを収集することができる。
【0003】
しかしながら、CESTスキャンのパルスシーケンスは、一般に撮像に時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-046209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、短い撮像時間でCESTイメージングを行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部を備える。シーケンス制御部は、ラジアルサンプリングによりデータ収集を行う第1のパルスシーケンスを実行し、MT(Magnetization Transfer)パルスを印加したのち、カーテシアンサンプリングによりデータ収集を行う、第2のパルスシーケンスを、前記MTパルスの周波数を変えながら複数回実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
図3図3は、第1の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
図5図5は、Zスペクトルの一例である。
図6図6は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置のGUI(Graphical User Interface)の一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
図9図9は、第4の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
図10図10は、第5の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
図11図11は、実施形態に係る画像処理装置について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここで、互いに同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源(図示しない)と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120(シーケンス制御部)と、コンピューター130(「画像処理装置」とも称される)とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及びコンピューター130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0010】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源は、静磁場磁石101に電流を供給する。別の例として、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源を備えなくてもよい。また、静磁場電源は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
【0011】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0012】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、コンピューター130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0013】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
【0014】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号(以下、必要に応じて、「MR信号」と呼ぶ)を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0015】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
【0016】
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
【0017】
シーケンス制御回路120は、コンピューター130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。なお、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスの詳細については、後述する。
【0018】
さらに、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データをコンピューター130へ転送する。
【0019】
コンピューター130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。コンピューター130は、記憶回路132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、及び画像生成機能136を備える。
【0020】
第1の実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる各処理機能は、コンピューターによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132へ記憶されている。処理回路150はプログラムを記憶回路132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路150が各プログラムを実行する場合であってもよい。別の例として、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、図1において、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136は、それぞれ受付部、制御部、画像生成部の一例である。また、シーケンス制御回路120は、シーケンス制御部の一例である。
【0021】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0022】
また、記憶回路132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
【0023】
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、磁気共鳴データを受信すると、インタフェース機能131を有する処理回路150は、受信した磁気共鳴データを記憶回路132に格納する。
【0024】
記憶回路132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、記憶回路132は、k空間データを記憶する。
【0025】
記憶回路132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、記憶回路132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0026】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0027】
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
処理回路150は、画像生成機能136により、k空間データを記憶回路132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
【0028】
次に、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の背景について簡単に説明する。
【0029】
磁気共鳴イメージングにおいて、CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)効果を用いた手法が知られている。この手法では、自由水プロトン以外のプロトンの共鳴周波数に対応するMT(Magnetization Transfer)パルスが飽和パルスとして印加される。続いて、自由水プロトンの共鳴周波数に対応するRF(Radio Frequency)パルスが印加される。続いて、所定の時間経過時に自由水プロトンの信号が収集される。これにより、アミド基(-NH)、ヒドロキシル基(-OH)、アミノ基(-NH)などのいわゆる交換可能プロトン(exchaneable proton)から自由水プロトンへの磁化移動に関するデータを収集することができる。
【0030】
しかしながら、CESTスキャンのパルスシーケンスは、MTパルスの周波数を少しずつ変えながら、パルスシーケンスを実行するので、一般に撮影に時間を要する。例えば、撮像シーケンスとして、超短T成分を描出できるUTE(Ultrashort Echo Time)シーケンスを用いて、MTパルスの周波数を少しずつ変えながらパルスシーケンスを実行する場合、例えば、-10ppmから10ppmまでの周波数で、0.5ppmずつ周波数を変えながら撮影を行うとすると、撮像時間は、全部で30分程度要することになる。
【0031】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、かかる背景に鑑みたものである。具体的には、シーケンス制御回路120は、ラジアルサンプリングによりデータ収集を行う第1のパルスシーケンスを実行する。また、シーケンス制御回路120は、MTパルスを印加したのち、カーテシアンサンプリングによりデータ収集を行う、第2のパルスシーケンスを、MTパルスの周波数を変えながら複数回実行する。
【0032】
かかる処理の詳細について、図2図6を用いて説明する。図2及び図3は、第1の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
【0033】
図2は、データ収集が行われるk空間を模式的に示したものである。図2においては、説明の簡略化のため、2次元k空間を示しており、例えば左右方向が、kを、上下方向が、kを表す。図2の中心部分が、k空間の中心部分を表す。また、図2において、外向きの矢印一つ一つが、ラジアル収集2(ラジアルサンプリングによるデータ収集)を表す。また、図2において、カーテシアン収集3は、k空間の中心部分で行われるカーテシアンサンプリングによるデータ収集を示す。
【0034】
図3は、第1の実施形態に係るパルスシーケンスの詳細を示したタイミングチャートである。横軸は、時刻を表す。また、図4は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
【0035】
図4において、はじめに、シーケンス制御回路120は、ラジアルサンプリングによりデータ収集を行う、すなわちラジアル収集2を行う第1のパルスシーケンスを実行する(ステップS100)。シーケンス制御回路120は、例えば図2に示されているように、k空間の中心付近から、k空間の外側に向かって、ラジアル収集2を、収集方向を少しずつ変えながら繰り返し行う。
【0036】
なお、図2においては、ラジアル収集2とカーテシアン収集3の違いを簡単に説明するために、2次元k空間の場合で説明したが、実際には、ラジアル収集2及びカーテシアン収集3は、通常3次元k空間で行われる。かかる場合、データ収集は、k方向、k方向、k方向の3方向で行われる。また、カーテシアン収集3は、3次元k空間の中心部分で、カーテシアンサンプリングで行われる。また、ラジアル収集2は、3次元k空間の中心付近から外側に向かって、繰り返し行われる。
【0037】
また、シーケンス制御回路120は、ラジアル収集2を実行するに当たって、k空間中心からサンプリングを開始する。シーケンス制御回路120がk空間中心からサンプリングを開始してラジアル収集2を行うことで、TE(Echo Time)を短くすることが可能になる。これにより、シーケンス制御回路120は、k空間全体のデータ収集を短時間で行うことができる。このようにして、シーケンス制御回路120は、ラジアルサンプリングを用いた第1のパルスシーケンスを実行する。シーケンス制御回路120は、例えば、第1のパルスシーケンスとして、UTEシーケンスを用いる。ラジアル収集2が実行されるタイミングの一例が、図3に示されている。シーケンス制御回路120は、例えば、第2のパルスシーケンスの実行に先立って、第1のパルスシーケンスを実行しラジアル収集2を実行する。
【0038】
なお、実施形態に係る第1のパルスシーケンスは、他のパルスシーケンスと比較して、例えば以下の利点を有する。EPI(Echo Planar Imaging)やGRASE(Gradient and spin echo)がB不均一性に対して脆弱であるのに対して、実施形態に係るパルスシーケンスは、B不均一性に対して画質が安定する。また、通常のFSE(Fast Spin Echo)、FASE(Fast advanced Spin Echo)、SSFSE(Single Shot Fast Spin Echo)、EPIなどのシーケンスでは、骨、軟骨、靭帯等、超短T成分の描出が難しい。実施形態に係るパルスシーケンスにおいては、これら超短T成分も十分描出することができる。また、実施形態に係るパルスシーケンスにおいては、例えばFSE等と比較して、SAR(Specific absorption rate)が小さく有利である。また、実施形態に係るパルスシーケンスは、ラジアルサンプリングに静かなシーケンスを用いていることから、音響ノイズが少なく静かである。
【0039】
続いて、シーケンス制御回路120は、MTパルスを印加したのち、カーテシアンサンプリングによりデータ収集を行う第2のパルスシーケンスを、印加するMTパルスの周波数(CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)周波数)を変えながら複数回実行する(ステップS110)。
【0040】
具体的には、シーケンス制御回路120は、図3に示されているように、例えば、第1のパルスシーケンスにおいてラジアル収集2を行ったあと、第1の周波数のMTパルス4aを印加する。
【0041】
ここで、MTパルスとは、自由水プロトンの共鳴周波数に対応する周波数以外の周波数のRFパルスである。従って、MTパルスの印加により、自由水プロトン以外のプロトンが飽和する。ここで、自由水プロトン以外のプロトンと、自由水プロトンとの間には化学的交換が存在するので、時間が経つにつれ、自由水プロトン以外のプロトンの磁化が、自由水プロトンへと移動する。この時自由水プロトンの共鳴周波数に対応する周波数のRFパルスを印加してイメージングを行うと、MTパルスによって励起された自由水プロトン以外のプロトンを間接的にイメージングすることができる。これらの効果を、MT効果(CEST効果)と呼ぶ。
【0042】
MT効果(CEST効果)を顕著に示すプロトンとして、例えばヒドロキシル基(-OH)プロトン、アミノ基(-NH)プロトン、アミド基(-NH)プロトン等が知られている。従って、シーケンス制御回路120は、これらの官能基に対応するプロトンの共鳴周波数に対応する周波数を含んでMTパルスを印加することで、これらのプロトンに関するCEST効果を描出することができる。具体的には、ヒドロキシル基プロトンの共鳴周波数は自由水プロトンの共鳴周波数を基準として+1ppm、アミノ基プロトンの共鳴周波数は自由水プロトンの共鳴周波数を基準として+2ppm、アミド基プロトンの共鳴周波数は自由水プロトンの共鳴周波数を基準として+3.5ppm、である。従って、シーケンス制御回路120は、例えば、自由水プロトンの共鳴周波数を基準として、-5.0ppm~5.0ppmの範囲の周波数で、例えば周波数を1回につき0.5ppmだけ変化させながら、複数回MTパルスを実行する。図3においては、シーケンス制御回路120は、例えば、第1のパルスシーケンスにおいてラジアル収集2を行ったあと、第2のパルスシーケンスにおいて、-5.0ppmの周波数のMTパルス4aを印加する。
【0043】
なお、MT効果(CEST効果)は、それ自体は比較的小さな効果であるため、MT効果を高めるため、一つの周波数あたり、MTパルスをしばしば複数回連続して印加させる。すなわち、例えばシーケンス制御回路120は、-5.0ppmの周波数のMTパルス4aを、カーテシアン収集3を行う前に、複数回印加する。
【0044】
続いて、シーケンス制御回路120は、図2に示されているようなk空間の中心付近で、カーテシアン収集3を行う。シーケンス制御回路120は、例えばSPI(Single Point Imaging)を行う様々なパルスシーケンスを用いて、k空間の中心付近で、カーテシアン収集3を行う。カーテシアン収集3に用いられるシーケンスとしては、例えば、PETRA(Pointwise Encoding Time reduction with Radial Acquisition)におけるカーテシアン収集に用いられるのと同様のシーケンスを使用してもよい。
【0045】
シーケンス制御回路120がカーテシアン収集3を行う理由は以下の通りである。シーケンス制御回路120は、第1のパルスシーケンスにおけるラジアル収集2により、k空間の中心付近の収集を行っているが、それだけではk空間の中心付近においてデータの精度が十分ではない場合があるので、シーケンス制御回路120は、k空間の中心付近を、重ねてカーテシアン収集3により、データ収集を行う。
【0046】
加えて、カーテシアン収集3においては、収集されるk空間が小さいため、k空間の広い領域で収集が行われるラジアル収集2と比較として、収集時間が短い。シーケンス制御回路120は、このような収集時間が短いカーテシアン収集3において、収集に先立ってMTパルスを印加することで、CESTイメージングを行うことができる。
【0047】
換言すると、ZスペクトルなどCEST効果の大きさを表すスペクトルを算出するにあたって、ラジアルサンプリングを用いたk空間データと、カーテシアンサンプリングを用いたk空間中心付近のデータの両方が用いられるが、シーケンス制御回路120は、k空間データの中でも特に重要なデータが集中するk空間中心付近のカーテシアンサンプリングにおいてのみ、MTパルスを印加する。これにより、ラジアルサンプリングの回数が1回で済むことから、トータルの撮像時間を短縮することができ、一方で、k空間中心付近については、MTパルスの周波数を変えながら第2のパルスシーケンスが複数回実行されていることから、CEST効果が画像に十分反映される。このようにして、撮像時間の短縮と、CEST効果の描出を両立することが可能となる。
【0048】
図3に戻り、続いて、シーケンス制御回路120は、第2のパルスシーケンスにおいて、第1の周波数とは異なる第2の周波数のMTパルス4bを印加し、続いて、k空間の中心付近で、再びカーテシアン収集3を行う。シーケンス制御回路120は、例えば、-4.5ppmの周波数のMTパルス4bを印加し、続いて、k空間の中心付近で、再びカーテシアン収集3を行う。この時、MTパルス4aに続いて行われたカーテシアン収集3と、MTパルス4bに続いて行われたカーテシアン収集3とは、例えば同一のk空間位置に対して行われる。
【0049】
続いて、シーケンス制御回路120は、第2のパルスシーケンスにおいて、第1の周波数及び第2の周波数とは異なる第3の周波数のMTパルス4cを印加し、続いて、k空間の中心付近で、再びカーテシアン収集3を行う。シーケンス制御回路120は、例えば、-4.0ppmの周波数のMTパルス4cを印加し、続いて、k空間の中心付近で、再びカーテシアン収集3を行う。この時、MTパルス4cに続いて行われたカーテシアン収集3と、それ以前のカーテシアン収集3とは、例えば同一のk空間位置に対して行われる。
このようにして、シーケンス制御回路120は、第2のパルスシーケンスを繰り返し実行する。シーケンス制御回路120は、例えば、+5.0ppmの周波数のMTパルス4xを印加し、続いて、k空間の中心付近で、再びカーテシアン収集3を完了するまで、第2のパルスシーケンスを繰り返し実行する。
【0050】
図4に戻り、処理回路150は、画像生成機能136により、第1のパルスシーケンス及び第2のパルスシーケンスにより得られたデータに基づいて、CEST効果の大きさを表すスペクトルを算出する(ステップS120)。ここで、CEST効果の大きさを表すスペクトルとは、例えばZスペクトルやMTRasym(Magnetization Transfer Ratio Asymmetry)スペクトルなどのスペクトルである。
ここで、Zスペクトルとは、MTパルス印加後に自由水プロトンの共鳴周波数に対応するRFパルスを印加したときの信号強度を、印加したMTパルスの周波数の関数として表したスペクトルである。
【0051】
ここで、Zスペクトルについて簡単に説明する。CEST効果が存在しない時、Zスペクトルには、自由水プロトンの飽和の効果のみが反映される。この結果、Zスペクトルは、自由水プロトンの共鳴周波数を基準とした原点に対して、対称なスペクトルとなる。これに対して、CEST効果が存在する場合、CEST効果を反映して、Zスペクトルは、自由水プロトンの共鳴周波数を基準とした原点に対して、非対称なスペクトルとなる。
【0052】
例えば、シーケンス制御回路120が印加するMTパルスの周波数が+3.5ppmであった場合、MTパルスによってアミド基のプロトンが飽和し、自由水プロトンと化学的交換が起こる。この結果、信号値は低下する。一方、シーケンス制御回路120が印加するMTパルスの周波数が-3.5ppmであった場合、自由水プロトンと化学交換が起こるプロトンが、-3.5ppmには存在しない。この結果、信号値は低下しない。
【0053】
換言すると、Zスペクトルの非対称性を表す量が、CEST効果の大きさを表す量になる。図5に、Zスペクトルの一例が示されている。図5において、縦軸は信号強度を示し、横軸は印加されるMTパルスの周波数を表す。ここで、印加されるMTパルスの周波数は、自由水プロトンの共鳴周波数を0とした相対値で、ppmの単位で示されている。白丸はデータ点を表し、Zスペクトル10は、これらのデータ点から構成されたZスペクトルを表す。図5に示されたZスペクトル10の非対称性が、CEST効果の大きさを表す量となる。
【0054】
MTRasymスペクトルは、このようなZスペクトルの非対称性を表すスペクトルである。例えば、周波数「-x ppm」のMTパルスを印加した時の信号強度が「S」であり、それとは対称な位置にある周波数「+x ppm」のMTパルスを印加した時の信号強度が「S」であり、MTパルスを何も印加しなかった時の信号強度が「S」とすると、周波数「x ppm」におけるMTRasymスペクトルは、例えば、「(S-S)/S」の式により算出できる。
【0055】
次に、これらCEST効果の大きさを表すスペクトルの算出方法について説明する。処理回路150は、画像生成機能136により、例えば、ラジアル収集2より得られたデータと、第1の周波数のMTパルス4aに続くカーテシアン収集3より得られたデータとに基づいて、第1の周波数に係る、Zスペクトルと同様のスペクトルを生成する。処理回路150は、画像生成機能136により、例えば、ラジアル収集2より得られたデータと、第2の周波数のMTパルス4bに続くカーテシアン収集3より得られたデータとに基づいて、第2の周波数に係るZスペクトルと同様のスペクトルを生成する。同様に、処理回路150は、画像生成機能136により、ラジアル収集2により得られたデータと、第3の周波数のMTパルス4cに続くカーテシアン収集3により得られたデータとに基づいて、第3の周波数に係るZスペクトルと同様のスペクトルを生成する。
【0056】
ここで、「Zスペクトルと同様のスペクトル」の意味について簡単に説明する。例えば第1の周波数において、処理回路150は、画像生成機能136により、k空間中心の領域においてはMTパルスが印加されたカーテシアン収集3より得られたデータを用いてZスペクトルを生成する。これに対して、処理回路150は、k空間中心の領域以外の領域については、MTパルスが印加されていないラジアル収集2より得られたデータを用いてZスペクトルを生成しているため、k空間中心の領域以外の領域については、CEST効果が反映されていない。しかしながら、重要な情報が含まれているk空間中心の領域においては、MTパルスが印加されたデータを用いてスペクトルが生成されていることから、このようにして得られたスペクトルは、Zスペクトルと同様、CEST効果が反映されたスペクトルと考えることができる。換言すると、処理回路150が生成したスペクトルは、短時間の撮像時間で生成可能なスペクトルでありながら、CEST効果が反映されたスペクトルである。
【0057】
処理回路150は、このように生成されたスペクトルに基づいて、同様に、画像生成機能136により、MTRasymスペクトルと同様のスペクトルを生成する。以下、「Zスペクトルと同様のスペクトル」「MTRasymと同様のスペクトル」を、簡単のため「Zスペクトル」「MTRasymスペクトル」と呼ぶ。このようにして、処理回路150は、画像生成機能136により、CEST効果の大きさを表すスペクトルを算出する。
【0058】
なお、ステップS120において、Zスペクトル及びMTRasymスペクトルが算出される対象となる範囲は、全撮像領域でもよいし、指定されたROI(Region Of Interest)でもよい。換言すると、ステップS120において、処理回路150は、画像生成機能136により、全撮像領域について積分を実行することによりZスペクトル及びMTRasymスペクトルを生成してもよいし、指定されたROIに対して積分を実行することによりZスペクトル及びMTRasymスペクトルを実行してもよい。また、別の例として、処理回路150は、画像生成機能136により、水素画像空間の1ピクセルに対してZスペクトル及びMTRasymスペクトルを生成してもよい。
【0059】
これらのROIの指定方法について、図6にそのGUIの一例が示されている。図6は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100のGUIの一例である。パネル21は、ZスペクトルやMTRasymスペクトル生成のためのROI(Region Of Interest)を設定するためのパネルである。ボタン25a、25b、25c、25dは、ROIを設定するためのボタンである。
【0060】
ステップS120の開始時までにユーザがボタン25a、25b、25d、25cをクリックすると、ステップS120において生成されるZスペクトルやMTRasymスペクトルを生成するためのROI22が、それぞれ上、下、右、左に移動する。このようにして、処理回路150は、インタフェース機能131により、ユーザからのROI22の選択の入力を受け付ける。ステップS120において、処理回路150は、インタフェース機能131によりユーザから受け付けたROI22の入力に基づいて、画像生成機能136によりCEST効果の大きさを表すスペクトルを算出する。換言すると、処理回路150は、画像生成機能136によりステップS120においてCEST効果の大きさを表すスペクトルを算出するに当たって、ROI22を積分範囲としてスペクトルを算出する。
【0061】
図4に戻り、処理回路150は、制御機能133により、ディスプレイ135に、ステップS120において算出されたスペクトルを表示させる(ステップS130)。かかるGUIの一例が図6に示されている。
【0062】
図6において、表示領域23は、処理回路150が制御機能133によりZスペクトルをディスプレイ135に表示させる領域を表す。表示領域24は、処理回路150が制御機能133によりMTRasymスペクトルをディスプレイ135に表示させる領域を表す。処理回路150は、制御機能133により、表示領域23に、ステップS120の開始時までに選択されたROI22に係るZスペクトルをディスプレイ135に表示させる。また、処理回路150は、制御機能133により、表示領域24に、ステップS120の開始時までに選択されたROI22に係るMTRasymスペクトルをディスプレイ135に表示させる。
【0063】
なお、表示領域23に表示されたZスペクトルや、表示領域24に表示されたMTRasymスペクトルを見たユーザが、ROI22を変更したい場合、処理回路150は、制御機能133により、ボタン25a、25b、25c、25d等により、ROI22の変更を受け付ける。かかる場合、処理はステップS120に戻り、処理回路150は、画像生成機能136により、変更後のROI22に基づいて、CEST効果の大きさを表すスペクトルを算出する。
【0064】
なお、図6に示されているように、処理回路150は、制御機能133により、ディスプレイ135に、例えば表示領域26を通じて、T強調画像などの通常の画像を表示させる。
【0065】
また、処理回路150は、制御機能133により、ディスプレイ135に、例えば表示領域27を通じて、現在実行中の、または実行されたパルスシーケンスのシーケンスチャートを表示させる。
【0066】
また、処理回路150は、インタフェース機能131により、パネル32に示されているように、ユーザから、第2のパルスシーケンスにおいて印加されるMTパルスの周波数(CEST周波数)の設定の入力を受け付けてもよい。具体的には、ステップS110の開始時までにユーザがボタン33c、33d及び33eをクリックすると、処理回路150は、インタフェース機能131により、第2のパルスシーケンスにおいて印加されるMTパルスの周波数の下限値、上限値、及び周波数間隔の変更の入力を受け付ける。シーケンス制御回路120は、処理回路150が受け付けたMTパルスの周波数の下限値、上限値、及び周波数間隔の値に基づいて、ステップS110においてMTパルスの周波数を変えながら第2のパルスシーケンスを実行する。
【0067】
なお、パネル30、パネル35、パネル45については、後述の実施形態において説明する。
【0068】
なお、実施形態は上述の例に限られない。
【0069】
実施形態では、シーケンス制御回路120が、ステップS100において3次元のラジアルサンプリングを行う場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、シーケンス制御回路120は、ステップS100において、2次元のラジアルサンプリングを行ってもよい。換言すると、シーケンス制御回路120は、2次元のPETRAシーケンスを実行してもよい。また、別の例として、シーケンス制御回路120は、ステップS100において、2次元の星形層状(Stack―Of―Stars)サンプリングを行っても良い。また、別の例として、シーケンス制御回路120は、ステップS100において、2次元マルチスライス収集を行っても良い。
【0070】
また、シーケンス制御回路120は、ステップS100において、黄金角サンプリングを用いて、第1のパルスシーケンスにおけるラジアル収集2を行っても良い。
【0071】
ステップS120において、CEST効果の大きさを表すスペクトルが算出される対象となる範囲が、指定されたROIである場合において、ROI22の設定タイミングが、パルスシーケンスの実行後である場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。処理回路150は、インタフェース機能131により、撮像対象のROI22の入力を第1のパルスシーケンス及び第2のパルスシーケンスの実行前に受け付け、シーケンス制御回路120は、受け付けた結果に基づいて、第1のパルスシーケンス及び第2のパルスシーケンスを実行してもよい。
【0072】
また、シーケンス制御回路120がステップS100において第1のパルスシーケンスにおいてラジアル収集2を行った後、ステップS110において第2のパルスシーケンスにおいてカーテシアン収集3を行う場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、シーケンス制御回路120は第2のパルスシーケンスにおいて先にカーテシアン収集3を行った後に、第1のパルスシーケンスにおいてラジアル収集2を行ってもよい。また、シーケンス制御回路120は、初めに何回か第2のパルスシーケンスを実行し、次に第1のパルスシーケンスを実行し、続いて何回か第2のパルスシーケンスを実行してもよい。
【0073】
また、ステップS120において、処理回路150が、画像生成機能136により、第1のパルスシーケンスと第2のパルスシーケンスの両方のデータを用いて、CEST効果の大きさを示すスペクトルを算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られない。処理回路150は、画像生成機能136により、第2のパルスシーケンスのみ、すなわちカーテシアン収集3のみに基づいて、CEST効果の大きさを示すスペクトルを算出してもよい。
【0074】
また、複数の第2のパルスシーケンスにおいて、カーテシアン収集3のk空間位置が同じである場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。すなわち、複数の第2のパルスシーケンスにおいて、カーテシアン収集3のk空間位置は互いに異なってよい。
また、第2のパルスシーケンスは複数回行われる必要はなく、第2のパルスシーケンスは1回のみ行われても良い。かかる場合、第2のパルスシーケンスにおいて印加されるMTパルスの周波数は、ヒドロキシル基プロトンの共鳴周波数である+1ppm、アミノ基プロトンの共鳴周波数である+2ppm、アミド基プロトンの共鳴周波数である+3.5ppmなど、所定の周波数に設定されていてもよい。
【0075】
以上述べたように、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1100によれば、短い撮像時間でCESTイメージングを行うことができる。
【0076】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においては、シーケンス制御回路120が第2のパルスシーケンスにおいて脂肪飽和パルスを更に印加する場合について説明する。この構成により、脂肪信号が取り除かれた画像を得ることが可能になる。
【0077】
かかる構成の一例が、図7に示されている。図7は、第2の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
【0078】
図7において、ラジアル収集2は、第1の実施形態と同様に、第1のパルスシーケンスにおいて実行される収集であるラジアル収集を示している。MTパルス4a、MTパルス4b、MTパルス4c、MTパルス4xは、それぞれ、第2のパルスシーケンスにおいて印加される、第1の周波数、第2の周波数、第3の周波数、第nの周波数のMTパルスを表している。カーテシアン収集3は、第2のパルスシーケンスにおいて実行されるカーテシアン収集を表している。脂肪飽和パルス5は、カーテシアン収集3において脂肪信号を除去するために印加するパルスを表す。
【0079】
図4を再び参照し、はじめに、シーケンス制御回路120は、第1の実施形態と同様に、図7に示されるように、ラジアル収集2によりデータ収集を行う第1のパルスシーケンスを実行する(ステップS100)。続いて、シーケンス制御回路120は、MTパルスを印加したのち、カーテシアンサンプリングによりデータ収集を行う、第2のパルスシーケンスを、MTパルスの周波数を変えながら複数回実行する(ステップS110)。具体的には、シーケンス制御回路120は、図7に示すように、第1の周波数のMTパルス4aを印加したのち、脂肪飽和パルス5を印加し、カーテシアン収集3を行う。ここで、脂肪飽和パルス5が印加されているので、カーテシアン収集3により得られたデータは、脂肪の信号が除去された信号となる。続いて、シーケンス制御回路120は、第2の周波数のMTパルス4bを印加したのち、脂肪飽和パルス5を印加し、カーテシアン収集3を行う。続いて、シーケンス制御回路120は、第3の周波数のMTパルス4cを印加したのち、脂肪飽和パルス5を印加し、カーテシアン収集3を行う。このようにして、シーケンス制御回路120は、第nの周波数のMTパルス4xに係るカーテシアン収集3が行われるまで、MTパルスの周波数を変化させながら、脂肪飽和パルス5を印加しながら収集を繰り返す。
【0080】
ステップS120及びステップS130においては、第1の実施形態と同様の処理が行われる。
【0081】
なお、シーケンス制御回路120は、脂肪飽和パルス5を印加するか否かの入力を、ユーザから受け付け、ユーザから脂肪飽和パルス5を印加する旨の入力を受け付けた場合、脂肪飽和パルス5を印加してもよい。かかるGUIの一例が図6に示されている。図6において、ユーザがボタン41をクリックすると、シーケンス制御回路120は、脂肪飽和パルス5を含んで、図7のパルスシーケンスを実行する。
【0082】
以上のように、第2の実施形態では、脂肪飽和パルスが更に印加される。これにより、脂肪信号が取り除かれた画像を得ることが可能になる。
【0083】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、撮像対象や撮像の目的に応じて、第1の実施形態で説明したパルスシーケンスの最適化を行う例について説明する。具体的には、第3の実施形態では、撮像対象や撮像の目的に応じて、カーテシアン収集を行うk空間の大きさを調整する場合について説明する。換言すると、第3の実施形態では、撮像対象や撮像の目的に応じて、カーテシアン収集を行うk空間と、ラジアル収集を行うk空間との比を調整する。
【0084】
図8は、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。第3の実施形態で実行されるパルスシーケンスは第1の実施形態と同様であり、従って、図8のステップS100、ステップS120、ステップS130については図4と同様の処理が行われる。これらのステップの説明については、繰り返しての説明は省略する。
【0085】
ステップS90において、処理回路150は、制御機能133により、撮像対象や要求される画質、撮像時間等の情報に基づいて、ステップS110における第2のパルスシーケンスにおいて、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲を算出する。
【0086】
例えば、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲が大きくなると、CEST効果を表すスペクトルの画質が向上する。一方で、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲が大きくなると、撮像時間が長くなる。従って、処理回路150は、制御機能133により、得られるCESTスペクトルの画質と、撮像時間とのトレードオフを考慮して、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲を算出する。
【0087】
例えば、処理回路150がインタフェース機能131により、入力装置134を通じてユーザから、撮像時間の値の入力を受け付けていたとすると、処理回路150は、入力結果に基づいて、撮像時間が入力された値を超えないようなk空間の範囲を、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲として算出する。また、処理回路150が、インタフェース機能131により、入力装置134を通じてユーザから、どの程度の画質が要求されるかに関する情報の入力を受け付けていたとすると、処理回路150は、入力結果にもとづいて、最終的に出力されるCEST効果を表すスペクトルの画質が、入力された基準値を上回るようなk空間の範囲を、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲として算出する。
【0088】
別の例として、記憶回路132は、撮像部位と、当該撮像部位を撮像するのに最適な、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲のデフォルト値とが対応づけられたテーブルを記憶する。処理回路150が、インタフェース機能131により、入力装置134を通じてユーザから撮像部位の入力を受け付けると、処理回路150は、制御機能133により、記憶回路132からテーブルを読み込み、当該撮像部位に対する、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲のデフォルト値を、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲として算出する。
【0089】
図6にこのようなGUIの一例が示されている。図6において、ユーザがボタン40をクリックすると、シーケンス制御回路120は、ステップS90において、カーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲を算出する。
【0090】
また、別の例として、処理回路150は、インタフェース機能131により、入力装置134を通じて、ユーザからカーテシアンサンプリングによりデータ収集が行われるk空間の範囲の入力を直接受け付けても良い。図6にこのようなGUIの一例が示されている。図6において、表示領域37a、表示領域37b、表示領域37cは、それぞれx方向、y方向、z方向のk空間全体のデータ点を表し、表示領域36a、表示領域36b、表示領域36cは、それぞれx方向、y方向、z方向の、カーテシアン収集3が行われるk空間のデータ点を表す。ユーザがボタン38aやボタン38bをクリックすると、処理回路150は、インタフェース機能131により、カーテシアン収集3が行われるx方向のk空間のデータ点の数の変更の入力を受け付ける。なお、ユーザがボタン38cをクリックすると、処理回路150は、インタフェース機能131により、x方向のk空間全体のデータ点の数の変更の入力を受け付けることもできる。
【0091】
シーケンス制御回路120は、ステップS100において、第1の実施形態と同様な処理を行う。
【0092】
シーケンス制御回路120は、ステップS110において、MTパルスを印加したのち、ステップS90で算出されたk空間の範囲でカーテシアンサンプリングによりデータ収集を行う第2のパルスシーケンスを、MTパルスの周波数を変えながら複数回実行する(ステップS110)。
【0093】
シーケンス制御回路120は、ステップS120及びステップS130において、第1の実施形態と同様の処理を行う。
【0094】
第3の実施形態では、撮像対象や撮像の目的に応じて、カーテシアン収集を行うk空間の大きさを調整する。これにより、CESTスペクトルの画質を保ったまま、撮像時間を短縮することができる。
【0095】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、ラジアル収集2を複数回に分割して実行することで、第1の実施形態で説明したパルスシーケンスの最適化を行う例について説明する。換言すると、第4の実施形態では、シーケンス制御回路120は、第1のパルスシーケンスを、複数回にわけて実行する。
【0096】
第4の実施形態で、ラジアル収集2を複数回に分割して実行する理由は以下の通りである。
【0097】
第1の理由として、ラジアル収集2を複数回に分割することで、一度に収集しなければいけないk空間の領域を小さくすることができ、ラジアル収集2を実行する第1のパルスシーケンスの設計の自由度が増加する。例えば、Tが短い骨などの部位の撮像においては、TE(Echo Time)を短くすることが必要になるが、ラジアル収集2を複数回に分割することで、採用することのできるパルスシーケンスの選択肢を増やすことができる。
【0098】
また、第2の理由として、第2のパルスシーケンスの間にラジアル収集2を挟むことで、異なる周波数のMTパルスの印加間隔を増加させることができる。これにより、異なる周波数のMTパルス同士の干渉を避けることができる。換言すると、データ収集される信号に、異なる周波数のMTパルスの影響が混じってしまうことによる影響を少なくすることができる。
【0099】
第4の実施形態において印加されるパルスシーケンスの一例が、図9に示されている。図9は、第4の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
【0100】
図9において、ラジアル収集2a、ラジアル収集2b、ラジアル収集2c、ラジアル収集2xは、第1の実施形態と同様に、第1のパルスシーケンスにおいて実行される収集であるラジアル収集を示している。ラジアル収集2a、ラジアル収集2b、ラジアル収集2c、ラジアル収集2xは、それぞれ第1セグメント、第2セグメント、第3セグメント、第nセグメントのラジアル収集である。ラジアル収集2a、ラジアル収集2b、ラジアル収集2cは、それぞれ図9の下の図で示されているk空間の領域の収集に対応する。
【0101】
MTパルス4a、MTパルス4b、MTパルス4c、MTパルス4xは、それぞれ、第2のパルスシーケンスにおいて印加される、第1の周波数、第2の周波数、第3の周波数、第nの周波数のMTパルスを表している。カーテシアン収集3は、第2のパルスシーケンスにおいて実行されるカーテシアン収集を表している。
【0102】
第4の実施形態では、図4のステップS120及びステップS130においては、第1の実施形態と同様の処理を行う。図4のステップS100及びステップS110に対応する処理において、シーケンス制御回路120は、第1のパルスシーケンスを第2のパルスシーケンスの中に組み込んだパルスシーケンスを実行する。
【0103】
具体的には、図9に示されるように、シーケンス制御回路120は、第1セグメントのラジアル収集2aによりデータ収集を行う第1のパルスシーケンスを実行する。続いて、シーケンス制御回路120は、第1の周波数のMTパルス4aを印加したのち、カーテシアン収集3を行う。続いてシーケンス制御回路120は、第2セグメントのラジアル収集2bによりデータ収集を行う第1のパルスシーケンスを実行する。続いて、シーケンス制御回路120は、第2の周波数のMTパルス4bを印加したのち、カーテシアン収集3を行う。続いて、シーケンス制御回路120は、第3セグメントのラジアル収集2cによりデータ収集を行う第1のパルスシーケンスを実行する。続いて、シーケンス制御回路120は、第3の周波数のMTパルス4cを印加したのち、カーテシアン収集3を行う。このように、シーケンス制御回路120は、第1のパルスシーケンスを第2のパルスシーケンスの中に組み込みながら、複数回にわけて実行する。
【0104】
第4の実施形態に係るGUIの例が、図6のパネル30に示されている。ボタン31a及びボタン31bを用いて、ユーザは、ラジアル収集のセグメント分割を行うか否かを選択することができる。例えば、ユーザがボタン31aを選択すると、シーケンス制御回路120は、ラジアル収集のセグメント分割を行いながら、第1のパルスシーケンス及び第2のパルスシーケンスを実行する。また、表示領域31cには、ラジアル収集のセグメントの分割数が示されている。また、処理回路150は、インタフェース機能131により、ボタン31dやボタン31eにより、ラジアル収集のセグメント分割の分割数の入力を、ユーザから受け付けることができる。
【0105】
実施形態は、上述の例に限られない。例えば、ラジアル収集のセグメントの分割の方法については、図9に示した方法に限られず、その他の分割の仕方が可能である。例えば、ラジアル収集のセグメントの分割の方法については、インターリーブな分割等、シーケンシャル以外の方法で分割されていてもよい。
【0106】
以上のように、第4の実施形態では、第1のパルスシーケンスを、複数回にわけて実行する。これにより、パルスシーケンスの設計の自由度を向上することができ、また異なる周波数のMTパルス同士の影響を小さくすることができる。
【0107】
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、第1の実施形態で説明したパルスシーケンスの最適化を行う例について説明する。第4の実施形態では、ラジアル収集2を複数回に分割して実行したが、第5の実施形態では、カーテシアン収集3を複数回に分割して実行する。換言すると、第5の実施形態では、シーケンス制御回路120は、第2のパルスシーケンスにおけるカーテシアンサンプリングを、複数回にわけて実行する。
【0108】
第5の実施形態で、カーテシアン収集3を複数回に分割して実行する理由は以下の通りである。
【0109】
第1の理由として、第4の実施形態と同様に、カーテシアン収集3を複数回に分割することで、一度に収集しなければいけないk空間の領域を小さくすることができ、カーテシアン収集3を実行する第2のパルスシーケンスの設計の自由度が増加する。第4の実施形態と同様に、例えば、Tが短い骨などの部位の撮像においては、TE(Echo Time)を短くすることが必要になるが、カーテシアン収集3を複数回に分割することで、採用することのできるパルスシーケンスの選択肢を増やすことができる。第4の実施形態と第5の実施形態との違いとしては、第4の実施形態においては、第1のパルスシーケンスの設計の自由度を増加させることができるのに対して、第5の実施形態では、第2のパルスシーケンスの設計の自由度を増加させることができる。
【0110】
また、第2の理由として、カーテシアン収集を分割し、その間では同じ周波数のMTパルスを印加するので、異なる周波数のMTパルスの印加間隔を増加させることができる。これにより、第4の実施形態と同様に、データ収集される信号に、異なる周波数のMTパルスの影響が混じってしまうことによる影響を少なくすることができる。
【0111】
第5の実施形態において印加されるパルスシーケンスの一例が、図10に示されている。図10は、第5の実施形態におけるデータ収集について説明した図である。
【0112】
図10において、カーテシアン収集3a、カーテシアン収集3b、カーテシアン収集3c、カーテシアン収集3dは、第2のパルスシーケンスにおいて実行される収集であるカーテシアン収集を示している。カーテシアン収集3a、カーテシアン収集3b、カーテシアン収集3c、カーテシアン3dは、それぞれ第1セグメント、第2セグメント、第3セグメント、第4セグメントのカーテシアン収集である。カーテシアン収集3a、カーテシアン収集3b、カーテシアン収集3c、カーテシアン3dは、それぞれ図9の下の図で示されているk空間の領域の収集に対応する。
【0113】
MTパルス4a、MTパルス4bは、それぞれ、第2のパルスシーケンスにおいて印加される、第1の周波数、第2の周波数の周波数のMTパルスを表している。ラジアル収集2は、第1のパルスシーケンスにおいて実行されるラジアル収集を表している。
【0114】
第5の実施形態では、図4のステップS100、ステップS120及びステップS130においては、第1の実施形態と同様の処理を行う。図4のステップS110に対応する処理において、シーケンス制御回路120は、カーテシアンサンプリングを複数回に分けて、第2のパルスシーケンスを実行する。
【0115】
具体的には、図10に示されるように、シーケンス制御回路120は、ステップS110において、第1の周波数のMTパルス4aを印加したのち、第1セグメントのカーテシアン収集3aを行う。続いてシーケンス制御回路120は、第1の周波数のMTパルス4aを再び印加したのち、第2セグメントのカーテシアン収集3bを行う。続いてシーケンス制御回路120は、第1の周波数のMTパルス4aを再び印加したのち、第3セグメントのカーテシアン収集3cを行う。続いてシーケンス制御回路120は、第1の周波数のMTパルス4aを再び印加したのち、第4セグメントのカーテシアン収集3dを行う。続いて、シーケンス制御回路120は、第2の周波数のMTパルス4bを再び印加したのち、第1セグメントのカーテシアン収集3aを再び行う。以下、シーケンス制御回路120は、同様に操作を繰り返す。
【0116】
なお、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路150は、制御機能133により、ステップS100に先立って、撮像対象に関する情報等に基づいて、カーテシアンサンプリングが複数回にわけて実行されるk空間のセグメント分割のしかたを算出し、それを基に、図4のステップS110において、シーケンス制御回路120は、第2のパルスシーケンスにおけるカーテシアンサンプリングを、複数回に分けて実行してもよい。例えば、処理回路150は、制御機能133により、撮像に適切なTEに基づいて、カーテシアンサンプリングが複数回にわけて実行されるk空間のセグメント分割数を算出してもよい。
【0117】
図6のパネル45に、第5の実施形態に係るGUIの一例が示されている。ボタン42a及びボタン42bを用いて、ユーザは、カーテシアン収集のセグメント分割を行うか否かを選択することができる。例えば、ユーザがボタン42aを選択すると、シーケンス制御回路120は、カーテシアン収集のセグメント分割を行いながら、第2のパルスシーケンスを実行する。また、表示領域43には、カーテシアン収集のセグメントの分割数が示されている。また、処理回路150は、インタフェース機能131により、ボタン43aやボタン43bにより、カーテシアン収集のセグメント分割の分割数の入力を、ユーザから受け付けることができる。また、ユーザがボタン44を選択すると、処理回路150は、制御機能133により、撮像対象に応じて、カーテシアン収集のセグメントを自動分割し、シーケンス制御回路120は、自動分割されたセグメントで、第2のパルスシーケンスを実行する。
【0118】
実施形態は、上述の例に限られない。例えば、カーテシアン収集のセグメントの分割の方法については、図10に示した方法に限られず、その他の分割の仕方が可能である。また、例えば、第2のパルスシーケンスは、上述の例に限られない。例えば、実施形態では、MTパルスの周波数を固定して、カーテシアンセグメントを、第1のセグメントのカーテシアン収集3a、第2のセグメントのカーテシアン収集3b…と変化させて収集する場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、まずカーテシアンセグメントを固定して、MTパルスの周波数を変化させ、その後に、次のカーテシアンセグメントの収集を行うことにより、第2のパルスシーケンスを実行してもよい。また、第4の実施形態と第5の実施形態を組み合わせても良い。すなわち、ラジアル収集及びカーテシアン収集の両方を組み合わせても良い。
【0119】
以上のように、第5の実施形態では、カーテシアンサンプリングを、複数回にわけて実行する。これにより、パルスシーケンスの設計の自由度を向上することができ、また異なる周波数のMTパルス同士の影響を小さくすることができる。
【0120】
(プログラム)
また、上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用コンピューターが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100による効果と同様の効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピューターに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピューター又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピューターは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100と同様の動作を実現することができる。また、コンピューターがプログラムを取得する場合又は読み込む場合は、ネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
【0121】
また、記憶媒体からコンピューターや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピューター上で稼働しているOS(Operating System)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(Middleware)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。更に、記憶媒体は、コンピューターあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0122】
なお、実施形態におけるコンピューター又は組み込みシステムは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上述した実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。また、実施形態におけるコンピューターとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0123】
(ハードウェア構成)
図11は、実施形態に係るコンピューター130(画像処理装置)のハードウェア構成を示す図である。上述した実施形態に係る画像処理装置は、CPU(Central Processing Unit)310等の制御装置と、ROM(Read Only Memory)320やRAM(Random Access Memory)330等の記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F340と、各部を接続するバス301とを備えている。
【0124】
上述した実施形態に係る画像処理装置で実行されるプログラムは、ROM320等に予め組み込まれて提供される。また、上述した実施形態に係る画像処理装置で実行されるプログラムは、コンピューターを上述した画像処理装置の各部として機能させ得る。このコンピューターは、CPU310がコンピューター読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0125】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法によれば、短い撮像時間でCESTイメージングを行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0126】
120 シーケンス制御回路
150 処理回路
131 インタフェース機能
133 制御機能
136 画像生成機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11